特表2017-512941(P2017-512941A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-512941閉ループプロセスからの非凝縮性ガスの除去
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  • 特表2017512941-閉ループプロセスからの非凝縮性ガスの除去 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-512941(P2017-512941A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】閉ループプロセスからの非凝縮性ガスの除去
(51)【国際特許分類】
   F01K 25/10 20060101AFI20170421BHJP
   F25B 43/04 20060101ALI20170421BHJP
【FI】
   F01K25/10 J
   F25B43/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-503762(P2017-503762)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】SE2015050368
(87)【国際公開番号】WO2015152796
(87)【国際公開日】20151008
(31)【優先権主張番号】1400182-0
(32)【優先日】2014年4月4日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】1400349-5
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516298227
【氏名又は名称】クリメオン・エイビイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アールボム,エスコ
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA01
3G081BB04
3G081BC00
3G081BD00
(57)【要約】
閉ループ電力生成プロセス又はヒートポンプシステムから、非凝縮性ガス、特に空気を排出できる構成及び方法を開示する。作動流体が吸収又は凝縮される容器は、弁によって上記電力生成プロセスから分離できる。CO2、空気等の非凝縮性ガス、水、及びアミン類を含むアルカリ材料を含む残留ガスは、上記容器内の液位の上昇によって圧縮され得る。同時に発生する圧力の上昇は、アルカリ材料によるCO2の選択的吸収を引き起こす。より簡潔な実施形態では、1成分又は2成分プロセスから主に空気が除去される。圧縮の後、非凝縮性ガスを、任意にフィルタを通して通気させてよい。本方法は、真空ポンプを省略できるため、簡潔かつ経済的である。本方法は、いずれの電力生成及びランキンサイクルに関して有用であり、特にC3又は炭素キャリアサイクルとして知られる電力生成プロセスに関して有用である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインプロセスから非凝縮性ガスを除去するための方法であって、
前記メインプロセスは、作動流体と、前記作動流体の吸収又は凝縮のための少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)との使用を含む、閉ループ熱力学サイクルから本質的になり、更に以下のステップ:
a)前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)に、ガス及び吸収用液体を充填するステップ;
b)弁(2、3、4、5)を閉鎖することによって、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)を、前記メインプロセスから分離するステップ;
c)前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の吸収用液体の液位を上昇させることによって、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内のガス圧を上昇させるステップ;
d)空気等の1つ又は複数の前記非凝縮性ガスを含む、1つ又は複数の過剰なガスを、弁(1)及び弁(21)を開くことによって、ライン(23)を通して放出するステップ;
e)好ましくは、1つ又は複数の前記非凝縮性ガスをより効果的に除去するために、前記ステップc)及び前記ステップd)を少なくとも1回繰り返すステップ;
f)前記ステップa)〜d)を繰り返すステップ
を含む、方法において、
前記方法は:
前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)からの、1つ又は複数の前記非凝縮性ガスの放出の開始時点において、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ内の圧力は、メイン吸収又は凝縮容器(50)内の圧力より少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは150%も高くなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記閉ループ熱力学サイクルは:蒸気、又は水、アルコール類、ケトン類、エステル類、パラフィン類、フッ化溶媒からなる群から選択される溶媒を使用するランキンサイクル;C3熱力学サイクル;及び少なくとも部分的に真空下で動作する有機ランキンサイクルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)を、完全に機能性の吸収又は凝縮チャンバ(7)として使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
内部で利用可能なプロセス圧力及び流体の流れを使用して、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の前記吸収用液体の液位を操作することを特徴とし、
凝縮された前記作動流体の温度は、前記メイン吸収又は凝縮容器(50)内においてよりも前記吸収又は凝縮チャンバ(7)内において低くなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の前記吸収用液体の液位を操作するために使用されるポンプ(13又は20又は24)を更に設けることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
酸素、窒素、アルゴン以外のガスに対して本質的に非透過性のダイヤフラム又は膜を、例えば副次的容器(22)内で使用することにより、プロセスガス、特にCO2と、揮発性溶媒及びアミンとの損失を回避することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
揮発性アミン、及び/又はアセトン、イソプロパノール、等を含む溶媒が、環境へと入るのを、コールドトラップ又はフィルタ又はガス集塵機又は燃焼/火炎生成ユニットを使用して防止することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記非凝縮性ガスの除去を、例えばソフトウェアによって自動制御することを特徴とし、
前記ガスの除去は、前記非凝縮性ガスの進入又は存在を示す1つ又は複数のプロセスセンサ(T8、T9、T10及びP11、P12、P14)によって、具体的には直接的又は間接的に前記非凝縮性ガスの存在を示す温度及び圧力センサ(T8、T9、T10及びP11、P12、P14)を用いて、トリガされる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
作動ガスと、一時的かつ再生利用可能な作動ガス吸収剤としての化学物質とを含む閉ループプロセスの、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法との併用。
【請求項10】
作動ガスとしてのCO2と、一時的かつ再生利用可能なCO2吸収剤としてのアミン類とを含む、C3熱力学サイクルの、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法との併用。
【請求項11】
プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びその異性体等のパラフィン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;又はアセトン等のケトン類;又は例えばフッ素原子を含有する冷却剤;又は少なくとも10重量%の濃度の作動ガスとしての水を含む熱力学サイクルの、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法との併用。
【請求項12】
好ましくは部分的に真空下で動作する、ヒートポンプ又は冷凍システムの、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法との併用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電力生成の分野における、閉ループプロセスからの非凝縮性ガスの除去に関する。
【0002】
定義
非凝縮性ガス(non‐condensable gas):酸素、窒素及びアルゴン、二酸化炭素(CO2)を含む空気;閉ループ電力生成プロセス:ランキンサイクル、有機ランキンサイクル(ORC)、炭素キャリアサイクル、作動流体の圧縮/加熱及び膨張/冷却を伴うヒートポンプシステム;真空:1バール未満のシステム圧力。本文中、CO2又は空気等の用語は、いずれの非凝縮性ガス又はそれらの混合物を指す場合がある。
【背景技術】
【0003】
望ましくないガスの蓄積は、化学工学及び発電所の動作といった分野において公知の課題である。ガス、特に空気は、真空下で動作する装置内にだけでなく、大気圧超で動作するプロセス内にさえも漏れる。
【0004】
水蒸気ベースの発電所では、トレイ又はスプレーをベースとした脱気装置を用いて空気を除去する。「脱気装置(deaerator)」については例えばウィキペディアを参照のこと。水からのガスの除去は、ヘンリーの法則、即ち低い分圧において低下するガスの可溶性、及びガスの可溶性が高温において低下するという原理を利用して実施される(例えばwww.sterlingdearator.comを参照のこと)。また、亜硫酸ナトリウム等の化学物質を脱酸素剤として採用できる。
【0005】
化学プロセスに関する特許文献1(Asahi、2004)、地熱エネルギ生成のための塩水からのガスの除去に関する特許文献2(DOW、1976)、特許文献3(蒸気復水器の出願)、特許文献4(2006、サイクロンによる真空脱気)、水/LiBr/オクタノール系冷凍機から非凝縮性ガスを排出する真空ポンプによる解決策を記載した特許文献5(Sanyo Electric、発明者Omori Mitsunoriら)を含む多数の開示が、関連する課題の解決策について記載している。
【0006】
特許文献6は、電力生成における作動流体の、非凝縮性ガスからの、膜をベースとした分離を開示している。
【0007】
特許文献7(Pennsylvania Power&Light Company)は、沸騰水型原子炉産業において試みられる様々な解決策について議論している。pp.10、chapter cを参照のこと。
【0008】
この発明に関連するのは特許文献8(Ormat、1994)であり、これは、膜又はダイヤフラムを備える分離容器を開示しており、非凝縮性ガスは上記膜又はダイヤフラムを通って拡散するものの、上記膜又はダイヤフラムは低級パラフィン類等の作動流体を保持する。この解決策は、ブタン又はペンタン(又はHCFC)といった作動流体が高温で蒸発して低温で凝縮するORC(有機ランキンサイクル)プロセスにおいて極めて有用である。高温セクションと低温セクションとの間の圧力差を用いて、電力生成のためのタービンを動作させる。
【0009】
部分的に真空下で動作するエネルギ生成プロセスでは、空気の進入のリスクが明らかに高い。特許文献9に開示されるようなC3プロセスは、タービンを駆動するCO2ガスループを備え、これによりCO2ガスは、プロセスの低温セクションにおいて、例えばアミン類によって一時的に吸収され、より高い温度において上記アミン類から放出される。このプロセスにより、例えば高圧側において2〜3バール、低圧側において0.1〜0.3バールで動作する熱力学サイクルが得られ、これは高い圧力見積値及び高い熱対電力効率をもたらす。このプロセスでは、真空側における空気の進入により、圧力見積値が低下する。従って空気又は他の非凝縮性ガスを、上記プロセスから除去する必要がある。同時に揮発性アミン類を上記プロセスから排出するべきである。
【0010】
更に、従来技術によって解決されない課題に関して、吸収装置若しくは凝縮装置から直接であるか、又は別個の容器からであるかにかかわらず、残留ガスをポンプによって送出すると、CO2、アミン類、アセトン等の溶媒を含む特に揮発性の作動流体が、許容できないほど大量に除去されてしまう。従って:1つには、揮発性作動流体の凝縮を増大させるために、吸収装置セクション内に存在するよりも高い圧力で;1つには、これもまた作動流体の凝縮を支援するために、吸収装置セクション内に存在するよりも低い温度で;また1つには最小コストで、即ち特に真空ポンプに関する投資費用を最小又はゼロとして、空気/非凝縮性ガスを除去できる解決策が望まれている。
【0011】
C3プロセスのいくつかの修正例及び具体的実施形態が、以下に言及する文献に開示されており、これらは全て参照により本出願に含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許第1829594号
【特許文献2】米国特許第4026111号
【特許文献3】米国特許第4905474号
【特許文献4】米国特許第7588631号
【特許文献5】特開2006‐125775
【特許文献6】米国公開特許第20020007732号
【特許文献7】国際公開第95/27985号
【特許文献8】米国特許第5487765号
【特許文献9】国際公開第2012/128715号
【発明の概要】
【0013】
例えばCO2作動流体を吸収する容器は、弁によって、電力生成プロセス、特に国際公開第2012/128715号、スウェーデン特許第2013/051059号、スウェーデン特許第1300576‐4、スウェーデン特許第1400027‐7、スウェーデン特許第1400160‐6号(これらは参照により本出願に援用される)に記載されるようなC3プロセスだけでなく、低級パラフィン類、従来の冷却剤、及び一般には大気圧における沸点が100℃未満のORC作動流体といった1つ又は複数の揮発性流体をベースとする、標準的なORC解決策から、分離される。標準的な動作では、上記容器は、CO2ガスがアミン類によって吸収される吸収チャンバとして機能してよい。非凝縮性ガスの排出中、CO2、非凝縮性ガス、水、及びアミン類を含むアルカリ材料を含む残留ガスは、上記容器内の液位の上昇によって圧縮され得る。同時に発生する圧力の上昇は、アルカリ材料によるCO2の選択的吸収を引き起こす。このようにして、ガス空間内の揮発性アミンの濃度は低下する。大気圧超への圧縮の後、非凝縮性ガスを、任意にフィルタ又は膜を通して通気させてよく、これによって残留している揮発性アミンを吸収できる。任意に、上記容器を2つのセクションに分割する膜又はダイヤフラムを使用してよい。上記膜は空気に対して透過性であるが、揮発性アミン類に対して非透過性である。理想的には、上記膜はCO2ガスに対してそれほど透過性ではない。上記膜は理想的には液体アミンと接触しない。残留している、又は凝縮した液体アミンは、ここでもまたポンプを使用することなく、容器に戻るように移動させることができる。本方法は、真空ポンプを省略できるため、簡潔かつ経済的である。しかしながら、非凝縮性ガスをより速く除去するための選択肢として、真空ポンプの使用も考えられる。
【0014】
これより、添付の図面を参照して、非限定的な例によって本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、化学的に吸収されるのではなく凝縮される1つ又は2つの作動流体が関わる閉ループプロセスから少なくとも1つのガスを除去するために極めて好適である構成の概略図であり、これは更に、完全な電力生成プロセスにガス除去ユニットを統合する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は一態様において、熱力学サイクルから、特に、部分的に真空下で動作する上述のC3プロセス、又は部分的に真空下で動作するORCプロセスから、少なくとも1つの非凝縮性ガスを除去するための方法又は手順に関する。
【0017】
一実施形態では、作動流体は:少なくとも5重量%の濃度のメタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール等の低沸点溶媒と;アンモニアと;水又は上述の文献に開示されているもの等の有機溶媒中の、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、及びMEAを含む水溶性アミン類と;CO2とを含んでよい。以下に記載する手順は、電力生成サイクルの動作中に、自動的に及び制御下で空気を除去するために好適である。加圧により、上述の溶媒等の凝縮性ガスの濃縮が引き起こされる。この加圧ステップにも関わらず、揮発性溶媒又はアミン又はCO2の一定の損失を回避するのは困難であるが、これは許容可能である。任意に、凝縮性成分を、当該技術分野において公知の手段によって、サイクルの外側で捕集でき、これによって環境への放出が回避される。
【0018】
更なる態様では、ここで図1を参照すると、吸収又は凝縮容器7は、弁2、弁4を通して、メイン吸収又は凝縮容器50に接続される。空気の除去は、以下のシーケンスを用いて、バッチ動作において達成される:
【0019】
A)弁3を開くことによって、凝縮容器7及びメイン凝縮容器50内の圧力を平衡化し、その一方で弁2、4、5を閉鎖する。凝縮された作動流体は、ライン19を通してメイン凝縮容器50へ、そしてその後ポンプ51へと排出される。任意に、例えば容器7を重力によって空にすることができない場合に、作動流体の移動のためにポンプ24を採用する。
【0020】
B)弁4を開くことによって、ライン16を通して供給される、低温の凝縮された作動流体の噴霧を開始する。弁2を開くことにより、メイン凝縮容器50からライン18を通してガスを進入させ、上記メイン凝縮容器50は続いて、タービン53からガスを受承する。圧力及び温度を、センサT8、T9、T10及びP12、P14で測定する。
【0021】
C)作動流体の凝縮は、作動流体の凝縮エンタルピーに比例する、及び凝縮される作動流体の量に比例する、温度上昇を引き起こす。この温度上昇は、1つには非凝縮性ガスの蓄積、1つには蓄積された非凝縮性ガスの存在、また1つには比較的高い液体貫流比が使用されるという事実を理由として、メイン凝縮容器50内よりも凝縮容器7内において低い。バッチシーケンスが進行するにつれて、凝縮容器7内の温度は、90/20℃の水を加熱/冷却のために使用する状況に関して、メイン凝縮容器50内よりも2〜4℃低くなり得る。温度差T8‐T9は、対応する温度差T8‐T10の約30〜70%となるものとする。T8‐T9がより低い値(T8‐T10の<30%)に近づく場合、これは、凝縮容器7内において気体状の作動流体がそれ以上凝縮されないことの実際的な指標として解釈できる。(上述のパーセント値は単なる例示であることに留意されたい。)このステージにおいて、弁2、3は閉鎖される一方で弁4は開いたままであり、これにより、供給ライン16を通した作動流体の供給は継続される。残留している気体状の作動流体の一部は、流体の流れの継続と、ここでは隔離されているガス空間の圧縮とによって凝縮され、凝縮容器7内の液位が上昇する。上記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ7内の吸収用液体の液位を操作するために、更なるポンプ13を設けてよい。
【0022】
D)凝縮容器7内の圧力P12が、冷却器54からの供給ライン16内の液圧P11に近づくか又はこれと等しくなるとすぐに、弁4を閉鎖する。
【0023】
E)弁5を開くことによって、ポンプ20は凝縮容器7に液体を供給できる。同時に圧力が上昇することにより、気体状の作動流体の更なる凝縮がもたらされる。
【0024】
F)凝縮容器7内の圧力が、供給ライン16から供給を受ける供給ライン17内の圧力P14に近づくにつれて、弁1を開くことによって、任意の副次的容器22、任意の弁21、通気ライン23を通して、非凝縮性ガスを放出する。容器22は、必要である場合、溶媒のための収集又は回収容器として機能し得る。可能な限り大量の空気を排出することが意図され、従って技術的な選択肢として、凝縮容器7内の液位がある特定のレベルに到達するまで、供給ライン17及び弁5を通した液体の供給を継続できる。液体の排出は、公知の方法、例えば液位が最高レベルとなった場合に弁1をブロックする浮遊デバイス(図1には図示されていない)によって、妨げることができる。酸素、窒素、アルゴン以外のガスに対して本質的に非透過性のダイヤフラム又は膜を、例えば上記副次的容器22内で使用することにより、プロセスガス、特にCO2と、揮発性溶媒及びアミンとの損失を回避する。
【0025】
G)ステップAを繰り返す。
【0026】
上記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ7からの、1つ又は複数の非凝縮性ガスの放出の開始時点において、上記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ内の圧力は、メイン吸収又は凝縮容器50内の圧力より少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは150%も高くなる。
【0027】
上述の実施形態では、閉ループプロセスからのガスの分離及びそれに続く排出を可能とする駆動力は、(1つ又は複数の)凝縮容器7と、(1つ又は複数の)メイン吸収又は凝縮容器50との間の温度差であると考えられる。この温度差は、作動流体が凝縮容器7へ、気体状の作動流体の流量に関して、メイン吸収容器50への場合よりも高い流量で、ポンプによって送り込まれるという事実によって引き起こされる。従って、凝縮容器7内の液体は一般に、メイン吸収容器50内よりも低温となる。気体状の作動流体及び非凝縮性ガスは、凝縮容器7に入る。メインの作動流体の凝縮により、ガス空間6内に非凝縮性ガスが豊富となり、これは更に、凝縮容器7内の温度を低下させる。ある特定のステージにおいて、上述のシーケンス(C)を開始するのが実際的である。
【0028】
上述のように、凝縮容器7内の液体が、プロセス内の他のいずれのステージよりも低温であるという事実により、ガスの分離が促進される。冷却は、比較的高い液体流量によって、あるいは能動的な冷却によって実施してよい。前者の方法は使用エネルギが少なく、後者の方法は、例えば空間要件がそれを必要とする実施形態において選択できる。
【0029】
更に図1を参照すると、完全閉ループプロセスが、ここでは高温の気体状作動流体を生成するための熱交換器52、タービン53、メイン凝縮容器50、温度センサT10及び作動媒体ポンプ51を用いた簡潔なランキンプロセスとして示されている。熱交換器/吸収器/凝縮器50、即ちメイン吸収容器50から出た作動流体を、メイン吸収容器50の頂部へと部分的に再循環させることによって、例えば上記メイン吸収容器50内の比較的低い平均温度を達成すること、又はメイン吸収容器50内での吸収を支援することができる。
【0030】
好ましい実施形態のうちの1つにおいて、作動流体としてアセトンを使用する。酸素及び窒素それぞれのアセトン中での可溶性は極めて低い(Battino, J.Phys.Chem.Ref.Data Vol 12, No.2, 1983, p. 174 and Vol. 13, No. 2, p. 587を参照のこと)ため、低温(例えば20〜40℃)においてさえ、アセトンからの空気の除去は効率的である。従来技術による解決策と比較して、アセトン、即ち作動流体の損失は有意に低減される。
【0031】
一実施形態では、1つ又は複数の非凝縮性ガスと、アセトン、イソプロパノール、アミン類等を含む少量の溶媒とを含む、プロセスから排出されるガス混合物が、環境へと入るのを、コールドトラップ;カーボンブラック、ゼオライト若しくは他の吸収剤といった好適なフィルタ;集塵機;又は燃焼/火炎生成ユニットを使用して防止する。
【0032】
一実施形態では、非凝縮性ガスの除去は、例えばソフトウェアによって自動制御でき、これによりガスの除去は、非凝縮性ガスの進入又は存在を示す1つ又は複数のプロセスセンサ(T8、T9、T10及びP11、P12、P14)によって、具体的には直接的又は間接的に非凝縮性ガスの存在を示す温度及び圧力センサ(T8、T9、T10及びP11、P12、P14)を用いて、トリガされる。
【0033】
本明細書に記載の方法はまた、a)部分的に真空下である蒸気ベースのランキンサイクルからだけでなく、b)高圧ORCシステムからの空気の除去のためにも有用である。a)の場合、本方法は例えば真空ポンプのためのコストを節約するために使用されることになり、b)の場合、これは、空気の濃度が既に低いことによって、ORC作動流体のための凝縮器等の熱交換器の性能が低下しているため、適切である。大気圧より高い圧力の使用にも関わらず、空気の進入を遮断できない。
【0034】
異なる実施形態では、上述のガス除去のための技術を、ヒートポンプシステムに使用する。本質的には、ヒートポンプにおいて、別個のガス圧縮ステップを用いて、例えば家屋の暖房を目的として、有用性の低い熱源から比較的高い温度を生成する。部分的に真空下で動作する好適なヒートポンプの設計は、Climeon ABに与えられたスウェーデン特許第1300576‐4号及び関連開示において開示されている。
【0035】
上述の実施形態は、本発明の目的を達成するための、即ち熱力学サイクル、具体的にはC3サイクル又は部分的に真空下で動作するいずれのランキンサイクルを代表とする閉ループプロセスから非凝縮性ガスを除去するための、有用なシーケンスの単なる例であることを理解されたい。
【0036】
同様の複数の構成が、本発明の精神に当てはまるものと見做されるものとする。特に、ダイヤフラム又は膜は、アミン類等の揮発性材料の損失を更に低減するために含まれ得るが、このような解決策は、コスト/利益の計算に応じて使用されることになる。
【0037】
要するに、閉ループプロセスから非凝縮性ガスを除去するための、簡潔な解決策が開示される。この解決策は、構成及び動作においてコストが低く、また熱力学サイクルを動作させながらいずれの時点において動作させることができ、即ち停止の必要がない。
【0038】
本明細書において開示される方法は、作動ガスと、一時的かつ再生利用可能な作動ガス吸収剤としての化学物質とを含む閉ループプロセスと併用できる。具体的には、本方法は、作動ガスとしてのCO2と、一時的かつ再生利用可能なCO2吸収剤としてのアミン類とを含む、C3熱力学サイクルと併用できる。プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びその異性体等のパラフィン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;又はアセトン等のケトン類;又は例えばフッ素原子を含有する冷却剤;又は少なくとも10重量%の濃度の作動ガスとしての水を含む熱力学サイクルと組み合わせた、更なる使用が可能である。
【0039】
最後に本方法は、好ましくは部分的に真空下で動作する、ヒートポンプ又は冷凍システムと併用できる。
【0040】
以下の請求項は、熱力学的に動作する方法及びシステムの様々な例の複数の態様を記載する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2016年12月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインプロセスを使用するシステムから非凝縮性ガスを除去するための方法であって、
前記メインプロセスは、作動流体の圧縮又は加熱及び膨張又は冷却を伴う閉ループ熱力学サイクルから本質的になり、
前記システムは、圧縮又は加熱された前記作動流体の吸収又は凝縮のためのメイン吸収又は凝縮容器(50)を備え、またガス除去ユニットに接続されるよう適合され、
前記ガス除去ユニットは、前記作動流体の吸収又は凝縮のための少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)を前記メイン吸収又は凝縮容器(50)に接続するよう適合されたライン(18、19、16、17)及び弁(2、3、4、5)、並びに弁(1)を介して前記凝縮チャンバ(7)に接続された通気ライン(23)を備え、
前記システムは、以下のステップ:
a)前記弁(2、4)を開き、前記ライン(16、18)を通して供給される前記メイン凝縮容器(50)からの凝縮された前記作動流体及び前記ガスの進入を可能とすることによって、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)に、前記作動流体を充填するステップ;
b)前記弁(2、3、4、5)及び前記ライン(18、19、16、17)を閉鎖することによって、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)を、前記メインプロセス及び前記メイン吸収又は凝縮容器(50)から分離するステップ;
c)前記弁(2)を開き、前記メイン吸収又は凝縮容器(50)からの、前記ライン(18)を通した前記ガスの進入を可能とすることによって、及び前記弁(4)を開き、前記ライン(16)を通して供給される前記作動流体の噴霧を開始することによって、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の前記作動流体の液位を上昇させ、これによって、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内のガス圧を上昇させるステップ;
d)空気等の1つ又は複数の前記非凝縮性ガスを含む、1つ又は複数の過剰なガスを、前記弁(1)を開くことによって、前記ライン(23)を通して放出するステップ;
e)好ましくは、1つ又は複数の前記非凝縮性ガスをより効果的に除去するために、前記ステップc)及び前記ステップd)を少なくとも1回繰り返すステップ;
f)前記ステップa)〜d)を繰り返すステップ
を含む、方法において、
前記方法は:
前記ステップd)において、即ち前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)からの、1つ又は複数の前記非凝縮性ガスの放出の開始時点において、前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の圧力は上昇して、前記メイン吸収又は凝縮容器(50)内の圧力より少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは150%も高くなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記閉ループ熱力学サイクルは:蒸気、又は水、アルコール類、ケトン類、エステル類、パラフィン類、フッ化溶媒からなる群から選択される溶媒を使用するランキンサイクル;炭素キャリア熱力学サイクル;及び少なくとも部分的に真空下で動作する有機ランキンサイクルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内部で利用可能なプロセス圧力及び流体の流れを使用することによって、凝縮された前記作動流体の温度が、前記メイン吸収又は凝縮容器(50)内においてよりも前記吸収又は凝縮チャンバ(7)内において低くなるように前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の前記作動流体の液位を操作するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス除去ユニットは更に、ポンプ(13、20、24)と、温度及び圧力センサ(T8、T9、P11、P14)とを備え、
前記少なくとも1つの吸収又は凝縮チャンバ(7)内の前記作動流体の液位を操作する前記ステップは、前記温度及び圧力センサ(T8、T9、P11、P14)によって測定された温度及び圧力に基づいて、前記ポンプ(13、20、24)によって実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非凝縮性ガスを、前記吸収又は凝縮チャンバ(7)から、酸素、窒素、アルゴン以外のガスに対して本質的に非透過性のダイヤフラム又は膜を通して放出するステップを更に備え、
前記ダイヤフラム又は膜は、プロセスガス、特にCO2と、揮発性溶媒及びアミンとの損失を回避するために、前記通気ライン(23)と接続されて配設される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
揮発性アミン、及び/又はアセトン、イソプロパノール等を含む溶媒が、前記プロセスから排出されたガス混合物と共に環境へと入るのを、前記通気ライン(23)と接続されて配設されたコールドトラップ又はフィルタ又はガス集塵機又は燃焼/火炎生成ユニットを使用して防止するステップを更に含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記非凝縮性ガスの除去は、直接的又は間接的に前記非凝縮性ガスの存在を示す、1つ又は複数の温度及び圧力センサ(T8、T9、T10及びP11、P12、P14)を用いて、トリガされる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
作動ガスと、一時的かつ再生利用可能な作動ガス吸収剤としての化学物質とを含む閉ループプロセスの、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法との併用。
【請求項9】
作動ガスとしてのCO2と、一時的かつ再生利用可能なCO2吸収剤としてのアミン類とを含む、C3熱力学サイクルの、請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法との併用。
【請求項10】
プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びその異性体等のパラフィン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;又はアセトン等のケトン類;又は例えばフッ素原子を含有する冷却剤;又は少なくとも10重量%の濃度の作動ガスとしての水を含む熱力学サイクルの、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法との併用。
【請求項11】
好ましくは部分的に真空下で動作する、ヒートポンプ又は冷凍システムの、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法との併用。
【国際調査報告】