特表2017-515927(P2017-515927A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-515927高分子分散型液晶エラストマー(PDLCE)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-515927(P2017-515927A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】高分子分散型液晶エラストマー(PDLCE)
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20170519BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20170519BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
   C08L83/06
   C08L101/12
   C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-557603(P2016-557603)
(86)(22)【出願日】2015年3月17日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2015055527
(87)【国際公開番号】WO2015140149
(87)【国際公開日】20150924
(31)【優先権主張番号】1404746.8
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】506196465
【氏名又は名称】ヨゼフ・シュテファン・インスティトゥート
【氏名又は名称原語表記】JOZEF STEFAN INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】レセティック,アンドラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ミラベック,イェルネヤ
(72)【発明者】
【氏名】ズパンシック,ブラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ザラール,ボシュティアン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AA03X
4J002AC00X
4J002CP03W
4J002CP051
4J002GQ05
(57)【要約】
本発明は、液晶エラストマー(LCE)系コンポーネントの製造方法に関する。本方法は、(i)マイクロサイズ又はナノサイズのLCE粒子を提供又は作成する工程、(ii)粒子を未硬化液体高分子中に分散させる工程、(iii)粒子のネマチックダイレクタを配列させる工程、並びに(iv)マトリックス/粒子混合物を成形及び硬化する工程を含む。この方法により形成された複合材料は、任意の形に成形できる、特別に調整された性質を持つ高分子分散型液晶エラストマー(PDLCE)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の形状の液晶エラストマー系コンポーネントの製造方法であって、
a.マイクロサイズ又はナノサイズの異方性液晶エラストマー粒子を提供する工程、
b.該液晶エラストマー粒子を高分子の重合前混合物中に分散させる工程、
c.該液晶エラストマー粒子を該混合物中で配列させる工程、並びに
d.配列した該液晶エラストマー粒子を保持しながら、該混合物を成形及び硬化する工程
を含む、方法。
【請求項2】
該液晶エラストマー粒子が、単一ドメインを有するか、又は複数の部分的に秩序あるドメインからなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
マイクロサイズ又はナノサイズの異方性液晶エラストマー粒子を提供する該工程が、機械的プロセスにより、特に粉砕又は研削により巨視的な主鎖又は側鎖液晶エラストマーを分割する工程を含む、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
該液晶エラストマー粒子のサイズが、100nmと100μmの間の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
様々な型の該液晶エラストマー粒子を、提供し、そして該重合前混合物中に分散させる、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
該液晶エラストマー粒子を、磁場、電場、及び機械的応力場の少なくとも1つを用いて配列させる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
該液晶エラストマー粒子の配列の程度を、配列場の強度を変化させることにより制御する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
該液晶エラストマー粒子の配列方向を、配列場の空間的変調により制御する、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
該混合物を、熱又はUV硬化する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
該混合物中の該液晶エラストマー粒子の粒子秩序又は配列の空間的変調が、該液晶エラストマー粒子の逐次配列工程の実施と、各配列工程後の重合前混合物の様々な部分の局所選択的UV硬化により達成される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該コンポーネントが、導電性、強誘電性、強磁性又は光活性材料を重合前混合物中に組み込むことにより機能化される、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
高分子マトリックス中に分散させたマイクロサイズ又はナノサイズの異方性液晶エラストマー粒子を含む複合体から形成される液晶エラストマー系コンポーネントであって、該液晶エラストマー粒子が、該高分子マトリックス中で少なくとも局所的に配列している、コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野及び先行技術
本発明は、液晶エラストマー(LCE)系コンポーネントの製造方法に関する。本発明は、スマートマテリアルの領域に属し、そして詳しくは特別に調整された性質を持つ高分子に関する。
【背景技術】
【0002】
現代技術における、高分子、特にエラストマーの広範な使用は、これらが、成形、再形成、及び機械加工に比較的努力を要しないという事実に強く依存している。大抵の応用において、高分子又はエラストマーパーツは、それぞれ受動機械部品として又は紐の代用品として使用される。ごく最近になって、外部刺激に誘発される機械的応答性を持つスマートソフトマテリアルが開発されている。中でも、電気活性高分子は、巨視的デバイス、例えば、人工筋肉用と、マイクロ−及びナノ−サイズのデバイス、例えば、MEMS及びNEMS用との両方の、新世代のアクチュエータ及びトランスデューサ素子の開発において最も広範囲に利用されている。それにもかかわらず、液晶エラストマー(LCE)は、この領域においてますます強力な競争相手になっている。
【0003】
LCEは、中間相分子の秩序と高分子ネットワークの弾性特性とを兼ね備える、スマート高分子材料である。高分子液晶相は、液晶に典型的な配向/位置秩序が高分子中に存在すると形成される。例えば、高分子液晶を形成するためのメソゲン単位を連結させることにより、メソゲン間のネマチック又はスメクチック相互作用が高分子基本骨格に異方性を与える。液晶エラストマーは原理的には、架橋によって数点で架橋した高分子ネットワークを有する液晶高分子である。これは、流動するその能力を減少させることによりネットワークを安定化し、そして液晶では遭遇することのないエントロピーゴム弾性を生じさせる。中間相秩序と高分子ネットワークのカップリングに起因して、モノドメイン液晶エラストマーの巨視的寸法は、温度変化により可逆的に変更することができる。同等に、LCEは熱機械的応答を示す。例えば、ネマチック秩序の増大(冷却)がエラストマーを長くし、一方秩序の低下(加熱)が材料を収縮させる。
【0004】
液晶エラストマー(LCE)の熱及びEM放射制御の形状記憶挙動は、多くの試作デバイスにおいて活用されている。しかし、現在利用可能なLCE材料及びその合成方法は、依然として大規模生産環境に容易に組み入れることができない。主な障害は、LCEドメインの微視的サイズである:個々のLCEドメインは形状記憶を持つが、従来のUV/光又は熱硬化重合方法ではドメイン配向の等方的分布が生じるため、試料は全体として不活性である。よって巨視的サイズのLCE試料に形状記憶を刻み込む決定的に重要な工程は、ドメインの永続的な配向の配列、即ち、巨視的スケールで異方的物性を持つ効果的に「モノドメイン」な状態を植え付けることである。この要件を考えると、例えば、US 5385690Aにおいて又はWO 8909419A1において示されるような側鎖LCEネットワークの調製への従来の取り組みは、かなり制約のある一連の可能な配列技術により非常に限定されている。現在唯一の効率的方法は、機械的に応力のかかった部分架橋ネットワークを熱重合することである。このような手法は、J. Kupfer, H. Finkelmann, “Nematic Liquid Single-Crystal Elastomers”, Makromol. Chem. - Rapid Commun. 12, 717 (1991)に記載されている。残念ながら、この手順からは任意の形状の試料の調製も、また幾何形状の小型化も適わない。
【0005】
反対に、薄膜、及びシステムの寸法がドメインのサイズスケールに縮小された制約ある幾何形状において、異方性は、固有のものであるため、電場又は磁場、粘性流の存在下で、又は配列表面での架橋を、ドメイン配向の操作において非常に効率的にする。コロイダル液晶(LC)粒子の沈殿重合という考えを基に、例えば、WO 2010112831A1にマイクロサイズのLCEビーズが開示されている。最近では磁場中でソフトモールドフォトリソグラフィーを利用することにより、LCEマイクロピラーを作成している(A. Buguin, Min-Hui Li, P. Silberzan, B. Ladoux, and P. Keller, ≫Micro-Actuators: When Artificial Muscles Made of Nematic Liquid Crystal Elastomers Meet Soft Lithography≪, JACS 128, 1088 (2006)を参照のこと)。同様のサイズの棒状及び楕円形状のLCEもまた、C. Ohm, M. Brehmer, and R. Zentel, ≫Liquid Crystalline Elastomers as Actuators and Sensors≪, Adv. Mater. 22, 3366 (2010)に報告されたとおりマイクロ流体技術により入手することができる。更に、これらの粒子は、直接熱制御によるか、又は金属介在物を介する加熱によるかのいずれかで強力な熱機械効果を示すことが証明された。
【0006】
LCEコンポーネントを製造する別の方法は、従来の等方性エラストマーと、中間相エラストマー介在物又は一連の介在物を含む複合体であって、その形状が、光学的、電気的、機械的、熱的、又は化学的手段により外部から制御される複合体を作成することである(WO 2011036080A1)。新しい特性はこうして入手できるが、記載の方法は、標準的LCEとでも限定要因である、同様の化学合成及び配列手順を利用する。このような複合体では、活性化介在物の容量は、周辺の受動高分子材料、即ち、微視的スケールでは複合体でない材料の容量と同程度の大きさである。したがって、活性化構造の応力ひずみ場は、介在物の形状及び配向に強く依存する。本発明のコンポーネントでは、LCE粒子のサイズが、典型的には複合体試料のサイズよりはるかに小さいため、上記は当てはまらない。結果として、不均質な局所の応力ひずみは平均するとその平均値になり、複合体の有効な弾性及び熱機械的特性は、従来のバルクLCE材料のそれに似ている。
【0007】
現在の技術水準では、LCEの熱機械的特性は、化学的に制御される。これは、様々な程度の配向及び位置秩序化を示す、種々のサーモトロピックメソゲンを合成することにより達成される。エラストマー構造に挿入されると、これらのメソゲン単位は、その秩序化能を保持し、そしてこれが材料の最終構造的及び機械的特性を決定する。他のアプローチは大抵、重合前混合物中のメソゲン及び架橋剤の相対濃度の変化、非中間相コモノマーの組み込み、又は低分子量メソゲンでの高分子再処理に依存する。しかし、これまで提案及び利用されたLCE材料の性質を制御する方法では、標準的な非線形熱機械的応答、即ち、低温又は高温での緩やかな変化及び相転移領域での高速応答からの相当な乖離は得られない。例えば、非中間相コモノマーの組み込みは、ネマチック−パラネマチック転移温度を低下させるが、熱機械的応答曲線の形状を変えない。更に、配列相に使用される高分子溶融体化学及びパラメーターの些細な物事が、生じるエラストマーネットワークの応答に全て大きく影響する。このため、試料調製の再現性に関する重大な問題が生じる。更には、化学的に調製されたLCエラストマーの機能化は、重合前混合物への種々の機能性材料の添加が、液晶秩序を破壊し、そして重合プロセスを妨げるため、非常に限定される。
【0008】
発明の要約
本発明の目的は、特別に調整された性質を持つLCE系コンポーネントの信頼できる製造方法を提供することである。更に具体的には、標準的な機械的変形対温度の曲線とは相当異なる熱機械的挙動が、得られなければならない。ある場合には、材料は、依然として大きな最大ひずみを維持しながら、広い温度範囲で線形応答をすることが望まれる。他の場合には、このコンポーネントが特定の温度区間においてのみ収縮及び伸長するが、この区間の外ではむしろ一定長を有する、帯域応答がより適切である。特定温度での伸長の鋭い変化が、ほとんどひずみ変化のない温度範囲と交互配置される、多段階応答のような、更に複雑なひずみ曲線が見込まれるはずである。このような種類の材料は、スイッチ、温度制御バルブ又は蠕動運動を模倣するマイクロポンプとして使用することができよう。調整された熱機械曲線に加えて、LCEコンポーネントの最大ひずみ及びヤング率が容易に制御可能でなければならない。更には、様々な充填材料を用いることによるLCE複合体の機能化が見込まれるはずである。
【0009】
本目的は、請求項1の方法により達成される。本方法の有利な実施態様は、従属請求項の対象であるか、又は後述の説明及び好ましい実施態様の部分に開示される。
【0010】
提案される方法は、(i)マイクロサイズ又はナノサイズのLCE粒子(これ以降「粒子」と称される)を提供又は作成する工程、(ii)粒子を未硬化液体高分子、好ましくはエラストマー(これ以降「マトリックス」と称される)中に分散させる工程、(iii)粒子のネマチックダイレクタを配列/配向させる工程、並びに(iv)マトリックス/粒子混合物を成形及び硬化する工程を含む。本方法により形成される複合材料は、高分子分散型液晶エラストマー(PDLCE)(以下では「複合体」としても示される)である。本材料は、実用的には2成分の軟質−軟質複合体であり、そして硬化マトリックスのゴム弾性と粒子の軟質/半軟質弾性との中間の弾性挙動を示す。本複合体は、任意の形に成形して、機能化前マトリックス、例えば、マイクロ−又はナノ−サイズの充填剤を含有するマトリックスを用いて機能化することができる。
【0011】
本発明の方法は、その異方性の軸が少なくとも部分的に配列していることを条件として、軟質高分子マトリックス中の充填剤又は介在物と見なされて、LCE粒子が、複合材料を効果的に熱機械的活性にするはずであるという考えに基づく。よって本方法は、軟質高分子マトリックスに埋め込まれたマイクロ−及びサブマイクロ−サイズのLCEドメインの操作に基づく。このような軟質−軟質複合体は、高分子分散型液晶(PDLC)の構造と似ており、そこでは液晶の代わりに重合LCEが使用されている(PDLCE)。PDLCEの最終の熱機械的応答は、全ての構成エラストマー種の応答の重ね合わせである。従来の液晶エラストマーと比較した、これらの複合体の主な利点は、製造への非化学的アプローチである。具体的には、機械的に粉末にした既存のバルクLCE材料か、又は直接合成したLCEマイクロ−若しくはナノ粒子のいずれかを高分子/エラストマー樹脂と混合することによって、粒径、組成、及び配列の程度の容易な操作に備えるため、熱応答の効率的な調整が得られる。
【0012】
マイクロ−及びサブマイクロ−サイズのLCE粒子は、バルクLCE片の凍結破壊又は低温粉砕により作り上げられる。使用されるバルクLCEは、モノ−又はポリ−ドメイン型のものであってよい。モノドメインエラストマーの場合には、生じる粒子は、100nm〜100μm範囲に種々のサイズ分布を有することができる。ポリ−ドメインエラストマーの場合には、粒子の最大使用可能なサイズは、ドメインのサイズにより限定される。いずれにせよ、生じるLCE粒子は、異方性である、即ち、これらは、その単一−又は複数−ドメインの特徴にかかわらず、優先的な配向の方向を有する。上記機械的プロセスの代わりに、LCE粒子は、より均一な形態を確保するための以前から公知の方法の1つによって、直接製造することができる。見込まれる方法は、鋳型を使った合成法、ソフトリソグラフィー法又は懸濁液中のLC液滴の直接重合法を包含する。
【0013】
該マイクロ−又はナノ−サイズのLCE粒子を未硬化マトリックス材料中に分散させることにより、重合前混合物を調製する。このマトリックス材料は、LCE融和性であり、熱又はUV硬化性の、効率的な混合及び充分緩やかな粒子分離(硬化プロセスの時間スケールで)の可能な適切な粘度の高分子である。埋め込まれた粒子は、唯一のLCE型のものであってよい。この場合に、最終複合体又はコンポーネントの性質は、マトリックス材料の濃度、粒径及び型を変えることにより、調整することができる。別の実施態様において、粒子は、様々なLCE材料から作られた混合物でありうる。このような複合体又はコンポーネントにおいて、最終の性質は、構成種の間の相対濃度、並びに粒子相転移温度、最大ひずみ及び弾性率の得られる分布によって決定される。
【0014】
硬化前に、マイクロ−又はナノ−サイズのLCE粒子は、例えば、磁場により重合前混合物中で配列させる。この配列方法には、ネマチックドメインの磁気異方性を活用する。反磁性異方性の符号に応じて、粒子は、磁場に対して平行又は垂直のいずれかに配向する。平均配向秩序は、磁場強度を変えることにより制御されるが、一方平均方向は、磁場の方向に依存する。1つの実施態様において、空間的に変調された磁場を使用することにより、空間的に変調された熱機械的応答をする複合体を作成する。別の実施態様において、様々に配列した粒子の層の逐次硬化が実施される。代替法として、電場を使用することにより、粒子の配向秩序を制御することができる。
【0015】
機能化マトリックス材料はまた、典型的には、導電性、強誘電性又は強磁性のナノ粒子又は光活性分子を充填された、複合体又はコンポーネントを形成するために使用することができる。LCEコンポーネントを機能化しようと試みるとしばしば遭遇する、重合阻害問題は、こうして回避され、LCE粒子が熱機械的応答性を超えるものを提供する必要はない。1つの実施態様において、導電性粒子をマトリックス中に分散することにより、複合体が抵抗加熱を介する作動に適するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下の項では、一例として添付の図と関連させて、幾つかの提案された複合体型が説明される。図は以下を示す:
図1A】モノドメインLCE粒子の基本的複合体。
図1B】作動状態のモノドメインLCE粒子の基本的複合体。
図2】LCE粒子が複数の部分的に秩序あるドメインを有する複合体。
図3】熱機械的特性が2種の異なるLCE型を使用することにより特別に調整されている複合体。
図4】LCE粒子の空間的に変調された配列を持つ複合体。
図5】逐次の配列及び重合により調製された変形する複合体。
図6】機能化導電性複合体。
【0017】
実施態様の説明
図1Aは、全ての他の複合体型にも共通の基本的PDLCE複合体構造の概略図を示す。この複合体は、高分子マトリックス(1)及び単一ドメインLCE粒子(2)を含む。重合前に、外部場によりLCE粒子を配列させるため、個々のネマチックダイレクタ(3)は、大体同じ方向を指す。配向の程度は、外部場の強度、高分子マトリックスの粘度、及び粒径のような種々のパラメーターに依存する。高分子マトリックス及びLCE粒子は両方とも、化学的に融和性であるように選択され、そして重合プロセスの間に貼り合わせられる。よって粒子の配向は固定されるため、複合体の作動が可能になる。
【0018】
図1Bは、作動状態の、即ち、ネマチック−等方相転移を上回る温度での図1Aに図解された複合体を示す。相転移の間、LCE粒子(2)は、ネマチックダイレクタに対して平行方向に収縮し、そして垂直方向に伸長する。結果として、高分子マトリックス(1)は、それに応じて変形するため、複合体試料において形状変化が巨視的に観察される。
【0019】
図2は、複数ドメインLCE粒子(4)が高分子マトリックス(1)に含まれる、PDLCE複合体のバリエーション番号2の概略図を示す。この複数ドメイン粒子は、ポリ−ドメインLCE材料を粉砕することにより製造することができ、よって単一ドメインLCEの製造のための面倒な2段階架橋アプローチを回避する。一定の粒径未満で、複数ドメイン粒子は、少数のドメイン(5)に起因して残存異方性が存在するため、電気的又は磁気的に活性になる。よってこのような粒子は、単一ドメイン粒子と同じように外部場で配列させることができる。
【0020】
図3は、高分子マトリックス(1)、第1型のLCE粒子(2)、及び第2型のLCE粒子(6)を含む、PDLCE複合体のバリエーション番号3を示す。この2種類の粒子は、異なるサイズ、秩序パラメーター、相転移温度、及び異方性を有することができる。この複合体の最終の性質は、両方の型の粒子の個々の性質により規定されるため、熱機械的応答の特別な調整が可能である。粒子は、等しいか又は反対の符号の反磁性異方性を示すことができる。第1の場合に、両方の型の粒子のネマチックダイレクタ(3)は、平行に配列するが、一方第2の場合にはこれらは互いに垂直である。
【0021】
図4は、粒子(2)の配向の空間的分布が存在する、基本的複合体のバリエーション番号4を示す。この種の複合体は、配列相において空間的に変調された外部場(7)を使用することにより製造される。外部磁場を使用することにより、このような複合体を製造することができる。正の磁気異方性の場合には、粒子のダイレクタ(3)が、磁場と平行に配列する。これによって、空間的に変調された熱機械的応答が生じる。
【0022】
図5は、基本的複合体型のバリエーション番号5である、変形する複合体を示す。この複合体は、別個の高分子相を加えることにより逐次作り上げられる。最初に重合前混合物の単一層(8)を堆積し、配向させ、そして部分的に重合させる。次に、第1層に対して垂直に配向した第2層(9)を同じ手順で作成する。両方の層は部分的にのみ重合しているため、これらの間に強い結合が作成される。同時に、LCE粒子の可動性が減少しているため、粒子の配向は固定される。任意の数の追加層を堆積して、交互配置構造を作成することができる。最終的に、この複合体を完全に重合させる。
【0023】
図6は、機能化PDLCE複合体(バリエーション番号6)を示す。基本的複合体に比較して、導電性粒子(10)を高分子マトリックス(1)に加える。導電性粒子の濃度は、試料を導電性にする浸透限界を上回る。この種の複合体は、抵抗加熱することができ、そして間接的電気作動に適している。
【0024】
基本的PDLCE複合体の調製の一例は、以下に与えられる。標準的なモノドメイン液晶エラストマーは、最初に小片(1×1mm)に切断することにより、粉砕に備える。粉砕前に、LCE片をポリジメチルシロキサン系エラストマーSylgard(登録商標)184(Dow Corning)とそれぞれ3:1の重量比で混合する。LCE−PDMS混合物を乳鉢に入れ、目に見えて凍結するまで液体窒素で冷却する。次に乳棒を用いてLCE−PDMS混合物を更に細々とした小片に破砕する。混合物が均質でペースト形態になるまで、このプロセスを繰り返す。最終的に、混合物を室温で放置することにより、凝縮水を乾燥する。
【0025】
次の工程において、LCE−PDMS混合物をベースのPDMSと更に混合することにより、LCEとPDMSの重量比は1:1に達する。次にSylgard(登録商標)184硬化剤(Dow Corning)を加えて、硬化剤対ベースのPDMS重量比1:30で混合する。この混合物を真空に置くことにより、閉じ込められた空気を除去する。スパチュラを用いて、この混合物を、ガラス表面へのPDMS付着を防止するTeflonホイルを挿入したガラス管(長さ45mm及び直径5mm)に導入する。次に管の両側をTeflonテープで密封する。
【0026】
試料を、長軸を磁場に平行に向けて磁場(8.9T)に挿入し、300Kで2時間放置する。この間、混合物中のLCE粒子が配向するため、粒子の平均ネマチックダイレクタは、磁場の方向を指す。2時間後、試料を磁場で320K(LCEのN−I転移温度を少なくとも20K下回る)でおよそ12時間硬化させておく。生じるLCE系コンポーネントは、ガラス管により規定された円筒形状を有する。
【0027】
上記説明により調製されるPDLCE複合体に典型的な熱機械的応答曲線は、図7に示される。
【0028】
本発明は、図面及び上記の説明において詳細に図解及び説明されているが、このような図解及び説明は、説明的又は典型的と見なされるべきであり、制限的と見なされるべきでない。本発明は、開示された実施態様に限定されるものではない。図面、開示、及び添付の請求の範囲の検討から、特許請求される発明を実践する当業者には、開示された実施態様への他の変化を理解及び達成することができる。請求の範囲において、「含む(comprising)」という単語は、他の要素又は工程を排除せず、そして不定冠詞「a」又は「an」は、複数形を排除しない。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】