(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512053(P2017-512053A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】飲料粉末
(51)【国際特許分類】
A23L 2/39 20060101AFI20170414BHJP
A23F 5/36 20060101ALI20170414BHJP
A23G 1/00 20060101ALI20170414BHJP
A23G 1/30 20060101ALI20170414BHJP
A23C 13/00 20060101ALI20170414BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20170414BHJP
A23F 3/30 20060101ALI20170414BHJP
A47J 31/40 20060101ALI20170414BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20170414BHJP
【FI】
A23L2/00 Q
A23F5/36
A23G1/00
A23C13/00
A23C9/00
A23F3/30
A47J31/40 107
A47J31/06 210
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-549333(P2016-549333)
(86)(22)【出願日】2015年1月29日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月2日
(86)【国際出願番号】IB2015000116
(87)【国際公開番号】WO2015128710
(87)【国際公開日】20150903
(31)【優先権主張番号】1403345.0
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】512164779
【氏名又は名称】コーニンクラケ ダウ エグバート ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スレマンジ, ナワズ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B027
4B104
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC20
4B001BC08
4B001CC01
4B001EC09
4B014GB05
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4B117LK18
4B117LP17
4B117LT05
(57)【要約】
本発明は、発泡性飲料粉末を調製する方法に関し、本方法は、多孔質飲料粉末を提供することと、ガス含有雰囲気中において、多孔質飲料粉末をそのガラス転移温度より低い温度に加熱することと、ガス含有雰囲気の圧力を増加させ、それによって、多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より高い温度に上昇させることと、次いで、ガス含有雰囲気の圧力を減少させ、それによって、多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より低い温度に低下させることとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性飲料粉末を調製する方法であって、前記方法は、
多孔質飲料粉末を提供することと、
ガス含有雰囲気中において、前記多孔質飲料粉末をそのガラス転移温度より低い温度に加熱することと、
前記ガス含有雰囲気の圧力を増加させ、それによって、前記多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より高い温度に上昇させることと、
次いで、前記ガス含有雰囲気の圧力を減少させ、それによって、前記多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より低い温度に低下させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記多孔質飲料粉末は、可溶性コーヒー粉末、ホットチョコレート粉末、マルトデキストリン粉末、粉茶、クリーム粉末、および粉乳から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質飲料粉末は、噴霧乾燥されたコーヒー粉末である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス含有雰囲気中において、前記多孔質飲料粉末をそのガラス転移温度より低い温度に加熱することは、前記粉末の温度をそのガラス転移温度の20℃以内、好ましくは、10℃以内に上昇させる、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ガス含有雰囲気は、空気、窒素、および二酸化炭素のうちの1つ以上のものから選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記ガス含有雰囲気において、前記多孔質粉末を10〜100バールの圧力に事前加圧するステップをさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、チャンバ内で実行され、前記ガス含有雰囲気の圧力は、前記チャンバ内のガスの量を増加させることによって、および/または前記チャンバの容積を減少させることによって増加させられる、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記圧力は、1〜100バール、好ましくは、10〜50バールだけ増加させられる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記圧力は、10秒〜10分の間、増加させられた圧力において保持される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記多孔質飲料粉末は、1分後、少なくとも2mlの発泡レベルを提供する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、フリーフロー剤の使用なしに実行される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記発泡性飲料粉末を室温まで冷却し、それを包装するステップをさらに含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法によって得ることが可能である発泡性飲料粉末。
【請求項14】
飲料を調製する方法であって、前記方法は、請求項12に記載の発泡性飲料粉末、または請求項1−11のいずれかに記載の方法に従って生産された発泡性飲料粉末を水性媒体と接触させることを含む、方法。
【請求項15】
飲料を調製するためのカプセルであって、前記カプセルは、水性飲料媒体のための入口と、飲料のための出口と、前記入口と前記出口との間の流路とを備え、前記カプセルは、請求項13に記載の発泡性飲料粉末、または請求項1−12のいずれかに記載の方法に従って生産された発泡性飲料粉末を前記流路内にさらに含むカプセル。
【請求項16】
請求項14に記載の飲料を調製するための飲料調製システムであって、前記システムは、請求項15に記載のカプセルに水性飲料媒体を提供する手段を備えているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡性飲料粉末を生産する方法に関する。特に、本開示は、再構成されると飲料において多くの芳醇な風味と豊かな気泡とを有するインスタントコーヒー粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタント飲料原料は、消費者の好きなときに、即座の飲料の再構成が可能であるため、それらは、消費者に人気である。そのような原料の中でも、インスタントコーヒー粉末の生産が周知である。これらは、コーヒー豆から調製されたばかりの飲料の体験を模倣することを目標としている。しかしながら、再構成された飲料が、作りたての製品に匹敵することに失敗し得る、いくつかの状況が存在する。
【0003】
そのような製品は、多くの場合、調製されたばかりの抽出物の真正の風味を欠く。噴霧乾燥および凍結乾燥の両方のインスタントコーヒー製品が最近ではいくつも存在し、少量の焙煎し挽いた(時として、「マイクログラインド」と称される)コーヒーを含む液体コーヒー抽出物から形成される。この焙煎し挽いたコーヒーを含むことは、さらなる風味の深さを提供することが見出されている。実際、挽いていない豆をマイクログラインドしたものを含む可溶性コーヒー飲料は、向上した口当たり等の向上した感覚刺激特性を消費者に提供し、より「正当なコーヒー」に関連し、すなわち、焙煎し挽いたものを煎じたばかりのようであると、市場において肯定的に受け取られている。
【0004】
可溶性コーヒー製品はまた、真正の表面気泡を欠き得る。これに対処するために、コーヒーの孔の中に閉じ込められたガスを含む製品もまた、いくつか存在する。コーヒー粉末を再構成すると、閉じ込められたガスは、飲料の上面にクレマ(crema)または気泡を提供する。これは、生産される飲料の外観および口当たりを向上させる。そのようなコーヒーの中に気泡を導入するためのいくつかのアプローチが、存在する。第EP2194795号(特許文献1)は、噴霧乾燥されたコーヒーに閉じ込められたガスをもたらすために、噴霧乾燥の前の液体コーヒー抽出物の中にガスを注入する方法を開示する。第US7534461号(特許文献2)は、コーヒーの孔の中にガスを閉じ込めるために、密封され、事前加圧された容器内で多孔質コーヒー粉末を加熱する方法を開示する。これらの文書の両方が、参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0005】
第US20060040033号(特許文献3)は、非炭水化物形成組成およびこれを作製する方法を開示する。
【0006】
故に、向上した発泡性飲料粉末を提供し、および/または従来技術に関連付けられる問題の少なくともいくつかに対処し、もしくは、少なくとも、それらに対する商業的に有用な代替物を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2194795号明細書
【特許文献2】米国特許第7534461号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006040033号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の側面では、本開示は、発泡性飲料粉末を調製する方法であって、
多孔質飲料粉末を提供することと、
ガス含有雰囲気中において、多孔質飲料粉末をそのガラス転移温度より低い温度に加熱することと、
ガス含有雰囲気の圧力を増加させ、それによって、多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より高い温度に上昇させることと、
次いで、ガス含有雰囲気の圧力を減少させ、それによって、多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より低い温度に低下させることと
を含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、ここで、さらに説明される。以下の文章において、本発明の異なる側面が、より詳細に定義される。そのように定義される各側面は、そうでないことが明確に示されない限り、任意の他の側面または複数の側面と組み合わせられ得る。特に、好ましいまたは有利なものとして示される任意の特徴は、好ましいまたは有利なものとして示される任意の他の特徴または複数の特徴と組み合わせられ得る。
【0010】
「飲料粉末」とは、飲料または飲料の一部を提供するために、水性飲料媒体を用いて再構成するために好適なインスタント粉末を意味する。つまり、飲料粉末は、最終飲料を単独で提供するために好適な可溶性コーヒー粉末であり得る。一方、本用語はまた、ホットチョコレート配合物の乳成分、カプチーノにおいて使用するためのクリーム等、配合された飲料組成物内に含むために好適な粉末化成分も含む。
【0011】
飲料「粉末」とは、飲料を形成するために好適な顆粒または粉末等、乾燥飲料原料の任意の粒子状形態を意味する。ホットチョコレート飲料ミックス、噴霧乾燥された粉乳、または凍結乾燥されたコーヒー顆粒等、これらの形態において飲料を提供することが周知である。好適な粉末は、10〜1000ミクロン、より好ましくは、100〜500ミクロンの平均最長直径を有するであろう。
【0012】
「発泡性」飲料粉末とは、その表面上に気泡を有する飲料を提供するために、水性飲料媒体を用いて再構成するために好適な飲料粉末(単独または配合物内)を意味する。気泡は、発泡性粉末内に閉じ込められるガスによって生産され、これは、再構成すると解放される。ガスは、大気圧を超える圧力において、閉気孔の少なくともいくつか、より好ましくは、その大部分の中に閉じ込められる。
【0013】
多孔質飲料粉末とは、1つ以上の開気孔または閉気孔を含む拡張構造を有する飲料粉末を意味する。そのような飲料粉末は、当分野において周知である。例えば、(参照することによって本明細書に組み込まれる)第WO2009/059938号において使用される出発材料は全て、本明細書に開示される方法において使用するために好適であろう。好ましい飲料粉末は、少なくとも35%、より好ましくは、少なくとも50%、最も好ましくは、60%〜75%の(水銀ポロシメトリまたはX線トモグラフィを用いて測定されるような)「発泡性」多孔率を有する。
【0014】
発泡性多孔率は、発泡に寄与し、粉末の潜在的な発泡能力を特徴づける多孔性の尺度である。2マイクロメートル未満の開口径を伴う孔もまた、これらの孔における毛細管圧が周囲圧力を上回り、これが気泡形成を可能にし得るため、気泡に寄与し得る。発泡性多孔率は、閉気孔と、2マイクロメートル未満の開口径を有する開気孔とを含むことによって得られる。
【0015】
ガラス液体転移(または略してガラス転移)Tgは、不定形材料における、硬質かつ比較的脆い状態から溶融またはゴム状状態への可逆転移である。Tg値の決定は、飲料産業において周知であり、所与の粉末に対する単純な実験によって容易に決定されることができる。
【0016】
粉末が2つ以上の異なる成分を含む場合、これらは、異なるTg値を有し得る。本明細書に説明される方法は、飲料粉末の1つ以上の成分が、そのTgより高く上昇させられることのみを要求する。このように、それは、存在する任意の他の飲料成分を含むためのマトリクスとしての役割を果たすことができる。
【0017】
(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)第US7534461号に開示されるように、噴霧乾燥されたコーヒー粉末の孔内にガスを閉じ込めることが公知である。これは、粉末を好適なガスを用いて加圧し、次いで、粉末をそのTgより高く加熱することによって達成され得る。このように、ガスは、コーヒー粉末の孔内に閉じ込められた状態になり得る。加圧は、加熱の前に実施され、加熱は、加圧されたコーヒー容器の周囲の加熱されるオイルジャケットを用いて実施される。
【0018】
本発明者は、従来のプロセスに、特に、コーヒーに関していくつかの欠点が存在することを発見している。例えば、方法は、粒子の有意な凝集につながり、故に、フリーフロー剤(二酸化ケイ素等)が、これを軽減するために使用される必要があり得る。さらに、加熱されたオイルジャケットの使用からもたらされるゆっくりとした加熱変化に起因して、コーヒーは、所望されるであろうよりも長い間上昇温度に保持され、これは、凝集だけではなく、コーヒー風味成分(コーヒー芳香成分等)の分解も生じさせる。コーヒーの温度を制御するために、より強力な加熱ユニットが使用されることが可能かどうかが考慮された。しかしながら、このようにバルク量のコーヒーをより迅速に加熱/冷却することは、法外に高価となるであろう。
【0019】
本発明者は、代わりに、プロセスチャンバ内の圧力を変更することによって、飲料粉末バルク全体を通して、温度の迅速な増加および減少を提供することが可能であることを発見している。この温度変化は、急速に成されることができ、チャンバ全体を通して均一に発生する。具体的には、本発明者は、多孔質粉末をそのガラス転移温度(Tg)に接近させるように加熱し、単純に事前決定されたレベルに圧力を増加させることによって、制御された時間の間、バルク粉末の温度をTgより高く、事前決定された温度に上昇させ得ることを見出している。次いで、圧力は、バルク粉末温度における制御された急落を生じさせ、Tgより低くなるように完全または部分的に解放されることができる。
【0020】
上昇温度において要求される時間が減少させられることに起因して、飲料粉末における風味成分の分解が、少なくなることが見出されている。これは、特に、メイラード反応が風味を損ない得る、温度に敏感なインスタントコーヒー調合物および粉乳の場合に当てはまる。さらに、粉末がそのTgより高い時間をさらに減少させながら、ガス閉じ込めのための十分な温度がより長い間保持され得るため、発泡増加が、達成されることができる(
図1Aおよび1B参照)。
【0021】
プロセスは、体積的加熱に依拠し、これは、温度が、増加させられた圧力に起因して、プロセスチャンバ内の増加させられたガス温度を通して増加させられることを意味する(冷却に関しても同様)。故に、本プロセスは、処理チャンバの壁を通した対流および伝導に殆ど依存しない。理論に拘束されるわけではないが、加熱は体積的であり、飲料粉末に均一に加えられるため、応力が低減され、孔がより破壊されにくいため、より大きな体積のガスが閉じ込められ得ると考慮される。結果として、粉末の過度の粘結および凝集もまた、少なくなり得る。加熱が均一でないほど、高温点が形成され得るため、粘結が発生する可能性がより高い。
【0022】
好ましくは、本方法は、粘結防止剤としても知られるフリーフロー剤の使用なしに実行される。これらは、塊の形成を防止し、包装、輸送、および消費を容易にするために、粉末化または顆粒化材料内に置かれる添加物であり、これは、粉末が加熱されるとき、凝集を低減させるために、当分野において周知である。フリーフロー剤および粘結防止剤は、二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、粉末化セルロース、ステアリン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、フェロシアン化ナトリウム、フェロシアン化カリウム、フェロシアン化カルシウム、骨質リン酸塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム、三ケイ酸マグネシウム、タルカムパウダー、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウムカリウム、アルミノケイ酸カルシウム、ベントナイト、ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ポリジメチルシロキサンを含む。
【0023】
有利には、本明細書に説明されるプロセスは、したがって、追加の原料の必要性なく、より単純で、より複雑でない方法によって実行されることができる。さらに、任意のフリーフロー剤の添加の必要性がないため、製品をコーヒーと称することに関して、いかなる規制上の問題もない(すなわち、いかなる添加物も要求されない)。
【0024】
飲料粉末は、多孔質構造を有する任意の炭水化物および/またはタンパク質組成物であり、その孔内に加圧されたガスを閉じ込めることが可能であり得る。しかしながら、有利には、本方法は、最も標準的な飲料原料に適用されることができ、そのため、ガスを閉じ込めるために、粉末内に任意の追加のマトリクスが存在する必要がない。好ましくは、多孔質飲料粉末は、可溶性コーヒー粉末、ホットチョコレート粉末、マルトデキストリン粉末、粉茶、クリーム粉末、および粉乳から選択される。特に、多孔質飲料粉末は、インスタントコーヒー粉末、特に、噴霧乾燥されたコーヒー粉末であることが好ましい。凍結乾燥されたコーヒー粉末もまた、本方法における使用を想定され得るが、噴霧乾燥されたコーヒーと比較してより大きな開気孔に起因して、あまり好ましくはない。
【0025】
可溶性コーヒー飲料原料は、5〜80ミクロン、好ましくは、10〜15ミクロンの粒子サイズを有するコーヒー等、微細に砕かれ、焙煎され挽かれたコーヒーを含むことができる。このコーヒーは、好ましくは、多孔質飲料粉末の範囲内で形成され、したがって、フリーフロー剤として作用しない。存在するとき、可溶性コーヒーの5〜20重量%であることが、好ましい。
【0026】
好ましくは、ガス含有雰囲気中において、多孔質飲料粉末をそのガラス転移温度より低い温度に加熱することは、粉末の温度をそのガラス転移温度の20℃以内、好ましくは、10℃以内、より好ましくは、5℃以内に上昇させる。好ましくは、加熱は、ガラス転移温度より1度以上低い温度までである。圧力が増加させられる前に、粉末がTgに接近するほど、Tgより高く温度を上昇させるために要求される圧力増加は、より低くなる。さらなる上昇圧力を使用するよりも、粉末を加熱する方がよりコスト効果が高く、故に、ごく近い事前加熱が所望される。それにもかかわらず、より低い温度が、概して、粉末内に存在する風味の一般的分解を最小化するために有利となる。
【0027】
好ましくは、ガス含有雰囲気は、空気、窒素、および二酸化炭素のうちの1つ以上のものから選択される。窒素および/または二酸化炭素の使用は、これが飲料粉末の任意の酸化または腐敗を軽減するため、特に好ましい。
【0028】
好ましくは、本方法はさらに、ガス含有雰囲気中において、多孔質粉末を10〜200バール、より好ましくは、20〜150バール、より好ましくは、50〜100バールの圧力に事前加圧することを含む。理解されるであろうように、比較的高い最終圧力が、多孔質粉末の孔の中にガスを導入するために要求される。故に、加熱するステップの前の事前上昇させられた圧力の使用は、温度を増加させ、ガス孔浸透のために十分な圧力をもたらすために要求される圧力増加が、最小化され得ることを意味する。
【0029】
好ましくは、本方法は、チャンバ内で実行され、ガス含有雰囲気の圧力は、チャンバ内のガスの量を増加させることによって、および/またはチャンバの容積を減少させることによって増加させられる。これらの技法の中で、ガスの量が増加させられることが、特に好ましい。これは、圧密化および過剰な凝集のリスクを回避しながら、容易に制御可能である。
【0030】
好ましくは、圧力は、1〜100バール、好ましくは、10〜50バールだけ増加させられる(次いで、減少させられる)。この圧力の変更は、粉末のTgに対する温度を変化させるために十分である。処理後に圧力が下げられると、温度は、非常に迅速に下がり、構造は、内側に閉じ込められた加圧されたガスとともに効果的に「急冷」される。
【0031】
好ましくは、圧力は、1秒〜15分、好ましくは、10秒〜10分、より好ましくは、30秒〜5分の間、増加させられた圧力において保持される。この時間は、ガスが、多孔質粉末の孔に完全に浸透するために要求される。対照的に、第US7534461号に開示される好ましい時間範囲は、10〜150分であり、典型的には、30分〜1時間の範囲内である。これは、製品を処理温度に上昇させ、これがその後で冷却されることを可能にするためにかかる時間を含む。本方法は、製品のより迅速な処理およびより少ない分解を可能にする。
【0032】
好ましくは、多孔質飲料粉末は、1分後に少なくとも2ml、より好ましくは、1分後に3〜6mlの発泡レベルを提供する。飲料粉末が発泡する範囲は、定量的カップ内気泡試験によって測定されることができる。この試験は、再構成時の組成物によって生成される気泡の量を測定する。本方法では、試験されている1.8gの組成物が、20℃において、直径25mmおよび高さ250mmの100cm
3の円筒形ガラスメスシリンダ中で計量され、次いで、80℃における70cm
3の水が、ビーカーからメスシリンダの上部における漏斗を通して、この上に約5秒間にわたって注がれる。使用される漏斗は、内径5mmおよび長さ50mmの管状区分に接続される、ベース直径50mmおよび高さ40mmの円錐形区分から成る。漏斗は、組成物を再構成するために使用される水の添加を制御する。再構成時の組成物によって生成される気泡体積は、1および10分の時間間隔で観察される。全ての測定は、2回実行される。
【0033】
好ましくは、本方法はさらに、発泡性飲料粉末を室温まで冷却し、それを包装することを含む。包装は、瓶またはポット、もしくは詰替え用袋等、従来のバルクインスタントコーヒー包装であり得る。代替として、包装は、飲料調製機械において使用するために好適な飲料調製カプセルであり得る。そのような機械は、周知であり、例えば、Tassimo
TM機械を含む。
【0034】
発泡性飲料粉末はまた、処理後および随意の包装の前に、粉末のサイズまたは表面特性を適合させるために、粉砕、挽き、もしくはさらなる処理を受け得る。好ましくは、いかなるそのようなさらなる処理も存在せず、これは、孔構造および閉じ込められたガスに損傷を与えることを回避する役割を果たす。さらに、粉末は、カプチーノ、ミルクティー、ミルクコーヒー、またはホットチョコレート飲料ミックス等の飲料の調製のために好適な合成飲料粉末を形成するために、さらなる原料とともに配合され得る。
【0035】
第2の側面によると、本明細書に開示される方法によって得ることが可能な発泡性飲料粉末が、提供される。本プロセスによって得ることが可能な発泡性飲料粉末は、高圧ガスが閉じ込められながら、粉末が従来の粉末に関連付けられる風味分解を示さないことにより、従来の発泡性粉末と区別され得る。
【0036】
第3の側面によると、飲料を調製する方法が提供され、本方法は、本明細書に開示される発泡性飲料粉末を水性媒体と接触させることを含む。好ましくは、水性媒体は、ミルクまたは水である。好ましくは、水性媒体は、70〜100℃、より好ましくは、80〜90℃の温度において提供される。
【0037】
第4の側面によると、飲料を調製するためのカプセルが提供され、カプセルは、水性飲料媒体のための入口と、飲料のための出口と、それらの間の流路とを備え、該カプセルはさらに、流路内に、本明細書に開示される発泡性飲料粉末を含む。
【0038】
第5の側面によると、飲料を調製するための飲料調製システムが提供され、本システムは、本明細書に開示されるカプセルに水性飲料媒体を提供する手段を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明は、ここで、以下の非限定的な図との関連で説明される。
【
図1】
図1Aは、従来技術の技法を表す例示的プロットを示す。上側の角型線は、容器圧力を表す。下側の曲線は、プロセスチャンバを加熱/冷却することによって制御される、温度の変化を表す。Tgは、プロットを横断する帯としてマーキングされる。
図1Bは、本明細書に開示される技法を表す例示的プロットを示す。上側の角型線は、容器圧力を表す。これは、温度を増加させるために増加させられる(したがって、温度プロットの増加に対応する)。下側の線は、プロセスチャンバの温度の変化を表す。Tgは、プロットを横断する帯としてマーキングされる。
図1Aおよび1Bは、所与の試料の予期される温度および圧力の表現にすぎないことに留意されたい。本図には、いかなる尺度も提供されない。Tg帯の相対的高さおよび幅は、図において異なることに留意されたい。しかしながら、所与の材料のTgは、一定である。
【
図2A】
図2Aは、本明細書に開示されるようなインスタントコーヒー組成物を保持するために好適である容器1を示す。
【
図3】
図3は、本プロセスの主要ステップのフローチャートである。ステップAでは、多孔質飲料粉末が提供される。ステップBでは、この粉末は、ガス含有雰囲気中において、そのガラス転移温度より低い温度に加熱される。ステップCでは、圧力が増加させられ、それによって、多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より高い温度に上昇させる。ステップDでは、次いで、圧力が減少させられ、それによって、多孔質飲料粉末の温度をそのガラス転移温度より低い温度に低下させる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、ここで、以下の非限定的な実施例との関連で説明される。
【0041】
(実施例)
3.5%の含水量および80℃のガラス転移温度を有する1Kgの噴霧乾燥されたコーヒー粉末が、外側に加熱されるオイルジャケットを伴う回転高圧容器内に置かれた。容器は、窒素を用いて60バールに加圧され、次いで、オイルジャケットは、75℃に設定された。粉末は、3.5℃/分の率において、オイルジャケットの伝導を通して、回転圧力容器の壁を通して加熱された。容器は、内容物が75℃の温度になるまで加熱された。
【0042】
容器は、次いで、さらに90バールに加圧された。この急速な加圧は、粉末温度を75℃〜85℃に瞬間的に変化させた。これは、この特定の粉末のガラス転移温度より高く、高圧ガスが噴霧乾燥された粒子の孔の中にしみ込むために必要とされる状態にした。粉末は、この温度において5分間保持され、次いで、圧力が、容器に対して40バールに下げられた。この急速な減圧は、粉末温度がそのガラス転移より低い温度である85℃〜70℃に瞬間的に下がることをもたらした。
【0043】
次いで、オイルヒータが20℃に設定され、粉末は、それが30℃に到達するまで、1℃/分の率において冷却された。次いで、容器が大気圧まで減圧され、容器が抜き取られた。結果として生じる噴霧乾燥された粉末が容器から取り出され、粉末は、その気密穴の内側に閉じ込められた高圧ガスを有した。
【0044】
ベースとなる噴霧乾燥された粉末と比較すると、高温の水を用いて構成されたとき、これは、8倍のガス解放をもたらした。粉末はまた、500ミクロン未満の自由流動性粉末が85%となった。残っていた凝集は、軟質の凝集であり、粉末状に細かくすりつぶされたが、それらの発泡潜在性を依然として保持することができた。自由流動性粉末および良好なガス閉じ込めの良好なプロセス収率のこの最適化は、粉末がそのガラス転移温度より高い温度にさらされる制御された期間によってのみ可能であった。
【0045】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に詳細に説明されているが、変形例が、本発明または添付される請求項の範囲から逸脱することなく、それらに成され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
【国際調査報告】