(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-515827(P2017-515827A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】混合薬草抽出物を活性成分として含有する男性不妊を予防及び治療するための組成物並びにその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 36/8962 20060101AFI20170519BHJP
A61K 36/746 20060101ALI20170519BHJP
A61K 36/39 20060101ALI20170519BHJP
A61P 15/08 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
A61K36/8962
A61K36/746
A61K36/39
A61P15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-567076(P2016-567076)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月16日
(86)【国際出願番号】KR2015003506
(87)【国際公開番号】WO2015174636
(87)【国際公開日】20151119
(31)【優先権主張番号】10-2014-0057386
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】516331627
【氏名又は名称】インダストリアル コーオペレーション ファウンデーション チョンブク ナショナル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンクァン
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AB12
4C088AB14
4C088AB87
4C088AC04
4C088AC11
4C088AC12
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4C088MA23
4C088MA35
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4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA52
4C088NA06
4C088NA14
4C088ZA81
(57)【要約】
本発明は、混合薬草混合物を用いた男性不妊の予防及び治療のための組成物及び健康機能食品に関する。ヒト精液中の精子数及び運動機能の変化に対する本発明のモリンダ・オフィシナリス、クスクタ種子及び/又はアリウム・セパの薬草抽出物の効果を観察するためのin vitroでの精子運動機能向上効果の評価方法の実験により、本発明のサンプルが精子運動機能を増大することが検証された。加えて、in vivo精索静脈瘤動物モデルにおける精子数及び運動機能の変化に対する薬草抽出物の効果を観察するためのin vivoでの精索静脈瘤動物モデルの評価方法により、本発明のサンプルが精索静脈瘤誘導群のうちサンプル投与群の輸精管から得られる精液中の精子数を増大することが検証された。したがって、本発明の薬草抽出物は男性不妊を予防及び治療するための医薬組成物、健康機能食品及び健康補助食品において有益に使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
男性不妊症を予防及び治療するためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を活性成分として含む医薬組成物。
【請求項2】
各薬草の乾燥重量ベースの混合比(w/w)で0.01〜100:0.01〜1:1〜100(w/w)のモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記男性不妊症が抗癌剤の有害反応に起因する男性不妊症、無精子症、精子減少症、精子無力症又は奇形精子症から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
男性不妊症の予防又は改善のためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を活性成分として含む健康機能食品。
【請求項5】
粉末、顆粒、錠剤、カプセル、丸薬、懸濁液、エマルション、シロップ、ティーバッグ、浸出茶又は飲料タイプとして提供される、請求項4に記載の健康機能食品。
【請求項6】
男性不妊症の予防又は改善のためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を主成分として含む健康補助食品。
【請求項7】
モリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を含む組成物を男性不妊症の治療を必要とする被験体に投与することを含む治療方法。
【請求項8】
ヒト又は哺乳動物における男性不妊症の治療に用いられる薬剤の製造のためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は男性不妊を治療及び予防するための複合薬草抽出物を含む組成物、特に男性不妊の予防及び治療のためのモリンダ・オフィシナリス根(Morinda Officinalis root)、クスクタ種子(Cuscuta seed)及びアリウム・セパ鱗茎(Allium cepa bulb)の複合薬草抽出物を含む組成物、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
精索内の蔓状静脈叢の静脈の蛇行及び拡張を特徴とする精索静脈瘤は男性因子不妊の最も治療可能な原因であり、精索静脈瘤の有病率が原発性男性不妊の男性において19%〜41%、続発性不妊の男性において80%超であることが報告されている(非特許文献1、2)。
【0003】
精索静脈瘤に起因する男性不妊の治療のために最もよく行われる外科的処置は非顕微鏡下アプローチ法、腹腔鏡下又は顕微鏡下精索静脈瘤切除術を含む精索静脈瘤切除術であり、何年も前から行われている(非特許文献3)。不妊男性における精索静脈瘤の外科的矯正は、精索静脈瘤切除術が行われた50%〜80%の患者においてパラメーターの改善(31%〜74%の妊娠率)を示しているが(非特許文献4〜9)、精索静脈瘤の回復が男性にとっての効果的な治療ではないと思われること、又は妊娠可能化手術後の妊娠力欠失率の増大等の原因不明の低受胎の報告がいくつか発表されている(非特許文献10、11)。
【0004】
精索静脈瘤の患者における精巣機能不全が不妊を引き起こす正確なメカニズムは、これまで完全には解明されていないが、精巣における血流の変化、陰嚢温度の上昇、異常なホルモン値、過剰な活性酸素種(ROS)等を含む精巣機能障害に関連する様々な精索静脈瘤の研究のためのいくつかの仮説メカニズムが提案されている(非特許文献12、13)。
【0005】
生命に関わる生理的細胞内プロセスの変調因子として作用するROS(活性酸素種)は、酸素代謝及びエネルギー生産プロセスにより生じる副産物の1つである。少量のROSは、男性生殖管における精子機能の制御において重要な役割を果たす。異常な条件下では酸化ストレスが続いて生じ、ROSレベルの増大又は抗酸化能の低下が起こる。具体的には、酸化ストレスは精子における発現タンパク質レベルの変調を引き起こし、分子及び遺伝子の欠損が生じる(非特許文献14)。
【0006】
通常、健常カップルの妊娠率は性的関係の最初の1ヶ月で20%〜25%、半年で75%、1年後には85%〜90%に達する。臨床では、夫婦における不妊患者の比率は、「不妊」を1年間の性的関係後の妊娠不成功例であると規定した場合、韓国における夫婦(約1400000組)の約13%〜20%を占めると推定されている。このうち不妊の35%〜50%が男性の健康問題に起因し、この問題の約30%が精子運動性の低下に由来する。男性不妊は外来患者の重要で重症な疾患の1つであり、泌尿器科における外来患者数の4%を占める。
【0007】
近年、IVF(体外受精)、マイクロマニプレーション法等の様々なART(生殖介助術)が生殖生物学又はARTの進歩に起因して開発されている。しかしながら、これらの手法には例えば妊娠率がわずか20%〜40%と低く、高額な費用が必要とされ、痛みの訴えのために女性に適用することが困難であり、合併症が発生する等のいくつかの欠点及び問題もある。
【0008】
体外受精にも遺伝子コンタミネーション、高額な費用等の問題がある。
【0009】
したがって、夫婦の妊娠率を増大するために最も安全かつ理想的な標的として、これまで泌尿器科及び婦人科の分野で自然妊娠率を増大するのに効果的な治療の開発が着目されていた。
【0010】
不妊療法が開発されているにもかかわらず、男性不妊を治療し、精子運動性を改善するのに効果的な治療剤はこれまで開発されておらず、妊娠率を改善することができる薬物に関する研究はほとんどない。精子運動性が低い男性の精液パラメーターを改善する現行のアプローチの1つに、L−カルニチンが治療剤として開発されているが、この薬物には明確な有効性はほとんど見られないことが報告されている(非特許文献15)。
【0011】
アカネ科に属し、中国南部に分布するモリンダ・オフィシナリス(Morinda Officinalis)の根であるモリンダ・オフィシナリス根はビタミンC、サッカリド等を含むことが報告されている(非特許文献16)。
【0012】
ヒルガオ科に属するクスクタ・ジャポニカ(Cuscuta japonica)等の種子であるクスクタ種子は樹脂グリコシド、サッカリド、ビタミンA、β−カロテン、γ−カロテン、テラキサンチン(teraxanthin)、ルテイン等を含むことが報告されている(非特許文献17)。
【0013】
シベリア又はアルタイ原産のユリ科に属するアリウム・セパ(Allium cepa)の鱗茎であるアリウム・セパ鱗茎はチオール、ジメチルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸等を含むことが報告されている(非特許文献18)。
【0014】
しかしながら、上記で引用した文献(それらの開示が引用することにより本明細書の一部をなす)のいずれにおいても男性不妊症に対する上記のモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎からなる複合薬草抽出物の治療効果に関して報告又は開示されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Agarwal A, Deppinder F, Cocuzza M, Agarwal R, Short RA, Sabanegh E, et al, (2007) Efficacy of varicocelectomy in improving semen parameters: new meta-analytical approach. Urology 70, pp532-538.
【非特許文献2】Agarwal A, Sharma RK, Desai NR, Prabakaran S, Tabanegh E. (2009) Role of Oxidative Stress in Pathogenesis of Varicocele and Infertility, Urology 73, pp461-469.
【非特許文献3】Mehta A & Goldstein M. (2012) Microsurgical varicocelectomy: a review. Asian J. Androl., 15, pp56-60.
【非特許文献4】Cheng D, Zheng XM, Li SW, Yang ZW & Hu LQ. (2006) Effects of epidermal growth factor on sperm content and motility of rats with surgically induced varicoceles. Asian J Androl 8, 713-717.
【非特許文献5】Ding H, Tian JQ, Du W, Zhang LY, Wang HZ & Wang ZP. (2012) Open non-microsurgical, laparoscopic or open microsurgical varicocelectomy for male infertility: a meta-analysis of randomized controlled trials. BJU Int 110, 1536-1542.
【非特許文献6】Fisch H & Hyun G. (2012) Varicocele repair for low testosterone. Curr Opin Urol 22, 495-498.
【非特許文献7】Fretz PC & Sandlow JI. (2002) Varicocele: current concepts in pathophysiology, diagnosis, and treatment. Urol Clin North Am 29, 921-937.
【非特許文献8】Mehta A & Goldstein M. (2013) Microsurgical varicocelectomy: a review. Asian J Androl 15, 56-60.
【非特許文献9】Tanriverdi O, Miroglu C, Horasanli K, Altay B, Caliskan KC & Gumus E. (2006) Testicular blood flow measurements and mean resistive index values after microsurgical and high ligation varicocelectomy. Urology67, 1262-1265.
【非特許文献10】Evers JL & Collins JA. (2003) Assessment of efficacy of varicocele repair for male subfertility: a systematic review. The Lancet 361, 1849-1852.
【非特許文献11】Ficarra V, Cerruto MA, Liguori G, Mazzoni G, Minucci S, Tracia A, et al. (2006) Treatment of varicocele in subfertile men: the Cochrane review a contrary opinion. Eur Urol 49, 258-263.
【非特許文献12】Agarwal A, Sharma RK, Desai NR, Prabakaran S, Tavares A & Sabanegh E. (2009) Role of Oxidative Stress in Pathogenesis of Varicocele and Infertility. Urology 73, 461-469.
【非特許文献13】Fretz PC & Sandlow JI. (2002) Varicocele: current concepts in pathophysiology, diagnosis, and treatment. Urol Clin North Am 29, 921-937.
【非特許文献14】(Sharma R, Agarwal A, Mohanty G, Hamada AJ, Gopalan B, Willard B, et al. (2013) Proteomic analysis of human spermatozoa proteins with oxidative stress. Reprod Biol Endocrinol 11, 48.
【非特許文献15】Mark sigman, Stacy Glass, Janice Campagnone, John L. Reyor, Carnitine for the treatment of idiopathic asthenospermia: a randomized, double-blind, placebo-controlled trial, Fertility and Sterility Vol 85, No 5, 2006.
【非特許文献16】B. S. Chung et al., YoungRim Press, 2nd Edition, DohaeHyangYakDaeSaJeon., pp927-928, 1998.
【非特許文献17】B. S. Chung et al., YoungRim Press, 2nd Edition, DohaeHyangYak DaeSaJeon., pp882-883, 1998.
【非特許文献18】B. S. Chung et al., YoungRim Press, 2nd Edition, DohaeHyangYakDaeSaJeon., pp155-156, 1998.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明者らは男性不妊症を治療及び予防するための効果的な薬草配合物の発見に尽力した。この複合薬草組成物はヒト不妊に対して強力な治療効果を示し、これは様々な実験、例えばin vitroでの精子品質向上効果の評価、並びにin vivo精索静脈瘤動物モデルにおける精子数及び運動機能の変化に対する薬草抽出物の効果を観察するin vivoでの精索静脈瘤動物モデルの評価方法によって確認される。最終的に、本発明者らは上記の複合薬草抽出物が男性不妊症の治療及び予防において効果的であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
背景技術の問題を解決するための技術的解決法は、精子運動性を向上することで妊娠率を増大し、最終的に以前の高い妊娠率を回復させる新規のアプローチの開発である。
【0018】
1つの態様によれば、本発明は、男性不妊症を予防及び治療するためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を活性成分として含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本発明は男性不妊症を予防及び改善するために、男性不妊症の予防又は改善のためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を活性成分として含む健康機能食品も提供する。
【0020】
本明細書に開示される抽出物は複合薬草抽出物、すなわち本発明において各薬草の乾燥重量ベースの混合比(w/w)で0.01〜100:0.01〜1:1〜100(w/w)、好ましくは0.1〜50:0.1〜1:1〜50(w/w)、より好ましくは1〜30:1:1〜30(w/w)の範囲のモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎を含む。
【0021】
具体的には、本明細書に開示される「抽出物」という用語は蒸留水、C
1〜C
4アルコール又はそれらの混合物、好ましくは水、エタノール又はそれらの混合物に可溶性の抽出物を含む。
【0022】
具体的には、本明細書に開示される「男性不妊症」という用語は全ての男性不妊症、例えばシスプラチン、ビンブラスチン、ブレオマイシン等の抗癌剤の有害反応に起因する男性不妊症、無精子症(精子数:ゼロ)、精子減少症(精子数:2×10
7/ml以下)、精子無力症(高運動性の精子の比率:40%以下)、奇形精子症(正常精子の比率:40%以下)等を含むが、これらに限定されることを意図するものではない(Korean Society for sexual medicine and andrology, Textbook of andrology, 2010を参照されたい)。
【0023】
本発明の薬草組成物は、以下の好ましい実施の形態に従って調製することができる。
【0024】
例えば本発明は、第1の工程として、乾燥させたモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子又はアリウム・セパ鱗茎をそれぞれ洗浄するとともに、1倍量〜20倍量、好ましくは1倍量〜10倍量の蒸留水、メタノール、エタノール等のアルコール、又はそれらの混合物、好ましくは蒸留水、エタノール又はそれらの混合物を添加する工程と、第2の工程として、各々の溶液を熱水、冷水による抽出又は超音波抽出による抽出法、好ましくは50℃〜120℃、好ましくは約80℃〜100℃の範囲の温度で1時間〜5時間、好ましくは2時間〜4時間の範囲の期間にわたる熱水抽出で抽出する工程と、第3の工程として、上記の抽出プロセスを繰り返し、各々の濾液を濾過により回収し、凍結乾燥、自然乾燥又は熱風乾燥プロセス、好ましくは凍結乾燥プロセスにより乾燥させてモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子又はアリウム・セパ鱗茎のそれぞれの乾燥抽出物を得る工程と、各薬草のそれぞれの乾燥抽出物(モリンダ・オフィシナリス根:クスクタ種子:アリウム・セパ鱗茎)を0.01〜100:0.01〜1:1〜100(w/w)、好ましくは0.1〜50:0.1〜1:1〜50(w/w)、より好ましくは1〜30:1:1〜30(w/w)の範囲の各薬草の乾燥重量ベースの混合比(w/w)で混合して発明抽出物を調製する工程とを含む、本発明の薬草抽出物を作製する方法も提供する。
【0025】
本発明の別の目的は、目的とする疾患の治療又は予防に効果的な組成物の調製のための上記の本発明の抽出物を作製する方法を提供することである。
【0026】
本発明の更に別の目的は、上記の方法によって得られる上述の薬草の薬草抽出物を活性成分として含む男性不妊症を予防及び治療するための医薬組成物又は健康機能食品を提供することである。
【0027】
本発明の発明組成物はヒト不妊に対して強力な治療効果を示し、これは様々な実験、例えばin vitroでの精子品質向上効果の評価、並びにin vivo精索静脈瘤動物モデルにおける精子数及び運動機能の変化に対する薬草抽出物の効果を観察するin vivoでの精索静脈瘤動物モデルの評価方法によって確認され、本発明の複合抽出物が精子数及び精子運動性に対してより強力な増大効果を示すことが検証された。したがって、本発明の薬草抽出物は男性不妊を予防及び治療するための医薬組成物、健康機能食品及び健康補助食品において有益に使用することができる。
【0028】
目的とする疾患を治療するための医薬組成物は、組成物の総重量をベースとして約0.01%〜99%(w/w)の上記の本発明の薬草抽出物を含有し得る。
【0029】
しかしながら、上述の組成物の量及び各成分は患者の状態、患者の疾患の発症、疾患の種類等により変更することができる。
【0030】
本発明の組成物は使用方法に従って従来の担体、アジュバント又は希釈剤を付加的に含んでいてもよい。
【0031】
本発明による薬草組成物を、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、懸濁液、エマルション、シロップ、エアロゾル等の経口剤形、局所調製物又は注射液において配合することができる。本発明による薬草組成物を、薬学的に許容される担体、アジュバント又は希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油を含有する医薬組成物として提供することができる。配合物は、賦形剤、例えば充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤、希釈剤等をさらに含むことができる。固形経口剤形には、錠剤、ピル、粉末、顆粒、カプセル等があり、固形経口剤形を、少なくとも1種の賦形剤、例えばデンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース又はゼラチン等を薬草抽出物に添加することにより調製する。ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤を使用することができる。水性経口剤形には、懸濁液、経口溶液、エマルション、シロップがあり、水性経口剤形は、いくつかの賦形剤、例えば湿潤剤、甘味香料剤、防腐剤及び水、流動パラフィンを含むことができる。非経口剤形には、滅菌済み水溶液、非水性溶媒、懸濁液、エマルション、凍結乾燥調製物、坐剤等がある。担体の好適な例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、注射用エステル、例えばオレイン酸エチルがある。坐剤用基剤は、ウイテプゾール、マクロゴール、tween 61、カカオバター、ラウリン、グリセロールゼラチン等を含み得るが、それらに限定されない。
【0032】
本発明の組成物の望ましい用量は被験体の状態及び体重、重症度、薬物形態、投与の経路及び期間に応じて変化し、当業者が選ぶことができる。しかしながら、望ましい効果を得るためには、概して0.01mg/kg(体重)/日〜10g/kg(体重)/日、好ましくは1mg/kg(体重)/日〜1g/kg(体重)/日の量で本発明の組成物を投与することが推奨される。この用量は1日に単回又は複数回の用量で投与することができる。
【0033】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物(ラット、マウス、家畜又はヒト)等の被験動物に様々な経路で投与することができる。全ての投与方法が企図され、例えば投与は経口的、経直腸的又は静脈注射により行うことができる。
【0034】
本発明の更に別の目的は、モリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を男性不妊症を予防及び治療するための活性成分として含む精子運動性改善剤を提供することである。
【0035】
本発明の更に他の目的は、モリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を活性成分として含む精子運動性の改善による男性不妊の治療剤を提供することである。
【0036】
本発明の更に他の目的は、IVFの受精率を改善するためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を含むIVF(体外受精)用の精子保存添加物を提供することである。
【0037】
本発明の他の目的は、モリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を含む組成物を男性不妊症の治療又は予防を必要とする被験体に投与することを含む治療方法を提供することである。
【0038】
本発明の別の目的は、ヒト又は哺乳動物における男性不妊症の治療又は予防に用いられる薬剤の製造のための活性成分としてのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物の使用を提供することである。
【0039】
本発明の一態様に従うと、男性不妊症の予防又は改善のためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を活性成分として含む健康機能食品が提供される。
【0040】
本明細書で規定される「健康機能食品」という用語は、ヒト又は哺乳動物において目的とする疾患を予防又は改善するために本発明の抽出物を従来の食品に添加することによって物理的機能性又は生理的機能性等の機能性を向上させる、韓国の健康機能食品に関する法律第6727号によって規定されている機能食品を含む。
【0041】
目的とする疾患を予防及び改善するための健康機能食品組成物は、組成物の総重量をベースとして約0.01%〜95%(w/w)、好ましくは1%〜80%(w/w)の上記の本発明の薬草組成物を含有し得る。
【0042】
さらに、本発明の発明抽出物は、男性不妊症の予防若しくは改善又は精巣機能の改善のための様々な機能健康食品及び健康補助食品の調製において主成分又は添加物及び補助剤として使用することもできる。
【0043】
本発明の健康機能食品は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、丸薬、懸濁液、エマルション、シロップ等の薬学的に許容可能な剤形、又はティーバッグ、浸出茶(leached tea)、健康飲料タイプ等の機能健康食品形態の形で調製及び加工することができる。
【0044】
本発明の他の目的は、男性不妊症の予防又は改善のためのモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の複合薬草抽出物を主成分として含む健康補助食品を提供することである。
【0045】
「主成分として」という上述の用語は、上記の健康補助食品が組成物の総重量をベースとして約30%〜99%(w/w)、好ましくは50%〜99%(w/w)、より好ましくは70%〜99%(w/w)の本発明の抽出物を含むことを意味する。
【0046】
本発明の複合薬草抽出物を健康機能飲料組成物の成分として使用する場合、健康機能飲料組成物は典型的な飲料組成物のように限定されるものではないが香味料又は天然炭水化物等の他の成分を含んでいてもよい。天然炭水化物の例には、グルコース、フルクトース等の単糖類、マルトース、スクロース等の二糖類、並びに多糖類、例えばデキストリン、シクロデキストリン等の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトール等の糖アルコールが含まれる。天然香味料(ソーマチン、ステビア抽出物(レバウジオシドA、グリチルリチン等))及び合成香味料(サッカリン、アスパルテーム等)を健康機能飲料組成物に添加してもよい。天然炭水化物の量は概して、本組成物100ml当たり約1g〜20g、好ましくは約5g〜12gの範囲である。
【0047】
本発明の複合薬草抽出物を健康食品の食品添加物として使用する場合、複合薬草抽出物をそのまま添加するか、又は通常のプロセスに従って他の食品成分とともに使用することができる。目的とする疾患を予防又は改善するための食品の例には肉製品、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー、スナック、クラッカー、ビスケット、ピザ、ラーメン、麺製品、チューインガム、アイスクリーム等の乳製品、スープ、飲料、茶、ドリンク、酒類、ビタミン複合体等が含まれるが、本明細書ではこれらに限定されることは意図されない。
【0048】
上述の組成物以外の他の成分は様々な栄養素、ビタミン、ミネラル又は電解質、合成香味料、着色料及び改善剤(チーズ、チョコレート等の場合)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド接着剤、pH調節剤、安定剤、保存料、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等である。上述のもの以外の他の成分は天然果汁、果汁飲料及び野菜飲料を調製するための果汁であり、この成分は単独で又は組み合わせて使用することができる。成分の比率はそれほど重要ではないが、概して本組成物100%(w/w)当たり約0%〜20%(w/w)の範囲である。
【0049】
また、上記の抽出物は目的とする障害の予防及び改善のための食品又は飲料に添加することができる。機能健康食品又は健康補助食品としての食品又は飲料における上記の抽出物の量は概して、機能健康食品組成物用の食品の総重量の約0.01%〜15%(w/w)の範囲であり得る。さらに、本発明の抽出物は健康飲料組成物100ml当たり0.02g〜5g、好ましくは0.3g〜1g添加することができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明において記載されるように、本発明の複合薬草組成物はヒト不妊に対して強力な治療効果を示し、これは様々な実験、例えばin vitroでの精子品質向上効果の評価、並びにin vivo精索静脈瘤動物モデルにおける精子数及び運動機能の変化に対する薬草抽出物の効果を観察するin vivoでの精索静脈瘤動物モデルの評価方法によって確認され、本発明の複合抽出物が精子数及び精子運動性に対してより強力な増大効果を示すことが検証された。したがって、本発明の薬草抽出物は男性不妊を予防及び治療するための医薬組成物、健康機能食品及び健康補助食品において有益に使用することができる。
【0051】
最良の形態
本発明の上記の及び他の目的、特徴及び他の利点は、添付の図面と併せた以下の詳細な説明からより明らかに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】ヒト精液中のヒト精子数及びヒト精子運動性に対する試験サンプルの改善効果を示す図である(CINTM1(10:1:10)、CINTM1(5:1:5)及びCINTM1(1:1:1)の各試験サンプルに対する予備試験を試験前に行った)。
【
図2】各薬草の抽出物と複合薬草とのヒト精液中のヒト精子数及びヒト精子運動性に対する試験サンプルの改善効果を示す図である(CINTher−1:モリンダ・オフィシナリス根の抽出物、CINTher−2:クスクタ種子の抽出物、CINTher−3:アリウム・セパ鱗茎の抽出物、CINTM1:それぞれ10:1:10で混合した複合薬草抽出物)。
【
図3】精索静脈瘤誘導動物群における精子数に対する試験サンプルの改善効果を示す図である(CTR:対照、OP:手術)。
【
図4】精索静脈瘤誘導動物群における精子運動性に対する試験サンプルの改善効果を示す図である(CTR:対照、OP:手術)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の趣旨又は範囲を逸脱することなく本発明の組成物、使用及び調製物に様々な修正及び変更を加えることができることが当業者に明らかである。
【0054】
本発明を以下の実施例によってより具体的に説明する。しかしながら、本発明がこれらの実施例に何ら限定されないことを理解されたい。
【実施例】
【0055】
以下の実施例及び実験例は本発明を更に説明することを意図し、本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
実施例1. 各成分の調製
1−1. モリンダ・オフィシナリス根の抽出物
ソウル所在のKyung-dong market(Dukhyundang Pharmacy)から購入した3000gの乾燥させたモリンダ・オフィシナリスの根を洗浄し、6Lの95%エタノールに添加し、90分間で3回の超音波抽出による抽出を行った。残渣を濾紙で濾過して抽出物を得て、濾過抽出物を真空下で濃縮した。濃縮抽出物を凍結乾燥器(ScanVac、Labogene)により乾燥させ、139.4g(収率:4.6%)のモリンダ・オフィシナリス根の乾燥抽出物(以下、CINTher−1と表す)を得た。これを生理食塩溶液に溶解し、2分間激しく撹拌することで比較試験サンプルとして使用するが、以下の実験に使用するまで4℃で保管する。
【0057】
1−2. クスクタ種子の抽出物
ソウル所在のKyung-dong market(Backjangsaeng Pharmacy)から購入した5.2kgの乾燥させたクスクタ・チネンシス(Cuscuta Chinensis)の種子を洗浄し、粉砕し、5Lの95%エタノールに添加し、90分間で2回の超音波抽出による抽出を行った。残渣を濾紙で濾過して抽出物を得て、濾過抽出物を真空下で濃縮した。濃縮抽出物を凍結乾燥器(ScanVac、Labogene)により乾燥させ、264.3g(収率:4.36%)のクスクタ種子の乾燥抽出物(以下、CINTher−2と表す)を得た。これを生理食塩溶液に溶解し、2分間激しく撹拌することで比較試験サンプルとして使用するが、以下の実験に使用するまで4℃で保管する。
【0058】
1−3. アリウム・セパ鱗茎の抽出物
慶尚南道(韓国)所在のChangnyeong marketから購入した1000gのタマネギの鱗茎を洗浄し、乾燥させ、5Lの70%エタノールに添加し、70℃で2時間の還流抽出による抽出を行った。残渣を濾紙で濾過して抽出物を得て、濾過抽出物を真空下で濃縮した。濃縮抽出物を凍結乾燥器(ScanVac、Labogene)により乾燥させ、13.8g(収率:1.38%)のアリウム・セパ鱗茎の乾燥抽出物(以下、CINTher−3と表す)を得た。これを生理食塩溶液に溶解し、2分間激しく撹拌することで比較試験サンプルとして使用するが、以下の実験に使用するまで4℃で保管する。
【0059】
実施例2. 複合配合物(CINTM1)の調製
実施例1において調製したモリンダ・オフィシナリス根、クスクタ種子及びアリウム・セパ鱗茎の乾燥抽出物を、混合器(Vortex genie−2、scientific industries、米国)を用いて異なる混合重量比(10:1:10/5:1:5/1:1:1)で十分に混合し、様々な種類の本発明の配合物(以下、「CINTM1」と表す)を得た。これを以下の実験において試験サンプルとして使用する。
【0060】
実験例1. in vitroでの精子品質向上効果の評価
ヒト精子の精子数及び精子運動性に対する実施例で得られた本発明の抽出物の効果を観察するために、以下のin vitro実験を文献(Martin Blomberg Jensen, Poul J.Bjerrum, Torben E.Jessen, John E. Nielsen, Ulla N.Joensen, et al. (2011) Vitamin D is positively associated with sperm motility and increases intracellular calcium in human spermatozoa. Human Reproduction, Vol.26, No.6 pp. 1307-1317)に開示の手順に従って行った。
【0061】
1−1. 手順
不妊を患う来院患者ボランティア(韓国の全北大学校附属病院泌尿器科、20歳〜50歳、85人の患者)から提供されたヒト精液の精子数及び精子運動性を決定した後、精液を37℃に維持したインキュベーターに投入した。精液の十分な液化が完了した後、200μLの試験サンプルを2mg/mlの最終濃度に達するまで20μLの精液に添加した。添加の3時間後に、カウンティングチャンバー(MAKLERカウンティングチャンバー、self-medical instruments、ハイファ、イスラエル)及び顕微鏡(Axiovert25、ZEISS、米国)を用いて精子運動性を決定した。
【0062】
3H緩衝液(Hams F−10(N6635、Sigma chemical Co.、米国)+0.4%HAS(A1635、Sigma Chemical Co.、米国)+12mM HEPES(H4034、Sigma Chemical Co.、米国)(3H、pH7.4))を対照群として使用した。また、試験サンプルを上述と同じ緩衝液に溶解し、pH7.4に調整し、遠心分離装置(A32010(1)、LABOGENE、13000rpm、2分間、4℃)によって遠心分離して、精子数及び運動性の決定のための上清を得た。
【0063】
精子運動性を以下の実験式1に従って算出した。
(実験式1)
運動性のパーセンテージ=A(運動性精子の平均数)/B(精子の総数)
【0064】
1−2. 試験結果
3種類の本発明の組合せ、すなわちCINTM1(10:1:10)、CINTM1(5:1:5)及びCINTM1(1:1:1)で処理した群における精子運動性は、濃度0.05mg/mlのCINTM1(10:1:10)群では70%、濃度0.5mg/mlのCINTM1(5:1:5)群では62%、濃度0.5mg/mlのCINTM1(1:1:1)群では63%とそれぞれ急激に増大した。試験サンプル群の中でも、CINTM1(10:1:10)群は異なる混合比の他の群、並びに単独の薬草の抽出物で処理した比較試験群、すなわちCINTher−1、CINTher−2及びCINTher−3と比較して精子運動性に対して最も強力な増大効果を示した(
図1を参照されたい)。
【0065】
具体的には、CINTM1(10:1:10)で処理した試験群(59.5%、0.05mg/ml)は単独の薬草の抽出物、すなわちCINTher−1(55%)、CINTher−2(53.5%)及びCINTher−3(48.0%)でそれぞれ処理した比較試験群と比較して、同じ濃度で精子運動性に対して予想外に優れた効果を示した(
図2を参照されたい)。
【0066】
したがって、各々の薬草の組合せ(CINTM1)が精子運動活性に対して相乗効果を示すことが確認された。
【0067】
実験例2. in vivoでの精子品質向上効果の評価
ヒト精子の精子数及び精子運動性に対する実施例で得られた本発明の抽出物の効果を観察するために、以下のin vivo実験を文献(Zhang LT, Kim HK, Choi BR, Zhao C, Lee SW, Jang KY, et al.(2014) Analysis of testicular-internal spermatic vein variation and the recreation of varicocoele in a Sprague-Dawley rat model. Andrology. 2, 466-73)に開示の手順に従って行った。
【0068】
2−1. in vivo精索静脈瘤動物モデルの確立
以下の実験で使用されるin vivo精索静脈瘤動物モデルを確立するために、体重300g〜350gの9週齢のSprague−Dawleyラット(韓国平沢市所在のKOATECH Co. Ltdから購入)を1週間環境に順応させた後、飼育した。1つのケージにつき4匹に分けたラットに標準ラット飼料を与え、精製水を自由に摂取することができるようにした。ラットを一定に制御された環境条件(内部温度:18℃〜23℃、相対湿度:40%〜60%)及び12時間の明暗サイクル下の動物施設内で維持した。
【0069】
各ラットにケタミン(50mg/kg)及びキシラジン(25mg/kg)の混合物を用いた腹腔内麻酔を行い、腹部正中切開により左腎にアプローチした後、大静脈(venae cava)と繋がった腎静脈を露出させた。金属プローブ(外径:0.85mm)を有する5.0ナイロン縫合糸で左腎静脈を結紮し、金属プローブを引き抜き、左腎静脈の直径を50%低減させ、結紮点で血管を一定に狭窄させた。精索静脈瘤誘導動物群として使用するために、ISV(内精索静脈)枝を結紮して精索静脈瘤を誘導し、結紮の4週間後に生理食塩溶液に溶解した試験サンプルを実験用ラットに経口投与した。
【0070】
2−2. in vivo動物モデルにおける効力の評価
2ml/日の試験サンプル又は生理食塩溶液(PSA)を、手術後に2つの試験群に28日間経口投与した後(すなわち、精索静脈瘤誘導動物群((1)PSA:2ml/日、(2)CINTM1(10:1:10):100mg/kg/2ml/日、(3)CINTM1(10:1:10):200mg/kg/2ml/日)及び正常対照群((1)PSA:2ml/日、(2)CINTM1(10:1:10):100mg/kg/2ml/日、(3)CINTM1(10:1:10):200mg/kg/2ml/日))、ラットの体重を量った。ラットの精管を全身麻酔下で取り出した。精管における精子数及び運動性を決定し、比較のために両側精巣及び精巣上体の重量を量った。
【0071】
2−3. 試験結果
図3に示されるように、本発明の組合せで処理した精索静脈瘤誘導動物群における精子数はPSAで処理した群と比較して急激な増大を示した。本発明の組合せで処理した精索静脈瘤誘導動物群の精子数は20.91±12.25×10
6/ml(100mg/kg/2ml/日)及び28.63±8.90×10
6/ml(200mg/kg/2ml/日)であったが、PSAで処理した精索静脈瘤誘導動物群の精子数はわずか18.25±9.53×10
6/mlであった(
図3を参照されたい)。
【0072】
図4に示されるように、本発明の組合せで処理した精索静脈瘤誘導動物群における精子運動性はPSAで処理した群と比較して急激な増大を示した。本発明の組合せで処理した精索静脈瘤誘導動物群の精子運動性は53.8±20.7%(100mg/kg/2ml/日)及び53.3±12.1%(200mg/kg/2ml/日)であったが、PSAで処理した精索静脈瘤誘導動物群の精子運動性はわずか31.3±18.8%であった(
図4を参照されたい)。
【0073】
発明の形態
以下、配合方法及び賦形剤の種類を記載するが、本発明はこれらに限定されない。代表的な調製例を以下に記載する。
【0074】
1. 粉末の調製
CINTM1 20mg
ラクトース 100mg
タルク 10mg
粉末調製物は上記の成分を混合し、密封パッケージに充填することによって調製した。
【0075】
2. 錠剤の調製
CINTM1 10mg
コーンスターチ 100mg
ラクトース 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
錠剤調製物は上記の成分を混合し、打錠することによって調製した。
【0076】
3. カプセルの調製
CINTM1 10mg
結晶セルロース 3mg
ラクトース 14.8mg
ステアリン酸マグネシウム 0.2mg
カプセル調製物は従来のゼラチン調製法により上記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填することによって調製した。
【0077】
4. 注射液の調製
CINTM1 10mg
マンニトール 180mg
注射用滅菌済み蒸留水 2974mg
Na
2HPO
4−12H
2O 26mg
注射調製物は従来の注射調製法により活性成分を溶解した後、全成分を1アンプル当たり2ml充填することによって調製した。
【0078】
5. 液体の調製
CINTM1 20mg
異性化糖 10g
マンニトール 5g
蒸留水 適量
液体調製物は従来の液体調製法により活性成分を蒸留水に溶解し、レモン風味を付け、蒸留水と混合した後、全成分を100ml容の褐色瓶に充填し、滅菌することによって調製した。
【0079】
6. 健康食品の調製
CINTM1 1000mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB
1 0.13mg
ビタミンB
2 0.15mg
ビタミンB
6 0.5mg
ビタミンB
12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
ミネラル混合物 適量
硫酸第一鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
炭酸マグネシウム 25.3mg
リン酸一カリウム 15mg
リン酸二カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
上述のビタミン及びミネラル混合物は様々に変更することができる。かかる変更は本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とはみなされない。
【0080】
7. 健康飲料の調製
CINTM1 1000mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
アプリコット濃縮物 2g
タウリン 1g
蒸留水 900ml
健康飲料調製物は従来の健康飲料調製法により活性成分を溶解し、混合し、85℃で1時間撹拌し、濾過した後、全成分を2L容のアンプルに充填し、滅菌することによって調製した。
【0081】
本発明をこのように記載したが、これを様々に変更し得ることが明らかである。かかる変更は本発明の趣旨及び範囲からの逸脱とはみなされず、このような当業者に明白な修正は全て以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明に記載されるように、複合薬草組成物はヒト不妊に対して強力な治療効果を示し、これは様々な実験、例えばin vitroでの精子品質向上効果の評価、並びにin vivo精索静脈瘤動物モデルにおける精子数及び運動機能の変化に対する薬草抽出物の効果を調査するin vivoでの精索静脈瘤動物モデルの評価方法によって確認され、本発明の複合抽出物が精子数及び精子運動性に対してより強力な増大効果を示すことが検証された。したがって、本発明の薬草抽出物は男性不妊を予防及び治療するための医薬組成物、健康機能食品及び健康補助食品において有益に使用することができる。
【国際調査報告】