特表2017-514748(P2017-514748A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-514748(P2017-514748A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】VTOL機
(51)【国際特許分類】
   B64C 29/00 20060101AFI20170512BHJP
【FI】
   B64C29/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-566259(P2016-566259)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月27日
(86)【国際出願番号】US2015029751
(87)【国際公開番号】WO2016018486
(87)【国際公開日】20160204
(31)【優先権主張番号】61/989,935
(32)【優先日】2014年5月7日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515167724
【氏名又は名称】エックスティアイ エアクラフト カンパニー
【氏名又は名称原語表記】XTI Aircraft Company
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】ブロディー, デイヴィット, イー.
(72)【発明者】
【氏名】オルコット, デニス, ディー.
(57)【要約】
垂直離着陸機は、第1の垂直揚力位置と第2の水平推力位置との間を回転移動可能である1対の揚力/推力ダクテッドファンを含む。揚力/推力ファンは、航空機の翼の前縁部分に形成された曲線状のファン凹部内に配置される。下方に排気する揚力ダクテッドファンは、航空機のピッチ軸線の後方に、航空機の機体内に配置される。前記機体内に配置された、動力装置は、伝達システムにより揚力/推力ファンと揚力ファンとに結合される。揚力/推力ファンおよび揚力ファンは、航空機の重心および航空機の揚力中心を中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直離着陸することが可能な航空機であって、
前端部分と、後端部分と、前記前端部分と前記後端部分との間に延びる中央部分とを有する機体であり、当該航空機の長手方向中心軸線を画定する機体と、
前縁部分と、後縁部分と、前記機体の前記中央部分にそれぞれ結合された根元端部と、前記機体から左右方向外方に延びる反対側の先端部分とを各々が有する1対の翼と、
当該航空機のロール軸線の両側にかつ当該航空機のピッチ軸線の前方に互いに対称に位置決めされるように前記1対の翼のうちの1つにそれぞれ結合された前記1対の揚力/推力ダクテッドファンであって、垂直揚力をもたらす第1の位置と水平推力をもたらす第2の位置との間を選択的に回転移動可能である1対の揚力/推力ダクテッドファンと、
前記ピッチ軸線と前記機体の前記後端部分との間において、前記機体内に配置された下方に排気する揚力ダクテッドファンと
を備える、航空機。
【請求項2】
前記翼の各々の前記前縁部分が曲線状のファン凹部を含み、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンの各々がそれぞれ、前記曲線状のファン凹部内に回転可能に配置されている、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記翼の各々の前記前縁部分が、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンおよび前記揚力ダクテッドファンからの揚力を前記翼の揚力と整合させるために後方に傾斜している、請求項1に記載の航空機。
【請求項4】
前記曲線状のファン凹部が、前記揚力/推力ダクテッドファンの周縁部分の形状に近似するように形作られている、請求項2に記載の航空機。
【請求項5】
前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンが、当該航空機の重心を中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされている、請求項1に記載の航空機。
【請求項6】
前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンが、前記1対の翼の揚力中心を中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされている、請求項1に記載の航空機。
【請求項7】
前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンが、前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンの揚力中心を中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされている、請求項1に記載の航空機。
【請求項8】
前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンが、当該航空機の重心、当該航空機の揚力中心、ならびに前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンの揚力中心を中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされている、請求項1に記載の航空機。
【請求項9】
前記1対の揚力/推力ダクテッドファンの各々からの推力が個別に制御可能である、請求項1に記載の航空機。
【請求項10】
前記揚力ダクテッドファンに対して開位置と閉位置との間を選択的に移動可能である少なくとも1つのカバーを更に備える、請求項1に記載の航空機。
【請求項11】
前記少なくとも1つのカバーが、前記揚力ダクテッドファンの真下に前記揚力ダクテッドファンの推力出力と一致するように位置決めされる少なくとも1つのルーバであって、前記揚力ダクテッドファンに対して前記開位置と前記閉位置との間を種々の角度で選択的に枢動可能であり、その結果、当該航空機に対するヨー制御を行うために前記推力出力が選択的に所定の角度で方向付けられる、少なくとも1つのルーバを含む、請求項10に記載の航空機。
【請求項12】
前記少なくとも1つのルーバが、少なくとも1つの選択的に移動可能な外側底扉と組み合わさって、前記揚力ダクテッドファン用の底扉カバーを画定している、請求項11に記載の航空機。
【請求項13】
前記機体内に配置された動力装置であって、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンと前記揚力ダクテッドファンとに動作可能に結合される動力装置を更に備える、請求項1に記載の航空機。
【請求項14】
前記動力装置が、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンと前記揚力ダクテッドファンとに結合される単一の動力伝達システムに動作可能に結合される複数のエンジンで構成されている、請求項13に記載の航空機。
【請求項15】
第1の出力シャフトおよび第2の出力シャフトが、前記複数のエンジンに動作可能に結合される、ギヤボックスから互いに反対方向に、横方向に延びるとともに、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンに関連する減速ギヤボックスに結合され、第3の出力シャフトが、前記ギヤボックスから後方に延びるとともに、前記機体内に収容された後部の前記揚力ダクテッドファンに関連する減速ギヤボックスに結合されている、請求項14に記載の航空機。
【請求項16】
当該航空機のピッチ制御が、ファンブレードピッチの増加またはファン回転速度の増加により前記揚力/推力ダクテッドファンおよび前記揚力ダクテッドファンに分配される動力を変化させることにより実行される、請求項1に記載の航空機。
【請求項17】
当該航空機のロール制御が、ファンブレードピッチの増加またはファン回転速度の増加により前記揚力/推力ダクテッドファンに分配される動力を変化させることにより実行される、請求項1に記載の航空機。
【請求項18】
航空機操縦翼面、揚力/推力ダクテッドファン、および揚力ダクテッドファンの機能の選択的制御を可能にする方式で、前記航空機操縦翼面と前記揚力/推力ダクテッドファンと前記揚力ダクテッドファンとに動作可能に結合された飛行制御システムを更に備える、請求項1に記載の航空機。
【請求項19】
前記航空機操縦翼面が、昇降舵と、補助翼と、方向舵とを含む、請求項18に記載の航空機。
【請求項20】
前記飛行制御システムが、前記揚力/推力ダクテッドファンおよび前記揚力ダクテッドファンのファンブレードピッチ、動力、または回転速度の選択的な制御を可能にする、請求項18に記載の航空機。
【請求項21】
垂直離着陸することが可能な航空機であって、
当該航空機のロール軸線の両側にかつ当該航空機のピッチ軸線の前方に互いに対称に位置決めされるように1対の翼のうちの1つにそれぞれ結合された1対の揚力/推力ダクテッドファンであって、垂直揚力をもたらす第1の位置と水平推力をもたらす第2の位置との間を選択的に回転移動可能である1対の揚力/推力ダクテッドファンと、
前記ピッチ軸線と当該航空機の機体の後端部分との間において、前記機体内に配置された下方に排気する揚力ダクテッドファンと
を備える、航空機。
【請求項22】
前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンが、当該航空機の重心と、当該航空機の揚力中心と、前記揚力ダクテッドファンおよび前記1対の揚力/推力ダクテッドファンの揚力中心とのうちの少なくとも1つを中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされている、請求項21に記載の航空機。
【請求項23】
前記翼の各々の前縁部分が曲線状のファン凹部を含み、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンの各々がそれぞれ、前記曲線状のファン凹部内に回転可能に配置されている、請求項21に記載の航空機。
【請求項24】
前記翼の各々の前記前縁部分が、前記1対の揚力/推力ダクテッドファンおよび前記揚力ダクテッドファンからの揚力を前記翼の揚力と整合させるために後方に傾斜している、請求項23に記載の航空機。
【請求項25】
前記曲線状のファン凹部が、前記揚力/推力ダクテッドファンの周縁部分の形状に近似するように形作られている、請求項23に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2014年5月7日に出願された米国仮特許出願第61/989935号明細書の利益を主張するものであり、その全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0002]空港は、通勤者のニーズおよびその他の都市間の移動に対処するために都市部近郊で必要性が高まっている。しかしながら、空港は、固定翼機が安全に離着陸するのに必要とされる長い滑走路や広大な空域のために広い設置面積を占有する。また、そのような空港の建設は、中小規模の地方自治体にとって法外な費用がかかる。大都市が空港を建設できるようなより望ましい位置にある場合には、都市の空港がもたらす騒音、汚染、および安全性の問題が深刻である。よって、航空業界には、商業用および居住用不動産の比較的小さな区画に離着陸しかつ保管され得る小型で手頃な価格の垂直離着陸(VTOL)機を求める長年にわたる切実なニーズがある。
【0003】
[0003]歴史的に、航空業界では、小型で手頃な価格のVTOL機に関する要求をヘリコプタが満たすと考えられていた。残念ながら、ヘリコプタは、その制御システム、その大径ロータ、ならびにその低速度および限られた航続距離のために、依然として特殊用途の航空機である。ヘリコプタ制御システムは、ロータピッチを連続的に調整するための複雑な機構を含む。このような制御システムは、構築し維持するのに費用がかかる。その上、ヘリコプタは操縦が困難であることで知られており、特に固定翼機と比較して、特殊な飛行訓練を必要とする。更に、露出した大径ロータは、安全性および操作上の深刻な課題を提示する。ヘリコプタはまた、固定翼機とは程遠い速度および航続距離で飛行する限られた能力の問題を抱えている。よって、伝統的なヘリコプタ技術は、重要な操作上のならびに使用者のニーズおよび要求に対処するのに適していない。
【0004】
[0004]数十年間にわたって、固定翼飛行機の速度、航続距離および快適性をヘリコプタのVTOLおよびホバリング能力と組み合わせる数多くの試みがなされてきた。しかしながら、2つの軍用機、英国のハリアージェット機と米国空軍のF−35を除いて、ティルトロータという分類の航空機は、FAA認可および商業生産が間近であると思われる唯一の複合型VTOL/固定翼機である。しかしながら、ティルトロータは、前進飛行形態ではロータブレードが地面にぶつかるので垂直に離昇および着陸することしかできない。それゆえ、ティルトロータ機の総重量が、滑走路で離陸することが可能である、固定翼機よりも軽い。大型のエンジン/ロータ組立体もまた、これら組立体が固定される翼の空力特性を低下させる。このことは、性能を低下させる一方で、緊急の滑走着陸が必要である場合に安全性を更に低下させる。このことは、ロータが垂直に位置決めされたときの離陸直後に滑走着陸が必要となるティルトロータ機、およびロータと翼が垂直に位置決めされたときの「ティルトウィング」機において特に深刻である。更に、ティルトロータは、その大きさおよび複雑さのために、(物理的または技術的な観点から)商業市場における軽量で、高速で、コンパクトでかつ手頃な価格の航空機の基準とすることはできない。
【0005】
[0005]高速度に達するように設計された別の分類のVTOL機(すなわち、「複合ヘリコプタ」として知られる、(プロペラなどの)加速するための追加の構成要素を備えたヘリコプタ)が存在する。SikorskyのX2技術の航空機およびAVX Aircraft Companyの同軸ロータ/双対ダクテッドファン技術がこの分類に含まれる。SikorskyおよびAVXの航空機は、商業生産されていないが、ティルトロータを除くいかなる固定翼機よりも優れたVTOLおよびホバリング能力と共に高速度を達成することが可能であるように設計されている。しかしながら、これらの複合ヘリコプタは、ティルトロータと同様に、離着陸中の揚力のためのより小型でより安全なダクテッドファンではなく、離着陸中の揚力のための標準的な大型のヘリコプタブレードを有する。20世紀半ばには、回転ダクテッドファンを備えた種々の試作機または実験用航空機が飛ばされていた。しかしながら、エンジンおよびファンが貨物または乗客に対して十分な揚力をもたらさず、それらの航空機は重大な制御性の問題を抱えていた。
【0006】
[0006]それらの従来技術のVTOL機の設計の多くには、日常的に運航するコミュータ機としての幅広い受け入れを妨げている同様の様々な欠点がある。別の欠点は、多くのそのような設計が、離陸およびホバリングモードにおいて、航空機を空中に維持するのに数倍の馬力を必要とすることである。よって、このような航空機は、ホバリング中と前進水平飛行中の両方における、燃料消費率が比較的高いという問題を抱えている。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本概要は、詳細な説明で以下に更に説明される概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提示するものである。本概要、および前述の背景技術は、特許請求する主題の重要な態様または必須の態様を特定することを意図したものではない。更に、本概要は、特許請求する主題の範囲を決定するのに役立つものとして使用されることを意図したものではない。
【0008】
[0008]本技術による航空機は、従来の航空機の設計とは根本的に異なる。特に、本航空機の実施形態は、独特の構成の1組の三角形をなすダクテッドファンを使用する、固定翼とダクテッドファンを備えたVTOL機を提示する。これにより、優位性のある速度、航続距離、および乗客に対する快適性、ならびに相当のペイロード能力を有する、実用的な航空機が提供される。
【0009】
[0009]種々の実施形態において、航空機は、前端部分と、後端部分と、前端部分と後端部分との間に延びる中央部分とを有する機体を含む。機体は、航空機の長手方向中心軸線を画定する。1対の翼は、機体から左右方向外方に延びる。下方に排気する揚力ダクテッドファンは、航空機のピッチ軸線と機体の後端部分との間において、機体内に配置される。揚力ダクテッドファンに対して開位置と閉位置との間を選択的に移動可能である少なくとも1つの引込み可能かつ再閉鎖可能なカバーがある。1対の揚力/推力ダクテッドファンは、このファンが航空機のロール軸線の両側に、ピッチ軸線の前方に互いに対称に位置決めされるように1対の翼に結合される。1対の揚力/推力ダクテッドファンは、垂直揚力をもたらす第1の位置と水平推力をもたらす第2の位置(図1)との間を選択的に回転移動可能である。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態において、航空機の各翼の前縁部分は、曲線状のファン凹部を含む。1対の揚力/推力ダクテッドファンの各々は、曲線状のファン凹部内に回転可能に配置される。よって、曲線状のファン凹部は、揚力/推力ダクテッドファンの周縁部分の形状に近似するように形作られる。航空機の実施形態は、航空機の重心を中心に三角形をなすように揚力ダクテッドファンおよび1対の揚力/推力ダクテッドファンを互いに対して位置決めする。1対の揚力/推力ダクテッドファンの各々からの推力は、航空機のロール制御を行うために個別に制御可能である。機体の後方部分における揚力ファンからの推力は、航空機のピッチ制御を行うために制御可能である。
【0011】
[0011]航空機の実施形態は、機体内に配置されるとともに1対の揚力/推力ダクテッドファンと揚力ファンとに動作可能に結合される動力装置を含む。いくつかのそのような実施形態において、動力装置は、単一の動力伝達システムに動作可能に結合される複数のエンジンを含み、この動力伝達システムは、1対の揚力/推力ダクテッドファンと揚力ファンとに結合される。第1の出力シャフトおよび第2の出力シャフトは、複数のエンジンに動作可能に結合されるギヤボックスから互いに反対方向に、横方向に延びるとともに、1対の揚力/推力ダクテッドファンに関連する減速ギヤボックスに結合される。第3の出力シャフトは、ギヤボックスから後方に延びるとともに、機体内に収容された後部揚力ファンに関連する減速ギヤボックスに結合される。
【0012】
[0012]本システムおよび方法のこれらおよび他の態様は、本明細書における詳細な説明および図を考慮した後に明らかになるであろう。しかしながら、本発明の範囲は、特許が付与される特許請求の範囲により決定されるべきであり、所与の主題が背景で述べられた任意または全ての問題に対処するかどうか、またはこの概要に列挙される任意の特徴もしくは態様を含むかどうかにより決定されないことを理解されたい。
【0013】
[0013]好ましい実施形態を含む、本発明の非限定的および非網羅的な実施形態について、以下の図を参照して説明し、ここで、別段の明記がない限り、種々の図全体を通じて、類似の参照符号は類似の部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本技術のVTOL機の一実施形態の斜視図であり、VTOL機が前進飛行用に構成され得る一方式を示す図である。
図2図1に示されているVTOL機の斜視図であり、VTOL機が着陸または離陸用に構成され得る一方式を示す図である。
図3図1に示されているVTOL機の正面図を示している。
図4図2に示されているVTOL機の正面図を示している。
図5図1に示されているVTOL機の上面図を示している。
図6図2に示されているVTOL機の上面図を示している。
図7図1に示されているVTOL機の側面図を示している。
図8図2に示されているVTOL機の側面図を示している。
図9図2に示されているVTOL機の背面図を示しており、ヨー制御を行うために本体ファンの下にベーンを用いた実施形態を更に示す図である。
図10図2に描かれているVTOL機の切欠き斜視図を示しており、エンジンならびにこれらエンジンの給気口および排気口がVTOL機の機体およびポーティッドファンに対して位置決めされ得る一方式を更に明示する図である。
図11図10に示されているVTOL機の切欠き上面図を示している。
図12図10に示されているVTOL機の切欠き側面図を示している。
図13】本技術のVTOL機の実施形態の概略斜視図を示しており、エンジンおよび伝達システムがダクテッドファンに結合され得る一方式を明示する図である。
図14】本技術のVTOL機の実施形態と共に使用されるように構成されたエンジンおよび動力伝達システムの等角図を示している。
図15】本技術のVTOLの一実施形態および乗客室の一構成の概略斜視図を示している。
図16】本技術のVTOLの別の実施形態および乗客室の代替構成の概略斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0030]本明細書の一部をなし、例示として、具体的で例示的な実施形態を示す、添付図面を参照して、実施形態を以下により詳細に説明する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に開示される。しかしながら、実施形態は、多くの異なる形態で実施してもよく、本明細書に明記する実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的な意味に取られるべきではない。
【0016】
[0031]VTOL機10に関する本技術の実施形態は、概して図1図16に示されている。図1図9図15および図16を特に参照するに、VTOL機10の実施形態は、前端部分14と、後端部分16と、前端部分14と後端部分16との間に延びる中央部分18とを有する機体12を含む。機体12の種々の実施形態は、細長いものであり、VTOL機10の長手方向中心ロール軸線Xを画定する。少なくともいくつかの実施形態において、機体12は、41フィートの長さと78インチの機室幅を備える。図15および図16に示されてるようないくつかの実施形態では、機体12の前端部分14を乗客および飛行制御室で構成してもよい。図15に示されているような、種々の実施形態では、乗客および飛行制御室を合計5人用に構成してもよい。乗客および飛行制御室は、1人〜2人の運航乗員および3人〜4人の乗客を含み得る。乗客および飛行制御室の後方に、VTOL機10は、格納室またはペイロード室を含み得る。他の実施形態では、より多くの人および/またはペイロードを収容するために、VTOL機を大型化してもよい。例えば、図16は、乗客および飛行制御室が合計6人用に構成され得る一実施形態を描いている。乗客および飛行制御室は、1人〜2人の運航乗員および4人〜5人の乗客を含み得る。
【0017】
[0032]1対の翼、特に第1の翼20および第2の翼22は、機体12に対して固定位置に固定される。第1の翼20および第2の翼22は各々、前縁部分24、後縁部分26、根元端部28および反対側の先端部分30により画定される。第1の翼20および第2の翼22の根元端部28はそれぞれ、機体12の中央部分18に結合され、その結果、第1の翼20および第2の翼22が機体12から左右方向外方に延びる。少なくともいくつかの実施形態において、第1の翼20および第2の翼22は、後退翼設計を有し、38フィートの翼幅と、約240平方フィートの翼面積とを備えたVTOL機を提供する。ある実施形態において、翼は、失速速度が80kts未満のVTOL機10を提供する。
【0018】
[0033]図2および図6を参照するに、VTOL機10の種々の実施形態は、VTOL機10のピッチ軸線Zと機体12の後端部分16との間において、機体12内に配置される下方に排気する揚力ダクテッドファン32を含む。この用語が本明細書で使用される場合、「ダクテッドファン」とは、単に空気がダクトまたはシュラウドを通過するときに空気を加速させるシステムにすぎない。ダクトは、ダクトなしに発生する空気質量流と比較してファンブレードを通る更なる空気質量流を誘起する役割を主に果たす。ダクトは、アンダクテッドファンまたはプロペラと比較して、空気の加速に対する反応の力である「推力」を増加させる。図2および図6を具体的に参照するに、多翼ファン36により水平ダクト34を通じて空気を加速させる。描かれている実施形態において、水平ダクト34は、VTOL機10のピッチ軸線Zの後方にかつ機体12の後端部分16から前方に、機体12を貫通する開口部として画定される。水平ダクト34および機体12を単一構造でまたは互いに対して固定位置に固定される別個の構造体として形成できることが考慮される。
【0019】
[0034]図1図2図5図6および図9を参照するに、1組のヒンジ付き「クラムシェル」扉カバーまたはルーバ37を水平ダクト34の底部出口開口部に関連付けてもよく、または格納式カバー38を上部入口開口部に関連付けてもよい。底扉カバー37および格納式カバー38は、種々の実施形態において、(図1および図5に描かれている)開位置と(図2および図6に描かれている)閉位置との間を選択的に移動するように設けられる。特に、底扉カバー37および格納式カバー38は、水平ダクト34を通じて離昇推力を生み出すように揚力ファン36を動作させる開位置に配置される。いくつかの実施形態において、底扉カバー37および格納式カバー38は、ファン36からの上昇推力が望ましくないかまたは必要でない場合に、VTOL機を前進飛行で動作させるときに閉位置に置かれる。底扉カバー37および格納式カバー38が前方および後方にまたは左右逆方向に引込む複数の構成要素として設けられ得ることが考慮される。種々の既知の方法で前方または後方に引込む単一体の格納式カバー38を使用してもよい。更に別の実施形態では、底扉カバー37および格納式カバー38が閉位置と略開位置との間で回転する複数のルーバとして設けられ得ることが考慮される。そのような一実施形態において、1つまたは複数のルーバ39は、揚力ファン36の直下に枢動可能に結合され、かつ開位置と閉位置との間およびこれらの間の個々の地点間を移動可能である。閉位置において、ルーバ39は、水平ダクト34の底部出口開口部を閉鎖するための底扉カバー37の一部を形成する。このことにより、底扉カバー37の外側パネルが小型化される。ルーバ39は、VTOL機10のホバリング飛行中に開位置に配置される。ルーバ39と方向舵ペダルなどの飛行制御装置との作動的な機械結合または電子結合により、開位置にあるときのルーバの選択的な角度配置が可能となる。水平ダクト34の推力出力の向きを変え、ヨー制御の態様をVTOL機10にもたらすために、水平ダクト34の底部出口開口部の真下の選択的な角度位置を使用してもよい。
【0020】
[0035]図1図8を参照するに、VTOL機10の実施形態は、1対の揚力/推力ダクテッドファンを含む。特に、図示実施形態は、第1の翼20および第2の翼22にそれぞれ連結される第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42を含む。種々の実施形態において、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42は、直径6フィートの5つのブレードロータ41を含む。ロータ41の実施形態は、700hpを超える定格のものである。VTOL機10の寸法および所望の性能特性に応じてロータ41の大きさが増減し得ることが考慮される。いくつかの実施形態では、ロータ41におけるブレードのピッチを所望の出力性能に基づいて要求に応じて変えてもよい。揚力/推力ファン40および42の各々からの推力は、種々の実施形態において個別に制御可能である。
【0021】
[0036]第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42は、VTOL機10のロール軸線Xの両側にかつピッチ軸線Zの前方に互いに対称に位置決めされる。このようにして、揚力ファン32および1対の揚力/推力ダクテッドファン40、42は、第1の翼20および第2の翼22の揚力中心と、揚力ファン32および揚力/推力ダクテッドファン40、42の揚力中心と、VTOL機10の重心とのうちの少なくとも1つ、ならびにいくつかの実施形態ではこれらの全てを中心に三角形をなすように互いに対して位置決めされる。第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42は、それらファン40、42が垂直揚力をもたらす第1の位置(図2)と水平推力をもたらす第2の位置(図1)との間を選択的に回転移動可能であるように、第1の翼20および第2の翼22にそれぞれ結合される。いくつかの実施形態では、所望により組立体を単一の位置に係止することに加えて、大きな外力にさらされている間に、移動を誘起することが可能な、機械式、油圧式、または電気機械式アクチュエータを使用して、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42を第1の位置と第2の位置との間で回転させる。
【0022】
[0037]描かれている実施形態において、第1の翼20および第2の翼22の各々の前縁部分44は、曲線状のファン凹部46を含む。第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42の各々は、曲線状のファン凹部46内に回転可能に配置される。描かれているように、本技術の実施形態は、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42の周縁部分の形状に近似するように曲線状のファン凹部46を形作る。このようにして、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42を、曲線状のファン凹部46内に入れ子となるように水平に配置してもよい。曲線状の凹部46は、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42がVTOL機10のピッチ軸線Zに近接して後方に位置することを可能にする。前縁部分44は、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42における軸線上の枢動点付近で第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42に枢動可能に係合するように前方に突出する互いに対向する1対の取付肩部48を含む。いくつかの実施形態において、第1の翼20および第2の翼22は、後退角を備える。これにより、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42を第1の翼20および第2の翼22の根元端部28と反対側の先端部分30との中間に位置決めすることが可能となる。第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42の位置が第1の翼20および第2の翼22の先端部分30から内方に移動するので、構造的にあまり頑丈でない支持が第1の翼20および第2の翼22の全体にわたって必要とされ、このことにより、VTOL機10の全重量が低減される。
【0023】
[0038]図10図14を参照するに、VTOL機10は、揚力ファン32と第1の揚力/推力ファン40と第2の揚力/推力ファン42とに動力を供給する動力装置および動力伝達システムを含む。VTOL機10に動力を供給するために単一のエンジンを使用できることが考慮される。しかしながら、描かれている実施形態は、第1の翼20と第2の翼22との間の機体12内に互いに跨って位置決めされる第1のエンジン50および第2のエンジン52を含む。特定の一実施形態において、第1のエンジン50および第2のエンジン52は各々、2,000shpを超える最大定格海面出力を有するエンジンに少なくとも相当する。図10および図11に描かれているように、互いに対向する1対のNACA型の空気取入ダクト54は、第1のエンジン50および第2のエンジン52から前方に、機体を貫通する。1対の排気口56は、第1のエンジン50および第2のエンジン52から出て、機体12の中央部分18の両側を貫通する。
【0024】
[0039]図14を更に参照するに、VTOL機10と共に使用される例示的な動力伝達システムは、第1のエンジン50および第2のエンジン52からの動力入力を受けるギヤボックス58を含む。描かれている実施形態において、第1の出力シャフト60および第2の出力シャフト62は、ギヤボックス58から横方向に延びるとともに、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42に関連する第1の減速ギヤ64および第2の減速ギヤ66にそれぞれ係合する。第3の出力シャフト68は、ギヤボックス58から後方に延びるとともに、揚力ファン32に関連する第3の減速ギヤ69に係合する。種々の実施形態では、本明細書で説明する出力シャフトが、動力伝達システムに冗長性をもたらす、二重同軸シャフトとして設けられ得ることが考慮される。
【0025】
[0040]VTOL機10は、種々の飛行操作を通じてVTOL機10を操作するための飛行制御システムを含む。飛行操作の態様が監視され、場合により、飛行制御コンピュータにより直接制御される。飛行制御コンピュータに関連するプロセッサは、1つまたは複数の関連するシステムからのデータ入力を受信する。例えば、飛行制御システムの実施形態は、飛行制御コンピュータにデータを送信する、複数のパイロット入力を含む。これらのパイロット入力は、限定されるものではないが、飛行操縦桿からのピッチおよびロールコマンド、方向舵ペダルからのヨーコマンド、トリムコマンド、およびエンジンスロットル制御からの動力コマンドを含む。種々の実施形態において、飛行制御システムは、昇降舵と補助翼と方向舵とを含む航空機操縦翼面に動作可能に結合される。いくつかの実施形態において、飛行制御システムは、航空機操縦翼面、揚力/推力ダクテッドファン40、42、および揚力ファン36の機能の選択的制御を可能にする方式で揚力/推力ダクテッドファンと揚力ファンとに動作可能に結合される。いくつかのそのような実施形態において、飛行制御システムは、揚力/推力ダクテッドファン40、42および揚力ファン36のファンブレードピッチ、動力、または回転速度の選択的な制御を可能にする。VTOL機10の実施形態は、X軸線、Y軸線、およびZ軸線における航空機の加速度を測定するための運動センサ/加速度計を更に含む。回転角であるピッチ、ヨー、およびロールに関係するデータを受信して伝えるために、レートジャイロを設けてもよい。1つまたは複数のセンサは、着陸装置70の格納状態と展開状態を検出する。種々の周辺システムは、高度計と、空気データセンサシステムと、ピトー静圧プローブと、全温度プローブとを含む飛行制御コンピュータに環境データを提供する。そのような周辺システムからのデータは、飛行制御コンピュータ内で処理され、この飛行制御コンピュータが、そのようなデータを1つまたは複数の関連するメモリ記憶システムに記憶してもよい。1つまたは複数のディスプレイまたは多機能ディスプレイは、飛行制御の状態を運航乗員に伝える。
【0026】
[0041]VTOL機10の実施形態は、VTOL機10が完全または重大な推進不良を起こしかつ滑走緊急着陸を行うのに対気速度が不十分である場合に使用するための緊急パラシュートシステムを含む。いくつかのそのような実施形態は、VTOL機10がホバリングモードであるかまたは低速で進んでいる間に主に使用される1つまたは複数のパラシュートを含む。緊急パラシュートシステムの実施形態は、機体12の後端部分16近傍の、機体12内における室内にパラシュートを固定する。支持用パラシュートケーブルは機体に結合される。いくつかの実施形態では、エンジンが動力を失うかまたはVTOL機10がホバリングモードで不安定になった場合に、緊急パラシュートを、パイロット入力を介してパイロットにより展開させるかまたは飛行制御コンピュータにより自動的に展開させる。いくつかの実施形態において、緊急パラシュートシステムは、機体12からある角度で飛び出すロケットを展開させ、パラシュートの端部を互いに反対方向に引っ張り、それにより傘体を展開させる。VTOL機10が前進飛行で進んでいる場合、飛行制御コンピュータは、速度が速すぎる場合にパラシュートの展開を遅らせる必要があるかどうかを判断するために、1つまたは複数の空気センサからデータを受信するようにプログラムされてもよい。
【0027】
[0042]VTOL機10の飛行制御システムは、上で説明したように、垂直離陸操作と、ホバリングモードと前進飛行との間の移行とを簡単にする。例えば、操縦者は、揚力/推力ファンからの推力が図2に示すように地面に向かうように揚力/推力ファンを第1の(離陸)位置に位置決めすることにより垂直離陸を開始する。操縦者は、始動モードを開始するためにパイロット入力を実行する。飛行制御コンピュータ内に受信されたデータは、底扉カバー37および格納式カバー38を開位置に移動するように作動させる。次いで、揚力ファン32、第1の揚力/推力ファン40、および第2の揚力推力/ファン42の始動シーケンスが開始される。飛行制御システムは、ファンがアイドル状態になることを可能にする。揚力ファン32、第1の揚力/推力ファン40、および第2の揚力/推力ファン42の推力が判定値以上に達すると、操縦者は、飛行制御システムに関連するパイロット入力からホバリングモードを実行する。VTOL機10が離昇するまで、揚力ファン32、第1の揚力/推力ファン40、および第2の揚力/推力ファン42の推力を増加させる。
【0028】
[0043]VTOL機10が安定してホバリングしている状態で、操縦者は、飛行制御コンピュータに関連するパイロット入力からクルーズモードを選択する。第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42を第1の位置から第2の位置に徐々に傾斜させて前進移動力を生み出すために、飛行制御コンピュータから信号が送られる。VTOL機10が加速して前進飛行すると、翼に揚力が発生し、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42の推力を後方に向けた状態でVTOL機10が巡行する。次いで、操縦者は、操縦桿および操向ペダルを用いて手動操作を実行してもよい。それと同時に、またはその代わりに、飛行操作を、飛行制御コンピュータに関連する周辺センサおよびシステムから受信したデータに基づいて行われる自動操作に任せてもよい。
【0029】
[0044]本技術のVTOL機10は、高速で巡行できるとともにVTOL機10が地面から垂直に離陸するかまたは地面に垂直に着陸するので離陸または着陸のための滑走路を必要としない垂直離着陸機を提供する。少なくともいくつかの実施形態において、VTOL機10は、5,000ポンド未満の総重量(自重)を有する。種々の実施形態は、6,000ポンドを超える最大VTOL離陸重量を有するVTOL機を利用可能にする。VTOL機10のそのような実施形態は、10度の上昇角度での240ktsの巡航速度において、垂直離陸から90秒未満で、約2,000フィートの高度、3海里未満の距離に達することができる。所望に応じて、VTOL機10はまた、短距離離着陸(STOL)または従来の離着陸を行ってもよい。本技術の実施形態は、7,000ポンドを超える最大STOL離陸重量を有し、第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42が第1の位置にある(前進飛行)状態で、700フィート未満の滑走路での離着陸を可能にする。第1の位置と第2の位置との間で第1の揚力/推力ファン40および第2の揚力/推力ファン42を上方に40度回転させる場合には、離陸のための滑走距離を約300フィートに短縮することができる。そのような実施形態において、VTOL機は、1,200海里のNBAA VFR航続距離および1,100海里のNBAA IFR航続距離(29,000フィートの高度での240KTASの巡航速度で算出される)を実現する。
【0030】
[0045]技術がある特定の構造、材料、および方法ステップに固有の言語で説明されているが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明が、説明する特定の構造、材料、および/またはステップに必ずしも限定されるものではないことが理解されるべきである。むしろ、特定の態様およびステップは、特許請求される本発明を実施する形態として説明されている。本発明の多くの実施形態を本発明の精神および範囲から逸脱することなく実施できるので、本発明は、以下に添付する特許請求の範囲に存在する。別段の指示がない限り、本明細書(特許請求の範囲以外)に使用されている全ての数または表現、例えば、寸法、物理的特性などを表すものなどは、全ての事例において、用語「約」により修飾されるものと理解される。最低限、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとする試みとしてではなく、「約」という用語により修飾される明細書または特許請求の範囲に列挙される各数値パラメータは、列挙される有効桁の数に照らしてかつ通常の丸め技術を適用することにより少なくとも解釈されるべきである。その上、本明細書に開示される全ての範囲は、任意および全ての部分的範囲、または部分的範囲に含まれる任意および全ての個々の値を列挙する特許請求の範囲を包含し、サポートするように理解されるべきである。例えば、1〜10と定められた範囲は、最小値1〜最大値10の間にありかつ/または最小値1と最大値10とを含む任意および全ての部分的範囲または個々の値、すなわち、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わる全ての部分的範囲(例えば、5.5〜10、2.34〜3.56など)または1〜10の任意の値(例えば、3、5.8、9.9994など)を列挙する特許請求の範囲を含み、サポートすると見なされるべきである。
図1
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【国際調査報告】