特表2017-514618(P2017-514618A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-514618(P2017-514618A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】神経測定の改善
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
   A61N1/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-566686(P2016-566686)
(86)(22)【出願日】2015年5月5日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】AU2015050215
(87)【国際公開番号】WO2015168735
(87)【国際公開日】20151112
(31)【優先権主張番号】2014901639
(32)【優先日】2014年5月5日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513144730
【氏名又は名称】サルーダ・メディカル・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・スコット・ヴァラック・シングル
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
(57)【要約】
刺激に対する神経反応を測定することは、電気刺激を印加し、次いで、刺激電極がその間に開離される遅延を与えることを含む。遅延の間に、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧が、検知電極で見られる神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されるように、検知電極間のインピーダンスが十分に大きいことを保証しながら、測定増幅器を用いて検知電極に存在する神経反応信号が測定される。例えば、測定増幅器への入力インピーダンス(ZIN)は、

であり得、式中、Zは、検知電極の定位相要素インピーダンスであり、Vs1−Vs2は、検知電極と組織との界面に生じる差動電圧であり、Vは、検知電極で見られる神経反応電圧である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺激に対する神経反応を測定するための方法であって、
刺激電極から神経組織に電気刺激を印加するステップと、
前記刺激電極がその間に開離される遅延を与えるステップと、
前記遅延の間に、前記刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧が、前記検知電極で見られる神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されるように、前記検知電極間のインピーダンスが十分に大きいことを保証しながら、測定増幅器を用いて前記検知電極に存在する神経反応信号を測定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記神経反応の差動測定が、2つの検知電極を使用することによって得られ、前記刺激に反応して前記検知電極と組織との界面に生じる前記電圧が、前記刺激に反応して前記2つの検知電極間に生じる差動電圧である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定増幅器への入力インピーダンス(ZIN)が、
【数1】
として定義され、式中、
は、前記検知電極または各検知電極の定位相要素インピーダンスであり、
s1−Vs2は、前記刺激に反応して前記検知電極と組織との界面に生じる前記差動電圧であり、
は、前記検知電極で見られる前記神経反応電圧である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
INが、
IN>A(Vs1−Vs2)/V
によって制限され、
Aが、(VS1−VS2)分のVに十分なマージンを与えるために提供されたスカラである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Aが0.067より大きい、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Aが0.5より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Aが1より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
Aが2より大きい、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記検知電極と前記測定増幅器との間の直列の検知電極コンデンサを提供するステップをさらに含み、前記検知電極コンデンサが、前記刺激に反応して前記コンデンサの両端間に生じる前記電圧が、前記検知電極で見られる前記神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されることを保証する静電容量を有するように選ばれる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
時間をかけて神経測定値を繰り返し得て、所定の刺激に対する前記神経反応の変化をモニタするステップをさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
患者に届ける療法のフィードバック制御を提供するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
刺激に対する神経反応を測定するための移植可能デバイスであって、
1つまたは複数の公称刺激電極および1つまたは複数の公称検知電極を含む複数の電極と、
神経反応を誘発するために、前記1つまたは複数の刺激電極から神経組織に伝達される刺激を提供するための刺激源と、
前記1つまたは複数の検知電極で検知された神経反応信号を増幅するための測定増幅器であって、前記刺激に反応して前記検知電極と組織との界面に生じる電圧が、前記検知電極で見られる神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されるように、前記検知電極間のインピーダンスが十分に大きい、測定増幅器と、
前記神経組織への刺激の印加および誘発神経反応の測定を制御するように構成された制御ユニットであって、前記刺激電極から神経組織に電気刺激を印加するように構成され、前記刺激電極がその間に開離される遅延を与えるようにさらに構成され、前記遅延の間に、前記測定増幅器を用いて前記検知電極に存在する神経反応信号を測定するようにさらに構成された制御ユニットと
を備える、デバイス。
【請求項13】
前記制御ユニットが、2つの検知電極を使用することによって前記神経反応の差動測定を得るようにさらに構成され、前記刺激に反応して前記検知電極と組織との界面に生じる前記電圧が、前記刺激に反応して前記2つの検知電極間に生じる差動電圧である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記測定増幅器への入力インピーダンス(ZIN)が、
【数2】
の値を有し、式中、
は、前記検知電極または各検知電極の定位相要素インピーダンスであり、
s1−Vs2は、前記刺激に反応して前記検知電極と組織との界面に生じる前記差動電圧であり、
は、前記検知電極で見られる前記神経反応電圧である、請求項12または13に記載のデバイス。
【請求項15】
INが、
IN>A(Vs1−Vs2)/V
によって制限され、
Aが、(VS1−VS2)分のVに十分なマージンを与えるために提供されたスカラである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
Aが0.067より大きい、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
Aが0.5より大きい、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
Aが1より大きい、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
Aが2より大きい、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
前記検知電極または各検知電極と前記測定増幅器との間の直列の検知電極コンデンサをさらに備え、前記検知電極コンデンサまたは各検知電極コンデンサが、前記刺激に反応して前記コンデンサの両端間に生じる前記電圧が、前記検知電極で見られる前記神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されることを保証する静電容量を有する、請求項13〜17のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2014年5月5日に出願された豪州仮特許出願第2014901639号明細書の利益を主張し、同特許は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、神経活動の測定に関し、具体的には、神経組織の最も近く移植された1つまたは複数の電極の使用による複合活動電位の測定または同様のものに関する。
【背景技術】
【0003】
神経経路に印加された電気刺激によって神経経路上で誘発される複合活動電位(CAP)の電気測定値を得ることが望ましい様々な状況がある。しかし、CAPを誘発するために印加される刺激が通常は数ボルトであるのに対して、観察されるCAP信号は通常はマイクロボルトの範囲の最大振幅を有するため、これは難しいタスクであり得る。電極アーチファクトは普段は刺激から生じ、CAPが起こる時間全体にわたって数ミリボルトの減衰出力として現れ、対象のCAPの分離への著しい障害を提示する。神経反応は刺激および/または刺激アーチファクトと同時期に起こり得るため、CAP測定は、増幅器設計の難題を提示する。実際には、多くの非理想的な回路の態様はアーチファクトにつながり、これらの大部分が正または負の極性であり得る指数関数的に減衰する特性を有するため、アーチファクトの発生源の特定および除去は多くの時間と労力を要するものであり得る。
【0004】
CAPの記録に対して、King(米国特許第5,913,882号明細書)、Nygard(米国特許第5,785,651号明細書)およびDaly(米国特許出願公開第2007/0225767号明細書)のものを含む、多くの手法が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘発反応は、アーチファクトよりも後の時間に現れる際または信号対雑音比が十分に高い際は、検出はそれほど難しくはない。アーチファクトは刺激から1〜2ms後の時間に限定される場合が多く、従って、この時間窓の後に神経反応が検出されるならば、データを得ることができる。これは、刺激場所から記録電極への伝播時間が2msを超えるような、刺激電極と記録電極との間に大きな距離がある手術モニタリングにおける事例である。しかし、例えば、後索からの反応を特徴付けるため、高い刺激電流および電極間の近接近が必要とされ、従って、測定プロセスは、同時期に起こるアーチファクトを直接克服しなければならない。神経の構造を刺激し、神経反応が他の場所に伝播する前にその構造の反応を速やかに測定することが望ましい脳深部刺激においても同様の考察が起こり得る。
【0006】
また、移植される電気刺激デバイスは、刺激によって伝達された過渡電流が組織への正味DC電荷注入に至らないことを保証するため、電荷回収にも備えなければならない。手法の1つは、組織へのDC転移を防ぐために各電極上に直列にコンデンサを提供することであり、そのようなコンデンサは、移植可能な能動デバイスの市場承認を得るための規制機関の要件である場合が多い。図1に示されるような別の構成は、電極コンデンサを省略し、代わりに、刺激間の電荷回収を引き起こすために、刺激および検知電極e1〜e4を互いに短絡させるためのスイッチを提供し、また、図1に示されるように、抵抗器(各値は恐らく数百kΩの範囲である)のスター型ネットワークも提供し、デバイスの電源を入れる前に電荷を平衡化するためにすべての電極を共に永久接続する。しかし、電極と測定増幅器との間に電極コンデンサまたは抵抗器のスター型ネットワークを提供することにより、小さなCAP信号の測定の試みを妨げる恐れのあるアーチファクトのかなりの影響が生じ得る。
【0007】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品または同様のものについての論考は、単に、本発明のための文脈を提供するためのものである。これらの事項のいずれかまたはすべてが、先行技術基盤の一部を形成するか、あるいは、この出願の各請求項の優先日前に存在していたために、本発明に関連する分野において共通の一般的な知識であったことの承認として受け取ってはならない。
【0008】
この明細書全体を通じて、「備える、含む(comprise)」という用語または「備える、含む(「comprises」または「comprising」)」などのその変形語は、述べられる要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップ群の包含を含意するが、他の任意の要素、整数もしくはステップ、または、要素、整数もしくはステップ群の除外は含意しないと理解されよう。
【0009】
この明細書では、要素がオプションのリスト「の少なくとも1つ」であり得るという言明は、要素が、リストされるオプションのいずれか1つでも、リストされるオプションのうちの2つ以上の任意の組合せでもあり得ると理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様によれば、本発明は、刺激に対する神経反応を測定するための方法であって、
刺激電極から神経組織に電気刺激を印加するステップと、
刺激電極がその間に開離される遅延を与えるステップと、
遅延の間に、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧が、検知電極で見られる神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されるように、検知電極間のインピーダンスが十分に大きいことを保証しながら、測定増幅器を用いて検知電極に存在する神経反応信号を測定するステップと
を含む、方法を提供する。
【0011】
第2の態様によれば、本発明は、刺激に対する神経反応を測定するための移植可能デバイスであって、
1つまたは複数の公称刺激電極および1つまたは複数の公称検知電極を含む複数の電極と、
神経反応を誘発するために、1つまたは複数の刺激電極から神経組織に伝達される刺激を提供するための刺激源と、
1つまたは複数の検知電極で検知された神経反応信号を増幅するための測定増幅器であって、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧が、検知電極で見られる神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されるように、検知電極間のインピーダンスが十分に大きい、測定増幅器と、
神経組織への刺激の印加および誘発神経反応の測定を制御するように構成された制御ユニットであって、刺激電極から神経組織に電気刺激を印加するように構成され、刺激電極がその間に開離される遅延を与えるようにさらに構成され、遅延の間に、測定増幅器を用いて検知電極に存在する神経反応信号を測定するようにさらに構成された制御ユニットと
を備える、移植可能デバイスを提供する。
【0012】
異なる実施形態は、異なる強度または持続時間の刺激、異なる形状およびサイズの電極、ならびに/あるいは、刺激電極と検知電極との間の異なる空間隔離に関与し得ることに留意されたい。本発明は、誘発反応測定システムにおけるそのようなパラメータの各々を理解することにより、伝達された刺激の電気特性の結果として検知電極上に生じる予想電圧に関する決定を行えることを認識している。具体的には、定位相要素インピーダンスを含むものとして検知電極と組織との間の界面をモデル化すること、電極と電解質との界面静電容量および組織静電容量を表すこと、ならびに、関係移植物の物理的パラメータに対する定位相要素のインピーダンスを決定することにより、検知電極間のインピーダンスに適切な下限を設けることができる。
【0013】
検知電極間のインピーダンスは、好ましくは、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧が、検知電極で見られる神経反応電圧の15倍の大きさを超えないレベルに制約されるように、より好ましくは、検知電極で見られる神経反応電圧の5倍の大きさを超えないレベルに制約されるように、より好ましくは、検知電極で見られる神経反応電圧の2倍の大きさを超えないレベルに制約されるように、さらにより好ましくは、検知電極で見られる神経反応電圧と同じ大きさを超えないレベルに制約されるように、最も好ましくは、検知電極で見られる神経反応電圧の半分の大きさを超えないレベルに制約されるように、十分に大きいように選ばれる。
【0014】
いくつかの実施形態は、2つの検知電極を使用することによって神経反応の差動測定を利用することができる。そのような実施形態では、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧は、刺激に反応して2つの検知電極間に生じる差動電圧であると理解されたい。2つの検知電極は、例えば、単一の移植電極アレイ上にマウントすることができる。代替の実施形態は、単一の検知電極および遠位基準電極を利用するシングルエンド測定を実施することができ、そのような実施形態では、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる電圧は、刺激に反応して検知電極と基準電極との間に生じる差動電圧であると理解されたい。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態は、検知電極と測定増幅器との間に直列に提供される検知電極コンデンサをさらに備え、検知電極コンデンサは、刺激に反応してコンデンサの両端間に生じる電圧が、検知電極で見られる神経反応電圧の評価を可能にするレベルに制約されることを保証する静電容量を有するように選ばれる。従って、そのような実施形態は、組織へのDC電荷注入の防止の改善を可能にすることができる一方で、それにもかかわらず、神経反応測定能力を保持することができる。そのような実施形態では、刺激電極は、DC電荷注入を防ぐため、また、必要に応じて刺激電極または検知電極としての各電極の電気再構成を可能にするため、対応するコンデンサを有し得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、測定増幅器への入力インピーダンス(ZIN)は、
【数1】
として定義され、式中、
は、その検知電極または各検知電極の定位相要素インピーダンスであり、
s1−Vs2は、刺激に反応して検知電極と組織との界面に生じる差動電圧であり、
は、検知電極で見られる神経反応電圧である。
【0017】
そのような実施形態では、上記の要件が満たされている場合は、ZINは、抵抗および/または静電容量を含み得る。(VS1−VS2)分のVに十分なマージンを与えるため、いくつかの実施形態では、ZINは、
IN>A(Vs1−Vs2)/V
によって制限することができる。
Aは、(VS1−VS2)分のVに十分なマージンを与えるために提供されたスカラであり、例えば、2〜5の範囲であり得る。あるいは、指数関数減算によるアーチファクト補償を利用する実施形態では、Aは、0.5以上の範囲であり得る一方で、依然として、神経反応の評価を可能にし、従って、そのような実施形態は、本発明の範囲内である。その上、いくつかの実施形態は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、本出願人による豪州仮特許出願第2013904519号明細書の教示に従って、測定値から神経反応を抽出するために、フィルタテンプレートに対して測定値を相関させることができ、そのような実施形態では、Aは、0.067以上の範囲であり得る一方で、依然として、神経反応の評価を可能にし、従って、そのような実施形態は、本発明の範囲内である。
【0018】
神経反応測定は、いくつかの実施形態では、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012155183号パンフレットによって教示される方法で実施することができる。
【0019】
方法は、時間をかけて神経測定値を繰り返し得て、変化をモニタするステップをさらに含み得る。変化の検出に応答して、いくつかの実施形態は、電気刺激療法および/または薬など、患者に届ける療法のフィードバック制御を提供することができる。薬は、例えば、移植された薬物ポンプによって、または、処方を変更するという医師への報告書を生成することによって、自動的に制御することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、刺激電極上の電荷は、刺激の印加前および/または神経反応の測定後に、短絡によってまたはインピーダンスを通じて、刺激電極を互いに接続することによって回収することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、測定増幅器は、刺激および測定全体を通じて、検知電極に接続されたままである。そのような実施形態では、測定増幅器は、好ましくは、刺激による飽和を回避するために十分な共通モード範囲を有する広帯域幅増幅器である。あるいは、増幅器は、自動ゼロ状態で使用することができ、自動ゼロ状態では、増幅器は、刺激が神経反応を追跡した後は十分に速やかにゼロになり得る。
【0022】
ここでは、添付の図面を参照して、本発明の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】神経反応測定に対する先行技術手法を示す。
図2】本発明の一実施形態による神経反応測定システムを示す。
図3】電極コンデンサを利用する本発明の実施形態を示す。
図4図3の実施形態の別の図解であり、刺激電極短絡構成を示す。
図5】移植可能デバイスの駆動回路および周辺組織の簡素化されたモデルである。
図6】電極と組織との各界面における定位相要素の例示的な等価回路である。
図7図5のモデルのシミュレーションによって生成されたプロットであり、増幅器入力インピーダンス(容量性と抵抗性の両方)の様々な値の存在下で、刺激後に生じたアーチファクトを示す。
図8】増幅器入力抵抗および静電容量を変化させた際に刺激から生じたアーチファクトの実験データポイントおよびシミュレーション曲線を示す。
図9】抵抗および静電容量のそれぞれからのRMSアーチファクト寄与を示す。
図10】抵抗および静電容量に伴うアーチファクト変動を示す。
図11】抵抗および静電容量に伴うRMSアーチファクト変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2は、本発明の一実施形態による神経反応測定システムを示す。各々がZの定位相要素(CPE)インピーダンスを有する2つの検知電極は、移植受容者の神経組織に生じる神経反応信号Vを検出するために使用される。移植物の刺激電極(図4に示される)によって印加された刺激は、神経反応を引き起こすが、検知電極における刺激電圧Vs1およびVs2の存在をもたらすようにもなる。差動測定増幅器の各入力には、Zinの入力インピーダンスが存在する。
【0025】
本発明のこの実施形態で必要な入力インピーダンスは、雑音入力が刺激電圧に匹敵し、刺激によって誘発反応Vより少ない検知電極のCPE上の電圧(Vs1−Vs2)が誘導されることが目標であることに注目することによって決定される。その結果、所望の入力インピーダンスは、
【数2】
によって得られる。
【0026】
一実施形態では、脊髄刺激子(SCS)が14mmの面積の電極を有し、Z=20Ω、(Vs1−Vs2)〜1V、V=50μVであるため、その結果、上記の方程式は、Zinの最小値が400kΩであることを決定づける。アーチファクト上でVに十分なマージンを与えるため、より望ましいZinの値はより大きく、恐らく1〜2MΩの範囲である。約0.1mmの電極面積の蝸牛移植などの代替の実施形態では、SCS電極の面積がほんの一部であるため、最小限に必要な増幅器入力インピーダンスは何倍も高く、8MΩであるか、または、十分なマージンに対しては、より好ましくは、20MΩであり、図1で選ばれる抵抗値の問題を示す。
【0027】
図3は、非常に高いZin値を有するASIC増幅器を利用する本発明の実施形態を示す。電極コンデンサは、組織へのDC挿入を阻止するために提供され、電極コンデンサは、Cin=5pFの値を有する。図3のASIC増幅器はオフ期間の間は自動的にゼロに安定するため、増幅器入力側に抵抗を追加する必要はない。
【0028】
図4は、図2の実施形態の別の図解である。電極コンデンサは、DCを阻止するためにすべての電極上に提供される。電極コンデンサは、それ自体の電荷を蓄えることができ、これを受けて、スイッチオン上で非制御電流を生成することができる。それに従って、制御モジュールは、各刺激の前に、スイッチを閉じて刺激電極を平衡化する。スイッチは、移植受容者が知覚可能なレベルまで平衡電流が上昇しないように、一気に閉じられる。入力インピーダンスが上記の方程式に従う限り、測定増幅器の入力側に追加の抵抗および/または静電容量を有する同様の実施形態を提供することができる。
【0029】
図2の電極と組織との界面の定位相要素モデルを含める重要性は、例えば、図5に示されるような駆動回路および生理的食塩水浴の簡素化されたモデルから生じる。回路は、バルク生理的食塩水中を流れる電流をモデル化する抵抗器のメッシュである広がり抵抗と、生理的食塩水が電極金属に触れる定位相要素(CPE)と、浮遊静電容量を含む出力インピーダンスを有する励磁源と、各電極上の負荷と、接地接続部とから成る。生理的食塩水浴は、バルク電圧ポイントsBathを有する。生理的食塩水浴は、組織を模倣するために使用される。図5では、電極e1と電極e2との間でシングルエンド測定を行うことができ、e2とe3との間で差動測定を行うことができる。
【0030】
図6では、CPEの等価回路が示されている。CPEの等価回路は、並列に接続された一連の直列RCネットワークから成る。生理的食塩水浴を適切にモデル化するため、CPEは20〜30個のRCペアを有し得るが、理解できるように図6の簡素化されたバージョンが示されている。RCペアは、指数関数的に(この事例では、sqrt(10)倍で)変化する時定数を有するが、注目すべき事実は、各RCペアの時定数がCPEにおける他のすべてのRCペアとは異なることである。刺激に続いて、正味電流の流入または流出がなくとも、コンデンサ間で電荷が再分配されるため、CPEの出力電圧は経時的に変化する。CPEはDCで見られるようなR値を有さないが、この特性は、単一の並列RCネットワークによって共有される。
【0031】
回路に特有の反応を示すRCネットワークとは異なり、CPEの反応は、刺激の長さのものと同様の時定数を有するRCネットワークによって支配される。例えば、SCSは、100〜500μsの範囲の刺激パルス幅を有し得る。この結果は、以下で論じられるように、コンデンサの見かけのコンダクタンスを定義するために重要である。
【0032】
刺激に続いて、図5の回路で特定できるアーチファクトの3つのメカニズムまたは発生源がある。これらのメカニズムの各々に対して、負荷および電流源インピーダンスは、他で述べられない限り、無限であると考えられる。
・ 電極1上のCPE上の電圧は変化する。このことは、シングルエンド測定e2−e1でまたは刺激電極e1上で見られる。この電圧はe2とe3との間の共通モードであるため、このことは、差動測定では見られない。
・ 電流源出力インピーダンスが有限である場合は、電極1のCPE電圧の変化により、電流は、広がり抵抗中を流れる。これは、電極e2およびe3上では差動的に現れる。このことは、広がり抵抗のメッシュ性質にのみ起因して起こる。スター型抵抗器または一列の抵抗器によってモデル化される場合は、このことは観察されない。
・ 検知増幅器のいずれかの入力インピーダンスが有限である場合は、刺激の間は、電流はこの負荷に流入する。次いで、これは安定するようになる。
【0033】
e4上の電圧を予測するという図5のモデルの能力は、実験的に試験された。すべての刺激が4mAの400μsの二相パルスを使用した。これらは、上記の雑音を解消するほど十分に大きいアーチファクトを生じさせるために使用され、電極上の電圧を用いて、それを例外なくデジタル化することができる。この刺激レベルは、1回の刺激あたり1.6μCをもたらし、それは、SCSの快適な刺激レベルに対して必要な電荷の範囲の上限である。測定値は、99回の反復において平均化された。アーチファクトはいずれかの極性の多くの異なるプロファイルを取ることができるため、単一のアーチファクトの大きさは、DC値をベースラインにリセットした後の信号のV.t積の積分と定義された。
【0034】
実験検証に加えて、図5のシミュレーションが実施された。図7は、刺激後の選択範囲にわたるアーチファクトを示すシミュレーション出力を示し、y軸はRMS電圧×時間を示し、x軸はアドミタンスを示し、静電容量によるアドミタンスはY=C.tとして計算され、式中、tは刺激パルス幅である。増幅器上の入力インピーダンスは、330pF、1000pF、3300pF、330kΩおよび100kΩに選択され、それぞれのアーチファクト波形702、704、706、708、710が生じた。静電容量および抵抗は逆極性のアーチファクトを生じさせることに注目すべきである。これらは単純な波形であるが、実際には、異なる時定数に伴っていくつかのアーチファクトの発生源が存在し得、その結果、見られる実際のアーチファクトは、示される単純なモノチックな減少曲線より複雑であり得る。
【0035】
図8は、負荷抵抗および静電容量を変化させた実験データポイントとシミュレーション曲線の両方を示す。それらの値が二相パルスの各位相の長さで除されるコンデンサのコンダクタンスは、抵抗器に対するものと同じアーチファクトの傾きを有する大きさであり、従って、図8〜11において刺激の全体の長さを使用することが好ましい。図8で正の傾きを有するシミュレーションされた線および実験的に得られたデータポイントグループは、抵抗追加の影響を示す一方で、負の傾きを有するシミュレーションされた線および実験的に得られたデータポイントグループは、増幅器入力インピーダンスへの静電容量追加の影響を示す。容量性および抵抗性の線の傾きは、すべての電極において非常によく似ており、シミュレーションのものと厳密に一致しており、図5のモデルが概ね正しいことを示している。電極は、異なるy切片を有する。電極1(「r1.txt」データポイント)は、抵抗負荷が低減される際には、700μVのピークアーチファクトを有し、これは非常に大きなアーチファクトであり、約10μVの神経反応信号を確実に覆い隠す。負荷が存在しない場合は、アーチファクトは、正でも負でもあり得る。y切片オフセットは、エレクトロニクスが制御できる範囲を超えており、フィルタリングなどの技法によって処理しなければならない。
【0036】
図8のプロットはシミュレーションモデルを実証しているが、負荷の不在下でアーチファクトを生じさせ、y切片オフセットを引き起こす不足要素があることも示している。y切片オフセットは、電極ごとに異なり、恐らくは、小型のガルバーニ電池を生成する各電極表面上の金属汚染および二相パルスの位相に対する非対称な挙動の結果である。
【0037】
図9は、抵抗および静電容量のそれぞれからシミュレーションされたアーチファクトへのRMS寄与を示す。
【0038】
図10は、抵抗と静電容量の両方を徐々に変化させた際のアーチファクト変動を示す。
【0039】
図11は、上記で説明されるRMS方法を使用した抵抗および静電容量に伴うアーチファクト変動を示す。
【0040】
図10および11では、曲線ディップは、図8に従って上昇する。予想通り、DCオフセットに起因して、RMS方法は、モデルの根本的な精度を弱める。
【0041】
シミュレーションモデルから、上記で説明されるアーチファクトのベースライン定義および400μsのパルス幅を使用すると、抵抗に対するアーチファクトの感度は、1mhoあたり4.1×10−2V.sであり、静電容量に対するアーチファクトの感度は、1mhoあたり−2.85×10−2Vsである。従って、Rの負荷に対し、アーチファクトが1ms間隔を超える場合は、電圧は、
V(r,t)=4.1x10−2/(Rxt)
である。
【0042】
従って、例えば、100KΩの増幅器入力抵抗および1msのアーチファクト間隔に対し、
V(100k,1ms)=400uV
である。
【0043】
さらに、容量性負荷に対し、アーチファクトが1ms間隔を超える場合は、電圧は、
V(C,t)=−7.14x10xC/t
である。
【0044】
従って、例えば、1000pFの負荷および1msを超えるアーチファクトに対し、アーチファクト=71.4μVである。
【0045】
このアーチファクト計算方法を使用することにより、以下の表は、典型的なSCSに存在し得る様々な浮遊インピーダンスのアーチファクト寄与を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
上記の表に見られるように、神経測定システムに存在するそのようなインピーダンスの適切な調整および制御により、アーチファクトのかなりの発生源を低減することができ、10μV程度の神経信号を測定するタスクを容易にすることができる。
【0048】
当業者であれば、広範囲にわたって説明される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、本発明に対する多くの変形形態および/または変更形態を作成できることが理解されよう。従って、本実施形態は、あらゆる点において、制限的なものではなく、例示的なものと見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】