特表2017-512731(P2017-512731A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-512731光学測定装置、荷役装置、光学測定装置の保護方法および荷役装置の更改方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512731(P2017-512731A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】光学測定装置、荷役装置、光学測定装置の保護方法および荷役装置の更改方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 15/00 20060101AFI20170421BHJP
   B66C 19/00 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
   B66C15/00 E
   B66C19/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】有
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-558716(P2016-558716)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】EP2015056521
(87)【国際公開番号】WO2015144809
(87)【国際公開日】20151001
(31)【優先権主張番号】14162277.9
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516083449
【氏名又は名称】コネクレーンズ グローバル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Konecranes Global Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153453
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 弘崇
(74)【代理人】
【識別番号】100134061
【弁理士】
【氏名又は名称】菊地 公一
(72)【発明者】
【氏名】ニエミネン、 アリ
(72)【発明者】
【氏名】メリマア、 ヨルマ
(72)【発明者】
【氏名】ヤイバアスヤアルビ、 ハンヌ
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA03
3F204CA05
3F204DA02
3F204DB05
3F204DC06
(57)【要約】
光学測定装置(8、400)、荷役装置(1)、光学測定装置の保護方法および荷役装置の更改方法が提供され、光学測定装置(8、400)は、光学測定装置との間で光を伝達する透光面(406)を含む。親水性被膜(404、408)が透光面に設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定装置との間で光を伝達する透光面を含み、
親水性被膜が前記透光面に設けられていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学測定装置において、前記親水性被膜は、光触媒を利用して有機分子を分解するよう構成されていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学測定装置において、前記被膜は、アナターゼ型のナノ構造TiO2を含むナノ技術製品であることを特徴とする光学測定装置。
【請求項4】
前記請求項のいずれかに記載の光学測定装置において、該光学測定装置は、前記透光面を通して伝達される光の方向における距離を測定するレーザ走査装置であることを特徴とする光学測定装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の光学測定装置と、
駆動システムと、該駆動システムおよび前記光学測定装置に動作可能に接続された制御部とを含む荷役装置であって、前記制御部は、
該光学測定装置から測定情報を取得し、
該測定情報に基づいて前記荷役装置を駆動するよう構成されていることを特徴とする荷役装置。
【請求項6】
前記荷役装置において、該荷役装置の少なくとも1つの位置で、前記光学測定装置の前記透光面は、上空からの降雨および前記荷役装置の扱う貨物からの飛散雨もしくは荷役用部材からの飛散雨にさらされることを特徴とする荷役装置。
【請求項7】
前記荷役装置において、前記光学測定装置は該荷役装置の荷役用部材に設置されていることを特徴とする荷役装置。
【請求項8】
前記荷役装置において、該荷役装置は、ガントリークレーン、橋形クレーン、ストラドルキャリア、フォークリフトまたはリーチスタッカであることを特徴とする荷役装置。
【請求項9】
光学測定装置との間で光を伝達する透光面を含む光学測定装置の保護方法において、該方法は、
前記光学測定装置の前記透光面に親水性被膜を施すことを含むことを特徴とする光学測定装置の保護方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記親水性被膜は、光触媒を使って有機分子を分解するよう構成されていることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法において、前記被膜は、ナノ構造のアナターゼを含むナノ技術製品であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1ないし4のいずれかに記載の光学測定装置を荷役装置に設置することを含むことを特徴とする荷役装置の更改方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記光学測定装置を設置して、該光学測定装置の上方、下方および/または水平方向の距離を測定することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本発明は光学測定装置に関するものであり、とくに荷役装置における光学測定装置に関する。
【背景】
【0002】
ガントリークレーンは、一般に、港での荷役の際に使用されるものであり、雨などの様々な天候状態にさらされる。例えば、貨物コンテナの持ち上げおよび積み上げを行う際のガントリークレーンの駆動には高い精度が求められる。ガントリークレーンを使用した荷役における事故は、事故の巻き添えとなった機械設備や作業員に重大な結果をもたらすこともある。事故が起きると、ガントリークレーンを使用した荷役作業が停止してしまう。1つの事故が起きると、例えば他のクレーンがコンテナの山に移動できなくなるなど、他のクレーンの荷役にも影響してしまうこともある。これにより、事故によってクレーンの作業効率が低下し、さらには港全体の作業効率も低下する恐れがある。
【0003】
レーザ走査装置は、ガントリークレーンで使用されて、クレーンおよび貨物の移動を補助するものである。レーザ走査装置は、レーザ光に対する透光面を通してレーザビームを送波し、当該面を介して戻ってくる反射レーザビームを受波する。送受波レーザを利用して、対象物までの距離を測定する。レーザ走査装置の正確な操作を円滑にするために、レーザビームが通過する透光面は、ほこりや水で汚れていない状態にすべきである。しかし、例えば雨、湿度、急激な気温変化などの天候状態によって、雨滴または霧状の水分が透光面に形成されることがある。片や、花粉などの粒子が徐々に積もってしまうことも起こり得る。しかし、花粉および水分は、透光面を通過するレーザビームの減衰、屈折および散乱を引き起こし、これにより、レーザ走査装置の動作が不正確になる。粒子が少量の場合、不正確さが原因でガントリークレーンでの荷役作業が遅れるということもあるが、大量の場合には、不正確さが原因で事故が発生して機械設備および付近の作業員に危険が及ぶ可能性がある。レーザ走査装置から水分およびほこりを除去することは、レーザ走査装置が例えば地面から高い位置にあって届き難いため、危険なうえ、時間がかかる。作業員の安全要項により、レーザ走査装置の清掃にはクレーンを停止させる必要があり、その結果、同じコンテナの山で作業を行っている他のクレーンも停止させることになる。それにより、荷役の作業効率が低下する。
【いくつかの実施形態の簡単な説明】
【0004】
本発明は、上述の不利点の少なくとも一部を解消する方法を提供することを目的とする。本目的は、独立請求項に記載の事項を特徴とする光学測定装置、荷役装置および方法によって達成される。本発明の好適な実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0005】
一態様では光学測定装置が提供され、本光学測定装置は、光学測定装置との間で光を伝達する透光面を備え、透光面には親水性被膜が配設されている。
【0006】
一態様では荷役装置が提供され、本荷役装置は、一態様による光学測定装置と、駆動システムと、駆動システムおよび光学測定装置に動作可能に接続された制御部とを備え、制御部は、光学測定装置から測定情報を取得して、測定情報に基づいて荷役装置を駆動するように構成されている。
【0007】
一態様では、光学測定装置との間で光を伝達する透光膜を備えた光学測定装置の保護方法が提供され、本方法は、親水性被膜を光学測定装置の透光面に施すことを含む。
【0008】
一態様では荷役装置の更改方法が提供され、本方法は、一態様による光学測定装置を荷役装置に設置することを含む。
【0009】
いくつかの態様では、測定値の精度の向上を含む改良点を提供する。測定値の精度の向上により、荷役における衝突の危険が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
次に、本発明について、添付の概略簡易図を参照して、好適な実施例を挙げて詳細に述べる。
図1】本発明に係るガントリークレーンの動作環境における側面図である。
図2】本発明に係るガントリークレーンの動作環境における上面図である。
図3】本発明も適用可能なガントリークレーンのブリッジを示す図である。
図4a】一実施形態による光学測定装置を示す図である。
図4b】一実施形態による光学測定装置の透光面の側面図である。
図5】荷役装置の光学測定装置が雨にさらされた状態を示す図である。
図6a】および
図6b】一実施形態による光学測定装置からもたらされる測定結果への影響を示す図である。
【詳細な説明】
【0011】
図1図2および図3は、荷役装置に設置された一実施形態による光学測定装置を示す。図1および図2は本発明の主な用途を示す。すなわち、とくに港で広く用いられるゴムタイヤ式ガントリークレーン(RTG)1を示す。ガントリークレーンは一般的にフレーム枠を備え、フレーム枠は、互いに離間配設された2本の水平上部桁2、各上部桁2の端部に続く垂直梁3、上部桁2と交差する方向でフレーム枠の両側の垂直梁3の底端部に連結された2本の底部桁4、両底部桁4の各端部に設けられた車輪6付ボギー車構造体5、および上部桁2に沿って移動するよう配設されたトロリー7を備えている。当然、ガントリークレーンのフレーム枠は別の型でもよく、したがって、主桁の数および構造も必要に応じて、また用途に合わせて変更してもよい。
【0012】
図1および図2は、港におけるクレーン1の動作環境の一般的な状況を示す。クレーン1のフレーム枠によって画成される空間は、数列の高さの異なるコンテナC、およびコンテナCが積み込まれるのをトラックレーンで待つトラックTを有する。クレーンは、コンテナに取り付けてコンテナの移動に使用可能な荷役用部材10を備えている。荷役用部材は、ロープを使ってトロリーに連結される。荷役用部材は、巻上機によって昇降するものでよい。この状態で、トロリー7に固定されたコンテナCは、他のコンテナCにぶつかることなく、待機中のトラックTまで安全に移動させなければならない。巻上機を使用して荷役用部材をトロリーが移動できる高さまで上昇させ、荷役用部材が他のコンテナおよび/またはトラックとぶつからないようにコンテナを持ち上げて積み重ねてもよい。クレーンなどの荷役装置はコンテナ以外の貨物を扱ってもよく、本願に記載の様々な実施形態における荷役貨物はコンテナに限定されるものではないことを理解されたい。
【0013】
本発明によると、少なくとも1つのレーザ走査装置8がトロリー7に配設されて、トロリーおよびトロリーに取り付けられた貨物、ここではコンテナCの誘導空間内にある障害物を検出する。レーザ走査装置8のレーザビームは参照符号9で示す。レーザ走査装置8は、レーザビームの特定の方向角で、トロリー7の走路、可能であれば線形走査パスより広い走路内にある何らかの障害物、ここではコンテナCを継続的に走査する。レーザ走査装置8は、コンテナとの距離に関する実時間情報を継続的に受信して、誘導空間におけるコンテナCの高さプロファイルを測定するように構成されている。これにより、先に述べたように、トロリー7の位置情報を使用することなくコンテナCを避けることができる。レーザ走査装置8は、例えばSICK LMS511など、用途に適した任意の市販の装置でよい。
【0014】
トロリー7の走路に長さの異なる障害物、ここでは一般的な20〜40フィートのコンテナC(図2)が存在し、20フィートのコンテナはトロリーの走路の一部を塞いでいるにすぎないことから、トロリー7の一端に装着されたレーザ走査装置8で検出できない場合があるため、図2に示すように、レーザ走査装置8はトロリー7に2つ、つまりトロリー7の走路の方向から見てトロリー7の各側部に1つずつレーザ走査装置8を取り付けることが望ましい。これにより、両方のレーザ走査装置8が個々にコンテナCの高さプロファイルを測定する。そのため、走査結果はこれら2つの測定値が組み合わさったものとなり、高さプロファイルは常に最終測定結果となる。必要に応じて、レーザ走査装置8を複数設けてもよい。可能であれば別の方法として、1コンテナ列に1種類の大きさのコンテナCだけを格納するようにすれば、レーザ走査装置8はトロリー7の中央部に1つ搭載するだけで十分である。貨物、ここではコンテナCを持ち上げて下ろすまでの間、常にレーザ走査を行うべきである。
【0015】
図3はガントリークレーン1’のブリッジを示し、トロリー7'は主支持体2’に沿って移動するように配設され、支持体はその両端が端部支持体3’によって支持され、端部支持体に主支持体2'およびトロリー7’が横方向に移動するように配設されている。たとえ、動作環境、移動させる貨物、およびトロリー7’の走路上の障害物が前述の港の状態と大きく異なっていても、本クレーンのトロリー7'にも、1または複数のレーザ走査装置8を前述のガントリートラック1の場合と同様の方法で配設して、稼働させることも可能である。荷役用部材は参照符号10’で示す。好適には、レーザ走査装置は荷役用部材に取り付けて、レーザ走査装置が荷役貨物に接近して測定を行うようにしてもよい。荷役用部材は、荷役貨物に着脱可能である。荷役用部材は、例えば、フックおよびスプレッダで構成されていてもよい。
【0016】
図4aは、一実施形態による光学測定装置400を示す。光学測定装置はレーザ走査装置でもよく、対象物から反射されたレーザビームに基づいて対象物との距離を測定する。測定された距離を用いて、例えばコンテナなどの荷役貨物の位置を算出してもよい。
【0017】
光学測定は、光学測定装置との間で光414を伝達する透光面406を備え、透光面には親水性被膜404、408が設けられている。被膜は、透光面の両側または片側だけに設けてもよい。センサ402は、例えば、レーザビームなどの光を透光面を通して送波し、光学測定装置の測定範囲内の対象物から反射される伝達された光を受波する。親水性面は、直接降りかかった雨または飛散した水など、透光面にかかった水が透光面に薄い膜を形成するものである。光学測定装置は、センサが光を送波する透光面の方向以外の方向においてセンサを保護する筐体410を有する。透光面は、光学測定装置が測定を行うどの方向に配設してもよいことを理解されたい。したがって、筐体は、測定を行う方向は透光面に替えてもよい。好適には、レーザ走査装置の全面を透光面で覆って、全方向において測定を行うようにしてもよい。
【0018】
好適には、親水性被膜は、ナノ粒子を有するナノ技術製品であり、ナノ粒子は、水滴を強力に引き寄せて、透光面に対して形成される接触角が小さくなる。その結果、水滴は、無数の個別の光散乱球体を形成することなく平坦化されて同化し、均一で透明な層になる。
【0019】
図4bは、一実施形態による光学測定装置の透光面の側面を示す。光学測定装置は図4aの光学測定装置でよい。側面図では、透光面を通って伝達される光を点線の矢印で示す。透光面は、少なくとも片側に親水性被膜を備えている。被膜は、図4aに示すように透光面の両側に設けてもよい。親水性被膜によって平坦化された水滴416を被膜および透光面上に例示する。水滴形状は透光面との接触角αおよびβを有する。接触角は被膜の親水特性によって決まり、接触角は好適には0〜9度の間にあり、水の影響による測定の誤差を低く抑える。
【0020】
測定装置から見て透光面の外方側に被膜がある場合、透光膜にかかる水滴は親水効果によって平らになる。水は、上空から落ちてくる雨、または近くの対象物からの飛散水として降りかかることがある。水滴を平坦にすることで、光の散乱および反射による測定値の誤差を低減できる。
【0021】
反対に、測定装置の内側においては、透光面は雨や飛散水にさらされない。しかし、測定装置から見て透光面の内方側の表面に親水性被膜を施して、透光面に結露する水滴を平坦化してもよい。結露は、例えば急激な温度変化によって生じる。光学測定装置から見て透光面の外方側にも結露が生じる場合があるため、光学測定装置の外側においても、結露によって生じる水滴を本被膜で平坦にできることを理解されたい。
【0022】
水滴を平坦にすることにより、透光面が乾く時間を短くできる。したがって、透光面が雨および/または飛散雨にさらされてから、乾いて実質的に十分に透明になるまでの時間が低減するであろう。さらに、透光面が速く乾くことで、透光面から水分が蒸発し、透光面にしみが発生するのを減少できる。
【0023】
一実施形態において、透光面に施された被膜は、光触媒作用によって有機分子を分解するように構成される。このように、透光面を紫外線(UV光)に暴露して透光面を浄化してもよい。有機分子の分解は、被膜中のTiO2粒子によって行うことができる。
【0024】
一実施形態において、透光面に施された被膜は親水性を有するだけでなく、有機分子を分解するように構成される。このような被膜は、ナノ技術製品でよく、1〜100nmの大きさのナノ構造のTiO2粒子を含む。この粒子は、アナターゼ型のナノ構造TiO2、WO3および/またはSiO2からなるものでよい。ナノ構造の粒子は、例えば熱水合成を利用してアナターゼからナノチューブおよびナノリボンの状態で得られる。
【0025】
図5は、荷役装置上にて雨510にさらされた光学測定装置504を示す。荷役装置は、例えば港などで従来から荷役に使用されてきたガントリークレーン、ストラドルキャリア、フォークリフトまたはリーチスタッカでよい。光学測定装置は図1図3に示すレーザ走査装置でよく、荷役用部材および/またはトロリーの移動方向に存在する対象物までの距離を測定するように構成されている。
【0026】
図5を参照すると、光学測定装置は、上方、例えば空に向いた透光面506、および雨が直接当たらないように保護された透光面508を有する。透光面はカバーによって保護してもよく、さらに/または透光面の方向を調整することで保護してもよい。図では、透光面を地面などの下方向に向けて、上空から落ちてくる雨から透光面を保護している。透光面は光学測定装置を囲繞する単一の面でよく、または透光面は別々の面であってもよい。
【0027】
荷役装置は様々な位置に配置され、透光面が雨にさらされたり、そして/または上空から落ちてくる雨が直接当たらないように透光面を保護したりするようにしてもよいことを理解されたい。荷役装置の位置とは、荷役区域における荷役装置の場所、荷役装置の動作環境における周辺の構造物に対する荷役用部材の位置、および/または動作環境におけるコンテナの山などの貨物に対する荷役装置の位置を含むことがある。荷役装置の様々な位置において、光学測定装置および/または透光面は、上空からの降雨に直にさらされないように保護し、さらに/または荷役装置502および/もしくは荷役装置の荷扱い中の貨物からの飛散雨から保護してもよい。荷役装置のそれぞれの外面および/または貨物が光学測定装置の透光面に雨を飛散させることもあり得る。とくに各外面が透光面に1メートル未満の距離で近接している場合、外面からの飛散雨が透光面にかかることがある。荷役装置の様々な位置において、各外面を異なる距離まで動かして、透光面に接近させたり、透光面から離したりしてもよい。一実施例では、荷役用部材に取り付けられた光学測定装置に荷役用部材に取り付けられた貨物からの飛散雨がかかることがある。貨物を荷役用部材から取り外すと、取り外された貨物は、貨物が荷役用部材に取り付けられて荷役装置の位置にあった場合より透光面から遠く離れた距離に位置するため、取り外された貨物の外面から透光面への飛散雨を減少させることができ、あるいは完全に飛散を避けることさえ可能となる。
【0028】
図5では雨を点線で示し、上向きの透光面に当たったり、あるいは荷役装置502または荷役装置の荷扱い中の貨物から飛散したりする様子を表す。光学測定装置が対象物に大幅に接近して例えば荷役装置または貨物までの距離を測定する際、対象物に雨が降り注いでいると、光学測定装置は対象物からの飛沫にさらされてしまう。光学測定装置が荷役用部材に取り付けられていると、光学測定装置は対象物に非常に近くなるため、光学測定値を利用して荷役貨物に近い距離を測定することができる。光学測定装置は、例えばスプレッダなどの荷役用部材に取り付けてもよい。荷役用部材の例を図1図3にいくつか示す。
【0029】
対象物からの飛沫は光学測定装置の透光面に当たり、透光面に水が入り込むことがある。光学測定装置は好適には、透光面に親水性被膜を備え、空から直接または飛散によってかかる水を図4bに示すような薄い膜に平坦化することができる。このような方法により水による光の反射および散乱を削減できるため、たとえ光学測定装置が上空からの雨や付近の構造物からの飛沫にさらされても、測定値の信頼性を確保できる。
【0030】
図5では透光面が上向きであるが、他の方向を向いていてもよい。つまり、透光面の上向き方向は単なる例にすぎない。他の方向とは、下方向および/または水平方向でもよい。透光面の様々な方向において、透光面は、雨および1つ以上の外面からの飛沫にさらされる場合もあり、1つ以上の外面とは、例えば、荷役装置の図1に示す荷役用部材の外面、荷役装置によって搬送される図1におけるコンテナCなどの貨物の外面、同じ場所に存在する荷役装置の外面が含まれよう。同じ場所に存在する荷役装置とは、互いに近くにあってコンテナを荷役中の少なくとも2つの荷役装置のうちの1つでよい。なお、外面の別の例は、光学測定装置への飛沫を生ずることのある図1図3に示す要素として記載されている。
【0031】
光学測定装置は、荷役装置の1または複数の移動方向における距離を測定してもよい。荷役装置の種類に応じて、搬送する貨物、荷役装置の構造体、または荷役装置の周囲の他の対象物までの距離を測定してもよい。一実施例では、光学測定装置は、貨物を吊り上げる垂直方向、例えば図1および図2に示すクレーンでコンテナを吊り上げる方向における距離を測定した。別の実施例では、光学測定装置は、例えば港などの荷役区域で異なる場所間を貨物が移動する水平方向の距離を測定してもよい。
【0032】
図6aおよび図6bは、一実施形態による光学測定装置が測定結果に与える影響を示す。図6aは、一実施形態による親水性被膜を備えた透光面を有する光学測定装置602aによって得られる測定結果を示す。図6bは、透光面に親水性被膜が施されていない従来の光学測定装置602bを示す。図6aおよび図6bに示す光学測定装置は図4aに示す装置と同様のものでよいが、図6bの光学測定装置は透光面に親水性被膜を備えていない点が異なっている。図6bでは、透光面の一部に、透光面に水滴を形成する水がかかっている。
【0033】
光学測定装置は、透光面を通して伝達された光および光の反射に基づいて対象物までの距離を測定する。光学測定装置は、図6aおよび図6bでは、まったく同じ動作環境に置かれている。したがって、光学測定装置が距離を測定する対象の構造物は同じである。光学測定装置は、光学測定装置の動作環境を構成する構造物に対して同じ場所に設置されている。構造物は、通路および通路の角を構成する直状の壁でよい。構造物は、構造物604a、606a、608a、604b、606b1、606b2、608bから得られた測定結果を示す要素として視覚化している。図6aでは、測定結果は壁を表す実質的な直線を呈している。図6bでは、測定結果に誤差がある。誤差は直線でない線604b、606b1および606b2で示し、壁のうちの1つは2つの分離部606b1、606b2をなしているのに対し、図6aにおける同じ壁は1つの連続体である。壁608bから得られる測定結果は、透光面の当該壁までの距離の測定に使用される部分に水や汚れが溜まっていないため、歪んでいない。したがって、測定結果604b、606b1および606b2は、光学測定装置の透光面に施された被膜に起因して、対応する構造物604a、606aから得られた測定結果に比べて測定値の精度が向上していることを示している。対応する構造物608aおよび608bから得られた測定結果は実質的に同じであるが、これは、図6bに示す光学測定装置602bの透光面には構造物608bに向かう方向に水がかからないからである。
【0034】
ある実施形態には、一実施形態による光学測定装置が組み込まれた荷役装置が含まれている。荷役装置は、駆動システムと、駆動システムおよび光学測定装置に動作可能に接続された制御部とを備えていてもよい。駆動システムは、動力源から動力を荷役装置の動き、または荷役装置の一部の機械的動作に変換する。一実施例において、駆動システムは、例えば図1図3に示すトロリーまたはクレーンの荷役用部材を動かす。駆動システムは、別の方法として、もしくは追加的に、例えば港などの荷役区域のガントリークレーン全体を動かしてもよい。
【0035】
制御部は、光学測定装置から測定情報を取得し、測定情報に基づいて荷役装置を駆動するように構成してもよい。制御部は、荷役装置のコンピュータまたはプログラマブル論理制御回路(PLC)でよい。制御部は、有線または無線接続によって光学測定装置に接続してもよく、有線または無線接続は荷役装置の内部通信バスによるものでもよい。
【0036】
ある実施形態は、既存の荷役装置を更改する方法を含む。本方法は、本願で述べた様々な実施形態による光学測定装置を荷役装置に組み込むことを含む。光学測定装置は、従来の取付手段を用いて設置してもよい。光学測定装置を上方、すなわち空に向けて、測定装置の上方に存在する対象物までの距離を測定してもよい。透光面に親水性被膜が施されているため、光学測定装置は、例えば図1および図2に示すガントリークレーンなどのガントリークレーンの荷役用部材に設置することが可能である。このような方法により、荷役用部材から荷役用部材の上方に位置するトロリーまでの上向きの距離を測定する。荷役用部材の上方に位置する構造物は測定値に基づいて容易に識別できるため、測定値をすぐに適用して荷役用部材を駆動することができる。例えば下方または水平方向など、上方以外の方向の距離を測定する場合でも、親水性被膜によって、例えば付近の荷役用部材および/または貨物などの外面からの飛沫を、本願で述べた様々な実施形態の記載に応じて薄い膜に平坦化することができる。本願で述べた様々な実施形態は、ガントリークレーン、橋形クレーン、ストラドルキャリア、フォークリフト、リーチスタッカもしくは他の同様の装置、または積み荷および/もしくはコンテナなどの貨物を移動させることのできる装置などの荷役装置に適用する。
【0037】
本願で述べた様々な実施形態では、親水性被膜を用いて、光学測定装置との間で光を伝達する透光面を備えた光学測定装置を保護する。親水性被膜は、例えばスプレーまたは刷毛を使って透光面に施してもよい。親水性被膜は、本願で述べた様々な実施形態による光学測定装置に用いる親水性被膜でよい。親水性被膜は、透光面が直接の降雨または飛散などによる水にさらされる場合に、測定値の精度を維持できる。また、親水性被膜は、光触媒を利用して有機分子を分解することにより透光面が自己洗浄を行うように構成してもよい。
【0038】
本発明の上記記載は、本発明の基本概念を例証することを目的としているにすぎない。したがって、当業者であれば本発明の細部を本願特許請求の範囲において様々に変更することも可能であろう。よって、上述のクレーンのタイプは本発明の用途の好適な例にすぎない。本発明は基本的に、トロリーや荷役用部材などを使用して貨物を扱い、光学測定装置を使用して測距を行って貨物の位置を特定するいずれのタイプのクレーンにも適している。本願で述べた様々な実施形態によって荷役における貨物の位置をより正確に割り出すことにより、衝突の危険性を低減できる。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b
【手続補正書】
【提出日】2016年2月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学測定装置との間で光を伝達する透光面を含み、
親水性被膜が前記透光面に設けられ
該被膜は、アナターゼ型のナノ構造TiO2を含むナノ技術製品であることを特徴とする光学測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学測定装置において、前記親水性被膜は、光触媒を利用して有機分子を分解するよう構成されていることを特徴とする光学測定装置。
【請求項3】
前記請求項のいずれかに記載の光学測定装置において、該光学測定装置は、前記透光面を通して伝達される光の方向における距離を測定するレーザ走査装置であることを特徴とする光学測定装置。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれかに記載の光学測定装置と、
駆動システムと、該駆動システムおよび前記光学測定装置に動作可能に接続された制御部とを含む荷役装置であって、前記制御部は、
該光学測定装置から測定情報を取得し、
該測定情報に基づいて前記荷役装置を駆動するよう構成されていることを特徴とする荷役装置。
【請求項5】
請求項4に記載の荷役装置において、該荷役装置の少なくとも1つの位置で、前記光学測定装置の前記透光面は、上空からの降雨および前記荷役装置の扱う貨物からの飛散雨もしくは荷役用部材からの飛散雨にさらされることを特徴とする荷役装置。
【請求項6】
請求項4に記載の荷役装置において、前記光学測定装置は該荷役装置の荷役用部材に設置されていることを特徴とする荷役装置。
【請求項7】
請求項4に記載の荷役装置において、該荷役装置は、ガントリークレーン、橋形クレーン、ストラドルキャリア、フォークリフトまたはリーチスタッカであることを特徴とする荷役装置。
【請求項8】
光学測定装置との間で光を伝達する透光面を含む光学測定装置の保護方法において、該方法は、
前記光学測定装置の前記透光面に親水性被膜を施すことを含み、該被膜は、ナノ構造のアナターゼを含むナノ技術製品であることを特徴とする光学測定装置の保護方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記親水性被膜は、光触媒を使って有機分子を分解するよう構成されていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載の光学測定装置を荷役装置に設置することを含むことを特徴とする荷役装置の更改方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記光学測定装置を設置して、該光学測定装置の上方、下方および/または水平方向の距離を測定することを特徴とする方法。
【国際調査報告】