(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-516979(P2017-516979A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(54)【発明の名称】赤外線を用いた半導体ワークピースの温度測定および較正技術
(51)【国際特許分類】
G01J 5/00 20060101AFI20170526BHJP
G01J 5/48 20060101ALI20170526BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20170526BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20170526BHJP
【FI】
G01J5/00 101C
G01J5/48 D
H01L21/66 T
H01L21/265 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-558282(P2016-558282)
(86)(22)【出願日】2015年3月11日
(85)【翻訳文提出日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】US2015019893
(87)【国際公開番号】WO2015148122
(87)【国際公開日】20151001
(31)【優先権主張番号】14/228,802
(32)【優先日】2014年3月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】500239188
【氏名又は名称】ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100134577
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー イー クラムペルト
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー ビー フィッシュ
【テーマコード(参考)】
2G066
4M106
【Fターム(参考)】
2G066AC20
2G066BA11
2G066BB20
2G066CA20
2G066CB01
4M106AA01
4M106BA08
4M106CA31
4M106DJ01
(57)【要約】
処理チャンバにおけるワークピースの温度を測定する改良システムおよび方法が開示される。シリコンは赤外線域において非常に低い放射率を有するため、ワークピースの少なくとも一部に被覆を設ける。この被覆は、グラファイトまたは容易に塗布できるその他任意の材料であってもよく、赤外線スペクトルにおける温度にわたって相対的に一定の放射率を有する。ある実施態様において、グラファイト被覆をワークピースの一部分に施し、被覆の温度を観察することによってワークピースの温度を測定できるようにする。当該技術を用いて、処理チャンバを較正したり、処理チャンバにおける動作条件を確認(バリデーション)したり、製造プロセスを開発したりすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンと、
前記プラテン上に配置される較正ワークピースと、
赤外線スペクトルにおける波長範囲を用いて前記較正ワークピースの温度を判定する赤外線カメラと、
前記較正ワークピースの上面の一部分に配置され、前記波長範囲での温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆と、
を備える、処理システム。
【請求項2】
前記温度範囲は、0℃から600℃の間である、請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記被覆は、前記上面の直径に沿って施される、請求項1に記載の処理システム。
【請求項4】
前記被覆は、前記上面全体に施される、請求項1に記載の処理システム。
【請求項5】
ワークピースプロセスを較正する方法であって、
プロセスチャンバにおける加熱プラテンを、100℃を超える昇温状態に維持するステップと、
前記プロセスチャンバに、所望温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆を上面の一部分に備える較正ワークピースを導入するステップと、
前記較正ワークピースを、前記加熱プラテン上に配置するステップと、
赤外線カメラの焦点を前記一部分に合わせて、経時的に前記較正ワークピースの温度を監視するステップと、
前記較正ワークピースが所定温度に到達するための時間を記録するステップと、
を有する、方法。
【請求項6】
さらに、前記記録後にワークピースを処理するステップを有し、
前記処理するステップは、
前記ワークピースを前記加熱プラテン上に配置するステップ と、
所定時間待機するステップと、
前記待機後に前記ワークピースを処理するステップと、
を有し、
前記所定時間は、前記較正ワークピースが前記所定温度に到達するための前記記録された時間に基づいて決定される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記被覆は、前記較正ワークピースの前記上面全体に施され、
さらに、前記赤外線カメラの焦点を前記上面の複数箇所に合わせて、前記較正ワークピースの温度均一性を判定するステップを有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記一部分は、前記上面の直径を含み、
さらに、前記赤外線カメラの焦点を前記直径の複数箇所に合わせて、前記較正ワークピースの温度均一性を推定するステップを有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
ワークピース製造プロセスを確認する方法であって、
第1ワークピースをプロセスチャンバに導入するステップと、
前記第1ワークピースを、前記プロセスチャンバにおける加熱プラテンであって、100℃を超える昇温状態の加熱プラテン上に配置するステップと、
前記加熱プラテン上で、前記第1ワークピースを処理するステップと、
前記第1ワークピースの導入と同じように、較正ワークピースを前記プロセスチャンバに導入するステップとを有し、前記較正ワークピースは所望温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆を上面の一部分に備え、
前記被覆を有する前記一部分に焦点を合わせた赤外線カメラを用いて、前記較正ワークピースの温度を測定するステップと、
前記温度が許容範囲内であることを検証するステップと、
を有する、方法。
【請求項10】
さらに、
前記温度が前記許容範囲内であることを検証した後、第2ワークピースを前記プロセスチャンバに導入するステップと、
前記第2ワークピースを、前記プロセスチャンバにおける前記加熱プラテン上に配置するステップと、
前記加熱プラテン上で、前記第2ワークピースを処理するステップと、
を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
さらに、前記温度が前記許容範囲内でない場合に、補正動作を行うステップを有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記導入するステップは、
ワークピースをロードロックに配置するステップと、
前記プロセスチャンバ内に配置されたロボット機構を用いて、前記ワークピースを前記ロードロックから取り出すステップと、
を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記被覆は、前記較正ワークピースの前記上面全体に施され、
さらに、前記赤外線カメラの焦点を前記上面の複数箇所に合わせて、前記較正ワークピースの温度均一性を判定するステップを有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記一部分は、前記上面の直径を含み、
さらに、前記赤外線カメラの焦点を前記直径の複数箇所に合わせて、前記較正ワークピースの温度均一性を推定するステップを有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項15】
ワークピースを昇温状態で処理する方法であって、
所望温度範囲についてほぼ一定の放射率を有する被覆を、前記ワークピースの上面の第1部分に施すステップと、
前記ワークピースを加熱プラテン上に配置するステップと、
前記ワークピースの温度を監視するように、赤外線カメラの焦点を前記第1部分に合わせるステップと、
前記第1部分と異なる前記ワークピースの第2部分を処理するステップと、
前記ワークピースを前記昇温状態に維持するように、前記ワークピースを処理しながら、前記ワークピースの前記監視された温度に基づいて前記加熱プラテンの温度を調整するステップと、
を有し、
前記昇温状態は、100℃を超える、
方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2014年3月28日に出願された米国特許出願第14/228,802号の優先権を主張するものであり、当該出願の開示を、ここに参照のために取込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ワークピースの温度測定に関し、特に、赤外線センサーを用いたシリコンワークピースの温度測定に関する。
【背景技術】
【0003】
イオン注入は、導電性変化不純物をワークピース内へ導入する標準的な技術である。所望の不純物材料をイオン源内でイオン化し、イオンを加速させて所定エネルギーのイオンビームを形成し、イオンビームをワークピースの表面に向ける。ビーム内のエネルギーイオンは、ワークピース材料全体に侵入し、ワークピース材料の結晶格子内に埋没し、所望の導電性の領域を形成する。
【0004】
近年、100℃を超えるような高温注入が有望である。例えば、FinFETアモルファス化注入は、100℃を超える温度で行われる際に単結晶再成長の可能性を示している。ここで言及される温度は、ワークピース自体の温度である。ワークピース温度測定技術は、処理環境の要件によって限定される。例えば、ワークピースに取り付けられる熱電対は、非実用的である。また、プラテンに搭載される熱電対の使用は、限定的である。なぜなら、プラテンとワークピースとの間で良好な熱的接触を得ることに関わる問題によって、プラテンの温度がワークピースの温度と異なる可能性があるからである。さらに、シリコンの光学的特性により、一般的な赤外線技術の適用が困難または不可能である。
【0005】
したがって、処理チャンバにおけるワークピースの温度の較正および測定を可能にする方法は、有益であろう。
【発明の概要】
【0006】
処理チャンバにおけるワークピースの温度を測定する改良システムおよび方法が開示される。シリコンは赤外線域において非常に低い放射率を有するため、ワークピースの少なくとも一部に被覆を設ける。この被覆は、炭素系または容易に塗布できるその他任意の材料であってもよく、赤外線スペクトルにおける対象温度範囲にわたって相対的に一定の放射率を有する。ある実施態様において、炭素被覆をワークピースの一部分に施し、被覆の温度を観察することによってワークピースの温度を測定できるようにする。当該技術を用いて、処理チャンバを較正したり、処理チャンバにおける動作条件を確認(バリデーション)したり、製造プロセスを開発したりすることができる。
【0007】
ある実施態様によると、処理システムが開示される。当該処理システムは、プラテンと、 前記プラテン上に配置される較正ワークピースと、赤外線スペクトルにおける波長範囲を用いて前記較正ワークピースの温度を判定する赤外線カメラと、前記較正ワークピースの上面の一部分に配置され、前記波長範囲での温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆とを備える。
【0008】
第2の実施態様によると、ワークピースプロセスを較正する方法が開示される。当該方法は、プロセスチャンバにおける加熱プラテンを、100℃を超える昇温状態に維持するステップと、前記プロセスチャンバに、所望温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆を上面の一部分に備える較正ワークピースを導入するステップと、前記較正ワークピースを、前記加熱プラテン上に配置するステップと、赤外線カメラの焦点を前記一部分に合わせて、経時的に前記較正ワークピースの温度を監視するステップと、前記較正ワークピースが所定温度に到達するための時間を記録するステップとを有する。さらなる実施態様において、当該方法は、さらに、前記記録後にワークピースを処理するステップを有し、前記処理するステップは、前記ワークピースを前記加熱プラテン上に配置するステップと、所定時間待機するステップと、前記待機後に前記ワークピースを処理するステップとを有し、前記所定時間は、前記較正ワークピースが前記所定温度に到達するための前記記録された時間に基づいて決定される。
【0009】
他の実施態様によると、ワークピース製造プロセスを確認する方法が開示される。当該方法は、第1ワークピースをプロセスチャンバに導入するステップと、前記第1ワークピースを、前記プロセスチャンバにおける加熱プラテンであって、100℃を超える昇温状態の加熱プラテン上に配置するステップと、前記加熱プラテン上で、前記第1ワークピースを処理するステップと、前記第1ワークピースの導入と同じように、較正ワークピースを前記プロセスチャンバに導入するステップとを有し、前記較正ワークピースは所望温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆を上面の一部分に備え、前記被覆を有する前記一部分に焦点を合わせた赤外線カメラを用いて、前記較正ワークピースの温度を測定するステップと、前記温度が許容範囲内であることを検証するステップとを有する。さらなる実施態様において、当該方法は、さらに、前記温度が前記許容範囲内であることを検証した後、第2ワークピースを前記プロセスチャンバに導入するステップと、前記第2ワークピースを、前記プロセスチャンバにおける前記加熱プラテン上に配置するステップと、前記加熱プラテン上で、前記第2ワークピースを処理するステップとを有する。他のさらなる実施形態において、当該方法は、さらに、前記温度が前記許容範囲内でない場合に、補正動作を行うステップを有する。
【0010】
他の実施態様によると、昇温状態でワークピースを処理する方法が開示される。当該方法は、所望温度範囲についてほぼ一定の放射率を有する被覆を、前記ワークピースの上面の第1部分に施すステップと、前記ワークピースを加熱プラテン上に配置するステップと、前記ワークピースの温度を監視するように、赤外線カメラの焦点を前記第1部分に合わせるステップと、前記第1部分と異なる前記ワークピースの第2部分を処理するステップと、前記ワークピースを前記昇温状態に維持するように、前記ワークピースを処理しながら、前記ワークピースの前記監視された温度に基づいて前記加熱プラテンの温度を調整するステップと、を有し、前記昇温状態は、100℃を超える。
【0011】
本発明の理解を助けるために、以下の添付図面を参照し、添付図面を、ここに参照のために取込む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】リフトピンによって加熱プラテンの上方に保持されたシリコンワークピースの熱画像である。
【
図4】赤外線カメラ、ワークピース、およびプラテンの代表的構成図である。
【
図5】加熱プラテン上に配置された非加熱較正ワークピースを示す図である。
【
図6】所望温度に到達した後の
図5の較正ワークピースを示す図である。
【
図7】ワークピースの温度変化を監視するために用いられる代表的フローチャートである。
【
図8】製造プロセスを確認するために用いられる代表的フローチャートである。
【
図9】閉ループ温度制御を利用する代表的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上記の通り、シリコンの光学的特性により、温度測定に赤外線技術を利用することが困難または不可能である。
図1は、複数の温度および波長でのシリコンの分光放射率を示す。このグラフにおいて表されている波長は、従来の赤外線カメラで用いられる赤外線スペクトルに関連する波長である。放射率は、材料が放射 を介してエネルギーを放出する能力の尺度である。
図1に示すように、低温では、シリコンは、赤外線スペクトルで放射線を放出する能力を失い、放射率は0に近い。シリコンの温度が上昇するにつれて、シリコンの放射率も上昇する。800℃では、シリコンの放射率は、0.7近くでほぼ一定である。この光学的挙動は、いくつかの理由で問題である。
【0014】
第一に、赤外線スペクトルにおける特定の波長で、シリコンの放射率は、その温度に応じて変化する。したがって、単一波長または狭い波長範囲で動作する赤外線カメラを用いて、放出される放射を実際の温度と関連付けることは不可能である。赤外線カメラは、放出される放射を特定の波長または狭い波長範囲で測定し、放出される放射の量および材料の放射率に基づいて、材料の温度を判定する。当該特定の波長での一定でない放射率により、赤外線カメラが、ただ1つの波長を用いて材料の温度を判定するのは不可能である。このように、従来の赤外線カメラでは、低温において、シリコンの温度を正確に判定することができない。
【0015】
第二に、低温におけるシリコンの0に近い放射率は、記録される赤外線測定が、実際には、シリコンの下に配置される材料に関連することを意味する。
図2は、ほぼ500℃での、露出プラテン100の熱画像を示す。プラテン100は、プラテン100内に位置する通路に温液を導入することによって加熱されてもよい。あるいは、プラテン100は、プラテン100に配置される電気発熱体を用いて加熱されてもよい。プラテン100の外周のドット10のリングは、ワークピースの背面側へと供給される背面側ガスの通路を表し得る。当該背面側ガスにより、プラテン100からプラテン100上に配置されるワークピースへの熱伝導が向上する。プラテン100の中心により近い3つの領域15は、処理後にプラテン100からワークピースを持ち上げるために使用されるリフトピンを表し得る。ドット状領域20は、ワークピースから電荷を除去するために使用される接地ピンを表し得る。
【0016】
図3は、同じプラテンが、シリコンワークピース300で覆われた状態を示す。シリコンワークピース300は、3つのリフトピンによって加熱プラテンの上方に保持されている。本図は上面図であるため、プラテンはワークピースの下であり、ワークピース300は赤外線カメラとプラテンとの間に位置する。
図4は、この構成の代表図である。
図4は、プラテン100の上方に配置された赤外線カメラ200を示す。シリコンワークピース300はリフトピン上に置かれており、シリコンワークピース300とプラテン100とは離間している。
図3の熱画像は、シリコンワークピース300の温度が400℃から500℃の間であることを示唆している。しかし、シリコンワークピースの実際の温度は、50℃に非常に近い。この実際の温度を、熱画像に基づいて判定することはできない。なぜなら、熱画像は、プラテン100の正面に配置されるシリコンワークピース300によってある程度減衰されてはいるが、実際は、プラテン100の温度の記録および測定であるからである。
【0017】
図5は、加熱プラテン上に配置された較正ワークピース400の熱画像を示す。ここで、部分410は、較正ワークピース400の他の箇所と明らかに温度が異なっているように見える。当該部分410は、2つの直交する直径の形状のパターンを有してもよい。他の実施形態において、当該部分410は、単一の直径であってもよい。当該部分410には、前もって、赤外線スペクトルにおいてほぼ一定の放射率を有する被覆が施されている。本発明において、「ほぼ一定の放射率」は、所望の温度範囲にわたって、材料の放射率の変化が20%未満であることを意味する。他の実施形態において、所望の温度範囲にわたる物質の放射率変化は、10%未満であってもよい。さらに、目標最終温度が既知である状況においては、「ほぼ一定の放射率」は、目標最終温度の50℃以内といった狭い温度範囲にわたる物質の放射率 が10%未満、あるいは、いくつかの実施形態では5%未満、であることを意味してもよい。赤外線カメラは、典型的に、目標最終温度に近い温度での良好な概算である固定放射率値を使用する。いくつかの実施形態において、赤外線カメラが使用する固定放射率は、目標最終温度での放射率に等しい。このように、赤外線カメラ測定値は、目標最終温度付近の温度で正確になる。このやり方で、部分410の温度測定は正確になることが分かるが、較正ワークピース400の残りの部分は不確定であり得る。言い換えると、ワークピースの温度が400℃から500℃の間であることを示唆する
図3の熱画像は、不正確である。むしろ、被覆部分410のみが、ワークピース400の実際の温度を表す。
【0018】
図6は、同じ較正ワークピース400が、長時間高温プラテン上に置かれた後の状態を示す。部分410は、この時、加熱プラテンに非常に近い温度を反映する。これは、ワークピース400の実際の温度を反映するものである。較正ワークピース400の残りの部分は、未だ実際の温度よりもわずかに高温であるように見える。
【0019】
図5および6において、較正ワークピース400は、所望波長での温度にわたってほぼ一定の放射率を有する物質で被覆されている。いくつかの実施形態において、所望波長は、1.0μmから3.0μmの間である。他の実施形態において、所望波長は、3.0μmから5.0μmの間であってもよい。他の実施形態において、所望波長は、7.5μmから14μmの間であってもよい。さらに他の実施形態において、所望波長は、1.0μmから14μmの間であってもよい。これらの図において被覆は2つの直交する直径410に施されているが、被覆を任意の所望のパターンで施してもよい。
【0020】
例えば、グラファイトと水とのコロイド懸濁液をワークピースの上面に刷毛で塗布してもよい。本実施形態において、任意の所望のパターンで、コロイド懸濁液をワークピースの上面に刷毛で塗布してもよい。ここで較正ワークピースと呼ばれるワークピースは、本明細書に記載するいずれの手順にも用いることができる。
【0021】
但し、ワークピースの被覆に用いられ得る材料は他にも数多くある。そのような被覆の1つが、高温黒色被膜である。その他の材料も適用可能であり、本発明は、特定の材料に限定されない。むしろ、高温黒色被膜を含めた意図は、適用可能な種々の材料の利用可能性を証明することにある。結晶性ホウ素も、300℃から650℃の温度範囲でほぼ一定の放射率を有しており、プラズマスプレーとして適用してもよい。上記の通り、赤外線カメラが使用する波長において広い温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する任意の材料を採用可能である。いくつかの実施形態において、当該温度範囲は、0℃から600℃であってもよい。他の実施形態において、温度範囲は、300℃から600℃であってもよい。。さらに他の実施形態において、温度範囲は、400℃から600℃であってもよい。ワークピースの表面に噴霧、刷毛で塗布、又はその他の方法で簡単に塗布可能な材料が有用であり得る。被覆により、従来の赤外線カメラを用いて、シリコンワークピースの温度を正確に測定することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、被覆は、ワークピース400の上面の一部のみに施される。例えば、
図5および6は、材料が塗布された部分410が、2つの直交する直径の形状であることを示している。但し、他の実施形態において、較正ワークピース400の上面全体を被覆して、較正ワークピース400全体の熱挙動を監視できるようにしてもよい。他の実施形態において、当該部分は、ワークピース上に被覆される単一の直径のみから構成されてもよい。被覆は、任意のパターンで施され得る。
【0023】
例えば、上面全体を被覆することによって、熱画像を用いてワークピース全体の温度均一性を精密に判定することができる。異なる温度の箇所、例えば、リフトピンの真上の箇所を、容易に同定することができる。他の実施形態において、
図5および6に示すように、1つ以上の直径を用いることにより、ワークピース中心からの距離に応じて均一性を推定することができる。言い換えると、ワークピースの温度はワークピース中心からの距離とある程度関係していると想定できる。ここで、ワークピース中心は、最高温度である可能性が高い。したがって、1つの直径を用いることで、ワークピース上の任意の箇所の温度を、ワークピース中心からの距離に基づいて推定し得る。また、2つ以上の直径を用いることで、ワークピースの温度プロフィールのより複雑な外挿が可能である。
【0024】
他の実施形態において、ワークピースの温度均一性は、所望または有用ではないかもしれない。例えば、単に、単一箇所でのワークピースの温度をサンプリングするだけで十分であり得る。本実施形態において、被覆は、上面全体に施してもよく、上面の一部のみに施してもよい。その後、赤外線カメラの焦点を、特に被覆が前もって施されたワークピース領域に合わせる。こうすることで、ワークピース温度を簡単かつ迅速に判定することができる。これらの技術のいずれも、本明細書に記載する手順と共に用いることができる。
【0025】
被覆の使用は、他の技術に対していくつか利点がある。例えば、一旦上面が被覆されると、較正ワークピース400は、他のワークピースと同じように、製造プロセスに導入可能になる。言い換えると、特別に被覆された較正ワークピース400を採用するために、特別な工程を要しない。よって、さまざまな較正手順を開発することができる。
【0026】
例えば、第1実施形態において、ワークピースが所定温度に達した時にワークピースに注入するプロセスが所望される。
図7に示すように、上記の通り較正ワークピースを用いて、所望プロセスを開発してもよい。このために、動作700に示すように、処理チャンバ内に位置するプラテンを、100℃超等の昇温状態に維持してもよい。較正ワークピースを、他のワークピースと同じように、処理チャンバ内に導入することができる。例えば、いくつかの実施形態において、動作710に示すように、較正ワークピースをロードロックに配置する。その後、動作720に示すように、処理チャンバ内に位置するロボット機構により、較正ワークピースをロードロックから取り出す。続いて、動作730に示すように、ロボット機構は、他のワークピースと同じように、較正ワークピースをプラテン上に配置することができる。較正ワークピースは、所望の温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆を有する。本実施形態において、所望の温度範囲は、プラテンの昇温状態を中心とする100℃の範囲であってもよい。例えば、300℃の昇温状態では、所望の温度範囲は、250℃から350℃である。動作740に示すように、従来の赤外線カメラを用いて、較正ワークピース400の温度を正確に測定および監視し得る。したがって、動作750に示すように、ワークピースが所望温度に到達するための待機時間を、正確に測定および記録することができる。当該時間を用いて、所望の昇温状態でワークピースに注入するプロセスを生成することができる。測定時間の統計的妥当性を高めるために、複数の較正ワークピースを用いてプロセスを較正してもよい。複数の較正ワークピースを全て、
図7に示す上記の方法で、処理チャンバに導入してもよい。
【0027】
当該待機時間が判定されると、ワークピースを、ロードロックを介してプロセスチャンバに導入して、加熱プラテン上に配置することができる。待機時間経過後、ワークピースを処理することができる。待機時間は、
図7の動作750で決定してもよい。
【0028】
さらなる実施形態において、較正ワークピースの温度均一性も得ることができる。例えば、ある実施形態において、較正ワークピースの上面全体に被覆を施す。その後、赤外線カメラ200の焦点を上面の複数箇所に合わせて、熱画像を生成する。他の実施形態において、較正ワークピースの上面の少なくとも1つの直径に被覆を施す。その後、赤外線カメラ200の焦点を直径の複数箇所に合わせる。これに基づいて、較正ワークピースの温度均一性を推定することができる。当該推定は、温度を、較正ワークピース中心からの距離と関連付け得る。2つ以上の直径を用いることで、より複雑な推定が可能になる。
【0029】
第2実施形態において、ワークピースが所定温度に達した時にワークピースに注入するプロセスが所望される。第1実施形態と異なり、本実施形態では、プラテンを加熱するのは、ワークピースをプラテン上に配置した後である。既に述べたように、較正ワークピースの上面の少なくとも一部は、赤外線カメラが使用する周波数においてほぼ一定の放射率を有する物質で被覆されている。
図7の710〜730に示すように、較正ワークピースを、他のワークピースと同じように、処理チャンバに導入してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、較正ワークピースを、ロードロックに配置する。その後、処理チャンバ内に位置するロボット機構により、較正ワークピースをロードロックから取り出す。続いて、ロボット機構は、他のワークピースと同じように、較正ワークピースをプラテン上に配置することができる。そして、プラテンを加熱し、従来の赤外線カメラを用いて、較正ワークピースの温度を正確に測定および監視し得る。したがって、ワークピースとプラテンとが所望温度に到達するための時間を、正確に測定することができる。当該時間を用いて、所望の昇温状態でワークピースに注入するプロセスを生成することができる。さらなる実施形態において、上記の通り、前述の技術を用いて、ワークピースの温度均一性を測定または推定することができる。
【0030】
第3実施形態において、熱電対またはその他の温度センサーをプラテン100上に配置する。赤外線カメラ200を用いて、較正ワークピース400の温度を監視する。
図7の動作710〜730に示すように、較正ワークピース400を処理チャンバに導入してもよい。その後、プラテン温度とワークピース温度との間の相関関係を生成することができる。
【0031】
上記の通り、較正ワークピースは、製造プロセスを開発するのに有用であるが、較正ワークピースには他の用途もある。例えば、ある実施態様において、較正ワークピースを、通常動作時に処理チャンバに導入してもよい。
【0032】
通常動作時に較正ワークピースを導入することで、赤外線カメラを用いて熱プロフィールを生成することができる。このようにして、製造プロセスの動作の検証が可能になる。例えば、時間と共に、プラテンとワークピースとの間の熱的結合が変化するかもしれない。当該変化の原因として、プラテンとワークピースとの間のクランプ力の変動、ワークピースの背面側に向かう背面側ガスの流量の変化、または他の原因が考えられる。当該熱的結合の変化は、注入時のワークピースの到達温度に影響を及ぼすことで、結果として得られる製品に影響するかもしれない。通常動作時に較正ワークピースを導入することで、動作への影響を最小限にして、熱的結合を検証することができる。当該較正ウエハーを、通常のワークピースと同じように導入してもよく、実際に処理チャンバで処理してもしなくてもよい。むしろ、その目的は、処理チャンバの動作に影響を及ぼすことなく実際のワークピース温度を測定可能にすることで、プロセスの定期的確認を実現することである。言い換えると、較正ワークピースを導入し実際のワークピース温度を判定するために特別な手順を行う必要はない。
【0033】
図8は、通常動作時の較正ワークピースの使用を表すフローチャートである。まず、動作800に示すように、ワークピースを、ロードロックに配置する。その後、動作810に示すように、ワークピースを、処理チャンバ内のロボット機構により取り出し、プラテン上に配置する。イオン注入等のワークピースの高温処理を促進するために、プラテンを昇温状態に加熱してもよい。その後、動作820に示すように、ワークピースを処理する。処理完了後、ロボット機構により、ワークピースをプラテンから取り出す。一連の動作800〜820を複数回繰り返してもよい。ある時点で、動作830に示すように、較正ワークピース400を、ロードロックに配置する。動作840に示すように、通常のワークピースと同じように、当該較正ワークピース400を、ロボット機構によりロードロックから取り出し、プラテン上に配置する。較正ワークピースは、所望の温度範囲にわたってほぼ一定の放射率を有する被覆を有する。本実施形態において、所望の温度範囲は、プラテンの昇温状態を中心とする100℃の範囲であってもよい。較正ワークピース400をプラテンに配置した後、動作850に示すように、その温度を監視および測定することができる。上記の通り、こうすることで、プラテンとワークピースとの間の熱的結合がまだ許容限界内であることを確認することができる。許容できない温度であれば、動作860に示すように、補正動作を始動してもよい。当該動作には、プラテン100の温度の変更、プラテンの洗浄、またはその他の動作が含まれ得る。温度を確認すると、動作870に示すように、 較正ワークピース400をプラテン100から取り出す。その後、一連の動作800〜820に従って、さらに他のワークピースを通常通り処理してもよい。
【0034】
さらなる実施形態において、較正ワークピースの温度均一性も得ることができる。例えば、ある実施形態において、較正ワークピースの上面全体に被覆を施す。その後、赤外線カメラ200の焦点を上面の複数箇所に合わせて、熱画像を生成する。 他の実施形態において、較正ワークピースの上面の少なくとも1つの直径に被覆を施す。その後、赤外線カメラ200の焦点を直径の複数箇所に合わせる。これに基づいて、較正ワークピースの温度均一性を推定することができる。当該推定は、温度を、較正ワークピース中心からの距離と関連付け得る。2つ以上の直径を用いることで、より複雑な推定が可能になる。
【0035】
他の実施形態において、
図9に示すように、被覆されたワークピースのごく一部を有するワークピースを、処理チャンバ内で処理する。言い換えると、これらの較正されたワークピースは、較正ワークピースおよび通常処理ワークピースの両方の役割を果たす。これらの較正されたワークピースを、赤外線カメラからの温度フィードバック下で処理してもよい。本実施形態において、動作900に示すように、製品に用いられないワークピースのごく一部に、被覆を施してもよい。これにより、処理動作を、上記の開ループ較正の代わりに、閉ループで行うことができる。例えば、較正されたワークピースを処理しながら当該ワークピースの温度を監視することができ、リアルタイムでプラテンの温度を調整することによって直ちに補正することができる。当該技術は、ワークピース処理時により厳しい温度制御が望ましいケースに適用可能である。こうして、表面の一部に被覆を施した後、動作910に示すように、較正されたワークピースをプラテンに移動する。そして、動作920に示すように、他のワークピースに通常行われるのと同じように、較正されたワークピースを処理することができる。較正されたワークピースを処理しながら、動作930に示すように、赤外線カメラの焦点を被覆部分に合わせて、較正されたワークピースの温度を継続的に監視してもよい。そして、動作940に示すように、被覆部分の監視温度を用いて、プラテン300の温度を制御する。これにより、別の方法で可能な温度制御よりも厳密な温度制御が可能になる。較正されたワークピースを処理した後、動作950に示すように、当該ワークピースをプラテンから取り出す。その後、他の較正されたワークピースを、
図9に示すシーケンスを用いて処理することができる。
【0036】
本願において記載される技術は、シリコンワークピースに対して使用されるものとして記載されている。これらの技術はシリコンに適しているが、動作温度範囲において低いまたは可変の赤外放射率を有する他の材料にも有用である。一例として、石英も、放射率変動が大きい。石英の放射率は、20℃での0.9付近から750℃での0.3近くまで変動する。較正技術は、石英ワークピースにも同様に適用可能である。所望温度範囲にわたって可変放射率を有するその他の材料も、当該技術を有効利用することができる。
【0037】
本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態によりその範囲を制限されない。実際、本明細書に記載した実施形態に加えて、本発明の他の様々な実施形態および変更は、先の記載および添付図面から、当業者に明らかであろう。よって、このような他の実施形態および変更は、本発明の範囲に含まれるものである。さらに、本発明は、特定の目的に対する特定の環境における特定の実施の文脈で本明細書に記載されているが、当業者は、その有用性がこれに限定されず、本発明は多くの目的に対して多くの環境において有利に実施できることを認識するであろう。したがって、後述の特許請求の範囲は、本明細書に記載する本発明の全容および精神を考慮して解釈すべきである。
【国際調査報告】