(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512886(P2017-512886A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】ビスオキシムエステル系光重合開始剤及びその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
C08F 2/50 20060101AFI20170421BHJP
C07D 335/12 20060101ALI20170421BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20170421BHJP
C07D 311/82 20060101ALI20170421BHJP
C07D 307/91 20060101ALI20170421BHJP
C07D 409/14 20060101ALI20170421BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20170421BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20170421BHJP
C07C 319/20 20060101ALN20170421BHJP
C07C 321/30 20060101ALN20170421BHJP
C07C 249/12 20060101ALN20170421BHJP
C07C 251/66 20060101ALN20170421BHJP
【FI】
C08F2/50
C07D335/12
C07D333/76
C07D311/82
C07D307/91
C07D409/14
C07D209/86
G03F7/031
C07C319/20
C07C321/30
C07C249/12
C07C251/66
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-568100(P2016-568100)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月9日
(86)【国際出願番号】CN2015074360
(87)【国際公開番号】WO2015139601
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】201410100523.3
(32)【優先日】2014年3月18日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513127917
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CAHNGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】511216525
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CAHNGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】銭 暁春
【テーマコード(参考)】
2H225
4C037
4C062
4C063
4C204
4H006
4J011
【Fターム(参考)】
2H225AC33
2H225AC36
2H225AD06
2H225AM22P
2H225AM23P
2H225AM25P
2H225AM32P
2H225AN47P
2H225BA17P
2H225CA16
2H225CA21
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4C037SA02
4C062HH01
4C063AA03
4C063BB07
4C063CC92
4C063DD08
4C063EE10
4C204BB03
4C204BB09
4C204CB25
4C204DB01
4C204EB01
4C204FB03
4C204GB15
4H006AA02
4H006AB40
4H006AC48
4H006BB12
4H006BB19
4H006TA04
4J011AA06
4J011SA78
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系光重合開始剤を開示し、化学構造にビスオキシムエステル基を導入することで、当該光重合開始剤は、貯蔵安定性、感光度、現像性とパターン完全性などの点で性能に優れるだけではなく、同種類の光重合開始剤に比べて、製品は著しく向上した感光度と熱安定性を示す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される構造を有するビスオキシムエステル系光重合開始剤であって、
【化1】
式中、
R
1は
【化2】
である。その中で、*は結合位置を表し、Xはなし、単結合又はC
1−C
5のアルキレン基であり;YはO、S又はR
5N−基である。その中で、R
5は水素、C
1−C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基又はC
4−C
20のアルキルシクロアルキル基である。
R
2、R
3は互いに独立に、C
1−C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。但し、R
2とR
3のうちの少なくとも一つは、無置換又はハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される一つ若しくは複数の基で置換されるシクロアルキルアルキル基である。ここでのシクロアルキルアルキル基の構造は
【化3】
であり、nは1−5の整数であり、mは1−6の整数である。
R
4はC
1−C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基、C
3−C
20のヘテロアリール基、C
6−C
20のアリール基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、フェニル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【請求項2】
R1において、Xはなし、単結合、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基であり;YはO、S又はR5N−基である。その中で、R5は水素、C1−C10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項3】
R
2、R
3は互いに独立に、C
1−C
5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
4−C
15のシクロアルキルアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基に置換されていてもよい。但し、R
2とR
3のうちの少なくとも一つは、無置換又は一つ若しくは複数のハロゲン、ニトロ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されるシクロアルキルアルキル基である。ここでのシクロアルキルアルキル基の構造は
【化4】
であり、nは1−5の整数、mは1−3の整数であることを特徴とする請求項1に記載のビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項4】
R4はC1−C5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C3−C8のシクロアルキル基、C4−C8のシクロアルキルアルキル基、C4−C8のアルキルシクロアルキル基、C3−C5のヘテロアリール基、C6−C10のアリール基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよいことを特徴とする請求項1に記載のビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【請求項5】
R
1は下記の構造から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載のビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【化5】
【請求項6】
以下のステップを含む請求項1に記載のビスオキシムエステル系光重合開始剤の製造方法。
(1)中間体1の合成:
【化6】
を出発原料とし、R
2とR
3基を有するアシルハライド化合物とともに、塩化アルミニウム又は塩化亜鉛の作用で、フリーデルクラフツ反応によって、中間体1を合成する。反応式は以下の通りである。
【化7】
式中、Zはハロゲンを表す。
(2)中間体2の合成:中間体1を塩化水素、ナトリウムアルコキシド又はカリウムアルコキシドの作用で、亜硝酸エステル(例えば、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソオクチルなど)又は亜硝酸塩(例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなど)とオキシム化反応を行わせて、中間体2を生成する。反応式は以下の通りである。
【化8】
(3)ビスオキシムエステル系光重合開始剤の合成:中間体2を、R
4基を有するアシルハライド化合物又は酸無水物とエステル化反応を行わせて、ビスオキシムエステル系光重合開始剤製品を合成する。反応式は以下の通りである。
【化9】
式中、Zはハロゲンを表す。
【請求項7】
前記ZはF、Cl、Br又はIから選択されるものであることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記亜硝酸エステルは亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル又は亜硝酸イソオクチルから選択されるものであり、前記亜硝酸塩は亜硝酸ナトリウム又は亜硝酸カリウムから選択されるものであることを特徴とする請求項6に記載の合成製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のビスオキシムエステル系光重合開始剤の光硬化組成物への応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合開始剤の技術分野に属し、特にビスオキシムエステル系光重合開始剤及びその製造方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
オキシムエステル構造を有する化合物は本分野において光重合開始剤として用いられることは広く知られており、例えば、特許文献1〜4などの特許文献には、異なるカルバゾールオキシムエステルとケトオキシムエステル系光重合開始剤が開示されている。これらの開示された光重合開始剤は、異なる程度で現在の表示パネル及びカラーフィルタなどの光硬化分野での一般的な応用要求を満たすことができる。
【0003】
しかし、電子科学技術が発展されつつ、既存の製品はある応用分野において不足が現れ始め、製品の更新も光重合開始剤に対してさらに高い要求を求めている。例えば、現在クリアランスコントロール材料に応用されているフォトレジスト剤の多くは耐熱性が劣り、ベーク又はシールプロセスの際に潰れやすくクリアランス材料を縮ませるが、塗布、露光現像などのプロセスでクリアランスコントロール材料の高さを有意に大きくすれば、そのコストが増加し、受熱して潰れる時に熱融出した小分子は液晶を汚染してしまう。また、例えば、ハイエンドカラーフィルタの作製において、光重合開始剤は溶解性が高く、熱安定性が良好である基本要求を満たす必要がある一方、その高い色彩の品質性能の要求は高度に着色したレジスト剤を経る必要があるが、顔料の含有量の増加に伴って、色彩レジスト剤の硬化がさらに難しくなり、その硬化後の画像の解像度、完成度も比較的に高い要求がある。上記の問題を解決するために、より高い感光度の開始剤が必要となる。
【0004】
光硬化の分野において、高い感光性を有し、安定性が高く、且つ製造しやすい光重合開始剤は相変わらず本分野の発展の一番解決すべきことであり、より高い機能を有する光重合開始剤の検討や開発はずっと本分野の重要な課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第99108598号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101508744号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第10565472号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第103293855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、応用性能に優れるビスオキシムエステル系光重合開始剤を提供することにある。化学構造にビスオキシムエステル基を導入することで、当該光重合開始剤は貯蔵安定性、感光度、現像性とパターン完全性などの点で性能に優れるだけではなく、同種類の光重合開始剤に比べて、著しく向上した感光度と熱安定性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術効果を達成するために、本発明に採用する技術態様は以下の通りである。
【0008】
一般式(I)で表される構造を有するビスオキシムエステル系光重合開始剤。
【化1】
【0009】
式中、
R
1は
【化2】
である。その中で、*は結合位置を表し、Xはなし(すなわち、左右の二つのベンゼン環はYだけを介して互いに繋がっている)、単結合、又はC
1−C
5のアルキレン基である;YはO、S又はR
5N−基である。その中で、R
5は水素、C
1−C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20シクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基又はC
4−C
20のアルキルシクロアルキルである。
【0010】
R
2、R
3は互いに独立に、C
1−C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。但し、R
2とR
3のうちの少なくとも一つは、無置換又はハロゲン、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される一つ若しくは複数の基で置換されるシクロアルキルアルキル基である。前記シクロアルキルアルキル基の構造は
【化3】
であり、nは1−5の整数であり、mは1−6の整数である。
【0011】
R
4はC
1−C
20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
20のシクロアルキル基、C
4−C
20のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
20のアルキルシクロアルキル基、C
3−C
20のヘテロアリール基、C
6−C
20のアリール基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、フェニル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0012】
本発明の好ましい態様として、上記の一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系光重合開始剤において、
R
1において、Xはなし、単結合、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基である;YはO、S又はR
5N−基である。その中で、R
5は水素、C
1−C
10直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。
【0013】
R
2、R
3は互いに独立に、C
1−C
5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
4−C
15のシクロアルキルアルキル基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基に置換されていてもよい。但し、R
2とR
3のうちの少なくとも一つは、無置換又は一つ若しくは複数のハロゲン、ニトロ基、シアノ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されるシクロアルキルアルキル基である。前記シクロアルキルアルキル基の構造は
【化4】
であり、nは1−5の整数であり、mは1−3の整数である。
【0014】
R
4はC
1−C
5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、C
3−C
8のシクロアルキル基、C
4−C
8のシクロアルキルアルキル基、C
4−C
8のアルキルシクロアルキル基、C
3−C
5のヘテロアリール基、C
6−C
10のアリール基を表す。これらの基における水素は、ハロゲン、ニトロ基及びアルコキシ基からなる群より選択される基で置換されていてもよい。
【0015】
さらに好ましくは、R
1は下記の構造から選択されるものである。
【化5】
【0016】
本発明は、以下のステップを含む前記一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系光重合開始剤の製造方法にも関する。
【0017】
(1)中間体1の合成:
【化6】
を出発原料とし、R
2とR
3基を有するアシルハライド化合物とともに、塩化アルミニウム又は塩化亜鉛の作用で、フリーデルクラフツ反応によって、中間体1を合成する。反応式は以下の通りである。
【化7】
【0018】
式中、Zはハロゲン、例えばF、Cl、Br又はIを表す。
【0019】
(2)中間体2の合成:中間体1を塩化水素、ナトリウムアルコキシド又はカリウムアルコキシドの作用で、亜硝酸エステル(例えば、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソオクチルなど)又は亜硝酸塩(例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウムなど)とオキシム化反応を行い、中間体2を生成する。反応式は以下の通りである。
【化8】
【0020】
(3)ビスオキシムエステル系光重合開始剤の合成:中間体2を、R
4基を有するアシルハライド化合物又は酸無水物とエステル化反応を行い、ビスオキシムエステル系光重合開始剤製品を合成する。反応式は以下の通りである。
【化9】
【0021】
式中、Zがハロゲン、例えばF、Cl、Br又はIを表す。
【発明の効果】
【0022】
上記の製造方法において、使用される原料はいずれも既存技術における既知の化合物であり、購入可能又は既知の合成方法により調製してなる。当該製造方法は簡単であり、製造過程で汚染性廃棄物を生じることなく、且つ製品純度が高く、工業化量産に適している。
【0023】
本発明はさらに上記の一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系光重合開始剤の光硬化組成物(即ち、感光性組成物)への応用に関する。非限定的に、当該光重合開始剤はカラーレジスト(RGB)、黒色レジスト(BM)、空間障害物(Photo−spacer)、ドライフィルム、半導体フォトレジスト及びインクなどの面に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明の保護範囲に対する制限と解釈すべきではない。
【0027】
ビス−{[4−(3−シクロペンチル−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−プロピオネート)プロピル]フェニレン}−スルフィドの合成
【化10】
【0028】
ステップ(1):ビス−{[4−(3−シクロペンチル−1−ケトン)プロピル]フェニレン}−スルフィドの合成
【化11】
【0029】
500mLの四つ口フラスコに、18.6g ジフェニルスルフィド、29.4g AlCl
3(微粉砕)、100mLジクロロメタンを仕込み、攪拌し、氷浴で冷却し、温度が0℃まで下げた時、33.7g シクロペンチルプロピオン酸クロリドと50g ジクロロメタンとの混合液を滴下し始め、温度を10℃以下に制御し、約1.5hかけて滴下し、引き続き2h攪拌し、反応を終了する。反応液を400g氷と65mL濃塩酸が配合してなる希塩酸に加え、分液ろうとで下層料液を分離し、上層を50mLジクロロメタンで抽出し、抽出液を料液と合わせる。pH値が中性になるまで、10g NaHCO
3と200g 水が配合してなるNaHCO
3溶液で洗浄し、さらに200mLl水で3回洗浄する。30g無水MgSO
4で乾燥して水を除去し、エバポレーションによりジクロロメタンを蒸発させた後、エバポレーション瓶における粗製品は淡黄色液体であり、200mL常圧で蒸発した石油エーテルに加え、攪拌、吸引濾過して、白い粉末状固体が得られ、50℃オーブンで5h乾燥し、製品39.1gが得られ、収率90%、純度96.2%である。
【0030】
ステップ(1)の生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0031】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):1.4274−1.5412(22H,m)、2.5214−2.6276(4H,t)、7.2738−7.3818(4H,d)、7.7908−7.9824(4H,d)。
【0032】
ステップ(2):ビス−{[4−(3−シクロペンチル−1,2−ジケトン−2−オキシム)プロピル]フェニレン}−スルフィドの合成
【化12】
【0033】
250ml四つ口フラスコに、ステップ(1)の生成物21.7g、テトラヒドロフラン100mL、濃塩酸13.2gと亜硝酸イソアミル11.8gを仕込み、常温で5h攪拌し、反応を終了する。これを2000mLの大ビーカーに注ぎ、1000mL水を加えて攪拌する。200gジクロロメタンで抽出し、抽出液に50g無水MgSO
4を入れて乾燥する。吸引濾過し、濾液に対して減圧エバポレーションをかけて溶媒を除去し、回転瓶中に油状粘稠物が得られ、粘稠物を150mL石油エーテルに入れて攪拌析出させ、吸引濾過し、白い粉末状固体が得られる。60℃で5h乾燥し、製品20.9gが得られ、収率85%、相対純度95.2%である。
【0034】
ステップ(2)の生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0035】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):1.4037−1.5431(18H,m)、2.0321−2.1735(2H,s)、2.5001−2.7221(4H,d)、7.3034−7.3241(4H,d)、7.8002−7.9922(4H,m)。
【0036】
ステップ(3):ビス−{[4−(3−シクロペンチル−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−プロピオネート)プロピル]フェニレン}−スルフィドの合成
【0037】
250ml四つ口フラスコに、ステップ(2)の生成物19.7g、100gジクロロメタン、と4.1gトリエチルアミンを仕込み、室温で5min攪拌し、その後7.8gプロピオン酸クロリドを約30minかけて滴下し、引き続き2h攪拌する。その後、5% NaHCO
3水溶液を加えてpH値を中性まで調整する。分液ろうとで有機層を抽出し、さらに200mL水で2回洗浄し、50g無水MgSO
4で乾燥し、溶媒を回転蒸発させ、粘稠状液体が得られる。メタノールで再結晶させて白い固体粉末が得られ、濾過し、製品23.1gが得られ、純度99%である。
【0038】
最終生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0039】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):0.9351−1.1213(6H、t)、1.3351−1.4913(18H、m)、 2.1737−2.2923(4H,m)、2.6981−2.8821(4H、m)、7.3201−8.1241(8H,d)。
【0041】
[2−(3−シクロプロピル−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−プロピオネート)プロピル]− [7−(4−シクロペンチル−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−プロピオネート)ブチル]−チオキサンテンの合成
【化13】
【0042】
ステップ(1):[2−(3−シクロプロピル−1−ケトン)プロピル]− [7−(4−シクロペンチル−1−ケトン)ブチル]−チオキサンテンの合成
【化14】
【0043】
500mLの四つ口フラスコに、19.8g チオキサンテン、14.7g AlCl
3(微粉砕)、100mLジクロロメタンを仕込み、攪拌し、氷浴で冷却し、温度が0℃まで下げた時、13.5g シクロプロピルプロピオン酸クロリドと25g ジクロロメタンとの混合液を滴下し始め、温度を10℃以下に制御し、約1.5hかけて滴下し、引き続き2h攪拌する。その後、四つ口フラスコに14.7g AlCl
3(微粉砕)を加え、17.8g シクロペンチルブタン酸クロリドと25g ジクロロメタンとの混合液を滴下し、温度を10℃以下に制御し、約1.5hかけて滴下してから、温度を15℃に上げて、引き続き2h撹拌し、反応を終了する。反応液を400g氷と65mL濃塩酸が配合してなる希塩酸に加え、分液ろうとで下層料液を分離し、上層を50mLジクロロメタンで抽出し、抽出液と料液を合わせる。pH値が中性になるまで、10g NaHCO
3と200g 水が配合してなるNaHCO
3溶液で洗浄し、さらに200mL水で3回洗浄する。30g無水MgSO
4で乾燥して水を除去し、エバポレーションによりジクロロメタンを蒸発させた後、エバポレーション瓶における粗製品が淡黄色液体であり、200mL常圧で蒸発した石油エーテルに加え、攪拌、吸引濾過して、白い粉末状固体が得られ、50℃オーブンで5h乾燥し、製品38.1gが得られ、収率88%、純度96.2%である。
【0044】
ステップ(1)の生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0045】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):0.19366−0.2114 (5H、m)、1. 2744−1.5831(15H,m)、2.5762−2.6144(4H,t)、3.7659−3.8407(2H,s)、7.1908−7.2824(2H,d)、7.4457−7.5763(4H,m)。
【0046】
ステップ(2):[2−(3−シクロプロピル−1,2−ジケトン−2−オキシム)プロピル]− [7−(4−シクロペンチル−1,2−ジケトン−2−オキシム)ブチル]−チオキサンテンの合成
【化15】
【0047】
250ml四つ口フラスコに、ステップ(1)の生成物21.6g、テトラヒドロフラン100mL、濃塩酸13.2gと亜硝酸イソアミル11.8gを仕込み、常温で5h攪拌し、反応を終了する。これを2000mL大ビーカーに注ぎ、1000mL水を加えて攪拌し、200gジクロロメタンで抽出し、抽出液に50g無水MgSO
4を入れて乾燥する。吸引濾過し、濾液に対して減圧エバポレーションをかけて溶媒を除去し、回転瓶中に油状粘稠物が得られ、粘稠物を150mL石油エーテルに入れて攪拌析出させ、吸引濾過し、白い粉末状固体が得られる。60℃で5h乾燥し、製品21.1gが得られ、収率86%、相対純度95.2%である。
【0048】
ステップ(2)の生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0049】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):0.2037−0.2431(5H、m)、1.4355−1.5032(11H,m)、2.0117−2.1349(2H、s)、2.5132−2.7065(4H、m)、3.8002(2H、s) 、7.3034−7.5241(6H,d)。
【0050】
ステップ(3):[2−(3−シクロプロピル−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−プロピオネート)プロピル]− [7−(4−シクロペンチル−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−プロピオネート)ブチル]−チオキサンテンの合成
【0051】
250ml四つ口フラスコに、ステップ(2)の生成物19.6g、100gジクロロメタン、と4.1gトリエチルアミンを仕込み、室温で5min攪拌し、その後、7.6gプロピオン酸クロリドを約30minかけて滴下し、引き続き2h攪拌する。その後、5% NaHCO
3水溶液を加えてpH値を中性まで調整する。分液ろうとで有機層を抽出し、さらに200mL水で2回洗浄し、50g無水MgSO
4で乾燥し、溶媒を回転蒸発させ、粘稠状液体が得られる。メタノールで再結晶させて白い固体粉末が得られ、濾過し、製品22.1gが得られ、純度99%である。
【0052】
最終生成物の構造は核磁気共鳴水素スペクトルにより確認され、具体的な同定結果は以下の通りである。
【0053】
1H−NMR(CDCl
3,500MHz):0.1981−0.2209(5H、m)、1.1038−1.2004(6H、m)、1.498−1.5703(11H、m)、 2.2765−2.3951(4H,m)、2.5964−2.7123(4H、m)、3.8678(2H,s)、7.2854−7.3409(2H,d)、7.3988−7.5028(4H,m)。
【0055】
実施例1又は2の方法を参照し、
【化16】
及び対応するアシル化試薬から実施例3−13に示される化合物を合成する。
【0056】
目的生成物の構造及びその
1H−NMRデータは表1に示される。
【0059】
例示された光硬化組成物を製造することで、本発明の一般式(I)で表される光重合開始剤の、貯蔵安定性、感光度、現像性、パターン完全性、熱安定性などの点を含む各応用性能を評価する。
【0061】
(1)着色していない光硬化組成物A
アクリレートコポリマー 100
(ベンジルメタクリル酸/メタクリル酸/メタクリル酸ヒドロキシエチル(モル比70/10/20)コポリマー(Mw:10,000))
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA) 100
光重合開始剤 2
ブタノン(溶媒) 25
【0062】
(2)着色している光硬化組成物B
アクリレートコポリマー 100
(ベンジルメタクリル酸/メタクリル酸/メチルメタクリル酸(モル比50/15/30)コポリマー(Mw:15,000))
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100
光重合開始剤 2
ブタノン(溶媒) 25
染料ブルー15 5
上記の組成物AとBにおいて、光重合開始剤は本発明に開示された一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系化合物又は比較としての既存技術で既知の光重合開始剤であり、各成分はいずれも質量部である。
【0064】
上記の光硬化組成物AとBをそれぞれ遮光攪拌し、PETテンプレート上にサンプリングしてワイヤバーにより塗膜し、90℃で5min乾燥して溶媒を除去し、膜厚さが約2μmの塗膜を形成する。塗膜が形成されている基板を室温まで冷却し、マスク板を敷き、高圧水銀ランプ1PCSの光源で、FWHMフィルタにより長波長輻射を実行する。マスク板の隙間により370〜420nm波長の紫外線で塗膜を露光し、そして25℃で2.5%の炭酸ナトリウム溶液中に20s浸漬して現像し、さらに超純水で洗浄し、風乾させ、220℃で30minハードベークして図形を定着させ、得られた図形を評価する。
【0066】
(1)貯蔵安定性
液状の光硬化組成物を室温で自然に一ヶ月貯蔵した後、以下の基準で目視にて物質の沈殿程度を評価する。
A:沈殿が観察されない;
B:やや沈殿が観察される;
C:明らかに沈殿が観察される。
【0067】
(2)感光度
露光する時、露光ステップにおいて光輻射領域が現像後の残膜率が90%又はそれ以上である最小露光量を露光需要量として評価し、露光需要量が小さいほど、感度が高いことを示す。
【0068】
(3)現像性とパターン完全性
走査型電子顕微鏡(SEM)で基板パターンを観察し、現像性とパターン完全性を評価する。
【0069】
現像性を以下の基準により評価する。
○:露光されない部分に残存物が観察されていない;
◎:露光されない部分に少量の残存物が観察されるが、残存物は許容できる;
●:露光されない部分に明らかな残存物が観察される。
パターン完全性を以下の基準により評価する。
◇:パターン欠陥が観察されていない;
□:一部のパターンに若干欠陥が観察される;
◆:明らかに多くのパターン欠陥が観察される。
【0070】
(4)熱安定性
シックネスゲージでハードベークする前後の膜厚さの変化を測定し、材料の熱安定性を評価する。
【0074】
表2と表3において、PBG−304は特許文献2に開示された光重合開始剤1−(6−オルトメチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール−3−イル)−(3−シクロペンチルプロパノン)−1−オキシム−アセテートを表し、OXE−01は1−(4−フェニルチオ−フェニル)−オクタン−1,2−ジケトン−2−オキシム−O−ベンゾエートを表し、OXE−02は1−(6−オルトメチルベンゾイル−9−エチルカルバゾール−3−イル)−(3−エチルケトン)−1−オキシム−アセテートを表し、Irgacure907は2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−ケトンを表す。
【0075】
表2と表3の結果からわかるように、本発明の一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系光重合開始剤を含む光硬化組成物は良好な貯蔵安定性を有し、無色系と顔料系のいずれにも極めて良好な感光度、現像性及びパターン完全性を示し、且つ既存の光重合開始剤よりも著しく優れる熱安定性を有する。比較的に言えば、PBG−304、OXE−01、OXE−02及びIrgacure 907は貯蔵安定性、感光度、現像性、パターン完全性と熱安定性の面で顕著な差異が存在している。
【0076】
上述した通り、本発明に開示される一般式(I)で表されるビスオキシムエステル系光重合開始剤は応用性能に優れ、光硬化組成物に応用して光硬化製品の性能を大きく向上させることができる。
【国際調査報告】