(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
植え込み型医療装置が、1つ又はそれ以上の電極からの電気信号を得るように構成されている感知モジュールと、感知モジュールからの電気信号を頻脈性不整脈を監視するための頻脈性不整脈検出アルゴリズムに従って処理するように構成されている制御モジュールと、を備えている。制御モジュールは、第2の植え込み型医療装置によって送達されるペーシング列の開始を検出し、検出されたペーシング列の種類を確定し、検出されたペーシング列の種類に基づいて頻脈性不整脈検出アルゴリズムを修正する。
前記制御モジュールは、前記ペーシング列の周期長さを推定し、前記ペーシング列の前記推定された周期長さを少なくとも1つの周期長さ閾値に比較し、前記検出されたペーシング列の前記種類を前記比較に基づいて確定する、請求項1に記載の装置。
前記制御モジュールは、前記検出されたペーシング列の直前の心拍数のオンセット、ペーシングパルス間隔の規則性、ペーシングアーチファクト振幅の一貫性、ペーシングパルススルーレートの一貫性、及び/又はペーシングパルス極性の一貫性、のうちの1つ又はそれ以上を解析することによって、前記検出されたペーシング列の前記種類を確定する、請求項1又は請求項2の何れか一項に記載の装置。
前記制御モジュールは、前記電気信号の振幅、パルス幅、及びスルーレートのうちの少なくとも1つを解析して、前記電気信号内のペーシングパルスを検出し、前記検出されたペーシングパルスを使用して前記ペーシング列の開始を検出する、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の装置。
前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムは少なくとも1つの段を含んでおり、当該段では、前記制御モジュールは前記感知された電気信号の複数の既定のセグメントの形態を分析し、前記制御モジュールは、前記ペーシング列の前記種類が抗頻拍ペーシング(ATP)であると検出していることに応え、前記形態解析を現在の状態に保持することによって前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムを修正する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の装置。
前記制御モジュールは、前記ペーシング列の終止を検出し、前記ペーシング列の前記終止を検出していることに応え、前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムの前記形態解析を再開する、請求項1から請求項6の何れか一項に記載の装置。
前記制御モジュールは、前記ペーシング列の推定周期長さの少なくとも2倍に亘ってペーシングスパイクが検出されなかったこと及び前記ペーシング列の前記開始の検出からの時間量が閾値の時間量を超えていることの少なくとも一方の場合に、前記ペーシング列の終止を検出する、請求項6に記載の装置。
前記制御モジュールは、閾値の時間期間内に2つのペーシングパルスが検出されている場合に前記ペーシング列パルスの開始を検出する、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の装置。
前記制御モジュールは、少なくとも3つの直近に検出されたペーシングスパイクを使用して少なくとも2つの周期長さを算定し、前記ペーシング列の前記周期長さを前記少なくとも2つの直近に算定された周期長さに基づいて推定する、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の装置。
前記制御モジュールは、頻脈性不整脈の前記第1の感知事象の前記形態に一致する形態を有している後続の感知事象の前記数が、下位の閾値より大きい又は下位の閾値に等しく、上位の閾値より小さい又は上位の閾値に等しい場合に、前記律動をショック可能でないとして分類する、請求項10に記載の装置。
前記制御モジュールは、前記ペーシング列の種類が抗頻拍ペーシング(ATP)列であることを検出し、前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムの前記修正は最大10秒に及んでショックの遅延をもたらす、請求項1から請求項11の何れか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0035]
図1は、患者12内に植え込まれている一例としての心臓システム10を示す概念図である。心臓システム10は、胸郭及び/又は胸骨より上に植え込まれている皮下ICDシステム14と、患者12の心臓18内に植え込まれているリードレス心臓ペーシング装置16と、を含んでいる。ここに更に詳細に説明されている様に、皮下ICDシステム14は、ペーシング装置16によって送達されるペーシング療法を、感知される電気信号を解析することによって検出するように、及びペーシング療法を検出していることに応えて感知及び/又は頻脈性不整脈検出を修正するように、構成されている。
【0014】
[0036]皮下ICDシステム14は、少なくとも1つの植え込み型心臓除細動リード22へ接続された植え込み型心臓除細動器(ICD)20を含んでいる。
図1のICD20は、患者の左側部の皮膚の下、但し胸郭より上に皮下的に植え込まれている。除細動リード22は皮下的に皮膚の下を但し胸郭より上をICD20から患者12の体幹部の中心に向かって延び、体幹部の中心付近で曲がり又は向きを変え、皮下的に皮膚の下を但し胸郭及び/又は胸骨より上を延びている。除細動リード22は、外側方向に胸骨の左又は右へオフセットされていてもよいし、胸骨を越えて配置されていてもよい。除細動リード22は、実質的に胸骨に平行であってもよいし、近位端か遠位端のどちらかのところで胸骨から側方に角度を付けられていてもよい。
【0015】
[0037]除細動リード22は、ICD20へ接続されるように構成されているコネクタを含んでいる近位端と、1つ又はそれ以上の電極を含んでいる遠位部分と、を有する絶縁性リード本体を含んでいる。除細動リード22は、更に、リード本体内に電気的伝導経路を形成していて電気的コネクタと電極各々を相互接続している1つ又はそれ以上の導体を含んでいる。
【0016】
[0038]除細動リード22は、除細動電極24を、除細動リード22の遠位部分寄り、例えば除細動リード22の胸骨に沿って延びている部分寄りに含んでいる。除細動リード22は、胸骨に沿って、除細動電極24とICD20によって又はICD20上に形成されているハウジング電極(又は療法ベクトルの他方である第2の電極)との間の療法ベクトルが実質的に心臓18の心室を横切るような具合に設置されている。療法ベクトルは、1つの実施例では、除細動電極24上の或る点(例えば除細動電極24の中心)からICD20のハウジング電極上の或る点へ延びている線として見ることができる。除細動電極24は、1つの実施例では、細長のコイル電極とすることができる。
【0017】
[0039]除細動リード22は、更に、除細動リード22の遠位部分に沿って配置されている感知電極26及び28の様な1つ又はそれ以上の感知電極を含んでいる。
図1に示されている実施例では、感知電極26と28は除細動電極24によって互いから分離されている。但し他の実施例では、感知電極26と28はどちらもが除細動電極24の遠位に又はどちらもが除細動電極24の近位にあってもよい。他の実施例では、リード22はより多い又はより少ない電極を含んでいることもある。
【0018】
[0040]ICDシステム14は、電気信号を、電極26及び28とICD20のハウジング電極との組合せを含む1つ又はそれ以上の感知ベクトルを介して感知することができる。例えば、ICD20は、電極26と電極28の間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を得る、電極26とICD20の導電性ハウジング電極との間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を得る、電極28とICD20の導電性ハウジング電極との間の感知ベクトルを使用して感知される電気信号を得る、又はそれらの組合せを使用して感知される電気信号を得る、ことができる。幾つかの事例では、ICD20は、除細動電極24と、電極26と28の一方又はICD20のハウジング電極と、を含んでいる感知ベクトルを使用して心臓の電気信号を感知していることさえある。
【0019】
[0041]感知される固有信号は、心筋によって生成される電気信号であって心臓周期中の様々な時点での心臓18の脱分極及び再分極を示唆する電気信号を含んでいるであろう。加えて、感知される電気信号は、ペーシング装置16によって生成され心臓18へ送達される電気信号、例えばペーシングパルス、を含んでいる場合もある。ICD20は、1つ又はそれ以上の感知ベクトルによって感知される電気信号を解析して、心室頻拍又は心室細動の様な頻脈性不整脈を検出する。頻拍を検出していることに応えて、ICD20は、1つ又はそれ以上のコンデンサの積重体の様な貯蔵要素を充電し始め、充電されたときに、なおも頻脈性不整脈が存在していて除細動療法を必要とすると判定されれば1つ又はそれ以上のショックを除細動リード22の除細動電極24を介して送達するようになっている。ここでの使用に際し、「ショック」又は「複数のショック」という用語は、(単数又は複数の)除細動ショック、(単数又は複数の)カーディオバージョンショック、又は頻脈性不整脈を洞調律へ変換するために送達される他のショックをいう。ここに更に詳細に説明されている様に、ICD20は、リード22上の感知される電気信号を解析してペーシング装置16によって提供されるペーシング療法を検出し、ペーシング療法を検出していることに応えて、ペーシング療法がICD20の感知及び検出に悪影響を与える公算を引き下げるべく感知及び/又は頻脈性不整脈検出を修正する。
【0020】
[0042]以上に説明されている様に、心臓システム10は、更に、少なくとも1つの心臓ペーシング装置16を含んでいる。
図1に示されている実施例では、心臓ペーシング装置16は、ペーシング療法を心臓18へペーシング装置16のハウジング上に担持されている一対の電極を介して提供する植え込み型リードレスペーシング装置である。一例としての心臓ペーシング装置が、グリーンハット(Greenhut)らへ「リードレスペーシング及びショック療法のためのシステム及び方法」と題された米国特許出願第13/756,085号に記載されている。心臓ペーシング装置16は2つ又はそれ以上の電極をそのハウジング外部に担持させて含んでいるので、他のリード又は構造体を心臓18の他の房室に常在させる必要はない。
【0021】
[0043]
図1の実施例では、心臓ペーシング装置16は、心臓18の電気的活動を感知し、ペーシング療法、例えば抗頻拍ペーシング(ATP)療法、徐脈ペーシング療法、及び/又はショック後ペーシング療法を心臓18へ送達するように心臓18の右心室内に植え込まれている。ペーシング装置16は、心臓18の右心室の壁へ、組織に貫入する1つ又はそれ以上の定着要素を介して付着されていてもよい。これらの定着要素は、ペーシング装置16を心臓組織へ固定し、電極(例えばカソード又はアノード)を心臓組織と接触に保持することができる。また一方、他の実施例では、システム10は、追加のペーシング装置16を心臓12のそれぞれの房室(例えば右又は左心房及び/又は左心室)内に含んでいることもある。更なる実施例では、ペーシング装置16は、ペーシング装置16が心臓18の外に配置されるように心臓18の外表面へ(例えば心外膜と接触に)付着されていることもある。
【0022】
[0044]ペーシング装置16は、ペーシング装置16のハウジング上に担持されている電極を使用して電気信号を感知することができる。これらの電気信号は、心筋によって生成されている電気信号であって心臓周期中の様々な時点での心臓18の脱分極及び再分極を示唆する電気信号である。ペーシング装置16は、感知される信号を解析して、心室頻拍又は心室細動の様な頻脈性不整脈を検出する。頻脈性不整脈を検出していることに応え、ペーシング装置16は、頻脈性不整脈の種類に依存して例えばATP療法をペーシング装置16の電極を介して送達し始める。ATP療法に加えて又はATP療法の代わりに、ペーシング装置16は、更に、徐脈ペーシング療法及びショック後ペーシング療法を送達することもできる。
【0023】
[0045]心臓ペーシング装置16及び皮下ICDシステム14は、互いに完全に独立して動作するように構成されている。言い換えれば、ペーシング装置16と皮下ICDシステム14は、感知及び/又は療法についての情報を一方向通信又は二方向通信を使用してやり取りするための互いとのテレメトリ通信セッションを確立する能力がない。代わりに、ペーシング装置16と皮下ICDシステム14の各々は、各自の電極を介して感知されるデータを解析して頻脈性不整脈検出及び/又は療法決定を行っている。そういうものとして、各装置は、他方が頻脈性不整脈を検出しようとしているのかどうか、他方が療法を提供しようとしているのかどうか又は何時療法を提供することになるのか、など、を知らない。
【0024】
[0046]ATP又は(単数又は複数の)ショック(例えば(単数又は複数の)除細動ショック又はカーディオバージョンショック)のどれかを用いて治療することができ得る頻脈性不整脈中は、確実にATP療法が重複したりショック後に起こったりしないようにすることが肝要である。ショック後のATP印加は不整脈を誘発しないとも限らず、患者へ害を与えかねない。また、ペーシング装置16からのペーシングの送達は皮下ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出に干渉しないとも限らない。この干渉は、感度の低下(例えば、心室頻拍(VT)及び/又は心室細動(VF)を検出することができない)又は特異度の低下(例えば、上室性頻拍(SVT)、洞性頻拍(ST)、正常洞調律、心房細動、心房粗動、などの様な、ショック不要と判定される頻脈性不整脈について療法を差し控えることができない)という形となって現れるかもしれない。皮下ICDシステム14とペーシング装置16の間の装置間通信を提供するようにシステムを設計することもできたかもしれないが、これではシステムに複雑性が加わることになるし、しかも望まれないショック後ATP療法を予防できるほど極めて有効又は迅速というわけにはいかないかもしれない。ここに説明されている技法は、皮下ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出への干渉を低減し、場合によっては干渉を排除する。
【0025】
[0047]
図1は皮下ICDシステム14及びリードレスペーシング装置16の文脈で説明されているが、本技法は他の共在システムへ適用することもできる。一例として、肋骨及び/又は胸骨より上に植え込まれる代わりに遠位部分が少なくとも部分的に胸骨の下(又は他の心膜外場所)に植え込まれているリードを含んでいるICDシステムがある。別の例として、リードレスペーシング装置の代わりに、ペースメーカーと、ペースメーカーへ接続されていてペースメーカーから心臓の1つ又はそれ以上の房室の中へ延びるか又は心臓の外部へ付着されてペーシング療法を1つ又はそれ以上の房室へ提供するようになっている1つ又はそれ以上のリードと、を有するペーシングシステムが植え込まれるということもある。そういうものとして、
図1の実施例は、単に例示を目的に示されているものであり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。
【0026】
[0048]
図2は、一例としてのICD20の電子的構成要素の構成例の機能ブロック線図である。ICD20は、制御モジュール30、感知モジュール32、療法モジュール34、通信モジュール38、及びメモリ40を含んでいる。電子的構成要素は、充電式又は非充電式のバッテリであってもよいパワー源36からパワーを受け取ることができる。他の実施形態では、ICD20は、より多い又はより少ない電子的構成要素を含んでいることもある。説明されているモジュールは、共通のハードウェア構成要素上にまとめて実装されていてもよいし、個別ではあるが相互動作できるハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素として別々に実装されていてもよい。異なる機構をモジュールとして描写しているのは、異なる機能的態様を強調表示することを意図したものであり、必ずしもその様なモジュールが別々のハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素によって実現されなければならないことを示唆するものではない。そうではなく1つ又はそれ以上のモジュールと関連付けられている機能性は、別々のハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素によって遂行されていてもよいし、共通の又は別々のハードウェア構成要素、ファームウェア構成要素、又はソフトウェア構成要素内に統合されていてもよい。
【0027】
[0049]感知モジュール32は、電極24、26、及び28の幾つか又は全てへ、リード22の導体及び1つ又はそれ以上の電気的フィードスルーを介して電気的に連結されており、更にハウジング電極へICD20のハウジングに内在の導体を介して電気的に連結されている。感知モジュール32は、電極24、26、及び28とICD20のハウジング電極の1つ又はそれ以上の組合せを介して感知される電気信号を得るように、及び得られた電気信号を処理するように、構成されている。
【0028】
[0050]感知モジュール32は、1つ又はそれ以上のアナログ構成要素、デジタル構成要素、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。感知モジュール32は、感知される信号をデジタル形式へ変換し、デジタル信号を処理又は分析のために制御モジュール30へ提供することができる。例えば、感知モジュール32は、感知電極からの信号を増幅し、増幅された信号をアナログデジタル変換器(ADC)を使用してマルチビットデジタル信号へ変換するようになっていてもよい。感知モジュール32は、更に、処理された信号を閾値と比較して心房脱分極又は心室脱分極(例えばP波又はR波)の存在を検出し、心房脱分極(例えばP波)の存在又は心室脱分極(例えばR波)の存在を制御モジュール30へ指し示すようになっていてもよい。感知モジュール32は、更に、感知される信号を処理して心電図を制御モジュール30へ出力するようになっていてもよい。
【0029】
[0051]制御モジュール30は、VT又はVFの様な頻脈性不整脈を監視する感知モジュール32からの信号を処理することができる。頻脈性不整脈を検出していることに応え、制御モジュール30は、療法モジュール34を制御して、療法モジュール34内の貯蔵要素を充電させ、必要になれば、頻脈性不整脈を終止させるべくカーディオバージョンシパルス又は除細動パルスを送達させることができる。カーディオバージョンシパルス又は除細動パルスは、リード22の除細動電極24とICD20のハウジング電極の間の療法ベクトルを使用して提供されるようになっていてもよい。療法モジュール34は、例えば、1つ又はそれ以上のコンデンサ、変圧器、スイッチ、など、を含んでいてもよい。制御モジュール30は、療法モジュール34を制御して、前縁電圧、傾き、送達されるエネルギー、パルス位相、など、を含む、数多くの波形特性の何れかを有するカーディオバージョンシショック又は除細動ショックを生成させ、送達させることができる。
【0030】
[0052]以上に
図1に関して説明されている様に、ペーシング装置16は独立して頻脈性不整脈を検出し、場合に依っては頻脈性不整脈を終止させようとしてATPを提供する。ペーシング装置16によって提供されるATP療法は、ICD20の感知モジュール32による感知及び頻脈性不整脈検出に干渉しかねない。この干渉は、感度の低下(例えば、VT又はVFを検出することができない)又は特異度(例えば、VT又はVFで療法を必要としない律動について看破すること)の低下という形となって現れないとも限らない。ICD20は、ペーシング装置16によって提供されるATPを、リード22からの感知される電気信号を解析することによって検出するように、及びATPを検出していることに応えて感知及び/又は検出を調節するように、構成されている。これを果たすために、感知モジュール32は、リード22からの感知される電気信号内のペーシングスパイクを検出するように構成されている追加の構成要素を含んでいてもよい。例えば、感知モジュール32は、
図3及び
図5に関して更に詳細に説明されている様にペースパルス検出器を含んでいてもよい。
【0031】
[0053]通信モジュール38は、臨床医のプログラマ又は患者監視装置の様な外部装置と通信するための何れかの適したハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの何れかの組合せ、を含んでいる。例えば、通信モジュール38は、アンテナ42を介してデータを送信及び受信するのに適切な変調部構成要素、復調部構成要素、周波数変換部構成要素、フィルタ処理部構成要素、及び増幅器構成要素を含んでいてもよい。アンテナ42はICD20のコネクタブロック内又はハウジングICD20内に配置させることができる。
【0032】
[0054]ICD20の各種モジュールは、何れかの1つ又はそれ以上のプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はアナログ回路機構又はデジタル回路機構又は論理回路機構を含む同等の離散型又は集積型回路機構、を含んでいてもよい。メモリ40は、制御モジュール30又はICD20の他の構成要素によって実行されるとICD20の1つ又はそれ以上の構成要素に本開示でのそれら構成要素に帰属する様々な機能を遂行させるコンピュータ可読命令を含んでいてもよい。メモリ40は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、スタティック不揮発性RAM(SRAM)、電子的消去可能プログラム可能ROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、又は何れかの他の非一時的コンピュータ可読記憶媒体の様な、何れの揮発性、不揮発性、磁気式、光学式、又は電気式の媒体を含んでいてもよい。
【0033】
[0055]
図3は、
図2の感知モジュール32の様な感知モジュールの一例としての感知チャネルのブロック線図である。感知チャネルは、第1の感知ベクトル上の感知される信号を処理するための感知チャネルであってもよい。感知モジュール32は、処理されるべき感知ベクトルの各々のための類似の感知チャネルを含んでいてもよい。複数の感知チャネルの場合には、感知モジュール32が二重の構成要素を含んでいてもよいし、各感知フィルタが1つ又はそれ以上の構成要素を共有していてもよい。
【0034】
[0056]
図3に示されている感知チャネルは、前置フィルタ50、前置増幅器52、低域通過フィルタ54、アナログデジタル変換器(ADC)56、デシメータ58、ブランキングモジュール60、ペースパルス検出器62、ブランキング制御モジュール64、感知デジタルフィルタ66、ECG形態デジタルフィルタ67、及びECGフィルタ68を含んでいる。感知チャネルの当該構成は、本質的に例示であり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。感知モジュール32の感知チャネルは、
図3に示され説明されているより多い又は少ない構成要素を含んでいることもある。
【0035】
[0057]リード22の感知ベクトル上で感知される電気信号は、感知モジュール32の前置フィルタ50へ提供される。前置フィルタ50へ提供される電気信号は差分信号である。前置フィルタ50は、直流、高周波数、及び高電圧の過渡信号をフィルタ除去するために1つ又はそれ以上の受動抵抗器−コンデンサ(RC)帯域通過フィルタ及び保護ダイオードを含んでいてもよい。前置フィルタ50からの事前フィルタ処理された信号が前置増幅器52へ提供され、前置増幅器52は入力信号を或る利得で増幅し、事前フィルタ処理された差分信号をシングルエンド形信号へ変換する。
【0036】
[0058]前置増幅器52は、幾つかの事例では、更に、入力レベル又は出力レベルが前置増幅器の範囲を超過する場合に信号(
図3に「前置増幅器オーバーレンジ」と標記)を生成するようになっている。前置増幅器の範囲は、±10−20ミリボルト(mV)の間であってもよい。とはいえ、当該範囲は他の実施形態ではより狭い又はより広いこともある。前置増幅器52は、入力信号が前置増幅器を振り切らせている場合に前置増幅器オーバーレンジ信号を生成する。その様な条件は、1−5mVにより近いはずである心室収縮に対応する電気信号の期待振幅より遥かに大きい、大凡10−20mVより大きい入力信号を示唆している場合もある。前置増幅器オーバーレンジ信号は、以下に更に説明されている様にペーススパイク又はペースアーチファクトが検出されているかどうかを判定する段階での解析のためにペースパルス検出器62へ提供される。
【0037】
[0059]事前増幅処理された信号は、前置増幅器52によって低域通過フィルタ54へ出力される。低域通過フィルタ54は、デジタル化前にアンチエイリアスフィルタリング及びノイズ除去を提供することができる。低域通過フィルタ54によって出力されるフィルタ処理済みの信号は、アナログ信号をデジタルビットストリームへ変換するADC56へ提供される。1つの実施例では、ADC56は、シグマ−デルタ変換器(SDC)とされているが、他の型式のADCを使用することもできる。ADC56の出力は、解像度を増加させサンプリングレートを減らすデジタル低域通過フィルタとして機能するデシメータ58へ提供される。1つの実施例では、ADCは、8ビット解像度及び16キロヘルツ(kHz)サンプリングレートを有している。デシメータ58は、16ビット解像度及び1kHzサンプリングレートを有している。これらの値は、単に例示が目的であり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。
【0038】
[0060]ADC56は、更に、入力範囲及びスルーレート範囲の様な他の特性を有していてもよい。1つの実施例では、ADC56の入力範囲は25−825mVの間であり、スルーレート範囲は、0から6.24mV/ms、3.12mV/ms、1.56mV/ms、又は0.78mV/msまでであってもよい。ADC56は、入力信号がADC56の入力範囲より大きい場合にはADC入力オーバーレンジ信号を生成するように構成されていてもよい。その様な条件は、例えば、期待心室収縮1−5mVより遥かに大きいとされる大凡10−20mVピークより大きい感知信号を示唆している場合もある。代替的又は追加的に、ADC56は、スルーレートが、ADC56が追跡できるより速い場合にはスルーレートオーバーレンジ信号を生成するように構成されていてもよい。例えば、ADC56に内在の蓄積された電圧誤差信号が比較器を用いて監視されていて、誤差信号が比較器の閾値を超えたときにスルーレートオーバーレンジが発動されるというようになっていてもよい。スルーレートオーバーレンジは、1つの事例では、入力信号のスルーレートが4mV/msより大きい又は4mV/msに等しい場合に生成され又はアサートされるようになっている。ADCの入力オーバーレンジ信号及び/又はスルーレートオーバーレンジ信号は、ペーススパイク又はペースアーチファクトが検出されているかどうかを判定する段階での解析のためにペースパルス検出器62へ提供される。
【0039】
[0061]従来型感知チャネルでは、デジタル化された信号は直接に感知フィルタ66及びECGフィルタ68へ提供されている。感知デジタルフィルタ66は、帯域通過フィルタ(例えば10乃至32Hz)、整流器、及び閾値検出器を含んでいる。感知デジタルフィルタ66は、1つの実施例では、感知デジタルフィルタ66への信号入力のピーク値の或るパーセンテージとプログラムされている最小値との間で動的に変動する自動調節式の閾値を含んでいる。制御モジュール30へ提供される感知デジタルフィルタ66の出力は、感知された電気信号が閾値を超えている場合はいつも心臓事象が検出されていることを、例えば心室感知チャネルの場合ならR波又は心房感知チャネルの場合ならP波が検出されていることを示唆する。感知デジタルフィルタ66による処理と並行して、診断ECGフィルタ68が広帯域幅フィルタを適用してECG信号を出力し、形態ECGフィルタ67がフィルタ(例えば、2.5乃至32Hzの帯域幅)を適用して、制御モジュール30による形態解析(以下に更に詳細に説明されているグロス形態の解析及び拍動ベースの形態解析を含む)のための信号を出力する。
【0040】
[0062]以上に説明されている様に、ペーシング装置16によって送達されるペーシングパルスは、感度を低下させる及び/又は特異度を低下させるの何れかによって皮下ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出に干渉しないとも限らない。
図4A及び
図4Bは、ペーシングパルスが心室頻拍の上を送達されている一例としての電気信号を示している。
図4Aは律動のECGを示し、
図4Bは感知デジタルフィルタ66内に起こっている動作を表すプロットを示している。
図4Bに示されているプロットでは、実線の信号は帯域通過フィルタ処理され整流されたECGである。点線の信号は、感知デジタルフィルタ66の自動調節式感知閾値であり、当該閾値は、以上に説明されている様に、感知デジタルフィルタ66への信号入力のピーク値の或るパーセンテージとプログラムされている最小値との間で動的に変動し得る。ECG信号が自動調節式感知閾値を超えると、縦の太い破線によって指し示される様に、感知事象が検出される。感知デジタルフィルタは、これらの検出された感知事象を、更なる処理/解析のために制御モジュール30へ出力する。
【0041】
[0063]
図4A及び
図4Bの図から分かる様に、ペーシングパルスの大きい振幅は、自動調節式感知閾値を、ペーシングパルスの後に続く基礎律動の心臓事象の少なくとも幾つかを検出するにはあまりにも大きい値へ増加させる。翻せば、制御モジュール30は頻脈性不整脈を検出する段階での使用にとって精度の高い心臓事象の表示を持てなくなる。大きいペーシングパルスは、更に、当該ペーシングパルスが前置増幅器の入力範囲を超過している、ADCの入力範囲を超過している、ADCのスルーレートを超過している、又はそれ以外に感知チャネルの構成要素に影響を及ぼしているせいで、ペーシングパルス後の短時間に亘ってECG信号にアーチファクトを引き起こすこともある。
【0042】
[0064]ペーシング装置62によって提供される独立したペーシング療法が引き起こす、ICD20の感知及び頻脈性不整脈検出での起こり得る干渉を勘案するために、ICD20は、ペースパルス検出器62、ブランキングモジュール60、及びブランキング制御モジュール64を、(単数又は複数の)感知チャネル内に含んでいる。ペースパルス検出器62は、デシメータ58と並列して、ADC56によって出力される信号を得る。ペースパルス検出器62は、ADC56から得られる信号を処理してペーシングパルスの特性を識別する1つ又はそれ以上の構成要素を含んでいてもよい。1つの実施例では、ペースパルス検出器62は、ADC56から信号入力を処理して信号の振幅、信号のスルーレート、及び/又は信号のパルス幅を解析するようになっている。ペースパルス検出器62は、ペーシングパルスに対応している電気信号を通過させ心臓の電気信号を拒絶するように構成されているフィルタ(例えば、一例として大凡100Hzから2000−4000Hzの間の周波数を有する信号を通過させる帯域通過フィルタ又は100Hzより大きい周波数を有する信号を通過させる高域通過フィルタ)を含んでいてもよい。代替的又は追加的に、ペースパルス検出器62は、微分器、差分フィルタ、又は1次微分フィルタを含み、それを感知信号のスルーレートを表す信号を得るのに使用していてもよい。
【0043】
[0065]ペースパルス検出器62は、更に、1つ又はそれ以上の閾値検出器を含んでいてもよい。例えば、ペースパルス検出器は、微分器又は1次微分フィルタの出力をスルーレート閾値と比較するスルーレート閾値検出器を含んでいてもよい。スルーレートがスルーレート閾値を超えていれば、ペースパルス検出器62は信号がペーシングパルスに対応していると判定する。ペースパルス検出器62は同じく入力信号の振幅を解析するようになっていてもよい。幾つかの事例では、ペースパルス検出器62は、スルーレートと振幅の組合せを解析してペーシングパルスの存在を検出するようになっている。例えば、スルーレートがスルーレート閾値を超えていれば、ペースパルス検出器62は感知される信号の振幅を振幅閾値検出器を使用して1つ又はそれ以上の振幅閾値に比較するようになっていてもよい。
【0044】
[0066]幾つかの事例では、ペースパルス検出器62が2つのペースパルス検出器を含んでいることもある。例えばここにペースアーチファクト検出器と呼称される第1の検出器は、振幅、スルーレート、又はパルス幅がICD20の頻脈性不整脈検出の感度に影響を与えるほどに大きいペーシングパルスのみを検出するように構成されている第1の閾値を有している。その様なペーシングパルスはここではペースアーチファクトと呼称されている。例えばここにペーススパイク検出器と呼称される第2の検出器は、全てのペーシングパルスを、それらが頻脈性不整脈検出に影響を与えるほどに大きいかどうかにかかわらず検出するように構成されている第2の閾値を有している。これらのペーシングパルスはここではペーススパイクと呼称されている。これらのより小さいペーシングスパイクについてはブランキングが起こることはないにせよ、制御モジュール30はなおもこの情報を自身の頻脈性不整脈検出に利用することができる。ペーススパイク検出器は、小さい振幅及び/又はパルス幅を有するペーシングパルスを検出することができるようにペースアーチファクト検出器より高い感度を有しているであろう。その結果、ペースアーチファクトはペーススパイクとしても検出されることになる。他の事例では、ペースパルス検出器62は単一の検出器しか含んでいない。ペースパルス検出器62は、この様に、スルーレート、振幅、パルス幅、又はペースアーチファクト及びペーススパイクを検出するための他の特性、を解析するようになっている。
【0045】
[0067]ADC56からの信号の入力に加え、ペースパルス検出器62は、更に、前置増幅器52からの前置増幅器オーバーレンジ信号、ADC56からのADC入力オーバーレンジ信号、及びADC56からのスルーレートオーバーレンジ信号を得る。これらの信号の全て又は少なくとも幾つかがペーシングアーチファクトを示唆している場合もある。例えば、前置増幅器オーバーレンジ信号が閾値の時間期間に亘って存在している又はアサートされているということは、感知されている信号が期待心室収縮1−5mVより遥かに大きいことを示唆している可能性がある。別の実施例として、ADCのスルーレートオーバーレンジ信号が閾値の時間量である例えば大凡1msより多い時間量に亘って存在している又はアサートされているということは、ペーシングアーチファクトを示唆している可能性があり、というのも、ADC56のスルーレート限界は、EMIの場合なら極めて長い時間に亘って超過されるはずがなく(例えば1msより小さい)、また心室収縮の感知なら決して超過されることはないからである。幾つかの事例では、閾値時間は調節式であってもよい。更なる実施例では、ADC入力オーバーレンジ信号が閾値の時間量である例えば約1msより多い時間量に亘って存在している又はアサートされているなら、感知されている信号が心室収縮より遥かに長時間に亘って高い振幅を有していることが示唆される可能性がある。この様に、これらのオーバーレンジ信号の各々は、振幅及び/又はパルス幅がICD20による頻脈性不整脈検出の感度に影響を与えるほどに高いペースパルス即ちペースアーチファクトの存在を示唆している可能性があるとされる特定の判定基準に合致する場合もある。これらの判定基準はオーバーレンジ条件と呼称されている。他の実施例では、オーバーレンジ条件が起こっているという単純な事実(それがどれほど長時間に亘って起こっているかは無関係)がオーバーレンジ条件とされていることもある。
【0046】
[0068]ペースパルス検出器62は、以上に説明されている様に遂行されるペーススパイク解析及び/又はペースアーチファクト解析と共にこれらのオーバーレンジ信号を解析し、それら解析に基づいてペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号を出力する。1つの実施例では、ペースパルス検出器62は、オーバーレンジ条件の何れかが合致しているか又は振幅、スルーレート、及びパルス幅の解析がペーシングアーチファクトの存在を示唆している場合に、ペースアーチファクト検出信号を生成し及び/又はアサートする。同じく、ペースパルス検出器62は、オーバーレンジ条件の何れかが合致しているか又は振幅、スルーレート、及びパルス幅の解析がペーシングスパイクの存在を示唆している場合に、ペーススパイク検出信号を生成し及び/又はアサートする。ペースアーチファクト解析及びペーススパイク解析は上述のオーバーレンジ条件をトリガするほどには大きくないペースアーチファクト及びペーススパイクを検出できることもある。
【0047】
[0069]ペーススパイク検出器62は、ペースアーチファクト検出信号をブランキング制御モジュール64へ出力し、ペーススパイク検出信号を制御モジュール30へ出力する。
[0070]ブランキング制御モジュール64は、ペースアーチファクト検出信号がアサートされるとブランキングを開始する。この様に、ブランキング制御モジュール64は、オーバーレンジ条件の何れか1つが合致する又は振幅及び/又はパルス幅が頻脈性不整脈検出の感度に影響を与えるほどに高いペーシングパルスの存在をペースアーチファクト検出解析が示唆すると、ブランキングを開始する。ブランキングは、既定の時間期間に亘って、又はペースアーチファクト検出信号がデアサートされるまで、又はペースアーチファクト信号が特定の時間期間に亘ってデアサートされてしまうまで、継続してもよい。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、ペーシングアーチファクトが検出された感知チャネルのみでブランキングを開始している。別の実施例では、ブランキング制御モジュール64は、ペーシングアーチファクトが感知チャネルの何れか1つに検出されると感知チャネル全てでブランキングを開始している。ブランキングが所望されると、ブランキング制御モジュール64は制御信号をブランキングモジュール60へ提供してデシメータ58から出力される信号のブランキングを開始させる。ブランキングモジュール60は、ブランキング制御モジュール64からの制御信号を受信していることに応えて、信号の値を保持するサンプルアンドホールド回路を含んでいてもよい。ブランキングモジュール60は、ブランキング制御モジュール64が制御信号を解除するまで、感知される電気信号の値を保持し続ける。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64はホールド信号を印加し、而してブランキングを大凡20ミリ秒(ms)より小さい又は大凡20ミリ秒(ms)に等しい時間に亘って生じさせるようになっている。他の実施形態では、ブランキングモジュール60は、ブランキング開始時の値とブランキング終了時の値の間の線形補間又は他の補間を提供することができる。
【0048】
[0071]ブランキングモジュール60は、幾つかの事例では、更に、サンプルアンドホールド回路より前の電気信号に遅延を導入して、ペースパルス検出器62によるペーシングパルスの検出とブランキング制御モジュール64による入力の解析が、電気信号をブランキングするべきかどうかを、ペーシングパルスからのアーチファクトが感知及びECG出力へ伝搬する機会を持つ前に判定できるようにする、遅延ブロックを含んでいてもよい。感知チャネルの中へ導入される遅延は、感知チャネルの何処でブランキングが起こるか及びブランキングモジュール60が上述の補間を遂行するかどうかにも依存するが、大凡1−20msの間とすることができる。幾つかの事例では、デシメータ58が同様にADC出力とブランキングモジュール60の間に幾らかの遅延を提供しているため、この遅延ブロックが存在していない又はより短い時間期間に亘って存在しているという場合もある。
【0049】
[0072]ブランキングモジュール60の出力は、以上に動作が説明されている感知デジタルフィルタ66、ECG形態フィルタ67、及び診断デジタルECGフィルタ68へ提供される。以上に説明されている様にブランキングを提供することによって、ペースアーチファクトは
図5A及び
図5Bのプロットに示されている様に有意に低減される。
図5Aは、
図4Aと同じ信号を示しているが、24msのブランキングが検出されたペースアーチファクトの各々へ適用されたものである。同じく、
図5Bは、デジタル感知フィルタ66内の動作のプロットを示している。
図5Bから見て分かる様に、ペースアーチファクトを検出していることに応えて感知チャネルをブランキングすることによって、自動調節式の閾値は心臓事象全てを検出することの可能なゾーン内に留まる。而して、制御モジュール30は、頻脈性不整脈を監視するためのより精度の高い感知情報を持てることになる。
【0050】
[0073]
図3に示されている感知チャネルは、一例としての感知チャネルである。感知チャネルの他の構成又は感知チャネル内の構成要素の他の配列を、本開示の範囲から逸脱することなく利用することもできる。他の実施形態では、例えば、ペースパルス検出器62が、自身の入力を、感知チャネルの処理段的により早い他の構成要素、例えば前置フィルタ50、前置増幅器52、又は低域通過フィルタ54から、得るようになっていてもよい。別の実施例では、ブランキングモジュール60は、感知チャネル内の、前置増幅器52と低域通過フィルタ54の間の様な、何処か他の場所に置かれていてもよい。その様な実施例では、ブランキングは、抵抗器を、サンプルアンドホールド回路を作成するスイッチと直列に使用して実装されていてもよい。
【0051】
[0074]
図6は、一例としてのペースパルス検出器62を示すブロック線図である。ペースパルス検出器62は、フィルタ90、微分(dV/dt)フィルタ91、整流器92、ペースアーチファクト検出器94、及びペーススパイク検出器96を含んでいる。ペースパルス検出器62は、ADC56によって出力されている信号を入力する。この信号は、フィルタ91、dV/dtフィルタ91、ペースアーチファクト検出器94、及びペーススパイク検出器96へ提供される。但し、ペースパルス検出器62の様々な構成要素は、信号を、例えば前置増幅器52から直接に得るといった様に、感知チャネルの他の構成要素から得ていてもよい。
【0052】
[0075]ペースパルス検出器62のフィルタ90は、ADC56から出力された信号をフィルタに掛ける。フィルタ90は、ペーシングパルスに対応する電気信号を通過させ心臓の電気信号を拒絶するように構成されていてもよい。フィルタ90は、1つの実施例では、大凡100Hzから1000−4000Hzの間の周波数を有する信号を通過させる帯域通過フィルタとされている。別の実施例では、フィルタ90は、100Hzより大きい周波数を有する信号を通過させる高域通過フィルタとされている。他の実施例では、フィルタ90は、微分フィルタの様な別の型式のフィルタのこともある。更なる実施例では、信号は一切フィルタに掛けられていない。整流器92は、フィルタ90からのフィルタ処理された信号を整流する。整流された信号は、次いで、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96へ提供される。
【0053】
[0076]dV/dtフィルタ91は、ADC56の出力の差分信号(例えば、x(n)−x(n−1))を生成する。差分信号は、高スルーレートを有する信号部分に対応しているスパイクを含んでいる。差分信号もペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96へ提供される。
【0054】
[0077]ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、ADC56からの生の入力信号、整流器92からの整流された信号、dV/dtフィルタ91からの差分信号、の幾つか又は全てを解析して、ペースアーチファクト及びペーススパイクの存在をそれぞれ検出する。1つの実施例では、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、振幅のみ又はスルーレートのみを使用してペースアーチファクト及びペーススパイクをそれぞれ検出している。別の実施例では、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、振幅、スルーレート、及びパルス幅の組合せを使用してペースアーチファクト及びペーススパイクをそれぞれ検出している。
【0055】
[0078]ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、ADC56からの生の入力信号、整流器92からの整流された信号、dV/dtフィルタ91からの差分信号をそれぞれの閾値と比較して、ペースアーチファクト及び/又はペーススパイクを検出するようになっていてもよい。ペースアーチファクト検出器94の閾値とペーススパイク検出器96の閾値が異なっていてもよく、その場合、ペースアーチファクト検出器94は制御モジュール30によって遂行される頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えるほどに大きい振幅を有するペースアーチファクトのみを検出するように構成され、方やペーススパイク検出器94はペーシングパルスをそれらが制御モジュール30によって遂行される頻脈性不整脈検出アルゴリズムに影響を与えるほどに大きいかどうかにかかわりなく検出するように構成されている。そうすると、(単数又は複数の)ペースアーチファクト閾値(例えばアーチファクトスルーレート閾値又はアーチファクト振幅閾値)は、而して一般的に(単数又は複数の)ペーススパイク閾値(例えばスパイクスルーレート閾値又はスパイク振幅閾値)より大きい。そういうものとして、ペーススパイク検出器94は、より小さい振幅及びパルス幅を有するペーシングパルスを検出することができるようにペースアーチファクト検出器96より高い感度を有しているであろう。
【0056】
[0079]幾つかの事例では、ペースアーチファクト閾値及びペーススパイク閾値の幾つか又は全ては自動調節式であってもよい。例えば、ペースアーチファクト振幅閾値及びペーススパイク振幅閾値の一方又は両方が、検出されるパルスのピーク振幅に基づいて動的に調節されて、検出されるペースパルスの振幅が大きければEMIを回避するように閾値をより高く引き上げられるようになっていてもよい。代替的又は追加的に、ペースアーチファクト振幅閾値とペーススパイク振幅閾値の一方又は両方が、基線R波振幅に基づいて動的に調節されるようになっていてもよい。この場合、R波が大きければ、ペースアーチファクト及びペーススパイクを感知するための閾値はより高く設定される必要があろう。1つの実施例では、増加は比例式になっていて、例えば感知されるR波振幅の50%増加なら結果としてペーシングアーチファクト検出閾値の50%増加につながるというようになっていてもよい。
【0057】
[0080]
図6に更に示されている様に、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96は、更に、感知チャネルの様々な構成要素からのオーバーレンジ信号(例えば、前置増幅器52からの前置増幅器オーバーレンジ信号、ADC56からのADC入力オーバーレンジ信号、及びADC56からのスルーレートオーバーレンジ信号)を受信する。オーバーレンジ信号の解析及びADC56によって出力される信号の処理に基づいて、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96はペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号をそれぞれ出力する。1つの実施例では、ペースアーチファクト検出器94は、オーバーレンジ条件の何れかが合致している、又はADC出力の振幅、スルーレート、及びパルス幅の解析がペーシングアーチファクトの存在を示唆している場合に、ペースアーチファクト検出信号を生成し及び/又はアサートする。同じく、ペーススパイク検出器96は、オーバーレンジ条件の何れかが合致している、又は振幅、スルーレート、及びパルス幅の解析がペーシングスパイクの存在を示唆している場合に、ペーススパイク検出信号を生成し及び/又はアサートする。
【0058】
[0081]ペースアーチファクト検出信号は、以下に更に詳細に説明されている感知チャネルの1つ又はそれ以上のブランキングを開始させるようにブランキング制御モジュール64へ提供される。(単数又は複数の)感知チャネルのブランキングはECG信号にアーチファクトを導入しかねないので、ブランキングは、十分な頻脈性不整脈検出感度ひいてはより高いペースアーチファクト閾値が必要な場合に限って行われるのが望ましい。
【0059】
[0082]ペーススパイク検出信号及び場合に依りペースアーチファクト検出信号は、頻脈性不整脈検出の一環として使用するため制御モジュール30へ提供されてもよい。ペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号は、ペースパルス検出器62によって直接に制御モジュール30へ提供されていてもよいし、ブランキング制御モジュール64経由で制御モジュールへ中継されていてもよい。ペースアーチファクト信号とペーススパイク検出信号は個別に制御モジュール30へ提供されていてもよい。代替的に、ペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号は、論理的に組み合わされ(例えば、論理的OR演算され)、制御モジュール30へ提供されるというようになっていてもよい。複数の感知チャネルが解析される事例では、感知チャネルの各々についてのペースアーチファクト信号及びペーススパイク検出信号は、個別に提供されていてもよいし、論理的に組み合わされて提供されていてもよい。
【0060】
[0083]ペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号は、多くの技法の何れを使用して制御モジュール30へ提供されていてもよい。例えば、感知チャネルの一方又は両方からのペースアーチファクト検出信号出力及びペーススパイク検出信号出力は、或る信号出力を生成するように論理的に組み合わされることもあれば、制御モジュールへの割り込み信号を生成するように使用されることもあり得る。信号を組み合わせること及び割り込みを生成することの利点は、ペーシング事象の通告を非常に短い時間で提供するので制御モジュール30がペーシングパルスに迅速に応答できるようになることにある。欠点は、或る特定の条件で過剰な数の割り込みが生成されないともかぎらず、制御モジュール30の割り込みを取り扱う能力に負荷が掛かり過ぎたり或いは過剰な電流流出を引き起こしたりということが起こり得るということである。代わりに、全ての活性チャネルからのペースアーチファクト検出信号及びペーススパイク検出信号を単一のレジスタ内へ組み合わせ、メモリへの記憶と以後の解析のために制御モジュール30へ継続的にストリーミングさせることもできるであろう。これは、ペーシングパルスの振幅について及びパルスがどのチャネルで検出されているかについてのより多くの情報が提供されるという利点をもたらす。それにより、更に、制御モジュール30がペーシング情報を定期的に処理する、即ち割り込みではなしに頻脈性不整脈検出のためのデータ処理時に処理することが可能になり、割り込み取り扱いに伴う制御モジュール30の過剰負担に係る懸念が軽減される。この手法にとっての欠点は、追加のメモリが必要になること、及びペーシングパルスが検出されてから制御モジュール30が情報に働きかけることができるまでの待ち時間が増加することである。
【0061】
[0084]
図6のペースパルス検出器62は、その様な検出器の1つの実施例である。他の実施形態では、ペースパルス検出器62は、ペースアーチファクト検出器94及びペーススパイク検出器96に代えて単一の検出器しか含んでいないこともある。更なる実施形態では、ペースパルス検出器62は、2つより多い閾値検出器を含んでいることもある。2つより多い閾値検出器を含んでいるペースパルス検出器の一例が、代理人整理番号第C00007066.USU2号を有する「植え込み型医療装置のためのペースパルス検出器」と題された同時出願の米国特許出願に示され、記載されている(例えば
図8及び関連説明)。
【0062】
[0085]
図7は、ペースパルス検出器62の一例としての動作を示す概念図である。
図7は、少なくとも3つのペーシングパルス72を含んでいるペーシング列70を含む感知される電気信号の一例を示している。
図7は、更に、ペースパルス検出器62のフィルタ90(例えば、差分フィルタ又は1次微分フィルタ)によって出力されているスルーレート信号74の一例を示している。
図7に示されている様に、スルーレート信号74は、ペーシングパルス72の縁と一致するスパイク76を有している。ペースパルス検出器62は、スルーレート信号74をスルーレート閾値78に比較し、スルーレート信号74がスルーレート閾値を超えている場合に、ペースパルス検出器62はペーシングスパイクの存在を検出することになる。ペーシングパルス72の後縁を別個のペーシングパルスとして検出することを回避するために、ペースパルス検出器62は、先のスパイク76から特定の時間期間内、例えば2ms内に起こっている何れのスパイク76も別個のペーシングパルスとして数えないようにしている。また一方で、幾つかの事例では、ペースパルス検出器62はこれらの密に近接するスパイクを追跡してペーシングパルスのパルス幅を推定している。他の実施例では、スルーレート閾値を超えるスルーレートを検出していることが、結果として、感知される電気信号の振幅を調べるといった様な検出される信号の他の特性の分析を生じさせることになる。1つの事例では、一例としてのスルーレート閾値は4mV/msに等しくてもよい。但し他の閾値を利用することもできる。
【0063】
[0086]
図8は、ここに説明されている技法による、1つ又はそれ以上の感知チャネルのブランキングの一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、ペースパルス検出器62は、感知チャネル内のペーシングパルスの検出と関連付けられる1つ又はそれ以上の入力を得て解析する(80)。
図3の一例としての感知モジュール30では、例えば、ペースパルス検出器62は、ペースアーチファクト検出信号(例えば、スルーレート、振幅、パルス幅、又は受信される信号の他の特性に基づく)、前置増幅器オーバーレンジ信号、ADC入力オーバーレンジ信号、及びADCスルーレートオーバーレンジ信号、のうちの幾つか又は全てを解析する。但し、他の実施形態では、これらの信号のうちの1つのみ又はこれらの信号の2つ又はそれ以上の何れかの組合せがペースパルス検出器62によって解析されている。加えて、感知チャネル内のペーシングパルス又は他のアーチファクトを示唆する他の信号がペースパルス検出器62によって解析されていてもよい。単一入力又は複数入力を使用している異なる手法なら、感度、特異度、複雑性の間の異なるトレードオフをもたらすことになろう。幾つかの事例では、ペースパルス検出器62は、感知チャネルのブランキングを、ペースパルスが頻脈性不整脈検出の感度又は特異度に影響を与える可能性がある事態、例えばより高い振幅のペースパルス又はペースアーチファクト、に限定することにしている。
【0064】
[0087]ペースパルス検出器62は、入力の何れかが、ブランキングが必要になるペーシングパルス即ちペーシングアーチファクトを示唆しているかどうかを判定する(82)。以上に
図3に関して説明されている様に、ペースパルスは、感知される信号(例えば感知されるR波又は感知されるP波)とは異なる振幅、スルーレート、又は他の特性を有していることもある。例えば、大凡10−20mVより大きい振幅を有するペースパルスは、結果的に前置増幅器52及び/又はADC56を入力オーバーレンジ条件の1つ又はそれ以上で動作させることになりかねない。別の例として、ペースパルスは、ADC56のスルーレート限界を超えるスルーレートを有していて、その結果、ADCスルーレートオーバーレンジ信号の起動を生じさせるかもしれない。同じく、ペースアーチファクト検出器94は、アーチファクトを引き起こしそうなペースパルスを、ADC56若しくは他の構成要素からの信号の振幅、スルーレート、又は他の特性に基づいて検出することができる。入力信号のどれもが、ブランキングが必要になるペーシングパルスを示唆していない場合(ブロック82の「NO」分岐)、ブランキング制御モジュール64は1つ又はそれ以上の入力を解析することを続行する(80)。
【0065】
[0088]入力信号の何れか1つが、ブランキングが必要になるペーシングパルスを示唆している場合(ブロック82の「YES」分岐)、ペースパルス検出器62はペースアーチファクト検出信号をアサートする(83)。ペースアーチファクト検出信号のアサーションに応えて、ブランキング制御モジュール64は感知チャネルが閾値の時間期間内にブランキングされていたかどうかを判定する(84)。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルが前にブランキングされた最後の時点以来少なくとも30−60msの期間が経過するまで感知チャネルをブランキングしようとはしない。これは、継続的EMI環境での過剰なブランキングを予防することを意図したものであるが、なおも心房ペーシング事象と心室ペーシング事象の両方での大凡200ms未満の間隔でのブランキングを許容する。ブランキングが閾値の時間期間内でトリガされてしまっている場合(ブロック84の「YES」分岐)、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルをブランキングしようとはせず、1つ又はそれ以上の入力を解析することを続行する(80)。
【0066】
[0089]ブランキングが閾値の時間期間内でトリガされていなかった場合(ブロック84の「NO」分岐)、ブランキング制御モジュール64は感知チャネルのブランキングを開始する(86)。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、以上に
図3に関して説明されている様に、制御信号をブランキングモジュール60へ提供してブランキングモジュールに感知される信号の値を保持させることによって、感知チャネルのブランキングを開始するようになっている。1つの実施例では、ブランキング制御モジュール64は、ペーシングアーチファクトが検出された感知チャネルに限定してブランキングを開始するようになっている。別の実施例では、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルの何れか1つでペーシングアーチファクトが検出されている場合は感知チャネル全てでブランキングを開始するようになっている。
【0067】
[0090]感知チャネルのブランキングを開始した後、ブランキング制御モジュール64は、チャネルがブランキングされていた時間量がブランキング閾値より大きいかどうかを判定する(88)。幾つかの事例では、ブランキング制御モジュール64は、既定の時間期間である例えば20msに亘ってブランクキングするように構成されている。感知チャネルが既定の時間期間に亘ってブランキングされていなかった場合(ブロック88の「NO」分岐)、ブランキング制御モジュール64は引き続き感知チャネルをブランクキングする。感知チャネルが既定の時間期間に亘ってブランキングされていた場合(ブロック88の「YES」分岐)、ブランキング制御モジュール64は感知チャネルのブランキングを打ち切る(89)。
【0068】
[0091]別の実施形態では、ブランキング制御モジュール64は、感知チャネルを既定の時間期間に亘ってブランキングすることはしてはいない。代わりに、ブランキング制御モジュール64は、入力全てがブランキングを要するペーシングパルスの存在をもはや示唆しなくなるまで、又は感知チャネル構成要素を落ち着かせるだけの余裕を考慮した閾値の時間期間である例えば5−20msに亘って入力全てがペーシングパルスの存在をもはや示唆しなくなるまで、又は感知チャネルのブランキングを開始してからの時間量が最大ブランキング持続時間である例えば大凡10−30msより大きいか又はそれに等しくなるまで、感知チャネルのブランキングを継続するようになっていてもよい。
【0069】
[0092]
図9は、一例としての頻脈性不整脈検出アルゴリズムの状態
図100である。通常動作中、ICD20は、制御モジュール30が1つ又はそれ以上の感知チャネル上の感知される電気信号の心拍数を推定している非関与状態102で動作している。ICD20の制御モジュール30は、感知チャネル上の複数のR−R間隔(即ち、連続的に感知されている心室事象間の間隔)を測定し、測定された複数のR−R間隔に基づいて感知チャネルの心拍数を推定している。1つの実施例では、制御モジュール30は、感知チャネル上の直近の12のR−R間隔を記憶している。但し、制御モジュール30は、12より多い又は少ない直近R−R間隔を記憶するようになっていてもよい。心拍数を推定するため、制御モジュール30は記憶されたR−R間隔を最も短いR−R間隔から最も長いR−R間隔までソートし、R−R間隔のサブセットのみを使用して心拍を推定する。1つの実施例では、制御モジュール30は心拍数を測定されたR−R間隔のサブセットの平均値(例えば、直近の12のR−R間隔のうち7番目に短いR−R間隔から10番目に短いR−R間隔までの平均値)として推定するようになっている。より多い又はより少ないR−R間隔が心拍数の推定に使用されていてもよい。別の実施例では、制御モジュール30は、測定されたR−R間隔の中央値又は当該群内の他の特定のR−R間隔、例えば9番目に短いR−R間隔、を使用して心拍数を推定している。以上に説明されている一例としての心拍数推定技法は、VT又はVFの症例の様な短いR−R間隔に対する適正な感度を維持しつつも過剰感知の影響を受け難い心拍数推定を提供する。
【0070】
[0093]ここに説明されている実施例では、ICD20は、以上に
図1に関して説明されている感知ベクトル2つで独立に心拍数を推定し、推定された心拍数を頻脈性不整脈心拍数閾値、例えばVT/VF閾値と比較する。1つの実施例では、頻脈性不整脈心拍数閾値は、180拍動毎分へ設定されていてもよい。但し、他の閾値が使用されていてもよい。また、他の事例では、制御モジュール30は、単一の感知ベクトルしか解析していないこともあれば、2つより多い感知ベクトルを解析していることもある。「非関与」状態での動作例は、「医療装置での不整脈を検出するための方法及び機器」と題されたガネムらヘの米国特許第7,761,150号(本明細書ではガネムらと呼称)の提出されている明細書の段落[0064]−[0075]及び
図7A、
図8に記載されている。
【0071】
[0094]制御モジュール30が感知ベクトルの一方又は両方で心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値より上であると判定すると、制御モジュール30は関与状態104へ移行する。関与状態104では、制御モジュール30は、心拍数とECG信号形態情報の組合せを使用して、要ショック療法律動をショック療法を必要としないものから鑑別する。関与状態104では、例えば、制御モジュール30は、感知される電気信号の複数の既定のセグメントの形態メトリックを解析し、各セグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。制御モジュール30はこの形態解析を両方の感知ベクトルの電気信号で並列して遂行することができる。
【0072】
[0095]1つの実施例では、制御モジュール30は、電気信号の複数の固定サイズのセグメント、例えば複数の3秒セグメント、に亘る形態を解析する。固定サイズのセグメントの各々について、制御モジュール30は、当該特定の固定サイズのセグメント内のEGMをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。他の実施例では、関与状態で制御モジュール30によって解析される固定サイズのセグメントの長さは、3秒より短い又は長い場合もある。
【0073】
[0096]この関与状態での形態解析は、メトリックがQRS群の位置に関係なくセグメント全体に亘る電気信号について算定されるグロス形態の解析を含んでいてもよい。形態メトリックは、1つの実施例では、信号エネルギーレベル、ノイズ対信号比、筋ノイズパルス計数、正規化平均整流振幅、平均周波数、スペクトル幅、及び低勾配含量を含んでいる。これらのメトリックは、使用することのできるメトリックの種類の一例であり、ここに説明されている技法を限定するものと考えられてはならない。他のグロス形態メトリックが、以上に挙げられているメトリックに加えて又は代わりに使用されてもよい。
【0074】
[0097]制御モジュール30は、グロス形態メトリックを解析して、セグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。制御モジュール30は、セグメントのグロス形態メトリックの1つ又はそれ以上を解析して、当該特定のセグメント内の信号がノイズ及び/又はアーチファクトによって損なわれているかどうかを判定することができる。損なわれていれば、制御モジュール30は、セグメントをショック可能でないとして分類するか、又は当該セグメントを他方の感知ベクトル内の同セグメントの分類に基づいて分類する。制御モジュールがセグメント内の信号はノイズ及び/又はアーチファクトによって損なわれていないと判定すれば、制御モジュール30は、グロス形態メトリックの1つ又はそれ以上を解析してセグメント内の信号がVTショックゾーン又はVFショックゾーンの何れかに入っているかどうかを判定し、入っていれば、セグメントをショック可能であるとして分類する。セグメントがVTショックゾーン又はVFTショックゾーンに入っていないと判定されれば、セグメントはショック可能でないとして分類される。1つの例としてのグロス形態解析の更に詳細な説明がここに記載されている。「関与」状態での動作中のグロス形態の別の例としての解析が、ガネムらの提出されている明細書の段落[0076]−[0130]及び[0138]−[0141]、及び
図7B−
図7E、
図7H、
図7I、
図9A−
図9C、
図10、及び
図11A−
図11Bに記載されている。
【0075】
[0098]セグメントのグロス形態分類がショック可能であるとされれば、制御モジュール30は、幾つかの事例では、更に、セグメント内のQRS群又は拍動の形態を解析してセグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類する。この解析は、制御モジュール30がセグメント全体の代わりに拍動を中心としたウィンドーの形態しか解析しないので拍動ベースの形態解析と呼称されている。ウィンドーは例えば120−200msの間の範囲を有していてもよい。他の事例として、ショック可能である又はショック可能でないの分類は、他の実施例では、唯一グロス形態に基づいてなされていることもある。
【0076】
[0099]拍動ベースの形態解析の1つの例としての実施形では、制御モジュール30は、ウィンドー内の拍動の形態を既定のテンプレート形態と比較して、拍動が既定のテンプレートに一致する(例えば、60%より大きい又は60%に等しい一致度スコア閾値を有する)かどうかを判定する。セグメント内の拍動のうち閾値数より多い拍動、例えばセグメント内の拍動の75%より多い拍動がテンプレートに一致しなければ、セグメントはショック可能であるとして分類される。そうでなければ、セグメントはショック可能でないとして分類される。この様に、グロス形態と拍動ベースの形態の両方が解析される場合、セグメントはショック可能であるとして分類されるには両方の解析を満たさなければならない。感知される電気信号のセグメントの拍動ベースの形態解析の1つの実施例がここに更に説明されている。別の実施例が「2つの感知ベクトルを使用する医療装置での頻拍事象を鑑別するための方法及び機器」と題された米国特許出願第14/250,040号、特に
図4、
図10、及び
図11、及びにそれらの図の関連説明に記載されている。
【0077】
[0100]制御モジュール30は、両方の感知ベクトルのセグメントの分類を記憶し、複数のセグメントの分類を解析して、コンデンサの充電が始まる活性状態へ移行するべきか否かを判定する。制御モジュール30が律動はショック療法が必要ではない(例えば、ショック可能であるとして分類されているセグメント数が閾値数より少ない)そして少なくとも一方の感知ベクトルで心拍数は閾値心拍数より小さい又は閾値心拍数に等しいと判定すれば、制御モジュール30は非関与状態102へ移行する。制御モジュール30が、律動はショック療法が必要ではないが両方の感知ベクトルで心拍数は閾値心拍数より大きいと判定すれば、制御モジュール30は関与状態104で引き続き電気信号の後続の固定サイズ(例えば3秒)のセグメントに亘る形態メトリックを解析する。制御モジュール30が関与状態104中に律動はショック可能であると判定すれば(例えば両方の感知チャネルでセグメント3つのうちの2つより多くがショック可能であるとして分類されれば)、制御モジュール30は活性状態106へ移行する。このプロセスは、
図13に関して更に詳細に説明されている。
【0078】
[0101]活性状態106では、制御モジュール30は、除細動コンデンサの充電を開始する。加えて、制御モジュール30は、ショック可能な律動の終止に向け信号形態(グロス形態単独若しくはグロス及び拍動ベースの形態)を引き続き解析する。制御モジュール30は、引き続き、例えば以上に関与状態104に関し説明されている様に感知信号のセグメントをショック可能である又はショック可能でないとして分類し、関与状態104か又は活性状態106の何れかの状態中にショック可能であるとして分類されているセグメントの数を解析するようになっていてもよい。制御モジュール30が要ショック療法律動は終止してしまったと判定すれば、制御モジュール30は非関与状態102へ戻る。制御モジュール30は、例えば両方の感知信号で最後の8つのセグメントのうちショック可能であると分類されるセグメントが3つより少ない及び感知信号の少なくとも一方で心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値より小さい場合に、律動は終止してしまったと判定する。制御モジュール30が、コンデンサの充電が完了した時点で要ショック療法律動が依然として存在していると判定すれば、即ち、例えば最後の8つの固定サイズのセグメントのうち少なくとも5つがショック可能であるとして分類されている場合、制御モジュール30は活性状態106からショック状態108へ移行する。「活性」状態での動作例は、ガネムらの提出されている明細書の段落[0131]−[0136]及び
図7Fに記載されている。
【0079】
[0102]ショック状態108では、制御モジュール30は療法モジュール34を制御して除細動電極24を含んでいる療法ベクトルを介してショックを送達させ、活性状態106へ戻って送達された療法の成功を評価する。例えば、制御モジュール30は、頻脈性不整脈が終止してしまっており非関与状態へ移行するべきかどうかを判定する、又は頻脈性不整脈が再度検出されているかどうかを判定することができる。制御モジュール30は、例えば両方の感知チャネルで3つのセグメントのうち少なくとも2つがショック可能であるとして分類されている場合、頻脈性不整脈を再度検出している。「ショック」状態での動作例は、ガネムらの提出されている明細書の段落[0137]及び
図7Gに記載されている。非関与状態、関与状態、活性状態、及びショック状態での動作のための1つの例としての技法がガネムらに記載されている。
【0080】
[0103]制御モジュール30は、例えば
図8の関与状態104又は活性状態106での、感知される電気信号の既定のセグメントの形態メトリックが解析中である検出状態で動作しているときは、ペーシング列を検出し、ペーシング列を検出していることに応え、1つ又はそれ以上の頻脈性不整脈検出修正がなされる修正検出状態109へ移行することができる。ペーシング列は、ATP又は非ATPの高レートペーシング列のこともあれば、場合に依っては従来型(例えば徐脈ペーシング用の)ペーシング列という場合もあるかもしれない。以上に説明されている様に、ペーシング装置16によるペーシングの送達は制御モジュール30による頻脈性不整脈検出に干渉しかねない。従って、制御モジュール30は、ペーシングの送達に対し、損なわれる公算を下げるように頻脈性不整脈検出解析を修正することによって応える。以下で流れ線図に関して更に説明されている様に、頻脈性不整脈検出はペーシングがペーシング装置16によって提供されている間中修正されることになる。幾つかの事例では、頻脈性不整脈検出アルゴリズムへの修正は、ATPが検出されたときにはショックの送達を遅らせることになる。ショックの送達の遅延は1つの実施例では最大10秒までとされている。別の実施例では、ショックの送達の遅延は3−6秒の間とされている。
【0081】
[0104]
図10は、ペーシング列を検出し、ペーシング列を検出していることに応えて頻脈性不整脈検出を修正している制御モジュール30の一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、制御モジュール30は、1つ又はそれ以上の感知チャネルからのペーススパイク検出信号(又は、ペーススパイク検出信号とペースアーチファクト検出信号の論理的組合せ)を解析して、ペーシング列の開始を検出する(110)。1つの実施例では、制御モジュール30は、ペーススパイク検出信号が2つのペーシングスパイクを互いの1500ミリ秒内に識別したときにペーシング列の開始を検出する。言い換えれば、1500msより小さい単一のペーシングされた周期が検出され次第、ペーシング列の開始が検出されたということになる。但し、制御モジュール30はペーシング列の開始を検出するのに1500msとは異なる閾値を使用していてもよい。
【0082】
[0105]制御モジュール30は、ペーシング列の周期長さを推定する(112)。1つの実施例では、制御モジュール30はペーシング列の2つの直近の周期長さを3つの直近に検出されているペーシングスパイクを使用して算定し、当該ペーシング列の周期長さを2つの直近の周期長さのうち最も短い方の長さとして推定する。これは、ペーシング列内のペーシングスパイクの或る程度の検出不足を許容する。例えば、仮に最後の4つのペースから3つが検出されていて、観察される周期長さがXと2Xであったなら、制御モジュール30はペーシング列の周期長さをXであると推定することになる。他の事例では、制御モジュール30は、2つより多い直近の周期長さを使用していること(例えば3つ、4つ、5つ、又はそれより多い直近の周期長さを使用することによる)もあれば、単一の周期長さしか使用していないこともある。更に、制御モジュール30は、2つの直近の周期長さのうち最も短い方をペーシング列の推定周期長さとして選択する代わりに、複数の直近の周期長さの平均値又は中央値の様な他の技法を使用してペーシング列の周期長さを推定するようになっていてもよい。
【0083】
[0106]制御モジュール30は、推定周期長さが第1の周期長さ閾値より小さい又は第1の周期長さ閾値に等しいかどうかを判定する(114)。第1の周期閾値は、確信的にATPとして分類することのできる最小周期長さとすることができる。1つの実施例では、最小周期長さ閾値は、200ミリ秒に等しくされている。推定周期長さが第1の周期長さ閾値より小さい又は第1の周期長さ閾値に等しいとき(ブロック114の「YES」分岐)、制御モジュール30は検出されたペーシング列がEMIらしいと判定し、信号は無視される(116)。
【0084】
[0107]推定周期長さが最小周期長さ閾値より大きい場合(ブロック114の「YES」分岐)、制御モジュール30は、推定周期長さを第2の周期長さ閾値に比較する(118)。第2の周期長さ閾値は、確信的にATPとして分類することのできる最大周期長さとすることができる。1つの実施例では、第2の周期長さ閾値は、330ミリ秒に等しくされている。推定周期長さが第2の周期長さ閾値より小さい又は第2の周期長さ閾値に等しい場合(ブロック118の「NO」分岐)、制御モジュール30は、ペーシング列がATPであると判定し、ATPの存在を勘案するように検出アルゴリズムを修正する(120)。以下、
図11は、感知される電気信号内のATPを勘案するようになされる検出修正の1つの実施例を説明している。当該実施例では、頻脈性不整脈検出は、ATPが終止してしまうまで一部抑止される。その様な修正は、結果としてATPが検出されたときにはショックの送達を遅らせることになる。ショックの送達の遅延は、1つの実施例では最大10秒までとされている。別の実施例では、ショックの送達の遅延は3−6秒の間とされている。但し、感知される信号内のATPを勘案するように他の修正がなされてもよい。他の実施例では、推定周期長さを有する検出されたペーシング列がATPであることをより確信的に断定するために、推定周期長さを調べる以外に追加の解析が遂行されている。例えば、制御モジュール30は、ペーシングパルス間隔の規則性、ペーシングアーチファクト振幅の一貫性、ペーシングパルススルーレートの一貫性、及び/又はペーシングパルス極性の一貫性、を解析するようになっていてもよい。典型的に、ATPはこれらのアスペクトの全てではないにしても幾つかに一貫性を有しているはずである。
【0085】
[0108]制御モジュール30は、感知モジュール32からのペーススパイク検出信号及び/又はペースアーチファクト検出信号を解析して、ペーシング列が終止してしまったかどうかを判定する(122)。例えば、制御モジュール30は、2つの条件のうちの一方、即ち(1)ペーシングスパイクが閾値の時間期間に亘って検出されなかった又は(2)ペーシング列の開始を検出してからの時間量が閾値の時間量を超えている、が合致していればペーシング列は終止してしまったと検出する。1つの実施例では、制御モジュール30は、ペーススパイク検出信号上に及び/又はペースアーチファクト検出信号上に、少なくとも複数の推定周期長さのペーシングスパイクに亘って、ペースパルスが何も検出されなかった場合に、ペーシング列の終了を検出する。複数とは2より大きい何れかの数とされる。1つの特定の実施例では、当該複数は推定周期長さの2.25倍とされている場合もある。但し、他の事例では、制御モジュール30は異なる複数を利用していてもよい。代わりに、制御モジュール30は、ペーシング列の開始から特定の時間量が経過してしまった後、ペーシング列の終了を検出することができる。例えば、制御モジュール30は、ペーシング列の開始から3秒後、4秒後、5秒後、又は他の既定の時間期間後、ペーシング列の終了を検出することができる。その様な特徴はATPを検出するのに許容される最大持続時間を設定する。
【0086】
[0109]制御モジュール30がペーシング列は終止していないと判定した場合(ブロック122の「NO」分岐)、制御モジュール30は、ATPの存在を勘案するように引き続き検出アルゴリズムを修正する(120)。制御モジュール30がペーシング列は終止してしまったと判定した場合(ブロック122の「YES」分岐)、制御モジュール30は、未修正の頻脈性不整脈検出アルゴリズムへ復帰する(124)。
【0087】
[0110]決定ブロック118に戻って、推定周期長さが第2の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック118の「YES」分岐)、制御モジュール30は、周期長さが第3の周期長さ閾値より大きいかどうかを判定する(126)。1つの実施例では、第3の周期長さ閾値は400msに等しくされている。推定周期長さが330msより大きく400msより小さい場合(ブロック126の「NO」分岐)、ペーシング列を推定周期長さのみに基づいてATP又は速い徐脈ペーシングとして確信的に分類するのは無理である。而して制御モジュール30は、ペーシングに至るまでのオンセット又はペーシングに至るまでのショック可能との律動分類があるかどうかを判定する(130)。ペーシングがATPであれば、それに先行してHRの急増化(「オンセット」)があるはずだし、おそらくはペーシングより先のセグメントについてショック可能との律動分類を有しているはずである。対照的に、ペーシングが速い徐脈ペーシングであれば、経時的に緩やかな心拍数上昇を有しているはずであり(即ち、オンセット無し)、おそらくはペーシングより先のそれらセグメントについてはショック可能でないとの律動分類を有しているはずである。他の実施例では、推定周期長さを有する検出されたペーシング列がATPであることをより確信的に断定するため、ペーシングに至るまでのオンセット又は律動分類を調べる以外の追加の解析が遂行されている。例えば、制御モジュール30は、ペーシングパルス間隔の規則性、ペーシングアーチファクト振幅の一貫性、ペーシングパルススルーレートの一貫性、及び/又はペーシングパルス極性の一貫性、を解析するようになっていてもよい。典型的に、ATPはこれらのアスペクトの全部ではないにしても幾つかに一貫性を有しているはずである。
【0088】
[0111]制御モジュール30が、ペーシングに至るまでのオンセット又はペーシングに至るまでのショック可能との律動分類があると判定した場合(ブロック130の「YES」分岐)、制御モジュール30は、ペーシング列はATPであると判定し、ATPの存在を勘案するように検出アルゴリズムを修正する(120)。制御モジュール30が、ペーシングに至るまでのオンセット又はペーシングに至るまでのショック可能との律動分類は無いと判定した場合(ブロック130の「NO」分岐)、制御モジュール30は、速い徐脈ペーシングを検出し、速い徐脈ペーシングを勘案するように検出アルゴリズムを修正する(132)。1つの実施例では、頻脈性不整脈検出アルゴリズムへ、新たな拍動ベース形態一貫性の鑑別部が追加されている。但し、感知される信号内の速い徐脈ペーシングを勘案するのに他の修正がなされてもよい。制御モジュール30は、律動の周期長さ(例えば心拍数)がVT/VFゾーンを外れるまで修正された拍動ベースの検出アルゴリズムで動作し続ける。
【0089】
[0112]決定ブロック126に戻って、推定周期長さが第3の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック126の「YES」分岐)、制御モジュール30は、推定周期長さを第4の周期長さ閾値に比較する(128)。第4の周期長さ閾値は、最大の速い徐脈ペーシング周期長さに相当していてもよく、1つの実施例では600msに等しくされている。推定周期長さが第4の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック128の「YES」分岐)、制御モジュールは未修正の検出アルゴリズムで動作する。推定周期長さが第4の周期長さ閾値より大きい場合(ブロック128の「NO」分岐)、制御モジュール30は、速い徐脈ペーシングを検出し、速い徐脈ペーシングを勘案するように検出アルゴリズムを修正する(132)。
【0090】
[0113]
図10に説明されている実施例で使用されている閾値は、単腔ペースメーカーのペーシングスパイク列を検出するのに使用することができる。二腔ペースメーカー又はCRTペースメーカーについては、ペース間でタイミングが異なることもあるので(例えば、AV遅延又はVV遅延)、閾値は異なっていてもよい。心臓の1つより多い房室へ提供されるペーシング列については他の解析技法を遂行することが必要かもしれない。
【0091】
[0114]
図11は、ATPを勘案して修正された頻脈性不整脈検出アルゴリズムを実施している制御モジュールの一例としての動作を示す流れ図である。最初に、制御モジュール30はATP列を検出する(140)。1つの実施例では、制御モジュール30は、検出されているペーシング列の推定周期長さが200−330msの間又は330−400msの間にあればATP列を検出し、しかもATP検出の直前にショック可能な分類の心拍数オンセットを伴っている。但し、他の実施例では、制御モジュールは、異なる周期長さ範囲を使用してATPペーシングを検出している。
【0092】
[0115]制御モジュール30は、頻脈性不整脈検出アルゴリズムが頻脈性不整脈検出閾値を超える心拍数を検出したかどうかを判定する(142)。以上に
図9に関して説明されている様に、制御モジュール30は、心拍数が頻脈性不整脈検出閾値である例えば180拍動毎分を超えるまでは、選択された感知ベクトル上では心拍数しか解析されない非関与状態102で動作している。感知ベクトルの両方で推定心拍数が頻脈性不整脈検出閾値を超えていない場合(ブロック142の「NO」分岐)、制御モジュール30は引き続き未修正の非関与状態102で動作する(144)。
【0093】
[0116]頻脈性不整脈検出アルゴリズムが、心拍数は頻脈性不整脈検出閾値を超えていることを検出したとき又は例えばATP列を検出するより前に検出していたら(ブロック142の「YES」分岐)、制御モジュール30は、
図9の関与状態104又は活性状態106で動作している可能性が最も高い。以上に
図9に関して説明されている様に、関与状態104及び活性状態106中、制御モジュール30は、感知される電気信号のセグメントを、セグメントのグロス形態の解析及び/又はセグメント内の拍動ベースの形態の解析に基づいてショック可能である又はショック可能でないとして分類してゆく。
【0094】
[0117]制御モジュール30は、感知チャネルでの感知を継続しており、活性状態106で動作している場合なら除細動コンデンサの充電を継続する(146)。制御モジュール30は全ての検出状態変数を現在の状態に保持する(148)。例えば、それらセグメントのショック可能である又はショック可能でないとの直近の例えば8つの分類を維持するバッファは維持されることになる。制御モジュール30は、EGMの何れかの不完了セグメント又はEGMの過去に遡るセグメントでATP列を含んでいるセグメントを無視することになる(150)。
【0095】
[0118]制御モジュール30は、最後に検出されているペースパルスから既定の時間期間後に新たなセグメント(例えば3秒セグメント)を始める(152)。例えば、制御モジュール30は、最後に検出されているペースパルスから330ms後に新たな3秒セグメントを始めることができる。他の実施例では、制御モジュール30は、最後に検出されているペースパルス後の信号の新たなセグメント(例えば3秒セグメント)を推定周期長さに基づいて始めている。制御モジュール30は、ATP列が終止してしまったかどうかを判定する(154)。以上に説明されている様に、例えば、制御モジュール30は、2つの条件のうちの一方、即ち(1)ペーシングパルスが閾値の時間期間(例えば、2.25X推定周期長さ又は何らかの既定の閾値)に亘って検出されなかった又は(2)ペーシング列の開始を検出してからの時間量が閾値の時間量(例えば5秒)を超えている、が合致すればペーシング列は終止してしまったと検出する。ペーシング列の終了を検出するための判定基準は、新たな3秒形態セグメント取得の開始後に充たされることになる、ということに留意されたい。言い換えれば、実行できる3秒形態解析ウィンドーの始点はペーシング列の終了が検出される前に開始され得るということである。
【0096】
[0119]ペーシング列の終了が検出されない場合(ブロック154の「NO」分岐)、制御モジュール30は、データのセグメントを無視し、直近に検出されているペーシングパルスから既定の時間期間後に新たな実行できる形態セグメントが再び開始されることになる(150、152)。別の実施例では、制御モジュール30はブロック154でATPが終止したことが検出された後に初めて形態セグメント(例えば3秒セグメント)を取得することができる。制御モジュール30がATP列は終止してしまったと判定した場合(ブロック154の「YES」分岐)、制御モジュール30は通常の検出動作に戻り、新たな形態セグメントの形態解析を遂行して、セグメントがショック可能である又はショック可能でないのどちらであるかを判定する(156)。制御モジュール30は、而して、検出状態をそれがATP前の解析と切れ目なく連続しているかのように更新してゆく。結果として、頻脈性不整脈検出アルゴリズムへの修正は、ATPが検出された場合にはショックの送達を遅らせることになる。ショックの送達の遅延は、1つの実施例では最大10秒までとされている。別の実施例では、ショックの送達の遅延は3−6秒の間とされている。
【0097】
[0120]
図12は、速い徐脈ペーシングを勘案するように頻脈性不整脈検出アルゴリズムを修正している制御モジュールの一例としての動作を示す流れ線図である。最初に、制御モジュール30は、速い徐脈ペーシングの列を検出する(160)。1つの実施例では、制御モジュール30は、以上に
図10に関して説明されている様に、検出されるペーシング列の周期長さを推定し、検出されるペーシング列の推定周期長さが400msより大きい場合に速い徐脈ペーシングの列を検出することができる。但し、他の実施例では、制御モジュールは、異なる周期長さ閾値又は他の技法を使用して速い徐脈ペーシングを検出していることもある。
【0098】
[0121]制御モジュール30は、感知ベクトルの両方で感知される心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値である例えば180拍動毎分より上であるかどうかを判定する(162)。制御モジュール30が心拍数は頻脈性不整脈心拍数閾値より上ではないと判定した場合(ブロック162の「NO」分岐)、制御モジュール30は頻脈性不整脈検出修正を一切行わない(164)。制御モジュール30が心拍数は閾値心拍数より上であると判定した場合(ブロック162の「YES」分岐)、制御モジュール30は追加の拍動ベースの形態解析を実施して、形態の一貫性を監視する。ショックが必要でない場合にショック可能であるとの分類を生じさせかねない1つの例としてのシナリオは、ペーシング誘発応答が幅広のQRS及び大きいT波のせいで二重計数を生じさせてしまう場合である。その様なシナリオの周囲では、ECG形態は、一貫した過剰感知によって引き起こされる及びペーシングパルスが一貫した捕捉に至れば引き起こされるA−B−A−Bパターンとなるであろう。
【0099】
[0122]このシナリオ、又は不適切なショック分類を生じさせかねない他のシナリオを識別するために、制御モジュール30は、現在のセグメント内の第1の感知事象の形態を当該セグメント内の既定数の後続の感知事象の形態と比較し、比較の各々を一致又は不一致として分類する(166)。各々の感知事象又は拍動は、一致度スコアが閾値である例えば60%より大きい又は閾値に等しい場合に一致として分類され、そうでなければ拍動は不一致として分類される。他の事例では、制御モジュール30は、セグメント内でATP検出後の第1の感知事象の形態を後続の感知事象の形態と比較し、比較の各々を一致又は不一致として分類している。以上に
図9で説明されている様に、関与状態104及び活性状態106で遂行される拍動ベースの形態解析は、拍動ウィンドーの形態を固有心拍数形態の既定のテンプレートと比較しているのに対し、追加的な拍動ベースの形態一貫性鑑別部は、頻脈性不整脈の第1の感知事象の形態を既定数の後続の感知事象の形態と比較する。1つの実施例では、後続の感知事象の既定数は11に等しくされている。但し、既定数は11より大きくても又は11より小さくてもよい。
【0100】
[0123]制御モジュール30は、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数が第1の閾値より小さいかどうかを判定する(168)。1つの実施例では、第1の閾値は、後続の感知事象の既定数が11に等しい場合には3に等しくされている。但し、第1の閾値は他の値に等しくてもよく、後続の感知事象の既定数が11より大きい又は11より小さい場合は特にそうである。制御モジュール30が、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数は第1の閾値より小さいと判定した場合(ブロック168の「YES」分岐)、制御モジュール30は、他のグロス形態解析及び拍動ベースの形態解析がショック可能であると示唆していれば、当該セグメントをショック可能であるとして特徴付ける(170)。これは、例えば、頻脈性不整脈がVF又は多形性VTである場合に起こり得る。
【0101】
[0124]制御モジュール30が、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数が第1の閾値より大きい又は第1の閾値に等しいと判定した場合(ブロック168の「NO」分岐)、制御モジュール30は、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数が第2の閾値より大きいかどうかを判定する(172)。1つの実施例では、後続の感知事象の既定数が11に等しい場合、第2の閾値は7に等しくされている。但し、第2の閾値は他の値に等しくてもよく、後続の感知事象の既定数が11より大きい又は11より小さい場合は特にそうである。
【0102】
[0125]制御モジュール30が、セグメントの第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数は第2の閾値より大きいと判定した場合(ブロック172の「YES」分岐)、制御モジュール30は、他のグロス形態解析及び拍動ベースの形態解析がショック可能であると示唆していれば、当該セグメントをショック可能であるとして特徴付ける(170)。これは、例えば、頻脈性不整脈が単形性VTである場合に起こり得る。制御モジュール30が、頻脈性不整脈(又はセグメント)の第1の感知事象の形態に一致する形態を有する後続の感知事象の数は第2の閾値より小さい又は第2の閾値に等しいと判定した場合(ブロック172の「NO」分岐)、制御モジュール30は、他のグロス形態解析及び拍動ベールの形態解析がショック可能であると示唆しているかどうかにかかわりなく、当該頻脈性不整脈(又はセグメント)をショック可能でないとして特徴付ける(174)。これは、例えば、頻脈性不整脈の検出が過剰感知の結果でありそうな場合に起こり得る。
【0103】
[0126]
図13は、
図9の関与状態104の一例としての実施形を示す流れ図である。最初に、制御モジュール30は、例えば感知ベクトルの一方又は両方で心拍数が頻脈性不整脈心拍数閾値より上であることに応えて、関与状態104へ移行する(305)。制御モジュール30は、固定サイズのセグメントを得るタイマーが満了するまで2つのECGチャネル(ECG1及びECG2)上のECGデータを記憶する(341)。以上の1つの実施例に説明されている様に、タイマーは3秒に等しく、よって当該時間が満了したときデータの第1の3秒セグメントがECG1及びECG2で得られるという具合になっていてもよい。この方式において、処理は関与状態104では、非関与状態102での様にR波を感知することによってではなく既定のタイムアウト(例えば3秒タイムアウト)によってトリガされる。
【0104】
[0127]処理は3秒の期間を経てトリガされると記述されている一方で、関与状態104にあるときに利用される処理時間として他の時間期間を選定することもできるが、望ましくは0.5乃至10秒の範囲内であるべき、と理解している。結果として、関与状態104にあるときには個別R波を感知する段階がECG1とECG2の両方のチャネルで起こり続け、12のR−R間隔のバッファが更新され続けるが、関与状態104から別の状態へ変わるための機会及び心拍数の推定はいったん3秒タイマーが満了したときにしか起こらない。関与状態104への初期進入に際し、直近3秒間のECGデータ、即ち関与状態104への移行に至るまでの3秒間についてのECGデータ、を処理するのが好都合である。これには非関与状態102にある間でさえも直近3秒間のECGデータの継続的循環バッファリングが必要となる。
【0105】
[0128]時間間隔が満了したら、即ちブロック341でYESの場合、各チャネルについての3秒の時間間隔中の信号の形態学的特徴を利用して、信号がノイズアーチファクトによって損なわれている可能性があるかどうかが判定され、信号の形態が「ショック可能」又は「ショック可能でない」として特徴付けられる。例えば、一例として3秒の時間間隔と関連付けられる信号を使用して、各チャネルECG1とECG2についてチャネルがノイズによって損なわれている可能性があるかどうかに関し判定がなされ(342)、次いでECG1及びECG2の両方のチャネルがノイズによって損なわれているかどうかに関し判定がなされる(344)。
【0106】
[0129]
図14は、1つの実施例による、ノイズを判定する方法の流れ図である。
図14に示されている様に、チャネルECG1及びECG2の各々と関連付けられる信号がノイズによって損なわれている可能性があるかどうかに関しての判定、即ち
図13のブロック342は、各チャネルECG1及びECG2上で遂行される複数の連続的なノイズ検定を含んでいる。例えば、第1のノイズ検定中に、チャネルについての信号の信号エネルギー含量のメトリックが既定の限界内にあるかどうかに関し判定がなされる、ブロック380。例えば、3秒ウィンドーと関連付けられる各サンプルの振幅が確定され、N個のサンプル振幅がもたらされると、それらから平均整流振幅が、セグメントについてのサンプル振幅の総数Nに対する整流されたサンプル振幅の和の比として計算される。例えば、サンプリングレートが256サンプル毎秒であれば、3秒セグメントについてのサンプル振幅の総数Nは、N=768サンプルということになる。
【0107】
[0130]平均整流振幅が計算されたら、平均整流振幅が上平均振幅限界と下平均振幅限界の間にあるかどうかに関し判定がなされ、ここに、下平均振幅限界はアーチファクトの無いアジストリーエピソードと関連付けられており、上平均振幅限界は心室頻拍事象及び心室細動事象と関連付けられるはずのものより大きい値と関連付けられている。本開示の或る実施形態によれば、上平均振幅限界は1.5mVとして、また下平均振幅限界は0.013mVとして設定されている。信号エネルギー含量のメトリックは以上に平均整流振幅として説明されてはいるが、エネルギー含量の他の信号を利用することもできるであろうと理解している。
【0108】
[0131]確定された平均整流振幅が上平均振幅限界と下平均振幅限界の間になければ、当該チャネルについての3秒セグメントはノイズで損なわれている可能性があると識別され、ブロック386、当該チャネルのセグメントについて更なるノイズ検定は開始されない。
【0109】
[0132]確定された平均整流振幅が上平均振幅限界と下平均振幅限界の間に位置していれば、ノイズ対信号比が計算され、ノイズ対信号比が既定のノイズ対信号閾値より小さいかどうかに関し判定がなされる、ブロック382。例えば、3秒ウィンドーと関連付けられる各サンプルの振幅が確定され、その結果、N個の生サンプル振幅がもたらされる。生信号は、低域通過フィルタに掛けられ、その結果、L個の低域通過サンプル振幅がもたらされる。生平均整流振幅が、生サンプル振幅の絶対値の平均として確定される。低域通過平均整流振幅が、低域通過サンプル振幅の絶対値の平均として確定される。そして次に、高域通過平均整流振幅が、生平均整流振幅と低域通過平均整流振幅の間の差分として計算される。次いで、ノイズ対信号比が、高域通過平均整流振幅対低域通過平均整流振幅の比として確定される。ノイズ対信号比が例えば0.0703の様な既定閾値より大きければ、当該チャネルについての3秒セグメントはノイズで損なわれている可能性があると識別され、ブロック386、当該セグメントについて更なるノイズ検定は開始されない。
【0110】
[0133]ノイズ対信号比が既定閾値より小さいか又は既定閾値に等しければ、信号が筋ノイズによって損なわれているかどうかに関し判定がなされる、ブロック384。本開示の或る実施形態によれば、信号が筋ノイズによって損なわれているかどうかに関しての判定は、信号が、信号は筋ノイズによって損なわれているとの可能性を指し示す既定数の信号変曲を含んでいるかどうかを、各チャネルECG1及びECG2についての3秒間隔内の信号変曲の数を定量化するために計算される筋ノイズパルス計数を使用し、判定することによってなされる。有意数の変曲の存在は筋ノイズを示唆している可能性がある。
【0111】
[0134]
図15Aは、本開示の或る実施形態による、信号が筋ノイズによって損なわれているかどうかの判定のグラフ図である。
図15Bは、本開示の或る実施形態による、信号が筋ノイズによって損なわれているかどうかを判定する方法の流れ図である。例えば、
図15A及び
図15Bに示されている様に、3秒間隔についての筋ノイズ計数を確定するために、生信号420を1次微分フィルタに掛けて微分信号422を得た後、微分信号422内のゼロクロッシング424全てが探し出される、ブロック460。各クロッシングについてゼロクロッシング424の直前のデータ点である点426とゼロクロッシング424の直後のデータ点である点428に対応するデータ対が取得される。微分信号422から整流信号430が導出されたときにゼロ化されたゼロクロッシング点432で各パルスの明確なデマルケーションが可能になるようにするため、各データ対でより小さい絶対値を有するデータ点の値はゼロ化される。
【0112】
[0135]識別された変曲が筋ノイズと関連付けられるとして識別されるべき有意振幅であるかどうかを判定するためのパルス振幅閾値Tdが、3秒セグメントからの整流信号を等しいサブセグメント434へ分割し、サブセグメント434の各々について局所最大振幅436−442を推定し、局所振幅436−442が3秒セグメント全体についての最大振幅即ち
図15Aの実施例では最大振幅440の一部より小さいかどうかを判定することによって確定される、ブロック462。局所最大振幅が3秒セグメント全体についての最大振幅の当該一部より小さければ、局所最大振幅は、当該局所最大振幅に対応するサブセグメントについては3秒セグメント全体についての最大値で置換される。
【0113】
[0136]
図15Aの例示では、簡潔さを期して、サブセグメントの中に探し出されているゼロクロッシング点として2つ又はそれより少ないゼロクロッシング点しか示されていないが、実際には、サブセグメント434の各々は、大凡750ミリ秒の長さを有していて、例えば25ミリ秒おきという様に多くの変曲を包含しているであろうと理解している。
【0114】
[0137]本開示の或る実施形態によれば、3秒セグメントは、4つのサブセグメントに分割され、局所最大振幅がセグメント全体についての最大振幅の5分の1より小さければ、局所最大振幅はセグメント全体についての最大振幅で置換される。サブセグメントの各々についての局所最大振幅をセグメント全体についての最大振幅と置換するべきかどうかの判定が完了したら、セグメントについてのパルス振幅閾値Tdが、サブセグメントの各々についての局所最大振幅の平均の既定割合に等しく設定される。本開示の或る実施形態によれば、3秒セグメントについてのパルス振幅閾値Tdは、局所最大振幅436−440の平均の6分の1に等しく設定される。
【0115】
[0138]パルス振幅閾値Tdが確定されたら、3秒セグメントについての信号と関連付けられる変曲は、パルス振幅閾値Tdがパルス閾値より小さいかどうかを判定することによって、ノイズを示唆している可能性があるとされる有意レベルであるとして分類される、ブロック464。本開示の或る実施形態によれば、パルス閾値は、1マイクロボルトとして設定されている。パルス振幅閾値Tdがパルス閾値より小さければ、信号強度は筋ノイズとの判定には小さすぎ、従って信号はノイズによって損なわれている可能性がないと判定され、而してチャネルはノイズに損なわれていないと判定される、ブロック466。
【0116】
[0139]パルス振幅閾値Tdがパルス閾値より大きいか又はパルス閾値に等しければ、3秒セグメントは、250msウィンドー長さの12のサブセグメントへ分割され、各サブセグメント内の筋ノイズパルスの数が数えられ、最大数の筋ノイズパルスを有するサブセグメントと既定最小閾値より大きい6つ又はそれ以上の筋ノイズパルスを有するサブセグメントの数がともに確定される。単一のサブセグメント内の筋ノイズパルスの最大数がノイズパルス数閾値より大きい、又は12のサブセグメントのうち最小閾値より大きい6つ又はそれ以上の筋ノイズパルスを有するサブセグメントの数がサブセグメントパルス計数閾値より大きいか又は当該閾値に等しい、のどちらかであれば、信号には筋ノイズが存在していると判定される。本開示の或る実施形態によれば、ノイズパルス数閾値は8に等しく設定され、サブセグメントパルス計数閾値は3に等しく設定されている。
【0117】
[0140]例えば、パルス振幅閾値Tdがパルス閾値より大きいか又はパルス閾値に等しければ、即ちブロック464でNoの場合、単一のサブセグメント内の筋ノイズ計数の最大数が確定される、ブロック468。筋ノイズ計数の最大数がノイズパルス数閾値より大きければ、即ちブロック470でYesの場合、チャネルはノイズに損なわれていると判定される、ブロック472。チャネルについての筋ノイズ計数の最大数がノイズパルス数閾値より小さいか又は当該閾値に等しければ、即ちブロック470でNoの場合、12のサブセグメントのうち最小閾値より大きい6又はそれ以上の筋ノイズパルスを有するサブセグメントの数が確定され、ブロック474、そして当該数がサブセグメントパルス計数閾値より大きいか又は当該閾値に等しければ、即ちブロック476でYesの場合、当該チャネルはノイズに損なわれていると判定される、ブロック472。当該数がサブセグメントパルス計数閾値より小さければ、即ちブロック476でNoの場合、チャネルはノイズに損なわれていないと判定される、ブロック466。
【0118】
[0141]
図15Cは、本開示の或る実施形態による、信号が筋ノイズによって損なわれているかどうかを判定する方法の流れ図である。筋ノイズは心室頻拍のエピソード中に存在し得ることから、純粋にノイズに関係している可能性があると判定される信号と、ショック可能事象でありノイズを含んでいると判定される信号と、の間で見分けるために、全体的な信号パルス波形の幅が確定される。従って
図15Cに示されている様に、本開示の或る実施形態によれば、筋ノイズパルス計数が満たされている結果として筋ノイズは存在しているとひとたび判定されたら、即ちブロック470でNoそしてブロック476でYesの場合、信号はノイズに損なわれておりショック可能であるかどうかに関し判定がなされる、ブロック480。
【0119】
[0142]本開示の或る実施形態によれば、ブロック480での信号はノイジーであり且つショック可能であるかどうかに関しての判定は、例えば、768のデータ点を有する整流信号を4つのサブセグメントに分割し、4つのサブセグメントの各々についての最大振幅を、サブセグメントについての最大振幅が3秒セグメント内の整流信号全体についての最大振幅の一部より小さいかどうかを判定することにより確定することによってなされる。例えば、サブセグメント毎に、サブセグメントについての最大振幅が整流信号全体についての最大振幅の4分の1より小さいかどうかに関し判定がなされる。3秒セグメント内の整流信号全体についての最大振幅の一部より小さければ、サブセグメントについての最大振幅は、整流信号全体についての最大振幅に等しく設定される。
【0120】
[0143]サブセグメントの各々についての平均整流振幅が、サブセグメントについての整流振幅の和をサブセグメント内のサンプル数である768÷4で割ることによって確定される。次いで、各サブセグメントについての正規化平均整流振幅が、サブセグメントの各々についての平均整流振幅をサブセグメントについてのピーク振幅で割ることによって確定される。次いで3秒セグメントについての正規化平均整流振幅が、各サブセグメントについての正規化平均整流振の和をサブセグメント数である4で割ったものとして確定される。
【0121】
[0144]従って、筋ノイズパルス計数の判定の結果として筋ノイズが疑われたら、ブロック480の判定は、3秒セグメントについての正規化平均整流振幅が、信号はノイズと関連付けられる可能を示唆されているにもかかわらずなおもショック可能事象と関連付けられることを識別するための既定閾値より大きいかどうかに基づく。例えば、本開示の或る実施形態によれば、3秒セグメントについての正規化平均整流振幅が18マイクロボルトより大きいかどうかに関し判定がなされる。3秒セグメントについての正規化平均整流振幅が既定閾値より小さいか又は既定閾値に等しければ、チャネルは筋ノイズによって損なわれていてショック可能でない可能性があり、即ちブロック480でNoとなり、而してノイズによって損なわれているとして識別される、ブロック472。3秒セグメントについての正規化平均整流振幅が既定閾値より大きければ、チャネルは、筋ノイズによって損なわれていてショック可能である可能性があると判定され、即ちブロック480でYesとなり、而して筋ノイズによって損なわれている可能性がないとして識別される、ブロック478。
【0122】
[0145]
図14に戻って、信号が筋ノイズによって損なわれている可能性がないと判定されると、チャネルと関連付けられる信号の平均周波数が例えば11Hzの様な既定周波数閾値より小さいかどうかに関し判定がなされる、ブロック388。各チャネルECG1及びECG2についての3秒セグメント中の信号の平均周波数は、例えば、3秒セグメントの第1微分の平均絶対振幅対3秒セグメントの平均絶対振幅の比に一定の倍率を掛けて計算することによって生成される。平均周波数が既定の平均周波数閾値より大きいか又は当該閾値に等しいと判定されれば、即ちブロック388でNoの場合、当該チャネルについての3秒セグメントはノイズで損なわれている可能性があるとして識別される、ブロック386。平均周波数が既定平均周波数閾値より小さいと判定されれば、即ちブロック388でYesの場合、当該チャネルについての3秒セグメントはノイズに損なわれていないとして識別される、ブロック390。
【0123】
[0146]本開示の或る実施形態によれば、平均スペクトル周波数は、真の心室細動事象については低、例えば洞調律及び上室性頻拍の様なまとまりのある波形の律動(organized rhythms)については中、そしてアジストリー及びノイズ中は高、となる傾向があるので、ブロック388での判定は、平均周波数が例えば11Hz(即ち、大凡91ミリ秒の平均周期T)の様な既定の上平均周波数閾値より小さいかどうか、及び平均周波数が例えば3Hzの様な既定の下平均周波数より小さいかどうか、を判定する段階を含んでいる。平均周波数が例えば3Hzの様な第2の下閾値より下であれば、信号はノイズとして棄却され、更なるノイズ検定は開始されない。この平均周波数対第2の下閾値の比較は、過剰感知の事例を識別することを意図したものであり、その結果関与状態への適切な移行がもたらされる。信号の平均周波数が3Hzより小さければ、心拍数が180拍動毎分より大きくなることは通常あり得ない。実践では、下周波数閾値を、プログラムされたVT/VF検出レート、即ち典型的には大凡3Hz、に等しく設定するのが好都合であるかもしれない。
【0124】
[0147]而して、ブロック388の判定では、平均周波数が既定の上平均周波数閾値より大きい又は当該閾値に等しいか又は下閾値より小さいのどちらかであると判定されれば、当該チャネルについての3秒セグメントはノイズで損なわれている可能性があるとして識別される、ブロック386。平均周波数が既定の上平均周波数閾値より小さく且つ下閾値より大きいと判定されれば、当該チャネルについての3秒セグメントはノイズに損なわれていないとして識別される、ブロック390。
【0125】
[0148]
図13に戻って、チャネルECG1及びECG2がノイズによって損なわれているかどうかに関しての判定がひとたびなされたら、ブロック342、両方のチャネルがノイズに損なわれていると判定されるかどうかに関し判定がなされる、ブロック344。両方のチャネルECG1及びECG2と関連付けられる信号がノイズによって損なわれている可能性があると判定されれば、両方のチャネルはショック可能でないとして分類され、ブロック347、而して各チャネルECG1及びECG2のためのチャネルの最後の3つの分類を格納しているバッファが然るべく更新され、次の3秒セグメントウィンドーについてプロセスが繰り返される。ECG1及びECG2の両方のチャネルがノイズによって損なわれている可能性があると判定されなければ、即ちブロック344でNoの場合、装置は、それらチャネルのうちの一方がノイズによって損なわれていないのか、それともチャネルは両方ともノイズによって損なわれていないのか、どちらなのかを、ノイズが2つのチャネルECG1及びECG2のうちの一方にのみありそうだと判定されるかどうかを確定することによって見分ける、ブロック346。
【0126】
[0149]ノイズが2つのチャネルのうちの一方だけにありそうな場合、ノイズによって損なわれていないチャネル即ちクリーンチャネルについての信号が、VT事象又はVF事象と関連付けられる可能性が高いかどうかの判定が、例えば当該チャネルについての信号が規則的であるR−R間隔を含んでおり、而してチャネルは比較的安定しているとして分類され得るかどうかを判定することによってなされる、ブロック348。R−R間隔が比較的安定していないと判定されれば、即ちブロック348でNOの場合、当該チャネルについての信号はVFと関連付けられる可能性があるとして識別され、それが次いで信号が以下に説明されているVFショックゾーンに入っているかどうかを判定することによって検証される、ブロック350。当該チャネルについてのR−R間隔が安定していると判定されれば、即ちブロック348でYESの場合、信号はVTと関連付けられる可能性があるとして識別され、それが次いで信号が以下に説明されているVTショックゾーンに入っているかどうかを判定することによって検証される、ブロック352。
【0127】
[0150]チャネルの両方についてノイズの可能性がなければ、即ちブロック346でのNo、つまり両方のチャネルがクリーンチャネルであると判定された場合、両方のチャネルについての信号はVT事象又はVF事象と関連付けられる可能性が高いかどうかの判定が、両方のチャネルについての信号が規則的であるR−R間隔を含んでいて而して比較的安定しているとして分類され得るかどうかを判定することによってなされる、ブロック356。ブロック356でのR−R間隔が比較的安定していると判定されるかどうかの判定は、ここに参考文献としてその全体が援用されているスタッドラーらへの米国特許第7,894,894号に記載されている方法を使用してなされてもよい。R−R間隔が比較的安定していないと判定されれば、即ちブロック356でNoの場合、両方のチャネルについての信号はVFと関連付けられる可能性があるとして識別され、それが次いで各チャネルについての信号が以下に説明されているVFショックゾーンに入っているかどうかを判定することによって検証される、ブロック360。両方のチャネルについてのR−R間隔が安定していると判定されれば、即ちブロック356でYESの場合、信号はVTと関連付けられる可能性があるとして識別され、それが次いで両方のチャネルに基づいて信号がVTショックゾーンに入っているかどうかを判定することによって検証される、ブロック358。
【0128】
[0151]
図16は、本開示の或る実施形態による、VFショックゾーンのグラフ図である。
図16に描かれている様に、VFショックゾーン500は、各チャネルECG1及びECG2について、計算された低勾配含量と、チャネルと関連付けられるスペクトル幅との間の関係に基づいて定義される。例えば、ショックゾーンは、
方程式、即ち、
低勾配含量=−0.0013×スペクトル幅+0.415 (方程式1)
によって示される低勾配含量と関連付けられる第1境界502、
[0152]及び、方程式、即ち、
スペクトル幅=200 (方程式2)
によって示されるスペクトル幅と関連付けられる第2境界504と、
によって定義される。
【0129】
[0153]低勾配含量メトリックは、3秒セグメント内の総サンプル数に対する低勾配を有するデータ点の数の比として計算される。例えば、本開示の或る実施形態によれば、連続するECGサンプル間の差はECG信号の第1の導関数(即ち勾配)の近似値として確定される。具体的には、各チャネルについての生信号を1次微分フィルタへ印加して3秒セグメントについての微分信号を得る。微分信号は次いで整流され、4つの等しいサブセグメントへ分割されて、最も大きい絶対勾配が4つのセグメントの各々について推定される。
【0130】
[0154]最も大きい絶対勾配が、3秒セグメント全体についての全体的な最も大きい勾配の或る割合、例えば全体的絶対勾配の5分の1など、より小さいかどうかに関し判定がなされる。最も大きい絶対勾配が全体的勾配の当該割合より小さければ、当該サブセグメントについての勾配値は全体的な最も大きい絶対勾配に等しく設定される。最も大きい絶対勾配が全体的勾配の当該割合より小さくなければ、当該サブセグメントについての勾配値はサブセグメントについての確定された最も大きい絶対勾配に等しく設定される。
【0131】
[0155]サブセグメントの各々についての勾配値が確定され、必要なら3秒セグメントについての最も大きい勾配に等しく設定されることによって更新されてしまったら、4つの勾配の平均値を計算し、例えば16の様な既定の係数で割って低勾配閾値を得る。そうして低勾配閾値より小さいか又は低勾配閾値に等しい絶対勾配を有する3秒セグメント内のサンプル点の数を確定することによって低勾配含量を得る。
【0132】
[0156]本開示の或る実施形態によれば、低勾配閾値の確定時、低勾配閾値が自然数ではなく小数であるなら、対応する小数のサンプルを加えるように低勾配含量へ補正がなされる。例えば、閾値が4.5であると確定された場合、低勾配含量は、4より小さいか4に等しい絶対勾配を有するサンプル点の数に5に等しい勾配を有するサンプル点の数の半数を足したものになる。
【0133】
[0157]スペクトル幅メトリックは、各チャネルECG1及びECG2と関連付けられる3秒セグメントについての信号のスペクトル幅の推定値に相当するものであって、例えば、信号の中心周波数と基本周波数の間の差として定義される。本開示の或る実施形態によれば、スペクトル幅メトリックは、RR周期長さの直近推定値と当該チャネルについての信号の平均スペクトル期間の間の差を確定することによって計算される。当技術で知られている様に、平均スペクトル期間は平均スペクトル周波数の逆数である。
【0134】
[0158]
図16から分かる様に、ノイズ506は相対的により高いスペクトル幅を有する傾向があり、正常洞調律508はVFに対比して相対的により高い低勾配含量を有する傾向があるので、ノイズ506と正常洞調律508はどちらもVFショックゾーン500の外に位置することになるはずである。
【0135】
[0159]チャネルECG1とECG2各々につき、当該チャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さく且つスペクトル幅が第2境界504より小さいかどうか、即ち低勾配含量が−0.0013×スペクトル幅+0.415より小さく且つスペクトル幅が200より小さいかどうか、に関し判定がなされる。例えば、事象はVFと関連付けられる即ち両方のチャネルについて間隔は不規則であると判定されたら、即ちブロック356でNoとなった場合、チャネルECG1について低勾配含量が第1境界502より小さく且つスペクトル幅が第2境界504より小さければチャネルECG1はVFショックゾーンに入っているとの判定がなされ、即ちブロック360でYesとなる。すると当該チャネルECG1についての3秒セグメントはショック可能であると判定され、ブロック363、当該チャネルのための関連付けられるバッファが然るべく更新される。当該チャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さくない又はスペクトル幅が第2境界より小さくないのどちらかであれば、チャネルECG1はVFショックゾーンに入っていないと判定され、即ちブロック360でNoとなり、当該チャネルECG1についての3秒セグメントはショック可能ではないと判定され、ブロック365、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0136】
[0160]同様に、チャネルECG2について低勾配含量が第1境界502より小さく且つスペクトル幅が第2境界504より小さければ、チャネルECG2はVFショックゾーンに入っているという判定がなされ、即ちブロック362でYesとなる。すると当該チャネルECG2についての3秒セグメントはショック可能であると判定され、ブロック369、当該チャネルのための関連付けられるバッファは然るべく更新される。当該チャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さくない又はスペクトル幅が第2境界より小さくないのどちらかであれば、チャネルECG2はVFショックゾーンに入っていないと判定され、即ちブロック362でNoとなり、すると当該チャネルECG2についての3秒セグメントはショック可能ではないと判定され、ブロック367、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0137】
[0161]
図17A及び
図17Bは、本開示の或る実施形態による、事象がショックゾーン内にあるかどうかの判定のグラフ図である。事象がVTショックゾーン内にあるかどうかの判定中、即ち
図13のブロック358では、低勾配含量及びスペクトル幅は、以上にVFショックゾーンを確定することに関して説明されている様に各チャネルECG1及びECG2について確定される。2つの信号チャネルECG1及びECG2のうちのどのチャネルが最小低勾配含量を内包しているか及び2つの信号チャネルECG1及びECG2のうちのどのチャネルが最小スペクトル幅を内包しているかに関し判定がなされる。第1VTショックゾーン520は、最小低勾配含量を有すると確定されているチャネルと関連付けられる低勾配含量と、最小スペクトル幅を有すると確定されているチャネルと関連付けられるスペクトル幅と、の間の関係に基づいて定義される。例えば、本開示の或る実施形態によれば、第1VTショックゾーン520は、
方程式、即ち、
LSC=−0.004×SW+0.93 (方程式3)
によって示される最小低勾配含量(Low Slope Content)及び最小スペクトル幅(SpectralWidth)と関連付けられる境界522によって定義される。
【0138】
[0162]第2VTショックゾーン524は、最小低勾配含量を有すると確定されているチャネルと関連付けられる低勾配含量と、最大正規化平均整流振幅を有すると確定されているチャネルと関連付けられる正規化平均整流振幅と、の間の関係に基づいて定義される。VTショックゾーン検定時に利用される2つのチャネルECG1及びECG2についての正規化平均整流振幅を確定するために、3秒ウィンドーと関連付けられる各サンプルの振幅が確定され、N個のサンプル振幅がもたらされると、それらから平均整流振幅が、当該セグメントについての総サンプル振幅数Nに対する整流されたサンプル振幅の和の比として計算される。サンプリングレートが例えば256サンプル毎秒であれば、3秒セグメントについての総サンプル振幅数NはN=768サンプルということになる。
【0139】
[0163]本開示の或る実施形態によれば、例えば、第2VTショックゾーン524は、
方程式、即ち、
NMRA=68×LSC+8.16 (方程式4)
によって示される最小低勾配計数(Low Slope Count)と最大正規化平均整流振幅(Normalized Mean Rectified Amplitude)との間の関係と関連付けられる第2境界526によって定義される。
【0140】
[0164]最小低勾配計数が第1境界522即ち−0.004×最小スペクトル幅+0.93より小さく、且つ最大正規化平均整流振幅が第2境界526即ち68×最小低勾配計数+8.16より大きければ、事象はVTショックゾーンに入っていると判定され、即ちブロック358でYesとなり、両方のチャネルECG1及びECG2はショック可能であると判定され、ブロック357、関連付けられるバッファが然るべく更新される。最小低勾配計数が第1境界522より小さくない又は最大正規化平均整流振幅が第2境界526より大きくないのどちらかであれば、事象はVTショックゾーンの外にあると判定され、即ちブロック358でNOとなり、両方のチャネルECG1及びECG2はショック可能でないと判定される、ブロック359。
【0141】
[0165]説明されている様に、VFショックゾーン検定のブロック360及びブロック362とVTショックゾーン検定のブロック358の両検定中、各チャネルECG1及びECG2についてのショック可能である又はショック可能ではないとして分類される検定結果は、以下に説明されているブロック356の判定に利用される2つのチャネルECG1及びECG2の各々についての例えば直近の8つのその様な指定を格納しているローリングバッファに記憶される。
【0142】
[0166]2つのチャネルECG1及びECG2のうちの一方だけがノイズによって損なわれていると判定されれば、即ちブロック346でYesの場合、ノイズによって損なわれていないチャネル即ち「クリーンチャネル」についての信号はVT事象又はVF事象と関連付けられる可能性が高いかどうかの判定が、クリーンチャネルについての信号が規則的であるR−R間隔を含んでいて而して比較的安定しているとして分類され得るかどうかを判定することによってなされる、ブロック348。R−R間隔が比較的安定していないと判定されれば、即ちブロック348でNOの場合、クリーンチャネルについての信号はVFと関連付けられる可能性があるとして識別され、それが次いで信号が以下に説明されているVFショックゾーンに入っているかどうかを判定することによって検証される、ブロック350。クリーンチャネルについてのR−R間隔が安定していると判定されれば、即ちブロック348でYESの場合、信号はVTと関連付けられる可能性があるとして識別され、それが次いでクリーンチャネルについての信号がVTショックゾーンに入っているかどうかを判定することによって検証される、ブロック352。
【0143】
[0167]本開示の或る実施形態によれば、クリーンチャネルについての信号が、規則的であるR−R間隔を含んでいてクリーンチャネルは而して比較的安定していると判定され得る、即ちブロック348でのYesか、又は比較的不安定していないと判定され得る、即ちブロック348でのNoか、どちらであるかを判定するために、装置は、ブロック348でクリーンチャネルと関連付けられるR−R間隔でのばらつきの相対レベルが規則的であるかどうかを判定することによってVT事象をVF事象から鑑別する。
図18は、本開示の或る実施形態による、心臓事象を鑑別するための方法の流れ図である。例えば、
図18に描かれている様に、クリーンチャネルについての既定最大間隔及び既定最小間隔が12のR−R間隔の更新されたバッファから識別される、
図13のブロック342。本開示の或る実施形態によれば、12のR−R間隔のうちの最も大きいR−R間隔及び6番目に大きいR−R間隔がそれぞれ最大間隔及び最小間隔として利用される。
【0144】
[0168]12のR−R間隔のうちの最大R−R間隔と最小R−R間隔の間の差が計算されてクリーンチャネルと関連付けられる間隔差を生成する、702。次いで間隔差が例えば110ミリ秒の様な既定の安定度閾値より大きいかどうかに関し判定がなされる、ブロック704。
【0145】
[0169]間隔差が安定度閾値より大きければ、事象は不安定事象として分類され、ブロック706、而してクリーンチャネルは規則的な間隔を含んでいないと判定され、即ちブロック348でNoとなり、クリーンチャネルと関連付けられる信号が以下に説明されている既定のVFショックゾーン内にあるかどうかに関し判定がなされる、
図13のブロック350。間隔差が安定度閾値より小さいか又は安定度閾値に等しければ、即ちブロック704でNoの場合、装置は最小R−R間隔が例えば200ミリ秒の様な最小間隔閾値より大きいかどうかを判定する、ブロック710。
【0146】
[0170]最小間隔が最小間隔閾値より小さいか又は最小間隔閾値に等しければ、即ちブロック710でNoの場合、事象は不安定事象として分類され、ブロック706、而してクリーンチャネルは規則的な間隔を含んでいないと判定され、即ちブロック348でNoとなり、そしてクリーンチャネルと関連付けられる信号が以下に説明されている既定のVFショックゾーン内にあるかどうかに関し判定がなされる、
図13のブロック350。最小間隔が最小間隔閾値より大きければ、即ちブロック710でYesの場合、装置は最大間隔が例えば333ミリ秒の様な最大間隔閾値より小さいか又は最大間隔閾値に等しいかどうかを判定する、ブロック712。最大間隔が最大間隔閾値より大きければ、事象は不安定事象として分類され、ブロック706、而してクリーンチャネルは規則的な間隔を含まないと判定され、即ちブロック348でNoとなり、クリーンチャネルと関連付けられる信号は以下に説明されている既定のVFショックゾーン内にあるかどうかに関し判定がなされる、
図13のブロック350。最大間隔が最大間隔閾値より小さいか又は最大間隔閾値に等しければ、事象は安定事象として分類され、ブロック714、而してクリーンチャネルは規則的な間隔を含むと判定され、即ちブロック348でYesとなり、クリーンチャネルと関連付けられる信号は以下に説明されている既定のVTショックゾーン内にあるかどうかに関し判定がなされる、
図13ブロック352。
【0147】
[0171]
図13に戻って、クリーンチャネルがVFショックゾーン内にあるかどうかの判定であるブロック350は、以上にブロック360及びブロック362に関連して説明されているVFショックゾーン判定と同様に、低勾配含量メトリック及びスペクトル幅メトリックに基づいてなされており、メトリックはどちらもクリーンチャネルについて以上に説明されている方法を使用して確定される。低勾配含量メトリック及びスペクトル幅メトリックがクリーンチャネルについてひとたび確定されたら、クリーンチャネルがVFショックゾーンに入っているかどうかの判定が方程式1及び方程式2を使用してなされ、クリーンチャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さいくない又はスペクトル幅が第2境界504より小さくないのどちらかであれば、クリーンチャネルはVFゾーンに入っていないと判定され、即ちブロック350でNoとなり、両方のチャネルはショック可能ではないとして分類され、ブロック351、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0148】
[0172]クリーンチャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さく且つスペクトル幅が第2境界504より小さければ、クリーンチャネルはVFゾーンに入っていると判定される、即ちブロック350でYesとなる。次いでノイズによって損なわれていると判定されたチャネル即ち「ノイジーチャネル」がVFショックゾーン内にあるかどうかに関し判定がなされる、ブロック354。ノイジーチャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さくない又はスペクトル幅が第2境界504より小さくないのどちらかであれば、ノイジーチャネルはVFゾーンに入っていないと判定され、即ちブロック354でNoとなり、クリーンチャネルはショック可能であるとして分類され、ノイジーチャネルはショック可能でないとして分類され、ブロック355、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0149】
[0173]ノイジーチャネルについての低勾配含量が第1境界502より小さく且つスペクトル幅が第2境界504より小さければ、ノイジーチャネルはVFゾーンに入っていると判定され、即ちブロック354でYesとなり、クリーンチャネル及びノイジーチャネルの両方がショック可能であるとして分類され、ブロック353、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0150】
[0174]以上にブロック358に関連して説明されているVTショックゾーン判定と同様、ブロック352でのクリーンチャネルがVTショックゾーン内にあるかどうかに関しての判定中、低勾配含量及びスペクトル幅はクリーンチャネルについて、以上にVFショックゾーンを確定することに関連して説明されている様に確定される。第1VTショックゾーン520は、例えば方程式3に従って、クリーンチャネルと関連付けられる低勾配含量とスペクトル幅の間の関係に基づいて定義され、第2VTショックゾーン524は、クリーンチャネルと関連付けられる低勾配計数と正規化平均整流振幅の間の関係に基づいて定義される。クリーンチャネルについての正規化平均整流振幅は、以上にブロック344のノイズ検出検定に関連して説明されているのと同じである。例えば、本開示の或る実施形態によれば、第2VTショックゾーン524は、方程式4を使用してクリーンチャネルの低勾配計数と正規化平均整流振幅の間の関係と関連付けられる第2境界526によって定義されている。
【0151】
[0175]低勾配計数が第1境界522即ち−0.004×クリーンチャネルのスペクトル幅+0.93より小さく且つ正規化平均整流振幅が第2境界526即ち68×クリーンチャネルの低勾配計数+8.16より大きければ、クリーンチャネルはVTショックゾーンに入っていると判定され、即ちブロック352でYesとなり、両方のチャネルはショック可能であるとして分類され、ブロック353、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0152】
[0176]低勾配計数が第1境界522より小さくない又は最大正規化平均整流振幅が第2境界526より大きくないのどちらかであれば、クリーンチャネルはVTショックゾーンの外にあると判定され、即ちブロック352でNoとなり、両方のチャネルはショック可能でないと判定され、ブロック351、関連付けられるバッファが然るべく更新される。
【0153】
[0177]本開示の或る実施形態によれば、例えば
図13に説明されている様にグロス形態解析を使用しての感知チャネルECG1及びECG2のショック可能又はショック可能でないとの分類に加え、装置は、更に、3秒ウィンドーの各々内の拍動の拍動ベースの解析を遂行し、ブロック368、その結果、状態移行に関する(例えば、ブロック370での関与動作状態104から活性動作状態106へ移行するべきかどうかに関しての、又は活性状態106からショック状態108へ移行するべきかどうかに関しての)決定は、各感知チャネルECG1及びECG2についての単数又は複数の3秒ウィンドー内の信号のグロス形態の解析と、以下に説明されている各感知チャネルECG1及びECG2についての単数又は複数の3秒ウィンドー内の個別の拍動又はR波の形態の解析と、の両方の結果に基づいてなされる。3秒セグメントがショック可能であるとして分類されるには、グロス形態解析と拍動ベースの解析のどちらもが同じ3秒セグメントをショック可能であるとして分類しなければならない。
【0154】
[0178]例えば、本開示の或る実施形態によれば、関与動作状態104から活性動作状態106へ移行するべきかどうかを判定するために、装置は、両方のチャネルECG1及びECG2について3秒セグメントの例えば3つのうちの2つの様な既定の数のセグメントがグロス形態解析中にショック可能であるとして分類されてしまっているかどうかを判定し、ブロック353、357、363、及び369、そして両方のチャネルについてのそれら3秒セグメントは更に拍動ベースの解析中にショック可能であるとして分類されてしまっているかどうかを判定する、ブロック368。両方のチャネルECG1及びECG2で既定数の3秒セグメントがグロス形態解析と拍動ベースの解析の両方でショック可能であると分類されてしまっていれば、装置は関与状態104から活性状態106へ移行する、即ちブロック370のYesとなる。装置が関与状態104から活性状態106へ移行するべきであると判定すると、即ちブロック370でYesの場合、処理は以上に説明されている関与状態104中に利用されるものとしての3秒タイムアウトによって引き続きトリガされる。
【0155】
[0179]両方のチャネルECG1及びECG2で既定数の3秒セグメントがグロス形態解析及び拍動ベースの解析の両方でショック可能であるとして分類されてしまっていなければ、装置は、関与状態104から活性状態106へ移行せず、即ちブロック370のNoとなり、非関与状態102へ戻り移るべきかどうかに関しての判定がなされる、ブロック372。関与状態104から非関与状態102へ戻り移るべきかどうかに関しての判定は、例えば、2つのチャネルECG1及びECG2の両方で心拍数推定値が心拍数閾値レベルより小さいかどうかを、ここに参考文献としてその全体が援用されているスタッドラーらへの米国特許第7,894,894号に記載されている心拍数推定値を確定するための方法を使用して判定することによってなされる。装置は非関与状態102へ移行するべきではないと判定されれば、即ち2つの心拍数推定値のどちらかが心拍数閾値レベルより大きければ、即ちブロック372でNoの場合、次の3秒ウィンドー中に生成される信号を使用してプロセスが継続する、ブロック341。
【0156】
[0180]以上に説明されている様に、感知チャネルECG1及びECG2がショック可能であるかショック可能でないかの判定、即ちブロック353、355、357、及び363−369は、当該3秒ウィンドーの中で起こっている感知された波形のグロス形態を解析することによって遂行される。ECG信号は、n秒間隔、即ち3秒間隔へセグメント化され、それらが3秒波形のグロス形態の特徴を確定するために使用される。具体的には、グロス形態の特徴は、n秒の時間間隔を横断してR波感知に頼ることなく確定されており、グロス形態の特徴は、従って、心臓周期の個別心臓信号、即ち3秒ウィンドー全部の中にある3秒ウィンドー内に包含される個別の拍動又はR波とは独立にECG信号から確定され得る波形信号全体を構成している特徴である。n秒ウィンドー内の単一の波形は、当該ウィンドーの始点に始まり、ウィンドー全体を通して延び、3秒ウィンドーの終点に終わるので、単一の形態の確定が単一の3秒ウィンドー内に含まれる単一の波形についてなされる。
【0157】
[0181]他方、3秒ウィンドーの中には複数の心臓周期即ち複数のR波信号が含まれており、従ってn秒ウィンドーは、個別R波信号がどこで始まりどこで終わるかに関係なく、個別R波信号の各々に対して何れの時点に始まり何れの時点に終わっていてもよいので、複数の個別の拍動ベースの確定は単一の3秒ウィンドーの中に含まれる複数の拍動波形についてなされる。
【0158】
[0182]n秒の時間期間を横断して延びている単一波形について算定される形態の特徴は、特徴が、複数の個別の心臓周期を含んでいる時間セグメントから心臓周期のタイミングとは独立に抽出されている単一の信号のウィンドーの始点から終点までを延びている特性であるので、「グロス」形態の特徴と呼称されている。対照的に、心臓周期中のECG信号から抽出される形態の特徴は「拍動ベース」の特徴と呼称される。拍動ベースの特徴は、単一の3秒ウィンドー内に包含される複数の心臓周期のうちの1つの心臓周期の時間間隔に亘るECG信号セグメントから確定される。拍動ベースの特徴は、複数の心臓周期から平均化され確定されてもよいが、心臓周期中のECG信号の単一の特徴を表している。典型的には1心臓周期より長い時間セグメントに亘る、心臓周期とは独立したグロス特徴を確定することとは反対に、拍動特徴の確定は心臓周期のタイミング又は少なくともR波の様な感知事象を識別することに依存している。
【0159】
[0183]
図19は、本開示の或る実施形態による、医療装置での不整脈検出中の拍動ベースの解析の流れ図である。従って、以上に説明されている様に、各感知チャネルECG1及びECG2と関連付けられる3秒ウィンドー内の波形全体の形態学的解析を遂行することに加え、装置は、両方のチャネルECG1及びECG2内で同時に感知されている信号の拍動ベースの解析を遂行する、ブロック368。具体的には、
図19に示されている様に、それぞれの感知チャネルECG1及びECG2と関連付けられる各3秒感知ウィンドーについて、装置は拍動即ちR波を探し出し、ブロック800、個別拍動を例えば正常洞調律テンプレートの様な既定の拍動テンプレートに比較する、ブロック802。拍動とテンプレートの比較に基づいて、装置は、拍動が一致拍動か不一致拍動のどちらであるかを、拍動がテンプレートにどの程度まで一致しているかを確定することによって判定する、ブロック804。例えば、拍動を一致拍動か不一致拍動のどちらかとして識別するために、装置は、ブロック804で、拍動が洞調律テンプレートに例えば60パーセントの様な既定のパーセンテージ内で一致しているかどうかを判定する。拍動がテンプレートに既定のパーセンテージ又はそれより大きいパーセンテージで一致していれば、即ちブロック804でYesの場合、拍動は一致拍動として識別され、3秒ウィンドーについての一致拍動数が更新される、ブロック806。拍動がテンプレートに既定のパーセンテージ未満で一致していれば、即ちブロック804でNoの場合、拍動は不一致拍動として識別され、3秒ウィンドーについての不一致拍動数が更新される、ブロック808。
【0160】
[0184]拍動が一致拍動でありそうだ又は不一致拍動でありそうだのどちらかとして識別されたら、装置は、一致/不一致判定が3秒ウィンドー内の拍動全てについてなされてしまったかどうかを判定する、ブロック810。判定が3秒ウィンドー内の拍動の全てについてなされていなかったなら、即ちブロック810でNoの場合、3秒ウィンドー内に探し出されている別の拍動でプロセスが繰り返される。3秒ウィンドー内の拍動全てについて判定がなされてしまったら、即ちブロック810でYesの場合、3秒ウィンドー内の不一致拍動の数が不一致閾値より大きいかどうかに関し判定がなされる、ブロック812。本開示の或る実施形態によれば、不一致閾値は例えば75パーセントの様な既定のパーセンテージとして設定されているので、不一致拍動であるとして識別されている3秒ウィンドー内の個別拍動数がウィンドー内の拍動全ての数の75パーセントより大きければ、即ちブロック812でYesの場合、当該3秒ウィンドーは拍動ベースの解析に基づいてショック可能であるとして識別される、ブロック814。他方、不一致拍動であるとして識別されている3秒ウィンドー内の個別拍動の数がウィンドー内の拍動全ての数の75パーセントより大きくなければ、即ちブロック812でNoの場合、当該3秒ウィンドーは拍動ベースの解析に基づいてショック可能でないとして識別される、ブロック814。3秒ウィンドーをショック可能であるとする拍動ベースの解析の判定814又はショック可能でないとする拍動ベースの解析の判定ブロック816が、次いで、3秒ウィンドーはどちらもショック可能であるとする波形の形態解析のブロック353、357、363、及び369、又はどちらもショック可能でないとする波形の形態解析のブロック351、355、359、365、及び367、と組み合わせて使用され、以上に説明されている様に次の段階へ移行するべきかどうかが判定される、ブロック370。
【0161】
[0185]
図13から分かる様に、両方のチャネルECG1及びECG2をショック可能であると判定することができたそのやり方は様々に異なる。第1として、ノイズがどちらかのチャネルで起こっていると判定されず、即ちブロック346でNoとなり、但し両方のチャネルは規則的な間隔を有していると判定され、即ちブロック356でYesとなり、そして両方のチャネルがVTショックゾーンに入っていると判定されたのなら、即ちブロック358でYesとなった場合、感知チャネルECG1及びECG2の両方がショック可能であると判定される、ブロック359。第2として、ノイズがどちらかのチャネルで起こっていると判定されず、即ちブロック346でNoとなり、但し両方のチャネルは規則的な間隔を有していると判定されず、即ちブロック356でNoとなり、そして両方のチャネルはVFショックゾーンに入っていると判定されれば、即ちブロック360でYes且つブロック362でYesとなった場合、感知チャネルECG1及びECG2の両方がショック可能であると判定される。
【0162】
[0186]また一方で、ノイズが一方のチャネルで起こっていると判定され、即ちブロック346でYesとなり、但しクリーンチャネルは規則的な間隔を有していると判定され、即ちブロック348でYesとなり、そしてVTショックゾーンに入っていると判定されたのなら、即ちブロック352でYesとなった場合、感知チャネルECG1及びECG2の両方がショック可能であると判定される、ブロック353。最後に、ノイズが一方のチャネルで起こっていると判定され、即ちブロック346でYesとなり、そしてクリーンチャネルは規則的な間隔を有していないと判定され、即ちブロック348でNoとなり、クリーンチャネルとノイジーチャネルはどちらもVFショックゾーンに入っていると判定されたのなら、即ちブロック350でYes且つブロック354でYesとなった場合、感知チャネルECG1及びECG2の両方がショック可能であると判定される、ブロック353。
【0163】
[0187]この様にして、両方のチャネルはどちらかがVFショックゾーンに入っているという判定、即ちブロック363及びブロック369、又はブロック350及びブロック354を介してのブロック353に基づいて、又は両方のチャネルはVTショックゾーンに入っているという判定、即ちブロック357に基づいて、又は一方のチャネルのみ即ちクリーンチャネルはVTショックゾーン内にあるという判定、即ちブロック352を介してのブロック353に基づいて、両方のチャネルはショック可能であると判定されることになる。
【0164】
[0188]
図20は、本開示の或る実施形態による、医療装置での不整脈検出中の拍動ベースの解析の流れ図である。従って、本開示の或る実施形態によれば、装置は、最初に、3秒ウィンドーがどの様にしてグロス形態の解析中にショック可能であると判定されたのか、即ち両方のチャネルを使用することによってか又は一方のチャネルだけを使用することによってかを識別し、この判定に基づいて、拍動形態の解析で利用されるべきはどのチャネルなのかを確定する。
【0165】
[0189]而して、
図13及び
図20に示されている様に、1つの実施形態によれば、装置は、両方のチャネルをショック可能であるとする識別に両方のチャネルが使用されていたのかどうかを判定し、ブロック820、そして、両方のチャネルが利用されていたのなら、即ちブロック820でYesの場合、拍動ベースの解析であるブロック368は両方のチャネルについて、以上に
図19で説明されている様に遂行される、ブロック822。
【0166】
[0190]両方のチャネルが利用されていなかったのなら、即ちブロック820でNoの場合、拍動ベースの解析であるブロック368は、一方のチャネル即ちクリーンチャネルについてのみ遂行される、ブロック824。具体的には、装置は、クリーンチャネルの拍動即ちR波だけを探し出し、ブロック800、個別拍動を例えば正常洞調律テンプレートの様な既定の拍動テンプレートに比較する、ブロック802。拍動とテンプレートの比較に基づいて、装置は、拍動が一致拍動か不一致拍動のどちらであるかを、拍動がテンプレートとどの程度まで一致しているかを確定することによって判定する、ブロック804。例えば、拍動を一致拍動か不一致拍動の何れかに識別するために、装置は、ブロック804で、拍動が洞調律テンプレートに例えば60パーセントの様な既定のパーセンテージ内で一致しているかどうかを判定する。拍動がテンプレートに既定のパーセンテージ又はそれより大きいパーセンテージで一致していれば、即ちブロック804でYesの場合、拍動は一致拍動として識別され、3秒ウィンドーについての一致拍動数が更新される、ブロック806。拍動がテンプレートに既定のパーセンテージ未満で一致していれば、即ちブロック804でNoの場合、拍動は不一致拍動として識別され、3秒ウィンドーについての不一致拍動数が更新される、ブロック808。
【0167】
[0191]拍動が一致拍動でありそうだ又は不一致拍動でありそうだのどちらかとして識別されたら、装置は、クリーンチャネルのみについて一致/不一致判定が3秒ウィンドー内の拍動全てについてなされてしまっているかどうかを判定する、ブロック810。判定がクリーンチャネルについて3秒ウィンドー内の拍動全てについてなされていなかったなら、即ちブロック810でNoの場合、クリーンチャネルの3秒ウィンドー内に探し出されている別の拍動でプロセスが繰り返される。クリーンチャネルの3秒ウィンドー内の拍動全てについて判定がなされてしまったら、即ちブロック810でYesの場合、3秒ウィンドー内の不一致拍動数が不一致閾値より大きいかどうかに関し判定がなされる、ブロック812。本開示の或る実施形態によれば、不一致閾値は例えば75パーセントの様な既定のパーセンテージとして設定されているので、不一致拍動であるとして識別されている3秒ウィンドー内の個別拍動数がウィンドー内の拍動全ての数の75パーセントより大きければ、即ちブロック812でYesの場合、クリーンチャネルの当該3秒ウィンドーは拍動ベースの解析に基づいてショック可能であるとして識別される、ブロック814。他方、不一致拍動であるとして識別されている3秒ウィンドー内の個別拍動の数がウィンドー内の拍動全ての数の75パーセントより大きくなければ、即ちブロック812でNoの場合、クリーンチャネルの当該3秒ウィンドーは拍動ベースの解析に基づいてショック可能でないとして識別される、ブロック814。
【0168】
[0192]ブロック370での関与動作状態104から活性動作状態106へ移行するべきかどうかに関しての決定は、各感知チャネルECG1及びECG2についての単数又は複数の3秒ウィンドー内の信号の形態の解析と、以上に説明されている各感知チャネルECG1及びECG2についての単数又は複数の3秒ウィンドー内の個別の拍動又はR波の形態の解析と、の両方の結果に基づいてなされる。拍動ベースの解析が一方のチャネル即ちクリーンチャネルのみについて遂行されるブロック824の事例では、次の段階へ移行するべきかどうかの判定であるブロック370は、両方のチャネルECG1及びECG2で既定数の3秒セグメントがグロス形態解析中にショック可能であると分類され且つ拍動ベースの解析であるブロック368がクリーンチャネルのみについて満たされれば、満たされたということになり、而して装置は関与状態104から活性状態106へ移行する、即ちブロック370でYesとなる。両方のチャネルECG1及びECG2での既定数の3秒セグメントが、グロス形態解析とクリーンチャネル限定の拍動ベースの解析の両方の解析中にショック可能であるとして分類されていなかったなら、装置は関与状態104から活性状態106へ移行せず、即ちブロック370でNoとなり、以上に説明されている様に非関与状態102へ戻り移るべきかどうかに関し判定がなされる、ブロック372。
【0169】
[0193]様々な実施例を説明してきた。これら及び他の実施例は付随の特許請求の範囲による範囲の内にある。
前記制御モジュールは、(a)前記ペーシング列の周期長さを推定し、前記ペーシング列の前記推定された周期長さを少なくとも1つの周期長さ閾値に比較し、前記検出されたペーシング列の前記種類を前記比較に基づいて確定すること、又は(b)前記検出されたペーシング列の直前の心拍数のオンセット、ペーシングパルス間隔の規則性、ペーシングアーチファクト振幅の一貫性、ペーシングパルススルーレートの一貫性、及び/又はペーシングパルス極性の一貫性、のうちの1つ又はそれ以上を解析すること、の一方によって、前記検出されたペーシング列の前記種類を確定する、請求項1に記載の装置。
前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムは少なくとも1つの段を含んでおり、当該段では、前記制御モジュールは前記感知された電気信号の複数の既定のセグメントの形態を分析し、前記制御モジュールは、前記ペーシング列の前記種類が抗頻拍ペーシング(ATP)であると検出していることに応え、前記形態解析を現在の状態に保持することによって前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムを修正し、前記ペーシング列の終止を検出し、前記ペーシング列の前記終止を検出していることに応え、前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムの前記形態解析を再開する、請求項1又は2に記載の装置。
前記制御モジュールは、前記ペーシング列の種類が抗頻拍ペーシング(ATP)列であることを検出し、前記頻脈性不整脈検出アルゴリズムの前記修正は最大10秒に及んでショックの遅延をもたらす、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の装置。