(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-513713(P2017-513713A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(54)【発明の名称】亜鉛を主成分として、アルミニウムを合金化金属として含む鉛フリー共晶はんだ合金
(51)【国際特許分類】
B23K 35/28 20060101AFI20170428BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20170428BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20170428BHJP
【FI】
B23K35/28 310D
C22C18/00
C22C18/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-560991(P2016-560991)
(86)(22)【出願日】2015年4月15日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月5日
(86)【国際出願番号】SG2015050073
(87)【国際公開番号】WO2015160311
(87)【国際公開日】20151022
(31)【優先権主張番号】10201401618Y
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】SG
(31)【優先権主張番号】10201402705V
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】SG
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515298442
【氏名又は名称】ヘレウス マテリアルズ シンガポール ピーティーイー. リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パン ウェイ チー
(72)【発明者】
【氏名】バキラン ジョセフ アーロン メサ
(72)【発明者】
【氏名】レイノソ インシオン
(57)【要約】
亜鉛(Zn)を主成分として、アルミニウム(Al)を合金化金属として含む鉛フリーはんだ合金であって、前記はんだ合金は、320〜390℃の範囲の単一の融点(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定)を有する共晶混合物である、はんだ合金。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛(Zn)を主成分として、アルミニウム(Al)を合金化金属として含む鉛フリーはんだ合金であって、前記はんだ合金は、320〜390℃の範囲の単一の融点(5℃分−1の加熱速度でDSCにより測定)を有する共晶混合物である、鉛フリーはんだ合金。
【請求項2】
3.8〜4.0wt%のアルミニウム(Al)および2.2〜2.25wt%のマグネシウム(Mg)を含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項3】
3.8wt%のアルミニウム(Al)と、2.2wt%のマグネシウム(Mg)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項4】
3.8wt%のアルミニウム(Al)と、2.2wt%のマグネシウム(Mg)と、5wt%のスズ(Sn)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項5】
3.8wt%のアルミニウム(Al)と、2.2wt%のマグネシウム(Mg)と、6wt%のスズ(Sn)と、2wt%の銀(Ag)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項6】
4.0wt%のアルミニウム(Al)と、2.25wt%のマグネシウム(Mg)と、5.85wt%の銀(Ag)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項2に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項7】
6.0wt%のアルミニウム(Al)および6.0〜7.2wt%のゲルマニウム(Ge)を含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項8】
6.0wt%のアルミニウム(Al)と、6.5wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項7に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項9】
6.0wt%のアルミニウム(Al)と、7.2wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項7に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項10】
6.0wt%のアルミニウム(Al)と、6.0wt%のゲルマニウム(Ge)と、2.0wt%の銅(Cu)と、1.25wt%のスズ(Sn)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項7に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項11】
8.0wt%のアルミニウム(Al)と、2.4wt%の銅(Cu)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項12】
7.6wt%のアルミニウム(Al)と、2.0wt%の銀(Ag)と、2.0wt%の銅(Cu)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項13】
3.8wt%のアルミニウム(Al)と、3.28wt%のマグネシウム(Mg)と、7wt%のスズ(Sn)と、2.42wt%の銀(Ag)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項14】
3.6wt%のアルミニウム(Al)と、3.1wt%のマグネシウム(Mg)と、7wt%のスズ(Sn)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項15】
4.8〜5.0wt%のアルミニウム(Al)、0.35〜0.5wt%のマグネシウム(Mg)、および0.5〜1.0wt%のゲルマニウム(Ge)を含む、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項16】
5.0wt%のアルミニウム(Al)と、0.35wt%のマグネシウム(Mg)と、1.0wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項15に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項17】
4.8wt%のアルミニウム(Al)と、0.45wt%のマグネシウム(Mg)と、1.0wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項15に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項18】
6wt%のアルミニウム(Al)と、6.5wt%のゲルマニウム(Ge)と、1.7wt%の銅(Cu)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる、請求項1に記載の鉛フリーはんだ合金。
【請求項19】
はんだワイヤ、はんだロッド、はんだ粉末、およびはんだプレフォームからなる群から選択される形態で存在するはんだ金属としての請求項1〜18のいずれか一項に記載の鉛フリーはんだ合金の使用。
【請求項20】
フラックスを含むはんだペーストおよびはんだワイヤからなる群から選択されるはんだ組成物中の構成成分としての請求項1〜18のいずれか一項に記載の鉛フリーはんだ合金の使用。
【請求項21】
はんだワイヤ、はんだロッド、はんだ粉末、およびはんだプレフォームからなる群から選択される形態で存在するはんだ金属であって、前記金属は、請求項1〜18のいずれか一項に記載の鉛フリーはんだ合金である、はんだ金属。
【請求項22】
フラックスを含むはんだペーストおよびはんだワイヤからなる群から選択されるはんだ組成物であって、前記はんだ組成物は、構成成分として請求項1〜18のいずれか一項に記載の鉛フリーはんだ合金を含む、はんだ組成物。
【請求項23】
機械的接続または電子もしくは超小型電子用途における請求項21に記載のはんだ金属の使用。
【請求項24】
機械的接続または電子もしくは超小型電子用途における請求項22に記載のはんだ組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛(Zn)を主成分として、アルミニウム(Al)を合金化金属として含む鉛フリー共晶はんだ合金に関する。本発明はさらに、鉛フリー共晶はんだ合金の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
環境および健康への懸念によって推進される法令は、依然として鉛含有はんだ合金の鉛フリー代替物による置換を進めている。しかし、代替物であるはんだ合金の融点、またはもっと厳密に言えばその固相線温度は、特に、完成したはんだ接合部が、場合によって後の加工ステップおよび/または現場条件下で高温に曝される用途に関して十分に高くなければならない。例えば、ダイ接着用途においては、280〜400℃のはんだ合金の融点が必要とされる。
【0003】
特許文献1は、82〜96wt%(重量%)の亜鉛、3〜15wt%のアルミニウム、0.5〜1.5wt%のマグネシウム、および0.5〜1.5wt%のガリウムを含む鉛フリー亜鉛系はんだ組成物について開示している。
【0004】
特許文献2は、2〜9wt%のアルミニウム、0.01〜0.5wt%のマグネシウム、2〜9wt%のゲルマニウムと、亜鉛および不可避不純物の残部とからなる鉛フリー亜鉛系ダイボンディング合金について開示している。
【0005】
特許文献3は、いくつかの鉛フリー亜鉛系はんだ合金を特許請求しており、そのうち1つは8〜20wt%のアルミニウム、0.5〜20wt%のマグネシウム、および0.5〜20wt%のガリウムを含むもの、さらに1つは1〜30wt%のアルミニウム、0.5〜20wt%のマグネシウム、および0.5〜6.5wt%のスズを含むもの、さらに1つは1〜30wt%のアルミニウム、0.5〜20wt%のゲルマニウム、および0.5〜20wt%のガリウムを含むものであり、合金の残りはそれぞれいずれも亜鉛を含むものである。
【0006】
特許文献4は、0.01〜9.0wt%のアルミニウムと、0.01〜8.0wt%のゲルマニウム、0.01〜5.0wt%のマグネシウム、0.1〜4.0wt%の銀の範囲でゲルマニウム、マグネシウム、銀のうちの少なくとも1つと、最大0.5wt%のリンとを含み、残部はZnおよび不可避不純物からなる鉛フリー亜鉛系はんだ合金について開示している。
【0007】
特許文献5は、1〜7wt%のアルミニウム、0.5〜6wt%のマグネシウム、1〜25wt%のスズと、残部の亜鉛および不可避不純物とからなる鉛フリー亜鉛系はんだ合金について開示している。
【0008】
特許文献6は、1.0〜9.0wt%のアルミニウム、0.002〜0.8wt%のリン、0.3〜3wt%のゲルマニウムと、残部の亜鉛および不可避不純物とからなる鉛フリー亜鉛系はんだ合金を特許請求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0045131A1号
【特許文献2】特開第2000208533号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0313230A1号
【特許文献4】特開第2012228729号公報
【特許文献5】特開第平11207487号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2013/0251587A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
改善された鉛フリーはんだ合金を見出すことが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、亜鉛(Zn)を主成分として、アルミニウム(Al)を合金化金属として含む鉛フリー共晶はんだ合金に関する。単一の融点で表すその共晶温度は320〜390℃の範囲である(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0012】
本明細書で使用する場合、略語「DSC」とは示差走査熱量測定法を意味する。
【0013】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は、特にエレクトロニクスおよびマイクロエレクトロニクス分野において使用するはんだ材料として、またははんだ組成物中に使用可能であることが見出された。
【0014】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金を含むかまたはこれからなるはんだ組成物から作られるはんだ接合は、驚くほど改善された熱特性、微細構造特徴、および信頼性を示す。これらの特性により、これらの合金を用いて製造された製品のより優れた性能がもたらされる。
【0015】
第1の実施形態では、本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は、3.8〜4.0wt%のアルミニウム(Al)および2.2〜2.25wt%のマグネシウム(Mg)を含む。
【0016】
第1の実施形態の第1の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、3.8wt%のアルミニウム(Al)と、2.2wt%のマグネシウム(Mg)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は350℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0017】
第1の実施形態の第2の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、3.8wt%のアルミニウム(Al)と、2.2wt%のマグネシウム(Mg)と、5wt%のスズ(Sn)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は339℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0018】
第1の実施形態の第3の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、3.8wt%のアルミニウム(Al)と、2.2wt%のマグネシウム(Mg)と、6wt%のスズ(Sn)と、2wt%の銀(Ag)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は340℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0019】
第1の実施形態の第4の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、4.0wt%のアルミニウム(Al)と、2.25wt%のマグネシウム(Mg)と、5.85wt%の銀(Ag)と、合計0〜0.5wt%の、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は352℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0020】
第2の実施形態では、鉛フリー共晶はんだ合金は、6.0wt%のアルミニウム(Al)および6.0〜7.2wt%のゲルマニウム(Ge)を含む。
【0021】
第2の実施形態の第1の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、6.0wt%のアルミニウム(Al)と、6.5wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は368℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0022】
第2の実施形態の第2の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、6.0wt%のアルミニウム(Al)と、7.2wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は361℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0023】
第2の実施形態の第3の代替物において、鉛フリー共晶はんだ合金は、6.0wt%のアルミニウム(Al)と、6.0wt%のゲルマニウム(Ge)と、2.0wt%の銅(Cu)と、1.25wt%のスズ(Sn)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は358℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0024】
第3の実施形態において、鉛フリー共晶はんだ合金は、8.0wt%のアルミニウム(Al)と、2.4wt%の銅(Cu)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は389℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0025】
第4の実施形態において、鉛フリー共晶はんだ合金は、7.6wt%のアルミニウム(Al)と、2.0wt%の銀(Ag)と、2.0wt%の銅(Cu)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は390℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0026】
第5の実施形態において、鉛フリー共晶はんだ合金は、3.8wt%のアルミニウム(Al)と、3.28wt%のマグネシウム(Mg)と、7wt%のスズ(Sn)と、2.42wt%の銀(Ag)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は341℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0027】
第6の実施形態において、鉛フリー共晶はんだ合金は、3.6wt%のアルミニウム(Al)と、3.1wt%のマグネシウム(Mg)と、7wt%のスズ(Sn)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は343℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0028】
第7の実施形態において、本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は、4.8〜5.0wt%のアルミニウム(Al)、0.35〜0.5wt%のマグネシウム(Mg)、および0.5〜1.0wt%のゲルマニウム(Ge)を含む。
【0029】
第7の実施形態の第1の代替物では、鉛フリー共晶はんだ合金は、5.0wt%のアルミニウム(Al)と、0.35wt%のマグネシウム(Mg)と、1.0wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は375℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0030】
第7の実施形態の第2の代替物では、鉛フリー共晶はんだ合金は、4.8wt%のアルミニウム(Al)と、0.45wt%のマグネシウム(Mg)と、1.0wt%のゲルマニウム(Ge)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は380℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【0031】
第8の実施形態において、鉛フリー共晶はんだ合金は、6wt%のアルミニウム(Al)と、6.5wt%のゲルマニウム(Ge)と、1.7wt%の銅(Cu)と、合計0〜0.5wt%の、リン(P)、ニッケル(Ni)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、およびケイ素(Si)の中から選択される1種以上のドーピング元素と、100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)とからなる。当該合金は358℃の単一の融点を示す(5℃分
−1の加熱速度でDSCにより測定する)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
「100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)」という語句を本明細書で使用する。これは、既に上記で述べられたような鉛フリー共晶はんだ合金それぞれにおいて亜鉛が主成分であることを意味するものとする。誤解を避けるために、前述の文は、例えば、製造中の故意ではないが不可避な組み込みの結果として、一般的な技術的条件のため本発明の鉛フリー共晶はんだ合金にたどり着いたかもしれないその他の要素を排除するものとして理解してはならない。すなわち、このようなその他の要素は鉛フリー共晶はんだ合金中に不可避不純物として、わずか>0〜0.05wt%等の非常に少ない量ではあるが存在しうる。いずれの場合も、このような不可避不純物は合金化組成物に故意に添加または導入されるものではない。その限りにおいて、「100wt%にするための残部としての亜鉛(Zn)」という語句は、亜鉛と当該不可避不純物(存在する場合)とからなる合金の100wt%にするために不足しているwt%での割合を意味する。
【0033】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は、金属合金分野の業者に既知の従来のプロセスにより、例えば、亜鉛と一緒にアルミニウムおよびその他の必要な成分を溶融することによって調製できる。誘導炉を使用することが可能であり、真空下にてまたは不活性ガス雰囲気下にて作業することが好都合である。使用する材料は、例えば、99.99wt%以上の純度グレードを有することができる。金属合金溶融物は通常、室温の金型で鋳造され、その中で冷却されて凝固する。
【0034】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は直接(すなわち、それ自体が金属形態で)、はんだ材料として使用される。しかしながら、本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は、実用的観点から目的とするはんだ付け作業に好適な形態で使用されなければならない。好適な形態の例としては、はんだワイヤ、はんだロッド、はんだ粉末、およびはんだプレフォームが挙げられる。
【0035】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金はさらに、はんだ組成物中の金属合金構成成分として、特にはんだ組成物中の唯一の金属合金構成成分として使用できる。はんだ組成物の例としては、フラックスを含むはんだペーストおよびはんだワイヤが挙げられる。
【0036】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金または本発明の鉛フリー共晶はんだ合金を含むはんだ組成物は、機械的接続用途および電子または超小型電子用途を含む多くの用途で使用可能である。本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は例えば、機械的接続におけるろう付け合金として使用できる。本発明の鉛フリー共晶はんだ合金は電子または超小型電子用途にも使用できる。本発明の鉛フリー共晶はんだ合金を含むはんだ組成物は、特に電子または超小型電子用途で使用可能である。電子または超小型電子用途の例としては、ウェハダイのリードフレームへの取付け、パッケージ化されたダイのヒートシンクへの取付け、またはリード線のプリント回路基板へのはんだ付けが挙げられる。
【0037】
本発明の鉛フリー共晶はんだ合金を用いて(はんだ金属として直接使用されるか、または上述のようにはんだ組成物の形態で使用されるかは問わない)はんだ付け作業、特に電子または超小型電子はんだ付け作業を実行する際、はんだ付けプロセスを、塗布され溶融した鉛フリー共晶はんだ合金に超音波エネルギーを印加することにより補助することが好都合でありうる。このような超音波エネルギーの印加は、はんだ中のボイド形成防止と、不均一なはんだドット位置に関わらず均一なはんだ層厚およびはんだ形成形状の点で均一なはんだ接合部形成とを補助できる。
【実施例】
【0038】
以下のwt%組成(残部を亜鉛とする)の共晶亜鉛系合金1〜3を作った。
1.Zn2.2Mg3.8Al
2.Zn6Al7.2Ge
3.Zn0.35Mg5Al1Ge
【0039】
この目的を達成するために、≧99.99%純度の原材料をそれらの必要とされる重量パーセントに従って秤量し、黒鉛るつぼに入れた。黒鉛るつぼは密閉チャンバ内の誘導炉に置いた。このチャンバに真空を作ってチャンバから空気を除去する。その後、アルゴンガスでパージしてから炉を始動して材料を溶融させる。平均加熱ランプ速度は5℃/秒であり、加熱は亜鉛が完全に溶融するまで行われた。誘導炉は均一にする目的で穏やかな撹拌を溶融物に行うことを可能にした。合金をそれぞれ1時間鋳造して、48mm直径のビレットにした。ビレットを直接押し出して、0.76mm直径の単線にし、その後自動巻き取り機により巻き取った。
【0040】
合金の溶融挙動は5℃分
−1の加熱速度においてDSC(示差走査熱量計)により分析した。微細構造はEDS(エネルギー分散型分光法)を用いたSEM(走査型電子顕微鏡)により分析し、相はXRD(X線回折)により決定された。
【0041】
【表1】
【0042】
合金はそれぞれ、DSC曲線において単一の融点(同一の固相線および液相線)を示し、したがって、共晶合金とみなされた。
【0043】
合金は、従来のPb系合金と比較して同等またはより優れた導電率を示し、Pb系合金およびSn系合金と比較して非常に優れた導電率を示す(下表を比較する)。熱伝導率は、13mm直径を有する3mm厚サンプルにNanoFlashレーザ熱伝導装置を使用して決定した。導電率は、20mm直径の70mm長ロッドについてASTM E1008−09規格に従って決定された。
【0044】
【表2】
【0045】
共晶合金の低い単一の融点は、より低いプロセス温度を可能にすることによってプロセス用途における利点を示す。共晶合金はさらに、典型的には非共晶合金で観察される微細構造粗大化または収縮ボイドが起こりにくい。
【0046】
軟質はんだワイヤ分配マシン(BesiダイボンダEsec 2009fS
E)を使用してNiめっきリードフレーム(JEDEC規格TO−220)との銀接触面を有する3.1mm×3.1mmの0.4mm薄さの炭化ケイ素ダイをはんだで固定するために各合金ワイヤを使用した。はんだ付けは、Besi製のプログラム可能な超音波モジュール(PUM)を使用して補助した。
【0047】
そのように組立てられたサンプルを、110MHzの周波数のSonic Echo LSパルスエコーを用いたCSAM(Cモード走査音響顕微鏡法)を使用してボイド分類のために分析した。金属組織サンプルを、Struers TegraForce−5を使用して1μmダイヤモンドになるまで研削および研磨して準備した。
【0048】
微細構造はOlympus GX51倒立光学顕微鏡を使用して調べた。走査型電子顕微鏡法/エネルギー分散X線分光法(SEM/EDX)分析は、Carl Zeiss製のUltra Plus FE−SEMを使用して実行された。
【0049】
はんだ付けされたサンプルは、高温保存試験(HTS)を行うことによりその信頼性について試験した。サンプルは最大500時間、245℃で保持した。評価基準は0時間および250時間毎におけるDC電気接続性(RDSON)に基づくものであった。
【0050】
はんだ付けされたサンプルは、JESD22−A104D、条件Cに従って熱サイクル試験を受けた。評価基準は0サイクルおよび250サイクル毎におけるDC電気接続性(RDSON)に基づくものであった。
【0051】
はんだ付けされたサンプルは、標準規格JEDEC−STD−22−A102−A、121℃、100%RH、2atmに従ってプレッシャークッカー試験を受けた。評価基準は剥離についてのC−SAMに基づくものであった。
【0052】
はんだ付けされたサンプルは、JES22−A113−Dに基づいて、85℃/85%RH、168時間+3xリフロー、260℃の条件下で感湿性レベル1試験を受けた。評価基準は前後のDC電気接続性(RDSON)に基づくものであった。
【0053】
はんだ付けされたサンプルは、JESD22−A110B、130℃/85%/96時間に基づいてバイアスなしHAST(超加速高温高湿試験)を受けた。評価基準は前後のDC電気接続性(RDSON)に基づくものであった。
【0054】
試験結果は次表にまとめている。
【0055】
【表3】
【国際調査報告】