特表2017-514892(P2017-514892A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-514892カスケード触媒作用を使用することによるアルコール及びアルデヒドからのアミン及びアミドの効率的な合成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-514892(P2017-514892A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】カスケード触媒作用を使用することによるアルコール及びアルデヒドからのアミン及びアミドの効率的な合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20170512BHJP
   C07C 233/22 20060101ALI20170512BHJP
   C12P 13/02 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
   C07C231/02
   C07C233/22
   C12P13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2017-501497(P2017-501497)
(86)(22)【出願日】2015年3月27日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月25日
(86)【国際出願番号】EP2015056776
(87)【国際公開番号】WO2015144902
(87)【国際公開日】20151001
(31)【優先権主張番号】61/971,106
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516351946
【氏名又は名称】オルガノフール スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ、アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】ベルグランド、ペル
(72)【発明者】
【氏名】アンデルソン、マティアス
(72)【発明者】
【氏名】アフェウェルキ、サムソン
【テーマコード(参考)】
4B064
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AE02
4B064CA21
4B064CB01
4B064CB11
4B064CB30
4B064DA16
4H006AA02
4H006AB10
4H006AB21
4H006AB27
4H006AB28
4H006AC53
4H006BA92
4H006BB12
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BP30
4H006BV53
(57)【要約】
本発明は概して、金属及び有機触媒による統合された酵素カスケード系を使用して、アルコール及びアルデヒドをアミン及びアミドに変換するための、環境に優しい方法に関する。より具体的には、本発明は、バニリンアルコールから出発し、酵素カスケード系及び触媒の組み合わせを使用する、カプサイシノイドの合成に関する。更に、本方法はまた、バニリンアルコール誘導体から出発し、酵素カスケード系及び触媒の組み合わせを使用する、カプサイシノイド誘導体の合成に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.アルコールをアルデヒド又はケトンに変換する段階と、
b.前記アルデヒド又はケトンをアミンに変換する段階であって、前記アルデヒド又はケトンのアミンへの前記変換は、酵素カスケード系によって触媒される、変換する段階と、
c.前記アミンをアミドに変換する段階と、
を備える、アルコールの変換のための方法であって、
前記酵素カスケード系は、アミン転移酵素(ATA)を有し、前記酵素カスケード系は、好ましくはATA及びアミン供与体を備え、前記酵素カスケード系は、更に好ましくは、ATA、アミン供与体としてのL‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、及びNADHを備え、前記酵素カスケード系は、もっとも好ましくは、ATA、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、NADH、D‐グルコース、及びグルコースデヒドロゲナーゼを備える、
方法。
【請求項2】
前記酵素カスケード系は、ATA及びアミン供与体を含み、前記酵素カスケード系は、好ましくはATA、アミン供与体としてのL‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、及びNADHを備え、前記酵素カスケード系は、より好ましくは、ATA、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、NADH、D‐グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アルコールは第一級アルコールであり、
前記アルデヒドはR基を有し、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択され、
前記アミンは、R基を有し、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択され、
前記アミドは、(i)Rがアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択されるR基、及び、(ii)Rがアルキル及びアリールから選択される、アシル基(COR)を有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコールはアルドールであり、
前記アルデヒドはR基を有し、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択され、
前記アミンは、R基を有し、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択され、
前記アミドは、(i)Rがアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される、R基と、(ii)Rがアルキル及びアリールから選択される、アシル基(COR)とを有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
複数のアルコール基は第二級アルコールであり、
ケト基は、(i)Rがアルキル及びアリールから選択されるR基と、(ii)Rがメチル及びエチルから選択されるR基とを有し、
前記アミンは、(i)Rがアルキル及びアリールから選択されるR基と、(ii)Rがメチル及びエチルから選択されるR基とを有し、
前記アミドは、(i)Rがアルキル及びアリールから選択されるR基と、(ii)Rがメチル及びエチルから選択されるR基と、(iii)Rはアルキル及びアリールから選択されるアシル(COR)とを有する、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
a. i. H、O、空気、NaOClから選択される酸化剤と、
ii. ‐好ましくは複数のPd(0)‐ナノ触媒から選択された不均一系の支持金属触媒と、
‐好ましくはPd、Cu、Pt、Fe、及びIrから得られ、より好ましくはDABCO‐CuCl‐TEMPO法及びCuCl‐ビピリジル‐TEMPO法から選択された有機金属錯体と、
‐好ましくはTEMPO((2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐yl)オキシル)又はそれらの誘導体から選択された無金属触媒(メディエータ)と、
‐好ましくは酸化酵素EC1:10:3:2である酸化酵素と
から選択される触媒系と、
の存在下で前記アルコールをアルデヒド又はケトンに変換する段階と、
b.前記アルデヒドをアミンに変換する段階であって、前記アルデヒドからアミンへの変換が、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.任意でアシル化剤を用いることで、前記アミンをアシル化することにより、前記アミンを前記アミドに変換する、段階と、
を備える、請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アミン供与体は、アラニン、IPA(イソプロピルアミン)、及び、メチルベンジルアミンから選択され、前記アミン供与体は、好ましくはL‐アラニンである、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アシル化剤は、酸、アルキルケトン二量体、酸塩化物、及び無水物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記アシル化剤は、R基が(i)アルキル、(ii)アリール、及び(iii)複素環から選択される、化学式6
【化8】
の化合物から選択される、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記アシル化剤は、化学式6
【化9】
の化合物から選択され、
R基は
【化10】
及び
【化11】
から選択され、
それにより、複数の前記アシル化剤はそれぞれ、化学式6a及び6bの化合物となり、前記アシル化は好ましくはNaHCOの存在下で実行され、より好ましくは、前記アシル化はNaHCO、HO、及びCHClの存在下で実行される、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記アシル化剤は、化学式5
【化12】
の化合物から選択され、
R基は
【化13】
及び
【化14】
から選択され、
それにより、複数の前記アシル化剤はそれぞれ、化学式5a及び5bの化合物となり、前記アシル化は、好ましくは、リパーゼの存在下で実行され、より好ましくは、前記アシル化はリパーゼ及び2‐メチル‐2‐ブタノール内で実行される、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項12】
化学式6a及び6bの複数の前記アシル化剤は、塩化チオニルの存在下で、それぞれ化学式5a及び5bの複数の化合物から調製されたものである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記アシル化剤は、7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸である、請求項6又は8に記載の方法。
【請求項14】
前記アルコールは、(i)バニリルアルコール、(ii)複数のベンジルアルコール、(iii)複数のシンナミルアルコール、及び(iv)複数のヒドロキシ‐、メトキシ‐及びエトキシベンジルアルコールから選択される、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第一級アルコールは、化学式1
【化15】
の化合物から選択され、
Rは、
i.前記第一級アルコールが化学式1aの化合物となる
【化16】
と、
ii.前記第一級アルコールが化学式1bの化合物となる
【化17】
と、
iii.前記第一級アルコールが化学式1cの化合物となる
【化18】
と、
から選択される、
請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記アルドールが、化学式3
【化19】
の化合物から選択され、
Rは
i.前記アルドールが化学式3aの化合物となる
【化20】
と、
ii.前記アルドールが化学式3bの化合物となる
【化21】
と、
iii.前記アルドールが化学式3cの化合物となる
【化22】
と、
から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項17】
前記アルデヒドが、化学式2
【化23】
の化合物から選択され、
Rは、
i.前記アルデヒドが化学式2aの化合物となる
【化24】
と、
ii.前記アルデヒドが化学式2bの化合物となる
【化25】
と、
iii.前記アルデヒドが化学式2cの化合物となる
【化26】
と、
から選択される、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記アミンは、化学式4の化合物
【化27】
から選択され、
Rは、
i.前記アミンが化学式4aの化合物となる
【化28】
と、
ii.前記アミンが化学式4bの化合物となる
【化29】
と、
iii.前記アミンが化学式4cの化合物となる
【化30】
と、
から選択される、
請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
a.i.化学式1a、1b、及び1cのアルコールを提供し、前記アルコールをそれぞれ、化学式2a、2b又は2cの対応するアルデヒドに変換することで、又は、
ii.化学式3a、3b、又は3cのアルドールを提供し、前記アルドールをそれぞれ、化学式2a、2b、又は2cの対応するアルデヒドに変換することで、
化学式2a、2b、又は2cのアルデヒドを提供する段階と、
b.化学式2a、2b、又は2cの前記アルデヒドをそれぞれ、化学式4a、4b、又は4cの対応するアミンに変換する段階であって、アルデヒドからアミンへの変換が、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.化学式4a、4b、又は4cの前記アミンをアミドに変換する段階であって、当該変換は、
i.それぞれ化学式5a又は5bの化合物、及び、好ましくはリパーゼ、又は
ii.それぞれ化学式6a又は6bの化合物、及び、好ましくはNaHCO、又は、
iii.7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸、及び、好ましくは、リパーゼ
の存在下で実行される段階と
を備える、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
a.i.化学式1a、1b又は1cのアルコールを提供し、前記アルコールをそれぞれ化学式2a、2b又は2cの対応するアルデヒドに変換する段階であって、当該変換は、複数のPd(0)ナノ粒子の存在下で、より好ましくは、複数のPd(0)ナノ粒子及びOの存在下で実行される、段階、又は、
ii.化学式3a、3b、又は3cのアルドールを提供し、前記アルドールをそれぞれ、化学式2a、2b、又は2cの対応するアルデヒドに変換する段階であって、当該変換は、L‐アラニンの存在下で、より好ましくは、酵素カスケード系の存在下で実行される、段階
によって、化学式2a、2b、又は2cのアルデヒドを提供する、段階と、
b.化学式2a、2b、又は2cの前記アルデヒドを、それぞれ化学式4a、4b、又は4cの対応するアミンに変換する段階であって、アルデヒドからアミンへの前記変換は、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.化学式4a、4b又は4cの前記アミンをアミドに変換する段階であって、当該変換は、
i.それぞれ化学式5a又は5bの化合物、及び、好ましくはリパーゼ、又は、
ii.それぞれ化学式6a又は6bの化合物、及び、好ましくはNaHCO、又は、
iii.7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸、及び、好ましくはリパーゼ
の存在下で実行される、段階と
を備える、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
a.i.化学式1a、1b又は1cのアルコールを提供し、前記アルコールをそれぞれ化学式2a、2b、又は2cの対応するアルデヒドに変換する段階であって、当該変換は、複数のPd(0)ナノ粒子の存在下、より好ましくは、複数のPd(0)ナノ粒子及びOの存在下で実行される、段階と、
ii.化学式3a、3b又は3cのアルコールを提供し、前記アルコールから、それぞれ化学式2a、2b、又は2cの対応するアルデヒドへ変換する段階であって、当該変換は、複数のPd(0)ナノ粒子の存在下、より好ましくは、複数のPd(0)ナノ粒子及びOの存在下で実行される、段階と、
によって、化学式2a、2b又は2cのアルデヒドを提供する段階と、
b.化学式2a、2b又は2cの前記アルデヒドを、それぞれ化学式4a、4b又は4cの対応するアミンに変換する段階であって、アルデヒドからアミンへの前記変換は、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.化学式4a、4b、又は4cの前記アミンをアミドに変換し、当該変換は、
i.それぞれ化学式6a又は6bの複数の化合物、及び、好ましくはNaHCO、又は、
ii.7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸、及び、好ましくはリパーゼ
の存在下で実行される、段階と
を備える、請求項1から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
a.バニリルアルコールを提供し、前記アルコールをバニリンに変換する段階と、
b.前記バニリンをバニリルアミンに変換する段階であって、バニリンからバニリルアミンへの変換は、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.バニリルアミンをカプサイシン、ノニバミド、又はフェニルカプサイシン、及びそれらの複数の誘導体に変換する、段階と、
を備える、請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
a.バニリルアルコールを提供し、複数のPd(0)ナノ粒子の存在下、より好ましくは、複数のPd(0)ナノ粒子及びOの存在下で、前記アルコールをバニリンに変換する段階と、
b.前記バニリンをバニリルアミンに変換する段階であって、バニリンからバニリルアミンへの変換は、ATA、D‐グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼ、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及びNADHを有する前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.バニリルアミンを
‐i.それぞれ化学式5a又は5bの複数の化合物、及び好ましくはリパーゼ、又は、
ii.それぞれ化学式6a又は6bの複数の化合物、及び好ましくはNaHCO
の存在下においてカプサイシン及びノニバミドへ変換し、
‐i.7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸、及び、好ましくはリパーゼの存在下においてフェニルカプサイシンへ変換する、段階と、
を備える、請求項1から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
a.バニリルアルコールを提供し、Pd(0)ナノ粒子及びOの存在下で前記アルコールをバニリンに変換する段階と、
b.前記バニリンをバニリルアミンに変換する段階であって、バニリンからバニリルアミンへの変換が、ATA、D‐グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼ、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及びNADHを有する前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
c.バニリルアミンを、
‐i.それぞれ化学式6a又は6bの複数の化合物、及び好ましくはNaHCOの存在下で、カプサイシン又はノニバミドに変換し、
‐i.7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸、及び、好ましくはリパーゼの存在下で、フェニルカプサイシンに変換する、
段階と、
を備える、請求項1から23の何れか一項に記載の方法。
【請求項25】
a.バニリルアルコールを提供し、前記アルコールからバニリルアミンへ、バニリンを中間体として変換する段階であって、前記変換は、ATA、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、及びL‐ADHを有する酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
b.バニリルアミンを
‐i.それぞれ化学式5a又は5bの複数の化合物、及び好ましくはリパーゼ、又は、
ii.それぞれ化学式6a又は6bの複数の化合物、及び好ましくはNaHCO
の存在下でカプサイシン又はノニバミドに変換し、
‐i.7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸、及び、好ましくはリパーゼの存在下でフェニルカプサイシン
に変換する段階と、
を備える、請求項1から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記Pd(0)ナノ粒子は、Pd(0)‐AmP‐MFC及びPd(0)‐CPGから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記アミドは、カプサイシン、ノニバミド、フェニルカプサイシン、並びに、複数の天然及び非天然カプサイシノイドから選択される、請求項1から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記アミドが、
化学式
【化31】
のカプサイシン、ノニバミド、フェニルカプサイシン、並びに、複数の天然及び非天然カプサイシノイドから選択され、
Rは
【化32】
及び
【化33】
から選択され、Rは、
【化34】
及び
【化35】
から選択される、請求項1から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記バニリルアルコールはリグニンから得られる、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記方法は、ワンポット内で実行される、請求項1から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法は、複数の中間体を精製することなく、ワンポット内で実行される、請求項1から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
請求項1から31の何れか一項に記載の方法で調製された複数のカプサイシノイド。
【請求項33】
a.アルコールをアルデヒド又はケトンに変換する段階と、
b.前記アルデヒド又はケトンをアミンに変換する段階であって、前記アルデヒド又はケトンのアミンへの変換は、酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
を備える、アルコールの変換のための方法であって、
前記酵素カスケード系は、アミン転移酵素(ATA)を備え、前記酵素カスケード系は、好ましくは、ATA及びアミン供与体を備え、前記酵素カスケード系は、更に好ましくは、ATA、アミン供与体としてのL‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及びNADHを備え、前記酵素カスケード系は、もっとも好ましくは、ATA、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、NADH、D‐グルコース及びグルコースデヒドロゲナーゼを備える、
アルコールの変換のための方法。
【請求項34】
前記酵素カスケード系は、ATA及びアミン供与体を備え、前記酵素カスケード系は、好ましくは、ATA、アミン供与体としてのL‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及びNADHを備え、前記酵素カスケード系は、より好ましくは、ATA、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、NADH、D‐グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼを備える、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アルコールは、第一級アルコールであり、
前記アルデヒドは、R基を備え、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択され、
前記アミンは、R基を備え、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される、
請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記アルコールはアルドールであり、
前記アルデヒドはR基を備え、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択され、
前記アミンは、R基を備え、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される、
請求項33又は34に記載の方法。
【請求項37】
複数のアルコール基は第二級アルコールであり、
ケト基は、(i)Rがアルキル及びアリールから選択されるR基、及び、(ii)Rがメチル及びエチルから選択される、R基を備え、
前記アミンは、(i)Rがアルキル及びアリールから選択されるR基、及び、(ii)Rがメチル及びエチルから選択される、R基を備える、
請求項33又は34に記載の方法。
【請求項38】
a)i.H、O、空気、及びNaOClから選択される酸化剤、及び、
ii.‐好ましくは複数のPd(0)ナノ触媒から選択される、不均一系の支持金属触媒と、
‐好ましくは、Pd、Cu、Pt、Fe、及びIrから得られ、より好ましくは、DABCO‐CuCl‐TEMPO法、及び、CuCl‐ビピリジル‐TEMPO法から選択される、有機金属錯体と、
‐好ましくは、TEMPO((2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐1‐yl)オキシル)又はそれらの誘導体から選択された、無金属触媒(メディエータ)と、
‐好ましくは、酸化酵素EC1:10:3:2である、酸化酵素と
から選択される、触媒系
の存在下で、前記アルコールをアルデヒド又はケトンに変換する、段階と、
b)前記アルデヒドをアミンに変換する段階であって、前記アルデヒドからアミンへの変換が、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と
を備えた、請求項35から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記アミン供与体が、アラニン、IPA(イソプロピルアミン)、及び、メチルベンジルアミンから選択され、前記アミン供与体は、好ましくはL‐アラニンである、請求項33から38の何れか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記アルコールが、(i)バニリルアルコール、(ii)複数のベンジルアルコール、(iii)複数のシンナミルアルコール、(iv)複数のヒドロキシ‐、メトキシ‐、及びエトキシベンジルアルコールから選択される、請求項33から39の何れか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第一級アルコールは、化学式1
【化36】
の化合物から選択され、
Rは、
i.前記第一級アルコールが化学式1aの化合物となる
【化37】
と、
ii.前記第一級アルコールが化学式1bの化合物となる
【化38】
と、
iii.前記第一級アルコールが化学式1cの化合物となる
【化39】
と、
から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記アルドールは、化学式3
【化40】
の化合物から選択され、
Rは、
i.前記アルドールが化学式3aの化合物となる
【化41】
と、
ii.前記アルドールが化学式3bの化合物となる
【化42】
と、
iii.前記アルドールが化学式3cの化合物となる
【化43】
と、
から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記アルデヒドは、化学式2
【化44】
の化合物から選択され、
Rは、
i.前記アルデヒドは化学式2aの化合物となる
【化45】
と、
ii.前記アルデヒドは化学式2bの化合物となる
【化46】
と、
iii.前記アルデヒドは化学式2cの化合物となる
【化47】
と、
から選択される、請求項33から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記アミンは、化学式4
【化48】
の化合物から選択され、
Rは、
i.前記アミンは化学式4aの化合物となる
【化49】
と、
ii.前記アミンは化学式4bの化合物となる
【化50】
と、
iii.前記アミンは化学式4cの化合物となる
【化51】
と、
から選択される、
請求項33から43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
a.i.化学式1a、1b又は1cのアルコールを提供し、前記アルコールをそれぞれ、化学式2a、2b又は2cの対応するアルデヒドに変換するか、又は、
ii.化学式3a、3b又は3cのアルドールを提供し、前記アルドールをそれぞれ、化学式2a、2b、又は2cの対応するアルデヒドに変換する
ことによって、化学式2a、2b又は2cのアルデヒドを提供する、段階と、
b.化学式2a、2b又は2cの前記アルデヒドを、それぞれ化学式4a、4b又は4cの対応するアミンに変換する段階であって、アルデヒドからアミンへの前記変換が、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
を備える、請求項33から44の何れか一項に記載の方法。
【請求項46】
a.i.化学式1a、1b又は1cのアルコールを提供し、前記アルコールを、それぞれ化学式2a、2b、又は2cの対応するアルデヒドに変換する段階であって、当該変換は、複数のPd(0)ナノ粒子の存在下、より好ましくは、複数のPd(0)ナノ粒子及びOの存在下で実行される、段階、又は、
ii.化学式3a、3b、又は3cのアルドールを提供し、前記アルドールをそれぞれ、化学式2a、2b又は2cの対応するアルデヒドに変換する段階であって、当該変換は、L‐アラニンの存在下、より好ましくは、酵素カスケード系の存在下で実行される、段階
によって、化学式2a、2b、又は2cのアルデヒドを提供する段階と、
b.化学式2a、2b、又は2cの前記アルデヒドを、それぞれ化学式4a、4b又は4cの対応するアミンに変換する段階であって、アルデヒドからアミンへの前記変換は、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
を備えた、請求項33から45の何れか一項に記載の方法。
【請求項47】
a.バニリルアルコールを提供し、前記アルコールをバニリンに変換する段階と、
b.前記バニリンをバニリルアミンに変換する段階であって、前記バニリンからバニリルアミンへの変換が、前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
を備える、請求項33から46の何れか一項に記載の方法。
【請求項48】
a.バニリルアルコールを提供し、複数のPd(0)ナノ粒子の存在下、より好ましくは、複数のPd(0)ナノ粒子及びOの存在下で、前記アルコールをバニリンに変換する段階と、
b.前記バニリンをバニリルアミンに変換する段階であって、バニリンからバニリルアミンへの変換が、ATA、D‐グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼ、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及びNADHを有する前記酵素カスケード系によって触媒される、段階と、
を備える、請求項33から46の何れか一項に記載の方法。
【請求項49】
a.バニリルアルコールを提供し、中間体としてバニリンを経由して前記アルコールをバニリルアミンへ変換する段階であって、当該変換は、ATA、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)、及びL‐ADHを有する酵素カスケード系によって触媒される、段階
を備える、請求項33から48の何れか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記複数のPd(0)ナノ粒子は、Pd(0)‐AmP‐MFC、及び、Pd(0)‐CPGから選択される、請求項46または48に記載の方法。
【請求項51】
前記バニリルアルコールは、リグニンから得られる、請求項40、47、48、又は49のいずれかに一項に記載の方法。
【請求項52】
前記方法がワンポット内で実行される、請求項33から51の何れか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記方法が、複数の中間体を精製することなく、ワンポット内で実行される、請求項33から52の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、金属及び有機触媒による統合型の酵素カスケード系を使用する、アルコール及びアルデヒドのアミン及びアミドへの変換のための、環境に優しい方法に関する。より具体的には、本発明は、バニリンアルコールから出発するカプサイシノイドの合成、並びに、酵素カスケード系及び触媒の組み合わせの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アミン及びアミドは、ファインケミカル及び医薬品の製造にとって、有用で非常に価値のある化合物である。この文脈において、カプサイシン(7a)はトウガラシ属で見つかる刺激性の化合物であり、これらの植物の赤トウガラシの実の辛い味の原因である(図1。また、複数のカプサイシン類似体7(又はカプサイシノイド)がトウガラシ属で見つかるが、カプサイシンはもっとも頻繁に現れるものの1つであり、また、最初に単離され、その構造が決定されている1‐4。カプサイシノイドの用途には、辛い食品、自衛用武器(トウガラシスプレーなど)、並びに、Zostrix及びAxsainなどの鎮痛剤が含まれる。また、カプサイシノイドは、例えば、熱喪失及び熱発生両方の活性化、副腎カテコールアミン分泌の増加6,7、及び体脂肪蓄積の抑制7,8など、様々な他の生理作用を備えることが示されている。また、カプサイシノイドは、癌抑制の特性を示す(この主題を確認するには、9‐11を参照)。
【0003】
カプサイシノイド(7)は天然源(例えばトウガラシ属のトウガラシの実)から単離できるが、これはカプサイシン(7a)及びジヒドロカプサイシンを主に生じさせる。なぜなら、他のカプサイシノイドの多くは、わずかな量しか存在しないからである3,4。従って、化学合成は、ノニバミド(7b)など希少性がより高いカプサイシノイドを得ること、及び、非天然カプサイシノイド12を生成することに有用である。 カプサイシノイドは、最初に、還流させたMeOH内において過剰の金属(Zn)及びギ酸アンモニウムの混合物を使用してバニリンオキシムを還元し、バニリルアミン(4)を得ることによって、バニリン(2)から調製され得る13。 次に、4は塩化アシル(6)と更に反応し、最終生成物(7)を生成し得る12,14‐16。 あるいは、4と、種々の脂肪酸誘導体との間の酵素触媒転換によって、アミド結合形成が達成され得る17‐20
【0004】
木材から得られるリグニンは、バニリルアルコール(1)及びバニリン(2)を製造するための天然源であり(図121、従って、カプサイシノイド(7)合成の潜在的な原材料である。リグニンは再生可能であり、自然において大量に入手可能で、現在は限られた数の用途のみに使用されているので21,22、特に興味深い。 また、バニリンは、芳香族求電子置換反応によってグアイアコールをグリオキシル酸と反応させることで、グアイアコールから合成できる。結果として発生するバニリルマンデル酸は、次に、酸化的脱炭酸によって、4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシフェニルグリオキシル酸を経由してバニリン(2)へと変換される23
【0005】
しかしながら、カプサイシノイドを製造するための、環境に優しい無害な方法の必要性が存在する。より具体的には、還元的アミノ化段階、すなわち、バニリンからバニリルアミンへの変換のように、アルデヒドをそれに対応するアミンに変換する段階に金属を使用する必要性を無くすべく、バニリルアミン(4a)などの中間体アミンを調製する酵素的手法の必要性が存在する。更に、バニリルアミン及びその誘導体をカプサイシノイドに変換する、より効率的な方法であって、当該カプサイシノイドの収率が先行技術に記載された収率より高い方法の必要性が存在する。加えて、反応中間体を精製する必要なく、ワンポット内でカプサイシノイドを製造する必要性も存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E. K. Nelson, J. Am. Chem. Soc, 1919, 41, 1115-1121.
【非特許文献2】D. J. Bennett and G. W. Kirby, J. Chem. Soc. C, 1968, 442-446.
【非特許文献3】K. Iwai, T. Suzuki and H. Fujiwake, Agric. Biol. Chem., 1979, 43, 2493-2498.
【非特許文献4】T. Kawada, T. Watanabe, K. Katsura, H. Takami and K. Iwai, J. Chromatogr., 1985, 329, 99-105・
【非特許文献5】A. Kobayashi, T. Osaka, Y. Namba, S. Inoue, T. H. Lee and S. Kimura, Am. J. Physiol. Regul. Integr. Comp. Physiol., 1998, 275, R92-R98
【非特許文献6】T. Watanabe, T. Kawada, T. Kato, T. Harada and K. Iwai, Life Sciences, 1994, 54, 369-374.
【非特許文献7】K. Kim, T. Kawada, K. Ishihara, K. Inoue and T. Fushiki, Biosci. Biotechnol. Biochem., 1997, 61, 1718-1723.
【非特許文献8】T. Kawada, K. Hagihara and K. Iwai, J. Nutr., 1986, 116, 1272-1278
【非特許文献9】K. Bley, G. Boorman, B. Mohammad, D. McKenzie and S. Babbar, Toxicol. Pathol., 2012, 40, 847-873・
【非特許文献10】Y. Surh, J. Natl. Cancer Inst., 2002, 94, 1263-1265.
【非特許文献11】A. Oyagbemi, A. Saba, O. Azeez, Indian J. Cancer, 2010, 47, 53-58
【非特許文献12】E. K. Nelson, J. Am. Chem. Soc, 1919, 41, 2121-2130.
【非特許文献13】K. Abiraj and D. C. Gowda, J. Chem. Res. (S), 2003, 6, 332-334
【非特許文献14】P. M. Gannett, D. L. Nagel, P. J. Reilly, T. Lawson, J. Sharpe and B. Toth, J. Org. Chem., 1988, 53, 1064-1071.
【非特許文献15】H. Kaga, M. Miura and K. Orito, J. Org. Chem., 1989, 54, 3477-3478.
【非特許文献16】B. Wang, F. Yang, Y. Shan, W. Qiu and J. Tang, Tetrahedron, 2009, 65, 5409-5412.
【非特許文献17】K. Kobata, K. Yoshikawa, M. Kohashi and T. Watanabe, Tetrahedron lett, 1996, 37, 2789-2790.
【非特許文献18】K. Kobata, M. Toyoshima, M. Kawamura and T. Watanabe, Biotechnol. Lett., 1998, 20, 781-783・
【非特許文献19】M. Koreishi, D. Zhang, H. Imanaka, K. Imamura, S. Adachi, R. Matsuno and K. Nakani-shi, J. Agric. Food. Chem., 2006, 54, 72-78.
【非特許文献20】E. Castillo, A. Torres-Gavilan, P. Severiano, N. Arturo and A. Lopez-Munguia, Food Chem., 2007, 100, 1202-1208.
【非特許文献21】Vannillin is produced from wood in 1,500 tonnes every year by Borregaard. Life-Cycle As-sessment proves that wood derived vanillin has a 90% smaller C02-footprint as compared to mineral oil-based vanillin, (http: / / sustainableifra.wordpress.com/ 2012/ 06/11/vanillin-ex-tracted-from-wood-at-borregaard/)
【非特許文献22】S. R. Collinson and W. Thielemans, Coord. Chem. Rev., 2010, 254, 1854-1870.
【非特許文献23】Esposito, Lawrence J.; K. Formanek, G. Kientz, F. Mauger, V. Maureaux, G. Robert, and F. Truchet (1997). "Vanillin". Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 4th edition
【非特許文献24】New York: John Wiley & Sons. pp. 812-825.
【非特許文献24】K. E. Cassimjee, M. S. Humble, V. Miceli, C. G. Colomina and P. Berglund, ACS Catal., 2011, 1, 1051-1055.
【非特許文献25】J. Zhao, T. D. Gover, S. Muralidharan, D. A. Auston, D. Weinreich and J. P. Y. Kao, Bio-chemistry. 2006, 45, 4915-4926
【非特許文献26】B. Wang, F. Yang, Y. Shan, W. Qiu, J. Tang, Tetrahedron, 2009, 65, 5409-5412
【非特許文献27】27a) E. W. Ping, R. Wallace, J. Pierson, T. F. Fuller and C. W. Jones, Micropor. Mesopor. Mater., 2010, 132, 174-180 27b) M. Shakeri, C. Tai, E. Gothelid, S. Oscarsson and J. Backvall, Chem. Eur. J., 2011, 17, 13269-13273. 27c) E. V. Johnston, O. Verho, M. D. Karkas, M. Shak-eri, C. Tai, P. Palmgren, K. Eriksson, S. Oscarsson and J. Backvall, Chem. Eur. J., 2012, 18,12202-12206 27d) L. Deiana, S. Afewerki, C. Palo-Nieto, O. Verho, E. V. Johnston and A. Cordova, Sci. Rep., 2012, 2, 851.; DOI:io.i038/srepoo85i
【非特許文献28】M. Edin, J. Backvall and A. Cordova, Tetrahedron Lett., 2004, 45, 7697-7701
【非特許文献29】T. Patil, N.; Huo, Z.; B. Bajracharya, G.; Yamamoto, Y., J. Org. Chem. 2006, 71, 3612.
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、アミン及びアミドを合成するための出発原料として様々な再生可能化合物を使用することである。
【0008】
本発明の更なる目的は、環境及び健康の観点から有利なアミン及びアミドを合成する方法を提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、アミドを製造するためのより持続可能なプロセスを提供することである。本発明の更なる目的は、ワンポットにおいて合成を実行することである。本発明の更なる目的は、中間体の単離の必要性を無くすことである。本発明の更なる目的は、合成中に生成される廃棄物の量を減らすことである。
【0010】
本発明の更なる目的は、還元的アミノ化段階に金属を使用する必要性を無くすべく、酵素的手法を使用することで中間体バニリルアミン(4a)を調製することである。
【0011】
本発明の複数の目的は、不均一系金属触媒及び有機触媒などの他の触媒系と統合された場合に、アルコールを順に、又はワンポット内でそれぞれアミン及びアミドに変換する酵素カスケード系を伴う、多触媒性カスケードリレーシーケンスを使用することによって達成される。本発明の実施形態は、スキーム1に図示されている。ここで、(i)Rは好ましくは脂肪族化合物、アリール、4‐ヒドロキシ‐3‐メトキシ‐C、及び、4‐ヒドロキシ‐3‐エトキシ‐Cから選択され、(ii)Rは好ましくはH、メチル及びエチルから選択され、(iii)Rは好ましくはアルキル及びアリールから選択される。
【0012】
スキーム1で示されているように、アルコールの変換の方法に関する実施形態は、(a)当該アルコールをアルデヒド又はケトンに変換する段階と、(b)当該アルデヒド又はケトンをアミンに変換する段階であって、当該アルデヒド又はケトンからアミンへの変換は、酵素カスケード系によって触媒される段階と、(c)当該アミンを当該アミドに変換する段階とを備える。
【化1】
スキーム1‐アルコールの変換
【0013】
更なる実施形態は、スキーム2で図示されているように、多触媒性系の組み合わせを使用した、バニリルアルコール及びその誘導体の変換による、カプサイシノイド及び類似の誘導体の合成に関する。
【化2】
スキーム2‐バニリルアルコールの変換
【0014】
更なる実施形態は、スキーム2に図示されているように、酵素カスケード系及び有機触媒を使用した、バニリン及びその誘導体から出発する、カプサイシノイド及び類似の誘導体の合成に関する。
【0015】
更なる実施形態は、カプサイシン、ノニバミド、及びフェニルカプサイシン、並びにそれらの誘導体の合成に関する。
【0016】
更なる実施形態は、(a)当該アルコールをアルデヒドに変換する段階と、(b)当該アルデヒドをアミンに変換する段階であって、当該アルデヒドのアミンへの変換が、酵素カスケード系によって触媒される段階と、(c)当該アミンを当該アミドに変換する段階とを備える、アルコールの変換方法であって、当該段階(a)‐(c)は、スキーム3に開示されているアルコール、アルデヒド、アミン、及び試薬を使用することによって実施される、変換方法に関する。
【化3】
スキーム3‐アルコールのアミン及びアミドへの変換
【0017】
更なる実施形態は、環境に無害な条件下における、アルコールのアミン及びアミドへの変換に関する。従って、種々の実施形態の態様において、目的は次のように達成される。 ‐多触媒性カスケードリレーシーケンスを使用してアルコールからアミン及びアミドを合成する。 ‐多触媒性カスケードリレーシーケンスを使用してアルデヒドからアミン及びアミドを合成する。 ‐多触媒性カスケードリレーシーケンスを使用して、バニリン及びその誘導体から出発するカプサイシノイドの全合成を実行する。 ‐多触媒性カスケードリレーシーケンスを使用して、バニリルアルコール及びその誘導体から出発するカプサイシノイドの全合成を実行する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
記載されている実施形態は、アルコールの変換のための環境に無害な方法に関し、当該方法は、アルコールをアルデヒド又はケトンに変換する段階と、アルデヒド又はケトンをアミンに変換する段階と、次にアミンをアミドに変換する段階とを備える。アルデヒドのアミンへの変換は、酵素カスケード系によって触媒される。
【0019】
アルデヒドの調製に使用されるアルコールは、第一級アルコールから選択され得る。第一級アルコールの酸化の結果、R基を備えるアルデヒドが生じ、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される。酵素カスケード系による、アルデヒドのアミンへの変換の結果、R基を備えるアミンが生じ、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される。アシル化剤にさらされたアミンは、R基を備えるアミドを生じさせ、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環、及びアシル基(COR)から選択され、Rはアルキル及びアリールから選択される。
【0020】
第二級アルコールは、ケトンの調製に使用され得る。第二級アルコールの酸化の結果、R基及びR基を備えるケトンのケト基が生じ、Rはアルキル及びアリールから選択され、Rはメチル及びエチルから選択される。酵素カスケード系による、ケトンのアミンへの変換の結果、R基及びR基を備えるアミンが生じ、Rはアルキル及びアリールから選択され、Rはメチル及びエチルから選択される。アシル化剤にさらされたアミンは、(i)Rがアルキル及びアリールから選択されるR基、(ii)Rはメチル及びエチルから選択されるR基、及び、(iii)Rはアルキル及びアリールから選択されるアシル基(COR)を備えるアミドを生じさせる。
【0021】
反応分子の性質に応じた適切な触媒によって、アルコールはアルデヒドに変換される。触媒は、不均一系(対応する)金属触媒、均一系金属触媒(均一系有機金属錯体など)、無金属触媒(メディエータ)、又は酸化酵素(酸化酵素EC1:10:3:2など)から選択される。反応分子の性質に応じた適切な酸化剤は、酸素、空気、過酸化水素、及びNaOClから選択される。
【0022】
アルデヒドを調製するのに使用されるアルコールは、アルドールから選択され得る。アルドールの分解の結果、R基を備え、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される、アルデヒドが生じる。酵素カスケード系によるアルデヒドのアミンへの変換の結果、R基を備えるアミンが生じ、Rはアルキル、アリール、シンナミル及び複素環から選択される。アシル化剤にさらされるアミンは、R基を備えるアミドを生じさせ、Rは、アルキル、アリール、シンナミル及び複素環、並びに、アシル基(COR)から選択され、Rはアルキル及びアリールから選択される。
【0023】
アルデヒドを対応するアミンに変換する酵素カスケード系は、アラニン、IPA(イソプロピルアミン)、及びメチルベンジルアミンから選択されるアミン供与体などの有機触媒と組み合わせられ得るアミン転移酵素(ATA)を備える。好ましいアミン供与体は、L‐アラニンであり、好ましいATAは、EC2.6.1.18である。興味深いことに、酵素カスケード系において、末端N源である(例えば、塩化アンモニウムの形態の)NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及びNADHを含めることで、アミドの収率が増加する。加えて、酵素カスケード系において、D‐グルコース及びグルコースデヒドロゲナーゼを含めることによっても、アミドの収率は更に増加し得る。従って、最適な変換は、ATA、L‐アラニン、NH、L‐アラニンデヒドロゲナーゼ、NADH、D‐グルコース、グルコースデヒドロゲナーゼを備える酵素カスケード系の使用を伴う。
【0024】
アミンの対応するアミドへの変換は、酸、アルキルケトン二量体、酸塩化物、及び無水物から選択されるアシル化剤(すなわちアミド化剤)でアミンをアシル化することによって達成される。加えて、例えば有機触媒及びリパーゼを伴う触媒方法も使用され得る。
【0025】
アミドを製造するための上記方法は、多触媒性カスケードリレーシーケンス(すなわち多触媒性系)の使用を図示するスキーム2(上記)に示されているように、カプサイシノイド、及びその誘導体の製造に使用され得る。図示されているように、バニリン(2a)は、バニリルアルコール(1a)又は化学式3のアルドールの何れかから調製される。次の段階において、バニリンは、酵素カスケード系によって、対応するアミンバニリルアミン(4a)に変換される。化学式7a及び7bのカプサイシノイドは2つの異なる経路によって調製され得る。第1経路は、化学式5a又は5bの化合物とのバニリルアミンの反応を伴う一方、第2経路は、代わりに化学式6a又は6bの化合物とのバニリルアミンの反応を伴う。更なる好ましい実施形態において、1a、2a、及び/又は3aの誘導体は、フェニルカプサイシン、並びに、天然及び非天然カプサイシノイドの製造に使用され得る。
【0026】
好ましい実施形態において、アシル化剤5a、5b、6a、及び6dは、7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸(7‐phenylhept‐6‐yonic acid)及び化学式
【化4】
の化合物によって置き換えられ得る。ここで、R基は、(i)アルキル、(ii)アリール、及び(iii)複素環から選択される。
【0027】
本発明の好ましい実施形態は、リグニンなどの再生可能化合物を、バニリルアルコールの原料として利用する。加えて、本発明の好ましい実施形態は、中間体のいかなる精製もなく、ワンポット内で実行される。再生可能化合物、金属触媒作用の無い酵素カスケード系、及びワンポット合成を使用することにより、本発明は持続可能であり、環境に無害である。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、並びにヒドロキシル-、メトキシ‐、及びエトキシベンジルアルコールが出発化合物として使用され得る。特定の実施形態は、化学式RCHOHR1のアルコールであって、Rは脂肪族化合物、アリール、4-ヒドロキシ-3-メトキシ-C、及び4-ヒドロキシ-3-エトキシ-Cから選択され、RはH、メチル及びエチルから選択される、アルコールの使用を伴う。加えて、好ましい実施形態は、出発化合物としてのアルデヒド及びケトンの使用を伴い、一部の例として、ベンズアルデヒド及びアリルメチルケトンがある。出発化合物であるアルコール、アルデヒド、及びケトンは、石油関連資源、又は再生可能な資源から得たものであり得る。
【0029】
アルキルは本発明において、炭素原子1個から30個(C1‐30)の長さの直鎖又は分岐鎖の炭素鎖であり、当該炭素鎖は、任意で不飽和であり得、従って、アルケン及びアルキンを含み得る。当該C1‐30アルキル基は任意で、1‐3置換基によって置換され得る。ここで、当該置換基は、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、及びフェニルから選択される(当該フェニルは、アルキル、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ及びニトロからなるグループから独立に選択される1‐3置換基によって任意で置換される)。
【0030】
本発明において、アリールは、1‐3置換基によって任意で置換され得る芳香族基であり、当該置換基は、アルキル、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、及びフェニルから選択される(当該フェニルは、アルキル、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ及びニトロからなるグループから独立に選択される1‐3置換基によって任意で置換される)。
【0031】
本発明において、シンナミルは、1‐3置換基によって任意で置換され得るシンナミル基であり、当該置換基は、アルキル、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、及びフェニルから選択される(当該フェニルは、アルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ及びニトロからなるグループから独立に選択される1‐3置換基によって任意で置換される)。
【0032】
本発明において、複素環は、1‐3置換基によって任意で置換され得る複素環基である。ここで、当該置換基は、アルキル、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、及びフェニルから選択される(当該フェニルは、アルキル、アルコキシ(C1‐30直鎖又は分岐鎖)、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ及びニトロからなるグループから独立に選択される1‐3置換基によって任意で置換される)。
[実験の項]
【0033】
薬品及び溶媒は、供給業者から購入したpuriss p.A.であるか、又は標準的な技術によって精製された。市販の試薬は、更なる精製なしで、購入したままの状態で使用された。
【0034】
クロモバクテリウム・ビオラセウムのアミン転移酵素(ATA)は発酵によって製造された。L‐アラニンデヒドロゲナーゼ(L‐ADH、セレウス菌由来、≧350U/mL、製品番号79848)、及び、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH、シュードモナス属由来、≧200U/mg、製品番号19359)は、Sigma‐Aldrichから購入された。
【0035】
アルミニウムシートシリカゲルプレート(Fluka60 F254)が薄層クロマトグラフィ(TLC)に使用され、化合物は紫外線(254nm)の照射によって、又はリンモリブデン酸(25g)、Ce(SO・HO(10g)、濃HSO(60mL)、及びHO(940mL)の溶液による処理によって可視化され、その後、加熱された。生成物の精製は、シリカゲル(Fluka 60、粒子サイズ0.040‐0.063mm)を使用して、フラッシュカラムクロマトグラフィによって実行された。
【0036】
HPLC分析は、Crownpak CR(+)カラム(Daicel)及び紫外線検出器(254nm)を使用して、1100シリーズHPLCシステム(Agilent)で実行された。pH1.6(HClO4)及び10%v/vメタノールによる酸性移動相が使用された。変換は、内部標準として安息香酸を使用することで、生成物を測定し、標準曲線と比較することによって判定された。
【0037】
赤外線(IR)スペクトルのλmaxは、cm‐1の単位で、Thermo Fisher Nicolet 6700 FT‐IR分光計で記録された。バンドは、broad(br)、strong(s)、medium(m)、又はweak(w)として特徴付けられる。H NMRスペクトルは、Bruker Avance(500MHz又は400MHz)分光計で記録された。化学シフトは、不完全な重水素の取り込みから生じた溶媒共鳴を内部標準(CDCl:δ7.26ppm)として、テトラメチルシランからのppm単位で報告される。データは、化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、q=四重線、br=ブロード,m=多重線)、結合定数(Hz)、積分値として報告される。13C NMRスペクトルは、通常プロトンデカップリングによって、Bruker Avance(125.8MHz又は100MHz)分光計上で記録された。化学シフトは、溶媒共鳴を内部標準(CDCl:δ 77.16ppm)として、テトラメチルシランからのppm単位で報告される。高分解能質量分析法は、Agilent 6520 Accurate‐Mass Q‐TOF LC/MS(ポジティブモード)上で実行された。
[ATA:クローニング、発現、精製]
【0038】
クロモバクテリウム・ビオラセウムのアミン転移酵素(ATA)の遺伝子は、Cassimjee et. al.24が以前に記載したように、プラスミドpET28a(+)に挿入され、大腸菌BL21(DE3)細胞内へ形質転換された。トランスアミナーゼプラスミドを含む細胞は、50mg/Lカナマイシンを含む20mL Luria‐Bertoni(LB)培地(10g/Lトリプトン、5g/L NaCl、5g/L酵母エキス)において、37°C、220rpmで一晩培養された。タンパク質の発現は、25°C、120rpmで、バッフル付フラスコ内において、これら一晩培養液のうち6個を1080mLのLB培地、及び50mg/Lカナマイシンと混合することで実行された。培養液は、0.4mMのIPTGを加えることで誘導され、24時間インキュベートされた。次に、細胞が採取され、遠心分離によって培地から分離された。細胞は、20mM NaHPO及び500mM NaClからなるpH7.4のIMAC結合緩衝液に再懸濁され、超音波処理によって破砕された。細胞破砕片は、遠心分離によって除去され、粗製酵素溶液は、HisTrap HP 5mLカラム(GE Healthcare)を使用しながら、AKTA FPLCシステムで濾過(0.45μm)され、精製された。結合緩衝液は、カラムを洗浄するのに使用され、次に、20mM NaHPO、500mMイミダゾール、及び500mM NaClからなるpH7.4のIMAC溶出緩衝液で酵素が溶出された。酵素溶液は、穏やかに撹拌されながら、1mMピリドキサール‐5'‐リン酸(PLP)と共に20分間インキュベートされた。緩衝液は次に、PD10脱塩カラム(GE Healthcare)を使用してHEPES 50mM pH8.2に変更された。酵素は反応に使用される前に、一晩保管された。酵素は4℃の暗所で保管された。
[ATA濃度の決定]
【0039】
ATA濃度は、Cassimjee et.al.24に記載されているように、減衰係数8.1mM‐1cm‐1で、395nmでの吸光度を測定することで決定された。
[バニリンからのバニリルアミンの調製]
【0040】
すべての反応は、エッペンドルフチューブ(全量1mL)内において、37℃で、暗所で実行された。変換はHPLC分析によって判定された。
【化5】
スキーム4 カプサイシン及びノニバミドの全合成の図式的概要
【0041】
最初の実験において、250mM L‐アラニン及び5mMバニリン(2a)が、0.2mg/mL ATAと共に、HEPES緩衝液50mM pH8.2内で混合された。23時間後、バニリンの25%がバニリルアミン(4a)に変換された。L‐アラニンデヒドロゲナーゼを加え、同一の実験が繰り返された。この実験には、いかなるNADH再生系も使用されなかったので、過剰のNADH(2当量)が使用された。反応組成は、HEPES緩衝液50mM pH8.2内の250mM L‐アラニン、5mMバニリン、100mM塩化アンモニウム、及び10mM NADH、並びに0.2mg/mL ATA、及び7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼであった。この結果、23時間後には、70%の変換が見られた。次に、NADHを再生するべく、グルコースデヒドロゲナーゼを加えて実験が繰り返された。再生系の存在によって、反応液におけるNADH濃度は、過剰な濃度から触媒量へと変化した。反応組成は、HEPES緩衝液50mM pH8.2内の250mM L‐アラニン、5mMバニリン、100mM塩化アンモニウム、100mM D‐グルコース、1mM NADHに、0.2mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼであった。この系の結果、23時間以内に99%を超える変換が生じた。
【0042】
反応液におけるバニリン(2a)の出発濃度は、高い変換率を維持しながら、50mMに増加させることに成功した。バニリンは最初にDMSOに溶解され、次に50mM HEPES緩衝液において、D‐グルコース、塩化アンモニウム及びL‐アラニンと混合された。pHは8.2(1M NaOH)に調整され、溶液はエッペンドルフチューブ内でNADH及び酵素と混合され、250mM L‐アラニン、50mMバニリン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH及び10%v/v DMSO、0.9mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼを最終濃度とした。この結果、17時間後に95%が変換した。
[他のアミンの調製]
【化6】
スキーム3
【0043】
他の2つのアルデヒドであるベンズアルデヒド(2b)及びシンナムアルデヒド(2c)は、同一手順を使用して、それぞれ対応するアミン、4b及び4cに変換されることに成功した。反応組成は、HEPES緩衝液(45mM、pH8.2、37℃)内の250mM L‐アラニン、5mMアルデヒド(2b又は2c)、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM v/v NADH、10%v/v DMSO、1mg/mL ATA、7U/mL L‐ADH及び10U/mL GDHであった。23時間後、89%の変換率で4bが得られた一方で、76%の変換率で4cが得られた。
[バニリルアミンからのカプサイシン及びノニバミドの合成に関する一般手順]
【0044】
段階1:酸性溶液5a又は5b(19.0mmol、1.0当量)及び塩化チオニル(9.04g、76.0mmol、4.0当量)が4時間還流された。過剰な塩化チオニルがロータリーエバポレーターによって除去され、残留物は、高真空下で除去され、淡黄色である塩化アシル6a又は6bを生じさせた25。 原料は更なる精製を行うことなく、次の段階で使用された。
【0045】
段階2:バニリルアミン(4)(81.1mg、0.53mmol、1.00当量)及びNaHCO(145.6mg、1.73mmol、3.27当量)を含むバイアル(8mL)にHO(1.5mL)が加えられ、室温で30分間撹拌され、その後、CHCl(2mL)が加えられ、反応液を室温で15分間撹拌し続けた。次に、6a又は6b(0.61mmol、1.16当量)のCHCl3(0.5mL)溶液が滴下され、反応液は室温で更に30分間撹拌された。その後、反応液は40℃に加熱され、(TLCによって監視され)30分間撹拌された。有機層が分離され、水層がCHCl(3x15mL)で洗浄された。混ぜ合わさった有機層は、HCl(2%)水溶液で洗浄され、次に食塩水で洗浄され、その後NaSO上で乾燥された。粗製原料は、クロマトグラフィによって精製され、淡黄色油である7a(単離収率91%)及び7b(単離収率94%)を生じさせた26
【0046】
7a:IR(neat)λ3296(br),2922(s),2853(m),1730(m),1647(m),1515(m),1459(m),1376(m),1272(m),1214(m),1154(m),1123(w),1034(m),970(w),816(w),756(s),667(m),557(w)cm‐1H NMR(500MHz,CDCl):δ6.86(d,J=8.1Hz,1H),6.81(s,1H),6.79‐6.73(m,1H),5.62(br s,2H),5.41‐5.27(m,1H),4.36(d,J=5.7Hz,2H),3.88(s,3H),2.36‐2.13(m,4H),1.98(q,J=8.3Hz,1H),1.83‐1.72(m,1H),1.72‐1.57(m,4H),1.53‐1.43(m,1H),1.42‐1.34(m,1H),0.95(d,J=7.0Hz,2H),0.93(d,J=6.8Hz,3H)
【0047】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ172.9,172.5,146.8,145.30,145.27,138.3,130.6,130.5,126.6,121.03,120.97,114.52,114.49,110.86,110.81,72.1,63.3,56.12,56.09,43.76,43.69,36.9,36.7,35.1,32.4,31.1,30.5,29.4,25.4,25.2,22.8,21.1,15.1,14.4;C1827NONaについて計算されたHRMS(ESI)[M+Na]:306.2064,実測値:306.2059
【0048】
7b:IR(neat)λ3293(br),2926(m),2855(m),1641(m),1514(m),1462(m),1432(m),1376(w),1272(m),1214(m),1154(m),1123(w),1036(m),909(m),853(w),749(s),666(m),556(w),464(w)cm‐1H NMR(500MHz,CDCl):δ6.85(d,J=8.0Hz,1H),6.80(s,1H),6.75(d,J=8.2Hz,1H),5.73(br s,2H),4.34(d,J=5.7Hz,2H),3.86(s,3H),2.19(t,J=7.7Hz,2H),1.68‐1.59(m,2H),1.38‐1.18(m,10H),0.87(t,J=7.0Hz,3H)
【0049】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ173.1,146.9,145.30,130.5,120.9,114.5,110.8,56.1,43.7,37.0,31.9,29.5,29.3,25.9,22.8,14.2;C1727NONaについて計算されたHRMS(ESI)[M+Na]:316.1883,実測値:316.1879
[ワンポットにおけるノニバミドの全合成]
【0050】
段階1:50mMバニリン(2a)が13.06mLスケールで使用された。これにより、変換が100%である場合、100mgのバニリルアミン(4a)を生じさせるであろう。バニリンは最初にDMSOに溶解され、次に50mM HEPES緩衝液において、D‐グルコース、塩化アンモニウム及びL‐アラニンと混合された。pHは8.2(1M NaOH)に調整され、溶液は50mLファルコンチューブ内でNADH及び酵素と混合され、250mM L‐アラニン、50mMバニリン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH及び10%v/v DMSO、1.6mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼを最終濃度とした。反応は37℃、暗所において、撹拌なしで実行された。19時間後、変換率は99%を超えることが、HPLC分析によって判定された。第2段階が実行されるまで、溶液は−80℃で保管された(HPLC用のサンプル除去後、全量は13.01mL)。
【0051】
段階2a:前の酵素カスケード反応段階からの粗製反応混合物を含むフラスコ(体積13.01mL、バニリルアミン(99.6mg、0.65mmol、1.00当量)を含む)に、NaHCO(178.9mg、2.13mmol、3.27当量)が加えられ、室温で30分間撹拌された。その後、CHCl(20mL)を加え、反応液を室温で15分間撹拌し続けた。次に、6b(132.1mg、0.75mmol、1.16当量)のCHCl(5.0mL)溶液が滴下され、反応液は室温で更に30分間撹拌された。その後、反応液は40℃に加熱され、(TLCによって監視され)30分間撹拌された。有機層が分離され、水層がCHCl(3x50mL)で洗浄された。混ぜ合わさった有機層は、HCl(2%)水溶液で洗浄され、次に食塩水で洗浄され、その後NaSO上で乾燥された。粗製原料は、クロマトグラフィによって精製され、淡黄色油であるノニバミド(7b)(単離収率92%)を生じさせた。
【0052】
段階2b:前の段階からの乾燥した粗製反応混合物(バニリルアミン94mg、0.62mmol、1.00当量を含む)が2‐メチル‐2‐ブタノール(31mL、20mM)に溶解された。反応液には、Ms 4A(2g)、化合物5b(98.7mg、0.62mmol、1.00当量)、及びリパーゼ(1.9g、20mg/mL)が加えられた。反応液は45℃で48時間撹拌された。その後、反応液は室温まで冷却され、濾過された。溶媒は減圧下で除去され、粗製原料はクロマトグラフィによって精製され、淡黄色油であるノニバミド(7b)(単離収率52%)を生じさせる。
[バニリルアルコールからバニリルアミンを合成する手順]
【0053】
段階1:オーブン乾燥させたマイクロ波バイアルに、バニリルアルコール(1a)(46.3mg、0.3mmol、1.0当量)及びPd(0)‐ナノ触媒(Pd(0)‐AmP‐MFC,20.1mg,0.015mmol、8wt%)27又は(Pd(0)‐CPG、500A、90.0mg、0.015mmol、166μmol/g、2wt%)を入れ、その後、トルエン(0.6mL)を加えた。次に、混合物は密封され、Oが充填されたバルーンがバイアルに接続され、反応液は70℃で撹拌された。3時間後(Pd(0)‐AmP‐MFCが使用された場合)又は2時間後(Pd(0)‐CPG、500Åが使用された場合)、バニリン(2a)への変換率は、99%を超えた。
【0054】
バニリン:IR(neat)λ3335(br),3016(w),2838(w),1668(m),1583(m),1509(m),1461(w),1432(w),1400(w),1265(s),1207(w),1150(s),1118(m),1027(m),957(w),866(w),820(w),779(w),750(m),728(s),666(w),628(w),588(w),551(w)cm‐1H NMR(500MHz,CDCl):δ9.82(s,1H),7.43‐7.40(m,2H),7.03(d,J=8.6Hz,1H),6.35(br s,1H),3.95(s,3H)13C NMR(125MHz,CDCl):δ191.1,151.9,147.3,130.0,127.7,114.5,108.9,56.2;Cについて計算されたHRMS(ESI)[M+H]:153.0546,実測値:153.0544
【0055】
段階2:まだPdナノ粒子を含む、前の段階からの粗製混合物の数滴が、エッペンドルフチューブに移され、200μLの蒸留水と混合された。この溶液内のバニリンの濃度を決定するべく、サンプルが採取され、サンプル内のPdナノ粒子が遠心分離(4000rpm、15分間)で除去され、HPLC分析が実行された。D‐グルコース、塩化アンモニウム及びL‐アラニンが50mM HEPES緩衝液中に溶解され、pHは8.2(1M NaOH)に調整され、溶液はNADH及び酵素と混合され、粗製バニリン溶液(100μL)を含むチューブに直接加えられた。反応物の最終量は、1mLであり、濃度は250mM L‐アラニン、粗製溶液からの1.5064mMバニリン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH、並びに1mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼであった。反応は37℃、暗所において、撹拌なしで実行された。HPLC分析の前に、サンプル内のPdナノ粒子はいずれも遠心分離(4000rpm、15分)で除去された。44時間後、反応が完了し、バニリルアミン(4a)が得られ、変換率は87%であることが、HPLC分析によって判定された。これによって生じる、バニリルアルコール(1a)からバニリルアミン(4a)への全体変換率は87%である。
[バニリンとアセトンとの間のアルドール反応の手順]
【0056】
バニリン(2a)(114.1mg,0.75mmol,1.00当量)及びアセトン(7.5mL)を含むバイアル(8mL)に、N存在下でプロライン(DL‐Proline又はL‐Proline)(26.0 mg,0.23mmol,30mol%)が加えられた。反応液は室温で24時間撹拌され、次に、NHCl(3.0mL)飽和水溶液を加えることで急冷された。反応混合物は酢酸エチル(3x20mL)によって抽出され、混ぜ合わされた有機相は食塩水(10mL)で洗浄され、NaSO上で乾燥された。粗製原料は、クロマトグラフィによって精製され、黄色油である3(単離収率74%)を生じさせた28
【0057】
2:IR(neat)λ3392(br),2924(m),1703(m),1604(w),1515(m),1455(w),1431(w),1363(w),1269(m),1213(m),1153(m),1123(m),1032(m),858(w),819(w),749(s),666(w),638(w),540(w)cm‐1H NMR(500MHz,CDCl):δ6.93(d,J=1.9Hz,1H),6.87(d,J=8.1Hz,1H),6.80(dd,J=8.1,1.9Hz,1H),5.60(br s,1H),5.09(dt,J=9.2,3.0,Hz,1H),3.90(s,3H),3.23(d,J=3.0Hz,1H),2.88(dd,J=17.6,9.3Hz,1H),2.80(dd,J=17.6,3.3Hz,1H),2.20(s,3H)13C NMR(125MHz,CDCl):δ209.4,146.8,145.3,135.0,118.7,114.4,108.4,69.9,56.1,52.2,30.9;C1114Naについて計算されたHRMS(ESI)[M+Na]:233.0784,実測値:233.0784
[アラニン触媒逆アルドール反応]
【0058】
バニリン(2a)は、アラニンによって触媒される逆アルドール反応によってリグニンモデル3から調製された。この系は、ワンポット内における酵素カスケード系で、バニリルアミン(4a)の合成に使用されるためのものであったので、逆アルドール反応に関する初期実験に使用された条件は、以前のバニリルアミンの合成に使用された条件と同一であった。HPLCが分析に使用された。
【0059】
化合物3がDMSO内に溶解され、HEPES緩衝液pH8.2において、L‐アラニンと混合され、最終量を1mL、最終濃度を2.5mM化合物3、250mM L‐アラニン、45mM HEPES、及び10%v/v DMSOとした。反応は37℃で70時間実行され、その後、すべての3が消費された。この時点で、出発原料の38%がバニリンに変換され、残りは3の脱水生成物などの副生物に変換された(変換率は決定されていない)。アラニンは無いが他は同一の組成を有する対照反応は、70時間後にいくらかの3がまだ反応液に存在する状態で、5.3%の変換率でバニリンを生じさせた。このことは、ある程度の自発的な逆アルドール活性が存在するが、アラニン触媒反応より遥かに遅いことを示している。アラニンを含むが、pH7である同一の組成による第3の反応は、いくらかの3がまだ反応液に存在する状態で、70時間後に19%の変換率でバニリンを生じさせた。これらの結果は、表1にまとめられている。
【0060】
L‐アラニンはキラル触媒であり、使用された化合物3はラセミ体である。ラセミ体3の触媒としてのDL‐アラニンの使用、及び、(S)‐3の触媒としてのL‐アラニンの使用を調査するための実験が行われた。また、ラセミ体3の触媒としてのL‐アラニンとの対照反応も比較のために実行された。すべての反応は、以前のように、45mM HEPES pH8.2、10%v/v DMSO、及び2.5mMの化合物3と共に、体積1mL内で実行された。250mM L‐アラニン又は500mM DL‐アラニンが触媒として使用された。室温に116時間置いた後、対照反応において、24%の変換率でバニリンが得られ、ラセミ体触媒を用いた場合は30%、基質として(S)‐3を用いた場合は19%の変換率で得られた。これらの結果は、表1にまとめられている。
【表1】
実行されたアラニン触媒逆アルドール反応の概要
【0061】
[ワンポット内における逆アルドール反応によるバニリルアミンの合成、及びその後のアミノ基転移の手順]
【0062】
D‐グルコース、塩化アンモニウム及びL‐アラニンは、50mM HEPES緩衝液内に溶解され、pHは8.2(1M NaOH)に調整された。リグニンモデル3は、DMSOに溶解され、次に、NADH及び酵素と共に溶液に加えられ、最終体積を1mL、最終濃度を250mM L‐アラニン、2.5mM 化合物3、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH及び10%v/v DMSO、並びに、1mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼとした。反応は37℃、暗所において、撹拌なしで実行された。この結果、92時間後、バニリルアミン(4a)への25%の変換が生じ、HPLC分析によって判定された。
【0063】
50mMではなく100mMのHEPES(最終体積は1mL、最終濃度は250mM L‐アラニン、2.5mM化合物3、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH及び10%v/v DMSO、並びに0.9mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼ)を使用すること以外は同一の反応が繰り返された。反応は37℃、暗所において、撹拌なしで実行された。この結果、90時間後、バニリルアミン(4a)への40%の変換が生じ、HPLC分析によって判定された。
【0064】
バニリン(2a)からのバニリルアミン(4a)の合成のための上述の系に対する、高い緩衝液濃度の影響が調査された。上述の方法と同一の方法で、バニリンがDMSO内に溶解され、次に、HEPES緩衝液100mM内でD‐グルコース、塩化アンモニウム及びL‐アラニンと混合された。pHは8.2(1M NaOH)に調整され、溶液はエッペンドルフチューブ内でNADH及び酵素と混合され、最終体積を1mL、最終濃度を250mM L‐アラニン、50mMバニリン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH及び10%v/v DMSO、並びに、0.9mg/mL ATA、7U/mL L‐アラニンデヒドロゲナーゼ及び10U/mLグルコースデヒドロゲナーゼとした。反応は37℃、暗所において、撹拌なしで実行された。この結果、反応は18時間後に終了し、バニリンのバニリルアミンへの変換はわずか77%であった。同一の系、及び、より低い緩衝液濃度で、95%の変換率(スモールスケール)、及び、99%を超える変換率(スケールアップ)が得られたので、100mMの緩衝液濃度で更に作業しないことが決定された。
[7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸の合成29
【0065】
オーブン乾燥されたフラスコに、Pd(PPh(173.3mg、0.15mmol、3mol%)、及びCuI(19.0mg、0.1mmol、2mol%)が加えられ、フラスコはN存在下で5分間洗浄され、その後、ヘプト‐6‐ヨニック酸(630.8mg、5mmol、1.0当量)、1‐ヨードベンゼン(1.22g、6mmol、1.2当量)、及び、トリエチルアミン(20mL)が加えられた。反応液は50℃に加熱され、16時間撹拌された。その後、粗製原料は濃縮され、酢酸エチル(100mL)及びHCl水溶液(1M、20mL)が加えられ、抽出された。水相は酢酸エチル(100mL)で再度抽出され、混ぜ合わさった有機層はNaSO上で乾燥され、濃縮された。粗製原料はクロマトグラフィによって精製され、茶色の固体である7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸(単離収率82%)が生じた。
【0066】
H NMR(500MHz,CDCl):δ10.75(br s,1H),7.43‐7.36(m,2H),7.32‐7.22(m,3H),2.45(t,J=7.1Hz,4H),1.88‐1.78(m,2H),1.72‐1.63(m,2H)
[フェニルカプサイシンの合成]Ms 4A (100mg)を含むオーブン乾燥バイアルに2‐メチル‐2‐ブタノール(5mL)、7‐フェニルヘプト‐6‐ヨニック酸(20.2mg、0.1mmol、1.0当量)、4a(15.2mg、0.1mmol、1.0当量)、及びNovozyme(100mg)が加えられた。反応液は45℃で48時間撹拌された。その後、反応液は室温まで冷却され、濾過された。溶媒は減圧下で除去され、粗製原料はクロマトグラフィによって精製され、淡黄色油であるフェニルカプサイシン(単離収率95%)を生じさせた。
【0067】
IR(neat)λ3053(w),2937(w),1645(m),1600(w),1513(m),1461(w),1431(m),1373(m),1264(m),1236(w),1154(m),1123(m),1034(m),854(w),818(w),732(s),693(m),542(w),465(w)cm‐1H NMR(500MHz,CDCl):δ7.39‐7.33(m,2H),7.29‐7.24(m,3H),6.85(d,J=8.0Hz,1H),6.80(s,1H),6.75(d,J=8.1Hz,1H),5.67(br s,1H),5.60(s,1H),4.36(d,J=5.7Hz,2H),3.86(s,3H),2.44(t,J=7.0Hz,2H),2.27(t,J=7.1Hz,2H),1.88‐1.80(m,2H),1.69‐1.61(m,2H)
【0068】
13C NMR(125MHz,CDCl):δ172.5,146.8,145.3,131.7,130.5,128.4,127.8,123.9,121.0,114.5,110.8,89.8,81.2,56.1,43.7,36.4,28.4,25.2,19.4;C2123NONaについて計算されたHRMS(ESI)[M+Na]:360.1572,実測値:360.1570
[種々の酸化‐アミノ化カスケード]
方法1(DABCO‐CuCl‐TEMPO法)
【0069】
CuCl(0.495mg、0.05mmol、5mol%)及びDABCO(0.56mg、0.05mmol、5mol%)のトルエン溶液(0.25mL)を含むマイクロ波バイアルが室温で10分間撹拌された。その後、TEMPO(0.78mg、0.015mmol、5mol%)が反応混合物に加えられ、5分間撹拌された。次に、アルコール(0.1mmol)が加えられ、酸素ガスを含むバルーンがバイアルに接続された。混合物は100℃まで加熱され、この温度で2時間撹拌された。方法2(CuCl‐ビピリジル‐TEMPO法)
【0070】
CuCl(0.495mg、0.05mmol、5mol%)及びビピリジル(0.8mg、0.05mmol、5mol%)のトルエン溶液(0.25mL)を含むマイクロ波バイアルが室温で10分間撹拌された。その後、TEMPO(0.78mg、0.015mmol、5mol%)が反応混合物に加えられ、5分間撹拌された。次に、アルコール(0.1mmol)が加えられ、酸素ガスを含むバルーンがバイアルに接続された。混合物は100℃まで加熱され、この温度で16時間撹拌された。方法3(パラジウムナノ触媒法)
【0071】
アルコール(0.1mmol)が、Pd(0)‐ナノ触媒(Pd(0)‐AmP‐MFC、6.7mg、0.05mmol、8wt%,5mol%)のトルエン溶液(0.35mL)を含むマイクロ波バイアルに加えられ、酸素ガスを含むバルーンがバイアルに接続された。混合物は70℃まで加熱され、この温度で16時間撹拌された。方法4(無金属酸化)
【0072】
KBr(1.2mg、0.01mmol、10mol%)の水溶液(1mL)が、アルコール(0.1mmol、1.0当量)及びTEMPO(1.6mg、0.01mmol、10mol%)のCHCL(4mL)溶液を含むマイクロ波バイアルに加えられ、0℃で撹拌された。次に、pH9のNaOCl(5.3g、10mmol、100当量)の溶液が滴下によって反応混合物に加えられた。その後、NaOH(2M、3mL)が加えられ、酸素ガスを含むバルーンがバイアルに接続された。混合物は0℃で3時間撹拌された。
【0073】
方法1‐4を実行後、DMSOがバイアルに加えられた。L‐アラニン、塩化アンモニウム、D‐グルコースが50mM HEPES緩衝液に溶解され、pHは37℃で8.2に調整され、反応バイアルに溶液が加えられた。次に、NADH、GDH、L‐ADH及びATAがHEPES緩衝液(50mM、pH8.2、37℃)に溶解され、反応バイアルに加えられ、最終濃度を250mM L‐アラニン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH、7U/mL L‐ADH、10U/mL GDH及び2mg/mL ATAとした。アルデヒド出発原料の濃度、反応液におけるDMSO及びトルエンの量、並びに全量は、実行された各反応によって異なり、表Xにまとめられている。反応液は37℃、暗所において、撹拌なしで保管された。24時間後、HPLCによって変換が判定された(表2)。
【化7】
【表2】
[a]ATA、L‐ADH、GDH、L‐アラニン、塩化アンモニウム、D‐グルコース、NADH、HEPES、DMSO、H[b]これらの化合物は、前の酸化段階からのバイアルに残っていた。
[トルエンの影響]
【0074】
ATA/L‐ADH/GDHカスケード系のパフォーマンスに対するトルエンの影響が調査された。カスケード系によってベンズアルデヒドがベンジルアミンに変換される反応が、種々の量のトルエンを用いて実行された。ベンズアルデヒドは最初にトルエン及びDMSOの混合物(表Y)に溶解され、1.5mLエッペンドルフチューブに加えられる。L‐アラニン、塩化アンモニウム、D‐グルコースが50mM HEPES緩衝液に溶解され、pHは37℃で8.2に調整され、反応チューブに溶液が加えられた。次に、NADH、GDH、L‐ADH及びATAがHEPES緩衝液(50mM、pH8.2、37℃)に溶解され、反応チューブに加えられ、最終濃度を20mMベンズアルデヒド、250mM L‐アラニン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH、7U/mL L‐ADH、10U/mL GDH、1mg/mL ATAとした。各反応液の全量は1mLであり、DMSO/トルエン混合物は10%v/vであった。反応液は37℃、暗所において、撹拌なしで保管された。変換はHPLCによって、1、2、4、6、24時間後に判定された。すべての反応は4時間後に完了した。結果は表3にまとめられている。
【表3】
[a]全反応量の%v/v。 [b]4時間後にHPLCによって判定された。
[Pd(0)‐MCFの影響]
【0075】
ATA/L‐ADH/GDHカスケード系のパフォーマンスに対するPd(0)‐MCFの影響が調査された。カスケード系によってベンズアルデヒドがベンジルアミンに変換される反応が、種々の量のPd(0)‐MCFで実行された。パラジウムナノ粒子は最初、1.5mLエッペンドルフチューブに加えられた(表Z)。ベンズアルデヒドはDMSOに溶解され、チューブに加えられた。L‐アラニン、塩化アンモニウム、D‐グルコースが50mM HEPES緩衝液に溶解され、pHは37℃で8.2に調整され、溶液は反応チューブに加えられた。次に、NADH、GDH、L‐ADH及びATAがHEPES緩衝液(50mM、pH8.2、37℃)に溶解され、反応チューブに加えられ、最終濃度を5mMベンズアルデヒド、250mM L‐アラニン、150mM塩化アンモニウム、150mM D‐グルコース、1mM NADH、7U/mL L‐ADH、10U/mL GDH、1mg/mL ATAとした。各反応液の全量は1mLであり、10%v/v DMSOであった。反応液は37℃、暗所において、撹拌なしで保管された。変換はHPLCによって、1、2、4、6、24時間後に判定された。すべての反応は4時間後に完了した。結果は表4にまとめられている。
【表4】
[a]4時間後にHPLCによって判定された。
【国際調査報告】