(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-515028(P2017-515028A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(54)【発明の名称】石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する方法及び石造アーチ橋
(51)【国際特許分類】
E01D 4/00 20060101AFI20170512BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20170512BHJP
【FI】
E01D4/00
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-508768(P2017-508768)
(86)(22)【出願日】2015年5月1日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2015059630
(87)【国際公開番号】WO2015166103
(87)【国際公開日】20151105
(31)【優先権主張番号】1407868.7
(32)【優先日】2014年5月2日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1420921.7
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1501828.6
(32)【優先日】2015年2月4日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516328306
【氏名又は名称】ソルタンシュ フレシネ ソシエテ パー アクション サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベネット, ケヴィン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴェイ, ウィリアム ジョン
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA49
2D059BB31
2D059GG39
2D059GG55
(57)【要約】
石造アーチ303と、当該石造アーチ303の各端部に位置するスパンドレル壁とを備える石造アーチ橋301の下方のスペースを拡大するための方法は、スパンドレル壁を切断して石造アーチ303の各側に切断部330を形成することにより石造アーチ橋301の移動可能部分332を形成するステップと、石造アーチ303に持ち上げ力を加えて石造アーチ303を持ち上げ位置に持ち上げるステップと、石造アーチ303を持ち上げ位置に固定するステップとを含んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
石造アーチと、該石造アーチの各端部に位置するスパンドレル壁とを備える石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する方法であって、
前記スパンドレル壁を切断して前記石造アーチの各側に切断部を形成することにより前記石造アーチ橋に移動可能部分を形成するステップと、
前記移動可能部分に持ち上げ力を加えて持ち上げ位置まで前記石造アーチを持ち上げるステップと、
前記石造アーチを前記持ち上げ位置に固定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
持ち上げ前に、前記石造アーチに強化手段を設けない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
持ち上げ前に、前記石造アーチに強化手段を設ける、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
石造アーチと、該石造アーチの各端部に位置するスパンドレル壁とを備える石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する方法であって、
前記石造アーチに強化手段を設けるステップと、
前記石造アーチに持ち上げ力を加えて持ち上げ位置まで前記石造アーチを持ち上げるステップと、
前記石造アーチを前記持ち上げ位置に固定させるステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
前記持ち上げ力を加える前に、前記スパンドレル壁を切断して前記石造アーチの各側に切断部を形成することにより前記石造アーチ橋に移動可能部分を形成するステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記強化手段を設けるステップが前記石造アーチに圧縮力を加えるステップを含む、請求項3乃至5のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記石造アーチに対して1つ以上の紐状構造体を固定して該紐状構造体に張力を加えることにより、前記強化手段が設けられる、請求項3乃至6のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記石造アーチの頭頂部の上方の領域で第1及び第2の紐状構造体が横方向にオーバーラップする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記強化手段がサドルであり、該サドルが前記石造アーチの上面に設けられる、請求項3乃至8のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記サドルを前記石造アーチの上面に設けるステップが、前記石造アーチの上面に強化コンクリート製サドルを打設成形するステップと、前記コンクリートを硬化させるステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サドルを前記石造アーチの上面に設けるステップが、前記強化コンクリート製サドルに後張力を加えるステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記サドルが第1のサドル部と第2のサドル部とを有し、前記方法が前記石造アーチの第1の部分に前記第1のサドル部を設けるステップと、前記石造アーチの第2の部分に前記第2のサドル部を設けるステップとを含む、請求項9乃至11のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記強化手段が前記石造アーチに対して力を加えるように配置され方向付けされる1つ以上のデバイスであり、前記力が少なくとも水平方向の成分を有する、請求項3乃至12のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記石造アーチ橋が、1つ以上のさらなる石造アーチと、隣接する石造アーチ間に位置する対応する1つ以上の橋脚とを有する多重アーチ式石造アーチ橋であり、前記強化手段が前記さらなる石造アーチに設けられる、請求項3乃至13のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記切断部にベアリングを設けるステップをさらに含む、請求項1、2、3、5、または、請求項5を引用する請求項6乃至14のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記石造アーチのうちの、前記スパンドレル壁の前記切断部に隣接する部分を切断して前記移動可能部分を形成するステップをさらに含む、請求項1、2、3、5、または、請求項5を引用する請求項6乃至15のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記持ち上げ力を加える前に、前記スパンドレル壁のうちの、前記石造アーチの横方向外側の部分にウエッジ形状のギャップを形成するステップと、前記石造アーチを切断することにより第1及び第2の移動可能な石造アーチ部を形成するステップとをさらに含む、請求項1乃至16のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記石造アーチを前記持ち上げ位置に固定するステップが、前記第1及び第2の移動可能な石造アーチ部分の間にウエッジを挿入または形成するステップを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記スパンドレル壁の前記ウエッジ形状のギャップが最も外側にある前記さらなる石造アーチの横方向外側に配置される、請求項14を引用する請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1及び第2の移動可能な石造アーチ部を形成する前記石造アーチの前記切断部に前記1つ以上のデバイスが配置される、請求項13を引用する請求項17、18または19に記載の方法。
【請求項21】
持ち上げの間、前記石造アーチがその構造的完全性を維持するのを担保するのに十分な前記石造アーチのアーチ作用が維持されるように前記持ち上げ力が加えられる、請求項1乃至20のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記持ち上げ力が前記石造アーチの下側部分に加えられる、請求項1乃至21のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記持ち上げ力の少なくとも1つの成分が前記石造アーチを圧縮するように作用する、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記石造アーチが該石造アーチの各側の橋脚により支えられており、前記持ち上げ力が前記橋脚で加えられる、請求項21、22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記石造アーチの上方に配置される支持構造体に前記石造アーチを接続する1つ以上の引張り部材によって前記持ち上げ力が提供される、請求項1乃至24のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記支持構造体が前記石造アーチを横断する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記サドルが持ち上げビームであり、前記引張り部材が前記持ち上げビームに接続される、請求項9を引用する請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記強化手段を設ける前かつ/または前記移動可能部分を形成する前に、前記石造アーチ橋にシールドを取り付ける、請求項1乃至27のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項29】
石造アーチ橋であって、
上面を有する石造アーチと、
前記石造アーチの各端部に位置するスパンドレル壁と、
前記石造アーチに設けられる強化手段と、
を備えてなる、石造アーチ橋。
【請求項30】
前記強化手段が前記石造アーチに対して固定される1つ以上の紐状構造体である、請求項29に記載の石造アーチ橋。
【請求項31】
第1及び第2の紐状構造体が前記石造アーチの頭頂部の上方の領域において横方向にオーバーラップするように構成されてなる、請求項30に記載の石造アーチ橋。
【請求項32】
前記強化手段が前記石造アーチの上面に設けられるサドルである、請求項29、30または31に記載の石造アーチ橋。
【請求項33】
前記サドルが強化コンクリート製サドルである、請求項32に記載の石造アーチ橋。
【請求項34】
前記サドルに後張力が加えられるように構成されてなる、請求項33に記載の石造アーチ橋。
【請求項35】
前記強化手段が前記石造アーチに力を加えるように配置されかつ方向付けされる1つ以上のデバイスであり、前記力が少なくとも水平方向の成分を有してなる、請求項29乃至34のうちのいずれかに記載の石造アーチ橋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する方法及び石造アーチ橋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石造アーチ橋は、鉄道線路の如き輸送リンクを跨げて架けるために輸送ネットワークにおいて一般的に用いられている。しかしながら、石造アーチ橋の下方のスペースが限られたものであるため、既存の石造アーチ橋ではそのような輸送リンクにおいて用いられる乗物のサイズが制限される。さらに、既存の石造アーチ橋では、鉄道線路の電化の如き輸送リンクの変更が妨げられる。したがって、既存の輸送リンクの容量を増大させる及び既存の輸送リンクを修正するために、既存の石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する、または、そのような橋を解体し再建することが必要となりうる。
既存の構造物は歴史的観点から保護されている場合があるので既存の構造物を解体することは望ましくない場合が多い(例えば、英国では、建物は、特殊建築や名所旧跡の建築物の法定一覧に登録されている場合がある)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する既存の方法は採掘地により石造アーチ橋の下の地面を低下させることを含んでいる。このことは複数の問題を生じうる。さらに、鉄道産業では、低くなった領域においてプラットフォームのレベルの位置調整が必要となるという問題が生じる場合もある。
さらに、解体及び再建ならびに地面を下げる技術が高価であり、輸送ネットワークに対して混乱を生じさせる、何故なら、非常に長い期間にわたって輸送リンクを閉じる必要があるからである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、石造アーチと、この石造アーチの各端部に位置するスパンドレル(窓小間)壁とを備える石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する方法は、スパンドレル壁を切断して石造アーチの各側に切断部を形成することにより石造アーチ橋に移動可能部分を形成するステップと、移動可能部分に持ち上げ力を加えて石造アーチを持ち上げ位置まで持ち上げるステップと、石造アーチを持ち上げ位置に固定させるステップとを含んでいる。
持ち上げ前に強化手段が石造アーチに設けられないようになっていてもよい。
【0005】
或いは、持ち上げ前に強化手段が石造アーチに設けられてもよい。
本記載の文脈では、強化手段とは、石造アーチを強化するために持ち上げ前に石造アーチ橋に設けうる手段のことである。当該手段は、石造アーチの構造の外側の手段であってもよい。
【0006】
本発明の他の態様によれば、石造アーチと、この石造アーチの各端部に位置するスパンドレル壁とを備える石造アーチ橋の下方のスペースを拡大する方法は、石造アーチに強化手段を設けるステップと、石造アーチに持ち上げ力を加えて石造アーチを持ち上げ位置まで持ち上げるステップと、石造アーチを持ち上げ位置に固定させるステップとを含んでいる。
かかる方法は、持ち上げ力を加える前に、スパンドレル壁を切断して石造アーチの各側に切断部を形成することにより石造アーチ橋に移動可能部分を形成するステップをさらに含んでいる。
【0007】
本発明の他の態様によれば、上面と、各端部に位置するスパンドレル壁と、石造アーチに設けられる強化手段とを備える石造アーチ橋が提供されている。
強化手段を設けるステップは石造アーチに圧縮力を加えるステップを含んでもよい。強化手段は、石造アーチの上方に設けられてもよい。
強化手段は、石造アーチに対して1つ以上の紐状構造体(tendon)を固定し、紐状構造体に張力を加えることにより設けられるようになっていてもよい。
【0008】
石造アーチの頭頂部の上方の領域において第1及び第2の紐状構造体が横方向にオーバーラップするようになっていてもよい。紐状構造体は一般的に石造アーチの上方に位置決められている。このような位置決めにより、適切な圧縮力の提供が可能となることに加えて、強化手段が設けられている間、乗り物または他の交通手段が石造アーチ橋の下を通過することが可能となる。
【0009】
紐状構造体はスパンドレル壁、欄干または石造アーチに固定されてもよい。紐状構造体の一方の端部は頭頂部の一方側に固定され、紐状構造体の他方の端部は頭頂部の他方側に固定されるようになっていてもよい。紐状構造体は、内側横方向に向けて上方に傾斜するようになっていてもよい。紐状構造体は、持ち上げ力が加えられているときに石造アーチ内で十分に安定な圧縮力を維持するような方向に位置決めされてもよい。1つの(または、一組の)紐状構造体が頭頂部の第1の側の上側固定位置から延び、他の(または、他の組の)紐状構造体が第1の側とは反対側の頭頂部の第2の側の上側固定位置から延びるようになっていてもよい。これらの(これらの組の)紐状構造体はそれぞれ下側固定位置に延びるようになっていてもよい。上側固定位置は行き止まりでなく(ライブエンド、live end)、下側固定位置は行き止まり(デッドエンド、dead end)であってもよい。各紐状構造体の水平方向に対する角度はほぼ等しくなっていてもよい。
【0010】
石造アーチ橋は1つ以上の内側スパンドレル壁を備えていてもよい。さらなる紐状構造体が内側スパンドレル壁に設けられていてもよい。
強化手段は、石造アーチに力を加えるように配置されかつ方向付けされる1つ以上のデバイス、例えばジャッキであってもよい。この力は少なくとも水平方向の成分を有している。かかるデバイスは圧縮状態で作用してもよい。かかるデバイスは力が少なくとも石造アーチの横方向の成分を有するように方向付けされてもよい。かかるデバイスは、石造アーチに対して実質的に水平かつ横方向のみの力を加えるようになっていてもよい。かかるデバイスは石造アーチに対して水平かつ横方向に延びていてもよい。1つ以上のデバイスが石造アーチの切断部にまたは切断部内に配置されていてもよい。切断部が石造アーチの軸方向に延びている場合(下記記載を参照)、かかるデバイスは切断部に沿って等間隔に並べられてもよい。また、コアードホールが形成され、かかるデバイスがコアードホールの中に挿入されるようになっていてもよい。かかるデバイスは切断部が形成される前または後に装着されるようになっていてもよい。切断部が形成される前に装着されるようになっている場合、このことは、切断の間、石造に対するストレスを減らすことができる。コアードホールは、約400〜500mm、好ましくは450mmの直径を有していてもよい。隣接するコアードホールの中心は約1mだけ離れていてもよい。コアードホールは、少なくとも1つのレンガ造りの構造物がコアードホールの下(例えば、コアードホールと石造アーチの下面との間)に残されうるようなサイズ及び間隔で形成及び配置されるようになっていてもよい。1つ以上のデバイスは、アーチ作用に起因する元から存在するスラストを少なくとも部分的に維持するようになっていてもよいしまたは増大させるようになっていてもよい。
【0011】
強化手段はサドルであってもよい。サドルは石造アーチの上面に配置されるようになっていてもよい。サドルは石造アーチと結合されるようになっていてもよい。
サドルを石造アーチの上面に設けるステップは、強化コンクリート製サドルを石造アーチの上面に打設成形してコンクリートを硬化させるステップを含んでいてもよい。さらに、サドルを石造アーチの上面に設けるステップは、強化コンクリート製サドルに後張力(post-tensioning)を加えるステップを含んでいてもよい。粘着性を有するコンクリートと後張力を加えることとにより、サドルを石造アーチの上面に堅固に固定することが可能となる。固定を改善する目的で、サドルを設ける前に、石造アーチの上面が例えばジェット洗浄により洗浄されるようになっていてもよい。サドルと石造アーチとの間で機械的アンカーを用いることにより固定をもたらしかつ/または固定を強化するようにしてもよい。
【0012】
強化手段を設けることにより、持ち上げ力を加える際に生じる恐れのある石造アーチの不安定化が削減される。持ち上げ力を加えると、石造アーチ内に通常存在している重力による圧縮力及びひいてはアーチ作用が削減されてしまう恐れがある。
サドルを石造アーチの上面に設けると石造アーチの持ち上げ高さを最大化する助けとなり、サドルを石造アーチの下側に設けると石造アーチの下方のスペースを削減させてしまうことになる。さらに、サドルのこの位置により、持ち上げ手段へのアクセスの改善が可能となる。さらに、この位置で、サドルは、石造アーチの外部をなにも覆わないので石造アーチ橋の外観に大きな影響を与えることはない。さらに、かかる方法のほとんどのステップは今までどおり乗り物が石造アーチ橋の下を通過している間に実行することができる。したがって、輸送ネットワークのダウンタイムを最小限に抑えられることになる。このことは、非常に長い期間にわたって輸送ネットワークを中断してしまうことになる地面掘り下げ技術または再建技術とは対照的である。
【0013】
スパンドレル壁は石造アーチの軸方向の端に位置している。スパンドレル壁は、隣接する石造アーチ、石造アーチ橋の頂部かつ/または石造アーチ橋の基礎部まで広がるものであってもよい。また、スパンドレル壁は石造アーチ橋の端壁であると考えられてもよい。
横方向は、石造アーチ橋の軸方向(縦方向)に対して直角かつ水平な方向として定義されてもよい。
【0014】
移動可能部分を形成することにより持ち上げる必要のある質量が削減される。切断部は石造アーチの頭頂部の横方向外側に形成されてもよい。さらに、切断部は石造アーチ全体の横方向外側に形成されてもよい。切断部は、石造アーチの頭頂部と石造アーチの横方向外側の周縁との中間に形成されてもよい。このようにすることにより、石造アーチ橋全体または石造アーチ全体を持ち上げる必要がなくなる。良好な切断部を提供するために、石造アーチ橋の切断はワイヤーソー、好ましくはダイヤモンドソーまたはくりぬき技術を用いて達成されてもよい。また、石造アーチ橋の切断は、例えば石造用のウエッジを用いて石造アーチ橋を分割することにより達成されてもよい。
【0015】
かかる方法は、スパンドレル壁の切断部に隣接する石造アーチの部分を切断して移動可能部分を形成するステップをさらに含みうる。これらの切断部は石造アーチに沿って軸方向に延びていてもよい。このことは、例えば、スパンドレル壁の切断部が頭頂部と石造アーチの横方向外側の端部との中間に形成されるときに必要となりうる。
持ち上げの間、石造アーチを支えるためにシムウエッジ(shim wedges)が切断部及び/またはジャックポケットの中に挿入されるようになっていてもよい。このようなシムウエッジは、持ち上げ時にギャップが切断部に形成される時に石造アーチを支えるために本発明にかかる実施形態のうちのいずれの実施形態においてでも用いることができる。好ましくは、これらのシムウエッジは厚みが約50mmでありうる。
【0016】
本発明の態様によっては、強化手段を必要としない場合もある。
持ち上げの間、石造アーチがその構造的完全性を維持することを担保するために石造アーチのアーチ作用が十分に維持されるように持ち上げ力が加えられるようになっていてもよい。
持ち上げ力は石造アーチの下側部分に加えられてもよい。
持ち上げ力の少なくとも1つの成分が石造アーチを圧縮するように作用するようになっていてもよい。
このようにすると、持ち上げの間外部からの強化する必要がなくなる。もっと正確にいえば、かかる方法は、石造アーチの自然なアーチ作用及び/または持ち上げ力に起因する圧縮に依存するようになっていてもよい。
持ち上げ力は1つ以上の持ち上げデバイスによって提供されるようになっていてもよい。
【0017】
持ち上げ力は、石造アーチを該石造アーチの上方に配置される支持構造体に接続する1つ以上の引張り部材によって提供されるようになっていてもよい。さらに、この支持構造体は石造アーチに沿って延在するようになっていてもよい。好ましくは、支持構造体は石造アーチを横方向に延びるようになっていてもよい。支持構造体は、石造アーチをその軸方向に延びるようになっていてもよい。引張り部材は持ち上げ用のストランドまたは持ち上げ用の棒であってもよい。支持構造体はトラスまたは支持ビームであってもよい。好ましくは、引張り部材は、石造アーチ、好ましくは石造アーチの下側部分に直接接続されてもよい。引張り部材は強化手段に接続されてもよい。支持構造体は、石造アーチ橋の横側の土手に設置されうる支持構造体用の基礎により支えられるようになっていてもよい。トラスはモジュールトラスであってもよい。トラスは上側筋交い部及び下側筋交い部を有するようになっていてもよい。下側筋交い部は、石造アーチへのアクセスを容易にするためにトラスから取り除き可能となっていてもよい。持ち上げ力が加えられる前にトラスに下側筋交い部が設けられるようになっていてもよい。
【0018】
持ち上げ力はジャッキにより加えられてもよい。ジャッキを支持構造体の基礎に配置することにより支持構造体、引張り部材及び移動可能部分を持ち上げるようにしてもよい。ジャッキはラムジャッキであってもよい。それに代えてまたはまたそれに加えて、ジャッキを石造アーチ橋の切断部内に配置してもよい。ジャッキは傾けられていてもよい。
それに代えて、引張り部材がジャッキであってもよい。例えば、引張り部材がストランドである場合に当該ストランドがストランド型ジャッキであってもよい。この場合、支持構造体は持ち上げの間静止したままであってもよい。
【0019】
サドルは持ち上げビームを有していてもよい。引張り部材は持ち上げビームに接続される。持ち上げビームはサドルの軸方向に延びるビームであってもよい。持ち上げビームは引張り部材を取り付けうるアンカーポイントを有していてもよい。サドルの頭頂部の各側に1個ずつ2つの持ち上げビームが設けられるようになっていてもよい。これら2つの持ち上げビームはサドルの頭頂部の各側に対称的に配置されるようになっていてもよい。
【0020】
移動可能部分及び引張り部材は石造アーチの頭頂部を中心として対称になっていてもよい。移動可能部分が回転しないように持ち上げ力の合力が移動可能部分の重心を通って作用するようになっていてもよい。
サドルは2組の紐状構造体を有し、各組の紐状構造体は第1及び第2のライブエンドと第1及び第2のデッドエンドとの間を延びるようになっていてもよい。これら紐状構造体は、軸(縦)方向に間隔をおいて並べられ、おおむね横方向に延びているようになっていてもよい。これら紐状構造体は、横方向に等間隔に並べられていてもよい。
【0021】
各組の紐状構造体の第1及び第2のライブエンドは軸方向に並べられていてもよい。これらの第1及び第2のライブエンドはサドルの頭頂部に配置されるようになっていてもよい。こうすることにより、張力を加えるためにライブエンドにアクセスすることが容易となる。第1及び第2のデッドエンドはサドルの両側の下側部分に配置されてもよい。第1のライブエンドは第1のデッドエンドよりも第2のデッドエンドの方により近い位置に配置され、第2のライブエンドは第2のデッドエンドよりも第1のデッドエンドの方により近い位置に配置されるようになっていてもよい。このことにより、二組の紐状構造体にサドルの頭頂部でオーバーラップさせることが可能となる。このように配置することにより、サドルの後張力の質及びサドルの固定が良好なものとなる。
【0022】
石造アーチが石造アーチの両側の橋脚により支えられ、持ち上げ力が橋脚で加えられるようになっていてもよい。持ち上げ力はジャッキ、好ましくはラムジャッキを用いて加えられてもよい。ジャッキは橋脚のジャッキ用ポケットに収容されてもよい。ジャッキ用ポケットは橋脚を切断または抜き加工することにより形成可能である。
石造アーチを持ち上げ位置に固定することは石造アーチを持ち上げた時に形成されるギャップを充填するまたはギャップにグラウトを詰めることを含んでいてもよい。いったん石造アーチが固定されたならば、持ち上げ力が削除されてもよい。
【0023】
1つの実施形態では、石造アーチ橋の移動可能部分は、持ち上げ時、線形の垂直方向の移動、すなわち回転なしの移動を行うようになっていてもよい。この実施形態では、移動可能部分は、石造アーチと石造アーチ橋のうちの石造アーチの実質的に垂直方向上方の部分とを含むようになっていてもよい。
またこの実施形態では、切断部が実質的に垂直方向のものであってもよい。この場合、石造アーチの両側と垂直方向の切断部との間に水平方向の切断部が形成されてもよい。このような切断部が形成され、石造アーチが持ち上げられると、水平方向の切断部の位置にそれぞれギャップが生じることになる。石造アーチを持ち上げ位置に固定するために、このギャップが充填されるまたはこのギャップにグラウトが詰められるようになっていてもよい。
【0024】
切断部が横方向外側に向けて上方に傾斜するようになっていてもよい。この場合、水平方向の切断部を必要としない場合もある。このような切断部が形成され、石造アーチが持ち上げられると、上方に傾斜する切断部のそれぞれの位置にギャップが生ずることになる。石造アーチを持ち上げ位置に固定するために、このギャップが充填されるまたはこのギャップにグラウトが詰められるようになっていてもよい。
【0025】
他の実施形態では、石造アーチ橋の移動可能部分は、持ち上げられる時に回転移動を行うようになっていてもよい。このことはサドルを用いて達成されてもよいしまたはサドルを用いないで達成されてもよい。
サドルを用いる場合、サドルは第1のサドル部及び第2のサドル部を有し、第1のサドル部は石造アーチの第1の部分に設けられ、第2のサドル部分は石造アーチの第2の部分に設けられるようになっていてもよい。石造アーチは、石造アーチの第1の部分及び第2の部分からなっていてもよい。好ましくは、第1のサドル部及び第2のサドル部は石造アーチの頭頂部で合流するようになっていてもよい。第1のサドル部及び第2のサドル部はそれぞれ石造アーチの上面の半分側の面、すなわち石造アーチの基端から頭頂部までの面に設けられてもよい。
【0026】
第1のサドル部及び第2のサドル部はそれぞれライブエンドとデッドエンドとの間を延びる1組の紐状構造体を有していてもよい。これら紐状構造体は軸方向に間隔をおいて並べられ、横方向で延びるようになっていてもよい。これら紐状構造体は均等に間隔をおいて並べられていてもよい。
一組の紐状構造体のライブエンド及びデッドエンドは軸方向に並べられていてもよい。デッドエンドがサドルの頭頂部に配置されるようになっていてもよい。ライブエンドがサドル部の横方向の周縁に配置されるようになっていてもよい。紐状構造体は、サドルの頭頂部の外側周縁から横方向内側に向けて上方に傾斜するようになっていてもよい。このように配置することにより、サドルの後伸張の質及び固定が向上する。
【0027】
サドルの上面がほぼ元の道路レベルの位置に来るようにコンクリート製サドルが打設成形されてもよい。このように配置することにより、いったん石造アーチ橋を持ち上げた後で道路面を削正(re-profiling)する必要がなくなる。
サドルが用いられるか否かにかかわらず、かかる方法は、持ち上げ力を加える前に、スパンドレル壁のうちの石造アーチの横方向外側の部分にウエッジ形状のギャップを形成するステップと、石造アーチを切断して第1及び第2の移動可能部分を形成するステップとをさらに含んでいてもよい。
【0028】
好ましくは、サドルが用いられる場合、石造アーチは第1のサドル部と第2のサドル部と交わる位置で切断されるようになっていてもよい。
好ましくは、サドルが用いられるか否かにかかわらず、石造アーチは石造アーチの頭頂部で切断されるようになっていてもよい。さらに、水平方向の切断部が橋脚に形成されてもよい。
【0029】
第1及び第2の移動可能部分が形成され、持ち上げ力が加えられる時、第1及び第2の移動可能部分がそれぞれ第1及び第2の支点を中心として枢動するようになっていてもよい。第1及び第2の支点は石造アーチから横方向外側の位置に配置されていてもよい。この位置は、例えば石造アーチ橋が土手と交わる位置であってもよい。この位置は、石造アーチが橋脚と交わる位置またはその近傍であってもよい。この位置は、石造アーチの横方向外側にあるさらなる石造アーチ内であってもよい(以下を参照)。例えば3重アーチ式石造アーチ橋では、この位置は、外(側)の石造アーチ内における、当該外側石造アーチの横方向外側の端から当該外側石造アーチのスパンの約4分の1の位置のところであってもよい。第1及び第2の移動可能部分を枢動させるためには、持ち上げ力を第1及び第2の移動可能部分の重心の横方向内側の位置で第1及び第2の移動可能部分に加える必要がある。
【0030】
当該支点にウエッジ形状のギャップの先端が位置すべきである。ウエッジ形状のギャップの角度は、石造アーチ橋の下方のスペースを必要とする分だけ拡大させるのに十分なだけ第1及び第2の移動可能部分を回転させるのを可能とするのに十分に足りるものである必要がある。
石造アーチ橋を固定するステップは石造アーチ橋の第1の部分と第2の部分との間にウエッジを挿入または形成するステップを含んでもよい。さらに、水平方向の切断部の位置に形成されるギャップを充填するようになっていてもよいし、又はそこにグラウトを詰めるようになっていてもよい。
【0031】
例えば切断部、ギャップまたはウエッジ形状のギャップを充填するグラウトのような、石造アーチ橋を持ち上げ位置で固定するために用いられる任意の石造構造物、モルタル、コンクリートまたはグラウトは、設けられて、次いで、例えば約24時間硬化させられるようになっていてもよい。当該設けるステップ及び/または硬化させるステップは、持ち上げ力及び/または強化手段が石造アーチ橋に加えられているまたは設けられている間に行うようにしてもよい。いったん設けて/硬化させてしまえば、強化手段及び/または持ち上げ力を取り除いてもよい。
このように移動可能部分を枢動させる利点としては、石造アーチ橋の固定後、道路面を削正する必要がない点が挙げられる。というのは、回転により道路面が既に傾斜させられているからである。
【0032】
一実施形態では、石造アーチ橋は単一アーチ式石造アーチ橋であってもよい。
他の実施形態では、石造アーチ橋が1つ以上のさらなる石造アーチと、それに対応し、隣接する石造アーチ間に位置する1つ以上の橋脚とを備える多重アーチ式石造アーチ橋であり、当該さらなる石造アーチには強化手段が設けられるようになっている。
【0033】
以上のように、多重アーチ式石造アーチ橋は複数の石造アーチを備えている。隣接する石造アーチは、橋脚を共有し、ひいてはこの橋脚により分離されるようになっていてもよい。スパンドレル壁内のウエッジ形状のギャップは、最も外側の石造アーチの横方向外側に配置されるようになっていてもよい。最も外側の石造アーチとは、石造アーチ橋の中心から横方向に最も遠い2つの石造アーチのことである。それに代えて、ウエッジ形状のギャップが隣接する石造アーチ間に配置されるようになっていてもよい。それに代えて、ウエッジ形状のギャップが外側または最も外側の石造アーチ内に配置されてもよい。例えば3重アーチ式石造アーチ橋では、ウエッジ形状のギャップが、外側石造アーチにおける外側または最も外側の石造アーチの横方向外側の端から当該外側または最も外側の石造アーチ橋のスパンの約4分の1の位置に配置されるようになっていてもよい。
【0034】
本発明に関連して記載されている石造アーチは上述の複数の石造アーチのうちのいずれの1つであってもよい。また、上述の石造アーチのうちの1つ以上に本発明が適用されてもよい。
多重アーチ式石造アーチ橋は2つの石造アーチからなっていてもよい。これら2つの石造アーチは最も外側のアーチであると考えられてもよい。
多重アーチ式石造アーチ橋は奇数個の石造アーチからなっていてもよい。この場合、本発明に関連して記載されている石造アーチは中央の石造アーチであってもよい。
【0035】
多重アーチ式石造アーチ橋は、中央の石造アーチの一方側に1つ以上の第1の側の石造アーチと、中央の石造アーチの他方側に1つ以上の第2の側の石造アーチを備えていてもよい。第1の側の石造アーチの数と第2の側の石造アーチの数とは同じ数であってもよい。石造アーチ橋が中央の石造アーチの頭頂部を中心として対称となるように、第1の側の石造アーチと第2の側の石造アーチとが相互に対応するようになっていてもよい。橋脚が、隣接する石造アーチの間に位置し、当該隣接する石造アーチを支えるようになっていてもよい。当該技術分野では、これら横側の石造アーチはバックアーチとして知られている。
【0036】
切断部が中央のアーチ、好ましくは頭頂部に形成されるようになっていてもよい。
例えば、多重アーチ式石造アーチ橋は3重アーチ式石造アーチ橋であってもよい。3重アーチ式石造アーチ橋は、第1及び第2の側の石造アーチと、中央の石造アーチと第1の側の石造アーチとに隣接する第1の橋脚と、中央の石造アーチと第2の側の石造アーチとに隣接する第2の橋脚とを備えていてもよい。
【0037】
この場合、第1のサドル部は第1の側の石造アーチの上面及び中央の石造アーチ橋の一部分に設けられ、第2のサドル部は第2の側の石造アーチの上面及び中央の石造アーチのその他の部分に設けられるようになっていてもよい。
石造アーチに少なくとも水平方向の成分を有する力を加えるように配置及び方向付けされる1つ以上のデバイスが中央の石造アーチの切断部に配置されるようになっていてもよい。
【0038】
スパンドレル壁のウエッジ形状のギャップは、第1の側の石造アーチ及び第2の側の石造アーチの横方向外側に配置されるようになっていてもよい。それに代えて、ウエッジ形状のギャップは第1の側の石造アーチ及び第2の側の石造アーチの内部に設けられるようになっていてもよい。例えば、ウエッジ形状のギャップは、第1の側の石造アーチ及び/または第2の側の石造アーチにおける第1の側/第2の側の石造アーチの横方向外側の端から当該第1の側/第2の側の石造アーチのスパンの約4分の1の位置に形成されるようになっていてもよい。
それに代えて、スパンドレル壁が十分に小さい場合または石造アーチ橋の幾何学形状が許す場合には、ウエッジ形状のギャップは例えば切断部と交換されてもよい。
それに加えてまたはそれに代えて、かかる方法は切断部にベアリングを設けるステップを含んでいてもよい。
【0039】
1つ以上のベアリングが設けられてもよい。ベアリングは移動可能部分の横方向外側に設けられるようになっていてもよい。持ち上げの間、ベアリングは石造アーチの圧縮、ひいてはアーチ作用を維持するよう作用するようになっていてもよい。持ち上げの間、ベアリングは摩擦を削減するようになっていてもよい。ベアリングは、圧縮を提供してもしくはすることなく石造アーチ橋の構造形態を維持するようになっていてもよい(例えば、石造構造物の粉砕を防止することにより)。ベアリングは移動可能部分の第1の面と当該第1の面に隣接する石造アーチ橋のその他の部分に形成される第2の面との間に設けられてもよい。これらの面は平坦であってもよい。これらの面は垂直方向であってもよい。これらの面は石造アーチ橋の軸方向に延びるようになっていてもよい。これらベアリング面は実質的に切断部の軸方向の長さ全体にわたって設けられてもよいし設けられなくともよい。これらベアリング面は実質的に切断部の深さ全体にわたって延びていてもよいし延びていなくともよい。切断部の軸方向の長さとは、石造アーチの軸方向とおおむね平行な水平方向の長さのことである。
【0040】
切断部は1つ以上のコアードホールを有していてもよい。コアードホールは実質的に垂直方向であってもよい。コアードホールはおおむね円状の断面形状を有していてもよい。コアードホールは、互いに隣接するように配置され、実質的に切断部の軸方向の長さ全体を形成するようになっていてもよい。コアードホールは、互いに間隔をおいて並べられていてもよい。コアードホールは、個々別々のものであり、石造構造物を通る切断部により連結されるようになっていてもよい。
ベアリングは、コアードホールの各々に設けられてもよいし、または、コアードホールのうちの一部にのみ設けられてもよい。
【0041】
ベアリングは、互いに実質的に同一でありうる2つの平坦な部分を有していてもよい。 これらの平坦な部分の幅は実質的にコアードホールの直径と同じであってもよい。
これらの平坦な部分の長さは実質的にコアードホールの深さと同じであってもよい。
これらの平坦な部分の長さはコアードホールの深さよりも大きくてもよい。
これらの平坦な部分の長さはコアードホールの深さ未満であってもよい。使用時、これらの平坦な部分はコアードホールの下側部分に配置されてもよい。ベアリングは、平坦な部分からかつコアードホールから外へ延びるように構成される1つ以上の延長部をさらに有していてもよい。延長部により、ベアリングをコアードホールの中への挿入すること、コアードホールからの取り出すこと及びコアードホール内で位置決めすることが可能となる。使用時、延長部はおおむね垂直方向に延びるようになっていてもよい。
【0042】
ベアリングは摩擦低減手段を有していてもよい。摩擦低減手段は第1の面と第2の面との間に設けられていてもよい。摩擦低減手段は平坦な部分の面積と実質的に類似する面積を有していてもよい。摩擦低減手段は第1の面及び第2の面のうちの一方に設けられていてもよいしまたはどちらにも設けられていなくともよい。摩擦低減手段はグリースであってもよい。グリースは層として設けられてもよい。摩擦低減手段はPTFE層であってもよい。第1の面及び第2の面はステンレス鋼の面であってもよい。平坦な部分はステンレス鋼の層であってもよい。
【0043】
ベアリングは、当該ベアリングの面を保護するための手段(保護手段)を有していてもよい。当該保護手段は保護層であって、2つの面の間に配置されてもよい。保護手段は弾力性を有していてもよい。保護手段は上述の面を損傷から保護するようになっていてもよい。保護手段は摩擦低減手段を提供するようになっていてもよい。
【0044】
ベアリングは、グラウト/コンクリートにより移動可能部分及び/または石造アーチ橋のその他の部分に取り付けられるようになっていてもよい。ベアリングは、ペグを用いて移動可能部分及び/または石造アーチ橋のその他の部分に取り付けられるようになっていてもよい。ペグはコンクリート/グラウトに埋め込まれるようになっていてもよい。ベアリングは、コアードホール内に配置され、次いで、グラウト/コンクリートがコアードホールの中に注入され、ペグのまわりで硬化させられるようになっていてもよい。
各ベアリングは、約100mm〜4000mm、好ましくは500mmまたは4000mmの垂直方向の寸法と、約150mm〜500mm、好ましくは300mmの水平方向の寸法を有していてもよい。
移動可能部分は、約250mm〜1000mm、好ましくは500mmだけ持ち上げられるようになっていてもよい。
【0045】
ベアリングは、意図するすべり面に対するベアリングの僅かなずれに対処するとともに意図するすべり面に対する圧力を維持するための物質(例えば、ゴム)または液圧デバイスを有するようになっていてもよい。
強化手段を設ける前及び/又は移動可能部分を形成する前に、石造アーチ橋にシールドが設けられてもよい。また、破片用のネットが石造アーチ橋に設けられてもよい。このことは、作業全体の安全性を高め、行なわれるほとんどの作業の間、人、自動車、列車などが石造アーチ橋の下を通ることができるようになることを意味する。シールドは鋼から形成されてもよい。シールドは典型的な作業空間に収容可能となるように15mm未満の厚みを有していてもよい。シールド及び/または破片用のネットは、他の石造アーチ橋にさらに使用するために回収可能なものであってもよい。シールドは石造アーチの真下に配置されてもよい。シールドは石造アーチの下の地面により支えられてもよい。シールドはアーチ形状を有していてもよい。この形状は、石造アーチの形状におおむね沿ったものであるため、本発明にかかる方法が実行されている間、石造アーチの下の線路/車道を用いることが可能となる。石造アーチとシールドとを分離するための小さなギャップが存在していてもよい。シールドは石造アーチ橋の軸方向の端を越えて延びるようになっていてもよい。
【0046】
また、作業中、石造アーチ橋の欄干及びスパンドレル壁が無傷のままでいることを担保するために補強(brace)されるようになっていてもよい。それに代えて、欄干を取り除くようにしてもよい。さらに、既存の石造アーチ橋の充填材を掘り返して(excavate)石造アーチを掘り起こす(uncover、石造アーチのカバー(覆い)を取り除く)ようにしてもよい。掘り返されていない石造アーチ橋の充填材は斜面に戻す処理(battered back)が施されるようになっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
以下に、添付の図面を参照して複数の好ましい実施形態が例示のみを意図して説明されている。
【
図1】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図2】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図4】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図5】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図6】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図7】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図8】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図9】本発明のある実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図10】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図11】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図12】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図13】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図14】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図15】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図16】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図17】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図18】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図19】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図20】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図21】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図22】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図23】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図24】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図25】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図26】本発明の他の実施形態にかかるステップを示す図である。
【
図27】石造アーチ橋を強化する方法を示す図である。
【
図28】石造アーチ橋を強化する方法を示す図である。
【
図29】石造アーチ橋を強化する方法を示す図である。
【
図30】強化することなく石造アーチを持ち上げるそれぞれの方法を示す図である。
【
図31】強化することなく石造アーチを持ち上げるそれぞれの方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
第1の実施形態に関して、
図1には単一アーチ式石造アーチ橋1(single−span mansonry arch bridege)及び石造アーチ橋の下方のスペース2が示されている。石造アーチ橋1は、石造アーチ3と、石造アーチ3の各端部に位置するスパンドレル壁4と、各スパンドレル壁4及び石造アーチ3の上方に位置する欄干6とを備えている。石造アーチ3は当該石造アーチ3の各側に位置する橋脚9により支えられている。石造アーチ橋は土手5により支えられている。スパンドレル壁4、土手5、石造アーチ3及び石造アーチ橋の間は充填材により充填されている。
【0049】
本発明にかかる方法の第1の段階は、トラス持ち上げ用の土台10を充填材及び土手5に設置するステップと、石造アーチ3及び石造アーチ橋1に対する破片用のネット及びシールド11を設置するステップと、トラス12をトラス持ち上げ用の土台10に設置するステップとを含んでいる。
図2を参照すると、かかる方法は、欄干6を補強するステップと、スパンドレル壁4を補強するステップと、石造アーチ3を掘り起こすために充填材を掘り返すステップと、残余充填材7を斜面に戻すステップとをさらに含んでいる。特筆すべきことは、掘り返すとき、石造アーチが持ち上がってしまう恐れがあるという点にある。
【0050】
図3を参照すると、かかる方法は、石造アーチ3の上面8をジェット洗浄するステップと、石造アーチ3の上面8に強化コンクリート製サドル20を打設成形(cast)するステップと、コンクリートを硬化させるステップとをさらに含んでいる。
図4を参照すると、かかる方法は、強化コンクリート製サドル20に後張力21を加えるステップと、持ち上げ用のストランド13を設置するステップと、スパンドレル壁を切断して垂直なまたはほぼ垂直な切断部30を形成するステップと、橋脚9を切断して水平方向の切断部31を形成するステップと、それにより石造アーチ橋1の移動可能部分32を形成するステップとをさらに含んでいる。
【0051】
図5を参照すると、かかる方法は、トラス12がトラス持ち上げ用の土台10と交わるところでトラス持ち上げ用の土台10をジャッキで持ち上げるステップと、それにより移動可能部分32を所望の高さに持ち上げるステップとをさらに含んでいる。水平方向の切断部31の位置にはギャップ33が形成されている。
図6を参照すると、かかる方法は、ギャップ33を充填するために石造構造物、モルタル及び/またはグラウト40を差し込むステップと、これを硬化させるステップと、トラス12のジャッキによる持ち上げを解除するステップと、トラス12を取り除くステップと、トラス持ち上げ用の土台10を取り除くステップと、掘り返された領域を好ましくは気泡コンクリート、堀り返された前の材料または新たなグレードの埋め戻し材料で埋め戻すステップとを含んでいる。道路レベル14は適切なレベルに調節可能である。
【0052】
図7は、掘り返し後の石造アーチ橋1を示す他の図であり、石造アーチ3、スパンドレル壁4、欄干6、橋脚9、土手5、残余充填材7、トラス持ち上げ用の土台10、トラス12、持ち上げ用のストランド13、サドル20及び移動可能部分32を示している。
図8は強化コンクリート製サドル20をさらに詳細に示している。サドル20は、持ち上げ用のストランド13が接続される2つの持ち上げ用のビーム22を有している。持ち上げ用のビーム22は、サドル20の軸線方向に延びている。2つの持ち上げビーム22は、サドル20の頭頂部の両側に当該頭頂部から等距離だけ離れて配置されている。サドルは、当該サドル20と石造アーチ3とを固定しかつ/またはその固定を強化するための機械的アンカー23を有している。
【0053】
サドルは、第1及び第2のライブエンド25をそれぞれ第1及び第2のデッドエンド26に接続するための2組の紐状構造体24を有している。紐状構造体24は、互いに軸方向に間隔を置いて並べられ、横方向に延びている。紐状構造体24は等間隔に並べられている。
各組の紐状構造体24の第1のライブエンドと第2のライブエンドとは軸方向に並べられている。第1のライブエンド及び第2のライブエンド25はサドル20の頭頂部に配置されている。第1のデッドエンド及び第2のデッドエンドはサドルの両側の下側部分に配置されている。第1のライブエンド25は、第1のデッドエンド26よりも第2のデッドエンド26の方により近い位置に配置され、また、第2のライブエンド25は、第2のデッドエンド26よりも第1のデッドエンド26の方により近い位置に配置されている。このことにより、2組の紐状構造体24がサドル20の頭頂部でオーバーラップすることが可能となる。
【0054】
図9はトラスをジャッキにより持ち上げる機構をより詳細に示している。トラス持ち上げ用の土台10とトラス12との間にジャッキ15が配置されている。
第2の実施形態に関し、
図10は3重アーチ式石造アーチ橋101と当該石造アーチ橋101の下方のスペース102とを示している。かかる石造アーチ橋101は、中央の石造アーチ103と、第1の側の石造アーチ116と、第2の側の石造アーチ117と、中央の石造アーチ103の各端部に位置するスパンドレル壁104と、各スパンドレル壁104の上方の欄干106とを備えている。中央の石造アーチ103は当該中央の石造アーチ103の両側の橋脚109により支えられている。スパンドレル壁104及び中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチ116及び第2の側の石造アーチ117の間において、石造アーチ橋101は充填材で充填されている。
【0055】
かかる方法の第1の段階は破片用のネット及びシールド111を石造アーチ橋101に設置するステップを含んでいる。
図11を参照すると、かかる方法は、欄干106を補強するステップと、スパンドレル壁104を補強するステップと、中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチアーチ116及び第2の側の石造アーチ117を掘り起こすために充填材を掘り返すステップと、残余充填材107を斜面に戻すステップとをさらに含んでいる。特筆すべきことは、掘り返すとき、これらの石造アーチが持ち上がってしまう恐れがあるという点にある。
【0056】
図12を参照すると、かかる方法は、中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチ116及び第2の側の石造アーチ117の上面108、118、119をジェット洗浄するステップと、強化コンクリート製サドル120を上面108、118、119に打設成形するステップと、このコンクリートを硬化させるステップとをさらに含んでいる。強化コンクリート製サドルは2つのサドル部128、129を有している。さらに、ジャッキ用ポケット134が橋脚109に形成されている。
【0057】
図13を参照すると、かかる方法は、強化コンクリート製サドル120に後張力121を加えるステップと、垂直方向の切断部またはウエッジ形状のギャップ130を形成するためにスパンドレル壁104及び欄干106を切断するステップと、水平方向の切断部132を形成するためにジャッキ用ポケット134の位置で橋脚109を切断するステップと、垂直方向の切断部135を形成するために頭頂部で中央の石造アーチ103及び欄干106を切断するステップと、それにより石造アーチ橋101の第1及び第2の移動可能部分131、136を形成するステップとをさらに含んでいる。
【0058】
図14を参照すると、かかる方法は、ジャッキ用ポケット134に配置されるジャッキ115(
図26を参照)を用いて第1及び第2の移動可能部分131、136を持ち上げるステップをさらに含んでいる。第1及び第2の移動可能部分131、136は、それぞれ第1及び第2の支点137、138を中心として枢動するようになっている。第1及び第2の支点137、138は、第1及び第2の側の石造アーチ116、117から横方向外側の位置に配置されている。この位置は、第1及び第2の側の石造アーチ116、117が外側の橋脚144と交わる位置またはその近傍の位置であってもよい。ウエッジ形状のギャップ130の先端は、それぞれ、支点137、138の位置にくるように配置されている。
【0059】
持ち上げると、石造アーチ103、116、117と橋脚109との間にギャップ133が形成される。2つの移動可能部分131、136の間にはクラウンギャップ143がさらに形成される。さらに、ジャッキに加え、シムウエッジ(sim wedge、図示せず)を切断部132及び/またはジャッキ用ポケット134の中にジャッキに隣接させて挿入して持ち上げている間石造アーチ橋を支えるようにしてもよい。このようなシムウエッジは、持ち上げ時、切断部でギャップを形成する際に石造アーチ橋を支えるために本発明のいずれの実施形態において用いられてもよい(例えば、ジャッキを使用するか否かに関係なく)。好ましくは、シムウエッジの厚みは約50mmである。
【0060】
ギャップ133、143を充填するためにウエッジ、石造構造物、モルタル及び/またはグラウト140が差し込まれる。これが硬化され、ジャッキ115による持ち上げが解除される。その後、ジャッキ用ポケット134を充填することができる。
図15を参照すると、かかる方法は、掘り返された領域を好ましくは気泡コンクリートで埋め戻すことをさらに含んでいる。道路レベル114は適切なレベルに調節可能である。石造アーチ橋の持ち上げ前の輪郭145が持ち上げ後の輪郭よりも低い位置にあることが分かる。
【0061】
図16は、掘り返し後の石造アーチ橋101を示す他の図であり、中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチ116、第2の側の石造アーチ117、スパンドレル壁104、欄干106、橋脚109、外側の橋脚144、ジャッキ用ポケット134、サドル120、移動可能部分131、136及びウエッジ形状のギャップ130を示している、
図17は、強化コンクリート製サドル120の強化された部分129、128をさらに詳細に示している。強化コンクリート製サドルは、機械的アンカー123を有し、強化コンクリート製サドル120と中央の石造アーチ103、第1の石造アーチ116及び第2の側の石造アーチ117との間のアンカーによる固定を提供かつ/または強化するようになっている。
【0062】
強化された部分128、129は、ライブエンド125をデッドエンド126に接続する1組の紐状構造体124を有している。紐状構造体124は、互いに軸方向(縦方向)に間隔をおいて並べられ、横方向に延びている。紐状構造体124は等間隔に並べられている。
一組の紐状構造体124のライブエンド125及びデッドエンド126は軸方向に並べられている。デッドエンド126は強化コンクリート製サドル120の頭頂部に配置されている。ライブエンド125は強化コンクリート製サドルの強化された部分128、129の横方向の外縁に配置されている。紐状構造体124は、強化コンクリート製サドル120の横方向の外縁から頭頂部へと横方向内側に向けて上向きに傾斜している。
強化コンクリート製サドル120の上面がほぼ元の道路レベル114の位置にくるように強化コンクリート製サドル120が打設成形される。
【0063】
第2の実施形態と同様に、第3の実施形態に関し、
図18は3重アーチ式石造アーチ橋101及び当該石造アーチ橋101の下方のスペース102を示している。石造アーチ橋101は、中央の石造アーチ103と、第1の側の石造アーチ116と、第2の側の石造アーチ117と、中央の石造アーチ103の各端部に位置するスパンドレル壁104と、各スパンドレル壁104の上方の欄干106とを備えている。中央の石造アーチ103は当該中央の石造アーチ103の両側の橋脚109により支えられている。スパンドレル壁104及び中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチ116及び第2の側の石造アーチ117の間において、石造アーチ橋101は充填材で充填されている。
【0064】
第3の実施形態にかかる方法の第1の段階は、破片用のネット及びシールド111を石造アーチ橋101に設置するステップを含んでいる。破片用のネット及びシールドは、
図24及び
図25にさらに詳細に示されている。破片用のネット及びシールドは、石造アーチの形状におおむね沿った形状を有しているので、本方法を実行している間、石造アーチの真下の線路を用いることができる。破片用のネット及びシールドは石造アーチ橋の軸方向の終端を越えて延びている。このような破片用のネット及びシールドは、本発明にかかるいずれの実施形態において用いられてもよく、複数の石造アーチが存在する場合にはいかなる数の石造アーチまたは全ての石造アーチの下で用いられてもよい。
【0065】
図19を参照すると、かかる方法は、欄干106を補強するステップと、スパンドレル壁104を補強するステップと、中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチアーチ116及び第2の側の石造アーチ117を掘り起こすために充填材を掘り返すステップとと、残余充填材107を斜面に戻すステップとさらに含んでいる。特筆すべきことは、掘り返すとき、これらの石造アーチが持ち上がってしまう恐れがあるという点にある。さらに、中央の石造アーチ103の頭頂部に複数のコア150が形成されている。これらのコアの内側には、水平方向用のジャッキが設置されている。
【0066】
図20を参照すると、ジャッキ用ポケット134が橋脚109内に形成され、回転クリアランス用のウエッジ形状のギャップ130が両側のアーチ116、117に切り込まれている。ジャッキがジャッキ用ポケット134の中に設置されている。
図21を参照すると、すべてのジャッキ(ジャッキ用ポケット134内の垂直方向のジャッキ及びコア150内の水平方向のジャッキ)が搭載されている。ジャッキ用ポケット134とジャッキ用ポケット134と間の残余石造構造物が切断されて水平方向の切断部132が形成されている。このことはワイヤーソー(線鋸)を用いて行われてもよい。コア150とコア150との間の残余石造構造物が、この時に切断されてもよいし、または、ジャッキの搭載前に切断されてもよい。このようにして、頭頂部135内の切断部、ウエッジ形状のギャップ130及び水平方向の切断部132が石造アーチ橋101の第1及び第2の移動可能部分131、136を形成するようになっている。
【0067】
図22を参照すると、かかる方法は、ジャッキ用ポケット134内に位置するジャッキ115を用いて第1及び第2の移動可能部分131、136を持ち上げるステップをさらに含んでいる。第1及び第2の移動可能部分131、136はそれぞれ第1及び第2の支点137、138を中心として枢動するようになっている。第1及び第2の支点137、138(ならびにウエッジ形状のギャップ130)は、それぞれ、両側の石造アーチの横方向外側の端から両側の石造アーチ116、117のスパンの4分の1の位置のところに設けられている。ウエッジ形状のギャップ130の先端は支点137、138の位置にくるように配置されている。
【0068】
持ち上げると、石造アーチ103、116、117と橋脚109との間にギャップ133が形成される。また、2つの移動可能部分131、136の間にはクラウンギャップ143がさらに形成される。持ち上げの際に石造アーチの圧縮を確実に維持するために、持ち上の際にコア150内に配置されている水平方向のジャッキが膨らまされるようになっている。さらに、持ち上げの際に石造アーチを支えるために、垂直方向及び水平方向のジャッキに加えて、シムウエッジ(図示せず)が、(例えば、コア150、ジャッキ用ポケット134、水平方向の切断部132及び/または頭頂部の切断部135内の)垂直方向及び水平方向のジャッキ115に隣接させて挿入されるようになっていてもよい。
【0069】
ギャップ133、143を充填するために、ウエッジ、石造構造物、モルタル及び/またはグラウト140が差し込まれる。これらを硬化させ、ジャッキ115による持ち上げが解除される。このことは、グラウトバッグをギャップ133、143の中に挿入してグラウトで膨張/充填することにより達成可能である。いったんジャッキを取り除いてしまえば、ジャッキ用ポケット134及びコア150を充填することができるようになる。
【0070】
図23を参照すると、かかる方法は、掘り返された領域を好ましくは気泡コンクリート、掘り返された以前の材料または新たなグレードの埋め戻し材料で埋め戻しするステップをさらに含んでいる。道路レベル114は適切なレベルに調節可能である。必要ならば、れんが造りの構造物をチェックして修復するようにしてもよい。石造アーチ橋の持ち上げ前の輪郭145が持ち上げ後の輪郭よりも低い位置にあることが分かる。破片用のネット及びシールド111がさらに取り除かれている。
【0071】
図24及び
図25は、掘り返しがなされた石造アーチ橋101を示す他の図であり、中央の石造アーチ103、第1の側の石造アーチ116、第2の側の石造アーチ117、スパンドレル壁104、欄干106、橋脚109、外側の橋脚144、ジャッキ用ポケット134、コア150、頭頂部切断部135、移動可能部分131、136、破片用のネット及びシールド111ならびにウエッジ形状のギャップ130を示している。
【0072】
図26はジャッキ機構をさらに詳細に示している。複数のジャッキ115がそれぞれ対応する橋脚109のジャッキ用ポケット134に配置されている。
図27は他の強化手段を示している。この実施形態では、紐状構造体224を石造アーチ橋201に固定させて当該紐状構造体に張力を加えることにより強化手段が設けられるようになっている。図示されているように、第1の紐状構造体224と第2の紐状構造体224とが石造アーチ橋203の頭頂部の領域において横方向にオーバーラップしている。
【0073】
これらの紐状構造体はスパンドレル壁204に固定されるようになっていてもよい。各紐状構造体224の一方の端部が頭頂部の一方側に固定され、各紐状構造体224の他方の端部が頭頂部の他方側に固定されるようになっている。これらの紐状構造体224は横方向内側に向かって上向きに傾斜している。1つの紐状構造体は、頭頂部の第1の側の上側固定位置225から延び、他の紐状構造体は頭頂部の第2の側の上側固定位置225から延びている。これらの紐状構造体はそれぞれ下側固定位置226まで延びるようになっていてもよい。上側固定位置225はライブエンドであり、下方固定位置226はデッドエンドである。各紐状構造体224が水平方向に対して形成する角度はほぼ等しい。
【0074】
図28にはA−Aに沿って切断して得られる断面の一例が示されている。
図28に示されているように、4つの紐状構造体を用い、各紐状構造体をスパンドレル壁204の各面に取り付けるようにしてもよい。
図29にはA−Aに沿って切断して得られる断面の他の一例が示されている。
図29に示されているように、石造アーチ橋201は外側スパンドレル壁204’と内側スパンドレル壁204”とを備えるようになっていてもよい。内側スパンドレル壁204’にはさらなる紐状構造体224が取り付けられている。
【0075】
図30には、かかる方法の他の実施形態が例示されている。図示されているように、この実施形態では、移動可能部分332が横方向外側に向けて傾斜しうる切断部330によって形成されるようになっている。これらの切断部330は、石造アーチ303から石造アーチ橋301の上面まで延びている。移動可能部分332の下側部分、好ましくは石造構造物の最も下側のブロックに持ち上げデバイス313が取り付けられている。さらに、これらの持ち上げデバイスは、石造アーチ303の頭頂部の上方の位置に向けて内側に傾斜している。これらの持ち上げデバイスはこの位置で合流するようになっていてもよいし、または、持ち上げ用のビームもしくは持ち上げ用のフレームに取り付けられるようになっていてもよい。移動可能部分が持ち上げ力350により鉛直方向に持ち上げられると、石造構造物が圧縮力をさらに受けるようになる。というのは、持ち上げデバイス313の配置に起因して持ち上げ力の1つの成分が石造構造物を圧縮するように作用するからである。さらに、移動可能部分332が下側部分から持ち上げられているので、持ち上げの間、石造アーチ303の構造的完全性を維持するようにアーチ作用が作用し続けることになる。
図30には示されていないが、移動可能部分332と石造アーチ橋301のその他の部分との間に形成されるギャップを持ち上げ後に充填して移動可能部分を持ち上げ位置に維持することができる。いったんこれが完了すると、持ち上げ力350を除去することができ、持ち上げ位置で、アーチ作用が石造アーチ303の構造的完全性を維持し続ける。石造アーチ303の石造構造物333が拡大して概略的に図示されている。
図30に示されているように、持ち上げデバイス313とは持ち上げ用のストランドのことである。
【0076】
しかしながら、(
図30に示されているように上方から持ち上げることに加えてまたは)それに代えて、
図31に示されているように、持ち上げデバイス313がジャッキであってもよい。これらのジャッキは傾斜している。これらのジャッキは移動可能部分332と石造アーチ橋301のその他の部分との間の切断部330内に配置されている。
図32〜
図34は、移動可能部分432の横方向外側にベアリング451が設けられている本発明にかかる実施形態を示している。
【0077】
図32は、このようなベアリング451を示す平面図である。
図33(a)及び
図33(b)は、周囲のグラウト/コンクリート456のないベアリング451を概略的に示している。平坦な部分452が他の平坦な部分453と接触したまま上方に摺動するようになっている。
図33(a)は持ち上げ前の2つの平坦な部分452、453の相対的な位置関係を示しており、
図33(b)は持ち上げ後の2つの平坦な部分452、453の相対的な位置関係を示している。
図34(a)及び
図34(b)は、切断部430と移動可能部分432とに対するコアードホール(cored holes)460の位置関係を示している。
図34(a)は石造アーチ橋401を示す側面図であり、
図34(b)は石造アーチ橋401を示す平面図である。
【0078】
ベアリング451は石造アーチ橋403の圧縮、ひいてはアーチ作用を維持するように作用する。ベアリング451は摩擦を減らしてもっと制御可能な持ち上げを可能とする。このことは、複数のコアードホール460を有する切断部430を設けることにより達成される。複数のコアードホール460は実質的に鉛直方向である。複数のコアードホール460はおおむね円形の断面形状を有している。複数のコアードホール460は互いに隣接して配置されて、集団的には切断部430の長手方向(すなわち、水平方向)全体にわたって実質的に延びている(並べられている)。複数のコアードホール460はスパンドレル壁内には存在していない。
【0079】
複数のコアードホール460の各々にベアリング451が配置されている。ベアリング451は、互いに実質的に同じである2つの平坦な部分452、453を有している。2つの平坦な部分452、453の幅はコアードホール460の直径と実質的に同じである。2つの平坦な部分452、453の長さはコアードホール460の深さと実質的に同じである。
ベアリング451はグリースの如き摩擦低減手段455を有している。摩擦低減手段455は2つの平坦な部分452、453の間に配置されている。摩擦低減手段455は平坦な部分452、453の面積と実質的に類似する面積を有している。
【0080】
平坦な部分452はグラウト/コンクリート456により移動可能部分432に取り付けられている。また、平坦な部分452はペグ454によりグラウト/コンクリート456に取り付けられている。ペグ454はグラウト/コンクリート456の中に埋め込まれている。ベアリング451をコアードホール460内に配置し、次いで、グラウト/コンクリート456をコアードホール460の中に注入してペグ454のまわりで硬化させるようにしてもよい。平坦な部分453は同様の方法で石造アーチ橋401のその他の部分に取り付けられている。
【0081】
使用時、2つの平坦な部分452、453は摺動可能に互いに接触した状態にある。したがって、移動可能部分432が(上述の方法のうちのいずれかにより)持ち上げられると、平坦な部分453が平坦な部分452に対して横方向の支えを提供するようになっている。また、平坦な部分452が移動可能部分432に対して横方向の支えを提供するようになっている。以上のように、ベアリング451は、移動可能部分432に対して横方向の反力を提供し、移動可能部分432と石造アーチ橋401のその他の部分との構成を維持する助けとなっている。
図33(b)に示されているように、ベアリングはゴムの如き圧縮可能な材料457を有していてもよい。圧縮可能な材料457は、意図するすべり面に対するベアリング451の僅かなずれにも対応し、さらに、意図するすべり面全体にわたる圧力を維持することができる。
【国際調査報告】