特表2017-515977(P2017-515977A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-515977高温で使用する構成部品を製造するための新たな粉末金属処理
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-515977(P2017-515977A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】高温で使用する構成部品を製造するための新たな粉末金属処理
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20170519BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20170519BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20170519BHJP
   C22C 1/10 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
   B22F3/16
   B22F1/00 T
   B22F1/00 S
   C22C33/02 103A
   C22C1/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-567534(P2016-567534)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月30日
(86)【国際出願番号】SE2015050541
(87)【国際公開番号】WO2015174915
(87)【国際公開日】20151119
(31)【優先権主張番号】1450557-2
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516336758
【氏名又は名称】メタルバリュー エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】METALVALUE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オースロンド,クリステル
【テーマコード(参考)】
4K018
4K020
【Fターム(参考)】
4K018AA24
4K018AB01
4K018AC01
4K018BA13
4K018BB03
4K018BB04
4K018BC12
4K018CA02
4K018CA19
4K018DA11
4K018DA33
4K018EA12
4K018EA19
4K018FA08
4K018KA62
4K018KA63
4K020AA21
4K020BB08
(57)【要約】
粉末から金属部品を製造する方法を提供し、方法は、a)球形金属粉末を提供する工程と、b)凝集金属粉末を得るために、粉末を親水コロイドと水中で混合する工程と、c)圧縮凝集金属粉末部品を得るために、凝集金属粉末を圧縮する工程であって、該部品の構造は開放されている、工程と、d)親水コロイドを除去するために、部品の結合を解放する工程と、e)高速圧縮(HVC)を使用して、好ましくは完全理論密度の95%を超える密度まで部品を圧縮する工程と、f)完成金属部品を得るために、熱間等方圧加圧(HIP)を使用して、好ましくは完全理論密度の99%を超えるまで部品を更に圧縮する工程と、を含み、少なくとも1つの酸化物は、工程c)の前に前記金属粉末に添加され、前記酸化物は、前記金属粉末の溶融点よりも高い溶融点を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状金属粉末から金属部品を製造する方法であって、
a.球状金属粉末を準備する工程と、
b.凝集球状金属粉末を得るために、前記球状粉末を親水コロイドと水中で混合する工程と、
c.圧縮凝集金属粉末部品を得るために、前記凝集球状金属を圧縮する工程であって、前記部品の構造は開放されている、工程と、
d.前記親水コロイドを除去するために、前記部品の結合を解放する工程と、
e.高速圧縮(HVC)を使用して、好ましくは完全理論密度の95%を超える密度まで前記部品を圧縮する工程と、
f.完成金属部品を得るために、HIPを使用して、好ましくは完全理論密度の99%を超えるまで前記部品を更に圧縮する工程と、
を含む方法であって、
工程c)の前に、少なくとも1つの酸化物を前記金属粉末に添加し、前記酸化物は、前記金属粉末の溶融点よりも高い溶融点を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記酸化物は、前記金属粉末よりも少なくとも100℃高い溶融点を有し、前記酸化物は、前記金属粉末の溶融点では安定しており、且つ前記酸化物は、前記金属粉末の溶融点では前記金属粉末と反応しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属は鉄鋼である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属はステンレス鋼である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化物は金属酸化物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化物は、1μmよりも小さい平均粒度を有する粉末の形態である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)において、前記凝集金属粉末を得るために、前記酸化物は、前記粉末及び前記親水コロイドと共に水中で混合される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記部品は、工程e)と工程f)との間の少なくとも1つの追加の工程で処理される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)で準備する前記球形金属粉末の粒度は、完成品の粒度を制御するように選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
酸化物を含み、請求項1〜10のいずれか1項に従って製造される、金属部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、高温特性が改善された金属部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスアトマイズ鉄鋼から製造した完全高密度PM(粉末金属、powder metal)製品が、多くの場合、過酷な環境内、また高温でも優れた挙動を呈することはよく知られている。
【0003】
分散する微粒子、例えば酸化物の影響である、いわゆる「ツェナー・ブレーキ(Zener Brake)」現象のために、ガスアトマイズ粉末から製造され、例えば熱間等方圧加圧(Hot Isostatic Pressing)、即ちHIPにより圧密した完全高密度PM部品が、従来の練鋼と比較すると、クリープ範囲内の特により低温で良好なクリープ特性を呈することもよく知られている。しかし、より高いクリープ温度では、完全高密度PM部品は、通常、劣った特性を呈する。上記ツェナー・ブレーキの効果は、良好なクリープ安定性を与えるが、これは通常、粒度がより細かい構成部品に与えられるためである。より高いクリープ温度では、最適な高いクリープ破断強度の構成部品を得るために、より大きな粒度が必要であることはよく知られている。
【0004】
上記PM鉄鋼に対し粒度を制御する技法はいくつかあり、例えば、粉末を湿式粉砕することと、圧密前に異なる温度で事前焼鈍することとの組合せ、又は例えば熱間等方圧加圧によるものがある。これらの技法の全ては、非常に高価で時間のかかることがわかっている。最終粒度を効率的に制御することが非常に困難であることもわかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従来技術の欠点の少なくとも一部をなくすこと、並びに金属部品の改良した製造方法及び金属部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様では、粉末から金属部品を製造する方法を提供し、該方法は、a)球状金属粉末を準備する工程と、b)凝集金属粉末を得るために、前記粉末を親水コロイドと水中で混合する工程と、c)圧縮凝集金属粉末部品を得るために、前記凝集金属粉末を圧縮する工程であって、前記部品の構造は開放されている、工程と、d)親水コロイドを除去するために、前記部品の結合を解放する工程と、e)高速圧縮(high velocity compaction、HVC)を使用して、好ましくは完全理論密度の95%を超える密度まで前記部品を圧縮する工程と、f)完成金属部品を得るために、熱間等方圧加圧(HIP)を使用して、好ましくは完全理論密度の99%を超えるまで前記部品を更に圧縮する工程と、を含み、工程c)の前に、少なくとも1つの酸化物を金属粉末に添加し、該酸化物は、前記金属粉末の溶融点よりも高い溶融点を有する。
【0007】
第2の態様では、酸化物を含み、上記の方法のあらゆる実施形態により製造される金属部品を提供する。
【0008】
更なる態様及び実施形態は、具体的に参照により本明細書に組み込まれる添付の特許請求の範囲内で規定する。
【0009】
ツェナー・ブレーキ効果と制御された小さな酸化物の添加とを組み合わせることが可能であり、これにより、ガスアトマイズ粉末から製造された完全高密度PM製品に対する新たな選択肢及び用途を与えることが開示される。
【0010】
投入する粒度の特別な制御と酸化物微粒子の添加とを組み合わせた、新たな方法を記載するものであり、酸化物微粒子は、例えばアルミナ(Al)及び/又は酸化ジルコニウム等であり、この方法により、正確な最終粒度の最終構成成分が得られる。構成成分は、ツェナー・ブレーキ効果により、例えば溶接時、粒成長に対し高い抵抗も呈するが、より良好な腐食特性も呈する。
【0011】
粒界は、材料を通る転位の進行を中断する。転位の広がりは、粒界欠陥領域に対する応力場、並びにすべり面及びすべり方向がないこと、並びに粒界にわたる全体の整列のために、妨げられる。従って、粒度を低減することは、強度の向上に共通の方法であり、靭性に何ら犠牲を伴わないことも多い。というのは、より小さな粒は、すべり面の単位面積ごとに、より多くの障害をもたらすためである。この結晶子サイズ−強度の関係は、ホール−ペッチの関係によって得られる。
【0012】
粒界の移動は、クリープ機構の多くにおいて重要な役割を果たす。粒界の移動は、剪断応力が粒界面に作用したときに生じ、粒を摺動させる。このことは、きめ細かい材料が、実際には、より粗い粒と比較すると、特に高温でクリープへの抵抗が乏しいことを意味する。というのは、より小さな粒は、粒界部位により多くの原子を含有するためである。粒界は、粒界が点欠陥の供給源であり点欠陥のたまり場であるために、変形も生じさせる。材料内の空隙は、粒界中に集中する傾向があり、これが危険な程度に生じると、材料は破断するおそれがある。
【0013】
粒界移動の間、律速段階は、2つの隣接し合う粒の間の角度に依存する。小さな角度の転位粒界では、移動速度は、転位の間の空孔拡散に依存する。大きな角度の転位粒界では、移動速度は原子輸送に依存し、これは、単一の原子が収縮粒から成長粒に飛び移ることによる。
【0014】
ステンレス鋼の場合、クリープ特性は粒度に非常に依存することが知られている。低温では、細粒度は、クリープ特性の向上を与える一方で、より高温では、最適なクリープ特性を得るにはより大きな粗粒度が望ましい。多くの場合、一定のクリープ範囲で使用する材料が特定の最小粒度を有することは必須条件である。
【0015】
金属粉末を結合剤と共に水中で凝集させる方法を使用することによって、PM完全高密度鉄鋼及び合金の粒度の制御に対する問題を克服する方法を記載する。
【0016】
最終粒度は、凝集の間に添加される安定な酸化物微粒子の使用によって決定することができる。正確に決められた出発粒度又は粒群を使用することによって、非常に正確に決められた最終粒度を達成することができる。
【0017】
この効果により、高温使用のための合金及び鉄鋼をより高い費用効率で製造することができる。クロムフェライト鋼が候補として挙げられ、クロムフェライト鋼は、優れた抗酸化性を有するが、通常条件では、非常に低いクリープ抵抗しか受けない。
【発明の効果】
【0018】
上記の酸化物の添加により、以下の領域における改善をもたらすことができる:
・高温においても粒成長が制限される
・高温で構成部品を使用する場合、特に応力を受ける場合のクリープ特性が改善される
・動作中、例えば摺動接触中、又は構成部品が侵襲性のある粒子を有する流体若しくは気体に特により高温でさらされる場合、腐食抵抗は良好である。
【0019】
次に、例として、本発明を添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】異なる材料に対する粒度対温度を示すグラフである。
図2】粉末から鉄鋼部品を得るための異なる経路を示す図である。
図3】サンプルの構造体の写真である。
図4】サンプルのクリープ試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を開示し、詳細に説明する前に、本発明は、本明細書で開示する特定の化合物、構成、方法の工程、基材及び材料に限定するものではないことを理解されたい。というのは、そのような化合物、構成、方法の工程、基材及び材料は多少変化することがあるためである。本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明する目的で使用するにすぎず、限定を目的とするものではないことも理解されたい。というのは、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるためである。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する単数形「1つの(“a”、“an”及び“the”)」は、文脈が他の場合を明確に規定しない場合、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0023】
他のことが定義されていない場合、本明細書で使用するあらゆる用語及び科学用語は、本発明に関係する当業者が一般に理解する意味を有することを意図する。
【0024】
第1の態様では、粉末から金属部品を製造する方法を提供し、方法は、a)球状金属粉末を準備する工程と、b)凝集金属粉末を得るために、前記粉末を親水コロイドと水中で混合する工程と、c)圧縮凝集金属粉末部品を得るために、前記凝集金属粉末を圧縮する工程であって、部品の構造は開放されている、工程と、d)親水コロイドを除去するために、部品の結合を解放する工程と、e)高速圧縮(HVC)を使用して、好ましくは完全理論密度の95%を超える密度まで前記部品を圧縮する工程と、f)完成金属部品を得るために、熱間等方圧加圧(HIP)を使用して、好ましくは完全理論密度の99%を超えるまで前記部品を更に圧縮する工程と、を含み、工程c)の前に、少なくとも1つの酸化物を金属粉末に添加し、該酸化物は、前記金属粉末の溶融点よりも高い溶融点を有する。
【0025】
球状金属粉末とは、粉末中の金属粒子のほぼ全てが本質的に球状体として形成されていることを意味する。非球状金属粉末でも処理を実行することができるが、結果は球状金属粉末による処理の方がより良好である。
【0026】
一実施形態では、前記酸化物は、前記金属粉末よりも少なくとも100℃高い溶融点を有する。一実施形態では、前記酸化物は、前記金属粉末よりも少なくとも200℃高い溶融点を有する。一実施形態では、前記酸化物は、前記金属粉末よりも少なくとも300℃高い溶融点を有する。
【0027】
一実施形態では、金属は鉄鋼である。一実施形態では、金属はステンレス鋼である。
【0028】
一実施形態では、酸化物は金属酸化物である。一実施形態では、酸化物は、酸化アルミニウム及び酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0029】
一実施形態では、前記酸化物は、0.2μmよりも小さい平均粒度を有する粉末の形態である。一実施形態では、前記酸化物は、0.3μmよりも小さい平均粒度を有する粉末の形態である。一実施形態では、前記酸化物は、0.5μmよりも小さい平均粒度を有する粉末の形態である。一実施形態では、前記酸化物は、0.7μmよりも小さい平均粒度を有する粉末の形態である。一実施形態では、前記酸化物は、1.0μmよりも小さい平均粒度を有する粉末の形態である。粒度は、不規則な形状をもつ1つの粒子の任意の寸法の最大サイズとして測定される。平均サイズは、全ての粒子に対する平均数として計算される。従って、平均粒度が0.3μmよりも小さい一実施形態では、数個の粒子は、0.3μmを超えるサイズを有する場合がある一方で、残りの粒子は0.3μm未満のサイズを有し、この結果、平均は0.3μm未満である。
【0030】
一実施形態では、凝集金属粉末を得るために、工程b)において、酸化物を粉末及び親水コロイドと共に水中で混合する。
【0031】
工程c)では、第1の圧縮は、開放構造を与えるあらゆる方法によって実施することができ、後続の結合解放/潤滑剤除工程において結合剤を除去できるようにする。そのような第1の圧縮工程の後、密度は、通常、完全理論密度の90%未満となるはずであり、開放構造が得られ、部品を加熱すると、部品から出た親水コロイドの移送を可能にする。
【0032】
一実施形態では、工程f)の後、完成金属部品は、完全理論密度の99.5%を超える密度を得る。一実施形態では、工程f)の後、完成金属部品は、完全理論密度の99.0%を超える密度を得る。工程f)のHIPは、一実施形態では、容器を一切用いずに実施し、一代替実施形態では、容器を用いて実施する。
【0033】
一実施形態では、部品は、工程e)と工程f)との間の少なくとも1つの工程で処理し、そのような処理の例には、限定はしないが、加熱、焼結、及びHVCによる再突当てを含む。一実施形態では、処理は加熱である。
【0034】
多結晶材料は、様々なサイズ及び配向をもつ多数の結晶子から構成される固体である。結晶子は、粒とも呼ばれる。結晶子は、小さく、更には顕微鏡でしか見えない結晶であり、材料を冷却する間に生成される。一実施形態では、工程a)で準備する球状金属粉末の粒度は、完成品の粒度を制御するように選択される。例えば、粗粒度の球状金属粉末を用いて出発することによって、所望の粗粒度の完成品を得ることができる。このことは、高温で使用する材料では特に望ましい。
【0035】
第2の態様では、酸化物を含み、上記の方法のあらゆる実施形態により製造される金属部品を提供する。
【0036】
処理における必須の工程は、HVC圧縮工程の使用であり、最終圧密の間、容器を用いないHIPを可能にするのに十分に高い密度に達するようにする。また、球状粒に対する添加微粒子の微細な分散のために、その構造は、HVC工程での変形を受けることができるように十分に延性であることが明らかであると思われる。
【0037】
一般に、例えばステンレス鋼の場合、クリープ特性は、より細粒度の高いクリープ範囲では、より低温で向上する一方で、より高いクリープ温度では、より大きな粗粒度が、細粒度のクリープ特性よりも良好なクリープ特性を与えることが知られている。
【0038】
選択した試験材料は、ステンレス鋼316Lであった。この合金は、クリープ適用例でも使用され、最高のクリープ特性を呈するように、材料が最小粒度を有することを必要とすることが多い。
【0039】
分析は、約125PPMの酸素含量を示す。酸化物、ほとんどの場合、高い溶融点を有するマンガン合金、アルミニウム合金及び他の合金、のこの低い濃度であっても、その濃度及び形態は、粒成長に強い影響を及ぼすのに十分である。通常の練鋼は、正確に処理された約30〜70PPMの酸素含量を有する。本発明の方法では、酸素含量は、(正確な低露点を使用した場合)好ましくは低下させ、この差は、酸素含量に関して非常にわずかなものである。
【0040】
本発明に従って製造した一片の316L、及び同じ分析を有する従来の練鋼部品を熱処理にかけた。図1を参照。この差を見ることは注目に値する。本発明による材料は、1300℃で依然として約ASTM4〜5の粒度を有していた一方で、従来の部品は、強力な粒成長を示した。従来の材料の酸素含量は、45PPMであった。
【0041】
この差の理由は、酸化物の数及び異なるサイズである。ツェナー・ブレーキの式では、酸化物がより微細であるほど、ツェナー・ブレーキ構造はより安定するとある。以下の式中、f=部品、即ち粒群の数である。
【0042】
【表1】
【0043】
酸化物を比較した場合、PM酸化物(即ち金属粉末中に既に存在する酸化物)は、非常に小さく、一般には1ミクロン未満のサイズである。これらの酸化物が同じ酸素含量で合計するとより多いという事実は、この式の効果に従っても得られる。
【0044】
316Lのための通常経路を図2に示す。凝集球状粉末における「通常粒度」について述べる際、粒度が通常22μmであるMIM処理と比較すると、典型的には150〜300μmの初期粒度が観察される。主要な要素は、圧縮工程HVCであり、この工程では、最終高密度化の前に、316Lの場合、通常、97%T.D.にするところ、密度をT.D.の最小95%にする。
【0045】
水素中の最終焼結は、通常、純水素中、1360〜1385℃で行う。ここで、密度は、T.D.の99%を十分に上回る。最終焼結の代替形態として、容器を用いないHIPを約1150℃で行うと、原理上、完全密度がもたらされる。
【0046】
本発明による316L材料を、クリープ特性に関して、クリープ範囲の下限値である600℃で試験した。ここで、クリープ特性は、通常、従来の材料よりも良好であり、これは、おそらく細粒度と微細な酸化物の分散効果との複合効果によるものである。しかし、より高いクリープ温度では、従来の316Lが良好なクリープ特性を有した。というのは、従来の316Lは、より大きな粒度を得るのが比較的容易であり、それによりこの効果が得られるためである。本発明による材料を図1に示す。粒度を増大させようとすると、粒度は、非常に不均一で予測不可能である。
【0047】
高温特性を改善する本発明の方法は、酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウム等、高温で安定した酸化物である酸化物微粒子を添加することである。
【0048】
<0.3μmの粒度を有するAl微粉末を添加することを決定した。水溶性結合剤を使用する本発明の処理は、こうした微細酸化物中で混合する際に理想的である。
【0049】
以下の粒度を金属粉末に使用した:
・0〜150μm
・0〜22μm
・0〜75μm
・150〜250μm
・250〜500μm。
【0050】
粒度は、金属粉末の凝集前に測定する。
【0051】
これらの粒度のそれぞれに対し、凝集中、Al微粉末(<0.3μm)を添加した。0.5重量%及び1重量%である2つの量の酸化アルミニウムを各粒度に対し添加した。この技法のために、凝集時、本発明の凝集技法は、この種の微粒子の添加を容易にする。酸化物の微細さのために、微粒子は、湿潤しており、粉末粒子の表面は、更に最も微細である。
【0052】
各混合物一式の圧縮体は図2に従って作製した。最終高密度化は、1385℃の高温での焼結により行った。通常、316Lの場合、完全な高密度化が得られ、高速圧縮、HVCの後の約96%密度から、この高温の焼結によってT.D.の+99.5%に達する。
【0053】
しかし、この場合、焼結の効果は検出されなかった。実際には、高い焼結温度にもかかわらず構成要素は変化していなかった。当然、この影響は、酸化物微粒子の遮断効果の結果である。粒子は元の粉末粒子の表面上に一層分散したため、原理上、元の粉末粒が見え、検出可能であった。
【0054】
従って、新たな手法を行うことを決定した。各工程では、パラメータを最適化し、これには、最終HVC圧縮工程で、部品を200℃まで予熱することを含んだ。得られた部品は、HVC後、97.2%T.D.に達した。
【0055】
この密度レベルでは、構成部品は閉鎖多孔性を示す。しかし、構造の完全閉鎖を保証するために、高速焼結を1385℃で行った。
【0056】
この後、部品を1150℃で容器を用いないHIPサイクルにかけた。この作業後の密度は、Archimedes及び顕微鏡で測定すると原理上100%密度であった。
【0057】
粒度及び構造を測定すると、上記粒群のそれぞれに対して、粒度は、元の粉末粒群の出発サイズを反映したことがわかった。以下の表を参照。
【0058】
【表2】
【0059】
本発明の処理後の粒群a)の構造を図3に示す。
【0060】
上記の構成成分を1385℃で焼鈍試験にかけた。原則として構造は粒度に関して変化していなかった。同時に、従来の材料を同様に処理したものは、過剰な粒成長を示し、測定した粒度は、ASTM0及び更にはASTM00であった。
【0061】
酸化アルミニウム及び/又は酸化ジルコニウム等の安定した酸化物を添加した場合、上記の方法により、最終粒度を非常に細かく制御できることが明らかであると思われる。
【0062】
本発明の316Lと従来法の316Lを同じ粒度で比較した場合、低いクリープ温度では本発明の構成成分に対してより良好な性能を測定することができる。図4を参照。このことは、従来の材料とは反対に、常に小さいサイズ、多くは直径1μm未満である通常体積の酸化物が存在する影響によるものである。言い換えれば、この効果により上述のツェナー・ブレーキが得られる。また、この効果のために、この種の材料をより大きな粗粒度まで制御して焼鈍することは困難であり、より大きな粗粒度は、高いクリープ温度で望まれるものである。
【0063】
親水コロイドは、コロイド粒子が水中に分散した親水性ポリマーであるコロイド系として定義される。一実施形態では、コロイドは熱可逆性親水コロイドである。本発明における親水性ポリマーの例は、限定はしないが、ゼラチンを含む。一実施形態では、凝集金属粉末中の結合剤の量は、1.5重量%を超えない。
【0064】
本発明の他の特徴及び使用法並びに関連するこれらの利点は、明細書及び実施例を読めば当業者には明らかであろう。
【0065】
本発明は、本明細書で示した特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。実施形態は、説明の目的で提供するものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。というのは、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその等価物によってのみ限定されるためである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】