特表2017-511163(P2017-511163A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-511163歯肉インデックス器具および歯肉をインデックスする方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-511163(P2017-511163A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】歯肉インデックス器具および歯肉をインデックスする方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20170331BHJP
   A61C 13/34 20060101ALN20170331BHJP
【FI】
   A61C19/04 J
   A61C19/04 Z
   A61C13/34 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-549338(P2016-549338)
(86)(22)【出願日】2015年1月28日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月29日
(86)【国際出願番号】EP2015051693
(87)【国際公開番号】WO2015113999
(87)【国際公開日】20150806
(31)【優先権主張番号】102014101059.0
(32)【優先日】2014年1月29日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iPod
(71)【出願人】
【識別番号】399011900
【氏名又は名称】ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジェイ. レイ
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト クビアク−エスマン
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052NN04
4C052NN05
4C052NN15
(57)【要約】
本発明は、特に歯肉復元部を作製するための、種々異なる所定の赤色領域(赤色色調)を備え、かつ、カラーグレーカードまたはグレーカードが対応付けられている歯肉インデックス器具と、歯肉状況を検出する方法とに関しており、この器具および方法には、歯肉状況の少なくとも1つの領域を、その複数の赤色色調と、これらの赤色色調の位置と、これらの赤色色調の色の経過と、これらの幾何学形状および/またはこれらの形態とについて、分析することが含まれており、ここでこの分析は、手動および/またはデジタルで行うことができ、歯肉情報が、特に歯肉マップの形態で得られる。また上記の器具および方法には、オプションで、欠損した歯肉部位の複製として歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルを作製することが含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯肉状況を検出する方法であって、前記方法では、
A)前記歯肉状況の少なくとも1つの領域の分析を、前記歯肉状況の複数の赤色色調、複数の前記赤色色調の位置および/または複数の前記赤色色調の色の経過およびオプションでは幾何学形状および/または形態について、デジタルで行い、
B)歯肉情報を取得し、
前記分析A)をデジタル式の分析で行い、前記分析を、
・前記歯肉状況の少なくとも1つの領域、およびオプションでは顔面部位の領域を、校正のためのカラーグレーカードおよび/またはグレーカードを使用して検出し、前記歯肉の領域を、前記カードと共に2次元または3次元的にデジタルで検出し、デジタルの歯肉情報をデジタルデータセットとして取得する、または
・前記歯肉状況の少なくとも1つの領域を、オプションでは歯の状況を、オプションでは顔面部位の領域を、およびインデックス器具の赤色色調を有する少なくとも1つの色領域を、2次元的または3次元的に検出し、前記検出を、校正のためのカラーグレーカードおよび/またはグレーカードの少なくとも一部分の検出と共に行い、デジタルの歯肉情報をデジタルデータセットとして取得する、
ことによって行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
ソフトウェアを使用してデジタルおよび/または手動で歯肉を分析し、
ここで前記分析は、前記歯肉状況を、およびオプションでは前記歯の状況を、複数の色調および/または色の経過について、前記ソフトウェアを用いて検査することによって行われ、特に有利には前記歯肉を、
(i)サルカスの領域においてクレスタルに、乳頭の色の経過について分析し、付加的または択一的に、
(ii)前記歯肉の幾何学形状を、特にクレスタルの状況、歯の幅、顎堤(alveolar ridge)、乳頭の位置、および/または、歯頸の見え方のような歯の状況について分析し、および/または、
(iii)前記歯肉の形態を分析し、
・歯肉情報を取得する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析(i)を、ソフトウェアを使用してデジタルに行い、前記分析を、
・ソフトウェアを用いて、カラーグレーカードまたはグレーカードに関連した色かぶり調整および/またはホワイトバランス調整を、前記デジタルの歯肉情報のデジタルデータセットに行って、色調整したデジタルデータセットを取得し、
・カーソルによって手動でまたは自動で、前記歯肉状況の前記色調整したデジタルデータセットを、およびオプションでは前記歯肉状況を、複数の色調および/または縁複数色の経過について分析して、歯肉情報を取得し、オプションでは、
・前記歯肉情報および/または歯肉の各領域にそれぞれ独立して、1つ以上の所定かつ既成のデンタルカラーおよび/または1つ以上のカラーミキシングガイドを対応付ける、ことによって行う、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記歯肉情報を歯肉マップの形態で取得する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記歯肉情報を、
a)デジタルにコーディングされた色領域に対応付ける、または、
b)インデックス器具の手動でコーディングされた色領域に対応付け、それぞれ独立して前記コーディングにカラーミキシングガイダンスを対応付ける、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
仮想歯肉復元部または実歯肉復元部を形成し、
(i)仮想歯肉モデルまたは実歯肉モデルを作成する前のステップにおいて、口腔内スキャンにより、校正のためのカラーグレーカードまたはグレーカードの検出と共に、前記歯肉状況の第1仮想モデルのデジタル歯肉情報を含む第1デジタルデータセットを作成し、オプションではインデックス器具の赤色色調を備えた少なくとも1つの色領域を作成し、択一的にはシリコーン複製物の3次元スキャンにより、第1デジタルデータセットを作成するか、または実モデルの3次元スキャンにより、第1デジタルデータセットを作成しかつそれぞれ歯肉情報を補い、オプションで、
(i.1)ホワイトバランス調整および/または色かぶり調整を行って、色調整したデジタルデータセットを取得し、オプションで、
(i.2)前記データセットを複数の色調および/または複数の色の経過について分析し、歯肉情報を取得し、オプションで、
(i.3)既成のデンタルカラーおよび/またはカラーミキシングガイドに前記歯肉情報を対応付け、
(ii)歯肉情報を有する前記歯肉復元部の前記仮想歯肉モデルまたは実歯肉モデルの幾何学形状を有する前記デジタルデータセットを作成し、オプションで、
(iii)歯肉復元部を作製する、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルを作製する方法であって、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法を含み、
C)歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルを作製するステップを含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
歯肉インデックス器具において、
前記歯肉インデックス器具は、
a)少なくとも1つの赤色色調を有する少なくとも1つの色領域を有しており、かつ、
b)前記インデックス器具には、少なくともカラーグレーカードおよび/またはグレーカードが対応付けられている、
ことを特徴とする歯肉インデックス器具。
【請求項9】
前記インデックス器具は、
b)カラーグレーカード/またはグレーカードが配置されている少なくとも1つの領域を有する、
請求項8に記載のインデックス器具。
【請求項10】
複数の前記色領域にカラーミキシングガイドが対応付けられている、
請求項8または9に記載のインデックス器具。
【請求項11】
請求項8から10までのいずれか1項に記載の歯肉インデックス器具と、書き込み可能な歯肉テンプレートと、を有することを特徴とするキット。
【請求項12】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法にしたがって得られることを特徴とする歯肉復元部。
【請求項13】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法にしたがって得られることを特徴とする、特にデータ担体上のデジタルデータセット。
【請求項14】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法にしたがって得られるかまたは請求項13に記載されているデジタルデータセットを処理する、および/または、前記歯肉復元部のデジタルデータセットを形成する、ことを特徴とするソフトウェア。
【請求項15】
前記ソフトウェアは、歯肉、特に残存している歯肉の少なくとも1つの領域のデジタルに供給されたデータを、前記歯肉の複数の前記赤色色調、複数の前記赤色色調の位置、複数の前記赤色色調の色の経過および/または形態について分析できるようにし、歯肉情報を提供し、オプションではコーディングされた色領域を対応付け、前記コーディングは、カラーミキシングガイドに対応付けるためのものであり、および/または、歯肉復元部のデジタルデータセットを計算するためのものである、
請求項14に記載のソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に歯肉復元部を作製するための、種々異なる所定の赤色領域(赤色色調)を備えた歯肉インデックス器具と、歯肉状況を検出する方法とに関しており、この器具および方法には、歯肉状況の少なくとも1つの領域を、その赤色色調、赤色色調の位置、赤色色調の色の経過、それら幾何学形状および/またはそれらの形態について分析することが含まれており、ここでこの分析は、手動および/またはデジタルで行われ、また歯肉情報が、特に歯肉マップの形態で取得される。オプションでは、欠損したガム部位ないしは歯肉部位の複製として、歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルが作製される。歯肉復元部は、歯肉マスクとも称される。
【背景技術】
【0002】
歯肉復元部ないしは歯肉マスクでは、さまざまなタイプが区別される。老化または疾患による歯肉の後退に対する代替物として患者の口内に使用される歯肉マスクと、石膏モデルにおける形成マージンを模擬するための、歯科技工士用の補助手段としての歯肉マスクとが存在する。歯科補綴物の一部としての歯肉復元部ないしは歯肉マスクも存在する。歯科補綴物は、固定式のまたは取り出し可能な義歯を含んでいてよい。この取り出し可能な義歯は、例えば、顎に挿入したインプラント上およびその上に取り付けた、スナップまたはブリッジのような保持エレメント上に固定することが可能である。義歯を備えたこれらの歯科補綴物の1つの欠点は、歯肉の後退およびオプションでは顎萎縮(atropie)を隠そうとする歯科補綴物における歯肉復元部の単色性である。
【0003】
タイプ1:歯肉マスクは、疾患または老化による歯肉後退の際に使用され得る。この際には、しばしば歯頸が一層よく見えるようになることによって不自然に長い歯が現れ、美容上の大きな障害に結び付き得る。疾患による歯肉後退の場合には、基礎疾患の治療が重要である。安定してかつ炎症なしに歯肉が再生される場合には、歯肉の後退は、いわゆる歯肉マスクによって隠すことができる。歯肉マスクは、一般的に屈曲性高分子からなる人工的な歯肉である。歯肉マスクは、取り出し可能な歯肉イミテーションであり、これは一般的に患者自身ではめ込みおよび取り外すことができる。デンタルインプラントを有する歯における歯肉後退ないしは歯肉欠損も歯肉マスクないしは歯肉復元部によって隠すことができる。この場合、歯肉復元部は、義歯による補綴的な処置と考えることができる。
【0004】
従来、石膏モデルにおけるこの歯肉復元部ないしはマスクは、歯科技工士によって個別に作製され、その後、歯科医師により患者の口内で調整されている。例えば歯周炎の進行による大きな歯肉欠損では、取り出し可能な歯肉マスクは、元々の審美性を再度模造または再度形成するための唯一の手段であることが多い。印象採得の後、技工室においてプラスチックから歯に極めて正確に合うごく薄い歯肉色のマスクが作製される。これらの歯肉マスクの着心地は、患者にとって一般に極めて良好である。審美性および音声(発音)も大いに改善される。歯の洗浄のため、このマスクは簡単に取り出すことができ、その後、再度入れることが可能である。
【0005】
タイプ2:歯科技工の分野では、石膏モデルにおいて歯肉を模倣する軟質性維持歯科材料も歯肉マスクと称される。このような補助手段により、口腔内における視覚的、空間的および審美的な状況を極めて良好に反映することができる。しかしながら従来技術の歯肉マスクまたは歯肉復元部の欠点は、これらの単調な色づけである。これまで歯肉復元部は、ただ1つの赤色色調だけから作製されているため、自然に現出する歯肉の赤色色調を転写する経済的な方法は存在しないのである。
【0006】
独国実用新案第8121341明細書には、歯肉部位に義歯を作製してはめ込むための歯肉マスクが、ひいてはモデルにおける形成マージンを模倣するための歯科技工士用の補助手段が開示されている。ここでは液状の硬化可能な材料を石膏モデルの中間空間に充填することによって歯肉マスクが作製される。得られるのは単色の歯肉マスクである。
【0007】
独国特許発明第2744662号明細書には、自然の歯肉のタイプに応じて構造化される、シリコーンゴム製の歯肉マスクおよびその製造方法が記載されている。製造に起因してシリコーンの生地ペーストが型に入れられ、これによって単色に歯肉マスクが得られる。
【0008】
従来技術の歯肉復元部の重大な審美的欠点は、製造に起因した単色性である。さらに、従来は咬合状況の印象採得だけしか行われなかったため、これまではさまざまな赤色色調およびその色の経過について、歯肉状況を検出して分析する方法は存在しなかったのである。
【0009】
歯科分野における色の対応付けは、これまで歯の色だけについて公知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、歯肉状況の複数の赤色色調、それらの色の経過を、とりわけ歯肉状況の形態および幾何学形状と組み合わせて検出する経済的な方法を可能にすることである。さらにこの方法を実行するため、この課題を解決する装置およびソフトウェアを見つけ出したい。また、部分または総入れ歯用の審美的かつ自然な作用を備えた歯肉を提供することも課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの課題は、請求項1、8、11ならびに13および14に記載された発明に対応して解決される。有利な実施形態は、従属請求項に、また明細書に詳細に説明されている。
【0012】
本発明が対象とするのは、歯肉インデックス器具であり、この器具は、a)少なくとも1つの色領域を有しており、この色領域は少なくとも1つの赤色色調を有しており、b)インデックス器具には、少なくとも1つのカラーグレーカードおよび/またはグレーカードが対応付けられており、特にこのインデックス器具は、カラーグレーカードおよび/またはグレーカードを備えた少なくとも1つの領域を有する。
【0013】
ここで上記のカラーグレーカードまたはグレーカードは、例えばインデックス器具のベースまたは面積要素に対応し得る。同様にカラーグレーカードおよび/またはグレーカードは、1つの領域において色領域に相似に配置することが可能である。本発明は同様に、少なくとも1つの色領域を有する歯肉インデックス器具を有するキットも対象としており、この色領域は、少なくとも1つの赤の色調または赤色色調を有しており、上記のキットには、カラーグレーカードおよび/またはグレーカードが含まれている。
【0014】
1つの色領域は有利には、1つの赤色色調を有しており、この1つの色領域は、特にインデックス器具の他の複数の色領域からは切り離されている。択一的には1つの色領域は、所定の配置または一般的な色の経過で、種々異なる所定の複数の赤色色調を有することが可能である。インデックス器具を用いた歯肉状況の検出について良好な結果を得るため、上記の色領域を有利には3次元の色物体とすることが可能であり、複数の色物体は、有利には歯肉の1つの領域のさまざまな一般的な赤色の色経過および/または一般的な形態を表す。
【0015】
また本発明は、複数の色領域に1つずつのカラーミキシングガイダンスが対応付けられているインデックス器具も対象としている。このカラーミキシングガイダンスは、例えば、図5のインデックス器具から得られるものであり、ここでは5−6は、デンタルカラー5および6を1:1の重量比または体積比で混合することによってこの色が得られることを示している。
【0016】
本発明のカラーグレーカードおよび/またはグレーカードは、光の色温度、ホワイトバランス調整を求めるため、および/または光の色かぶりの調整を判定するための基準として、画像加工ソフトウェアに使用される。したがって本発明では、カラーグレーカードまたはグレーカードが、カードである必要はなく、このカラーグレーカードまたはグレーカードが、ホワイトバランス調整および/または色かぶり判定もしくは色かぶりの適合を校正または実行するのに必要になる情報を有していればよい。
【0017】
特に有利であるのは、インデックス器具の各色領域に、有利にはそれぞれ独立して少なくとも1つのコーディングが割り当てられることである。このコーディングを介して歯肉の色を模擬するためのカラーミキシングガイドが提供される。このコーディングまたはコーディングされた色領域には、文字コード、文字および数字からなるコード、数字コード、有利には線によるコード、すなわちバーコード、2次元もしくは3次元バーコードのような記号コードのようなコーディング、ならびに当業者には公知の別のコーディングが含まれる。このコーディングは、色指標と称することも可能である。上記のカラーミキシングガイドは、歯肉復元部の色を実物どおりに形成するために使用される。したがって本発明による歯肉復元部には、有利には少なくとも2〜5000個の赤色色調、特に有利には5〜2000個の異なる赤色色調の、自然の歯肉の赤色色調の色および色の経過の実物どおりの複製が含まれているのである。
【0018】
歯肉インデックス器具とは、歯肉、特に人間の歯肉の領域を、所定の赤色の色領域を用いて製図する、すなわち空間的および幾何学的に検出し、分析し、記録することを可能にする器具のことである。この歯肉インデックス器具により、特に、歯肉状況の複数の赤色色調、それら色の経過および/または形態について、この歯肉状況を再現可能に検出、分析および/または記録することが可能になる。この歯肉インデックス器具により、復元において色を局所的に対応付けることが可能になる。このインデックス器具および本発明による方法により、歯肉の色および歯肉の特性を検出することが可能になる。
【0019】
歯肉インデックス器具は、複数回の使用するためのものでも使い捨てのためのものでもよい。例えばインデックス器具は、複数の色領域を備えたさまざまストライプを有するワークブックであってよい。色物体を備えたキットとすることも考えられ、ここでこの色物体は、器具ないしはピンセットを用いて歯肉の傍に保持することができる。一般に歯肉インデックス器具は、意味さえあれば任意のあらゆる形態を有していてよい。
【0020】
色領域は、少なくとも1つの赤色色調を含む区切られた2次元または3次元領域である。
【0021】
歯肉復元部は、特に歯肉の1つの領域に対する欠損したガム部位、欠損した歯肉ないしは欠損した歯肉部位の複製である。歯肉復元部は有利には、義歯による補綴的な処置の一部であってもよい。
【0022】
分類された色物体は、少なくとも1つのコーディングされた色領域を備えた色物体、特に3次元色物体である。全体的に分類された複数の色物体を有する歯肉インデックス器具は、例えば分かれた複数の区画を備えたボックスであってよく、これらの区画では、複数の区画のそれぞれに、分類された1つずつのタイプの色物体が複数個設けられている。分類されたこれらの色物体は、有利には1回の使用のために設けられている。
【0023】
本発明は、1〜5000個の色領域を含むインデックス器具も対象としており、各色領域は互いに独立して、互いに異なる所定の赤色色調を有する。特に2〜2000個の色領域、有利には2〜100個の色領域を含み、好適には5〜100個の色領域を備え、特に好適には10〜100個の色領域を備え、さらに好適には6〜15個または21個の色領域があり、特に少なくとも1つの色調を備え、有利には各色領域に、別の複数の色領域の赤色色調とは異なる1つの赤色色調が含まれる。特に有利には1つの色領域に、歯肉の1つの領域の複数の赤色色調の一般的な色経過が含まれる。
【0024】
有利な択一的実施形態によれば、インデックス器具には、それぞれ色付きの物体である少なくとも1つの色領域、特に少なくとも2〜2000個の色領域が含まれている。各色領域は、有利にはそれぞれ独立した色付きの物体であり、好適にはこの色付きの物体は、インデックス器具から取り外し可能である。色付きの物体には、ポリマ、セラミック材料、複合材料、ガラスまたはハイブリッド材料が含まれ得る。
【0025】
さらに、複数の色領域が、所定の配置構成でインデックス器具に互いに位置決めされると有利である。本発明においてインデックス器具には複数の色領域が含まれており、これらの色領域は、固定に接続されているかまたは取り外し可能、切り取り可能等々で上記の器具上、器具内に、器具に付着して接続されているかまたはこれに被着されている。この際にはこのインデックス器具のこれらの色領域が、明るい赤色色調から暗い赤色色調まで、および/または、黄色成分を有する赤から、青色成分を有する赤までに配置されると有利である。有利な色の経過には、コダックカラースケール、RGBモデル、CMYKモデル、パントーン、HKSファン、RAL表色系、または赤色色調もしくは赤色の色あいを含む当業者には公知の別の表色系が含まれる。
【0026】
有利なインデックス器具は、それぞれ色付きの物体でありかつ有利には1つの要素上に配置される複数の色領域を有する。要素としては、例えば面積要素、縦長の3次元立体、ロッド、チューブ、シート、器具、3次元要素のようなあらゆる2次元または3次元要素が適している。上記の面積要素は有利には、フレキシブルな材料または硬質材料から形成することができる。これらの色領域、特に色付き物体は有利には、取り外しまたは切り離し可能に上記の要素に取り付けられる。上記のような要素は有利には、例えば切断可能、引きちぎり可能、引き離し可能等々のように分離可能である。上記の色領域または要素は、分析を容易にするため、歯肉に貼り付けることも可能である。したがって本発明には接着可能な色領域または要素も含まれる。
【0027】
有利な面積要素は、三角形、四角形、ストライプ型、正方形、円形、楕円形の要素であってよい。同様に要素は、五角形、六角形、七角形、八角形などのような多角形であってよく、この要素に配置される少なくとも1つの色領域を有し、ここでは種々異なる色領域が、種々異なる要素上または1つの要素上に配置される。
【0028】
同様に上記の色付きの要素、特に立体は、例えば、多面体、卵形状、ロッド状、球体面の一部分のような任意の3次元形状を有してよいが、これらに限定されない。
【0029】
特に有利な実施異形態によれば、
a) 色領域、特に色付き物体は、実質的に三角形の面積要素上に配置されており、赤色色調の色の経過は、この三角形の辺に沿って黄成分を有する赤(黄色味を帯びた赤)から青成分を有する味(青色味を帯びた赤)に変化し、および/または、明るい赤色色調から暗い赤色色調に変化し、特に上記の青色味を帯びた赤色色調および暗い赤色色調は、1つの色領域の複数の色調として表され、または、
b) 上記のインデックス器具は、取り外し可能な色物体、分離可能な色物体、またはそれぞれ少なくとも1つの色物体を備えた複数の取り外し可能な支持部、支持部毎に少なくとも1つの色領域を備えた複数の取り外し可能な支持部、少なくとも1つの色領域を備えた分離可能な複数の領域、または少なくとも1つの色物体を備えた分離可能な複数の領域を含む面積要素、特に正方形または矩形の面積要素であり、上記の支持部または領域は有利には、面積要素の孔開けにより、特にそれぞれ少なくとも1つの色物体を備えた切り離し可能なストライプ、またはそれぞれ少なくとも1つの色領域を備えた切り離し可能なストライプによって形成され、この面積要素は有利には分離可能であり、または、
c) 上記のインデックス器具は、キットの一部分であり、これは色物体、特に分類された色物体、特にそれぞれの赤色色調が黄色から青色への、また明るい赤から暗い赤への色合いを有する色物体を有しており、この色物体は、要素上または要素に取り付け可能であり、特にこれらの色物体にそれぞれ少なくとも1つのコーディングが対応付けられている。有利にはこのコーディングを色物体に取り付けることができる。c)による色物体は、例えば歯科技術器具に装着可能であり、例えば器具を色物体に押し付けてこの色物体を突き刺すか、またはこの色物体をピンセットで歯肉に止めることができる。分離可能であるとはここでは、遊離させる、引きちぎるなどのことであると理解することができる。択一的には上記の色領域または色物体を再度貼り付けることができる。
【0030】
択一的な実施形態によれば、上記のインデックス器具は、1回だけ使用されるインデックス器具である。この器具は有利には生分解性である。
【0031】
本発明は同様に、歯肉インデックス器具および書き込み可能な歯肉テンプレートを含むキットを対象としている。書き込み可能な歯肉テンプレートとは、図9a、bおよび図10a、bに対応するテンプレートのことと理解することができる。図10a、bには、書き込まれた歯肉テンプレートが示されている。択一的にはこの書き込み可能な歯肉テンプレートは、歯肉状況または歯の3次元モデルまたはこれらのモデルの一部分であってもよい。書き込み可能な歯肉テンプレートとはまた、歯肉の仮想的なモチーフのことであると理解することができ、このモチーフは、ソフトウェアにおいて表され、このモチーフに上記のコーディングを埋め込むことができる。歯肉テンプレートは2次元または3次元の仮想モデルとすることも可能である。
【0032】
上記のキットの対象は、歯肉復元部を作製するための軟質性維持歯科材料、複合材料またはセラミック製の歯科材料であってもよい。
【0033】
本発明は同様に、歯肉状況を検出する方法および特に歯肉復元部を作製する方法を対象としており、ここでこれは、
A) 歯肉状況、特に残存している歯肉の少なくとも1つの領域の分析を、その複数の赤色色調、これらの赤色色調の位置および/またはこれらの赤色色調の色の経過、およびオプションでは、特に歯の状況を考慮した幾何学形状、および/または形態について、デジタルで行い、
B) 歯肉情報を取得し、特に歯肉マップの形態で歯肉情報を取得し、有利には歯肉状況の上記の分析を、少なくとも2、3、4、5、6、7から2000個の色調について行い、特にデジタルの歯肉情報を取得し、有利にはこれらの歯肉情報をデジタルデータセットとして、有利には第1デジタルデータセットとして取得し、
C) 歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルをオプションで作製し、すなわち、欠損した歯肉部位の複製物を作製し、特に歯肉復元部、特に欠損した歯肉部位を作製することによって行われる。
【0034】
特に仮想歯肉復元部または実歯肉復元部を作製するために歯肉状況を検出する方法であって、ここでこれは、
A) 歯肉状況の少なくとも1つの領域の分析を、その複数の赤色色調、これらの赤色色調の位置および/またはこれらの赤色色調の色の経過およびオプションでは幾何学形状および/または形態についてデジタルで行い、
a.1) 歯肉状況の少なくとも1つの領域を、カラーグレーカードまたはグレーカードと共に、およびオプションではインデックス器具の少なくとも1つの赤色色調と共に検出し、特にこの検出を、カラーグレーカードまたはグレーカードと共に写真撮影またはスキャンニングすることによって行い、
a.2) デジタルの歯肉情報をデジタルデータセットとして、特に第1デジタルデータセットとして取得し、オプションではこのデータセットを供給、記憶および/または送信し、
a.3) 特に画像加工ソフトウェアのようなソフトウェアを用いて、上記のデジタルデータセットにおいてホワイトバランス調整および/または色かぶり調整を行い、色調整したデジタルデータセット(校正したデータセット)を取得し、
a.4) 色調および/または色の経過について上記のデータセットを分析し、
B) 歯肉情報を取得し、さらにオプションで、
b.1) 既成の、特にコーディングされたデンタルカラーおよび/またはデンタルカラーのカラーミキシングガイドに歯肉情報を対応付け、および/または
b.2) 歯肉復元部の仮想歯肉モデルまたは実歯肉モデルの幾何学形状を用いて上記のデジタルデータセットを作成し、オプションでは、歯肉情報および任意選択的には歯の状況および/または顔面部位を有する色調整したデジタルデータセットを使用し、さらにオプションとして、
C) 歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデル、すなわち欠損した歯肉部位の複製を作製する、ことによって行われる。
【0035】
歯肉復元部の作製、ここではステップa.3、b.1およびb.2の順序は上記とは異なってよく、例えば、ステップb.2、a.3、a.4、b.1の順序で、または意味のあるあらゆる任意の順序で行うことができる。ステップa.1、a.2、a.4および/またはa.3の前にまず、仮想歯肉モデルまたは実歯肉モデルの幾何学形状を含むデータを準備するステップb.2を実行することも理にかなっていることがあり、これによって色調整されたデータセットb.2が、ステップの前に幾何学的なデータb.2に付け加えられる。
【0036】
ここでは有利には、検出した複数の赤色色調、複数の赤色色調の複数の位置、および複数の赤色色調の相互の位置、歯肉の幾何学形状が、またa)において取得した歯肉情報に基づくこの歯肉状況の異なる少なくとも2つの領域における、歯の状況および/または歯肉、特に残存している歯肉の形態も、歯肉復元部の作製に使用される、および/または、伝送される。
【0037】
これらの歯肉情報は、例えば歯の状況の複製、歯の状況の石膏モデルまたは書き込み可能な歯肉テンプレートに転用される。
【0038】
好適には少なくとも2〜5000個の赤色色調、特に5〜30個の赤色色調(色調)、特に好適には少なくとも10〜25個の赤色色調が検出され、および有利には歯間乳頭(Papilla interdentalis)が検出される。
【0039】
歯肉情報は有利には、50dpi、有利には150dpi、特に300dpi以上の解像度で、好適には600dpi(インチ当たりの画素数)以上の解像度から1200dpi以上までの、またはそれ以上の高い解像度の良好な解像度で取得することが可能である。歯肉情報は有利には、付加的または択一的に100μm以下、特に50μm以下、特に有利には30μm以下から、20μm以下までの精細度で検出して有利には再現することが可能である。
【0040】
歯の間の三角形の歯肉は、「歯間乳頭」(Papilla interdentalis)と称され、歯肉と、ずらすことが可能な暗い赤色の口腔粘膜との間の境界線は、歯肉歯槽粘膜線または歯肉歯槽粘膜境と称される。これらの領域は有利には、特に詳細に分析され、対応する歯肉情報が記録される。
【0041】
本発明はさらに1つの方法を対象としており、この方法では、A)分析がデジタルに行われ、ここでこの分析は、
− 歯肉状況、特に残存している歯肉の少なくとも1つの領域を、またオプションでは顔面部位を2次元または3次元でデジタルに検出し、特に上記の領域を有利には校正のためにカラーグレーカードおよび/またはグレーカードと共にスキャンまたは写真撮影し、デジタルの歯肉情報を、デジタルデータセットとして、特に第1デジタルデータセットとして取得し、有利には色情報およびオプションでは付加的に3次元情報を取得することによって行われ、または
− 歯肉状況および歯の状況の少なくとも1つの領域の、オプションでは顔面部位の領域の、およびインデックス器具の赤色色調を有する色領域の少なくとも1つの部分の2次元または3次元の検出を行い、ここではこの検出を、校正のためのカラーグレーカードおよび/またはグレーカードの少なくとも一部分の検出と共に行い、デジタルの歯肉情報を、デジタルデータセットとして、特に第1デジタルデータセットとして取得する、ことによって行われる。
【0042】
択一的には、歯肉状況および歯の状況の領域、赤色の色領域、オプションの顔面部位の少なくとも1つの検出が、カラーグレーカードおよび/グレーカードの少なくとも一部分と共に行われ、特にこの検出はスキャンまたは写真撮影によって行われ、デジタルの歯肉情報がデジタルデータセットとして取得される。
【0043】
有利には口腔内スキャンを用いてまたは写真撮影を用いて2次元または3次元の検出が行われる。この択一的な実施形態によれば、インデックス器具の色領域が、歯肉に保持され、上記の対応付けが写真または口腔内スキャンによって検出される1つの方法が含まれている。データセットにおいて色調を後で校正するため、カラーまたはグレーカードが一緒に検出される。
【0044】
このようにして取得されたデジタルデータはつぎに、歯肉復元部を作製するため、歯科医から歯科技工士に容易に伝送することが可能である。本発明によるこの方法の特別な利点は、歯肉復元部の仮想モデルを作成し、実歯肉モデルまたは歯肉復元部を作成する前に歯科医および患者に伝達できることである。これにより、歯科医および患者と早期に審美性を調整することが可能である。
【0045】
特にデジタルデータセットである検出した歯肉情報の分析は、手動または自動の分析と、インデックス器具または書き込み可能な歯肉テンプレートの色領域への対応付けとによって行われる。
【0046】
本発明は同様に1つの方法を対象としており、この方法ではA)分析がデジタルで行われ、この方法は、
1) 歯肉状況の少なくとも1つの領域を、およびオプションでは顔面部位の領域を、校正のためのカラーグレーカードおよび/またはグレーカードを使用して検出し、歯肉の領域をカードと共に2次元または3次元的にデジタルで検出することによって行われ、ここでこの検出は、上記の領域および上記のカードの少なくとも一部分をスキャンするかまたは写真撮影することによって行われ、デジタルの歯肉情報をデジタルデータセットとして取得する、ことによって行われ、
2) 歯肉の少なくとも1つの領域を、オプションでは歯の状況を、およびオプションでは顔面部位の領域を、およびインデックス器具の赤色色調を有する少なくとも1つの色領域を検出し、ここではこの検出を、校正のためのカラーグレーカードおよび/またはグレーカードの少なくとも一部分の検出と共に行い、特にこの検出をスキャニングまたは写真撮影によって行い、デジタルの歯肉情報をデジタルデータセットとして取得する、ことによって行われる。
【0047】
択一的には印象材または歯肉のモデルをデジタルで3次元的に検出することも可能であり、幾何学データを有するデジタルデータセットが取得される。引き続き、このデータセットに上記のデジタル歯肉情報を付与することができる。
【0048】
上記のデジタルデータは、仮想の歯肉復元部のモデルを作製するため、記憶し、伝送および変更することが可能である。
【0049】
択一的または付加的には上記の分析(ii)を手動で行うことができ、ここでの分析は、3)歯肉の少なくとも1つの領域の2次元または3次元的な検出を手動で行うことにより、または歯肉の領域および歯の状況の少なくとも1つの検出、または歯肉の領域およびインデックス器具の色領域の少なくとも1つの検出、または歯肉の領域および歯の状況および色領域の少なくとも1つの検出を行うことによって行われ、手動の歯肉情報が取得される。この変形実施形態によれば、インデックス器具を用いて求めた歯肉情報を、文字によるメモとして、例えば歯肉テンプレートに記入することができる。
【0050】
同様に本発明が対象とするのは1つの方法であり、ここでは、歯肉がつぎのようにして分析され、すなわち、
a) この分析は、インデックス器具を使用して手動で行われ、ここでは歯肉を、インデックス器具と共に色調および/または色の経過について検査し、特に前歯領域(anterior)および/または側方の歯領域(posterior)の歯肉の領域において、特に下顎および/また上顎において、色調および/または色の経過を検査し、特に有利には歯肉を、(i)サルカス領域においてクレスタルに、乳頭の色の経過について分析し、付加的または選択的には(ii)歯肉の幾何学形状を分析し、特にクレスタルの状況、歯の幅、顎堤(alveolar ridge)、乳頭の位置、および/または、歯頸の見え方のような歯の状況について分析し、および/または、(iii)歯肉の形態を分析し、歯肉情報を、特に手動による歯肉情報として取得する、ことによって分析される。
【0051】
上記の分析(i)がソフトウェアを使用してデジタルに行われる方法が有利であり、ここでは、ソフトウェアを用いて、カラーグレーカードまたはグレーカードに関連した色かぶりの調整、例えば色かぶりの判定、および/またはホワイトバランス調整が、上記のデジタルの歯肉情報のデジタルデータセットにおいて行われ、色調整したデジタルデータセットが取得される。
【0052】
このデータセットは、校正されたデータセットである。歯肉の、またオプションでは歯の状況の上記の色調整したデジタルデータセットは、カーソルによって手動でまたは自動で、色調および/色の経過について分析され、特に有利には歯肉が、(i)サルカス領域においてクレスタルに乳頭の色の経過について分析され、付加的または選択には(ii)歯肉の幾何学形状が、特にクレスタルの状況、歯の幅、顎堤(alveolar ridge)、乳頭の位置および/または歯頸の見え方のような歯の状況について分析され、および/または、(iii)歯肉の形態が分析される。ここでは歯肉情報が取得され、オプションでは複数の歯肉情報および/または歯肉領域に、それぞれ独立して、1つ以上の所定かつ既成のデンタルカラー、特にコーディングされたカラー、および/またはデンタルカラーの1つ以上のカラーミキシングガイドが対応付けられ、特にこれらのカラーミキシングガイドから、手動または自動でデンタルカラー、またはデンタルカラーのカラーミキシングガイドを選択することができる。
【0053】
本発明によれば、有利には歯肉をデジタルで、またオプションでは手動で分析する。すなわち、
b) ソフトウェアを使用してデジタルまたオプションでは手動で分析し、ここでこの分析は、ソフトウェアを用いて、歯肉状況を、またオプションでは歯の状況を、複数の色調および/または色の経過について検査し、特に前歯領域(anterior)および/または側方の領域(posterior)の歯肉の領域において、特に下顎および/または上顎において、色調および/または色の経過を検査し、特に有利には、歯肉を、(i)サルカス領域においてクレスタルに、乳頭の色の経過について分析し、付加的または択一的には、(ii)歯肉の幾何学形状を分析し、特にクレスタルの状況、歯の幅、顎堤(alveolar ridge)、乳頭の位置、および/または、歯頸の見え方のような歯の状況について分析し、および/または、(iii)歯肉の形態を分析し、歯肉情報を、特に手動の歯肉情報として取得する、ことによって行われる。歯肉情報は有利には、有利にはソフトウェアを使用することによって自動的に、仮想の歯肉テンプレートに伝送される。
【0054】
歯肉情報は特に有利には、歯肉マップの形態で、特にデジタルデータセットとして取得される。有利にはこれらの歯肉情報から、歯肉後退および/または顎萎縮の調整を考慮して、歯肉復元部の仮想モデルおよび/または実モデルが作成される。特に有利には歯肉マップは、殊に歯肉のモチーフを有し、対応する所定かつ既成のコーディングされたデンタルカラー、またはデンタルカラーに対するカラーミキシングガイドを有する。デンタルカラーとは、歯肉復元部を作製するためのデンタルカラーの調合物のことである。
【0055】
特に有利な択一的実施形態によれば、上記のデジタルデータセットのデジタル歯肉情報は、a)デジタルにコーディングされた色領域に対応付けられ、またはb)インデックス器具の手動で、コーディングされた色領域に対応付けられ、それぞれ独立して、上記のコーディング、またはコーディングされた色領域にカラーミキシングガイダンスが対応付けられる。このカラーミキシングガイダンスを介し、歯肉復元部に歯肉の実物どおりの色を再現することができる。
【0056】
仮想歯肉復元部または実歯肉復元部を作製する方法も同様に本発明の対象であり、この方法では、(i)仮想歯肉モデルまたは実歯肉モデルを形成する前のステップにおいて、特に校正のためのカラーグレーカードおよび/グレーカードの検出と共に、歯肉状況、およびオプションの歯の状況および/または顔面部位の領域の第1仮想モデルのデジタル情報を含む第1のデジタルデータセットを作成し、オプションではインデックス器具の赤色色調を備えた少なくとも1つの色領域を作成する。ここでは有利には口腔内スキャン、または例えばスマートフォンによる少なくとも1つの個別の写真が用いられる。上記の第1デジタルデータセットは有利には、デジタルの歯肉情報を有するデータセットである。
【0057】
択一的にはシリコーン型の3次元スキャンまたは実モデル、特に石膏モデルの3次元スキャンを行うことができ、デジタルの歯肉情報(歯肉の色情報)を補うことができる。
【0058】
オプションでは、(i.0)各データセットが供給、記憶、送信される。さらにこの方法は以下のステップを含み得る。
(i.1)ホワイトバランス調整および/または色かぶりの調整を実行して、色調整したデジタルデータセットを取得し、オプションで(i.2)この色調整したデータセットを色調および/または色の経過について分析して歯肉情報を取得し、オプションで(i.3)、既成の、特にコーディングされたデンタルカラーおよび/またはデンタルカラーのカラーミキシングガイドに対応付け、
オプションでは、(ii)つぎのステップにおいて、歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルの幾何学形状を有するデジタルデータセットを作成し、オプションでは、上記の色調整したデジタルデータセットを使用し、または色調整したデータセットからの情報を含め、
(iii)オプションでは、歯肉復元部を作製する。有利には歯肉後退、顎萎縮および上述の赤色の色の経過ならびにオプションで形態を調整して、歯肉復元部を作製する。ここでは、まず(ii)を、つぎに(i.1〜i.3)を実行することにより、(i.1〜i.3)と(ii)の順序を逆にすることが可能である。
【0059】
上記の作製は有利には、所定かつ既成のコーディングされた色を使用して、および/または、カラーミキシングガイドを使用して、または歯肉マップを使用して、特に所定かつ既成のコーディングされた色またはカラーミキシングガイドを使用して行うことができる。
【0060】
本発明の別の対象は、歯肉復元部を作製する方法およびこの方法によって得られる歯肉復元部であり、ここでは、歯肉状況の検出は、本発明による上記の方法にしたがって行われ、歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルの作製はつぎのようにして行われる。すなわち、歯肉復元部を作製するため、得られた歯肉情報に基づき、歯肉の少なくとも2つの異なる領域における複数の赤色色調、これらの赤色色調の位置、歯肉の幾何学形状および/または歯肉の形態を使用するないしは転用することによって行われる。
【0061】
歯肉復元部を作製するため、検出した歯肉状況の歯肉情報を使用し、歯肉後退および/または顎後退を考慮および調整し、および審美的な観点の下に、歯肉復元部の仮想モデルまたは実モデルを模造および/または作成することが可能である。この仮想モデルは有利には、作製の前に患者と調整することができる。この仮想モデルは有利には歯肉状況に重畳され、これを患者に説明することが可能である。
【0062】
本発明は、本発明の上記の方法によって得られる歯肉復元部も対象としている。有利な歯肉復元部は、軟質性維持歯科材料、複合材料またはセラミック製の歯科材料から作製される。
【0063】
上記の歯肉復元部は、例えば独国特許公開第102012012346号明細書の開示内容に対応する方法にしたがって作製することができ、ここでは印刷プロセス中、歯肉の色調がカラーミキシングガイドに対応して調整される。
【0064】
本発明は、デジタルデータセットも対象としており、このデータセットは、本発明による上記の方法にしたがって得られかつ特にデータ担体上に記憶される。
【0065】
さらに本発明は、本発明の上記の方法にしたがって得られるデジタルデータセットを処理するソフトウェアを対象としており、このソフトウェアは、特にデータ担体のようなコンピュータ読出可能媒体上またはコンピュータ上にあり、ここでこのコンピュータは、特に歯肉情報を含むデジタルデータセットを処理し、有利には歯肉の少なくとも1つの領域、特に歯肉状況を、複数の赤色色調、これらの赤色色調の位置、これらの赤色色調の色の経過、幾何学形状および/または形態について分析し、歯肉情報を供給し、オプションでは、コーディングされた色領域を対応付け、および/または歯肉復元部のデジタルデータセットを形成する。ただし上記のコーディングにはカラーミキシングガイドが対応付けられている。
【0066】
上記のソフトウェアによって有利には、デジタルに利用可能になった、歯肉の、特に残存している歯肉の少なくとも1つの領域ないしは歯肉状況のデータの分析が、複数の赤色色調、これらの赤色色調の位置、これらの赤色色調の色の経過、色あい、幾何学形状、歯の状況および/または形態について可能になり、歯肉情報を有利にはデジタルデータセットとして提供することが可能である。オプションでは、上記のソフトウェアにより、歯肉状況の種々異なる領域を、コーディングされた複数の色領域に対応付けることが可能になり、このコーディングには、カラーミキシングが対応付けられる。
【0067】
択一的または付加的には上記のソフトウェアにより、仮想歯肉復元部のデジタルデータセットを計算することができ、または歯肉復元部の仮想モデルが提案される。
【0068】
上記のソフトウェアは、アプリケーション(アプリ、モバイルアプリ)の形態で、コンピュータ上、特にモバイルコンピュータ上、殊にスマートフォン、デジタルカメラ、またはありとあらゆる適切な別の任意の電子装置上に提供することが可能である。
【0069】
歯肉復元部を実物どおりに複製して作製するためには、これを、上記のデジタルデータセットを介し、フライス加工によって物体から、また引き続いて、ラピッドプロトタイピングを用いて、特に光硬化造形法を用いて層毎に、モノマおよび/またはプレポリマの硬化可能な化合物から、有利には光硬化可能な化合物から、着色された歯肉をプリントすることによって作製することができる。同様にステレオリソグラフィ、DLP法または3Dプリント法も使用可能である。択一的には赤色の審美性を複製するため、歯肉情報を考慮して従来通りに歯肉復元部を手で作製することが可能である。
【0070】
以下の複数の図に基づき、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの例には限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】歯肉状況を確認するために分析すべき領域の一部を示す図である。
図2】歯肉状況を確認するために分析すべき領域の別の一部を示す図である。
図3】歯肉欠損を有する歯肉状況を示す図である。
図4】歯肉復元部を有する口腔部位を示す図である。
図5】要素の形態の、特に複数の色領域2を備えた面積要素1の形態の歯肉インデックス器具0を示す図である。
図6】歯肉インデックス器具0を示す別の図である。
図7】歯肉インデックス器具0を示すさらに別の図である。
図8】複数の赤色色調およびこれらの色の経過を検出する、考えられ得る状況を示す図である。
図9】書き込み可能な歯肉テンプレートを示す図である。
図10】書き込み可能な歯肉テンプレートを示す別の図である。
図11】歯肉状況の検出から歯肉復元部を作製するまでの本発明による方法の流れを示す図である。
図12】カラーグレーカードまたはグレーカードを使用する本発明の方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
図1および図2には、歯肉状況を確認するために、分析すべき領域の一部が示されている。図3には歯肉欠損7を有する歯肉状況が示されているのに対し、図4には歯肉復元部を有する口腔部位が示されている。図5図6および図7には、要素の形態の、特に複数の色領域2を備えた面積要素1の形態の歯肉インデックス器具0が示されており、これらの色領域2は、この択一的な実施形態において、所定の赤色色調を備えた色付きの物体として構成されている。色領域2は、コーディング3されており、このコーディングにはカラーミキシングガイダンスが(手動またはデジタルで)対応付けられるため、検出した色領域およびそのコーディングを介して、種々異なる歯肉赤色色調、それらの色の経過、形態および幾何学形状を実物どおりに模擬することができる。この模擬は、プラスチック、充填されるプラスチック、エラストマ状のプラスチック、セラミックまたは複合物の印刷、混合などによって行うことができる。図7にはインデックス器具が示されており、また器具を裁断することによって色領域を分離できることが示されている。図示のインデックス器具は、使い捨てインデックス器具である。
【0073】
図8には、複数の赤色色調およびそれら色の経過を検出する、考えられ得る状況が示されており、ここでこの検出は、インデックス器具に基づいて歯肉を分析することによって行われ、個々の色領域は、歯肉の所定の位置に対応付けられることによって行われる。つぎに、分析しかつ対応付けられた色領域をその位置について、図9および図10の書き込み可能な歯肉テンプレートに転写することができる。図10には、複数の赤色色調および色の経過の歯肉のマッピング、すなわち複数の歯肉情報が書き込まれた歯肉テンプレートが示されており、この歯肉テンプレートは、本発明による方法によって求められたものである。択一的には図8による分析を、写真撮影または口腔内スキャンのようなデジタル式の方法を用いて求めることも可能である。最も簡単に実現可能な例は、スマートフォン、iPodまたは類似の装置の写真機能または撮影機能によって、歯肉状態または歯肉状態およびインデックス器具を検出することである。データの記憶および転送は、例えばftp、eメール、記憶媒体のような公知の仕方で行うことが可能である。第1デジタルデータセットの取得したデータは、上述のようにさらに加工することができる。図11および図12には、歯肉状況の検出から歯肉復元部を作製するまでの本発明による方法の考えられ得る方法の流れが示されている。図12には、カラーグレーカードまたはグレーカードを使用する本発明の方法が示されている。
【符号の説明】
【0074】
A 歯肉−歯列弓の幅
B 歯肉−歯列弓の高さ
C 歯の間の輪郭、歯乳頭の高さおよび位置
D 残根が見える量
E 黒色の三角形
F 形態
0 歯肉インデックス器具
1 要素、特に面積要素
2 色領域、特に色物体
3 コーディング、コーディングされた色領域
4 書き込み可能な歯肉テンプレート
4.1 上顎前歯領域の書き込み可能な歯肉テンプレート
4.2 下顎前歯領域の書き込み可能な歯肉テンプレート
4.3 上顎側方歯領域の書き込み可能な歯肉テンプレート
4.4 下顎側方歯領域の書き込み可能な歯肉テンプレート
5 転写した色領域
6 歯肉復元部(図3
7 歯肉状況(歯肉欠損、歯肉後退、歯肉部位の欠損)(図4
8 インデックス器具のベースおよび/またはカラーグレーカードおよび/またはグレーカード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a)】
図9b)】
図10a)】
図10b)】
図11
図12
【国際調査報告】