(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-516570(P2017-516570A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】医療用流体の投与用のドリップチャンバー
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20170526BHJP
A61M 5/165 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
A61M5/14 500
A61M5/165 500N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-569999(P2016-569999)
(86)(22)【出願日】2015年4月20日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2015058496
(87)【国際公開番号】WO2015180892
(87)【国際公開日】20151203
(31)【優先権主張番号】14170171.4
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】509063694
【氏名又は名称】フレゼニウス カービ ドイチュラント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ピュッター, ハリー
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066DD09
4C066GG01
4C066MM07
4C066PP03
4C066QQ02
4C066QQ26
(57)【要約】
医療用流体の投与用のドリップチャンバー1は、チャンバー300を形成するチャンバー部材30と、チャンバー300に医療用流体を入れる入口20と、ドリップチャンバー1の出口においてチャンバー部材30に接続されるコネクタ31とを備える。チャンバー300から医療用流体を出すようにコネクタ31にはチューブ4が接続可能である。ここでは、コネクタ31は、射出成形を用いてチャンバー部材30へ一部品として形成され、チャンバー部材30は第1の材料から形成され、コネクタ31は、第1の材料とは異なる第2の材料から形成される。このようにして、簡単で費用効果的な製造が可能であると同時に、容易に圧搾可能であり、確実で耐久性のある接続をチューブにもたらすことができるドリップチャンバーが提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用流体の投与用のドリップチャンバー(1)であって、該ドリップチャンバー(1)は、
チャンバー(300)を形成するチャンバー部材(30)と、
前記チャンバー(300)に医療用流体を入れる入口(20)と、
該ドリップチャンバー(1)の出口において前記チャンバー部材(30)に接続されるコネクタ(31)と、を備え、
前記チャンバー(300)から前記医療用流体を出すように前記コネクタにはチューブ(4)が接続可能であり、
前記コネクタ(31)は、射出成形を用いて前記チャンバー部材(30)へ一部品として形成され、前記チャンバー部材(30)は第1の材料から形成され、前記コネクタ(31)は、前記第1の材料とは異なる第2の材料から形成されることを特徴とする、ドリップチャンバー。
【請求項2】
前記第1の材料は、前記第2の材料よりも小さい弾性率を有することを特徴とする、請求項1に記載のドリップチャンバー。
【請求項3】
前記第1の材料及び前記第2の材料は、異なる弾性率を有する熱可塑性ポリマーであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のドリップチャンバー。
【請求項4】
前記第1の材料は、第1のタイプのポリスチレン又はスチレンブタジエンブロックポリマーであり、前記第2の材料は、前記第1のタイプのポリスチレンと比較するとより高い弾性率を有する第2のタイプのポリスチレンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項5】
前記第1の材料はポリスチレン又はスチレンブタジエンブロックポリマーであり、前記第2の材料は、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項6】
前記コネクタ(31)は、前記チャンバー部材(30)の前記入口(20)の反対側に配置されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項7】
前記コネクタ(31)は受入れ開口(310)を有し、該受入れ開口(310)には前記チューブ(4)の端部(41)を挿入可能であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項8】
前記受入れ開口(310)は、前記コネクタ(31)又は前記チャンバー部材(30)に形成される出口開口(309)に隣接し、前記チャンバー(300)に流れ接続をもたらし、
前記受入れ開口(310)は、前記出口開口(309)の前記直径(D1)と比較するとより大きい直径(D2)を有することを特徴とする、請求項7に記載のドリップチャンバー。
【請求項9】
前記コネクタ(31)は、前記受入れ開口(310)を形成するスタブセクション(314)を有することを特徴とする、請求項7又は8に記載のドリップチャンバー。
【請求項10】
前記スタブセクション(314)は、該スタブセクション(314)に向かってテーパーが付いている円錐形セクション(311)を介して、前記チャンバー部材(30)の底部セクション(304)に接続されることを特徴とする、請求項9に記載のドリップチャンバー。
【請求項11】
前記コネクタ(31)は、前記チャンバー部材(30)の底部セクション(304)の周囲を囲む接続セクション(312)を備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項12】
前記チャンバー部材(30)は、前記コネクタ(31)内に延在し、前記チューブ(4)の端部(41)を受ける挿入開口(308)を形成するスタブセクション(307)を備え、
前記挿入開口(308)は、前記スタブセクション(307)に形成される出口開口(309)に隣接し、前記チャンバー(300)に流体接続をもたらし、
前記挿入開口(310)は、前記出口開口(309)の前記直径(D1)と比較するとより大きい直径(D2)を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項13】
膜(320)が、膜の周縁部(323)が前記チャンバー部材(30)の面(305)と前記コネクタ(31)の面(313)とに挟まれた状態で配置され、前記膜(320)は前記チャンバー(300)を前記出口から分離することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項14】
前記膜(320)は、膜の周縁部(323)が前記チャンバー部材(30)の面(305)又は前記コネクタ(31)の面(313)に接続され、
前記膜(320)は前記チャンバー(300)を前記出口から分離することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のドリップチャンバー。
【請求項15】
医療用流体の投与用のドリップチャンバー(1)を製造する製造方法であって、
前記ドリップチャンバー(1)は、チャンバー(300)を形成するチャンバー部材(30)と、前記チャンバー(300)に医療用流体を入れる入口(20)と、出口において前記チャンバー部材(30)に接続されるコネクタ(31)と、を備え、前記チャンバー(300)から前記医療用流体を出すように前記コネクタにはチューブ(4)が接続可能であり、
前記コネクタ(31)を、2成分射出成形技法を用いて前記チャンバー部材(30)と一部品として形成し、前記チャンバー部材(30)を第1の材料から形成し、前記コネクタ(31)を前記第1の材料とは異なる第2の材料から形成することを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の医療用流体の投与用のドリップチャンバー(drip chamber:点滴筒)及び医療用流体の投与用のドリップチャンバーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種類のドリップチャンバーは、内部にチャンバーを形成するチャンバー部材を備える。ドリップチャンバーは、チャンバーに医療用流体を入れる入口と、チャンバーから医療用流体を出す出口とを更に備える。この出口において、チャンバー部材にはコネクタが接続される。コネクタにはチューブが接続可能である。このチューブを介して、医療用流体を例えば患者に対して導くことができる。
【0003】
ドリップチャンバーは、例えば、流体から気体(空気等)を浮上させて抜き、気体が下流へと通過しないようにする目的を有し得る。さらに、ドリップチャンバーの使用により、流体が投与される速さを推定することが可能である。詳細には、所与の粘性を有する流体に関して、既知のサイズの孔からのドリップは同一容量を有し、そのため、例えば1分間のドリップの数を計数して、流量の推定値を得ることができる。ここでは、輸液セットにおいて、例えばチューブ上のクランプによって流量を制御し、チューブに流れ抵抗をもたらすことができる。
【0004】
この種類のドリップチャンバーは、例えば、患者に静脈注射される薬剤又は別の液体等の医療用流体を注入するのに用いることができ、この目的では輸液セットの一部とすることができる。この種類のドリップチャンバーは、例えば、輸血(transfusion)又は非経口栄養法にも用いることができる。
【0005】
この種類のドリップチャンバーにおいて、使用者、例えば看護師が、チャンバー部材を圧搾することによってドリップチャンバーを充填することができるように、小さい力で圧搾することができる圧搾可能なチャンバー部材を設けることが概して望ましい。更なる要件として、チャンバー部材は、使用者がチャンバー内を見通せて、医療用流体がチャンバー内に充填されたか否かを判断することができるように透明とすべきである。
【0006】
一方、ドリップチャンバーのコネクタは、安全で耐久性のある接続を、チューブ、例えばPVCチューブにもたらすことができるように構成しなければならない。このために、チューブを例えばコネクタに糊着することができるが、この糊着による接続が例えばPVCのマイグレーション効果によって影響を受けることがないように、コネクタは十分な剛性を呈しなければならない。
【0007】
特許文献1から既知のドリップチャンバーにおいて、チャンバー部材は第1の弾性材料から作製される。コネクタは、出口部位においてチャンバー部材に接続され、隣接するチューブへの接続をもたらすように構成される。
【0008】
特許文献2に記載されているドリップチャンバーは、透明で柔軟な弾力性のあるプラスチックでできた筒状胴部を備える。この胴部は、自重のもとで円筒形を保つほどには十分硬質であるが、潰すには比較的僅かな力しか必要としない。胴部の下端部は、プラスチック製の口絞りキャップ(reducing cap)で閉鎖されており、このキャップによりチューブへの接続をもたらす。
【0009】
特許文献3は、底部キャップがチャンバー部材に接続され、チャンバー部材がチューブへの接続をもたらすドリップチャンバーを記載している。
【0010】
特許文献4からは、射出成形によって作製されるチャンバー部材を備えるドリップチャンバーが既知である。チューブをドリップチャンバーに接続するコネクタが、チャンバー部材と同じ材料から一体成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第3,003,500号
【特許文献2】英国特許第717,733号
【特許文献3】米国特許第4,136,692号
【特許文献4】米国特許第5,489,385号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、簡単で費用効果的な製造が可能であると同時に、容易に圧搾可能であり、確実で耐久性のある接続をチューブにもたらすことができるドリップチャンバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、請求項1の特徴を備えるドリップチャンバーによって達成される。
【0014】
したがって、ドリップチャンバーのコネクタは、射出成形を用いることによってチャンバー部材へ一部品として形成される。チャンバー部材は第1の材料から形成され、コネクタは、第1の材料とは異なる第2の材料から形成される。
【0015】
このことは、コネクタとドリップチャンバーのチャンバー部材とを一部品として、それでもなお2つの材料によって形成するという構想に基づく。これに関して、コネクタは、射出成形技法を用いてチャンバー部材へ形成される。
【0016】
射出成形は、材料を金型内に射出することによって部品を作製する製造プロセスとして理解される。ここでは、材料は金型の金型キャビティ内に送り込まれ、金型キャビティ内において材料が冷却されてキャビティの形態へと硬化される。
【0017】
本ドリップチャンバーでは、コネクタは、好ましくは別個の成形ステップにおいて、射出成形によって形成される。したがって、第1の成形ステップにおいてチャンバー部材を形成し、その後の別個の成形ステップにおいて、コネクタをチャンバー部材へ異なる材料から成形する。したがって、コネクタは、(少なくとも)2つの異なる材料を用いる2成分射出成形技法を用いて形成される。その結果、チャンバー部材とコネクタとを形成する一体部品がもたらされる。
【0018】
2成分射出成形技法を利用することにより、コネクタ及びチャンバー部材は異なる材料から形成される。ここでは、チャンバー部材を形成する第1の材料は、コネクタを形成する第2の材料よりも弾性率が小さいことが好ましい。
【0019】
したがって、チャンバー部材の材料は、コネクタの材料と比較すると剛性がより低い。そのため、チャンバー部材は、コネクタと比較すると低い剛性を有することができる。詳細には、チャンバー部材は、十分な弾性及び柔軟性を有することができ、それにより、ドリップチャンバー内への流れをもたらすために、弾力性をもってチャンバー部材を圧搾し、ドリップチャンバーに対してポンプ作用を発揮することができる。
【0020】
それに対して、コネクタは、チャンバー部材と比較すると高い剛性を有するように形成することができ、それにより、確実に耐久性をもってチューブをコネクタに接続するのに十分な剛性のある部材がもたらされる。
【0021】
2成分射出成形技法を用いることによって、ドリップチャンバーの製造は、簡単かつ費用効果的になり得る。さらに、詳細には、均一に薄い壁厚を有するチャンバー部材を形成することも可能になる。この壁厚は、従来のドリップチャンバーよりも薄くすることができる。
【0022】
このことは、コネクタを、別個の成形ステップにおいてチャンバー部材へ一部品として一体成形することができることに起因する。射出成形によってドリップチャンバーのチャンバー部材を形成する従来の製造方法では、例えば特許文献4において行われているように、成形工具の金型コアは、出口の領域において、細いピンのみを介して対向する金型面に接続される。このようなピンは出口開口を形成し、したがって、出口開口の直径と等しい直径を有する。射出の間、成形材料は高圧で射出されるため、ピンが変形する可能性があり、それによりチャンバー部材の壁厚が不均一になる可能性がある。これにより、ドリップチャンバーを圧搾する際、使用者が触覚的に感じ取ることができる不均一な柔軟性及び弾性を生じる場合がある。
【0023】
これに対して、本発明によれば、コネクタは、2成分射出成形技法を用いて別個の成形ステップにおいて形成することができるため、チャンバー部材は、第1の成形ステップにおいて、均一で薄い壁厚を有して形成することができる。詳細には、金型コアを周囲の成形工具に接続する細いピンが必要とされない。コネクタは、第2の成形ステップにおいて、先に形成したチャンバー部材へ簡単で確実に作製することができる。
【0024】
(チャンバー部材の)第1の材料及び(コネクタの)第2の材料は、例えば、異なる弾性率を有する熱可塑性ポリマーとすることができる。
【0025】
第1の材料は、例えば、第1のタイプのポリスチレン又はスチレンブタジエンブロックポリマーとすることができ、一方、第2の材料は、第1のタイプのポリスチレンと比較すると弾性率がより高い第2のタイプのポリスチレンとすることができる。したがって、第1のタイプのポリスチレンは、より剛性のある第2のタイプのポリスチレン材料と比較すると、より柔らかい。
【0026】
代替的には、第1の材料は、ポリスチレン又はスチレンブタジエンブロックポリマーとすることができ、第2の材料は、メチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)とすることができる。ここでも、第1の材料は第2の材料よりも弾性率が小さいことが好ましい。
【0027】
1つの実施形態において、コネクタは、チャンバー部材の入口とは反対側に配置される。コネクタは、ドリップチャンバーの出口に配置され、チューブへの接続をもたらす。チューブは、例えば糊着によってコネクタに接続することができる。
【0028】
チューブを受けるために、コネクタは、例えば、チューブの端部を挿入することができる受入れ開口を有することができる。受入れ開口は、コネクタ又はチャンバー部材に形成されてチャンバーへの流れ接続をもたらす出口開口に隣接し、それにより、医療用流体は、チャンバーから出口開口を通り、コネクタに接続されているチューブへと流れることができることが有益である。
【0029】
ここでは、受入れ開口は、出口開口の直径と比較するとより大きい直径を有することが有益である。受入れ開口の直径は、受入れ開口に挿入されるチューブの外径に対応し、それにより、チューブは受入れ開口に正確に適合して収まることができることが好ましい。それに対して、外側開口の直径は、好ましくはチューブのルーメンの内径に一致し、それにより、チューブをコネクタに接続した場合に出口開口とチューブの内部ルーメンとの間に段差が形成されない。したがって、出口開口とチューブの内部ルーメンとは、同じ直径を有し、互いに位置合わせされる。これには、流体がチューブに流れる際に泡が発生するリスクを低減するという利点がある。さらに、ドリップチャンバーから出る最大流量を向上することができる。
【0030】
1つの実施形態において、コネクタは、受入れ開口を形成するスタブセクション(stub section)を有する。ここでは、スタブセクションは、例えば、円錐形セクションを介してチャンバー部材の底部セクションに接続することができる。円錐形セクションは、底部セクションからスタブセクションに向かってテーパーが付いており、それにより、医療用流体は、スタブセクションに向かって、ひいてはコネクタに接続されるチューブに向かって導かれる。
【0031】
コネクタは、射出成形を用いてチャンバー部材に形成される。ここでは、コネクタとチャンバー部材との間の一体接続部は、例えば、コネクタの接続セクションを介して形成することができる。接続セクションは、底部セクションにおいてチャンバー部材の周囲を囲む。チャンバー部材は、例えば、(圧搾により変形されていない状態では)概して円筒形とすることができる。底部セクションは、チャンバー部材の下端部における周縁領域に対応することができる。したがって、底部セクションは、底部セクションを少なくとも部分的に取り囲む接続セクションによって周囲を囲まれる。
【0032】
別の実施形態において、チャンバー部材は、コネクタ内に延在し、チューブの端部を受ける挿入開口を形成するスタブセクションを有することができる。チャンバー部材のスタブセクションには、コネクタをオーバーモールド成形することができ、それにより、コネクタのスタブセクションは、チャンバー部材のスタブセクションを囲むことができる。ここでは、コネクタのスタブセクションは、軸方向により長く延在する(チャンバー部材の底部から突出する)ことができる。チューブは、コネクタのスタブセクションの受入れ開口と、チャンバー部材のスタブセクションの挿入開口との双方に受けることができる。
【0033】
挿入開口は、チャンバーからチューブに向かって流れ接続をもたらすチャンバー部材のスタブセクションに形成される出口開口に隣接することが有益である。ここでは、チャンバーからチューブへの乱流を回避するため、好ましくはチューブの内部ルーメンの直径に一致する出口開口の直径と比較すると、好ましくはチューブの外径に対応する挿入開口はより大きい直径を有する。
【0034】
ドリップチャンバーは、例えば、流体から気体を浮上させて抜き、気体が下流へと通過しないようにする役割を果たす。さらに、ドリップチャンバーには濾過膜を設けることができ、それにより、さらに、ドリップチャンバーを通過する医療用流体の濾過が達成される。膜は、膜の周縁部がチャンバー部材の面とコネクタの面とに挟まれた状態で配置することができる。フィルター膜は、チャンバーをドリップチャンバーの出口から分離する役割を果たし、そのため、流体はドリップチャンバーから流れ出る際には膜を通過しなければならない。膜の周縁部を、チャンバー部材の周囲面、例えば端面と、コネクタの周囲面との間に配置することにより、膜は、コネクタをチャンバー部材へ成形する際にドリップチャンバー内に一体的に締結することができる。ドリップチャンバー内に膜を固定する別個のステップは必要とされない。詳細には、膜を糊着又は溶接する必要がない。
【0035】
代替的には、膜は、例えば、関連する面に糊着又は溶接することによって、チャンバー部材又はコネクタの周囲面に接続することもできる。したがって、膜は、別個のステップにおいて、例えば、チャンバー部材又はコネクタの関連する面にホットスタンプ加工することによって固定される。
【0036】
本目的はまた、医療用流体の投与用のドリップチャンバーを製造する方法であって、ドリップチャンバーは、
チャンバーを形成するチャンバー部材と、
チャンバーに医療用流体を入れる入口と、
出口においてチャンバー部材に接続されるコネクタであって、チャンバーから医療用流体を出すようにチューブが接続可能である、コネクタと、
を備える、方法によって達成される。ここでは、コネクタは、2成分射出成形技法を用いてチャンバー部材とともに一部品として形成される。チャンバー部材は第1の材料から形成され、コネクタは、第1の材料とは異なる第2の材料から形成される。
【0037】
ドリップチャンバーに関して上述した利点及び有利な実施形態は、ドリップチャンバーを製造する方法にも等しく適用される。したがって、上記を参照されたい。
【0038】
詳細には、コネクタは、別個のステップにおいてチャンバー部材へ射出成形することによって形成することができ、そのため、チャンバー部材とコネクタとは、別個の射出成形ステップにおいて形成される。ここでは、別個の成形ステップに関して、異なる成形キャビティを形成する異なる成形工具を用いることができる。これにより、第1のステップでは、均一に薄い壁厚を有するチャンバー部材と、第2のステップでは、好ましくは弾性があり柔軟なチャンバー部材上に十分な剛性のあるコネクタとを作製することが可能である。
【0039】
本発明の根底にある構想を、図面に示す実施形態を参照して以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】医療用流体を患者に静脈注射するための、ドリップチャンバーを使用する輸液セットの概略図である。
【
図3】本発明に係るドリップチャンバーの第1の実施形態の断面斜視図である。
【
図4】ドリップチャンバーの第2の実施形態の断面斜視図である。
【
図5B】チャンバー部材とコネクタとに挟まれて配置される膜を有しない
図5Aの図である。
【
図7】ドリップチャンバーの第3の実施形態の断面斜視図である。
【
図9】ドリップチャンバーの底部の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、例えば柔軟なバッグの形状の容器5から患者Pに医療用流体を投与する輸液セットの斜視図を示している。輸液セットは、ドリップチャンバー1と、ドリップチャンバー1に接続されるチューブ4とを備え、流れ方向Fにおいて容器5から患者Pに医療用流体を投与する。容器5は、例えば、病院環境において患者Pのベッドサイドのスタンド6に配置することができる。
【0042】
詳細には、ドリップチャンバー1は、気体、例えば空気を、医療用流体から浮上させて抜き、気体が下流に運ばれて患者Pに向かうことを防ぐ役割を果たす。さらに、ドリップチャンバー1は、医療用流体を患者Pに送達される前に濾過する膜(
図3〜
図9の実施形態における320)を備えてもよい。
【0043】
図2は、例えば、輸液、輸血、又は非経口栄養法に用いることができるドリップチャンバー1の図を示している。ドリップチャンバー1は、第1の部分すなわち頂部2と、第2の部分すなわち底部3とを備える。第1の部分2は、容器5、例えば柔軟なバッグに穿孔するように挿入することができる穿孔針20によって形成される入口を有する。したがって、入口20は、ドリップチャンバー1の入口側において上流の容器5に流体接続をもたらす。第1の部分2は、入口20が接続されるキャップ21を更に備える。
【0044】
第1の部分のキャップ21は、第2の部分3のチャンバー部材30に隣接する。チャンバー部材30は、概して円筒形の管形状を有し、十分な弾性及び柔軟性を備え、それにより、チャンバー部材30を圧搾方向Sに圧搾して、チャンバー部材30によって形成されるチャンバー300に流体の流れをもたらすポンプ作用を発揮することができる(例えば
図3を参照)。
【0045】
第1の部分2と第2の部分3のチャンバー部材30とは、例えば、ともに糊着することにより互いに接続することができる。ここでは、第1の部分2は、硬質のプラスチック材料から作製することができ、チャンバー部材30の剛性と比較すると高い剛性を有する。詳細には、横断方向の圧搾方向Sにおいてチャンバー部材30を圧搾する場合、第1の部分2は実質的に変形しない。
【0046】
チャンバー部材30は、第1の部分2の反対側の底端部において、チューブ4、例えばPVCチューブとの接続をもたらすコネクタ31に隣接する。ここでは、コネクタ31は、2成分射出成形技法を利用することによりチャンバー部材30と一体成形される。このことは、
図3〜
図9の実施形態に関して以下により詳細に記載する。
【0047】
図3に示されている第1の実施形態において、実質的にチューブ部材の形状のコネクタ31が、射出成形によってチャンバー部材30へ形成される。コネクタ31は、チャンバー部材30の底部301から突出するスタブセクション302に配置される。コネクタ31は受入れ開口310を形成し、受入れ開口310の直径D2はチューブ4の外径に一致し、それにより、端部41を有するチューブ4がコネクタ31の受入れ開口310に適合することができる。
【0048】
チャンバー部材30の底部301にあるスタブセクション302は、外周面において、円錐状の形状を有することができる。スタブセクション302は、外周面において、コネクタ31がスタブセクション302に一体的に接続されるように、スタブセクション302上に成形されるコネクタ31によって周囲を囲まれる。
【0049】
スタブセクション302内には、出口開口309が形成され、チャンバー部材30内のチャンバー300と、コネクタ31を介してチャンバー部材30に接続されるチューブ4との間に流れ接続をもたらす。出口開口309は、チューブ4の内部ルーメン40の直径に一致する直径D1を有する。したがって、チューブ4をスタブセクション302に突き当たるまで受入れ開口310に挿入する場合、スタブセクション302の出口開口309とチューブ4の内部ルーメン40との間に段差が形成されない。これにより、出口開口309から内部ルーメン40に移行する際の乱流の発生のリスクが低減され、ひいては下流への流れにおける気泡の発生のリスクも減少する。
【0050】
チャンバー部材30は第1の材料から作製され、一方、コネクタ31は、第1の材料とは異なる第2の材料から作製される。詳細には、チャンバー部材30は、比較的小さい弾性率を有する材料で作製され、そのため、チャンバー部材30は、横断方向の圧搾方向Sにおいて圧搾することができ、このために十分な弾性、柔軟性、及び弾力性がある。
【0051】
これに対して、コネクタ31は、チューブ4に確実かつ耐久性のある接続をもたらすために、チャンバー部材30と比較すると高い剛性を有する。詳細には、コネクタ31の材料は、チャンバー部材30の材料よりも高い弾性率を有する。
【0052】
例えば、チャンバー部材30は第1のタイプのポリスチレンから作製することができ、一方、コネクタ31は、より堅い第2のタイプのポリスチレン、又はメチルメタクリレートアクリロニトリルブタジエンスチレン(MABS)で作製することができる。
【0053】
図3に示されているように、チャンバー300の底部には、チャンバー300を出口開口309から分割する膜320が配置されている。したがって、医療用流体は、チャンバー300を出るのに膜320を通過しなければならない。
図3の実施形態において、膜320は、リング状の固定部分321、322に挟まれて保持され、リング状の固定部分321、322は、膜の周縁部323を間に挟んで受け、例えば、チャンバー部材30の底部セクション304に糊着することができる。
【0054】
第2の実施形態は
図4〜
図6に示されている。
【0055】
この実施形態内において、コネクタ31は、内部にチューブ4の端部41を受ける受入れ開口310を形成するスタブセクション314を備える。スタブセクション314は、円錐形セクション311を介して接続セクション312に接続され、接続セクション312を介してチャンバー部材30に接続される。円錐形セクション311は、接続セクション312からスタブセクション314に向かってテーパーが付いており、そのため、チャンバー300からの流体が、スタブセクション314及びスタブセクション314に配置されたチューブ4に向かって導かれる。
【0056】
接続セクション312は、チャンバー部材30の底部セクション304の周囲を囲む。ここでは、リング状の接続セクション312が底部セクション304を囲み、底部セクション304は、チャンバー300の下端部においてチャンバー部材30の底縁領域に対応する。
【0057】
ここでも、コネクタ31は、射出成形を用いてチャンバー部材30へ一体成形される。チャンバー部材30は、コネクタ31において、上述した材料から形成することができる。
【0058】
図4〜
図6の実施形態において、膜320は、コネクタ31の円錐形セクション311と接続セクション312との接続場所において、チャンバー部材30の底部セクション304の端面305と面313とに挟まれて配置することができる。端面305及び面313は、それぞれチャンバー部材30及びコネクタ31の円錐形セクション311において周方向に延在し、端面305と面313との間に膜320の縁部323を保持する。
【0059】
ここでは、膜320は、コネクタ31をチャンバー部材30上に射出成形する間、ドリップチャンバー1内に一体的に締結することができる。それにより、膜320を締結する別個の締結ステップが必要とされない。
【0060】
別の実施形態が
図7〜
図9に示されている。この実施形態は、円錐形セクション306がチャンバー部材30の底部セクション304に隣接し、円錐形セクション306は、スタブセクション307に向かうテーパーがコネクタ31のスタブセクション314内に達している円錐状の形状を有するという点で、
図4〜
図6の実施形態とは異なる。
【0061】
チャンバー部材30のスタブセクション307には、出口開口309が形成され、出口開口309の直径D1は、コネクタ31に取り付けられるチューブ4の内部ルーメン40の直径D1に対応する。出口開口309は挿入開口308に隣接し、挿入開口308は、コネクタ31の受入れ開口310と位置合わせされる。詳細には、挿入開口308は、受入れ開口310の直径D2及びチューブ4の外径D2と一致する直径D2を有し、そのため、チューブ4は、端部41を受入れ開口310に挿入することができ、チャンバー部材30のスタブセクション307の挿入開口308に達するまで押し進めることができる。
【0062】
したがって、チューブ4がコネクタ31に挿入されている状態では、スタブセクション307に形成される出口開口309は、チューブ4の内部ルーメン40と位置合わせされ、それにより、出口開口309とチューブ4の内部ルーメン40との間の遷移部に段差が生じない。したがって、ドリップチャンバー1から流れ出る出口流に乱流及び気泡が生じるリスクが低減される。
【0063】
さらに、コネクタ31の受入れ開口310とチャンバー部材30にある挿入開口308とはともにチューブ受け部を形成し、このチューブ受け部により、異なる材料を有するコネクタ31及びチャンバー部材30の双方にチューブ4を糊着することが可能になる。チューブ4が糊着されると、チャンバー部材30とコネクタ31との間の遷移部がチューブ4の表面によって覆われ、ひいてはシールされることにより、更なる密封性がもたらされる。
【0064】
図7〜
図9の実施形態において、コネクタ31は、チャンバー部材30のスタブセクション307、円錐形セクション306、及び底部セクション304にオーバーモールド成形される。
【0065】
図7、
図8A、及び
図9に示されているように、出口流を濾過する膜320は、チャンバー部材30の円錐形セクション306の内側に形成される周方向平面305’に締結される。面305’は、円錐形セクション306と底部セクション304との間の接続位置に構成される。膜320は、例えば、ホットスタンプ加工、別の溶接技法、又は糊着によって面305’に締結することができる。
【0066】
ここでも、チャンバー部材30及びコネクタ31は、異なる材料で作製することができる。このような材料の例は上述されている。
【0067】
本発明の根底にある構想は、上述の実施形態に限定されず、全体的に異なる実施形態においても実施することができる。
【0068】
詳細には、チャンバー部材とそのコネクタとを備えるドリップチャンバーは、上述したものとは異なる設計を有してもよい。チャンバー部材とコネクタとの間における異なる一体接続部も可能である。例えば、コネクタは必ずしもチャンバー部材の底部を囲む必要はなく、チャンバー部材内に達してもよい。
【0069】
さらに、上述したものとは異なる材料でチャンバー部材及びコネクタを形成することが可能である。例えば、異なる熱可塑性材料を用いて、チャンバー部材及びコネクタを作製することが可能である。
【0070】
熱溶接、超音波溶接、溶剤溶接、及び/又は糊着による、チャンバー部材30及びコネクタ30に対する代替的な接続技術が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 ドリップチャンバー
2 第1の部分
20 入口(穿孔針)
21 キャップ
3 第2の部分
30 チャンバー部材
300 チャンバー
301 底部
302 首部
304 底部セクション
305 端面
305’ 面
306 円錐形セクション
307 スタブセクション
308 挿入開口
309 出口開口
31 コネクタ
310 受入れ開口
311 円錐形セクション
312 接続セクション
313 面
314 スタブセクション
32 膜装置
320 膜
321、322 固定部分
323 膜の縁部
4 チューブ
40 ルーメン
41 端部
5 容器(柔軟なバッグ)
6 スタンド
D1、D2 内径
F 流れ方向
P 患者
S 圧搾方向
【国際調査報告】