(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512911(P2017-512911A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】ホウ素ドープn型シリコンターゲット
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20170421BHJP
C30B 29/06 20060101ALI20170421BHJP
C30B 23/00 20060101ALI20170421BHJP
H01L 21/203 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C30B29/06 D
C30B23/00
H01L21/203 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-560967(P2016-560967)
(86)(22)【出願日】2015年3月18日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月28日
(86)【国際出願番号】US2015021239
(87)【国際公開番号】WO2015156972
(87)【国際公開日】20151015
(31)【優先権主張番号】61/976,094
(32)【優先日】2014年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500190801
【氏名又は名称】トーソー エスエムディー,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】イワノフ, ユージン ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ユアン, ヨンウェン
【テーマコード(参考)】
4G077
4K029
5F103
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BA04
4G077DA14
4G077EC05
4G077SB03
4K029BA35
4K029BA46
4K029CA05
4K029DC02
4K029DC07
5F103AA08
5F103BB22
5F103DD16
5F103KK03
5F103RR01
(57)【要約】
スパッタターゲット及びそれを作製する方法である。ターゲットは、Bドープn型Siを含む。ターゲットは、CZ法によって作製された単結晶ホウ素ドープp型Siインゴットから作製され得る。結晶の長さに沿って電気抵抗率が測定され、ブランクは、約l〜20オーム・cmの電気抵抗率を有する位置でインゴット中心軸に対して垂直に切断され得る。次いで、ブランクは、PVDシステムにおけるスパッタターゲットとして使用するのに適した許容される形状に形成される。ドナーキリングアニーリングは、インゴットについてもブランクについても実施されない。
【代表図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.01〜700オーム・cmの電気抵抗率を有するBドープn型Siを含むスパッタターゲット。
【請求項2】
前記電気抵抗率が約1〜20オーム・cmである請求項1に記載のスパッタターゲット。
【請求項3】
前記電気抵抗率が約1〜12オーム・cmである請求項2に記載のスパッタターゲット。
【請求項4】
前記Siが約0.1〜約200ppmの酸素含有量を有する請求項1に記載のスパッタターゲット。
【請求項5】
前記Siが約1〜約60ppmの酸素含有量を有する請求項4に記載のスパッタターゲット。
【請求項6】
約0.001〜1ppmのB含有量を有する請求項1に記載のスパッタターゲット。
【請求項7】
約1〜60オーム・cmの電気抵抗率を有するBドープp型Siの単結晶インゴットを得ることによって製造されるスパッタターゲットであって、前記インゴットからブランクを形成すること、前記ブランクの電気抵抗率を測定すること、約1〜20オーム・cmの電気抵抗率を有するブランクを選択すること、前記の選択されたブランクが約400℃以上の温度でさらに熱処理されないこと、及び前記ブランクをスパッタターゲットとして使用するのに適した形状に形成すること、によって製造されるスパッタターゲット。
【請求項8】
前記のブランクを選択するステップが約1〜12オーム・cmの電気抵抗率を有するブランクを選択することを含む請求項7に記載のスパッタターゲット。
【請求項9】
Bドープp型Siスパッタターゲットを作製する方法であって、
(a)中心軸を有するインゴットであって、CZ法によって調製された、Bを含有する単結晶Siインゴットを得ること、
(b)前記中心軸に沿って少なくとも1つの位置で前記インゴットの電気抵抗率を測定すること、
(c)前記中心軸に沿って、電気抵抗率が約1〜20オーム・cmである位置を調べること、
(d)前記で決定された位置で前記インゴットからブランクを切断すること、
及び
(e)スパッタリングターゲットとして使用するのに適した前記ブランクに所望の形状を付与すること
を含み、
前記ステップ(a)後に、400℃以上の熱処理がない、方法。
【請求項10】
前記ステップ(c)が約1〜12オーム・cmの間の電気抵抗率を有する位置を決定するステップを含む請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年4月7日に出願された米国仮特許出願第61/976,094号の優先権利益を主張する。
【0002】
本願は、シリコン含有薄膜を形成するためのスパッタリングターゲット及びこのようなターゲットを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
種々のSi薄膜の物理蒸着(PVD)は、半導体、エレクトロニクス及び光起電力応用分野において重要である。正確な薄膜組成及び蒸着均一性は、これらの分野及びその他の分野において重要である。多くの場合、超高純度単結晶性Siスパッタターゲットは、純粋なSiウエハまたはSiドープウエハを形成するためなどの直接スパッタシステムにおいて使用されるか、あるいはSiターゲットは、所望のシリコン酸化物被膜、シリコン酸窒化物(silicon oxynitride)被膜またはシリコン窒化物被膜を形成するために、反応性スパッタリングシステムにおいて使用され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
p型シリコンを使用するターゲット寿命は短い。p型シリコンターゲットのスパッタリングの際には、ターゲット表面上に高い電気抵抗率(resistivity)を有する、シリコン生成物の再付着(re-deposit)がある。この再付着材料は、n型導電性を有するアモルファスシリコン層である。この望ましくない再付着は、
図1に概略図的に示されている。以下の表は、ターゲット再付着位置、再付着物の半導体の型(conductivity type)及びその他の測定されたパラメータを示す。
【表1】
【0005】
この再付着がターゲット表面上にp−n接合部を作り出し、これは、バイアス下で、ターゲット中に応力の存在をもたらし、ターゲット割れ、ひいては、ターゲット寿命の低減につながる。したがって、特定のn型Siターゲットの使用によって、ターゲット表面上でのp−n接合部の形成を最小化することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの例示的実施形態では、約0.01〜700オーム・cmの電気抵抗率を有するBドープn型Siを含むスパッタターゲットが提供される。その他の実施形態では、ターゲットの電気抵抗率は、約1〜12オーム・cmである。いくつかの実施形態では、Siは、約0.1〜約200ppmの酸素含有量を有し、その他の実施形態では、酸素含有量は、約1〜約60ppmであり得る。特定の実施形態では、ターゲットのホウ素含有量は、約0.01〜約1ppmである。
【0007】
本発明のその他の態様は、インゴットの長さに沿って少なくとも1つの位置でインゴットの電気抵抗率を測定することを含む、約1〜60オーム・cmの電気抵抗率を有するBドープp型Siの単結晶インゴットを得ることによって製造されるスパッタターゲットを含む。次いで、約1〜20オーム・cmの範囲内の電気抵抗率を有するインゴット位置で、インゴットからブランクが形成されるか、スライスされる。選択されたブランクは、約400℃以上の温度ではさらに加熱処理されない。次いで、ブランクは、スパッタターゲットとして使用するのに望ましい形状に形成される。その他の実施形態では、選択されるブランクは、約1〜12オーム・cmの電気抵抗率を有する。
【0008】
本発明のさらにその他の実施形態では、Bドープp型シリコンスパッタターゲットを作製する方法が提供される。これらの方法に従って、ホウ素を含む単結晶Siインゴットが、CZ法によって調製される。インゴット長に沿って伸びる中心軸を有するインゴットが得られる。インゴットの電気抵抗率が測定され、測定された電気抵抗率が、約1〜20オーム・cmであるブランクが、インゴットから切断される。好ましくは、これらのブランクは、インゴットの中心軸に対して垂直に切断される。次いで、スパッタリングターゲットとして有用であり得るように、ブランクに所望の形状が与えられる。本方法は、インゴットが調製された後に400℃以上でのインゴットのいかなる熱処理もないことをさらに特徴とする。なおさらなる実施形態では、切断されたブランクの電気抵抗率は、約1〜12オーム・cmである。
【0009】
本発明を、添付の図面及び好ましい実施形態の以下の詳細な説明とともにさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来のp型Siスパッタターゲット上の望ましくない再蒸着形成を示す模式表示である。
【
図2】シリコンインゴット材料中の酸素熱ドナーの効果を示す模式図である。
【
図3】アニーリング前、DK(酸素ドナーキリング)アニーリング後のインゴットのn型及びp型部分の電気抵抗率データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
高電気抵抗率のチョクラルスキー(Czochralski)(CZ)シリコンインゴット(1〜100オーム・cmの範囲)の成長の際に、結晶成長の間にシリカるつぼからシリコンインゴット材料中に特定量の格子間酸素(interstitial oxygen)が取り込まれ、酸素熱ドナーが形成される。酸素熱ドナーの形成は、処理温度によって決定される格子間酸素濃度と固体シリカ、液体シリコン及び固体シリコン間の平衡との両方に大きく依存する。特定のシリコン単結晶の電気抵抗率(1〜100オーム・cm)を提供するために、シリコンに特定量のホウ素ドーパントが添加される。この添加されたホウ素が、p型キャリアを提供し、シリコン導電性のp型性質を決定する。酸素熱ドナーは、導電に電子を与える。生じたドナーの数及びp型キャリアの量に応じて、バックグラウンドキャリア(ホウ素)シリコンは、n型(より多くのn型のキャリア)またはp型(より多くのp型のキャリア)のものであり得る。p型シリコンでは、酸素熱ドナーは、熱ドナー濃度がp型キャリア濃度(ホウ素)を超えるまで、シリコンの電気抵抗率を増大し、その時点で、シリコンは、n型であると思われる。これらのターゲットに通常使用される22〜33オーム・cmのp型シリコン、ならびに格子間酸素レベルを変更するための電気抵抗率及び400℃アニーリング時間に対する熱ドナーの影響を例示する実験データに基づく説明が、
図2に模式図によって示されている。
【0012】
CZシリコン単結晶成長の際には、シリコンインゴットの一部の部分は、n型導電性であると思われ、シリコンインゴットのその他の部分は、p型導電性である。シリコン単結晶の電気抵抗率を測定することは、より信頼できるものであり、従って、本発明者らは、
図3として現れる図面においてシリコン単結晶の電気抵抗率及び導電性型の実際の測定値をそれぞれ実証する。この図は、ドナーキリング(DK)アニール前のシリコンの電気抵抗率は、p及びn型キャリアの組合せによって決定され、DKアニール後のシリコンの電気抵抗率は、ホウ素濃度に従って正のキャリアによってのみ決定されることを示す。
【0013】
例示的実施形態では、本発明は、以下に関する:
1. 0.01〜700オーム・cm、好ましくは、1〜12オーム・cmの電気抵抗率範囲を有する未アニール酸素ドナーに起因するn型導電性を有するシリコン単結晶ホウ素ドープ材料、
2. 300〜800℃でのドナーキリングアニールを避けることによって酸素ドナーを保存するよう許可される成長条件からなる、未アニール酸素ドナーに起因するn型導電性を有するシリコン単結晶ホウ素ドープ材料を製造する方法、
3. 未アニール酸素ドナーに起因するn型導電性を有する長寿命シリコンターゲット単結晶ホウ素ドープ材料。
【0014】
一実施形態では、Bドープn型シリコンであるスパッタターゲットが提供される。ターゲットのB含量は、通常、約0.001〜1ppmであり、電気抵抗率は、約1〜700オーム・cmである。最も好ましくは、電気抵抗率は、約1〜20オーム・cmであり、さらにより好ましくは、電気抵抗率は、約1〜12オーム・cmの範囲である。
【0015】
本出願人は、実現可能性の任意の特定の理論に捉われようとは思わないが、シリコンマトリックス中の格子間酸素の量が、熱ドナーとして作用して、n型の導電性を供給すると考えられる。この関連で、Siの酸素含量は、約0.1〜200ppmの範囲であり得、1〜60ppmの範囲が好ましい。
【0016】
本方法によるターゲットは、約1〜60オーム・cm、好ましくは、約22〜33オーム・cmの電気抵抗率を有するBドープp型単結晶シリコンを提供するよう適応している最初のシリコン融解を含む伝統的なCZ法によって調製されたSi単結晶インゴットから製造することができる。伝統的なCZ法は、例えば、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第8,961,685号に示されている。通常のCZ法では、Si及びBドーパントは、石英るつぼなどの中に融解される。ロッドが取り付けられた種結晶が融液中に浸漬され、ゆっくりと引き上げられ、同時に回転される。このプロセスは、通常、アルゴンなどの不活性雰囲気中で実施される。
【0017】
インゴットが得られると、いかなるアニール処理にも付されない。代わりに、ディスクまたはブランクがインゴットから切断され、電気抵抗率が、上記で与えられた範囲内に入るよう測定される。次いで、ディスクまたはブランクが、物理的蒸着においてスパッタターゲットとして使用され得るよう所望の正味の形状に形成される。
【0018】
前記の事項は、本発明の具体的な実施形態に向けられているが、本発明のその他の実施形態及び本発明のさらなる実施形態が、添付の特許請求の範囲によって決定される範囲から逸脱することなく導き出され得る。
【国際調査報告】