(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512195(P2017-512195A)
(43)【公表日】2017年5月18日
(54)【発明の名称】B型肝炎コア抗原に基づくワクチン
(51)【国際特許分類】
C07K 14/02 20060101AFI20170414BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20170414BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20170414BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20170414BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20170414BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20170414BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20170414BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20170414BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20170414BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20170414BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20170414BHJP
【FI】
C07K14/02ZNA
C07K19/00
C07K14/195
A61K37/02
A61K39/02
A61K39/00 H
A61K39/29
A61P37/04
A61P1/16
A61P31/20
C12N15/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-553378(P2016-553378)
(86)(22)【出願日】2015年2月18日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月26日
(86)【国際出願番号】GB2015050460
(87)【国際公開番号】WO2015124919
(87)【国際公開日】20150827
(31)【優先権主張番号】1402890.6
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】317000533
【氏名又は名称】アイキューユーアール リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ウェラン、マイケル アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】フィールド、ロバート エイ
(72)【発明者】
【氏名】ローランズ、デイビッド ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA34
4C084CA01
4C084CA04
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA22
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4C084MA31
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4C084MA55
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4C084MA57
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB331
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4C085AA03
4C085BA38
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4C085BB24
4C085CC07
4C085CC08
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4C085GG02
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4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA02
4H045CA11
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA71
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA22
(57)【要約】
本発明は、e1ループに結合した糖を有するB型肝炎コア抗原(HBcAg)を含むタンパク質を提供する。該タンパク質は、タンデムな第1及び第2コピーのHBcAgを含み得、HBcAgの一方又は両方のコピーは、e1ループに結合した糖を有する。第1コピーは、e1ループに結合した糖を有し得、第2コピーは、e1ループ中にペプチドエピトープを含み得る。該タンパク質は、糖に対する免疫反応を引き起こすために使用され得、それゆえワクチンとして働き得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
e1ループに結合した糖を有するB型肝炎コア抗原(HBcAg)を含むタンパク質。
【請求項2】
タンデムな第1及び第2コピーのHBcAgを含み、一方又は両方のコピーのHBcAgが、前記e1ループに結合した糖を有する、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記第1コピーが、前記e1ループに結合した糖を有し、前記第2コピーが、前記e1ループ中にタンパク質のエピトープを含む、請求項2に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記糖又は複数の糖が、前記e1ループ中においてリジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸又はグルタミン酸に結合している、先行する請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項5】
前記糖又は複数の糖を結合させた前記e1ループが、1〜12の連続したリジンを含む、請求項4に記載のタンパク質。
【請求項6】
前記糖又は複数の糖を結合させた前記e1ループが1又は6の連続したリジンを含む、請求項5に記載のタンパク質。
【請求項7】
前記リジン又は複数のリジンに多数のアラニンが隣接する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項8】
前記糖又は複数の糖が細菌に由来する、先行する請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項9】
前記細菌がバークホルデリア属である、請求項8に記載のタンパク質。
【請求項10】
前記細菌がBurkholderia pseudomallei又はBurkholderia malleiである、請求項9に記載のタンパク質。
【請求項11】
前記糖又は複数の糖が共通の多糖類莢膜(CPS)を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項12】
前記糖又は複数の糖が1〜3結合の2-Oアセチル-6-デオキシ-β-D-マンノ-ヘプトピラノースの分岐していないホモポリマーを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項13】
前記タンパク質のエピトープがバークホルデリア属からのものである、請求項3〜12のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項14】
前記タンパク質のエピトープがBurkholderia pseudomallei又はBurkholderia malleiからのものである、請求項3〜13のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項15】
前記タンパク質のエピトープがLolC、PotF、OppA、Rp1、Rp2、Omp85又はHcp2からのものである、請求項3〜14のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項16】
HBcAgの前記タンデムコピーがリンカーにより結合される、請求項2〜15のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項17】
前記リンカーが少なくとも長さ1.5 nmである、請求項16に記載のタンパク質。
【請求項18】
前記リンカーが配列GlynSer (GnS) (式中、nが2〜8である)の多数のコピーを含む、請求項16又は17に記載のタンパク質。
【請求項19】
前記HBcAgが配列AlaAlaAlaLeuAlaAlaAla (AAALAAA;配列番号3)を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項20】
先行する請求項のいずれか1項に記載されたタンパク質の多数のコピーを含む粒子。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれか1項に記載されたタンパク質を製造するための方法であって、該方法が糖を前記e1ループに結合させることを含む、方法。
【請求項22】
前記糖が還元的アミノ化により前記e1ループに結合される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記糖が酸化されて、末端アルデヒド残基を作り出し、該末端アルデヒド残基が、前記e1ループ中において1級アミンへ還元的アミノ化される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項1〜19のいずれか1項に記載のタンパク質又は請求項20に記載された粒子、及び医薬的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項25】
ヒト又は動物の体のワクチン接種方法における使用のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載のタンパク質又は請求項20に記載の粒子。
【請求項26】
バークホルデリア属に対する前記ヒト又は動物の体のワクチン接種方法における使用のための請求項25に記載のタンパク質又は粒子。
【請求項27】
ヒト又は動物の体のワクチン接種のための医薬の製造のための、請求項1〜19のいずれか1項に記載のタンパク質又は請求項20に記載の粒子の使用。
【請求項28】
バークホルデリア属に対するワクチン接種のための、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
被験体中において免疫反応を引き起こす方法であって、該方法が請求項1〜19のいずれか1項に記載されたタンパク質又は請求項20に記載された粒子を前記被験体へ投与することを含む、方法。
【請求項30】
バークホルデリア属に対する免疫反応を引き起こすための、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、e1ループに結合された糖(sugar)を有するB型肝炎コア抗原(hepatitis B core antigen、 HBcAg)を含むタンパク質、糖が結合したタンパク質を製造するための方法、該タンパク質を含む医薬組成物及び被験体中において免疫反応を引き起こすための該タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
B型肝炎ウイルスコア(HBc)タンパク質は、2の逆平行α-へリックスからなるやや独自の構造を有し、該構造が特有の「スパイク」構造を形成する。2のHBc分子がその後、自然に二量体化してスパイク対の束状構造(twin spike bundle)を形成する。この束状構造は、ウイルス様粒子(virus like particle, VLP)の組み立てブロック(building block)である。VLPの高頻度反復配列(highly repetitious sequence)が抗原の多数のコピーを送達するので、VLPは魅力的なワクチンシステムである。更に、ウイルス核酸がないことにより、それらは特に安全なベクターとなる。HBcは、抗原配列が挿入され得るいくつかの部位を有するので、HBcは、ワクチン担体として特に興味深い。HBcの極度の免疫原性は、その結果、挿入された配列にも与えられ、それゆえ、該配列が過度に免疫原性になる。最適な挿入部位は、主要挿入領域(Major Insertion Region, MIR)である。しかしながら、大きな又は疎水性の配列がMIRに挿入される場合、単量体のHBcは、二量体になることができず、VLPは生じないことが先に示された。このことは、免疫原性の大幅な減少をもたらす。
細菌性生物危険因子(bacterial biothreat agent)であるBurkholderia pseudomallei (類鼻疽菌)及びBurkholderia mallei (鼻疽菌)は、それぞれ類鼻疽(melioidosis)及び鼻疽(glanders)の原因因子であり、現在、該細菌性生物危険因子のために利用可能な認可されたワクチンはない。
【発明の概要】
【0003】
発明の要旨
本発明は、B型肝炎(HBV)コアタンパク質に基づくワクチン送達システムに関係している。免疫反応が糖に対して高められるように、送達前に糖がHBVコアタンパク質に結合される。
従って、本発明は、e1ループに結合した糖を有するB型肝炎コア抗原(HBcAg)を含むタンパク質を提供する。タンパク質は、タンデムな第1及び第2コピーのHBcAgを含み得、HBcAgの一方又は両方のコピーがe1ループに結合した糖を有する。
本発明は、
- 本発明のタンパク質の多数のコピーを含む粒子;
- 1以上の糖をe1ループに結合させることを含む、本発明のタンパク質を製造する方法;
- 本発明のタンパク質又は本発明の粒子及び医薬的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬組成物;
- ヒト又は動物の体のワクチン接種方法における使用のための本発明のタンパク質又は本発明の粒子;
- ヒト又は動物の体のワクチン接種のための医薬の製造のための本発明のタンパク質又は本発明の粒子の使用;及び
- 被験体中において免疫反応を引き起こす方法であって、該方法が本発明のタンパク質又は本発明の粒子を被験体へ投与することを含む、方法、
も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】SDS-PAGEは、タンデムコア(tandem core)が酵母溶解物(yeast lysate)の可溶性画分(soluble fraction)において発見されることを確認した。粗溶解物を取り(レーン3)、20,000xgで回転させ、上清を取った(レーン4)。沈殿物(レーン5)中のものは使用に適さなかった。上清を希釈し(レーン6)、その後、0.8 μm、0.45 μm及び0.2 μm (レーン7〜9)の3のフィルターを通過させた。物質を、クロスフローフィルター(cross-flow filter)を通過させて(passed over)、保持液(retentate)を保持した(レーン10)。これを、フィルターにかけ、次にCL4Bカラム(レーン11)上に配置した。空隙容量(void volume)を、次にS1000カラム(レーン12)を通過させた。
【
図2A】VLPを、CL4Bカラムの空隙容量から単離した((B)の左パネル上の大きなピーク)。レーン上方の数字は、CL4Bカラムから回収された画分番号(fraction number)である。
【
図2B】VLPを、CL4Bカラムの空隙容量から単離した((B)の左パネル上の大きなピーク)。レーン上方の数字は、CL4Bカラムから回収された画分番号(fraction number)である。
【
図3A】CL4B空隙(CL4B void)を、次にS1000カラムを通過させ、VLPを、画分12〜15から単離した。純度を、SDS-PAGE及びウエスタンブロット法によって確認した。数は、第2のS1000カラムから回収されたタンデムコア陽性画分(tandem core positive fraction)である。
【
図3B】CL4B空隙を、次にS1000カラムを通過させ、VLPを、画分12〜15から単離した。純度を、SDS-PAGE及びウエスタンブロット法によって確認した。数は、第2のS1000カラムから回収されたタンデムコア陽性画分(tandem core positive fraction)である。
【
図4A】(A)銀染色法(silver staining)を用いるSDS-PAGEにより、タンデムコアが存在するが(*印を付した)、純度が同等の酵母調製物(equivalent yeast preparation)中におけるほど高くないことを確認した。(B)電子顕微鏡法は、主要な混入物質(contaminant)をバキュロ-ビリオン(baculo-virion)自体として同定した。
【
図4B】(A)銀染色法(silver staining)を用いるSDS-PAGEにより、タンデムコアが存在するが(*印を付した)、純度が同等の酵母調製物(equivalent yeast preparation)中におけるほど高くないことを確認した。(B)電子顕微鏡法は、主要な混入物質(contaminant)をバキュロ-ビリオン(baculo-virion)自体として同定した。
【
図5】レーンA:分子量マーカー、レーンB:改変されていないVLP レーンC:改変されたVLP。
【
図6】(A)スクロースクッション(sucrose cushion) (正確な縮尺ではない)の略図、(B)非結合FITC及び(C) FITC-VLP複合体(conjugate)。
【
図7】レーンA:分子量マーカー、レーンB: BSA (2mg/ml)、レーンC: BSA (0.5mg/ml)、レーンD:複合糖質(2mg/ml)及びレーンE:複合糖質(0.5mg/ml)。
【
図8】LolCインサートを有するVLPを、野生型バークホルデリア属細菌に感染させたマウス中において産生された抗体を用いるELISAにおいて検査した。VLP LolCに対応する線では、30 ug/mlについての値が、1.6及び1.8の平均ODの間にある。ロード無しの(unloaded) VLPに対応する線では、30 ug/mlについての値が、0.4の平均OD近くにある。
【発明を実施するための形態】
【0005】
配列の簡単な説明
配列番号1は、HBcAgのaywサブタイプと29アミノ酸のプレ配列(pre-sequence)の183アミノ酸のタンパク質、及び対応するヌクレオチド配列である。
配列番号2は、HBcAgのaywサブタイプと29アミノ酸プレ配列の183アミノ酸のタンパク質である。
配列番号3は、α-へリックスとつり合いをとる(balance)ためにHBcAgが含み得る配列である。
配列番号4は、コンストラクトCoHo7eの配列である。
配列番号5は、コンストラクトH3Hoの配列である。
配列番号6は、LolC-空コンストラクトの配列である。
配列番号7は、LolC-K6コンストラクトの配列である。
配列番号8は、LolC-K1コンストラクトの配列である。
配列番号9は、LolCの配列である。
【0006】
本発明の詳細な説明
加えて、本明細書及び添付された請求の範囲中において使用される場合、内容に明確な別段の指示がない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「糖」への言及は、2以上のかかる糖を含み、又は「タンパク質のエピトープ(protein epitope)」への言及は、2以上のかかるタンパク質のエピトープを含む。
本明細書中に引用された全ての刊行物、特許及び特許出願は、上記であろうと又は下記であろうと、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0007】
B型肝炎コア抗原(HBcAg)
HBcAgは、HBVのサブタイプに応じて183又は185アミノ酸(aa)を有する。aywサブタイプと29アミノ酸のプレ配列の183アミノ酸のタンパク質の配列を配列番号2に示す。1〜29位の配列はプレ配列であるため、成熟したHBcAgは、30位のMet残基から最も端のC-末端のCys残基まで続いている。
【0008】
タンパク質は、二量体を形成する2コピーのHBcAgを含み得る。HBcAgの二量体は、VLPの構造的な組み立てブロックを形成する。HBcAg構成単位は、通常、頭からつま先までの様態(head-to-toe fashion)で結合する、すなわち、1の構成単位のC-末端は、隣接する構成単位のN-末端に結合する。構成単位は、直接的に共有結合(例えば、ペプチド結合)により結合し得るが、好ましくは、それらは隣接する構成単位の間隔を空けるリンカーにより結合され、それによって隣接する構成単位の詰め込み(packing)の乱れ(disruption)に関する任意の問題を回避する。リンカーの性質は、以下に考察する。
【0009】
タンパク質中のHBcAgは、天然の全長HBcAgであり得る。HBcAgは、e1ループに結合した糖を有する。タンパク質がタンデムなHBcAgの第1及び第2コピーを含む場合、1コピーのHBcAgは、e1ループに結合した糖を有する。HBcAgの他方のコピーは、天然のHBcAgであり得、本明細書に記載された通りの改変された型のHBcAgであり得、e1ループに結合した糖を有し得又はe1ループにおいてタンパク質のエピトープを含み得る。考えられる糖及びタンパク質のエピトープの例は、以下に考察される。
【0010】
原則として、いかなる改変もHBcAgのコンホメーション(conformation)と、集合して粒子を作るその能力とに干渉しないように選ばれる。かかる改変は、そのコンホメーションを維持するために重要ではないタンパク質中の部位、例えば、e1ループ、C-末端及び/又はN-末端においてなされる。HBcAgのe1ループは、例えば、タンパク質の粒子形成能力を損なわない1〜500アミノ酸の挿入を許容し得る。
【0011】
HBcAg配列は、置換、挿入、欠失又は伸長(extension)によって改変され得る。挿入、欠失又は伸長の大きさは、例えば、1〜500 aa、1〜400 aa、1〜300 aa、1〜200 aa、3〜100 aa又は6〜50 aaであり得る。置換には、HBcAg配列長の至る所で最大で例えば、1、2、5、10、20又は50アミノ酸といった数のアミノ酸を関与し得る。伸長は、HBcAgのN-又はC-末端にあり得る。欠失は、タンパク質のN-末端、C-末端又は内部部位におけるものであり得る。置換は、タンパク質配列中における任意の位置においてなされ得る。挿入も、タンパク質配列中における任意の位置においてなされ得るが、通常、e1ループ等のタンパク質の表面が露出した領域においてなされる。挿入された配列は、タンパク質のエピトープを有し得る。1以上の糖が続いて結合し得るように、1以上のアミノ酸が挿入され得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12アミノ酸が挿入され得る。アミノ酸は、連続して(consecutively)挿入され得る。糖の結合のために挿入されたいかなるアミノ酸も、それに糖を結合させる能力がなければならない。かかるアミノ酸の例としては、リジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸又はグルタミン酸が挙げられる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12のリジンが挿入され得る。1以上のアラニンが、糖の結合のために挿入された1以上のアミノ酸のどちらの側にも挿入され得る。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のアラニンが挿入され得る。アラニンは、連続して挿入され得る。1を超える改変が各HBcAg構成単位に対してなされ得る。このようにして、末端の伸長又は欠失、及び内部の挿入もなすことができる。例えば、切断(truncation)がC-末端においてなされ得、挿入がe1ループ中においてなされ得る。
【0012】
本発明のタンパク質中におけるHBcAg配列の各部分は、配列番号2に示す配列を有するタンパク質等、天然のHBcAgタンパク質の対応する配列に対し、好ましくは少なくとも70%の配列の同一性を有する。より好ましくは、同一性は、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%である。タンパク質の相同性(homology)を測定する方法は、当分野において周知であり、本明細書の文脈において、相同性がアミノ酸の同一性(時には「ハードホモロジー(hard homology)」と呼ばれる)に基づいて計算されるということは、当分野における当業者によって理解されるだろう。
【0013】
例えば、UWGCGパッケージ(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12: 387-395)は、相同性を計算するために使用され得るBESTFITプログラム(例えば、その初期設定で使用される)を提供する。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300; Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されるように、(通常はそれらの初期設定で)相同性を計算し、又は配列を整列する(line up)ために使用され得る。
【0014】
BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって公に利用可能である。このアルゴリズムは、データベース配列の中にある同じ長さのワードとアライメントされた場合に、ある正の値の(positive-valued)閾値スコアTに一致する又はこれを満たすクエリ配列(query sequence)中の長さWの短いワードを同定することにより、最初にスコアの高い配列ペア(high scoring sequence pair, HSPs)を同定することを含む。Tは、近傍ワードスコア閾値(neighbourhood word score threshold)と呼ばれる(Altschul et al,上記を参照)。これらの最初の近傍ワードのヒットは、それらを含むHSPsを発見するために検索を開始するためのシードとして機能する。累積アライメントスコア(cumulative alignment score)が増加し得る限り、各配列に沿って両方向に該ワードヒットを伸長させる。ワードヒットの各方向への伸長は、以下の場合に停止する:累積アライメントスコアがその最大達成値(maximum achieved value)から量Xだけ低下したとき; 1以上の負のスコアの残基アライメント(residue alignment)の累積に起因して累積スコアがゼロ以下になるとき;又はいずれかの配列の端部に到達したとき。BLASTアルゴリズムのパラメータW, T及びXは、アライメントの感度(sensitivity)及び速度を決定する。BLASTプログラムは、初期設定として、11というワード長(W)、50というBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919参照)アライメント(B)、10という期待値(E)、M=5、N=4、及び両鎖の比較を使用する。
【0015】
BLASTアルゴリズムは、2の配列の間の類似性(similarity)の統計解析を行う(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1の基準(measure)は、最小合計確率(smallest sum probability, P(N))であり、該最小合計確率は、2のヌクレオチド又はアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こるであろう確率の目安となる。例えば、第1配列を第2配列に対して比較した場合の最小合計確率が約1未満である場合、好ましくは約0.1未満である場合、より好ましくは約0.01未満である場合、及び最も好ましくは約0.001未満である場合に、配列が別の配列と類似であるとみなされる。
【0016】
HBcAgのe1ループは、成熟配列の68〜90位にあり、タンパク質のエピトープは、これらの位置の間のどこにでも挿入され得る。上記の糖の結合のためのアミノ酸は、これらの位置の間のどこにでも挿入され得る。好ましくは、糖の結合のためのエピトープ又はアミノ酸は、69〜90、71〜90又は75〜85位の領域に挿入される。最も好ましいのは、アミノ酸残基79及び80の間又は残基80及び81の間に糖の結合のためのエピトープ又はアミノ酸を挿入することである。糖の結合のためのタンパク質のエピトープ又はアミノ酸が挿入される場合、HBcAgの全体の配列が維持され得、又は別の方法としてe1ループ配列の全体又は一部が、欠失され、タンパク質の配列によって置換され得る。従って、アミノ酸残基69〜90、71〜90又は75〜85が、糖の結合のためのタンパク質のエピトープ又はアミノ酸によって置換され得る。糖の結合のためのタンパク質のエピトープ又はアミノ酸がe1ループ配列を置換する場合、置換配列は、通常、それが置換する配列よりも短くはない。
【0017】
HBcAgのC-末端切断は、通常、aa 144を超えないだろう、というのは、任意のそれ以上の切断がなされた場合、粒子が生じ得ないからである。従って、欠失したアミノ酸は、例えば、aa 144〜C-末端aa (aa 183又は185)、aa 150〜C-末端aa、aa 164〜C-末端aa又はaa 172〜C-末端aaを含み得る。HBcAgのC-末端は、DNAを結合させ、C-末端の切断は、それゆえ、HBcAg及びHBcAgハイブリッドタンパク質(hybrid protein)の調製物からDNAを減少させ又はDNAを完全に除去する。
【0018】
本発明のタンパク質は、好ましくは天然のHBcAgにより形成された粒子に似た粒子を形成する。本発明の粒子は、本発明のタンパク質の多数のコピーを含む。粒子は、VLPの形態であり得る。本発明の粒子は、通常少なくとも直径10 nm、例えば、直径10〜50 nm又は直径20〜40 nmであるが、好ましくはそれらは直径約27 nmである(天然のHBcAg粒子の大きさである)。それらは、多数のHBcAg構成単位、例えば150〜300の構成単位を含むが、通常、それらは約180又は約240構成単位に固定される(天然のHBcAg粒子における構成単位の数である)。本発明のタンパク質は二量体であり得るので、このことは、粒子中のタンパク質単量体の数が75〜150であり得るが、通常約90又は約120であることを意味する。
【0019】
隣接するHBcAgコピーの間のリンカーは、通常、少なくとも長さ1.5 nm (15 オングストローム)、例えば1.5〜10 nm、1.5〜5 nm又は1.5〜3 nmのアミノ酸の鎖である。それは、例えば、4〜40 aa又は10〜30 aa、好ましくは15〜21 aaを含み得る。リンカーは、通常、柔軟性がある(flexible)。リンカー中におけるアミノ酸は、例えば、グリシン、セリン及び/又はプロリンを含み、又は完全にグリシン、セリン及び/又はプロリンからなる。好ましいリンカーは、配列Gly
nSer (G
nS) (式中、nは、2、3、4、5、6、7又は8である)の1以上の繰り返しを含む。別の方法としては、リンカーは、1以上のGlyPro (GP)ジペプチドの繰り返しを含み得る。繰り返しの数は、例えば、1〜18、好ましくは3〜12であり得る。G
2Sの繰り返しの場合、5、6又は7の繰り返しの使用が、粒子の形成を可能にすることが見出された。リンカーは、抗体のヒンジ領域に相当し得;このヒンジ領域は、抗体の抗原結合及び尾部ドメインの間の柔軟性のある結合部を提供すると考えられる。
【0020】
HBcスパイク領域を含む2のα-へリックスは対称でなく、それで結果として生じるMIRは、VLPから完全に垂直な向きではなく、わずかにずれている(offset)。分子モデリングは、それゆえ挿入されたいかなる抗原もVLPに対し直角ではなくむしろ平行に配置され得ることを示唆する。このことは、場合により立体障害(steric hindrance)及び免疫原性の減少の原因となり得る。HBcAgは、追加のターン(extra turn)又は複数のターンを第1へリックス(成熟配列の50〜73位に位置する)に加えることにより、α-へリックスと「つり合いをとる」ように機能する挿入された配列を含み得る。このことが、VLPに対して垂直な方向に、挿入されたタンパク質のエピトープの提示をもたらす。これは、HBcAgへの3〜12アミノ酸(例えば、3、5又は7アミノ酸)の挿入により達成され得る。これらのアミノ酸は、好ましくはアラニン、ロイシン、セリン及びトレオニン等の非荷電性アミノ酸である。挿入された配列は、好ましくはAAALAAA (配列番号3)である。挿入は、成熟配列のアミノ酸50及び75の間の部位、例えば、残基60及び75又は残基70及び73の間の部位にあり得る。
【0021】
糖
用語「糖」は、多糖、オリゴ糖及び単糖を指す。タンパク質は、e1ループに結合した糖を有するHBcAgを含む。タンパク質は、タンデムなHBcAgの第1及び第2コピーを含み得る。タンデムな2コピーのHBcAgがある場合、HBcAgの一方又は両方のコピーがe1ループに結合した糖を有する。
【0022】
e1ループに結合した糖は1を超え得る。e1ループは、1を超える種類の糖を結合させ得る。e1ループは、異なる糖を結合させ得る。タンデムな2コピーのHBcAがある場合、各HBcAg中においてe1ループに結合した異なる糖又は異なる複数の糖があり得る。糖が1を超える病原体又はアレルゲンから得られる場合、それは1を超える病原体又はアレルゲンに対する免疫反応を同時に引き起こすために有用であり得る。糖は糖タンパク質の一部であり得、糖タンパク質がe1ループに結合する。
【0023】
糖はe1ループ中において1以上のアミノ酸に結合する。糖の結合のための1以上のアミノ酸が、本明細書中に記載されたe1ループに挿入され得る。糖の結合のための1以上のアミノ酸は、HBcAg中において天然に存在するアミノ酸であり得る。かかるアミノ酸の例としては、リジン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸又はグルタミン酸が挙げられる。糖は、1を超える天然に存在するアミノ酸に結合し得る。糖は、天然に存在するアミノ酸及び挿入されたアミノ酸に結合し得る。
【0024】
糖は、任意の病原体又はアレルゲンから取得され得る。糖は、T細胞又はB細胞エピトープを含み得る。それがT細胞エピトープである場合、細胞障害性Tリンパ球(cytotoxic T-lymphocyte, CTL)エピトープ又はTヘルパー(Th)細胞エピトープ(例えば、Th1又はTh2エピトープ)であり得る。1を超えるエピトープが存在し得る。1を超えるエピトープが存在する場合、1のエピトープは、Tヘルパー細胞エピトープであり得、別のものは、B細胞又はCTLエピトープであり得る。Tヘルパー細胞エピトープが存在することにより、B細胞又はCTLエピトープに対する免疫反応が増進される。
【0025】
糖の選択は、免疫反応を高め、又はワクチン接種をすることを望む疾患によって決まる。糖は、例えば、病原性微生物(pathogenic organism)、ガン関連抗原又はアレルゲンからのものであり得る。病原性微生物は、例えば、ウイルス、細菌又は原生動物であり得る。糖は、病原性微生物及びガン等、本明細書中に記載された任意の供給源(source)からのものであり得、該供給源からタンパク質のエピトープが取得され得、かつ、該供給源は糖を含む。
【0026】
好ましくは、病原性微生物は、細菌に由来する。細菌は、バークホルデリア属(Burkholderia)、例えば、Burkholderia pseudmallei又はBurkholderia malleiであり得る。病原性微生物は、普通の多糖類莢膜(CPS)を含み得る。糖は、CPSからの抗原を含み得る。糖は、CPSからの1以上のエピトープを含み得る。CPSは、バークホリデリア属、例えば、Burkholderia pseudmallei又はBurkholderia malleiから取得され得る。CPSは、1〜3結合の2-Oアセチル-6-デオキシ-β-D-マンノ(manno)-ヘプトピラノースの分岐していないホモポリマーを含む。従って、糖は、1〜3結合の2-Oアセチル-6-デオキシ-β-D-マンノ-ヘプトピラノースの分岐していないホモポリマーを含み得る。CPSは、B. pseudomallei及びB. malleiの両方において主な菌力決定因子(virulence determinant)として同定されており、B. pseudomalleiにおけるCPS発現の喪失は、70 cfuから10
6 cfuより大きくマウスにおけるMLDを増大させる。B. pseudomalleiのCPSは、マウスモデルにおけるそれに続く病原菌投与 (challenge) に対して部分的な保護をもたらすことが示されたが、CPSに対して産生された抗体の受動伝達 (passive transfer) も、保護をもたらし得る。
【0027】
タンパク質のエピトープ
本発明のタンパク質は、タンデムな第1及び第2コピーのHBcAgを含み得、 第1コピーは、e1ループに結合した糖を有し、第2コピーは、e1ループ中においてタンパク質のエピトープを含む。「第1コピー」は、N末端又はC末端コピーのどちらでもあり得る。
【0028】
タンパク質のエピトープは、免疫反応を高めるアミノ酸の配列を含む。エピトープは、立体構造をとるか又は線状(linear)のものであり得る。例えば、6〜500 aa、 20〜500 aa、50〜500 aa、100〜500 aa、200〜500 aa、300〜500 aa又は300〜400 aaの配列のものであり得る。
【0029】
大きなかつ/又は疎水性の挿入物(insertion)は、VLPを破壊することなく収容され得る。インサートとして使用するためのタンパク質のエピトープは、VLP形成を妨害しない任意の適切な大きさであり得る。好ましくは100 kDa未満、例えば80 kDa未満、60 kDa未満、40 kDa未満、20 kDa未満、10 kDa未満又は5 kDa未満である。5 kDa、10 kDa、20 kDa、又は30 kDaを超えるものであってもよい。
【0030】
本発明のタンパク質は、1を超えるタンパク質のエピトープ、例えば最大2、3、5又は8のタンパク質のエピトープを含み得る。1を超えるコピーのエピトープは、HBcAgのコピーに挿入され得、例えば、2〜8コピーが挿入され得る。本発明のタンパク質中において2以上のタンパク質のエピトープがある場合、それらは同じ又は異なる生物からのもの、また、同じ又は異なるタンパク質からのものであり得る。
【0031】
エピトープは、T細胞又はB細胞エピトープであり得る。それがT細胞エピトープである場合、それは細胞障害性Tリンパ球(CTL)エピトープ又はTヘルパー(Th)細胞エピトープ(例えば、Th1又はTh2エピトープ)であり得る。本発明の好ましい実施態様では、1のエピトープがTヘルパー細胞エピトープであり、別のものがB細胞又はCTLエピトープである。Tヘルパー細胞エピトープが存在することがB細胞又はCTLエピトープに対する免疫反応を増進する。
【0032】
エピトープの選択は、ワクチン接種をすることが望まれる疾患によって決まる。エピトープは、例えば、病原性微生物、ガン関連抗原又はアレルゲンからのものであり得る。病原性微生物は、例えば、ウイルス、細菌又は原生動物であり得る。
【0033】
エピトープは、限定されるものではないが、(例えばインフルエンザA、B及びCウイルス等の)オルトミクソウイルス科、(例えばヒトアデノウイルス等の)アデノウイルス科、(ノーウォークウイルス群等)カリシウイルス科、(例えばHSV-1、HSV-2、EBV、CMV及びVZV等の)ヘルペスウイルス科、(例えばヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Viruse) - HPV等の)パポバウイルス科、(例えば天然痘(smallpox)及びワクシニア(vaccinia)等の)ポックスウイルス科、(例えばパルボウイルスB19等の)パルボウイルス科、(例えばロタウイルス等の)レオウイルス科、(例えばSARS等の)コロナウイルス科、(例えば黄熱(yellow fever)、 ウエストナイルウイルス、デング熱、C型肝炎及びダニ媒介脳炎等の)フラビウイルス科、(エンテロウイルス、ポリオ、ライノウイルス、及びA型肝炎等の)ピコルナウイルス科、(例えば風疹ウイルス等の)トガウイルス科、(例えばマールブルグ及びエボラ等の)フィロウイルス科、(パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncitial virus, RSV)、おたふく風邪(mumps)及び麻疹(measles)等の)パラミクソウイルス科、(例えば狂犬病ウイルス(rabies virus)等の)ラブドウイルス科、(例えばハンタウイルス等の)ブニヤウイルス科、(例えばHIV及びHTLV - ヒトT細胞リンパ腫ウイルス等の)レトロウイルス科及び(例えばB型肝炎等の)ヘパドナウイルス科の構成要素を含むウイルス等、任意の病原体から取得されるものであり得る。
【0034】
エピトープは、細菌(バークホリデリア、結核菌(M.tuberculosis)、クラミジア、淋菌(N.gonorrhoeae)、シゲラ、サルモネラ菌、コレラ菌(Vibrio Cholera)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidua)、シュードモナス菌、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ブルセラ菌、野兎病菌(Franciscella tulorensis)、ヘリコバクターピロリ菌、レプトスピラ・インタロガンス(Leptospria interrogaus)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pnumophila)、ペスト菌(Yersinia pestis)、連鎖球菌(Streptococcus) (A 及び B型)、肺炎球菌、髄膜炎菌(Meningococcus)、インフルエンザ菌(Hemophilus influenza) (b型)、カンピロバクター感染症(Complybacteriosis)、カタラリス菌(Moraxella catarrhalis)、ドノヴァン症(Donovanosis)、及び放線菌症(Actinomycosis)等)、菌類病原体(カンジダ症(Candidiasis)及びアスペルギルス症(Aspergillosis)等)、及び寄生性病原体(トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、テニア属(Taenia)、吸虫(Fluke)、回虫(Roundworm)、扁虫(Flatworm)、アメーバ症(Amebiasis)、ランブル鞭毛虫症(Giardiasis)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、住血吸虫(Schitosoma)、ニューモシスティスカリニ(Pneumocystis carinii)、トリコモナス症(Trichomoniasis)及び旋毛虫病(Trichinosis))等)から取得され得る。
【0035】
エピトープは、a)気道(respiratory tract)、b)泌尿生殖器系(genito-urinary system)又はc)消化管(gastrointestinal tract)を経由して感染する病原体から取得され得る。かかる病原体の例としては、a)アデノウイルス科、パラミクソウイルス科及びポックスウイルス科の構成要素、ライノウイルス、インフルエンザ、及びハンタウイルス、b)ウレアプラズマ・ウレアリチカム(Ureaplasma urealyticum)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)、軟性下疳菌(Haemophilus ducreyi)、単純ヘルペスウイルス、HPV、HIV、カンジダアルビカンス、梅毒トレポネーマ、及び肉芽腫カリマトバクテリウム、並びにc)シゲラ、サルモネラ菌、コレラ菌、大腸菌(E.coli)、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、カンピロバクター、クロストリジウム属(Clostridium)、エルシニア属(Yersinia)、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、アストロウイルス、回虫、扁虫、ランブル鞭毛虫症、及びクリプトスポリジウムが挙げられる。
【0036】
本発明において使用するためのエピトープは、限定されるものではないが、肺、膵臓、腸、結腸、胸部、子宮、頸部、卵巣、精巣(testis)、前立腺、黒色腫、カポジ肉腫、リンパ腫(例えば、EBV誘導性B細胞リンパ腫)及び白血病(leukaemia)のガン等のガンから取得され得る。腫瘍関連抗原の具体的な例としては、限定されるものではないが、ガン精巣抗原(cancer-testes antigen)(MAGE ファミリー(MAGE 1、 2、 3等)の構成要素、NY-ESO-1及びSSX-2等)、分化抗原(differentation antigen)(チロシナーゼ、gp100、PSA、Her-2及びCEA等)、突然変異した自己抗原及びウイルス腫瘍抗原(viral tumour antigen)(発がん性HPV型からのE6及び/又はE7等)が挙げられる。特定の腫瘍抗原の追加的な例としては、MART-1、Melan-A、p97、ベータ-HCG、GaINAc、MAGE-1、MAGE-2、MAGE-4、MAGE-12、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC18、CEA、DDC、P1A、EpCam、メラノーマ抗原gp75、Hker 8、高分子量メラノーマ抗原、K19、Tyrl、Tyr2、pMel 17遺伝子ファミリーの構成要素、c-Met、PSM (前立腺ムチン抗原(prostate mucin antigen))、PSMA (前立腺特異的膜抗原(prostate specific membrane antigen))、前立腺分泌タンパク質(prostate secretary protein)、アルファ-フェトプロテイン、CA125、CA19.9、TAG-72、BRCA-1及びBRCA-2抗原が挙げられる。
【0037】
本発明における使用のための他の候補エピトープの例としては、以下の抗原からのエピトープが挙げられる:インフルエンザ抗原HA (血球凝集素)、NA (ノイラミニダーゼ)、NP (核タンパク質/ヌクレオカプシドタンパク質)、M1、M2、PB1、PB2、PA、NS1及びNS2; HIV抗原gp 120、gp 160、gag、pol、Nef、Tat及びRef;マラリア抗原CSタンパク質及びスポロゾイド表面タンパク質2(Sporozoite surface protein 2);ヘルペスウイルス抗原EBV gp340、EBV gp85、HSV gB、HSV gD、HSV gH、HSV初期タンパク質産物(early protein product)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)gB、サイトメガロウイルスgH、及びIEタンパク質gP72;ヒトパピローマウイルス抗原E4、E6及びE7;呼吸器合胞体ウイルス抗原Fタンパク質、Gタンパク質、及びNタンパク質;百日咳菌(B.pertussis)のペルタクチン(pertactin)抗原;腫瘍抗原ガン腫(tumor antigens carcinoma)CEA、ガン腫に伴うムチン(carcinoma associated mucin)、ガン腫P53、メラノーマ(melanoma)MPG、メラノーマP97、MAGE抗原、ガン腫のNeuガン遺伝子産物(carcinoma Neu oncogene product)、前立腺特異的抗原(prostate specific antigen, PSA)、前立腺関連抗原、rasタンパク質、及びmyc;並びにハウスダスト ダニ(house dust mite)アレルゲン。
【0038】
好ましくは、タンパク質のエピトープは、バークホルデリア属、例えば、Burkholderia pseudomallei又はBurkholderia malleiから取得される。タンパク質のエピトープは、表1に列挙されたいずれかのタンパク質から取得され得る。タンパク質のエピトープは、表1に列挙されたいずれかのタンパク質を含み得、あるいは表1に列挙されたいずれかのタンパク質からなり得る。タンパク質のエピトープは、表1に列挙されたいずれかのタンパク質の断片であり得る。
【0040】
好ましくは、タンパク質のエピトープは、LolCタンパク質から取得され得る。以下の段落は、LolCタンパク質を考察するが、該考察は、表1に列挙されたどのタンパク質にも同じように適用される。LolCタンパク質は、天然に存在するLolCタンパク質であり得、又は天然に存在するLolCタンパク質の変異体(variant)であり得る。タンパク質のエピトープは、LolCタンパク質を含み得、又はLolCタンパク質からなり得る。従って、全長LolC又はその断片は、e1ループに挿入され得る。
【0041】
本明細書中に記載されたLolCタンパク質配列は、
ALGVAALIVVLSVMNGFQKEVRDRMLSVLAHVEIFSPTGSMPDWQLTAKEARLNRSVIGAAPYVDAQALLTRQDAVSGVMLRGVEPSLEPQVSDIGKDMKAGALTALAPGQFGIVLGNALAGNLGVGVGDKVTLVAPEGTITPAGMMPRLKQFTVVGIFESGHYEYDSTLAMIDIQDAQALFRLPAPTGVRLRLTDMQKAPQVARELAHTLSGDLYIRDWTQQNKTWFSAVQIEKRMMFIILTLIIAVAAFNLVSSLVMTVTNKQADIAILRTLGAQPGSIMKIFVVQGVTIGFVGTATGVALGCLIAWSIPWLIPMIEHAFGVQFLPPSVYFISELPSELVAGDVIKIGVIAGS (配列番号9)
である。
【0042】
LolCタンパク質の配列は、例えば、全配列について又は少なくとも20、例えば少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、又は少なくとも350もしくはそれを超える連続的なアミノ酸の領域について、配列番号9又は任意の天然に存在するLolCタンパク質と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性等の相同性を有し得る。タンパク質の相同性を測定する方法は、当分野において周知であり、HBVコアタンパク質に関して上述される。
【0043】
相同タンパク質は、通常、置換、挿入又は欠失、例えば1、2、3、4、5〜8又はそれを超える置換、欠失又は挿入によって、天然に存在するLolC配列と異なる。置換は、好ましくは「保存的(conservative)」であり、例えば、表2に従ってなされ得る。第2列の同じブロック中のアミノ酸及び好ましくは第3列の同じ行(line)中のアミノ酸は、互いに置換され得る。
【0045】
インサートとして使用するためのLolCタンパク質の断片は、全長LolCタンパク質の短縮型(shortened version)であり、該短縮型は、免疫反応を引き起こす能力を保持する。いくつかの例では、断片は、天然に存在するLolC配列もしくは配列番号9の配列の長さの、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更に好ましくは少なくとも80%、更に一層好ましくは少なくとも90%及び更に好ましくは少なくとも95%等、少なくとも10%であり得る。例えば、断片は、長さ6〜354 aa、6〜300 aa、6〜200 aa、6〜100 aa、6〜50 aa又は6〜25 aaであり得る。
【0046】
糖をタンパク質に結合させるための方法
本発明は、本発明のタンパク質を製造するための方法を提供する。該方法は、1以上の糖をe1ループに結合させることを含む。本明細書中に記載されるように、糖は、e1ループ中において1以上のアミノ酸に結合される。糖は、酸化された糖の還元的アミノ化により、e1ループ中のアミノ酸に結合され得る。アミノ酸は、リジンであり得る。過ヨウ素酸ナトリウムは、糖を酸化するために使用され得る。糖を酸化することにより、末端アルデヒド残基が作り出される。糖の末端アルデヒド残基は、pH 7.5のPBS中においてシアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元的アミノ化されて1級アミンになり得る。糖を結合する前に、タンパク質が精製され得る。
【0047】
方法は、糖の結合より前にタンパク質を製造することを更に含み得る。糖の結合より前のタンパク質の作製は、以下により詳細に記載される。
【0048】
糖の結合より前にタンパク質を製造すること
糖を結合させるより前に、タンパク質は、組換えDNA技術によって製造され得る。核酸分子は、核酸を操作(manipulate)するための既知の技術を用いて製造され得る。タンパク質は、2コピーのHBcAgを含み、通常、2のHBcAgコピーをコードする2の別個のDNAコンストラクトが製造され、次にオーバーラッピングPCR(overlapping PCR)によって結合される。
【0049】
タンパク質が発現され、かつ、タンパク質を回収する条件下で、タンパク質をコードする核分子(nucleic molecule)を含有する宿主細胞を培養することにより、糖を結合させるより前に、タンパク質が製造され得る。適切な宿主細胞としては、大腸菌等の細菌、酵母、哺乳類細胞及び他の真核細胞、例えば昆虫Sf9細胞が挙げられる。
【0050】
本発明による核酸分子を構成するベクターは、例えば、プラスミド又はウイルスベクターであり得る。それらは、複製起点、タンパク質をコードする配列の発現のためのプロモーター、エンハンサー等のプロモーターの制御因子(regulator)、転写終結シグナル(transcription stop signal)、翻訳開始シグナル(translation start signal)及び/又は翻訳終結シグナル(translation stop signal)を含み得る。ベクターは、1以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子、又は哺乳類ベクターの場合にはネオマイシン耐性遺伝子も含み得る。ベクターは、例えば、RNAの製造のためにインビトロで使用され得、又は宿主細胞の形質転換又はトランスフェクト(transfect)のために使用され得る。ベクターは、例えば、遺伝子治療又はDNAワクチン接種の方法において、インビボでの使用にも適用し得る。
【0051】
プロモーター、エンハンサー及び他の発現調節シグナルは、発現ベクターが設計される宿主細胞に適合するように選択され得る。例えば、原核生物プロモーターが、使用され得、特に大腸菌の菌株(大腸菌HB101等)における使用のために適したものが使用され得る。嫌気条件等の周辺環境の変化に応答してプロモーター活性が誘導されるプロモーターが使用され得る。好ましくはhtrA又はnirBプロモーターが使用され得る。これらのプロモーターが、例えばワクチンとしての使用のために、弱毒細菌(attenuated bacterium)中においてタンパク質を発現するために特に使用され得る。タンパク質の発現が哺乳類細胞中においてインビトロ又はインビボのいずれかで行われる場合、哺乳類プロモーターが使用され得る。組織特異的プロモーター、例えば肝細胞細胞特異的プロモーターも使用され得る。ウイルスプロモーター(Viral promoter)、例えばモロニーマウス白血病ウイルス長末端反復配列(MMLV LTR)、ラウス肉腫ウイルス(rous sarcoma virus, RSV) LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV) IEプロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター及びアデノウイルスプロモーターも使用され得る。全てのこれらのプロモーターは、当分野において容易に利用可能である。
【0052】
タンパク質は、タンパク質を精製するための従来の手法を用いて精製され得る。タンパク質は、例えば、精製され、純粋な(pure)又は単離された形態において提供され得る。ワクチンにおける使用のために、タンパク質は、通常、高レベルの純度で、例えば、それが調製物中においてタンパク質の80%超、90%超、95%超又は98%超を占めるレベルで提供される必要がある。しかしながら、最終のワクチン製剤中において、該タンパク質と他のタンパク質とを混合することが望ましい場合がある。
【0053】
免疫反応を引き起こすこと
本発明のタンパク質又は粒子は、免疫反応を引き起こすために使用され得る。タンパク質又は粒子は、ワクチンとして使用され得る。タンパク質又は粒子は、全ての構成要素(HBcAg及び糖)に対し、多重の同時性免疫反応を高めるために使用され得る。タンパク質は2コピーのHBcAgを含み、多重の免疫反応は、追加的な糖に対する更なる免疫反応及び/又はタンパク質のエピトープに対する更なる免疫反応も含み得る。全ての糖、及び所望によりタンパク質のエピトープが、同じ供給源から取得される場合、これは、その供給源、例えば病原体に対する増進された免疫反応を引き起こし得る。全ての糖、及び所望によりタンパク質のエピトープが、1を超える供給源から取得される場合、これは、異なる供給源、例えば1を超える病原体に対して同時に起こる免疫反応を引き起こし得る。
【0054】
タンパク質又は粒子は、単独で用いられ得、又は限定されるものではないが、医薬組成物、ワクチン組成物(vaccine composition)又は免疫療法組成物(immunotherapeutic composition)等の組成物の一部として用いられ得る。本発明は、それゆえ、本発明のタンパク質又は本発明のタンパク質の多数のコピーを含む粒子、及び、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)を提供する。組成物は、アジュバントを更に含み得る。組成物は、ヒト又は動物の体のワクチン接種のために使用され得る。組成物は、本明細書中に記載されたいずれかの病原体に対するワクチン接種のために使用され得る。特に、組成物は、バークホルデリア属、例えば、Burkholderia pseudomallei又はBurkholderia malleiに対するワクチン接種のために使用され得る。
【0055】
本発明のタンパク質又は本発明の粒子は、ヒト又は動物の体のワクチン接種の方法において使用され得る。本発明は、ヒト又は動物の体のワクチン接種のための医薬の製造のための本発明のタンパク質の使用又は本発明の粒子の使用を提供する。タンパク質又は粒子は、本明細書に記載されたいずれかの病原体に対するワクチン接種のために使用され得る。特に、組成物は、バークホルデリア属、例えば、類鼻疽菌又は鼻疽菌に対するワクチン接種のために使用され得る。
【0056】
ワクチン接種の背景にある原理は、宿主中において免疫記憶をもたらすように宿主中において免疫反応を引き起こすことである。このことは、宿主が伝染力の強い(virulent)病原体にさらされる場合に、それが、有効な(防御)免疫反応、すなわち、病原体を不活性化し及び/又は病原体を死滅させる免疫反応を開始することを意味する。本発明は、本明細書中に記載されたいずれかの病原体、例えばバークホルデリア属に対するワクチンの主成分(basis)を形成する。タンパク質は、タンパク質が含む糖及び所望によりタンパク質のエピトープによって決まる広範な疾患及び状態のいずれかに対し、同時に個体をワクチン接種し得る。かかる疾患及び状態としては、本明細書中に記載されたいずれかのもの及びHBV、HAV、HCV、口蹄疫、ポリオ、ヘルペス、狂犬病、AIDS、デング熱、黄熱、マラリア、結核、百日咳、腸チフス、食中毒、下痢、髄膜炎及び淋病が挙げられる。糖及びタンパク質のエピトープは、ワクチンが保護をもたらすことを意図する疾患に適切であるように選ばれる。
【0057】
本発明は、被験体に本発明のタンパク質又は粒子を投与することを含む、被験体中における免疫反応を引き起こす方法を提供する。好ましくは免疫反応は、バークホルデリア属、例えば、Burkholderia pseudomallei又はBurkholderia malleiに対するものである。
【0058】
「個体(individual)」及び「被験体(subject)」という用語は、限定するものではないが、ヒト並びに、チンパンジー及び他の類人猿等の非ヒト霊長類を含む他の霊長類並びにサルの種;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマ等の家畜;イヌ及びネコ等の家畜哺乳類;マウス、ラット及びモルモット等の齧歯類並びにブタを含む実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ及び他の家禽(gallinaceous bird)、アヒル(duck)、ガチョウ(goose)、及び同様のもの等の飼育(domestic)鳥、野鳥並びに狩猟鳥を含む鳥類を含む、脊索動物亜門(subphylum cordata)の任意の一員に言及するために、本明細書中において交換可能に用いられる。用語は、特定の年齢を表していない。従って、成人及び新生児の個体の両方が対象になることが意図される。上述の脊椎動物の全ての免疫系は同じように働くことから、本明細書中に記載された方法は、これらのどの脊椎動物種のいずれかにおける使用が意図される。
【0059】
いくつかの例では、本発明は、任意の適切な被験体及び特に所与の種の任意の適切な被験体、好ましくは適切なヒト被験体に投与され得る。従って、可能な限り多くの被験体が、例えば、被験体のうちの任意の特定の群に重点を置くことなく、投与を受け得る。例えば、被験体の集団の全体又は可能な限り多くが、投与を受け得る。
【0060】
本発明のタンパク質又は粒子は、被験体への投与のためのものである。それは、アジュバントと同時に投与され、又はアジュバントとともに連続して(sequentially with)投与され得る。従って、タンパク質又は粒子を含む本発明の組成物は、アジュバントも含み得る。本発明の組成物は、(皮内、皮下、筋肉内、静脈内、骨内、及び腹腔内等の)注射、経皮粒子送達(transdermal particle delivery)、吸入により、局所に、経口で又は(鼻、舌下、膣又は直腸等の)経粘膜的に送達されるものであり得る。
【0061】
組成物は、従来の医薬調製物として製剤化され得る。このことは、当業者に利用可能な標準の医薬製剤化学及び方法を用いてなされ得る。例えば、アジュバントとともに又はアジュバントを伴わずにタンパク質又は粒子を含有する組成物が、液体製剤を提供するために1以上の医薬的に許容可能な賦形剤又はビヒクルと組み合わされ得る。従って、また、医薬的に許容可能な担体又は希釈剤とともにタンパク質又は粒子を含む医薬組成物が提供される。組成物は、所望によりアジュバントを含む。
【0062】
湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質(buffering substance)等の補助物質が、存在し得る。これらの担体、希釈剤及び補助物質は、通常、過度の毒性を伴わずに投与され得、かつ、抗原性組成物(antigenic composition)の場合には組成物を受容する個体中の免疫反応をそれ自体は引き起こさないであろう医薬品である。医薬的に許容可能な担体としては、限定されるものではないが、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール及びエタノール等の液体が挙げられる。医薬的に許容可能な塩、例えば、鉱酸塩(mineral acid salt)(塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩及び同様のもの等)及び有機酸の塩(酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩、及び同様のもの等)も、これらに含まれ得る。また、必須ではないが、ペプチド、タンパク質又は他の類似分子(other like molecules)を組成物中に含めるつもりであれば、調製物が、特にそれらのための安定剤(stabilizer)として働く医薬的に許容可能な担体を含むことも好ましい。ペプチドのための安定剤としても働く適切な担体の例としては、限定するものではないが、医薬品グレードのデキストロース(dextrose)、蔗糖、乳糖(lactose)、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストラン等が挙げられる。他の適切な担体としては、やはり限定するものではないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウム又はリン酸カルシウム、クエン酸、酒石酸(tartaric acid)、グリシン、高分子量のポリエチレングリコール(polyethylene glycol, PEG)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。医薬的に許容可能な賦形剤、ビヒクル及び補助物質の詳細な考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES (Mack Pub. Co., N.J. 1991) において利用可能であり、該文献は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0063】
別の方法として、タンパク質又は粒子及び/又はアジュバントは、粒状担体(particulate carrier)に封入され(encapsulated)、吸着され(adsorbed to)、又は粒状担体と結合し得る(associated with)。適切な粒状担体としては、ポリメチルメタクリレートポリマーから得られるもの、及びポリ乳酸(poly(lactides))及びポリ(ラクチド-コ-グリコリド)から得られるPLG微小粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al. (1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照。他の微粒子系及びポリマー、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン(polyarginine)、ポリオルニチン(polyornithine)、スペルミン(spermine)、スペルミジン(spermidine)、及びこれらの分子の複合体等のポリマーも使用され得る。
【0064】
一旦製剤化された組成物は、様々な既知の経路及び手法を用いて被験体にインビボで送達され得る。例えば、液体製剤は、注射剤、懸濁剤又は乳剤として提供され、従来の注射針(needle)及び注射器を用いて、又は液体ジェット注入系(liquid jet injection system)を用いて、非経口、皮下、皮内、筋肉内、静脈内 骨内及び腹腔内注射によって投与され得る。また、液体製剤は、皮膚又は(例えば、鼻、舌下、膣又は直腸の)粘膜組織へ局所投与され得、又は呼吸投与又は経肺投与のために適した微粉化された噴霧器(finely divided spray)として提供され得る。投与の他の方法としては、経口投与、坐薬、及び能動的又は受動的経皮送達手法が挙げられる。
【0065】
通常、本発明のタンパク質又は粒子は、免疫反応の調節において有効であろう量において被験体に投与される。適切な有効量は、比較的広い範囲に収まるであろうが、当業者によりごく普通の取り組み(routine trial)によって容易に決定され得る。“Physicians Desk Reference”及び“Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics”が、必要量を決定するために有用である。予防的有効量は、疾患又は疾病の1以上の症状の発症(onset)を予防する量である。
【0066】
通常、タンパク質又は粒子は、0.1〜200 mg、好ましくは1〜100 mg、より好ましくは10〜50 mg体重の用量において投与される。ワクチンは、単回投与計画(single dose schedule)又は複数回投与計画、例えば2〜32回又は4〜16回の投与で与えられ得る。上述した投与経路及び用量は、単に指針としての意図であり、経路及び用量は、最終的に医師の裁量であり得る。
【0067】
いくつかの事例では、初回投与後に本発明の組成物のそれに続く投与が行われ得る。特に、初回投与の後に、被験体は、「追加免疫(booster)」を与えられ得る。追加免疫は、例えば、本明細書中に言及されたもののいずれかから選ばれた用量であり得る。追加免疫投与は、例えば、初回投与後、少なくとも1週間、2週間、4週間、6週間、1ヶ月、2ヶ月又は6ヶ月であり得る。
【0068】
本発明のタンパク質又は粒子及びアジュバントは、連続して又は同時に、好ましくは同時に投与され得る。2の構成要素(entity)が、同じ又は異なる組成物、好ましくは同じ組成物において投与され得る。アジュバント効果がみられる、すなわち、みられた免疫反応が、アジュバントが抗原とともに投与されなかった場合と異なるように、アジュバントが送達される。2の構成要素は、同じ又は異なる部位、好ましくは同じ部位に投与され得る。好ましくは、2の構成要素が、同じ組成物で同じ部位に同時に、好ましくは注射により投与される。
【0069】
任意の適切なアジュバントが使用され得る。現在使用されるワクチンアジュバントとしては、
- アルミニウム塩(例えば、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム)又はリン酸カルシウム等の無機化合物。アルミニウム塩は、別名ミョウバン(alum)として知られている。
- 油乳剤(Oil emulsion)及び界面活性剤をベースとする製剤、例えば、MF59 (ミクロ流動化界面活性剤によって安定化した(microfluidised detergent stabilised)水中油型乳剤)、QS21 (精製サポニン(purified saponin))、AS02 [SBAS2] (水中油型乳剤 + MPL + QS-21)、モンタニド(Montanide)ISA-51及びISA-720 (安定化油中水型乳剤)。
- 粒子状アジュバント、例えば、ビロソーム(virosome) (例えば、インフルエンザの血球凝集素を包含する単層リポソームビヒクル(unilamellar liposomal vehicle))、AS04 ([SBAS4] Al塩とMPL)、ISCOMS (サポニン及び脂質の構造化複合体(structured complex))、及びポリラクチドコ-グリコリド(PLG)。
- (天然及び合成の)微生物派生物(Microbial derivative)、例えば、モノホスホリルリピドA (MPL)、Detox (MPL + M. Phlei細胞壁骨格)、AGP [RC-529] (合成アシル化単糖(acylated monosaccharide))、DC_Chol (自己組織化によりリポソームを形成可能な類脂質免疫刺激物質(lipoidal immunostimulator))、OM-174 (脂質A 派生物)、CpGモチーフ(免疫刺激CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、及び改変されたLT及びCT (非毒性のアジュバント効果をもたらすための遺伝子改変細菌毒素)。
- 内因性(Endogenous)のヒト免疫刺激物質、例えば、hGM-CSF又はhIL-12 (タンパク質又はコードされたプラスミドのいずれかとして投与され得るサイトカイン)、及びイミュダプチン(Immudaptin) (C3dタンデム配列)。
- 金粒子等の不活性のビヒクル。
が挙げられる。
好ましくは使用されるアジュバントはミョウバンである。最も好ましくは、アジュバントは、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムの混合物、例えばInject alum (Pierce Laboratories)である。
【0070】
本発明は、以下の実施例により説明される。
【実施例】
【0071】
材料と方法
コンストラクトの設計
全てのタンデムコアクローンは、親コンストラクトCoHo7eから得られる。この型のタンデムコアでは、上述のように、α-へリックスとの、「つり合いがとられ」、HBcの両方のコピーは、核酸結合領域が除去される。従って、両方の型のコアが基本的に同一であるため、コンストラクトは同種直列 (homo-tandem) であることが示され(designate)、唯一の違いは、制限酵素部位を改変可能にするサイレント突然変異(silent mutation)である。使用されたタンデムコアCoHo7eの配列は、
MDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVGNNLEGSAGGGRDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVGGSSGGSGGSGGSGGSGGSGGSTMDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVGNNLEFAGASDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVL (配列番号4)
であった。
【0072】
H3Hoコンストラクトは、国際出願第WO 2001/077158号において概略が述べられているように、元のCoHoの型のタンデムコアに基づくものであった。CPSが標準のアミンの化学的性質を用いて結合され得る反応性の「ホットスポット」を生じさせるであろうヘキサリジン(hexa-lysine)インサートを設計した。これらは、合成設計(design synthetically)され、配列AAALAAA (配列番号3)を含む再設計されたMIRを含み、上述のように、a-へリックスとの「つり合いをとった」。合成のインサートを連結(ligate)して、H3Hoを作製した。最終的な配列を検証し、該配列は以下の通りであった:
MSDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAEGSDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVGGSSGGSGGSGGSGGSTMDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAESGDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVLE
(配列番号5)
【0073】
別のアプローチは、バークホルデリア属から単離されたタンパク質抗原を挿入することであった。LolCタンパク質は、以前に免疫原性があることが示され、それゆえインサートの候補として選ばれた。しかしながら、VLPの集合が妨げられないことを確実にするために、a-へリックスの折り畳み領域がN及びC末端の両方において見つけられた。従って、抗原の挿入は、a-へリックスの2次構造からの、HBcスパイクのa-へリックスへの挿入だろう。現在、LolCについての結晶学的データ(crystallographic data)はなく、それゆえ、構造を、PSIPREDアルゴリズム(http://bioinf.cs.ucl.ac.uk/psipred/)を用いて予測した。予測された挿入及び隣接領域を化学的に合成し、H3Hoのコア1に標準の連結反応(ligation)手法を用いて挿入した。最終的なシークエンシングにより、これが成功したことを確認した。LolC-空配列:
MDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAEGSALGVAALIVVLSVMNGFQKEVRDRMLSVLAHVEIFSPTGSMPDWQLTAKEARLNRSVIGAAPYVDAQALLTRQDAVSGVMLRGVEPSLEPQVSDIGKDMKAGALTALAPGQFGIVLGNALAGNLGVGVGDKVTLVAPEGTITPAGMMPRLKQFTVVGIFESGHYEYDSTLAMIDIQDAQALFRLPAPTGVRLRLTDMQKAPQVARELAHTLSGDLYIRDWTQQNKTWFSAVQIEKRMMFIILTLIIAVAAFNLVSSLVMTVTNKQADIAILRTLGAQPGSIMKIFVVQGVTIGFVGTATGVALGCLIAWSIPWLIPMIEHAFGVQFLPPSVYFISELPSELVAGDVIKIGVIAGSDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVGGSSGGSGGSGGSGGSTMDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAESGDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVLE (配列番号6)
【0074】
LolC挿入物の2のバリエーションを、次にPstI及びXhoIを用いてH3Ho LolC-空コンストラクトのコア2を切断する(cleave)ことにより作製した。反復(repeating)アラニン残基が隣接(flank)したヘキサリジン又は単独のリジンのいずれかを含む、合成のインサートを、次に連結した。やはり、シークエンシングにより、それらの同一性を確認した。LolC-K6配列:
MDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAEGSALGVAALIVVLSVMNGFQKEVRDRMLSVLAHVEIFSPTGSMPDWQLTAKEARLNRSVIGAAPYVDAQALLTRQDAVSGVMLRGVEPSLEPQVSDIGKDMKAGALTALAPGQFGIVLGNALAGNLGVGVGDKVTLVAPEGTITPAGMMPRLKQFTVVGIFESGHYEYDSTLAMIDIQDAQALFRLPAPTGVRLRLTDMQKAPQVARELAHTLSGDLYIRDWTQQNKTWFSAVQIEKRMMFIILTLIIAVAAFNLVSSLVMTVTNKQADIAILRTLGAQPGSIMKIFVVQGVTIGFVGTATGVALGCLIAWSIPWLIPMIEHAFGVQFLPPSVYFISELPSELVAGDVIKIGVIAGSDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVGGSSGGSGGSGGSGGSTMDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAESGGSGSKKKKKKGSGSSGDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVLE (配列番号7)
【0075】
LolC-K1配列:
MDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAEGSALGVAALIVVLSVMNGFQKEVRDRMLSVLAHVEIFSPTGSMPDWQLTAKEARLNRSVIGAAPYVDAQALLTRQDAVSGVMLRGVEPSLEPQVSDIGKDMKAGALTALAPGQFGIVLGNALAGNLGVGVGDKVTLVAPEGTITPAGMMPRLKQFTVVGIFESGHYEYDSTLAMIDIQDAQALFRLPAPTGVRLRLTDMQKAPQVARELAHTLSGDLYIRDWTQQNKTWFSAVQIEKRMMFIILTLIIAVAAFNLVSSLVMTVTNKQADIAILRTLGAQPGSIMKIFVVQGVTIGFVGTATGVALGCLIAWSIPWLIPMIEHAFGVQFLPPSVYFISELPSELVAGDVIKIGVIAGSDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVGGSSGGSGGSGGSGGSTMDIDPYKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYREALESPEHCSPHHTALRQAILCWGELMTLATWVAAALAAAESGGSGSGGGKGGGSGSSGDPASRDLVVNYVNTNMGLKIRQLLWFHISCLTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTLPETTVVLE (配列番号8)
【0076】
プラスミドの設計
タンパク質発現を2の系、酵母Pichia pastoris及びバキュロウイルス(baculovirus)ベクターを用いて実施した。これは、2の異なるプラスミド、特に、酵母のためのpPICz (Invitrogen)及びバキュロウイルスのためのpOET1 (Oxford Expression Technologies)の使用を必要とした。H3Ho配列を、MfeI及びpspOMIを用いてpPICzのマルチクローニングサイト(multi-cloning site)に挿入し、一方、pOET1を、pspOMI及びBclIを用いて挿入した。
【0077】
酵母中におけるタンデムコアのタンパク質発現
酵母を、エレクトロポレーションにより300ngの線状化(linearised)プラスミドDNAで形質転換した。酵母を、次に100μg/mlゼオシン(Zeocin)を含有するYPDプレート上に画線培養し(streak)、最も大きなコロニーを選択した。これらのクローンを、次にゼオシンの濃度を増加させて個別に試し(challenge)、最も耐性のあるクローンを選択して、エレクトロポレーションにより2度目の形質転換をした。処理過程を、クローン選択のためのより高濃度のゼオシンを有する選択プレートを用いて繰り返した。このような方法で、VLP発現レベルを大いに向上させた高コピー数のクローンを開発した。大規模な(Large scale)酵母培養物を、200mlsのYPD中において準備した。約4日後に、培地を、誘導培地(induction media)と交換し、酵母を、メタノール(0.8%、72時間)を用いて誘導した。この期間後、酵母細胞を、1500gでの遠心分離により採取し、沈殿物(pellet)を、-80
oCで精製前に保存した。
【0078】
バキュロウイルスにおけるタンデムコアのタンパク質発現
組換えウイルスを、共トランスフェクション(co-transfection)によりSf9昆虫細胞中において作製した。flashBACPRIMEウイルスDNA (100ng)及び導入ベクター(transfer vector) DNA (500ng; pOET1-K6-lolc)をリポフェクチンリポソーム形成試薬(Lipofectin liposome forming reagent) (baculoFECTIN)とともにそれぞれ含有するデュプリケート(duplicate)の反応混合物を、Sf9昆虫細胞が1×10
6細胞/ディッシュの密度(density)で播種された35mm
2ディッシュに加えた。ディッシュを、次に28℃で5日間インキュベートし、続いて各ウイルスを含有する培地を、無菌のチューブに採取した。ウイルスストックを、0.5 mlの共トランスフェクションミックスで感染させた2×10
6細胞/mlの密度の50 mlのSf9細胞から作り出した。感染させた振盪培養物(shake culture)を、5日間、28℃でインキュベートし、次に500xg、20分間、4℃での遠心分離により採取した。タンパク質の発現のために、Sf9細胞を、35mm
2ディッシュ中に1×10
6細胞/ディッシュで播種し、一方、Tni細胞を、0.5×10
6細胞/ディッシュで播種した。各ディッシュを、ウイルスにmoi 5で感染させた。72時間、28℃でのインキュベーションに続いて、細胞ペレット及び上清(supernatant)を各ディッシュから採取した。
【0079】
タンパク質の精製
使用された発現ベクター又はインサートの性質にかかわらず、精製を、同様の方法で実施した。溶解バッファ(20mM Tris pH 8.4、5mM EDTA、 5mM DTT、 2mM AEBSF)中において2.5g湿重量/10mls溶解バッファの割合で再懸濁する前に、誘導された細胞を、採取し、遠心沈降させた(300xg)。結果として生じる溶液を、次に500psiに設定されたマイクロナイザー(microniser) (AVP Gaulin LAB 40)を3度通過させた。界面活性剤(Triton X100)を加えて0.5%溶液を作製し、上清を採取する前に、溶解物を、30分間(25,000xg)回転(spin)させた。浄化された上清(clarified supernatant)を、0.8umデッドエンドフィルター(dead end filter) (Nalgene)を通過させ、続いて0.45um及び最後に0.2umろ過にかけた。この物質(material)を、1MDaの分画分子量(molecular weight cut-off) (Pellicon)でタンジェンシャルフローデバイス(tangential flow device)を通過させる前に、10倍希釈した(20mM Tris pH 8.4, 5mM EDTA)。このステップは、低分子量の混入物質を除き、かつ、体積を25mlsに減少させた。
【0080】
濃縮した溶解物を、次にAkta Pure FPLCシステムにより作動された、セファロースCL4B樹脂(resin)を詰めたXK26/92カラムにアプライした。バッファは、20mM Tris pH 8.4、5mM EDTAであった。画分を、260、280及び350nmで測定した。空隙容量がVLP等の大きなタンパク質を含むことから、空隙容量を回収した。カラム中の、残存単離タンパク質を廃棄した。空隙容量画分を、ため(pool)、タンジェンシャルフロー(Pellicon)を用いて濃縮し、10mlsまで戻した。この物質を、次にセファリクル(Sephacryl) S1000樹脂を詰めたXK26/55カラムを通過させた。この樹脂は、ずっと大きな細孔径(pore size)を有し、他の大きなタンパク質からVLPを分離(resolve)することができる。以前に、本発明者らは、組換え単量体(recombinant monomeric)HBc (Biospacific Inc)を用いてカラムを較正(calibrate)し、それゆえ集合したVLPがいつ溶出する(elute)かを知っていた。これらの分画を、回収し、最終的にタンジェンシャルフローで濃縮した。
【0081】
タンパク質の同一性及び評価
試料を精製過程の各ステップにおいて定期的に保存し、それゆえに製造過程の(in-process)測定が可能になった。各発現系が疑う余地なくVLPを作製するが、全てのタンデムコアタンパク質がこの最終的なコンホメーションを実現するわけではないことが知られている。それゆえ、除く必要のある最も重要な混入物質は、実際には、単量体又は異常な折り畳み状態(misfolded state)のいずれかのタンデムコア自体であった。しかしながら、SDS-PAGE及びウエスタンブロッティングは、本質的に(by definition)、変性させる(denaturing)手法であり、それゆえ、これらを、FPLCカラムにおける保持時間を用いて推定され得るタンパク質のサイズの知見と結び付ける必要があった。
【0082】
タンデムコアを含有する試料を、12.5% SDS-ポリアクリルアミドゲル(Laemmli, 1970)において処理過程の全ての段階で電気泳動により特性を明らかにし、続いてクマシーブルー染色を行った。HBcタンパク質に対するモノクローナル1次抗体(10E11[Abcam])を用い、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼに結合されたマウス2次抗体及び化学発光基質ECLplus (Amersham Pharmacia)を用いて、ウエスタンブロット解析を上述(Konig, et al., 1998)の通り行った。タンパク質濃度をブラッドフォード法(BioRad)により測定した。
【0083】
電子顕微鏡法
全ての試料を、20 mM Tris HCl pH 8中において0.1 mg / mlに希釈し、グリッド(grid)への吸着の直前に水槽式超音波発生器(water bath sonicator)中において45 秒間、超音波で分解した(sonicated)。パラフィルム上の、希釈された試料の液滴上に、ホルムバール(Formvar)/炭素被覆銅グリッド(400メッシュ)を、炭素側(carbon side)を下にして置いた。物質を、10分間、吸着させた。グリッドを、次に1 %酢酸ウラニル(uranyl acetate)の4回の交換において洗浄した。ブロッティング及び空気乾燥より前に、グリッドを、酢酸ウラニルの最後の交換とともに、20秒間インキュベートした。FEI Tecnai G2 TEMにおいてグリッドを観察し、デジタル画像を取得した。画像を、87,000x、43,000x及び26,000xの倍率で取得した。
【0084】
LolCの抗原性についてのELISA
96-ウェルマイクロタイタープレートを、100μL/ウェルの精製されたLolC (標準品、2〜0.03 μg/mL)、VLP (ネガティブコントロール、30〜0.2μg/mL)及びVLP-LolC (検査試料、30〜0.2μg/mL)を用いて、24時間、4℃で被覆した。全ての試料を、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline) (1x Dulbecco’s PBS, Invitrogen)中において順次に2倍希釈した。各ウェルを、PBS-0.05% Tween 20を用いて3回洗浄し、5% (w/v)スキムミルク(skimmed milk powder)を含有する200μLのPBSで1時間、37℃にてブロッキングした。各ウェルを、次に、PBS-0.05% Tween 20で3回洗浄し、内毒素(endotoxin)が含まれていないLolCタンパク質 (100μL/well)でワクチン接種されたマウスからの血清の1:1000希釈物を加え、1時間、37℃でインキュベートした。PBS-Tween 20中での3回の洗浄の後に、ヤギ抗-マウスIgG西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体(conjugate)の1:2000希釈物を、各ウェル(100μL)に加え、1時間、37℃でインキュベートした。414nmでの光学密度(optical density)測定より前に、各ウェルを、PBS-Tween 20中において更に6回洗浄し、室温で20分間インキュベートすると同時に、結合した複合体を、ABTS/過酸化水素基質(hydrogen peroxide substrate) (100μL/well)で検出した。
【0085】
VLPへのCPSの化学的結合
メタ過ヨウ素酸ナトリウム(Sodium meta-periodate) (6 mg, 0.3 mmol)及びCPS (5 mg)を、PBS (1 ml)中に溶解させ、反応混合物を、室温で1時間放置した。過剰なメタ過ヨウ素酸ナトリウムを、PBSで平衡化されたPD-10脱塩用カラム(GE Healthcare)を用いて除去した。酸化CPSを、PBS中において5 mg/ml (1 ml)でタンパク質溶液に加えた。20 μlのNaBH
3CN [10 mMNaOH中において1 M]を、溶液に加え、4日間室温で暗所において放置した。20 μlのNaBH
4 [10 mMNaOH中において1M NaBH
4]を加え、撹拌(agitation)後、反応液を、40分間放置した。溶液を、MQ-H
2O中に希釈し、重炭酸アンモニウムバッファ(ammonium bicarbonate buffer) [20 mM, pH 7.8]に対して徹底的に透析し(extensively dialyzed)、真空内でスピードバックを用いて(in vacuousing speed-vac)(Thermo Scientific)濃縮した。
【0086】
濃縮タンパク質試料を、AKTA Xpress FPLC精製系において精製した。複合体溶液(conjugate solution)を、S500セファロースSECカラムXK 26/60 (GE Healthcare)に注入し、重炭酸アンモニウムバッファ(20 mM, pH 7.8)を用いて1 ml/分で溶出した。全ての画分(2.5 ml)を回収し、糖質(carbohydrate)についてフェノール:硫酸法(phenol:sulphuric acid assay)を用いて、並びにTEM及びドットプロット解析によって解析した。統合画分(pooled fraction)を、真空内で(in vacuo) (スピードバック, Thermo Scientific)濃縮し、PBSに透析した。
【0087】
結果
酵母試料からのタンパク質単離
試料を、処理過程の間中ずっと採取し、それゆえ処理過程が進むにつれての純度強化(purity enrichment)をたどることが可能であった。最も重要なことだが、存在するインサートにかかわらず、溶解後(post-lysis)の最初の遠心分離の後、タンデムコアの大部分は、可溶性画分中において発見された。コアタンパク質のうちの少数のみがこの回転からの沈殿物から発見され、このことは、キメラVLP (chimeric VLP)がその複雑な組成(complex composition)にもかかわらず、依然として可溶性のままであることを示唆する。
【0088】
親和性クロマトグラフィーがタンデムコアに容易に適合しない(not compatible)ことが見出されたことから、酵母又はバキュロウイルス溶解物のいずれかからのVLPの単離は、やや異例である。従って、考え出された方法は、試料内のサイズ階級(size class)を徐々に精製すること(gradual refinement)をベースとするものであった。最初に、非常に大きな残屑(debris)をろ過によって除去し、存在する200nm以下の粒子を残した。試料を、次に1MDa分画分子量でタンジェンシャルフローフィルターを通過させた。これは、大きなVLPを保持するが、低分子量の混入物質のいくらかを除去することに役立った。
【0089】
試料を、次にCL4Bサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography, SEC)を用いて分離した。このマトリックスは、比較的小さな細孔径を有し、VLPを含む非常に大きな物質は、樹脂に入らないだろう。従って、大きな物質は、直接的にカラムを通過し、空隙容量において発見される。しかしながら、かなりの量の小タンパク質が樹脂に入り、遅らせられる(retarded)。従って、空隙容量のみを保つことにより、試料は効率的に濃縮される。SDS-PAGE及びウエスタンブロットは、タンデムコアの大部分が、確かに、CL4B空隙容量中において発見されることを再度示す。
【0090】
CL4B空隙試料(void sample)を、次にS1000 SECカラムを通過させた。これは、従来、核酸等の大きな分子を単離するために使用されるが、他の大きな残屑からVLPを分離することもできる。カラムは、タンデムコアVLP (34.6nm)と同様のサイズのVLPとして既知の組換えHBcを用いて前もって較正された。従って、タンデムコアVLPがカラム溶出の最終(final)1/3において発見されるはずであることを断定可能であった。これは、確かに事実であり、純粋なVLPがこれらの画分から単離された。これは電子顕微鏡法によって確認された。
【0091】
図1〜3は、酵母試料からのタンパク質の単離についてのデータを含む。SDS-PAGEは、タンデムコアが酵母溶解物の可溶性画分において発見されることを確認した(
図1)。
図2は、VLPがCL4Bカラムの空隙容量から単離されたことを示す(
図2Bの左パネルにおける大きなピーク)。CL4B空隙を、次にS1000 カラムを通過させ、VLPを、画分12〜15から単離した。純度を、SDS-PAGE及びウエスタンブロットにより確認した(
図3)。
【0092】
バキュロウイルス試料からのタンパク質の単離
タンデムコアタンパク質は、最初の25,000xg回転からの上清中においても発見され、VLPが可溶性であることを再度示唆した。SDS-PAGE及びウエスタンブロットは、タンパク質が不溶性沈殿物となって失われることは実に少ないことを確認した。あらゆる点で、バキュロウイルスからのVLPの単離は、酵母からのものとよく似ていた。しかしながら、タンデムコアと共精製されるバキュロ-ビリオンを発見することが一般的であるため、1の大きな違いがあった。これは、両方ともSDS-PAGE中において50KDaバンド(
図4A)として検出可能であり、また、電子顕微鏡写真において長い小管として明瞭に見えた(
図4B)。
【0093】
何回かの精製の繰り返し(purification iteration)にもかかわらず、バキュロウイルス中において作製されたVLPを均一(homogeneity)に精製することはできなかった。従って、VLPのための好ましい発現系は酵母系である。
【0094】
CPSへの結合
結合のアプローチの実現可能性を実例で示すため、フルオレセインイソチアシアネート(Fluorescein isothiocyanate, FITC)を、前もって概要を説明された手法を用いてVLPへ結合した。
【0095】
SDS-PAGEは、本質的に、変性させる手法であるため、これらのデータは、タンデムコア組み立てブロックの分子量が増加したので、タンデムコア組み立てブロックが効率的に改変されたことを示していることは留意する必要がある(
図5)。しかしながら、これらの結合された粒子が、スクロースクッションにおいて動いた場合、蛍光バンドが、VLP領域においてみられ、それゆえ結合がVLPの破壊を伴わずに成し遂げられたという事実を支持する(
図6)。
【0096】
同様に、本発明者らは、CPSの結合自体もこれをウシ血清アルブミンに結合することにより可能であることを更に実例で示す(
図7)。従って、本発明者らは、CPSの結合が本発明者らの規定した化学的方法を用いて可能であり、VLPへの結合も存在することを示した。従って、直接的なVLPへのCPSの連結反応も、実現可能のはずである。
【0097】
抗原性及び免疫原性
CPSのVLPへの結合は、根本的に糖タンパク質の3次構造を変更するべきではない。複合体のインビボでの検査は進行中である。
【0098】
しかしながら、別のアプローチは、抗原を直接的にタンデムコア分子へ挿入することである。これは挿入された抗原で高度に修飾された(decorated)VLPをもたらす可能性があるが、それは両端でつながれるために、もしかするとインサートの折り畳みに厳しい立体構造の制限(steric restriction)を課すかもしれない。これを調べるために、LolCインサートを有するVLPを、野生型のバークホルデリア属細菌に感染させたマウスにおいて産生された抗体を用いるELISAにおいて検査した。
意外なことに、VLPを有するLolCは、野生型LolCタンパク質自体とほぼ同じくらい高い親和性で認識された。ロード無しのVLPに小さい反応があるが、反応は、明らかに大部分がインサートに対するものであった(
図8)。
図8について、VLP LolCに対応する線では、30 ug/mlについての値が1.6及び1.8の平均ODの間にある。ロード無しのVLPに対応する線では、30 ug/mlについての値が0.4の平均OD近くにある。
【0099】
考察
単量体コアタンパク質の免疫原性は、そのMIRへ抗原性インサートを受け入れる能力と同様に、十分に立証されている。しかしながら、大きな又は疎水性のインサートが加えられた場合に、コア二量体がもはや形成されず、VLP形成が起こらない原因となることから、該技術が大きな欠点を有することも同様によく実証される。タンデムコアコンストラクトの開発は、この大きな制限を克服する。
【0100】
挿入されたタンパク質抗原のための送達系としてのタンデムコアの有用性は、他所で実例により示されているが、化学結合の方法において該系を使用することも可能である。この事例では、非特異的なリンカーアミノ酸がMIRに挿入され、疾患特性(disease specificity)は、これらの前述の標的アミノ酸への抗原の化学結合によってもたらされる。この手法は、従来のクローニング手段を用いて加えることが可能でなかったであろう糖タンパク質を結合させることができるため、タンデムコアが運び得る抗原を更に多様にする。VLPの多量体性(multimeric nature)は、標的複合体の多数のコピーがVLPごとに加えられることを意味する。90〜120 HBc二量体が全てのVLP中に存在することを考えれば、非常に高い抗原送達密度(antigen delivery density)に達し得る。言うまでもなく、化学結合を特異的な抗原の挿入と組み合わせ、それゆえ特異的タンパク質及び特異的糖タンパク質の両方を同時に有するキメラ分子を作製することが可能である。
【0101】
VLPのための好ましい発現系は、酵母Pichia pastorisである。しかしながら、多数の系が、細菌、バキュロウイルス及び植物さえもベースとする発現を含めて、使用され得る。これらのデータは、系の特異性が完全に1次タンパク質配列によってもたらされ、特定の発現系に存在し得る翻訳後修飾との関連性はないことを証明する。更に、本発明者らは、使用された精製の戦略(purification strategy)が任意の発現系に適用可能であり、それゆえ工業的過程への拡大の可能性があることを実例で示した。
【国際調査報告】