特表2017-516857(P2017-516857A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-516857高薬物負荷ポリ(アルキル2−シアノアクリレート)ナノカプセル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-516857(P2017-516857A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】高薬物負荷ポリ(アルキル2−シアノアクリレート)ナノカプセル
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/51 20060101AFI20170526BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20170526BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20170526BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20170526BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20170526BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20170526BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20170526BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
   A61K9/51
   A61K8/11
   A61K47/28
   A61K8/63
   A61K8/81
   A61K47/32
   A61K47/26
   A61K47/22
   A61K47/18
   A61K47/44
   A61K31/496
   A61P31/10
   A61K31/513
   A61P31/12
   A61P31/18
   A61Q19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-514970(P2017-514970)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015061933
(87)【国際公開番号】WO2015181346
(87)【国際公開日】20151203
(31)【優先権主張番号】62/005,182
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14170536.8
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513144626
【氏名又は名称】アッヴィ・ドイチュラント・ゲー・エム・ベー・ハー・ウント・コー・カー・ゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チュリッチ,アナマリア
(72)【発明者】
【氏名】メシュバイツァー,ヤン−ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ロイル,レギーナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC31
4C076CC35
4C076DD09A
4C076DD15A
4C076DD49A
4C076DD59A
4C076DD63A
4C076DD69A
4C076DD70A
4C076DD70H
4C076EE13A
4C076EE13H
4C076FF01
4C076FF31
4C076FF36
4C076GG21
4C076GG50
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC531
4C083AC532
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD14
4C083DD50
4C083EE01
4C083EE11
4C083FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC50
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA07
4C086MA38
4C086MA70
4C086NA03
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC55
(57)【要約】
本発明は、胆汁酸またはこの塩によって安定化されたナノカプセルに関する。このナノカプセルは、ポリ(アルキルシアノアクリレート)および/またはこのアルコキシ誘導体によって形成された高分子シェルを含んでおり、該高分子シェルには、活性薬剤を含むコアが封入されている。本発明はさらに、かかるナノカプセルの調製方法およびかかるナノカプセルを含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)高分子シェルを形成する1以上のポリマーであって、1以上の該ポリマーは、C−C10−アルキルシアノアクリレートおよびC−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレートの1以上から選択される主モノマー成分を含む、ポリマー、;
b)前記高分子シェルに封入されたコア内に含まれた1以上の医薬活性薬剤または化粧料用活性薬剤;ならびに
c)1以上の胆汁酸、1以上の胆汁酸塩およびこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤
を備えたナノカプセル。
【請求項2】
1以上の活性薬剤(b)が水不溶性または水難溶性の化合物である、請求項1に記載のナノカプセル。
【請求項3】
25℃およびpH7.0の水への1以上の活性薬剤(b)の溶解度が、0.1g/100ml以下である、請求項2に記載のナノカプセル。
【請求項4】
1以上の活性薬剤(b)が、2000g/mol未満の範囲の分子量を有するものである、請求項1から3のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項5】
1以上の活性薬剤(b)の少なくとも50%が、未溶解の固形形態で存在している、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項6】
1以上の活性薬剤(b)の少なくとも50%が、結晶性の状態で存在している、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項7】
1以上の活性薬剤(b)の少なくとも50%が、非晶質の状態で存在している、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項8】
1以上の活性薬剤(b)の少なくとも50%が、半結晶性の状態で存在している、請求項1から4のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項9】
1以上のシェル形成ポリマー(a)の主モノマー成分が、メチル2−シアノアクリレート、2−メトキシエチル2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート、n−ブチル2−シアノアクリレート、2−オクチル2−シアノアクリレートおよびイソブチル2−シアノアクリレートのうちの1以上から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項10】
1以上のシェル形成ポリマー(a)が、ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)、ポリ(エチル2−シアノアクリレート)およびこの混合物から選択される、請求項9に記載のナノカプセル。
【請求項11】
ナノ粒子安定化剤(c)が、コール酸、タウロコール酸、グリココール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸およびヒオコール酸から選択される胆汁酸、もしくは前記胆汁酸塩、または前記胆汁酸の1以上および/または前記胆汁酸塩のうちの1以上の混合物である、請求項1から10のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項12】
ナノ粒子安定化剤(c)が、コール酸、コール酸塩およびこの混合物の1以上から選択される、請求項11に記載のナノカプセル。
【請求項13】
ナノ粒子安定化剤(c)が、コール酸ナトリウムである、請求項12に記載のナノカプセル。
【請求項14】
ナノ粒子安定化剤(c)の量が、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、3から36重量%である、請求項1から13のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項15】
1以上のシェル形成ポリマーのいずれのモノマーも基本的に含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項16】
ナノカプセルの直径が、500nm未満である、請求項1から15のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項17】
ナノカプセルの直径が、50から200nmの範囲である、請求項16に記載のナノカプセル。
【請求項18】
1以上の活性薬剤(b)の量が、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマー)(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、少なくとも50重量%である、請求項1から17のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項19】
1以上の活性薬剤(b)の量が、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマー)(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、少なくとも80重量%である、請求項1から17のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項20】
さらに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1以上の取込みメディエータを備えている、請求項1から19のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項21】
取込みメディエータが、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートである、請求項20に記載のナノカプセル。
【請求項22】
さらに、1以上のソルビタン脂肪酸エステルを備えている、請求項1から21のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項23】
ソルビタン脂肪酸エステルが、ソルビタンモノオレエートである、請求項22に記載のナノカプセル。
【請求項24】
さらに、1以上の両親媒性脂質を備えている、請求項1から23のいずれか一項に記載のナノカプセル。
【請求項25】
両親媒性脂質が、天然に存在しているかまたは合成のリン脂質、コレステロール、リゾ脂質、スフィンゴミエリン、トコフェロール、糖脂質、ステアリルアミンおよびカルジオリピンからなる群より選択される、請求項24に記載のナノカプセル。
【請求項26】
500nm未満の直径を有する一群のナノカプセルを含んでおり、該群のナノカプセルに、該群の1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して少なくとも50重量%の1以上の活性薬剤(b)が含まれている、請求項1から25のいずれか一項に記載の複数のナノカプセル。
【請求項27】
500nm未満の直径を有するナノカプセルの群が、複数のナノカプセルの90重量%より多くを占めている、請求項26に記載の複数のナノカプセル。
【請求項28】
50から200nmの範囲の直径を有するナノカプセルの亜群を含んでおり、該亜群のナノカプセルに、該亜群の1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、少なくとも50重量%の1以上の活性薬剤(b)が含まれている、請求項26または請求項27に記載の複数のナノカプセル。
【請求項29】
該亜群のナノカプセルに、該亜群の1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して少なくとも80重量%の1以上の活性薬剤(b)が含まれている、請求項28に記載の複数のナノカプセル。
【請求項30】
50から200nmの範囲の直径を有するナノカプセルの亜群が、複数のナノカプセルの90重量%より多くを占めている、請求項28または29に記載の複数のナノカプセル。
【請求項31】
i)水不混和性有機溶媒または2以上の水不混和性有機溶媒の混合物中に溶解させた
−C−C10−アルキルシアノアクリレートおよびC−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレートの1以上から選択される主モノマー成分を含む1以上のシェル形成ポリマー、ならびに
−1以上の医薬活性薬剤または化粧料用活性薬剤
を含む疎水性の液相を準備する工程;
ii) −親水性溶媒に溶解させた、1以上の胆汁酸または1以上の胆汁酸塩またはこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤
を含む親水性の液相を準備する工程;
iii)エマルジョンが形成されるように該疎水性の液相を該親水性の液相中に微細分散させる工程;および
iv)該親水性溶媒中のナノカプセルの懸濁液が得られるように1以上の該有機溶媒の少なくとも一部を均質化された該混合物から除去する工程
を含む、ナノカプセルの調製方法。
【請求項32】
工程(ii)で準備した親水性の液相中のナノ粒子安定化剤の濃度が、この臨界ミセル濃度の50から150%の範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
工程(ii)で準備した親水性の液相が、さらに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1以上の取込みメディエータを含むものである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
工程(i)で準備した疎水性の液相が、さらに、1以上のソルビタン脂肪酸エステルを含むものである、請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
1以上のシェル形成ポリマー、1以上の活性薬剤、ナノ粒子安定化剤、取込みメディエータおよびソルビタン脂肪酸エステルが、それぞれ、請求項2から15、17、21および23のいずれか一項に規定したとおりのものである、請求項31から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
工程(iii)が加圧下での均質化によって、および/または超音波処理により行なわれる、請求項31から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
工程(iv)において1以上の有機溶媒を蒸発する、請求項31から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
請求項31から37のいずれか一項に記載の方法によって得られることができるナノカプセル。
【請求項39】
請求項1から30のいずれか一項に記載の複数のナノカプセルおよび医薬として許容される担体を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胆汁酸またはこの塩によって安定化させた活性薬剤を封入している高分子シェルを備えたナノカプセルに関する。本発明はさらに、かかるナノカプセルの調製方法およびかかるナノカプセルを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は薬物送達システムとして、特に、薬物を患者の特定の作用部位に標的化するための考えられ得る徐放システムとして研究されている。用語「ナノ粒子」は一般的に、ナノメートル範囲の直径を有するポリマーベースの粒子を表すのに使用される。ナノ粒子には種々の構造粒子、例えば、ナノスフェアおよびナノカプセルが包含され、液状媒体(例えば、水性もしくは油性の液体)中または(半)固相(例えば、セルロース誘導体からなる高分子相(WO2009/073215参照))中に懸濁させることが報告されている。
【0003】
ポリ(アルキルシアノアクリレート)などの生体適合性で生分解性のポリマーベースのナノ粒子は、生物医学的用途のために特に重要である(Vauthier et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2003,55:519−548参照)。ポリソルベート80で被覆されたポリ(ブチルシアノアクリレート)ナノ粒子は、通常は血液脳関門を通過することができない薬物をこの関門を越えて輸送することが示されている(Kreuter et al.,Brain Res.1995,674:171−174;Kreuter et al.,J.Drug Target.2002,10(4):317−325;Reimold et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.2008,70:627−632)。
【0004】
しかしながら、多大な挑戦によるこれまでに報告されたポリ(アルキルシアノアクリレート)ベースのナノ粒子系は薬物負荷量が非常に低い(Fresta et al.,Biomaterials 1996,17:751−758;Layre et al.,J.Biomed.Mater.Res.2006,Part B:Appl.Biomater.79B:254−262;Radwan 2001,J.Microencapsulation 2001,18(4):467−477)。エマルジョン溶媒蒸発法によって調製されるナノ粒子では、大量のポリマー(多くの場合、80重量%より多く)および、これに応じて少量のみの薬物負荷量(多くの場合、20重量%未満)を含むナノ粒子が得られると報告されている。Wischke et al.により、高薬物負荷のポリ(ブチルシアノアクリレート)カプセルが報告されているが、これは、マイクロメートル範囲の直径を有するものであり、該ポリマーの高い脆性のため不安定である(即ち、容易に破断する。)(Int.J.Artif.Organs 2011,34(2):243−248)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2009/073215号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Vauthier et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.2003,55:519−548
【非特許文献2】Kreuter et al.,Brain Res.1995,674:171−174
【非特許文献3】Kreuter et al.,J.Drug Target.2002,10(4):317−325
【非特許文献4】Reimold et al.,Eur.J.Pharm.Biopharm.2008,70:627−632
【非特許文献5】Fresta et al.,Biomaterials 1996,17:751−758
【非特許文献6】Layre et al.,J.Biomed.Mater.Res.2006,Part B:Appl.Biomater.79B:254−262
【非特許文献7】Radwan 2001,J.Microencapsulation 2001,18(4):467−477
【非特許文献8】Wischke et al.,Int.J.Artif.Organs 2011,34(2):243−248
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、ここに、安定で高薬物負荷のナノカプセルが、場合によりアルコキシル化されたポリ(アルキルシアノアクリレート)から、胆汁酸および/または胆汁酸塩から選択される安定化剤の存在下で調製され得ることがわかった。
【0008】
従って、本発明により、
a)高分子シェルを形成する1以上のポリマーであって、1以上の該ポリマー)が、C−C10−アルキルシアノアクリレートおよびC−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレートのうちの1以上から選択される主モノマー成分を含む、ポリマー;
b)前記高分子シェルに封入されたコア内に含まれた1以上の医薬活性薬剤または化粧料用活性薬剤;ならびに
c)1以上の胆汁酸、1以上の胆汁酸塩およびこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤
を含むナノカプセルを提供する。
【0009】
本発明により、さらに、500nm未満の直径を有する一群のナノカプセルを含んでおり、該群のナノカプセルに、該群の1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して少なくとも50重量%、特に、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%または少なくとも99.9重量%の1以上の活性薬剤(b)が含まれている、本明細書に記載の複数のナノカプセルを提供する。
【0010】
本発明によりまた:
i)水不混和性有機溶媒または2以上の水不混和性有機溶媒の混合物中に溶解させた
−C−C10−アルキルシアノアクリレートおよびC−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレートのうちの1以上から選択される主モノマー成分を含むものである1以上のシェル形成ポリマー、ならびに
−1以上の医薬活性薬剤または化粧料用活性薬剤、ならびに
−場合により、1以上のソルビタン脂肪酸エステル、および
−場合により、検出可能な部分、標的化部分またはリンカー部分を担持している1以上の両親媒性脂質
を含む疎水性の液相を準備する工程;
ii)−親水性溶媒に溶解させた、1以上の胆汁酸、1以上の胆汁酸塩およびこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤、ならびに
−場合により、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1以上の取込みメディエータ
を含む親水性の液相を準備する工程;
iii)エマルジョンが形成されるように該疎水性の液相を該親水性の液相中に微細分散させる工程;および
iv)該親水性溶媒中のナノカプセル懸濁液が得られるように1以上の該有機溶媒の少なくとも一部を均質化された該混合物から除去する工程
を含む、ナノカプセルの調製方法を提供する。
【0011】
本発明によりまた、本明細書に記載の複数のナノカプセルおよび医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例3に記載の異なるポリマー−薬物比で調製したPBCAナノ粒子(試料3#1から3#9)の懸濁液ならびにこれらのナノ粒子の平均粒子サイズ(Z−平均直径,縦棒)および多分散度(PDI,曲線)(これらは、ゼータサイザーデバイスを用いて測定した。)を示す。
図2】実施例3に記載の異なるポリマー−薬物比で調製したPBCAナノ粒子(試料3#1から3#9)のゼータ電位(ZP)(これらは、ゼータサイザーデバイスを用いて測定した。)を示し、ポリマー−薬物比が50:50から90:10の間の、2つの系、高薬物負荷のナノカプセルとナノスフェア間での転換を示す。
図3】実施例3に記載の異なるポリマー−薬物比で調製したPBCAナノ粒子(試料3#1から3#9)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を示す。参照バーは100nmの長さを示す。
図4】実施例3に記載の異なるポリマー−薬物比で調製したPBCAナノ粒子(試料3#1から3#9)の封入効率(EE)を示す。
図5】実施例3に記載の異なるポリマー−薬物比で調製したPBCAナノ粒子(試料3#1から3#9)の絶対薬物負荷量(AL)を示す。
図6】純粋な結晶性イトラコナゾール(「ITZ純粋」,薄いグレー)と非晶質イトラコナゾール(「ITZ非晶質」,濃いグレー)のフーリエ変換赤外(FTIR)分光分析スペクトルのオーバーレイを示す。非晶質イトラコナゾールは1700から1800cm−1の間のバンド(1)を特徴とし、一方、純粋な結晶性イトラコナゾールは1000から950cm−1におけるバンド(2)と900cm−1におけるバンド(3)を特徴とする。
図7】実施例4に記載の異なるポリマー−薬物比で調製したPBCAナノ粒子(試料4#1から4#13)のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルならびに純粋な結晶性イトラコナゾールおよび純粋なPBCAのFITRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ナノカプセルは、ナノメートル範囲内(即ち、数ナノメートルから数百ナノメートル)の直径を有する粒子であって、コア−シェル構造を有する、即ち、ポリマー外層によって囲まれた積み荷(活性成分)を含有しているコアを有する粒子である。本発明のナノカプセルは、500nm未満、300nm未満、特に200nm未満、例えば、1から500nm、10から300nmの範囲または、好ましくは50から200nmの範囲のサイズを有するものであり得る。
【0014】
特に記載のない限り、用語「サイズ」および「直径」は、ナノ粒子(例えば、ナノカプセルもしくはナノスフェア)または液滴などの基本的に丸い物体に言及している場合、互換的に用いている。
【0015】
ナノ粒子調製物のサイズおよび多分散指数(PDI)は、例えば、光子相関分光法(PCS)ならびに動的光散乱法における国際規格(International Standard on Dynamic Light Scattering)ISO13321(1996)およびISO22412(2008)に従うキュムラント解析(これにより平均直径(z−平均直径)および分布の幅の推定値(PDI)が得られる。)により、例えばゼータサイザーデバイス(Malvern Instruments,Germany)を用いて測定され得る。
【0016】
用語「約」は、本明細書で使用されている文脈において当業者によって理解されよう。特に、「約」は、±20%、±10%、好ましくは±5%、より好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%の変動を示していることを意図する。
【0017】
本発明のナノカプセルのシェルは1以上のポリマーによって形成されている。1以上のシェル形成ポリマーの主モノマー成分は、C−C10−アルキルシアノアクリレート、例えば、C−C−アルキルシアノアクリレートおよびC−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレート(例えば、C−C−アルコキシ−C−C−アルキルシアノアクリレート)のうちの1以上から選択される。例えば、シェル形成ポリマーの主モノマー成分は、メチル2−シアノアクリレート、2−メトキシエチル2−シアノアクリレート、エチル2−シアノアクリレート、n−ブチル2−シアノアクリレート、2−オクチル2−シアノアクリレートおよびイソブチル2−シアノアクリレートのうちの1以上から、好ましくはエチル2−シアノアクリレートおよびn−ブチル2−シアノアクリレートから選択される。
【0018】
用語「主モノマー成分」は、ポリマーの特徴表示のために本明細書で用いる場合、ポリマーの少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、好ましくは少なくとも99重量%から100重量%までを構成しているモノマー成分を表す。
【0019】
本発明のナノカプセルのシェルを形成する好適なポリマーとしては、限定されないが、ポリ(メチル2−シアノアクリレート)、ポリ(2−メトキシエチル2−シアノアクリレート)、ポリ(エチル2−シアノアクリレート)、ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)、ポリ(2−オクチル2−シアノアクリレート)、ポリ(イソブチル2−シアノアクリレート)およびこの混合物が挙げられ、ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)、ポリ(エチル2−シアノアクリレート)およびこの混合物が好ましい。
【0020】
シェル形成ポリマーの重量平均分子量は典型的には、1,000から10,000,000g/mol、例えば5,000から5,000,000g/molまたは10,000から1,000,000g/molの範囲である。
【0021】
本発明のナノカプセルは安定である(破断する傾向がない。)。それでもなお、該ナノカプセルは、1以上の該ポリマーを少量しか含まないもの、例えば、含まれる1以上の該ポリマーが、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤)の総重量に対して、50重量%未満、40重量%未満、30重量%未満、好ましくは20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、5重量%未満、最も好ましくは1重量%未満またはさらには0.1重量%未満のものであってもよい。
【0022】
本明細書に記載のシェル形成ポリマーは、当該技術分野で知られている方法によって調製することができる。特に、該ポリマーは、例えば、Vauthier et al.(Adv.Drug Deliv.Rev.2003,55:519−548)およびLayre et al.(J.Biomed.Mater.Res.2006,Part B:Appl.Biomater.79B:254−262)ならびにこれらに挙げられた参考文献に記載のアニオン重合または双性イオン重合によって得ることができる。
【0023】
本発明のナノカプセルは好ましくは、予備合成し、必要であれば、精製した1以上のシェル形成ポリマーから調製される。従って、ナノカプセルは、1以上のシェル形成ポリマーの残留モノマー、例えばC−C10−アルキルシアノアクリレート、C−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレートおよびこれらの酸の塩を基本的に含まない。
【0024】
「残留モノマーを基本的に含まない」とは、1以上のシェル形成ポリマー)の総重量に対するモノマーの量が、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、特に1重量%未満、例えば0.01重量%未満または0.05重量%未満であることをいう。
【0025】
典型的には、重合は、水性媒体中または、好ましくはアジテーション(例えば、撹拌)下の水中で行なわれる。本発明によるナノカプセルを調製するため、該ポリマーは典型的には粉末の形態で適用される。かかるポリマー粉末は、重合後に得られた水性ポリマー懸濁液のフリーズドライによって得ることができる。凝集物を便宜上該ポリマー懸濁液から取り出し;該凝集物をアセトンなどの水混和性の有機溶媒中で希釈し、この有機溶液に過剰の水を添加してポリマーを析出させ、有機溶媒を蒸発させ、水性ポリマー懸濁液をフリーズドライすることにより、ポリマー粉末に変換することができる。
【0026】
本発明のナノカプセルは、積み荷分子、例えば、医薬活性薬剤または化粧料用活性薬剤および栄養補給剤(本明細書では、一般的に「活性薬剤」とも称する。)の送達に適している。
【0027】
本発明は、水不溶性もしくは水難溶性(または「親油性」)の化合物の封入および標的化送達に特に有用である。化合物は、25℃(pH7.0)の水への溶解度が1g/100ml以下である場合、水不溶性または水難溶性とみなされる。特に、本発明により封入される活性薬剤は、0.1g/100ml以下、0.05g/100ml以下、好ましくは0.01g/100ml以下 0.005g/100ml以下、または最も好ましくは0.001g/100ml以下の25℃(pH7.0)の水への溶解度を有するものである。
【0028】
本発明のナノカプセルは、標的部位(例えば、標的細胞)に向かっている積み荷分子を、タンパク質分解性酵素および他の酵素による分解および/または修飾から、従って、この生物学的(例えば、医薬的、美容的または栄養的)活性の低下から保護する。従って、本発明はまた、酵素によるかかる分解および/または修飾を受けやすい分子(特に、経口経路によって投与される場合)を封入するためにも特に有用である。
【0029】
本発明のナノカプセルに封入される活性薬剤は、典型的には2000g/mol未満の分子量、特に100から2000g/molの範囲の分子量を有するものである。
【0030】
本発明のナノカプセルに封入される活性薬剤は典型的には、生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutics Classification System)(BCS,米食品医薬品局によって示されたもの)のクラス2または4(これらはどちらも、低溶解度を有する薬剤を表す。)に属するものである。
【0031】
本発明による医薬活性薬剤の具体例としては、限定されないが:
(2R,4S)−rel−1−(ブタン−2−イル)−4−{4−[4−(4−{[(2R,4S)−2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(1H−1,2,4−トリアゾル−1−イルメチル)−1,3−ジオキソラン−4−イル]メトキシ}フェニル)ピペラジン−1−イル]フェニル}−4,5−ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾル−5−オン[イトラコナゾール];(2S)−N−[(2S,4S,5S)−5−[2−(2,6−ジメチルフェノキシ)アセトアミド]−4−ヒドロキシ−1,6−ジフェニルヘキサン−2−イル]−3−メチル−2−(2−オキソ−1,3−ジアジナン−1−イル)ブタンアミド[ロピナビル];アセクロフェナク、アルベンダゾール、アミオダロン、アムホテリシンB、アキナビル(Aquinavir)、アトルバスタチン、アトバコン、アジトロム(Azithrom)、カルバマゼピン、カルベジロール、クロロチアジド、クロルプロマジン、クロルタリドン、シプロフロキサシン、シサプリド、コリスチン、シクロスポリン、ダナゾール、ダプソン、ジクロフェナク、ジフルニサル、ジゴキシン、エリスロマイシン、フルルビプロフェン、フロセミド、グリピジド、グリブリド、グリセオフルビン、ヒドロクロロチアジド、イブプロフェン、インジナビル、インドメタシン、ケトコナゾール、ランソプラゾールI、ロバスタチン、メベンダゾール、メトトレキサート、ミコナゾール、ネルフィナビル、ネオマイシン、ネビラピン、オフロキサシン、オキサプロジン、オキサプロジン、フェナゾピリジン、フェニトイン、ピロカルピン、ピロキシカム、ラロキシフェン、リトナビル、サリチル酸、シロリムス、スピロノラクトン、タクロリムス、タリノロール、タモキシフェン、テルフェナジン、トログリタゾンおよびバルトラサン(Valtrasan)が挙げられる。
【0032】
本発明のナノカプセルのコアには本明細書に記載の1以上の活性薬剤が含まれている。1以上の活性薬剤は液体であっても、液状(例えば、水性もしくは油性)の溶液もしくは分散液の形態であってもよいが、これは一般的には好ましくない。そうではなく、一実施形態によれば、ナノカプセルコア内の1以上の活性薬剤または1以上の栄養補給剤の少なくとも50%、特に、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または好ましくは少なくとも95%または100%が未溶解の固形形態、例えば、非晶質、半結晶性もしくは結晶性の状態またはこの混合体で存在している。
【0033】
具体的な一実施形態によれば、ナノカプセルコア内の1以上の活性薬剤または1以上の栄養補給剤の少なくとも50%、特に、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または、好ましくは少なくとも95%または100%が結晶性の状態で存在している。
【0034】
さらに別の具体的な一実施形態によれば、ナノカプセルコア内の1以上の活性薬剤または1以上の栄養補給剤の少なくとも50%、特に、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または、好ましくは少なくとも95%または100%が半結晶性の状態で存在している。
【0035】
別の具体的な実施形態によれば、ナノカプセルコア内の1以上の活性薬剤または1以上の栄養補給剤の少なくとも50%、特に、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または、好ましくは少なくとも95%または100%が非晶質の状態で存在している。
【0036】
本発明により、有利には高負荷量の積み荷分子を有することができるナノカプセルを提供する。従って、本発明のナノカプセルは、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の総重量に対して少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%または少なくとも99.9重量%から99.9重量%まで、99.95重量%までまたは好ましくは99.99重量%までの1以上の活性薬剤を含むことができる。
【0037】
本発明により、さらに、500nm未満の直径を有するナノカプセルが有利には高負荷量の積み荷分子を有し、有利には高割合で存在することができる本明細書に記載の複数のナノカプセルを提供する。
【0038】
従って、本発明により、500nm未満、300nm未満または、好ましくは200nm未満(例えば、1から500nm、10から300nmの範囲もしくは、好ましくは50から200nmの範囲)の直径を有する一群のナノカプセルを含んでおり、該群のナノカプセルに、該群の1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の総重量に対して、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%または少なくとも99.9重量%から99.9重量%まで、99.95重量%までまたは好ましくは99.99重量%までの1以上の活性薬剤が含まれている、複数のナノカプセルを提供する。本発明による複数のナノカプセルは、500nm未満、300nm未満または、好ましくは200nm未満、例えば1から500nm、10から300nmの範囲または、好ましくは50から200nmの範囲の直径を有する一群のナノカプセルを含むことができ、この群が該複数のナノカプセルの90重量%より多くを占めている。
【0039】
用語「複数のナノカプセル」は、2個以上のナノカプセル、例えば、少なくとも10個、少なくとも100個、少なくとも1,000個、少なくとも5,000個、少なくとも10,000個、少なくとも50,000個、少なくとも100,000個、少なくとも500,000個もしくは少なくとも1,000,000個以上のナノカプセルをいう。
【0040】
本発明のナノカプセルには、1以上の胆汁酸、1以上の胆汁酸塩およびこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤が含まれている。ナノ粒子安定化剤は、ナノカプセルが高薬物負荷である場合、即ちシェル形成ポリマーの量が非常に少ない場合であっても、安定なナノカプセルの形成を可能にするものである。
【0041】
好適なナノ粒子安定化剤の例としては、胆汁酸、例えば、コール酸、タウロコール酸、グリココール酸、デオキシコール酸、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、デヒドロコール酸、ウルソデオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、ヒオコール酸およびこの混合物、ならびに前記酸の塩(例えば、ナトリウム、カリウムまたはカルシウムの塩)ならびにこの混合物が挙げられる。好ましくは、ナノ粒子安定化剤は、コール酸、コール酸の1以上の塩およびこの混合物から選択される。最も好ましい一実施形態によれば、ナノ粒子安定化剤はコール酸ナトリウムである。
【0042】
該1以上のナノ粒子安定化剤は、典型的には、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の総重量に対して3から36重量%の量で存在させる。
【0043】
場合により、本発明のナノカプセルにさらに、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1以上の取込みメディエータを含めてもよい。1以上の前記取込みメディエータは、生物体の内部の関門、特に血液脳関門を越えるナノカプセルの輸送を助長し得るものである。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えばTween 80(ポリソルベート80)は、脳の毛細管の細胞による化合物の受容体媒介性取込みに枢要な役割を果たす特定の血漿タンパク質(ApoEなど)の誘引を助長すると仮定される。
【0044】
取込みメディエータの例としては、一価不飽和または特に飽和脂肪酸とのポリオキシエチレンソルビタンのモノエステルおよびトリエステルが挙げられる。具体的な脂肪酸の例としては、限定されないが、C11−C18−脂肪酸、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸および、特にオレイン酸が挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、90個までのオキシエチレン単位、例えば、15から25個、18から22個または、好ましくは20個のオキシエチレン単位を含むものであり得る。1以上の取込みメディエータは好ましくは、約13から18、特に約16から17の範囲のHLB値を有するポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される。好都合には、本発明のナノカプセルに使用される1以上の取込みメディエータは、例えば、E432(ポリソルベート20)、E434(ポリソルベート40)、E435(ポリソルベート60)、E436(ポリソルベート65)および、特にE433(ポリソルベート80)などの公式に承認された食品用添加剤から選択される。好ましくは、取込みメディエータはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートである。
【0045】
1以上の該取込みメディエータは、典型的には、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の総重量に対して0.001から0.1重量%の量で存在させる。
【0046】
場合により、本発明のナノカプセルにさらに、1以上のソルビタン脂肪酸エステルを含めてもよい。1以上の前記ソルビタン脂肪酸は、小サイズ、例えば200nm未満の直径を有するナノカプセルの形成を助長し得るものである。
【0047】
好適なソルビタン脂肪酸エステルの例としては、限定されないが、一価不飽和または特に飽和C11−C18−脂肪酸、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸および、特にオレイン酸のソルビタンモノエステルが挙げられる。好ましくは、本発明のナノカプセルはソルビタンモノオレエートを含むものである。
【0048】
場合により、本発明のナノカプセル、特にこの高分子シェルに、例えば、検出可能な標識としての機能を果たし得るか、標的化化合物に連結されているか、または例えば標的化化合物もしくは標識化化合物の結合を可能にするリンカーを担持している1以上の両親媒性脂質を含めてもよい。
【0049】
用語「両親媒性脂質」は、本明細書で用いる場合、親水性部分と疎水性部分を含む分子をいう。一般的に、両親媒性脂質の疎水性部分は、7から29個の炭素原子を有する(即ち、C−C30脂肪酸に由来する。)1以上の線状または分枝状の飽和または不飽和の炭化水素鎖を含むものである。本発明のナノカプセルにおける使用のための好適な両親媒性脂質の例としては、天然に存在しているかまたは合成のリン脂質、コレステロール、リゾ脂質、スフィンゴミエリン、トコフェロール、糖脂質、ステアリルアミンおよびカルジオリピンが挙げられる。さらなる例としては、1以上(例えば、1種類または2種類)の脂肪酸と親水性化合物、例えば、糖アルコール(例えば、ソルビタン)または糖(例えば、単糖、二糖もしくは三糖、例えば、サッカロース)とのエステルおよびエーテルが挙げられる。本発明のナノカプセルに使用される両親媒性脂質は好都合には、機能性部分、例えばリンカー、検出可能な部分および/または標的化部分を担持しているものである。前記部分は好ましくは、両親媒性脂質の親水性部分に、場合によりスペーサーを介して共有結合されている。かかるスペーサーは、ポリオキシエチレン鎖を含むもの、または本質的にポリオキシエチレン鎖からなるものであり得る。
【0050】
本発明のナノカプセルに使用される両親媒性脂質は好ましくは、本明細書に記載のリンカー、検出可能な部分および/または標的化部分から選択される機能性部分を担持しているリン脂質である。
【0051】
用語「脂質」は、本明細書で用いる場合、脂肪、油、または動物脂肪中および植物油中に存在するエステル化脂肪酸を含有している物質をいう。脂質は、主として炭素、水素および酸素で形成された疎水性または両親媒性の分子であり、水より小さい密度を有するものである。脂質は、ワックスの場合のように室温(25℃)で固体状態であり得るか、または油の場合のように液状であり得る。
【0052】
用語「脂肪酸」は、本明細書で用いる場合、一般的には線状の飽和または不飽和の炭化水素鎖および少なくとも4個の炭素原子、典型的には4から30個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸をいう。天然脂肪酸のほとんどは、偶数個の炭素原子で4から30個の炭素原子を有するものである。長鎖脂肪酸は14から22個の炭素原子を有するものであり;極長鎖脂肪酸は22個より多くの炭素原子を有するものである。
【0053】
用語「リン脂質」は、本明細書で用いる場合、リン酸基を有する脂質、特にホスホグリセリドをいう。リン脂質は、リン酸基を含む親水性部分と、(典型的には、2つの)脂肪酸炭化水素鎖によって形成された疎水性部分とを含むものである。具体的なリン脂質としては、本明細書に記載の機能性部分を担持しているホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(例えば、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンおよびスフィンゴミエリンが挙げられる。
【0054】
一実施形態によれば、本発明のナノカプセル、特にこの高分子シェルは1以上の両親媒性脂質を含むものであって、前記両親媒性脂質が検出可能な部分を担持しているものである。好適な検出可能な部分としては、限定されないが蛍光性部分、および酵素反応によって、または検出可能な分子(例えば、蛍光標識抗体)の特異的結合によって検出され得る部分が挙げられ、蛍光性部分(例えば、フルオレセインまたはローダミンBなど)が好ましい。具体的な一実施形態によれば、本発明のナノカプセル、特にこの高分子シェルは、蛍光性部分を担持している1以上のリン脂質(例えば、ホスファチジルエタノールアミン)を含むものである。典型的には、検出可能な部分(特に、蛍光性部分)を含む1以上の両親媒性脂質の量は、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、0.01から2重量%、特に0.1から1.5重量%、好ましくは0.5から1重量%の範囲である。
【0055】
さらなる一実施形態によれば、本発明のナノカプセル、特にこの高分子シェルは1以上の両親媒性脂質を含むものであって、前記両親媒性脂質(好ましくは、この親水性部分)が標的化部分を担持しているものである。標的化部分は、標的分子(例えば、特定の型の細胞に特徴的な細胞表面分子)に特異的に結合し得るものであり、これにより、かかる標的部分を有する両親媒性脂質を含むナノカプセルが被験体の体内の特定の標的部位(例えば、特定の器官または組織内の)に蓄積されることが可能になる。好適な標的化部分としては、限定されないが、抗体(例えば、慣用的な単一ドメイン抗体)、抗原結合断片およびこの誘導体、ならびに細胞表面受容体のリガンドおよびリガンド類似体が挙げられる。典型的には、標的化部分(特に、抗体またはこの抗原結合断片)を含む1以上の両親媒性脂質の量は、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、0.01から10重量%、特に、0.1から7重量%、好ましくは0.5−5重量%の範囲である。
【0056】
さらなる一実施形態によれば、本発明のナノカプセル、特にこの高分子シェルは1以上の両親媒性脂質を含むものであって、前記両親媒性脂質(好ましくは、この親水性部分)がリンカー部分を担持しているものである。リンカー部分は、本明細書に記載の検出可能な部分または標的化部分を含む両親媒性脂質が形成されるように、例えば標的化化合物および/または標識化化合物と両親媒性脂質との特に共有結合による結合を可能にするものである。従って、標的化化合物または標識化化合物などの化合物は、リンカー部分を担持している1以上の両親媒性脂質を含む(この高分子シェルに組み込まれた。)ナノカプセルの表面に結合(例えば、共有結合)され得る。好適なリンカー部分は、反応性官能部、例えば、マレイミド、カルボキシ、スクシニル、アジド、2−ピリジルジチオ、2,4−ジクロロトリアジニル、スルフヒドリル、アミノ、ビオチニルまたはアルデヒド基を有するものであり、マレイミドが好ましい。典型的には、リンカー部分を含む1以上の両親媒性脂質の量は、ナノカプセルの1以上のシェル形成ポリマー(a)と1以上の活性薬剤(b)の総重量に対して、0.01から10重量%、特に、0.1から7重量%、好ましくは0.5−5重量%の範囲である。
【0057】
本発明のナノカプセルに使用される両親媒性脂質に結合させてもよいさらなる好適な薬剤(本明細書に記載の検出可能な化合物および標的化化合物に記載のような)としては、ナノカプセルを免疫系に対して見分けのつかないものにし得る化合物(例えば、葉酸)、被験体内部でのナノカプセルの循環時間を増大させる化合物および/またはナノカプセルの排出を低速化させる化合物が挙げられる。
【0058】
本発明のナノカプセルは、本明細書に記載の1つより多くの型の両親媒性脂質を含み、従って、1つの同じナノカプセルに標的化と標識化などの異なる機能を兼ね備えているものであってもよい。
【0059】
本発明のナノカプセルの構成要素、特に1以上のシェル形成ポリマーならびに本発明による組成物の成分、特に担体は、好都合には医薬として許容されるものである。
【0060】
用語「医薬として許容される」とは、本明細書で用いる場合、化合物もしくは物質が、本発明のナノカプセルもしくはこの組成物を医療的もしくは美容的処置または医療的予防のために必要とされる量で投与した場合に急性毒性を引き起こさないこと、または本発明のナノカプセルもしくはこの組成物を含む栄養剤製品の摂取により最大推奨摂取量が取り込まれることをいう。
【0061】
本発明のナノカプセルは、エマルジョン溶媒蒸発法、特に:
i)水不混和性有機溶媒または2以上の水不混和性有機溶媒の混合物中に溶解させた
−C−C10−アルキルシアノアクリレートおよびC−C−アルコキシ−C−C10−アルキルシアノアクリレートの1以上から選択される主モノマー成分を含むものである1以上のシェル形成ポリマー、ならびに
−1以上の医薬活性薬剤または化粧料用活性薬剤、ならびに
−場合により、1以上のソルビタン脂肪酸エステル、および
−場合により、検出可能な部分、標的化部分またはリンカー部分を担持している1以上の両親媒性脂質
を含む疎水性の液相を準備する工程;
ii) −親水性溶媒に溶解させた1以上の胆汁酸、1以上の胆汁酸塩およびこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤、ならびに
−場合により、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1以上の取込みメディエータ
を含む親水性の液相を準備する工程;
iii)エマルジョンが形成されるように該疎水性の液相を該親水性の液相中に微細分散させる工程;および
iv)該親水性溶媒中のナノカプセル懸濁液が得られるように1以上の該有機溶媒の少なくとも一部を均質化された該混合物から除去する工程
を含む方法によって調製され得る。
【0062】
界面重合または乳化重合などの方法とは対照的に、本発明の方法は、予備形成した(シェル形成)ポリマーを用いて開始し、これにより、よりポリマー特性の良好な制御および残留モノマー含有量の低減が可能になる。
【0063】
本発明の方法の工程(i)における疎水性の液相の準備に有用な有機溶媒は水不混和性溶媒である。用語「水不混和性溶媒」は、本明細書で用いる場合、約10重量%未満、特に約5重量%未満、好ましくは約3重量%未満の水への溶解度を有する溶媒をいう。工程(i)における使用のための水不混和性有機溶媒は好ましくは揮発性であり、即ち、室温(25℃)で液体であり、標準圧力(100kPa)で150℃以下の沸点を有するものである。好適な水不混和性有機溶媒の例としては、限定されないが、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、トリクロロ−トリフルオロエチレン、テトラクロロエタン、トリクロロエタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、酢酸エチル、フェノール、トルエン、キシレン、エチル−ベンゼン、ベンジルアルコール、クレオゾール、メチル−エチルケトン、メチル−イソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、フランおよび非環状脂肪族エーテル(ジエチルエーテルなど)ならびにこの混合物が挙げられ、クロロホルムが好ましい。
【0064】
本発明の方法の工程(ii)における親水性の液相の準備に使用される親水性溶媒は好ましくは水である。
【0065】
親水性の相の体積が疎水性の相の体積に対して非常に多いエマルジョン溶媒蒸発法では、非常に希薄なナノカプセル懸濁液が得られ、懸濁液中のナノカプセルの濃度を最終用途のための充分に高い濃度まで上げるための加工処理工程が必要となる場合があり得る。疎水性の液相:親水性の液相の体積比は、一般的に1:100から2:3の範囲、好ましくは1:9から1:2の範囲である。
【0066】
親水性液全体に分布した疎水性液の微細液滴のエマルジョンが形成されるように、疎水性の液相を親水性の液相中に微細分散させる。このエマルジョンは剪断力を負荷することにより、例えば、スタティックミキサーを用いて混合することにより、超音波により、加圧下(例えば、少なくとも5,000kPa、例えば20,000から200,000kPa、好ましくは50,000から100,000kPaの圧力下)での均質化により、またはこれらの任意の均質化方法を組み合わせることにより得られ得る。親水性液中の疎水性液のエマルジョンは、2工程の方法で調製され得、この場合、2つの相をまず、例えばスタティックミキサー(ローテータ/ステータ型ミキサー)を用いて、予備エマルジョンが得られるように混合し、この予備エマルジョンを第2工程で、疎水性液の液滴のサイズが縮小されるように超音波処理によりおよび/または高圧ホモジナイザーを用いてさらに均質化する。剪断力は1から12分、特に4から10分の時間、負荷され得る。例えば、超音波は1から10分間、特に2から5分間、60から100%、特に70から100%の範囲の振幅で適用され得る。
【0067】
次いで、親水性媒体中、好ましくは水性媒体(親水性溶媒を含むもの)中のナノカプセルの懸濁液が得られるように、1以上の有機溶媒の少なくとも一部を均質化された該混合物から除去する。例えば本発明の方法の工程(iv)における均質化された混合物から有機溶媒を除去するための好適な手段は、当該技術分野で知られており、限定されないが、蒸発、抽出、ダイアフィルトレーション、パーベーパレーション、蒸気透過および濾過が挙げられる。ナノカプセルの親水性懸濁媒体中の有機溶媒の濃度は、前記媒体中の該有機溶媒の溶解度より下まで、特に、約5重量%未満、約3重量%未満、約1重量%未満、好ましくは約0.1重量%未満の濃度まで好都合に低減される。好ましくは、1以上の有機溶媒は、得られるナノカプセル懸濁液が、それぞれ医薬として許容されるか、またはICH(医薬品規制調和国際会議(International Committee on Harmonization))ガイドラインに従って許容される程度まで除去される。
【0068】
場合により、本発明の方法にさらに精製工程、例えば、薬物の析出物および凝集物の取り出し(例えば、濾過により)および/または懸濁媒体の一部もしくは完全交換(例えば、透析により)を含めてもよい。
【0069】
本発明の方法により、サイズに関して比較的高い均一性を有するナノカプセルの調製物、例えば、大部分のナノカプセルが500nm未満、300nm未満、特に200nm未満、例えば1から500nm、10から300nmの範囲または特に50から200nmの範囲の直径を有するものである調製物がもたらされ得る。特に、本発明の方法で得られるナノカプセル調製物は、光子相関分光法による測定時、0.5以下、0.3以下、好ましくは0.2以下、またはさらには0.1以下のPDI値を有するものであり得る。それでもなお、所望の範囲外の直径を有するナノカプセルを除去するために、ナノカプセル調製物をさらに(例えば、濾過により)加工処理してもよい。
【0070】
本発明の方法に使用される1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の相対量は、1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の総重量に対して、1以上の活性薬剤が少なくとも50wt%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%または少なくとも99.9重量%から99.9wt%まで、99.95重量%までまたは、好ましくは99.99重量%まで高くてもよい。
【0071】
本明細書に記載のような1以上の胆汁酸、1以上の胆汁酸塩およびこの混合物から選択されるナノ粒子安定化剤の存在により、高度に安定なナノカプセルの形成、高い封入効率ならびに高い絶対薬物負荷が可能になる。
【0072】
用語「封入効率」(EE)は、ナノカプセルを調製するために使用される1以上の活性薬剤の総量に対するナノカプセル内に封入された1以上の活性薬剤の量をいう。本発明の方法により、ナノカプセルの調製に使用される1以上のシェル形成ポリマーと1以上の活性薬剤の総重量に対して少なくとも50重量%、特に少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%の1以上の活性薬剤を使用すると、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%またはさらには少なくとも80%の封入効率が可能になる。
【0073】
用語「絶対薬物負荷」(AL)は、1以上の活性薬剤+1以上のシェル形成ポリマーポリマーの総重量に対するナノカプセル内に封入された1以上の活性薬剤の重量をいう。絶対薬物負荷は、適用用量が考慮された最も重要な測定値の1つである。ポリ(アルキルシアノアクリレート)ベースの既報のナノ粒子とは対照的に、本発明によるナノカプセルは、有意に高い、例えば少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、またはさらには少なくとも70重量%の絶対薬物負荷を有するものであり得る。
【0074】
本発明の方法の工程(ii)で準備する親水性の相中のナノ粒子安定化剤の濃度は、典型的には、この臨界ミセル濃度の50%から150%、特に80%から120%、好ましくは90%から110%の範囲、例えば5mMから15mM、特に8mMから12mM、特に9mMから11mMの範囲である。
【0075】
用語「臨界ミセル濃度」(CMC)は、超えるとミセルが形成される界面活性剤濃度をいう。
【0076】
本発明の方法の工程(ii)で準備する親水性の液相には、さらに、本明細書に記載のようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1以上の取込みメディエータが含められ得る。疎水性の液相中の1以上のソルビタン脂肪酸エステルの特に好適な濃度は、この臨界ミセル濃度の50%から150%、特に80%から120%、好ましくは90%から110%の範囲、例えば6μMから18μM、特に9.6μMから14.4μM、特に10.8μMから13.2μMの範囲である。
【0077】
本発明の方法の工程(i)で準備する疎水性の液相には、さらに、本明細書に記載のような1以上のソルビタン脂肪酸エステルが含められ得る。疎水性の液相中の1以上のソルビタン脂肪酸エステルの特に好適な濃度は、0.1Mから0.2M、特に0.12Mから0.18Mの範囲である。
【0078】
本発明の方法の工程(i)で準備する疎水性の液相には、さらに、本明細書に記載のような1以上の両親媒性脂質が含められ得る。
【0079】
本発明により、さらに、本明細書に記載の複数のナノカプセルおよび医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。担体は、意図される投与様式に適するように選択され、投与様式は、例えば、経口または非経口投与、血管内、皮下もしくは最も一般的には静脈内注射、経皮適用または局所適用(例えば、皮膚、鼻もしくは口内の粘膜または結膜上への)であり得る。
【0080】
本発明のナノカプセルにより、封入された1以上の活性薬剤が胃腸管内および/または血中での早期分解から保護され、この徐放が可能になることによって、1以上の前記薬剤のバイオアベイラビリティおよび有効性が高まり得る。経口投与後、本発明のナノカプセルは腸壁およびさらには血液脳関門などの関門を通過し得る。
【0081】
本発明の液状医薬組成物には、典型的には、1以上の水溶性の塩および/または1以上の水溶性のポリマーを含むものであり得る水溶液から選択される担体を含める。該組成物が注射によって投与されるものである場合、担体は典型的には、等張性水溶液(例えば、150mMのNaCl,5重量%のデキストロースまたは両方を含有している溶液)である。また、かかる担体は、典型的には、約7.3から7.4の範囲の適切な(生理学的)pHを有するものである。
【0082】
例えば経口投与されるか、または埋め込みデポ剤として投与される組成物のための固形または半固形の担体は、医薬として許容されるポリマー、例えば限定されないが、N−ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマー(特に、N−ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、N−ビニルピロリドンと酢酸ビニルもしくはプロピオン酸ビニルとのコポリマー)、セルロースエステルおよびセルロースエーテル(特に、メチルセルロースおよびエチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、特に、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシルアルキルアルキルセルロース、特に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸セルロースもしくはコハク酸セルロース、特に、酢酸フタル酸セルロースおよびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースもしくは酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、高分子量ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシドおよびポリプロピレンオキシドならびにエチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー)、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール−グラフトコポリマー、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート(例えば、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/メタクリル酸メチルコポリマー、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸2−ジメチルアミノエチルコポリマー、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート))、ポリアクリルアミド、酢酸ビニルポリマー(例えば、酢酸ビニルとクロトン酸のコポリマー、部分加水分解ポリ酢酸ビニル)、ポリビニルアルコール、オリゴ糖および多糖、例えば、カラギーナン、ガラクトマンナンおよびキサンタンガム、またはこれらの1以上の混合物から選択することができる。固形担体成分は、本発明のナノカプセルの液状懸濁液中に溶解または懸濁され得、液状懸濁媒体は少なくとも一部が除去され得る。
【実施例】
【0083】
粒子サイズおよび多分散指数の測定
本明細書に記載の実施例において、調製したナノ粒子のサイズおよび多分散指数(PDI)は、光子相関分光法(PCS)ならびに動的光散乱法における国際規格ISO13321(1996)およびISO22412(2008)に従うキュムラント解析により、ゼータサイザーデバイス(Malvern Instruments,Germany;ソフトウェアバージョン「Nano ZS」)を用いて測定した。これにより平均直径(z−平均直径)および分布の幅の推定値(PDI)が得られる。PDIは、本実施例で示している場合、サイズ分布の幅広さの無次元測定量であり、このゼータサイザーのソフトウェアでは0から1の範囲である。<0.05のPDI値は、単分散試料(即ち、非常に均一な粒子サイズ分布を有する試料)を示すが、高いPDI値ほど、より多分散の試料を示す。
【0084】
ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)の調製
ポリマーの合成は、Layre et al.(J.Biomed.Mater.Res.2006,Part B:Appl.Biomater.79B:254−262)に記載のようにして行なった。1mlのn−ブチル2−シアノアクリレートを15mlの水にゆっくり添加し、混合物を撹拌(300rpm)下で室温にて2時間インキュベートした。得られた乳状懸濁液を回収し、フリーズドライによって凍結乾燥させた。スターラー周囲に形成されたいくらかの凝集物をアセトン中で希釈した。10倍過剰の水を添加することによりポリマーを析出させ、アセトンを析出物から撹拌下で室温にて蒸発させ、ポリマーをフリーズドライさせた。
【0085】
[実施例1]Tween 80ありおよびなしのイトラコナゾール負荷ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)ナノカプセルの調製
コール酸ナトリウムを有する試料:
9.5mg/mlのイトラコナゾールと0.5mg/mlのポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)(PBCA)のクロロホルム中の1mlの溶液を、10mMのコール酸ナトリウムの2mlの水溶液に添加した。
【0086】
コール酸ナトリウムとTween 80を有する試料:
9.5mg/mlのイトラコナゾールと0.5mg/mlのポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)のクロロホルム中の1mlの溶液を、10mMのコール酸ナトリウムと10μMのTween 80の2mlの水溶液に添加した。
【0087】
各試料(7ml容ガラスバイアル内)を室温で10分間、超音波処理(振幅70%,1サイクル)した。より長い(20ml)ガラスバイアルに移した後、クロロホルムが蒸発するまで(重量測定によりモニタリング)、エマルジョンを室温で撹拌した。得られた懸濁液中の粒子のサイズとPDIを測定した。粒子(Tween 80ありまたはなしで調製)は均一であり、200nmより小さいことがわかった。懸濁液を200nmメンブレンに通して濾過し、未封入のイトラコナゾールの析出物(これは水性環境において析出した。)を除去した。濾過後、粒子のサイズとPDIを再度測定し、イトラコナゾールの濃度を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって測定した。
【0088】
[実施例2]
Tween 80ありおよびなしのイトラコナゾール負荷ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)ナノカプセルの調製
イトラコナゾール負荷PBCAナノカプセルを、試料を氷冷下で4分間超音波処理(70%,1サイクル)したこと以外は、実施例1に記載のようにして調製し、分析した。得られたナノ粒子(Tween 80ありまたはなしで調製)はおよそ500から650nmの範囲の直径を有するものであり、従って、実施例1で得られたものより長いものであった。この結果により、より激しい均質化によって、より小さい粒子サイズが得られ得ることが確認される。
【0089】
[実施例3]
異なるポリマー−薬物比を有するイトラコナゾール負荷ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)ナノカプセルの調製
試料3#1から3#9:各試料について、表1に示した濃度を有するイトラコナゾールとポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)のクロロホルム中の1mlの溶液を、10mMのコール酸ナトリウムと10μMのTween 80の2mlの水溶液に添加した。各試料(7ml容ガラスバイアル内)を室温で10分間超音波処理(70%,1サイクル)した。より長い(20ml)ガラスバイアルに移した後、クロロホルムが蒸発するまで(重量測定によりモニタリング)、エマルジョンを室温で撹拌した。懸濁液を200nmメンブレンに通して濾過し、未封入のイトラコナゾールの析出物(これは水性環境において析出した。)を除去した。濾過後、粒子のサイズとPDIを測定した。
【0090】
【表1】
【0091】
結果を図1にまとめる。結果は、2つの系:約170から190nmのサイズ(Z−平均直径)を有する高薬物負荷ナノカプセルと、有意に少ない薬物負荷量を含有している約80から140nmのナノスフェアとの間で転換がみられたことを示す。ゼータ電位(ZP)の測定により、50:50から90:10の間のポリマー−薬物比でこの転換が確認された(図2参照)。
【0092】
さらに、測定したサイズおよびサイズ分布ならびに長ナノカプセルから小ナノスフェアへの転換を、透過型電子顕微鏡検査(TEM,図3参照)によって確認した。想定したとおり、50:50およびこれより低いポリマー−薬物比で得られた長粒子(ナノカプセル)は、非常に薄いポリマー外層を有する薬物コアを含むものであったが、80:20のポリマー−薬物比で得られた小粒子(ナノスフェア)では、少量の薬物がポリマーマトリックス中に分布されていた。
【0093】
封入効率(EE)と絶対薬物負荷量(AL)を計算するため、濾過したナノ粒子懸濁液中のイトラコナゾール濃度を逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)によって測定した。図4に示されるように、高いポリマー−薬物比では、高い封入効率を有するナノカプセルの形成が可能であった。さらに、ナノカプセルは、対応するナノスフェアよりも有意に高い絶対薬物負荷量を有していた(図5参照)。
【0094】
[実施例4]異なるポリマー−薬物比を用いたイトラコナゾール負荷ポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)ナノカプセルの調製
試料4#1から4#13を、表2に示したとおりのポリマー−薬物溶液を使用したこと以外は実施例3に記載のようにして調製し、分析した。
【0095】
【表2】
【0096】
分析の結果により、実施例3で観察されたナノカプセルとナノスフェア間での転換が確認され、薬物の量(薬物とポリマーの総量に対する。)を99.9%まで上げることができることが示された。
【0097】
[実施例5]高薬物負荷ナノ粒子の形成に対する種々の界面活性剤の影響
試料5#1から5#32:各試料について、イトラコナゾールとポリ(n−ブチル2−シアノアクリレート)のクロロホルム中の1mlの溶液(表3に示したとおりの濃度)を、12μMのTween 80とさらなる界面活性剤(表3に示したとおり)の2mlの水溶液に添加した。得られた混合物を、表3に示したとおりの時間と温度で超音波処理(70%,1サイクル)した。次いでクロロホルムを室温で蒸発させ、最後に試料を0.2μmメンブレンに通して濾過し、任意の未封入のイトラコナゾール(これは水性環境において析出した。)を除去した。
【0098】
【表3】
【0099】
光学顕微鏡検査による分析により、コール酸ナトリウムを含有している試料(5#3、5#6、5#13、5#21、5#22、5#28、5#29および5#30)のみで、安定で均一なナノ粒子懸濁液が形成されることが示された。
【0100】
濾過試料中の封入されたイトラコナゾールの量を測定し、封入効率(EE)を計算した(EE=[封入されたイトラコナゾールの量]/[イトラコナゾールの総量])。最も高い封入効率は、コール酸ナトリウムを含有している試料(5#3、5#6、5#13、5#21、5#22、5#28、5#29および5#30)の調製物でみられた。
【0101】
[実施例6]Tween 80の非存在下でのナノカプセルの形成
試料6#1から6#8を、Tween 80を省いたこと以外は、実施例5で5#3、5#6、5#13、5#21、5#22、5#28、5#29および5#30について記載のとおりに調製した。イトラコナゾールを含有するPBCAナノカプセルが成功裡に作製された。従って、コール酸ナトリウムは界面活性剤であることがわかり、これは、予備形成したポリマーと併用すると安定な高薬物負荷ナノ粒子の作製を可能にする。
【0102】
[実施例7]異なるポリマーでのナノカプセルの形成
実験7#1を、5mg/mlのPBCAの代わりに1mg/mlのポリ(エチル2−シアノアクリレート)(PECA)を、および50mg/mlの代わりに10mg/mlのイトラコナゾールを使用したこと以外は、実験5#21について記載のとおりに行なった。得られたナノカプセルのz−平均直径を、本明細書に記載のようなゼータサイザーデバイスを用いて測定した(表4参照)。
【0103】
【表4】
【0104】
[実施例8]シェル形成ポリマーありおよびなしのナノ粒子の形成
実験8#1は、イトラコナゾールの代わりにロピナビルを使用したこと以外は、実験5#21について記載のとおりに行なった。
【0105】
実験8#2は、ポリマー(PBCA)を省いたこと、およびイトラコナゾールの代わりにロピナビルを使用したこと以外は、実験5#21について記載のとおりに行なった。
【0106】
実験8#3は、ポリマー(PBCA)を省いたこと以外は、実験5#21について記載のとおりに行なった。
【0107】
薬物ナノ粒子は、ポリマーなしであってもコール酸ナトリウムの存在下で形成されることがわかった。しかしながら、シェル形成ポリマーの非存在下で形成されたナノ粒子は、高分子シェルを有する対応ナノカプセルよりも長かった(表5参照)。
【0108】
【表5】
【0109】
[実施例9]PBCAナノ粒子のFTIR分析
実施例3および実施例4で調製したナノ粒子をフーリエ変換赤外(FTIR)分光分析によって分析した。参照目的のため、非晶質イトラコナゾール(>166℃の温度への曝露によって調製)および結晶性イトラコナゾールのスペクトルを測定し、比較した。非晶質イトラコナゾールはおよそ1700から1800cm−1におけるFTIRバンドを特徴とすることがわかり、一方、2つのバンド、およそ1000から950cm−1における1つとおよそ900cm−1における1つは結晶性イトラコナゾールを示すものであった(図6参照)。FTIR分析の前に、ナノ粒子試料を200nmメンブレンに通して濾過し、任意のイトラコナゾール析出物を除去した。
【0110】
およそ900cm−1におけるバンドをナノ粒子中のイトラコナゾールの(非晶質か結晶性かの)状態のインジケータとして使用した。前記バンドは高薬物負荷PBCAナノカプセルにおいて検出され、ナノカプセルコア内のイトラコナゾールが結晶性の状態で存在していることが示された。
【0111】
さらに、純粋な結晶性イトラコナゾールに特徴的なおよそ1500cm−1および1700cm−1における特異的バンドは、試料4#1から4#7(0:100から50:50のポリマー−薬物比で調製したPBCAナノカプセル)において明白に検出可能であった。対照的に、PBCAに特徴的なおよそ1750cm−1および1250cm−1におけるバンドは、試料4#8から4#13(80:20から100:0のポリマー−薬物比で調製したPBCAナノスフェア)において非常に顕著であった(図7参照)。
【0112】
[実施例10]異なる積み荷分子でのナノカプセルの形成
PBCAナノ粒子を、イトラコナゾールの代わりにロピナビル(LPV)または代謝型グルタミン酸受容体サブグループ2の正のアロステリックモジュレータ(mGluR2PAM)を使用したこと以外は、実施例3に記載のようにして調製し、分析した。
【0113】
結果により、高薬物負荷ナノカプセル(1:99から50:50のポリマー−薬物比で調製)と、低薬物負荷量を有する小ナノスフェア(80:20から99:1のポリマー−薬物比で調製)間での転換が確認された。
【0114】
[実施例11]Span 80の添加によるナノカプセルのサイズ縮小
実施例10で調製したmGluR2PAM PBCAナノカプセルのz−平均直径は約300nmであった。実験により、0.15MのSpan 80をPBCAとmGluR2PAMのクロロホルム中の溶液に添加すると(他の条件は変更せずに維持したまま)、わずか約90nmのz−平均直径を有するナノカプセルの調製が可能になることが示された。
【0115】
[実施例12]シェル一体化脂質を有するイトラコナゾール負荷PBCAナノ粒子
ナノ粒子(ナノカプセル=NCおよびナノスフェア=NS)12#1から12#8の懸濁液を以下のようにして調製した:
各試料について、表6の各列に示した成分を合わせて親油性の相を得た。前記親油性の相を、10mMのコール酸ナトリウムと12μMのTween 80の2mlの水溶液に添加し、試料を室温で10分間超音波処理(70%,1サイクル)した。クロロホルムを撹拌により室温で蒸発させた(重量測定によりモニタリング)。イトラコナゾール含有ナノ粒子を200nmメンブレンに通して濾過した。
【0116】
得られたナノ粒子懸濁液を、該懸濁液を約10分の1の体積までVivaspin 500メンブレン(300kDa MWCO,Sartorius,Germany)を用いて濃縮し、除去後の懸濁媒体に10mMのコール酸ナトリウムと12μMのTween 80の新鮮水溶液を補充し、このような洗浄工程を数回繰り返して任意の遊離の蛍光脂質を除去することにより精製した。
【0117】
精製したナノ粒子懸濁液の蛍光強度を二連で測定した。結果は、試料12#1から12#8のナノ粒子の成功裡の蛍光標識を示す。蛍光脂質の組込みによるナノ粒子のz−平均直径またはPDIの変化はなかった。
【0118】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】