(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512861(P2017-512861A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】タイヤの官能化樹脂のシリカ処理
(51)【国際特許分類】
C08F 8/42 20060101AFI20170421BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20170421BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
C08F8/42
C08L15/00
B60C1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-558741(P2016-558741)
(86)(22)【出願日】2015年3月6日
(85)【翻訳文提出日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2015019190
(87)【国際公開番号】WO2015153057
(87)【国際公開日】20151008
(31)【優先権主張番号】61/972,964
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ハリス デイヴィッド ティー
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート イアン シー
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジョン オリヴィエ ジェイ エフ
(72)【発明者】
【氏名】ブロック エドワード ジェイ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC111
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD090
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4J002FD170
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AB03P
4J100AB03Q
4J100AR17P
4J100AR22P
4J100BA80H
4J100BA81H
4J100CA31
4J100DA47
4J100HA53
4J100HB61
4J100HC79
4J100HE17
4J100JA29
(57)【要約】
ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程(ここで、ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C
5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C
5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C
9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C
5/C
9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される);及びシラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程を含む、シリカ処理官能化樹脂組成物の調製方法。該方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物。該シリカ処理官能化樹脂組成物を含むタイヤトレッド組成物及び該トレッドを含むタイヤ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ処理官能化樹脂組成物の調製方法であって、下記工程:
(A)ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程、ここで、前記ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される;及び
(B)前記シラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程
を含む前記方法。
【請求項2】
前記シラン官能化樹脂組成物のwt%対前記シリカのwt%の比が約1:3である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記ヒドロシリル化剤が、下記式(I):
【化1】
(式中、「a」は1〜約1000の整数であり、R''はアルキル又はアリール基である);
下記式(II):
【化2】
(式中、xは、約2〜約40個のSiO基/部分であり、Rはアルキル又はアリール基である);
又は下記式(III):
【化3】
(式中、Yは独立に窒素、酸素、又は硫黄原子であり、Zは独立にホウ素、窒素、酸素、ケイ素又は硫黄原子であり、R
1は独立に水素原子、又は炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
2は独立に、炭素原子数1〜20の二価置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
3は独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホナート基、炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
1、R
2、及びR
3は、互いに単環又は多核環を形成していてもよく、a〜fは、a+b+c及びd+e+fが両方とも3に等しいという条件で、独立に1、2、又は3の整数であり、かつ各Y及び各Zについて独立に、Zがホウ素原子である場合はx=2、Y又はZが窒素原子である場合はx=2、Y又はZが酸素原子又は硫黄原子である場合はx=1、Zがケイ素原子である場合はx=3である)
によって表されるヒドロシリル化剤の少なくとも1つから選択される、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記ポリマー骨格が下記:
(i)60〜100wt%の範囲内の環式成分;
(ii)15wt%以下のピペリレン由来成分;
(iii)15wt%以下のアミレン由来成分;
(iv)15wt%以下のイソプレン由来成分;
(v)20wt%以下のスチレン由来成分;及び
(vi)20wt%以下のインデン由来成分
を含む、請求項1〜3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記ヒドロシリル化剤と前記ポリマー骨格をヒドロシリル化触媒の存在下で接触させて触媒反応生成物を生成する、請求項1〜4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
前記触媒反応生成物を引き続き水素化する、請求項5の方法。
【請求項7】
前記ヒドロシリル化剤と前記ポリマー骨格をメタセシス触媒の存在下で接触させ、前記メタセシス触媒がルテニウム触媒である、請求項1〜6のいずれか1項の方法。
【請求項8】
下記:
(A)ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程、ここで、前記ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される;及び
(B)前記シラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程
の方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物。
【請求項9】
前記シラン官能化樹脂組成物のwt%対前記シリカのwt%の比が約1:3である、請求項8の組成物。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項の方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物を含むタイヤトレッド組成物。
【請求項11】
下記:
(i)5〜100phrの範囲内の前記シリカ処理官能化樹脂組成物;
(ii)100phrのジエンエラストマー;及び
(iii)50〜150phrの範囲内の無機フィラー
を含む、請求項10のタイヤトレッド組成物。
【請求項12】
前記シリカ処理官能化樹脂組成物が20〜50phrの範囲内で存在する、請求項10又は11のタイヤトレッド組成物。
【請求項13】
前記無機フィラーがシリカを含む、請求項10〜12のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
【請求項14】
前記ジエンエラストマーが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高cis-ポリブタジエン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、分岐(「星状分岐」)ブチルゴム、ハロゲン化星状分岐ブチルゴム、ポリ(イソブチレン-co-p-メチルスチレン)、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星状分岐ポリイソブチレンゴム、及びその混合物の少なくとも1つから選択される、
請求項10〜13のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
【請求項15】
前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエンゴムとスチレン-ブタジエンゴムの混合物を含む、請求項14のタイヤトレッド組成物。
【請求項16】
さらにカップリング剤を含む、請求項10〜15のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
【請求項17】
前記組成物が硬化している、請求項10〜16のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
【請求項18】
請求項10〜17のいずれか1項のタイヤトレッド組成物を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:David T. HARRIS, Ian C. TEWART, Olivier GEORJON, Edward J. BLOK
関連出願の相互参照
この出願は、参照することによりその開示内容全体をここに援用する2014年3月31日に出願された米国仮特許出願第61/972,964号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、タイヤコンパウンド用途に用いる官能化樹脂分子をシリカで処理することに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
高性能タイヤのトレッドは、優れた静止摩擦及び取扱特性を有することが期待される。一般的に、これらの所望特性を達成するためタイヤトレッドは高フィラー充填量及び樹脂を用いてコンパウンドされる。
乗用車用タイヤについては、静止摩擦特性を高めるため典型的にトレッドコンパウンド配合物に混和性樹脂が用いられる。これらの樹脂は全体的な静止摩擦を増大させるが、これらの混和性樹脂と配合されたトレッドコンパウンドは、過酷な運転中に生じた高速度又は高いタイヤ内温度で静止摩擦及び取り扱いの低下を被る傾向がある。
乗用車用タイヤにおいて高速及び高温で観察された問題は、レースカータイヤに用いる高軟化点の非混和性樹脂及び樹脂ブレンドを添加することによって解決された。例えば、高温での高G’(貯蔵モジュラス)値と共に高いタンジェントデルタ(損失モジュラス対貯蔵モジュラスの比)値を有する樹脂パッケージを使用すると、高速及び高温でのタイヤ性能を改善することが観察された。しかしながら、非混和性樹脂の添加はタイヤトレッドの寿命を短くするので、レースカータイヤの安定性及び寿命要求に対して乗用車用タイヤの安定性及び寿命要求は高いため高性能の乗用車用タイヤに非混和性樹脂を使用することは実行可能な選択肢でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2013年12月5日に出願された米国仮出願第61/912,115号は、メタセシス化学によって調製されたDCPDベース官能化樹脂を開示している。コスト効率の良い様式で静止摩擦及び取り扱いの改善と共に耐久性の改善を示す樹脂に対する必要性が未だに残っている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本明細書で開示する方法及び製品によって前述の課題及び/又は他の課題に取り組む。
本発明は、シリカ処理官能化樹脂組成物の調製方法であって、ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程(ここで、ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C
5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C
5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C
9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C
5/C
9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される);及びシラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程を含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
ここで、請求項に係る発明の理解のために本明細書で採用する好ましい実施形態及び定義を含めた本発明の種々の具体的実施形態について述べる。特殊性と共に例示実施形態について記載したが、当然のことながら当業者には種々の他の変形形態が明白であり、当業者は本発明の精神及び範囲から逸脱することなくそれらを容易に作ることができる。侵害を判定するため、「発明」の範囲は、添付の特許請求の範囲に列挙するものと等価である等価物及び要素又は制限を含め、いずれの1つ以上の請求項をも参照する。
発明者らは、ヒドロシリル化プロセスによって、官能化樹脂分子を調製してから、これをシリカで処理すると、高性能タイヤ用途のエラストマーコンパウンドに用いる樹脂に有利な特性をもたらすことを開示した。
用語「phr」は、ゴム100部当たりの部を意味し、全てのエラストマー(ゴム)成分の合計に対して組成物の成分を相対的に測定する技術分野で一般的な尺度である。1、2、3、又はそれより多くの異なるゴム成分が所与のレシピに存在するときでも、全ゴム成分に関する総phr又は部は常に100phrと定義される。全ての他の非ゴム成分は100部のゴムに対する比率で示され、phrで表される。
用語「シラン」は、置換若しくは非置換アルカン炭化水素のいずれのケイ素類似体をも意味する。用語「シラン構造体」は、四価ケイ素原子を含有するいずれの化合物、部分(moiety)又は基をも指す。用語「インターポリマー」は、少なくとも2種の異なるモノマーの重合又はオリゴマー化によって調製された500以上の数平均分子量を有するいずれのポリマー又はオリゴマーをも意味し、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマー等を包含する。本明細書で使用する場合、インターポリマーにおけるモノマーへの言及は、当該モノマー由来の重合されたまま及び/又は誘導体化されたままの単位を指すものと解釈する。本明細書及び特許請求の範囲では用語ポリマー及びインターポリマーを広範に用いて、500以上の数平均分子量(Mn)を有する高級オリゴマーのみならず、古典的ASTM定義に従うポリマーの分子量要件を満たす化合物を包含する。
本明細書に記載の全ての樹脂成分の百分率は、特に指定のない限り質量百分率である。組成物に関して特定成分が「実質的にない」は、該特定成分が組成物の0.5wt%未満を構成すること、さらに好ましくは組成物中0.25wt%未満の該成分、最も好ましくは組成物中0.1wt%未満の該成分を意味するように定義される。
本明細書で使用する用語「エラストマー」は、参照することによりここに援用するASTM D1566定義と一致するいずれのポリマー又はポリマーの組み合わせをも指す。本明細書で使用する場合、用語「エラストマー」は、用語「ゴム」と互換的に使用可能である。
【0007】
官能化樹脂
本発明の官能化樹脂は、技術上周知のヒドロシリル化(ヒドロシル化としても知られる)法によって調製される。国際特許出願第PCT/US2013/060993号は、さらなる修飾によって高度に分岐した材料又は直鎖材料を得るためのポリアルキルヒドロシロキサンを用いたビニル末端マクロモノマーのヒドロシリル化を開示している。国際特許出願第PCT/US2013/060993号に開示された組成物及び方法は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0008】
ポリマー骨格
句「ポリマー骨格」には、シクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂(CPDと呼ばれる)、ジシクロペンタジエンホモポリマー又はコポリマー樹脂(DCPD又は(D)CPDと呼ばれる)、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C
5フラクションホモポリマー又はコポリマー樹脂、C
9フラクションホモポリマー又はコポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びその組み合わせ由来の置換若しくは非置換単位が含まれる。ポリマー骨格としてはさらに、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、(D)CPD/ピネンコポリマー樹脂、ピネン/フェノールコポリマー樹脂、(D)CPD/C
5フラクションコポリマー樹脂、(D)CPD/C
9フラクションコポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、ピネン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、ピネン/フェノールコポリマー樹脂、C
5フラクション/ビニル芳香族コポリマー樹脂、及びその組み合わせ由来の単位が挙げられる。本明細書で使用する用語「樹脂分子」又は「樹脂」は、句「ポリマー骨格」と互換的に用いられる。
句「ジシクロペンタジエン由来単位」には、メチルDCPD又はジメチルDCPD等の置換DCPD由来単位も含まれる。
好ましくは、ジシクロペンタジエン由来単位を含むポリマー(「DCPDポリマー」とも呼ばれる)は、150〜10,000g/モル(GPCにより測定)、さらに好ましくは200〜5,000g/モル、最も好ましくは300〜1000g/モルの範囲内のMwを有する。DCPDポリマーに言及しているが、本明細書に記載の単位で構成されるいずれのポリマー骨格も本発明に適している。
【0009】
好ましくは、ポリマー骨格は、100モル%までのジシクロペンタジエン由来単位、さらに好ましくは5〜90モル%の範囲内のDCPD由来単位、最も好ましくは5〜70モル%のDCPD由来単位を含む。
好ましくは、ポリマー骨格は、モノマー混合物中のモノマーの質量で15%までのピペリレン成分、15%までのイソプレン成分、15%までのアミレン成分、20%までのインデン成分、60%〜100%の範囲内の環式成分、及び20%までのスチレン成分を含む。
環式成分は、一般的にC
5及びC
6-C
15環式オレフィン、ジオレフィン、及びダイマー、コダイマー及びトリマー等の留分又は留分からの合成混合物である。環式成分としては、限定するものではないが、シクロペンテン、シクロペンタジエン、DCPD、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエン、及び1,4-シクロヘキサジエンが挙げられる。好ましい環式成分はシクロペンタジエンである。DCPDは、エンド形又はエキソ形のどちらであってもよい。環式成分は置換されていてもいなくてもよい。好ましい置換環式成分として、C
1-C
40直鎖、分岐、若しくは環式アルキル基、好ましくは1つ以上のメチル基で置換されたシクロペンタジエン及びDCPDが挙げられる。好ましくは、環式成分は下記:シクロペンタジエン、シクロペンタジエンダイマー、シクロペンタジエントリマー、シクロペンタジエン-C
5コダイマー、シクロペンタジエン-ピペリレンコダイマー、シクロペンタジエン-C
4コダイマー、シクロペンタジエン-メチルシクロペンタジエンコダイマー、メチルシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンダイマー、及びその混合物からなる群より選択される。
好ましくは、ポリマー骨格は、1.5より大きい屈折率を有する。好ましくは、ポリマー骨格は、80℃以上(Ring and Ball、ASTM E-28により測定)、さらに好ましくは80℃〜150℃、最も好ましくは100℃〜150℃の軟化点を有する。
好ましくは、ポリマー骨格は、-30℃〜100℃のガラス転移温度(Tg)(TA機器モデル2920機を用いてASTM E 1356により測定)を有する。
好ましくは、ポリマー骨格は、ブルックフィールドサーモセル粘度計及び27番スピンドルを用いて規定温度(典型的に120℃〜190℃)で測定したところ177℃にて50〜25,000mPa・sのブルックフィールド粘度(ASTM D-3236)を有する。
【0010】
好ましくは、ポリマー骨格は、オレフィン性不飽和、例えば、
1H-NMRにより決定したところインターポリマー中の水素の総モルに基づいて、少なくとも1モル%のオレフィン性水素を含む。或いは、ポリマー骨格は、ポリマー中の水素の総モルに基づいて、1〜20モル%の芳香族水素、好ましくは2〜15モル%の芳香族水素、さらに好ましくは2〜10モル%の芳香族水素、好ましくは少なくとも8モル%の芳香族水素を含む。
好ましくは、ポリマー骨格は、国際特許公開第WO 2012/050658 A1号に記載のDCPDポリマーを含む。
この発明に有用なポリマー骨格の例としては、Baton Rouge, LAのExxonMobil Chemical Companyにより販売されているEscorez(登録商標)8000シリーズの樹脂が挙げられる。本発明に有用なポリマー骨格のさらなる例としては、独国のArakawa Europeにより販売されているArkon(登録商標)シリーズの樹脂が挙げられる。本発明に有用なポリマー骨格の別のさらなる例としては、Longview, TXのEastman Chemical Companyにより販売されているEastotac(登録商標)シリーズの樹脂が挙げられる。
【0011】
ヒドロシリル化剤
本明細書で使用する場合、用語「ヒドロシリル化剤」は、触媒的にポリマー骨格と反応して官能化樹脂を生じさせ得るSi-H結合を有する化合物(環式又は非環式)を指す。
適切なヒドロシリル化剤としては、オレフィン基と反応できる1つ以上の反応性水素原子を有する下記式(I)
【0013】
(式中、「a」は1〜約1000の整数であり、R''はアルキル又はアリール基、例えば、限定するものではないが、メチル、ヘキシル、フェニル、フルオロアルカン等である)
によって表されるもの、又はポリマー骨格を介して置換されたポリメチルヒドロシロキサン(PHMS)単位を含有する他のコポリマー、及びその組み合わせが挙げられる。好ましくはR''はCH
3である。
ドロシリル化剤の環式異形もあり、下記式(II)で表すことができる。
【0015】
式中、xは約2〜約40個のSiO基/部分(moieties)、例えばシロキサン鎖であり;Rはアルキル又はアリール基、例えば、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、フェニル、アントラセニル、及びその組み合わせである。
ヒドロシリル化剤の非環式異形もあり、下記式(III)の化学構造のいずれかによって表すことができる。
【0017】
式中、Yは独立に窒素、酸素、又は硫黄原子であり、Zは独立にホウ素、窒素、酸素、ケイ素又は硫黄原子であり、R
1は独立に水素原子、又は炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
2は独立に、炭素原子数1〜20の二価置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
3は独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホナート(sulfonate)基、炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
1、R
2、及びR
3は、互いに単環又は多核環を形成していてもよく、a〜fは、a+b+c及びd+e+fが両方とも3に等しいという条件で、独立に1、2、又は3の整数であり、かつ各Y及び各Zについて独立に、Zがホウ素原子である場合はx=2、Y又はZが窒素原子である場合はx=2、Y又はZが酸素原子又は硫黄原子である場合はx=1、Zがケイ素原子である場合はx=3である。
【0018】
触媒
有用な触媒としては、適切な溶媒中に0.1〜10wt%のPt含有錯体を有する白金(Pt)ベース材料がある。反応混合物中の実際の量は、約1〜100ppm以上のクロロ白金酸H
2PtCl
6及び例えばテトラメチルジシロキサンとの誘導体又はスパイエル(Speirs)触媒RhCl(PPh
3)
3の他の異形、Pt錯体含有ヘテロカルベン、例えばJournal of Organometallic Chemistry 696, (2011) 2918で見つかるもの、或いは担持された/再生利用できる触媒、例えばPtナノクラスター(Macromolecules 2006, 39, 2010-2012)である。カールシュテット(Karstedt)触媒(典型的に白金(0)とジビニルテトラメチルジシロキサンの化合物)は適切な白金触媒の一例である。有機ペルオキシドを用いて官能化PMHSを他のビニル末端化合物でさらに架橋することができる。
【0019】
官能化プロセス後のシリカ処理
反応物質を典型的に20℃〜200℃(好ましくは50℃〜160℃、好ましくは60℃〜140℃)の温度及び0〜1000MPa(好ましくは0.5〜500MPa、好ましくは1〜250MPa)の圧力で0.5秒〜10時間(好ましくは1秒〜5時間、好ましくは1分〜1時間)の滞留時間にわたって反応容器内で混合する。
好ましくは、装填ポリマー1モル当たり0.00001〜1.0モル、さらに好ましくは0.0001〜0.05モル、最も好ましくは0.0005〜0.01モルの範囲内の触媒を反応器に装填する。
好ましくは、装填ポリマー1モル当たり0.01〜10モルの範囲内のヒドロシリル化剤、さらに好ましくは0.05〜5.0モル、最も好ましくは0.5〜2.0モルのヒドロシリル化剤を反応器に装填する。
ポリマー骨格の調製法は、好ましくは溶液法であるが、バルク又は高圧法であってもよい。均一法が好ましい(均一法は、生成物の少なくとも90wt%が反応媒体に溶ける方法であると定義される)。バルク均一法が特に好ましい(バルク法は、反応器への全供給原料中の反応物質濃度が70vol%以上である方法と定義される)。或いは、反応媒体に溶媒又は希釈剤が存在しないか又は添加されない(触媒又は他の添加剤の担体として用いる少量、又は反応物質と共に一般的に見られる量、例えば、プロピレン中のプロパンを除いて)。
ポリマー骨格の調製法に適した希釈剤/溶媒には、非配位性、不活性液がある。例としては、直鎖及び分岐鎖炭化水素、例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びその混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びその混合物、例えば市販のもの(Isopar
TM);ペルハロゲン化炭化水素、例えばペルフッ素化C
4-C
10アルカン、クロロベンゼン、並びに芳香族及びアルキル置換芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、メシチレン、及びキシレンが挙げられる。好ましい実施形態では、脂肪族炭化水素溶媒、例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン、ドデカン、及びその混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びその混合物が好ましい。別の実施形態では、溶媒は芳香族でなく、好ましくは芳香族は、溶媒の質量に基づいて溶媒中に1wt%未満、好ましくは0.5wt%、好ましくは0wt%で存在する。
【0020】
或いは、ポリマー骨格の調製法はスラリー法である。本明細書で使用する場合、用語「スラリー重合法」は、担持触媒を利用し、モノマーを担持触媒粒子上で重合させる重合法を意味する。担持触媒から誘導されるポリマー生成物の少なくとも95wt%は、固体粒子(希釈剤に溶解していない)として顆粒形態である。
好ましくは、ポリマー骨格の調製法のための供給濃度は、60vol%以下、さらに好ましくは40vol%以下、最も好ましくは20vol%以下の溶媒である。
該調製法は、バッチ、半バッチ又は連続法であってよい。本明細書で使用する場合、連続法という用語は、中断又は休止することなく作動するシステムを意味する。例えば、ポリマーを生成するための連続法は、反応物質を連続的に1つ以上の反応器に導入し、ポリマー生成物を連続的に取り除く方法である。
有用な反応容器には、反応器(連続撹拌槽型反応器、バッチ反応器、反応押出機、パイプ又はポンプを含めて)がある。
好ましくは、官能化法の生産性は、1時間毎に1mmolの触媒当たり少なくとも200g、好ましくは少なくとも5,000g/mmol/時間、好ましくは少なくとも10,000g/mmol/時間、好ましくは少なくとも300,000g/mmol/時間の官能化ポリマーである。
本発明はさらに、官能化ポリマーを生成するための方法、好ましくはインライン法、好ましくは連続法であって、1種以上のモノマーを反応器に導入して重合させる工程、ポリマーを含有する反応器流出物を得る工程、任意で溶媒、未使用モノマー及び/又は他の揮発性物質を除去(例えばフラッシュオフ)する工程、ポリマーを得る工程、ポリマー、ヒドロシリル化剤及び触媒を反応ゾーン(例えば反応器、押出機、パイプ及び/又はポンプ)に導入する工程、官能化ポリマーを含有する反応器流出物を得る工程、任意で溶媒、未使用モノマー及び/又は他の揮発性物質(例えば本明細書に記載のもの)を除去(例えばフラッシュオフ)する工程、及び官能化ポリマー(例えば本明細書に記載の当該ポリマー)を得る工程を含む方法に関する。
【0021】
完了後又は反応状態中に、本明細書で調製されたヒドロシリル化生成物をさらに水素化することができる。
水素化は、石油樹脂の水素化に一般的に用いられるいずれの既知の触媒の存在下でも達成可能である。水素化工程に使用可能な触媒として、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、コバルト及び白金等の10族金属、並びにタングステン、クロム及びモリブデン等の6族金属、並びにレニウム、マンガン及び銅等の11族金属が挙げられる。これらの金属は、単独で又は2種以上の金属を組み合わせて、金属形又は活性化形で使用可能であり、直接使用するか又はアルミナ若しくはシリカ-アルミナ等の固形担体に保持させてもよい。好ましい触媒は、米国特許第4,629,766号に記載されているように、120〜300m
2/gの範囲の新鮮触媒表面積を有し、かつ2質量%〜10質量%のニッケル及び10質量%〜25質量%のタングステンを含有する、γアルミナ担体上に硫化ニッケル・タングステンを備えるものである。水素化は20〜300気圧、好ましくは150〜250気圧の水素圧で行なわれる。
本発明の実施例で用いる官能化樹脂はヒドロシリル化法によって調製されるが、本発明の実施形態においては、同様に技術上周知のフリーラジカル化学及び/又はメタセシス化学によって樹脂を調製することができる。
次に官能化樹脂組成物にシリカを添加する。本明細書で使用する場合、用語「シリカ」は、溶液、発熱等の方法で加工されたいずれのタイプ若しくは粒径のシリカ又は別のケイ酸誘導体、又はケイ酸をも指すものとし、例えば未処理、沈降シリカ、結晶性シリカ、コロイドシリカ、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ等がある。沈降シリカは通常のシリカ、半高分散性シリカ、又は高分散性シリカであり得る。好ましくは、官能化樹脂組成物を処理するために用いるシリカは、前処理のために用いるシリカに対する官能化樹脂組成物のwt%の比が1:3となるように、5〜50phrの範囲内で存在する。
【0022】
高性能タイヤトレッド組成物
本発明によって生成された官能化ポリマーは高性能タイヤトレッド組成物に使用可能である。
本発明によって生成されたシリカ処理官能化ポリマーをジエンエラストマー及び無機フィラーとブレンドすることによって高性能タイヤトレッド組成物を形成する。好ましくは、シリカ処理官能化ポリマーは、5〜100phr、さらに好ましくは10〜50phrの範囲内で存在する。ジエンエラストマーは2種以上のエラストマーのブレンドを含んでよい。個々のエラストマー成分は、該配合物の100phrとして表される、タイヤトレッド組成物中の総ジエンエラストマー含量に対して、種々の通常量で存在し得る。好ましくは、無機フィラーは、50〜150phr、さらに好ましくは50〜100phr、最も好ましくは60〜90phrの範囲内で存在する。
【0023】
ジエンエラストマー
本明細書で使用する場合、用語「ジエンエラストマー」は、2つの炭素二重結合を含む炭化水素モノマーから合成されるいずれの粘弾性ポリマーをも指すものとする。
好ましいジエンエラストマーの例としては、限定するものではないが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高cis-ポリブタジエン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、分岐(「星状分岐」)ブチルゴム、ハロゲン化星状分岐ブチルゴム、ポリ(イソブチレン-co-p-メチルスチレン)、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星状分岐ポリイソブチレンゴム、及びその混合物が挙げられる。これらのジエンエラストマーのブレンドは反応器ブレンド及び/又は溶融混合物であってよい。特に好ましいジエンエラストマーとしては、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエンゴムが挙げられる。好ましくは、スチレン-ブタジエンゴムは25wt%のスチレン含量を有する。本発明の実施例で用いたスチレン-ブタジエンゴムは、Lanxessにより商品名Buna
TM VSL 5025-2で市販されている。
【0024】
無機フィラー
本明細書で使用する用語「フィラー」は、エラストマー組成物の物理的特性を強化又は改変し、特定の加工特性を与え、又はコストを削減するために使用するいずれの材料をも指す。
本発明に適したフィラーの例としては、限定するものではないが、炭酸カルシウム、粘土、マイカ、シリカ、シリカート、タルク、二酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、デンプン、木粉、カーボンブラック、又はその混合物が挙げられる。フィラーはいずれのサイズであってもよいが、典型的に、例えばタイヤ産業では、0.0001μm〜100μmの範囲であり得る。
本明細書で使用する場合、用語「シリカ」は、溶液、発熱等の方法で加工されたいずれのタイプ若しくは粒径のシリカ又は別のケイ酸誘導体、又はケイ酸をも指すものとし、例えば未処理、沈降シリカ、結晶性シリカ、コロイドシリカ、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸カルシウム、ヒュームドシリカ等がある。沈降シリカは、通常のシリカ、半高分散性シリカ、又は高分散性シリカであり得る。好ましいフィラーは、Rhodia Companyによって商品名Zeosil
TM Z1165で市販されている。
【0025】
カップリング剤
本明細書で使用する場合、用語「カップリング剤」は、本来なら相互作用しない2つの種間、例えば、フィラーとジエンエラストマーとの間の安定した化学的及び/又は物理的相互作用を促進できるいずれの薬剤をも指すものとする。カップリング剤によってシリカがゴムへの強化作用を持つようになる。該カップリング剤は、シリカ粒子と前混合するか、又はシリカ粒子で前処理するか、或いはゴム/シリカ加工、又は混合段階中にゴム混合物に添加してもよい。ゴム/シリカ混合、又は加工段階中にゴム混合物にカップリング剤とシリカを別々に添加する場合は、カップリング剤が現場でシリカと化合すると考えられる。
カップリング剤は、硫黄ベースカップリング剤、有機ペルオキシドベースカップリング剤、無機カップリング剤、ポリアミンカップリング剤、樹脂カップリング剤、硫黄化合物ベースカップリング剤、オキシム-ニトロソアミンベースカップリング剤及び硫黄であってよい。これらのうち、タイヤ用ゴム組成物には硫黄ベースカップリング剤が好ましい。
一実施形態では、カップリング剤は少なくとも二官能性である。二官能性カップリング剤の非限定例にはオルガノシラン又はポリオルガノシロキサンがある。適切なカップリング剤の他の例としてはシランポリスルフィドがあり、それらの特異的構造に応じて「対称的」又は「非対称的」と呼ばれる。シランポリスルフィドは下記式(IV)で表すことができる。
Z-A-S
x-A-Z (IV)
式中、xは、2〜8(好ましくは2〜5)の整数であり;同一又は異なる記号Aは、二価炭化水素基(好ましくはC
1-C
18アルキレン基又はC
6-C
12アリーレン基、さらに特にC
1-C
10、特にC
1-C
4アルキレン、特にプロピレン)を表し;同一又は異なる記号Zは、下記3つの式(V)の1つに相当する。
【0027】
式中、置換若しくは非置換の同一又は互いに異なるR
1基は、C
1-C
18アルキル、C
5-C
18シクロアルキル又はC
6-C
18アリール基(好ましくはC
1-C
6アルキル、シクロヘキシル又はフェニル基、特にC
1-C
4アルキル基、さらに特にメチル及び/又はエチル)を表し;置換若しくは非置換の同一又は互いに異なるR
2基は、C
1-C
18アルコキシル又はC
5-C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1-C
8アルコキシル及びC
5-C
8シクロアルコキシルから選択される基、さらに好ましくはC
1-C
4アルコキシルから選択される基、特にメトキシル及びエトキシル)を表す。上記式(IV)に相当するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、特に普通の市販混合物の場合、「x」指数の平均値は、好ましくは2と5の間の分数、さらに好ましくは約4である。しかしながら、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x=2)を用いて本発明を有利に実施することもできる。
国際特許公開第WO 03/002648号及び第WO 03/002649号はさらにシランポリスルフィドを開示する。シランポリスルフィドの非限定例としては、ビス((C
1-C
4)アルコキシ(C
1-C
4)アルキルシリル(C
1-C
4)アルキル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えば、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられる。さらなる例としては、TESPTと略称され、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S
2]
2のビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、又はTESPDと略称され、式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S]
2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが挙げられる。他の例として、ビス(モノ(C
1-C
4)アルコキシルジ(C
1-C
4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(特にジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、さらに特に例えば国際特許公開第WO 02/083782号に記載のビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドがある。
【0028】
カップリング剤は、国際特許公開第WO 02/30939号、第WO 02/31041号及び第WO2007/061550号に記載されているように、二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)、又はヒドロキシシランポリスルフィド、或いは国際特許公開第WO 2006/125532号、第WO 2006/125533号及び第WO 2006/125534号に記載されているように、アゾジカルボニル官能基を有するシラン又はPOSであってもよい。カップリング剤として、他のシランスルフィド、例えば、米国特許第6,849,754号、並びに国際特許公開第WO 99/09036号、第WO 2006/023815号、第WO 2007/098080号、第WO 2008/055986号及び第WO 2010/072685号に記載されているように、少なくとも1つのチオール(−SH)官能基及び/又は少なくとも1つのマスクされたチオール官能基を有するシラン(メルカプトシランと呼ばれる)も挙げられる。
カップリング剤は、さらに出願第WO 2006/125534号に記載されているように、本明細書に記載の1種以上のカップリング剤の組み合わせを含むこともできる。好ましいカップリング剤は、アルコキシシラン又はポリ硫化アルコキシシランを含む。特に好ましいポリ硫化アルコキシシランは、Degussaにより商品名X50Sで市販されているビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。
【0029】
可塑剤
本明細書で使用する場合、用語「可塑剤」(加工油とも呼ばれる)は、石油由来加工油及び合成可塑剤を指す。該油は主に組成物の加工性を改善するために用いられる。適切な可塑剤としては、限定するものではないが、脂肪酸エステル又は炭化水素可塑剤油、例えばパラフィン系油、芳香族油、ナフテン系石油、及びポリブテン油が挙げられる。特に好ましい可塑剤は、Nynasにより商品名Nytex
TM 4700で市販されているナフテン系油である。
酸化防止剤
本明細書で使用する場合、用語「酸化防止剤」は、酸化的分解に対抗する化学薬品を指す。適切な酸化防止剤としては、ジフェニル-p-フェニレンジアミン及びThe Vanderbilt Rubber Handbook (1978)、344〜346ページに開示されているものが挙げられる。特に好ましい酸化防止剤は、Eastmanにより商品名Santoflex
TM 6PPDで市販されているパラフェニレンジアミンである。
架橋剤、硬化剤、硬化パッケージ、及び硬化プロセス
エラストマー組成物及び該組成物から作られる物品は、一般的に少なくとも1種の硬化パッケージ、少なくとも1種の硬化剤、少なくとも1種の架橋剤の助けを借りて製造され、及び/又はエラストマー組成物を硬化させるためのプロセスを受ける。本明細書で使用する場合、少なくとも1種の硬化パッケージは、当業界で一般に理解されているように、ゴムに硬化特性を付与できるいずれの材料又は方法をも指す。好ましい薬剤は硫黄である。
【0030】
加工:タイヤトレッド組成物の調製
本発明のタイヤトレッド組成物は、当業者に知られているいずれの通常の手段によってもコンパウンド(混合)可能である。混合は、単一工程又は多工程で行なってよい。例えば、典型的に少なくとも2つの段階で、すなわち少なくとも1つの非生産的段階後に生産的混合段階で成分を混合する。用語「非生産的」及び「生産的」混合段階は、ゴム混合技術分野の当業者に周知である。ジエンエラストマー、シリカ処理官能化組成物、添加剤(フィラー、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤)は一般的に1つ以上の非生産的混合段階で混合する。最も好ましくは、まず最初にジエンポリマー及びシリカ処理官能化組成物を110℃〜130℃で30秒〜2分間混合した後にフィラー及び他の添加剤を添加し、この組み合わせをさらに混合し、最も好ましくは140℃〜160℃まで温度を上昇させて30秒〜3又は4分間混合する。最も望ましくは、フィラーを少しずつ、最も好ましくは半分、それから次の半分を混合する。最終硬化剤は、典型的に生産的混合段階に混合する。生産的混合段階においては、混合は、典型的に、先行する非生産的混合段階の混合温度より低い温度、又は極限温度で行なわれる。
【0031】
抽出率
本発明のシリカ処理官能化樹脂で形成されたタイヤトレッド組成物は、未架橋材料の抽出に対して低い感受性を示し、樹脂マトリックスの改善された長寿命を示唆している。
好ましくは、24時間のシクロヘキサンへの曝露後にタイヤトレッド組成物から抽出された未架橋材料の百分率は40%未満、さらに好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満である。
【0032】
硬化特性
硬化特性は、Alpha Technologies, Inc.からのMDR 2000を用いてASTM D-2084に基づいて160℃で測定した。本明細書で使用する「MH」及び「ML」は、それぞれ「最大トルク」及び「最小トルク」を表す。本明細書で使用する「デルタトルク」は、MHとMLとの間の差を表す。
動的機械特性
本発明のシリカ処理官能化樹脂から形成されたタイヤトレッド組成物は、ASTM D7605に従って100℃、14%のひずみ、及び5Hzで動的機械分析(DMA)により測定したところ優れた動的機械特性を示し、これは耐久性、静止摩擦、及び取り扱いの改善を示唆している。
100℃でのタンジェントデルタは、過激な使用状態下におけるタイヤグリップ及び他の性能特性向上の指標として使用可能である。
【実施例】
【0033】
実施例:
実施例1で用いたヒドロシリル化触媒は、カールシュテット触媒として当業界で知られる白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンである。
実施例1.(DCPD-Fの調製)
本発明のシリカ処理シラン官能化樹脂の調製は以下のように模式化可能である。
【0034】
【化5】
【0035】
グローブボックス内で、250mLの丸底フラスコに、炭化水素樹脂(C2及びEではEscorez
TM E8400、C1ではEscorez
TM 5400)(38.6g)、トリクロロシランン(ヒドロシリル化剤)(38mL)、及び撹拌子を入れた。キシレン中のカールシュテット触媒の溶液(2wt%のPt.、2.5mL)を加えた。溶液を加圧密閉して60℃に5日間加熱した。過剰のトリクロロシランを減圧下で除去し、トルエン(50mL)を加えてから減圧下で除去した。トルエン(50mL)を再び加えた。発明例Eでは、撹拌子を含む丸底フラスコ内のシリカゲル(50g)とトルエン(250mL)の撹拌混合物に溶液を加えた。比較例C1〜C2では、シリカゲルを加えなかった。混合物を室温で72時間撹拌し、濾過し、固体を収集した。本明細書で使用する場合、用語「室温」を用いて約20℃〜約23.5℃の温度範囲を表す。固体シリカは一定質量に達する(72gが得られる)まで真空乾燥器内に入れた。
【0036】
実施例2.(タイヤトレッド組成物C1〜C2及びEの調製)
比較タイヤトレッド組成物C1〜C2及び発明タイヤトレッド組成物Eは、Brabender
TMミキサーでまず最初に表1に示す9phrの樹脂タイプを表2に列挙する成分(全ての量はphr)と混合することによって得た。全ての例C1〜C2及びEは、同じ量及びタイプのエラストマー、フィラー、カップリング剤、油、及び酸化防止剤を含有する。例Eは、比較例C1〜C2と異なり、樹脂分子の官能化後の第1混合サイクル中に加えた37phrのシリカを含有する。
この第1混合サイクルは以下の通りだった:1)120℃の温度でミキサーローター速度を25RPMに設定し;2)ポリマーを添加し、30秒間混合し;3)総量の半分のシリカを加えて30秒間混合し;4)残りのシリカ及び全ての他の成分を加え、152℃に達するまでローター速度を上げた。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
結果として生じた化合物を冷却してから同Brabender
TMミキサーを用いて、表3に示す量(全ての量はphr)の硬化剤とブレンドした。全ての例C1〜C2及びEは同じ硬化パッケージを含有する。この第2パスは以下のように行なった:1)70℃の温度でミキサーローター速度を35RPMに設定し;2)第1パスからの化合物を加えて30秒間混合し;3)硬化剤を加えて6分30秒間混合し;4)化合物を添加してから7分の総混合時間でバッチを取り出す。
【0040】
【表3】
【0041】
実施例3.(C1〜C2及びEの調製)
これらの硬化及び応力/ひずみ測定の結果を表4に要約する。
【0042】
【表4】
【0043】
発明材料Eは、比較材料C1〜C2に比べて低いML値を示した。これはシリカ分散の改善を実証している。発明材料Eは、比較材料C1に匹敵するMH値を示した。表5及び表6により、Eの動的機械特性の抽出率がC2の抽出率に比べて改善されたことが分かる。
【0044】
実施例4.(C1〜C2及びEの抽出率)
各組成物をシクロヘキサン溶媒に24時間さらし、その後に樹脂マトリックスから浸出し遊離低分子材料の量を測定することによって、組成物C1〜C2及びEからの未架橋材料(例えば、低分子ポリマー、酸化防止剤、硬化フラグメント、油、ワックス、樹脂)の抽出率を決定した。発明タイヤトレッド組成物及び比較タイヤトレッド組成物の2回の抽出率試験の平均結果を表5に要約する。Eの抽出率はC1〜C2の抽出率より低かった。これは樹脂マトリックスの改善された長寿命を実証している。
【0045】
【表5】
【0046】
実施例5.(C1〜C2及びEの動的機械特性)
100℃で測定した発明材料及び比較材料の動的機械特性を表6に要約する。
【0047】
【表6】
【0048】
発明材料Eは、比較材料C1より大きい14%でのG'及び14%でのタンジェントデルタを示した。これは比較材料C1に優る耐久性、静止摩擦、及び取り扱いの改善を実証している。発明材料Eは、比較材料C2より大きい14%でのG'及びC2に匹敵する14%でのタンジェントデルタを示した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
産業上の利用可能性
本発明の組成物は、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、射出成形、及び積層して、繊維、フィルム、ラミネート、層、工業部品、例えば自動車部品、電化製品ハウジング、消費者製品、包装材料等を含めた種々の形状の物品にすることができる。
特に、本樹脂を含む組成物は、種々多様のタイヤ用途、例えばトラック用タイヤ、バス用タイヤ、自動車用タイヤ、オートバイ用タイヤ、オフロード用タイヤ、航空機用タイヤ等に有用である。該タイヤは、当業者に知られ、かつ容易に分かるであろう種々の方法によって組立、形成、成形、及び硬化可能である。組成物をタイヤ用完成品の構成要素に加工することができる。構成要素は、いずれのタイヤ構成要素、例えばトレッド、サイドウォール、チェーファーストリップ、タイガム(tie gum)層、強化コードコーティング材料、クッション層等であってよい。組成物はタイヤトレッドに特に役立ち得る。
本発明の樹脂を含む組成物は、種々多様の用途、特にタイヤ硬化ブラダー、インナーチューブ、エアスリーブ、ホース、ベルト、例えばコンベヤーベルト又は自動車用ベルト、ソリッドタイヤ、フットウェア構成要素、グラフィックアート用途のローラー、振動絶縁デバイス、医薬品デバイス、接着剤、コーキング(caulks)、シーラント、施釉(glazing)コンパウンド、保護コーティング、エアクッション、空気バネ、エアベローズ、アキュムレーターバッグ、並びに流体保持及び硬化プロセス用の種々のブラダーに有用である。本発明の樹脂を含む組成物は、ゴム配合物中の可塑剤として、伸縮性ラップフィルムに加工される組成物への成分として、潤滑剤用の分散剤として、並びにポッティング及び電気ケーブル充填及びケーブルハウジング材料においても有用である。
本樹脂を含む組成物は、成形ゴム部品においても有用であり、自動車用サスペンションバンパー、自動排気ハンガー、及びボディーマウントにおいて広範な用途を見出すことができる。さらに他の用途において、本発明の組成物は、医療用途、例えば医薬品の栓や蓋及び医療機器用のコーティング等にも有用である。
【0050】
特定の実施形態及び特徴について一連の数的上限及び一連の数的下限を用いて述べた。当然のことながら、特に指定のない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲を企図する。以下の1つ以上の請求項においては、特定の下限、上限、及び範囲が現れる。全ての数値は、「約」又は「およそ」の表示値であり、当業者が予測する実験誤差及び変動を考慮する。
請求項で用いる用語を上記で定義していない限りにおいては、少なくとも1つの刊行物又は発行特許にある通りに、当該用語に関連技術分野の人が与えた最も広い定義を与えるものとする。さらに、この出願で引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、該開示がこの出願と矛盾せず、かつ全ての管轄権にとって援用することが許される限度において、参照することにより完全にここに援用される。
【手続補正書】
【提出日】2016年9月23日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ処理官能化樹脂組成物の調製方法であって、下記工程:
(A)ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程、ここで、前記ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される;及び
(B)前記シラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程
を含む前記方法。
【請求項2】
前記シラン官能化樹脂組成物のwt%対前記シリカのwt%の比が約1:3である、請求項1の方法。
【請求項3】
前記ヒドロシリル化剤が、下記式(I):
【化1】
(式中、「a」は1〜約1000の整数であり、R''はアルキル又はアリール基である);
下記式(II):
【化2】
(式中、xは、約2〜約40個のSiO基/部分であり、Rはアルキル又はアリール基である);
又は下記式(III):
【化3】
(式中、Yは独立に窒素、酸素、又は硫黄原子であり、Zは独立にホウ素、窒素、酸素、ケイ素又は硫黄原子であり、R
1は独立に水素原子、又は炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
2は独立に、炭素原子数1〜20の二価置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
3は独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホナート基、炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R
1、R
2、及びR
3は、互いに単環又は多核環を形成していてもよく、a〜fは、a+b+c及びd+e+fが両方とも3に等しいという条件で、独立に1、2、又は3の整数であり、かつ各Y及び各Zについて独立に、Zがホウ素原子である場合はx=2、Y又はZが窒素原子である場合はx=2、Y又はZが酸素原子又は硫黄原子である場合はx=1、Zがケイ素原子である場合はx=3である)
によって表されるヒドロシリル化剤の少なくとも1つから選択される、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記ポリマー骨格が下記:
(i)60〜100wt%の範囲内の環式成分;
(ii)15wt%以下のピペリレン由来成分;
(iii)15wt%以下のアミレン由来成分;
(iv)15wt%以下のイソプレン由来成分;
(v)20wt%以下のスチレン由来成分;及び
(vi)20wt%以下のインデン由来成分
を含む、請求項1〜3のいずれか1項の方法。
【請求項5】
前記ヒドロシリル化剤と前記ポリマー骨格をヒドロシリル化触媒の存在下で接触させて触媒反応生成物を生成する、請求項1〜4のいずれか1項の方法。
【請求項6】
下記:
(A)ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程、ここで、前記ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される;及び
(B)前記シラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程
の方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物。
【請求項7】
前記シラン官能化樹脂組成物のwt%対前記シリカのwt%の比が約1:3である、請求項6の組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項の方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物を含むタイヤトレッド組成物。
【請求項9】
下記:
(i)5〜100phrの範囲内の前記シリカ処理官能化樹脂組成物;
(ii)100phrのジエンエラストマー;及び
(iii)50〜150phrの範囲内の無機フィラー
を含む、請求項8のタイヤトレッド組成物。
【請求項10】
請求項8又は9のタイヤトレッド組成物を含むタイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
特定の実施形態及び特徴について一連の数的上限及び一連の数的下限を用いて述べた。当然のことながら、特に指定のない限り、任意の下限から任意の上限までの範囲を企図する。以下の1つ以上の請求項においては、特定の下限、上限、及び範囲が現れる。全ての数値は、「約」又は「およそ」の表示値であり、当業者が予測する実験誤差及び変動を考慮する。
請求項で用いる用語を上記で定義していない限りにおいては、少なくとも1つの刊行物又は発行特許にある通りに、当該用語に関連技術分野の人が与えた最も広い定義を与えるものとする。さらに、この出願で引用した全ての特許、試験手順、及び他の文書は、該開示がこの出願と矛盾せず、かつ全ての管轄権にとって援用することが許される限度において、参照することにより完全にここに援用される。
次の本発明の態様を示す。
1. シリカ処理官能化樹脂組成物の調製方法であって、下記工程:
(A)ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程、ここで、前記ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される;及び
(B)前記シラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程
を含む前記方法。
2. 前記シラン官能化樹脂組成物のwt%対前記シリカのwt%の比が約1:3である、上記1の方法。
3. 前記ヒドロシリル化剤が、下記式(I):
(式中、「a」は1〜約1000の整数であり、R''はアルキル又はアリール基である);
下記式(II):
(式中、xは、約2〜約40個のSiO基/部分であり、Rはアルキル又はアリール基である);
又は下記式(III):
(式中、Yは独立に窒素、酸素、又は硫黄原子であり、Zは独立にホウ素、窒素、酸素、ケイ素又は硫黄原子であり、R1は独立に水素原子、又は炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R2は独立に、炭素原子数1〜20の二価置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R3は独立に水素原子、ハロゲン原子、スルホナート基、炭素原子数1〜20の置換若しくは非置換アルキル又は芳香族基であり、R1、R2、及びR3は、互いに単環又は多核環を形成していてもよく、a〜fは、a+b+c及びd+e+fが両方とも3に等しいという条件で、独立に1、2、又は3の整数であり、かつ各Y及び各Zについて独立に、Zがホウ素原子である場合はx=2、Y又はZが窒素原子である場合はx=2、Y又はZが酸素原子又は硫黄原子である場合はx=1、Zがケイ素原子である場合はx=3である)
によって表されるヒドロシリル化剤の少なくとも1つから選択される、上記1又は2の方法。
4. 前記ポリマー骨格が下記:
(i)60〜100wt%の範囲内の環式成分;
(ii)15wt%以下のピペリレン由来成分;
(iii)15wt%以下のアミレン由来成分;
(iv)15wt%以下のイソプレン由来成分;
(v)20wt%以下のスチレン由来成分;及び
(vi)20wt%以下のインデン由来成分
を含む、上記1〜3のいずれか1項の方法。
5. 前記ヒドロシリル化剤と前記ポリマー骨格をヒドロシリル化触媒の存在下で接触させて触媒反応生成物を生成する、上記1〜4のいずれか1項の方法。
6. 前記触媒反応生成物を引き続き水素化する、上記5の方法。
7. 前記ヒドロシリル化剤と前記ポリマー骨格をメタセシス触媒の存在下で接触させ、前記メタセシス触媒がルテニウム触媒である、上記1〜6のいずれか1項の方法。
8. 下記:
(A)ポリマー骨格をヒドロシリル化剤と反応させてシラン官能化樹脂組成物を生成する工程、ここで、前記ポリマー骨格は、ジシクロペンタジエン(DCPD)ベースポリマー、シクロペンタジエン(CPD)ベースポリマー、DCPD-スチレンコポリマー、C5ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5-スチレンコポリマー樹脂、テルペンホモポリマー又はコポリマー樹脂、ピネンホモポリマー又はコポリマー樹脂、C9ホモポリマー及びコポリマー樹脂、C5/C9コポリマー樹脂、αメチルスチレンホモポリマー又はコポリマー樹脂、並びにその組み合わせの少なくとも1つから選択される;及び
(B)前記シラン官能化樹脂組成物をシリカと混合してシリカ処理官能化樹脂組成物を生成する工程
の方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物。
9. 前記シラン官能化樹脂組成物のwt%対前記シリカのwt%の比が約1:3である、上記8の組成物。
10. 上記1〜7のいずれか1項の方法によって調製されたシリカ処理官能化樹脂組成物を含むタイヤトレッド組成物。
11. 下記:
(i)5〜100phrの範囲内の前記シリカ処理官能化樹脂組成物;
(ii)100phrのジエンエラストマー;及び
(iii)50〜150phrの範囲内の無機フィラー
を含む、上記10のタイヤトレッド組成物。
12. 前記シリカ処理官能化樹脂組成物が20〜50phrの範囲内で存在する、上記10又は11のタイヤトレッド組成物。
13. 前記無機フィラーがシリカを含む、上記10〜12のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
14. 前記ジエンエラストマーが、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-ブタジエンゴム、高cis-ポリブタジエン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、分岐(「星状分岐」)ブチルゴム、ハロゲン化星状分岐ブチルゴム、ポリ(イソブチレン-co-p-メチルスチレン)、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、星状分岐ポリイソブチレンゴム、及びその混合物の少なくとも1つから選択される、
上記10〜13のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
15. 前記ジエンエラストマーが、ポリブタジエンゴムとスチレン-ブタジエンゴムの混合物を含む、上記14のタイヤトレッド組成物。
16. さらにカップリング剤を含む、上記10〜15のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
17. 前記組成物が硬化している、上記10〜16のいずれか1項のタイヤトレッド組成物。
18. 上記10〜17のいずれか1項のタイヤトレッド組成物を含むタイヤ。
【国際調査報告】