(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-515907(P2017-515907A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
C07D 499/87 20060101AFI20170519BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20170519BHJP
A61K 31/431 20060101ALN20170519BHJP
A61P 31/04 20060101ALN20170519BHJP
【FI】
C07D499/87
C07F7/18 V
A61K31/431
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-512434(P2017-512434)
(86)(22)【出願日】2015年5月14日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】EP2015060733
(87)【国際公開番号】WO2015173378
(87)【国際公開日】20151119
(31)【優先権主張番号】1408649.0
(32)【優先日】2014年5月15日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516340401
【氏名又は名称】アレクラ・セラピューティクス・ソシエテ・パ・アクシオンス・シンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フェーニ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】フォルザッティ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】フォリアート,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】ビオンディ,ステファノ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H049
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086CC01
4C086ZB31
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ31
4H049VR23
4H049VR41
4H049VS31
4H049VU08
4H049VU36
4H049VW02
(57)【要約】
式(IIIa)(式中、R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;R
4はC
1−5アルキルである;ならびにR
6はC
1−5フルオロアルキルである;ならびにPGは保護基である)の化合物の製造方法であって、式(IIa)の化合物を式(VIII)の化合物と反応させる工程を含む製造方法。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IIIa):
【化1】
(式中、
R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;
R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;
R
4はC
1−5アルキルである;ならびに
R
6はC
1−5フルオロアルキルである;ならびに
PGは保護基である)の化合物の製造方法であって、式(IIa)の化合物を式(VIII):
【化2】
の化合物と反応させる工程を含む製造方法。
【請求項2】
PGが式SiR33の基であり、ここで、R3が、各場合において、独立して、C1−10ヒドロカルビルまたはC1−5アルコキシ、所望により、C1−5アルキル、C1−5アルコキシ、フェニルおよびフェニル−C1−4アルキルから選択される、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
R4がメチルである、請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
R6がペルフルオロアルキルである、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
R6がトリフルオロメチルである、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
極性非プロトン溶媒中で反応を行う、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項7】
10℃以下の温度で反応を行う、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項8】
式(IV):
【化3】
(式中、R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;ならびにR
4はC
1−5アルキルである)の化合物の製造方法であって、式(III)
【化4】
(式中、X−はアニオンであり、各R
3は、独立して、C
1−10ヒドロカルビルおよびC
1−5アルコキシからなる群から選択される)の化合物を2−エチルヘキサノアート塩と反応させる工程を含む製造方法。
【請求項9】
2−エチルヘキサノアート塩が金属2−エチルヘキサノアートである、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
金属がアルカリである、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
式(III)の化合物を2−エチルヘキサノアート塩の溶液に加える、請求項8〜10のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項12】
式(II):
【化5】
(式中、R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;ならびにR
3は、各場合において、独立して、C
1−5アルコキシおよびC
1−10ヒドロカルビル、所望により、C
1−5アルキル、フェニルおよびフェニル−C
1−4アルキルから選択される)の化合物の製造方法であって、式(I)の化合物を式(V)
【化6】
(式中、R
5はC
1−5アルキルである)の化合物の1モル当量未満と反応させる工程を含む製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルペナム誘導体、特に、β−ラクタマーゼインヒビターとしてのβ−ラクタム抗生物質との使用に適したメチルペナム誘導体の製造(形成)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐性の出現および広がりは、構造クラスまたは作用様式に無関係に、抗生物質の導入により発動される進化動態の必然的結果である(Shapiro S.2013.Speculative strategies for new antibacterials:all roads should not lead to Rome.J.Antibiot.66:371−386)。臨床的に重要な病原体における耐性の広がりは、重篤な細菌感染症に対する非常に安全かつ有効な療法と現在みなされているβ−ラクタム抗生物質の価値に特に大きな影響を及ぼしている。新たな攻撃的なβ−ラクタマーゼ、特に広域スペクトルβ−ラクタマーゼ(ESBL)および他のクラスA酵素の出現は、β−ラクタムが感染症と闘う能力を減じており、新規製品の開発の必要性を際立たせている(Fisher JF,Meroueh SO,Mobashery S.2005.Bacterial resistance to β−lactam antibiotics:compelling opportunism,compelling opportunity.Chem.Rev.105:395−424)。β−ラクタム抗生物質を加水分解から保護する幾つかのβ−ラクタマーゼインヒビターが幾つかのβ−ラクタムと共に使用されているが、これらのβ−ラクタマーゼインヒビターがβ−ラクタムの抗細菌活性を維持させる能力は過去十年間で著しく損なわれており、組合されるβ−ラクタムの治療的有用性を回復させるために、より強力な新規β−ラクタマーゼインヒビターの探索が必要となっている(Watkins RR,Papp−Wallace KM,Drawz SM,Bonomo RA.2013.Novel β−lactamase inhibitors:a therapeutic hope against the scourge of multidrug resistance.Front.Microbiol.4:392)。
【0003】
WO 2008/010048は、以下の式:
【化1】
【0004】
を有するβ−ラクタマーゼインヒビターを開示している。WO 2008/010048に開示されているβ−ラクタマーゼインヒビターには、化合物(2S,3S,5R)−3−メチル−3−((3−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−3−イウム−1−イル)メチル)−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシラート 4,4−ジオキシド(式A):
【化2】
【0005】
が含まれる。R基は置換反応、例えば、式(A)の場合にはヨウ化メチルとの反応により形成される。
【0006】
WO 2008/010048は、濾過および凍結乾燥により単離される非晶質化合物の形成を開示している。
【0007】
本発明の目的は、2−メチルペナム誘導体の改良された製造方法を提供することである。
【0008】
さらなる目的は、工業規模の製造に適した2−メチルペナム誘導体の製造方法を提供することである。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様において、本発明は、式(IIIa):
【化3】
【0010】
(式中、
R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;
R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;
R
4はC
1−5アルキルである;ならびに
R
6はC
1−5フルオロアルキルである;ならびに
PGは保護基である)の化合物の製造(形成)方法であって、式(IIa)の化合物を式(VIII):
【化4】
【0011】
の化合物と反応させる工程を含む製造方法を提供する。
【0012】
第2の態様において、本発明は、式(IV):
【化5】
【0013】
(式中、R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;ならびにR
4はC
1−5アルキルである)の化合物の製造(形成)方法であって、式(III)
【化6】
【0014】
(式中、X−はアニオンであり、各R
3は、独立して、C
1−10ヒドロカルビルおよびC
1−5アルコキシからなる群から選択される)の化合物を2−エチルヘキサノアート塩と反応させる工程を含む製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第2の態様において反応させる式(III)の化合物は、式(IIIa)のPGが式SiR
33の基である場合の第1の態様において記載されている方法により製造されうる。
【0016】
第3の態様において、本発明は、式(II):
【化7】
【0017】
(式中、R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;ならびにR
3は、各場合において、独立して、C
1−5アルコキシおよびC
1−10ヒドロカルビル、所望により、C
1−5アルコキシ、C
1−5アルキル、フェニルおよびフェニル−C
1−4アルキルから選択される)の化合物の製造(形成)方法であって、式(I)の化合物を式(V)
【化8】
【0018】
(式中、R
5はC
1−5アルキルである)の化合物の1モル当量未満と反応させる工程を含む製造方法を提供する。
【0019】
第3の態様の製造方法により製造される式(II)の化合物は、式(IIa)のPGが式SiR
33の基である場合の第1の態様の反応において使用されうる。
【0020】
発明の詳細な説明
式(IV)の化合物の製造方法をスキーム1に例示する。
【化9】
【0021】
(式中、
R
1は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;
R
2は、各場合において、独立して、H、ハロゲン、アミノ、C
1−5アルキル、C
1−5アルケニルおよびC
1−5アルキニルから選択される;
R
3は、各場合において、独立して、C
1−10ヒドロカルビルおよびC
1−5アルコキシ、所望により、C
1−5アルキル、C
1−5アルコキシ、フェニルおよびフェニル−C
1−4アルキルから選択される;
R
4はC
1−5アルキルである;ならびに
Xはアニオンである)。
【0025】
工程(i)〜(iii)のそれぞれを以下に更に詳細に説明することとする。
【0026】
工程(i):シリル化
式(I)の化合物のカルボキシル基を工程(i)においてシリル化する。好ましくは、シリル化は、式(V):
【化10】
【0027】
(式中、R
3は、各場合において、独立して、C
1−10ヒドロカルビルまたはC
1−5アルコキシ、所望により、C
1−5アルキル、C
1−5アルコキシ、フェニルおよびフェニル−C
1−4アルキルから選択され、R
5はC
1−5アルキルから選択される)のアミドを使用して行う。
【0028】
好ましくは、各R
3はメチルである。好ましくは、各R
5はメチルである。
【0029】
式(V)の好ましい化合物はN,O−ビストリメチルシリルアセトアミドである。
【0030】
該反応は、極性非プロトン溶媒、所望により、塩素化溶媒、例えばジクロロメタン中で行われうる。
【0031】
式(I)の化合物は、少なくとも1モル当量の式(V)の化合物、所望により、モル過剰の式(V)の化合物と反応させることが可能である。
【0032】
しかし、本発明者らは、驚くべきことに、式(V)の化合物のシリル基の両方が式(I)の化合物のシリル化において利用されうることを見出した。
【0033】
したがって、好ましい実施形態においては、式(I)の化合物を、モル当量未満、所望により、0.9モル当量以下、所望により、0.8、0.7または0.6モル当量以下の式(V)の化合物と反応させる。
【0034】
式(V)の化合物は1回の添加で反応混合物に加えることが可能であり、あるいは2以上に分割して加えることが可能である。
【0035】
工程(ii):アルキル化
工程(ii)のアルキル化はC
1−5アルキル化、好ましくはメチル化でありうる。
【0036】
アルキル化は、いずれかの適当なアルキル化基、好ましくは、式(VI):
R
4−X
(VI)
(式中、R
4はC
1−5アルキル基であり、Xは脱離基である)の化合物を使用して行われうる。
【0038】
所望により、Xは、クロリド、ブロミド、ヨージドおよびスルホナートからなる群から選択される。
【0039】
典型的なスルホナートは式(VII):
【化11】
【0040】
[式中、R
6は、1以上の置換基で置換されている又は置換されていないことが可能であるアリール、所望によりフェニル、およびC
1−5アルキル(ここで、該C
1−5アルキル基のH原子の1以上はFで置換されていてもよい)から選択され、
*はR
1に対する結合を表す]の基である。式(VII)の典型的な基には、トリフルオロメタンスルホナート(トリフラート)およびp−トルエンスルホナート(トシラート)が含まれる。
【0041】
好ましくは、R
6はC
1−5アルキル基であり、ここで、該C
1−5アルキル基のH原子の1以上はFで置換されている。より好ましくは、R
6はトリフルオロメチルである。
【0042】
該反応は大気圧における反応混合物の沸点までのいずれかの温度で行われうる。驚くべきことに、本発明者らは、フッ素化アルキルR
6の使用が、該アルキル化工程が低温、所望により20℃未満の温度、所望により10℃未満の温度、所望により約0℃で進行することを可能にしうることを見出した。本発明者らは更に、フッ素化アルキルR
6の使用がハロゲン基R
6の使用より有意に速い反応を可能にすることを見出した。
【0043】
フッ素化アルキルR
6を使用する低温反応の利用により、揮発性アルキル化剤、例えばヨウ化メチルの蒸発が低減または排除されうる。
【0044】
好ましくは、工程(i)において形成されたシリル化化合物を該アルキル化工程前には単離しない。スキーム1の化合物(II)および(III)は、これらの化合物のカルボキシル基を保護するシリル保護基を含有するが、反応工程(ii)のための保護基は別の保護基PGであってもよいと理解されるであろう。当業者は、工程(ii)のアルキル化中の式(II)の化合物のカルボキシル基を保護するのに適した他の保護基を認識するであろう。式SiR
33の基以外の典型的な保護基PGには、アリル(これは、金属2−エチルヘキサノアートおよびPd(0)を使用してアルキル化後に除去されうる);水素化分解により除去されうる基、例えばベンジル、ベンジドリルおよびp−ニトロベンジル;ならびに塩基で除去されうる基、例えばフルオレニルメチルが含まれる。カルボキシルの保護のための他の保護基はTheodora W.GreeneおよびPeter G.M.Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”,Second Edition,John Wiley & Sons,Inc.(その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0045】
工程(iii):脱保護
本発明者らは、式(III)の化合物のシリル基が、2−エチルヘキサノアートでの処理により除去可能であり、固体生成物を与え、2−エチルヘキサノアートでの処理が式(IV)の化合物の結晶を与えうることを見出した。これは驚くべきことである。なぜなら、本発明者らは、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノールまたは塩基である水酸化ナトリウムもしくは酢酸ナトリウムでの処理が、容易には固体形態へ変換できない非固体生成物、例えば油、ガムまたはゲルを与えることを見出したからである。
【0046】
典型的な2−エチルヘキサノアートは金属2−エチルヘキサノアートである。適当な金属には、アルカリおよびアルカリ土類金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムが含まれる。
【0047】
好ましくは、該脱シリル化工程の前には式(III)の化合物を単離しない。
【0048】
式(III)の化合物を金属2−エチルヘキサノアートの溶液に加えて、式(IV)の化合物の結晶を得ることが可能である。該溶液のための典型的な溶媒としては、アルコール、好ましくはエタノールが挙げられる。
【0049】
結晶化
式(IV)の化合物は非晶質または結晶性でありうる。式(IV)の結晶性化合物は非晶質化合物より取扱い易く、より安定でありうる。
【0050】
式(IV)の結晶性化合物の製造(形成)方法は、限定的なものではないが、式(IV)の非晶質化合物を溶媒または溶媒混合物中に溶解または分散させ、1以上の逆溶媒を該溶液または分散液に加えることにより結晶の形成を誘発し、該溶液または分散液を冷却し、および/または式(IV)の化合物の結晶を加えて結晶化のための核形成点を提供することを含む。本明細書中で用いる「逆溶媒」は、逆溶媒を加える溶液または分散液の溶媒より低い溶解度を式(IV)の化合物が有する液体を意味する。
【0051】
結晶化の方法はGB 1319776.9(その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載されている。
【0052】
用途
式(IV)の化合物は1以上の抗生物質と共に医薬組成物において使用可能であり、1以上の通常の医薬上許容される賦形剤を含みうる。
【0053】
式(IV)の化合物は抗生物質と共に組成物として投与可能であり、または、式(IV)の化合物と抗生物質は別々に投与されうる。
【0054】
本明細書に記載されている医薬組成物は静脈注射用の注射可能形態でありうる。該組成物は安定剤を含有しうる。該組成物は、注射可能溶液、例えば生理食塩水を形成させるための再構成(還元)にそのまま用いられる適当な無菌固体形態でありうる。
【0055】
典型的な抗生物質はβ−ラクタム抗生物質、特にペニシリンおよびセファロスポリンであり、アモキシシリン(Amoxicillin)、アンピシリン(Ampicillin)、アパルシリン(Apalcillin)、アズロシリン(Azlocillin)、バカンピシリン(Bacampicillin)、カルベナシリン(Carbenacillin)、クロキサシリン(Cloxacillin)、ジクロキサシリン(Dicloxacillin)、フルクロキサシリン(Flucloxacillin)、レナンピシリン(Lenampicillin)、メシリナム(Mecillinam)、メタシリン(Methacillin)、メズロシリン(Mezlocillin)、ナフシリン(Nafcillin)、オキサシリン(Oxacillin)、ペニシリン(Penicillin)G、ペニシリンV、ピペラシリン(Piperacillin)、テモシリン(Temocillin)、チカルシリン(Ticarcillin)、アズトレオナム(Aztreonam)、BAL30072、カルモナム(Carumonam)、PTX2416、チゲモナム(Tigemonam)、セファクロル(Cefaclor)、セファドロキシル(Cefadroxil)、セファレキシン(Cefalexin)、セファロチン(Cefalotin)、セファマンドール(Cefamandole)、セファピリン(Cefapirin)、セファゾリン(Cefazolin)、セフブペラゾン(Cefbuperazone)、セフジニル(Cefdinir)、セフェピム(Cefepime)、セフェタメト(Cefetamet)、セフィキシム(Cefixime)、セフメノキシム(Cefmenoxime)、セフメタゾール(Cefmetazole)、セフルニノックス(Cefrninox)、セフォニシド(Cefonicid)、セフォペラゾン(Cefoperazone)、セフォタキシム(Cefotaxime)、セフォテタン(Cefotetan)、セフォチアム(Cefotiam)、セフチオフル(Ceftiofur)、セフォベシン(Cefovecin)、セフォクスチン(Cefoxtin)、セフポドキシム(Cefpodoxime)、セフプロジル(Cefprozil)、セフキノム(Cefquinome)、セフラジン(Cefradine)、セフミノックス(Cefminox)、セフスロジン(Cefsulodin)、セフタロリン(Ceftaroline)、セフタジジム(Ceftazidime)、セフテゾール(Ceftezole)、セフチブテン(Ceftibuten)、セフチゾキシム(Ceftizoxime)、セフトビプロール(Ceftobiprole)、セフトロザン(Ceftolozane)、セフトリアキソン(Ceftriaxone)、セフロキシム(Cefuroxime)、セフゾナム(Cefuzoname)、セファレキシン(Cephalexin)、セファロチン(Cephalotin)、フロモキセフ(Flomoxef)、ラタモキセフ(Latamoxef)、ロラカルベフ イミペネム(Loracarbef Imipenem)、メロペネム(Meropenem)、ドリペネム(Doripenem)、エルタペネム(Ertapenem)、ビアペネム(Biapenem)、パニペネム(Panipenem)、ファロペネム(Faropenem)またはそれらの誘導体から選択されうる。
【0056】
該抗生物質は、アミノグリコシド、例えばアミカシン(Amikacin)、アルベカシン(Arbekacin)、アプラマイシン(Apramycin)、ジベカシン(Dibekacin)、ゲンタマイシン(Gentamicin)、イセパマイシン(Isepamicin)、カナマイシン(Kanamycin)、ネオマイシン(Neomycin)、ネチルマイシン(Netilmicin)、プラゾマイシン(Plazomicin)、シソマイシン(Sisomicin)、スペクチノマイイン(Spectinomyin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、トブラマイシン(Tobramycin)またはそれらの誘導体から選択されうる。
【0057】
該抗生物質は、キノロン、例えばシノキサシン(Cinoxacin)、シプロフロキサシン(Ciprofloxacin)、エノフロキサシン(Enofloxacin)、ガチフロキサシン(Gatifloxacin)、ゲミフロキサシン(Gemifloxacin)、レボフロキサシン(Levofloxacin)、モキシフロキサシン(Moxifloxacin)、ナリジクス酸、ノルフロキサシン(Norfloxacin)、オキサフロキサシン(Oxafloxacin)またはそれらの誘導体から選択されうる。
【0058】
該抗生物質は、抗微生物ペプチド、例えばコリスチン(Colistin)、ポリミキシン(Polymyxin)Bまたはそれらの誘導体から選択されうる。
【0059】
本明細書に記載されている医薬組成物はただ1つの、または2以上の抗生物質を含みうる。
【0060】
式(I)の結晶性化合物を含有する医薬組成物は、グラム陰性菌および抗微生物剤に対して耐性の細菌に対する活性を改善するための殺菌性もしくは浸透促進性タンパク質産物(BPI)または排出ポンプインヒビターを含有することが可能であり、あるいはそれらと共投与されうる。抗ウイルス、抗寄生生物、抗真菌剤も該インヒビター化合物と共に投与されうる。
【0061】
該医薬組成物は錯形成剤もしくは抗凝固剤、抗酸化剤、安定剤、アミノグリコシド、医薬上許容される塩など、またはそれらの混合物を含有しうる。
【0062】
特に、該医薬組成物はβ−ラクタム抗生物質、好ましくはペニシリン、セファロスポリン、カルバペネム、モノバクタム、より好ましくはピペラシリン、セフェピム、セフトリアキソン、メロペネム、アズトレオナムを含有しうる。
【0063】
該医薬組成物は、バッファー、例えばクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、モルホリノプロパンスルホン酸、他のリン酸バッファーなど、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール四酢酸、1,6−ヘキサメチレンジアミン四酢酸など、またはそれらの医薬上許容される塩を含有しうる。
【0064】
本明細書に記載されている医薬組成物は、いずれかの適当な方法、好ましくは静脈内注射により、ヒトまたは温血動物に投与されうる。
【0065】
以下の図面を参照して本発明を更に詳細に説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、本発明の1つの実施形態の製造方法により製造された結晶化合物のXRPDスペクトルである。
【
図2】
図2は、本発明の1つの実施形態の製造方法により製造された結晶化合物のラマンスペクトルである。
【
図3】
図3は、本発明の1つの実施形態の製造方法により製造された結晶化合物の走査電子顕微鏡イメージである。
【
図4】
図4は(2S,3S,5R)−3−メチル−3−((3−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−3−イウム−1−イル)メチル)−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシラート 4,4−ジオキシドとN,O−ビストリメチルシリルアセトアミドとの反応の生成物のLCMSスペクトルである。
【0067】
実施例
(2S,3S,5R)−3−メチル−3−((3−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−3−イウム−1−イル)メチル)−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシラート 4,4−ジオキシド(4)の合成
スキーム2に従い、化合物(4)を製造した。
【化12】
【0068】
窒素流下の丸底フラスコ内に100gのタゾバクタム酸(1)および500mLのジクロロメタンをローディングする。温度を+30/35℃に調節し、ついで、37gのN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを、温度を+35/42℃に維持しながら、15〜20分でローディングする。該混合物を60分間加熱還流(+40/42℃)する。溶液が透明でない場合、中間体(2)を含有する透明な溶液が得られるまで、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを、15分間隔で小分割量(それぞれ0.5〜1.0g)でローディングする。0.55モルのN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミドを使用し、反応が完了していない場合には更に0.1〜0.2当量を加える。
【0069】
ついで温度を0/+5℃に冷却し、70gのメチルトリフルオロメタンスルホナートを、温度を0/±5℃に維持しながら60〜90分でローディングする。30分後、反応をHPLCによりモニターして、中間体(2)の消失および中間体(3)の形成を制御する。完了まで30分ごとに反応をモニターする。
【0070】
窒素下、丸底フラスコに、500mLのエタノールおよび55gの2−エチルヘキサン酸ナトリウムを入れ、温度を+20/25℃に調整し、ついで中間体(3)を含有する反応溶液を、激しい撹拌下、+20/25℃の温度を維持しながら60〜90分で加える。該懸濁液を30分間撹拌し、ついで濾過し、300mLのエタノール、ついで500mLのジクロロメタンで窒素下で洗浄する。粗生成物(4)を、一定重量(150g)が得られるまで、窒素流下で乾燥する。粗生成化合物(4)を固体生成物として単離した(HPLCアッセイ=70%、収率=80%)。
【0071】
(2S,3S,5R)−3−メチル−3−((3−メチル−1H−1,2,3−トリアゾール−3−イウム−1−イル)メチル)−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシラート 4,4−ジオキシド(4)の精製
丸底フラスコ内に800mLのジメチルホルムアミドをローディングし、温度を+20/25℃に調節し、ついで、前記で得られた粗化合物4(150g)を、移送を容易にするために100mLのジメチルホルムアミドを使用してローディングする。該混合物を5分間撹拌し、溶液を得、ついで数分後に結晶化が生じる。該懸濁液を約3時間撹拌し、ついで0/+5℃に冷却し、更に3時間撹拌する。
【0072】
固体を濾過し、0/+5℃に予め冷却したジメチルホルムアミド300mLで洗浄する。ついで化合物4を700mLの酢酸エチル中に懸濁させ、温度を+40/45℃に調節する。該懸濁液を30分間撹拌し、ついで固体を濾過し、+40/45℃に予め加熱した150mLの酢酸エチルで洗浄する。酢酸エチルによる懸濁を2回繰り返す。最後に、一定重量が得られるまで化合物4を+40℃で真空乾燥する(66g、HPLCアッセイ=99%、収率=76%)。
【0073】
化合物4の滅菌濾過および再結晶手順
丸底フラスコ内に350mLのメタノールをローディングし、温度を+30/35℃に調節し、ついで100gの化合物4をローディングし、最後にフラスコを60mLのメタノールで洗浄する。5〜10分後、溶液を得る。温度を+20/+25℃に調節し、溶液を330mLのアセトンで希釈する。得られた溶液を2,2gの木炭で20分間処理し、ついで0.22μmフィルターを用いて濾過し、該フィルターを13mLのメタノールと110mLのアセトンとの混合物で洗浄する。該溶液の温度を+30/35℃に調節し、激しく撹拌しながら、830mLのアセトンを約15〜20分でローディングする。+30/35℃の温度で60分間撹拌した後、1170mLのアセトンを45〜60分でローディングする。ついで温度を約30〜60分で+20/25℃に調節し、30分間維持する。得られた結晶性固体を濾過し、430mLのアセトンで洗浄する。最後に、一定重量(83gの化合物4)が得られるまで、生成物を+40℃で真空乾燥する(HPLCアッセイ=98〜99%、収率=t 80%)。
【0074】
図1は、以下の条件を用いてRigaku MiniFlex 600により透過モードで得られた結晶性化合物(4)のXRPDスペクトルである。
【0075】
X線:40Kボルト、15mA;
波長:CuKalfa => ラムダ1.541862A;
スキャン軸:シータ/2シータ;
スキャン範囲:5.0000〜60.0000度;
時間取得60分。
【0076】
図2は、Jasco RFT−600:光源:Nd−YAG(1064nm:励起波長)で得られた結晶性化合物(4)のラマンスペクトルである。
【0077】
図3は、後方散乱電子技術により低真空状態(30Pa)で30kVで作動するJEOL JSM 5500LV走査型電子顕微鏡を用いて得られた結晶化合物(4)の走査型電子顕微鏡イメージである。
【0078】
比較例1
スキーム2のシリル化工程(i)を、種々のモル比のシリル化剤N,O−ビストリチルシルシリルアセートアミド(BSA)を使用して行った。
【0079】
WO 2008/010048に開示されている、1.2当量のBSAを20〜25℃で使用するシリル化は、
図4に示されているとおりLC−MSで観察可能な未同定の副生成物の形成をもたらす。
【0080】
表1を参照すると、この不純物の量は、より低いモル当量のBSAを使用することによって大幅に低減されうる。
【表1】
【0081】
比較例2
スキーム2のメチル化工程(ii)を、WO 2008/010048に開示されるとおりヨードメタンおよびトシル酸メチルを使用して行った。表2を参照すると、メチルトリフラートを使用する反応は遥かに速く、より高い収率を与え、遥かに低い温度で実施可能であり、メチルトシラートまたはヨードメタンのいずれよりも少量のメチル化剤を必要とするに過ぎない。更に、メチルトリフラートの比較的低温での使用は、比較的高い温度で使用されるメチル化剤の毒性(例えば、その沸点以上のヨードメタンの使用)から生じる安全性の問題を回避する。
【表2】
【0082】
比較例3
スキーム2の脱シリル化工程(iii)を、ある範囲のアルコール、例えばメタノール、エタノールおよび2−プロパノールを使用して試みた。このアプローチは、油またはゲルの形態の生成物の回収をもたらした。これらの油またはゲルを種々の溶媒、例えばACN、THFおよびアセトンで処理した。これは完全な溶解をもたらし、固体物質を回収することはできなかった。ジエチルエーテル、トルエン、ヘキサンおよびヘプタンの使用は他のゲルを与え、固体を回収することはできなかった。pHを中性に調節するために塩基を試してみた。この目的のために、NaOH溶液、AcONa(そのまま並びに水性および有機溶液中)およびナトリウム−2−エチルヘキサノアート(そのまま又は有機溶液中)を試験した。水溶液中での水酸化ナトリウムの使用はゲルおよびガム状生成物を与えた。AcONaのそのままの物質は固体の沈殿を全く引き起こさなかった。前記実施例に記載されているナトリウム−2−エチルヘキサノエートとエタノールとの混合物を使用して、化合物4を含有する固体物質を得た。
【0083】
本発明は特定の典型的な実施形態に関して説明されているが、本明細書に開示されている特徴の種々の修飾、改変および/または組合せは、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかであると理解されるであろう。
【国際調査報告】