(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512555(P2017-512555A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】骨成長及び骨治癒を促進する方法
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20170421BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20170421BHJP
A61F 2/28 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
A61L27/18
A61L27/12
A61F2/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】49
(21)【出願番号】特願2016-557903(P2016-557903)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月9日
(86)【国際出願番号】US2015020926
(87)【国際公開番号】WO2015142823
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】61/954,156
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】502224803
【氏名又は名称】ザ ペン ステイト リサーチ ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100168893
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 正路
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジアン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
【Fターム(参考)】
4C081AB02
4C081AB04
4C081AC03
4C081BA12
4C081CA161
4C081CA211
4C081CA231
4C081CD34
4C081CF022
4C081CF032
4C081CF051
4C081CF062
4C081CG08
4C081DB03
4C081DC12
4C081DC14
4C097AA01
4C097AA10
4C097BB01
4C097DD01
4C097EE07
(57)【要約】
一態様では、骨成長を促進する方法が本明細書で記載される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、骨成長部位にグラフト又はスキャフォールドを配置することを含む。グラフト又はスキャフォールドは、(a)(i)クエン酸、クエン酸塩又はクエン酸のエステルと(ii)ポリオールとの反応生成物から形成されたポリマーネットワークを含む。グラフト又はスキャフォールドは、(b)ポリマーネットワーク中に分散された粒子状無機物質をさらに含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨成長を促進する方法であって、
(a)(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと(ii)ポリオールとの反応生成物から形成されたポリマーネットワーク、及び
(b)ポリマーネットワーク中に分散された粒子状無機物質
を含むスキャフォールドを骨成長部位に配置することを含む方法。
【請求項2】
粒子状無機物質が、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、二相性リン酸カルシウム、バイオガラス、セラミックス、マグネシウム粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スキャフォールドが、グラフト又はスキャフォールドの総重量に基づいて、約70重量パーセントまでの粒子状無機物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
クエン酸のエステルがクエン酸トリエチルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ポリオールが、C2〜C20のα,ω-n-アルカンジオール又はC2〜C20のα,ω-アルケンジオールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリマーネットワークが、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)アミン、アミド、又はイソシアネートとの反応生成物から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アミンが2個から10個の炭素原子を有する1種以上の第一級アミンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アミンが2個から15個の炭素原子を有する1種以上の第二級又は第三級アミンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
イソシアネートがモノイソシアネートを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
イソシアネートがアルカンジイソシアネートを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
アミン、アミド、又はイソシアネートがカテコール部分を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
アミンがドーパミンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーネットワークが、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の機能的同等物との反応生成物から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ポリカルボン酸がジカルボン酸を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリカルボン酸の機能的同等物が、ポリカルボン酸の環状無水物又は酸塩化物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ポリカルボン酸又はその機能的同等物がエチレン性不飽和である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ポリカルボン酸又はその機能的同等物が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、又はフマリルクロリドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリマーネットワークが、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)アミノ酸との反応生成物から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
アミノ酸がアルファ-アミノ酸を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
アミノ酸が、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はD,L-アミノ酸を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
アミノ酸がアルキル置換アルファ-アミノ酸を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
アミノ酸が、タンパク質構成アミノ酸から誘導されたメチル置換アミノ酸を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アミノ酸が、ポリマーネットワークのペンダント基を形成している、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
アミノ酸が、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)又はD-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(D-DOPA)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
ポリマーネットワークが、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)カテコール含有種との反応生成物から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
カテコール含有種が3,4-ジヒドロキシヒドロケイ皮酸を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
反応生成物が縮合反応生成物である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ポリマーネットワークが、式(A)の1種以上のモノマー及び式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー:
【化1】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
5は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
6は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
M
+は、一価の陽イオンであり、
n及びmは、独立して、1から20の範囲の整数である)
から形成された、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
ポリマーネットワークが、式(A)の1種以上のモノマー及び式(B4)、(B5)、又は(B6)の1種以上のモノマー:
【化2】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
22は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、-CH
2CH
3、-NH
2、NHCH
3、-CH
2CH
2NHCH
3、-N(CH
3)
2、又は-CH
2CH
2N(CH
2CH
3)
2であり、
R
23は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3、-(CH
3)
2、又は-(CH
2CH
3)
2であり、
R
24は、-H又は-CH
3であり、
R
25は、-(CH
2)
a-、-(CH
2CH
2O)
b-又は-(CH
2OCH
2)
b-であり、
R
26は、-H、-CH
3、又はC2〜C20アルキルであり、
R
27は、-H、-C(O)CH
3、又は-C(O)CH
2CH
3であり、
R
28及びR
29は、独立して、-OH又は-NH
2であり、
M
+は、一価の陽イオンであり、
X及びYは、独立して、-O-又は-NH-であり、
Zは、-H、-CH
3、-(CH
3)
2、-(CH
2CH
3)
2、又は
【化3】
であり、
aは、0から20の整数であり、
bは、0から2000の整数であり、
nは、1から2000の間の整数であり、
m及びpは、独立して、1から20の範囲の整数であり、
式(B4)のモノマーは、-OH又は-NH
2を含む少なくとも1つの末端を有する]
から形成された、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
ポリマーネットワークが、式(A)の1種以上のモノマー、式(B4)、(B5)又は(B6)の1種以上のモノマー、及び1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成された、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーが、式(H)又は(H')
【化4】
(式中、R
30は、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
のモノマーを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーが、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)、又は(I6)
【化5】
(式中、
R
30は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
Xは、-NH-又は-O-である)
のモノマーを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
ポリマーネットワークが、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、1つ以上のアルキン部分又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマー、及び第二級又は第三級アミン含有ジオールを含む1種以上のモノマーから形成された、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
第二級又は第三級アミン含有ジオールがN-メチルジエタノールアミンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
ポリマーネットワークが多孔性のコア成分を形成している、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
スキャフォールドが、多孔性のコア成分を包囲する多孔性のシェル成分をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
コア成分及びシェル成分が同心円筒である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ポリマーネットワークが、約800nmから約1000μmの平均気孔径を示す、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
骨成長部位が頭蓋冠骨欠損を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
骨成長部位が脊椎欠損を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
骨成長部位及び/又は骨成長部位に隣接する生体部位への血液供給を回復させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
スキャフォールドにバイオファクター又は細胞を播種していない、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
骨成長部位及び/又は骨成長部位に隣接する生体部位内の骨伝導、骨誘導、骨形成、及び血管新生の1つ以上を増大させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
骨成長部位に近接した骨及び/又は軟組織の再生を刺激することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
骨成長部位にスキャフォールドを最長6カ月間維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条によって、その全体において参照によって本明細書に組み込まれる、2014年3月17日提出の米国仮特許出願第61/954,156号の優先権を主張する。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成第EB012575号、及び全米科学財団により授与された助成第DMR1313553号に基づく政府支援を受けてなされたものである。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、骨成長、修復、及び/又は治癒を促進するための方法及び組成物に関し、詳細には、グラフト又はスキャフォールド材料を使用して骨成長、修復、及び/又は治癒を促進する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
世界中で220万を超える骨移植手術が整形外科、脳神経外科、及び歯科を含む多様な分野で行われている。自家骨移植は、骨移植術の「ゴールドスタンダード」であるが、その比較的高い合併症発生率及び長期の回復時間を通して、その限界を示している。その使用は、8〜20%のドナー部位合併症発生率と関連付けられ、これには血腫、軟組織破壊、疼痛、及び回復時間の長期化が含まれる。さらに、骨粗鬆症集団における自家骨移植の使用は、利用可能な骨の質及び量の大幅な減少を考慮すると、通常禁忌である。最大の災難である骨癒合不能は、無効な材料の臨床的移植からも起こり得ることであり、結果として炎症及び瘢痕形成をもたらす。
【0005】
さらに、骨移植手術のおよそ50%が脊椎固定術であり、これは脊椎外科の分野で頸椎不安定症、腰椎の劣化、椎間板損傷、及び脊柱変形疾患を治療するための常法となっている。典型的には、脊椎固定手術は、脊椎の安定性及び神経の除圧を達成するのに有効である。しかしながら、癒合不全及び偽関節発症率は5から35%の高さであると報告されている。従来、自家骨は、その非免疫原性及び他の材料に比して高い椎間癒合率によって、椎間固定に最も広く使用される充填材料である。しかしながら、自家骨の使用は、外科的外傷、術後合併症のリスク増大、及び適切な自家骨の限られた量を含む多数の欠点によって限定されている。同種移植骨及び異種移植骨の適用が、自家骨の採取に伴うさらなる外科的外傷を回避しながら、限られた供給の問題を解決し得るものの、そのような材料は、自己免疫反応及び骨疾患が広がるリスクの増大の問題を持ち込む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上に特定した短所を、従前の方法及び組成物に関連するさらなる問題と併せて考慮すると、骨成長及び/又は骨修復を促進するための改良された材料が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、いくつかの実施形態でいくつかの他の方法及び組成物と比較して1つ以上の利点を提供し得る、骨成長、治癒、及び/又は修復を促進するための方法及び組成物が本明細書で記載される。例えば、いくつかの例では、本明細書に記載の方法及び組成物は、血腫、軟組織破壊、疼痛、及び/又は回復時間の長期化などのドナー部位合併症の発生の低減をもたらすことができる。さらに、いくつかの場合には、本明細書に記載の方法は、従前の方法が禁忌であり得る骨粗鬆症集団において使用することができる。さらに、ある特定の例では、本明細書に記載の方法は、骨癒合不能の発生の低減をもたらすことができ、それによってドナー部位での炎症及び/又は瘢痕形成の発生を低減する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の骨成長を促進する方法は、(a)(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと(ii)ポリオールとの反応生成物から形成されたポリマーネットワークを含むグラフト又はスキャフォールドを骨成長部位に配置することを含む。グラフト又はスキャフォールドは、(b)ポリマーネットワーク中に分散された粒子状無機物質をさらに含む。いくつかの実施形態では、粒子状無機物質は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、二相性リン酸カルシウム(biphasic calcium phosphate)、バイオガラス、セラミックス、マグネシウム粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子の1つ以上を含む。ある特定の場合には、グラフト又はスキャフォールドは、多孔性のシェル成分及び/又は多孔性のコア成分をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、グラフト又はスキャフォールドは、多孔性のコア成分を包囲する多孔性のシェル成分を含む。いくつかのそのような例では、コア成分及びシェル成分は同心円筒である。
【0009】
ある特定の場合には、ポリマーネットワークは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)少なくとも第3の材料又は成分との反応生成物から形成される。例えば、いくつかの例では、ポリマーネットワークは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)アミン、アミド、又はイソシアネートとの反応生成物から形成される。さらに、いくつかの実施形態では、ポリマーネットワークは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の機能的同等物との反応生成物から形成される。さらに、いくつかの場合には、ポリマーネットワークは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)アミノ酸との反応生成物から形成される。さらに、いくつかの例では、ポリマーネットワークは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール及び(iii)カテコール含有種との反応生成物から形成される。いくつかの実施形態では、ポリマーネットワークは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール並びに(iii)アルキン部分及び/又はアジド部分を含む少なくとも1種のモノマーとから形成される。さらに、ある特定の例では、ポリマーネットワークは、下式(A)の1種以上のモノマー、下式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、アルキン部分及び/又はアジド部分を含む少なくとも1種のモノマー、並びにアミン部分及び1つ以上のヒドロキシル部分を含む少なくとも1種のモノマー、例えば第一級、第二級、又は第三級アミン含有ジオールなどから形成される。
【0010】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、さらなるステップ又はプロセスを含む。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の方法は、骨成長部位及び/又は骨成長部位に隣接する生体部位(biological region)への血液供給を回復させることをさらに含む。ある特定の例では、方法は、骨成長部位及び/又は骨成長部位に隣接する生体領域(biological area)内の骨伝導、骨誘導、及び血管新生の1つ以上を増大させることを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、方法は、骨成長部位に近接した骨及び/又は軟組織の再生を刺激することをさらに含む。さらに、本明細書に記載の方法は、骨成長部位にグラフト又はスキャフォールドを最長6カ月間維持することを含むことができる。
【0011】
これらの及び他の実施形態を、以下の詳細な説明でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A−1Cは対照方法により治療された骨欠損の放射線画像である。
図1D−1Fは骨成長を促進する従前の方法により治療された骨欠損の放射線画像である。
図1G−1Iは本明細書に記載の一実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された骨欠損の放射線画像である。
図1J−1Lは本明細書に記載の一実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された骨欠損の放射線画像である。
【
図2A】骨成長を促進する対照方法、骨成長を促進する従前の方法、及び本明細書に記載の実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された試験対象から採取された骨試料の骨密度(BMD)のグラフである。
【
図2B】骨成長を促進する対照方法、骨成長を促進する従前の方法、及び本明細書に記載の実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された試験対象から採取された骨試料の骨梁幅(Tb.Th)のグラフである。
【
図3】骨成長を促進する対照方法、骨成長を促進する従前の方法、及び本明細書に記載の実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された試験対象における血管発生のグラフである。
【
図4A】本明細書に記載の一実施形態にしたがう組成物を作製するための反応スキームを示す図である。
【
図4B】本明細書に記載の実施形態にしたがう方法において使用可能なグラフト又はスキャフォールドを作製する方法の概略図である。
【
図5】骨成長を促進する従前の方法並びに本明細書に記載の実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された試験対象における骨癒合率のグラフである。
【
図6A】骨成長を促進する従前の方法並びに本明細書に記載の実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された試験対象の生体力学的試験により提供されるデータのグラフである。
【
図6B】骨成長を促進する従前の方法並びに本明細書に記載の実施形態にしたがう骨成長を促進する方法により治療された試験対象の生体力学的試験により提供されるデータのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の実施形態を、以下の詳細な説明、実施例及び図を参照することによってより容易に理解することができる。しかしながら、本明細書に記載の要素、装置及び方法は、詳細な説明、実施例及び図に提示した特定の実施形態に限定されない。これらの実施形態は、本発明の原理を例示するに過ぎないことが認識されるべきである。多数の変更及び適合が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかであろう。
【0014】
さらに、本明細書に開示した全ての範囲は、その中に包含されるあらゆる下部範囲を含むものと理解されるべきである。例えば、「1.0から10.0」と記載された範囲は、1.0以上の最小値で始まり、10.0以下の最大値で終わるあらゆる下部範囲、例えば、1.0から5.3、又は4.7から10.0、又は3.6から7.9を含むものと考えられるべきである。
【0015】
本明細書に開示した全ての範囲はまた、別段の明記がない限り、その範囲の端点を含むものと考えられるべきである。例えば、「5から10の間」の範囲は、一般に、端点の5及び10を含むものと考えられるべきである。
【0016】
さらに、「までの」という語句が量又は数量と関連して使用される場合、その量は少なくとも検出可能な量又は数量であることが理解されるべきである。例えば、特定された量「までの」量で存在する物質は、検出可能な量から特定された量を含めて特定された量までで存在することができる。
【0017】
一態様では、骨成長、治癒、及び/又は修復を促進する方法が本明細書で記載される。いくつかの実施形態では、骨成長を促進する方法は、骨成長部位にグラフト又はスキャフォールドを配置することを含む。「グラフト」又は「スキャフォールド」は、本明細書では参考のために、紛失した骨の置き換え又は新骨成長の促進のためのプラットフォーム又はインプラントとして使用可能な任意の構造体を指し得る。さらに、本明細書では、「グラフト」又は「スキャフォールド」という用語は、同義であってもよい。例えば、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドは、骨欠損の修復、紛失した又は除去された骨の置き換え、又は骨固定手術の場合のように新骨成長の促進に使用することができる。さらに、本明細書に記載の方法にしたがうグラフト又はスキャフォールドは、任意の構造を有することができるか、本発明の目的に反しない任意の形状、構成、又は配向に形成することができることが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、グラフト又はスキャフォールドは、修復すべき欠損又は骨成長部位に対応するように成形、構成又は配向することができる。例えば、頭蓋冠欠損などの骨欠損の修復に使用されるグラフト又はスキャフォールドは、欠損に対応するサイズ及び/又は形状に成形、成型、又は変更されてもよい。骨固定手術など、ある特定の他の場合には、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドは、癒合される骨間の間隙を横断するように且つ/又は骨成長部位を補強するように適合された形状、構成、配向、又は寸法を有することができる。このように、本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドの特定の形状、サイズ、配向及び/又は構成は、骨成長部位上の、骨成長部位内の、又は骨成長部位に隣接する様式の特定の集合又は部分集合に限定されることを意図するものではない。「骨成長部位」は、本明細書では、骨成長又は骨修復が望まれ得る任意の領域とすることができる。ある特定の非限定的な例では、骨成長部位は、骨欠損、骨が除去されたか分解された部位、及び/又は脊椎固定又は他の骨固定の場合のように新骨成長が望まれる部位を含むことができる。
【0018】
本明細書に記載の方法のグラフト又はスキャフォールドは、いくつかの場合には、(a)(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオールとの反応生成物から形成されたポリマーネットワークを含むことができる。グラフト又はスキャフォールドは、(b)ポリマーネットワーク内に分散された粒子状無機物質をさらに含むことができる。本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドのポリマーネットワークは、本発明の目的に反しない任意のシトレート含有ポリマーを含むことができるか、これから形成することができる。「シトレート含有ポリマー」は、本明細書では参考のために、シトレート部分を含むポリマー若しくはオリゴマーを含む。いくつかの場合には、シトレート部分は、ポリマーの骨格又は主鎖に存在する。シトレート部分は、ポリマーのペンダント基若しくは側基又はペンダント鎖若しくは側鎖に存在していてもよい。いくつかの実施形態では、シトレート部分は、ポリマーの繰り返し単位であるか、ポリマーの繰り返し単位から形成される。さらに、「シトレート部分」は、本明細書では参考のために、式(I)
【0019】
【化1】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、M
+、又はポリマーの残部への結合点であり、
R
4は、-H又はポリマーの残部への結合点であり、
M
+は、Na
+又はK
+などの陽イオンであり、ただし、R
1、R
2、R
3、及びR
4の少なくとも1つがポリマーの残部への結合点である)
の構造を有する部分を含む。
【0020】
例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の組成物のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステル、例えば、クエン酸トリエチルやクエン酸の別のメチル若しくはエチルエステルなどと、(ii)ジオールなどのポリオールとの反応生成物を含む。本明細書に記載のいくつかの実施形態で使用に適したポリオールの非限定的な例には、C2〜C20、C2〜C12、又はC2〜C6脂肪族アルカンジオールが含まれ、これには、α,ω-n-アルカンジオール、又はα,ω-アルケンジオールが含まれる。例えば、いくつかの場合には、ポリオールは、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、又は1,20-イコサンジオールを含む。分岐α,ω-アルカンジオール又はα,ω-アルケンジオールも使用することができる。さらに、ポリオールは芳香族ジオールとすることもできる。さらに、いくつかの実施形態では、ポリオールは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)又はポリ(プロピレングリコール)(PPG)を含む。本開示の目的に反しない任意のPEG又はPPGを使用してもよい。いくつかの実施形態では、例えば、PEG又はPPGは、約100から約5000の間又は約200から約1000の間の重量平均分子量を有する。
【0021】
本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドのシトレート含有ポリマーは、いくつかの場合には、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、及び(iii)アミン、アミド、又はイソシアネートとの反応生成物を含むことができる。そのような例では、ポリオールは上記の任意のポリオールを含むことができ、クエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸のエステルを含むことができる。さらに、アミンは、いくつかの実施形態では、2個から10個の炭素原子を有する1種以上の第一級アミンを含む。他の場合には、アミンは、2個から15個の炭素原子を有する1種以上の第二級又は第三級アミンを含む。いくつかの例では、アミンは、窒素に結合した1つ以上のヒドロキシル含有基を含む第二級又は第三級アミンを含む。例えば、いくつかの場合には、アミンは、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)などのアミン含有ジオールを含む。イソシアネートは、いくつかの実施形態では、モノイソシアネートを含む。他の例では、イソシアネートは、4個から20個の炭素原子を有するアルカンジイソシアネートなどのジイソシアネートを含む。
【0022】
さらに、本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドのシトレート含有ポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、及び(iii)ポリカルボン酸、例えば、ジカルボン酸又はポリカルボン酸の機能的同等物、例えば、ポリカルボン酸の環状無水物又は酸塩化物などとの反応生成物を含むこともできる。そのような場合には、ポリオールは上記の任意のポリオールを含むことができ、クエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸のエステルを含むことができる。さらに、ポリカルボン酸又はその機能的同等物は飽和であっても不飽和であってもよい。例えば、いくつかの例では、ポリカルボン酸又はその機能的同等物は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、又はフマリルクロリドを含む。例えば、アリルマロン酸、アリルマロン酸クロリド、イタコン酸、又はイタコン酸クロリドなどの、ビニル含有ポリカルボン酸又はその機能的同等物も使用してもよい。さらに、いくつかの場合には、ポリカルボン酸又はその機能的同等物は、ポリカルボン酸であってもなくてもよいオレフィン含有モノマーで少なくとも部分的に置きかえることができる。いくつかの実施形態では、例えば、オレフィン含有モノマーは、ビニル含有ジオールなどの不飽和ポリオールを含む。
【0023】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドのシトレート含有ポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、及び(iii)アルファ-アミノ酸などのアミノ酸との反応生成物を含む。さらに、いくつかの場合には、本明細書に記載のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、(iii)アミノ酸、及び(iv)ジイソシアネートなどのイソシアネートとの反応生成物を含む。さらに、いくつかの例では、酸無水物及び/又は酸塩化物を、クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと併せて使用することができる。ポリオールは上記の任意のポリオールとすることができ、クエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸のエステルとすることができ、イソシアネートは上記の任意のイソシアネートとすることができる。さらに、酸無水物及び/又は酸塩化物は上記の任意の酸無水物及び/又は酸塩化物を含むことができ、これには、例えば、ポリ酸無水物又はポリ酸塩化物が含まれる。
【0024】
本明細書に記載のポリマーのアルファ-アミノ酸は、いくつかの実施形態では、L-アミノ酸、D-アミノ酸、又はD,L-アミノ酸を含む。いくつかの場合には、アルファ-アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グリシン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、チロシン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せを含む。さらに、いくつかの例では、アルファ-アミノ酸は、アルキル置換アルファ-アミノ酸、例えば、22の「標準」又はタンパク質構成アミノ酸のいずれかから誘導されるメチル置換アミノ酸、例えばメチルセリンなどを含む。さらに、いくつかの場合には、アミノ酸は、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドのポリマーのペンダント基又は側基を形成する。そのようなアミノ酸ペンダント基は本開示の目的に反しない任意の様式でポリマーの主鎖に結合することができる。例えば、いくつかの場合には、アミノ酸は、アミノ酸部分とシトレート部分との間のエステル及び/又はアミド結合によって主鎖に結合している。さらに、いくつかの例では、アミノ酸はシトレート部分と6員環を形成している。理論に束縛されることを意図するものではないが、本明細書に記載の6員環の形成はポリマーに蛍光性をもたらすことが考えられる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のシトレート含有ポリマーは蛍光性ポリマーであり得る。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、及び(iii)カテコール含有種との反応生成物を含む。クエン酸塩又はクエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸塩又はクエン酸のエステル、例えば、クエン酸のメチル若しくはエチルエステルなどとすることができる。同様に、ポリオールは上記の任意のポリオールとすることができ、これはいくつかの場合には、本明細書では、生分解性フォトルミネセンスポリマー(BPLP)と称することができる。
【0026】
カテコール含有種は本開示の目的に反しない任意のカテコール含有種を含むことができる。いくつかの場合には、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーを形成するのに使用されるカテコール含有種は、ポリマーを形成するのに使用される別の化学種とエステル又はアミド結合を形成し得る少なくとも1つの部分を含む。例えば、いくつかの場合には、カテコール含有種は、アミン部分又はカルボン酸部分を含む。さらに、いくつかの例では、カテコール含有種は、カテコール部分の一部ではないヒドロキシル部分を含む。いくつかの実施形態では、カテコール含有種はドーパミンを含む。他の実施形態では、カテコール含有種は、L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)又はD-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(D-DOPA)を含む。いくつかの場合には、カテコール含有種は3,4-ジヒドロキシヒドロケイ皮酸を含む。さらに、いくつかの実施形態では、カテコール含有種はアミド結合によってポリマーの主鎖に結合している。他の実施形態では、カテコール含有種はエステル結合によってポリマーの主鎖に結合している。
【0027】
上記の反応生成物は、いくつかの場合には、特定された種の縮合重合反応生成物である。したがって、いくつかの実施形態では、特定された種の少なくとも2種が、コポリマーを形成するためのコモノマーである。いくつかのそのような実施形態では、反応生成物は、コモノマーの交互コポリマー又は統計コポリマーを形成する。さらに、本明細書でさらに記載するように、上記の種はまた、コポリマーのペンダント基又は側鎖を形成し得る。
【0028】
一般に、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、これらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第7,923,486号、米国特許第8,530,611号、米国特許第8,574,311号、米国特許第8,613,944号、米国特許出願公開第2012/0322155号、米国特許出願公開第2013/0217790号、又は米国特許出願公開第2014/066587号に記載の任意のポリマー若しくはオリゴマーとすることができる。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の組成物のシトレート含有ポリマーは、ポリ(エチレングリコールマレエートシトレート)(PEGMC)、ポリ(オクタメチレンシトレート)(POC)、ポリ(オクタメチレンマレエート無水物シトレート)(POMC)、又は架橋性ウレタンドープ型エラストマー(CUPE)若しくは生分解性フォトルミネセンスポリマー(BPLP)を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のシトレート含有ポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー及び式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー:
【0030】
【化2】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
5は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
6は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
M
+は、Na
+又はK
+などの陽イオンであり、
n及びmは、独立して、1から20の範囲の整数である)
から形成される。いくつかの場合には、例えば、R
1、R
2及びR
3は-Hであり、R
5は-OHであり、R
6は-Hである。
【0031】
さらに、式(A)、(B1)、及び(B2)のモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの生分解性、機械的強度、及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの実施形態では、この比は約1:1である。
【0032】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドのシトレート含有ポリマーは、式(II)
【0033】
【化3】
[式中、
各R
7は、独立して、-H又は
【0035】
【化5】
は、式(II)の構造を有する繰り返し単位のさらなる鎖を表し、
m、n、及びpは、独立して、2から20の範囲の整数である]
の構造を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドのポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、及び式(C)の1種以上のモノマー:
【0037】
【化6】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
5は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
6は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
M
+は、Na
+又はK
+などの陽イオンであり、
n及びmは、独立して、1から20の範囲の整数であり、
pは、1から10の範囲の整数である)
から形成される。例えば、いくつかの例では、R
1、R
2、及びR
3は、-H、又は-CH
2CH
3であり、R
5は-OHであり、R
6は-Hであり、nは2から6であり、mは2から8であり、pは2から6である。
【0038】
さらに、式(A)、(B1)、(B2)、及び(C)のモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの抗微生物性、生分解性、機械的強度、及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの実施形態では、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(C)との比は、約1:10から約10:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(C)との比は約1:1である。
【0039】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、式(B1)又は(B2)のモノマーは、式(B1)又は(B2)の式を有しないアルコールにより置きかえることができる。例えば、いくつかの実施形態では、不飽和アルコール又は不飽和ポリオールを使用することができる。さらに、いくつかの場合には、式(C)のモノマーは、本明細書に記載のアミノ酸により少なくとも部分的に置きかえることができる。
【0040】
いくつかの場合には、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドのシトレート含有ポリマーは、式(III)
【0041】
【化7】
[式中、
各R
8は、独立して、-H、
【0043】
【化9】
は、式(III)の構造を有する繰り返し単位のさらなる鎖を表し、
m、n、p、及びqは、独立して、2から20の範囲の整数である]
の構造を有するポリマーを含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドにおけるシトレート含有ポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、及び式(D)又は(D')の1種以上のモノマー:
【0045】
【化10】
(式中、
R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
5は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
6は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
9は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
M
+は、Na
+又はK
+などの陽イオンであり、
n及びmは、それぞれ独立して、1から20又は1から100の範囲の整数である)
から形成される。
【0046】
さらに、式(A)、(B1)、(B2)、(D)及び(D')のモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるシトレート含有ポリマーの特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの場合には、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(D)又はモノマー(D')との比は、約1:10から約10:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(D)又はモノマー(D')との比は約1:1である。
【0047】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドにおけるシトレート含有ポリマーは、式(IV)
【0049】
【化12】
、又は-OHであり、
R
11は、
【0050】
【化13】
又は-COOHであり、
x及びyは、独立して1から100の範囲の整数であり、
zは、1から20の範囲の整数である)
のポリマーを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドのシトレート含有ポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー及び式(B1)、(B2)又は(B3)の1種以上のモノマー、及び式(E)の1種以上のモノマー:
【0052】
【化14】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
5は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
6は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
12は、上記の22の「標準」又はタンパク質構成アミノ酸の1つの側鎖又は「R基」であり、
M
+は、Na
+又はK
+などの陽イオンであり、
n及びmは、独立して、1から20の範囲の整数である]
から形成される。いくつかの場合には、例えば、R
12は、-CH
2SH(E=システインの場合)又は-CH
2OH(E=セリンの場合)である。さらに、いくつかの実施形態では、R
1、R
2、及びR
3は-Hであり、R
5は-OHであり、R
6は-Hである。
【0053】
さらに、式(A)、(B1)、(B2)、(B3)及び(E)のモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるシトレート含有ポリマーの1つ以上の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)、モノマー(B2)、又はモノマー(B3)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)、モノマー(B2)、又はモノマー(B3)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの場合には、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(E)との比は、約1:10から約10:1の間である。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドのポリマーは、式(V)
【0055】
【化15】
(式中、
R
12は、上記の22の標準アミノ酸の1つの側鎖又は「R基」であり、
各R
13は、独立して、-H又は
【0057】
【化17】
は、式(V)の構造を有する繰り返し単位のさらなる鎖を表し、
m及びnは、独立して、2から20の範囲の整数である)
のポリマーを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、及び式(F)の1種以上のモノマー:
【0059】
【化18】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
5は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
6は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3であり、
R
14、R
15、R
16、及びR
17は、独立して、-H、-CH
2(CH
2)
xNH
2、-CH
2(CHR
18)NH
2、又は-CH
2(CH
2)
xCOOHであり、
R
18は、-COOH又は-(CH
2)
yCOOHであり、
M
+は、Na
+又はK
+などの陽イオンであり、
n及びmは、独立して、1から20の範囲の整数であり、
xは、0から20の範囲の整数であり、
yは、1から20の範囲の整数である]
から形成されるシトレート含有ポリマーを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、R
2は-Hである。さらに、いくつかの場合には、R
14、R
15、R
16、及びR
17のうちの3つが-Hである。さらに、いくつかの実施形態では、具体的にはR
14及びR
17が-Hである。いくつかの場合には、式(F)のモノマーは、ドーパミン、L-DOPA、D-DOPA、又は3,4-ジヒドロキシヒドロケイ皮酸を含む。さらに、いくつかの実施形態では、式(F)のモノマーはアミド結合によってポリマーの主鎖に結合している。他の実施形態では、式(F)のモノマーはエステル結合によってポリマーの主鎖に結合している。
【0061】
さらに、いくつかの実施形態では、式(B1)又は(B2)のモノマーは、式(B1)又は(B2)の式を有しないアルコールにより置きかえることができる。例えば、いくつかの実施形態では、不飽和アルコール又は不飽和ポリオールを使用することができる。
【0062】
さらに、式(A)、(B1)、(B2)、及び(F)のモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるシトレート含有ポリマーの1つ以上の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B1)又はモノマー(B2)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの場合には、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(F)との比は、約1:10から約10:1の間である。
【0063】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドのポリマーは、式(VI)
【0064】
【化19】
(式中、
R
19及びR
20は、独立して、
【0065】
【化20】
又は-OHであり、
各R
21は、独立して、
【0066】
【化21】
又は-Hであり、
nは、1から20の範囲の整数であり、
mは、1から100の範囲の整数であり、ただし、R
19とR
20の少なくとも1つが、
【0067】
【化22】
である)
のポリマーを含む。
【0068】
上記のように、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、特定されたモノマー及び/又は他の種の縮合重合反応生成物とすることができる。いくつかのそのような実施形態では、反応生成物は、コモノマーの交互コポリマー又は統計コポリマーを形成する。さらに、いくつかの場合には、コモノマー又はシトレート部分を含む他の反応物の量又は比は、シトレート含有ポリマーに所望の特性又は効果をもたらす又は調整するように選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、コモノマー又はシトレート部分を含む他の反応物の量又は比は、シトレート含有ポリマーに所望の抗微生物性効果をもたらすように選択することができる。本明細書に記載の組成物の他の特性もまた、シトレート含有ポリマー中のシトレート部分のモルパーセント又は重量パーセントの1つ以上を変えることによって調整することができる。例えば、調整可能な特性は、ある特定の実施形態では、シトレート含有ポリマーの抗微生物性、シトレート含有ポリマーの生分解性、及びシトレート含有ポリマーの水膨潤性の1つ以上を含むことができる。いくつかの場合には、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、ポリマーのコモノマーの総モル数に基づいて、少なくとも約30モルパーセント、少なくとも約40モルパーセント、又は少なくとも約50モルパーセントのシトレート部分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、ポリマーのコモノマーの総モル数に基づいて、約30モルパーセントから約70モルパーセントの間、約30モルパーセントから約60モルパーセントの間、約30モルパーセントから約50モルパーセントの間、約35モルパーセントから約60モルパーセントの間、約35モルパーセントから約55モルパーセントの間、約40モルパーセントから約70モルパーセントの間、約40モルパーセントから約60モルパーセントの間、又は約40モルパーセントから約55モルパーセントの間のシトレート部分を含む。同様に、いくつかの場合には、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、又は少なくとも約15重量パーセント、少なくとも約25重量パーセント、少なくとも約30重量パーセント、又は少なくとも約40重量パーセントのシトレート部分を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、約5重量パーセントから約80重量パーセントの間、約5重量パーセントから約70重量パーセントの間、約10重量パーセントから約80重量パーセントの間、約10重量パーセントから約60重量パーセントの間、約20重量パーセントから約80重量パーセントの間、約20重量パーセントから約60重量パーセントの間、約30重量パーセントから約80重量パーセントの間、又は約40重量パーセントから約70重量パーセントの間のシトレート部分を含む。
【0069】
さらに、いくつかの場合には、ポリマーの1つ以上の特性を、シトレート部分の量並びにポリマーの化学構造の1つ以上の他の特徴に基づいて調整してもよい。さらに、1つ以上の特性は、1つ以上の他の特性とは独立して調整可能であり得る。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載のポリマーの水吸収及び/又は分解速度を所望の用途に調整することができる。そのような調整性は、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドの組成物に利点をもたらすことができる。例えば、いくつかの以前の組成物又はスキャフォールドは、抗微生物性を示すのに、抗生物質又は銀ナノ粒子のような無機物質の配合を必要とする。したがって、そのような組成物の高い膨潤比は、殺菌剤の持続放出ではなく「急激な」放出につながり得、それによってそのような組成物のグラフト又はスキャフォールドへの抗感染用途を限定している。対照的に、いくつかの本明細書に記載のシトレート含有ポリマー及び組成物は、分離された膨潤性及び抗微生物性を有することができる。したがって、いくつかの本明細書に記載のシトレート含有ポリマー及び組成物の構造及び化学組成を、長期抗微生物性能を含め、抗微生物性能を犠牲にする必要なしに、機械的要件など他の要件を満たすように選択することができる。
【0070】
さらに、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーは、ポリマーの主鎖中に少なくとも1つのエステル結合を有することができる。いくつかの場合には、ポリマーは、ポリマーの主鎖中に複数のエステル結合、例えば、少なくとも3つのエステル結合、少なくとも4つのエステル結合、又は少なくとも5つのエステル結合などを有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーは、ポリマーの主鎖中に、2つのエステル結合から50のエステル結合を有する。ポリマーの主鎖に1つ以上のエステル結合を有するポリマーは、生体環境又は他の水性環境で加水分解されて、他の成分に加えて遊離のクエン酸又はシトレートを放出し得る。理論に束縛されることを意図するものではないが、生体環境でのクエン酸の存在がpHの減少に寄与し得、これが細菌の内部pHを低下させ得、基質輸送を中断させることによって細菌膜の透過性を変化させることが考えられる。
【0071】
さらに、本明細書に記載の構造を有するシトレート含有ポリマーは、いくつかの場合には、生分解性であり得る。生分解性ポリマーは、いくつかの実施形態では、通常の生物学的プロセスにより体内から排出され得る無毒成分にin vivoで分解される。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、約90日以下、約60日以下、又は約30日以下の間に完全に又は実質的に完全にin vivoで分解され、ここで、分解の程度は生分解性ポリマーの質量損失パーセントに基づき、完全な分解は質量損失100%に相当する。具体的には、質量損失は、式(1)に示す通り、ポリマーの初期重量(W
0)と所定の時点(30日など)で測定した重量(W
t)とを比較することによって、計算される:
【0073】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のシトレート含有ポリマーを含むポリマーネットワークは、架橋剤をさらに含むことができる。本開示の目的に反しない任意の架橋剤を使用してもよい。いくつかの場合には、例えば、架橋剤は、エチレン性不飽和部分を含むシトレート含有ポリマーを架橋させるのに使用することができる1種以上のオレフィン又はオレフィン部分を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、アクリレート又はポリアクリレートを含み、これにはジアクリレートが含まれる。他の場合には、架橋剤は、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロール1,3-ジグリセロレートジアクリレート、ジ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、及びプロピレングリコールグリセロレートジアクリレートの1種以上を含む。さらに他の例では、架橋剤は、DNA又はRNAを含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、アジド又はアルキンなどの「クリックケミストリー」試薬を含む。いくつかの実施形態では、架橋剤は、イオン性架橋剤を含む。例えば、いくつかの場合には、シトレート含有ポリマーを遷移金属イオンなどの多価金属イオンで架橋させる。いくつかの実施形態では、ポリマーの架橋剤として使用される多価金属イオンは、+2又は+3状態にあるものを含め、Fe、Ni、Cu、Zn、又はAlの1つ以上を含む。
【0074】
さらに、本明細書に記載の架橋剤は、本発明の目的に反しない任意の量でグラフト又はスキャフォールド中に存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、架橋剤は、グラフト又はスキャフォールド用組成物の総重量に基づいて、約5重量パーセントから約50重量パーセントの間、約5重量パーセントから約40重量パーセントの間、約5重量パーセントから約30重量パーセントの間、約10重量パーセントから約40重量パーセントの間、約10重量パーセントから約30重量パーセントの間、又は約20重量パーセントから約40重量パーセントの間の量で組成物中に存在する。
【0075】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドは、架橋してポリマーネットワークを形成したシトレート含有ポリマーを含む。ポリマーネットワークは、いくつかの実施形態では、ヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、いくつかの場合には、水性連続相及びポリマー分散又は不連続相を含む。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の架橋ポリマーネットワークは水溶性ではない。
【0076】
本明細書に記載の架橋ポリマーネットワークの1つの非限定的なクラスは、1つ以上のクリックケミストリー反応を介して架橋されたポリマーネットワークを含む。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステル、例えば、クエン酸トリエチルやクエン酸の別のメチル若しくはエチルエステルなどと、(ii)ジオールなどのポリオール並びに(iii)アルキン部分及び/又はアジド部分を含むモノマーとの反応生成物を含むことができる。上記の任意のポリオールを使用することができる。さらに、いくつかの例では、ポリオールは、ヒドロキシル基を1つのみ有するアルコール又はアミン若しくはアミドにより少なくとも部分的に置きかえることができる。さらに、いくつかの場合には、ポリオールは、1つ以上のヒドロキシル、アミン、又はアミド基を有するポリマー又はオリゴマーにより少なくとも部分的に置きかえることができる。そのようなポリマー又はオリゴマーは、いくつかの例では、ポリエステル、ポリエーテル、又はポリアミドとすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)アルコール、アミン、アミド、ポリエステル、ポリエーテル、又はポリアミド並びに(iii)アルキン部分及び/又はアジド部分を含むモノマーとの反応生成物を含む。
【0077】
いくつかの場合には、本明細書に記載の方法におけるグラフト又はスキャフォールドにおいて利用される組成物は、式(A)の1種以上のモノマー;式(B4)、(B5)、又は(B6)の1種以上のモノマー;並びに1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマー:
【0078】
【化23】
[式中、
R
1、R
2、及びR
3は、独立して、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、又はM
+であり、
R
4は-Hであり、
R
22は、-H、-OH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-CH
3、-CH
2CH
3、-NH
2、NHCH
3、-CH
2CH
2NHCH
3、-N(CH
3)
2、又は-CH
2CH
2N(CH
2CH
3)
2であり、
R
23は、-H、-CH
3、又は-CH
2CH
3、-(CH
3)
2、又は-(CH
2CH
3)
2であり、
R
24は、-H又は-CH
3であり、
R
25は、-(CH
2)
a-、-(CH
2CH
2O)
b-、又は-(CH
2OCH
2)
b-であり、
R
26は、-H、-CH
3、又はC2〜C20アルキルであり、
R
27は、-H、-C(O)CH
3、又は-C(O)CH
2CH
3であり、
R
28及びR
29は、独立して、-OH又は-NH
2であり、
M
+は、一価の陽イオンであり、
X及びYは、独立して、-O-又は-NH-であり、
Zは、-H、-CH
3、-(CH
3)
2、-(CH
2CH
3)
2、又は
【0079】
【化24】
であり、
aは、0から20の整数であり、
bは、0から2000の整数であり、
nは、1から2000の間の整数であり、
m及びpは、独立して、1から20の範囲の整数であり、
式(B4)のモノマーは、-OH又は-NH
2を含む少なくとも1つの末端を有する]
から形成されるポリマーを含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、式(B4)の1種以上のモノマーが使用され、Xが-O-である。したがって、いくつかの場合には、式(B4)のモノマーは、
【0081】
【化25】
を含む。さらに、いくつかの例では、式(B6)のモノマーが使用され、R
11及びR
12がそれぞれ-OHである。いくつかの実施形態では、式(B6)のモノマーは、
【0083】
式(A)、(B4)、(B5)、及び(B6)のモノマー並びに1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの生分解性、機械的強度、及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は約1:4から約4:1の間である。いくつかの実施形態では、この比は約1:1である。アルキン又はアジド含有モノマーと式(A)、(B4)、(B5)、又は(B6)のモノマーとの比は、約1:20から1:2の間又は約1:10から約1:3の間とすることができる。さらに、本明細書に記載の1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含む反応生成物は、いくつかの場合には、特定されたモノマー又は種の縮合重合又は重縮合反応生成物である。
【0084】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、上記のものに加えて、1種以上のさらなるモノマーから形成される。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の組成物のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、(iii)1種以上のアルキン及び/又はアジド、並びに(iv)アミン、アミド、又はイソシアネートとの反応生成物を含むことができる。そのような例では、ポリオールは上記の任意のポリオールを含むことができ、クエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸のエステルを含むことができる。さらに、アミンは、例えば、2個から10個の炭素原子を有する1種以上の第一級アミン、2個から15個の炭素原子を有する1種以上の第二級又は第三級アミン、又はアミン含有ジオールの場合のように、窒素に結合した1つ以上のヒドロキシル基を有する1種以上の第二級又は第三級アミンなど、上記の任意のアミンを含むことができる。イソシアネートは上記の任意のイソシアネートを含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のグラフト又はスキャフォールドで使用される組成物のポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー;式(B4)、(B5)、又は(B6)の1種以上のモノマー;1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマー;並びに式(G1)、(G2)、(G3)、又は(G4)の1種以上のモノマー:
【0085】
【化27】
(式中、
pは、1から10の範囲の整数である)
から形成される。
【0086】
さらに、式(A)、(B4)、(B5)、(B6)、(G1)、(G2)、(G3)、及び(G4)のモノマー並びに1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの生分解性、機械的強度、及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの実施形態では、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(G)との比は、約1:10から約10:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(G1)、(G2)、(G3)、又は(G4)との比は約1:1である。アルキン又はアジド含有モノマーと式(A)、(B4)、(B5)、(B6)、(G1)、(G2)、(G3)、又は(G4)のモノマーとの比は、約1:20から1:2の間又は約1:10から約1:3の間とすることができる。
【0087】
さらに、本明細書に記載のいくつかの実施形態では、式(B4)、(B5)、又は(B6)のモノマーは、式(B4)、(B5)、又は(B6)の式を有しないアルコールにより置きかえることができる。例えば、いくつかの実施形態では、不飽和アルコール又は不飽和ポリオールを使用することができる。さらに、いくつかの場合には、式(G)のモノマーは、本明細書に記載のアミノ酸により少なくとも部分的に置きかえることができる。
【0088】
同様に、他の場合には、ポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、(iii)1種以上のアルキン及び/又はアジド、並びに(iv)ポリカルボン酸、例えば、ジカルボン酸又はポリカルボン酸の機能的同等物、例えば、ポリカルボン酸の環状無水物又は酸塩化物などとの反応生成物を含む。そのような場合には、ポリオールは上記の任意のポリオールを含むことができ、クエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸のエステルを含むことができる。さらに、ポリカルボン酸は、上記の任意のポリカルボン酸又は機能的同等物を含むことができる。
【0089】
さらに、式(A)、(B4)、(B5)、(B6)のモノマー、ポリカルボン酸又は機能的同等物、並びに1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの機械的特性及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの場合には、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とポリカルボン酸又は機能的同等物との比は、約1:10から約10:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とポリカルボン酸又は機能的同等物との比は約1:1である。アルキン又はアジド含有モノマーと式(A)、(B4)、(B5)、(B6)のモノマー、又はポリカルボン酸若しくは機能的同等物との比は、約1:20から1:2の間又は約1:10から約1:3の間とすることができる。
【0090】
さらに他の実施形態では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、(iii)1種以上のアルキン及び/又はアジド、並びに(iv)アルファ-アミノ酸などのアミノ酸との反応生成物を含む。さらに、いくつかの場合には、本明細書に記載のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、(iii)1種以上のアルキン及び/又はアジド、(iv)アミノ酸、並びに(v)ジイソシアネートなどのイソシアネートとの反応生成物を含む。さらに、いくつかの例では、酸無水物及び/又は酸塩化物を、クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと併せて使用することができる。ポリオールは上記の任意のポリオールとすることができ、クエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸のエステルとすることができ、アミノ酸は上記の任意のアミノ酸とすることができ、イソシアネートは上記の任意のイソシアネートとすることができる。さらに、酸無水物及び/又は酸塩化物は上記の任意の酸無水物及び/又は酸塩化物を含むことができ、これには、例えば、ポリ酸無水物又はポリ酸塩化物が含まれる。
【0091】
いくつかの場合には、本明細書に記載の組成物のポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー;式(B4)、(B5)又は(B6)の1種以上のモノマー;1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマー;並びに式(E)の1種以上のモノマーから形成される。
【0092】
さらに、式(A)、(B4)、(B5)、(B6)、及び(E)のモノマー並びに1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの機械的特性及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、モノマー(B5)、又はモノマー(B6)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、モノマー(B5)、又はモノマー(B6)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの場合には、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(E)との比は、約1:10から約10:1の間である。アルキン又はアジド含有モノマーと式(A)、(B4)、(B6)、(B6)、又は(E)のモノマーとの比は、約1:20から1:2の間又は約1:10から約1:3の間とすることができる。
【0093】
他の例では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、(i)クエン酸、クエン酸塩、又はクエン酸のエステルと、(ii)ポリオール、(iii)1種以上のアルキン及び/又はアジド、並びに(iv)カテコール含有種との反応生成物を含む。クエン酸塩又はクエン酸のエステルは上記の任意のクエン酸塩又はクエン酸のエステル、例えば、クエン酸のメチル若しくはエチルエステルなどとすることができる。同様に、ポリオールは上記の任意のポリオールとすることができる。さらに、カテコール含有種は上記の任意のカテコール含有種を含むことができる。
【0094】
いくつかの場合には、本明細書に記載の組成物のポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー;式(B1)、(B2)又は(B3)の1種以上のモノマー;1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマー;並びに式(F)の1種以上のモノマーから形成される。さらに、式(A)、(B4)、(B5)、(B6)、及び(F)のモノマー並びに1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的に反しない任意の比で使用することができる。さらに、モノマーの比を変えることで、いくつかの実施形態では、モノマーから形成されるポリマーの機械的特性及び/又は他の特性を変えることができる。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B6)、又は(B6)との比は、約1:10から約10:1の間又は約1:5から約5:1の間である。いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(B4)、(B5)、又は(B6)との比は、約1:4から約4:1の間である。いくつかの場合には、この比は約1:1である。さらに、いくつかの実施形態では、モノマー(A)とモノマー(F)との比は、約1:10から約10:1の間である。アルキン又はアジド含有モノマーと式(A)、(B4)、(B5)、(B6)、又は(F)のモノマーとの比は、約1:20から1:2の間又は約1:10から約1:3の間とすることができる。
【0095】
本明細書に記載のポリマーを形成するのに使用される1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むモノマーは、本開示の目的に反しない任意のアルキン及び/又はアジド含有化学種を含むことができる。例えば、いくつかの例では、1種以上のそのようなモノマーはジオールなどのポリオールを含む。そのようなモノマーは、いくつかの場合には、モノマーの1つ以上のヒドロキシル部分と、式(A)のモノマー又は本明細書に記載の別のカルボキシル含有モノマーのカルボキシル又はカルボン酸部分との反応によってポリマーに組み入れることができる。さらに、いくつかの例では、そのようなモノマーを式(B1)又は(B2)のモノマーの代わりに使用することができる。他の例では、そのようなモノマーは、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマーと併せて使用される。さらに、そのようなモノマーは、ジアジド-ジオール(DAzD)又はアルキンジオール(AlD)とすることができる。
【0096】
いくつかの場合には、1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーは、式(H)又は(H')
【0097】
【化28】
(式中、R
30は、-CH
3又は-CH
2CH
3である)
のモノマーを含む。
【0098】
さらに、いくつかの実施形態では、1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーは、式(I1)、(I2)、(I3)、(I4)、(I5)、又は(I6)
【0099】
【化29】
(式中、
R
30は、-CH
3又は-CH
2CH
3であり、
Xは、-NH-又は-O-である)
のモノマーを含む。
【0100】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーは生物活性種で機能化することができる。いくつかの場合には、ポリマーは、生物活性種を含むさらなるモノマーから形成される。さらに、そのようなさらなるモノマーは、1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分を含むことができる。例えば、いくつかの例では、本明細書に記載のポリマーは、ペプチド、ポリペプチド、核酸、又は多糖を含む1種以上のモノマーから形成され、ここで、ペプチド、ポリペプチド、核酸、又は多糖は、1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分で官能化されている。いくつかの場合には、本明細書に記載のポリマーの生物活性種は、成長因子又はシグナル伝達分子である。さらに、ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、又はより長いペプチドを含むことができる。下でさらに記載するように、そのようなモノマーからポリマーを形成することで、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物にさらなる生物学的機能性を付与することができる。
【0101】
さらに、いくつかの実施形態では、組成物は複数の本明細書に記載のポリマーを含む。いくつかの例では、ポリマーは、クリックケミストリー反応スキームによって互いに反応性であるように選択される。いくつかの場合には、例えば、本明細書に記載の組成物は、式(A)の1種以上のモノマー;式(B4)、(B5)、又は(B6)の1種以上のモノマー;及び1つ以上のアルキン部分を含む1種以上のモノマーから形成された第1のポリマーを含み;式(A)の1種以上のモノマー;式(B4)、(B5)、又は(B6)の1種以上のモノマー;及び1つ以上のアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成された第2のポリマーをさらに含む。したがって、いくつかのそのような実施形態では、本明細書に記載の組成物は、1,4又は1,5-トリアゾール環などのアジド-アルキン付加環化生成物を含み得る。このように、本明細書に記載の組成物の第1のポリマー及び第2のポリマーは、ポリマーネットワークの架橋結合として機能する1種以上のアジド-アルキン付加環化生成物を形成することによって、ポリマーネットワークを形成することができる。
【0102】
そのようなポリマーネットワークは高い架橋密度を有し得る。「架橋密度」とは、本明細書では参考のために、下記のように計算される、ポリマー主鎖間の架橋結合の数又は架橋部位間の分子量を指し得る。さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーネットワークの架橋結合は、アジド-アルキン付加環化生成物架橋結合を含む。架橋結合は、隣接するポリマー主鎖の1つ以上のペンダントカルボキシル又はカルボン酸基と1つ以上のペンダントヒドロキシル基とのエステル化又は反応により形成されるエステル結合も含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のポリマーネットワークは、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約5000、少なくとも約7000、少なくとも約10,000、少なくとも約20,000、又は少なくとも約30,000mol/m
3の架橋密度を有する。いくつかの場合には、架橋密度は、約5000から約40,000の間又は約10,000から約40,000mol/m
3の間である。
【0103】
アジド-アルキン付加環化生成物を必ずしも形成しないクリックケミストリー反応スキームを使用して、ポリマーネットワークを形成することも可能である。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載のアルキン及び/又はアジド部分を含む1種以上のモノマーは、クリックケミストリー反応スキームに関与し得る異なる部分を含む1種以上のモノマーにより少なくとも部分的に置きかえることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー又はポリマーネットワークは、チオール-エン/インクリック反応による、チオール部分を含む1種以上のモノマーと、アルケン(又はアルキン)部分を含む1種以上のモノマーとの反応から形成される。そのようなチオール-エン/インクリック反応は、フリーラジカル又はイオン機構による、炭素-炭素二重結合又は三重結合へのS-H結合の付加を含み得る。より一般に、いくつかの場合には、本明細書に記載のポリマーは、式(A)の1種以上のモノマー;式(B4)、(B5)、又は(B6)の1種以上のモノマー;並びにクリックケミストリー反応に関与可能な1つ以上の第1の部分及び/又は同じクリックケミストリー反応に関与可能な1つ以上の第2の部分を含む1種以上のモノマーから形成することができ、ここで第1の部分と第2の部分とは異なる。本開示の目的に反しない任意のクリックケミストリー反応を使用してもよい。いくつかの例では、クリックケミストリー反応は、Huisgenアルキン-アジド付加環化などの[3+2]付加環化;チオール-エン/イン反応;Diels-Alder反応;逆電子要請型Diels-Alder反応;イソシアニドとテトラジンとの付加環化反応などの[4+1]付加環化;又はエポキシ若しくはアジリジン環などの歪み環を伴う求核置換反応を含む。理論に束縛されることを意図するものではないが、クリックケミストリー反応スキームを使用してポリマーネットワークに架橋をもたらすことで、いくつかの場合には、ヒドロキシアパタイト(HA)のカルシウムキレート化など、他の目的のためのペンダントクエン酸カルボキシル部分を犠牲にすることなく、ポリマーネットワークの機械的強度を改善することができることが考えられる。
【0104】
さらに、本明細書に記載のポリマー又はポリマーネットワークは、必ずしも式(A)、(B4)、(B5)、又は(B6)の構造を有するモノマーではないモノマーから形成することができることが理解されるべきである。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の組成物のポリマーは、ラクトンを含む1種以上のモノマー並びにクリック反応に関与可能な1つ以上の部分、例えば、1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分などを含む1種以上のモノマーから形成される。いくつかのそのような場合には、ラクトンを含む1種以上のモノマーは、全てのモノマーの総量に基づいて、ポリマーを形成するのに使用されるモノマーの少なくとも約60mol%、少なくとも約70mol%、少なくとも約80mol%、少なくとも約90mol%、少なくとも約95mol%、又は少なくとも約99mol%を構成し得る。したがって、いくつかの例では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、ポリマーのペンダント又は側基として、1つ以上のアジド部分及び/又は1つ以上のアルキン部分などの1つ以上のクリック可能な部分を含むように修飾されたポリラクトンを含む。そのようなポリマーを形成するのに、本開示の目的に反しない任意のラクトンを使用してもよい。例えば、いくつかの場合には、ラクトンは、L-ラクチド、D-ラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド、及び/又はε-カプロラクトンを含む。したがって、いくつかの例では、本明細書に記載のポリマーは、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、又はこれらの組合せとすることができる。
【0105】
同様に、他の実施形態では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、式(A)により記載される種とは異なるポリカルボン酸又はポリカルボン酸の機能的同等物を含む1種以上のモノマーから形成される。そのようなポリカルボン酸はジカルボン酸とすることができ、ポリカルボン酸の「機能的同等物」は、例えば、本明細書に記載のポリカルボン酸の環状無水物又は酸塩化物など、本明細書に記載の反応スキームでポリカルボン酸が形成するのと同じポリマー生成物を形成する種とすることができる。さらに、ポリカルボン酸又はその機能的同等物は飽和であっても不飽和であってもよい。例えば、いくつかの例では、ポリカルボン酸又はその機能的同等物は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、又はフマリルクロリドを含む。例えば、アリルマロン酸、アリルマロン酸クロリド、イタコン酸、又はイタコン酸クロリドなどの、ビニル含有ポリカルボン酸又はその機能的同等物も使用してもよい。
【0106】
いくつかの場合には、ポリマーは、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸同等物を含む1種以上のそのようなモノマー;ポリオールを含む1種以上のモノマー;並びに1つ以上のクリック可能な部分、例えば、1つ以上のアルキン部分及び/又は1つ以上のアジド部分などを含む1種以上のモノマーから形成される。例えば、いくつかの場合には、ポリカルボン酸はセバシン酸などのジカルボン酸を含む。同様に、ポリオールは、上に提示したジオールなどのジオール又はグリセロールなどのトリオールを含むことができる。さらに、いくつかのそのような場合には、1つ以上のアルキン及び/又はアジド部分などの1つ以上のクリック可能な部分を含む1種以上のモノマーは、全てのモノマーの総量に基づいて、ポリマーを形成するのに使用されるモノマーの約40mol%まで、約30mol%まで、約20mol%まで、約10mol%まで、約5mol%まで、又は約1mol%までを構成し得る。したがって、いくつかの例では、本明細書に記載の組成物のポリマーは、ポリマーのペンダント又は側基として、1つ以上のアジド部分及び/又は1つ以上のアルキン部分を含むように修飾されたポリ(グリセロールセバケート)(PGS)などのポリエステルを含む。
【0107】
本明細書に記載のシトレート含有ポリマーなどのポリマーは、本開示の目的に反しない任意の様式で調製することができる。いくつかの場合には、例えば、本明細書に記載のポリマーは、1つ以上の重縮合反応により調製される。さらに、いくつかの実施形態では、重縮合反応の後にポリマーの架橋を続けることができる。本明細書でさらに記載するように、そのような架橋は、熱的架橋又は紫外線(UV)架橋などの光開始架橋とすることができる。
【0108】
骨成長を促進する方法において使用されるグラフト又はスキャフォールドの一部又は全てを形成し得る、組成物の多様な成分を本明細書で記載した。本開示による組成物が、本開示の目的に反しない成分及び特徴の任意の組合せを含むことができることが理解されるべきである。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドの一部又は全てを形成する組成物は、本明細書に記載のポリマーの組合せ、混合物、又はブレンドを含むことができる。さらに、いくつかの実施形態では、そのような組合せ、混合物、又はブレンドは、本明細書に記載の任意の抗微生物性、生分解性、機械的特性、及び/又は化学的官能性を有する組成物、グラフト又はスキャフォールドを提供するように選択することができる。
【0109】
さらに、1種以上のシトレート含有ポリマーなどの1種以上のポリマーは、本明細書に記載の方法で使用されるグラフト又はスキャフォールドの一部又は全てを形成する組成物中に本開示の目的に反しない任意の量で存在することができる。いくつかの場合には、組成物、グラフト又はスキャフォールドは、1種以上のシトレート含有ポリマーなどの1種以上のポリマーからなるか、これから本質的になる。他の例では、組成物、グラフト又はスキャフォールドは、組成物、グラフト又はスキャフォールドの総重量に基づいて、約95重量パーセントまで、約90重量パーセントまで、約80重量パーセントまで、約70重量パーセントまで、約60重量パーセントまで、約50重量パーセントまで、又は約40重量パーセントまでのポリマーを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物、グラフト又はスキャフォールドの残部は、下でさらに記載するように、水、水溶液、及び/又は粒子状物質とすることができる。
【0110】
本明細書で記載のように、グラフト又はスキャフォールドは、グラフト又はスキャフォールドのポリマーネットワーク中に分散された粒子状物質をさらに含むことができる。本開示の目的に反しない任意の粒子状物質を使用してもよい。いくつかの場合には、粒子状物質は、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム(α-及びβ-リン酸三カルシウムを含む)、二相性リン酸カルシウム、バイオガラス、セラミックス、マグネシウム粉末、マグネシウム合金、及び脱細胞化骨組織粒子の1つ以上を含む。他の粒子状物質も使用してもよい。
【0111】
さらに、本明細書に記載の粒子状物質は、本開示の目的に反しない任意の粒径及び/又は粒子形状を有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、粒子状物質は、少なくとも1つの次元において、約1000μm未満、約800μm未満、約500μm未満、約300μm未満、約100μm未満、約50μm未満、約30μm未満、又は約10μm未満の平均粒径を有する。いくつかの場合には、粒子状物質は、少なくとも1つの次元において、約1μm未満、約500nm未満、約300nm未満、約100nm未満、約50nm未満、又は約30nm未満の平均粒径を有する。いくつかの例では、粒子状物質は、2つの次元又は3つの次元において本明細書に記載した平均粒径を有する。さらに、粒子状物質は、略球状粒子、板状粒子、針状粒子、又はこれらの組合せで形成されていてもよい。他の形状を有する粒子状物質も使用してもよい。
【0112】
粒子状物質は、本開示の目的に反しない任意の量で本明細書に記載の方法のグラフト又はスキャフォールドで使用される組成物中に存在することができる。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載の方法のグラフト又はスキャフォールドで使用される組成物は、組成物の総重量に基づいて、約70重量パーセントまで、約60重量パーセントまで、約50重量パーセントまで、約40重量パーセントまで、又は約30重量パーセントまでの粒子状物質を含む。いくつかの例では、組成物は、組成物の総重量に基づいて、約1から約70重量パーセントの間、約10から約70重量パーセントの間、約15から約60重量パーセントの間、約25から約65重量パーセントの間、約25から約50重量パーセントの間、約30から約70重量パーセントの間、約30から約50重量パーセントの間、約40から約70重量パーセントの間、又は約50から約70重量パーセントの間の粒子状物質を含む。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載のポリマーネットワークを含む組成物は、約65重量パーセントまでのヒドロキシアパタイトを含む。
【0113】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法のグラフト又はスキャフォールドで使用される組成物は、ポリマーネットワークを形成するのに使用されるポリマーが低い重量平均分子量、例えば、約2000未満、約1000未満、又は約500未満の重量平均分子量を有する場合でも、多量の粒子状物質、例えば約70重量パーセントまでの量を含むことができる。例えば、いくつかの例では、本明細書に記載の組成物は、約2000未満、約1000未満、又は約500未満の重量平均分子量を有する本明細書に記載のポリマーから形成されたポリマーネットワークを含み、約70重量パーセントまでの量でポリマーネットワーク中に分散されたヒドロキシアパタイト粒子をさらに含む。さらに、いくつかの場合には、ポリマーネットワークは、ヒドロキシアパタイト粒子によりもたらされ得る架橋の他には、架橋していないか、実質的に架橋していない。
【0114】
さらに、本明細書に記載の粒子状物質は、本開示の目的に反しない任意の様式でポリマーネットワーク中に分散させることができる。いくつかの実施形態では、例えば、粒子状物質はポリマーネットワークに混ぜ入れられるかすり入れられる。さらに、本明細書に記載の粒子状物質は、いくつかの場合には、ポリマーネットワークの1つ以上のペンダント官能基によりキレート化され得るか他の方法で結合され得る。例えば、いくつかの場合には、組成物は、本明細書に記載のポリマーネットワーク中に分散されたヒドロキシアパタイト粒子を含み、ヒドロキシアパタイトはポリマーネットワークの1つ以上のペンダント官能基によりキレート化されている。いくつかの実施形態では、ポリマーネットワークの1つ以上のカルボキシル部分又は1つ以上のシトレート部分は、ヒドロキシアパタイトの1つ以上のカルシウム含有部分をキレート化している。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、二相ポリマースキャフォールドを含む。「二相」スキャフォールドは、本明細書では参考のために、コア-シェル構造などの二部構造を有し得、ここで、二部は異なる化学的及び/又は機械的特性を有する。いくつかの場合には、例えば、本明細書に記載のコア-シェル型ポリマースキャフォールドは、第1の気孔率を有するコア成分;及びコア成分を包囲するシェル成分であって、第1の気孔率とは異なる第2の気孔率を有するシェル成分を含む。さらに、いくつかのそのような実施形態では、コア成分はシェル成分よりも高い気孔率を示す。例えば、いくつかの場合には、第1の気孔率は約30%から約99%の間であり、第2の気孔率は約0%から約99%の間である。いくつかの実施形態では、第1の気孔率は約65%から約75%の間であり、第2の気孔率は約0%から約50%の間又は約5%から約50%の間である。そのような気孔構造は、いくつかの例では、それぞれ、海綿骨及び皮質骨の二様式分布を、模倣することができる。第1の気孔率と第2の気孔率との間の他の気孔率差もまた可能である。さらに、いくつかの例では、コア成分はシェル成分よりも低い気孔率を示し得る。ポリマー部の気孔率は、本開示の目的に反しない任意の様式で測定することができる。いくつかの場合には、例えば、気孔率は、多孔性試料のかさ体積を測定し、ポリマーネットワーク材料の体積を減算することによって、測定される。他の方法も使用してもよい。
【0116】
さらに、コア成分及び/又はシェル成分は、本開示の目的に反しない任意の範囲の気孔径を示すことができる。いくつかの場合には、例えば、コア成分及び/又はシェル成分は、約800nmから約1000μmの平均気孔径を示す。いくつかの実施形態では、コア成分及び/又はシェル成分は、約1μmから約800μm、約5μmから約500μm、約10μmから約1000μm、約10μmから約100μm、約50μmから約500μm、約100μmから約1000μm、約100μmから約500μm、又は約500μmから約1000μmの平均気孔径を示す。
【0117】
さらに、本明細書に記載のコア-シェル型スキャフォールドのコア成分とシェル成分の両方は、上記の組成物から形成することができることが理解されるべきである。任意の上記の組成物を、スキャフォールドのコア及びシェル成分に使用してもよい。したがって、いくつかの場合には、コア成分は、上記のポリマーから形成された第1のポリマーネットワークを含み、シェル成分は、上記のポリマーから形成された第2のポリマーネットワークを含む。例えば、いくつかの例では、コア成分は、上記式(A)の1種以上のモノマー;上記式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー;アルキン部分を含む1種以上のモノマー;及びアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成された第1のポリマーネットワークを含む。そのようなスキャフォールドのシェル成分は、式(A)の1種以上のモノマー;式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー;アルキン部分を含む1種以上のモノマー;及びアジド部分を含む1種以上のモノマーから形成された第2のポリマーネットワークを含むことができる。第1及び第2のポリマーネットワークのポリマーは、化学組成において同一であっても異なっていてもよい。
【0118】
同様に、他の実施形態では、本明細書に記載のスキャフォールドの第1のポリマーネットワーク及び/又は第2のポリマーネットワークは、アミン、アミド、又はイソシアネートと、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、並びに1つ以上のアルキン部分及び/又はアジド部分を含む1種以上のモノマーとの反応生成物を含む。いくつかの場合には、第1のポリマーネットワーク及び/又は第2のポリマーネットワークは、ポリカルボン酸又はポリカルボン酸の機能的同等物と、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、アルキン部分を含む1種以上のモノマー、及びアジド部分を含む1種以上のモノマーとの反応生成物を含む。スキャフォールドの第1のポリマーネットワーク及び/又は第2のポリマーネットワークは、アミノ酸と、式(A)の1種以上のモノマー、式(B1)又は(B2)の1種以上のモノマー、アルキン部分を含む1種以上のモノマー、及びアジド部分を含む1種以上のモノマーとの反応生成物を含むこともできる。
【0119】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の二相スキャフォールドのポリマーネットワークは、上記の複合ポリマーネットワークを含め、複合ポリマーネットワークを含むことができる。例えば、いくつかの場合には、粒子状無機物質が、第1のポリマーネットワーク及び/又は第2のポリマーネットワーク内に分散される。本開示の目的に反しない任意の粒子状無機物質を使用してもよい。いくつかの例では、例えば、粒子状無機物質はヒドロキシアパタイトを含む。さらに、上記のように、粒子状無機物質は、ポリマーネットワーク中に多様な量で存在することができる。いくつかの場合には、例えば、粒子状無機物質は、本明細書に記載の二相スキャフォールドの第1のポリマーネットワーク及び/又は第2のポリマーネットワーク中に、それぞれ第1のポリマーネットワーク及び/又は第2のポリマーネットワークの総重量に基づいて、約70重量パーセントまでの量で存在する。
【0120】
さらに、本明細書に記載のコア-シェル型スキャフォールドは、多様なコア-シェル型構成を有することができる。いくつかの実施形態では、例えば、コア成分及びシェル成分は同心円筒である。いくつかのそのような場合には、コア成分の直径は、シェル成分の直径の約1パーセントから約90パーセントである。直径の他の比もまた可能である。さらに、本明細書に記載の二相スキャフォールドは、同心円筒コア-シェル構造に加えて、他の構造も有することができる。
【0121】
さらに、本明細書に記載の二相スキャフォールドは、いくつかの例では、in vivoでの骨成長の促進に使用することができる。例えば、いくつかの場合には、スキャフォールドのシトレートベースのポリマー-ヒドロキシアパタイト複合材料は、骨再生及び組織一体化のための骨伝導性表面をもたらすことができ、一方、二相スキャフォールド設計が海綿骨及び皮質骨の階層的組織を模倣することができる。具体的には、そのようなスキャフォールド設計は、いくつかの例では、組織の内部成長のために必要な内(又はコア)相における気孔率と、大きい分節骨欠損(segmental bone defect)の修復及び/又は脊椎固定の場合などに骨成長の促進のための機械的要求を満たすのに必要な外(又はシェル)相における低減した気孔率との両方を提供することができる。したがって、そのような組成物は、いくつかの実施形態では、天然骨組織の組成特性と構造特性の両方を模倣することができ、移植後に大きい分節欠損及び/又は他の骨成長部位に対して即時の構造的支持をもたらすことができる。
【0122】
例えば、下でさらに記載するように、本明細書に記載の二相スキャフォールドは、頭蓋冠欠損などの骨欠損の修復にin vivoで使用することができる。さらに、本明細書に記載のスキャフォールドは、いくつかの場合には、脊椎固定の場合などに骨の癒合の促進において使用することができる。そのようなスキャフォールドはまた、良好な生体適合性及び宿主骨との広範な骨統合性(osteointegration)を示し得る。さらに、本明細書に記載の二相スキャフォールドは、いくつかの例では、移植後の初期段階においてより高い骨密度の新生骨形成の有効性を大幅に増強する。いくつかの他の材料と比較して、本明細書に記載の二相スキャフォールドは、15週前の時点など、移植後早期の時点で、増加した曲げ強度、界面骨内部成長、及び骨膜性リモデリングも示し得る。例えば、いくつかの場合には、本明細書に記載のスキャフォールドは、約1MPaから約45MPaの間、約10MPaから約45MPaの間、約20MPaから約45MPaの間、約25MPaから約45MPaの間、又は約30MPaから約40MPaの間の圧縮ピーク応力を示す。さらに、スキャフォールドの各部分の圧縮強度は、所与の部分の壁厚及び/又は気孔率を変更することによって少なくとも部分的に制御することができることが理解されるべきである。本明細書に記載のスキャフォールドはまた、約50MPaから約1500MPaの間、約100MPaから約1500MPaの間、約100MPaから約1000MPaの間、約300MPaから約1500MPaの間、約500MPaから約1500MPaの間、約500MPaから約1000MPaの間、約750MPaから約1500MPaの間、又は約750MPaから約1250MPaの間の初期モジュラスを示し得る。さらに、本明細書に記載のスキャフォールドはまた、約2%から約5%の間、約2%から約4%の間、又は約3%から約5%の間の破断点ピーク圧縮歪みを示し得る。
【0123】
本明細書に記載の方法にしたがう骨成長部位に配置されるグラフト又はスキャフォールドは、いくつかの実施形態では、バイオファクター又は種細胞が播種された又はこれを含有する骨成長部位内に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、グラフト又はスキャフォールドには、間葉系幹細胞(MSC)などのバイオファクター又は細胞を播種することができる。ある特定の他の実施形態では、グラフト又はスキャフォールドは、自家骨グラフトに加えて又はこれと組み合わせて骨成長部位に配置することができる。本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドと組み合わせて使用されるバイオファクター又は細胞は、本発明の目的に反しない任意のホストから又は任意の手段によって、単離又は供給されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、バイオファクター又は細胞は、グラフト又はスキャフォールドを受容する個体から採取又は単離することができる。ある特定の他の実施形態では、バイオファクター又は細胞は、適合するドナーなど、異なる個体から採取又は単離することができる。いくつかの他の場合には、バイオファクター又は細胞は、グラフト又はスキャフォールドのレシピエント又は別の適合する個体のいずれかの個体由来で増殖又は培養することができる。ある特定の他の場合には、骨成長部位内、部位上、又は部位付近への配置に際し、グラフト又はスキャフォールドにはバイオファクター又は細胞が播種されていない。本明細書に記載のいくつかの実施形態で使用してもよい種細胞の非限定的な例としては、間葉系幹細胞(MSC)、骨髄間質細胞(BMSC)、人工多能性幹(iPS)細胞、血管内皮前駆細胞、及び造血幹細胞(HSC)が挙げられる。他の細胞も使用してもよい。本明細書に記載のいくつかの実施形態で使用してもよいバイオファクターの非限定的な例としては、骨形成タンパク質2(BMP-2)、トランスフォーミング増殖因子β3(TGFβ3)、ストロマ細胞由来因子1α(SDF-1α)、エリスロポエチン(Epo)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子(BGF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン3(NT-3)、及びグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)が挙げられる。他の治療用タンパク質及び化学種も使用してもよい。
【0124】
骨成長を促進する方法は、いくつかの実施形態では、さらなるステップも含むことができる。個々のステップは、本開示の目的に反しない任意の順序又は任意の様式で実施してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、骨成長部位及び/又は骨成長部位に隣接する生体部位への血液供給を回復させることをさらに含む。ある特定の場合には、血液供給を回復させることは、骨成長部位に隣接する生体組織を閉じる又は縫合することを含むことができる。さらに、例えばクランプ又は吸引などによって、骨成長部位で又はその付近で血流が人工的に制限された、いくつかの場合には、血液供給を回復させることは、人工的な制限を解除すること又は取り除くことを含むことができる。さらに、いくつかの場合には、骨成長を促進する方法は、骨成長部位及び/又は骨成長部位に隣接する生体領域内の骨伝導、骨誘導、骨形成、及び血管新生の1つ以上を増大させることを含むことができる。さらに、いくつかの例では、方法は、骨成長部位に近接した骨及び/又は軟組織の再生を刺激することをさらに含む。
【0125】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の骨成長を促進する方法は、グラフト又はスキャフォールドを骨成長部位に配置した後のある期間、骨成長部位にグラフト又はスキャフォールドを維持することを含むことができる。本開示の目的に反しない任意の期間を用いることができる。例えば、いくつかの場合には、グラフト又はスキャフォールドは、少なくとも1カ月間、例えば少なくとも3カ月間、少なくとも6カ月間、少なくとも9カ月間、又は少なくとも12カ月間維持することができる。ある特定の実施形態では、グラフト又はスキャフォールドは、骨成長部位内で分解又は生分解してもよい。そのような実施形態では、グラフト又はスキャフォールドの維持は、グラフト又はスキャフォールドの所望の部分が分解又は生分解するまで、グラフト又はスキャフォールドを維持することを含むことができる。例えば、方法は、グラフト又はスキャフォールドの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%が分解又は生分解するまで、骨成長部位にグラフト又はスキャフォールドを維持することを含むことができる。ある特定の実施形態では、方法は、グラフト又はスキャフォールドの全て又は実質的に全てが分解又は生分解するまで、骨成長部位にグラフト又はスキャフォールドを維持することを含むことができる。
【0126】
本明細書に記載のいくつかの実施形態を、以下の非限定的な実施例でさらに例示する。
【0127】
[実施例1]
ポリマーネットワーク
本明細書に記載の骨成長又は修復を促進する方法のいくつかの実施形態で使用に適したポリマーネットワークを以下の通りに調製した。具体的には、ポリ(1,8-オクタンジオール-co-クエン酸)(POC)合成を以下の方法にしたがって行った。
【0128】
等モル量のクエン酸及び1,8-オクタンジオールを入口及び出口アダプタを取り付けた250mLの三つ口丸底フラスコに加えた。混合物を、シリコーン油浴中160〜165℃で撹拌することによって、窒素ガス流下で溶融した。次いで温度を140℃に下げた。混合物を140℃で1時間撹拌し、「プレポリマー」溶液を作製した。プレポリマー溶液を37℃、60℃、80℃、又は120℃で、真空(2Pa)下又は周囲圧力で、1日から2週間の範囲の時間、後重合させて、様々な架橋度をもつPOCを作製した。
【0129】
POCに加えて、いくつかの他のクエン酸ベースのエラストマーを、他のジオールを使用して上記の通りに合成した。得られたコポリマーは、ポリ(1,6-ヘキサンジオール-co-クエン酸)(PHC)、ポリ(1,10-デカンジオール-co-クエン酸)(PDC)、及びポリ(1,12-ドデカンジオール-co-クエン酸)(PDDC)であった。
【0130】
[実施例2]
ポリマーネットワーク
本明細書に記載の骨成長又は修復を促進する方法のいくつかの実施形態で使用に適したポリマーネットワークを以下の通りに調製した。具体的には、架橋性ウレタンドープ型エラストマー(CUPE)合成を以下の方法にしたがって行った。
【0131】
まず、上記実施例1にしたがって、わずかな変更を加え、POCを合成した。簡潔には、モノマー比が1:1.1のクエン酸及び1,8-オクタンジオールを、入口及び出口アダプタを取り付けた三つ口反応フラスコ中、160〜165℃で塊状重合させた。混合物が溶融したら、温度を140℃に下げ、反応混合物を1時間撹拌して、POCプレポリマーを作製した。プレポリマーを脱イオン水中で滴下沈殿させることによって精製した。不溶のプレポリマーを収集し、凍結乾燥して、精製POCプレポリマーを得た。pre-POCの平均分子量は、Autoflex MALDI-TOF Mass Spectrometer(Bruker Daltonics、Manning Park、MA)を使用して行ったマトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS)により、850Daと特徴付けられた。次いで、pre-CUPEを得るためのPOCプレポリマーの鎖延長を行った。
【0132】
精製pre-POCを1,4-ジオキサンに溶解して、3wt.%溶液(pre-POCと1,4-ジオキサンの総重量に基づいて)を形成した。次いで、清浄な反応フラスコ中で一定に撹拌しながら、オクタン酸第一スズを触媒(0.1wt.%)として、ポリマー溶液を1,6-ヘキサメチルジイソシアネート(HDI)と反応させた。様々なpre-CUPEポリマーをpre-POC:HDI(1:0.56、1:0.9及び1:1.2、モル比)の様々な供給比で合成した。反応中、系を55℃で維持した。少量の反応混合物を6時間間隔で回収し、フーリエ変換赤外(FT-IR)分析に供した。2267cm
-1におけるイソシアネートピークが消失したとき、反応を終結させた。
【0133】
次いで、pre-CUPE溶液をTEFLON(登録商標)(DuPontから市販されている)成形型にキャスティングし、溶媒が全て蒸発するまで、層流を備えた化学フードで乾燥させた。得られたpre-CUPEフィルムを80℃に維持されたオーブンに所定の期間移し、架橋CUPEを得た。
【0134】
[実施例3]
スキャフォールド
本明細書に記載の骨成長又は修復を促進する方法のいくつかの実施形態で使用に適したスキャフォールドを以下の通り調製した。
【0135】
まず、塩化ナトリウム結晶を粉砕し、50μmから1000μmの範囲の異なるサイズに篩で分離した。ヒドロキシアパタイト(HA)及びプレポリマー、例えば実施例1にしたがうポリ(1,8-オクタンジオール)(POC)、実施例2にしたがう架橋性ウレタンドープ型エラストマー(CUPE)、又は他のシトレートベースのポリマーなどを、TEFLON(登録商標)(DuPontから市販されている)皿中で0から65wt.%のHA比(HAとポリマーの合わせた重量に対して)で1,4-ジオキサン溶媒に撹拌し続けながら溶解した。次に、上記溶液に0から90wt.%の塩重量比(塩、ポリマー、及びHAの総重量に基づいて)で塩を加えた。生じたスラリーを、溶媒のほぼ全てが蒸発するまで撹拌した。次いで、混合物を成形型に移した。
【0136】
具体的には、4mmの内径を有する円柱状のTEFLON(登録商標)成形型を使用してスキャフォールドを作製した。成形して成形型から取り出した後、全てのスキャフォールドを80〜100℃で3日間架橋させた。架橋後に、スキャフォールドを蒸留水に浸漬することによって、塩を浸出させた。塩浸出プロセスは3週までの期間行われ、少なくとも1日おきに水を取り替えた。全ての塩をスキャフォールドから除去するのに必要な時間を短縮するために、頻繁な水の交換、真空の適用及び加熱、又はエタノールのような膨潤性溶媒の使用を用いることもできる。塩浸出後に、スキャフォールド試料を凍結乾燥させ、動物実験で使用する前に滅菌した。
【0137】
[実施例4]
骨成長を促進する方法
本明細書に記載のいくつかの実施形態による骨成長又は治癒を促進する方法を以下の通りに実施した。
【0138】
骨成長部位へのスキャフォールドの配置
72匹の雄性Sprague-Dawleyラット(200〜220g)を実験で使用した。給餌及び予期される成長速度を確かめるために、実験動物の体重を厳密に監視した。全てのラットは手術に先立って少なくとも1週間は通常通り飼育し、50%湿度及び12h明暗周期の22℃で室温調節された室内のケージに個々に入れた。手術は半滅菌条件下で行い、動物は100mg/kgの抱水クロラール及び10mg/kgのキシラジンの腹腔内注射により誘導された麻酔下であった。手術部位を剃毛し、70%エタノール溶液で準備した。滅菌ドレープ、手袋、及び器具を使用し、パンチをアルコールで消毒した。
【0139】
ラットに頭蓋骨の矢状正中線で0.5mLの1%リドカイン(局所麻酔剤)を皮下注射した。この注射後に、鼻骨から中央矢状稜までの頭皮にかけて矢状切開を作成し、骨膜を鈍的に剥離した。パンチを使用して、滅菌生理食塩水で絶えず冷やしたトレフィンで4mm径の孔欠損を作成した。次いで、硬膜が裂けるのを回避するために、頭蓋冠板(calvarial disk)を注意深く取り除いた。生理食塩液で入念にすすいで、骨片を洗い落とした後、複合材料スキャフォールドを欠損部内に移植した。動物を4つの治療群(1群あたりn=18):1)4mmの欠損が作られたが、空のまま残された群(対照群/CON群)、2)欠損に自家骨を充填した群(AB群)、3)実施例2及び3によるCUPE-HAスキャフォールドを欠損部位に置いた群(CUPE-HA群)、並びに4)実施例1及び3によるPOC-HAスキャフォールドを欠損部位に置いた群(POC-HA群)に均等に分割した。皮膚を6-0 vicrylで縫合し、術後動物ケアプロトコールを用いて動物を監視した。
【0140】
術後ケア
全てのラットが手術の最後まで生き残り、24時間以内に通常の活動に戻った。外科手術後に、局所感染、長引く痛覚過敏、又は異常な体重の変動の兆候は観察されなかった。6カ月の外科移植後に、目視及びSEM観察のために頭蓋冠試料を摘出した。
【0141】
術後期間中に6匹のラットが死亡し、これには対照群の1匹、AB群の2匹、CUPE-HA群の1匹、及びPOC-HA群の2匹が含まれた。残りの66匹の動物は、手術後6カ月まで合併症のない術後経過を経た。全てのラットを毎日目視観察した。動物に明らかな炎症反応はなかった。
【0142】
新骨形成の放射線写真による評価
欠損部内の新骨形成を観察するために、手術後1、3、及び6カ月でマイクロCTを使用して3D形態画像を再現した。これらの画像を
図1A〜1Lに示す。放射線写真による新骨形成の証拠は、非スキャフォールド群(対照群及びAB群)とスキャフォールド群(CUPE-HA群及びPOC-HA群)との間で大きなばらつきがあった。非スキャフォールド群においては、新骨形成は周縁成長(marginal growth)の出現によってみられた。しかしながら、スキャフォールド群においては、とりわけ
図1G〜1Iに示すCUPE-HA群において、新骨形成が欠損部の全体にわたって広がっており、放射線不透過性であった。
【0143】
欠損部位の辺縁部における石灰化した骨格組織の形成のさらなる定量的評価を提供するために、次にマイクロCT分析を行った。観察された最も明らかな差異は、他の群におけるより少ない量の骨形成と比較して、AB群におけるより多量の新たに形成された骨であった。CON群と比較して、2つのスキャフォールド治療群はより大きな修復効果を示したが、AB群と比較して効果は少なかった。手術後1、3、及び6カ月でのAB群の修復を受ける領域における骨密度(BMD)は、他の群のものよりも有意に高かった。さらに、
図2に示すように、CUPE-HA群及びPOC-HA群のBMDはCON群よりも高かった。各群の骨梁幅(Tb.Th)は同様の傾向を示した。CUPE-HA群とPOC-HA群との間に有意差は観察されなかった。
【0144】
組織学的評価
CUPE-HA群及びPOC-HA群における欠損部位に関する組織学的知見は、AB群における知見と同様であった。具体的には、欠損部位の辺縁部は線維性間質及び反応性骨から構成されており、線維性間質がスキャフォールドの周囲に緩く出現しており、比較的高いレベルの血管新生を示している。対照的に、CON群における欠損部位は、
図2に示すように、反応性骨をほとんど示さず、AB群及び両スキャフォールド群と比較して、線維性間質が少なかった。
【0145】
移植後1、3、及び6カ月で、血管内皮細胞増殖因子b(VEGF-b)についての免疫組織化学的染色を行った。CON群では、欠損空間(移植なし)が小さな線維細胞及び炎症性細胞で満たされており、こうした細胞はVEGF-bについて陰性であった。対照的に、CUPE-HA群及びPOC-HA群は、AB群と同様に、欠損部位でより陽性のVEGF-bの発現を示した。
【0146】
スキャフォールドで治療されたラットにおける血管数の増加が血管の形態的分析により確認された。CUPE-HA群の血管数は、
図3に示すように、手術後1カ月でAB群又はPOC-HA群よりも有意に高かった。さらに、手術後3及び6カ月で各群間の血管数に有意差はなかった。
【0147】
[実施例5]
ポリマー
本明細書に記載の骨成長又は修復を促進する方法のいくつかの実施形態で使用に適したポリマーネットワークを以下の通り調製した。具体的には、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)などのアミン含有ジオールモノマーを使用してポリマーを形成した。MDEAなどのモノマーを使用することで、分解性及び/又は生分解性などのある特定の他の所望の特徴を維持しながら、本明細書に記載のグラフト又はスキャフォールドの機械的強度を上げることができる。
【0148】
MDEA修飾pre-POC-N
3、及びpre-POC-Al(pre-POC-M-N
3及びpre-POC-M-Al)を含有するN-メチルジエタノールアミン(MDEA)修飾ポリ(1,8-オクタンジオールシトレート)-クリック(POC-M-クリック)プレポリマーを
図4Aに示すように合成した。
【0149】
簡潔には、pre-POC-M-N
3については、1:0.8:0.1のCA:OD:MDEAのモル比のクエン酸(CA)、1,8-オクタンジオール(OD)、及びMDEAの混合物を160℃で15分間溶融させた。その後、反応温度を120℃に下げ、続いてジアジド-ジオールモノマー(DAzD、2,2-ビス(アジドメチル)プロパン-1,3-ジオール)を1:0.2のCA:DAzDのモル比で加えた。反応を120℃でおよそ2時間継続した。次いで、オリゴマー/1,4-ジオキサン溶液を水中で沈殿させることによって粗生成物を精製し、続いて凍結乾燥して、pre-POC-M-N
3を得た。
【0150】
Pre-POC-M-Alは、pre-POC-M-N
3について上記で使用したものと同様のプロトコールを使用して、CA、OD、MDEA、及びDAzDの代わりにアルキンジオールモノマー(AlD、2,2-ビス(ヒドロキシル-メチル)プロピオネート)を1:0.8:0.1:0.2のCA:OD:MDEA:AlDのモル比で反応させることによって合成した。
【0151】
[実施例6]
スキャフォールド
本明細書に記載の骨成長又は修復を促進する方法のいくつかの実施形態で使用に適したスキャフォールドを以下の通り調製した。
【0152】
2x2x10mmのサイズ、HAとポリマーとを合わせた重量に対して65wt.%のHA含有量、65%の気孔率、及び250〜425μmの気孔径を有する多孔性POC-M-クリック-HA複合材料マッチ棒形状スキャフォールドを以下の方法によって作製した。スキャフォールドは、上記実施例5によって調製した組成物を使用して、
図4Bに示した方法によって調製した。
【0153】
250〜425μmのサイズを有する塩化ナトリウム粒子をポロゲン(porogen)として使用した。ポリビニルピロリドン(PVP、10KDaのM
wを有する)(Sigma-Aldrichから市販されている)を使用して塩化ナトリウム粒子をまず結合させた。PVP(塩とPVPとを合わせた量に対して10vol.%)をエタノールに溶解し、溶液を塩と混合して、エタノールが蒸発するまで撹拌し続けた。POC-M-クリックプレポリマー溶液を、30wt.%の1,4-ジオキサン溶媒に溶解したpre-POC-M-N
3とpre-POC-M-Alの等重量混合物から調製した。塩の結合後に、HAの65wt.%溶液及びPOC-M-クリックプレポリマー溶液(HAとプレポリマーとを合わせた重量に対して65wt.%のHA)を混合し、ほぼ全ての溶媒が蒸発するまで撹拌し続けた。複合材料が所望の作業性を維持しながら十分に乾燥するまで、混合物を手で混錬した。
【0154】
次いで、マッチ棒状骨スキャフォールドを、104x2x10mmのサイズを有する直方体状TEFLON(登録商標)(DuPontから市販されている)成形型で作製した。乾燥後に、大きなスキャフォールドを2x2x10mmの所望のサイズに切断し、同時二元架橋プロセス、すなわち熱的クリック反応及びエステル化を行うために、100℃で3日間架橋させた。架橋後に、スキャフォールドを脱イオン水に浸漬することによって、塩及びPVPを浸出させた。塩/PVPの浸出後に、スキャフォールド試料を凍結乾燥させ、滅菌した。POC-M-クリック-HAスキャフォールドと同じサイズ(2x2x10mm)、気孔率(65%)、HA含有量(65wt.%)及び気孔径(250〜425μm)の多孔性ポリ(L-乳酸)-HA(PLLA-HA、約60KDAのM
wを有するPLLA、Polyscitechから購入)マッチ棒状スキャフォールドもまた、動物実験において対照として使用するために調製した。
【0155】
[実施例7]
骨成長を促進する方法
本明細書に記載のいくつかの実施形態による骨成長又は治癒を促進する方法を以下の通りに実施した。
【0156】
骨成長部位へのスキャフォールドの配置
54匹のウサギ(平均体重、2〜2.5kg、雄性又は雌性)の集団を、自家骨(A群、n=18)、POC-M-クリック-HA(B群、n=18)、及びPLLA-HA(C群、n=18)の3つの群に無作為に分割した。全てのウサギを24時間絶食させ、この時間の後、ウサギに2%ナトリウムペントバルビタール(30mg/kg)の注射により鎮静剤を投与し、標準的技法にしたがって手術の準備をした。次いで、ウサギを側臥位にし、L4〜L5の横突起を露出させ、前外側外科的処置によって除去し、L4/L5椎間板を顕した。標的の椎間板への接近及び鋼製プレートを使用した椎体の固定を改善するために、従来の外科的方法の代わりに前外側外科的処置を用いた。次いで、L4/L5椎間板を切除した。切断端からの少量の出血に対処した後、自家骨、POC-M-クリック-HAマッチ棒状スキャフォールド、又はPLLA-HAスキャフォールドをL4/L5椎間板での骨成長部位に充填し、L4及びL5椎骨をスクリューで固定し、鋼製プレートで連結した。創傷を洗浄した後に縫合し、ゼラチンスポンジで清掃した。感染を防ぐために、全てのウサギに50,000U/kgのペニシリンを連続3日間筋肉内で投薬した。ウサギは手術の24時間後に食餌への接近を許された。
【0157】
一般的観察
手術後4、8、及び12週で、各検体について組織構築物の位置及び脊椎癒合率をSukの体系から適応した二重盲検試験で3人の熟練した放射線科医により評価し、それによって放射線写真試験及びストレッチ触診(stretching palpitation)試験を行った。「堅固な癒合」は、屈曲-伸展放射線写真の椎間可動域(ROM)が<4°である場合、明らかな椎間骨橋が形成されたものと定義された。「癒合見込み)」は、微妙な椎間骨橋が形成されたが、屈曲-伸展放射線写真の椎間ROMが<4°である場合に確認された。「癒合不能」は、椎骨と脊柱との間の骨形成を示さないかほとんど示さず、屈曲-伸展放射線写真でROMが4°を超えるものと定義された。各時点で、3群で堅固な癒合及び癒合見込みの基準を満たす検体の数を記録し、ある時点の各群についての癒合率を方程式(2)により計算した:
【0158】
【数2】
(式中、N
tは試験した検体の総数であり、N
nonは癒合不能の検体の数である。各試料について、3人の放射線科医により得られた癒合率の値を平均した)。
【0159】
画像化評価によって各群において観察された癒合率を
図5に示す。手術の4週後に、インプラント又は内部固定装置の移動又は破損はX線画像化により観察されなかった。明らかな新骨形成は観察されなかったが、この時点でインプラントは椎間板の空間に残存していた。自家骨群(A群)の癒合度は21.3±3.7%であった。また、B群とC群の癒合率は4週の時点で有意に異ならなかった(p>0.05、
図5)。手術の8週後で、自家骨群の癒合率(94.4±3.7%)は他の2群(POC-M-クリック-HA群について80±4.5%、PLLA-HA群について71.1±4.4%)のものよりも高かったものの、POC-M-クリック-HA群の癒合率はそれでもPLLA-HA群のものよりも有意に高かった。手術の12週後に、3群の全ての検体は、触診試験及びマイクロCT評価によって100%の椎間癒合率を示した。手触診検査の結果は、マイクロCT画像化の結果をさらに確証した。
【0160】
生体力学的試験
各時点におけるL4〜L5の椎体及び椎間板を回収し、-20℃で保存した。機械的試験前に、検体を室温に温め、椎間板が配置された面が圧縮方向に対して垂直であるのを確実にするように、検体の両端を義歯床用レジン(ポリ(メチルメタクリレート)、PMMA)に埋め込んだ。次いで、検体を機械的試験機(Bose Electro Force 3510、USA)で固定し、圧縮試験のために0.008mm/sの一定の速度で荷重を適用した。脊椎の剛性及び最大荷重についての値を記録した。
【0161】
上に特定した試料の生体力学的試験の結果を
図6A及び6Bに示す。POC-M-クリック-HA群(B群)の平均最大荷重は880.0±14.5Nであった。この値は、965.2±38.8Nの平均最大荷重を示した自家骨群のものよりも低いものの、712.0±37.5N(p<0.05)の平均最大荷重を示したPLLA群のものよりも有意に高かった。POC-M-クリック-HAスキャフォールドで治療した、癒合した脊椎欠損はまた、PLLA-HAで治療した脊椎欠損(622.5±28.4N/mm、p<0.05)よりもはるかに高い剛性(843.2±22.4N/mm)を有した。自家骨グラフトで治療した、癒合した脊椎欠損の剛性は、1024.3±21.5N/mmであった。
【0162】
骨再生及びグラフト/スキャフォールドの分解
H&E及びマッソントリクローム染色で染色した3群全ての顕微鏡像は、新骨形成が12週において固定分節で可視であったことを示し、3つのアプローチ全てが骨梁骨形成を誘発したことを示唆する。測定した時点のいずれにおいても、移植された材料中及びその周囲に顕著な局所炎症反応はみられなかった。4週後、POC-M-クリック-HAインプラントはPLLA-HAインプラントよりも多量の新骨に包囲され、POC-M-クリック-HA材料は部分的な分解を示し、散在する空洞を後に残した。対照的に、PLLA-HAインプラントを包囲するより少ない新骨形成が観察された。さらに、PLAA-HAインプラントのごく少ない材料分解が観察された。8週後、POC-M-クリック-HA複合材料はより分解し、わずかに少量の材料を新骨内に残した。8週でPLLA-HAインプラントの周囲で最小の新骨成長が観察され、この試料では材料の分解は容易に明らかではなかった。12週で、POC-M-クリック-HA群は、新骨が複合材料を大部分置き換え、椎間板の空間を満たし、上下の椎体を連結していることを実証した。移植されたPLLA-HA材料も新骨形成を示したが、新たに形成された骨の周囲を顕著により多量の残留材料が包囲していた。
【0163】
本発明の多様な実施形態を本発明の多様な目的の実施において記載した。これらの実施形態は本発明の原理を例示するものに過ぎないことが認識されるべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数のこれらの変更及び適合が当業者に容易に明らかとなろう。
【国際調査報告】