(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
ナノ金属銅粒子を含有する粒子状物質を含む製剤であって、前記粒子状物質の少なくとも10%が単結晶金属銅粒子であり、前記粒子状物質が20〜200ナノメートル(nm)の範囲内の平均二次粒径(d50)を有し、前記ナノ金属銅粒子が少なくとも1種の分散剤によって少なくとも部分的に覆われており、
前記粒子状物質中の結晶酸化第一銅対前記ナノ金属銅粒子の濃度比が多くとも0.4である、製剤。
層を形成している前記分散剤が0.4〜4nm、0.4〜3.5nm、0.4〜3nm、0.4〜2.5nm、0.4〜2.2nmまたは0.4〜2nmの範囲内の計算上の厚さ(S)を有する、請求項1に記載の製剤。
前記粒子状物質の少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%または少なくとも7%が、少なくとも50個の粒子を有する高分解能走査型電子顕微鏡(HRSEM)視野において粒子の手動計数によって決定された、三角形の形態を有する単結晶金属銅粒子である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製剤。
前記粒子状物質の少なくとも5%、少なくとも8%、少なくとも10%または少なくとも15%が、少なくとも10個の粒子を有する高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像視野において粒子の手動計数によって決定された、三角形の形態を有する単結晶金属銅粒子である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製剤。
前記粒子状物質の少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも12%または少なくとも15%、少なくとも18%または少なくとも20%が、少なくとも10個の粒子を有する高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)視野において粒子の手動計数によって決定された、三角形または六角形の形態を有する単結晶金属銅粒子である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製剤。
前記濃度比が多くとも0.35、多くとも0.30、多くとも0.25、多くとも0.20、多くとも0.15、多くとも0.12、多くとも0.10、多くとも0.08、多くとも0.06、多くとも0.05、多くとも0.04または多くとも0.035である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製剤。
前記平均二次粒径が大きくとも180nm、大きくとも150nm、大きくとも120nm、大きくとも100nm、大きくとも90nm、大きくとも85nm、大きくとも80nmまたは大きくとも75nmである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の製剤。
前記平均二次粒径が少なくとも25nm、少なくとも30nm、少なくとも35nm、少なくとも40nm、少なくとも45nmまたは少なくとも50nmである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製剤。
前記粒子状物質の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%が前記単結晶金属銅粒子である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製剤。
少なくとも第1の溶媒をさらに含み、前記粒子状物質および前記溶媒が分散液を生成し、前記分散液中の前記粒子状物質が15重量%〜70重量%、15重量%〜65重量%、20重量%〜75重量%、25重量%〜75重量%、30重量%〜75重量%、20重量%〜65重量%、25重量%〜65重量%または30重量%〜65重量%の範囲内である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の製剤。
前記第1の溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールおよびテルピネオールからなる群から任意選択で選択されるアルコールを含む、または主に含む、請求項14に記載の製剤。
前記分散剤がアラビアゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアリルアミン(PAAM)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APS)、脂肪酸、ラウリルアミン、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、およびテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤を含む、または主に含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の製剤。
前記分散剤対前記粒子状物質の重量比は、多くとも0.04、多くとも0.03、多くとも0.025、多くとも0.022または多くとも0.020、および少なくとも0.015、少なくとも0.016、少なくとも0.017、少なくとも0.018、少なくとも0.019または少なくとも0.020である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の製剤。
前記分散液中の結晶酸化第一銅の濃度が少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも6ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたって実質的に維持されるように、前記粒子状物質を適応させ、および前記分散剤と前記溶媒が選択される、請求項15〜18のいずれか一項に記載の製剤。
前記分散液中の結晶酸化第一銅の濃度が少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも6ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたって、絶対百分率ベースで2パーセント以内、1.5パーセント以内または1パーセント以内に維持されるように、前記粒子状物質を適応させ、および前記分散剤と前記溶媒が選択される、請求項15〜19のいずれか一項に記載の製剤。
(a)第1の分散剤の存在中、酸性水性媒質中の第二銅イオンに水素化ホウ素を添加して、前記第二銅イオンを還元し、第1の分散液中に前記ナノ金属銅粒子を生成するステップと;
(b)生成物分散液中に前記ナノ金属銅粒子を供給するステップと
を含むプロセスによって生成される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の製剤。
前記プロセスは、前記水性媒質のpHが2.5〜7の範囲内、2.5〜6.5の範囲内、または2.5〜6の範囲内にあるとき、前記増加分の添加を省略することをさらに含む、請求項22に記載の製剤。
前記プロセスが、前記粒子状物質の少なくとも10%を単結晶金属銅粒子として維持しながら、および生成物分散液中の前記粒子状物質の前記平均二次粒径を20〜200nmの範囲内に維持しながら、分散液を少なくとも6ヵ月間エージングさせることをさらに含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の製剤。
前記平均二次粒径が40〜90nmの範囲内であり、層を生成している前記分散剤が0.6〜3nmの範囲内の計算上の厚さを有し、前記粒子状物質の少なくとも40%が前記単結晶金属銅粒子であり、前記分散剤がPVPを含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載の製剤。
前記粒子状物質が分散液中に配置されており、前記分散液中の前記粒子状物質の濃度が20%〜65%の範囲内または20%〜60%の範囲内であり、前記分散剤の量が前記銅粒子の重量の多くとも4重量%であり、前記分散液の粘度が25℃で多くとも70cP、多くとも60cP、多くとも50cPまたは多くとも45cPである、請求項27に記載の製剤。
前記分散液中の前記粒子状物質の前記濃度が少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%または少なくとも50%である、請求項28に記載の製剤。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一部の教示によれば、ナノ金属銅粒子などの粒子状物質を含む製剤が提供され、粒子状物質の少なくとも10%は単結晶金属銅粒子であり、粒子状物質は20〜200ナノメートル(nm)の範囲内の平均二次粒径(d
50)を有し、ナノ金属銅粒子は少なくとも1種の分散剤によって少なくとも部分的に覆われており、粒子状物質中の結晶酸化第一銅対ナノ金属銅粒子の濃度比は、多くとも0.4である。
【0004】
本発明の別の態様によれば、(a)分散剤の存在中で、酸性水性媒質中の第二銅イオンに水素化ホウ素を添加して、第二銅イオンを還元し、第1の分散液中にナノ金属銅粒子を生成するステップと、(b)生成物分散液中にナノ金属銅粒子を供給するステップとを含むプロセスが提供される。
【0005】
本発明の別の態様によれば、本プロセスによって生成される製剤が提供される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、(a)第1の分散剤の存在中で、水性媒質中の第二銅イオンに酸性pHで水素化ホウ素を添加して、第二銅イオンを還元し、および第1の分散液中でナノ金属銅粒子を生成することと、(b)ナノ金属銅粒子から少なくとも一部の水性媒質を分離することとを含む、ナノ金属銅粒子を含有する製剤を生成するプロセスが提供される。
【0007】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、該プロセスは水性媒質のpHが多くとも7のとき、または水性媒質のpHが2.5〜7の範囲内、2.5〜6.5の範囲内、もしくは2.5〜6の範囲内であるとき、増加分の添加を省略することをさらに含む。
【0008】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、該プロセスは、生成物分散液中にナノ金属銅粒子を供給するために第1の分散液を処理することをさらに含む。
【0009】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、濃度比は多くとも0.35、多くとも0.30、多くとも0.25、多くとも0.20、多くとも0.15、多くとも0.12、多くとも0.10、多くとも0.08、多くとも0.06、多くとも0.05、多くとも0.04または多くとも0.035である。
【0010】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、平均二次粒径は、大きくとも180nm、大きくとも150nm、大きくとも120nm、大きくとも100nmまたは大きくとも80nmである。
【0011】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、平均二次粒径は、少なくとも25nm、少なくとも30nm、少なくとも35nm、少なくとも40nm、少なくとも45nmまたは少なくとも50nmである。
【0012】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、粒子状物質の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%は、単結晶金属銅粒子である。一般的に、粒子状物質中の大部分の粒子は、単結晶金属銅粒子であり得る。
【0013】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、標準加熱焼結後の銅粒子の比電気抵抗は、多くとも5×10
−3Ω・cm、多くとも2×10
−3Ω・cm、多くとも1×10
−3Ω・cm、多くとも5×10
−4Ω・cm、多くとも2×10
−4Ω・cmまたは多くとも1×10
−4Ω・cmである。
【0014】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、標準加熱焼結後の銅粒子の比電気抵抗は、5×10
−5〜5×10
−3Ω・cmの範囲内、8×10
−5〜2×10
−3Ω・cmの範囲内または1×10
−4〜1×10
−3Ω・cmの範囲内である。
【0015】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散剤はポリビニルピロリドン(PVP)または純粋なポリビニルピロリドンを含む、主に含む、または本質的にそれからなる。
【0016】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、アラビアゴム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアリルアミン(PAAm)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、3−(アミノプロピル)トリメトキシシラン(APS)、脂肪酸、ラウリルアミン、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、およびテトラオクチルアンモニウムブロミド(TOAB)からなる群から選択される少なくとも1種の分散剤を含む、または主に含む。
【0017】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散剤の重量平均分子量は、8,000〜500,000、10,000〜500,000、15,000〜500,000、20,000〜500,000、30,000〜500,000、15,000〜300,000、15,000〜200,000、15,000〜150,000または30,000〜150,000の範囲内である。
【0018】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、製剤は、少なくとも第1の溶媒と、粒子状物質と、分散液を生成する溶媒とをさらに含む。
【0019】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散液中の粒子状物質の濃度は、5重量%〜90重量%、5重量%〜85重量%、5重量%〜80重量%、5重量%〜75重量%、5重量%〜70重量%、5重量%〜65重量%、10重量%〜75重量%、10重量%〜70重量%、10重量%〜65重量%、15重量%〜80重量%、15重量%〜70重量%、15重量%〜65重量%、20重量%〜75重量%、25重量%〜75重量%、30重量%〜75重量%、20重量%〜65重量%、25重量%〜65重量%、25重量%〜60重量%、25重量%〜55重量%、30重量%〜60重量%、30重量%〜55重量%または30重量%〜65重量%の範囲内である。
【0020】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散液中の粒子状物質の濃度は、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%または少なくとも50重量%である。
【0021】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、第1の溶媒はアルコールを含む、または主に含む。
【0022】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコールおよびテルピネオールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールを含む。
【0023】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、第1の溶媒は、グリコールおよびグリコールエーテルからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含む、または主に含む。
【0024】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールおよびヘキシレングリコールからなるグリコールの群から選択される。
【0025】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、グリコールは、ジエチレングリコールよびトリエチレングリコールのうちの少なくとも1種を含む、または主に含む。
【0026】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、グリコールエーテルは、エチレングリコールエーテルおよびプロピレングリコールエーテルからなるグリコールエーテルの群から選択される。
【0027】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、グリコールエーテルは、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルおよびトリプロピレングリコールモノブチルエーテルからなるグリコールエーテルの群から選択される少なくとも1種のグリコールエーテルを含む。
【0028】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、グリコールエーテルは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルおよびトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなるグリコールエーテルの群から選択される少なくとも1種のグリコールエーテルを含む。
【0029】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、少なくとも1種の分散剤対粒子状物質の重量比は、少なくとも0.015、少なくとも0.016、少なくとも0.017、少なくとも0.018、少なくとも0.019または少なくとも0.020である。
【0030】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散剤対粒子状物質の重量比は、多くとも0.2、多くとも0.16、多くとも0.12、多くとも0.08、多くとも0.05、多くとも0.04、多くとも0.03、多くとも0.025、多くとも0.022または多くとも0.020である。
【0031】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、粒子状物質は分散液中に配置されており、分散液中の粒子状物質の濃度は20%〜65%の範囲内、または20%〜60%の範囲内であり、分散剤の量は銅粒子の重量の多くとも4重量%であり、分散液の粘度は、25℃で多くとも70cP、多くとも60cP、多くとも50cPまたは多くとも45cPである。
【0032】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、分散液中の粒子状物質の濃度は、少なくとも25%または少なくとも30%、およびより一般的には少なくとも35%、少なくも40%、少なくとも45%または少なくとも50%である。
【0033】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、酸化第一銅の濃度が少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも6ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたって実質的に維持されるように、粒子状物質を適応させ、および分散剤と溶媒は選択される。
【0034】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、酸化第一銅の濃度が少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも6ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたって、絶対百分率ベースで2パーセント以内、1.5パーセント以内または1パーセント以内に維持されるように、粒子状物質を適応させ、および分散剤と溶媒は選択される。
【0035】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、結晶酸化第一銅は、初期の時点で製剤中に特定の酸化第一銅濃度(Cu
2O濃度(i))を有し、初期後、初期の総銅濃度(全Cu%)によって標準化された、製剤中の結晶酸化第一銅濃度の増加が、特定の酸化第一銅濃度の値(V)内で維持されるように、粒子状物質を適応させ、および分散剤と溶媒は選択され、値(V)は百分率で表され、
V=100・(Cu
2O濃度(t)−Cu
2O濃度(i)/(全Cu%)
で規定され、Cu
2O濃度(t)は初期からの経過時間(t)で評価される結晶Cu
2Oの濃度であり、価(V)は多くとも3%であり、経過時間(t)は少なくとも2ヵ月である。
【0036】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、値(V)は多くとも2%、多くとも1.5%、多くとも1%、多くとも0.8%、多くとも0.6%、多くとも0.5%または多くとも0.4%である。
【0037】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、経過時間は少なくとも3ヵ月、少なくとも4ヵ月、少なくとも6ヵ月または少なくとも12ヵ月である。
【0038】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、製剤は、(a)分散剤の存在中で、酸性水性媒質中の第二銅イオンに水素化ホウ素を添加して、第二銅イオンを還元し、第1の分散液中にナノ金属銅粒子を生成するステップと;(b)生成物分散液中にナノ金属銅粒子を供給するステップとを含むプロセスによって生成される。
【0039】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、該プロセスは水性媒質のpHが多くとも7であるとき、増加分の添加を省略することをさらに含む。
【0040】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、該プロセスは、水性媒質のpHが2.5〜7の範囲内、2.5〜6.5の範囲内、または2.5〜6の範囲内であるとき、増加分の添加を省略することをさらに含む。
【0041】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、水素化ホウ素は、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素カリウムを含む、主に含む、または実質的にそれからなる。
【0042】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、該プロセスは、生成物分散液中に第2の分散剤を導入することをさらに含む。
【0043】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、第2の分散剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)を含む、主に含む、または本質的にそれからなる。
【0044】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、水素化ホウ素の添加は、少なくとも15分間、少なくとも30分間または少なくとも60分間にわたって行われる。
【0045】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、ステップ(a)に続いて、ナノ金属銅粒子は、洗浄され、次いで濃縮される。
【0046】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、ステップ(a)の間、水性媒質のpHは、1.5未満、1.0未満または0.5未満に達する。
【0047】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、ステップ(a)に続いて、該プロセスは、銅粒子からの少なくとも一部の水性媒質を交換して、生成物分散液を生成することを含む。
【0048】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、第1の分散液に関して、交換することは、粒子状物質を濃縮して生成物分散液を生成することを含み、生成物分散液は、粒子状物質中で濃縮される。
【0049】
記載の好適な実施形態におけるさらなる特徴によれば、該プロセスは、少なくとも10%の粒子状物質を単結晶金属銅粒子として維持しながら、および生成物分散液中の粒子状物質の平均二次粒径を20〜200nmの範囲内に維持しながら、分散液を少なくとも6ヵ月間、少なくとも9ヵ月間、少なくとも12ヵ月間、少なくとも18ヵ月間または少なくとも24ヵ月間エージングさせることをさらに含む。
【0050】
前述の考察は、添付の図(1〜6)と組み合わせて、本発明の以下の詳細な記載から、より容易に理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0052】
ナノ単結晶金属銅粒子を含有する本発明の製剤および分散液の原理、ならびにそのような製剤および分散液を生成するための本発明の方法の原理は、図および添付の説明を参照することにより、よりよく理解することができる。
【0053】
本発明の少なくとも一実施形態を詳細に説明する前に、本発明が、以下の説明に記載の、または図に示す詳細な構成および構成成分の配置への適用に限定されないことが理解されよう。本発明は、別の実施形態が可能であり、または種々の方法で実施するもしくは行うことができる。また、本明細書で使用されている表現および用語は、説明目的であって、限定するとみなされるべきではない。
【0054】
本発明者らは、粒子の大部分が単結晶粒子であるナノ銅粒子を生成する方法を見出した。しかし、これらのナノ銅粒子の安定な分散液の生成は極めて複雑であり、時として反直観的であることを本発明者らは見出した。安定な分散液の生成は、最終生成物分散液で使用することができる種々の有機溶媒中でそのような分散液を直接生成するとき、特に難しい場合がある。加えて、既製の(例えば、市販の)ナノ銅粒子から安定な分散液を生成することは、極めて困難で予測不可能であることもわかった。
【0055】
これらの課題にもかかわらず、意外にも、本発明者らは、安定な分散液を維持しながらそのようなナノ銅粒子を精製する方法を発見した。それによって、単結晶ナノ銅粒子は、有機溶媒と接触するまたは置換する間であっても、および濃縮分散液の製剤が少なくとも2重量%、より一般的には少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または最高90重量%の銅を有する間も、その単結晶の性質を保持する。
【0056】
さらに、本発明の方法は、好ましくは、大部分がまたは主に単結晶の銅粒子を含む粒子状物質を含有する濃縮分散液を、凝集させることなく生成することができ、粒子状物質(および一般的に、単結晶銅粒子)は少なくとも20nm、少なくとも25nm、少なくとも30nm、少なくとも35nm、少なくとも40nm、少なくとも45nmまたは少なくとも50nmの平均二次粒径を特徴とする。分散液中の粒子状物質(および典型的には単結晶銅粒子)は、多くとも200nmまたは多くとも180nm、より典型的には多くとも150nm、多くとも120nm、多くとも100nmまたは多くとも80nmの平均二次粒径を有し得る。
【0057】
本発明者らは、銅粒子の単結晶構造が、焼結後に低い比電気抵抗値を得るための決定要因であると考える。本発明者らはさらに、銅粒子の単結晶構造により、明らかな凝集を起こすことなく、銅ナノ粒子の高濃縮分散液の製剤が可能となると考える。
【0058】
他の方法によって単結晶銅ナノ粒子を生成することは可能であり得るが、本発明の分散液は、以下を含むいくつかの点の少なくとも一つにおいて区別され得る:
1.平均二次粒径(d
50)、
2.分散液中の銅粒子の濃度、
3.銅粒子中の単結晶銅粒子の重量百分率、
4.結晶酸化第一銅対結晶ナノ金属銅の濃度比
5.粒子状物質の加熱焼結後の粒子状物質の電気抵抗、および
6.分散液の粘度。
【0059】
1.平均粒径
本発明の濃縮分散液において、ナノ銅粒子は20〜200nmの範囲内の平均二次粒径(d
50)を有する。これらの分散液中の粒子状物質は、10%超の単結晶金属銅粒子、より典型的には、大部分がまたは主に単結晶の金属銅粒子を含有することができる。
【0060】
直径が80nmの単結晶粒子の生成は、直径が10nmの単結晶粒子のサイズの500倍超である[(80/10)
∧3=512]ことを強調しなければならない。単結晶粒子を溶媒中で直径10nmから80nmに成長させるには、10ナノメートルの単結晶粒子を最初に生成するのに必要な量よりも500倍超の過飽和銅を10ナノメートルの単結晶粒子上に堆積させる必要がある。
【0061】
結晶化プロセスにおいて、核生成および凝集を含む競合機構が、結晶成長を妨害することも、または優勢となることさえあり得る。反応沈殿プロセスの場合、反応プロセスにおいて難溶性材料などが溶液から沈殿し、特に、全体の過飽和レベルが極めて高く、および局所過飽和レベルがさらに高いことを考慮すれば、これらの競合プロセスにとってかなり有利となり得る。固体の反応体粒子が存在すると、その周囲では局所過飽和がさらに高くなり得て、結晶成長よりも核生成および凝集に有利となり得ることから、これらの競合プロセスにとってさらに有利となり得る。本発明の方法において、銅粒子は、そのような反応性プロセスで溶液から沈殿する。したがって、大部分がまたは主に単結晶の銅粒子である銅粒子の生成は、少なくとも予想外であると思われる。20nm、典型的にはそれを超えるd
50を有する単結晶銅粒子生成物を生成することは、驚くべきことである。
【0062】
2.分散液中の銅粒子の濃度
本発明の濃縮分散液中のナノ銅粒子の濃度は、典型的には5重量%〜90重量%の範囲内である。ナノ粒子の生成は、それによって相対的に希釈された分散液が得られる条件で典型的に行われる。洗浄、溶媒添加および/または置換などを含み得る、希釈した分散液の処置は、銅ナノ粒子の凝集の主な一因となり得る。以下に記載の本発明のプロセスは、反応段階で高い割合の単結晶銅ナノ粒子を生成し、および銅ナノ粒子の凝集をかなりの程度まで防ぐことによってその高い割合を主に保持する。
【0063】
3.銅粒子中の単結晶銅粒子の重量百分率
本発明の濃縮分散液において、ナノ銅粒子は、重量ベースで、粒子数ベースで、または断面ベースで、部分的に、大部分が、または主に単結晶の銅粒子であり得る。単結晶粒子の存在は、電子後方散乱回析(EBSD)によって、定性的に証明された。以下にさらに詳細に記載のように、ランダムに選択した点で複数の走査を行うことによって結果の定量を得た。本発明の分散液において、ナノ銅粒子の少なくとも10%が単結晶金属銅粒子であり、より一般的にはナノ銅粒子の少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%が単結晶金属銅粒子であることを本発明者らは見出した。
【0064】
4.結晶酸化第一銅対ナノ金属銅の濃度比
本発明の濃縮分散液は、銅ナノ粒子と酸素との反応の結果、少ない割合の酸化第一銅(Cu
2O)を含有し得る。酸化第一銅の存在は、粉末X線回析(粉末XRD)によって定性的に証明された。本発明の分散液において、結晶酸化第一銅対ナノ結晶金属銅の濃度比は、多くとも0.4、多くとも0.35、多くとも0.30、および典型的には、多くとも0.25、多くとも0.20、多くとも0.15、多くとも0.12、多くとも0.10、多くとも0.08、多くとも0.06または多くとも0.03であることを本発明者らは見出した。
【0065】
5.分散液中の粒子状物質の電気抵抗
本発明の濃縮分散液において、加熱焼結後の粒子状物質、詳細には、銅粒子の粒子状物質は、特定の範囲の電気抵抗を特徴とし得る。粒子状物質の電気抵抗は、四点プローブ(4PP)方法を用いて測定した。以下にさらに詳細に記載のように、粒子状物質を300℃で30分間の標準的な加熱焼結後、本発明の製剤中の電気抵抗が、多くとも5×10
−3Ω・cm、より典型的には多くとも2×10
−3Ω・cm、多くとも1×10
−3Ω・cm、多くとも8×10
−4Ω・cm、多くとも5×10
−4Ω・cm、多くとも2×10
−4Ω・cmまたは多くとも1×10
−4Ω・cmであることを本発明者らは見出した。焼結した粒子状物質の比電気抵抗は、5×10
−5〜5×10
−3Ω・cmの範囲内、8×10
−5〜2×10
−3Ω・cmの範囲内または1×10
−4〜1×10
−3Ω・cmの範囲内であり得る。
【0066】
6.分散液の粘度
本発明の濃縮分散液において、分散液の粘度は、分散液が使用され得る潜在的応用に大いに影響を及ぼし得る。例えば、インクジェット式印刷に好適な分散液は、噴射温度で、約5〜60cP、より典型的には5〜40cPの粘度を必要とし得る。
【0067】
分散液を生成するのに用いられる材料およびプロセスの種々の態様は、用いられる分散剤のタイプおよび分散液中でのその濃度、用いられる溶媒のタイプおよび分散液中でのその濃度、ならびに分散液中の固体の濃度を含み、得られる分散液の粘度に影響を与える。
【0068】
本発明の製剤中の粒子状物質が比較的平滑な面のナノ粒子、より詳しくは、単結晶銅ナノ粒子を高い百分率で含有し得ることを本発明者らは見出した。種々の他のナノ銅粒子に関して、本発明の製剤中の粒子状物質が粒子状物質の単位重量当たりに必要な分散剤がより少ないことも本発明者らは見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、この構造上の特徴が、少なくとも6ヵ月、少なくとも12ヵ月または少なくとも18ヵ月間の貯蔵の間、物理的および化学的安定性を維持しながら、本発明の分散液が比較的低濃度の分散剤(または分散剤層の厚さ)を必要とする能力に寄与すると、本発明者らは考える。さらに、種々の分散液中で本発明の粒子状物質を使用すると、従来技術のナノ銅粒子を使用した類似の分散液と比べて、これらの分散液の粘度を明らかに減少させることができる。
【0069】
以下に記載のように、分散液の粘度を、銅粒子の種々の濃度に関して測定した。本発明の分散液において、25℃での粘度は、多くとも10000cP、多くとも5000cPまたは多くとも2000cP、より典型的には、多くとも1000cP、多くとも600cP、多くとも300cP、多くとも200cP、多くとも120cP、多くとも80cP、多くとも60cP、多くとも45cP、多くとも35cP、多くとも25cPまたは多くとも20cPであることを本発明者らは見出した。
【0070】
ここで図を参照すると、
図1は、本発明の一態様によるナノ銅生成物を生成する方法の略ブロック図である。この方法は、以下のステップを含み得る。
【0071】
ステップ1:第1の分散剤の存在中で、水素化ホウ素を用いて水性媒質中の第二銅イオンを還元して、ナノ金属銅粒子を生成し、銅粒子は20〜200nmの範囲内の平均二次粒径を有する。
【0072】
ステップ2:ステップ1の銅粒子を精製する。水性媒質も銅粒子から部分的に除去して、銅粒子の大部分を含有する濃縮物を生成することができる。
【0073】
ステップ3:精製した銅粒子に少なくとも1種の溶媒を導入して、水性媒質の大部分またはすべてをそれと置き換える。
【0074】
ここで、ナノ銅生成物を生成する本発明の方法の種々の実施形態をさらに詳細に述べる。
【0075】
ステップ1
少なくとも1種の可溶性銅化合物を水性溶媒に溶解して、溶解した第二銅イオンを含有する第1の水溶液を生成する。次いで、還元剤、アルカリ性水素化ホウ素(例えば、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化ホウ素カリウム)をこの第1の溶液に、好ましくは勢いよく撹拌しながら徐々に、例えば、半連続的に加える。
【0076】
可溶性銅化合物が塩化第二銅であり、アルカリ性水素化ホウ素が水素化ホウ素ナトリウムであると仮定して、全体の反応化学量論は実質的に以下の通りであり得る:
2CuCl
2+NaBH
4+3H
2O=2Cu+H
3BO3+2H
2+3HCl+NaCl。
しかし、さまざまな副反応または競合反応が起こることがある。
【0077】
必要に応じて、消泡剤を導入して、任意のプロセスステップで発泡を制御する、防止する、または減少させることができる。典型的に、消泡剤は、アルカリ性水素化ホウ素を第1の溶液に導入する前に加えてもよい。
【0078】
第1の溶液が生成された後、分散液中の銅粒子の酸化を減少させるために、第2の溶液の導入の間、および第1の溶液と第2の溶液の成分間の化学反応の間ずっと、アルゴンなどの不活性ガスを常に送風する、または溶液中に泡立たせてもよい。
【0079】
勢いのよい機械撹拌を適用してもよく、および周辺温度範囲内(一般的に10℃と35℃の間)で開始してもよい。
【0080】
反応混合物中で種々の分散剤、特にポリビニルピロリドン(PVP)を用いてよい。そのような分散剤が存在すると、反応の間、および後続処理の前に粒子の凝集を減少させる、または実質的に防止することができる。
【0081】
PVPの使用が、特に有利なことが判明した。PVPの平均分子量が、約2,000〜約3,000,000g/モルの範囲内であるとき、特に効果的であることを、本発明者らは見出した。ほとんどの場合、PVP分子は約8,000〜700,000g/モル、10,000〜500,000g/モル、10,000〜350,000g/モル、10,000〜250,000g/モル、10,000〜200,000g/モル、10,000〜150,000g/モルまたは10,000〜100,000g/モルを有する。より典型的には、PVPの平均分子量は、少なくとも15,000g/モル、少なくとも20,000g/モル、少なくとも25,000g/モル、少なくとも30,000g/モルまたは少なくとも35,000g/モルである。
【0082】
本発明の種々の製剤および分散液の生成において、凝集または明らかな凝集を起こすことなく、単結晶金属銅粒子を生成することは有利であることを本発明者らは見出した。以下に詳細に記載する銅ナノ粒子の生成反応は、好ましくは少なくとも1種の溶解した銅塩を含有する酸性溶液中で行われ得る。
【0083】
溶液のpHは、反応全体にわたってモニターしてもよい。水素化ホウ素を反応混合物に徐々に加えると、pHは最初、低下することがあることを本発明者らは観察した。水素化ホウ素の増加分を添加し続けると、pHは続いて0に近い高酸性pHから少なくとも2、次いで最高約10のpHまでほとんど単調に上昇することがある。
【0084】
pHを、特定のカットオフポイントを超えて上昇させると、不都合なことに銅粒子の凝集が結果として生じ得ることを本発明者らは発見した。より詳しくは、カットオフpHを、7超、7.5超、8超、8.5超、または9超に増加させると、凝集の増加がいくつかの実験で観察された。一般的に、高い塩基性pHは、高い凝集度と相関した。したがって、本発明に従い、水素化ホウ素の増加分の添加を省略すると、銅ナノ粒子生成反応は、高くとも7、高くとも6.5、高くとも6、高くとも5.5、高くとも5、高くとも4.5、高くとも4、高くとも3.5、高くとも3または高くとも2.5の反応混合物のpHに対応するエンドポイントで終了する。しかし、約2.5より下のpHでは、銅の値から金属銅への変換が損なわれ得ることを、本発明者らは見出した。
【0085】
ステップ2
典型的に、水または水性溶媒を用いて、好適な精製システムで、ステップ1で得られた分散液を精製することができる。不都合な凝集が確実に起こらないようにまたは明らかに減少するように、粒子状物質(または銅粒子)の濃度を常に予め設定した値より下(90重量%未満、好ましくは80重量%未満、70重量%未満または60重量%未満)に維持しながら、使用済みの水性液を交換するための水または水性溶媒の精製システムへの導入を制御することができる。その結果、銅粒子の形状を有害に変化させることなく、または銅粒子を凝集させることなく、水性液中の実質的にすべての塩および大部分の分散剤が除去される。
【0086】
水性溶媒は、水のほかに、極性有機溶媒などの有機溶媒を含んでもよい。ステップ2で生成されるストリームは、典型的に、大部分のナノ銅粒子を含有する濃縮物と、低濃度の銅ナノ粒子を含有する、好ましくは銅ナノ粒子を実質的に含有しない比較的希釈されたストリームとを含む。ステップ2において、実質的にすべての塩、分散剤の一部、未反応材料、副生成不純物、および生成された銅粒子とともに存在する液体の一部が除去される。しばしば、塩の最終濃度(銅の重量に基づく)、分散剤の最終濃度(銅の重量に基づく)、および銅粒子の最終濃度(分散液の重量に基づく)の特定の値を予め設定して、これらの予め設定した値を満たせば、ステップ2の作業は完了したと見なされる。
【0087】
ステップ1を参照して上述したように、銅ナノ粒子の酸化および酸化銅の生成を防止するため、または少なくとも減少させるために、ステップ2は、好ましくはアルゴンなどの不活性ガスの一定の流れの下で実施され得る。
【0088】
水相中のわずかな銅粒子も失えばプロセスが経済的に実行不可能となることから、銅粒子を失うことなく、水性液から銅粒子を分離することができる少なくとも1種の膜を有する膜精製システムなどの精密濾過システムでステップ2を行うことができることを本発明者らは見出した。
【0089】
あるいは、ステップ2は遠心分離システムを使用して行うこともできる。しかし、遠心分離手順は銅金属粒子の明らかな凝集を引き起こし得ることから、この精製方法はあまり好ましくない。加えて、遠心分離したナノ粒子は、生成物分散液を生成するために再分散させなければならず、追加の操作および処理は銅金属のさらなる酸化を引き起こし得る。
【0090】
本発明に一般に関連する精密濾過システムおよび方法は、Paganaらにより“Applied Pilot−Scale Studies on Ceramic Membrane Processes for the Treatment of Wastewater Streams”(Global NEST Journal, Vol.8,No.1, pp23−30,2006)に開示されており、本明細書に完全に記載されているかのように、参照によってその全内容が組み込まれている。
【0091】
膜精製システムの少なくとも1つの膜は、分散液中のナノ銅粒子を濾過して取り除くことができなければならない。この目的で、この膜の特徴的な孔径は、ナノ銅粒子を保持するのに適している範囲内であり得る。膜は金属材料、セラミック材料、ポリマー材料、または当業者に公知であり得る他の材料でできていてもよい。
【0092】
ステップ3
少なくとも1種の有機溶媒を、ステップ2で利用した方法と同様の方法で、ステップ2で得られた精製分散液の水性液の大部分と置換することができる。同じ精製システムを用いてもよい。水性液を置換する際に、銅粒子のさらなる精製が得られ、これは、種々の生成物および用途に必須であり得る。
【0093】
しかし、粒子状物質(または銅粒子)の濃度を特定の所望の値より下に維持するために、水性液を蒸発させる蒸発システムにおいて、所望の有機溶媒を同時に添加して、有機溶媒を水性液と置換してもよい。典型的に、固体の濃度は、多くとも90重量%、多くとも85重量%または多くとも80重量%である。
【0094】
任意選択で、分散液から大きな粒子を分離するために、追加のデカンテーションステップを、ステップ2の分散液の洗浄と、ステップ3の分散液の溶媒の変更の間に追加してもよい。
【0095】
有機溶媒は、好ましくは水溶性であり得て、ステップ2から残存する分散剤または分散液を容易に溶解させることができる。種々の溶媒が、単独でまたは少なくとも1種の追加の溶媒と混合して、プロセスのステップ3の溶媒として適切であり得る。これらの溶媒としては、グリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールおよびヘキシレングリコール;アルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのブタノール、ベンジルアルコールおよびテルピネオール;グリコールエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は共溶媒としても使用してよい。
【0096】
溶媒で用いることができる好適なグリコールエーテルとしては、エチレンもしくはプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレンもしくはプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレンもしくはプロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレンもしくはプロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレンもしくはプロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、エチレンもしくはプロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレンもしくはジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレンもしくはジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレンもしくはジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレンもしくはジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテルもしくはトリプロピレングリコールメチルエーテル(TPM)、トリエチレンもしくはトリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、およびトリエチレンもしくはトリプロピレングリコールモノブチルエーテルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
酢酸塩、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(PMA)またはアセトンを含む種々の溶媒は、ステップ3での使用にあまり適当でない、または不適当であり得る。
【0098】
有効期間
ステップ1に記載のようにナノ銅粒子を調製することによって、およびステップ2および3に記載のように処置手順を実施することによって、本発明のナノ銅分散液は格別の安定性(少なくとも6ヵ月、より一般的には少なくとも12ヵ月、少なくとも18ヵ月または少なくとも24ヵ月の有効期間が保証される)を達成することができる。
【0099】
本発明の分散液は、四点プローブ(4PP)方法を用いて測定すると、極めて低い比抵抗値(多くとも5×10
−3Ω・cm、多くとも2×10
−3Ω・cm、多くとも1×10
−3Ω・cm、多くとも8×10
−4Ω・cm、多くとも5×10
−4Ω・cm、多くとも2×10
−4Ω・cm、多くとも1×10
−4Ω・cm、多くとも8×10
−5Ω・cm、多くとも5×10
−5Ω・cm、多くとも2×10
−5Ω・cmまたは多くとも1×10
−5Ω・cm)を特徴とすることができる。
【0100】
本発明の分散液は、2〜200nmの範囲内で平均二次粒径(d
50)を有する粒子状物質を特徴とすることができる。これらの分散液中の粒子状物質は、主に単結晶金属銅粒子を含むことができる。EBSDで測定すると、本発明の分散液中の固形画分(または「粒子状物質」)は、単結晶金属銅粒子を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%または少なくとも70%含有し得る。
【0101】
本発明のナノ銅粒子の分散液を生成する際に、金属銅粒子の酸化第一銅への部分酸化が観察され得ることを本発明者らは見出した。しかし、アルゴンなどの不活性ガスの一定の流れの下で、酸化反応をほとんど減少させる、または防止することができる。このように、粒子状物質中の酸化第一銅対金属銅の濃度比は、多くとも0.4または多くとも0.35、より典型的には多くとも0.30、多くとも0.25、多くとも0.20、多くとも0.15、多くとも0.12または多くとも0.10であり得る。
【0102】
より詳しくは、粉末X線回析(XRD)を用いて測定すると、本発明の分散液は、多くとも0.4または多くとも0.35、より典型的には多くとも0.3、多くとも0.2、多くとも0.15、多くとも0.2、多くとも0.10、多くとも0.09、多くとも0.08、多くとも0.06または多くとも0.03の結晶酸化第一銅対ナノ結晶金属銅の低濃度比を特徴とすることができることを本発明者らは見出した。
【0103】
実施例3および4を参照して以下により詳細に記載の
図2および3に示すように、単結晶金属銅粒子は明確な幾何学的形状を有し、凝集体または多結晶金属銅粒子よりも平滑な表面を有する。
【0104】
理論に束縛されることなく、本発明の製剤および分散液の単結晶金属銅ナノ粒子の平滑な表面は、酸化表面積の低濃度に寄与することができる。理論によって制限されることを望むものではないが、単結晶銅ナノ粒子の表面が平滑なため、酸素および水の分子は結晶表面に吸着しにくく、かつ容易に脱着し得ることから、隣接する銅原子と反応して酸化銅を生成する機会が明らかに減少すると、本発明者らは考える。対照的に、銅ナノ粒子凝集体または多結晶金属銅ナノ粒子は、特徴的に、安定した吸着部位が比較的豊富にあり、銅表面への侵食の速度を加速させ、酸化銅対銅の比率が高くなることがある。
【0105】
上記で開示したように、単結晶銅ナノ粒子の平滑な表面および酸化第一銅生成の減少は、さらに、本明細書に開示した本発明の分散液の安定性に寄与する。実施例17を参照して以下に記載のように、本発明の分散液は少なくとも12ヵ月間安定した状態を保つことができ、その期間、分散液中の酸化第一銅または結晶酸化第一銅の濃度の上昇は、7%未満、5%未満、3%未満、より一般的には1.5%未満である。場合によっては、分散液中の酸化第一銅または結晶酸化第一銅の濃度は15ヵ月または18ヵ月にわたっても、まったく上昇しないことを本発明者らは見出した。
【0106】
本発明の分散液の濃度は、ステップ3で加えられる溶媒の量、および分散液が使用されることになる特定の用途に大きく依存している。とはいっても、本発明の分散液は、25℃で測定すると、かなり低い粘度値(多くとも10000cP、より典型的には多くとも5000cP、多くとも2000cP、多くとも1000cP、多くとも600cP、多くとも300cP、多くとも200cP、多くとも120cP、多くとも80cP、多くとも60cP、多くとも45cP、多くとも35cP、多くとも25cPまたは多くとも20cP)を特徴とすることができる。
【0107】
本発明の別の実施形態において、精製ステップ(ステップ2)は、マイクロ分離膜を用いるクロスフロー精密濾過によって有利に成し遂げることができることを本発明者らは発見した。そのようなプロセスは、濾液種の大きさが膜の細孔または開口部の大きさに近づくとき、極端かつ非実用的に遅くなることがある。さらに、濾液種の大きさが膜開口部の大きさに等しい、またはそれを上回るとき、精密濾過膜のプロセスは実質的に不可能にさえなることがある。そのような分離プロセスの使用に対するさらなる、おそらくさらにいっそう重要な阻止要因は、マイクロセパレータ(例えばマイクロ膜)によって阻害される粒子または種と、マイクロセパレータを通過すると思われる種との相対的な大きさに関連する。特定の分散剤、例えばPVPが精密濾過精製を実行するのに有効であることを本発明者らは発見した。
【0108】
このように、本発明の好適な一実施形態によれば、PVP分散剤は、銅粒子に関して、および膜開口部の特徴的な直径に関して少なくとも1つの限られた寸法/直径特性を有する。分散剤のこの限られた寸法/直径特性は、好ましくは銅粒子の平均二次粒径の半分未満である。
【0109】
このように、種々の好適なマイクロ膜を通過するために、ポリビニルピロリドンの平均分子量は典型的に、1,000,000未満の重量平均分子量(MW)でなければならないが、どちらかまたは両方の反応ステップにおいて、反応性および/または適合性の問題を避けるためには、ポリビニルピロリドンのMWは、好ましくは約8,000を超えなければならない。分離効率が減少するにもかかわらず、一般的には、PVPのMWは少なくとも20,000、少なくとも30,000、少なくとも40,000または少なくとも50,000であることが好ましい。
【0110】
中空糸精密濾過膜は好ましく使用されているが、他のセラミック、ポリマーおよび/または金属精密濾過膜も基本的に好適であり得る。膜システムは、静的であっても、動的(例えば、分離を促進するための振動機構を有する)であってもよい。
【0111】
本発明の方法と組み合わせて使用する一般的なマイクロ分離膜または精密濾過膜は、長さ対幅のアスペクト比が高く、その中を水/溶媒および微細な物質が通過することができる、典型的に円筒状の1つまたは複数の孔を有する。多くの場合、膜は、典型的には長い円筒様の形状であるが、他の幾何学的形状も使用できる。
【0112】
200nm未満の孔径を有する膜が本発明のプロセスでの使用に好適であり得ることを本発明者らは見出した。一部の用途において、好ましい孔径は、100nm未満である。一般に、種々の種が膜開口部を通過できるようにするため、および分離速度が極端に遅くならないように、膜の孔径または公称孔径は、少なくとも20nmであり得て、多くの場合、少なくとも40nmであり得る。
【0113】
本発明の別の好適な実施形態によれば、分散剤の大きさと形状、および膜開口部の大きさは、分散剤分子が膜開口部を通過し、一方、銅ナノ粒子が膜開口部を通過することは妨げられる、または実質的に防止されるように選択することができる。
【0114】
実施例
ここで、以下の実施例を参照する。実施例は上記の説明と共に本発明を非限定的な様式で例示する。
【0115】
これらの実施例を実施する際に用いた、およびより一般的に本明細書で使用した化学物質を以下に明らかにする:
CuCl
2−2H
2O、99%−Sigma−Aldrich
NaBH
2−Acros Organics
ポリビニルピロリドン(PVP)、MW=55,000−Sigma−Aldrich
消泡剤Contraspum1012−Zschimmer&Schwarz(Germany)
エチレングリコール(EG)−Sigma−Aldrich
プロピレングリコール(PG)−Sigma−Aldrich
ヘキシレングリコール(HG)−Sigma−Aldrich
トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)−Sigma−Aldrich
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)−Sigma−Aldrich
エタノール−Sigma−Aldrich
ベンジルアルコール(BA)−Sigma−Aldrich
【0116】
Ionex浄水システム(PuriTech,Dessel,Belgium)を使用した脱イオン水を使用して水溶液を調製した。すべての試薬および溶媒は、さらに精製せずに用いた。
【0117】
実施例と組み合わせて使用した機器を、以下に明らかにする。
【0118】
粒度分析(d
50)は、Brookhaven 90Plus粒度分析器(Brookhaven Instruments Corporation,Holtsville,New York)を使用して行った。
【0119】
高分解能走査電子顕微鏡(HRSEM)画像は、HRSEM SUPRA−40(Zeiss)を使用して得た。電子後方散乱回析(EBSD)パターンは、結晶方位解析装置(OIM)チャネル5用の補助取り付け具(Oxford Instruments)を使用して得た。EBSDのための一般的な作業条件:
E=20kV、作動距離−15mm、ビームの分解能は約30〜40nm、スポットサイズは4.5、プローブ電流は約0.5nA、EBSDパターンの収集時間−300msec,積算−50。EBSD画像は、背面電子を使用して撮った。
【0120】
SEM測定用の試料は、Siウエハの小片上に希釈した(1w/w%)Cu分散液を一滴滴下し、続いて室温の減圧下(0.1ミリバール)で乾燥させることで調製した。
【0121】
高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)画像は、一般的に、暗視野(DF)および明視野(BF)環状検出器を含むデジタル走査装置(STEM)および元素分析用のThermo Scientificエネルギー分散型X線分析(EDS)システムと統合したJEOL JEM−2100(LaB6)を200kVで使用して得た。BFおよびDF画像、HRTEM画像および制限視野電子回析(SAED)パターンを撮ることによってTEM観察を行った。
【0122】
TEM測定用の試料は、カーボンがコーティングされた400メッシュのニッケルグリッド上に、希釈(約25,000倍)したCu分散液を一滴滴下することによって調製した。
【0123】
通常、X線回析測定は、D5000回析計(Siemens,Germany)を40kV、40mA、2θレンジ20〜80°でNi濾過Cu Kα放射線(λ=0.154nm)、走査ステップ0.03°、ステップ時間2秒で操作することによって行った。
【0124】
X線回析測定用の試料は以下のように調製した:銅ナノ粒子(約0.5〜1グラム)を、過剰量のアセトンを用い、アルゴン下で遠心分離により分散液から沈殿させ、アセトンで数回すすぎ、アルゴン送風によって乾燥させた。次いで
以降の処理の間に起こり得る酸化を防止するために、得られた粉末をアピエゾンMグリースと混合した。
【0125】
熱重量分析(TGA)は、TA Instruments(登録商標)のUniversal V4.5Aを使用して行った。
【0126】
蒸発は、ドライ真空ポンプ(20ミリバール)(BUCHI Labortechnik AG,Flawil,Switzerand)を備えたR−215 Rotavapor(登録商標)エバポレーターを使用して行った。
【0127】
分散液の精製(濾過)は、中空糸膜(Hyflux Membrane Manufacturing Ltd.,Singapore)を含むクロスフロー膜システムを使用して行った。
【0128】
実施例1
CuCl
2−2H
2O(0.6モル)102gとPVP(MW=55,000)18.5gを脱イオン水900mLに溶解した(溶液A)。消泡剤(FOAMASTER(登録商標)NXZ)10滴も同様に加えた。この手順全体を通して、3L容器中の液相にアルゴンを送風した。NaBH
4 45gを脱イオン水300mLに溶解した(溶液B)。勢いよく機械撹拌(500〜600rpm)しながら、溶液Bを溶液Aにかなりゆっくりと加えていった(約7cc/分)。最初の温度は約25℃、最終温度は70℃より下であった。金属銅ナノ粒子を生成し、反応混合物のpHが5.1になると溶液Bの添加を終了した。分散液をさらに10分間撹拌し、次いで貯蔵タンクに移し、さらなる処理まで静置した。得られた分散液の色は、銅ナノ粒子分散液特有の暗赤色であった。
【0129】
クロスフロー精密濾過法(後述)を用いた精製の後、反応混合物の粒度分析(Brookhaven 90Plus粒度分析器)により、約40nmの平均粒径(d
50)を得た。
【0130】
実施例2A
実施例1で生成した分散液を使用した。この分散液に追加量の溶液Bをゆっくりと加えた。分散溶液のpHは10.0に達した。このpHで、金属銅粒子は、非常に凝集していた。
【0131】
実施例2B
PVP 4.62gを使用して、実施例1を繰り返した。これらの条件下で、生成された金属銅粒子のかなりの部分は凝集した。
【0132】
実施例2C
PVP 9.25gを使用して、実施例1を繰り返した。これらの条件下で、生成された金属銅粒子の一部は凝集した。
【0133】
実施例2D
PVP 55.5gを使用して、実施例1を繰り返した。これらの条件下で、生成された金属銅粒子は単結晶であることが判明したが、実施例1で得られたものよりはかなり小さかった。
【0134】
実施例2E
PVP 37.0gを使用して、実施例1を繰り返した。これらの条件下で、生成された金属銅粒子は単結晶であることが判明したが、実施例1で得られたものよりは小さかった。
【0135】
実施例3:Cu水分散液の精製
約37gのナノ銅粒子を含有する実施例1の反応混合物からの分散液1300mLを、脱イオン水約50Lを使用して、クロスフロー精密濾過システムで精製(洗浄)した。分散液中の塩がほとんど除去されるまで、洗浄プロセスを続け、分散剤を予め設定した銅粒子の重量の3%の濃度まで減少させた。得られた洗浄した分散液試料の最終の色は、銅ナノ粒子分散液特有の色の暗赤色であった。
【0136】
生成した洗浄銅ナノ粒子水分散液の金属量は、約5w/w%(Cu
0金属に関して算出)であった。銅分散液の%金属量は、少量の試料(0.5g)を600℃で燃焼させ、燃焼時にCuがすべてCuOに変換したと想定して、金属Cuを再算出することで、決定した。
【0137】
洗浄銅粒子の粒度分析は、Brookhaven 90Plus粒度分析器を使用して、約40nmの平均粒径(d
50)を得た。
【0138】
得られたナノ粒子のHRSEM画像を
図2(倍率×100,000)に示す。この画像では、単結晶形態を有する非凝集粒子の種々のタイプ、例えば、容易に観察できる三角形と六角形、切頂八面体、切頂四面体および単結晶粒子で典型的な形であり得る他の幾何的形状が存在する。HRSEM画像の左下角に示す例示的な3.3cm×3.3cm面積の領域では、本発明者らは、総計110個の粒子のうち、明らかな単結晶幾何学的形状を有する少なくとも27個の粒子を明確に特定した(1粒子ベースで24.5%)。これらの特定した結晶の一部に印をつけた(点線)。より鮮明な写真(または高解像度)を用いて、他の83個の粒子の多くも単結晶として明確に特定できることが理解されよう。
【0139】
実際に、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50または少なくとも100個の粒子を含有する一部のHRSEMの視野または画像フレームにおいて、本発明者らは1粒子ベースで、粒子の少なくとも25%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%または少なくとも60%が明らかに単結晶幾何学を有すると明確に特定した。
【0140】
実施例4:水を有機溶媒に置換する(水−エチレングリコール溶媒交換)
実施例3と同様の方法で調製した銅粒子を約30g含有する、銅粒子の水分散液の一部600mLを、アルゴンの一定送風下で2Lフラスコに導入し、次いで約60gのエチレングリコールを同フラスコに加えた。次いで、フラスコをR−215 Rotavapor(登録商標)エバポレーターに連結し、約10分間加熱した後、水が留出し始めるまで、160ミリバールで徐々に真空度を高めた。留出が完了するまで、真空条件を維持した。生じた60mLの銅分散液は、ナノ銅を約24.4g含有し、全体として約84gの重さであった。生成したエチレングリコール分散液の金属量は29%(金属銅)であり、粘度は34cP(25℃で)であった。
【0141】
水−エチレングリコール交換後の銅分散液は粒度分析によって、約40nmの平均粒径(d
50)を得た。
【0142】
図3は、得られたナノ銅粒子の例示的なHRTEM画像を示す。これらの粒子は、HRTEMで特徴描写を行う前に、18ヵ月以上、エチレングリコール中に貯蔵した(「エージングした」)。大多数の粒子は、特有の幾何学的形状を有する、とりわけ三角形および六角形の粒子(すなわち、それぞれ三角形の形態および六角形の形態を有する)の単結晶FCC銅であった。HRTEM画像の詳細な分析により、単結晶粒子がほぼ全く酸化されてないままであり、酸化銅の薄層は主に非単結晶粒子の表面に生成されていたことが示された。
【0143】
種々の他のナノ銅粒子と比較すると、本発明の製剤中の粒子状物質は、単位重量当たり必要とする分散剤がより少ないことを本発明者らは見出した。
図3に示すように、単結晶の表面は非常に平滑であり、平面からの最大偏差は例示的に測定した結晶ではわずかに1.54nmである。この構造上の特徴が、少なくとも6ヵ月、少なくとも12ヵ月または少なくとも18ヵ月の貯蔵期間の間、物理的および化学的安定性を維持しながら、本発明の分散液が比較的低濃度の分散剤を必要とする能力に寄与すると本発明者らは考える。さらに、種々の分散液で本発明の粒子物質を使用すると、従来技術のナノ銅粒子を使用した類似の分散液と比べて、これらの分散液の粘度を明らかに減少させることができる。
【0144】
本発明の反応方法、より詳しくは、勢いよく撹拌しながら、水素化ホウ素を酸性媒質にゆっくりと、徐々に加えていくことは、単結晶の生成および結晶面の平滑化に明らかに寄与すると、本発明者らは考える。
【0145】
実施例4に記載のような分散液の物理的安定性を観察し、およびそのような分散液が物理的に安定で、酸化の観点からも安定であることを本発明者らは見出した。そのような分散液は暗赤色を保持し、凝集の証拠を何も示さない。
【0146】
この例示的なHRTEM画像フレームにおいて、完全にまたはほとんどフレーム内に存在する、13個の個別の粒子と1つの大きな凝集を観察することができる。14個の粒子のうちの6個は、その明確な幾何学的形状(xで示す)によって単結晶として特定することができる。これらのうち少なくとも2つは三角形であり、少なくとも1つは六角形(切頂型)である。このように、観察された単結晶銅粒子対粒子総数の比率は6/14、または40%を超える。観察された、三角形または六角形の形態を有する単結晶銅粒子対粒子総数の比率は3/14、または20%を超える。
【0147】
実施例5
単結晶銅ナノ粒子の存在を、電子後方散乱回析(EBSD)によって、定性的に証明した。
【0148】
EBSDにより、分散液中の粒子状物質の試料表面から回折パターンを得る。当業者には容易に理解されるEBSDの手順は以下の通りである。
1.集束電子ビームを使用して試料を走査し、回析パターンを得る。
2.回析画像の解釈は、機器ソフトウェア(基本的な銅の結晶データを比較する)を使用して行う。
3.回折の「解」に一致させ、結晶の方位を描写し、すべての菊池線を格子内のその適合する結晶面に相関させる。菊池線と結晶面との間で完全に一致する(理論データによって)場合、その回析は単結晶の方位を決定する。
【0149】
ナノ銅粒子の場合、完全な解を必ずしも求めることができないこともあり、時には解が全くないこともある。これは、ビームが結晶粒界に位置することを示し得る。あるいは、ビームが2つの粒子の間に位置するとき、完全な解が得られないこともある。
【0150】
実施例6
実施例5の基本的な手順に従って、ナノ銅の試料内の単結晶金属銅ナノ粒子の存在を定量した。定量は、ランダムに選択したポイントで複数回の走査(少なくとも5回の走査、好ましくは少なくとも10回の走査)を行うことによって達成した。
【0151】
図4は、実施例4に記載の実施形態によって生成したナノ銅粒子の電子後方散乱回析(EBSD)パターンである。
図5は、
図4に示したEBSDパターンに基づいた、結晶銅金属特有の種々の回析パターンの特定を示す。
【0152】
ランダムに選択したすべての走査ポイントに関して、銅単結晶の回析および一致する解を得た。得られた回析パターンのそれぞれは、異なる結晶方位を決定した。得られた方位差分布の分析から、分布が理論的なランダム分布に極めて近く、試料中に結晶の優先配向がないことが示された。この結晶は「結晶学的に独立して」いる。
【0153】
ナノ粒子を有する試料について、粒子自体から回折を得るには限界がある。プローブを配置するすべての場所で、既知の解を有する完全な回折パターンを得ることは不可能である。粒子/単結晶が30〜40nmよりいくらか小さい場合、明確な回析パターンを得ることは難しいことがある。したがって、統計学的に言うと、我々の試料の異なるポイントで解を有する回析パターンが得られたという事実は、粒径が少なくとも約30〜40nmであることを示している。この値は、HRSEM画像(
図2)およびPSD測定から得られた我々の試料中の平均粒径と一致する。したがって、本発明の銅ナノ分散液中の粒子が主に単結晶であることは明白である。
【0154】
EBSDを使用する本発明の種々のナノ銅含有製剤の試験において、走査の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも50%は、単結晶銅ナノ粒子に実質的に完全な一致を示す。より典型的に、走査の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%は、単結晶銅ナノ粒子に実質的に完全な一致を示す。
【0155】
走査の少なくとも30%が単結晶銅ナノ粒子と実質的に完全な一致を示すならば、ナノ銅粒子の大多数(粒子数に基づいて)が、実際に単結晶粒子であることを本発明者らは見出した。走査の少なくとも50%が単結晶銅ナノ粒子と実質的に完全な一致を示すならば、ナノ銅粒子の少なくとも60%、一般的には少なくとも70%は単結晶粒子である。
【0156】
理論的には、これらの定量EBSD走査方法は、試料の最上層または横断面の定量的評価をもたらすことができる。しかし、実際には、特に、きわめて広い粒径分布を有しない試料の場合、この定量的評価は、単結晶銅粒子としての特徴を有する銅粒子の割合を厳密に反映する。
【0157】
実施例7
図2は、本発明によって生成されたナノ銅粒子を含有する試料のSEM画像である。試料中のランダムに選択した位置を6箇所で走査した。上述のEBSDを使用して、銅単結晶の完全な一致を6箇所のうち5箇所で得た。
【0158】
実施例6で生成した回析のそれぞれは、方位が異なっていた。さらに、得られた方位分布は、理論的なランダム分布に極めて近く、試料のナノ銅粒子には優先配向がないことを示した。
【0159】
実施例8
以下の比抵抗試験のために、本発明の銅粒子の分散液を堆積させ、熱処理して調製した。
【0160】
エアー駆動ディスペンサーによって、分散液を顕微鏡のガラススライド上に細線として印刷した。Cu線を印刷したスライドを(空気中で)100℃で10分間、予熱し、続いてオーブン内、アルゴン雰囲気下で、300℃で30分間加熱した。一般的に、線の幅は約1mm、厚さは約10マイクロメートルである。
【0161】
4点プローブ測定を使用して、比抵抗を得る。
【0162】
実施例9
比抵抗試験のために、本発明の銅粒子のエチレングリコール(EG)分散液を実施例8に示した手順に従って調製した。試料は、約25〜29%の金属量を有した。
【0163】
実施例8に示した手順に従って決定した比抵抗は、約9×10
−5Ω・cm(バルク抵抗の50倍)であった。
【0164】
実施例10A
本発明の銅ナノ粒子製剤の中の酸化第一銅の存在は、実施例4で生成した銅分散液を使用して、粉末X線回析(XRD)によって定性的および定量的に証明された。
【0165】
上述の手順に従って、ナノ銅生成物をX線回折用に調製した。
【0166】
図6は、本発明のナノ銅生成物の粉末X線回析パターンを示す。2−θの関数として、ピーク位置および半値全幅(FWHM)を表1に示す。
【0168】
酸化第一銅が約36.8°の2−θ値を有し、金属銅が約43.7°の2−θ値を有することから、XRD走査において2つのピークの存在は、本発明の分散液中に酸化第一銅が存在することを示し、これらのピークの相対強度は、分散液中の銅金属と酸化第一銅の相対濃度を示す。
【0169】
金属Cu(2θ=43.7°)とCu
2O(2θ=36.8°)の主な特性ピーク間のピーク面積比率を算出することによって、結晶Cu
2Oの含有量を定量的に評価した。
【0170】
XRDを用いた結晶Cu
2O含有量の定量的評価を、実施例4、11、12、13、14および15に記載の分散液を含む多数の試料で行った。結果の一部を以下の表2に示す。結晶Cu
2O対金属銅含有量の濃度比(ピーク1の面積対ピーク2の面積)は、すべての実施例で、有意に0.4未満、0.35未満、0.3未満、0.25未満、0.2未満または0.15未満であった。多くの場合、結晶Cu
2O対全銅含有量の重量比は、多くとも0.12、多くとも0.10、多くとも0.08、多くとも0.06、多くとも0.05、多くとも0.04または多くとも0.035であった。
【0171】
同様に、Cu
2O濃度は、ピーク1の面積対ピーク1とピーク2の総面積として規定される。
【0172】
実施例10B
分散液中の粒子状物質および特に分散液中の銅ナノ粒子中の結晶の平均粒径の推定は、XRD走査から得ることができる。
nmでの平均粒径は、表1に示すデータと、デバイ−シェラー式
D=0.9・λ/FWHM(照射)・cos(θ)
とを用いて算出することができる。
(式中、λは、使用した特定の機器におけるX線照射の波長であり、0.1541nmであった。
FWHMは、ピーク(照射での)の半値全幅であり、等しい。
FWHM(°)×3.14:180=0.24×3.14:180[照射)、
「θ」は、回析角であり、「θ」=43.702:2。)
結晶形状係数は0.9と想定されている。したがって、Cuナノ粒子の粒径D(nm)は以下のように算出される。
D=0.9×0.154/[(0.24×3.14:180)・cos(43.702:2)]=約36nm。
【0173】
この値、粒度分析(Brookhaven 90Plus粒度分析器)で測定された40nmの平均粒径と、HRSEM画像で観察された規範的な粒子のおよその粒径との間の確実な一致は、銅ナノ分散液が主に単結晶である粒子からなることを示唆している。
【0174】
実施例11:60%の金属量を有するCuのエチレングリコール分散液
実施例3に記載のように調製した銅粒子を約42g含有する、銅の水分散液約900mLを一定のアルゴン送風下で2Lフラスコに導入し、次いで約25gのエチレングリコールを同フラスコに加えた。次いで同フラスコをRotavaporエバポレーターに連結し、実施例4でのように水を留出させた。生成した52gの銅分散液(約20mL)は、31gのナノ銅を含有し、約60%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は、25℃で約1400cPであった。
【0175】
実施例12Aおよび12B:分散剤の割合を増加させた、Cuのエチレングリコール分散液
【0176】
実施例12A
約37gのナノ銅粒子を含有する、実施例1の反応混合物からの分散液1300mLを、分散液中の塩がほとんど除去されるまで、クロスフロー精密濾過システムで精製(洗浄)した。
【0177】
適用した洗浄様式は以下の通りに行った:各洗浄サイクルでは、4Lの「新しい」脱イオン水を1.3Lの濃縮分散液に加え、各サイクルの希釈係数は、したがって5.3:1.3≒4であった。
【0178】
反応混合物中の塩素イオンの濃度は約42g/1300mL≒32000ppm、所望の最終濃度−10ppm未満、必要な希釈係数:32000:10=3200であった。したがって、塩を洗い落とすために、必要な希釈係数(>3200)に達するために、6回の洗浄サイクル(4
6≒4100)または24Lの水を適用した。
【0179】
単に24Lの水を適用後の洗浄プロセスのその時点では、分散剤の濃度は、銅粒子の重量の10%の濃度に減少したに過ぎなかった。得られた洗浄分散液試料の最終の色は、銅ナノ粒子分散液特有の色である暗赤色であった。最終分散液を600mLに濃縮した。
【0180】
約28gの銅を含有し、10%の分散剤/Cu比率を有する、精製銅の水分散液600mLに、アルゴン送風下でエチレングリコール56gを加えた。次いで、実施例4と同様に、水をRotavaporエバポレーター内で留出させた。生成した82gの銅分散液(約60mL)は、24gのナノ銅を含有し、約29%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は25℃で約130cPであり(実施例4での3%分散剤を有する試料の34cPと比較して)、インクジェット式印刷の粘度の最大限度を超えた。
【0181】
実施例12B
ナノ銅粒子約37gを含有する、実施例1の反応混合物の分散液1300mLをクロスフロー精密濾過システムで精製(洗浄)した。8回の洗浄サイクルを適用し、これは脱イオン水約32Lに相当した。実施例12Aと同じように、各洗浄サイクルでは、4Lの「新しい」水を濃縮分散液1.3Lに加えた。
【0182】
洗浄サイクル後、分散剤の濃度は、銅粒子重量の6%の濃度に減少した。得られた洗浄分散液の最終の色は暗赤色であった。最終分散液を600mLに濃縮した。
【0183】
約27gの銅を含有し、6%の分散剤/Cu比率を有する、精製銅の水分散液600mLに、アルゴン送風下で54gのエチレングリコールを加えた。次いで、実施例4と同様に、水をRotavaporエバポレーター内で留出させた。生成した79gの銅分散液(約55mL)は、23gのナノ銅を含有し、これは約29%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は、25℃で70cPであった。
【0184】
実施例12C:分散剤/Cu比率の決定
通常、PVP/Cu w/w%として示される、分散剤(PVP)/Cu重量/重量比は、熱重量分析(TGA)を用いて、測定することができる。
【0185】
図7は、分析の間、銅金属の酸化を防止するために、不活性雰囲気(アルゴン)中で実施した実施例12(B)からのナノ分散液についての熱重量分析(TGA)のプロットを示す。TGA測定を実施する前に、銅ナノ粒子を溶媒から(アルゴン下で)乾燥させ、次いで乾燥した銅粒子の試料8.75mgを分析した。試料を徐々に600℃に加熱しながら、重量変化をモニターした。300℃と500℃の間で、有機分散剤は完全に分解し、600℃では純粋な銅金属だけが残った。300℃と500℃の温度範囲での対応する重量減少を、銅金属の最終重量で除して、約5%の分散剤/Cu比率を得た。
【0186】
他の銅ナノ分散液の試料についても同様の分析を行った。
【0187】
実施例12D:分散剤層の厚さの算出
異なるPVP/Cu比率に対して分散剤(PVP)層の厚さの近似値を示すために、銅ナノ粒子は、
図8に示すように、外部を有機ポリマーシェルで覆われた銅金属コアを有する球状粒子としてしばしば表される。
【0188】
この表現において、銅コアの直径はdであり、分散剤(以下、非限定的な一例として、PVPとして示す)層の厚さ(幅)はSであり、粒子全体の直径はDであり、D=d+2Sである。
【0189】
異なるPVP/Cu比率に対してSの近似値は以下のように算出される。
(1)PVP/Cu重量比を、異なる試料に関して実施例12(C)に示す手順に従って測定し、K(%PVP/Cu=100K)と表す。
K=W
PVP/W
Cu
(2)二つの層の密度が実質的に文献値に等しい、すなわちCu密度はρ
Cu=8.96g/mLであり、PVP密度はρ
PVP=1.207g/mLであると仮定すると、密度比は、
ρ
Cu/ρ
PVP=8.96/1.207=7.4
(3)V
Cuを銅コアの体積として、V
PVPをPVP外部シェルの体積として定義すると、
W
pvp/W
Cu=K=V
PVP×ρ
PVP/V
Cu×ρ
Cu
(4)(3)から
V
Cu/V
PVP=(ρ
PVP/ρ
Cu)/K=1/7.4Kまたは
V
PVP=7.4KV
Cu
(5)粒子全体の体積はV
D=V
Cu+V
PVPであり、または(4)と組み合わせて
V
D=V
Cu+7.4KV
Cu=(1+7.4K)V
Cu
(6)(5)から
V
D/V
Cu=1+7.4Kとなる。
(7)2つの球の直径比D/dは(V
D/V
Cu)
1/3と等しいことから、(6)を用いて、
D/d=(1+7.4K)
1/3またはD/d=
3√(1+7.4K)
(8)したがって、任意に選択したCuコア径dと、測定したPVP/Cu比Kは、
D=
3√(1+7.4K)d、およびS=(D−d)/2である。
このモデルにおいて比率S/dはKの値に依存し、および与えられたKに対して、S/dは異なるコア径を有する粒子について同じであることを強調しなければならない。
【0190】
実施例3、12(A)および12(B)についての算出結果を表2にまとめる。
【0192】
実施例13:Cuのプロピレングリコール(PG)分散液
実施例3で調製した銅粒子を約28g含有する、銅の水分散液600mLに、アルゴン送風下でプロピレングリコール60gを加えた。次いで、このフラスコをRotavaporエバポレーターに連結し、実施例4と同様に水を留出させた。生成した80gの銅分散液(約60mL)はナノ銅21gを含有し、これは約26%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は、25℃で約40cPであった。
【0193】
実施例14:Cuのヘキシレングリコール(HG)分散液
実施例3で調製した銅粒子を約28g含有する、銅の水分散液600mLに、アルゴン送風下でヘキシレングリコール60gを加えた。次いで、このフラスコをRotavaporエバポレーターに連結し、実施例4と同様に水を留出させた。生成した82gの銅分散液(約60mL)はナノ銅24gを含有し、これは約29%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は、25℃で約180cPであった。
【0194】
実施例15A:Cuのトリプロピレングリコールモノメチルエーテル(TPM)分散液
第1のスッテプでは、水−エタノール溶媒交換は、クロスフロー膜システムを使用して行った。このために、実施例3と同様に調製し、約30gのナノ銅粒子を含有する銅の水分散液600mLを2.5Lのエタノールを用いて「洗浄」した。
【0195】
第2のステップでは、エタノール−TPM溶媒交換を行った。約24gの銅粒子を含有する銅のエタノール分散液400mLに、アルゴン送風下で58gのTPMを加えた。次いで、実施例4で水に対して行ったように、Rotavaporエバポレーターを使用して、エタノールを留出させた。生成した80gの銅分散液(約60mL)はナノ銅23gを含有し、これは約29%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は、25℃で約15cPであった。
【0196】
実施例15B:Cuのジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)分散液
実施例15Aの手順を繰り返したが、第2のステップではジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)を使用した。銅粒子を約24g含有する、銅のエタノール分散液400mLに、アルゴン送風下でDGME16gを加えた。得られた銅分散液(38g)はナノ銅23gを含有し、これは約60.5%の金属量(金属銅)に相当した。粘度は、25℃で約40cPであった。
【0197】
実施例16:Cuのベンジルアルコール(BA)分散液
実施例3で調製した銅粒子を約5g含有する、銅の水分散液100mLに、アルゴン送風下でベンジルアルコール10gを加え、二相混合物を生成した。次いで、実施例4と同様に、Rotavaporエバポレーター内で水を留出させた。得られた最終分散液(12g)は、(Cuナノ分散液特有の)暗赤色から紫色であり、(目視検査および光学顕微鏡観察を含む)安定なナノ分散液であることがわかった。
【0198】
実施例17:酸化安定性(「エージング」)
実施例4、11、12および15に記載の例示的な分散液を約20℃で、酸化安定性(「エージング」)試験に供した。結果を表3に示す。種々の試料では、結晶酸化第一銅の濃度(または「酸化第一銅濃度」−粉末XRDを使用した、ピーク1の面積対ピーク1とピーク2の全面積)は、少なくとも1ヵ月、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたって実質的に維持された。
【0199】
粒子状物質中の酸化第一銅の濃度が少なくとも1ヵ月、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたって、「絶対百分率」ベースで2パーセント以内、1.5パーセント以内、1.2パーセント以内または1.0パーセント以内に維持されるように、粒子状物質を適応させて、および分散剤と溶媒を選択した(例えば、実施例15:[(8.5%−8.3%)=0.2%])。
【0200】
具体的には、分散剤の量を、銅粒子の重量の少なくとも2%、少なくとも2.2%、少なくとも2.4%または少なくとも2.6%に維持した。高い割合の単結晶、ならびに特に平滑面を有する単結晶を生成するために、本発明の方法に従って粒子状物質を生成した。インクジェットに適している粘度を得るために、分散剤の量は、銅粒子の重量の多くとも5%、多くとも4.5%、多くとも4%または多くとも3.5%に維持され得る。比較的大量の分散剤および/または固体を含有する分散液の場合、低粘度の達成に寄与する溶媒(例えばTPM)が好ましい。
【0202】
酸化安定性の別の表現において、初期の銅総濃度または以前に測定した濃度(%全Cu)で標準化された酸化第一銅濃度の経時的な増加が、百分率として表され、および
V=100・(Cu
2O濃度(t)−Cu
2O濃度(i))/(%全Cu)
によって定義される値V内で維持されるように、粒子状物質を適応させ、分散剤と溶媒を選択した。
(式中、
Cu
2O濃度(i)はCu
2Oの初期濃度または以前に測定した濃度であり、および
Cu
2O濃度(t)は時間tで評価したCu
2Oの濃度である。)
【0203】
例として、実施例15では、3ヵ月にわたり、V=[100・(8.5%−8.3%)/(29%)=0.69%])。
【0204】
より一般的には、初期の銅総濃度または以前に測定した濃度で標準化された酸化第一銅濃度の経時的な増加は、少なくとも2ヵ月、少なくとも3ヵ月または少なくとも12ヵ月にわたり、3%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.5%または0.4%の値V内で維持された。
【0205】
さらなる一例において、実施例15の分散液を計7ヵ月の間、室温でエージングを行ったところ、7ヵ月後の酸化第一銅濃度(Cu
2O濃度(t=7))は8.6%であることが見いだされた。最初の3ヵ月間に続いて4ヵ月間、
V=100・(8.6%−8.5%)/(29%)=0.34%
であった。
(式中、29%は分散液中の銅の総濃度(%全Cu)であり、分散液中の%Cu
0として表す。)
【0206】
実施例18:「逆」反応
実施例1で使用したのと同じ比率の試薬を使用したが、この場合、CuCl
2溶液をNaBH
4溶液に加えた。
【0207】
10.2gのCuCl
2−2H
2O(0.06モル)と1.8gのPVP(MW=55,000)を脱イオン水90mLに溶解した(溶液A)。4.5gのNaBH
4と0.6gのPVPを脱イオン水30mLに溶解した(溶液B)。消泡剤3滴も、溶液Bに加えた。機械撹拌(400rpm)しながら、溶液Aを溶液Bにゆっくりと加えた。この手順の間、アルゴンを反応混合物中に送風した。最初の温度は約25℃、最終温度は60℃未満であった。溶液Aの添加終了後、反応混合物のpHは6.0であった。得られた分散液の色は、Cu
2Oナノ粒子特有の黄色であり、Cu
2Oが「逆」反応の主生成物であることを示していた。
【0208】
本発明の製剤において、PVP対分散液中の粒子状物質の重量比は、0.01〜0.5、0.015〜0.4、0.015〜0.4、0.015〜0.3または0.015〜0.2であり得る。より典型的には、PVP対粒子物質の重量比は、多くとも0.18、多くとも0.16、多くとも0.12、多くとも0.08、多くとも0.05、多くとも0.04、多くとも0.03、多くとも0.025、多くとも0.022または多くとも0.020である。
【0209】
典型的に、本発明の製剤は、金属炭酸塩などの有機金属材料を含まない、または実質的に含まない。一部の実施形態において、そのような物質は、粒子状物質の総重量の多くとも8%、多くとも6%、多くとも4%、多くとも2%または多くとも0.5%を占める。
【0210】
本明細書および添付の特許発明の範囲で用いる場合、粒子状物質に関して「平均二次粒径」という用語は、粒子状物質の平均直径を指し、具体的には、凝集粒子の直径ならびに単結晶の直径を含むことを意味する。
【0211】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、乾燥粒子物質に関して用いる「平均直径」という用語は、少なくとも50粒子を含有する代表的なHRSEM画像を使用し、当業者によって用いられるロバスト手法による粒径測定によって決定される粒子状物質の平均直径をさす。
【0212】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、分散液中の粒子状物質に関して用いる「平均直径」という用語は、球相当粒径(d
50)を指し、これは、Stokes−Einstein方程式を用いて、Brookhaven 90Plus粒度分析器(Brookhaven Instruments Corporation,Holtsville,New York)によって、または、入手不可能であるならば、5〜2000nmの範囲にわたる球相当粒径を測定するのに適した機能的に同等の粒度分析器によって算出される。
【0213】
この平均直径を求める際、粒度分析は、粒度分析器を用いて専門的かつ再現可能な方法で、粒度分析器を操作する訓練を受けた有資格者によって、以下の条件で行われる。
(1)粒子状物質の代表的な試料を採取する。
(2)それぞれの液体中の粒子状物質の分散液について分析を行う。
(3)分析を室温で行う。
(4)散乱角は90度である。
【0214】
本明細書および添付特許請求の範囲で用いる場合、PVPとしても知られている、「ポリビニルピロリドン」という用語は、以下の分子構造を有するまたは含む水溶性ポリマーを指す:
【化1】
【0215】
PVPは、以下の構造
【化2】
を有するビニルピロリドンモノマーから一般的にできている。
【0216】
PVP分散剤の市場は、他の部分にPVPを付着(例えばグラフト化)させることによって生成されるポリマーを含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、「ポリビニルピロリドン」という用語は、そのような分散剤を含む。「純粋なポリビニルピロリドン」という用語は、そのような分散剤を含まないことを意図する。
【0217】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、粒子状物質中の金属銅粒子に関する「単結晶」などの用語は、(別段の指定がなければ)上記実施例5に記載の標準的な電子後方散乱回折(EBSD)法によって決定された単結晶銅粒子を指す。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、試料中の単結晶粒子の割合または百分率の定量的な評価は、別段の指定がなければ、実施例6に記載の定量的なEBSD決定法に従って実施される。この定量的EBSD走査法は、理論上は、試料の上層または横断面の定量的評価を提供するが、実際には、この定量評価は、特に、極めて広い粒度分布を有しない試料の場合、単結晶の特性を有する金属銅粒子の割合を密接に反映する。
【0218】
したがって、本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、金属銅粒子に関して「大部分」という用語は、以下のうちの少なくとも1つを指す:ランダムに選択したEBSD走査の少なくとも30%が、実施例6に記載の手順によって、銅単結晶と実質的に完全な一致を生じる、または銅粒子の数に基づいて銅粒子の50%超を生じる。
【0219】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、製剤または分散液に関して「%全Cu」、「銅の総濃度」、「初期の銅総濃度」などの用語は、製剤または分散液中の金属および酸化型の銅の全量、および製剤または分散液中の%Cu
0として定量的に表される銅の全量を指す。
【0220】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、「標準焼結」または「標準加熱焼結」という用語は、実施例8に記載の焼結手順を指す。
【0221】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、結晶酸化第一銅および金属銅粒子などに関して「濃度比」という用語は、実施例10Aに記載の粉末XRDを使用して、結晶酸化第一銅および金属銅の面積比を指す。
【0222】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、「Cu
2O濃度」または「酸化第一銅濃度」という用語は、実施例10Aに記載の粉末XRDを使用して、ピーク1の面積対ピーク1とピーク2の全面積を指す。
【0223】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、製剤または分散液中の相、分散剤または溶媒に関して「主な」または「主に」という用語は、その相、分散剤または溶媒中の重量で最も大きな成分を指す。
【0224】
明確にするために、別々の実施形態と関連して記載されている本発明のいくつかの特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが認識されよう。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態と関連して記載されている本発明の種々の特徴もまた、別々にまたは任意の好適な副組み合わせで提供されてよい。同様に、1つまたは複数の特定の請求項に従属する一請求項の内容は、一般に、他の非特定の請求項に従属し得るか、または、それらの間にいかなる特定の明白な不適合性もなく、その内容と組み合わせられ得る。
【0225】
本発明はその特定の実施形態と組み合わせて記載されているが、多くの代替、修正および変更が当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨および広範な範囲に含まれるそのような代替、修正および変更のすべてを包含することを意図する。