(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-514648(P2017-514648A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】心臓の領域内の脂肪の存在の定量化のための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-508758(P2017-508758)
(86)(22)【出願日】2015年4月29日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015059362
(87)【国際公開番号】WO2015165978
(87)【国際公開日】20151105
(31)【優先権主張番号】1453941
(32)【優先日】2014年4月30日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(71)【出願人】
【識別番号】594198569
【氏名又は名称】アンステイテユ・ナシオナル・ドウ・ラ・サンテ・エ・ドウ・ラ・ルシエルシユ・メデイカル
(71)【出願人】
【識別番号】516324917
【氏名又は名称】サントル・オスピタリエ・ユニベルシテール・ドゥ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コシェ,ユベール
(72)【発明者】
【氏名】ジェ,ピエール
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA21
4C093DA02
4C093FD09
4C093FF13
4C093FF15
4C093FF21
4C093FF22
4C093FF23
4C093FF28
4C093FF34
4C093FF42
(57)【要約】
心臓(10)の領域内の脂肪の存在を定量化するための方法であって:心臓(10)の少なくとも1つの空洞(25、26、VG、VD)および壁(20、21、21’)の画像の取得と、第1の値の範囲(G
1)に含まれる画素の密度(D
V)を含む心臓(10)の一部の少なくとも1つの画素(27)の選択と、空洞により確定される拡張3Dゾーン(27)を定義するための少なくとも1つの画素(27)の選択の増大と、拡大されたボリューム(27’)を定義することを可能にする拡張3Dゾーンの均一な拡大の動作と、拡大されたボリューム(27)と拡張3Dゾーン(27’)との間の減算から得られる周辺領域(20’)を抽出する動作と、周辺領域内の第2の値の範囲(G2)の画素の数の定量化とを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓(10)の領域5内の脂肪の存在の定量化のための方法であって、
心臓(10)の少なくとも1つの空洞(25、26、VG、VD、OG、OD)および前記空洞(25、26、VG、VD、OG、OD)を画定する壁(20、21、21’)の3次元画像の取得(ACQ)と、
粒状部分(27)を定義する空洞(25、26、VD、VG、OD、OG)の少なくとも1つの画素(27)の選択と、
事前定義された閾値未満の画素密度ゾーン(Dp)に到達するまでの段階的な粒状部分(27)の増大(EXT ZONE)であって、粒状部分(27)の増大は、画素の密度が第1の値の範囲(G1)に含まれる画定された拡張ゾーン(27)の定義において終了し、増大により得られる3D画像が「3D拡張ゾーン」(27)と名付けられる、粒状部分(27)の増大(EXT ZONE)と、
検討される空洞(25、26、VD、VG、OD、OG)の壁の厚さ(20)の少なくとも一部を含む拡大されたボリューム(27’)を定義することを可能にする、3D拡張ゾーンの拡大動作(DILAT)と、
拡大されたボリューム(27’)に対する拡張3Dゾーン(27)のボリュームの減算から得られる周辺領域(20’)の抽出動作(EXTRACT)と、
抽出された周辺領域の第2の値の範囲(G2)の画素の数の定量化(QUANTIFICATION)と
を含む、方法。
【請求項2】
心臓の3次元画像の取得がスキャナによって実現され、画像の画素の密度がハンスフィールド単位で表されることを特徴とする、請求項1に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項3】
検討される心臓の空洞(VG、VD、OG、OD)の3次元画像5の少なくとも1つの境界(PV、11、12)の定義と、
少なくとも境界(PV、11、12)または事前定義された閾値未満の画素密度ゾーンに到達するまで行われる粒状部分(27)の増大(EXT ZONE)と
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の心臓(10)の領域内の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項4】
境界(PV、11、12)が、検討される空洞(25)を含む取得された画像の一部を、画素密度が第1の値の範囲(GO−に含まれる前記空洞(25)へ入るオリフィスと分離することを可能にすることを特徴とする、請求項3に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項5】
粒状部分(27)の20増大(EXT ZONE)が、3次元において、空洞の断面平面(25)上の画素の選択から行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項6】
粒状部分(27)の増大(EXT ZONE)が、2次元において、空洞(25)のあらゆる断面平面上で行われ、「3D拡張ゾーン」(27)が、「2D拡張ゾーン」のセットにより再構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項7】
事前定義された閾値が、取得された画像における測定値から計算される画素基準密度(Dref)の決定に関して定義され、前記取得された画像が、空洞(25)と、前記空洞の壁(20、21、21’)のうちの少なくとも1つとを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項8】
基準密度(Dref)が、空洞(25)の画素に対して行われる測定から計算され、基準密度(Dref)が、画素密度値の第1の範囲(G−1)の下限に対応することを特徴とする、請求項7に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項9】
画素基準密度(Dref)が、関心のある領域(22)を定義する壁の画素(20、21、21’)に対して行われる測定から計算され、基準密度(Dref)が、関心のある領域(22)の画素密度の値の第3の範囲(G3)の上限に対応することを特徴とする、請求項7に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項10】
基準画素密度(Dref)を、第1の値の範囲(G1)と第3の値の範囲(G3)との間に位置する値の範囲内で計算して、これらの値の範囲(G−1、G3)の1つへの画素の割り当てを最良に区別することを特徴とする、請求項9に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項11】
基準密度(Dref)の測定値が、典型的な心臓プロファイルに対応する事前定義された値の中から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項12】
拡大動作(DILAT)が、複数の3D拡大画像を生成するために複数回反復され、あらゆる新たな3D拡大画像が以前の3D拡大画像を含むように連続的な拡大が決定されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項13】
3D画像範囲の周辺領域の3D層が、3D拡張画像(27)の拡大画像に対する3D拡張画像(27)のN−1番目の拡大画像の減算によって抽出されることを特徴とする、請求項12に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項14】
定量化の動作(QUANTIFICATION)が、抽出された3D層または3D周辺領域における第2の値の範囲(G2)に含まれる密度の画素の数の計数を含むことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項15】
3D周辺領域(20’)の画素密度の閾値処理の動作(HIST)が、異なる画素密度割合(Dp)の複数の値の範囲に応じた分布(40)を含むことを特徴とする、請求項14に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項16】
空洞の壁(25、26、VD、VG、OD、OG)の3Dマッピング生成が、事前定義されたカラーメトリックコーディングを用いて第2の値の範囲(G2)に含まれる画素密度を表現することを含むことを特徴とする、請求項14に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項17】
空洞の壁(25、26、VD、VG、OD、OG)の3Dマッピング生成が、第2の値の範囲(G2)を、異なる画素密度(Dp)の割合に対応する複数の値の部分範囲(SG^−1,N])へ、あらゆる細分割(SGi,ie[ij N])に割り当てられた事前定義されたカラーメトリックコーディングを用いて細分割することを含むことを特徴とする、請求項15に記載の脂肪の存在の定量化のための方法。
【請求項18】
脂肪塊の可視化を可能にする、器官のイメージングの表示のためのシステムであって、請求項1から17のいずれか一項に記載の脂肪の存在の定量化のための方法を実装し、
ディスプレイであって、
スキャナにより取得された3次元画像の断面を可視化することと、
マッピングが本発明の方法により生成される3次元画像を可視化することと
を可能にするディスプレイと、
セレクタであって、
基準密度を定義するための少なくとも1つの画素と、
段階的増大によって得られる3D拡張ゾーンを生成するための少なくとも1つの画素と
のセレクタと、
少なくとも1つの弁面を定義する線を描くことを可能にするツールと、
インターフェースであって、
拡大距離「d」または拡大割合をパラメータ化することを可能にし、
3D拡張ゾーンおよび3D拡大ゾーンから得られるボリュームから3次元の超過厚さを抽出するための
インターフェースと、
計算の手段であって、
1つの事前定義された値の区間に含まれる密度を有する3次元の超過厚さの画素の数を数えることと、
3D画像に対する動作、特に、拡大の動作、拡張の動作、抽出の動作を処理することを可能にする全ての計算を実現することと
を可能にする計算の手段と
を含むことを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、心臓の領域における、特に心筋壁の厚みにおける線維脂肪組織の存在を定量化する方法に関する。また、本発明の方法は、スキャナにより得られたデジタル画像の処理を可能にするシステムであって、そのような定量化を管理し、さらに線維脂肪塊を含む領域のマッピングを生成するための動作を可能にするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のイメージング処理によって、スキャナ取得またはMRIに由来する画像を発端として、心臓の領域、特に右心室の心筋壁の表面における線維脂肪組織の存在を視覚的に評価することが可能になる。他方、現行の処理では、線維脂肪塊の定量化を得ること、ならびに心臓壁の表面上およびこの壁の厚み内のこれらの塊の分布をマッピングすることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の欠点を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの目的は、心臓の領域内の脂肪の存在の定量化のための方法に関する。本方法は:
・ 少なくとも1つの心臓の空洞および前記空洞を画定する壁の3次元画像の取得と、
・ 粒状部分を定義する空洞の少なくとも1つの画素の選択と、
・ 近傍の画素からの事前定義された閾値未満の密度を有する画素ゾーンに到達するまでの段階的な粒状部分の増大であって、画素の密度が第1の値の範囲に含まれる画定された拡張ゾーンの定義となり、増大から得られる3D画像が「3D拡張ゾーン」と呼ばれる、粒状部分の増大と、
・ 検討される空洞の壁の厚さの少なくとも一部を含む拡大されたボリュームを定義することを可能にする、拡張3Dゾーンの拡大動作と、
・ 拡大されたボリュームからの拡張3Dゾーンのボリュームの減算から得られる周辺領域の抽出動作と、
・ 抽出された周辺領域からの第2の値の範囲内の画素の数の定量化と
を含む。
【0005】
そのような方法の1つの利点は、分析の一部を実施するために、壁内の脂肪塊の割合を定量化することである。また、心臓壁のマッピングが可能である。この方法は、具体的には、心臓へのインターベンションの誘導、患者の心臓の筋肉壁のタイプの識別、心臓の挙動の予後、または心臓の病理の診断において、様々に応用される。最後に、この方法は、所与の母集団に関する統計を確立して、たとえば汎用の基準データセットを確立するために、特定の心臓密度をモデル化することを可能にする。
【0006】
1つの実施形態の様態によれば、心臓の3次元画像の取得がスキャナによって実現され、画像の画素の密度がハンスフィールド単位で表される。
【0007】
1つの実施形態の様態によれば、心臓の領域内の脂肪の存在の定量化のための方法は:
・ 検討される心臓の空洞の3次元画像の少なくとも1つの境界の定義と、
・ 少なくとも1つの境界または事前定義された閾値未満の画素密度のゾーンに到達するまで行われる粒状部分の増大と
を含む。
【0008】
1つの実施形態の様態によれば、境界が、検討される空洞を含む取得された画像の一部を、画素の密度が第1の値の範囲で検討される前記空洞内のオリフィス(orifice)と分離することを可能にする。
【0009】
たとえば平面を形成する境界を定義する1つの利点は、増大ゾーンを所与のボリュームに制限できることである。この事実から、いくつかの平面を形成する境界を定義することによって、増大動作時の計算を、オリフィスへ伸びる領域に制限することが可能になる。したがって、オリフィスに近い、またはオリフィス内の画素の密度は、事前定義された閾値と比較されず、計算動作を制限する。実際には、画像と同時に取得される空洞のオリフィスへ広がる領域は、たとえば脂肪塊に対応する第2の値の範囲内の画素密度を計算することが望ましい壁を含まない。
【0010】
1つの実施形態の様態によれば、粒状部分の増大が、3次元において、空洞の断面平面上の画素の選択から行われる。
【0011】
1つの実施形態の様態によれば、粒状部分の増大が、2次元において、空洞の各断面平面上で行われ、「3D拡張ゾーン」が、「拡張2Dゾーン」のセットにより再構成される。
【0012】
空洞内の画素の自動または手動選択からの増大動作の1つの利点は、空洞の3D輪郭が素早く得られることである。このように進行する1つの利点は、段階的増大を容易にするために空洞25の画素密度の均一性から利益を得ることである。実際には、壁の画素の選択から行われるそのような増大動作は、壁が潜在的に非常に不均一な画素密度を含み得るので、実施するのがより難しい。そのような動作は、たとえば、本発明の方法が正確に分離しようとする異なる画素密度を有する脂肪の存在を考慮して、壁で形成される領域の輪郭を描く際に潜在的に誤りにつながる。
【0013】
1つの実施形態の様態によれば、事前定義された閾値が、取得された画像における測定値から計算される基準画素の密度の決定に関して定義され、前記取得された画像が、空洞と、前記空洞の壁のうちの少なくとも1つとを含む。
【0014】
1つの実施形態の様態によれば、基準密度が、空洞の画素に対して行われる測定から計算され、基準密度が、画素密度値の第1の範囲の下限に対応する。
【0015】
1つの実施形態の様態によれば、基準密度が、関心のある領域を定義する壁の画素に対して行われる測定から計算され、基準密度が、関心のある領域の画素密度値の第3の範囲の上限に対応する。
【0016】
1つの実施形態の様態によれば、基準画素密度を、第1の値の範囲と第3の値の範囲との間に位置する値の範囲内で計算して、これらの値の範囲の1つへの画素の割り当てを最良に区別する。
【0017】
1つの実施形態の様態によれば、基準密度の測定値が、典型的な心臓プロファイルに対応する事前定義された値の中から選択される。
【0018】
基準密度の計算の1つの利点は、心内膜と呼ばれる空洞の内側境界まで、壁の画素に侵入することなく、粒状部分を拡張することが可能になることである。この解決方法によって、特定の画素密度を有する画素を考慮して、壁の領域全体を分離することが可能になる。この事実から、壁に対する測定は、精度が高く、壁の厚さ全体を考慮している。最後に、壁の画素と空洞の画素との良好な区別を確認しながら、増大動作時に画素密度を1つずつ比較する単純な動作が可能になる。
【0019】
1つの実施形態の様態によれば、拡大動作が、複数の3D拡大画像を生成するために複数回反復され、あらゆる新たな3D拡大画像が以前の3D拡大画像を含むように連続的な拡大が決定される。
【0020】
1つの実施形態の様態によれば、3D拡張画像の周辺領域の1つの3D層が、3D拡張画像のN番目の3D拡大画像からのN−1番目の拡大画像の減算によって抽出される。
【0021】
この1層ごと(layer by layer)の抽出解決方法の1つの利点は、層のいくらかの画素密度を分離するために壁を良好に分割できることである。壁の1層ごとの処理によって、壁を定義する領域をより良好に分割すること、具体的には、心外膜の所与の密度の画素の計数動作を超過せずに制限することが可能となる。
【0022】
1つの実施形態の様態によれば、定量化の動作が、抽出された3D層または3D周辺領域における第2の値の範囲に含まれる密度の画素の計数からなる。
【0023】
この動作の1つの利点は、たとえば脂肪塊に対応する特定の画素の濃度の割合を計算することが可能になることである。実際には、壁内で脂肪塊を示す領域は、壁における特定の値の範囲内の画素の密度を計算することで、分離することができる。
【0024】
これは、脂肪の画素密度が筋肉の画素密度と異なる値を含むので、可能である。
【0025】
1つの実施形態の様態によれば、3D周辺領域の画素密度の閾値処理の動作が、異なる画素密度の割合の複数の値の範囲に応じた分布を含む。
【0026】
1つの実施形態の様態によれば、空洞の壁の3Dマッピング生成が、事前定義されたカラーメトリックコーディングを用いて第2の値の範囲に含まれる密度の画素を表現することを含む。
【0027】
この実施形態の様態の1つの利点は、操作者が、たとえばインターベンションを準備するために心臓壁を視覚化できるようになることである。
【0028】
1つの実施形態の様態によれば、空洞の壁の3Dマッピング生成が、第2の値の範囲を、異なる画素密度の割合に対応する複数の値の部分範囲へ、あらゆる細分割に割り当てられた事前定義されたカラーメトリックコーディングを用いて細分割することを含む。
【0029】
この実施形態の様態の1つの利点は、壁の異なる領域を、領域に存在する脂肪のレベルに応じて画面上で異なる色で表示することが可能になることである。分割されたカラーメトリックコーディングを使用することによって、脂肪の存在によって影響される領域をより良く評価することが可能になる。
【0030】
有利には、拡大動作は、3Dゾーンの3次元ボリュームの均一な壁の拡張を含む。この拡張は、優先的には、1mmおよび12mmの間の距離にわたって定義することができる。3mmの値は、右心室の壁内の脂肪の存在を定量化するのに特に有利である。
【0031】
有利には、基準濃度が、右心室を左心室と分離する壁内の画素の選択から決定される。
【0032】
実施形態の一例によれば、第1の値の範囲は、200HUおよび400HUの間に含まれる。第3の値の範囲は、−100HUおよび100HUの間に含まれる。第2の値の範囲は、30HUおよび10HUの間に含まれる。
【0033】
有利には、異なる拡大が複数の3D画像を得るように構成されている場合、あらゆる新たな拡大3D画像は、以前の拡大3D画像よりも少なくとも1ピクセル多い厚さの均一な層を含む。
【0034】
有利には、実施形態の一例によれば、心臓の空洞は右心室であり、弁面(valvular plane)は三尖弁および肺面である。
【0035】
有利には、第2の値の範囲の境界表記は、壁内の脂肪塊を識別するように定義される。
【0036】
30
本発明の別の目的は、脂肪塊の表示を可能にする、器官のイメージングの表示のためのシステムであって、本発明の方法を実装する、システムに関する。本発明のシステムは:
・ ディスプレイであって、
スキャナにより取得された3次元画像の断面を可視化することと
本発明の方法により生成されるマッピングの3次元画像を可視化することと
を可能にするディスプレイと、
・ セレクタであって、
基準密度を定義するための少なくとも1つの画素と、
段階的増大によって得られる3D拡張ゾーンを生成するための少なくとも1つの画素と
のセレクタと、
・ 少なくとも1つの弁面を定義する線を描くことを可能にするツールと、
・ インターフェースであって、
拡大距離dまたは拡大割合をパラメータ化することを可能にし、
3D拡張ゾーンおよび3D拡大ゾーンから得られるボリュームから3次元の超過厚さを抽出するための
インターフェースと、
・ 計算の手段であって、
事前定義された値の区間に含まれる密度を有する3次元の超過厚さの画素の数を数えることと、
3D画像動作、特に、拡大の動作、拡張の動作、抽出の動作を処理することを可能にする全ての計算に対処することと
を可能にする計算の手段とを含む。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読むことで強調されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】心臓ならびに空洞および壁を形成する領域の図である。
【
図2A】本発明の方法による弁面の定義と共に、スキャナにより取得される心臓の3次元画像の断面図である。
【
図2B】ここでは右心室を表す心腔の得られた画像の2D領域または3D領域における本発明の方法により拡張されるゾーンの選択の図である。
【
図2C】ここでは右心室を表す心腔の得られた画像の2D領域または3D領域における本発明の方法による増大ゾーンの図である。
【
図2D】本発明の方法による、特に空洞を定義する壁の内側で画定された2D拡張ゾーンまたは3D拡張ゾーンの生成の図である。
【
図3A】本発明の方法による、空洞および壁を含む拡大された2D拡張ゾーンまたは3D拡張ゾーンの生成の図である。
【
図3B】本発明の方法による、空洞および壁を含む拡大された2D拡張ゾーンまたは3D拡張ゾーンの生成の図である。
【
図3C】本発明の方法による、空洞を定義する、ゾーンの減算により得られる分析される壁を定義する2D周辺ゾーンまたは3D周辺ゾーンの生成の図である。
【
図4A】本発明の方法による、線維脂肪組織を含む画像の画素を定義して、壁内の線維脂肪組織含有量を定量化し、分布をマッピングすることを可能にするヒストグラムへの閾値処理のグラフである。
【
図4B】基準画素密度が計算され得る例示的な値の範囲のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は人間の心臓10を表す。
図1に示されているのは、心臓10の中の、VGと表記された左心室、VDと表記された右心室、ODと表記された右心房、およびOGと表記された左心房である。
【0040】
以下の説明では、心臓に含まれ心臓壁により制限される循環血液ボリューム30を「空洞(cavity)」と呼ぶ。心臓には4つの空洞、すなわち、左心室VG、右心室VD、右心房ODおよび左心房OGが存在する。
【0041】
空洞は、異なる動脈、静脈、およびそれらの間のボリュームを接続する弁の間を進行する血流を受け入れる。例として、三尖弁16が右心室VDおよび右心房ODの間に示されており、また、僧帽弁15が左心房OGおよび左心室VGの間に示されている。さらに、大動脈14が左心室VGに入るように示されており、肺動脈13が右心室VDに入るように示されている。
【0042】
以下の説明をより良く理解するために、心臓を循環するあらゆる血液量について出入りする弁口、大動脈口または静脈口は、「オリフィス(orifice)」と名付けられる。
【0043】
本発明の方法は、心臓または心臓の領域の3D画像の取得を含む段階を含む。優先的には、取得される画像は、少なくとも1つの空洞、たとえば右心室VDもしくは左心室VGまたはOD、OG心房の一方、ならびに前記空洞を囲む壁を含む。この壁は、心筋と名付けられた筋肉を含み、「心内膜」と名付けられた内側境界から「心外膜」と名付けられた外側境界へ伸びている。
【0044】
図2Aに、スキャナによって取得される心臓の3D画像の断面図を表す。異なるゾーン、すなわち:
− 右心室VDの空洞を画定するゾーン25、
− 右心室VDの壁を画定するゾーン20、
− 左心室VGの空洞を画定するゾーン26、
− 左心室VGの壁を画定するゾーン21、
− 中隔と呼ばれる、左右の2つの心室の間に位置する壁を画定するゾーン21’
が示されている。
【0045】
壁20、21および21’は、異なる空洞を囲む単一の筋肉壁である。異なる表記20、21および21’によって、別の器官の空洞または心臓が存在する媒質を分離する壁20または21の2つの空洞、たとえばVDおよびVGの間に位置する壁21’のゾーンを区別することが可能になる。
【0046】
断面画像の領域を画定する2次元で示されたゾーンは、3次元で取得された画像のゾーンからのものである。したがって、一例として、3Dゾーン、すなわち各断面平面からの2Dゾーンのセットから再構成される3次元ゾーンが示されている。したがって、ゾーン25がとくに問題なしに指定される:
・
図2Aに示された右心室VDの3D画像の断面を指定する2Dゾーン
・ 前記ゾーンの2D断面の画像のセットからの右心室VDの3D画像のボリュームを指定する3Dゾーン。
【0047】
したがって、本発明の方法は、優先的には、スキャナにより得られる3D画像の取得を含む。この取得段階は、
図5においてACQと表記されている。画像の取得の処理は、「スキャノグラフィー(scanography)」とも呼ばれるトモデンシトメトリー(tomodensitometry)をサンプルする。また、これらの技法は、CTスキャンまたはCATスキャンとして識別され、器官の組織によるX線吸収の測定に依存する。画像のデジタル化によって、観察される領域の解剖学的構造の2Dおよび3D画像を再構築することが可能になる。
【0048】
コンピュータは、あらゆる画像画素に、対応する身体ボリュームによるX線の減衰に比例するグレースケール値を割り当てる。測定されるパラメータは、「密度(density)」と一般的に呼ばれる減衰係数である。この密度は、画像化される組織に特有のものである。これは、ハンスフィールド単位(HU:Hounsfield unit)で表され、空気についての−1000HUから高密度の皮質骨についての+1000HUまで、脂肪組織についての−50HUおよび水についての0を通過しつつ、アクティブなスケール上に分布する。心臓内で、スキャナで取得される密度は、壁と空洞との間で異なる。壁の中では、線維脂肪密度は、正常な筋肉密度とは異なる。
【0049】
デジタル3D画像は、計算の手段と、生成された3D画像を表示可能な画面とを含むコンピュータにより、取得し格納することができる。
【0050】
生成された3D画像は、具体的には所与の画素または所与のゾーンを選択することで画素密度を測定することが可能な画素のボリューム分布を含む。たとえば、イメージングの平面またはボリュームにおいて選択された画素のグループにおける、密度値の平均およびばらつき、すなわち標準偏差を計算することが可能である。そのような画素の選択は、「関心のある領域」と名付けられる。
【0051】
本発明の方法は、後続の処理段階において検討される3D画像の少なくとも1つの処理の境界を定義する少なくとも1つの平面の定義を可能にする段階を含む。この、またはこれらの平面は、以下の説明において、1つまたは複数の弁面と呼ばれる。この段階は、
図5においてPLAN VALVと表記されている。
【0052】
弁面は、空洞を定義する循環血液ボリュームにおける循環血流の連続性の観点から閉じた空洞を定義することを可能にする。
【0053】
検討される空洞に応じて、循環血流の連続性を可能にするために、異なる入口部位および出口部位が存在する。
図1において、心臓の空洞の入口部位および出口部位は以下となる:
・ OD空洞
入口=大静脈
出口=三尖弁
・ VD空洞
入口=三尖弁
出口=肺動脈弁
・ OG空洞
入口=肺静脈
出口=僧帽弁
・ VG空洞
入口=僧帽弁
出口=大動脈弁
【0054】
図2Aに、ゾーン25を第1のゾーン250および第2のゾーン251に分離することを可能にする弁面11を表す。第2のゾーン251は、3D画像の視点から、右心室VDから出ている肺動脈13に対応する領域とつながっている。弁面11の定義によって、画像処理の観点から、平面境界11の生成により肺動脈13および右心室VDを分離することが可能になる。この事実から、そのような弁面の定義によって、閉じたボリュームを考慮しながら画素密度の類似性を分析することで、ボリューム250の画像処理を適用することが可能になる。
【0055】
図1に、三尖弁16のレベルで右心室VDを右心房ODと分離することを可能にする第2の弁面12を示す。
【0056】
これらの弁面の定義によって、画像の処理、および本発明の方法により実施される後続の動作のための閉じた3D領域を定義することが可能になる。
【0057】
理論的には、検討される空洞に存在するオリフィスと同数の弁面を定義することが好ましい。しかしながら、空洞の定義によって、いくつかのオリフィスが近くの領域に共に存在する場合に、空洞をこれらのオリフィスと分離する境界を定義することが可能になる。実施形態の1つの変形によれば、境界11または12を、曲面または平面のセットとして定義することができる。
【0058】
図2Aに、右心室VDの上側境界を定義する弁面11を表す。第2の弁面、たとえば平面12を、この図で定義することもできる。操作者は、画定された領域を最良に定義するためにオリフィスが視認可能となる別の断面画像を選択することもできる。したがって、あらゆる弁面を、空洞の取得された3D画像の同一の断面画像または異なる断面画像に定義することができる。
【0059】
この段階は、画像を編集可能なグラフィックツールパレットから、操作者25のアクションによって実施することができる。操作者は手動で特徴を描き、画面に表示された特徴は、画像に示されていない軸に従って、3D画像に断面平面を生成する。
【0060】
最後に、実施形態の1つの特定の様態によれば、本発明の方法30によって、操作者により確認または修正され得るデフォルトの平面を生成することが可能になる。
【0061】
実施形態の別の様態によれば、検討される空洞の解剖学的構造が事前に知られている場合、たとえば人間の心臓を含む場合、取得された心臓の画像の割合と、取得された画像の検出された配向角とに応じて弁面を生成することができる。形状認識の方法を使用して:
・ 空洞の入口/出口を自動的に識別し位置決めすること、および、
・ 配向および空間位置によって、検討される空洞を入口および出口と分離することが可能になるいくつかの平面を自動的に生成することができる。
【0062】
図の全ての場合において、デフォルトで生成される弁面を編集または修正する手段を、その配向および/または位置付けを調整し得る操作者に提供することができる。
【0063】
空洞が左心室VG、右心房ODまたは左心房OGである場合、本発明の方法は、オリフィスの空洞を閉じることが可能な少なくとも1つの弁面を定義することを含む。
【0064】
本発明の方法は、基準画素密度の選択の段階を含む。
【0065】
実施形態の第1の様態によれば、この段階は、空洞の壁から画素を選択することを含むことが好ましい。この場合、壁において定義された関心のある領域の画素密度の上限を定義するために、基準画素密度が計算される。
【0066】
実施形態の第2の様態によれば、基準密度の選択は、空洞から画素を選択することによって選択することができる。この第2の様態では、基準画素密度は、以下で詳述される画素増大の許容範囲の下限25を定義する。
【0067】
第3の実施形態の様態によれば、基準画素密度を、空洞の画素密度値の範囲と、壁の画素密度値の範囲との間で計算して、各領域からの画素を区別するようにする。
【0068】
最後に、第4の実施形態の様態によれば、所与の母集団における空洞および壁のそれぞれの密度の事前知識に従って、基準密度の選択をデフォルトで行うことができる。
【0069】
この画素密度は、基準画素密度Drefを定義する。この段階は、
図5においてDrefと表記されている。画素基準密度の選択によって、具体的には、処理の後続の段階、特に増大段階をパラメータ化することが可能になる。
【0070】
基準密度選択の実施形態の第1の様態によれば、本発明のこの段階は、壁21’などに描かれる関心のある領域22を定義することを含む。この壁は、心筋壁と名付けられている。関心のある領域22の定義によって、HU単位、すなわちハンスフィールド単位で表されたこの領域の画素密度の平均および標準偏差を測定することが可能になる。関心のある領域22は、少なくとも1つの画素を含む。
【0071】
壁における関心のある領域22の定義の目的は、画素密度の値の範囲を定義することであり、ここで基準画素密度Drefが、この範囲の上限を定めるために計算される。基準画素密度Drefは、段階的増大動作における基準として機能する。
【0072】
この増大動作時に、増大動作で検討されるあらゆる画素密度が、基準画素密度と比較される。
【0073】
関心のある領域22は、ボリューム上の画素の密度によって、2Dの断面画像上で、または場合により3Dで定義することができる。1つの好ましい実施形態によれば、関心のある領域22は、右心室VDを左心室VGと分離する心室間領域において定義される。壁21’は、拡張されたゾーンの画定においてエラーなく増大段階25を続いて実施するための良い基準を定義することを可能にする画素密度を提供する。別のゾーン、たとえばゾーン20またはゾーン21もまた代替的に、基準密度Drefを固定することを可能にする関心のある領域を定義するように機能することができる。
【0074】
このゾーンは、画素基準密度Drefを決定するための基準として機能するのに特に適している。
【0075】
実施形態の別の様態によれば、画像に対する測定によってではなく、所与の母集団における壁の密度の事前知識に応じて、画素基準密度Drefを定義することが可能である。この場合、事前定義されたパラメータ化に従って、値35をデフォルトで生成することができる。
【0076】
実施形態の1つの様態によれば、操作者は画面に表示される画像について関心のある領域22を手動で、すなわち、デジタルパレットグラフィックツールまたはマウスなどによって選択する。このようにして、関心のある領域22が
図5 2Aで定義される。関心のある領域22をリアルタイムで表示することによって、特に、右心室VDおよび左心室VGにそれぞれ対応する空洞25または26から画素をサンプルしないようにするために、操作者に視覚的制御を提供することが可能になる。
【0077】
実施形態の別の様態によれば、画像のソフトウェア処理により、2Dまたは3D画像の形状認識を行って、たとえば右心室VDおよび左心室VGなどを認識し、それによって壁21’の中の単純な関心のある領域22を定義することが可能になる。単純な自動生成される形状は、断面図上の円でもよく、3D画像上の球でもよい。
【0078】
本発明の方法は、少なくとも1つの画素27または複数の画素を含む領域27の選択を含む段階を含む。この画素またはこの領域27は、ボリューム内で増大して空洞を充填する2D拡張ゾーンまたは3D拡張ゾーンとなるゾーンを定義することが可能になる粒状部分(grain)を定義する。空洞250は、壁21’の密度を超える画素の密度を含む。この密度の差は、心筋組織および空洞250内を循環する血液の性質によって説明される。
【0079】
空洞を充填する2Dまたは3D領域が得られるように、本発明の方法25は、空洞内で選択された画素または領域から開始して、所与の基準に従って拡大したゾーンへ段階的に拡張することを可能にする。この拡張段階は、
図5においてEXT ZONEと表記されている。1つの基準は、密度が基準密度Drefを超える全ての画素へ領域を段階的に拡張することであってよい。
【0080】
壁における基準密度の計算に対応する実施形態の第1の様態では、領域が空洞全体に拡張するが、壁の内側、すなわち心内膜までに限定されるように、壁において測定される平均を上回る3つの標準偏差の閾値密度を選択することができる。したがって、基準画素密度は、壁21’の関心のある領域22において測定された平均を上回る3つの標準偏差の閾値密度に対応する値として選択され得る。この場合、基準画素密度は、壁の関心のある領域22の平均密度の周辺で定義される画素密度値の範囲の上限を定義する。
【0081】
ゾーン27の拡張は、ゾーン250に対応する3Dボリュームまたは2D平面の全ての方向28において均一に行うことができる。本発明の方法は、事前定義された閾値に到達するまで、ゾーン27のこの拡張段階を実施することができる。画素密度の閾値は、段階的な増大を可能にする画素密度の許容範囲外で定義される。ゾーン27に隣接する画素が、事前定義された画素密度閾値、すなわち基準密度未満の密度を含む場合、増大は停止され、到達された画素は増大ゾーン27に組み込まれない。ゾーン27が壁20または21’に隣接する画素に到達するまで増大した場合、増大動作は終了する。この事実から、ゾーン27の増大は、空洞25または250の画素の密度未満であって、特に事前定義された画素の閾値密度を定義する基準画素密度未満である密度を有する空洞250を囲む壁に到達するまで行われる。
【0082】
基準密度Drefの選択段階の実施形態の第2の様態によれば、方法は、空洞27からの基準密度Drefの選択と、画素増大の許容範囲の選択とを含む。
【0083】
実施形態のこの様態によれば、粒状部分の段階的増大の動作は、隣接画素の密度、および増大許容範囲と呼ばれる事前定義された値の範囲へのそれらの帰属を比較することで実施することができる。この値の範囲は、空洞内の密度の平均および標準偏差の測定から計算される。許容範囲は、開始時に選択された領域の平均密度の割合(たとえば、平均の±30%)によって、または好ましい実施形態の1つの様態では、標準偏差で測定された平均に対する偏差(たとえば、±3標準偏差)によって、計算することができる。したがって、空洞27内の開始領域の密度が、許容範囲を定義するために用いられる。例として、開始領域の画素密度が275であり標準偏差が25である場合、許容範囲値は、たとえば平均±3標準偏差に従って定義することができ、これにより[200,350]の値の範囲を定義することができる。ゾーン27の近傍画素がこの範囲に属さない場合、増大5は、この伝播方向においてこの近傍画素で停止する。Drefの画素の基準密度が空洞内で選択された場合、壁の画素の密度値が空洞の密度値未満であるので、最小限の閾値のみを選択することができる。したがって、先の例を再開して、条件をこのように表現することができる:段階的に見出される画素密度が200HUよりも大きい間、増大が継続する。最大限度350HUは任意選択である。
【0084】
実施形態の1つの様態によれば、基準は、領域27を前記領域27に隣接する画素まで、それらの密度が領域27の画素の密度に近い区間に含まれる場合に、拡張することであってよい。したがって、粒状部分の画素は、基準画素密度を計算するのに用いることができる。
図2Cに表されたようなゾーン27の拡張を段階的に生成するための、近傍画素の密度分析のために、許容閾値を定義することができる。この後者の場合、実施形態の第2の様態によって、空洞の基準画素密度、たとえば粒状部分の画素の選択の下限を、この後者が2つ以上の画素を有する関心のある領域を表す場合に、計算することができる。したがって、基準画素密度によって、許容閾値を定義することができる。
【0085】
事前定義された閾値密度は、空洞25の画素の最小密度に対応する値の範囲内で固定されていてもよい。例として、空洞の記録された平均密度の割合を含むことができる。空洞の画素密度が200HUおよび400HUの間に含まれる場合、150の大きい閾値を定義することができる。比較のため、領域21’などにおける取得された画像の心筋の画素密度は、20HUおよび100HUの間に含まれる。150HUの閾値の例を使用すると、ゾーン27は、壁20、21’の境界に到達するまで拡張することになる。
【0086】
造影剤が空洞25内を循環する血液に使用される場合、空洞25または250の得られた画像の画素の密度を高めることができ、したがってDrefの空洞の基準密度を上昇させることができ、関連する増大許容値の範囲もまた、Drefの空洞の基準密度値に対して上昇させることができる。
【0087】
図4Bを読むとより良く理解されることになる実施形態の第3の様態によれば、空洞および壁にそれぞれ関連する2つの値の範囲に関して増大動作時に分析されるあらゆる画素を区別することを可能にする比較値を提供するために、基準密度Drefが計算される。
図4Bに、壁21’における46の画素密度の分布と、空洞25における45の画素密度の分布とを示す。分布45、46のそれぞれは、この例では、ガウス曲線の形をとるが、検討されるケースに応じて、すなわち、患者のプロフィール、造影剤のタイプ、取得された画像の前処理などに応じて異なり得る。
【0088】
2つの曲線がゾーン47において交差し、ここでDrefの画素密度を定義することによって、最高の精度で画素のそれぞれを2つの領域と区別することが可能になる。
【0089】
実施形態のこの様態は、実施形態の第1の様態および実施形態の第2の様態の組み合わせに対応する。
【0090】
基準密度Drefの選択の実施形態の第4の様態によれば、空洞25および壁20または21’の画素密度の間の関係の事前知識によって、段階的に到達する画素密度に応じた領域27の増大ルールを推定することが可能になる。
【0091】
本発明の方法に従って事前に定義され描画された少なくとも1つの弁面の定義の1つの利点は、到達する近傍画素の密度が事前定義された閾値未満とならずに、ゾーン27の増大処理を停止するための境界を定義することが可能になることである。この境界によって、増大処理が、肺動脈13または三尖弁16などのオリフィスへ拡張することが回避される。拡張ゾーン27は、空洞25と、弁面11により画定され粒状部分27を含むボリュームとの共通部分により形成される内部ボリュームに適合することができる。
【0092】
図2Dに、ゾーン27の増大から生成されるそのようなボリュームを示す。非常に近い密度許容範囲と、増大の伝播を制限する事前定義された閾値の定義とを順守しながらの画素間の段階的増大の1つの利点は、ゾーン27が壁20、21’の内部組織、すなわち心内膜のレベルで急に停止することである。この動作によって、空洞5および壁を、これら2つの3Dゾーンの画素密度の差を考慮して高精度に画定することが可能になる。
【0093】
したがって、最終的な増大領域は、空洞に制限され、この空洞内で内壁(心内膜)およびオリフィスまで拡張する。特定の実施形態の1つの様態によれば、本発明は、いくつかの空洞または心臓全体に対して定量化することを可能にする。探索される空洞の数は、入口および出口の弁面の選択に依存する。これら2つの平面の間で、1つまたはいくつかの空洞を分析することができる。
【0094】
本発明の方法は、
図3Aで27と表記された拡張3Dゾーンが、所与の割合でボリュームが拡大される段階を含む。この段階は、
図5においてDILATと表記されている。ゾーン27の拡大は、総ボリュームの割合として、または「d」と表記される拡大距離によって表すことができる。拡大距離「d」は、拡大されるボリューム27の表面全体にわたって拡大が一様であることを考慮して、全ての方向28におけるボリュームの同じ拡大距離「d」に対応する。拡大動作は、表面27のあらゆる断面平面の相似変換に対応する。この拡大は2Dで、すなわち断面平面の意味でのいくつかのボリューム断面で、25の平面のそれぞれに対して行うことができるが、好ましい実施形態の様態は3Dで、すなわち
図3Aで27と表記された拡張3Dゾーンの表面に垂直な方向でこの拡大を実施することを含む。3Dボリュームの表面に対するこの垂直方向は、断面の平面内に位置することはできない。
【0095】
実施形態の1つの様態によれば、ゾーン27は、1から12mmの拡大距離によって拡大される。例として、2または3mmの距離をゾーン27により画定される空洞に、人間の右心室VDを含む場合に適用することができる。この距離は右心室VDを画定する壁に特に適しており、その理由は、健康な被験者の壁の最小の厚さに対応するためである。拡大距離「d」の値を壁の厚さに適合させる1つの利点は、壁のボリュームのみを後続の処理段階で扱うことができることである。したがって、この厚さによって、壁の表面の外側に位置する脂肪を考慮せずに、分析を壁の輪郭に制限することが可能になる。これにより、壁の外側に位置する脂肪塊が壁の内側の脂肪塊の定量化に影響し得ること、および本発明の方法によってそれらが考慮されないことを考慮すると、重要な利点が与えられる。それにもかかわらず、処理の後続の段階において、3mmを超える拡大距離を選択することで、壁20の外部の、特にその外側表面上の脂肪塊を考慮することが可能である。
【0096】
そのように拡大されたボリューム27は、超過厚さ20’が
図3Bに示されたボリューム27’の定義となる。したがってボリューム27’は拡大の効果によって、ボリューム27と、右心室VDの壁20の全部または一部とを含む。
【0097】
検討される空洞に応じて、ゾーン27の拡張により得られるボリューム3Dの拡大距離を適合させることができる。例として、空洞が左心室VGである場合、拡大距離dを10mmの非常に近くに定義することができ、その理由は、左心室VGの壁の厚さがこの距離にほぼ等しいためである。実施形態の別の様態によれば、壁の厚みにおいて異なる層の中の線維脂肪組織の存在を探索するために、いくつかの連続的な拡大を適用することができる。
【0098】
本発明の方法は、拡大動作によって生成される超過厚さに対応する3Dボリュームを抽出するための段階を含む。この段階は、
図5においてEXTRACTと表記されている。この段階を実施するために、処理は、拡大されたボリューム27’からボリューム27を減算することを含む。
【0099】
図3Cに、2つの以前のボリューム27’および27の減算動作によって得られるボリューム27’の超過厚さに対応する部分20’の断面図を示す。
【0100】
また、本発明の方法は、任意選択で、拡大後に得られる3D画像のその部分の輪郭を描くことが可能な関心のあるゾーン30を定義することを可能にする。この関心のあるゾーン30によって、本発明の方法により後で分析されるのに適したボリュームの部分のみを生成することが可能になる。典型的には、右心室VDの一部に対応するボリュームの拡大の例では、画定30 5によって、右心室VDの外側境界に対応する超過厚さ20’を抽出し、右心室VDおよび左心室VGの間の境界を処理しないことが可能になる。
【0101】
そして、本発明の方法は、ボリューム領域20’の画素密度の定量化段階を含む。この段階は、
図5においてQUANTIFICATIONと表記されている。この段階は、画像20’を読み出すことと、この領域内のあらゆる画素を処理することと、あらゆる画素密度を記録することとを含む。事前定義された値の範囲内の画素を、抽出段階15で抽出されたボリューム内でカウントすることができる。
【0102】
そして、この定量化を、
図4Aに示されるようなヒストグラム40として表すことが可能である。ヒストグラムとしての表現は、
図5においてHISTとして指定された段階によって生成することができる。ヒストグラムの縦座標として、Npと表記された画素数が表示されており、また、DP(HU)と表記された画素密度が横座標に示されている。画素密度の単位は、ハンスフィールド単位HUである。
【0103】
ヒストグラム40を読むと、たとえば−30UHおよび−10UHの間に含まれる画素の数をカウントし、それらのいくつか25を右心室の壁におけるそのような画素の存在から差し引くことが可能である。
図4をより良く解釈するために、密度が−10UH未満の画素の割合を識別するための境界41が示されている。−10未満の密度の画素についてのヒストグラムの上限が曲線42で表されている。実施形態の1つの様態30によれば、定量化は閾値未満、たとえば
図4において与えられた例では−10UH未満の全ての画素を考慮する。実施形態の別の様態によれば、たとえば−150HUから−50HUまで、および−50HUから−10HUまでの異なる密度のいくつかの脂肪塊を定量化するために、いくつかの閾値を適用することができる。
【0104】
実施形態の1つの様態によれば、本発明の方法は、検討される空洞に重ねて、超過厚さ20’を所与のカラーメトリックコーディングを用いて表現することを可能にするマッピング段階を含む。この段階は、
図5においてCARTOブロックにより表されている。マッピング段階5によって、脂肪塊などに対応する画素分布を表示することが可能になる。そのため、あらゆる画素は、画像における3D位置と、画素密度とを含む。画素の色の割り当ては、その密度が所与の値の区間、たとえば[−10,−30]に含まれたときから実施される。
【0105】
そのように生成され、コンピュータ画面などのディスプレイに表示されたボリューム20’を、操作者が見ることができる。画像20’の位置および配向を操作する手段を用いて、ボリューム空間20’において何回か回転を行うことで、心筋壁内の脂肪の表面および存在を研究することができる。3Dで生成された画像を表示プラットフォームに組み込んで、手術時の外科医または心臓医に心臓手術をガイドするための手段を提供することができる。
【0106】
図5に、本発明の処理の様々な段階を示す。段階PLAN VALVおよびDref段階が、操作者による手動の介入を必要とするので、所定の順序で実行されないことが述べられる。この操作者は、最初にとくに問題としないで弁面を定義する、または最初に基準密度を選択することができる。
【0107】
本発明の1つの変形によれば、拡大動作は、拡張されたボリューム27全体の画素を拡大することで、段階的に行うことができる。そして、ボリューム27を、拡大されたボリューム27’から減算して、マッピングが適用され得る1画素の幅の層を得ることができる。この動作は、重ねられた場合に3mmなどの所望の距離の超過厚さに対応する複数の層に対して段階的に反復することができる。
【0108】
この処理によって、あらゆる層をそれ自体のカラーメトリックコーディングを用いて表現することが可能になり、これにより、具体的には心筋壁の厚みにおける脂肪の侵入度に関して優れた読み取り精度での3D表示が可能になる。
【0109】
本発明の別の変形によれば、カラーメトリックコーディング5を、所定の値の範囲内の画素密度のセグメントに対して定義することができる。たとえば、−10HUおよび−50HUの間の関心のある画素密度値の範囲を考慮して、4つのセグメントを以下の範囲:[−10,−20]、[−20,−30]、[−30,−40]、[−40,−50]によって定義することができる。あらゆるセグメントが、表示されるボリューム20’の表現における密度変動を表現するように割り当てられたカラーメトリックコーディングを含むことができる。
【0110】
本発明の方法は、任意選択で、3D画像の取得の前の、空洞における造影剤の拡散を含む段階を含むことができる。この造影剤によって、非常に異なる心臓の異なる部分から画素密度を取得することが可能になり、これにより、たとえば、検討される空洞に対応するゾーンと、心筋に対応するゾーンとの間のコントラストが向上する。造影剤は、たとえば、水溶性ヨウ素化剤とすることができる。これは、静脈または動脈の手段を介して、または心臓が外植された場合には灌流によって注入することができる。
【0111】
本発明の方法は、たとえば、スキャナから画像を取得するように構成されたコンピュータによって実施される。画面に画像を表示することが可能なソフトウェア25を使用することができる。処理段階は、この目的用に専用に設計されたソフトウェアコンポーネントによって実行することができ、既存のソフトウェアで、またはこの処理専用のソフトウェアで実装される。コンピュータのCPU、または任意の計算機を用いて、全ての画像処理段階、すなわち具体的には、ゾーンの拡張、拡大、およびボリューム20’の周辺の3Dボリュームの抽出の動作を実施することができる。
【0112】
実施形態の第1の様態によれば、処理が男性または女性の心臓画像に適用され、スキャナが関心のある身体の領域に実施される。
【0113】
実施形態の別の様態によれば、処理は、動物の心臓から取得された画像に適用される。
【0114】
実施形態の別の様態によれば、処理は、たとえば人間の体から移植された単離心臓に適用される。これは、たとえば、灌流でもよい。
【0115】
本発明の方法を用いて、右心室不整脈形成異常、壁の脂肪浸潤の原因となる心筋の病理を診断することができる。
【0116】
また、方法を用いて、不整脈形成異常の診断が既に知られている患者において、診断を確立するのではなく、病気の程度を定量化して、たとえば不整脈または心不全の危険性などの予後を評価することができる。そのような定量化を同一の患者に反復して適用することで、病気の自発的進化を監視する、または可能な処置の効果を追跡することができる。
【0117】
また、方法を用いて、取得されたスキャナ画像における筋肉密度の低下にも関連する冠動脈血栓症の後遺症を検出し定量化することができる。血栓症後遺症の検出に加えて、定量化を用いて、梗塞の大きさに関連する悪化した予後、たとえば不整脈または心不全の進行のリスクを評価することができる。
【0118】
最後に、方法は、心房の壁内の脂肪の検出および定量化に適用することもできる。また、方法25は、心房性不整脈、たとえば心房細動を患っている患者の間で特に、診断および予後に応用することができる。
【0119】
脂肪の検出および定量化、ならびに病状の診断および予後へのその応用に加えて、本発明の方法30は、心臓内の脂肪領域の3Dマッピングを可能にする。したがって、これを治療ガイダンスに、特にアブレーションおよび心臓刺激の領域において適用することができる。現在、インターベンション中にプローブおよび心腔内カテーテルを空間的に配置することが可能であり、これらのローカリゼーションシステムにおける3Dデータの統合が、実現可能であって、心腔内ナビゲーションおよび治療のターゲティングを補助するのに有用であることが既に示されている。したがって、心筋内の脂肪ゾーンの表示が可能なことによって、アブレーションおよび刺激処置を誘導することができる。関心のある病理は、右心室不整脈形成異常の患者、何らかの心筋瘢痕(梗塞、心筋炎、外科的瘢痕)を示している患者、または心房細動の患者における、心拍および導通の不調である。
【国際調査報告】