(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-513213(P2017-513213A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(54)【発明の名称】ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物、及びそれを利用したジルコニウム含有膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20170421BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20170421BHJP
C23C 16/18 20060101ALI20170421BHJP
C01G 25/02 20060101ALN20170421BHJP
C01B 21/076 20060101ALN20170421BHJP
C07C 15/08 20060101ALN20170421BHJP
C07C 13/24 20060101ALN20170421BHJP
C07F 7/00 20060101ALN20170421BHJP
【FI】
H01L21/316 X
H01L21/318 B
C23C16/18
C01G25/02
C01B21/076 Z
C07C15/08
C07C13/24
C07F7/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-554617(P2016-554617)
(86)(22)【出願日】2015年2月26日
(85)【翻訳文提出日】2016年8月24日
(86)【国際出願番号】KR2015001886
(87)【国際公開番号】WO2015130108
(87)【国際公開日】20150903
(31)【優先権主張番号】10-2014-0022892
(32)【優先日】2014年2月26日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】516255002
【氏名又は名称】ユージーン テクノロジー マテリアルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EUGENE TECHNOLOGY MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】リー, ゲウン スー
(72)【発明者】
【氏名】ハン, ヨン ミン
【テーマコード(参考)】
4G048
4H006
4H049
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AB01
4G048AD02
4G048AE08
4H006AA03
4H006AB84
4H049VN06
4H049VP01
4H049VQ35
4H049VR21
4H049VR53
4H049VU24
4H049VU36
4H049VW02
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA22
4K030BA38
4K030BA42
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA15
5F058BA06
5F058BA09
5F058BC03
5F058BC09
5F058BD05
5F058BD12
5F058BF06
5F058BF07
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF30
(57)【要約】
特定の化学式で表示される脂環族不飽和化合物、または特定の化学式で表示される芳香族化合物1モルないし3モルと、特定化学式で表示されるシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物1モルないし3モルとの比率で混合したことを特徴とするジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物、及びそれを利用したジルコニウム含有膜の形成方法を示してある。上記の組成物において、上記2種の構成化合物は、互いに反応せずに、液体状態で互いに安定して均一に混合された状態で存在するために、この組成物は、まるで1つの化合物のように挙動して高い蒸気圧を示す。上記の本発明の組成物を使用すれば、簡便に経済的に高品質のジルコニアのようなジルコニウム含有膜を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表示される脂環族不飽和化合物、または下記化学式2で表示される芳香族化合物の1モルないし3モルと、
下記化学式3で表示されるシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物1モルないし3モルとの比率で混合したことを特徴とするジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物:
【化1】
【化2】
【化3】
前記化学式1で、R
1ないしR
8は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、
前記化学式2で、R’
1ないしR’
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、
前記化学式3で、R”
1ないしR”
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、このとき、R”
1及びR”
2、R”
3及びR”
4、またはR”
5及びR”
6は、それぞれ互いに連結され、それらが結合されている窒素原子と共に、C
3−C
10環状アミン基を形成することができ、
m及びnは、互いに独立して、0ないし10の整数から選択される。
【請求項2】
上記組成物は、シクロヘプタトリエンとトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(NMe2)3)との混合物であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物。
【請求項3】
上記組成物は、キシレンとトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)との混合物であることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア形成用の前駆体組成物。
【請求項4】
ジルコニウム含有膜の形成方法であって、
請求項1あるいは3のうちいずれか1項に記載のジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、前駆体として利用する蒸着工程によって、基板上にジルコニウム含有膜を形成する段階を含むジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項5】
上記蒸着工程は、原子層蒸着(ALD)工程または化学気相蒸着(CVD)工程であることを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項6】
上記蒸着工程が、50〜700℃で実施されることを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項7】
上記ジルコニウム含有膜が、ジルコニウム膜、ジルコニア膜またはジルコニウム窒化物膜であることを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項8】
上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)及び水素(H2)のうちから選択された1種以上のキャリア気体または希釈ガスと混合し、上記基板上に移送することを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項9】
上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、酸素(O2)、水蒸気(H2O)及びオゾン(O3)のうちから選択された1種以上の反応ガスと混合し、上記基板上に移送することを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項10】
上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、二酸化窒素(NO2)及び窒素(N2)のプラズマのうちから選択された1種以上の反応ガスと混合し、上記基板上に移送することを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項11】
上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、直接液体注入(DLI)方式、または有機溶媒と混合して移送する液体移送方法で、上記基板上に移送することを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項12】
上記蒸着工程の間、前記基板に、熱エネルギー、プラズマまたは電気的バイアスを印加することを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項13】
上記蒸着工程は、半導体装置製造における、キャパシタ構造またはゲート構造の形成時、誘電膜を形成するための蒸着工程であることを特徴とする請求項4に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物、及びそれを利用したジルコニウム含有膜の形成方法に係り、さらに詳細には、本発明は、半導体装置の製造時、ジルコニア膜のようなジルコニウム含有膜を簡便に形成することができるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物、及びそれを利用したジルコニウム含有膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、ジルコニウム前駆体化合物を利用して、ジルコニア膜について、例を挙げて説明するが、以下の説明は、ジルコニウム前駆体化合物を利用して、ジルコニウム膜またはジルコニウム窒化物膜(zirconium nitride film)を形成する場合にも同一に適用される。
【0003】
ジルコニア(zirconia、ZrO
2)は、誘電定数値(dielectric constant)が約25と大きく、バンドギャップ(band gap)がおよそ5eV程度と広く、屈折率(およそ2超過)が大きく、反応性にすぐれ、また化学的に安定している。ジルコニアは、またはSi界面との接触時、熱的で安定するために、DRAM(dynamic random access memory)などの半導体装置の製造時、ゲート誘電膜(gate dielectric)、またはキャパシタの誘電膜として活用するための多様な研究が進められている。
【0004】
従来、半導体装置の製造において、ジルコニア膜は、一般的に、金属有機物化学気相蒸着(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)工程または原子層蒸着(ALD:atomiclayer deposition)工程を利用して形成される。MOCVD蒸着方法は、化学気相蒸着を介して、高品質のジルコニア膜を形成することができ、ALD蒸着方法は、均一性が高いジルコニア膜を生成し、ジルコニア膜の原子単位まで調節が可能である。
【0005】
従って、MOCVD工程またはALD工程を介して、高品質のジルコニア膜を蒸着するためには、蒸着工程に適するジルコニウム前駆体化合物の選択が非常に重要である。MOCVD工程を利用する場合、250〜500℃の温度で、ジルコニウム化合物に存在するリガンドを、熱分解なしに迅速に除去してジルコニアに変換しなければならない。ALD工程を利用する場合、酸化剤として使用するオゾン(O
3)または水蒸気(H
2O)によって、ジルコニウム化合物に存在するリガンドを迅速に完全に分解して除去することが必要である。
【0006】
MOCVD工程またはALD工程に適するジルコニウム前駆体化合物は、低温(約100℃)で高蒸気圧を有さなければならず、気化のために加熱されるので、熱的に十分に安定していなければならず、粘性が低い液体化合物でなければならない。このような条件を満足するジルコニウム前駆体化合物は、蒸着時、膜質が均一であって密度が高いジルコニア薄膜を生成しやすい。特に、アミノ基リガンドが配位されたジルコニウム化合物は、常温で粘性が低い液体状態であり、蒸気圧が高く、オゾン及び水蒸気によってアミノ基リガンド除去が容易であるために、ALD工程を利用したジルコニア膜蒸着に多用されている。しかし、このようなジルコニウム前駆体化合物は、長期保管性が良好ではなく、特に、熱安定性に劣り、蒸着時に熱分解され、ジルコニア膜品質に悪影響を及ぼす。現在、トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)[CpZr(NMe
2)
3]が最も多く利用されているが、この前駆体化合物も、上記の問題点を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、半導体装置の製造工程において、上記の先行技術の問題点を解決するために、低温で高い蒸気圧を有し、長期安定性及び熱安定性にすぐれ、高品質のジルコニウム含有膜を生成することができる新たなジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、上記のジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を利用することにより、優秀な膜特性、厚み均一性及び段差被覆性を有するジルコニウム含有膜を容易に形成することができるジルコニウム含有膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の一目的を達成するために、本発明の一側面は、下記化学式1で表示される脂環族不飽和化合物、または下記化学式2で表示される芳香族化合物の1モルないし3モルと、下記化学式3で表示されるシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物1モルないし3モルとの比率で混合されたことを特徴とするジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を提供する:
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
【化3】
【0013】
上記化学式1で、R
1ないしR
8は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、
上記化学式2で、R’
1ないしR’
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、
上記化学式3で、R”
1ないしR”
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、このとき、R”
1及びR”
2、R”
3及びR”
4、またはR”
5及びR”
6は、それぞれ互いに連結され、それらが結合されている窒素原子と共に、C
3−C
10環状アミン基を形成することができ、
m及びnは、互いに独立して、0ないし10の整数から選択される。
【0014】
本発明の実現例において、上記の組成物は、シクロヘプタトリエンとトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)[CpZr(NMe
2)
3]との混合物でもある。
【0015】
本発明の他の実現例において、上記の組成物は、キシレンとトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)との混合物でもある。
【0016】
上記の本発明の目的を達成するために、本発明の他の側面は、ジルコニウム含有膜の形成方法であって、上記の本発明の側面によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を前駆体として利用する蒸着工程によって、基板上にジルコニウム含有膜を形成する段階を含むジルコニウム含有膜の形成方法を提供する。
【0017】
本発明の実現例において、上記蒸着工程は、原子層蒸着(ALD:atomic layer deposition)工程または化学気相蒸着(CVD:chemical vapor deposition)工程でもある。
【0018】
本発明の実現例において、上記蒸着工程は、50〜700℃で実施される。
【0019】
本発明の実現例において、上記ジルコニウム含有膜は、ジルコニウム膜、ジルコニア膜またはジルコニウム窒化物膜(zirconium nitride film)でもある。
【0020】
本発明の実現例において、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、ヘリウム(He)及び水素(H
2)のうちから選択された1種以上のキャリア気体または希釈ガスと混合されて上記基板上に移送される。
【0021】
本発明の他の実現例において、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、ジルコニア膜を形成するために、酸素(O
2)、水蒸気(H
2O)及びオゾン(O
3)のうちから選択された1種以上の反応ガスと混合されて上記基板上に移送される。
【0022】
本発明のさらに他の実現例において、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、ジルコニウムジルコニウム窒化物膜を形成するために、アンモニア(NH
3)、ヒドラジン(N
2H
4)、二酸化窒素(NO
2)及び窒素(N
2)のプラズマのうちから選択された1種以上の反応ガスと混合されて上記基板上に移送される。
【0023】
本発明の実現例において、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、直接液体注入(DLI:direct liquid injection)方式、または有機溶媒と混合して移送する液体移送方法で、上記基板上に移送される。
【0024】
本発明の実現例において、上記蒸着工程の間、上記基板に、熱エネルギー、プラズマまたは電気的バイアスが印加される。
【0025】
本発明の実現例において、上記蒸着工程は、半導体装置製造における、キャパシタ構造またはゲート構造の形成時、誘電膜を形成するための蒸着工程でもある。
【0026】
本発明の実現例において、上記蒸着工程は、真空または非活性の雰囲気下で、上記基板を50〜500℃の温度に加熱する段階と、20℃ないし100℃の温度に加熱された上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、上記基板上に導入する段階と、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を前記基板上に吸着させ、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物層を基板上に形成させる段階と、上記基板に、熱エネルギー、プラズマまたは電気的バイアスを印加し、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を分解することにより、上記基板上にジルコニウム含有膜を形成する段階を含んでもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一側面によるジルコニウム含有膜合金形成用の前駆体組成物において、上記化学式1で表示される脂環族不飽和化合物、または前記化学式2で表示される芳香族化合物と、上記化学式3で表示されるシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物は、互いに反応せずに、液体状態で互いに安定して均一に混合された状態で存在しながらも、室温を含む温度で高い蒸気圧を示す揮発性組成物である。この組成物は、また長期安定性及び熱安定性にすぐれて分解残留物が少ない。
【0028】
従って、半導体装置の製造に使用される化学気相蒸着(CVD)工程及び原子層蒸着(ALD)工程などにおいて、本発明の他の側面によるジルコニウム含有膜の形成方法を利用すれば、次のような効果を得ることができる。
【0029】
第一に、熱安定性にすぐれるので、蒸着時、蒸発器(vaporizer)の温度及び蒸着温度を高めることができるので、得られたジルコニウム含有膜特性が改善される。
【0030】
第二に、分解残留物が減少し、保管安定性にすぐれ、蒸発器の温度及び蒸着温度を高めることができるので、得られたジルコニウム含有膜特性が改善される。
【0031】
第三に、粘度が低くて揮発性が高いために、分子間引力が低下するので、移送性及び段差被覆性にすぐれる。
【0032】
従って、本発明によるジルコニウム含有膜合金形成用の前駆体組成物は、前記化学式3のシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物単独よりさらに優秀なZr前駆体である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例1及び2で得た組成物X及びYの混合直後のNMRスペクトルである。
【
図2】実施例1及び2で得た組成物X及びYの熱安定性試験後のNMRスペクトルである。
【
図3】実施例1及び2で得た組成物X及びY、並びに比較例1のTDCPに係わる試験で得られたDSC熱曲線及びTGA熱曲線を総合した1つの図面であり、上段の(a)で表示された熱曲線は、DSC試験で得た結果を示すグラフであり、下段の(b)で表示された熱曲線は、TGA試験で得た結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体的な実施例によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物、及びそれを利用したジルコニウム含有膜の形成方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明の一側面によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、下記化学式1で表示される脂環族不飽和化合物、または下記化学式2で表示される芳香族化合物の1モルないし3モルと、下記化学式3で表示されるシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物1モルないし3モルとの比率で混合されたことを特徴とする:
【0039】
上記化学式1で、R
1ないしR
8は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、
上記化学式2で、R’
1ないしR’
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、
上記化学式3で、R”
1ないしR”
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基、C
6−C
12アリール基、C
7−C
13アラルキル基のうちから選択され、このとき、R”
1及びR”
2、R”
3及びR”
4、またはR”
5及びR”
6は、それぞれ互いに連結され、それらが結合されている窒素原子と共に、C
3−C
10環状アミン基を形成することができ、
m及びnは、互いに独立して、0ないし10の整数から選択される。
【0040】
望ましくは、上記化学式1の脂環族不飽和化合物、または下記化学式2で表示される芳香族化合物のモル数と、上記化学式3のシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物のモル数との比率は、熱安定性及び保管安定性にすぐれ、両成分間の化学反応が発生することのない側面において、1:2〜3、例えば、1:2〜2.5である。
【0041】
本発明の組成物を構成する構成成分間の化学反応を起こさず、また、上記の前駆体化合物の構造変化が発生しないというように、保管安定性にすぐれる混合物を得ることができる側面において、上記化学式1ないし3で、R
1ないしR
8、R’
1ないしR’
6、及びR”
1ないしR”
6は、それぞれ互いに同じであっても異なっていてもよく、水素原子、C
1−C
10アルキル基のうちから選択されることが望ましく、m及びnは、互いに独立して、1ないし3の整数から選択されることが望ましい。
【0042】
上記化学式1の脂環族不飽和化合物の具体的な例は、シクロヘプタトリエン、シクロオクタトリエン、シクロノナテトラエン及びシクロオクタジエンなどを含む。上記化学式1の化合物は、化学式3のシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系前駆体化合物との化学反応を発生させず、上記前駆体化合物の構造変化が発生しないというように、保管安定性にすぐれる混合物を得ることができ、上記混合物の分解温度を上昇させるための側面において、上記化学式1の化合物は、シクロヘプタトリエンであることが望ましい。
【0043】
上記化学式2で表示される芳香族化合物の具体的な例は、ベンゼン、トルエン、o−,m−またはp−キシレンなどを含む。上記化学式2の化合物は、化学式3のシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系前駆体化合物との化学反応を発生させず、上記前駆体化合物の構造変化が発生しないというように、保管安定性にすぐれる混合物を得ることができ、上記混合物の分解温度を上昇させるための側面において、上記化学式2の化合物は、o−,m−またはp−キシレンであることが望ましい。
【0044】
上記化学式3のシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物の具体的な例は、トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(NMe
2)
3)、トリス(メチルエチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(NMeEt)
3)、トリス(ジエチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(NEt
2)
3)、トリス(ジイソプロピルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(N(i−Pr)
3)などを含む。
【0045】
従って、本発明の一具現例による組成物は、シクロヘプタトリエンとトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(CpZr(NMe
2)
3)との混合物でもある。望ましくは、この混合物において、シクロヘプタトリエンのモル数と、トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)のモル数との比率は、1:2.5でもある。
【0046】
または、本発明の他の具現例において、前記組成物は、キシレンとトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)との混合物でもある。望ましくは、該混合物において、キシレンのモル数と、トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)のモル数との比率は、1:2でもある。
【0047】
本発明のジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、驚くべきことに、上記2種の化合物が一定モル比で、安定して混合された1つの組成物でありながらも、途中で、それぞれの前駆体化合物が互いに反応して析出されず、1つのノズルから噴射され、ジルコニウム含有膜を形成することができる。
【0048】
上記化学式1で表示される脂環族不飽和化合物、または前記化学式2で表示される芳香族化合物と、上記化学式3で表示されるシクロペンタジエニルジルコニウム(IV)系化合物は、互いに反応せずに、液体状態で互いに安定して均一に混合された状態で存在しながらも、室温を含む温度において、高い蒸気圧を示す揮発性組成物である。この組成物は、また長期安定性及び熱安定性にすぐれ、分解残留物が少ない。従って、本発明によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を利用すれば、半導体製造工程において、優秀な膜特性、厚み均一性及び段差被覆性を有するジルコニアのようなジルコニウム含有膜を容易であって効率的に形成することができる。
【0049】
次に、本発明の具体的な実施例によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を利用したジルコニウム含有膜の形成方法について詳細に説明する。
【0050】
本発明のジルコニウム含有膜の形成方法は、本発明の一側面によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を前駆体として利用する蒸着工程によって、基板上に、ジルコニウム含有膜を形成する段階を含む。
【0051】
蒸着工程は、ALD工程またはMOCVD工程のようなCVD工程からなる。蒸着工程は、望ましくは、常温ないし700℃、例えば、100ないし500℃で実施される。ジルコニウム含有膜は、例えば、ジルコニウム膜、ジルコニア膜またはジルコニウム窒化物膜でもある。それによって形成されたジルコニウム膜は、導電膜として使用され、ジルコニア膜及びジルコニウム窒化物膜は、誘電膜または絶縁膜として使用される。例えば、ジルコニア膜は、半導体装置製造におけるキャパシタ構造またはゲート構造の形成時、誘電膜として使用される。例えば、上記ジルコニア膜を利用して、キャパシタを形成する工程は、半導体基板上に、下部電極を形成する段階と、上記下部電極上に、本発明による方法によって、ジルコニア膜を形成する段階と、上記ジルコニア膜を、酸素を含む雰囲気で、プラズマを利用して酸化処理をする段階と、上記ジルコニア膜上に、上部電極を形成する段階を含んでもよい。このとき、上記下部電極は、チタン窒化膜(TiN)、タンタル窒化膜(TaN)及びタングステン窒化膜(WN)のような金属窒化膜や、ルテニウム(Ru)及び白金(Pt)のような貴金属膜、またはそれらの組み合わせ膜でもある。上記上部電極は、チタン窒化膜(TiN)、タンタル窒化膜(TaN)及びタングステン窒化膜(WN)のような金属窒化膜や、ルテニウム(Ru)及び白金(Pt)のような貴金属膜、またはそれらの組み合わせ膜でもある。
【0052】
上記ジルコニウム含有膜がジルコニウム膜である場合、蒸着工程において、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)、ヘリウム(He)及び水素(H
2)のうちから選択された1種以上のキャリア気体または希釈ガスと混合して基板上に移送する。ジルコニウム含有膜がジルコニア膜である場合、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、酸素(O
2)、水蒸気(H
2O)及びオゾン(O
3)のうちから選択された1種以上の反応ガスと混合して基板上に移送する。ジルコニウム含有膜がジルコニウム窒化物膜である場合、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、アンモニア(NH
3)、ヒドラジン(N
2H
4)、二酸化窒素(NO
2)及び窒素(N
2)のプラズマのうちから選択された1種以上の反応ガスと混合して基板上に移送する。例えば、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、バブリング方式、気相(vapor phase)質量流量制御器(MFC:mass flow controller)、直接液体注入(DLI:direct liquid injection)、また、上記組成物を有機溶媒に溶解して移送する液体移送方法で基板上に移送されて薄膜蒸着に利用される。
【0053】
このとき、蒸着効率を上昇させるために、蒸着工程の間、基板に、熱エネルギー、プラズマまたは電気的バイアスを印加することができる。具体的な例を挙げれば、上記蒸着工程は、真空または非活性の雰囲気下で、上記基板を50〜700℃の温度に加熱する段階と、20℃ないし100℃の温度に加熱された上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を、上記基板上に導入する段階と、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を上記基板上に吸着させ、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物層を基板上に形成させる段階と、上記基板に、熱エネルギー、プラズマまたは電気的バイアスを印加し、上記ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物を分解することにより、上記基板上にジルコニウム含有膜を形成する段階と、を含んでもよい。
【0054】
このとき、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物が基板上で層を形成させることができる時間として、1分未満の時間を提供することができる。基板上に吸着されない過量のジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)及びヘリウム(He)のような1種以上の非活性気体を利用して除去することが望ましい。過量の前駆体組成物を除去することができる時間として、1分未満の時間を提供することができる。また、過量の反応ガス、及び生成された副産物を除去するために、チャンバ内に、アルゴン(Ar)、窒素(N
2)及びヘリウム(He)のような1種以上の非活性気体を1分未満の時間以内導入することができる。
【0055】
本発明によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物は、化学的及び熱的な安定性にすぐれ、室温で液体で存在して揮発性が高いために、半導体装置の製造時、CVD工程やALD工程において、前駆体として使用し、ジルコニウム含有膜を蒸着させるのに効率的に有用に使用される。
【0056】
以下、本発明によるジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物について、下記実施例を介してさらに詳細に説明する。ただし、それらは、本発明の理解の一助とするために提示されるものであるのみ、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0057】
下記実施例において、全ての段階は、標準真空ラインシュレンク方法(Schlenk technique)を使用し、全ての混合操作は、アルゴン気体雰囲気下で行った。実験に使用されたキシレン及びシクルロヘプタトリエンは、Aldrich社から購入して使用し、CaH
2と共に一日撹拌させて残留水分を完全に除去させた後、分別精製した後で使用した。また、トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(TDCP)は、(株)Soulbrainから購入して使用した。物質の小分けは、グローブボックス内で進めた。化合物及び組成物の構造分析は、JEOLJNM−ECS 400MHz NMR分光分析器(
1H−NMR 400MHz)を利用して実施した。NMR分析用溶媒ベンゼン−d
6は、一日CaH
2と共に撹拌させて残留水分を完全に除去した後で使用した。化合物の熱安定性及び分解温度は、TA−Q600製品を利用して分析し、試料量は、10mgを使用した。
【実施例】
【0058】
実施例1:混合組成物の調製
室温のグローブボックス内で、500mlサイドアーム丸フラスコに、TDCP43.48g(0.1507mol)を添加し、温度を0℃に低くした後、p−キシレン8g(0.0753mol)を徐々に投入した。その後、混合物の温度を徐々に室温に上げ、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物Xを得た。
【0059】
実施例2:混合組成物の調製
室温のグローブボックス内で、500mlサイドアーム丸フラスコに、TDCP39.14g(0.1356mol)を添加し、温度を0℃に低くした後、シクルロヘプタトリエン5g(0.05426mol)を徐々に投入した。その後、混合物の温度を徐々に室温に上げ、ジルコニウム含有膜形成用の前駆体組成物Yを得た。
【0060】
比較例1:TDCP単独
(株)ソルブレインから購入したトリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルジルコニウム(IV)(TDCP)をそのまま使用した。
【0061】
<NMR分光分析>
実施例1及び2で得た混合直後の組成物X及びYに対して、NMR分光分析を行った。
図1は、実施例1及び2で得た混合直後の組成物X及びYのNMRスペクトルである。
【0062】
図1を参照すれば、組成物X及びYは、いずれもTDCPのシクロペンタジエニル(Cp)基に由来する化学的移動δ=6.06ppm及びジメチルアミン(DMA)基に由来する化学的移動δ=2.93ppmにおいてピークを示し、有機溶媒であるキシレンまたはシクロヘプタトリエンに由来する化学的移動δ=2.92ppmにおいてピークをそのまま示すということが分かった。
【0063】
従って、それらから、実施例1,2による組成物X及びYに混合したTDCPとp−キシレンとの間;及びTDCPとシクロヘプタトリエンとの間には、いかなる化学反応も発生せず、それぞれの化合物特性をそのまま維持するということを確認することができた。
【0064】
また、組成物X及びYを加熱し、約200℃で約16時間維持する熱安定性試験を進めた後、その組成物X及びYに対してNMR分光分析試験を行った。
【0065】
図2は、前記熱安定性試験後の組成物X及びYに対して、NMR分光分析試験を行った結果として得られたNMRスペクトルである。
【0066】
図2を
図1と比較すれば、
図1及び
図2のNMRスペクトルの間には、いかなる差異も示されていないということを確認することができる。従って、それにより、組成物X及びYを、約200℃で約16時間加熱しても、組成物X及びYにおいて、構成成分の熱分解が発生していないということを確認することができる。この実験を介して、本発明の組成物X及びYは、熱的及び化学的に非常に安定しているということが分かる。このように、組成物X及びYの熱安定性が非常に優秀であるので、それを利用して、ジルコニウム含有膜を蒸着する場合、膜特性が改善される。
【0067】
<熱分析>
まず、実施例1,2で得た組成物X及びY、並びに比較例1のTDCPに対して、示差走査熱量分析(DSC)試験及び熱重量分析(TGA)試験を実施した。
【0068】
DSC試験は、熱分解温度を測定するために、熱分析器(製造社:TA Instruments社、モデル:SDTQ600)を、示差走査熱量分析モードにして実施し、TGA試験は、残留成分(residue)量を測定するために、上記熱分析器を熱重量分析モードにして実施した。
【0069】
それぞれの試験において、熱分解温度を測定するための熱分析試験条件は、次の通りであった。
移送ガス:アルゴン(Ar)ガス、
移送ガス流量:100cc/min、
加熱プロパイル:30℃から500℃に、10℃/minの昇温速度で加熱する。
【0070】
DSC試験において熱分解温度は、以下で説明する
図3のDSC熱曲線(thermogram)において、昇温時に、熱フロー量が低下していて、急にさらに上昇する地点の温度を決定した。
【0071】
図3は、実施例1,2で得た組成物X及びY、並びに比較例1のTDCPに係わる試験で得られたDSC熱曲線及びTGA熱曲線を、それぞれ1つの図面に総合したものである。
図3において、上段の(a)で表示された熱曲線は、DSC試験で得た結果であり、下段の(b)で表示された熱曲線は、TGA試験で得た結果である。
【0072】
図3から、組成物X及びYは、1つの分解温度のみを示した。それにより、驚くべきことに、該組成物がまるで1つの化合物のように挙動するということが分かった。それは、該組成物を利用して、ジルコニウム含有膜を形成するときに有利な特性である。
図3から、実施例1,2で得た組成物X及びY、並びに比較例1のTDCPの熱分解温度と残留成分(residue)量とは、下記表1で表示したようなものであるということを確認することができた。
【0073】
【表1】
【0074】
表1を参照すれば、TDCP単独、組成物X及び組成物Yそれぞれの分解温度は、DSC試験から、それぞれ211.34℃、211.42℃及び213.29℃であるということを確認することができる。それにより、本発明による組成物X及び組成物Y、特に、組成物Yが、TDCP単独化合物を利用する場合より分解温度が高いために、高温蒸着が可能であるということが分かる。
【0075】
また、TDCP単独、組成物X及び組成物Yそれぞれを500℃まで加熱した後の残留成分量は、それぞれ11.88%、4.68%及び5.06%であるということが分かった。ここで、残留成分量の%は、加熱前の試料重量を基準にした百分率である。それにより、TDCP単独化合物を利用して、ジルコニウム含有膜を蒸着する場合に比べ、本発明の組成物X及び組成物Yを利用して、ジルコニウム含有膜を蒸着する場合、半導体基板を汚染させずに、ジルコニウム含有膜を簡便に形成することができるということが分かる。
【0076】
<粘度測定>
TDCP単独、組成物X及び組成物Yそれぞれに対して、次のように粘度を測定した。
【0077】
具体的には、粘度計(製造社:AND社、モデル:SV−10)をグローブボックス内に入れ、そのグローブボックス内部の温度約11℃で、TDCP単独、調製直後の組成物X及び組成物Yの試料に対して、粘度をそれぞれ全5回測定した。その後、TDCP単独、組成物X及び組成物Yそれぞれを、約200℃で約2時間加熱する熱安定性試験を進め、再びグローブボックス内部温度約11℃で、それらそれぞれに対して粘度を全5回測定した。
【0078】
該試験結果は、下記表2に総合されている。
【0079】
【表2】
【0080】
表2を参照すれば、組成物X及び組成物Yが、TDCP単独に比べ、加熱前後を問わず、粘度が低いということを確認することができる。従って、本発明による組成物X及び組成物Yは、いずれもTDCP単独に比べ、分子間引力が弱く、揮発性にすぐれるために、得られたジルコニウム含有膜の段差被覆性を改善することができるということを確認することができる。
【0081】
実施例3:ジルコニア膜蒸着試験
実施例1及び2で得られた組成物組成物X及び組成物Yを利用して、PEALD(plasma enhanced atomic layer deposition)工程によるジルコニア成膜評価を行った。不活性気体であるアルゴンは、パージ及び前駆体の移送目的に使用した。前駆体、アルゴン、プラズマ及びアルゴンの導入は、1サイクルにし、蒸着は、P型(100)Siウェーハ上で行った。
【国際調査報告】