(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512934(P2017-512934A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】500から4500kWの内燃機関の酸素に富む排気中で酸化窒素を還元するための小型選択的触媒還元システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20170421BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20170421BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/08 H
F01N3/24 E
F01N3/24 N
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-556867(P2016-556867)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月31日
(86)【国際出願番号】GB2015050692
(87)【国際公開番号】WO2015136263
(87)【国際公開日】20150917
(31)【優先権主張番号】61/950,941
(32)【優先日】2014年3月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】504109285
【氏名又は名称】ジョンソン マッセイ キャタリスツ (ジャーマニー) ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Johnson Matthey Catalysts (Germany) GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キューゲル, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ピルリ, イリル
(72)【発明者】
【氏名】ライヘルト, ディルク
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA02
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(57)【要約】
ガス流入口システム、気化器モジュール、およびSCR反応器を含む、小型選択的触媒還元(SCR)システムについて記述する。入口流システムは、熱を気化器モジュールに与え、還元剤と排気ガスとを混合し、触媒を通る排気ガスのほぼ均一な流れが得られるように構成される。気化器モジュールは、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から還元剤を気化させるように、かつ気化した還元剤をガス流入口システムに移送して、そこで排気ガスと混合するように構成される。SCR反応器は、入口流システムと気化器モジュールとを含有し、SCR触媒は、入口流システムと気化器モジュールとに流体連通している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流入口システムと、気化器モジュールと、選択的触媒還元(SCR)反応器とを含む、選択的触媒還元(SCR)システムであって、
a.前記ガス流入口システムは、少なくとも1つの排気ガス入口と、熱伝達領域と、少なくとも2本の流れダクトと、少なくとも2つの初期混合ゾーンとを含み、前記熱伝達領域は、燃焼機関からの排気ガスからの熱を、気化器モジュールに伝達するよう構成され、前記少なくとも2つの初期混合ゾーンのそれぞれは、前記気化器モジュールと、前記熱伝達領域から離れる排気ガスとに流体連通しており、かつ前記気化器モジュールからの気化した還元剤と排気ガスとを前記初期混合ゾーン内で混合することによって混合排気ガスを提供するように構成され、前記少なくとも2本の流れダクトのそれぞれは、前記SCR反応器を経た混合排気ガスの流れを提供するように、かつ熱を排気ガスから前記SCR反応器に伝達する手段を設けるように構成され、
b.前記気化器モジュールは、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から、気化した還元剤を形成するための手段と、前記気化した還元剤を、前記ガス流入口システムの前記初期混合ゾーンに移送するための手段と、前記気化器モジュール内の前記気化した還元剤を含む気化器容積とを含み、かつ
c.前記SCR反応器は、SCR触媒を含み、前記ガス流入口システムおよび前記気化器モジュールに流体連通している
選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項2】
前記熱伝達領域が、ある構造を含んでおり、前記構造は、前記排気ガスの流れを、前記構造と、前記気化器モジュールに熱連通しておりまたは前記気化器モジュールの一部である壁との間に通すように構成されている、請求項1に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項3】
前記構造が、前記構造と、第1の壁との間に前記排気ガスの流れを通すようにさらに構成され、前記第1の壁は、前記気化器モジュールに熱連通しておりまたは前記気化器モジュールの一部であり、1つまたは複数の開口を含んでおりその内部を、前記排気ガスが前記壁に沿って通った後に通過する、請求項2に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項4】
前記構造と、前記気化器モジュールに熱連通しておりまたは前記気化器モジュールの一部である壁との間に、前記排気ガスの流れを通すように構成された前記構造が、前記少なくとも2本の流れダクトのそれぞれに前記構造を接続する通路の一部を形成する、請求項3に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項5】
前記ガス流入口システムが、2本の流れダクトと2つの初期混合ゾーンとを含む、請求項3に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項6】
前記気化器モジュールが、還元剤または還元剤の前駆体の溶液が内部を通過する少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスがノズルである、請求項6に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項8】
前記気化器モジュールが、前記少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスによって形成された液滴パターンの形状を制御するように構成された、少なくとも1つの追加のノズルをさらに含む、請求項6または7に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項9】
排気ガスが、前記SCR反応器を通過した後、前記気化器モジュール内のガスと熱接触している第2の壁に接触する、請求項1から8のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項10】
前記ガス流入口システムが、前記気化器モジュールに熱連通している少なくとも1つの壁を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項11】
前記気化器モジュールに熱連通している前記少なくとも1つの壁が、前記気化器モジュールに直接熱連通している、請求項10に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項12】
前記ガス流入口システムが、前記気化器モジュールに直接熱連通している2つの壁を含む、請求項11に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項13】
前記気化器モジュールが、前記排気ガスに熱連通している少なくとも1つの壁を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項14】
前記気化器モジュールが、前記排気ガスに直接熱連通している1つの壁を含む、請求項13に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項15】
前記気化器モジュールが、前記排気ガスに直接熱連通している2つの壁を含む、請求項13に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項16】
前記ガス流入口システムが、前記流れダクトのそれぞれを前記SCR反応器に接続する通路をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項17】
前記通路が、前記少なくとも2本の流れダクトから前記混合排気ガスの流れを、前記SCR反応器へと指し向ける手段を含み、前記手段は、前記触媒の断面全体にわたって還元剤のほぼ均一な濃度を提供するように構成される、請求項16に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項18】
前記少なくとも2本の流れダクトから前記混合排気ガスの流れを前記SCR反応器へと指し向ける前記手段は、少なくとも2本の流れダクトと前記SCR反応器との間の接続通路内に斜めに取り付けられた固体板を含む、請求項17に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項19】
前記少なくとも2本の流れダクトが、前記SCR反応器の周りに前記排気ガスの流れを分配するよう構成され、前記流れダクトは、前記SCR反応器に熱連通している、請求項1から18のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項20】
前記流れダクトのそれぞれの内部のガスの流れが、ほぼ均等である、請求項19に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項21】
前記流れダクトの少なくとも1本が、前記SCR反応器の第1の面に位置付けられ、前記SCR反応器の第1の面に位置付けられた前記流れダクトとは異なる、少なくとも1本のその他の流れダクトは、前記SCR反応器の反対側に位置付けられる、請求項1から20のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項22】
前記流れダクトが、前記触媒の上流に排気ガスの均一な運動量分布を提供するように、位置付けられかつ向きが定められたバッフル板を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項23】
尿素またはアンモニア前駆体の導入を制御するための手段をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項24】
尿素またはアンモニア前駆体の導入を制御するための前記手段が、NOxセンサを含む、請求項23に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項25】
前記SCR触媒が、モノリスまたは微粒子フィルタの形をとる、請求項1から24のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項26】
前記SCR反応器を経る前記混合排気ガスの流れが、前記モノリスを経る流れの正味の方向を有し、前記少なくとも1種のSCR触媒は、前記モノリスを経るガス流の正味の方向で、正方形、長方形、または円形を有するモノリスまたは微粒子フィルタの形をとる、請求項1から25のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項27】
前記SCRシステムが、アンモニアスリップ触媒、微粒子フィルタ、および酸化触媒の少なくとも1種をさらに含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項28】
追加の触媒またはフィルタが、前記モノリスを経るガス流の正味の方向で、正方形、長方形、または円形を有するモノリスまたはフィルタの形をとる、請求項27に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項29】
熱連通している少なくとも2つの平行な壁が、前記ガスの入口流と前記気化器ガス容積との間に位置付けられる、請求項1から28のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項30】
a.前記ガス流入口システムが、少なくとも1つの排気ガス入口、熱伝達領域、2本の流れダクト、および2つの初期混合ゾーンを含み、前記熱伝達領域は、燃焼機関からの排気ガスから、熱を、前記気化器モジュールに熱連通しておりまたは前記気化器モジュールの一部である少なくとも1つの壁を通して前記気化器モジュール内に伝達するように構成されており、前記排気ガスの流れを前記流れダクトに向けて通過させるガス収集器であって、内部では前記気化器モジュールで発生した前記還元剤が前記触媒に流れる前に前記排気流に進入するガス収集器を含み、前記流れダクトから前記SCR反応器への通路であって、内部では前記少なくとも2本の流れダクトと前記SCR反応器との間に固体板が斜めに取り付けられて、前記混合排気ガスの流れを前記少なくとも2本の流れダクトから前記SCR反応器へと指し向ける通路をさらに含み、前記固体板は、前記触媒の断面全体にわたってほぼ均一な運動量分布および還元剤濃度を提供するように構成され、かつ
b.前記気化器モジュールが、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から気化した還元剤を形成するように構成されたノズルと、少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスによって形成された液滴パターンの形状を制御するように構成されたノズルと、2つの側壁であって、各側壁が、前記気化した還元剤を、前記ガス流入口システムの初期混合ゾーンに移送する複数の開口を含有する2つの側壁と、前記気化器モジュール内の前記気化した還元剤を含む気化器容積とを含む、
請求項1から29のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項31】
エンジンからの排気中に形成される酸化窒素の量を低減させる方法であって、前記エンジンからの排気ガスを、請求項1から30のいずれか一項に記載のSCRシステム内に通すことを含む方法。
【請求項32】
前記ガス流入口システムが、2本の流れダクトと2つの初期混合ゾーンとを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項33】
前記気化器モジュールが、少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスを含み、前記デバイス内を、還元剤または還元剤の前駆体の溶液が通過する、請求項1から4または32のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項34】
前記少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスが、第1のノズルである、請求項33に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項35】
前記気化器モジュールが、前記少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスによって形成される液滴パターンの形状を制御するように構成された、第2のノズルなどの少なくとも1つのノズルをさらに含む、請求項1から4または32から34のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項36】
排気ガスが、前記SCR反応器を通過した後、前記気化器モジュール内のガスに熱接触している第2の壁などの壁に接触する、請求項1から4または32から35のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項37】
前記ガス流入口システムが、前記気化器モジュールに熱連通している少なくとも1つの壁を含む、請求項1から4または32から36のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項38】
前記ガス流入口システムが、前記気化器モジュールに直接熱連通している少なくとも1つの壁を含む、請求項1から4または32から37のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項39】
前記ガス流入口システムが、前記気化器モジュールに直接熱連通している2つの壁を含む、請求項38に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項40】
前記気化器モジュールが、前記排気ガスに熱連通している少なくとも1つの壁を含む、請求項1から4または32から39のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項41】
前記気化器モジュールが、前記排気ガスに直接熱連通している1つの壁を含む、請求項40に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項42】
前記気化器モジュールが、前記排気ガスに直接熱連通している2つの壁を含む、請求項40に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項43】
前記ガス流入口システムが、前記SCR反応器に前記流れダクトのそれぞれを接続する通路をさらに含む、請求項1から4または32から42のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項44】
前記通路が、前記少なくとも2本の流れダクトから、前記混合排気ガスの流れを、前記SCR反応器に指し向ける手段を含み、前記手段は、前記触媒の断面全体にわたってほぼ均一な還元剤の濃度を提供するように構成される、請求項43に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項45】
前記少なくとも2本の流れダクトから、前記混合排気ガスの流れを、前記SCR反応器に指し向ける前記手段が、少なくとも2本の流れダクトと前記SCR反応器との間の接続通路内で斜めに取り付けられた固体板を含む、請求項44に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項46】
前記少なくとも2本の流れダクトが、前記排気ガスの流れを前記SCR反応器の周りに分配するように構成され、前記流れダクトは、前記SCR反応器に熱連通している、請求項1から4または32から45のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項47】
前記流れダクトのそれぞれの内部の前記ガスの流れが、ほぼ等しい、請求項1から4または32から46のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項48】
前記流れダクトの少なくとも1本は、前記SCR反応器の第1の面に位置付けられ、少なくとも1本の異なる流れダクトが、前記SCR反応器の反対側に位置付けられる、請求項1から4または32から47のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項49】
前記流れダクトが、前記触媒の上流に、排気ガスの均一な運動量分布を提供するよう位置付けられかつ向きが定められたバッフル板を含む、請求項1から4または32から48のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項50】
尿素またはアンモニア前駆体の導入を制御するための手段をさらに含む、請求項1から4または32から49のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項51】
尿素またはアンモニア前駆体の導入を制御するための前記手段が、NOxセンサを含む、請求項50に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項52】
前記SCR触媒が、モノリスまたは微粒子フィルタの形をとる、請求項1から4または32から51のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項53】
前記少なくとも1種のSCR触媒が、前記モノリスを経たガス流の正味の方向に、正方形、長方形、または円形を有するモノリスまたは微粒子フィルタの形をとる、請求項1から4または32から52のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項54】
前記SCRシステムが、アンモニアスリップ触媒、微粒子フィルタ、および酸化触媒の少なくとも1種をさらに含む、請求項1から4または32から53のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項55】
前記追加の触媒またはフィルタが、前記モノリスを経たガス流の正味の方向に、正方形、長方形、または円形を有するモノリスの形をとる、請求項54に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項56】
前記触媒フィルタが、前記モノリスを経たガス流の正味の方向に、正方形、長方形、または円形を有するモノリスの形をとる、請求項55に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項57】
熱連通している少なくとも2つの平行な壁が、前記ガスの入口流と前記気化器ガス容積との間に位置付けられる、請求項1から4または32から56のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項58】
a.前記ガス流入口システムが、少なくとも1つの排気ガス入口、熱伝達領域、2本の流れダクト、および2つの初期混合ゾーンを含み、前記熱伝達領域は、燃焼機関からの排気ガスから、熱を、前記気化器モジュールに熱連通しておりまたは前記気化器モジュールの一部である少なくとも1つの壁を通して前記気化器モジュール内に伝達するように構成されており、前記排気ガスの流れを前記流れダクトに向けて通過させるガス収集器であって、内部では前記気化器モジュールで発生した前記還元剤が前記触媒に流れる前に前記排気流に進入するガス収集器を含み、前記流れダクトから前記SCR反応器への通路であって、内部では前記少なくとも2本の流れダクトと前記SCR反応器との間に固体板が斜めに取り付けられて、前記混合排気ガスの流れを前記少なくとも2本の流れダクトから前記SCR反応器へと指し向ける通路をさらに含み、前記固体板は、前記触媒の断面全体にわたってほぼ均一な運動量分布および還元剤濃度を提供するように構成され、かつ
b.前記気化器モジュールが、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から気化した還元剤を形成するように構成されたノズルと、少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスによって形成された液滴パターンの形状を制御するように構成されたノズルと、2つの側壁であって、各側壁が、前記気化した還元剤を、前記ガス流入口システム内の初期混合ゾーンに移送する複数の開口を含有する2つの側壁と、前記気化器モジュール内の前記気化した還元剤を含む気化器容積とを含む、
請求項1から4または32から57のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)システム。
【請求項59】
エンジンからの排気中に形成される酸化窒素の量を低減させる方法であって、前記エンジンからの排気ガスを、請求項1から4または32から58のいずれか一項に記載のSCRシステム内に通すことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOxを還元するための、小型選択的触媒還元システム(SCR)であって、高温排気ガスの流れが、尿素を分解してそのアンモニアを含む活性成分にするための熱を提供するシステムに関する。SCR反応器、ガス流システム、および気化器モジュールを含む小型システムについて記述する。SCR反応器は、SCR触媒を含み、ガス流システムおよび気化器モジュールに流体連通している。ガス流システムは、SCR反応器の少なくとも4つの面に隣接して位置付けられ、気化器モジュールを加熱するようにかつ触媒を通してほぼ均一な排気ガスの流れを提供するように構成される。気化器モジュールは、還元剤または還元剤前駆体を含む溶液を気化させるように、かつ還元剤を流れシステムに移送してそこで排気ガスと混合し次いでガスの混合物をSCR触媒中で反応させるように、構成される。小型システムの構成は、500から4500キロワット(kW)のエンジンを使用する現況技術のシステムに比べ、尿素から活性還元剤への分解を増大させる。
【背景技術】
【0002】
煙道ガス中の酸化窒素(NO
x)の選択的触媒還元(SCR)は、国内のおよび国際的な排出法に準拠するよう、多くの産業で世界的に使用される。化石および再生可能燃料の燃焼プロセスで形成された酸化窒素を、アンモニアなどの還元剤で、触媒表面で還元する。酸化バナジウム、イオン交換ゼオライトなどの、様々な触媒が、様々な基材上で使用されてきた。触媒は、種々の配合物に調製することができ、押出し成形されまたは被覆されたハニカム、金属基板など、種々の形で存在することができる。適切な触媒の選択を決定する主な要因の1つは、煙道ガスの温度である。アンモニアは還元剤として好ましいが、気状アンモニアの有害な性質により、アンモニアの直接の使用には問題がある。したがって、取扱いが容易であり、高温の煙道ガス中に注入されたときに分解してアンモニアを形成する物質が、通常は使用される。例えば、尿素水溶液は、140℃よりも高い温度で分解してアンモニアとイソシアン酸(HNCO)とを形成し、さらに分解してアンモニアと二酸化炭素とを形成する。しかし、尿素水溶液からのアンモニアの発生は、比較的ゆっくりしたプロセスである。高温ガス流中の尿素の滞留時間が短過ぎると、反応器の壁面上への沈殿をもたらしまたは触媒表面で悪化し得る。したがって、数メートルの長さの比較的長い注入ダクトが、現況技術のSCR適用例で使用される実際の触媒の上流に、位置付けられる。これらの長いダクトは、典型的には真っ直ぐな管であり、この管の内部を排気が流れ、かつこの管の内部ではインジェクタまたはランスを用いて還元剤が高温ガス流に注入される。
【0003】
上述のSCRシステムは、一般に、発電所などの大型の定置システムで使用されてきた。より小さいSCRシステムは、自動車の適用例で、一般には600kWよりも低いエンジンで使用されてきた。これらの、より小さいSCRシステムは、より低い排気体積に起因して異なるデザインを有し、したがって、より小さい質量流量の還元剤をシステム内に導入する必要がある。最近では、500から4500キロワット(kW)のディーゼルおよびガスエンジンに対する排出規制が、船舶、オフロード、および発電の分野で確立されている。現在、これらのサイズのエンジンに使用されるシステムは、直径が大きい(最大約0.6m)長い排気パイプ(最長約10m)と、排気ガスの流れの中に位置付けられたSCR触媒とからなる。尿素水溶液は、ランスを用いて排気ガス中に直接注入される。尿素はその後、排気ガス流中でアンモニアに変換される。触媒の断面全体にわたって均一なアンモニア濃度パターンを実現するために、流れを、静的混合機によって意図的に擾乱させる。しばしば、アンモニアは、アンモニア注入グリッド(AIG)を経て全排気流中に直接導入され、その後、1つまたは複数の混合機を通過し、次いでSCR触媒に至る。したがって不均等な流れ分布は、部分的に分解した尿素からの沈殿または腐食を導く低温セクションを備えた領域をもたらす可能性がある。これらの尿素の損失は、沈殿した材料が、尿素からアンモニアへの反応に関与することができないので、NOx変換活性の低下ももたらす。
【0004】
空間は、船舶、オフロード、および発電分野の適用例において極めて重要な要因であり、空間の使用は、これらの分野における操作の経済性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、スーパーヨットまたはフェリーは客室空間を失う可能性があり、その直接的な結果として収入がなくなる。大型採鉱掘削機およびトラックは、移動しまたは運ぶことができる荷重を低減させる必要があると考えられ、その結果、同量の材料を移動させるために、追加の掘削を行いまたは追加のトリップを行うことが必要になる。タグボートなどの、ある車両では、機械室に、現況技術のSCR設備を設置するのに必要な空間がない可能性がある。
【0005】
本明細書に記述される小型SCRシステムは、排気後処理システムの広さの制約が以前からその使用の障害になっているサイズを有するエンジンにおいて、SCRプロセスを使用して排気ガス中の酸化窒素(NO
x)のレベルを低減させる際、尿素の使用を可能にする。本明細書に記述される小型SCRシステムの利点の1つは、このシステムが、上述の分野で新しいエンジンと共に使用することができることに加え、既存のエンジンがその排出も低減することができるようにアフターマーケットシステムを設置することも可能になることである。
【発明の概要】
【0006】
ガス流入口システム、気化器モジュール、SCR触媒を含むSCR反応器、およびガス流排気システムを含む、小型選択的触媒還元(SCR)システムについて記述する。ガス流入口システムは、少なくとも1つの排気ガス入口、熱伝達領域、少なくとも2つの初期混合ゾーン、および少なくとも2本の流れダクトを含む。少なくとも1つの排気ガス入口は、排気ガスがエンジンから進入するための1つまたは複数の進入口を含む。熱伝達領域は、燃焼機関からの排気ガスから得た熱を気化器モジュール内に伝達するように構成される。排気ガスによって気化器モジュールへと提供された熱は、気化器モジュール内に導入された尿素またはアンモニア前駆体の溶液の揮発を助ける。熱伝達領域を離れる排気ガスは、気化器モジュールに流体連通している少なくとも2つの初期混合ゾーン内に移動し、そこで還元剤または還元剤の前駆体と混合されて、混合ガスを形成する。気化器モジュールは、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から気化した還元剤を形成するための手段と、気化器モジュール内に気化した還元剤を含む気化器容積と、気化した還元剤および/または還元剤の前駆体をガス流入口システムの初期混合ゾーンに移送するための手段とを含む。気化器モジュールでは、還元剤前駆体が還元剤に変換される。流れダクトは、システム内でのガスの滞留時間を制御する一連のバッフルを含有することができる。流れダクトは、混合排気ガスをSCR反応器の少なくとも3つの面を巡って通すように構成される。流れダクトを通過した後、混合ガスは、このガスがさらに混合される通路に入り、次いでSCR触媒を含有するSCR反応器に流入し、そこでは混合ガスは、SCR触媒の断面の全体にわたってほぼ均一なガス速度および濃度プロファイルを有する。還元剤/還元剤前駆体と排気ガスとの混合物は、SCR触媒中に入る前に、比較的長い滞留時間を有する。SCR反応器は、ガス流入口システムおよび気化器モジュールに流体連通している。システムは、伝統的なSCRプロセスでしばしば使用されるので、アンモニア注入グリッド(AIG)を使用しない。SCR触媒を通過した後、処理された排気ガスは、好ましくは気化器モジュールに熱連通している出口領域に入り、次いでシステムから排気される。処理されたガスの一部を、排気ガスの主流から分離し、気化器モジュールに通すことができる。本発明の好ましい態様の多くを、以下に記述する。均等な構成が企図される。
【0007】
下記の詳細な記述部から、特に添付図面と共に解釈した場合、本発明はより良く理解されることになり、その利点はより明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】小型SCRシステムにおけるガスおよび還元剤の、概略化された流れを示す図である。
【
図2】ガス流入口システムおよび気化モジュールの一部であって、気化モジュールがSCRシステム内に配置されたとき、ガス流入口システムおよび気化モジュールが共に、互いに隣接する壁を含有している状態を示す、小型SCRシステムの実施例の断面図である。
【
図3】ガス流入口システムおよび気化モジュールの一部であって、ガス流入口システムと気化モジュールとの間に単一壁があり、気化モジュールとSCR反応器との間に単一壁がある状態を示す、小型SCRシステムの実施例の断面図である。
【
図4】気化モジュールの一部の実施例を示す図である。
【
図5】実施例のSCRシステムの一部を通る排気流の軌道を示す、片側断面図である。
【
図6】実施例SCRシステムの一部を通る、排気流の軌道を示す図である。
【
図7a-d】実施例SCRシステムを通る排気ガスの、流動する流れを示す、実施例の断面を示す図である。
【
図8】SCR前の未処理のNOx濃度と、異なる排気温度および異なるアンモニア:NOx比(ANR)でのSCR後の変換率の積分パーセントとを表示する、エンジン試験台運転の結果を示す図である。
【
図9】実生活条件下、試験台運転における、エンジンから出た排気ガスからの、触媒の様々な場所でのNOxの変換率パーセントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ガス流入口システム、気化器モジュール、およびSCR触媒を含む、SCRシステムを提供する。いくつかの実施例について、好ましい形態のいくつかと共に記述する。
【0010】
本発明の一態様において、選択的触媒還元(SCR)システムは、ガス流入口システムと、気化器モジュールと、SCR反応器とを含み;
a. ガス流入口システムは、少なくとも1つの排気ガス入口と、熱伝達領域と、少なくとも2つの初期混合ゾーンと、少なくとも2つの流れダクトとを含み、熱伝達領域は、燃焼機関からの排気ガスから、熱を、気化器モジュールに伝達するように構成され;少なくとも2つの初期混合ゾーンのそれぞれは、気化器モジュールと、熱伝達領域から離れた排気ガスとに流体連通しており、かつ気化器モジュールからの気化した還元剤と排気ガスとを混合することによって混合排気ガスを提供するように構成され;少なくとも2本の流れダクトのそれぞれは、SCR触媒を通る混合排気ガスのほぼ均一な流れを提供するように、かつ熱を排気ガスからSCR触媒に伝達する手段を提供するように構成され;ガス流システムは、SCR触媒の少なくとも4つの面に隣接して位置付けられ;
b. 気化器モジュールは、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から、気化した還元剤を形成するための手段と、気化器モジュール内で気化した還元剤を含む気化器容積と、気化した還元剤を、ガス流入口システムの初期混合ゾーンに移送するための手段とを含み;かつ
c. SCR反応器は、SCR触媒を含み、ガス流入口システムおよび気化器モジュールに流体連通している。
【0011】
熱伝達領域は、ある構造を含んでおり、この構造は、排気ガスの流れを、この構造と、気化器モジュールに熱連通しておりまたは気化器モジュールの一部である壁との間に、通すように構成されている。
【0012】
構造は、排気ガスの流れが、この構造と、第1の壁との間を通るようにさらに構成することができ、この第1の壁は、気化器モジュールに熱連通しておりまたは気化器モジュールの一部であり、1つまたは複数の開口を含んでおり排気ガスが壁に沿って通った後にその開口の内部を排気ガスが通過するものである。
【0013】
構造は、排気ガスの流れが、この構造と、壁との間を通るように構成することができ、この壁は、気化器モジュールに熱連通しておりまたは気化器モジュールの一部であって、少なくとも2つの初期混合ゾーンのそれぞれに構造を接続する通路の一部を形成するようになされている。
【0014】
ガス流入口システムは、2つの初期混合ゾーンと2本の流れダクトとを含むことができる。
【0015】
気化器モジュールは、還元剤または還元剤の前駆体の溶液が内部を通過する少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスを含み、好ましくは、少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスはノズルである。気化器モジュールは、少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスによって形成された液滴パターンの形状を制御するように構成された、少なくとも1つの追加のノズルをさらに含むことができる。
【0016】
排気ガスは、SCR触媒を通過した後、気化器モジュール中のガスと熱接触している第2の壁に接触することができる。
【0017】
ガス流入口システムは、気化器モジュールに熱連通している少なくとも1つの壁を含む。ガス流入口システムは、気化器モジュールに直接熱連通している少なくとも1つの壁を含むことができる。「直接熱連通」という用語は、熱伝達特性を有する単一壁が、ガス流入口システムを気化器モジュールから分離することを意味する。壁が気化器モジュールと熱連通している場所の例には、直接熱連通している壁、ならびに少なくとも1つの第2の壁を通して熱連通している壁が含まれ、2つ以上の壁の間で熱伝達を行う1種または複数の材料の使用を含む。ガス流入口システムは、気化器モジュールに直接熱連通している2つの壁を含むことができる。
【0018】
気化器モジュールは、排気ガスに熱連通している少なくとも1つの壁を含むことができる。いくつかの実施例では、気化器モジュールは、排気ガスに直接熱連通している1つの壁を含む。その他の実施例では、気化器モジュールは、排気ガスに直接熱連通している2つの壁を含む。
【0019】
ガス流入口システムは、流れダクトのそれぞれを触媒に接続する通路をさらに含むことができる。通路は、少なくとも2本の流れダクトからの混合排気ガスの流れを、SCR反応器のSCR触媒へと指し向ける手段であって、触媒の断面全体にわたって還元剤のほぼ均一な濃度を提供するように構成された手段を含むことができる。好ましくは、SCR反応器内の少なくとも2本の流れダクトから混合排気ガスの流れをSCR触媒へと指し向ける手段は、少なくとも2本の流れダクトとSCR触媒との間の接続通路内に斜めに取り付けられた固体板を含む。
【0020】
少なくとも2本の流れダクトは、SCR触媒の周りに排気ガスの流れを分配するよう構成することができ、流れダクトは、SCR触媒に熱連通している。
【0021】
好ましくは、流れダクトのそれぞれの内部のガスの流れは、ほぼ均等である。
【0022】
好ましくは、流れダクトの少なくとも1本は、SCR触媒の第1の面に位置付けられ、少なくとも1本の異なる流れダクトは、SCR触媒の反対側に位置付けられる。
【0023】
流れダクトは、好ましくは、触媒の上流に排気ガスの均一な運動量分布を提供するようにかつ混合排気ガスの滞留時間を延ばすように、位置付けられかつ向きが定められた、バッフル板を含む。
【0024】
SCRシステムは、尿素またはアンモニア前駆体の導入を制御するための手段をさらに含むことができる。尿素またはアンモニア前駆体の導入を制御するための手段は、NOxセンサを含むことができる。
【0025】
SCR触媒は、モノリスまたは微粒子フィルタの形をとることができる。モノリスまたは微粒子フィルタは、モノリス内のガス流の正味の方向に、正方形、長方形、または円形を有することができる。SCR触媒が微粒子フィルタの形をとる場合、触媒形態は、選択的触媒還元フィルタ(SCRF)として公知である。
【0026】
SCRシステムは、微粒子フィルタ、酸化触媒、アンモニアスリップ触媒、SCR被覆付き微粒子フィルタなど、1つまたは複数のその他の排気ガス後処理デバイスを含むこともできる。好ましくは、アンモニアスリップ触媒は、SCR触媒の下流に配置され、その結果、特に高い排気ガス温度で、NO
xのより高い変換効率が得られる。
【0027】
熱連通している少なくとも2つの平行な壁は、ガスの入口流と気化器ガス容積との間に位置付けることができる。
【0028】
選択的触媒還元(SCR)システムは、ガス流入口システムと、気化器モジュールと、SCR触媒とを含むことができ;
(a)ガス流入口システムは、少なくとも1つの排気ガス入口、熱伝達領域、2つの初期混合ゾーン、および2本の流れダクトを含み、熱伝達領域は、燃焼機関からの排気ガスから、熱を、気化器モジュールに熱連通しておりまたは気化器モジュールの一部である少なくとも1つの壁を通して気化器モジュール内に伝達するように構成され、かつ熱伝達領域は、プリズム形状を有する構造を含み、プリズム形状を有する構造の一部は、少なくとも2つの初期混合ゾーンを含有する2本の流れダクトのそれぞれに排気ガスを指し向けるよう、構造と、SCRシステムの壁との間に排気ガスの流れを通す1つまたは複数の穴を含み、ガス流入口システムは、流れダクトのそれぞれを触媒に接続する通路をさらに含み、通路は、少なくとも1本の流れダクトとSCR触媒との間の通路内に斜めに取り付けられた固体板を含んで少なくとも2本の流れダクトからの混合排気ガスの流れをSCR触媒へと指し向け、固体板は、触媒の断面全体にわたって還元剤のほぼ均一な濃度を提供するように構成され;
(b)気化器モジュールは、還元剤または還元剤の前駆体の溶液から気化した還元剤を形成するように構成されたノズルと、少なくとも1つのエアロゾル形成デバイスによって形成された液滴パターンの形状を制御するように構成されたノズルと、2つの側壁であって、各側壁が、気化した還元剤を、初期混合ゾーンを通してガス流入口システムの流れダクトの排気ガス中に移送する、1つまたは複数の開口を含有する2つの側壁と、気化器モジュール内で気化した還元剤を含む気化器容積とを含み、
(c)SCR反応器は、SCR触媒を含み、かつガス流入口システムおよび気化器モジュールに流体連通している。
【0029】
本発明の別の態様において、エンジンからの排気中に形成される酸化窒素の量を低減させる方法は、エンジンからの排気ガスを、本明細書に記述される様々な構成要素を有するSCRシステム内に通すことを含む。
【0030】
システムの構成は、500から4500キロワット(kW)のエンジンと共に使用される現況技術のシステムと比較して、より長い滞留時間を可能にし、したがって還元剤前駆体のより良好な分解効率を可能にする。さらに、本明細書に記述されるシステムは、さらに小さいフットプリントを有する。
【0031】
以下の記述は、選択的触媒還元(SCR)システムの、様々な実施例の構成の詳細を提供する。
【0032】
システムは、排気ガス中のNO
xのレベルを低減させるよう反応することができる反応物、好ましくはアンモニアを提供する。反応物は、尿素などのアンモニアを形成することができる化合物を、気相中の反応物に変換し、反応物を含有するガスとNO
xを含有する排気ガスとを合わせ、次いで合わせたガスをSCR触媒中に通すことによって、形成することができる。尿素をアンモニアに変換するために、尿素の水溶液を気化器モジュールに注入し、排気からの熱を、少なくとも1つの壁を通して気化器モジュールに伝達し、そこで水と尿素が共に揮発して高温蒸気として存在するようになる。高温清浄化ガスは、アンモニアと排気ガスとの混合物がSCR触媒を通過した後に形成された清浄化ガスから得ることができ、尿素の溶液を気化するのに使用される。
【0033】
本明細書に記述される装置およびプロセスは、尿素の場合に効果的であるが、加熱によって反応物ガスを形成することが可能な、その他のNO
x還元試薬、アンモニア形成またはその他のNO
x還元試薬を利用することができる。生ずる反応は、当技術分野で周知である。これらの反応の概要は、参照によりそのそれぞれの全体が組み込まれる米国特許第8,105,560号および第7,264,785号に記載されている。
【0034】
「尿素」という用語は、加熱されるとアンモニアおよびHNCOを形成することから、尿素、CO((NH
2)
2)、および尿素と均等な試薬を含むことを意味する。当技術分野で公知のその他のNO
x還元試薬を使用することもできる。尿素またはHNCOを形成せずに、排気ガス中に存在する化合物と反応してNO
xのレベルを低減させる、NO
x還元試薬を使用することができる。
【0035】
気化器モジュールに導入された尿素溶液の体積は、NO
x質量流と溶液中の尿素の濃度との両方に依存する。導入された尿素の量は、関与する反応の化学量論に基づくNO
x濃度、未処理の排気ガスの温度、および使用される触媒に関係する。使用される尿素の量は、処理されるガス中のNO
x中の窒素の当量に対する、尿素中の窒素またはその他のNO
x還元剤の相対当量を指す、「NSR」に関係する。NSRは、約0.1から約2に及ぶことができるが、好ましくは0.6から1.2を含めた範囲内にある。
【0036】
本明細書に記述される小型SCRシステムに使用されるSCR触媒は、アンモニアの存在下で酸化窒素の濃度を低減させることができる、当技術分野で公知のものから選択することができる。これらには、例えば、ゼオライトと、バナジウム、タングステン、チタン、鉄、銅、マンガンおよびクロムの酸化物と、貴金属、例えば白金族の金属、白金、パラジウム、ロジウム、およびイリジウムと、これらの混合物が含まれる。当技術分野で従来からの、および当業者に馴染みのある、その他のSCR触媒、例えば活性炭、木炭、またはコークスも、利用することができる。好ましい触媒には、遷移金属/ゼオライト、例えばCu/ZSM−5またはFe/Beta;バナジウムをベースにした触媒、例えばV
2O
5/WO
3/TiO
2;または非ゼオライト遷移金属触媒、例えばFe/WO
x/ZrO
2が含まれる。
【0037】
これらのSCR触媒は、典型的には、金属、セラミック、ゼオライトなどの担体上に取り付けられ、または均質なモノリスとして押出し成型される。当業者で公知のその他の担体を使用することもできる。触媒は、フロースルーモノリス基材上、フィルタ基材上に、または押し出された形の内部に被覆されることが好ましい。最も好ましくは、触媒は、フロースルーモノリス基材上にまたは押し出された形の内部に被覆される。これらの触媒は、ハニカムフロースルー担体の内部または上に存在することが好ましい。小容積のSCRシステムでは、比較的高いセル密度を持つSCR触媒が好ましく、例えば平方インチ当たり45から400セル(cpsi)、より好ましくは70から300cpsi、さらにより好ましくは100から300cpsiである。
【0038】
ガスおよび還元剤の概略化された流れを、
図1に示す。小型SCRシステムは、4つの主なセクション:ガス流入口システム、気化器モジュール、SCR触媒、およびガス流出口システムを含む。ガス流入口システムは、入口領域、入口熱伝達領域、流れダクト、および予備SCR領域を含む。ガス流出口システムは、任意選択で、1つまたは複数の出口熱伝達領域、および清浄ガス出口を含む。
【0039】
図2は、ガス流システムおよび気化器モジュール6の一部を示す、小型SCRシステム2の片側断面図を示す。小型SCRシステムは、約500kWから約1000kW(1MW)の間、または約1000kW(1MW)から約2000kW(2MW)、または約2000kW(2MW)から約4500kW(4.5MW)を生成するエンジンから排気ガスを受容することができる。
図2は、エンジンの排気ガスが、単段エンジン用の単一進入口フランジとすることができる入口フランジ1を通して、SCRシステムに流入している実施例を示す。
【0040】
2段エンジンまたはその他の燃焼機用の2つ以上の進入口を使用することができる。典型的には、好ましい流れパターン用に、管/フランジのようなシステムへの丸い進入口が使用されると考えられるが、正方形、長方形、三角形、または楕円形のようなその他の形状を使用してもよい。ガス流システムの入口領域に進入すると、高温排気ガスはガス収集器8に衝突し、入口熱伝達領域で熱交換機として機能する壁71に沿って流れる。
図2に示されるガス収集器8は、プリズム形状を有する。ガス収集器8は、異なる形状を有することができる。この熱伝達領域を過ぎた後、ガスは、1つまたは複数の開口を含むガス収集器8の部分8a内を流れ、この開口によって、ガスは、ガス収集器内を通過して、ガス収集器8とSCRシステムの外壁との間にあるガス収集器8の内側領域に至ることが可能になる。ガス収集器8の内側から、排気は少なくとも2本の流れダクト内に分配され、さらに、小型SCRシステムの他の面に位置付けられた初期混合ゾーン内に入る。初期混合ゾーンでは、エンジンからの排気ガスが、気化器モジュールからの気化した還元剤と混合される。小型SCRシステムは複数の排気進入口1を含み、ガス流入口システムは、圧力および/または温度などの、流れ同士の間の差を平衡にする。
【0041】
気化器モジュール6は、2枚の高温プレートの間に尿素の水溶液を注入するための手段を含む。2枚の高温プレートの間の容積は、気化器ガス容積62である。尿素の水溶液は、沈殿またはその他の問題なしに、貯蔵し取り扱うのに適切な濃度で維持される。水溶液中の尿素の濃度は、約5から70%、好ましくは約15から約60%、より好ましくは約30から約40%に及ぶことができる。尿素の水溶液を注入するための手段は、尿素溶液の噴霧形成(予備蒸発)のために空気を使用するノズルを含むことができる。このタイプのノズルは、いくつかの供給元から市販されている。500から4500kWの間のエンジンサイズの場合、尿素と共に使用することができる市販のノズルは、比較的小さい圧縮機により供給することができる低圧の気化空気しか必要としない。
【0042】
気化器モジュール6には、エアレスノズルを取り付けることができる。500から4500kWの間のエンジンの排気を清浄化するために必要な、現在利用可能な尿素質量流用の1相エアレスノズルは、1回の動作サイクルで様々な質量スループットで動作するように非常に高い液体圧力を必要とする。しかしノズル製造業者は、適合可能な質量スループットを持つ低圧1相ノズルを研究開発している。エアレスシステムは、より少ない構成要素を有するので、より低い投資および運転コストを有することができ、システム故障のより低い潜在性を有する可能性がある。エアレス注入システムは、船舶、発電、採鉱などの、空間が制限され、かつ長い保証期間(例えば、2年以上)が要求され、エンジンが高い年間利用(例えば、毎年8000時間)を有する小型SCRシステムに、特に魅力的と考えられる。その他のタイプのアトマイザを使用することもできる。
【0043】
水の完全蒸発および尿素からアンモニアへの分解に必要な熱は、排気ガスと気化器ガス容積62との間での、1つまたは複数の壁71〜74の熱交換機能を通して、排気ガスからの熱を伝達することによって供給される。
【0044】
気化器モジュールは、少なくとも1つの壁を含有し、予熱された2次気化空気を使用することができる。予熱された2次気化空気は、ノズルから噴出された尿素溶液に影響を及ぼすのに使用されてもよい。したがって、排気ガス中の尿素およびアンモニアまたは別の還元剤の分配を制御しかつ/または調節する手段が提供され、したがって、水性尿素の蒸発/分配時間の制御が行われ、したがって、最も低い可能性のアンモニアスリップで最も高い可能性のNOx還元を実現する可能性が提供される。
【0045】
上述のSCRシステムは、以下に記述するように修正して、2組の2重壁71、73と72、74を2つの単一壁に代えることができる。ある実施例では、
図3に示す2つの壁71、72のそれぞれは、ガス流システムの一部である。別の実施例では、
図3に示す2つの壁71、72のそれぞれは、気化器モジュールの一部である。
【0046】
図4は、加圧された1次気化空気の助けを借りて、商用のノズル61内で尿素水溶液が霧状にされている、SCRシステムの一部を示す。1次気化空気は、還元剤を含有する溶液を液滴に変換するのに使用される空気である。僅か数百ミリバールから数バールの圧力が、様々な質量スループットであっても数十ミリメートルから数十マイクロメートルの直径の液滴を得るのに十分である。したがって、回転式ピストンファン、側面チャネル送風機などの小型デバイスは、現況技術の設置において現在使用されるような大型圧縮機よりも使用することができる。加圧空気は、液滴により形成される所望の噴霧プロファイルを形成する際に、2次気化空気として使用することもできる。2次気化空気の一部は、2つの個別のノズル63を通して1次水性尿素噴霧内に吹き付けることにより、高い熱および質量伝達表面に関して平らな噴射までの噴霧プロファイルを長くすることができる。気化器ガス容積62内の低噴霧/蒸気速度および比較的高い温度により、尿素からアンモニアおよびイソシアン酸への完全なまたはほぼ完全な熱分解が予測される。さらに、水蒸気(尿素水溶液中の水の揮発から形成された)の非常に高い局所濃度と、気化器ガス容積62内に希薄排気ガスが存在しないことに起因して、尿素は、初期混合ゾーン内で排気ガスと混合される前にイソシアン酸に素早く加水分解すると予測される。気化器モジュール6内の数ミリバールの小さい過圧は、オリフィス65を介した還元剤および付随する副生成物ガスの、SCR反応器の両側にある2本の流れダクト11および12に至る一定の安定した流れをもたらす。
【0047】
2次気化器空気も、壁から噴霧中への熱伝達を増大させるために、気化器ガス容積62内に渦流が創出されるよう、少なくとも1つ、好ましくは2つ以上のノズル64を通して長方形の気化器ダクトに供給することができる。2次気化空気は、ノズル63および64に指し向けられる前に加熱することができる。加熱は、任意の公知の手段によって、好ましくは電気的に、より好ましくは壁71および72に位置付けられた管式熱交換機を通過する排気ガスによって、行ってもよい。熱交換機の管は、壁71および72の表面積がごく小さい割合で遮断されるように、それと共に2次気化空気流への必要な量の熱伝達が可能になるように、配置構成される。2次気化空気流の総質量流および圧力は、所望の噴霧延長パターンおよび所望の渦流パターン、ならびに気化器モジュール6内の所望の圧力および温度によって決定される。気化器モジュール6は、噴霧の方向を定めるように向けられたバッフル板を含むこともできる。気化器モジュールの壁および/またはバッフル板は、還元剤前駆体の加水分解のため触媒活性を提供することもできる。気化器モジュール6は、低グレードの還元剤溶液を使用すべき場合、清浄化のため小型SCRシステムから容易に取り外すことができるよう、スライドインモジュールとすることができる。気化器モジュール6は、小型SCRシステムの一部とすることができ、その場合、壁71および72は、排気ガスを、気化器モジュール6内のガス容積62から分離する。
【0048】
図5は、排気ガスの流れを、例示的な構成において側面で示す。
図5の右側に示されるガス流の部分は、以下に記述するように、入口領域を通る流れを示す。エンジンからの高温排気ガスは、入口フランジ1を経て小型SCRシステムに流入する。システムに進入したら、ガス流はガス収集器8に衝突し、熱交換機として働く角度の付いた壁71を含んだ入口熱交換機セクションに沿って、入口熱伝達領域に流入する。2次気化空気を加熱するための熱交換機管は、この壁に位置付けることができる(
図5には示されていない)。
図5に示されるガス収集器8は、プリズム形状を有する。ガス収集器8は、異なる形状を有することができる。この入口熱伝達領域を通った後、ガスは、通過させる1つまたは複数の開口を含んだプリズム形状のガス収集器8の部分8a内に流れるが、この開口によって、ガスは、ガス収集器を通過してガス収集器8とSCRシステムの外壁との間にあるガス収集器8の内側領域に入ることが可能になる。ガス収集器8の内側から、排気が少なくとも2本の流れダクト内に、さらに小型SCRシステムの他方の面に位置付けられた初期混合ゾーン内に、次いでSCR反応器の両側にある流れダクト11および12内に分配される。排気ガスは、還元剤が気化器モジュールから1つまたは多数の開口65を経て流れダクト11、12に移送される排気流ベンドに位置付けられた、初期混合ゾーン内の排気ガスに還元剤が進入する前に、排気ガスの移行時間が長くなるように向きが定められた一連のバッフル板24、25内を流れることができる。還元剤導入前の、長い排気ガス移行時間は、NOxセンサが還元剤投与量の制御のために使用される場合、およびこのNOxセンサが小型SCRシステムの一部である場合(
図7aの符号81参照)、有益である。アンモニア含有ガスが導入される前の排気ガス移行時間は、排気ガスが小型SCRシステムの後部に移行し次いで元の正面に戻り再び後部に移行するときにガス流を調節する、排気ダクト内の一連のバッフル板によって、長くすることができる。「正面」という用語は、注入モジュールが位置付けられているシステムの面を指す。「背面」という用語は、システムの正面の反対側を指す。排気ガスが第2の折り返し部を通るとき、気化器モジュール6からのアンモニア含有ガスは、気化器モジュールの1つまたは複数の開口64を経て排気中に進入する。流れベンド内のガス流の乱流は、ガス流領域の一部である混合ゾーン内での還元剤と排気ガスとの混合を効果的に容易にする。バッフル板は、ほぼ水平に位置決めすることができる。
【0049】
ガス流領域は、入口領域を通過したエンジンからの排気ガスが、気化器モジュールからの気化した還元剤と混合される初期混合ゾーンと、予備SCR領域に進入する前に排気ガスおよび還元剤の混合物が内部を流れる流れダクト11および12とを含む。流れダクトは、SCR触媒の周りに位置付けられ、熱をSCR触媒に伝達する。
図6および7は、流れダクトがSCR触媒の側面に位置付けられた実施例を示す。流れダクトは、SCR触媒の上方および下方に行くことができる。流れダクトは、1つまたは複数の面、およびSCR触媒の上方/下方に位置付けることができる。静的混合機91および/または酸化触媒92は、
図5に示すように、SCR触媒の前に、排気流れダクト内に配置することができる。流れダクトの長さを移行した後、各流れダクト11および12内の流れの方向は、90°回転し、予備SCR領域の2本の流れダクト11および12の間にある、接続通路31内に位置付けられた角度の付いた流れ板23へと指し向けられるが、この板は、触媒の断面全体にわたって均一な運動量分布を実現するためにSCR触媒の上流に位置付けられている。流れダクト11および12のそれぞれにおけるガス流は、ほぼ均等である。ほぼ均等とは、例えば2本の流れダクトを有するシステムでは、質量流量が約50:50から約65:35、好ましくは約50:50から約60:40、より好ましくは約50:50から約55:45に及ぶことを意味する。複数の流れダクトにおける質量流量の比は、SCR触媒の断面全体にわたってアンモニアまたはその他の還元剤の均一な濃度を提供するように、調節されるべきである。
【0050】
図6は、小型SCRシステムの好ましい例示的な構成におけるガス流を示し、SCRシステムは、正面から背面へと半分に切断された状態が示されている。高温排気ガスは、SCRシステムの底部の入口フランジを経て小型SCRシステムに進入する。ガスは、入口熱伝達領域の、入口と気化器モジュールとの間の、ガス収集器(8)と壁71との間を上向きに流れ(a);次いでガスは、ガス収集器8の表面の開口8a内およびガス収集器8の内部容積(b)内を流れ、そこでは開口(c)を経てSCRシステムの両側にある流れダクト11および12に分配される。一実施例では、その後ガスは上向きに流れ(d)、SCRシステムの長さに沿って(e)から(f)まで一連のバッフル板を供える流れダクトを通り、そこで曲がってシステムの元の正面に戻るように流れ、還元剤の導入および初期混合ゾーン65に向かう(
図6には示しておらず、
図5参照)。初期混合ゾーンでは、エンジンからの排気ガスを、気化器モジュールからの気化された還元剤と混合する。混合ガスは、システムの後部に流れ、90度曲がって、少なくとも2本の流れダクトと予備SCR領域との間の接続通路に入り、次いで板23に衝突する。混合ガスを、角度の付いた流れ板23を横断するように指し向け、したがって角度の付いた流れ板23の位置および向きは、SCR触媒3に向かうかなり均一なガスの流れ(h)を提供するようになる。
【0051】
図7は、システム内の排気ガスの流れを示す、SCRシステムの実施例のいくつかの3次元図面を示す。エンジンからの高温排気ガスは、入口1を経てシステムに進入し、次いでガス収集器8と壁71(気化器モジュール6に隣接して位置付けられる)との間を上向きに移行する。高温排気ガスは、熱を壁71に伝達し、次いで熱を気化器モジュール6内に伝達する。ガス収集器8の内部容積では、ガス流が2つの部分に分割され、システムの左側および右側に位置付けられた2本の流れダクト11および12に分配される。これらのダクトはいずれも
図7aに示されていない。
図7bは、SCRシステムの切欠き図を示し、流れダクト12の右側の壁は、流れダクト12の内部容積が示されるように除去されている。ガス収集器8から、排気が流れダクト12に流入し、後部に至り、元の正面に戻り、そこではアンモニアが、気化器モジュールの開口65を経て排気に進入し、その後、混合ガスは再び後部に至り、接続通路31を経て予備SCR領域7に入る。
図7cは、
図7bから180度回転させたシステムを示し、流れダクト11の一部を示す。静的混合機および/または酸化触媒は、流れダクト11および/または12内に存在することができる。
図7bおよび7cは、酸化触媒92が流れダクト内に位置付けられている実施例を示す。
図7dは、流れダクト12を通るガスの、概略化された流れを示す。排気ガスが流れダクト11および12内を流れるにつれ、排気ガスからの熱は流れダクトの壁を通して伝達され、この熱の一部は、触媒と、触媒を取り囲む領域とに伝達される。
図7dにおいて、図示される流れの終わりは、接続通路31に進入する流れと共に生ずる。接続通路31に進入した後、排気ガスは、角度の付いた流れ板23に接触し、予備SCR領域を経てSCR触媒3に向かって指し向けられる。触媒3を通過した後、ガスは清浄化され、清浄化された排気ガスは、壁72(気化器モジュール6の壁に隣接して位置付けられ、または気化器モジュール6の壁である)に沿って上向きに移行する。高温清浄化排気ガスは、熱を壁72に伝達し、次いで熱を気化器モジュール6に伝達する。次いでガスは上向きに流れ、出口フランジ4を経た後にSCRシステムから離れる。
【0052】
SCR触媒は、SCRシステム内に位置付けられる。本明細書で使用される「〜内」という用語は、SCR触媒が、ガス流入口システム、気化器モジュール、およびガス流出口システムであってSCR触媒の少なくとも4つの面に位置付けられたものを有することを意味する。
【0053】
触媒は、好ましくは煉瓦の形をとり、
図6および7aおよび7cに示されている。SCR触媒の煉瓦は、正方形、長方形、六角形、および円形を含めた、ガス流の方向に直交するいくつかの断面形状のいずれかを有することができ、正方形または長方形が、断面積のより高い利用率に関しては好ましい。好ましくは正方形でありかつ約150×150mm
2の断面を有する複数のSCR触媒の煉瓦を、使用することができる。触媒のいくつかの層を、ガス流中に配置することができる。SCR触媒に加え、SCRシステムは、微粒子フィルタ、アンモニアスリップ触媒、酸化触媒、および被覆付き微粒子フィルタなど、その他の排出制御デバイスを含むことができる。
【0054】
SCRシステムは、SCR活性を低下させ得る炭化水素が低減されるように、各流れダクト内で尿素入力点の上流に位置付けられた酸化触媒を、さらに含むことができる。酸化触媒は、CO、芳香族なども酸化する。
【0055】
排気ガスが触媒3を通過するとき、排気ガス中のNOxは、触媒表面で還元剤と反応し、排気ガス中のNO
xの量は低減する。NOxレベルを低減させるに際してSCR反応を有効にするには、ガス化した尿素を含む燃焼ガスの温度を、少なくとも約100℃、典型的には約180°から約650℃の間、好ましくは少なくとも約250℃よりも高くすべきである。触媒の組成は、形態、および特に体積は、SCR触媒中のガスの温度、ならびに酸化窒素の触媒還元で還元を行うためのNOx負荷に基づいて選択することができる。アンモニアスリップ触媒、微粒子フィルタ、およびSCR、SCR被覆付き微粒子フィルタなどのその他の排気ガス清浄化デバイスも、小型SCRシステムで使用することができる。好ましくは、小型SCRシステムは、伝統的なSCRプロセスでしばしば使用されまたは必要とされるようなアンモニア注入グリッド(AIG)を、使用しない。
【0056】
小型SCRシステムは、触媒を交換するためSCR触媒に接触する手段をさらに含むことができる。好ましくは、その手段は、SCRシステムの上部または側面に位置付けられたドアである。
【0057】
小型SCRシステムは、1つまたは複数のNOxセンサ、NH
3(アンモニア)センサ、および温度センサなどの、様々なセンサをさらに含むことができる。NH
3センサは、SCRシステムを経たアンモニアスリップを測定するために、好ましくはSCRシステムの出口に配置されると考えられる。NOxおよび/またはNH
3および/または温度センサは、気化器モジュールに移送されかつその後に排気ガスに移送される、尿素および気化空気、および適用可能な場合には清浄なガスの量を、制御するユニットに連結することができる。NOxセンサ81は、任意選択で温度センサとして、排気ガス流入口システムに、好ましくはガス収集器8内に位置付けることができる。NOxまたはNH
3センサは、SCR触媒の下流41に位置付けることができ、閉ループ制御で使用することができる。角度の付いた、または曲がったバッフル板は、清浄ガスの中心の流れの部分流を、NOxまたはNH
3センサへと指し向けることにより、NOxまたはNH
3レベルを測定して、SCR触媒を経るアンモニアスリップの量を決定することができる。
【0058】
小型SCRシステムは、500から4500kWの電力を有する単段または2段(例えば、Vシリンダ)エンジンからの排気ガスを通過させる、1つまたは2つの入口フランジを含むことができる。好ましくは、フランジは円形である。
【0059】
図7に示す構成を持つSCRシステムを、実生活条件下での試験台運転で評価した。試験をしたSCR触媒は、4×4平方(150×150mm
2)の押出し成型されたバナジア触媒であって、それぞれ長さが300mmであるものを使用し、この場合、2×2の触媒の煉瓦が、金属シートおよびマットを用いたキャニングの際に組み合わされた。気化器モジュールは、2相ノズル(空気支援型)を使用し、空気を4バールで、約1Nm
3/時の消費量で使用した。システムは、アンモニア:酸化窒素の比(ANR)が0.8、0.9、1.0、および1.1で試験をした。
【0060】
SCRシステムを、Mercedes OM512エンジン(排気量16L)430kWに接続した。ターボ後の排気温度は430〜510℃であった。時間に対して異なるアンモニアとNOxとの比で出口フランジ後に測定されたNOx変換率を、
図8に示す。これらの値は、局所NOx変換率が測定されたときからの実際の測定値である。
【0061】
触媒全体にわたる様々な場所でのNOxの変換率を、ターボ後の排気温度である490℃を使用して、排気の質量流1200kg/時で決定した。NOx原材料の濃度は1500ppmであり、アンモニア:酸化窒素の比(ANR)は1.1であった。SCR後の局所NOxを測定し、したがって各触媒煉瓦層の中心でのNOx変換率を、反応器の底部から測定して7、22、37、および52センチメートルの高さで決定した。高さのそれぞれで、触媒断面の左から右に5、15、25、35、45、55、および65センチメートルで、触媒の幅の端から端まで測定を行った。この結果、測定は、7×4(幅×高さ)グリッドで行った。これらの点のそれぞれでの変換率パーセントを
図9に示す。
【0062】
図9は、試験台運転における、エンジンの排気ガスからの、触媒上の様々な場所でのNOxの変換率パーセントを示す。これらの結果は、触媒の全断面のほぼ定量的な利用を、上述の構成を使用して実現できることを示す。非常に高いNOx変換率は、定置式エンジン動作点を使用して、ならびに本発明が目標とするエンジン出力範囲内で設計され試験された小型SCRシステムを用いた過渡試験サイクル内で、実現された。
【0063】
触媒全体にわたる均一な排気流は、触媒の等化利用をもたらし、最大NOx変換率を提供する。排気はSCR触媒を通過し、そこでのNOxのレベルは、触媒の存在下での還元剤との反応によって減少するようになり、清浄化ガスが形成される。SCR触媒から出て行く清浄化ガスは、ガス流出口システムに進入し、ガスの一部または全てが、ガス流出口システムと、出口熱伝達領域にある気化器モジュール6との間の壁72に接触し、清浄化ガスからの熱は、気化器モジュールに伝達される。出口熱伝達領域を通過した後、ガス流出口システム内の清浄化排気ガスは、小型SCRシステムを離れる。
【0064】
上記説明は、当業者が本発明を実施できるようにするものである。説明を読むことによって当業者に明らかにされる、可能性ある修正例および変形例の全てを詳述するものではない。しかし、そのような修正例および変形例の全ては、上記説明からわかる、かつその他の点については下記の特許請求の範囲により定義される、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】