(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512663(P2017-512663A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】クランプブッシュおよびクランプ装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20170421BHJP
【FI】
B23Q3/06 304F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-558105(P2016-558105)
(86)(22)【出願日】2015年3月18日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月15日
(86)【国際出願番号】EP2015000597
(87)【国際公開番号】WO2015139838
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】102014004104.2
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516160522
【氏名又は名称】ルートヴィヒ エアハルト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】オリバー グラウリヒ
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA04
3C016CC01
3C016CE01
(57)【要約】
本発明は、部品(2)特にクランプ対象のワークピースの穴部(3)でクランプするクランプブッシュ(21)であって、弛緩状態では、クランプブッシュ(21)は、クランプブッシュ(21)を穴部(3)に差込可能および穴部(3)から引抜可能なように、径方向に収縮しており、クランプ状態では、クランプブッシュ(21)は、クランプブッシュ(21)のエンベロープ面が穴部(3)の内壁と機械的接続を形成するように、径方向に拡張したクランプブッシュに関する。本発明によれば、クランプブッシュ(21)のエンベロープ面と穴部(3)の内壁との間の機械的接続はフォームロックであり、ねじ接続で構成されることが提案される。本発明は、さらに、これに対応するクランプ装置(1)に関する。本発明の不可欠な特徴は、差込留め具により、油圧ラインを開く必要なく、また引張要素を装置から取外すことなく、引張ボルト(引張棒)を交換することが可能であることである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(2)特にクランプ対象のワークピースの穴部(3)でクランプするクランプブッシュ(21)であって、
a)弛緩状態では、前記クランプブッシュ(21)を前記穴部(3)に差込可能および前記穴部(3)から引抜可能なように、前記クランプブッシュ(21)が径方向に収縮しており、
b)クランプ状態では、前記クランプブッシュ(21)のエンベロープ面が前記穴部(3)の内壁と機械的接続を形成するように、前記クランプブッシュ(21)が径方向に拡張しており、
c)前記クランプブッシュ(21)の前記エンベロープ面と前記穴部(3)の前記内壁との間の前記機械的接続はフォームロックであり、
d)前記穴部(3)の前記内壁(4)における内ねじ(5)と係合して前記フォームロック接続を形成するために、前記クランプブッシュ(21)の前記エンベロープ面に設けられた外ねじを備えることを特徴とする、クランプブッシュ。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプブッシュ(21)であって、
a)前記クランプブッシュ(21)の前記外ねじと前記穴部(3)の前記内ねじ(5)とは、同一のねじピッチを有する、および/または
b)径方向収縮状態では、前記クランプブッシュ(21)の前記外ねじのねじ径は、前記穴部(3)の前記内ねじ(5)よりも小さい、および/または
c)径方向拡張状態では、前記クランプブッシュ(21)の前記外ねじのねじ径は、前記穴部(3)の前記内ねじ(5)と同一である、および/または
d)前記クランプブッシュ(21)の径方向収縮状態では、前記クランプブッシュ(21)の前記外ねじの外径は、前記穴部(3)の前記内ねじ(5)のコア径よりも小さいことを特徴とする、クランプブッシュ。
【請求項3】
先行する請求項の何れか1項に記載のクランプブッシュ(21)であって、
a)前記クランプブッシュ(21)は、前記クランプブッシュ(21)の周辺部に分散した複数のセグメントを有し、
b)隣接するセグメントは、軸方向に延びるスリットによって互いに分離しており、
c)個々のスリットは、前記クランプブッシュ(21)の自由端から少なくとも前記クランプブッシュ(21)の軸方向の長さの一部を超えて延びていることを特徴とする、クランプブッシュ。
【請求項4】
先行する請求項の何れか1項に記載のクランプブッシュ(21)であって、
a)前記クランプブッシュ(21)は、中央に引張棒(10)用の軸方向貫通孔を有し、および
b)前記貫通孔は、前記クランプブッシュ(21)の自由端に向って径方向に広がる、特に円錐形状となる、または
c)前記貫通孔は、前記クランプブッシュ(21)の前記自由端に向って、ピラミッド状に複数の斜面に遷移することを特徴とする、クランプブッシュ。
【請求項5】
部品(2)を機械的にクランプするクランプ装置(1)であって、
a)前記部品(2)をクランプするための軸方向に移動可能な引張棒(10)と、
b)前記引張棒(10)を移動させるための軸方向に移動可能なピストン(11)と、
c)好ましくは、クランプブッシュ(22)、特に先行する請求項の何れか1項に記載のクランプブッシュと、を備える、クランプ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記引張棒(10)は、前記引張棒(10)の後退の際に、前記引張棒(10)が前記クランプブッシュ(21)を径方向に拡張するように、前記クランプブッシュ(21)内で軸方向に延び、その自由端に円錐状または斜面のある拡張部を有し、および/または
b)前記引張棒(10)は、引張棒の後退の際に、前記引張棒(10)が前記クランプブッシュ(21)を径方向に拡張するように、前記クランプブッシュ(21)内を軸方向に延び、その自由端に複数の斜面のある特にピラミッド形状の拡張部を有し、および/または
c)前記クランプブッシュ(21)の前記外ねじの外径は、前記クランプブッシュ(21)の前記径方向収縮状態では前記内ねじ(5)のねじ径に等しいが、セグメント化により、前記弛緩状態では前記穴部の前記内ねじ(5)のコア径(4)よりも小さい、および/または
d)前記クランプブッシュ(21)の前記径方向収縮状態では、個々のセグメントがエアクッション(51)上にフロートし、よって前記ねじの挿入が容易となる、および/または
e)前記クランプブッシュ(21)の前記径方向収縮状態では、個々のセグメントが弾性リング(50)上に置かれ、よって前記ねじの挿入が容易となることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載のクランプ装置(1)であって、
前記引張棒(10)を前記ピストン(11)に解除可能に機械的に固定するための差込留め具を備えることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記引張棒(10)は、差込留め具により、具体的には前記ピストン(11)を駆動するための流体ラインを開くことなく、交換可能である、および/または
b)前記引張棒(10)はその下端にハンマー状の横方向拡張部(17)を有している、および/または
c)前記引張棒(10)の通路として、前記ピストン(11)は、断面が細長い穴である軸方向穴部(14)を有し、前記引張棒(10)の前記ハンマー状拡張部(17)が、前記引張棒(10)の特定の角度位置では前記軸方向穴部(14)を通り、それ以外では前記引張棒(10)を前記ピストン(11)内にフォームロック固定する、および/または
d)前記引張棒(10)は、前記引張棒(10)の外れを防止するために、第一ばね(16)により前記ピストン(11)に対して付勢されることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記差込留め具は、前記引張棒(10)の回転角度を定めるための回転角度規制部(54)を有する、および/または
b)前記回転角度規制部(54)は、各回転方向について回転角度止具(54)を有する、および/または
c)各回転角度止具(54)はピン(54)で構成されることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項10】
請求項7または8に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記差込留め具は、前記差込留め具が意図せず解除されることを防止する耐ねじり保護部(55)を有する、および/または
b)前記耐ねじり保護部(55)は、前記引張棒の解除位置への回転を防止する回転角度止具(55)を有する、および/または
c)前記回転角度止具(55)はピン(55)を有することを特徴とする、クランプ装置。
【請求項11】
請求項5〜10の何れか1項に記載のクランプ装置(1)であって、
a)油圧または空気圧で前記ピストン(11)を加圧し前記引張棒(10)をクランプする第一圧力チャンバ(26)、および/または
b)油圧または空気圧で前記ピストン(11)を加圧し前記引張棒(10)を弛緩させる第二圧力チャンバ(31)、および/または
c)前記部品(2)が加圧なしに保持されるように、前記ピストン(11)をクランプ位置に付勢する第二ばね(44)を備えることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項12】
請求項5〜11の何れか1項に記載のクランプ装置(1)であって、
前記クランプ装置(1)の状態、特に
a)前記引張棒(10)の破損、
b)前記クランプブッシュ(21)の破損、
c)前記クランプ装置(1)上の部品(2)の有無、
d)前記弛緩位置(48)への前記引張棒(10)および/または前記ピストン(11)の載置、ならびに
e)ワークピーススの穴部が大きすぎること(40)、
の状態を検査する調査装置を備えることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項13】
請求項5〜12の何れか1項に記載のクランプ装置(1)であって、
前記引張棒の自由端(10)の周囲の配置領域にパージ用空気を吹き出す空気パージ装置を備えることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項14】
請求項5〜13の何れか1項に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記クランプ装置(1)は、前記引張棒(10)の事前センタリング用の弾力性のあるセンタリング要素(19)を、特に前記引張棒(10)を取囲むOリング(19)として有し、および/または
b)前記センタリング要素(19)は、前記クランプブッシュ(21)および前記引張棒(10)を環状に取囲み、または
c)前記センタリング要素(19)は、前記引張棒(10)を環状に取囲んで前記クランプブッシュ(21)の下に配置されることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項15】
請求項5〜14の何れか1項に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記クランプブッシュ(21)が軸方向の引下げ運動を行えるように、前記クランプブッシュ(21)は軸方向に遊び(a)を含んで前記クランプ装置(1)に組込まれ、および/または
b)前記クランプブッシュ(21)を前記引下げ運動に対して付勢するための第三ばね(20)が設けられることを特徴とする、クランプ装置。
【請求項16】
請求項15に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記クランプブッシュ(21)は、その底部に、径方向に突出するカラー(45)を有しており、前記第三ばね(20)は前記径方向に突出するカラー(45)の外側を取り囲んで径方向内側に押圧する、または
b)前記第三ばね(20)は、前記クランプブッシュ(21)下方に配置されて前記クランプブッシュ(21)を軸方向に上向きに押圧することを特徴とする、クランプ装置。
【請求項17】
請求項6〜16の何れか1項に記載のクランプ装置(1)であって、
a)前記クランプブッシュ(21)は、その下側に、上に向って円錐状に細くなる円錐状の傾斜面(46)を有し、
b)前記クランプブッシュ(21)は、その円錐状の傾斜面(46)が、前記クランプ装置(1)に固定された円錐状の傾斜面(47)に配置され、および
c)クランプ工程において、前記クランプブッシュ(21)は径方向に拡張し、互いにスライドしあう前記傾斜面(46,47)によって、軸方向に引下げられることを特徴とする、クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品、特にクランプ対象の部品(例えば加工対象のワークピース)の穴部でクランプするクランプブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術からは、その自由端をクランプ対象の部品の対応する止まり穴に差込むことのできる空気圧または油圧式で移動可能な引張棒(引張ボルト)を有するクランプ装置が知られている。引張棒の自由端は、その端部に向って円錐状に広がっており、引張棒の自由端と共にクランプ対象の部品の止まり穴に差込まれるクランプブッシュにより囲まれている。引張棒が後退すると、クランプブッシュは、まず、引張棒が後退することで引張棒の自由端の円錐状の拡張部によりクランプブッシュが径方向に拡張して、部品をクランプして固定するように、その位置に留まる。引張棒がさらに後退すると、クランプされている部品も、引張棒およびクランプブッシュと共に、引下げ運動を行うことができる。上記の既知のクランプ装置においては、クランプブッシュの外エンベロープ面と部品の止まり穴の内エンベロープ面との間の摩擦接続によって、部品のクランプが生じる。しかしながら、クランプ装置においては、クランプ効果が不十分である。
【0003】
DE4020981A1より、クランプ対象のワークピースの穴部でクランプを行うクランプブッシュが知られており、このクランプブッシュは拡張可能である。このクランプブッシュの外側には歯部があり、拡張状態ではこの歯部がワークピースの穴部の内壁を貫通し、これによりフォームロック接続を形成する。そのデメリットは、まず第一に、フォームロック接続の形成のためには径方向の大きな力をクランプブッシュに加える必要があることである。別のデメリットは、ワークピースがクランプブッシュよりも柔らかい材料で構成される必要があることである。最後に、歯部が内壁を貫通する必要があるため、個々のクランププロセスが穴部の内壁でのワークピースの変形につながることがある。
【0004】
また、先行技術に関連して、DE202013007456U1、DE102007039032A1、US2006/0049568A1、DE102004025256A1、およびUS2010/0327503A1を挙げておく。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、クランプ効果を改善することである。
【0006】
この目的は、独立請求項に記載のクランプブッシュによって実現可能である。
【0007】
本発明は、クランプブッシュの外エンベロープ面と加工対象の部品の止まり穴の内壁との間のフォームロック接続のクランプを行うための概略的な技術的教示を含む。この種の部品をクランプするフォームロック接続の利点は、最大クランプ力が大きいことと、フォームロック接続の確実性がより高いことにある。
【0008】
本発明によれば、クランプブッシュと部品との間のフォームロック接続は、ねじ接続で構成される。本明細書では、クランプブッシュの外エンベロープ面には、部品の止まり穴の内壁に対応して形成される内ねじに係合する外ねじが設けられ、これによってクランプブッシュと部品との間のフォームロック接続が形成される。
【0009】
クランプブッシュと部品との間のねじ接続では、フォームロックねじ係合を可能とするために、クランプブッシュの外ねじと部品の内ねじとが同一のねじピッチを有することが好ましい。
【0010】
ここで、このクランプブッシュは、冒頭で説明した従来のクランプブッシュと同様に、径方向に拡張可能であり、クランプブッシュは径方向収縮状態(弛緩状態)では、部品とフォームロックを形成せず、径方向拡張状態では、部品とフォームロック係合することを述べておく。
【0011】
したがって、クランプブッシュの外ねじは、通常、径方向収縮状態では、クランプブッシュが容易に部品の止まり穴に差込まれるように、穴部の内ねじよりもねじ径が小さい。
【0012】
これに対して、クランプブッシュの径方向拡張状態では、クランプブッシュの外ねじは、外ねじと内ねじとが互いに係合してフォームロック接続を形成するように、穴部の内ねじと同じねじ径であることが好ましい。
【0013】
また、クランプブッシュの径方向収縮状態では、クランプブッシュの外ねじの外径(すなわち端部から端部)は、穴部の内ねじのコア径よりも小さいことが好ましいことを述べておく。これは、径方向収縮状態でクランプブッシュを部品の止まり穴に差込可能とするために有用である。
【0014】
径方向収縮状態では、通常は、クランプ装置は弛緩状態にある、すなわち引張棒によって径方向に拡張されることがない。しかしながら、一般的には、クランプブッシュの径方向拡張状態はクランプブッシュの標準状態ではない。むしろ、クランプブッシュが引張棒によって径方向に拡張される場合、クランプブッシュは径方向拡張状態のみをとる。
【0015】
本発明の好適な例示的実施形態において、クランプブッシュの径方向の拡張は、特別な構成により可能となる。本明細書において、クランプブッシュは、クランプブッシュの周辺部に分散して配置された複数のセグメントを有する。ここでは、クランプブッシュの隣接するセグメントは、軸方向に延びるスリットによって互いに分離しており、個々のスリットは、クランプブッシュの自由端から少なくともクランプブッシュの軸方向の長さの一部を超えて延びている。このスリット付き構成により、クランプブッシュが径方向に拡張できるように、クランプブッシュの個々のセグメントが径方向にリバウンド可能となる。
【0016】
また、本発明にかかるクランプブッシュは、従来のクランプブッシュと同様に、引張棒を通すための軸方向貫通孔を有することが好ましく、この貫通孔がクランプブッシュの自由端に向って径方向に広がる、特に円錐形状となることが好ましいことも述べておく。引張棒の後退の際には、一方の引張棒の円錐状のエンベロープ面と他方の貫通孔の円錐状内壁とが互いにスライドし、クランプブッシュがこれに応じて径方向に拡張することになる。
【0017】
また、本発明は、独立した部品としての上述した本発明にかかるクランプブッシュの保護のみを求めるわけではないことも述べておく。むしろ、本発明は、部品を機械的にクランプするためのクランプ装置全体の保護を求めるものでもある。
【0018】
本発明にかかるクランプ装置は、部品をクランプするための軸方向に移動可能な引張棒(引張ボルト)を備える。このタイプの引張棒の機能についてはすでに説明している。
【0019】
また、本発明にかかるクランプ装置は、引張棒を移動させるために軸方向に移動可能なピストンを備える。このピストンは、例えば、油圧により、空気圧により、電気モータにより、または手動かつ機械的な手法により駆動することができる。
【0020】
本発明にかかるクランプ装置の好適な例示的実施形態において、クランプ装置は上記の本発明にかかるクランプブッシュを有する。引張棒は、引張棒の後退の際に引張棒がクランプブッシュを径方向に拡張するように、クランプブッシュ内を軸方向に延び、その自由端に径方向の拡張部を有する。よって、クランプブッシュは、上述のように、クランプブッシュとクランプ対象の部品の止まり穴との間にフォームロック接続を形成する。
【0021】
しかしながら、本発明は、クランプ対象の部品との間にフォームロック接続を形成するクランプブッシュを有するクランプ装置のみに限定されるものではない。むしろ、本発明は、従来の手法でクランプ対象の部品の止まり穴との間に摩擦接続を形成するクランプブッシュを有するクランプ装置をも含むものである。したがって、本発明は、円筒形状の止まり穴、円錐状の止まり穴、または内ねじを有する止まり穴を備える部品に適用可能である。
【0022】
本発明の好適な例示的実施形態において、引張棒は、差込留め具により解除可能にピストンに固定される。これは、引張棒が、長手軸に対して特定の回転位置でクランプ装置に差込可能であり、またはそこから取外し可能であることを意味する。そして、引張棒が長手軸を中心に例えば90°回転した差込状態で、引張棒が固定される。このような引張棒用の差込留め具の利点は、引張棒の交換にクランプ装置を分解する必要がないということである。また、このようにして、クランプ装置において引張棒を直接交換することができる。ここで、引張棒の交換は、引張棒の係合の際に油圧油が漏えいするリスクが生じないように、ピストンを駆動する流体ライン(例:油圧ライン)を妨げることなく行われることが望ましいことを述べておく。
【0023】
この種の差込留め具の好適な実施形態において、引張棒はその下端にハンマー状の横方向拡張部を有している。また、ピストン、およびクランプ装置自体が、引張棒を差込可能な軸方向穴部を有している。この軸方向穴部の断面は細長い穴であり、ハンマー状の横方向拡張部があるにもかかわらず引張棒を差込可能とするようになっている。
【0024】
また、差込留め具として、引張棒がクランプ装置から外れないようにするために引張棒を付勢する第一ばねを設けることが好ましいことを述べておく。
【0025】
本発明の好適な例示的実施形態において、差込留め具は、引張棒とピストンの間に、引張棒の回転角度を定める回転角度規制部を有する。好ましくは、回転角度規制部は、各回転方向に作用し、そのための回転角度止具をそれぞれについて有している。例えば、回転角度止具は、ピストンの対応する穴部に挿入される柱部で構成されてもよい。
【0026】
また、差込留め具は、差込留め具が意図せず解除されることを防止するために、耐ねじり保護部を有することが好ましい。例えば、耐ねじり保護部は、引張棒が単独で回転して、差込留め具を解除し引張棒を後退させることが可能な位置にならないようにする回転角度止具を有してもよい。また、ここで、回転角度止具は、例えば、ピストンの対応する穴部に挿入されるピンを含んでもよい。
【0027】
上記において、ピストンひいては引張棒が、油圧式または空気圧式で駆動されることが好ましいことを簡単に述べた。したがって、本発明にかかるクランプ装置は、2つの圧力チャンバ、具体的には、ピストンを油圧式または空気圧式で加圧して引張棒をクランプする第一圧力チャンバと、ピストンを油圧式または空気圧式で加圧して引張棒を弛緩させる第二圧力チャンバとを備えることが好ましい。引張棒をクランプする第一圧力チャンバは、通常はピストンの上方に配置されて、ピストン、ひいては引張棒を下向きに押圧する。しかしながら、引張棒を弛緩させる第二圧力チャンバは、ピストンの下方に配置されることが好ましく、したがって、弛緩させるためにピストンを上向きに押圧する。
【0028】
本発明の好適な例示的実施形態において、クランプ装置は、圧力の低下の際にも部品をクランプしたままとする、いわゆる本質的安全システムを備える。このため、ピストンひいては引張棒をクランプ位置に付勢する、第二ばねを設けてもよい。通例、第二ばねは、クランプブッシュが径方向に拡張してクランプ対象の部品との間に摩擦および/またはフォームロック接続を形成するように、ピストンひいては引張棒を引き下げる。
【0029】
好ましくは、本発明にかかるクランプ装置は、クランプ装置の状態をテストする調査装置も備える。例えば、調査装置は、以下のようなクランプ装置の状態を認識することができる。
・引張棒の破損
・クランプブッシュの破損
・クランプ装置上の部品の有無(配置監視)
・引張棒またはピストンの軸方向位置
・弛緩した装置(弛緩位置に引張棒およびピストンがあること)
・ワークピースの穴部が大きすぎること(この場合、ピストンが底部位置に移動する)。
【0030】
本発明にかかる好適な例示的実施形態において、このような調査装置は空気圧で動作する。このため、調査装置は、クランプ装置の配置領域に圧縮空気を吹き付けてもよい。配置領域上に部品を配置する際、部品は排出開口を封鎖するが、これは対応する気圧および気流の変化で表現され、したがって検知技術で検出可能である。
【0031】
また、調査装置からの圧縮空気を、内部でピストンが移動可能なシリンダーに吹き込むこともできる。これにより、例えば最大限にクランプされた状態にあるときまたは引張棒が破損した場合には、ピストンが穴部を塞がず、これが対応する圧縮空気の気圧および気流の変化で表現され、したがって検知技術で検出可能であるため、ピストン位置の検出が可能となる。
【0032】
本発明にかかるクランプ装置は、さらに、引張棒の自由端周囲の配置領域にパージ用空気を吹き出す空気パージ装置を備えることが好ましい。パージ用空気は、クランプ装置の配置領域をクリーンな状態に保つためのものである。
【0033】
また、空気パージ装置からの圧縮空気を、内部でピストンが移動可能なシリンダーに吹き込むこともできる。弛緩位置では、スロットルが存在するため、気圧がこの線で上昇する。これにより、弛緩位置の調査が可能となる。よって、ワークピースを装置から取り除くことができる。クランプ位置では、大量の空気が穴部48および52(
図4および
図5参照)から抜ける(気圧差を測定可能)。
【0034】
また、本発明にかかるクランプ装置は、クランプ装置において引張棒のプレセンタリングを行うために、弾力性のあるセンタリング要素を備えることが好ましい。本発明にかかる好適な例示的実施形態において、センタリング要素は、引張棒を環状に取囲む、弾性を有するOリングであり、引張棒が径方向に寄るとOリングの反力によって引張棒をセンタリングする。本発明の変形例では、センタリング要素(例:Oリング)は、クランプブッシュの下方に配置されて引張棒のみを取囲み、センタリング要素は引張棒のエンベロープ面に直接配置されている。しかしながら、本発明の別の変形例では、センタリング要素(例:Oリング)は、センタリング要素がクランプブッシュの外部に配置されるように、引張棒とこれを取囲むクランプブッシュを取囲む。
【0035】
また、本発明にかかるクランプ装置は、2つの軸方向運動、すなわち、第一にクランプ運動、第二に引下げ運動を行うことが好ましいことを述べておく。クランプ運動は、クランプブッシュを径方向に拡張するためにのみ機能し、これによりクランプブッシュとクランプ対象の部品との間の摩擦またはフォームロック接続を形成する。ただし、クランプ運動の間、クランプ対象の部品それ自体は動かされない。しかしながら、クランプ運動により部品がクランプされた後、さらに軸方向の引下げ運動がおこり、クランプされた部品を定められた位置に配置するために、クランプされた部品がクランプ装置に対して軸方向に引っ張られる。このような引下げ運動を可能とするために、クランプブッシュは、クランプブッシュとクランプされた部品の軸方向の引下げ運動が行われるよう、好ましくは軸方向に遊びを含んで、クランプ装置に組込まれる。
【0036】
好ましくは、引下げ運動に対してクランプブッシュを付勢する第三ばねが設けられる。よって、第三ばねがクランプブッシュを上向きに押圧し、引張棒は、引下げ運動の間、第三ばねのばね力を克服しなければならない。先行する引張棒のクランプ運動の間、第三ばねは、クランプブッシュは軸方向に離れないが、径方向に拡張されることを規定する。よって、第一に、第三ばねは、引張棒を引下げる際に、クランプブッシュが軸方向に離れず、径方向に拡張するに十分な抵抗を与える。しかしながら、第二に、第三ばねは非常に曲げやすく、拡張されたクランプブッシュがクランプされた部品とともに引下げ運動を行うことができる。
【0037】
本発明の一例示的実施形態において、クランプブッシュは、径方向に突出するカラーを底部に有しており、第三ばねは、径方向に突出するカラーの外側を取囲み、径方向内側に押圧する。ここで径方向に突出するカラーに作用して内方向に向けられるクランプ力は、その後、クランプブッシュにおいて、クランプブッシュを上向きに押圧する対応する軸方向に向けられた力に変換される。
【0038】
しかしながら、別の実施形態において、第三ばねは、クランプブッシュの下方に配置されてクランプブッシュを軸方向に上向きに押圧する。
【0039】
本発明の好都合な変形例において、クランプブッシュは、その下側に、上に向って円錐状に細くなる円錐状の傾斜面を有する。ここで、クランプブッシュは、その円錐状の傾斜面が、クランプ装置に固定されて補完するように傾いた円錐状の傾斜面に配置される。クランププロセスにおいて、円錐状の傾斜面は互いにスライドしてクランプブッシュを径方向に拡張させ、引き下げ運動中に軸方向下向きの運動を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明のさらにその他の好都合な発展形は、従属請求項に特徴づけられ、また、以下に、図面を参照し、本発明の好適な例示的実施形態と合わせてより詳細に説明される。
【0041】
【
図1A】
図1Aは、本発明にかかるクランプ装置の部分切り取り斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1Aおよび
図1Bのクランプ装置の断面図であり、クランプ中のピストンへの加圧を示す。
【
図4】
図4は、
図1Aおよび
図1Bのクランプ装置の別の断面図であり、クランプ装置からのパージ用空気の吹き出しを示し、またスロットルによる弛緩位置の調査を示す(注:ワークピースを取り除くことができる)。
【
図6】
図6は、
図2の拡大詳細図であり、引下運動の前提条件としてのクランプブッシュの軸方向の遊びを示す。
【
図7】
図7は、差込留め具の固定された引張ボルトの軸方向拡大詳細図である。
【
図8】
図8は、引張棒の差込留め具を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1A〜
図8にかかる例示的実施形態の、本質的安全装置のための追加のばねを有する変形例を示す。
【
図10】
図10は、クランプブッシュを径方向に拡張させるためにクランプブッシュに円錐状の傾斜面を設けた変形例を示す。
【
図11】
図11は、ねじの挿入を容易にするための弾性リングを設けた変形例を示す。
【
図12】
図12は、ねじの挿入を容易にするためのエアクッションを設けた変形例を示す。
【
図13A】
図13Aは、差込留め具が耐ねじり保護部と回転角度規制部とを備える別の例示的実施形態の
図13Cの断面線F−Fに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1A〜
図8は、部品2をクランプするための本発明にかかるクランプ装置1を示す各種の図である。明確にするために、
図2では部品2を模式的にのみ示し、それ以外では省略している。部品2は、以下に詳細を説明するように、フォームロック係合を可能とするためにクランプ装置1による係合用の内ねじ5が設けられた内壁4のある止まり穴3を有する。
【0043】
クランプ装置1は、上側がハウジングカバー7により閉塞され、下側がハウジングベース8により閉塞されるハウジング6を有する。ここで、ハウジングベース8とハウジング6との間の環状の間隙は、シール9によって封止されている。
【0044】
クランプ装置1内には、引張棒10が軸方向に移動可能に配置されており、この引張棒10は、同じく以下に詳細に説明するように、同様に軸方向に移動可能なピストン11によって移動される。ピストン11の外エンベロープ面とハウジング6の内壁との間の環状間隙は、ここでは2つのシール12,13によって封止されている。
【0045】
ピストン11は、引張棒10の下端が差込まれる軸方向貫通孔14を有し、この引張棒10は、以下に詳細に説明するように、解除可能な差込留め具によってピストン11に固定される。
【0046】
ピストン挿入部15がピストン11に挿入されており、ピストン挿入部15のベース部には、引張棒10の差込留め具が不注意により解除されないよう、引張棒10を軸方向上側に押圧するばね16が置かれている。
【0047】
ここで、ピストン11の貫通孔14は、
図7に示すように、断面が細長い穴となっている。引張棒10は、その下端に、差込留め具が固定された状態でピストン11の突出部53の底部に支えられるハンマー状の横方向拡張部17を有している。よって、特定の角度位置では、細長い穴である貫通孔14が十分なスペースを提供するため、引張棒10を簡単にクランプ装置1に差込むことができる。引張棒10の差込後、引張棒10は90°回転させられ、引張棒10のハンマー状拡張部17がピストン11に配置される。
【0048】
しかしながら、例えばピボットカーブまたはストップボルトを介した例えば締め具など、その他の変形例も可能である。
【0049】
ばね16は、引張棒10が意図せず回転して(突出部53にかかっている)クランプ装置1から外れることを防止する。
【0050】
また、クランプ装置1は、その上部領域において、内部パーツ18を有しており、内部パーツ18は、環状に引張棒10を取囲み、引張棒10の事前センタリング用のOリング19が配置される貫通孔を含んでいる。具体的には、引張棒10が横方向に寄ると、Oリング19が内方向の反力を加え、これにより引張棒10がクランプ装置1内でセンタリングされる。
【0051】
ここで、内部パーツ18は、圧縮ばね20を介してハウジング6に置かれている。そして、圧縮ばね20は、内部パーツ18を上向きに押圧している。
【0052】
引張棒10の自由端はクランプブッシュ21によって囲まれており、部品2がクランプされると、クランプブッシュ21が止まり穴3に差込まれてフォームロック接続を形成する。このため、クランプブッシュ21は、その外エンベロープ面に、止まり穴3の内ねじ5に合う外ねじを有している。
【0053】
引張棒10の自由端は、引張棒10の端部に向って円錐状に広がる外エンベロープ面を有している(代替的にピラミッド状の面でもよい)。また、これに対応して、クランプブッシュ21も、自由端に向って円錐状に広がる円錐状の内壁を有している。よって、引張棒10がクランプ装置1内を後退すると、一方は引張棒10、他方はクランプブッシュ21の円錐面が互いにスライドすることにより、クランプブッシュ21が径方向に拡張することになる。そして、クランプブッシュ21の外ねじは、対応して設けられた止まり穴3の内ねじ5と係合して、フォームロック接続を形成する。
【0054】
また、クランプブッシュ21の外部は、環状のスクレーパー22によって囲まれていることを述べておく。スクレーパー22は、クランプ装置1内へのほこりの入り込みを防止する。
【0055】
図2は、引張棒10をクランプするための油圧接続23を有するクランプ装置1の断面図である。油圧接続23は、オイル流路24,25を介して圧力チャンバ26に連結しており、圧力チャンバ26内で作用する油圧がピストン11を上側から押圧し、必要があればピストン11を押し下げる。そして、これに応じて、ピストン11は引張棒10を下側へ移動させる。また、ここで、オイル流路25は栓27によってその上側が閉塞されていることを述べておく。
【0056】
図3は、クランプ装置1を弛緩するための油圧接続28を有する
図1Aおよび
図1Bのクランプ装置の別の断面図である。油圧接続28は、オイル流路29,30を介して圧力チャンバ31に連結しており、圧力チャンバ31内に広がる油圧がピストン11に下から作用し、必要があればピストン11を押し上げる。また、ここで、オイル流路30は栓32によってその上側が閉塞されていることを述べておく。
【0057】
図4は、空気パージ装置およびピストン11の弛緩位置調査のための空気圧接続33をさらに有するクランプ装置1の別の断面図である。空気圧接続33は、圧縮空気流路34,35,36,48を介してハウジングカバー7の圧力チャンバ37に連結しており、圧力チャンバ37からは、クランプ装置1の配置領域をクリーンに保つために、吹出開口を通って圧縮空気を上向きに吹き出すことができる。また、ここで、圧縮空気流路34は栓38によってその外側が閉塞されていることを述べておく。
【0058】
スロットル49は、気圧差を確保する。弛緩状態において、上部位置にあるピストン11と圧縮空気流路48(パージ用空気流路)は閉塞されている。すなわち、クランプ位置と弛緩位置との間には気圧差がある。
【0059】
図5は、空気圧式で動作する調査装置のための空気圧接続39をさらに有するクランプ装置1の別の断面図である。
【0060】
調査装置の空気圧接続39は、第一に、圧力流路40を介して、ピストン11が内部で軸方向に移動可能なシリンダーに通じている。このようにすることで、ピストン11が圧縮空気流路40の出口開口を開放すると、空気圧接続39での気圧状態が変化するため、ピストン11の位置が調査装置によって調査される。
【0061】
しかしながら、第二に、調査装置の空気圧接続39は、クランプ状態において部品2によって塞がれる配置監視孔43に、圧縮空気流路41,42を介して通じている。これにより、空気圧接続39における気圧状態が変化して、測定技術により検知可能となるため、配置監視が可能となる。
【0062】
以下、本発明にかかるクランプ装置1の機能について説明する。
【0063】
ここでは、引張棒10が、すでにクランプ装置1に組込まれ、差込留め具によって固定されているものとする。そして、ばね16が、引張棒10をピストン11に対して上向きに押圧し、これにより、例えば最悪の場合には(突出部53と係合している)引張棒10から外れることになる振動や揺れによって差込留め具が緩むことを防止する。
【0064】
そして、油圧接続28によって圧力チャンバ31にオイルが供給されてピストン11に下から作用し、ピストンと引張棒10を上向きに押圧して、クランプ装置1が、まず、弛緩している。クランプ装置が弛緩している間、油圧接続23には圧力がかからない。
【0065】
次に、引張棒10の自由端がクランプブッシュ21と共に止まり穴3に差込まれるように、部品2を載置することができる。
【0066】
ここで、弛緩状態におけるクランプブッシュ21の外径は止まり穴3の内壁4の内径よりも小さいことを述べておく。これは、クランプブッシュ21と共に引張棒10を弛緩状態で止まり穴3に差込むために重要である。
【0067】
部品2をクランプ装置1に載置すると、部品2はクランプ装置1の上側の配置監視孔43を閉塞するが、これは空気圧接続39において測定可能である。
【0068】
この後に、クランプ装置1がクランプされる。このために、油圧接続28には圧力がかからない。また、圧力チャンバ26の油圧がピストン11を引張棒10と一緒に引下げるように、圧力接続23が制御される。このような引張棒10の下方向への運動によって、引張棒10の円錐面とクランプブッシュ21の円錐面が互いにスライドし、クランプブッシュ21が径方向に拡張することになる。クランプブッシュ21が径方向に拡張している間、クランプブッシュ21のエンベロープ面の外ねじが、止まり穴3の内壁4の内ねじ5に係合して、クランプブッシュ21と部品2との間にフォームロック接続を形成する。
【0069】
引張棒10が下向きへさらに移動すると、部品2をクランプ装置1の配置領域にしっかりと引き寄せるために、フォームロックでクランプされた部品2が引下げ運動を行う。ここで、クランプブッシュ21はその下側が内部パーツ18に置かれていることを述べておく。よって、引張棒10をさらに引下げることにより、クランプブッシュ21、ひいては圧縮ばね20に支えられている内部パーツ18が、これに応じて下向きに移動することになる。したがって、引下げ運動は、圧縮ばね20の反作用を克服しなければならない。
【0070】
調査装置は、空気圧接続39における気圧状態の問い合わせにより、部品2がクランプ装置1の配置領域にしっかりと引き寄せられているか否かを判断することができ、しっかりと引き寄せられている場合、クランププロセスは終了する。
【0071】
図6から、内部パーツ18ひいてはクランプブッシュ21は、部品2のクランプ後に引下げ運動ができるようにするために、軸方向に遊びをもってクランプ装置1に組込まれていることが明らかである。
【0072】
図9は、上述した例示的実施形態の変形例を示し、この例示的実施形態はその大部分が上記の実施形態に一致する。重複を避けるために上記の説明を援用し、対応する点については同じ参照符号を用いる。
【0073】
本例示的実施形態の特徴は、クランプ装置1がいわゆる本質的安全システムを備える点にある。これは、圧力の低下が起こっても部品2がクランプされたままであることを意味する。このため、ピストン11ひいては引張棒10をクランプ位置に引下げる、追加ばね44が設けられている。
【0074】
最後に、
図10は、その大部分が上記の例示的実施形態に対応するさらに別の変形例を示す。重複を避けるために上記の説明を援用し、対応する点については同じ参照符号を用いる。
【0075】
本例示的実施形態の特徴は、クランプブッシュ21が、その下側に、径方向に突出するカラー45と、クランプ装置の円錐状の傾斜面47上をスライド可能な円錐状の傾斜面46と、を備える点にある。したがって、引下げ運動の際に、円錐状の傾斜面46,47が互いにスライドして、径方向に突出するカラー45が圧縮ばね20の径方向の反力に抗して外向きに寄って、これにより引下げ運動が可能となる。
【0076】
図11および
図12は、その大部分が上記の例示的実施形態に対応するさらに別の変形例を示す。重複を避けるために上記の説明を援用し、対応する点については同じ参照符号を用いる。
【0077】
図11の特徴は、クランプブッシュ21は、下側の弾性リング50上に置かれ、これによりクランプブッシュ21のねじの差込みが容易となる点にある。
【0078】
図12の特徴は、クランプブッシュ21は、下側の弾性リング50上にフロートし、これによりクランプブッシュ21のねじの差込みが容易となる点にある。
【0079】
図13A〜
図13Cは、その大部分が上記の例示的実施形態に対応するさらに別の変形例の各種断面図である。重複を避けるために上記の説明を援用し、対応する点については同じ参照符号を用いる。
【0080】
本例示的実施形態の特徴は、差込留め具が、一方の引張棒10のハンマー状拡張部17と他方のピストン11との間に、ピストン11の対応する穴部に挿入された2つのピン54で構成される回転角度規制部を有する点にある。引張棒10がその長手軸を中心に回転する際、引張棒10のハンマー状拡張部17が、引張棒10の回転角度を制限するように、ピン54に接触する。
【0081】
本例示的実施形態の別の特徴として、差込留め具が、差込留め具の意図しない解除を防ぐ耐ねじり保護部(解除保護)を有する点がある。耐ねじり保護部は、実質的に、同様にピストン11の穴部に挿入された追加ピン55で構成される。ここで、ピン55は、引張棒10が回転し、引張棒10がピストン11から外れることを可能になる位置にくることを妨害する。したがって、差込留め具を解除するためには、まずピン55を取り除く必要がある。その後、引張棒10が回転可能となって、差込留め具を解除することができる。
【0082】
本発明は、上述した好適な例示的実施形態に限定されるものではない。むしろ、同様に発明思想を利用し、したがって保護の範囲に含まれることになる、複数の変化形および変形例が可能である。特に、本発明は、従属請求項の主題と特徴の保護を、その引用元の請求項とは別に請求するものである。例えば、従属請求項に記載の差込留め具の思想は、独立請求項に記載のねじ接続の特徴によらず、保護するに値する独立した意義を有するものである。
【符号の説明】
【0083】
1:クランプ装置
2:部品
3:止まり穴
4:止まり穴の内壁
5:止まり穴の内ねじ
6:クランプ装置のハウジング
7:ハウジングカバー
8:ハウジングベース
9:ハウジングベースとハウジングとの間のシール
10:引張棒
11:ピストン
12:ピストンとハウジングとの間のシール
13:ピストンとハウジングとの間のシール
14:ピストンの貫通孔
15:ピストン挿入部
16:引張棒の付勢用のばね
17:引張棒のハンマー状拡張部
18:内部パーツ
19:引張棒を事前センタリングするためのOリング
20:クランプブッシュを引下げ運動に対して付勢するための圧縮ばね
21:クランプブッシュ
22:スクレーパー
23:引張棒をクランプするための油圧接続
24:引張棒をクランプするためのオイル流路
25:引張棒をクランプするためのオイル流路
26:引張棒をクランプするための圧力チャンバ
27:栓
28:引張棒を弛緩するための油圧接続
29:引張棒を弛緩するためのオイル流路
30:引張棒を弛緩するためのオイル流路
31:引張棒を弛緩するための圧力チャンバ
32:栓
33:空気パージ装置用の空気圧接続
34:空気パージ装置の圧縮空気流路
35:空気パージ装置の圧縮空気流路
36:空気パージ装置の圧縮空気流路
37:空気パージ装置の圧力チャンバ
38:栓
39:調査装置の空気圧接続
40:調査装置の圧縮空気流路(ピストン位置監視)
41:調査装置の圧縮空気流路
42:調査装置の圧縮空気流路
43:配置監視孔
44:圧力低下が起こった場合の本質的安全装置用ばね
45:クランプブッシュのカラー
46:クランプブッシュの傾斜面
47:静止傾斜面
48:圧力流路調査弛緩位置
49:スロットル/スロットル孔
50:高さ補償用弾性リング
51:エアクッション生成用の穴部
52:気圧差測定用圧力流路
53:差込留め具用突出部(引張棒のハンマー部)
54:差込留め具の回転角度規制部のピン
55:耐ねじり保護部のピン(解除保護)
a:クランプブッシュと内部パーツの軸方向遊び
【国際調査報告】