(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-516831(P2017-516831A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】経鼻適用するためのシリコーンオイル含有製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/34 20170101AFI20170526BHJP
A61K 31/80 20060101ALI20170526BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20170526BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20170526BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20170526BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20170526BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20170526BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20170526BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170526BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20170526BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20170526BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20170526BHJP
A61K 31/4174 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K31/80
A61P11/02
A61P37/08
A61K9/107
A61K47/20
A61K47/26
A61K47/24
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/04
A61K45/00
A61K31/4174
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-571168(P2016-571168)
(86)(22)【出願日】2015年5月28日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月2日
(86)【国際出願番号】EP2015001091
(87)【国際公開番号】WO2015185195
(87)【国際公開日】20151210
(31)【優先権主張番号】102014009164.3
(32)【優先日】2014年6月3日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516080507
【氏名又は名称】インキューファーム グループ エスディーエヌ ビーエイチディー
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ゲッツ ノーヴァク
(72)【発明者】
【氏名】イェーニッケ クリストフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076BB25
4C076DD05F
4C076DD29
4C076DD46F
4C076DD63F
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4C086MA59
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4C086ZA34
4C086ZB13
(57)【要約】
本発明は、内因性及び/又は外因性の原因により引起された鼻の疾患、例えばバクテリア、真菌、ウイルス及び/又はアレルゲンにより引起される類の疾患の鼻内治療法において使用するために、経鼻適用するためのシリコーンオイル含有製剤に係る。本発明によれば、該シリコーンオイル又は該製剤は、所望ならば、好ましくは乳化剤の存在下で、及び場合により、α-交感神経作用薬、例えばオキシメタゾリン又はキシロメタゾリン等の更なる有効成分の存在下で、酸素で富化される。本発明は、また本発明に従う、関連する主題にも関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻の内因性疾患及び/又は外因性の原因による疾患の鼻腔内治療法において使用するための、経鼻適用するためのシリコーンオイル含有製剤。
【請求項2】
前記鼻の疾患が、バクテリア、真菌、ウイルス及び/又はアレルゲンによって引き起こされる、請求項1に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項3】
鼻の疾患が、鼻炎、とりわけアレルギー性鼻炎、感染性鼻炎、更に萎縮性鼻炎、乾燥性鼻炎、肥厚性鼻炎、血管運動性鼻炎、偽膜性鼻炎、薬誘発性鼻炎、又は慢性鼻炎、又はこれらの2又はそれ以上を表すものと理解されるべきものである、請求項1に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項4】
前記シリコーンオイル又は前記製剤が、酸素で富化されている、請求項1又は2又は3に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項5】
水性媒体中のシリコーンオイルのエマルション形状にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項6】
水性媒体中にイオン発生性又は非イオン発生性乳化剤の存在下で、室温においてポリジアルキルシラン液体を含有する、水中油型エマルションの形状にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項7】
前記ポリジアルキルシランが、10〜5,000mm2s-1の範囲にある動粘度を有し、かつ前記乳化剤が、イオン発生性乳化剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム、又は好ましくは非イオン発生性の乳化剤、例えば低分子量の非イオン発生性の乳化剤又はブロックコポリマー、例えば
マクロゴールグリセロールリシノレエート;
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
ソルビトール及びその無水物の部分脂肪酸エステルと、オレイン酸との混合物;
リン脂質
エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド単位を持つブロックコポリマー;
ヒドロキシプロピルメチルセルロース;
ポリジメチルシラン及び有機グリコールのコポリマーの形状にある、又はメタノール分画により得られるその一形態のシリコーン界面活性剤;
スクロースエステル;
又はこれらの2又はそれ以上の混合物、
又は同様に粒状固体、例えば変性二酸化ケイ素粒子、
特にエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド単位、又は更には支配的なアシル含分としてステアリン酸を含むスクロース単位を持つブロックコポリマー、
単独、又はソルビトール及びその無水物の部分脂肪酸エステルとオレイン酸との混合物と混合された、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
マクロゴールグリセロールリシノレエート、及びリン脂質、
又はこれらの2又はそれ以上の混合物、
を含む群から選択される、請求項6に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項8】
前記水性媒体として、上記製剤が、更なる添加剤を含む又は含まない、純水、緩衝液又は塩溶液又は海水を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項9】
更に、好ましくはグルココルチコイド等の抗炎症剤、例えばプレドニソロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオコルチンブチル、フルチカゾン17-プロピオネート、モメタゾンフロ酸エステル、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、アミノサリチレート、例えばスルファサラジン、メサラジン、オルサラジン又はバルサラジド、
解熱薬、
抗生物質、
血管拡張神経薬、
酵素、
抗体、
分泌物分解剤、
ムコ多糖分解剤、
α-交感神経作用薬、特にフェニレフリン、エフェドリン、テトリゾリン、ナファゾリン、オキシメトゾリン、キシロメタゾリン又はトラマゾリン、又はインダナゾリン、エチレフリン、フェノキサゾリン、
抗ヒスタミン薬、例えばアゼラスチン、レボカバスチン、セチリジン、ロラチジン、テルフェナジン又はフェキソフェナジン;
ロイコトリエンアンタゴニスト、例えばプランクラスト、ザフィルルカスト又はモンテルカスト;
β2-交感神経作用薬;
マスト細胞安定剤、例えばクロモグリク酸又はその塩、特にクロモグリク酸ナトリウム、
精油、
製薬的に許容されるこれらの塩、又は
上記有効成分の2又はそれ以上の組合せから選択される、少なくとも1種の、鼻の疾患を治療するための有効成分をも含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項10】
更に、オキシメタゾリン又は特にキシロメタゾリンをも含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項11】
高圧均質化段階の使用により、及び場合により特に酸素の導入により製造し得る、請求項1〜10のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤の、鼻の内因性疾患及び/又は外因性の原因、例えばバクテリア、真菌、ウイルス又はアレルゲンによって引き起こされる疾患、特に鼻粘膜に係る鼻の疾患、とりわけ鼻炎、何よりもアレルギー性鼻炎、感染性鼻炎、更に萎縮性鼻炎、乾燥性鼻炎、肥厚性鼻炎、血管運動性鼻炎、偽膜性鼻炎、薬誘発性鼻炎又は慢性鼻炎、又はこれらの2又はそれ以上を治療する目的で、鼻腔内適用するための医薬製剤を製造するための使用。
【請求項13】
鼻、特に鼻粘膜の疾患を治療するためのプロセス又は方法であって、とりわけこのような治療を必要とする哺乳動物、特にヒトに対して、該鼻の疾患に対して有効な量で、請求項1〜11のいずれか1項に記載のシリコーンオイル含有製剤を経鼻投与するプロセスを含む、前記プロセス又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻の内因性疾患及び/又はバクテリア、真菌、ウイルス及び/又はアレルゲン等の外因性の原因に起因する鼻の疾患、特に鼻炎の鼻腔内治療法において経鼻適用するためのシリコーンオイル含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻粘膜の炎症性疾患は、病気の最も一般的な理由の一つであり、またドイツにおいて毎年あらゆる年齢層の、数百万という人々を冒している。高齢者及び免疫不全に罹っている人々は、とりわけ深刻な疾患の症状を示し、該症状は、呼吸困難と合併症とを伴う腫大及び鼻粘膜の浮腫形成によって特徴付けられる。危惧される合併症は、鼻腔に位置する気腔の開口周辺における浮腫性の粘膜腫大により、副鼻腔の粘膜に係る炎症を伴い、これらは次いで、最早圧力の均等化を可能とせず、また化膿を引起す程に悪化される。その最も一般的な原因は、寒冷季におけるライノウイルス又はその他のウイルスベクタであるが、インフルエンザウイルスも、ウイルス発生部位として鼻粘膜細胞を利用する可能性があり、また典型的な刺激状態及び分泌へと導く。ウイルス病因論とは別に、バクテリア種も、鼻粘膜、特に免疫不全症に罹っている人々における鼻粘膜において生育し、これらはその後しばしば慢性的な鼻の炎症(臭鼻症)へと導き、また治療することが難しい。鼻粘膜刺激の更なる一般的な原因は、アレルゲン、例えば花の花粉、動物上皮の構成要素及びその他の有機系の埃であり、これらは該鼻粘膜及び上部気道の粘膜に免疫反応を誘発する。結果として、重度の腫大及び刺激が、液状鼻分泌物を伴って同時に見られる。この形態の鼻炎は、上記ウイルス及びバクテリア性鼻炎の形態とは対照的に、認められているように感染性ではないが、疾患に冒された者は、更に一般的な症状、例えば頭痛、一般的な疲労、及び倦怠感を持つ。鼻炎性疾患は、稀に重篤な経過をとる、典型的な季節性の広範囲に渡る疾患であるが、高い経済的な影響を伴う。従って、鼻炎の様々な形態:アレルギー性鼻炎(リニティスアレルジカ(Rhinitis allergica))、ウイルス、バクテリア又は真菌により引き起こされる(一般的な感性性)鼻炎、例えば急性鼻炎(Rhinitis acuta)、更には萎縮性鼻炎(Rhinitis atrophicans)(臭鼻症)、乾燥性鼻炎、肥厚性鼻炎(リニティスハイパートロフィカ(Rhinitis hypertrophica))、血管運動性鼻炎(Rhinitis vasomotorica)、偽膜性鼻炎(Rhinitis pseudomembranacea)、薬誘発性鼻炎(Rhinitis medicamentosa)、又は慢性鼻炎、又はこれらの2又はそれ以上が知られている。同様に、該疾患は、好ましい又は特定の変形として、上においてまた以下の本発明の定義において述べられる用語「鼻疾患」又は「鼻の疾患」に相当する。
【0003】
鼻の生理学的機能の修復のために、様々な局所的治療原理が適用される:即ち、有効成分のキャリアとしての水性溶液又は鼻軟膏が、その粘膜を再生しかつ湿潤するように意図される。結果として、線毛上皮の機能は維持されるはずであり、また鼻が、再度呼吸器官として利用可能となる。急性鼻炎においては、暫くの間鼻の開放性を回復する、有効成分-含有点鼻薬、経鼻スプレー及び塩溶液が使用される。基本的に、α-模倣物が使用され、これらは鼻の微小循環系の前毛細血管を収縮し、それ故に流体の生成を低下させる。しかし、ウイルス抑制剤、及び一般性の低い抗生物質も使用される。しばしば炎症-阻害性の植物系有効成分と組合される鼻用オイルは、鼻粘膜表面上での質量及びガスの移動をしばしば減じ、かつ上皮上に保護フィルムを作るように意図されている。大量の分泌物がある場合には、これらのフィルムは所定の治療効果を生み出すことができない。ここで、血管収縮性物質を含有する鼻炎用薬物が有利であるが、その作用期間に係る短い持続時間のために、これらの局所作用性の薬物は、必要以上に頻繁に鼻に導入される。常習的な使用に際して、永続的に悪化された微小循環系は、鬱血及び微小血栓症のために、毛細血管不全及び微小毛細管の出血へと導く。しかし、粘膜萎縮症及び永続的な鼻の乾燥も、経鼻治療薬の常習的な使用において、結果として起こる(薬誘発性鼻炎)。様々な型の風邪において使用されている、鼻炎治療薬の広範な市場が存在するが、それは、その変動する病因論のために、原因治療又は予防が、今のところ可能とはなっていないことに起因する。
【0004】
酸素-含有シリコーンオイルエマルションが、EP 2 151 242 A1において記載されているように、胃腸疾患の治療のために使用し得ることは公知である。酸素含有率を全く持たない類似の組成物が、同様にKatja Presseltによる、「シリコーンオイルエマルションの調製及び特徴付け及び慢性炎症性皮膚疾患におけるその治療の可能性に関する研究(Preparation and characterization of silicone oil emulsions and studies on their therapeutic potential in chronic inflammatory skin diseases)」と題する学術論文:Biologisch-Pharmazeutische Fakultat der Friedrich-Schiller-Universitat Jena, 2010において記載されている。
最近、予想外のことに、水性ベース中の(特に、酸素で富化された)シリコーンオイルのエマルションが、他の有効成分が存在しなくても、鼻疾患の治療のために適していることが見出された。
【0005】
これに対して主に責任を負うものは、オイルエマルションのクリープ容量(creep capacity)であり、これは、水性溶液におけるその表面張力低下作用のために、鼻細胞の粘液堆積物下部に完全に移動でき、またこれらをその基質から分離することができる。このために特に適したものは、以下において更に詳しく説明されるように、シリコーンオイルの油中水型のエマルションである。ジメチコーン巨大分子の治療的効果は、恐らく破壊され開放状態にある傍細胞TJのタンパク質-糖構造との疎水性結合による相互作用によるものである。ジメチコーンにより引起された微細病変の抑制は、迅速に、別の過度の免疫応答の正常化へと導き、これを減じ又は弱めることはない。該粘膜表面への元素状酸素の同時供給は、更に高められた抗-感染作用に寄与し得る。更に、鼻科学的に、有効成分も同様に、該ジメチコーンエマルションに組入れられ、これは相加的又は累積的な抗-鼻炎効果を結果としてもたらす可能性がある。結果として、完全に新規な抗-鼻炎原理及びシステムが利用可能であり、これは如何なる副作用をも全く示さず、吸収されず、しかも8〜10時間に及ぶ緩和的又は治癒的な作用を持つことができる。更に、この(特に、酸素-富化された)ジメチコーンエマルションによる経鼻スプレーは、予防的な使用に適している。鼻/咽頭粘膜が、例えばライノウイルス又はアレルゲンとの接触が始まる前に、このモノプリパレーション(monopreparation)の酸素-ジメチコーンスプレーにより湿潤させた場合、数時間(例えば、12又はこれを超える)に渡る高信頼度の予防が保証される。従って、この予防的なスプレーは、同様に免疫不全症に罹患している人々又は大衆との強い接触状態にある人々(営業職員、看護師)に対して、自己防衛を与える可能性がある。
上で及び以下において述べられる作用のメカニズムは、限定として解釈されるべきではない。
【0006】
このような新規な経鼻スプレーに係る最初の出願において、オキシメタゾリン又はキシロメタゾリン(xylometazoline)を含まない又は特にこれを含む、酸素-含有10%ジメチコーンエマルションが、急性鼻炎に罹っている患者においてテストされた。ここにおいて、この有効成分の組合せの適用により、顕著な相加的治癒的な効果が見られ、また一回の適用の後に、鼻呼吸が、しばしば10時間までに渡って患者内で保証された。反復的な適用後に、急性鼻炎は、例えば3-4日後に治癒された。この組み合わせは、アレルギー性発熱(枯草熱)において特に効果的であった。数時間以内に、罹患したものは、症状がなくなり、また毎日1回〜2回のスプレーによる適用は、時間的に制限されたガス状アレルゲンへの暴露に、病気の症状なしに、耐えることができた。咽頭細胞系を用いた細胞実験において、バクテリアの透過に対抗する効果を見出すことができた。
鼻腔の、外部の病毒、例えばアレルゲン及び病原体(例えば、ウイルス及びバクテリア)に対する極度の暴露にも拘らず、正の効果が、このようにして見出されている。同様に、空気中における酸素の存在にも拘らず、より強力な効果が、酸素を含まないエマルションによってではなく、酸素-含有エマルションによって見出すことができることは、驚くべきことである。この説明は限定するものではなく、該効果は、ウイルスに対しても役立つ、マスキング作用に貢献できた。
従って、病原体に対してより一層低い暴露を伴う胃腸管のみに関連している(ここでは鼻腔は一種のプレフィルタ(prefilter)として振舞う)、EP 2 151 242 A1における上記効果に係る背景に対してさえも、驚くべき活性があった。
【発明の概要】
【0007】
それ故に、第一の態様において、本発明は、特に、鼻の内因性疾患及び/又は外因性の原因、例えばバクテリア、真菌、ウイルス又はアレルゲンによって引起される鼻の疾患、とりわけ哺乳動物、特に人における鼻粘膜の対応する疾患の鼻腔内治療のために、経鼻使用するためのシリコーンオイル含有製剤、特に水性媒体中のシリコーンオイルからなるエマルションに係り、ここにおいて該シリコーンオイルは、好ましくは酸素で富化されている。
本発明の更なる態様は、鼻の内因性疾患及び/又は外因性の原因、例えばバクテリア、真菌、ウイルス又はアレルゲンによって引起される鼻の疾患、特に哺乳動物、とりわけヒトにおける鼻粘膜の対応する疾患を治療するために、鼻腔内使用のための医薬製剤を製造するための、経鼻使用のためのシリコーンオイル含有製剤、特に水性媒体中のシリコーンオイルからなるエマルションの使用に関連し、ここで好ましくは該シリコーンオイルは、特別に酸素で富化されている。
本発明の更なる態様は、鼻の内因性疾患及び/又は外因性の原因、例えばバクテリア、真菌、ウイルス又はアレルゲンによって引起される鼻の疾患、特に鼻粘膜の対応する疾患を鼻腔内治療のためのプロセス又は方法に係り、該方法は、経鼻使用のためのシリコーンオイル含有製剤、特に水性媒体中のシリコーンオイルからなるエマルションを、特にこのような治療を必要としている哺乳動物、とりわけヒトに対して、該鼻の疾患に対して有効な量で経鼻投与することを含み、ここにおいて好ましくは該シリコーンオイルは、特別に酸素で富化されている。
以下の定義は、上記の及び以下のより一般的な用語を、より具体的な用語で置換えることを可能とし、ここで本発明の態様において、該一般的な用語の一つ又は2以上又は全ては、本発明のより具体的で、好ましい態様へと導く、具体的な用語で置換えることができる。
【0008】
水性媒体中のシリコーンオイルからなるエマルションは、特に、室温にて(ここでは23℃として規定される)液状の、ポリジアルキル-又はポリジフェニルシラン、とりわけポリジ-(C
1-C
7-アルキル)-シラン、特に室温にて液状のポリジメチルシロキサン(ジメチコーン)の水中油型(O/W)エマルションである。
以下の式Iのポリジメチルシロキサン類が例である:
(H
3C)
3-Si-O[-Si(CH
3)
2-O]
n-Si(CH
3)
3 (I)
ここで(分子数に基く平均で)、n = 1〜1,000(上記式は、主として実例として役立つ)、好ましくはn = 1〜500である。
好ましいものは、(製造業者等のデータによれば)平均して、25℃において10〜5,000mm
2s
-1という動粘度を持つシロキサン、例えばM10、M50、M100、M350、M500、M1000、M2000及びM5000、とりわけM10、M50、M100、M350及びM500、なによりもM1000及びM2000 (ドイツ国、レバークーゼン(Leverkusen, Germany)のGEバイエルシリコーンズ(GE Bayer Silicones) GmbH & Co KG;ドイツ国、ミュンヘン(Munich, Germany)のワッカーケミー(Wacker Chemie) GmbH;ドイツ国、ヒルデン(Hilden, Germany)のシーザー&ロレッツ(Caesar & Loretz) GmbH)との名称を持つジメチコーンであり、ここにおいて各場合における数値は、25℃におけるmm
2s
-1単位で表された夫々の動粘度を示しており、これらは以下のようにして測定し得る:
それら水溶液の粘度は、例えば自動測定用計測器AVS 3650(ドイツ国、ホフハイム(D-Hofheim)のスコット-グレーテ(Schott-Gerate) GmbH)を用いて測定でき、この計測器は、温度調節装置CT 1450/CK 101と組合されている。20℃及び25℃においてサンプルを測定するために、様々なウッベローデ(Ubbelohde)毛管粘度計が用いられる(表3-9)。
表3-9:使用されるウッベローデ毛管粘度計の概要(毛管の型、Ph. Eur.に従う分類、計測器番号、毛管定数)
【0010】
上記毛管粘度計は、各測定に先立ってエタノールで濯がれ、次いで圧縮空気で乾燥される。上記サンプルの動粘度は、規定されたサンプル体積の、該毛管を介する測定された通過時間から計算される。これらの測定値は、ソフトウエアVPC 38を用いて評価される。各サンプルに対して、3〜5回の測定が行われる。
特に好ましいものは、100〜10,000、特に500〜5,000、例えば1,000〜2,000mm
2s
-1の範囲内の動粘度を持つジメチコーンである。
本発明に従って使用される上記エマルションにおける上記シロキサンの質量基準の含有率は、約0.1〜50質量%、例えば0.5〜50質量%、例えば5〜25質量%である。
上記エマルションを安定化するために、乳化剤が必要である。
【0011】
乳化剤として可能なものは、以下の通りである:イオン発生型乳化剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)又は好ましくは非イオン発生型の乳化剤、例えば低分子量の非イオン発生型乳化剤又はブロックコポリマー、例えば
マクロゴールグリセロールリシノレエート、例えばクレモフォア(Cremophor
TM) EL(ドイツ国、ヒルデン(D-Hilden)のシーザー&ロレッツ(Caesar & Loretz) GmbH);
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばツイーン(Tween
TM)80(ドイツ国、ヒルデンのシーザー&ロレッツGmbH);
ソルビトール及びその無水物の部分脂肪酸エステルとオレイン酸との混合物、例えばスパン(Span
TM) 80(ドイツ国、シュタインハイム(D-Steinheim)のシグマ-アルドリッチケミー(Sigma-Aldrich Chemie) GmbH);
リン脂質、例えばリポイド(Lipoid) S100(ドイツ国、ルードヴィッヒスハーフェン(D-Ludwigshafen)のリポイド(Lipoid) GmbH)(ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、N-アシル-ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、トリグリセライド、遊離脂肪酸及びDL-α-トコフェロールを含む混合物);
エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド単位を持つブロックコポリマー、例えばポロキサマー(Poloxamer) 188 (例えば、ルトロール(Lutrol
TM)、ドイツ国、ルードヴィッヒスハーフェンのバスフ(BASF)社)
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、日本国、東京(J-Tokyo)のシン-エツケミカル社(Shin-Etsu Chemical Co., Ltd)からのメトロース(Metolose
TM));
ポリジメチルシラン及び有機グリコールのコポリマーの形状にある、例えば、ベルシル(Belsil
TM)(ドイツ国、ミュンヘン(D-Munich)のワッカーケミー(Wacker Chemie) GmbH)、又はメタノール分画により得られるその一形態(HSY 115として表される)のシリコーン界面活性剤;
リョートシュガーエステル(Ryoto
TM Sugar Ester)(日本国、東京(J-Tokyo)のミツビシ-カガクフーズ社(Mitsubishi-Kagaku Foods Co.))等のスクロースエステル、例えば支配的な(predominant)アシル分としての、ラウリン酸とのエステル(L-595)、ミリスチン酸とのエステル(M-1695)、オレイン酸とのエステル(O-170又はO-1570)、又はステアリン酸とのエステル(S-570又はS-1570);
又はこれらの2又はそれ以上の混合物、例えばツイーン(Tween
TM) 80及びスパン(Span
TM) 80の混合物(HLB 8.5として表された混合物)、
あるいは同様に粒状固体、例えば変性二酸化ケイ素粒子。
【0012】
特に好ましいものは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド単位を持つブロックコポリマー、例えばポロキサマー188、又は更には支配的なアシル分としてのステアリン酸とのスクロースエステル、例えばS-570、ツイーン(Tween
TM) 80等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの単独、又はソルビトール及びその無水物の部分脂肪酸エステルと、オレイン酸との混合物と混合されたもの、例えばスパン(Span
TM) 80、マクロゴールグリセロールリシノレエート、例えばクレモフォア(Cremophor
TM) EL又はリン脂質、例えばリポイド(Lipoid) S100、又はこれらの2又はそれ以上の混合物である。
上記完成されたエマルションを基準とする、上記乳化剤の質量基準での含有率は、好ましくは0.01〜20質量%、特に1〜10質量%の範囲内にある。
上記水性媒体としては、純水、緩衝液(例えば、NaOH等の塩基又はリン酸によりpH調節されたリン酸塩緩衝液)又は水に溶解されたその他の塩溶液(例えば、塩化ナトリウム又は塩化カリウムの低張性、等張性又は高張性溶液)を使用することができ、あるいはまた海水であり得る。その組成物全体における該水性媒体の含有率は、好ましくは40〜99.9質量%、例えば60〜99質量%にある。
更なる可能な添加剤は、増粘剤(「準-乳化剤(quasi-emulsifiers)」)、例えばアラビアゴム、トラガカンスゴム;ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、糖アルコール又は浸透圧活性の調節剤として役立つ可能性のある他の物質、例えばソルビトール、ヘキシトール又はマニトール、(特に有効成分の存在下で及び/又は酸素の不在下における)保存料、例えばエチレンジアミン四酢酸、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸、BHA又はBHT、パラベン、安息香酸、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ソルビン酸又はチオメルサール;顔料又は染料、例えばβ-カロテン、エリスロシン、サンセットイエロウ(Sunset Yellow) FCF、インジゴチン等、芳香族化物質、例えば果実エステル又はバニリン、及び液状ポリオール、例えばグリセリン、プロピレングリコール又はエチレングリコールから選択され、これらは、好ましくは全体として、0〜40質量%、例えば0.1〜10質量%の量で添加し得る。
【0013】
酸素(O
2)は、その他のガス(窒素、二酸化炭素)と比較すると、本発明に従って使用されるエマルションにおいて極めて高い濃度で会合的に結合し、例えばメチルポリシロキサン1kg当たり約80gまでの酸素(O
2)が結合し得る。
上記シリコーンオイルエマルションの粒度を、0.3〜15μm、例えば2〜10μmの平均値の範囲に、あるいは0.5〜200μm、例えば5〜50μmの範囲内のD99に設定することが有利である。ここで、該粒度は、LS 230パーティクルサイザー(Particle Sizer)(スモールボリュムモジュール(Small Volume Module), ドイツ国、クレーフェルト(D-Krefeld)のベックマン-コールター(Beckman-Coulter) GmbH)を用いたレーザー回折法によって測定される。レーザー回折法とPIDS技術(偏光強度差分散乱技術(Polarization Intensity Differential Scattering Technology))との組合せは、40nm〜2,000μmのサイズ範囲にある粒子を含む広い分布を持つサンプルの測定を可能とする。該PIDS技術の原理は、異なる波長を持つ水平偏光及び垂直偏光された光で、該テストすべきサンプルを照射することにある。次いで、6つの異なる角度におけるその散乱光の強度が解析される((Muller RH, Schuhmann R. Teilchengroβenmessung in der Laborpraxis [研究室での実務における、粒度測定(Particle size measurement in laboratory practice)]: Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH, シュトゥットガルト(Stuttgart); 1996, チャプター4, 55-99; Keck CM, Muller RH. レーザー回折法によるサブミクロン粒子のサイズ分析−公表された測定値の90%が間違っている、Int J Pharm 2008;355:150-163;Xu R., 光散乱を利用する粒度分析における改良(Improvements in particle size analysis using light scattering):Muller RH, Mehnert W. (編), 粒子及び表面を特徴付けする方法(Particle and Surface Characterizing Methods):サイエンティフィックパブリッシャーシュトゥットガルト(Scientific Publishers Stuttgart); 1997, チャプター3, 27-56)。生のデータからの粒度分布の算出は、ミー(Mie)理論を使用し、また該粒子について球形状であるものと仮定する。上記シリコーンオイルエマルションについては、1.40という該粒子に関する実際の屈折率(ワッカーケミー社の製品情報(Wacker Chemie GmbH. Product Information)- ワッカーシリコーンオイル(Wacker Silicone Oils) AK. 2006)をこの計算のために使用した。特徴付けすべき上記サンプルは、測定のために脱イオン水で希釈された。各場合において、6〜8回の測定を、各々90秒間に渡り行い、そこからの値を、次に平均した。平均(算術平均)を評価するための体積基準の分布に係る測定パラメータとして、メジアン(D50値、中央値)及びD99値(全通過99%における径)を使用した。
【0014】
本発明に従うエマルションは、好ましくはレシチンを含まない及び/又は疎水性珪酸を含まない。
内因性疾患は、例えば免疫不全、自己免疫反応又はその他の明確に定義し得ない原因により引起される、鼻の疾患であり得る。
例えば、外因性の原因による疾患は、例えばバクテリア、真菌又はウイルス、又は埃又は花粉等のアレルゲンによる感染によって引起される疾患であり得る。
内因性及び該因性要素を含む混合形態も、そこに含められる。
「鼻疾患」又は「鼻の疾患」は、特に、鼻炎、とりわけアレルギー性鼻炎(Rhinitis allergica)、ウイルス性又はバクテリア性鼻炎又は真菌により引起される鼻炎(一般的感染性)鼻炎、例えば急性鼻炎(Rhinitis acuta)、又は更にアトピー性鼻炎(Rhinitis atrophicans (「臭鼻症(ozaena)」)、乾燥性鼻炎(Rhinitis sicca)、肥厚性鼻炎(Rhinitis hypertrophica)、血管運動性鼻炎(Rhinitis vasomotorica)、偽膜性鼻炎(Rhinitis pseudomembranacea)、薬誘発性鼻炎(Rhinitis medicamentosa)、又は慢性鼻炎、又はこれらの2又はそれ以上を意味するものと理解すべきである。
鼻粘膜の疾患は、全ての(内因性及び該因性)鼻炎、例えば花粉症をも含む。
鼻腔内使用は、哺乳動物、特にヒト、とりわけこのような治療を要する哺乳動物又はヒトにおいて必要とされる。
【0015】
本発明に従って使用し得るシリコーンオイルエマルションの製造は、それ自体公知の方法で、例えばDE 103 26 188に記載されているように、全ての成分(場合により有効成分をも)添加した後に、特に溶解又は分散させつつ第一段階において上記水性媒体に上記乳化剤を添加した後に、高剪断力の適用を伴う均質化により;あるいは該乳化剤(例えば、スパン(Span
TM) 80の場合)を該オイル相に添加しつつ;及び両者の場合において、その後の該水性及びオイル相の併合、及び正規の攪拌機、コロイドミルによる、超音波処理による又はロータ-ステータ原理で働く歯車式分散装置(例えば、ウルトラ-ツラックス(Ultra-Turrax
TM) T8, ドイツ国、シュタウフェン(D-Staufen)のイカ-ヴェルケ(IKA-Werke) GmbH & Co KG)によるプレエマルション(pre-emulsion)への予備均質化、及びその後の、例えば高圧ホモジナイザーを用いる、特にリングギャップホモジナイザー、例えばマイクロラブ(MicroLab) 40ホモジナイザー(ドイツ国、リューベック(D-Lubeck)のAPV-ガウリン(APV-Gaulin))又はマイクロフルーダイザー(Microfluidizer
TM)(米国のマイクロフルーディックス(Microfluidics, USA))を、狭いリングギャップを通して、好ましくは約10〜約140MPa(100〜1,400bar)の圧力下で加圧し、及び場合によっては多数回の、例えば3回〜10回の反復回数に渡り加圧することによる高圧均質化によって実施される。
場合により又は貯蔵安定性にとって必要な場合には、上記エマルションは、次にオートクレーブ処理等により滅菌される。適当な製造プロセスは、DE 103 26 188 A1において記載されている。この特許を言及によりここに含める。
酸素による富化が、場合によりEP 2 151 242 A2に記載されているように実施される。該酸素は、例えば充填前に直接ガス状酸素とメチルポリシロキサンの水性エマルションとを平衡化することにより、あるいは充填後に又はその調製を行う直前に、使用するための該溶液のエアレーションによって物理的に溶解させられる。このためには、適切に備え付けられたアプリケータ、例えば薬物包装機に内蔵された自動計量分配システムを備えたガスカートリッジが適している。
【0016】
気密容器内に封入されている表面-活性化されたジメチコーンの使用中に、該酸素結合は、その適当な投与形態で充填するのに先立って、既に該オイルにより達成されている可能性がある。0.5〜2%の過酸化水素溶液又はヘムタンパク質又はパーフルオロカーボン等の酸素-貯蔵性化合物の混合が可能である。しかし、好ましい薬物形態は、該ジメチコーンの水性エマルションである。ここで、酸素-飽和ジメチコーンは、該エマルションの調製中に既に使用されている。その第一の乳化段階は、好ましくは植物系乳化剤と上記オイル相との徹底的な混合及びその後の上記水性相への組込みと関連しており、そこで超音波の適用及び温度における増加が、同様に該乳化を改善するのに利用される。該乳化が、酸素雰囲気下で行われることを保証すべきである。それにより、該ジメチコーン鎖への酸素の最大の物理的結合が起こることが保証される。酸素の含有率は、好ましくは上記溶液のポリシロキサン含有量に基いて計算して、少なくとも2%とすべきである。該最大結合は、上記オイルの含有量を基準として約7〜8質量%の酸素にて達成される。従って、好ましくは、酸素-含有エマルションは、上記シリコーンの含有量に基いて、1〜8、例えば6〜8又は特に7〜8質量%の結合酸素含有率を持つ。該オイル相における該酸素結合は、比較的安定であり、また該酸素は、周りのエマルションキャリヤ(水性媒体)と交換されない。該酸素分子は、特異的に富化され、該ポリシロキサン分に対して会合的に結合する。ここで、該特異的結合(これは限定を意図するものでない)は、恐らく、そのアルキル又はメチル残基が、各遊離Siの原子価と結合し、また該酸素分子に対して分子状の「クランプ(clamps)」を形成するという点において達成され、その理由は、厳密に配列されていることから、これらが弱い負に帯電した表面を持ち、その上に僅かに正に帯電した酸素分子がドッキングし又は結合され得ることにある。
【0017】
例えば、上記酸素化は、上記エマルションが存在している耐圧性の容器(例えば、2〜40L又はそれ以上)内で、好ましくは高い圧力、例えば約0.203〜約1.01MPa(2〜10atm)、例えば特に約0.253〜約0.507MPa(2.5〜5atm)の下にて、入口、好ましくはフリット(frit)を通して及び攪拌しつつ、例えば室温にて平衡化しつつ0.5〜2時間に渡り導入される酸素(例えば、耐圧瓶からの)を用いて実行することができる。
治療のための本発明に従うプロセス又は本発明に従う方法は、特に本発明に従って使用すべきシリコーンオイルの経鼻製剤又はエマルションの、哺乳動物、特にヒトに対して、例えば点鼻剤として、又は経鼻スプレーとしてあるいは吸入により、鼻腔内投与することを含む。
ここで、上記ジメチコーン溶液の可能な投薬量は、一般には0.1〜1mLからなる少なくとも2部分で、あるいはより高頻度の適用で、例えば(例えば、1〜10質量%の)(特にジメチコーンの)エマルションの1日当たり0.1〜5、特に0.2〜2mLの範囲にあり、これは0.01〜5mg、例えば0.1〜2mgのキシロメタゾリン又はオキシメタゾリンを、溶液中に含むことができる。
同様に、鼻腔内使用のための上記製剤は、チューブ(ローションと同様に又は鼻用の軟膏として)又はその他の容器中のエマルションとして、好ましくは点鼻薬の形状で、例えばピペット付きの瓶、又は特に経鼻スプレーとして、例えばスプレー瓶又は他の充填用ユニット内に、あるいは例えばエーロゾル-形成式(微細噴霧)吸入器用のカプセルとして提供することができる。
それ故に、上記シリコーンオイルエマルションは、直ちに鼻の疾患の治療を可能とするが、これは、1種又はそれ以上の慣例の有効成分を、鼻疾患(=鼻の、特に鼻粘膜の疾患)を治療するために、更に含むことができる。
【0018】
ここで、今述べることが、作用機構の決定的な解釈であるとするつもりはないが、更なる有効成分なしに、上記シリコーンオイルエマルションの作用は、ことによると、フィルム形成(薄いシリコーンオイルベースの保護層の形成)を伴って、鼻粘膜上での該シリコーンオイルの散布(拡散)に寄与し得る。これと共に又はこれとは別に、直接的に、例えば抗菌性の効果を関連させることも可能である。
酸素が、付随的に含まれている場合、上記シリコーンオイルの更に改善された作用は、ことによると、鼻粘膜に対する、一方では病原体の成分と反応することができ、また他方では該鼻粘膜細胞の防御機構を強化し得る、富化された酸素の酸化作用に寄与し得るが、これが決定的な解釈であるとするつもりはない。
鼻疾患の治療にとって慣例的な有効成分の改善された作用は、本発明に従って使用される上記シリコーンオイルエマルションを通して可能となるが、その理由は、第一に該有効成分が、そのフィルム形成のために、該鼻粘膜との直接的接触を長期間維持することができ、また第二に有効成分を含む通常の鼻の治療薬と比較して、該有効成分の投薬量を減じた場合でさえも、該エマルションのシリコーンオイル液滴に対する、(特に親油性の)有効成分の富化のために、これらはとりわけ濃縮された形態で、該鼻粘膜に供給される可能性があることにある。
【0019】
可能な有効成分の例は以下の通りである:
グルココルチコイド等の抗炎症薬、例えばプレドニソロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、ブデソニド、フルニソリド、フルオコルチンブチル、フルチカゾン17-プロピオネート、モメタゾンフロ酸エステル、ベタメタゾン、ヒドロコルチゾン、
アミノサリチレート、例えばスルファサラジン、メサラジン、オルサラジン又はバルサラジド、
解熱薬、
抗生物質、
血管拡張神経薬、
酵素、
抗体、
分泌物分解剤(Secretolytic agents)、
ムコ多糖分解剤、
α-交感神経作用薬(特に、フェニレフリン、エフェドリン、テトリゾリン、ナファゾリン、オキシメトゾリン(oxymetozoline)、キシロメタゾリン又はトラマゾリン)、又はインダナゾリン、エチレフリン、フェノキサゾリン、
抗ヒスタミン薬、例えばアゼラスチン、レボカバスチン、セチリジン、ロラチジン(loratidine)、テルフェナジン又はフェキソフェナジン;
ロイコトリエンアンタゴニスト、例えばプランクラスト(prankulast)、ザフィルルカスト又はモンテルカスト;
β
2-交感神経作用薬;
マスト細胞安定剤、例えばクロモグリク酸又はその塩、特にクロモグリク酸ナトリウム、
精油、
又はその他もの、
製薬的に許容されるこれらの塩(塩-形成基が存在する場合)、又は上記有効成分の2又はそれ以上の組合せ。特に好ましいものは、オキシメタゾリン及び特にキシロメタゾリンである。
【0020】
塩は、主要なかつ最も重要な通常の製薬的に利用可能な塩、例えば(塩基性塩-形成性の基、例えば一級、二級又は三級アミノ基の存在する場合)酸付加塩;又は(酸性基、例えば-COOH又はSO
3Hの存在する場合)塩基との塩である。
特に好ましいものは、α-交感神経作用薬、特に1種又はそれ以上のオキシメタゾリン(全く格別に好ましい)、キシロメタゾリン(全く格別に好ましい)又はナファゾリンである。
全製剤を基準として、このような有効成分の質量基準での含有量は、例えば約0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜4質量%である。
同様に、本発明は、特許請求の範囲及び要約において記載された本発明の主題にも係り、これらは、言及によりここに含められる。
【実施例】
【0021】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなしに、本発明を例証するのに役立つ。
実施例1:鼻用製剤の製造
酸素処理されたシリコーンオイルエマルションの製造:
20mLのシリコーンオイルM 500 MC(ワッカーケミー(Wacker Chemie) GmbH)及び500mLのポロキサマー(Poloxamer) 188 (ルトロール(Lutrol
TM)、ドイツ国、ルードヴィッヒスハーフェンのバスフ(BASF)社)を、ウルトラツラックス(Ultraturrax
TM) 4x内の蒸留水75mLに滴々添加し、ステージ8にて5分間粗く均質化し、また次に高圧ホモジナイザー内で、直ぐに使える状態にある安定なシリコーンオイルエマルションにまで処理する(Yonekura K, Hayakawa K, Kawaguchi M, Kato T, ヒドロキシプロピルメチルセルロースの存在下での安定なシリコーンオイルエマルションの製造(Preparation of stable silicone oil emulsions in the presence of hydroxypropyl methyl cellulose), Langmuir, 1998;14:3145-3148)。1時間の貯蔵及び品質管理(液滴サイズ、表面活性)の後、このエマルションを、長さ5cmのPEプラスチック性毛細管(内径5mm)を有する、捻じ込み式クロージャーを備えた無菌の100mLガラス瓶に導入し、かつ気密密封する。該毛細管は、PTE製ホースで、減圧バルブを備えたコノキシア(Conoxia
TM)耐圧瓶(ドイツ国、プラハ(Pullach, Germany)のリンデ(Linde) AG)に取付けられており、また室温にて、約0.405MPa(4atm)で60分間通気される。該通気中、上方のガスドームの小体積を、該捻じ込み式クロージャーを介して2〜3回放出して、ことによると依然として存在する、あらゆる外来ガス混合物を、該シリコーンオイルからできる限り除去する。従って、該酸素処理されたシリコーンオイルエマルションは、そのまま更に使用できる状態にある。
【0022】
オキシメタゾリン又はキシロメタゾリンの原液の製造:
500mgのオキシメタゾリン又はキシロメタゾリン(ドイツ国、ミュンヘン(Munich, Germany)のシグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社)ピュリス(puriss)を、250mLの蒸留水に溶解し、また穏やかに加温しかつ激しく攪拌しつつ、無菌の25mLのガラス瓶に充填し、かつ気密密封する。これらの瓶を、使用するまで、4℃にて保存する。
以下において適用するための、鼻炎治療薬Aの製造:
5mLの上記酸素処理されたシリコーンオイル溶液及び0.25mLの上記OX/XTZ原液を、ピペットで10mLの経鼻適用ユニット(滴下ボトル又はスプレーボトル)に入れ、また4.75mLの1.8%NaCl溶液で所定体積まで補充する。相を激しく振盪し、混合した後、該適用ユニットを気密密封し、かつ使用のために解放する。
以下において適用するための、鼻炎治療薬Bの製造:
100mLのジメチコーンSE 2 MC(ドイツ国、ミュンヘン(Munich, Germany)のワッカーケミー(Wacker Chemie) AG)を、上述の如くガラス製の耐圧瓶に充填し、上述の方法により酸素で通気する。これらを、上述の段階と同様に処理して、鼻炎治療薬とする。
【0023】
実施例2:患者における使用
例として、実施例1由来の製剤を、以下のようにして患者において使用した:
鼻の外部洗浄後、二本の指で該鼻の鼻翼を短期間一緒に押しつつ、上記鼻炎治療薬を、できる限り迅速に、アプリケータユニット(ドロップディスペンサ又は圧力スプレー)により各鼻腔内に導入する(2-3スプレーストローク又は3-4滴)。10〜15秒後に、該適用は完了する。必要ならば、これを、分泌物の排出が永続的に終えられるまで繰返す。
意味は以下の通りである:
SE-2:シリコーンオイルエマルションベース = ジメチコーンSE 2 MC (ワッカーケミー(Wacker Chemie) GmbH)(鼻炎治療薬B);
XMZ = キシロメタゾリン;
OX = オキシメタゾリン。
mg/mL単位で表されたデータは、上記鼻炎治療薬中のOX又はXMZの最終的濃度を基準としている。
(A) 鼻炎の様々な形態を伴う以下の患者を、酸素-飽和SE 2エマルションで処置した。
患者1:J.O.、39歳、女性
診断:鼻炎を伴う急性インフルエンザ感染、潜在的依存性を伴う慢性鼻炎患者:
初日に4〜5mL/時の水性の粘液排出
適用:
治療初日:4時間毎に、2スプレーストロークのSE-2/0.5mg/mL+就寝前に3スプレーストロークのOX
治療2日目:6〜7時間毎に、2スプレーストローク
治療3日目:12時間毎に、2スプレーストローク
治療4日目:午前中に更に2スプレーストローク
5日目:粘稠な化膿性の分泌物、その他も生じずに、症状はない。
0.8-1mg/mLのOXによる水性鼻スプレーの10年間の長期使用に基く自己評価:
如何なる残留物もない急速な治癒、障害のない副鼻腔、鼻開口部の炎症(半伝染性鼻腔気管炎)なし。
患者は、鼻炎の場合に、何回も繰り返し、上記SE-2エマルションを使用するであろう。
【0024】
患者2:J.N.、23歳、男性
診断:血管運動性鼻炎(Rhinitis vasomotorica)(ホップタンパクに対するアレルギー)、該アレルゲンの摂取後10-20分間の大量の水様の鼻汁(2-3枚ペースのハンカチーフ)
1時間毎の、0.5mg/mLのSE-2エマルション+OX/海水で開始;2-3時間以内に該水様の分泌物における顕著な減少、12時間毎に3回使用、鼻炎に典型的な粘膜の赤み及び腫脹を伴うことなく完全な緩解、管閉塞はなく、副鼻腔の障害なし。
自己-評価:上記鼻炎アレルギーの完全で迅速な相殺は、即座にSE-2 NTを再使用するであろう。「快適な薬(pleasant drug)」。
患者3:P.L.、37歳、男性
診断:慢性鼻炎、1月当たり少なくとも3回発症、鼻炎混合型ウイルス性アレルギー、NT:OX/海水薬剤、鼻用オイル、鼻用クリームの強制的使用
SE-2 OXエマルションで4カ月に渡り治療:
初めの2カ月:0.5mg/mLのOX-海水との組合せ;終りの2か月間:SE-2と0.25mg/mLのOX-海水、一般に最後の1カ月は、8時間毎に1回のスプレーにより、僅かに2回の準急性鼻炎の発症、顕著に短縮された疾患のエピソード:最長2日間の持続期間。
自己-評価:かつてない程の低頻度となった鼻炎発症を伴う、極めて良好な効能、明らかに標準的な市販のOTC製品よりも優れている。
患者4:E.N.、71歳、女性
診断:亜慢性の気管気管支炎を伴った重篤な急性鼻炎
第一日目:即座に7-8時間以内に、副鼻腔障害を伴う重篤な化膿性-水様鼻粘液排出、三叉神経痛及び重度の左面頭痛、市販の鼻用スプレー及び点鼻薬は効果なし。
第二日乃至第四日:先ず3時間毎に使用される、SE-2/OX生理塩水鼻用スプレーの適用で開始し、次いで12時間後に、僅かに2回/日で適用、顕著に減じられたスプレーストローク体積及び随伴する炎症の兆候の急速な治癒。
自己-評価:極めて良好な効能、第一に「顕著な」治癒傾向。
【0025】
患者5:H.R.、42歳、男性
診断:ウイルス感染を伴った急性鼻炎(Rhinitis acuta);初めは第一日目に粘膜の腫大による「鼻の閉塞」、1時間当たり10回までのクシャミの発作を伴う突然の水様の鼻汁。
まず3回、各々2スプレーストロークで開始し、各時点において最初の1時間に、SE-2/0.5mg/mL XMZ、その後4時間を超える間に、該急性分泌段階の緩解。
SE-2/0.5mg/mL XMZの更なる導入、次いで依然として点鼻薬が、16時間当たり3回のみ必要とされ、4日後に、更なる嗅覚器の障害なしに治癒する。
自己-評価:初期に依然存在する低減された流体状鼻粘液の分泌を伴う良好な効能、これはしかしながら、第一回のスプレーの適用の4時間後に止まった。
患者6:C.L.、6歳、男
診断:頻繁な発熱を伴った悪寒の発症を伴う慢性鼻炎:
第一の症状について、海水中のSE-2/0.125mg/mL XMZの即座の使用、適用(朝、正午及び夕刻に、各鼻孔内に1スプレーストローク)。
結果:鼻炎なし、鼻-咽頭腔における粘膜の赤みなし、痛みなし。
両親による評価:完全な鼻炎の予防、子供にとって適した如何なる他の鼻炎スプレーについても、このような結果はかつて見られず、次回の感染においても、再度進んで使用するであろう。
患者7:S.N.、44歳、女性
診断:花粉に暴露された際の、アレルギー性血管運動性鼻炎で、一般的な症状、例えば頭痛、亜熱性の体温及び関節の支障を伴う。
鼻における重度の粘膜腫大及び副鼻腔における圧迫感の後に、化膿性の粘液性鼻炎及び「鼻の痛み」で始まり、顕著に増大。日中に数回及び夜間に2-3回、SE-2/0.25 XMZを使用。その理由は、口腔の乾燥及び鼻を通しての呼吸の不可能性にある。
3日後には、スプレー適用の必要が顕著に減少し(2回/日)、5日後には治癒した。
自己-評価:上記アレルギーエピソードにおける急速な減少、それ以外は7-10日間継続、極めて良好な効果。
【0026】
患者8:C.S.、69歳、女性
診断:慢性鼻炎障害を伴う免疫不全症候群、鼻の乾燥及び粘液性鼻汁のある状態を伴う、殆ど永続的なカタル状態。
日中に2回及び夕刻の就寝前に1回、SE-2/0.25mg/mLのXMZを使用。
鼻炎の発作は全く起こらずに、誤解の余地の無い、急速な鼻腔の「治癒」;14日間に及ぶ適用、その後の4-6週間は症状なし。
自己-評価:極めて良好な効果、快適な「ソフトな(soft)」スプレー性能、これを何度も繰り返し使用するであろう。
実施例3:
酸素処理された及び酸素処理されていないジメチコーンエマルション−咽頭細胞に及ぼす抗菌作用:
略号:DIM:ジメチコーンエマルション;
OxiDIM:酸素処理されたジメチコーンエマルション;
HEp2 細胞:咽頭由来のヒト上皮細胞系(上皮腫)
様々なジメチコーンの鎖長を持つ、希薄OxiDIMエマルションの、HEp-2細胞へのE.コリ(E.-coli)の付着及び内部移行に及ぼす効能に係る研究において、上記酸素処理されていない3%DIMエマルションをも研究した。ここでの最も顕著な発見は、僅かに1:3,000においてさえも例外なしに、これらのDIM希釈物が、依然として極めて低い内部移行の抑制を示したことであった。
【0027】
実験的な手順:HEp-2細胞を、各々12個の25mL細胞培養ボトル内で完全細胞層となるまでインキュベートし、次いで該細胞培養培地の交換中に、10mLの培地中の5,000E.コリ-B2332(低温培養由来、インスティチュートオブメディシナルマイクロバイオロジー, ユニバーシティークリニックイエナ(Institute of Medicinal Microbiology, University Clinic Jena)により供給される)を、そのコントロールに、またコノキシア(Conoxia) (O2 (+))で事前に平衡化した、又は通気なし(-)の各場合においては、該3%ジメチコーンエマルション(M500)の5回の希釈段階に添加した。24時間に及ぶインキュベーションの後に、該細胞層を、細胞培養培地で濯いだ。次に、生体染色により、4つの四分円における死亡したHep-2細胞を、倒立顕微鏡上で計数した。2回のテストを、3%ジメチコーンエマルションM1000及びM2000を用いて、同一の方法で実行した。
これらの結果を、以下の表にまとめた:%内部移行に関する均等化について、顕著なより強力な内部移行の阻害が、上記酸素処理されたジメチコーンエマルションについて見ることができる。該ジメチコーンの最適な鎖長は、M 1000-2000の範囲にあるものと決定付けるべきである。
表:酸素を含む又は含まない、異なる鎖長(M….)を持つ3%ジメチコーン溶液による、Hep 2細胞内へのE.コリ(B2332)の内部移行の阻害:
【0028】
【表2】
括弧内の値:オイル成分無しのコントロール = 各研究において100%(M 500、M 1000又はM 2000)
【0029】
酸素処理無しのものと比較して、より強力な阻害が、酸素処理有のものについて見出される値は、下線により強調されている。
例えば、希釈度1:3000において、M 2000-OxiDIMに関連して見出された77%阻害は、DIMエマルション(最大阻害:3% M 2000 DIMエマルションで、希釈度1:2000にて54%)に関するいかなる実験においても見いだされなかった。
結果:酸素処理されていないDIMエマルションは、OxiDIMエマルションよりも著しく弱い抗菌作用を持つ。
実施例4:
ヒト患者における効能に係る研究
以下の研究計画を利用して、鼻に適用するための酸素で富化されたシリコーンオイル-含有キシロメタゾリン-減量製剤(グループ3)の、臨床的には標準的な0.1%キシロメタゾリン製剤を超える優位性、及び酸素富化されたシリコーンオイル含有製剤の、酸素富化されていないシリコーンオイル含有製剤を超える優位性を確認する:
【0030】
計画:制御され無作為化された同傾向のグループを、GCPに従って研究する。
グループ及びグループの大きさ:
4グループ:各々25名の参加者:
1. シリコーンオイル;
2. シリコーンオイル+酸素;
3. シリコーンオイル+酸素+0.01%のキシロメタゾリン;
4. 標準的な用量の0.1%キシロメタゾリン。
選択基準/適応症(Inclusion criteria/indication):
急性鼻炎
除外基準:
薬物-誘発性鼻炎
重篤な潜在的疾患
測定パラメータ:
鼻汁ピーク流量(nasal peak flow)
使用されたハンカチーフの枚数
症状の改善点
測定時点:
0、3、7、10日目
達成目標:
疾患持続期間の有意な短縮;
身体的パラメータに係る非-劣性を伴う、該症状における有意な改善;
安全性パラメータ:
開始点及び終了点における全血球数及び血沈。
【0031】
実施例5:
急性ウイルス性鼻炎の予防に対する、酸素処理されたシリコーンオイルエマルション2 MC 0.5+「海水」塩溶液0.5の使用
2014年10月における、12時間の海外渡航を完了した5名の生徒からなる一グループの内の、2名の参加者(J.N.男性、23歳及びM.S.男性、24歳)は、出発前、その4時間後及び8時間後に有効成分を含まない経鼻スプレー(各時点で、各鼻孔に3スプレーストローク)のスプレーによる適用を利用した。該飛行機旅行の終了時点後及びそれに続く数日において、これら2名のスプレー利用者は、急性又はアレルギー性鼻炎の症状を全く示さなかった。該旅行グループの他の3名の参加者は、24時間以内に軽いインフルエンザ感染、亜熱性の体温(37.3-37.8℃)及び急性鼻炎に罹患した。全参加者は、3週間後の戻りのフライトに際して、この鼻用スプレー製剤を使用したが、その後に該参加者の誰も急性鼻炎の症状を示さなかった。
【国際調査報告】