特表2017-516444(P2017-516444A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-516444共振磁界励磁機つき巻線界磁型同期機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-516444(P2017-516444A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(54)【発明の名称】共振磁界励磁機つき巻線界磁型同期機
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/03 20160101AFI20170519BHJP
【FI】
   H02P25/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-566916(P2016-566916)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月2日
(86)【国際出願番号】US2015029729
(87)【国際公開番号】WO2015175316
(87)【国際公開日】20151119
(31)【優先権主張番号】14/276,859
(32)【優先日】2014年5月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516329510
【氏名又は名称】ジーボックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボックス,ゲイリー
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA01
5H505AA06
5H505AA16
5H505BB02
5H505BB05
5H505DD06
5H505EE49
5H505HA03
5H505HA05
5H505HA16
5H505HB01
5H505JJ03
(57)【要約】
共振磁界励磁機中の漏れインダクタンスとコンデンサの共振を利用しエネルギーを回転式界磁巻線に伝送する、巻線界磁型同期機用ブラシレス磁界励磁機。この励磁機は、50kHzを超える周波数での共振により、全ての出力レベルで同期巻線界磁型電動機の全体のサイズと重量を減らし、同期巻線界磁型機の実用上及び経済的な出力限界を数馬力及び分数馬力の機器にまで引き下げ、この出力帯で高効率の電動機及び発電機に現在使われている永久磁石を不要にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク生成のためにロータ巻線を有しロータ磁石を有しない巻線界磁型同期機と、
電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機と、
前記矩形波AC発電機に接続された少なくとも1つの共振磁界励磁機であって、回転型基準フレームと、固定型基準フレームと、可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有し、少なくとも50kHzの共振周波数で共振モードで動作するようにした共振磁界励磁機と、
前記矩形波AC発電機及び前記共振磁界励磁機に接続された制御装置であって、前記共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、前記共振周波数を追跡し、AC電流の伝送が最大となるように、前記駆動周波数が前記共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにした制御装置と、
前記共振磁界励磁機及び前記巻線界磁型同期機に接続され、前記AC電流を前記巻線界磁型同期機の前記ロータ巻線に流す前にDC電流に変換するようにした整流器と
を備えた装置。
【請求項2】
前記巻線界磁型同期機は10馬力以下の出力レベルで動作するようにした請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記巻線界磁型同期機は10馬力を超える出力レベルで動作するようにした請求項1記載の装置。
【請求項4】
1つの矩形波AC電圧発電機と1つの共振磁界励磁機のある請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記巻線界磁型同期機はAC電動機、AC発電機、及びDC発電機からなる群のものである請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記回転変圧器は、固定式の1次側と回転式の2次側を有し、これらが前記可変漏れインダクタンスを生む間隙を形成するようにされており、
前記共振コンデンサは前記回転変圧器に接続され、50kHz以上の周波数で前記可変漏れインダクタンスと共振するようにされており、
前記制御装置は、前記回転変圧器1次側を駆動するための可変周波数矩形波AC電圧信号を生成するようにされている
請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記巻線界磁型同期機の効率は少なくとも90パーセントである請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記共振回路は前記回転型基準フレーム又は前記固定型基準フレームのいずれかにあってよい請求項1記載の装置。
【請求項9】
巻線界磁型同期機のためのロータ巻線と、
電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機と、
前記矩形波AC発電機に接続された少なくとも1つの共振磁界励磁機であって、回転型基準フレームと、固定型基準フレームと、可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有し、少なくとも50kHzの共振周波数で共振モードで動作するようにした共振磁界励磁機と、
前記矩形波AC発電機及び前記共振磁界励磁機に接続された制御装置であって、前記共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、前記共振周波数を追跡し、AC電流の伝送が最大となるように、前記駆動周波数が前記共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにした制御装置と、
前記共振磁界励磁機及び前記巻線界磁型同期機のロータ巻線に接続され、前記AC電流を前記ロータ巻線に流す前にDC電流に変換するようにした整流器と
を備えた装置。
【請求項10】
前記巻線界磁型同期機は10馬力以下の出力レベルで動作するようにした請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記巻線界磁型同期機は10馬力を超える出力レベルで動作するようにした請求項9記載の装置。
【請求項12】
1つの矩形波AC電圧発電機と1つの共振磁界励磁機のある請求項9記載の装置。
【請求項13】
前記回転変圧器は、固定式の1次側と回転式の2次側を有し、これらが前記可変漏れインダクタンスを生む間隙を形成するようにされており、
前記共振コンデンサは前記回転変圧器に接続され、50kHz以上の周波数で前記可変漏れインダクタンスと共振するようにされており、
前記制御装置は、前記回転変圧器1次側を駆動するための可変周波数矩形波AC電圧信号を生成するようにされている
請求項9記載の装置。
【請求項14】
前記共振回路は前記回転型基準フレーム又は前記固定型基準フレームのいずれかにあってよい請求項9記載の装置。
【請求項15】
電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機と、
前記矩形波AC発電機に接続された少なくとも1つの共振磁界励磁機であって、回転型基準フレームと、固定型基準フレームと、可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有し、少なくとも50kHzの共振周波数で共振モードで動作するようにした共振磁界励磁機と、
前記矩形波AC発電機及び前記共振磁界励磁機に接続された制御装置であって、前記共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、前記共振周波数を追跡し、AC電流の伝送が最大となるように、前記駆動周波数が前記共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにした制御装置と、
前記共振磁界励磁機及に接続され、前記AC電流を巻線界磁型同期機のロータ巻線に流す前にDC電流に変換するようにした整流器と
を備えた装置。
【請求項16】
前記巻線界磁型同期機は10馬力以下の出力レベルで動作するようにした請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記巻線界磁型同期機は10馬力を超える出力レベルで動作するようにした請求項15記載の装置。
【請求項18】
1つの矩形波AC電圧発電機と1つの共振磁界励磁機のある請求項15記載の装置。
【請求項19】
前記回転変圧器は、固定式の1次側と回転式の2次側を有し、これらが前記可変漏れインダクタンスを生む間隙を形成するようにされており、
前記共振コンデンサは前記回転変圧器に接続され、50kHz以上の周波数で前記可変漏れインダクタンスと共振するようにされており、
前記制御装置は、前記回転変圧器1次側を駆動するための可変周波数矩形波AC電圧信号を生成するようにされている
請求項15記載の装置。
【請求項20】
前記共振回路は前記回転型基準フレーム又は前記固定型基準フレームのいずれかにあってよい請求項15記載の装置。
【請求項21】
トルク生成のためにロータ巻線を有しロータ磁石を有しない巻線界磁型同期機と、
電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機と、
前記矩形波AC発電機に接続された少なくとも1つの共振磁界励磁機であって、回転型基準フレームと、固定型基準フレームと、可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有し、少なくとも50kHzの共振周波数で共振モードで動作するようにした共振磁界励磁機と、
前記矩形波AC発電機及び前記共振磁界励磁機に接続された制御装置であって、前記共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、前記共振周波数を追跡し、AC電流の伝送が最大となるように、前記駆動周波数が前記共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにした制御装置と、
前記共振磁界励磁機及び前記巻線界磁型同期機に接続され、前記AC電流を前記巻線界磁型同期機の前記ロータ巻線に流す前にDC電流に変換するようにした整流器と
AC電源に接続されたブリッジ整流器と、
前記ブリッジ整流器及び前記矩形波AC電圧発電機に接続された整流子と、
前記整流子に接続された前記巻線界磁型同期機のステータと
を備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻線界磁型同期機及びその効率的な操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機と発電機は長年利用されてきた機械である。今日、高効率の大型電気機械、即ち定格10馬力(HP)及びしばしば100馬力以上の機械は高価な制御機構を備えた巻線界磁型装置を用い、小型機械、即ち定格10馬力以下の機械は希土類ロータ磁石装置又は誘導ロータ界磁装置を用いる。希土類ロータ磁石装置は今後価格上昇が予想され、誘導ロータ界磁装置はエネルギー効率が低い。
【0003】
エネルギーの経済的、環境的コストの上昇が予想されるため、低コストでエネルギー効率の高い電動機と発電機が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明はそのような必要性に対処すべく、効率の良い巻線界磁型電動機又は発電機を機器に応用することを可能にする装置を提供し、現在、同種の機器に応用されている永久磁石電動機又は誘導電動機の場合よりも低コスト又は高エネルギー効率を得る。このことは、3つの局面、即ち、機械、ロータ巻線を備えた装置、及びロータ巻線に取付可能な装置を伴う。第1の局面は5つの要素を備えた装置である。第1の要素は、トルク生成のためにロータ巻線を有しロータ磁石を有しない巻線界磁型同期機である。第2の要素は、電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波交流(AC)電圧発電機である。第3の要素は、矩形波AC発電機に接続した少なくとも1つの共振磁界励磁機であり、この共振磁界励磁機は、(1)回転型基準フレームと、(2)固定型基準フレームと、(3)可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有する。共振磁界励磁機は50kHz以上の共振周波数で共振モードで動作するようにしている。第4の要素は、矩形波AC発電機及び共振磁界励磁機に接続した制御装置であり、(1)共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、(2)共振周波数を追跡し、(3)AC電流の伝送が最大となるように、駆動周波数が共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにしている。第5の要素は、共振磁界励磁機及び巻線界磁型同期機に接続され、AC電流を巻線界磁型同期機のロータ巻線に流す前にDC電流に変換する整流器である。
【0005】
第2の局面は同様に5つの要素を備えた装置である。第1の要素は、巻線界磁型同期機のためのロータ巻線である。第2の要素は、電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機である。第3の要素は、矩形波AC発電機に接続した少なくとも1つの共振磁界励磁機であり、この共振磁界励磁機は、(1)回転型基準フレームと、(2)固定型基準フレームと、(3)可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有する。共振磁界励磁機は50kHz以上の共振周波数で共振モードで動作するようにしている。第4の要素は、矩形波AC発電機及び共振磁界励磁機に接続した制御装置であり、(1)共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、(2)共振周波数を追跡し、(3)AC電流の伝送が最大となるように、駆動周波数が共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにしている。第5の要素は、共振磁界励磁機及び巻線界磁型同期機のためのロータ巻線に接続され、AC電流をロータ巻線に流す前にDC電流に変換する整流器である。
【0006】
第3の局面は4つの要素を備えた装置である。第1の要素は、電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機である。第2の要素は、矩形波AC発電機に接続した少なくとも1つの共振磁界励磁機であり、この共振磁界励磁機は、(1)回転型基準フレームと、(2)固定型基準フレームと、(3)可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有する。共振磁界励磁機は50kHz以上の共振周波数で共振モードで動作するようにしている。第3の要素は、矩形波AC発電機及び共振磁界励磁機に接続した制御装置であり、(1)共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、(2)共振周波数を追跡し、(3)AC電流の伝送が最大となるように、駆動周波数が共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにしている。第4の要素は、共振磁界励磁機に接続され、AC電流を巻線界磁型同期機のロータ巻線に流す前にDC電流に変換する整流器である。
【0007】
本発明の諸局面により、誘導機より高効率で、永久磁石機に使われる高価な希土類ロータ磁石を使わず、従来不可能であった可変速度状況で用いられる電動機又は発電機等の巻線界磁型同期機の製造及び使用が可能になる。諸局面は、電動機もしくは発電機として、既存の永久磁石機もしくは誘導機に容易に挿入もしくは後付けするに適したロータ巻線を備えた装置として、又は新しい巻線界磁型同期機を作る際の使用に適した装置として用いてもよい。諸局面は、自動車等の大馬力機械から芝刈り機、ポンプ、コンプレッサ等の少馬力機械までの範囲の機械に用いてもよい。本発明の機械、及び機械に用いられる本発明の装置は、今日の機械技術に少なくとも5つの改良点をもたらす。第一に、それらは同期巻線界磁型の電動機及び発電機の実用上及び経済上の出力限界を分数馬力の機器にまで引き下げ、その出力帯で高効率電動機に現在使われている永久磁石を不要にする。第2に、より広い出力帯で、低効率の誘導電動機を高効率の巻線界磁型電動機で置き換えることが可能となり、エネルギー効率の国家目標達成に寄与する。第3に、全ての出力レベルで同期巻線界磁型電動機の全体のサイズ及び重量を減らすことができる。第4に、現在の永久磁石電動機・発電機の技術では利用できない弱め界磁、直接界磁制御、及びモニタリング等の機能を提供する。第5に、永久磁石を使用せずに永久磁石同期電動機とほぼ同じ高効率を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は巻線界磁型同期機に接続した本発明の装置の諸要素のブロック図である。
図2図2Aは共振磁界励磁機の一実施形態の概略図であり、回転式基準フレーム上のコンデンサを示す。 図2Bは共振磁界励磁機の一実施形態の概略図であり、固定式基準フレーム上のコンデンサを示す。
図3図3Aはポットコアアキシャル回転変圧器を用いた共振磁界励磁機の一実施形態を示す側面図である。 図3B図3Aの実施形態の端面図である。
図4図4Aはラジアル回転変圧器を用いた共振磁界励磁機の一実施形態の側面図である。 図4B図4Aの実施形態の端面図である。
図5A図5Aは巻線界磁ロータに接続した本発明の装置の諸要素のブロック図である。
図5B図5B図5に示す本発明の装置に接続したユニバーサル電動システムのブロック図である。
図6図6は巻線界磁ロータに接続可能な本発明の装置の諸要素のブロック図である。
【0009】
本発明は様々な変形と代替形態になじむものであるが、図中に具体例を例示し、以下で詳細に説明する。しかしながら、記載した詳細な実施形態に限定する意図はないことが理解されるべきである。むしろ、本発明は、添付の請求の範囲で定義される本発明の範囲に入る全ての変形例、均等物、代替物を含むことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は既知の電動機技術、給電技術、ならびにデジタル及びソフトウェア技術のユニークな組み合わせにより新規の巻線界磁型電動機又は巻線界磁型発電機を得る。これら機械及び機械製造に用いられる装置は、既存の巻線界磁型同期機よりも安価な制御により10馬力を超える出力レベルで、かつ可変速度で動作し、又は動作可能である。これら機械及び機械製造に用いられる装置は、10馬力以下の出力レベルで、希土類ロータ磁石を使わずに動作し、又は動作可能である。これら機械及び機械製造に用いられる装置は、あらゆる出力レベルで、エネルギー効率の低い誘導電動機及び発電機に替わるものである。誘導機の効率が70%未満であるのに対し、本発明の機械と本発明の装置で作られた機械の効率は95%以上である。
【0011】
本発明の巻線界磁型同期機及び巻線界磁型同期機の製造に用いられる本発明の装置は、150年間の電動機技術、50年間の給電技術、及び30年間のソフトウェア工学の収斂を示すものであり、新規の、自明でない、有益な新しい装置を生み出す。発明の文脈を提供するため、以下でこれら各分野について説明する。
(電動機技術)
【0012】
IEEEは2006年の研究で、米国の電力消費の60%が電動機によるものであり、これら電動機の大部分が70%以下の効率で動作する誘導電動機であると報告した。電動機効率の法的制限を強化する法律が2008年に可決、2010年に施行され、最も低効率で最も安価な誘導電動機は事実上違法となった。これは照明の効率基準強化を巡っていささかマスコミを騒がせたものと同じ法律であった。この法律制定以前は、購入価格が最も低い低効率の電動機が最も魅力的であった。法律制定後は、電動機所有の総費用に対して非常に注目が高まった。週7日、1日24時間稼働する電動機のエネルギー費用は、電動機の寿命全体を通じて見れば初期費用の10倍から20倍になり得る。
【0013】
電動機業界では、電動機は効率に応じて等級分けされている。最高効率のクラスはスーパープレミアムで、そのほとんどは永久磁石を含む電動機である。世界各国での効率に関する立法措置や、これら電動機に対する市場の拡大もあって、このクラスの電動機の市場は2011年から2017年の間に9倍に拡大すると予想される。
【0014】
このことは多くの成長痛を伴うこととなった。その最も顕著なものは(これは最も深刻なものではないが)、中国による希土類素材国際市場の独占である。中国は、原料鉱物コストを引き下げることにより、競合する鉱山操業を事実上閉鎖に追い込んだ。その後、中国は原料鉱物価格を引き上げ、又はその販売を制限し、加工品(磁石等)の価格をより競争的にし、効果的に、顧客に加工品を購入させるようにしむけた。しかし、これは一時的な現象である。「希土類」という呼称に反し、希土類元素はさほど稀なものではない。希土類は全大陸に相当の埋蔵量がある。例外は希土類が最初に分離された西欧である(そのため「稀」と呼ばれた)。
【0015】
より深刻な問題は、希土類元素を磁石に加工する工程が有毒で複雑な工程であり、世界は希土類磁石の急激な製造拡大にとても対応できないということである。長期的には、これは希土類磁石に持続的にプレミアムがつくということであり、永久磁石電動機及び発電機は、磁石を使わないものよりも本質的に高価になる。
【0016】
近年、高効率の誘導電動機が知られるようになった。通常の誘導電動機の70%に対し、これら電動機は最大81%の効率を達成している。ロータにはアルミニウムに替えて銅を用い、電動機のロータを大きくし、磁束密度を減らすことで渦電流損を減らしている。しかし、その結果、定格出力が同じであれば普通効率の誘導電動機より重い構造となり、コストは定格出力が同等の永久磁石電動機に近いものになる。
【0017】
しかし、電動機を作る方法は他にもある。スイッチトリラクタンスモータの登場は1830年まで遡る。直巻DC電動機も1830年代に登場した。誘導電動機の登場は1885年である。当初ダイナモと呼ばれた巻線界磁型発電機の登場は1870年代である。その類縁にあたる巻線界磁型電動機もほぼ同じ頃から存在している。これら全ての種類の電動機は、電流により電動機のロータに磁界を発生させる1又は複数の基本電磁構造を採用している。永久磁石電動機だけがロータの磁界を維持するのにエネルギーを必要としないが、これには磁石自体のコスト以上のコストがかかっている。
【0018】
いかなる永久磁石電動機においても、ロータ磁石自体の磁界強度は一定である。これは有利でもあり不利でもある。速度ゼロのときに大きなトルクが必要な機器に用いる場合、ロータの磁界があるので容易かつ効率的にこの必要を満たすことができる。しかし、ロータの磁界が一定であることは、高速での回転速度が電源電圧に制約されることを意味する。また、電動機の速度を可変にする必要がある場合、電動機への最大電力を制御しなくてはならず、この制御に伴う損失が発生する。
【0019】
全ての非磁石型電動機構造において、ロータの磁界強度は調節可能であり、電動機動作を最適化できる。直巻DC電動機においては、電流を機械的スリップリングに流すため、機械的な、また保守上の問題がある。スイッチトリラクタンスモータにおいては、ロータの磁界は常に変化するため、渦電流損、鉄損、及び大きな半径方向力が生じ、ノイズの原因となる。同様に、誘導電動機はロータがステータの磁界より少し遅れて回転するため、ロータ内に誘導される磁界が変化し、渦電流損と鉄損の原因となる。巻線界磁型電動機の場合はロータの磁界が変化しないため渦電流損や鉄損がない。また、本発明の巻線界磁型電動機は磁石を使わずに永久磁石電動機に近い効率を示す。
【0020】
現在の巻線界磁型電動機は、10馬力以上の出力レベルに限られ、主に系統電源と同期する速度で運転され、固定式機器、及び大型の固定式及び移動式の発電機に使用される。これは、磁界を励起するための電力を動くロータに供給する必要があるからである。このための現行技術はスリップリング、低周波誘導又は固定周波誘導技術を用いるもので、いずれも保守上の課題、サイズが大きくなること、又は機械的精度の制約といった問題があり、軸出力レベルが高い場合にのみ経済的合理性がある。
【0021】
自動車や産業機器における電気牽引機器の活用増加により、高馬力の永久磁石型及び誘導型の電動機/発電機が開発された。永久磁石電動機/発電機の場合、外的機械エネルギーにより磁石ロータが回転し続けると障害が発生し得る。これは危険な状況につながる。誘導型の牽引電動機/発電機の場合、低速高トルク運転ではロータのAC鉄損及び渦電流損が大きくなり特に効率が低い。巻線界磁型電動機は、上述のロータ巻線への電力供給における現行の制約のため、現在これらの機器には使われていない。
【0022】
一般的に巻線界磁型同期機のロータに励磁電力を経済的に供給する方法があれば、より小さく、費用対効果が高く、全ての機器に応用できる、このクラスの電動機及び発電機が得られる。さらに、10馬力以下の出力レベルで巻線界磁型同期機のロータに励磁電力を経済的に供給する方法があれば、このタイプの電動機が永久磁石電動機と競争することが可能になる。永久磁石電動機と高効率の誘導電動機の価格曲線は上昇しつつあり、巻線界磁型電動機の価格曲線は下降している。
(給電技術)
【0023】
過去50年間、給電技術は、既存の系統電力、電池電力、又は発電機電力を、固体回路を動かすための隔離された低電圧に転換することに集中してきた。電力レベルはミリワットからキロワット単位の範囲であり、開発目標はコスト低減、サイズ縮小、及び効率向上であった。
【0024】
全ての隔離された電力供給は、変圧器を使って、隔離された負荷に電源からエネルギーを電磁伝送する。変圧器のサイズは、電力レベルが大きくなると大きくなり、動作周波数が大きくなると小さくなる。50年にわたる継続的な研究の結果、材料の改良と製造技術の進歩が電源変圧器の設計を1MHz以上の動作周波数、100ワット/立法インチ以上の電力密度に押し上げた。
【0025】
変圧器技術の進歩に伴い、これに追随すべく他の電力用部品、トランジスタ、ダイオード、及び受動部品も、損失、サイズ、速度、コストの面で進歩を遂げた。
【0026】
回路トポロジーも進化し、損失要因となる動作条件を回避することにより損失をさらに減らす共振変換器等のアイデアが現れた。
(デジタル・ソフトウェア技術)
【0027】
デジタル・ソフトウェア技術の電力制御への利用は比較的遅く、1980年代初めに現れ、サーボ機構等の高精度低電力機器の性能向上につながった。1980年代後半までには、デジタル制御された電力が全ての電動機技術に応用された。今日、磁界ベクトル制御等の技術は全ての出力帯で速度及びトルクを高度に制御するが、電動機への全ての電力供給を厳格に制御する必要があるため効率が悪い。
(本発明)
【0028】
前述のとおり、米国では電力消費を削減する強いニーズがある。米国の電力消費の少なくとも60%が電動機によるものである。現在、電子駆動装置の付加、誘導電動機の高価な改良、又は永久磁石電動機への転換により、これらの電動機の効率向上のための努力が協調して行われている。自動車業界のガソリン原動機から電動機への転換の傾向に合わせ、永久磁石電動機よりも安価で、誘導電動機よりも電力効率の高い電動機が求められている。これらの特性を本発明の巻線界磁型電動機に見出すことができる。また、多くの電動機が10馬力以下の電力レベルで運転されることから、比較的非効率な誘導電動機や高価な磁石型電動機を減らしていくことが求められている。
【0029】
本発明は3つの局面、即ち、機械、機械に容易に挿入できるロータ巻線を備えた装置、及びロータ巻線に接続可能な装置を伴う。
(第1の局面)
【0030】
第1の局面は5つの要素を備えた装置である。第1の要素は、トルク生成のためにロータ巻線を有しロータ磁石を有しない巻線界磁型同期機である。いくつかの実施形態において、巻線界磁型同期機は電動機、AC発電機、及び直流(DC)発電機を備える。巻線界磁型同期機は、いくつかの実施形態において10馬力以下の定格出力で動作するようになっている。巻線界磁型同期機は、いくつかの実施形態において10馬力を超える定格出力で、いくつかの実施形態において50馬力を超える出力レベルで、いくつかの実施形態において100馬力を超える出力レベルで、動作するようになっている。またいくつかの実施形態において、150馬力を超える出力レベルで動作するようになっている。いくつかの実施形態において巻線界磁型同期機は、牽引電動機等の、オフラインの可変速度の機器内で動作する。いくつかの実施形態において巻線界磁型同期機は、ポンプやコンプレッサ等の、オンライン又はオフラインの機器として動作する。
【0031】
第2の要素は、電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機である。発電機は正弦波や三角波等、他の電圧波形を提供することもできるが、エネルギー伝搬には矩形波が最も単純で効率的である。
【0032】
第3の要素は、矩形波AC発電機に接続した少なくとも1つの共振磁界励磁機である。この共振磁界励磁機は、(1)回転型基準フレームと、(2)固定型基準フレームと、(3)可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有する。共振磁界励磁機は50kHz以上の共振周波数で共振モードで動作するようにしている。いくつかの実施形態において、この装置は矩形波AC電圧発電機と共振磁界励磁機をただ1つずつ含む。いくつかの実施形態において、共振磁界励磁機の回転式部品は円形のプリント配線アセンブリ(PWA)に実装される。これらの実施形態では、このアセンブリは電動機/発電機のシャフトとともに回転するので、バランスが取れるように注意が必要である。いくつかの実施形態において共振磁界励磁機は回転変圧器を含み、その漏れインダクタンスがコンデンサとともに共振回路を形成する。
【0033】
第4の要素は、矩形波AC発電機及び共振磁界励磁機に接続した制御装置である。この制御装置は、(1)共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、(2)共振周波数を追跡し、(3)AC電流の電流伝送が最大となるように、駆動周波数が共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにしている。制御装置は上記の機能を持つようにしたものであれば如何なるものでもよい。これには、例えば、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路、及びプログラマブル論理回路が含まれる。マイクロコントローラと回転変圧器を用いる実施形態において、制御装置は回転変圧器一次側への電圧と電流を監視し、共振又はそれに近い可変周波数の矩形波信号を生成して回転変圧器一次側を駆動する電力駆動装置に送る。
【0034】
第5の要素は、共振磁界励磁機及び巻線界磁型同期機に接続され、AC電流を巻線界磁型同期機のロータ巻線に流す前にDC電流に変換する整流器である。
【0035】
本発明の装置は、同等の出力レベルで動作するようにした誘導機より高効率である。いくつかの実施形態は、同等の出力レベルで動作するようにしたプレミアム磁石電動機に迫る電力効率を持つようにしている。本発明のいくつかの実施形態においては、効率が少なくとも90%に、いくつかの実施形態においては少なくとも92%に、いくつかの実施形態においては少なくとも94%に、またいくつかの実施形態においては少なくとも95%になるようにしている。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、共振磁界励磁機はさらに特徴を有する。回転変圧器は固定式の1次側と回転式の2次側を有し、これらが可変漏れインダクタンスを生む間隙を形成するようにしている。共振コンデンサは回転変圧器に接続され、50kHz以上の周波数で可変漏れインダクタンスと共振するようにしている。さらに、これらの実施形態における制御装置は、回転変圧器1次側を駆動するための可変周波数矩形波AC電圧信号を生成するようにされている。
【0037】
上記の実施形態において以下の構成が成り立つ。回転変圧器の1次側は機械の固定式基準フレームに取り付けられる。回転変圧器の2次側は、回転式基準フレームが動いても変圧器コア周囲の磁束通路が変化しないような状態で回転式基準フレームに取り付けられる。回転変圧器の1次側と2次側の間隙は、2次側が独立して回転することを可能にし、回転変圧器の漏れインダクタンスの決定に役立ち、固定式フレームから回転式フレームにエネルギーを磁気的に伝送する。共振コンデンサは回転変圧器の1次側又は2次側の巻線に直列接続される。このように、共振回路は回転型基準フレームにあっても固定型基準フレームにあってもよい。このコンデンサの値は回転変圧器の漏れインダクタンスと50kHz以上の周波数で共振するように選ばれる。2次側では、1又は複数のダイオードが整流装置内に接続され、その出力側がロータ界磁巻線に接続される。いくつかの実施形態において、第2のコンデンサが界磁巻線と並列接続されて低域フィルタを形成する。
【0038】
永久磁石同期電動機及び巻線界磁型同期電動機のいずれにおいても、ロータの回転磁界により、電源と逆向きで磁界の強さとロータ速度の積に比例する逆起電力(EMF)電圧が生じる。永久磁石同期電動機の場合には、これにより所定の電源につないだ電動機の最大速度が制約されるのみならず、電動機ステータへの電力供給を常に制御することが必要になる。これは、電動機ステータ巻線の電圧を20kHz以上の周波数でパルス幅変調することにより行うが、駆動系電子回路内の損失増大、電磁干渉(EMI)の問題、及び軸受の孔食等の静電事象につながる。
【0039】
本発明の第1の局面の一実施形態において、ロータ磁界とこれによる逆EMF電圧は電源電圧とほぼ等しくなるように調節可能であり、ステータ巻線を変調する必要をなくすことができる。ステータ巻線は突極数と電動機速度の積に等しい数百Hzまでの周波数でスイッチング又は整流することができる。これによりパルス幅変調(PWM)スイッチング損失をなくし、EMIの影響範囲と静電効果を数桁減らすことができる。
(第2の局面)
【0040】
第2の局面は同様に5つの要素を備えた装置である。第1の要素は、巻線界磁型同期機のためのロータ巻線である。第2の要素は、電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波交流(AC)電圧発電機である。第3の要素は、矩形波AC発電機に接続した少なくとも1つの共振磁界励磁機であり、この共振磁界励磁機は、(1)回転型基準フレームと、(2)固定型基準フレームと、(3)可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有する。共振磁界励磁機は50kHz以上の共振周波数で共振モードで動作するようにしている。第4の要素は、矩形波AC発電機及び共振磁界励磁機に接続した制御装置であり、(1)共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、(2)共振周波数を追跡し、(3)AC電流の電流伝送が最大となるように、駆動周波数が共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにしている。第5の要素は、共振磁界励磁機と巻線界磁型同期機のロータ巻線とに接続され、巻線界磁型同期機に取り付けられるとAC電流をロータ巻線に流す前にDC電流に変換する整流器である。いくつかの実施形態において、前記ロータ巻線は、同期永久磁石機又はカゴ型誘導機の永久磁石ロータと交換する形で後付けで用いることができる。本局面のいくつかの実施形態は既存の巻線界磁型同期機に後付けするのに適している。この局面の諸要素は前述のものと同様である。
(第3の局面)
【0041】
第3の局面は4つの要素を備えた装置である。第1の要素は、電圧及び駆動周波数を有する少なくとも1つの矩形波AC電圧発電機である。第2の要素は、矩形波AC発電機に接続した少なくとも1つの共振磁界励磁機であり、この共振磁界励磁機は、(1)回転型基準フレームと、(2)固定型基準フレームと、(3)可変漏れインダクタンスを持ち共振コンデンサに直列接続された回転変圧器を備えた共振回路とを有する。共振磁界励磁機は50kHz以上の共振周波数で共振モードで動作するようにしている。第3の要素は、矩形波AC発電機及び共振磁界励磁機に接続した制御装置であり、(1)共振磁界励磁機への電圧と電流を測定し、(2)共振周波数を追跡し、(3)AC電流の電流伝送が最大となるように、駆動周波数が共振周波数に実質的に一致するよう調節するようにしている。第4の要素は、共振磁界励磁機に接続され、AC電流を巻線界磁型同期機のロータ巻線に流す前にDC電流に変換する整流器である。これは現行技術、例えば、スリップリング交換や現在使われている低周波又は固定周波数の誘導装置に替わるものである。第3の局面のいくつかの実施形態は、巻線界磁型同期機の製造時に組み込むのに適している。この局面の諸要素は前述のものと同様である。
【0042】
これら3局面のそれぞれにおいて、本発明への電力は、出力レベルに応じ降圧(buck)コンバータ、ハーフブリッジコンバータ、又はフルブリッジコンバータ等の種々の公知手段により調整又は調節できる。およそ全ての給電技術における他の公知技術も、巻線界磁型電動機ロータへの電力の調整又は調節に用いることができる。
【0043】
その一例は、降圧コンバータを用い、AC電源線に同期した整流正弦波形電圧を供給して本発明の高周波矩形波発生器の振幅を変調するユニバーサルモーションシステムである。これは、巻線界磁型電動機ロータに、AC電源線に同期した整流正弦波形磁界を発生させる。巻線界磁型電動機のステータは三相電子整流子とブリッジ整流器を通してAC電源線に接続されている。このブリッジ整流器の後ろにはフィルタコンデンサがないため電子整流子への電圧も電源線に同期した整流正弦波である。ロータの角度に応じて、電子整流子が適切なステータ巻線をこの整流正弦波に接続し所望の方向のトルクを生み出す。ロータ磁界とステータ磁界がともに同形かつ同期しているので、この装置への電源線電流は電源線電圧と同位相となり、動作時の力率が1となる。およそ全ての給電技術における他の公知技術も、ロータ電圧の調整又は調節に用いることができる。
【0044】
我々の発明の一実施形態は、製造中止になりつつある従来型ユニバーサル電動機に挿入可能な代替品を提供する。現行のユニバーサル電動機はブラシを用いる。この型の電動機の動作出力は最大のもので約1kWである。このレベルになると電力効率は40%程度となり信頼性も低い。ますます多くの製造者が1kWユニバーサルブラシ電動機の製造を中止し永久磁石ブラシ電動機に移行している。上で説明した組み合わせにより、ユニバーサルモーションシステムと組み合わせた本発明を1kWユニバーサルブラシ電動機に挿入して置換することで、価格競争力があり信頼性と効率の高いユニバーサル電動機を構成することができる。単純な電子制御、及び希土類磁石を使わないことにより、この電動機は、製造中止のブラシ電動機でありながら、永久磁石ブラシレス電動機で代替する場合よりも高い価格競争力を維持する。本発明を組み込むことで電力効率90%以上のユニバーサル電動機が得られる。
【0045】
本発明の同じ実施形態は、低効率の単相誘導電動機の代替品をも提供する。低効率単相誘導電動機もまた市場から消えつつあり、電子駆動装置つき誘導電動機又は電子駆動装置つき永久磁石ブラシレス電動機に替われられようとしている。しかし、これらの駆動装置には電動機への電力全体を制御するためパルス幅変調(PWM)技術が必要なことから、強い送電線高調波、強い電磁干渉、及び低い力率という難点があり、これら全ては、その緩和のために高価でかさばる力率矯正回路及びフィルタを必要とする。上記のとおり、本発明を用いるブラシレスユニバーサル電動機は、電源線に直接、力率1をもたらし、力率矯正回路は不要である。この電動機は電力のわずか3%をPWM技術にあてるため電磁気の影響範囲はずっと小さいものとなり、EMIフィルタの必要性は非常に小さくなり、又は完全になくなりさえする。
【0046】
本発明の諸局面は、本発明のいくつかの実施形態を例示する図を通じて理解を深めることができる。同じ要素を示す場合には同じ番号を用いる。図1は、巻線界磁型同期機に接続した本発明の装置の諸要素のブロック図である。装置(100)は、電圧及び駆動周波数を有する矩形波AC電圧発電機(110)を備える。矩形波AC電圧発電機110は、固定式フレームと回転型フレームを有する共振磁界励磁機(120)に接続され、共振磁界励磁機120は整流器(130)に接続される。制御装置(140)は、矩形波AC発電機110及び共振磁界励磁機120に接続される。整流器130は、巻線界磁ロータ(154)とステータ(158)を有する巻線界磁型同期機(150)にも接続される。この巻線界磁型同期機150との接続は、巻線界磁ロータ154との間になされる。
【0047】
図2Aは、共振磁界励磁機の一実施形態の概略図であり、回転式基準フレーム上のコンデンサを示す。共振磁界励磁機120は、固定式の1次側(122)、回転型の2次側(124)、及び間隙(126)を有する回転変圧器を備える。回転変圧器は、可変漏れインダクタンス(127)を持ち、共振コンデンサ(128)と直列に接続される。
【0048】
図2Bは、共振磁界励磁機の一実施形態の概略図であり、固定式基準フレーム上のコンデンサを示す。共振磁界励磁機120は、固定式の1次側122、回転型の2次側124、及び間隙126を有する回転変圧器を備える。共振磁界励磁機120の固定型基準フレームはまた、可変漏れインダクタンス127を持ち共振コンデンサ128と直列接続される回転変圧器を備える。
【0049】
図3Aは、ポットコアアキシャル回転変圧器を用いた共振磁界励磁機の一実施形態を示す側面図である。共振磁界励磁装置(200)の一実施形態を、巻線界磁ロータ(210)とそれを貫く巻線界磁型同期機シャフト(220)とともに示している。2次側磁性ポットコア(230)(回転変圧器2次側巻線は見えない)、1次側磁性ポットコア(240)(回転変圧器1次側巻線は見えない)、及び、整流器と共振コンデンサを実装したPWA(250)は、巻線界磁型同期機に物理的に連結され、巻線界磁ロータ210に電気的に接続されている。固定式1次側及びこれに関連する磁性コア(240)を除き、全ての要素は回転する。
【0050】
図3Bは、図3Aの実施形態の2次側磁性ポットコア230中の回転変圧器2次側を通る線260に沿った端面図である。ポットコア230中の回転変圧器2次側に囲まれた巻線磁界ロータシャフト220が示されている。2次側磁性ポットコア230は2次側巻線(270)を囲んでいる。回転変圧器1次側の断面も同じ構造を呈する。
【0051】
図4Aは、ラジアル回転変圧器を用いた共振磁界励磁機の一実施形態の側面図である。共振磁界励磁装置(300)の別の実施形態が巻線界磁ロータ(310)とそれを貫く巻線界磁型同期機シャフト(320)とともに示されている。回転変圧器2次側(370)を伴った2次側磁性コア(330)、回転変圧器1次側(380)を伴った1次側磁性コア(340)、及び、整流器と共振コンデンサを実装したPWA(350)が、巻線界磁型同期機シャフト320に物理的に連結され、巻線界磁ロータ310に電気的に接続されている。巻線界磁型同期機シャフト320の回りに2次側巻線(370)と1次側巻線(380)が示されており、これらは間隙(390)で隔てられている。回転変圧器1次側340を除き、全ての要素は回転する。
【0052】
図4B図4Aの実施形態の磁性コア330中の回転変圧器2次側及び磁性コア340中の回転変圧器1次側を通る線360に沿った端面図である。磁性コア330中の回転変圧器2次側巻線370及び磁性コア340中の回転変圧器1次側380に囲まれた巻線界磁ロータシャフト320が示されている。2次側巻線(370)と1次側巻線(380)は間隙390で隔てられている。
【0053】
図5Aは巻線界磁ロータに接続した本発明の装置の諸要素のブロック図である。この図は、巻線界磁型同期機150に替えて巻線ロータ(154)がある点以外は、図1と同様である。巻線界磁ロータ154は永久磁石型又は誘導型の電動機又は発電機のロータを代替することが意図されている。
【0054】
図5Bは、図5Aに示す本発明の装置に接続したユニバーサル電動システムのブロック図である。組み合わせ(400)はブリッジ整流器(410)に流れ込むAC送電線電力を含む。ブリッジ整流器410は電子整流子(420)に接続され、電子整流子はさらに巻線界磁型電動機ステータ(430)に接続される。ブリッジ整流器410は降圧コンバータ(440)にも接続され、降圧コンバータは図5Aの装置100の矩形波発電機110に接続される。
【0055】
図6は、巻線界磁ロータに接続可能な本発明の装置の諸要素のブロック図である。この図は、巻線界磁型同期機150が示されていない点以外は図1と同様である。この実施形態は、例えば巻線界磁型発電機のような既存の同期機の既存の巻線界磁ロータに取り付けることが意図されている。
【0056】
本発明の第3の局面の一実施形態の動作機序を説明する。上述のとおり個々の要素は同様の機能を果たす別のものと交換してもよい。共振磁界励磁機は電気共振を利用し電動機ステータの固定式基準フレームからロータの回転式基準フレームにエネルギーを伝送し、界磁巻線に調節可能なDC電流を供給する。マイクロコントローラは、(1)電流センサ又は変流器を介して回転変圧器1次側電流波形を監視し、また、回転変圧器1次側の電圧を監視し、(2)回転変圧器1次側を駆動する矩形波の周波数を共振周波数又はわずかにそれを下回る周波数に調節する。これにより1次側駆動回路におけるスイッチング損失が最小に抑えられるだけでなく、回転変圧器2次側に最も効率的にエネルギーを伝送できる。整流ダイオードは2次側の共振AC電流をDCに変換し界磁巻線に供給する。いくつかの実施形態において、マイクロコントローラは、矩形波AC発電機の電圧の制御も行い、ロータ磁界内の所望の電流レベルを維持する。他の実施形態も同様に動作する。
【0057】
具体的な動作要件及び動作環境に適合させるための修正及び変更は当業者には明白であろう。したがって本発明は、開示の目的をもって説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の真の精神と範囲からの逸脱に当たらない全ての変更及び修正を含む。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】