(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-516860(P2017-516860A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】ARF6阻害剤並びにそれらの合成方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20170526BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20170526BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20170526BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20170526BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20170526BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20170526BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20170526BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20170526BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20170526BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20170526BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20170526BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20170526BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P7/04
A61P9/00
A61P29/00
A61P11/00
A61P31/04
A61P31/16
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P19/02
A61P27/02
A61P31/12
A61K31/519
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2017-515005(P2017-515005)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月20日
(86)【国際出願番号】US2015032720
(87)【国際公開番号】WO2015183989
(87)【国際公開日】20151203
(31)【優先権主張番号】62/003,355
(32)【優先日】2014年5月27日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516355324
【氏名又は名称】ナビゲン,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515005264
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー オブ ユタ リサーチ ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100176197
【弁理士】
【氏名又は名称】平松 千春
(72)【発明者】
【氏名】オスタニン,キリル
(72)【発明者】
【氏名】シェンデロビッチ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】バッジ,アショク
(72)【発明者】
【氏名】シオフィ,クリストファー エル.
(72)【発明者】
【氏名】モス,ニール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンカヤラパティ,ハリプラサド
(72)【発明者】
【氏名】リー,ディーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZA36
4C084ZA51
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4C084ZC20
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4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC20
(57)【要約】
Arf6を阻害するための化合物及び方法をここに開示する。Arf6の阻害剤を用いて対象を治療するための医薬組成物及び方法もここに開示する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法であって、
患者に、
Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩、及び
薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物の有効量を投与して、血管漏出、血管の炎症若しくは血管形成に関する障害の病理学的影響若しくは症状を減少させるか、又は血管漏出、血管の炎症若しくは血管形成に関する障害の発症のリスクを減少させるステップを含む方法。
【請求項2】
血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する障害が、急性肺傷害、インフルエンザ誘発性の急性呼吸促迫、敗血症、加齢黄斑変性、リューマチ性関節炎又はがんのうちの少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する障害が、エボラウイルス感染症、マールブルグウイルス感染症、ハンタウイルス感染症又はデングウイルス感染症のうちの少なくとも1つから選択される出血熱ウイルス感染症である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する障害を有し、高められたArf6活性を有する患者を特定するステップをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
眼障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法であって、
患者に、
Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩、及び
薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物の有効量を投与して、眼障害の病理学的影響若しくは症状を減少させるか、又は眼障害の発症のリスクを減少させるステップを含む方法。
【請求項6】
眼障害が、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症又は黄斑浮腫のうちの少なくとも1つから選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
炎症性障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法であって、
患者に、
Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩、及び
薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物の有効量を投与して、炎症性障害の病理学的影響若しくは症状を減少させるか、又は炎症性障害の発症のリスクを減少させるステップを含む方法。
【請求項8】
炎症性障害が、急性肺傷害、呼吸促迫症候群、敗血症又はリューマチ性関節炎のうちの少なくとも1つから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
Arf6の活性を阻害することにより治療可能な障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法であって、
患者に、
Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩、及び
薬学的に許容される担体
を含む医薬組成物の有効量を投与して、Arf6の活性を阻害することにより治療可能な障害の病理学的影響若しくは症状を減少させるか、又はArf6の活性を阻害することにより治療可能な障害の発症のリスクを減少させるステップを含む方法。
【請求項10】
患者がヒトである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Arf6阻害剤が式I
【化1】
の化合物
(式中、
R1は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シクロアルキル、フェニル、置換されているフェニル、ピリジル、モルホリノ又はピラニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R2は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はスルホニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R3は、水素、アルキル又はハロのうちの少なくとも1つから選択され、
R4は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はピリジルのうちの少なくとも1つから選択され、
A、B及びZは、それぞれ独立して結合又は場合により置換されているメチレンである)
又はその薬学的に許容される塩を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
化合物が化合物番号1〜112のうちの少なくとも1つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Arf6阻害剤が化合物番号113〜144のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法において使用するための、式Iの化合物を含む医薬組成物。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法において使用するための、化合物番号113〜144のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物。
【請求項16】
式I
【化2】
の化合物
(式中、
R1は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シクロアルキル、フェニル、置換されているフェニル、ピリジル、モルホリノ又はピラニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R2は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はスルホニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R3は、水素、アルキル又はハロのうちの少なくとも1つから選択され、
R4は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はピリジルのうちの少なくとも1つから選択され、
A、B及びZは、それぞれ独立して結合又は場合により置換されているメチレンである)
又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項17】
化合物が化合物番号1〜112のうちの少なくとも1つを含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
化合物番号113から144のうちの少なくとも1つを含む化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項19】
化合物が、血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するのに有効な量で存在する、請求項16から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
化合物が、眼障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するのに有効な量で存在する、請求項16から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
化合物が、炎症性障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するのに有効な量で存在する、請求項16から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
化合物が、Arf6の活性を阻害することにより治療可能な障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するのに有効な量で存在する、請求項16から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
患者がヒトである、請求項18から22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2014年5月27日出願の米国特許仮出願第62/003,355号の優先権及び利益を主張する。
【0002】
本発明は、Arf6の阻害剤、Arf6の阻害剤を合成するための方法及びプロセス、並びにArf6の阻害剤を含む医薬組成物に関する。本発明はまた、それらに限定されないが、急性肺傷害、急性ウイルス感染症、敗血症、加齢黄斑変性、リューマチ性関節炎及びがんを含む、血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する疾患の治療又は予防におけるArf6の阻害剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
Arf6は低分子GTP-結合タンパク質のRasスーパーファミリーのメンバーである。Arf6は、細胞質トラフィッキングにおいて役割を担うことが示され、付着、運動性及び細胞分裂を含め細胞機能を調節することができる。Arf6は、生理学的背景に依存して、ARNOを始めとするいくつかのグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)により触媒可能な、元々結合していたGDPのGTPへの交換により活性化し得る。Arf6は、血管内皮(VE)-カドヘリン(血管完全性の制御において役割を有する内皮細胞間の接着結合の構成成分)のエンドサイトーシスの促進によりサイトカイン誘発性の血管透過性亢進を媒介し得る。
【0004】
血管系は、損傷、虚血及び炎症を引き起こす恐れのある事象、状態又は病原体に絶えずさらされ、このことがサイトカイン及び血管形成因子の放出を招き、そのため内皮細胞-細胞間結合が不安定化され、その結果内皮の透過性がもたらされ得る。一部の場合では、内皮増殖及び移動のこのような刺激により、血管の出芽及び浮腫を招く恐れがあるとともに、他の場合では、これにより血管漏出を招く恐れがある。これらの機能は、漏出性の新しい血管を生成する安定な血管ネットワークを解体する役割を果たし得る。一部の状況において、損傷、虚血及び炎症に応じたサイトカイン及び血管形成因子の放出のような応答が回復性の又は治癒のプロセスを惹起することが可能であるという点において、これらの放出は望ましくもある。しかし、過剰な血管形成及び血管漏出(例えば、内皮透過性亢進)により、いくつかの疾患及び病態の病理が強調される恐れがある。
【0005】
病的血管形成は、網膜症、腫瘍形成及び腫瘍成長を含むいくつかの状態を伴うこともある。例えば、脳腫瘍に伴う浮腫、悪性腫瘍に伴う腹水症、Meigs症候群、肺の炎症、ネフローゼ症候群、心膜液貯留、胸水、急性肺損傷、炎症性腸疾患、脳卒中での虚血/再灌流損傷、心筋梗塞、及びサイトカインストームを招く感染性及び非感染性の疾患を含む、好ましくない血管透過性によって、いくつかの疾患及び障害が特徴づけられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
サイトカインストームにより事象の少なくとも2つのカスケードが発生し得る。第1はサイトカイン及び炎症メディエーターの産生の永続化であり、第2は血管系の不安定化及び続いて起こる血管漏出である。治療戦略としてArf6アンタゴニストを使用してVE-カドヘリンの細胞表面レベルを高めることにより、免疫機能を優先的に無傷のままとし、血管内皮細胞を増強することができる。したがって、Arf6阻害剤は、それらに限定されないが、敗血症、肺炎、急性ウイルス性感染症、及び急性肺損傷を含む、高サイトカイン血症に関連する状態で血管安定化において役割を担い得る。多数のコルチコステロイド及び抗炎症薬物に関する臨床的失敗により実証され得るとおり、高サイトカイン血症のそのような場合では、免疫機能を直接に阻害することは実行可能な選択肢となり得ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書における書面での開示は、非限定的且つ非網羅的である例示的な実施形態を説明する。本明細書に記載の図に示されるそのような例示的な実施形態のうちの特定のものに対して言及がなされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1A〜1Dは、ARNO Sec7ドメインで触媒されたArf6ヌクレオチド交換に関するハイスループット蛍光アッセイの図である。
図1Aはアッセイの原理の図である。
【
図1B】
図1Bは、N-末端His-タグ化Arf6(14〜175)及び固定化金属アフィニティークロマトグラフィーにより大腸菌(E.coli)培養液から精製したARNO(50〜255)のSDS-PAGE分析の図である。
【
図1C】
図1Cは、シグナル強度とARNO濃度の間の相関の図である。アッセイは、50mMのTris-HCl、pH7.5、1mMのMgCl
2、0.01%のTX-100、1%のDMSO、50nMのGTP-BODIPY FLを使用して、0.2μMのArf6-GDPの非存在下で又は存在下で、指定された濃度でARNO-Sec7を補充して、行った。蛍光強度は、それぞれ、490nm及び520nmの励起波長及び発光波長でSynergy 4プレートリーダー(BioTek)を使用してモニターした。
【
図1D】
図1Dは、GDPの見かけ上の阻害能の時間経過の図である。アッセイは、Matrix PlateMateリキッドハンドラーを使用して自動モードで実施した。
【
図2】化合物38によるNIH3T3細胞におけるArf6活性化の阻害の図である。生化学的に不活性であるアナログ「NEG CTL」を陰性対照として使用した。細胞培養液を試験化合物の存在下で4時間インキュベートした後、グルタチオンアガロース上に固定化した組換えGST-Gga3を使用して細胞溶解物からGTP-結合Arf6をプルダウンし、ウエスタンブロット分析を行った。
【
図3A】化合物38は、SecinH3と比べて黒色腫細胞侵入の強力な阻害剤であり得ることを示す図である。1μMで、化合物38は、マトリゲルを通してのFBS誘発性LOX細胞侵入を実質的に阻害できるか、又はそれを完全に阻害できるが、陰性対照は阻害しない。*p<0.05、***p<0.001、一元配置ANOVAに続いてTukeyのpost-hocテスト。
【
図4A】化合物38は、黒色腫細胞増殖及び神経膠芽腫細胞増殖の強力な阻害剤であり得ることを示す図である。化合物38は、1μMより高い濃度でLOX細胞増殖及びLN-229細胞増殖の強力な阻害剤であり得る。***p<0.001、一元配置ANOVAに続いてTukeyのpost-hocテスト。
【
図6】マウスでのVEGF-誘発性の網膜透過性の減少における、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【
図7】マウスでのVEGF-誘発性の網膜透過性の減少における、式Iの例示的化合物のさらなる活性の図である。
【
図8】ラットでのVEGF-誘発性の網膜透過性の減少における、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【
図9】マウスでの脈絡膜血管新生(CNV)の減少における、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【
図10】マウスでの酸素誘発性の網膜症の減少における、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【
図11】マウスでの酸素誘発性の網膜症の減少における、式Iの例示的化合物のさらなる活性の図である。
【
図12A】マウスのLPS誘発性の急性肺損傷における、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【
図13】マウスでのウイルス感染症に関連した死亡率の減少に対する、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【
図14】炎症性疾患を治療するための、式Iの例示的化合物の活性の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、Arf6の新規な阻害剤、Arf6阻害剤を合成するためのプロセス、Arf6阻害剤を含む医薬組成物、及びそれらに限定されないが、急性肺傷害;インフルエンザ誘発性の急性呼吸促迫;敗血症;エボラウイルス、マールブルグウイルス、ハンタウイルス、若しくはデングウイルスなどの出血熱ウイルス;加齢黄斑変性;リューマチ性関節炎;又はがんを含む、それらに限定されないが、血管漏出、血管の炎症又は血管形成に関する疾患の治療又は予防におけるArf6阻害剤の使用に関する。
【0010】
Arf6の阻害剤はまた、眼疾患、肺損傷、ウイルス感染症及び/又は炎症性疾患の治療又は予防にも使用することができる。一部の実施形態では、眼疾患は、低下した網膜透過性、損傷した眼血管新生又は黄斑浮腫を含み得、酸素誘発性の網膜症、未熟児網膜症、又は糖尿病性網膜症の結果であり得る。様々な実施形態では、肺損傷は急性肺損傷を含み得る。ある特定の実施形態では、ウイルス感染症はH1N1感染症を含み得る。一部の実施形態では、炎症性疾患は関節炎を含み得る。
【0011】
本発明の化合物及び医薬組成物を使用して、本明細書に列記されているもの以外の疾患を治療することができ、これらの疾患にはArf6活性に関連した1種以上の細胞プロセスにおける機能障害が含まれてもよい。
【0013】
【化1】
の化合物、それらの薬学的に許容される塩、並びに式Iの化合物及びそれらの薬学的に許容される塩を含む医薬組成物に関し得る。
【0014】
式Iの化合物において、R1と示される基は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シクロアルキル、フェニル、置換されているフェニル、ピリジル、モルホリノ及びピラニルのうちの少なくとも1つから独立して選択される。R1が置換されているフェニルであるとき、フェニル環上の各位置は、アルキル基、アルキルチオ基、アルコキシ基又はハロ基で独立して置換されていてよい。
【0015】
式Iの化合物において、R2と示される基は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル及びスルホニルのうちの少なくとも1つから独立して選択される。R2が置換されているアリールであるとき、アリール基上の各位置はアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキル基、ハロ基、ハロアルキル基、フェニルオキシ基、又はスルホニル基で独立して置換されていてよい。
【0016】
式Iの化合物において、R3と示される基は、水素、アルキル又はハロのうちの少なくとも1つから独立して選択される。
【0017】
式Iの化合物において、R4と示される基は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル及びピリジルのうちの少なくとも1つから独立して選択される。R4が置換されているアリールであるとき、アリール基上の各位置は、アルキル、アルコキシ、アミノ、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、カルボキシ、ニトロ、ピリジル、アルキル置換されているピリジル、アミノ置換されているピリジル、アルコキシ置換されているピリジル、O-フェニルで独立して置換されていてもよく、フェニルは、ハロ、NHC(O)-アルキル、NHC(O)-アルコキシ、NHC(O)-A-フェニル、スルホニル、NHSO
2-アルキル、NHSO
2-ベンジル、NHC(O)NH-アルキル、NHC(O)NH-ベンジル、NHC(O)NH-アルキル、C-アミド及びN-アミドで場合により置換されていてもよい。
【0018】
式Iの化合物において、A、B及びZと示される基は、それぞれ独立して結合又は場合により置換されているメチレンであり、メチレンはアルキル基で場合により置換されていてよい。一実施形態では、メチレンはメチル基で置換されていてよい。
【0019】
ある特定の実施形態では、R1は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シクロアルキル、フェニル、置換されているフェニル、ピリジル、モルホリノ又はピラニルのうちの少なくとも1つから独立して選択され、R2は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はスルホニルのうちの少なくとも1つから独立して選択され、R3は、水素又はハロであり、R4は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル、及びピリジルのうちの少なくとも1つから独立して選択され、並びにA、B及びZは、それぞれ独立して結合又は場合により置換されているメチレンである。
【0020】
全てのキラルな立体配座及びそれらの組合せが式Iの化合物に含まれる。様々な置換基がR基に対して記載されているとき、全ての立体配座が含まれるが、記載の順序により想定された又は意図されたキラリテイーはない。本発明の実施形態で使用するための式Iの化合物の一部は、単一の立体異性体(すなわち、他の立体異性体が実質的に存在しない)、ラセミ体、及び/又は鏡像異性体の混合物及び/又はジアステレオマーとして存在してもよい。このような単一の立体異性体、ラセミ体及びそれらの混合物の全てが、本発明の範囲内にあるものとする。さらに、本発明の実施形態で使用するための化合物の一部は、cis及びtrans幾何異性体として存在してもよく、且つこのような異性体及びそれらの混合物の全てが、本発明の範囲内にあるものとする。
【0021】
式Iの例示的化合物及びそれらのアナログとして、表1に示した化合物を挙げることができる。式Iの化合物はそれらの薬学的に許容される塩を含み得る。
【0023】
Arf6活性を有するさらなる化合物として、表2に示された化合物、これらのアナログ、及びそれらの薬学的に許容される塩を挙げることができる。
【0025】
本発明の化合物のある特定の実施形態では、約50μM未満のIC
50値を有する化合物が含まれる。他の実施形態では、約15μM未満のIC
50値を有する化合物が含まれる。ある特定の他の実施形態では、約10μM未満、約5μM未満、又は約1μM未満のIC
50値を有する化合物が含まれる。
【0026】
ある特定の実施形態では、化合物番号143が10μMの濃度(20nMアッセイ)でArf6(20nMアッセイ)を約31%阻害した。様々な実施形態では、化合物番号144が10μMの濃度(20nMアッセイ)でArf6(20nMアッセイ)を約35%阻害した。
【0027】
本発明の化合物の保護された誘導体も検討される。本発明の化合物での使用に適した様々な保護基が開示されている。従来の他の保護基は、例えばGreene及びWuts、Protective Groups in Organic Synthesis;3版; John Wiley & Sons、New York、1999で検討の上、当業者は選択することができる。
【0028】
本発明の化合物は、有機合成に関する当業者に公知の様々な方法で調製することができる。本発明の化合物は、合成有機化学業界で公知の合成方法又は当業者により理解されているそれらの変形とともに、本明細書に記載の方法を使用して合成することができる。
【0029】
本明細書に含まれる具体的な実施例は、例示の目的のみであり、本発明を限定するものとはみなされない。以下の実施例で使用される活性剤及び試薬はいずれも、市販されているか又は文献による標準手順に従い有機合成の当業者により調製可能であるかのいずれかである。本開示に照らし合わせて、過度な実験をすることなくこれらの例の変形及び本発明の方法について他の例が可能であることを、当業者は理解するであろう。
【0030】
本発明の実施形態で使用するための式Iの化合物の一部は、単一の立体異性体(すなわち、他の立体異性体が実質的に存在しない)、ラセミ体、及び/又は鏡像異性体の混合物、及び/又はジアステレオマーとして存在してもよい。このような単一の立体異性体、ラセミ体及びそれらの混合物の全てが、本発明の範囲内にあるものとする。一般に、光学的に活性である化合物は、実質的に光学的に純粋な形態で使用される。さらに、本発明の実施形態で使用するための化合物の一部は、cis及びtrans幾何異性体として存在してもよい。このような異性体及びそれらの混合物の全てが、本発明の範囲内にあるものとする。
【0031】
さらに式は、同定された構造の溶媒和された形態、さらに、溶媒和されていない形態も包含するものである。例えば、式Iは、水和形態及び非水和形態の両方で、指定された構造の化合物を含む。溶媒和物の他の例として、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、又はエタノールアミンと組み合わされた構造が含まれる。
【0032】
式Iの化合物に加え、本発明の一部の実施形態では、薬学的に許容されるプロドラッグ、薬学的に活性のある代謝物、及びそのような化合物の薬学的に許容される塩が含まれてもよい。
【0033】
化合物のプロドラッグ及び活性代謝物は、当業界において公知の通常技法を使用して同定できる(例えば、Bertolini, Gら、J. Med. Chem.、40、2011〜2016(1997); Shan, D.ら、J. Pharm. Sci.、86(7)、756〜767; Bagshawe K.、Drug Dev. Res.、34、220〜230(1995); Bodor N.; Advance in Drug Res.、13、224〜331(1984); Bundgaard, H.、Design of Prodrugs(Elsevier Press 1985);及びLarsen, I. K.、Design and Application of Prodrugs、Drug Design and Development(Krogsgaard-Larsenら、編集、Harwood Academic Publishers、1991)を参照)。
【0034】
定義
本明細書に使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明する目的であり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解される。
【0035】
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術的及び科学的な用語は当業者により通常に理解し得る意味を有する。本明細書で使用するとき、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」には、文脈上他に明記されない限り、同様に複数形が含まれるものとする。また、本明細書で使用するとき、「及び/又は」は、関連する記載項目の1つ以上の任意のあらゆる可能な組合せに言及し且つ包含する。さらに、「約(about)」という用語は、測定可能な値、例えば、化合物量、用量、時間、温度などに言及する際に本明細書で使用するとき、特定された量の50%、30%、20%、10%、5%、1%、0.5%、又はさらに0.1%の変動を包含することを意味する。本明細書に記載される刊行物、特許出願、特許、及び他の文献全ては参照によりその全体が組み込まれる。
【0036】
本明細書で使用するとき、用語「アルキル」とは、直鎖基及び分枝鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素を指す。一実施形態では、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有する(「1〜20個」などの数字範囲が本明細書に現れる場合、必ずそれはその所与の範囲内の各整数を指し、例えば、「1〜20個の炭素原子」とは、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、20個までの炭素原子から成り得ることを意味する。)。ある特定の実施形態では、アルキル基は、1〜10個の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルである。一部の実施形態では、アルキル基は、1〜6個の炭素原子、又は1〜4の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキル基は置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基(複数可)は、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、シリル、及びアミノから1種以上個別に選択され得る。
【0037】
本明細書で使用するとき、用語「ハロ」とは、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを指す。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「ヒドロキシ」とは、-OH基を指す。
【0039】
本明細書で使用するとき、用語「アルコキシ」とは、本明細書において定義する-O-アルキル及び-O-シクロアルキル基の両方を指す。低級アルコキシとは、-O-低級アルキル基を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「アリールオキシ」とは、本明細書において定義する-O-アリール及び-O-ヘテロアリール基の両方を指す。
【0041】
本明細書で使用するとき、用語「アルキルチオ」基とは、本明細書において定義するS-アルキル及び-S-シクロアルキル基の両方を指す。
【0042】
本明細書で使用するとき、用語「アリールチオ」基とは、本明細書において定義する-S-アリール及び-S-ヘテロアリール基の両方を指す。
【0043】
本明細書で使用するとき、用語「カルボニル」基とは、-C(=O)R"基を指し、ここで、R"は、本明細書において定義するヒドロ、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合される)及び複素環式(環炭素を介して結合される)からなる群から選択される。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「カルボキシ」基とは、上で定義するR"を有する-C(=O)OR"基を指す。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「カルボキシ塩」とは、-C(=O)O
-M
+基を指し、ここで、M
+はリチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、バリウム、鉄、亜鉛及び第四級アンモニウムからなる群から選択される。
【0046】
本明細書で使用するとき、用語「アセチル」基とは、-C(=O)CH
3基を指す。
【0047】
本明細書で使用するとき、用語「カルボン酸」とは、R"がヒドロであるカルボキシ基を指す。
【0048】
本明細書で使用するとき、用語「ハロアルキル」とは、1〜6個のハロ基で置換されているアルキル基を指し、-CX
3基を有するハロアルキルであってもよく、ここで、Xはハロ基である。ハロ基は独立して選択することができる。
【0049】
本明細書で使用するとき、用語「シアノ」とは、-C≡N基を指す。
【0050】
本明細書で使用するとき、用語「スルホニル」とは、-S(=O)
2R"基を指し、R"は水素、アルキル、又は低級アルキルである。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「スルホンアミド」とは、-S(=O)
2NR"
2を指し、各R"は水素、アルキル、又は低級アルキルから独立して選択される。
【0052】
本明細書で使用するとき、用語「O-カルバミル」とは、-OC(=O)NR"
2基を指し、各R"は水素、アルキル、又は低級アルキルから独立して選択される。
【0053】
本明細書で使用するとき、用語「N-カルバミル」とは、-NR"C(=O)NR"
2基を指し、各R"は水素、アルキル、又は低級アルキルから独立して選択される。
【0054】
本明細書で使用するとき、用語「アミノ」とは、-NR"
2基を指し、各R"は水素及びアルキルからなる群から独立して選択される。
【0055】
本明細書で使用するとき、用語「C-アミド」とは、-C(=O)NR"
2基を指し、各R"は水素、アルキル、又は低級アルキルから独立して選択される。「N-アミド」とは、NR"C(=O)R"基を指し、各R"は水素、アルキル、又は低級アルキルから独立して選択される。
【0056】
本明細書で使用するとき、用語「ニトロ」とは、-NO
2基を指す。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「メチレン」とは、-CH
2-基を指す。置換されているメチレン基とは、炭素原子がアルキル又はシクロアルキルで置換されていてもよいメチレン基である。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「シクロアルキル」とは、全て炭素の単環又は縮合アルキル環(すなわち、炭素原子の隣接する対を共有する環)基を指し、ここで、環の1つ以上は完全共役パイ電子系を有さない。シクロアルキル基の例は、限定されないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、アダマンタン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン及び、シクロヘプタトリエンである。シクロアルキル基は置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されている場合には、置換基(複数可)は、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、カルボキシ、O-カルバミル、N-カルバミル、C-アミド、N-アミド、ニトロ、及びアミノから1種以上個別に選択され得る。
【0059】
本明細書で使用するとき、用語「複素環」又は「複素環式」とは、炭素原子並びにO、N、及びSからなる群から独立して選択される1から4個までのヘテロ原子からなる飽和又は部分飽和3、4、5、6若しくは7員単環系、又は7、8、9若しくは10員二環系を指し、ここで、窒素及び硫黄ヘテロ原子は場合により酸化されていてよく、窒素は場合により四級化されていてよく、且つ、上に定義した複素環のいずれかがベンゼン環と縮合されている任意の二環式基が含まれ、さらに結果として得られる化合物が安定な場合、複素環は炭素上又は窒素原子上で置換されていてもよい。非限定的な飽和若しくは部分飽和複素環式基としては、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、インドリニル、モルホリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、テトロノイル及びテトラモイル基が挙げられる。「複素環」又は「複素環式」環の例にはまた、限定されるものではないが、モルホリノ、ピラニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピロリジニル、チオモルホリノ、ホモピペラジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ジオキサニル、及びジオキソラニルも挙げられる。複素環のパイ電子系が完全に共役しているときには「複素環」にヘテロアリールを含めることができる。
【0060】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」とは、完全共役パイ電子系を有する全て炭素の単環又は縮合環多環式(すなわち、炭素原子の隣接する対を共有する環)基を指す。アリール基の例は、限定されないが、フェニル、ナフタレニル及びアントラセニルである。アリール基は置換されていても、置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基(複数可)は、ハロ、トリハロメチル、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、カルボニル、C-カルボキシ、O-カルボキシ、C-アミド、N-アミド、N-アルキル、スルフィニル、スルホニル、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、トリハロ-メタンスルホンアミド、及びアミノから1種以上選択され得る。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアリール」とは、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の環原子;環配列中に共有されている6、10又は14パイ電子を有し;炭素原子及び1、2又は3個の酸素、窒素又は硫黄へテロ原子を含有する基を指す。非限定的なヘテロアリール基には、チエニル(チオフェニル)、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル、フリル(フラニル)、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチニル、限定されないが2H-ピロリルを含めてピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、限定されないが2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジルを含めてピリジル(ピリジニル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピリド[1,2-a]ピリミジン-4-オン、限定されないがピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イルを含めてピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル、1,2-ベンゾイソキサゾル-3イル、ベンズイミダゾリル、2-オキシインドリル、及び2オキソベンズイミダゾリルが含まれる。ヘテロアリール基が環内に窒素原子を含有する場合には、そのような窒素原子は、N-オキシド、例えば、ピリジルNオキシド、ピラジニルN-オキシド及びピリミジニルN-オキシドの形態であってよい。置換されている場合、置換基(複数可)は、アルキル、シクロアルキル、ハロ、トリハロメチル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ニトロ、カルボニル、スルホンアミド、カルボキシ、スルフィニル、スルホニル、O-カルバミル、N-カルバミル、C-アミド、N-アミド、及びアミノから1種以上選択され得る。
【0062】
本明細書で使用するとき、用語「単位剤形」とは、ヒト患者向けの単位用量として適切なカプセル剤又は錠剤などの物理的に分離した単位を指す。各単位は、所望の治療効果をもたらす所望の薬物動態プロフィールを実現すると発見されたか又は考えられた所定量の式Iの化合物を含有する。投与単位は、少なくとも1種の薬学的に許容される担体、塩、賦形剤、又はそれらの組合せを伴った式Iの化合物から構成される。
【0063】
本明細書で使用するとき、用語「用量」又は「投与量」とは、個体が1回に服用する又は投与される有効成分の量を指す。例えば、800mg用量の式Iの化合物とは、1日2回の投与計画の場合では、個体が800mgの式Iの化合物を1日2回、例えば、朝に800mgと夕方に800mgを服用する状況を指す。式Iの化合物の800mg用量は、2つ以上の投与単位に、例えば、錠剤形態の式Iの化合物の400mg投与単位2つ又はカプセル剤形態の式Iの化合物の400mg投与単位2つに分割することができる。
【0064】
「薬学的に許容されるプロドラッグ」とは、生理学的条件下で又は加溶媒分解によって特定の化合物へ又はそのような化合物の薬学的に許容される塩へと変換され得る化合物である。
【0065】
「薬学的に活性な代謝物」とは、特定の化合物又はその塩の、体内での代謝によって生成される薬理学的に活性な産物を意味するものとする。化合物の代謝物は、当分野で公知の通常技法を使用して同定することができ、それらの活性は本明細書に記載のものなどの試験を使用して決定することができる。
【0066】
「薬学的に許容される塩」とは、特定の化合物の遊離酸及び塩基の生物学的有効性を保持し、且つ生物学的に又は非生物学的に不都合ではない塩を意味するものとする。本発明の一部の実施形態で使用する化合物は、十分に酸性の官能基、十分に塩基性の官能基、又は両方の官能基を含むことができ、それによっていくつかの無機若しくは有機塩基、及び無機及び有機酸のいずれかと反応して薬学的に許容される塩を形成することができる。例示的な薬学的に許容される塩としては、本発明の化合物と無機若しくは有機酸又は無機塩基との反応によって調製される塩、例えば硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、モノヒドロリン酸塩、ジヒドロリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、蟻酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ガンマ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタン-スルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩などの塩が挙げられる。
【0067】
本発明では医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物には薬学的に許容される担体及び本発明の活性化合物の治療有効量が含まれる。本医薬組成物は、例えば、溶液、懸濁液剤、乳液剤、錠剤、丸薬、カプセル剤、粉剤、持続放出型製剤、又は坐剤形態をとることができる。適切な薬学的担体の例は、例えば、E. W. MartinによるRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。本発明の医薬組成物は、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、皮内、経皮、髄腔内、脳内、腹腔内、鼻腔内、硬膜外、肺、及び経口経路を含む、当業者に公知の適切な任意経路による投与向けに調製することができる。投与は、注射によるなど即座であり又は迅速であってもよく、或いは除放性若しくは遅延放出製剤の注入又は投与によるなど、ある期間にわたって実施してもよい。
【0068】
医薬製剤を中枢神経系の組織を治療するために調製する場合、投与は脳脊髄液(CSF)に注射又は注入によるもとすることができる。さらに、医薬組成物を中枢神経系の細胞又は組織に送達するために調製する場合、医薬組成物は、1種以上の他の担体又は活性化合物若しくは活性化合物の誘導体が血液脳関門を越えて浸透することを促進することが可能な成分を含むように製剤化することもできる。
【0069】
経口投与向けに調製する場合、本発明の医薬組成物は、例えば、カプセル剤、錠剤、カプレット剤、トローチ剤、及び水性懸濁剤又は溶液で調製してもよい。経口投与向けに調製した本発明の医薬組成物は、公知のフィラー、希釈剤、賦形剤、結合剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、風味材料及び着色剤を含めた公知の担体を使用して、所望の剤形の製剤に適するように製剤化することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、活性化合物の送達又は取り込みを促進するように、リポソームへの封入、マイクロパーティクル、マイクロカプセル、受容体介在性のエンドサイトーシス(例えば、Wuら J. Biol. Chem. 262:4429〜32、1987を参照)を活用する製剤手法を使用して、調製することができる。
【0070】
薬学的に許容される担体の例としては、水及びオイルなどの無菌液体、例えば石油由来、動物由来、植物由来又は合成由来のもの、例えばピーナツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油が挙げられる。水を含めた水性担体が、静脈内投与向けに調製した医薬組成物についての一般的な担体である。さらなる例として、生理食塩水溶液及び水性のデキストロース及びグリセロールの溶液も、特に注射可能な溶液向けの液体担体として使用できる。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、コメ、穀物末、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールが挙げられる。組成物は、所望の場合、湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することもできる。
【0071】
本発明の医薬組成物は、それらの任意の薬学的に許容される塩、エステル、異性体、又は溶媒和物を含めた本発明の活性化合物のいずれかを使用して製剤化することができる。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の活性化合物を含み、代替の実施形態では、医薬組成物は2種以上の本発明の活性化合物を含む。医薬組成物に含まれる1種以上の活性化合物の量は、例えば活性化合物(複数可)の特質及び活性、剤形の特質及び組成、並びに対象に投与すべき所望の用量に依存して様々である。
【0072】
場合によっては、本発明の組成物を治療が必要とされる領域に局所的に投与することが望ましいであろう。局所投与は、例えば、そして限定することなく、外科手術中の局部的注入により、(例えば外科手術後の創傷被覆剤と併用される)局部的適用により、注射により、カテーテルによって、坐薬によって、又はインプラントによって達成され得るが、このインプラントは、シラスチック膜などの膜を含めた、多孔質材料、非多孔質材料、若しくはゼラチン材料、又は繊維でできている。一実施形態では、細菌感染の部位に直接的な注射によって投与することができる。
【0073】
別の実施態様では、薬剤を小胞で、特にリポソームで送達することができる。さらに別の実施形態では、薬剤は徐放系で送達することができる。そのような一実施形態では、ポンプを使用することができる。別のそのような実施形態では、重合体材料を使用することができる。さらに別のそのような実施形態では、徐放系を治療標的の近傍に配置することができるため、全身用量の何分の一程度しか必要でなくなる。
【0074】
本発明の1種以上の活性化合物及び医薬担体に加えて、本発明の医薬組成物はさらなる1種以上の治療剤又は予防剤を含み得る。
【0075】
しかし、特定の任意の対象又は疾患状態に対する具体的な投与計画及び治療計画は、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与時間、活性化合物(複数可)の特質、排泄速度、薬物組合せ、担当医の判断、及び治療を受けている特定疾患の重度を含めた様々な要因に依存することは理解されるであろう。さらに、対象に投与される医薬組成物の量の決定は、他の要因のうち、医薬組成物に含まれる活性化合物(複数可)の量及び具体的な活性並びにさらなる治療剤若しくは予防剤の使用又は組み込み或いは治療計画に依存するであろう。治療有効投与量の決定は、動物モデル研究に基づくとともに、モデル対象で疾患の発現又は深刻性を顕著に減少させる有効投与量及び投与プロトコルを決定することにより一般に導かれる。
【0076】
本発明の活性化合物の治療有効量についての非限定的な範囲は、1日当たり、体重1kg当たり約0.001mgから約100mgまでである。例えば、本発明の医薬組成物は、対象に投与される本発明の活性化合物の量が、1日当たり、体重1kg当たり約0.001mgから約50mgの間、体重1kg当たり約0.01mgから約20mgの間、体重1kg当たり約0.1mgから約10mgの間、及び体重1kg当たり約0.1mgから約5mgの間、から選択されるように、調製及び投与することができる。
【0078】
【化2】
の化合物:
(式中、
R1は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シクロアルキル、フェニル、置換されているフェニル、ピリジル、モルホリノ又はピラニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R2は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はスルホニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R3は、水素、アルキル又はハロのうちの少なくとも1つから選択され、
R4は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はピリジルのうちの少なくとも1つから選択され、
A、B及びZは、それぞれ独立して結合又は場合により置換されているメチレンである)
及びその薬学的に許容される塩を提供する。
【0079】
さらなる一態様では、それらに限定されないが、急性肺傷害、インフルエンザ誘発性の急性呼吸促迫、敗血症、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ハンタウイルス、及び/又はデングウイルスなどの出血熱ウイルス、加齢黄斑変性、リューマチ性関節炎、又はがんを含む、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する疾患に罹患する患者において、Arf6阻害剤を用いて疾患を治療又は予防する方法であって、Arf6阻害剤である化合物又はその化合物の薬学的に許容される塩の治療有効量を投与するステップを含む方法を提供する。
【0080】
別の態様では、それらに限定されないが、急性肺傷害、インフルエンザ誘発性の急性呼吸促迫、敗血症、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ハンタウイルス、又はデングウイルスなどの出血熱ウイルス、加齢黄斑変性、リューマチ性関節炎、又はがんを含む、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する疾患の治療又は予防における、表1及び2に示されているものを含めた、式Iの化合物又はArf6活性を有するさらなる化合物(すなわち、Arf6の阻害剤又は部分阻害剤)の使用を提供する。
【0081】
さらに別の態様では、表1及び2に示されているものを含めた、式Iの化合物又はArf6活性を有するさらなる化合物、並びに少なくとも1種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0082】
別の態様では、それらに限定されないが、急性肺傷害、インフルエンザ誘発性の急性呼吸促迫、敗血症、エボラウイルス、マールブルグウイルス、ハンタウイルス、又はデングウイルスなどの出血熱ウイルス、加齢黄斑変性、リューマチ性関節炎、又はがんを含む、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する疾患を治療又は予防するための、表1及び2に示されているものを含めた、式Iの化合物又はArf6活性を有する別の化合物の治療有効量を含む医薬組成物を提供する。そのような組成物は、1種以上の薬学的に許容される希釈剤及び/又は賦形剤を伴って、表1及び2に示されているものを含めた、式Iの化合物又はArf6活性を有する別の化合物を含むことができる。
【0083】
一部の実施形態では、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関連する障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法が、Arf6阻害剤及び/又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物の有効量を患者(すなわち、それを必要とする患者)に投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物は薬学的に許容される担体をさらに含み得る。また、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法は、血管漏出、血管の炎症及び/若しくは血管形成に関する障害の病理学的影響若しくは症状を減少させるか、又は血管漏出、血管の炎症及び/若しくは血管形成に関する障害の発症のリスクを減少させるステップを含む。一部の実施形態では、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する障害の病理学的影響及び/又は症状には、黄斑変性、黄斑浮腫、網膜症、失明、浮腫、急性呼吸促迫、及び/又は腫瘍形成が含まれてもよい。
【0084】
様々な実施形態では、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する障害は、それらに限定されないが、急性肺傷害、インフルエンザ誘発性の急性呼吸促迫、敗血症、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、黄斑浮腫、リューマチ性関節炎、及び/又はがんのうちの少なくとも1つから選択されてもよい。さらに、様々な他の実施形態では、血管漏出、血管の炎症、及び/又は血管形成に関する障害は、それらに限定されないが、エボラウイルス感染症、マールブルグウイルス感染症、ハンタウイルス感染症、及び/又はデングウイルス感染症のうちの少なくとも1つから選択される出血熱ウイルス感染症であってもよい。
【0085】
一部の実施形態では、血管漏出、血管の炎症及び/又は血管形成に関する障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法は、血管漏出、血管の炎症、及び/又は血管形成に関する障害を有し、異常な、高められた、又は増強されたArf6活性を有する患者を特定するステップをさらに含んでもよい。
【0086】
別の態様では、眼障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法を提供する。一部の実施形態では、眼障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法は、Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の有効量を患者に投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。本発明の医薬組成物の投与は、眼障害の病理学的影響若しくは症状を減少させ得るか、又は眼障害の発症のリスクを減少させ得る。一部の実施形態では、眼疾患の病理学的影響又は症状には、網膜症、黄斑浮腫、及び/又は視力の損失が含まれてもよい。ある特定の実施形態では、眼障害には、それらに限定されないが、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、及び/又は黄斑浮腫が含まれてもよい。
【0087】
別の態様では、炎症性障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法を提供する。一部の実施形態では、炎症性障害を有するか、又は発症するリスクのある患者を治療するための方法は、Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の有効量を患者に投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。本発明の医薬組成物の投与は、炎症性障害の病理学的影響又は症状を減少させ得るか、又は炎症性障害の発症のリスクを減少させ得る。一部の実施形態では、炎症性障害の病理学的影響又は症状には、腫れ、浮腫、痛み、呼吸促迫、及び/又は多臓器不全が含まれてもよい。ある特定の実施形態では、炎症性障害には、それらに限定されないが、急性肺損傷、急性呼吸促迫、敗血症、及び/又はリューマチ性関節炎が含まれてもよい。
【0088】
そのような化合物(すなわち、Arf6の阻害剤)はまた、患者においてArf6の阻害剤で治療可能な障害を治療するか又は予防するための方法においても有用である。そのような方法は、Arf6阻害剤である化合物又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩の治療有効量を投与するステップを含み得る。一部の実施形態では、Arf6阻害剤は式Iの化合物とすることができる。
【0089】
ある特定の一態様では、患者においてArf6の活性を阻害することにより治療可能な障害を治療するか又は予防するための方法を提供する。この方法は、Arf6阻害剤又はArf6阻害剤の薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の治療有効量を投与するステップを含み得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物はまた、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。さらに、患者においてArf6の活性を阻害することにより治療可能な障害を治療するか又は予防するための方法は、Arf6の活性を阻害することにより治療可能な障害の病理学的影響又は症状を減少させ得るか、又はArf6の活性を阻害することにより治療可能な障害の発症のリスクを減少させ得る。
【0090】
ある特定の実施形態では、本発明の、患者を治療するための方法は、哺乳動物患者、ヒト患者、又は別の適切な患者を治療するステップを含み得る。
【0091】
上記の通り、一部の実施形態では、Arf6阻害剤は、式I
【0092】
【化3】
の化合物
(式中、
R1は、水素、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、シクロアルキル、フェニル、置換されているフェニル、ピリジル、モルホリノ又はピラニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R2は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はスルホニルのうちの少なくとも1つから選択され、
R3は、水素、アルキル又はハロのうちの少なくとも1つから選択され、
R4は、水素、アルキル、場合により置換されているアリール、シクロアルキル又はピリジルのうちの少なくとも1つから選択され、
A、B及びZは、それぞれ独立して結合又は場合により置換されているメチレンである)
及び/又はその薬学的に許容される塩を含み得る。ある特定の実施形態では、Arf6阻害剤は、上記の化合物番号1〜112及び/又はそれらの薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つを含み得る。ある特定の他の実施形態では、また上記の通り、Arf6阻害剤は、化合物番号113〜144及び/又はそれらの薬学的に許容される塩のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0093】
別の態様では、本発明の治療方法のいずれか1つに使用するための医薬組成物を提供することもできる。本発明の治療方法のいずれか1つに使用するための医薬組成物は、式Iの化合物、化合物番号1〜112のうちの少なくとも1つ及び/又は化合物番号113〜144のうちの少なくとも1つを含み得る。さらに、本発明の治療方法のいずれか1つに使用するための医薬組成物は、式Iの化合物の少なくとも1つの薬学的に許容される塩、化合物番号1〜112のうちの少なくとも1つの薬学的に許容される塩及び/又は化合物番号113〜144のうちの少なくとも1つの薬学的に許容される塩を含み得る。様々な実施形態では、本発明の治療方法のいずれか1つに使用するための医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
【0094】
また別の態様では、医薬組成物を提供することもできる。医薬組成物は、式Iの化合物、化合物番号1〜112のうちの少なくとも1つ及び/又は化合物番号113〜144のうちの少なくとも1つを含み得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、式Iの化合物の少なくとも1つの薬学的に許容される塩、化合物番号1〜112のうちの少なくとも1つの薬学的に許容される塩及び/又は化合物番号113〜144のうちの少なくとも1つの薬学的に許容される塩を含み得る。様々な実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、血管漏出、血管の炎症、若しくは血管形成に関する障害、眼障害、炎症性障害及び/又はArf6の活性を阻害することにより治療可能な障害を有するか、或いは発症するリスクのある患者を治療するのに有効な量で存在し得る。様々な実施形態では、患者は哺乳動物患者、ヒト患者、又は別の適切な患者とすることができる。
【0096】
また別の態様では、哺乳動物において、急性肺傷害、インフルエンザ誘発性の呼吸促迫、敗血症、又は出血熱ウイルス、又は血管漏出を含む他の疾患のうちの少なくとも1つを治療するか又は予防するための方法であって、上述の化合物又は組成物の治療有効量を哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。さらなる一態様では、哺乳動物はヒトである。なおさらなる一態様では、化合物又は組成物は経口又は非経口投与される。
【0097】
さらなる一態様では、眼疾患;肺損傷;ウイルス感染症;又は炎症性疾患、例えば低下した網膜透過性、損傷した眼血管新生を含む眼障害、又は酸素誘発性の網膜症の結果である眼疾患;急性肺損傷;H1N1感染症;及び関節炎のうちの少なくとも1つを治療する又は予防する方法を提供する。この方法は、上述の化合物又は組成物の治療有効量を患者に投与するステップを含み得る。
【0098】
本発明は、式Iの化合物を合成及び調製するプロセス及び方法もさらに提供する。次に実施例を挙げて、一般的及び具体的プロセスをさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0099】
これらの実施形態をさらに説明するために、以下の実施例を提供する。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲に基づいてのみ決定すべきものである、請求された発明の範囲を限定するものではない。
【0100】
[実施例1]
Arf6阻害剤の基本生化学アッセイ
Arf6を含めた低分子GTPアーゼを活性化する、元々結合していたGDPのGTPへの触媒的交換には、GTPアーゼ、相応するGEF、及びそれらのインターフェースの複数の立体構造が関与する多段階プロセスが含まれる(例えば、Bos JL、Rehmann H、Wittinghofer A.、GEFs and GAPs: critical elements in the control of small G proteins, Cell. 2007 Jun 1;129(5):865〜77;及びPasqualato S、Menetrey J、Franco M、Cherfils J.、The structural GDP/GTP cycle of human Arf6, EMBO Rep. 2001 Mar;2(3):234〜8を参照)。
【0101】
基本生化学アッセイでは、結合しているヌクレオチドとBODIPY FL部分を有する蛍光発生性のGTP誘導体との交換をモニターするために蛍光測定アッセイを使用し、それによってこの交換を阻害することができる化合物の同定が可能となる(
図1Aを参照)。ある特定の実施形態では、本発明の方法は、修飾ヌクレオチドが標的タンパク質に結合する際の修飾ヌクレオチドの分子内蛍光クエンチングの減少を利用することができる(例えば、McEwen DP、Gee KR、Kang HC、Neubig RR. Fluorescent BODIPY-GTP analogs: real-time measurement of nucleotide binding to G proteins. Anal Biochem. 2001 Apr 1; 291(1): 109〜17を参照)。
【0102】
切断Arf6誘導体は、自己制御性N-末端α-ヘリックスを欠き、したがってヌクレオチド交換を構成的に受けやすく、ARNOのSec7ドメインとともにアッセイ構築用に選択され、このドメインはArf6認識及び触媒に関与する全ての構造決定基を有すると知られている(
図1Bを参照)。96-ウェルマイクロタイタープレート向けにフォーマットされた蛍光測定アッセイは、次の基準に基づいた品質管理をパスした:i)4倍のS/B比及び0.61のZ'値、ii)シグナル強度とARNOの濃度の間の直線的相関(
図1Cを参照)、iii)少なくとも1時間までのアッセイ期間中のレファレンス阻害剤GDPの十分に再現性のある阻害効果(
図1Dを参照)、及びiv)無作為に選択された400の化合物の内で見かけ上の蛍光クエンチャーがないこと。アッセイは、8時間当たりほぼ5,000データポイントのスループットで自動化可能である。
【0103】
[実施例2]
細胞アッセイ
Arf6プルダウンアッセイ:活性Arf6の細胞内レベルの評価は、活性Arf6阻害剤の適確な細胞活性をモニターするための直接的な機序に基づく手法とすることができる。市販のプルダウン技法を、これはArfタンパク質ファミリーのメンバーに対するGTP-結合状態のセンサーとして組換えGga3タンパク質を利用するが、この目的に用いることができる(例えば、Shiba T、Kawasaki M、Takatsu H、Nogi T、Matsugaki N、Igarashi N、Suzuki M、Kato R、Nakayama K、Wakatsuki S. Molecular mechanism of membrane recruitment of GGA by ARF in lysosomal protein transport. Nat Struct Biol. 2003 May;10(5):386〜93を参照)。
【0104】
供給業者の手順を10-cm培養皿から24-ウェルプレートフォーマットに改変し、原理実証試験においてArf6阻害剤に対するその確実な応答が観察されたので、培養マウス胎仔線維芽細胞NIH 3T3を含めた、いくつかの様々な細胞株に適合させた(
図2を参照)。
【0105】
Arf6プルダウンに加えて、次の細胞アッセイを確立した。
【0106】
細胞侵入アッセイ:本アッセイでは、Matrigel Invasion Chambers(BD Biosciences)を使用し、可溶化基底膜マトリクスで被覆した8.0μmフィルターを透過する細胞をモニターするが、このマトリクスは非侵入細胞に対してバリアーとして働く(例えば、Albini A、Iwamoto Y、Kleinman HK、Martin GR、Aaronson SA、Kozlowski JM、McEwan RN. A rapid in vitro assay for quantitating the invasive potential of tumor cells. Cancer Res. 1987 Jun 15;47(12):3239〜45を参照)。化合物38は本アッセイにおいてLOX黒色腫細胞の侵入を阻害することができる(
図3A及び3Bを参照)。
【0107】
SecinH3(市販のキナーゼ阻害剤)の構造は
【0108】
【化4】
である。
【0109】
細胞増殖アッセイ:本アッセイでは、WST-8比色リードアウト(Dojindo)を用い、経時的な生細胞数の測定尺度としてミトコンドリア脱水素酵素の総活性を利用する。化合物38はLOX黒色腫細胞及びLN-229神経膠芽腫細胞の両方の増殖を阻害することができる(
図4A及び4Bを参照)。
【0110】
[実施例3]
式Iの化合物の例示的合成
表1に示した化合物24の合成を次のとおり実施した。
図5のステップ(i)に従って、試薬1(1.60g、5.63mmol)の酢酸中懸濁液に、エチル3-(4-ニトロフェニル)-3-オキソ-プロパノエート(1.47g、6.20mmol)を室温で加えた。反応混合物を16時間、120℃で加熱した。この時間の終了時に、混合物を室温に冷却し、分離した固体をろ過し、冷却酢酸で洗浄し、続いてヘキサン中の20%酢酸エチルで洗浄して、試薬2:2-ベンジル-3-(4-クロロフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)-4H-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-オン(1.2g、47%)を生成した。
1H NMR ( DMSO-d6): δ 4.02 (s, 2H), 6.16 (s, 1H), 7.05- 7.25 (m, 5H), 7.36-7.50 (m, 4H), 8.00 (d, 2H), 8.35 (d, 2H), 12.28 (s, 1H).
【0111】
図5のステップ(ii)に従って、試薬2(0.06g、0.13mmol)のDMF中溶液に、NCS(0.021g、0.16mmol)を攪拌しながら室温で加えた。攪拌は室温で16時間継続させた。分離した固体を収集し、粗製物をエタノール及びジクロロメタンの混合物から結晶化させて、化合物24:褐色固体として(2-ベンジル-6-クロロ-3-(4-クロロフェニル)-5-(4-ニトロフェニル)-4H-ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-7-オン)(0.032g、50.0%)を生成した。
1H NMR (DMSO-d6): δ 4.10( s, 2H), 7.05-7.50 ( m, 9H), 7.90 (d, 2H), 8.38 (d, 2H), 12.8 (brs, 1H).
【0112】
[実施例4]
マウス網膜透過性における化合物38及び65の活性
化合物38及び65は、マウスにおいてVEGF-誘発性の網膜透過性を減少させることが示された(
図6を参照)。実験では、VEGF(50ng)及び化合物38若しくは65(500ng)のいずれか又はNAV-3745(500ng)を単回眼内注射でマウスに与えた。注射してほぼ6時間後にエバンスブルー染料(EBD)をIVにより与え、さらに2時間後に網膜を収集した。網膜透過性は、ホルムアミド中でEBDを終夜抽出して2日後に、OD620〜740nmで測定した。
【0113】
NAV-3745は式Iの化合物の生化学的に不活性なアナログである。NAV-3745の構造は、
【0114】
【化5】
である。
【0115】
化合物38及び65の両方がVEGF-誘発性の網膜透過性を減少させたが、NAV-3745(陰性対照)は効果がなかった。データは平均値+/-SEMとして示されている。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、多重比較を分析した。これらの実験については、1処置群当たりn=2〜4のマウスに、及び両眼に注射した。
【0116】
図7は、マウスにおけるVEGF-誘発性の網膜透過性に対する、Avastin及び市販のSU4312と比べた化合物38の活性を示す。実験では、VEGF(50ng)及び試験化合物を単回眼内注射でマウスに与えた。Avastinは用量20μgで、化合物38は50ng又は500ng(
図7に示すように)のいずれかで、及びSU4312は5μgで与えた。先の実験と同じく、注射してほぼ6時間後にエバンスブルー染料(EBD)をIVにより与え、さらに2時間後に網膜を採取した。網膜透過性は、ホルムアミド中でEBDを終夜抽出して2日後に、OD620〜740nmで測定した。
【0117】
化合物38及びAvastinの両方がVEGF-誘発性の網膜透過性を減少させたが、SU4312は選択した用量ではほとんど効果がなかった。データは平均値+/-SEMとして示されている。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、多重比較を分析した。これらの実験については、1処置群当たりn=3〜5のマウスに、及び両眼に注射した。
【0118】
[実施例5]
ラット網膜透過性における化合物38の活性
化合物38は、ラットにおいてVEGF-誘発性の網膜透過性を減少させることが示された(
図8を参照)。実験では、VEGF(500ng)及びAvastin(200ng)を1日目に単回眼内注射でラットに与えた。化合物38(60mg/kg)は、1日目にVEGFの1時間前にIP注射により投与した。ラットは、2日目にIV注入を介してエバンスブルー染料(EBD)を与え、さらに1.5時間後に網膜を採取した。網膜は解剖し、ホルムアミド中で終夜インキュベートした。血管漏出は3日目に算出した。
【0119】
化合物38及びAvastinは、VEGF-誘発性の網膜透過性を減少させた(
図8を参照)。データは平均値+/-SEMとして示されている。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、多重比較を分析した。これらの実験については、両眼に注射した。
【0120】
[実施例6]
脈絡膜血管新生(CNV)における化合物38の活性
化合物38は、マウスにおいてCNVを減少させることが示された(
図9を参照)。実験0日目に、レーザーを使用して両眼のブルッフ膜を崩壊した。0及び7日目に、試験化合物を投与し、14日目に、CNVの面積を測定した。市販の化合物SU4312を陽性対照として使用した。化合物38は、
図9に示すように、5μg、0.5μg、及び0.05μgで投与した。
【0121】
化合物38は、CNVの面積を用量依存的に減少させた。データは平均値+/-SEMとして示されている。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、全ての群間で多重比較を分析した。これらの実験については、1処置群当たりn=10のマウス、及び両眼を処置した。
【0122】
[実施例7]
マウスの酸素誘発性の網膜症における化合物4及び38の活性
化合物4及び38は、マウスにおいて酸素誘発性の網膜症(OIR)を減少させることが示された(
図10を参照)。実験では、マウスパップを5日目から12日目まで75%の酸素環境に置いた。マウスは、13日目に正常酸素環境に戻した。試験化合物を12日目及び15日目に眼内注射により投与し(5μg)、17日目に血管新生の面積を測定した。
【0123】
化合物4及び38は、血管新生の面積を減少させた。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、全ての群間で多重比較を分析した。これらの実験については、1処置群当たりn=4〜6のマウスを、及び両眼を処置した。
【0124】
化合物38を、マウスにおける酸素誘発性の網膜症(OIR)においてSU4312と比較した(
図11を参照)。実験では、マウスパップを5日目から12日目まで75%の酸素環境に置いた。マウスは、13日目に正常酸素環境に戻した。試験化合物を12日目及び15日目に眼内注射により投与し(5μg)、17日目に血管新生の面積を測定した。
【0125】
化合物38及びSU4312の両方が、血管新生の面積を減少させた。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、全ての群間で多重比較を分析した。これらの実験については、1処置群当たりn=4〜5のマウス、及び両眼を処置した。
【0126】
[実施例8]
LPS-誘発性の急性肺損傷における化合物38の活性
化合物38は、マウスにおいてリポ多糖類(LPS)誘発性の急性肺損傷に対して影響することが示された(
図12A及び12B)。実験では、LPS(5mg/kg)を気管内点滴により与えた。化合物38(60mg/kg)は、図に示してあるように、LPSを与えて3時間後又は4時間後のいずれかに与えた。デキサメタゾン(5mg/kg)を、LPSを与えて2時間後に陽性対照として与えた。気管支肺胞液(BALF)を、LPSを与えて24時間後に細胞数及びタンパク質について分析した。
【0127】
化合物38は、デキサメタゾンと同様の方法で、肺液中の細胞数(
図12Aを参照)及びタンパク質濃度(
図12Bを参照)を減少させた。ANOVA及びTukeyのpost-hocテストを使用して、多重比較を分析した。
【0128】
[実施例9]
H1N1ウイルス感染症の治療における化合物65の活性
化合物65は、H1N1ウイルスに感染したマウスにおいて死亡率を減少させた(
図13を参照)。実験では、ウイルスの鼻腔内投与の4時間前に媒体(下向き三角(▼))、化合物65(丸(●)、20mg/kg)又はリバビリン(四角(■)、75mg/kg)を与え、試験化合物を1日1回(QD)5日間、IP注射により与えた。
【0129】
化合物65はリバビリンとほとんど同じくらいマウスの死亡率を減少させた。Bonferroniの補正後Gehan-Breslow-Wilcoxonテストを使用して、多重比較を分析した。*媒体対照に対してp=0.025;**媒体対照に対してp=0.01。
【0130】
[実施例10]
コラーゲン誘発性関節炎のマウスモデルにおける化合物4の活性
化合物4は、関節炎のマウスモデルにおいて炎症を減少させることが示された(
図14を参照)。実験では、マウスが1日目及び21日目にコラーゲンで免疫され、28日目に又はおおよそ28日目に複数の処置群に無作為化され、次いで試験化合物で14日間処置された。媒体(丸(●))、10mg/kgの化合物4(上向き三角(▲))、30mg/kgの化合物4(下向き三角(▼))、60mg/kgの化合物4(菱形(◆))、又はエンブレル(四角(■)、10mg/kg)を与えた。化合物4は1日2回(BID)与え、エンブレルは1日1回(QD)与え、及び媒体は1日2回(BID)与えた。
【0131】
化合物4は、関節炎指数で測定して、エンブレルとほとんど同じくらい、又はそれより良好に、マウスの炎症を用量依存的に減少させた。誤差バーはSEMを表し、二元配置ANOVA使用することで、処置に対してp<0.0001が得られた。且つ、Bonferroniのpost hocテストを使用することで、*p=0.05、**p=0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001が得られた。
【0132】
近似値への言及は本明細書全体にわたって、例えば用語「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」を使用して行われる。そのような言及のそれぞれについて、一部の実施形態では、値、特徴、又は特性は近似値なしで特定されることもあることが理解されるべきである。例えば、「約」、「実質的に」、及び「概して」などの修飾語句が使用されるとき、これらの用語は、これらの範囲内に、これらの修飾語句のない限定された単語を含む。
【0133】
本明細書の全体を通して、「一実施形態(an embodiment)」又は「実施形態(the embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、引用の表現又はそれらの変形は、本明細書の全体において言及されるとき、必ずしも全てが同一の実施形態を指しているとは限らない。
【0134】
この書面による開示に続く特許請求の範囲は本書面による開示に明示的に組み込まれており、各請求項はそれぞれ個別に別々の実施形態として独立している。本発明は、独立請求項とそれらの従属請求項の全ての変形を含む。また、続く独立及び従属請求項から由来可能なさらなる実施形態もまた、本書面による明細書に明示的に組み込まれている。
【0135】
多くの変更が、本発明の基本原理から逸脱することなく上記実施形態の詳細になされ得ることは当業者に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲のみによって決定されるべきである。
【国際調査報告】