【実施例】
【0057】
実施例1: 方法開発の最適化
上述のように、ナノ粒子(相I)は、製剤のAPI含有部分である。該APIは、共可溶性であるとともに、該APIの可溶化もする膜模倣型の賦形剤の混合物中に溶解される。使用される賦形剤は、一般的に安全とみなされており(GRAS)、かつ眼科用途のために米国食品医薬品局(FDA)の承認が下りているべきである。相I中でのAPIの高い溶解度は、最終ナノ分散液中での該APIの高濃度を保証するであろう。少なくとも1種の疎水性成分及び少なくとも1種の親水性成分を含有する相Iは、上記液晶性分散液システムにおける分散相でもある。
【0058】
APIの溶解度は、種々の相Iの混合物において試験した。
【0059】
まず、プロピオン酸フルチカゾンの溶解度を、PHOSAL(商標)Medium Chain Triglycerides(「MCT」)とポリエチレングリコール−400(PEG−400)との7:3(重量/重量)混合物から構成される10gの相I中で求めた。MCT、つまりホスファチジルコリンと中鎖脂肪との混合物は、疎水性成分であり、かつPEG−400は、この例示される相Iにおいては親水性成分である。MCT及びPEG−400を、ガラスバイアル中に加え、その混合物を2分間にわたり該成分が均質な混合物を形成するまでボルテックスにかけた。プロピオン酸フルチカゾンを増分的に添加し、そしてScilogex MSH 280 Proホットプレートスターラーを使用して850rpmで37℃の温度で撹拌した。撹拌を、飽和溶解度に達するまで続けた。プロピオン酸フルチカゾンは、この相Iの混合物10g中で108.7mgの飽和溶解度を有していた。
【0060】
相I中でのプロピオン酸フルチカゾンの溶解度を高めるために、鉱油(Drakeol 600LT)を組成物中に加えた。MCT:PEG−400:鉱油を7:2:1の重量比で含有する相Iを上記のように調製した。相Iの全量は10gであった。プロピオン酸フルチカゾンを増分的に添加し、その混合物を5分間にわたり撹拌し、そして混合物中にプロピオン酸フルチカゾンをそれぞれ添加した後に5分間にわたりボルテックスにかけた。この相I中で、98.2mgのプロピオン酸フルチカゾンが37分間で完全に溶けた。
【0061】
PEG−400、ポリプロピレングリコール(PPG)及びクレモホールを重量比2.9:7:0.1で含有するもう一つの相Iの混合物も評価した。クレモホールは、難溶性薬剤の溶解度を高めるための補助溶剤として広く使用されているため使用された。この相I中でのプロピオン酸フルチカゾンの飽和溶解度は、45℃、20分間990rpmで撹拌した後に、10g中に103.7mgであった。
【0062】
プロピオン酸フルチカゾンの溶解度を、エタノール中の5%セチルアルコール中でも評価した。この相I中で、45℃で2分間にわたり1200rpmで撹拌したときに、200.30mgのプロピオン酸フルチカゾンが10g中に完全に溶けた。
【0063】
30%(重量/重量)のPEG−400、60%(重量/重量)のPPG、5%(重量/重量)のMCT、0.25%(重量/重量)のセチルアルコール及び4.75%(重量/重量)のエタノールを含有する、もう一つの相Iの混合物を製造した。10gのこの相I中で、45℃で15分間にわたり1280rpmで撹拌した後に、180mgのプロピオン酸フルチカゾンが完全に溶けた。
【0064】
異なるAPI、つまりトリアムシノロンアセトニドもこの相Iを用いて試験した。45℃で20分間にわたり1280rpmで撹拌した後に、220mgのトリアムシノロンアセトニドが10gの相I中に溶けることが判明した。トリアムシノロンアセトニドは、低い水溶性を有する非ステロイド系抗炎症薬である。
【0065】
相Iを更に変更したものを、APIの溶解度を更に高める目的で試験した。この目的を達成するために、追加の疎水性の成分を相I中に導入した。
【0066】
30%(重量/重量)のPEG−400、20%(重量/重量)のPPG、0.5%(重量/重量)のセチルアルコール、9.5%(重量/重量)のエタノール、5%(重量/重量)のMCT及び35%(重量/重量)のヒマシ油を含有する相Iを製造した。トリアムシノロンアセトニドを増分的に添加し、そしてその混合物を、45℃に合わせたScilogex MSH 280 Proを使用して840rpmで撹拌した。10gのこの相I中でのトリアムシノロンアセトニドの飽和溶解度は、230mgであった。
【0067】
相IIは水相であり、そこに相Iが注がれ、圧送され、又は注入された後に、混合される。相II、つまり親水性賦形剤のみを含有する水溶液は、pHを維持するとともに、最終製剤におけるpHに関連した不安定性からAPIを保護するバッファーを供給する。相IIの最適化は、相Iと混合して相IIIを形成することによって確認した。上述のように、相IIIは、高エネルギープロセスを使用して相I及び相IIを混合したときに形成されるエマルジョンについて使用される用語である。
【0068】
0.5%(重量/重量)のヒアルロン酸ナトリウム、0.63%(重量/重量)の塩化ナトリウム、0.3%(重量/重量)の二塩基性リン酸ナトリウム、0.04%(重量/重量)の一塩基性リン酸ナトリウム及び98.56%(重量/重量)の蒸留H
2O(dH
2O)を含むpH6.5±0.1の相IIを作った。
【0069】
30%(重量/重量)のPEG−400、20%(重量/重量)のPPG、0.5%(重量/重量)のセチルアルコール、9.5%(重量/重量)のエタノール、5%(重量/重量)のMCT及び35%(重量/重量)のヒマシ油を含有する1重量部の相Iを、9重量部の相II中に0.5g/分の流速で注入して、相IIIを形成した。混合プロセスは、Heilscher UP200S超音波プロセッサと組み合わせてsonotrode S3マイクロチップを使用し、該プロセッサを25%の振幅及び0.5サイクルに合わせて実施した。その相IIを、32℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。
【0070】
Horiba LA952粒子アナライザーによって測定されたこの相IIIの平均粒度は、26μmであると判明した。このプロセスによって製造されたエマルジョンは、粒度の点で均一ではなかった。粒度分布の分散は2157.60であった。
【0071】
相IIIの不均一性と大きな粒度を減らすことを試みるにあたり、ステアリン酸ポリエチレングリコール(ステアリン酸PEG)を相Iに添加した。ステアリン酸PEGは、マクロゴール類(ポリオキシエチレンポリマー類)と相応の遊離のグリコールとの混合物の二ステアリン酸エステルの混合物である。ステアリン酸PEGは、一般的に、医薬品化合物における乳化剤及び可溶化剤として使用される。さらに、より高い濃度の疎水性含分を達成するとともに、該製剤中の高濃度のエタノールを回避するために、より多量のMCTを使用し、そして上記のようにセチルアルコールを使用した。より低温でのセチルアルコールの凝集を回避するために、該疎水性成分を、67℃で250rpmにおいて混合した。28%(重量/重量)のPEG−400、10%(重量/重量)のPPG、10%(重量/重量)のセチルアルコール、10%(重量/重量)のPhosal MCT、2%(重量/重量)のステアリン酸PEG及び40%(重量/重量)のヒマシ油を含有する相Iを製造した。この相I(1重量部)を、5重量部の相II(0.5%(重量/重量)のヒアルロン酸ナトリウム、0.63%(重量/重量)の塩化ナトリウム、0.3%(重量/重量)の二塩基性リン酸ナトリウム、0.04%(重量/重量)の一塩基性リン酸ナトリウム、98.56%(重量/重量)のdH
2O)中に0.5g/分の流速で注入することで、相IIIを形成した。混合プロセスは、上記のようにして25%の振幅及び0.5サイクルに合わせた超音波プロセッサを用いて実施した。相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。該相IIIの平均粒度は、30μmであることが見出された。このプロセスによって製造されたエマルジョンは、粒度の均一性の点ではより良好であり、ここで、粒度分布の分散は653.4であったが、粒度は大きくなった。
【0072】
粒度を更に低下させるために、相Iと相IIとの間の比を、それらの組成を一定に保ったまま変更した。相IIIの形成のために、1重量部の相I及び15重量部の相II(両方とも先の段落に記載されている)を、30%の振幅及び1サイクルに合わせた超音波プロセッサを使用して混合した。相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。この変更したプロセスによって製造されたエマルジョンは、粒度の均一性の点ではより良好であり、ここで、粒度分布の分散は、6.35であり、かつ平均粒度は、3.6μmであった。この変更において、超音波プロセッサで合わせた振幅は、上記の25%とは異なって30%であった。高められた振幅が使用されたにもかかわらず、超音波処理後の最終相IIIの温度は、相Iと相IIとを1:5の比で有する相IIIのエマルジョンよりも低いことが見出された。
【0073】
このように、粒度に有利な影響を及ぼすための2つの要因、つまりより低い相IIIの温度と、より低い相I対相IIの比が見出された。
【0074】
相I対相IIの比の1:5から1:15への低下は、最終製剤中のAPIの濃度の希釈の効果を伴うこととなる。したがって、1:15の比ほど大きく薬剤濃度を下げない更なる相I/相IIの比を試験した。
【0075】
上述の相I及び相IIの組成は変えずに保った。相IIIを1:11の比の相I対相IIから形成した。ここでも、混合プロセスは、30%の振幅及び1サイクルに合わせた超音波プロセッサを用いて実施した。相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。こうして製造された相IIIの平均粒度は5.87μmであり、その際、粒度分布の分散は、86.30であった。相Iと相IIとの間の比は、エマルジョンにおける粒度に重要な役割を担った。薬剤の最適濃度を(過度に希釈することなく)もたらす比率は、効果的なドラッグデリバリーシステムを形成するにあたり最重要視されるものである。
【0076】
上述のように、相IIIの温度を低く保つことは、より小さい粒度を得るためには重要な要因であった。さらに、超音波処理の期間を長くすることがもう一つの要因であった。超音波処理の期間を長くすることは、相IIIの温度の増大をもたらすため問題である。この増大は、また粒度の増大の原因となる。温度上昇による粒度の増大を避けるために、相IIIの浴内超音波処理をプロセスに導入した。
【0077】
相I及び相IIの組成は変えずに保ち、相の比は1:11に保った。相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。超音波による混合プロセスを、上記のようにして、30%の振幅及び1サイクルを使用して実施することで、相IIIを形成した。こうして形成された相IIIを、15分間の浴内超音波処理にかけた。相IIIの平均粒度は5.48μmであり、ここで、粒度分布の分散は、8.23であった。相IIIの温度は、28℃であり、それは、該相IIIの温度が比較的一定に留まったことを示している。製剤開発における浴内超音波処理プロセスの付加は、粒度が同じに留まる一方で、上記分散が86.30から8.3へと低下し、それは均一性の向上を示すものであるため、有利な変更であった。液晶性ナノエマルジョンの場合には、該エマルジョンにおいて、大きな分散から明らかなより大きな粒子の存在は、該エマルジョンにおいて合一をもたらし、場合により相分離をもたらすことが確認された。したがって、その分散も安定性の指標である。
【0078】
さらに粒度を減らすことを試みるにあたり、様々な界面活性剤を試験した。アルキルアリールポリエーテルアルコール型の非イオン性液状ポリマーであるとともに、液化を助けるために使用される界面活性剤であるチロキサポールを、その臨界ミセル濃度(CMC)の0.018mMより高くなるまで相IIに添加した。
【0079】
相Iの組成は、変えずに保ち(28%(重量/重量)のPEG−400、10%(重量/重量)のPPG、10%(重量/重量)のセチルアルコール、10%(重量/重量)のPhosal MCT、2%(重量/重量)のステアリン酸PEG、40%(重量/重量)のヒマシ油)、そして相IIを、0.5%(重量/重量)のヒアルロン酸ナトリウム、0.63%(重量/重量)の塩化ナトリウム、0.3%(重量/重量)の二塩基性リン酸ナトリウム、0.04%(重量/重量)の一塩基性リン酸ナトリウム、4%の0.1mMのチロキサポール溶液及び98.56%(重量/重量)のdH
2Oを用いて作った。相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。相IIIは、相I対相IIの1:11の比から、まず上記のようにして30%の振幅及び1サイクルに合わせたプロセッサを用いて超音波処理で混合することによって形成した。該相IIIの混合物を、15分間の浴内超音波処理にかけた。こうして形成された相IIIの平均粒度は1.81μmであり、ここで、粒度分布の分散は、1.02であり、それはエマルジョンが均一な粒度を有することを示すものであった。相IIIの温度は、一貫して29℃であり、それは、その温度がほぼ変わらず留まったことを示している。製剤開発におけるチロキサポールの添加は、粒度が600%だけ低下するとともに、上記分散が8.3から1.02へと低下し、それは安定なエマルジョンを示すものであるため、有利な変更であった。
【0080】
試験されたもう一つの界面活性剤は、ポリソルベート80であった。ポリソルベート80は、そのCMC未満で使用した。相Iの組成は、変えずに保ち、その一方で、相IIは、0.5%(重量/重量)のヒアルロン酸ナトリウム、0.63%(重量/重量)の塩化ナトリウム、0.3%(重量/重量)の二塩基性リン酸ナトリウム、0.04%(重量/重量)の一塩基性リン酸ナトリウム、0.00015%(重量/重量)のポリソルベート80及び98.56%(重量/重量)のdH
2Oを用いて作った。相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器内に入れた。相I対相IIの比は、1:11に保った。混合プロセスは、先の段落に記載されるようにして実施した。相IIIの形成の後に、該相IIIを、15分間の浴内超音波処理にかけた。相IIIの平均粒度は53.75μmであり、ここで、粒度分布の分散は、6.05であり、それは、CMC未満でのTweenの添加が粒径を低下させないことを示すものであった。
【0081】
粒度に対するCMC未満のチロキサポールの効果を評価するために、同様の研究を行った。チロキサポールの存在は、ポリソルベート80をそのCMC未満で用いて製造された相IIIのエマルジョンと比較して粒度を低下させた。さらに、この相IIIは、粒度の点で良好な均一性を示し、それは、安定な製剤であることを示している。
【0082】
温度とチロキサポールとの相乗効果を評価するために実験を行った。これらの実験は、相IIのジャケット付き容器を15℃に合わせることによって実現される、より低い温度で実施した。得られた相IIIの超音波処理後の温度は、22℃であった。より低い相IIIの温度が達成されたが、粒度は7.14μmであり、136.18の分散を有し、両方の値はより高い温度で得られるものよりも大きかった。粒度の増大は、より低い温度で相IIの粘度を高めるヒアルロン酸ナトリウムの存在によるものであった。このように、安定化剤の存在は、プロセスの温度によって覆い隠され、そしてプロセスの温度が、エマルジョンのためのより重要な要因であることが分かった。
【0083】
超音波処理強度の粒度に対する効果を評価するために、別の一連の研究を行った。混合プロセスが上記のように40%の振幅(上記の30%とは異なる)及びサイクル1に合わされた超音波プロセッサを使用して実施した場合に、平均粒度は、2.41μmに低下し、1.58の分散を有することが確認された。より高い超音波処理は、より小さい粒度をもたらすことは明らかであった。さらに、一連の実験から、超音波処理強度は、粒度を求める際の相IIIの混合段階の温度よりも重要な役割を担うことが確認された。
【0084】
より高い超音波の振幅は一つの有利な要因であることが見出されたので、その超音波の強度は、サイクル1で60%の振幅にまで高めた。相の比は、1:11ではなく1:10(相I対相II)に低下させ、そして相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器中に入れた。相IIIの形成の後に、該相IIIを、15分間の浴内超音波処理にかけた。平均粒度は、1.09μmであることが判明し、そして該エマルジョンは、わずか0.2116の分散で極めて均一であった。
【0085】
ヒアルロン酸ナトリウム、すなわち様々な結合組織、上皮組織及び神経組織において見出されるグリコサミノグリカンであるヒアルロン酸のナトリウム塩の効果を更に評価するために一連の実験を実施した。ヒアルロン酸ナトリウム、つまりグルクロン酸ナトリウム−N−アセチルグルコサミンの繰り返し二糖単位を含む長鎖ポリマーは、角膜内皮に天然に存在する。ヒアルロン酸ナトリウムは、2つの理由のために相II中に導入した:(a)ヒアルロン酸ナトリウムが組織潤滑剤として機能し、創傷治癒を促進することと、及び(b)ヒアルロン酸ナトリウムが製剤の粘度を高め、それによりデリバリーシステムと標的器官との間の接触時間を延ばすこと。相Iの組成は、変えずに保った(28%(重量/重量)のPEG−400、10%(重量/重量)のPPG、10%(重量/重量)のセチルアルコール、0%(重量/重量)のMCT、2%(重量/重量)のステアリン酸PEG、40%(重量/重量)のヒマシ油)。様々な濃度のヒアルロン酸ナトリウムを相IIに添加した(0.63%(重量/重量)の塩化ナトリウム、0.3%(重量/重量)の二塩基性リン酸ナトリウム及び0.04%(重量/重量)の一塩基性リン酸ナトリウム、dH
2O)。結果を以下の表1に示す。0.4%(重量/重量)のヒアルロン酸ナトリウムの相IIへの添加は、より低い粒度(1μm未満の粒子が50%、すなわちD50<1μm)を有するエマルジョンをもたらすが、一方で、他の濃度のヒアルロン酸ナトリウムは1μmより高い粒度をもたらすことが確認された。
【0086】
【表1】
【0087】
該エマルジョン中の粒度を更に低下させるために、高剪断混合をプロセスに導入した。高剪断スクリーンを備えたSilverson L5MAミキサーを、相I及び相IIの混合のために使用した。
【0088】
具体例において、相Iの組成は、27%(重量/重量)のPEG−400、10%(重量/重量)のPPG、10%(重量/重量)のセチルアルコール、10%(重量/重量)のMCT、2%(重量/重量)のステアリン酸PEG、40%(重量/重量)のヒマシ油及び1%(重量/重量)のデキサメタゾンであった。相Iの製造方法は、デキサメタゾンの導入のために上記のものから変更した。疎水性成分を秤量し、そして50℃〜55℃で混合することで、均質な混合物を形成した。親水性成分を次いで添加し、その混合物を均質になるまで連続的に撹拌した。最後に、デキサメタゾンを添加し、そして50℃〜55℃で、薬剤が完全に溶けて、澄明な溶液が得られるまで混ぜ続けた。
【0089】
相IIは、0.4%(重量/重量)のヒアルロン酸ナトリウム、0.63%(重量/重量)の塩化ナトリウム、0.3%(重量/重量)の二塩基性リン酸ナトリウム、0.04%(重量/重量)の一塩基性リン酸ナトリウム、0.28%(重量/重量)のステアリン酸PEG、0.14%(重量/重量)のポリソルベート80及び98.21%(重量/重量)のdH
2Oを含有していた。
【0090】
1/10の相I/相IIの比を有する550gの相IIIを形成するために、500gの相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器中に注いだ。39℃の相I(50g)を相II中に0.5g/分(±0.1)で、10000rpmで高剪断スクリーンを用いて15分間にわたり混合しながら注入した。該ミキサーを、次の60分間については6000rpmに下げた。こうして形成された相IIIの平均粒度は、0.85μm(±0.44)であり、0.196の分散を有した。
【0091】
製剤を更に改善するために、先の段落で記載した相I及び相IIの組成を、相I中のステアリン酸PEGの濃度を3%に高めて、相IIからはステアリン酸PEGを省くことによって変更した。さらに、チロキサポールを相IIへと0.3%(重量/重量)で添加した。
【0092】
1/10の相I/相IIの比を有する100gの相IIIを製造するために、90gの相IIを混合工程の前に冷却し、プロセスの全体温度を下げ、その後に、相IIを15℃に合わせたジャケット付き容器中に注いだ。50℃の相I(10g)を相II中に0.5g/分(±0.1)で、乳化用スクリーンが取り付けられたSilverson L5MAによって6000rpmで60分間にわたり、そして10000rpmで次に15分間にわたり30℃で混合しながら注入した。相IIIの平均粒度は、4.58μm(±9.58)であり、91.58の大きな分散を有した。非常に大きな粒子が存在するので、そのミキサーのヘッドを乳化用スクリーンから正方形の穴が空いた高剪断スクリーンへと交換した。それというのも、後者の方がより高い剪断をもたらすからである。該エマルジョンを更に追加して5分間にわたり混合した。高剪断スクリーンを用いた混合は、粒子の平均サイズを0.68μm(±0.38)にまで低下させた。
【0093】
該製剤のモル浸透圧濃度は、製剤開発における一つの重要な要因である。測定すると、先の段落で記載した製剤のモル浸透圧濃度は、360mOsm/kgであることが分かった。該製剤のモル浸透圧濃度を下げるために、PEG−400の量を20%(重量/重量)にまで減らし、そしてステアリン酸PEGの量を7%(重量/重量)にまで高めた。さらに、ヒアルロン酸ナトリウムは、相IIの粘度を高めることで混合の間のより大きな粒度の原因となるため除去した。
【0094】
1/10の相I/相IIの比を有する100gの量の相IIIは、500gの相IIを、25℃に合わせたジャケット付き容器中で50gの相Iと一緒に50℃〜55℃で混合することによって形成した。該相Iを、相II中に1.0g/分(±0.1)で、高剪断スクリーンを用いて、25℃、700rpmで15分間にわたり、19℃、6000rpmで60分にわたり、引き続き30℃、10000rpmで10分間にわたり混合しながら注入した。相IIIの平均粒度は、0.141μm(±13.38)であり、184.14の大きな分散を有した。
【0095】
相Iの相II中への流速は、相IIIの製剤の粒度に影響する一つの重要な要因である。これは、高剪断混合を使用した製剤開発プロセスにおいてはより明らかであった。相IIIのエマルジョンの粒度に対する相Iの流速の効果を評価するために一連の実験を行った。分散は、平均、モード又はメジアン径の代わりに安定性の尺度とみなされるものであった。それというのも、分散は、エマルジョンの全体の均一性の指標であるからである。例えば、該エマルジョンが0.1μmの平均粒度及び2.0μmの分散を有する場合に、該エマルジョンが、望むよりも大きい粒子の小さい集団を有するとともに、それらの存在が合一及び相分離を場合によりもたらし得るということを示している。結果を以下の表2に示す。高められた流速がより高い分散、すなわち低い安定性をもたらすことが明らかである。
【0096】
【表2】
【0097】
様々な混合プロセスで調製された製剤の間に粒度の点でかなり大きな差が存在した。上記のように、3つの異なる混合プロトコルを、該製剤の開発において使用した。高剪断混合による相Iと相IIとの混合は、200nm未満の粒子の、一貫して80%より高いパーセンテージをもたらした。超音波処理単独による相Iと相IIとの混合は、200nm以下の粒子を0.8%未満有する製剤を生成し、その一方で、超音波処理と混合との組合せは、200nm未満のサイズの粒子を12%〜50%有する製剤をもたらした。
【0098】
様々なAPIを、このドラッグデリバリーのプラットフォームの実現性を試験するために使用した。該プラットフォームが、多くの難水溶性の非ステロイド系抗炎症薬を使用してナノ分散液を製造するのに効果的であることが判明した。例示される薬剤は以下の通りであり、対応するD50値及びD90値と一緒に表す:デキサメタゾン(D50=0.139μm;D90=0.170μm)、トリアムシノロンアセトニド(D50=0.134μm;D90=0.197μm)、及びプロピオン酸フルチカゾン(D50=0.141μm;D90=0.181μm)。
【0099】
実施例2:分析法
分散液の20μLの小滴の画像化は、該小滴を顕微鏡のスライドに置いて、それをエマルジョンの完全性を維持することに注意してカバーガラスで覆うことによって実施した。該分散液は、交差偏光板のもと、Olympus BX51P偏光顕微鏡の100倍対物レンズを油滴で覆って使用して試験した。薬剤含有の分散液及び薬剤不含の分散液の両方を実験した。
【0100】
粒度測定は、約20μLの相IIIの分散液を、2%(重量/重量)のグリセリン、0.1%(重量/重量)のピロリン酸ナトリウム十水和物の溶液中に添加することによって実施した。相IIIのナノ分散液の粒度分布は、Horiba LA−950V2粒度アナライザーを使用して室温で、すなわち22℃〜25℃で測定した。
【0101】
封入効率(mg/G)は、1.0gの薬剤含有相IIIを1.5mLの遠心分離チューブ中に入れ、そしてEppendorf Centrifuge 5145Dを使用して室温、6000rpmで10分間にわたり遠心分離チューブを遠心分離することによって測定した。100μLの遠心分離物を、900μLの75%アセトニトリル/25%水が入ったHPLCバイアルに移した。該試料を、薬剤、例えばデキサメタゾンの濃度について、λ
max=239nmでのHPLCによって測定した。該濃度は、相IIIの分散液1g当たりの薬剤のmg数として計算された。
【0102】
in−vitro薬剤放出は37℃でpH7.4において以下のようにして求めた:相IIIの分散液(1g)をSpectra/Pore Float−A−Lyzer G2透析装置中に移し、次いでそれを、リン酸塩バッファー(pH7.4、37℃)中の1%のヒドロキシルプロピル−β−シクロデキストリン(HP−β−CD)40gが入った50mLのロック式遠心分離チューブ中に入れた。全集成物をRobbins Scientificのモデル400の回転式インキュベーターに入れた。それぞれの時点で、1mLの試料を回収し、新たなバッファーを添加して、取り出した容量を置き換えた。試料を、薬剤含量について、HPLCを使用してλ
max=239nmで測定した。
【0103】
ex−vivo角膜透過性試験は、それらの眼の組織を透過する能力について製剤をスクリーニングするために有用なツールである。摘出したばかりの角膜を使用して、製剤をそれらの角膜を通じて拡散する能力について試験することができる。生物学的膜を通じて拡散する能力は、製剤の賦形剤、その物理的状態(例えば懸濁液、溶液、エマルジョン、分散液)並びにその分配係数(P)及びlogPに直接関連している。
【0104】
新鮮な仔ウシの眼を近くの屠殺場から入手し、滅菌法を使用してその角膜を慎重に摘出した。該角膜は、摘出したばかりでなければならず、かつ1時間〜2時間以内で使用せねばならない。該角膜を、滅菌された層流フードにおいて、クラス100の環境で摘出した。該摘出は、房水をまず排出し、引き続き角膜を最初の切り込みのために外科用メスを使用して慎重に切り出すことにより実施した。鉗子とはさみを用いて残りの組織を切断した。摘出された角膜を、0.1重量%のグルタチオン、0.051重量%のリン酸二ナトリウム及び99.45重量%のH
2Oを含有するpH7.0の少量の水和液を含むペトリ皿中で貯蔵した。
【0105】
レセプター液中のAPIの溶解度は、角膜透過性実験において非常に重要である。レセプター液中の薬剤の飽和溶解度は、レセプター液中の薬剤の総理論濃度よりもかなり大きいものでなければならない。典型的なレセプター液の組成は、1重量%のHP−β−CD、0.051重量%のリン酸二ナトリウム、0.017重量%の一塩基性リン酸ナトリウム、及び98.55重量%のH
2Oである。
【0106】
角膜の透過性の研究は、フランツセル拡散チャンバーシステムを使用して実施した。該フランツセルシステムは、個々の磁気撹拌プレートを備えた単独のユニットに取り付けられた6つの直列のジャケット付きセルからなり、それぞれのセルはメインシステムのウォータージャケットに接続されている。該ジャケットは、実験の間にわたり再循環加熱浴を使用して37℃で維持した。それぞれのセルは、既知の容量の製剤がピペットで加えられる頂部のドナーセルと、下方に試料採取用側枝を有するレセプターセルとからなる。ドナーセルとレセプターセルとの間のジョイント部は、角膜の形状を模した上向きの凸状である。それぞれのレセプターセルには、5mLのレセプター液が入れられ、そしてそれぞれのドナーセルには、研究される200μLの製剤が入れられる。
【0107】
レセプター液を、それぞれのレセプターセルへと針を備えた注射器を使用して添加した。該レセプター液は、ドナーセルのジョイント部に凸状のメニスカスができるまでゆっくりと添加した。該容量を記録し、セルの残りを満たした。
【0108】
角膜を秤量した後に、レセプターセルとドナーセルとのジョイント部の上部に一対の鉗子を使用して、角膜内に折り目ができず、かつ気泡がないようにすることに気をつけて角膜を置いた。置いた時点で、ドナーセルのキャップを慎重に取り付け、適所に金属のクリップで固定した。
【0109】
試料を、立て続けに200μLの上記製剤をそれぞれのドナーチャンバ中へと、較正されたピペットを使用して堆積させることによって添加し、回数を記録した。そのドナーチャンバ及び試料採取用側枝を、著しい蒸発が発生しないように封止した。
【0110】
試料を、レセプターセルから2時間、4時間、6時間、7時間及び22時間に抜き出した。試料を、API含量についてHPLCによって上記のようにして分析した。
【0111】
透過流束(J)は、単位時間当たりに膜を通過する薬剤の量である。透過流束は、質量/面積/時間の単位で示される。透過流束は、式:J=Q/(A・t)によって計算することができ、その式中、Qは、時間tにおいて膜を横切る化合物の量であり、かつAは、露出した膜の面積(cm
2)である。透過流束の単位は、重量(マイクログラム)/cm
2/分である。
【0112】
実施例3: 0.1%のプロピオン酸フルチカゾンを含有するナノ構造化された分散液の調製
相Iの調製
30gの量の相Iを、3gのPHOSAL(商標)Mixed Chain Triglycerides(「MCT」)、3gのセチルアルコール及び11gのヒマシ油を予め風袋引きされた(pre-tared)ガラスビーカー中に加えることによって調製した。その混合物を連続的に撹拌しながらホットプレート上で55℃に加熱して、均質な混合物を形成した。この混合物に、6gのポリエチレングリコール−400、3gのポリプロピレングリコール、2.1gのステアリン酸PEG−40、0.666gのポロキサマー407、0.3gのチロキサポール及び0.3gのTween 80を添加し、引き続き55℃で撹拌した。均質な混合物に至ったことが確認された後に、撹拌プレートの加熱素子のスイッチを切った。プロピオン酸フルチカゾン(0.24g)を該混合物へと、該混合物が40℃〜45℃に冷えた時点で添加した。該混合物を、プロピオン酸フルチカゾンが完全に溶けて粒状物が視認されない均質な澄明な溶液となるまで撹拌し、それにより相Iが形成された。
【0113】
相IIの調製
300gの量の相IIを、0.051gの一塩基性リン酸ナトリウム、0.156gの二塩基性リン酸ナトリウム及び299.796gの蒸留H
2O(dH
2O)から、それらを風袋引きされたガラスビーカー中に加えて調製した。この混合物を、ナトリウム塩が完全に溶けるまで撹拌し、それにより相IIが形成された。相IIのpHは、7.3であった。
【0114】
相IIIの調製
相IIIは、相I及び相IIが高エネルギープロセスを使用して混合されたときに形成される分散液に使用される用語である。この実施例では、最終分散液を得るために高剪断混合を使用した。
【0115】
100gの相IIIを得るために、10gの相Iを、90gの相II中に1g/分の流速で注入し、そして混合物を、Silverson L5MA高剪断研究室用ミキサーを使用して連続的に混合した。注入の間に、相Iを40℃〜45℃に維持し、そして相IIは8℃に冷却した。より具体的には、相IIを、−10℃に合わせた冷却器に接続されたジャケット付き容器中に注いだ。
【0116】
最終分散液、すなわち相IIIを得るために、2つの混合速度を使用した。7500RPMの高速は、相Iを相II中に注入するときに使用した。相Iを完全に添加した時点で、その混合速度を、残りの混合時間の間で5040RPMへと低下させた。その混合は、全体で150分間にわたって実施した。この実施例では、高い混合速度を最初の10分間で使用し、次により低い速度を使用した。プロピオン酸フルチカゾンの最終濃度は、相IIIの0.1重量%であった。
【0117】
上記分散液中の粒度の統計学的なモードは、120nmであった。該分散液の中央は122nmであり、そして全粒子の85%が300nmよりも小さかった。その分散液は乳白色に見え、均質であり、かつ室温での貯蔵に際して安定であった。
【0118】
偏光光学顕微鏡による試験をした場合に、上記分散液は、液晶状態に似た独特のナノ構造を示した。分散相は半固体であり、相IIの相I中へのインターカレーションによってそのような状態になった。該分散液のナノサイズは、該分散液を組織中への透過に適したものにする。
【0119】
実施例4: デキサメタゾンを含有するナノ構造化された分散液の調製
相Iの調製
30gの量の相Iを、3gのMCT、3gのセチルアルコール及び12gのヒマシ油をガラスビーカー中で混合することによって調製した。この混合物を連続的に撹拌しながらホットプレート上で55℃に加熱することで、均質な混合物を形成した。この混合物に、6gのポリエチレングリコール−400、3gのポリプロピレングリコール、2.1gのステアリン酸PEG−40、及び0.6gのポロキサマー407を添加し、引き続き55℃で撹拌し続けた。均質な混合物が形成された後に、撹拌プレートの加熱素子のスイッチを切った。デキサメタゾン(0.3g)をその混合物へと、該混合物が40℃〜45℃に冷えた時点で添加した。その混合物を、デキサメタゾンが完全に溶けるまで撹拌した。
【0120】
相IIの調製
300gの量の相IIを、0.051gの一塩基性リン酸ナトリウム、0.156gの二塩基性リン酸ナトリウム及び299.796gのdH
2Oをガラスビーカー中で混合することによって調製した。この混合物を、ナトリウム塩が完全に溶けるまで撹拌した。相IIのpHは、7.3であった。
【0121】
相IIIの調製
相IIIは、以下の通りに形成した:90gの相IIを、−10℃に合わせた冷却器に接続されたジャケット付き容器中に注ぐことによって8℃に冷却した。40℃〜45℃に維持した10gの量の相Iを、相II中に1g/分の流速でSilverson L5MA高剪断ミキサーを使用して連続的に混合しながら注入した。
【0122】
上記の実施例3と同様に、最終分散液、すなわち相IIIを得るために、2つの混合速度を使用した。まず、10000RPMの高速、すなわち一次混合を、相Iを相II中に注入する間に使用した。全ての相Iを導入した後に、5040RPMのより低い速度で混合を、すなわち二次混合を、残りの混合時間にわたって実施した。混合は、合計150分にわたり実施され、その際、高い混合速度は最初の10分間にわたり使用され、引き続いてより低い速度を使用した。デキサメタゾンの最終濃度は、相IIIの0.1重量%であった。
【0123】
上記分散液の分析は、粒度分布の中央値(d50)が143nmであり、モードが141nmであり、かつ分散されたナノ構造化された粒子の90%が245nm未満であることを明らかにした。そのナノ構造化された分散液は、室温で経時的に安定であった。顕微鏡で調査した場合に、該分散液は、秩序的であるが液体様の状態を示す秩序的な微細構造を示した。
【0124】
追加の分析は、デキサメタゾンが0.845mg/Gでカプセル化されたことを明らかにした。in−vitro薬剤放出アッセイは、デキサメタゾンの少なくとも25%が3時間にわたって放出されることを示しており、こうしてバイオアベイラビリティの高い製剤であることを示している。
【0125】
0.1%デキサメタゾンのナノ構造化された製剤の角膜透過性は、上記のようにして試験した。角膜に適用された約35%のデキサメタゾンは、22時間の時間にわたりレセプター液中に放出され、それは該製剤のバイオアベイラビリティが高いことを示している。反対に、同じアッセイで試験されたデキサメタゾンの懸濁液は、22時間で5%未満のかなり低い角膜透過性を示した。さらに、拡散研究を終えた後に、該角膜をアセトニトリル中で抽出し、そしてデキサメタゾン含量について分析した。該製剤で処置された角膜において実質的なデポー様効果が確認され、それは、この製剤で持続放出効果を達成することができることを示している。より具体的には、角膜から抽出されたデキサメタゾンの量は、角膜上に最初に加えられた合計の平均で35%であった。
【0126】
実施例5: エタボン酸ロテプレドノールを含有するナノ構造化された分散液の調製
相Iの調製
30gの量の相Iを、エタボン酸ロテプレドノール(0.3g)をデキサメタゾンの代わりに添加したことを除き、実施例4で先に記載されるようにして調製した。
【0127】
相IIの調製
300gの量の相IIもまた、上記の実施例4に記載されるようにして調製した。
【0128】
相IIIの調製
相IIIは、実施例4で先に記載したように、相I対相IIの1:9の比(重量/重量)で形成された。エタボン酸ロテプレドノールの最終濃度は、相IIIの0.1重量%であった。
【0129】
上記分散液の分析は、粒度分布の中央値(d50)が159nmであり、モードが160nmであり、かつ分散されたナノ構造の90%が303nm未満であることを明らかにした。そのナノ構造化された分散液は、室温で、沈降又は分解が観察されることなく、少なくとも60日間にわたり安定であった。顕微鏡で調査した場合に、該分散液は、秩序的であるが液体様の状態を示す秩序的な微細構造を示した。
【0130】
追加の分析は、カプセル化されたエタボン酸ロテプレドノールの量が1.24mg/Gであることを示した。該薬剤は、3時間で35%のin vitro放出を有した。驚くべきことに、エタボン酸ロテプレドノールの角膜透過性は、この薬剤の市販の製剤、すなわちLotemax(商標)ゲルに関しての8%とは異なり、22時間で36%であった。
【0131】
実施例6: 高剪断混合及びマイクロ流動化による薬剤不含のナノ構造化された分散液の調製
相Iの調製
70gの量の相Iを、7.01gのMCT、7.01gのセチルアルコール及び28gのヒマシ油をガラスビーカー中で混合することによって調製した。この混合物を連続的に撹拌しながらホットプレート上で55℃に加熱して、均質な混合物を形成した。この混合物に、7.07gのポリエチレングリコール−400、7.07gのポリプロピレングリコール、及び4.97gのステアリン酸PEG−40を添加し、引き続き55℃で撹拌し続けた。均質な混合物が形成された後に、撹拌プレートの加熱素子のスイッチを切った。
【0132】
相IIの調製
700gの量の相IIを、0.21gのチロキサポール、0.11gのTween 80、1.441gのクエン酸一水和物、6.9688gのクエン酸ナトリウム二水和物、0.140gのポロキサマー407及び691.68gのdH
2Oをガラスビーカー中に添加して混合することによって調製した。この混合物を、塩が完全に溶けるまで撹拌した。相IIのpHは、6.0であった。
【0133】
相IIIの調製
合計600gの相IIIは、以下の通りに形成した:540gの相IIを、50℃に合わせた冷却器に接続されたジャケット付き容器中で50℃〜55℃で維持した。50℃〜55℃に維持した60gの量の相Iを、相II中に注ぎ、そして7500RPMに合わせたSilverson L5MA高剪断ミキサーを使用して15分間にわたり混合した。得られた分散液を、28psiの圧力でマイクロ流動化装置(microfluidizer)に4回通過させた。
【0134】
上記分散液の分析は、粒度分布の中央値(d50)が176nmであり、モードが207nmであり、かつ分散されたナノ構造の90%が358nm未満であることを明らかにした。そのナノ構造化された分散液は、室温で経時的に安定であり、かつ顕微鏡で調査した場合に、該分散液は、秩序的であるが液体様の状態を示す秩序的な微細構造を示した。マイクロ流動化工程により、単峰性の分散液が得られた。
【0135】
実施例7: 高剪断混合及び超音波処理による薬剤不含のナノ構造化された分散液の調製
相Iの調製
70gの量の相Iを、実施例6で上記したようにして調製した。
【0136】
相IIの調製
70gの量の相IIもまた、実施例6で上記したようにして調製した。
【0137】
相IIIの調製
合計600gの相IIIは、以下の通りに形成した:540gの相IIを、冷却器に接続されたジャケット付き容器中で40℃〜45℃で維持した。40℃〜45℃に維持した60gの量の相Iを、相II中に注ぎ、そして7500RPMに合わせたSilverson L5MA高剪断ミキサーを使用して15分間にわたり混合した。得られた分散液を、sonotrode S3マイクロチップを使用して50%の振幅に合わせたHeilscher UP200S超音波プロセッサで超音波処理にかけた。該分散液を3回超音波処理し、そして超音波処理の効果を確認するために毎回アリコートを採取した。
【0138】
上記分散液の分析は、粒度分布の中央値(d50)が167nmであり、モードが140nmであり、かつ分散されたナノ構造の75%が316nm未満であることを明らかにした。さらに、該ナノ構造化された分散液は、室温で経時的に安定であり、そして顕微鏡で調査した場合に秩序的な微細構造を示した。
【0139】
実施例8: ナノ構造化された分散液中でのプロピオン酸フルチカゾンの溶解度
PEG−400を20%で、PPGを10%で、セチルアルコールを10%で、MCTを1%で、ステアリン酸PEGを7%で、ポロキサマー407を2.22%で、チロキサポールを1%で、ポリソルベート80を1%で、ヒマシ油を38%で、そしてプロピオン酸フルチカゾンを1%〜2%で含有する相Iを調製した。
【0140】
相IIの組成は、一塩基性リン酸ナトリウム(0.017%)、二塩基性リン酸ナトリウム(0.052%)、ヒアルロン酸ナトリウム(0.15%)及びdH
2O(99.78%)であった。
【0141】
相Iと相IIとを重量比1:9で混合した。
【0142】
この製剤で達成可能なプロピオン酸フルチカゾンの濃度は、0.1%〜0.2%であった。特に、プロピオン酸フルチカゾンをそれぞれの賦形剤中に別々に溶かして、それぞれの賦形剤により与えられる溶解を足しても、予想されるプロピオン酸フルチカゾンの最高濃度はわずか0.05%である。けれども、該製剤は、驚くべきことに、プロピオン酸フルチカゾンを0.1重量%〜0.2重量%で溶解した。
【0143】
また、セチルアルコールとMCTとが組み合わされて存在することで、MCT中のプロピオン酸フルチカゾンの溶解度が僅か(0.150mg/ml)であるとしても、高められた可溶化が提供されることも確かめられた。セチルアルコール中のプロピオン酸フルチカゾンの溶解度は、0.3mg/mlであった。このように、最終分散液は、1mg/ml〜2mg/ml(0.1%〜0.2%)のプロピオン酸フルチカゾン濃度を有する。
【0144】
理論により縛れるものではないが、おそらく、上記薬剤の高められた溶解度は、複数の相が協同的に自己組織化することで、インターカレートされた秩序的な相が形成することによるものと考えられる。
【0145】
実施例9: 相Iの疎水性の効果
この実施例において、より高濃度の疎水性賦形剤を得るためにコレステロールを添加した。相Iの組成は、PEG−400(20%)、PPG(10%)、セチルアルコール(10%)、コレステロール(2%)、MCT(10%)、ステアリン酸PEG(5%)、ポロキサマー407(2.22%)、チロキサポール(1%)、ポリソルベート80(1%)、ヒマシ油(36.9%)、及びプロピオン酸フルチカゾン(1%〜5%)であった。
【0146】
相IIの組成は、一塩基性リン酸ナトリウム(0.017%)、二塩基性リン酸ナトリウム(0.052%)、ヒアルロン酸ナトリウム(0.15%)及びdH
2O(99.78%)であった。
【0147】
相Iと相IIとを重量比1:9で混合した。
【0148】
この製剤で達成可能なプロピオン酸フルチカゾンの最終濃度は、0.1%〜0.5%であった。それぞれの別個の賦形剤中に溶解される量を加えることによって、可溶化されると予測されるプロピオン酸フルチカゾンの最大量は、0.06%である。
【0149】
この実施例9においてもまた、相Iのそれぞれの個々の成分によって理論的に可能な薬剤の可溶化よりも高い濃度の疎水性薬剤が上記ナノ分散液で達成された。
【0150】
実施例10: ナノ分散液からのin vitro薬剤放出
ナノ分散液は、デキサメタゾンをプロピオン酸フルチカゾンの代わりに導入したことを除き、実施例8で上記の相I及び相IIを使用して製造した。相Iと相IIとを、両方の相ともに40℃〜45℃の温度でSilverson高剪断ホモジナイザーを用いて混合し、引き続きマイクロ流動化装置を用いて高圧均質化を行った。その混合物を、室温で1回〜5回にわたり該流動化装置に通した。次いで、得られた混合物を、−10℃でSilverson高剪断ホモジナイザーを用いて一晩(18時間〜22時間)混合した。混合後に、その分散液を2℃〜5℃の間で22時間〜24時間にわたり貯蔵した。
【0151】
マイクロ分散液を、同じ成分から、オーバーヘッド型Scilogix撹拌パドルミキサーを用いて1800RPMで2時間〜3時間にわたり相I及び相IIを混合することによって形成させた。それぞれの相の温度は、40℃〜45℃であった。そのマイクロ分散液は、2℃〜5℃で22時間〜24時間にわたりインキュベートしなかった。
【0152】
粒度測定は、ナノ分散液のD50が100nm〜250nmの間であり、その一方で、マイクロ分散液のD50が60μm〜90μmの間であることを明らかにした。
【0153】
ナノ分散液及びマイクロ分散液からのデキサメタゾンのin−vitroでの累積放出速度を、リン酸緩衝生理食塩水(37℃でpH7.4)中で求めた。それらの結果は、マイクロ分散液中に最初に加えられたデキサメタゾンの100%が40時間後に放出されることを示した。それに対して、ナノ分散液中に最初に加えられたデキサメタゾンの約55%だけが同じ時間にわたり放出されるにすぎなかった。デキサメタゾンの初期量の50%の累積放出は、ナノ分散液の場合の24時間に比べてマイクロ分散液の場合には10時間で測定された。
【0154】
マイクロ分散液のより大きな粒子は、薬剤放出のためにより大きい拡散経路長を有する。マイクロ分散液からの放出は、ナノ分散液からよりも遅いであろうと予測されるものであった。したがって、この結果は予想外であった。
【0155】
ここでも、理論により縛られるものではないが、ナノ分散液のインターカレートされた秩序的なナノ構造は、放出されるべき薬剤分子のための曲がりくねった拡散経路を作り出すと考えられる。
【0156】
実施例11: 角膜透過性によって測定されるバイオアベイラビリティ
改善されたバイオアベイラビリティに導くパラメーターを突きとめるために、プロピオン酸フルチカゾン(0.1%)の4種の異なる製剤を調製した。製剤Iは、MCT、セチルアルコール及びヒアルロン酸ナトリウムを除いて実施例8で先に列挙された賦形剤の全てを含んでいた。製剤IIは、製剤Iと同じであるが、ヒアルロン酸ナトリウムも含んでいた。製剤IIIは、実施例8に記載されるものと同一であった。製剤IVは、実施例9に記載されるものと同一であった。
【0157】
4種の製剤は、実施例8に記載されるのと同じ混合プロトコルに従って調製した。それら4種の製剤を、実施例2で先に記載したように角膜透過性について試験した。
【0158】
それらの結果は、製剤I中のプロピオン酸フルチカゾンの2.39%だけが、該製剤を角膜に適用した後に7時間〜22時間にわたり角膜を通して透過するにすぎないことを示した。同様に、製剤II中のプロピオン酸フルチカゾンの2.3%だけが、7時間〜22時間で角膜を通じて拡散したに過ぎなかった。
【0159】
それに対して、製剤III及び製剤IVからは17%及び20%のプロピオン酸フルチカゾンが、それぞれ7時間〜22時間で角膜を通じて拡散した。明らかに、これらの2種の製剤は、製剤I及びII、つまり両方ともMCTとセチルアルコールとを欠いている製剤と比較してより高いバイオアベイラビリティを示した。
【0160】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴の全てを任意の組合せで組み合わせてよい。本明細書に開示されるそれぞれの特徴は、同じ目的、同等の目的又は類似の目的にかなう代替的な特徴によって置き換えることができる。このように、表現上特に記載が無い限り、開示されるそれぞれの特徴は、一連の包括的な同等の特徴又は類似の特徴の一例に過ぎない。
【0161】
上記詳細な説明から、当業者は、本開示の必須の特性を容易に突きとめることができ、そしてその趣旨及び範囲から逸脱しなければ、それを様々な使用及び状況に適合させるために、本開示の様々な変化及び変更を行うことが可能である。このように、他の実施形態も特許請求の範囲内である。