(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-515978(P2017-515978A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】ヒ素含有及び/又はアンチモン含有硫化銅濃縮物から銅を回収するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C22B 15/00 20060101AFI20170519BHJP
C22B 3/04 20060101ALI20170519BHJP
C22B 3/08 20060101ALI20170519BHJP
C22B 30/02 20060101ALI20170519BHJP
C22B 30/04 20060101ALI20170519BHJP
【FI】
C22B15/00 105
C22B3/04
C22B3/08
C22B30/02
C22B30/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2016-567744(P2016-567744)
(86)(22)【出願日】2015年4月16日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月6日
(86)【国際出願番号】CA2015050317
(87)【国際公開番号】WO2015172241
(87)【国際公開日】20151119
(31)【優先権主張番号】14/276,692
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516338361
【氏名又は名称】テック リソーシズ リミティド
(71)【出願人】
【識別番号】516338383
【氏名又は名称】アウルビス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー サロモン−ドゥ−フライドバーグ
(72)【発明者】
【氏名】ヘエ ムン ジャン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA03
4K001AA09
4K001AA21
4K001BA03
4K001CA01
4K001CA06
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4K001DB10
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4K001DB22
4K001DB23
4K001DB28
4K001DB34
4K001JA01
(57)【要約】
ヒ素及びアンチモンの少なくとも1種を含有する硫化銅鉱物を含む供給材料から銅を抽出するためのプロセスが提供される。プロセスは供給材料を微粉砕する工程と、微粉砕をした後、供給材料を界面活性剤及びハロゲンの存在下で圧力酸化して、製品スラリーを作り出す工程とを含む。プロセスはまた、製品スラリーを液体/固体分離して、圧力酸化濾過液並びにヒ素化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を含む固形物を得る工程と、圧力酸化濾過液から銅を回収する工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒ素及びアンチモンの少なくとも1種を含有する硫化銅鉱物を含む供給材料から銅を抽出するためのプロセスであって、
前記供給材料を微粉砕する工程と、
微粉砕をした後、前記供給材料を界面活性剤及びハロゲンの存在下で圧力酸化して、製品スラリーを作り出す工程と、
前記製品スラリーを液体/固体分離して、圧力酸化濾過液並びにヒ素化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を含む固形物を得る工程と、
前記圧力酸化濾過液から銅を回収する工程とを含む、プロセス。
【請求項2】
前記圧力酸化濾過液から銅を回収した後、前記圧力酸化濾過液の一部を蒸発する工程と、蒸発をした後、前記圧力酸化濾過液の一部を圧力酸化に再利用する工程とを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記固形物がまた銅を含み、液体/固体分離をした後、前記固形物が酸浸出されて前記銅の少なくとも一部を溶解して、銅溶液並びにヒ素化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を含む固形残留物を作り出して、前記銅が前記銅溶液からさらに回収される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
微粉砕する工程が、前記供給材料を約5〜約15μmのp80に粉砕することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
微粉砕する工程が、前記供給材料を約7〜約10μmのp80に粉砕することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記圧力酸化において、前記界面活性剤が、約1〜10kg/t供給材料の量で加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記界面活性剤が、リグニンスルホン酸塩、ケブラコ、アニリン、o−フェニレンジアミンの少なくとも1種を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記界面活性剤が、1.5〜3kg/t濃縮物の量のo−フェニレンジアミンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ハロゲンが塩化物であり、前記圧力酸化が、約3〜20g/Lの塩化物の存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ハロゲンが塩化物であり、前記圧力酸化が、約10〜12g/Lの塩化物の存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記圧力酸化が、約140〜約160℃の温度で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記圧力酸化が、約60〜約120分間の保持時間で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記圧力酸化が、約90分間の保持時間で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記圧力酸化が、約700〜約1400kPaの酸素分圧で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記圧力酸化が、前記供給材料中の硫黄の硫酸塩への酸化を制限するのに十分な量で硫酸を含む供給酸の存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記供給材料、界面活性剤、及びハロゲンを含み、再利用残留物を含まない、圧力酸化への複合供給物中のヒ素:鉄の比が、0.1未満:1であるか又は0.7:1〜1.3:1である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記圧力酸化が、5kg/t以下のヨウ化カリウムの存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記圧力酸化が、約1kg/t以下のヨウ化カリウムの存在下で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記液体/固体分離から得られた前記固形物の一部が、約0.1:1〜1.5:1の固形物:新規濃縮物の比で、前記圧力酸化に再利用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記固形物:新規濃縮物の比が約1:1である、請求項19に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、大量の銅−ヒ素−硫化鉱物を含有する金属濃縮物の湿式精錬処理に関連する。
【背景技術】
【0002】
低不純物の銅濃縮物は徐々に使い果たされ、すぐに利用できるものでなくなったため、ヒ素含有銅鉱体により大きな注目が向けられる。これは、精錬業者によって購入される平均的な銅濃縮物中のヒ素レベルを増加させる結果となる。時間が経つと共に、ヒ素レベルはさらにより高いレベルに上昇すると見込まれる。ヒ素低減技術に関する現在の限界のため、精錬業者は、急速に近づいている銅濃縮物中の平均的なヒ素レベルの上限を有する。
【0003】
幾つかの銅濃縮物中のヒ素は、銅からのヒ素の物理的分離が可能である鉱物の硫ヒ鉄鉱(FeAsS)中で発見される。しかしながら、より典型的には、硫化銅濃縮物中のヒ素は以下の鉱物、
−硫ヒ銅鉱 Cu
3AsS
4
−ヒ四面銅鉱 Cu
12As
4S
13
−安四面銅鉱 Cu
12Sb
4S
13
の中に主に存在する。
【0004】
これらの鉱物構造内において、銅の一部を鉄で置換すること及びアンチモンをヒ素で置換することは一般的である。これらの化合物は、両元素が同一の化学格子構造内で結合されるため、銅からのヒ素の物理的分離が可能でないことを示す。浸出(leaching)のような化学的分離は銅からヒ素を分離するが、硫ヒ銅鉱及びヒ四面銅鉱の両方は化学的攻撃に耐性を示す。
【0005】
多くの湿式精錬プロセスが、主に黄銅鉱含有銅濃縮物である濃縮物を処理するために発展してきた。これらの湿式精錬プロセスとしては、例えば、
低温プロセス(<110℃):例えば、アルビオン(Albion)、ガルバノックス(Galvanox)、及びインテック(INTEC)プロセス、
中温プロセス(130〜170℃):アングロアメリカン(Anglo American)−UBCプロセス、CESL銅プロセス、ダイナテック(Dynatec)プロセス、及びフリーポート・マクモラン(Freeport McMoran)(フェルプスドッジ(Phelps Dodge))プロセス、
高温プロセス(>200℃):総圧酸化及びPLATSOLプロセス
が挙げられる。
【0006】
スルホ塩含有銅濃縮物に適用される場合は、上記プロセスの全てが欠点に悩まされる。低温プロセスにおいては、銅(Cu)を含有するヒ素(As)及びアンチモン(Sb)スルホ鉱物(sulphominerals)の浸出速度は、銅含有黄銅鉱物に対するものより遅い。その結果として、浸出時間が非実際的に長くなり、スルホ塩鉱物からの不完全な銅回収が同時に起こる。中温プロセスについては、特定の条件下での銅の回収も同様に悪化する。
【0007】
高温プロセスの場合においては、良好な銅浸出が妥当な時間の枠内で達成可能である。しかしながら、酸を形成するほぼ全ての硫黄(S)酸化が、作り出された追加の酸のためにより多くの中和剤を要するコストのかかるプロセスをもたらし、特別な保管を要する大量の残留物を作り出す。
【0008】
したがって、上で言及したそれぞれの湿式精錬プロセスにおいて、スルホ塩含有銅濃縮物からの銅の回収は非経済的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ヒ素を含有する硫化銅濃縮物からの銅の回収と、アンチモンを含有する硫化銅濃縮物からの銅の回収とにおける改善が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様によれば、スルホ塩含有Cu濃縮物からのCu抽出は、低温プロセス及び中温プロセスと比較するとより高い速度で達成され、一方で、高温プロセスと比較すると、硫化鉱物が硫酸塩の形態に酸化されるのが明らかに減る。その結果として、濃縮物のような供給材料を処理して黄銅鉱含有銅濃縮物から銅を回収することはより経済的である。
【0011】
本発明の1つの態様によれば、ヒ素及びアンチモンの少なくとも1種を含有する硫化銅濃縮物を含む供給材料から銅を抽出するためのプロセスが提供される。そのプロセスは、供給材料を微粉砕する工程と、微粉砕をした後に、供給材料を界面活性剤及びハロゲンの存在下で圧力酸化して、製品スラリーを作り出す工程とを含む。そのプロセスはまた、製品スラリーを液体/固体分離して、圧力酸化濾過液並びにヒ素化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を含む固形物を得る工程と、圧力酸化濾過液から銅を回収する工程とを含む。
【0012】
そのプロセスは、それらから銅を回収した後に、圧力酸化濾過液の一部を蒸発させる工程と、蒸発をした後に、圧力酸化濾過液の一部を圧力酸化に再利用する工程とを含むことができる。
【0013】
液体/固体分離からの固形物はまた銅を含み、液体/固体分離をした後、固形物が酸性浸出されて少なくとも一部の銅を溶解し、銅溶液並びにヒ素化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を含む固形残留物を製造することができる。銅は、銅溶液からさらに回収される。
【0014】
供給材料を、約5μm〜約15μmのp80に微粉砕することができる。供給材料を、約7μm〜約10μmのp80に微粉砕することができる。
【0015】
圧力酸化における界面活性剤は、約1kg/t濃縮物〜10kg/t濃縮物の量で加えることができ、リグニンスルホン酸塩、ケブラコ、アニリン、o−フェニレンジアミンの少なくとも1種を含むことができる。界面活性剤は1.5〜3kg/t濃縮物の量のo−フェニレンジアミンであることができる。
【0016】
請求項1に係るプロセスでは、ハロゲンが約3〜20g/L塩化物の濃度の塩化物であることができる。ハロゲンは約10〜12g/L塩化物の濃度の塩化物であることができる。
【0017】
圧力酸化は約140℃〜約160℃の温度で行うことができる。圧力酸化は約60分間〜約120分間の保持時間で行うことができる。圧力酸化は約700〜約1400kPaの酸素部分圧で行うことができる。圧力酸化は、供給材料中の硫黄の硫酸塩への酸化を制限するのに十分な量で、硫酸を含む供給酸の存在下で行うことができる。
【0018】
供給材料、界面活性剤、及びハロゲンを含み、再利用残留物を含まない、圧力酸化への複合供給物中のヒ素:鉄の比は、0.1未満:1であるか又は0.7:1〜1.3:1であることができる。
【0019】
圧力酸化は、5kg/t以下のヨウ化カリウムの存在下で行うことができる。
【0020】
液体/固体分離から得られた固形物の一部は、約0.1:1〜1.5:1の固形物:新規濃縮物の比で、圧力酸化に再利用することができる。
【0021】
本発明の実施形態を、図面及び以下の説明に関連して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に従って、ヒ素含有又はアンチモン含有硫化物濃縮物から銅を回収するプロセスを図示した簡易フローチャートである。
【
図2】実施形態に従って、銅の回収についてのプロセスフローを図示する。
【
図3】異なるヒ素:鉄比についての、オートクレーブ中の溶液へ移送する(deport)ヒ素の割合のグラフを示す。
【
図4】濃縮物の供給材料を微粉砕するのに利用されるエネルギーのグラフである。
【
図5】供給溶液中の異なる塩化物レベルについての銅回収を示すグラフである。
【
図6】銅抽出への界面活性剤投与量の影響を示すグラフである。
【
図7】銅抽出への異なる界面活性剤及び投与量の影響を示すグラフである。
【
図8】異なる圧力及び温度で行われる圧力酸化の間での酸素消費を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面の単純化と明確化のために、参照番号が、関連する又は類似する部材を示すために図面の中で繰り返されることがある。番号の詳細は、本明細書で説明する例の理解を提供するために示される。例は、これらの詳細なしで実行されることがある。他の例においては、良く知られた方法、手順及び成分を、説明する例を不明瞭にするのを避けるために詳細に説明しない。その説明は本明細書で説明する例の範囲を限定するものとしてみなされるべきでない。
【0024】
本開示は、一般的に、ヒ素及びアンチモンの少なくとも1種を含有する硫化銅鉱物を含む供給材料から銅を抽出するためのプロセスに関連する。プロセスは、供給材料を微粉砕する工程と、硫黄分散剤として利用される界面活性剤及び溶出剤(lixiviant)として利用されるハロゲンの存在下で、微破砕した供給材料を圧力酸化して製品スラリーを製造する工程とを含む。プロセスはまた、製品スラリーを液体/固体分離して、圧力酸化濾過液並びにヒ素化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を含む固形物を得る工程を含む。銅は濾過液の一部を再利用する前に、圧力酸化濾過液から回収される。
【0025】
本開示の全体にわたって、アンチモンより多くのヒ素を含有する銅鉱物を言及するために、ヒ素含有銅鉱物が参照される。しかしながら、ヒ素含有銅鉱物はまたいくらかのアンチモンを含む。同様に、アンチモン含有という用語は、ヒ素より多くのアンチモンを含有する銅鉱物を言い表す。さらに、プロセスはヒ素含有銅鉱物に関連して説明されるが、本明細書で説明するプロセスを利用する場合、アンチモンと同様の化学的性質であるため、一般的に、アンチモン含有銅鉱物の処理に対して同様の結果が期待される。
【0026】
図1について言及すると、ヒ素含有又はアンチモン含有硫化物濃縮物から銅を回収するためのプロセスを図示したフローチャートが、番号100によって一般的に示される。プロセスは示され説明されるものより多い又は少ないプロセスを含有することができ、プロセスの一部を異なる順序で行うことができる。
【0027】
プロセス100は、硫ヒ銅鉱及びヒ四面銅鉱のような、耐火性のヒ素含有銅鉱物から銅を抽出するために行われる。プロセスは、処理用の安定した形態でオートクレーブ内にヒ素の沈殿物と、比較的低い硫黄酸化とをもたらすことがある。オートクレーブ内のヒ素沈殿物は、一般的に、より安定で、したがってより望ましいヒ素残留物を作り出す。より低い硫黄酸化は、酸素及び中和剤のような試薬の消費、並びに、酸素プラントのようなプラント設備のサイズ及びオートクレーブのサイズを減らし、それは硫黄酸化の程度に強く影響を受ける発熱事情の影響を受ける。
【0028】
ヒ素含有硫化銅鉱物及びアンチモン含有硫化銅鉱物の1種又は両方を含む濃縮物を含むことがある供給材料は、102で微粉砕されて銅抽出を促進する。供給材料はまた、例えば、黄鉄鉱及び黄銅鉱のような他の鉱物を含む。次いで、微粉砕した供給材料は、104において上昇した温度で、オートクレーブ中での圧力酸化によって処理される。104での圧力酸化は、界面活性剤及びハロゲン(例えば、塩化物又は臭化物)の存在下で行われ、硫化物含有鉱物が酸化されて製品スラリーを作り出す。銅のバルクは溶液に移送され、ヒ素の過半数が溶解して、その後酸化鉄マトリクス内に沈殿する。
【0029】
オートクレーブから排出された製品スラリーは減圧され、冷却され、106で液体/固体分離がなされ、廃棄されることがあるか又は貴金属分の回収のためにその後処理されることがあるヒ素及びアンチモンの1種又は両方を含む洗浄鉄リッチ残留物を作り出す。106での液体/固体分離はまた、銅リッチ浸出液とも称される銅リッチ濾過液を作り出し、108で銅溶媒抽出が行われ、循環する有機相上に銅が投入されて、次いで、循環する有機相からストリッピングされる。部分予備中和が酸レベルを下げるために利用されて、効率的な溶媒抽出作業を維持することができる。ストリッピングされ精製された銅は銅電解採取110によって回収される。
【0030】
108での溶媒抽出は、酸を濾過液中の銅と交換する。得られた水性ラフィネートは104での圧力酸化に再利用され、追加の銅を浸出する。供給材料中に存在するいくらかの硫黄がオートクレーブ内で硫酸に変換されるため、ラフィネート流の一部が中和のために転用され、オートクレーブ中で作り出された過剰な酸が112で中和される(例えば、石灰岩を使って石膏を作り出す)。
【0031】
亜鉛のような易溶性不純物は、例えば、プロセスから抽気され、そのような不純物の濃度が許容できないレベルに増えるのを防ぐ。不純物を抽気するために、中和ラフィネート流の一部が114での第2溶媒抽出工程に向けられて、抽気溶液中の銅が経済的に許容できる低レベルまで除去される。この銅を抽出する有機相は108での第1溶媒抽出に戻されて、銅を回収して銅電解採取工程に送られる。次いで、銅が使い果たされた水性流のpHが、例えば、石灰を使用して増加されて、116での不純物の沈殿を容易にする。116でのこの沈殿及びその後の液体/固体分離は抽気残留物を作り出す。製品溶液は再利用に適しており、106での上流の液体/固体分離での鉄残留物の洗浄のために使用される。
【0032】
図2について言及すると、銅の回収についてのプロセスフローが図示される。プロセスは示され説明されるものより多い又は少ないプロセスを含有することができ、プロセスの一部は異なる順序で行うことができる。
【0033】
濃縮物及び水を含む供給材料220は、一般的に、プロセスの始めでは周辺温度、すなわち、気候に従って5℃〜30℃である。
【0034】
供給材料220は102で微粉砕が行われる。102での微粉砕は超微粉砕であり、約80%の粒子が約5〜約15ミクロンのサイズであり、ごく少量の粒子が20ミクロン超のサイズであるように粒子サイズを小さくする。好ましくは、超微粉砕は、約80%の粒子が約7〜約10ミクロンのサイズであるように粒子サイズを小さくする。微粉砕が好ましいが、エネルギー消費におけるコストがかかり、それは、初期濃縮物のサイズに応じて、そのような微粉砕に対し約60〜80kWh/tである。
【0035】
狙いの粉砕サイズは、濃縮物鉱物学と、未処理の供給材料の初期粒子サイズとの関数である。追加のエネルギーがより微細な破砕サイズのために利用され、増加した銅抽出が銅−ヒ素鉱物から実現される。エネルギー必要量は、より微細な破砕になるにつれ指数関数的に増加する。実際には、約7〜約10ミクロンのP80未満にすることについては特定の利益は存在しない。P80の値は、最も粗い粒子の割合を示している。オートクレーブ中での圧力酸化104に配分された時間内で浸出するために、最も粗い粒子の割合を低く保つことが好ましい。
【0036】
微粉砕した濃縮物及び水はスラリー222を形成して、圧力酸化用の圧力容器に供給される。スラリーは約60〜約65%の固形物であることができる。スラリー222は、オートクレーブ中で水性供給溶液224と組み合わさり、例えば、10〜15%の固形物のオートクレーブへの複合供給物を提供する。
【0037】
次に、ヒ素含有硫化銅供給物の圧力酸化が104で行われる。104での圧力酸化では、硫化銅鉱物と、存在する場合は、他の卑金属(例えば、Ni、Co、及びZn)の他の硫化鉱物とを酸化する。酸化は温和な条件下で起こり、硫化鉱物に存在する金属、例えば、Cu、Fe、Ni、Co、及びZnを、それぞれCu++、Fe+++、Ni++、Co++、Zn++に酸化して、硫黄の硫酸塩への酸化を抑制する。
【0038】
圧力酸化104は、酸素(例えば、高純度酸素)を利用して、撹拌圧力容器(例えば、オートクレーブ)において、上昇した温度及び圧力の条件下で起こる。オートクレーブは、通常同等である、すなわち、円形断面のその他の2つの軸より長い水平軸を持つ水平設計であることができる。オートクレーブは、供給端部から排出端部までのスラリーのプラグ流に接近するように、堰で分離された幾つかの区画を有することができる。約3〜6の区画が適切である。第1区画は残りの区画より大きく、第1区画でのより長い保持時間を可能にすることによって、オートクレーブ内の熱平衡を容易にすることができ、したがって、より多くの熱が生成する。
【0039】
圧力酸化104の間で起こる反応は発熱反応であり、作られた熱は、所望の反応が高速で起こるのを容易にする、すなわち、約1〜2時間内で濃縮物のほとんど完全な反応を達成する最適温度又はその温度の近くに上げるのに十分である温度上昇を生じさせるように計算される。
【0040】
反応が進むにつれて、酸素が消費され、補給されない場合は酸素の分圧は急激に減少して、それは好ましい短い保持時間における圧力酸化のために望ましくない。したがって、酸素は継続的にオートクレーブに供給されて狙いの圧力での圧力を維持する。オートクレーブ中の全圧は酸素と、蒸気圧と、少量の他のガス、例えば、非収縮物(供給酸素により導入されることがある窒素及びアルゴン)、並びに、炭酸塩から生じた二酸化炭素、濃縮物中の有機炭素、及び界面活性剤の段階的劣化によって与えられた圧力との合計である。実際には、供給酸素は約93%のみの純度であることができ、残りは非収縮物である。
【0041】
オートクレーブ中のガス相中の酸素の割合は約80%酸素(乾燥基準)で保たれる。酸素割合が80%より極めて少ない場合、オートクレーブ中で起こる反応が減速される。圧力酸化104の継続的作業の間、酸素割合は減少し、反応しないその他のガスがゆっくりとガス相中に加えられるため、約80%以上で酸素割合を維持するための措置がなされない限り、それらの増大をもたらす。したがって、供給酸素からの窒素及びアルゴンのような非収縮性ガスと、銅圧縮物中の炭酸塩の反応からの二酸化炭素とはまた、この増大を制限する措置がなされない限り、ガス相中に蓄積する。
【0042】
ガス相中の酸素割合を概ね一定に保つために、酸素がオートクレーブ中に供給され、ガスの少量の抽気は、非収縮性ガス(例えば、窒素及びアルゴン、同様に二酸化炭素)の増大を減少するために継続的に除去される。典型的に、容量ベースにおいて約10〜20%の供給酸素流が抽気されて、オートクレーブから排出される。ガスの抽気は酸素の減少をもたらし、したがって、低く保たれる。したがって、約80%以上の酸素と、同時に抽気ガスとの割合を保つという合理的な妥協がなされ、それは供給酸素の低減を引き起こす。
【0043】
複合スラリーと称される、水溶液が加わった初期スラリー222はオートクレーブ中で圧力酸化104が行われる。プロセスは、水溶液と初期スラリー222とが継続的にオートクレーブの供給端部に両方供給されるように継続的に行われることがあり、製品スラリーはオートクレーブのもう1つの端部から継続的に排出されて、オートクレーブ中で反応する略一定容量のスラリーを維持する。
【0044】
圧力酸化104の間での、オートクレーブ中の適切な条件は、
約5μm〜15μmのP80を持つ固形物粉砕サイズ;
複合スラリー中の約100g/L未満の固形分〜約200g/Lの固形分(初期スラリー222を水溶液と混合した後のスラリーのリットルあたりの固形物のグラム);
約1.5〜10kg/tの界面活性剤投与量;
約3〜20g/Lの塩化物投与量;
約140℃〜159℃の範囲の温度;
約1000kPa〜約1600kPaの全圧(蒸気圧及び酸素圧、並びに、窒素、アルゴン及び二酸化炭素のような他のガスの圧力を含む);
約700kPa〜約1400kPaの酸素分圧、及び
約60〜120分間のオートクレーブ中での保持時間
である。得られた圧力酸化の排出スラリーは約10〜40g/Lの酸を有することがある。
【0045】
圧力酸化の供給水溶液は、一般的に、プロセスの他の部分から再利用され、約5〜20g/lのCuと、4〜25g/lのClと、遊離酸と、一般的に約10〜40g/lのH
2SO
4とを含む。開始時に、十分な塩酸を加えて好ましい塩化物濃度を得る。水性供給溶液はまた、溶液中の他の成分を維持するために硫酸塩を含む。したがって、水性又は供給酸は銅、硫酸塩、塩化物、及び水素イオンを組み合わせた混合物である。その他の成分が、溶液及び少量の不純物(例えば、Fe、Mg、Znなど)の固有の蓄積の再利用のために存在することがある。
【0046】
本明細書においては、塩化物の使用に対して参照がなされる。しかしながら、塩化物は別のハロゲン化物(例えば、臭化物)で置換することができることが理解される。圧力酸化104における塩化物(又は臭化物)は、硫ヒ銅鉱若しくはヒ四面銅鉱又は硫ヒ銅鉱とヒ四面銅鉱との両方の浸出を促進するためと、不必要な硫黄酸化を減少するためとに利用される。塩化物は水溶液中で約3〜20g/LのClの範囲で利用される。20g/LのClの上限を超えると、銅抽出が減少すると考えられる。3g/LのClの下限値を下回ると、硫黄酸化が悪化することがあり、銅抽出がまた悪化することがある。約10〜12g/LのClの範囲において、条件はCu抽出及び少ない硫黄酸化の結果をもたらすように考えられる。
【0047】
ヒ素含有硫化銅鉱物は、オートクレーブ中で圧力酸化を受ける。硫ヒ銅鉱(Cu
3AsS
4)及びヒ四面銅鉱(Cu
12As
4S
13)に対する反応は以下のとおりであることができる。
【数1】
【数2】
【0048】
銅及びヒ素の両方は、それぞれ硫酸塩及びヒ酸塩として可溶化される。反応(1)及び(2)で示されるように、硫ヒ銅鉱及びヒ四面銅鉱の両方が、鉱物中に含有する100%未満の硫黄を元素形態の硫黄に変える。式(1)及び(2)で示されるように、硫黄酸化は避けることができなくて、これは実験室試験データで確認される。上の反応は、圧力酸化104の間での全ての浸出反応は酸の消費であることを示唆する。しかしながら、ヒ素が沈殿する場合、酸は再生成される。
【数3】
【0049】
反応(3)が起こるためには、鉄が利用されて、鉄は黄鉄鉱(FeS
2)又は黄銅鉱(CuFeS
2)のいずれかとして銅濃縮物中に存在する。実験結果は、酸素が50%に近い硫黄を酸化するのに消費されることを示す。したがって、更なる反応が硫黄及び酸素を用いて起こる。
【数4】
【0050】
低酸(low acid)の条件がオートクレーブ中で存在する場合は、反応(4)が好まれる。より高い酸のレベルがオートクレーブ中で存在する場合は、反応(4)は部分的に抑制される。
【0051】
鉄(Fe)鉱物の黄鉄鉱及び磁硫鉄鉱の場合では、好ましい反応は、
【数5】
【数6】
である。
【0052】
オートクレーブ中でのヒ素の沈殿
ヒ素はオートクレーブ中で容易に溶解しない。その代わりに、可溶化したヒ素の一部は、圧力酸化104の間に、オートクレーブ中に沈殿する。有利には、ヒ素は、ヒ素含有残留物の最も環境的に安定な形態として広く認識されるスコロダイトとして沈殿する。
【数7】
【0053】
ヒ素:鉄比(As:Fe)は圧力酸化104の終わりで溶液中に残るヒ素の量に影響を与える。低いAs:Fe比(As:Fe<0.1)では、オートクレーブ中でのヒ素の沈殿はほぼ完了する。高いAs:Fe比(0.7〜約1.3のAs:Fe)では、オートクレーブ中でのヒ素の沈殿の程度は高い。1.3を超えるAs:Fe比では、スコロダイト相を形成するには不十分なFeが存在して、Asが溶液中に残る。
【0054】
ヒ素がスコロダイトとして沈殿することがある場合、鉄が供給材料中に存在しなければならない。鉄がほとんど存在しない又は鉄が存在しない場合は、ヒ酸銅が全体の銅抽出を意図せず減少して溶液から沈殿することがある。利用可能なヒ素でスコロダイトを作るのに少なくとも十分な鉄が好ましい。驚くべきことに、約0.1〜約0.7のAs:Fe比の範囲では、スコロダイトを沈殿するのに利用可能なFeが十分以上あるにもかかわらず、溶液中の限られたヒ素のみがスコロダイトとして沈殿することが発見された。この特異な挙動を説明するために、ヒ素リッチ粉末を初期スラリー222と共にオートクレーブに加えてAs:Fe比を変化させることができて、その比をより高い値及びヒ素がスコロダイトとして沈殿する比に変える。代替的に、他のFeリッチ固形物又は溶液をオートクレーブに加えてAs:Fe比を変化させることができ、As:Fe比をより低い値及びヒ素がスコロダイトとして沈殿する比に変える。加えられたFeリッチ固形物はオートクレーブ条件において可溶である。
図3では、異なるヒ素:鉄比に対しての、オートクレーブ中の溶液に移送するヒ素の割合のグラフを示す。ヒ素:鉄比は、供給材料、界面活性剤、及びハロゲン化物を含み、再利用残留物を含まない、圧力酸化104への複合供給物中での比である。
【0055】
図3のグラフでは、濃縮物及び約1.2%〜16.1%のヒ素の濃縮物混合物を含む幾つかの供給材料からのデータを含む。
図3のグラフで図示されるより高いAs:Fe比は、As含有の精錬煙塵(smelter flue dust)を加えることにより達成された。圧力酸化条件は全ての試験で同一でない。例えば、オートクレーブへの供給物中の遊離酸レベルは変化して、供給酸中のFeはわずかに変化した。変化したパラメータは、As:Fe比の影響と比較して溶液中のAsへの影響は少ない。
【0056】
供給酸は、全てではないが幾つかのヒ素含有銅濃縮物に対する重要な変数である。オートクレーブ中でのより高酸の供給物の利益は硫黄酸化を抑制することである。濃縮物中のヒ素若しくは黄鉄鉱又はヒ素及び黄鉄鉱のレベルが高い場合、副反応として硫酸塩を形成する傾向が増加する。圧力酸化供給物中の理想的な酸レベルは濃縮物次第であり、極めて広い範囲であることができる。オートクレーブに供給され、不必要な硫黄酸化を抑制するのに利用することができる酸のレベルは約7g/L〜60g/Lの範囲である。好ましい範囲は約20〜40g/Lである場合がある。高すぎる酸レベルは幾つかの場合で銅抽出を減少させ、スコロダイト沈殿の程度を抑制する。
【0057】
黄鉄鉱は、反応(5)に示されるように酸を作り出す。黄鉄鉱により作り出された酸は圧力酸化104での酸平衡を決定するのに重要な役割を担う。供給溶液に加えられた任意の酸に加えて反応(5)によって作り出された酸が、反応(1)及び(2)で消費した酸より多い場合、過剰な酸が結果として生じる。そのような場合では、圧力酸化104の間に酸化された濃縮物中の銅は溶液中に部分的に又は全体的に浸出される。
【0058】
上の酸化反応の全てが発熱反応であり、固形物の割合は、2つの供給流の比、すなわち、プロセス中の初期スラリー222と水性供給溶液224との比を調整することによって調整されて、反応の発熱性質の利点を得る。したがって、複合スラリーは、約150℃のオートクレーブ中の作業温度に達することができて、外部の熱の追加に頼ることなく概ね周辺温度の供給流から開始する。したがって、プロセスは追加の加熱又は冷却コスト無しで行うことができる。これは、熱交換器におけるスケーリング問題を引き起こすことのあるスラリー流を処理する場合に有利である。
【0059】
しかしながら、幾つかの例においては、複合供給物の固形物の割合は、例えば、輝銅鉱のような第2鉱物が存在して、例えば、黄銅鉱と比較して少ない熱エネルギーが実現される場合に増加することがある。
【0060】
反対に、黄鉄鉱が濃縮物中に多くの量で存在する場合は極めて多量の熱が作り出される。この場合においては、熱を除去するための冷却塔を利用してでさえ、また、圧力酸化104の作業温度が狙いの温度より極めて高くに上昇することを防止するためにオートクレーブ中の固形物の割合を減らすことによって、供給溶液はできるだけ低温で保たれる。
【0061】
圧力酸化の温度は、銅抽出及び硫黄酸化並びにヒ素沈殿に影響を与える。プロセスは140℃〜160℃の範囲内で作業することができる。オートクレーブ中での反応の生成物である液体の元素の硫黄が流体状態から粘稠状態に相変換するため、160℃超で圧力酸化104を作業するのは望ましくない。この高い粘度はプロセスに害を及ぼし、したがって、145℃〜155℃の範囲の温度が好ましい。150℃〜160℃の範囲での小さい可動域が可能であるが、150℃の温度を実際の狙いとして選択することができる。元素の硫黄は、160℃超でより容易に硫酸へ酸化することで知られており、それはまた望ましくなく、過剰な熱及び酸を作り、酸素及び中和剤を不必要に使い尽くす。より高温での実験からのデータは、より望ましいスコロダイト相が150℃で存在するが、より高い温度ではスコロダイト沈殿が少ないことを示した。
【0062】
圧力酸化104についての保持時間は、材料をどの程度まで細かく粉砕したかと、ヒ素が圧力酸化104中に沈殿した量の関数である。上で示したように、圧力酸化の保持時間に対する作業の可動範囲は60〜120分間である。90分間の保持時間が好ましい。より長い時間が、銅抽出をわずかに促進して、より多くのヒ素沈殿に有利になるが、増加した硫黄酸化のコストがかかる。
【0063】
十分な酸素圧力はオートクレーブ中での反応を補助するために利用される。700〜1400kPaの範囲の酸素分圧を利用することができる。1000kPaの酸素分圧が好ましい。より低い酸素分圧は、圧力酸化104の間での、オートクレーブ中の浸出反応を遅くすることがある。一方で、過剰な圧力はオートクレーブ及び関連設備の構造上の完全性への追加の要求を出す。
【0064】
ヨウ化カリウムを、任意選択で、黄銅鉱及び硫ヒ銅鉱反応に対して触媒として加えることができる。ヨウ化物触媒は、所与の保持時間に対する全体の銅抽出を増加する反応速度を増加する。ヨウ化物の追加により、濃縮物の0〜16kg/トンでのKI追加に対して96.2%から99.3%まで銅抽出が増加した。1kg/トン超の任意の追加はプロセスに対し経済的に実行可能ではないことがある。
【0065】
オートクレーブへの供給スラリーに対して界面活性剤を追加することは、オートクレーブから排出された場合に硫黄の性質を変更するために、すなわち、硫黄粒子をより微細に分割するために、幾つかの環境において役に立つことがわかった。界面活性剤は、作業温度で液体硫黄相の表面張力を減らし、オートクレーブ中の大きい液体球よりむしろ小さい液滴と、固化した後の製品スラリー中の関連小固形粒子とをもたらす。
【0066】
界面活性剤の追加は銅抽出を容易にする。適切な界面活性剤としては、例えば、o−フェニレンジアミン又はリグノゾル(lignosol)化合物、例えば、リグニンスルホン酸カルシウムが挙げられる。ケブラコのような他の界面活性剤は、亜鉛の圧力浸出の関連プロセスで同様の機能を果たすことで知られ、現在の銅圧力酸化プロセスにおいて効果的である可能性がある。アニリンをまた利用することができる。
【0067】
界面活性剤は、濃縮物の1.5〜10kg/tの広い範囲の濃度にわたり効果的であった。少なすぎる界面活性剤の追加投与量は、オートクレーブ内で硫黄の溜まり及び凝集をもたらすことがあり、浸出される鉱物への酸素の不適切な接近のため、減少した銅抽出及び潜在的な腐食状態(局所化した還元状態)を引き起こす。多すぎる界面活性剤はコストのかかる薬剤についての不必要な出費をもたらす。o−フェニレンジアミン(OPD)のような界面活性剤については2〜3kg/tの範囲が好ましい。
【0068】
圧力酸化104からの製品スラリー226は酸性であり、供給材料220中の多くの又は全ての銅鉱物が、圧力酸化104において溶液中に浸出される。圧力酸化104の間での硫黄酸化は、一般的に硫酸塩を作り出す黄鉄鉱の量に応じて、平均(例えば、50%)より極めて高いことがある。本プロセスは作り出された過剰な酸に対応する。
【0069】
オートクレーブからの高温の加圧製品スラリー226の排出は、圧力の実質的即時解放が存在するように極めて早く達成される。スラリー排出のこの形態は「フラッシング」として知られ、スラリーは過圧の解放、すなわち、蒸気及び任意の混入酸素を解放することによってほぼ瞬時に冷却される。解放はチョークによって制御され、それは可変な開口部を持つ減圧弁を含むことができ、数分の1秒(例えば、ミリ秒)で起こる。チョークは、容量結果に変化がないように、オートクレーブへの供給容量で排出を一致させる。
【0070】
フラッシング228によって圧力容器から排出された製品スラリー226は液体/固体分離106が行われる。液体/固体分離106は、約40〜50%の固形物を最初に濃縮させることによって2つのステージで行われることがあり、次いで、濃縮槽からのアンダーフロー流が公知の真空又は圧力方法のいずれかで濾過されることがある。代替的に、向流式デカンテーションを液体/固体分離106のために利用することができる。
【0071】
洗浄を濾過ステージで行って、混入した浸出液を残留物から除去することができる。
【0072】
フラッシング228の後に、約95℃〜100℃である高温スラリーの濾過を容易にするために、濃縮槽からのオーバーフロー流の一部は、例えば、冷却塔によって冷却され、冷却流は濃縮槽に戻されて、多くの濾紙で濾過するために適する温度である約65℃以下に濃縮槽の作業温度を減少する。
【0073】
次いで、浸出液230と称される圧縮槽のオーバーフロー流の残りは、銅溶媒抽出108に送られる。
【0074】
硫黄酸化と、圧力酸化104のためにオートクレーブに供給される固形物の割合とに応じて、溶媒抽出108の前に、酸性排出物は任意選択で予備中和232が行われて、その後に液体/固体分離233が行われることがある。液体/固体分離233から生じた石膏が、235で示されるように、濾過されて洗浄されることがある。中和流239は銅溶媒抽出108に送られることがある。
【0075】
濾過器からの濾過液は濃縮槽に送り戻されることがあり、任意選択で、液体/固体分離276からの残留物の一部は、金及び銀の回収のために処理されることがある。
【0076】
106での液体/固体分離から作り出された残留物264の一部は、圧力酸化104のためにオートクレーブに戻され再利用されることがある。残留物の再利用は、残留物の一部が新規濃縮物と混合されてオートクレーブに供給された場合、硫化銅変換及びヒ素移送における大きな改善をもたらす。再利用残留物は、スコロダイトの沈殿のためのシード材を提供して、オートクレーブでの保持時間を延長する。1:1の再利用残留物:新規濃縮物の比を超えて付加価値は存在しなかった。
【0077】
圧力酸化104、フラッシング228、及び液体/固体分離106に続いて、溶液中に浸出される銅は溶媒抽出108によって回収されて、それは、ストリッピング238、及び電解採取110を含む。水性流は典型的に30〜50g/LのCuを有する。
【0078】
溶媒抽出は産業上で公知である。本プロセスは溶媒抽出と称されるが、本プロセスは2つの区別できるプロセス、すなわち、抽出及びストリッピングを含む。
【0079】
銅溶媒抽出108の間、浸出液230、又は、任意選択で、中和流239が、水性相に対する有機物の適切な比で、BASFコーポレーション製の抽出剤(例えば、LIX973)と接触する。適切な比は、例えば、3:1であることができる。プロセスは、ポンプ、アジテーター、及び貯蔵タンクのような追加の設備と共に、一連のミキサセトラ又は他の同様の設備で起こる。
【0080】
溶媒抽出108は約40℃かつ大気圧で作業する。温度は、例えば、浸出液230とも称される貴浸出液(pregnant leach solution)(PLS)を含む入力流の顕熱によって維持される。温度が高すぎる場合、熱交換器又は冷却塔が利用されて温度を約40℃に制御することができる。反対に、寒冷気候において加熱が必要となる場合は、熱を熱交換器によって供給することができる。
【0081】
有機抽出剤は、実行するために灯油相で希釈されて35容量%〜40容量%の抽出剤を作り出す。
【0082】
銅溶媒抽出108へ供給される有機流234はプロセスのストリッピング部分で生じて、以下に説明するように、「ストリッピング有機物」(SO)とも称される。ストリッピングされた有機物は、組成、すなわち、希釈液中の抽出剤の割合及び他の因子に応じて、溶液中に約7g/L〜8g/LのCuを有することができる。
【0083】
抽出108で使用されるミキサセトラ中での水性相と有機相との混合物は約2〜3分間撹拌されて、次いで、ミキサセトラの静止ゾーンの中に送られて、重力によって相の分離を可能として、混合物は分離される。このプロセスは、第1ミキサセトラに対し逆流モード、すなわち、水性流に対して逆流で流れる有機流234又は浸出液230で作業する別のミキサセトラで繰り返されることがある。この逆流プロセスは有機流を投入すること、並びに、水性流から銅の大半を抽出することを容易にする。
【0084】
代替的な混合及び沈降プロセス、例えば、様々な設計の脈動塔(パルスカラム)を利用することができる。
【0085】
抽出が1〜2ステージで完了した後、投入された有機抽出剤(LO)は、40容量%の抽出剤が使用された場合は、通常、17〜20g/LのCuを含有する。消耗した水性流「ラフィネート」は、約10〜15g/LのCuと40〜65g/Lの遊離酸とを含有することがあり、可能性のある中和の後の更なる浸出のために再利用される。
【0086】
次いで、今Cuが投入された有機物236は、「ストリッピング電解液」(SE)とも称される強酸流240と接触することにより、238でCu含有量をストリッピングされ、それは電解採取(EW)110から再利用される。強酸流240は、投入有機物(LO)を約7〜8g/LのCuを含有するストリッピング有機物(SO)234に変える。次いで、ストリッピング有機物(SO)234の一部は溶媒抽出108に再利用されて、回路を完了し、ストリッピング有機物(SO)234の一部を、以下で言及される第2溶媒抽出114で利用する。
【0087】
ストリッピング電解液(SE)240は、このストリッピングプロセスによって銅が増加して、したがって、貴電解液242又はPEに変えて、それは銅回収のために銅電解採取110へ送られる。
【0088】
ストリッピングプロセスによって作り出された貴電解液(PE)242は、一般的に、45〜50g/LのCuと、H
2SO
4として150〜160g/Lの遊離酸とを含有する。貴電解液(PE)242は電解採取110が行われて、約10〜12g/LのCuに銅の濃度を減少して、高純度カソードの形態で銅金属を作り出す。電解採取110は、5〜8日ごとにストリッピングされるカソードと共に継続的に行われることがある。
【0089】
電解採取110の間、貴電解液242は、消耗したCu含有量を持つがそれに対してより高い酸性度を持つストリッピング電解液240に戻される。ストリッピング電解液240の組成は、約35〜40g/LのCuと、170〜180g/Lの遊離酸とであり、次いで、それは溶媒抽出回路でより多くストリッピングするために利用される。これはストリッピング電解液−貴電解液についてのサイクルを完了する。
【0090】
溶媒抽出108によって作り出されたラフィネート244は酸性である。ラフィネート244は番号245で示すように分割され、番号246で示したラフィネートの一部は蒸発が行われる。蒸発した後、残りの水性供給溶液224は圧力酸化104に送られることがあり、凝縮物268は液体/固体分離276で利用されることがある。
【0091】
したがって、ラフィネート246の一部は圧力酸化104で利用される。ラフィネートは圧力酸化104に応じて分割されて、数字248で示したラフィネートの残りは中和される。
【0092】
圧力酸化の間、濃縮物中のいくらかの硫黄は硫酸塩に酸化されて、それは蓄積を減らすために除去される。この硫黄酸化の大半は上の黄鉄鉱反応(5)のためである。
【0093】
硫酸塩は、
図2に示されるように、溶媒抽出108の後、ラフィネート流248を部分的に中和することによって除去される。上で示したように、例えば、式(1)及び(2)で示されるように、酸の一部が圧力酸化104のために利用されるため、溶媒抽出108からのラフィネート流244の一部は112で中和される。
【0094】
中和は、石灰岩CaCO
3を利用してラフィネート248の選択した割合に基づいて行われ、遊離酸と反応する。このプロセスは重力オーバーフローで連続して接続される一連の撹拌タンクで行われ、固形副産物として石膏CaSO
4・2H
2Oを形成する。石膏は250で示されるように濾過されて洗浄される。濾過250からの石膏濾過ケークは処理用尾鉱に送られる。濾過250からの濾過液又は中和流252は分割254であり、一部256は第2溶媒抽出114に送られる。溶媒ストリッピング238からのストリッピング有機物(SO)234の一部は第2溶媒抽出114で利用される。
【0095】
第2溶媒抽出114で利用される有機相257は、108での第1溶媒抽出に戻されて、銅が回収されて銅電解採取工程に送られる。銅が消耗した水性流のpHは、例えば、石灰を使用して増加され、116での不純物の沈殿を容易にする。116でのこの沈殿と次の液体/固体分離270とは、抽気残留物を作り出す。生成物溶液272は再利用され、276での上流の液体/固体分離での鉄残留物を洗浄するために利用される。したがって、中和された易溶性不純物、例えば亜鉛はプロセスから抽気されて、そのような不純物の濃度が許容できないレベルまで上昇することを防止する。
【0096】
第2溶媒抽出114が行われない部分である中和流252の残部260は、溶媒抽出108で作られた酸性ラフィネート246の一部と共に蒸発262が行われる。蒸発した後、残りの水性供給溶液の一部224は圧力酸化104に送られることがあり、蒸発262からの凝縮物268は液体/固体分離276での残量物の洗浄で利用することができる。
【0097】
上で示したように、106での液体/固体分離から作られた残留物264の一部は、圧力酸化104のためにオートクレーブに戻って再利用されることがある。106での液体/固体分離から作り出された鉄リッチ残留物264の残りは廃棄されることがある。任意選択で、鉄リッチ残留物264の残りは、貴金属分の回収のためにその後処理されることがある。圧力酸化104に戻って再利用されない鉄リッチ残留物264の一部は、塩化物を含有する高温の希釈酸溶液中で浸出されることがあり、低いシアン化物可溶銅含有量を維持する。このプロセスは「強化酸浸出」と称され、参照番号274で示される。強化酸浸出274の条件は、シアン化物溶液を用いて次の貴金属浸出のために利用され、銅はシアン化物の主要な消費物である。
【0098】
強化酸浸出274での主反応は、硫酸による塩基性硫酸銅の溶解である。
【数8】
【0099】
硫酸は、以下で言及される溶媒抽出からのラフィネートにより供給される。
【0100】
強化酸浸出274中の条件は、米国特許第5645708号明細書(708特許)に記載される大気浸出工程(その全ての内容は参照することによって本明細書に組み込まれる)と同様であるがより厳しい。
【0101】
例えば、適切な条件は
50℃〜95℃の範囲、好ましくは75℃の温度;
2〜4時間、好ましくは3時間の保持時間;
2〜10g/L、好ましくは4g/Lの浸出溶液中の塩化物濃度;及び
1.0〜1.5、好ましくは1.3のpH
を含む。
【0102】
これらの強化の全てが同時に実行される必要があるわけではないが、次の貴金属浸出のための強化酸浸出の利益は、これらの条件の組み合わせから生じることがわかる。
【0103】
反応(8)は、708特許に記載される「通常」大気浸出において完全に完了しない。典型的に、2〜5%のCu含有量が残留物中に残り、それは明らかに、主にFe上での吸着又はFeとの共沈殿のためであり、より少ない程度で、不完全に酸化した硫化Cu鉱物のためである。不幸なことに、この「非浸出」Cuのいくらかは、大気浸出(AL)がシアン化物可溶であった後、すなわち、プロセスの次のステージで可溶なシアン化銅を形成した後に残る。しかしながら、シアン化物可溶なCuは、強化酸浸出274(EAL)によって実質的に還元される。
【0104】
強化酸浸出274を、連続してタンクに接続する重量オーバーフローを持つ、3〜4つの撹拌タンクの反応器系列で行うことができる。タンクは適度に撹拌され、液体と固形物の適切な混合を提供する。凝固剤を最終(第4)反応器の中に加えて、微細な固形物を凝固させるのを助けることができ、それは次の濃縮作業で使用される凝結において役立つ。
【0105】
強化酸浸出274から生じた浸出固形物の濾過は微細な固形物の存在によって妨げられる。幸運なことに、適切な凝固及び凝結が使用された場合、微細な固形物は極めて良好に濃縮され、合理的な沈降時間で45〜55%の固形物のアンダーフロー流を作り出す。
【0106】
したがって、強化酸浸出274から得られたスラリーは、最終濃縮槽の中に加えられた洗浄水と第1濃縮槽に供給されたスラリーとで、逆流デカンテーション(CCD回路)のための一連の3〜6つの濃縮槽に供給される。CCD回路は確立した技術であり、各圧縮槽からの圧縮槽オーバーフローは、洗浄水を効率的に用いて、圧縮槽アンダーフローに対し反対の方向で動く。
【0107】
CCD回路で利用される洗浄水(流れ258)は、不純物抽気沈殿116の後に得られた溶液272と、蒸発262からの凝縮物268とに部分的に由来することがある。
【0108】
追加の洗浄水を、全体のCCD−EAL回路の水の収支に応じて、新規の水の形態で追加することができる。新規の水は、CCD回路の中の少量の混入銅含有液を除去するのを助ける。
【0109】
有利には、環境問題を引き起こすことがある処理される過剰の液体廃物に対して、多くの洗浄水が内部で作られ、プロセスが加えられた水で行われることを可能とする。原則として、全体のプロセスは液体廃物なしで作業し、したがって、「閉」ループとみなされる。
【0110】
したがって、強化酸浸出274からの浸出残留物は、液体/固体分離276によって浸出溶液から分離される。液体/固体分離は逆流又は濾過を作業する一連の濃縮槽で濃縮することを含むことができ、貴金属の抽出をする状態である残留物278を作り出す。
【0111】
第1濃縮槽からのオーバーフローである、CCD回路の液生産物は貴浸出液280であり、任意選択で予備中和232及び液体/固体分離233が行われることがある。貴浸出液は、108での溶媒抽出によって銅回収するために処理される。
【0112】
ラフィネート244は、245で示されるように、第3流282に分割されることがある。第3流282は、強化酸浸出274で利用することができ、強化酸浸出プロセスに対し硫酸を提供する。
【0113】
以下の例は、本発明の様々な実施形態をさらに例示するために提示される。これらの例は単に例示的なものであることを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。例の概要を表1に提供する。
【実施例】
【0114】
以下の例では、超微粉砕と併せて、塩化物及び界面活性剤の存在が、良好な銅回収を達成するために利用されることを例示する。
【0115】
【表1】
【0116】
本明細書で説明するそれぞれの例では、1.1Lのバッチ式オートクレーブを用いた。オートクレーブ中の条件は、別段の記載がない限り、それぞれの例に対して示され、145psi(1000kPa)の酸素分圧を含んでいた。
【0117】
例1
以下の例では、圧力酸化の間において、塩化物及び界面活性剤の存在下で、硫ヒ銅鉱含有材料を浸出する場合の微粉砕の利益を示す。34%のCuと、12%のFeと、36%のSと、12%のAs(〜64%の硫ヒ銅鉱、1%のヒ四面銅鉱、8%の黄銅鉱、21%の黄鉄鉱)との供給材料分析物を以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
60分間の保持時間;
12g/LのCl、8g/Lの遊離酸、及び15g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;並びに
5kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加
【0118】
粉砕の程度を表2に示すように変えた。
【0119】
【表2】
【0120】
圧力酸化の前の追加の粉砕は、硫ヒ銅鉱物の浸出と全体の銅抽出とを改善した。界面活性剤の追加も保持時間も最適なものでなかった。
超微粉砕に対して要求される追加のエネルギー及び銅−ヒ素鉱物からの増加の銅抽出は常に経済的であるとは限らない。
図4では、微粉砕に対して利用した比エネルギーのグラフである。5μm未満の粉砕サイズは経済的であることはほとんどない。
【0121】
結論
銅抽出は塩化物及び界面活性剤の存在下で、より微細な粉砕サイズなるにつれ増加する。
【0122】
例2
以下の例では、圧力酸化の間に硫ヒ銅鉱含有材料を浸出する場合、塩化物が存在しない下での界面活性剤の使用が十分な銅回収を生じないことを示す。
【0123】
例1における場合と同一の供給材料を利用して、塩化物の存在しない下で浸出した。34%のCuと、12%のFeと、36%のSと、12%のAs(〜64%の硫ヒ銅鉱、1%のヒ四面銅鉱、8%の黄銅鉱、21%の黄鉄鉱)との供給材料分析物を以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
90分間の保持時間;
40g/Lの遊離酸、及び12g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;並びに
5kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加
【0124】
表3に示すように、塩化物が存在しない下で、界面活性剤の使用を微粉砕サイズに対し変えた。
【0125】
【表3】
【0126】
結論
界面活性剤それ自体は、塩化物が存在しない下で、微粉砕サイズを有してさえも硫ヒ銅鉱の十分な酸化を促進しない。
【0127】
例3
以下の例では、圧力酸化の間に硫ヒ銅鉱含有材料を浸出する場合、塩化物及び界面活性剤の存在が浸出及び全体の銅回収を改善したことを示す。
【0128】
追加の試験を、供給溶液中で12g/Lの塩化物の存在下で行った。残りの条件を例2で特定したものと同一とした。34%のCuと、12%のFeと、36%のSと、12%のAs(〜64%の硫ヒ銅鉱、1%のヒ四面銅鉱、8%の黄銅鉱、21%の黄鉄鉱)との供給材料分析物を以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
90分間の保持時間;
12g/LのCu、40g/Lの遊離酸、及び12g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;並びに
5kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加
【0129】
界面活性剤の存在を、表4に示すように変えた。
【0130】
【表4】
【0131】
例2から及び例3からの結果との比較から、塩化物の存在は、圧力酸化の間に硫ヒ銅鉱含有材料を浸出する場合、硫化銅鉱物を酸化することにおいて明らかに有益であった。塩化物の存在下では、界面活性剤は、銅抽出において更なる利益を促進した。例2及び3では、界面活性剤及び塩化物は、微粉砕したヒ素含有銅濃縮物を処理する場合の添加様式においてよりむしろ相乗的に作用することを示す。
【0132】
結論
微粉砕、界面活性剤及び塩化物は相乗的に作用して、硫ヒ銅鉱の酸化と、微粉砕サイズを持つ供給材料からの銅回収とを促進する。
【0133】
例4
以下の例は、圧力酸化の間に硫ヒ銅鉱含有材料を浸出する場合の塩化物レベルの影響を示す。
【0134】
31〜33.1%のCuと、11〜11.5%のFeと、35.5〜37.9%のSと、10.3〜11.8%のAsの濃縮物分析物を持つ低黄鉄鉱濃縮物の2種の異なる試料を、以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
90分間の保持時間;
40g/Lの遊離酸、及び12g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;
3kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加;並びに
P80=7μm及びP80=22μmの粉砕サイズ
【0135】
0g/LのClでの試験の条件は、供給溶液中の銅が15g/LのCuであり、界面活性剤の追加が5kg/tのOPDであったという点でその他と少し異なる。0g/lのClでの試験の残りの条件は上に示したようであった。
【0136】
図5は、供給溶液中での異なる塩化物レベルについての銅回収を図示したグラフである。水溶液中の約3〜20g/LのClの範囲の塩化物は銅抽出を促進する。約20g/LのClを超えると、銅抽出は減少するように見える。約3g/LのCl未満になると、硫黄酸化及び銅抽出が不十分である。約10〜12g/Lの範囲については、条件が良好なCu抽出及び少ない硫黄酸化をもたらすと考えらえる。
図5ではまた、異なる粉砕サイズについての銅回収を図示する。P80=7μmの粉砕サイズは、P80=22μmの粉砕サイズに比べて銅抽出において有意な改善をもたらす。
【0137】
結論
水溶液中での約3〜20g/Lの範囲の塩化物は、界面活性剤の存在下で、銅抽出を促進する。圧力酸化の前の濃縮物の微粉砕は、塩化物及び界面活性剤の存在下で、銅抽出を促進する。
【0138】
例5
以下の例は、異なる硫ヒ銅鉱含有供給材料への微粉砕の影響を示す。
【0139】
供給材料を、以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
60分間の保持時間;
20g/Lの遊離酸、及び15g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;
5kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加;並びに
P80=7μmの粉砕サイズ
【0140】
供給溶液はまた、表5に示すように、供給溶液中に塩化物が存在しない1つを除外して、12g/LのClを含有していた。
【0141】
結果を表5に示すが、これは単に相対的なものである。濃縮物中の硫ヒ銅鉱の割合を変えて、粉砕の程度は前述の例ほど大きくなかった。
【0142】
【表5】
【0143】
濃縮物「A」は、15%のCuと、31%のSと、24%のFeと、5.5%のAsとの分析物を有した。供給濃縮物「A」の微粉砕が存在しない下では、硫ヒ銅鉱含有鉱物からの硫酸塩の変換は69%であった。供給溶液中に塩化物が存在しない下での供給濃縮物「A」を微粉砕することは、硫化Cu変換を91%まで促進したが、追加の不必要な硫黄酸化のコストがかかった。供給溶液中に存在する塩化物を含む供給濃縮物「A」を微粉砕することは、硫化銅変換を95%まで増加させ、硫黄酸化を51%まで戻した。
【0144】
濃縮物「B」は、27%のCuと、40%のSと、23%のFeと、9%のAs(濃縮物中の〜48%の硫ヒ銅鉱)との分析物を有した。供給濃縮物「B」を微粉砕することは、硫化銅変換を88%から95%まで増加させた。
【0145】
これらの例は、上で説明した圧力酸化条件を利用する場合、再粉砕はヒ素含有濃縮物に対し有益であることを示す。これらの利益は塩化物又は界面活性剤単独の使用で達成することができない。
【0146】
結論
圧力酸化の間での、界面活性剤の存在下における他の硫ヒ銅鉱含有供給材料の微粉砕は、銅回収を増加させ、塩化物の存在は硫黄酸化を抑制して銅抽出を改善する。
【0147】
例6
以下の例では、銅抽出への異なる界面活性剤の種類と投与量の影響を示す。
図6は銅抽出への界面活性剤投与量の影響を示したグラフである。
図6のグラフで図示された銅抽出に対する濃縮物組成及び試験条件を表6に示す。
【0148】
【表6】
【0149】
濃縮物Cの供給材料の粉砕サイズは前述の例に比べ粗かった。圧力酸化への供給溶液中の界面活性剤投与量を増やすことは、圧力酸化への供給溶液中の最も高い界面活性剤投与量がより高い銅抽出を達成しなかったため、必ずしも銅回収を増加させなかった。特定の界面活性剤の最適な界面活性剤投与量は、異なる濃縮物に対して変わる。
【0150】
同様の銅濃縮物(D及びE)及び同一条件に対して、o−フェニレンジアミン(OPD)はアニリンより良好な銅抽出を与えると考えられる。
【0151】
結論
最適な界面活性剤投与量は濃縮物に応じて変わり、利用される量は経済的因子の影響を受ける。
【0152】
例7
以下の例では、銅抽出への異なる界面活性剤種類の影響を示す。
【0153】
28.5%のCuと、18%のFeと、43%のSと、8.3%のAsとの濃縮物分析物を、以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
12g/LのCl、20g/Lの遊離酸、及び12g/LのCuを含む供給溶液を利用すること
銅抽出への異なる界面活性剤と投与量との影響を
図7のグラフに図示する。
【0154】
本例の濃縮物分析物について、o−フェニレンジアミン(OPD)はアニリン及びリグノゾルより良好な銅抽出を与えると考えられる。
【0155】
結論
OPDはアニリン及びリグノゾルより良好な銅抽出を与えると考えられる。
【0156】
例8
以下の例では、銅抽出への圧力酸化の保持時間の影響を示す。
【0157】
34%のCuと、12%のFeと、36%のSと、12%のAs(〜64%の硫ヒ銅鉱、1%のヒ四面銅鉱、8%の黄銅鉱、21%の黄鉄鉱)との濃縮物分析物を、以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
12g/LのCl、10g/Lの遊離酸、及び14g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;
3kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加;並びに
P80=22μmの粉砕サイズ
【0158】
本例での粉砕サイズは高かった。
【0159】
オートクレーブ中での圧力酸化の保持時間を、表7に示すように変えた。
【0160】
【表7】
【0161】
より長い保持時間は、オートクレーブ中での増加した銅回収及びヒ素沈殿をもたらすが、増加した硫黄酸化をまたもたらす。約60〜120分間の範囲の保持時間を利用することができる。90分間の保持時間が好ましい。
【0162】
結論
90分間より長い保持時間は銅抽出をわずかに促進し、より大きいヒ素沈殿に有利であるが、増加した硫黄酸化のコストがかかる。
【0163】
例9
以下の例では、銅回収及びヒ素沈殿への残留物再利用の影響を示す。
【0164】
29%のCuと、17%のFeと、41%のSと、9%のAsとの濃縮物分析物を、以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
90分間の保持時間;
12g/LのCl、40g/Lの遊離酸、及び12g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;
P80=10μmの粉砕サイズ;並びに
3kg/tのアニリン界面活性剤
【0165】
オートクレーブに送られる再利用残留物:新規濃縮物の比である、再利用比を表8に示すように変えた。
【0166】
【表8】
【0167】
約0.1:1〜1.5:1の固形再利用残留物:新規濃縮物の比で、オートクレーブからオートクレーブまで排出して戻される残留物の一部を再利用することは、改善した銅抽出及びヒ素沈殿をもたらす。1:1より高い再利用比は、銅抽出を有意に改善するようにも、追加のヒ素沈殿を促進するようにも見えない。
【0168】
結論
オートクレーブに戻る残留物を再利用することは、約1の再利用残留物:新規濃縮物比までは銅抽出を改善し、オートクレーブ中でより多くのヒ素沈殿を促進する。
【0169】
例10
以下の例では、銅抽出へのKI薬剤の影響を示す。24%のCuと、19%のFeと、39%のSと、8%のAs(〜37%の硫ヒ銅鉱、45%の黄鉄鉱、4%の黄銅鉱)との濃縮物分析物を以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
90分間の保持時間;
12g/LのCl、40g/Lの遊離酸、及び12g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;
P80=7μmの粉砕サイズ;並びに
3kg/tのアニリン界面活性剤
【0170】
圧力酸化で利用したKI薬剤の投与量を、表9に示すように変えた。
【0171】
【表9】
【0172】
KIの追加は有益である。1kg/tより高い追加の濃縮物は経済的に正当にするのは困難である。
【0173】
結論
KIの追加は有益である。
【0174】
例11
以下の例では、銅抽出及び硫黄酸化に対してのオートクレーブへの供給物中の遊離酸の量の影響を示す。
【0175】
34%のCuと、12%のFeと、36%のSと、12%のAs(〜64%の硫ヒ銅鉱、1%のヒ四面銅鉱、8%の黄銅鉱、21%の黄鉄鉱)との濃縮物分析物を以下の条件下で圧力酸化によって浸出した。
200psig(1378kPag)の全圧;
150℃の温度;
12g/LのCl、及び14g/LのCuを含む供給溶液を利用すること;
P80=7μmの粉砕サイズ;並びに
5kg/tのo−フェニレンジアミン(OPD)の界面活性剤の追加
【0176】
オートクレーブへの供給物中の遊離酸レベルを、表10に示すように変えた。
【0177】
【表10】
【0178】
60分間及び90分間の保持時間における表10での2セットのデータは、オートクレーブ供給物中の遊離酸レベルを増やすことは硫黄酸化の抑制をもたらすことを示す。オートクレーブ供給物中の約39g/Lの遊離酸を利用する硫黄酸化は、60分間と比較して90分間のより長い保持時間に対し高くなった。
【0179】
結論
オートクレーブ供給物中の遊離酸を再利用することは硫黄酸化を抑制する。不必要な硫黄酸化を抑制するために、7〜60g/Lの範囲の酸を利用することができる。20〜40g/Lの遊離酸が好ましい。
【0180】
例12
以下の例では、圧力酸化の間に利用した温度及び圧力条件を示す。プロセスに対して利用した温度及び圧力は物理的並びに動的制約を示す。オートクレーブ中での約160℃超の温度は、水状液から粘着性の糖蜜のような状態への副産物の溶融硫黄の転換をもたらし、撹拌力の要求はさらにより大きくなり、不必要な硫黄酸化に有利になる。したがって、約160℃超の温度は望ましくない。
【0181】
プロセスに対してより低い温度は、反応速度によって抑制される。
図8では、異なる圧力及び温度で行われる圧力酸化の間での酸素消費を示す。
図8に示される上3つの酸素消費曲線においては、圧力酸化がより速くなり、90分間の時間内で銅回収について許容レベルに達する。下2つの酸素消費曲線は、オートクレーブ中でのより多くの時間を要求することを示す。経済的な理由のため、より長い保持時間をもたらすより大きいオートクレーブは望まれない。したがって、140℃以上の温度が圧力酸化プロセスに対して利用される。より低い固形物濃度はまた、プロセスのコストも増加させる熱平衡の制約のためにより低い温度が用いられる場合に、オートクレーブ中で利用される。
【0182】
容器構造はまた、使用することができる酸素の分圧を決定する役割を担う。蒸気の蒸気圧は、容器中でのチタン炎の機会を軽減する蒸気ブランケットを提供する。塩化物の存在のため、チタンは好まれる鉱物であるが、その他の金属及び合金はまた、圧力酸化の間に発火するリスクが発生する。より高い酸素分圧はこのリスクを増加させる。より高い酸素圧力はまた、オートクレーブをよりコストのかかるものにするより厚い塀のあるオートクレーブを要求する。オートクレーブ中で大規模な炎の過度の機会なしで比較的高い浸出速度を達成するために妥協案が用いられる。
【0183】
オートクレーブ中における様々な温度での「安全な」酸素分圧を表11に示す。
【0184】
【表11】
【0185】
図8では、約700kPag以上の酸素分圧が圧力酸化の間に適正な浸出速度を提供することを示す。約1500kPag超の酸素分圧は、高い圧力はより厚い塀を持つオートクレーブを要求するため、安全性の問題及び経済的な考慮をもたらす。
【0186】
結論
圧力酸化の間、約140℃〜約160℃の範囲の温度と、約700kPag〜約1500kPagの範囲の酸素分圧とは、許容できる銅回収及びスコロダイトとしてのヒ素沈殿をもたらす。約1000kPagの酸素分圧は十分な酸素を提供し、一般的に経済的に実行可能である。
【0187】
本発明の上述した実施形態は単に例であることが意図される。修正、変更、及び変形が、当業者によって、特定の実施形態に対して行われることがある。したがって、請求項の記載の範囲は、例において説明した実施形態によって限定されるべきでないが、全体として説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【国際調査報告】