特表2017-517599(P2017-517599A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-517599クロメートフリー予備処理プライマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-517599(P2017-517599A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(54)【発明の名称】クロメートフリー予備処理プライマー
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20170602BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20170602BHJP
   C09D 163/02 20060101ALI20170602BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170602BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20170602BHJP
【FI】
   C09D163/00
   C09D5/08
   C09D163/02
   C09D7/12
   C09D5/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-567023(P2016-567023)
(86)(22)【出願日】2015年5月7日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月21日
(86)【国際出願番号】US2015029683
(87)【国際公開番号】WO2015171891
(87)【国際公開日】20151112
(31)【優先権主張番号】14/273,567
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】502328466
【氏名又は名称】ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ラブーシュ, ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】マイレ, マリー−ノエル
(72)【発明者】
【氏名】アブラミ, シアマント
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038HA196
4J038JB10
4J038JC35
4J038KA04
4J038KA20
4J038NA03
4J038NA27
4J038PC02
(57)【要約】
エポキシ官能性樹脂、耐食性粒子および多官能性架橋剤を含むコーティング剤が開示され、基材の少なくとも一部をコーティングするためにこのようなコーティング剤を使用する方法およびこれによりコーティングされた基材も同様に開示される。本発明は、(a)(i)エポキシ官能性樹脂、および(ii)耐食性粒子を含む第1の構成成分、ならびに(b)第1の構成成分のエポキシ官能基と架橋する第1の官能基および自己架橋する第2の官能基を有する架橋剤を含む第2の構成成分を含む、コーティング剤を対象とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)エポキシ官能性樹脂、および
(ii)耐食性粒子
を含む第1の構成成分、ならびに
(b)前記第1の構成成分のエポキシ官能基と架橋する第1の官能基および自己架橋する第2の官能基を有する架橋剤を含む第2の構成成分
を含むコーティング剤。
【請求項2】
前記エポキシ官能性樹脂がビスフェノールAの残基を含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項3】
前記エポキシがウレタンエポキシを含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項4】
前記腐食防止剤がMgOを含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項5】
前記MgOが1グラムあたり少なくとも10平方メートルの表面積を有する、請求項4に記載のコーティング剤。
【請求項6】
アミノ酸をさらに含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項7】
前記架橋剤がシランを含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項8】
前記シランが二脚状シランを含む、請求項7に記載のコーティング剤。
【請求項9】
前記シランが本質的に二脚状シランからなる、請求項7に記載のコーティング剤。
【請求項10】
前記シランがビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを含む、請求項8に記載のコーティング剤。
【請求項11】
前記シランがビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを含む、請求項9に記載のコーティング剤。
【請求項12】
前記第2の構成成分がアミン触媒をさらに含む、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項13】
前記アミン触媒が第三級アミンを含む、請求項12に記載のコーティング剤。
【請求項14】
エポキシと反応する前記官能基がアミンである、請求項7に記載のコーティング剤。
【請求項15】
実質的にクロムを含まない、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項16】
実質的に酸化プラセオジムを含まない、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項17】
基材をコーティングする方法であって、請求項1に記載のコーティング剤を前記基材の少なくとも一部に施用するステップを含む方法。
【請求項18】
請求項17によりコーティングされた基材。
【請求項19】
アルミニウムを含む、請求項18に記載の基材。
【請求項20】
鋼を含む、請求項18に記載の基材。
【請求項21】
実質的に希土類元素を含まない、請求項1に記載のコーティング剤。
【請求項22】
周囲条件で硬化する、請求項1に記載のコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、エポキシ官能性樹脂、耐食性粒子、ならびに、エポキシ官能基と架橋することになる第1の官能基および自己架橋する第2の官能基を有する架橋剤を含むコーティング用組成物に関する。本発明はまた、このような組成物に由来するコーティング剤が堆積することで少なくとも部分的にコーティングされている基材、ならびに、このようなコーティング用組成物に由来する少なくとも一つのコーティング層が堆積している複数構成成分系複合コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
コーティング剤は、いくつかの理由で、通常、腐食保護および/または性能強化のため、電気器具、自動車、航空機などに施用される。金属基材の耐食性を改善するために、腐食防止剤が、通常、該基材に施用されるコーティング剤において使用される。一般の腐食防止剤は、クロム酸ストロンチウムであり、これは、金属基材、とりわけアルミニウム基材に対して優れた耐食性をもたらす。しかし、クロム酸ストロンチウムなどの腐食防止剤は高い毒性と発がん性を有し、その使用は、環境面での懸念および廃棄問題を引き起こす、廃棄物の流れの生成をもたらす。
【0003】
その結果、クロメート顔料を実質的に含まない、耐食性コーティング剤を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明は、(a)(i)エポキシ官能性樹脂、および(ii)耐食性粒子を含む第1の構成成分、ならびに(b)第1の構成成分のエポキシ官能基と架橋する第1の官能基および自己架橋する第2の官能基を有する架橋剤を含む第2の構成成分を含む、コーティング剤を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明は、第1の構成成分中にエポキシ官能性樹脂および耐食性粒子を、そして第2の構成成分中に架橋剤を含む、複数構成成分系コーティング用組成物を対象とする。この架橋剤は、二つの機序によって架橋をもたらす官能基を有する。第1に、この架橋剤は、エポキシ樹脂上のエポキシ官能基と反応する官能基を含む。この架橋剤は、自己架橋を経験し得る第2の官能基も含む。自己架橋に加え、ある特定の実施形態では、第2の官能基は、接着促進剤として作用することもできる。
【0006】
任意のエポキシ官能性樹脂を、本発明により使用することができる。本明細書で使用する場合、「エポキシ樹脂」または「エポキシ官能性樹脂」は、未反応のエポキシ官能基を有する樹脂である。未反応のエポキシ官能基は、コーティング剤において使用される他の化合物で見いだされる官能基と反応することが可能である。エポキシ樹脂の適切な例には、その引用部分が参考として本明細書に援用される、米国特許第4,681,811号の第5欄33行目から58行目までに記載されているエポキシ樹脂を含めた、ビスフェノールA、ビスフェノールF、グリセロール、ノボラックなどのジグリシジルエーテルが含まれる。他の適切なエポキシ樹脂は、ウレタンエポキシ、エポキシ官能性ポリチオエーテルおよびエポキシ官能性ポリスルフィドを含む。エポキシ樹脂は、そのEPONおよびEPIKOTE系列がMomentiveからなど、広く市販されている。エポキシ樹脂の混合物も本発明の範囲内である。
【0007】
任意の耐食性粒子を、本発明により使用することができる。本明細書で使用する場合、用語「耐食性粒子」とは、基材上に堆積したコーティング用組成物に含まれている場合、鉄含有基材における錆およびアルミニウム基材における劣化性酸化物を含めた、化学的または電気化学的酸化過程などによる基材の変質または劣化に抵抗するか、または一部の場合には、その変質または劣化を防止さえするコーティング剤をもたらすよう作用する粒子を指す。
【0008】
ある特定の実施形態では、本発明は、無機酸化物、一部の実施形態では、例えば、とりわけ酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO)、酸化モリブデン(MoO)、酸化プラセオジムおよび/または二酸化ケイ素(SiO)などの、複数の無機酸化物を含む耐食性粒子を含む、コーティング用組成物を対象とする。本明細書で使用する場合、用語「複数の」は、2またはそれより大であることを意味する。したがって、本発明のコーティング用組成物のある特定の実施形態は、二つ、三つ、四つまたは四つ超の無機酸化物を含む、耐食性粒子を含む。ある特定の実施形態では、これらの無機酸化物は、このような粒子中に、例えば、複数の酸化物の均一な混合物または固体状態溶液の形態で存在している。
【0009】
本発明のある特定の実施形態では、この耐食性粒子は、亜鉛、セリウム、イットリウム、マンガン、マグネシウム、モリブデン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、スズまたはカルシウムの酸化物を含む。ある特定の実施形態では、この粒子は、マグネシウム、亜鉛、セリウムまたはカルシウムの酸化物を含む。ある特定の実施形態では、この粒子は、ホウ素、リン、ケイ素、ジルコニウム、鉄またはチタンの酸化物も含む。ある特定の実施形態では、この粒子は、二酸化ケイ素(「シリカ」)を含む。
【0010】
ある特定の実施形態では、本発明により使用される耐食性粒子は、(i)セリウム、亜鉛およびケイ素の酸化物を含む粒子、(ii)カルシウム、亜鉛およびケイ素の酸化物を含む粒子、(iii)リン(phosphorous)、亜鉛およびケイ素の酸化物を含む粒子、(iv)イットリウム、亜鉛およびケイ素の酸化物を含む粒子、(v)モリブデン、亜鉛およびケイ素の酸化物を含む粒子、(vi)ホウ素、亜鉛およびケイ素の酸化物を含む粒子、(vii)セリウム、アルミニウムおよびケイ素の酸化物を含む粒子、(viii)マグネシウムまたはスズおよびケイ素の酸化物を含む粒子、ならびに(ix)セリウム、ホウ素およびケイ素の酸化物を含む粒子、または粒子(i)〜(ix)のうちの二つまたは二つ超の混合物から選択される、複数の無機酸化物を含む。MgO単独、または他の無機酸化物と組み合わせたMgOが、特に適切である。
【0011】
MgOなどの、任意の平均粒子サイズの任意の耐食性粒子を本発明により使用することができる。ある特定の実施形態では、この耐食性粒子は、0.5〜50ミクロンまたは1〜15ミクロンなどのミクロンサイズであり、サイズは平均粒子サイズに基づく。ある特定の実施形態では、この耐食性粒子は、10〜499ナノメートルまたは10〜100ナノメートルなどのナノサイズであり、サイズは平均粒子サイズに基づく。これらの粒子サイズは、コーティング剤への混和時における耐食性粒子の粒子サイズを指すことが理解される。様々なコーティング剤調製方法により、平均粒子サイズを増大させる可能性がある耐食性粒子の凝集、または平均粒子サイズを低下させ得るせん断もしくは他の作用がもたらされ得る。耐食性粒子は、実施例の項において列挙されている供給元など、いくつかの供給元から市販されている。
【0012】
例えば、本発明のコーティング用組成物のある特定の実施形態は、超微細耐食性粒子を含む。本明細書で使用する場合、用語「超微細な」とは、1グラムあたり少なくとも10平方メートル、例えば1グラムあたり30〜500平方メートルなど、または一部の場合において、1グラムあたり80〜250平方メートルのB.E.T.比表面積を有する粒子を指す。本明細書で使用する場合、用語「B.E.T.比表面積」とは、定期刊行されている「The Journal of the American Chemical Society」、60巻、309頁(1938年)に記載されている、Brunauer−Emmett−Teller法に基づいて、ASTMD3663−78規格に準拠する窒素吸着により決定される、比表面積を指す。
【0013】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング用組成物は、200ナノメートル以下、例えば100ナノメートル以下など、またはある特定の実施形態では、5〜50ナノメートルの算出された球相当径を有する、MgO粒子などの耐食性粒子を含む。当業者によって理解されるとおり、算出された球相当径は、以下の式に従ってB.E.T.比表面積から決定することができる。
直径(ナノメートル)=6000/[BET(m/g)*ρ(グラム/cm)]
【0014】
本発明のコーティング用組成物のある特定の実施形態は、透過型電子顕微鏡(「TEM」)画像の顕微鏡写真を目視で調査し、該画像における粒子の直径を測定し、そしてTEM画像の拡大に基づいて測定した粒子の平均一次粒子サイズを計算することにより決定される場合、100ナノメートル以下、例えば50ナノメートル以下など、またはある特定の実施形態では、25ナノメートル以下の平均一次粒子サイズを有する、MgO粒子などの耐食性粒子を含む。当業者は、このようなTEM画像を作成する方法、およびその拡大に基づく一次粒子サイズを決定する方法を理解する。粒子の一次粒子サイズは、粒子を完全に取り囲む最小の直径の球を指す。本明細書で使用する場合、用語「一次粒子サイズ」とは、二つまたは二つ超の個々の粒子の凝集とは反対に、個々の粒子のサイズを指す。
【0015】
ある特定の実施形態では、耐食性粒子は、該粒子を上記組成物の媒体中に懸濁させたままにするのに十分な、該媒体に対する親和性を有する。これらの実施形態では、媒体に対する粒子の親和性は、互いに対する粒子の親和性よりも大きく、これにより、媒体内での粒子の凝集が低減するか、またはなくなる。
【0016】
MgO粒子などの耐食性粒子の形状(または形態)は様々であり得る。例えば、一般に、球状形態、ならびに立方体状、板状、多面体状または針状(細長いまたは繊維状)である粒子を使用することができる。他の特定の実施形態では、粒子は、ポリマーゲル中で完全に覆われていてもよく、ポリマーゲルにまったく覆われていなくともよく、ポリマーゲルにより部分的に覆われていてもよい。「ポリマーゲルにより部分的に覆われている」とは、粒子の少なくともある部分が、その上にポリマーゲルを堆積させていることを意味し、これは、例えば、粒子に共有結合していてもよく、粒子と単に会合しているだけでもよい。
【0017】
本発明のコーティング剤中で使用されるMgOなどの耐食性粒子の量は、使用者のニーズに応じて変わり得る。例えば、本コーティング剤は、5〜50または10〜50などの、1〜75重量%の粒子を含むことができ、重量%は、顔料を含めて、ブレンドされたコーティング剤の総固体に基づく。「ブレンドされたコーティング剤」とは、基材に施用されるコーティング剤を意味する。すなわち、2種の構成成分を一つに混合した結果生じるコーティング剤である。
【0018】
ある特定の実施形態では、耐食性粒子は、具体的には、プラセオジムを除外する。さらに他の実施形態は、具体的には、希土類元素をすべて除外する。希土類とは、周期表中の17個の化学元素の集まり、具体的には15個のランタノイド(原子番号57〜71までの15個の元素、ランタンからルテチウムまで)ならびにスカンジウムおよびイットリウムを意味する。他の具体的な実施形態は、クロム含有材料などのクロムまたはその誘導体を除外する。本明細書で使用する場合、用語「クロム含有材料」とは、三酸化クロムの群、CrOを含む材料を指す。このような材料の非限定例には、クロム酸、三酸化クロム、クロム酸無水物、二クロム酸アンモニウム、二クロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、ならびに二クロム酸カルシウム、二クロム酸バリウム、二クロム酸マグネシウム、二クロム酸亜鉛、二クロム酸カドミウムおよび二クロム酸ストロンチウムなどの二クロム酸塩が含まれる。本発明のコーティング剤がクロムを実質的に含まないまたは完全に含まない場合、これにはクロム含有材料を含む任意の形態のクロムが含まれる。
【0019】
したがって、ある特定の実施形態では、本コーティング剤は、酸化プラセオジムおよび/または任意の形態のクロムを含むがこれらに限定されない、任意の形態の1種または複数種の希土類金属を実質的に含まない。他の実施形態では、本発明のコーティング用組成物は、これらの化合物または材料のいずれかまたはすべてを完全に含まない。本明細書で使用する場合、用語「実質的に含まない」は、仮に存在する場合であっても偶発的な不純物として、本組成物中に特定の物質または化合物が存在することを意味する。言いかえると、物質の量は非常に少ないので、本組成物の特性には影響を及ぼさない。クロメートまたはクロムの場合、これは、この物質が環境に対する負荷を引き起こすようなレベルで、本コーティング剤中に存在しないことをさらに含み得る。このことは、本発明のある特定の実施形態では、本コーティング用組成物は、上記の化合物または物質のいずれかまたはすべてを2重量%未満、または一部の場合において、上記の化合物または物質のいずれかまたはすべてを0.05重量%未満含有することを意味し、ここではこのような重量百分率は、本組成物の総重量に基づく。本明細書で使用する場合、用語「完全に含まない」は、本組成物中にその物質がまったく存在しないことを意味する。
【0020】
本発明のコーティング剤は、アミノ酸をさらに含むことがある。存在する場合、アミノ酸は第1の構成成分、第2の構成成分、または両方に存在し得る。アミノ酸は、酸とアミンの官能基の両方を有する化合物であって、各アミノ酸に特異的な側鎖を有する化合物として当業者により理解される。このアミノ酸は、モノマーであっても、二量体を含めたオリゴマーであってもよい。ある特定の実施形態では、オリゴマーアミノ酸が使用される場合、そのオリゴマーの分子量は、GPCによって決定した場合、1000未満である。
【0021】
アミノ酸のいずれも本発明により使用することができるが、ヒスチジン、アルギニン、リシン、システイン、シスチン、トリプトファン、メチオニン、フェニルアラニンおよびチロシンが特に適切である。アミノ酸は、互いに鏡像であるL−またはD−鏡像異性体のいずれか一方であり得ること、ならびにL−立体配置が通常、タンパク質中および天然に見いだされ、それら自体、広く市販されていることがさらに理解される。したがって、用語「アミノ酸」とは、本明細書で使用する場合、D−およびL−立体配置の両方を指す。ある特定の実施形態では、L−立体配置のみまたはD−立体配置のみが含まれ得る。アミノ酸は、例えば、Sigma Aldrich、Thermo Fisher Scientific、Hawkins PharmaceuticalまたはAjinomatoから購入することができる。本発明のある特定の実施形態は、具体的には、アミノ酸のグリシン、アルギニン、プロリン、システインおよび/またはメチオニンを除外する。
【0022】
アミノ酸は、コーティング剤の耐食性を改善する任意の量で存在することができる。例えば、アミノ酸は、0.1〜20重量%、例えば2〜4重量%などの量で存在することができ、重量百分率は、ブレンドされたコーティング剤中の樹脂固体に基づく。アミノ酸の量および耐食性粒子の量は、最適な耐食性をコーティング剤に付与するよう、一緒に選択することができる。
【0023】
上記のとおり、本発明のコーティング用組成物は、架橋剤または硬化剤を含む第2の構成成分を含む。この架橋剤は、エポキシ樹脂のエポキシ官能基と反応する官能基を有する。このような官能基の例には、例えば、アミン基、アミド基およびチオール基が含まれる。架橋剤は、自己架橋することになる官能基も含む。すなわち、この官能基はそれ自体と架橋することになる。このような官能基の例には、アルコキシ−シラン、アルコキシ−チタネートおよびアルコキシ−ジルコネートが含まれる。架橋剤が二つの異なるタイプの官能基を有することに関して、本明細書に記載されているが、架橋剤は、二つ超のタイプを有することもできる。
【0024】
特に適切な架橋剤は、アミノシランを含む。ある特定の実施形態では、架橋剤は二脚状(dipodal)シランを含む。「二脚状シラン」は、アルコキシ−シラン官能基を含有する2個の個別の分離したケイ素原子を有する架橋剤を指すものと理解される。市販の二脚状シランの例には、MomentiveからのSILQUEST A1170(ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン)、GelestからのSIB1834(ビス[(トリメトキシシリル)プロピル]−エチレンジアミン)およびやはりGelestからのSIB1620(ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン)が含まれる。
【0025】
本発明のコーティング用組成物は、複数構成成分系コーティング用組成物である。第1および第2の構成成分を含むものとして本明細書に記載されているが、いずれの数の追加的な構成成分も本コーティング剤の配合物において使用することができることが理解される。これらの構成成分は、施用前に混合される。
【0026】
エポキシ樹脂および架橋剤は、フィルム形成性樹脂を含む。本明細書で使用する場合、用語「フィルム形成性樹脂」とは、組成物中に存在している任意の希釈剤もしくは担体を除去すると、または周囲条件もしくは高温で硬化させると、少なくとも基材の水平面上に自立型連続フィルムを形成することができる樹脂を指す。本コーティング剤は、周囲条件下で硬化することができる。周囲条件とは、コーティング剤が熱の助けも他のエネルギーの助けもなく、例えば、オーブン中でのベーキング、強制空気の使用などなしに、熱硬化反応を経験することを意味する。
【0027】
上記のとおり、本組成物は二つの機序により硬化する。最初の機序では、架橋剤の、アミン官能基などのエポキシ反応性官能基がエポキシ樹脂のエポキシ官能基と反応する。第2の機序では、架橋剤のシランが自己縮合する。第1の構成成分または第2の構成成分中の他の官能基に応じて、さらなる硬化機序が起こり得る可能性がある。
【0028】
コーティング剤中の一つまたは複数の追加のフィルム形成性樹脂を使用することも可能である。使用することができる追加のフィルム形成性樹脂には、非限定的に、とりわけ、航空宇宙向けコーティング用組成物、自動車のOEM向けコーティング用組成物、自動車の再仕上げ向けコーティング用組成物、産業向けコーティング用組成物、建築向けコーティング用組成物、およびコイル向けコーティング用組成物に使用されるものが含まれる。本発明のコーティング用組成物において使用するのに適しているフィルム形成性樹脂には、例えば、アクリル、飽和または不飽和ポリエステル、アルキド、ポリウレタンもしくはポリエーテル、ポリビニル、セルロース、ケイ素をベースとするポリマー、それらのコポリマーをベースとする樹脂が含まれ、これらの樹脂は、例えば、とりわけエポキシ、カルボン酸、ヒドロキシル、イソシアネート、アミド、カルバメート、アミンおよびカルボキシレート基(それらの混合物を含めて)などの反応性基を含有していてもよい。フィルム形成性樹脂の組合せを使用することができる。ある特定の実施形態では、本発明のコーティング用組成物に含まれる追加のフィルム形成性樹脂は、上記の架橋剤と硬化することになる官能基を有する樹脂を含むが、他の実施形態では、1種または複数種の追加の架橋剤を使用することができる。適切な架橋剤は、選択される樹脂に基づいて、当業者によって決定することができる。
【0029】
本発明のある特定の実施形態では、エポキシ樹脂は、10重量%超、例えば20〜90重量%など、または一部の場合において、20〜60重量%の量で本発明のコーティング用組成物中に存在しており、重量百分率は、ブレンドされたコーティング用組成物の総固体重量に基づく。これらの実施形態における架橋剤の総量は、最大70重量%、例えば10〜70または10〜40重量%などの量で存在することができる。この重量百分率も、ブレンドされたコーティング用組成物の総固体重量に基づく。本発明のある特定の実施形態によって使用されるアミノシランは、フィルム形成性樹脂中の架橋剤として使用され、シランが接着性を改善するためなどの添加物として使用される場合に、通常、使用される量で添加されないことが理解される。ある特定の実施形態では、エポキシとアミンとの当量比は、2:1〜1:2、例えば1.5:1〜1:1.5または1.2:1.0などである。
【0030】
本発明の実施形態によれば、本コーティング用組成物は、液状コーティング用組成物の形態であり、それらの例には、水性(WB)および溶剤性(solvent−borne)(SB)コーティング用組成物、ならびに電着可能なコーティング用組成物が含まれる。本発明のコーティング用組成物はまた、粒子形態の共反応性固体の形態(すなわち、粉末コーティング用組成物)であってもよい。
【0031】
水が主要な希釈剤として使用される場合(すなわち、50%超)、このコーティング用組成物は水性コーティング用組成物であり得る。他の実施形態では、溶剤が主要な希釈剤として使用される場合(すなわち、50%超)、このコーティング用組成物は溶剤性コーティング用組成物であり得る。例えば、ある特定の実施形態では、本発明は、ケトン、アセテート、グリコール、アルコールおよび/または芳香族溶剤などの溶剤を含むことができる。例示的な適切な溶剤は、米国特許第6,774,168号の第3欄28行目〜41行目に記載されており、その引用部分は参考として本明細書に援用される。
【0032】
上記のとおり、水性または溶剤性コーティング用組成物は、基剤構成成分、例えばエポキシ官能基ポリマー、活性化剤または架橋剤構成成分、例えばアミン官能性シラン、および任意選択で第3の構成成分、例えばより低粘性の構成成分(thinner component)、例えば、水または水溶液を含む、複数構成成分系である。他の成分は、任意選択で、構成成分のいずれかに含まれ得る。基材への施用直前に、混合物の三つの構成成分を一緒にすることができる。例えば、エポキシ官能性ポリマーをベースとする構成成分およびアミン官能性シラン活性化剤の構成成分、ならびに使用する場合には任意の他の追加の構成成分を、個別に保管し、施用直前に混合してもよい。
【0033】
本発明のコーティング用組成物はまた、着色剤、可塑剤、耐摩耗性粒子、フィルム増強粒子、流動制御剤、チキソトロープ剤、レオロジー改質剤、触媒、抗酸化剤、殺生物剤、消泡剤、界面活性剤、湿潤剤、分散助剤、接着促進剤、クレイ、立体障害アミン光安定剤、UV光吸収剤および安定剤、安定化剤、充填剤、有機助溶剤、反応性希釈剤、グラインドビヒクルならびに他の慣用的な補助剤(auxiliary)、またはそれらの組合せを含めた、コーティング剤製造の分野における、任意の添加物標準品を含むことができる。用語「着色剤」とは、本明細書で使用する場合、米国特許公開第2012/0149820号の段落29〜38に定義されているとおりであり、その引用部分は参考として本明細書に援用される。
【0034】
「耐摩耗性粒子」は、コーティング剤において使用する場合、粒子を含まない同じコーティング剤と比較して、コーティング剤にあるレベルの耐摩耗性を付与する。適切な耐摩耗性粒子には、有機および/または無機粒子が含まれる。適切な有機粒子の例には、ダイヤモンドダスト粒子などのダイヤモンド粒子、およびカーバイド材料から形成される粒子が含まれるが、これらに限定されない。カーバイド粒子の例には、炭化チタン、炭化ケイ素および炭化ホウ素が含まれるが、これらに限定されない。適切な無機粒子の例には、シリカ、アルミナ、ケイ酸アルミナ、シリカアルミナ、アルカリアルミノシリケート、ホウケイ酸ガラス、窒化ホウ素および窒化ケイ素を含む窒化物、二酸化チタンおよび酸化亜鉛を含む酸化物、石英、霞石閃長岩、酸化ジルコニウムの形態などのジルコン、バデレアイト(buddeluyite)、ならびにユージアライトが含まれるが、これらに限定されない。異なる粒子および/または異なるサイズの粒子の混合物を使用することができるのと同様に、任意のサイズの粒子を使用することができる。例えば、該粒子は、0.1〜50、0.1〜20、1〜12、1〜10もしくは3〜6ミクロン、またはこれらの範囲のいずれかの範囲内の任意の組合せの平均粒子サイズを有するマイクロ粒子であり得る。この粒子は、0.1ミクロン未満、例えば0.8〜500、10〜100、もしくは100〜500ナノメートルなど、またはこれらの範囲の範囲内の任意の組合せの平均粒子サイズを有するナノ粒子であり得る。
【0035】
本明細書で使用する場合、用語「接着促進剤」および「接着促進構成成分」とは、本組成物中に含まれている場合、金属基材へのコーティング用組成物の接着性を増強する任意の材料を指す。本発明のある特定の実施形態では、このような接着促進「構成成分」は、それ自体が架橋剤である。これは、基材の表面と共有結合を形成することにより起こると考えられるが、本発明者らはこの機序により拘泥されることを望まない。
【0036】
ある特定の実施形態では、本発明のコーティング用組成物は、先に記載した耐食性粒子のいずれかに加えて、追加の慣用的な非クロム耐食性粒子も含むことができる。適切な慣用的な非クロム耐食性粒子には、リン酸鉄、リン酸亜鉛、カルシウムイオン交換されたシリカ、コロイド状シリカ、合成非晶質シリカ、およびモリブデン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ストロンチウムなどのモリブデート、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。適切なカルシウムイオンにより交換されているシリカは、SHIELDEX. AC3および/またはSHIELDEX. C303として、W. R. Grace&Co.から市販されている。適切な非晶質シリカは、SYLOIDとしてW. R. Grace&Co.から入手可能である。適切なヒドロキシルリン酸亜鉛は、NALZIN. 2としてElementis Specialties, Inc.から市販されている。これらの慣用的な非クロム耐食性顔料は、通常、約1ミクロンの粒子サイズまたはそれより大きい粒子サイズを有する粒子を含む。ある特定の実施形態では、これらの粒子は、5〜40重量パーセント、例えば10〜25重量パーセントなどの範囲の量で、本発明のコーティング用組成物中に存在しており、重量百分率は、該組成物の総固体重量に基づく。
【0037】
本コーティング剤はまた、1種または複数種の有機防止剤を含んでもよい。このような防止剤の例には、硫黄および/または窒素含有複素環式化合物が含まれるが、これらに限定されず、この例には、アゾール、チオフェン、ヒドラジンおよび誘導体、ピロールおよび誘導体が含まれる。このような有機防止剤は、参考として本明細書に援用される、米国公開第2013/0065985号の段落番号52に記載されている。有機防止剤は、使用される場合、0.1〜20重量%、例えば0.5〜10重量%などの範囲の量で本コーティング用組成物中に存在していてもよく、重量百分率は、ブレンドされた組成物の総固体重量に基づく。
【0038】
本コーティング剤はまた、1種または複数種の触媒を含んでもよい。当業者によって決定される、任意の適した触媒が使用され得るが、アミン触媒が特に適切である。例には、Air ProductsからANCAMINE K54として市販されている2,4,6−トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの第三級アミン触媒が含まれる。他の適切な触媒には、イミダゾール、ルイス酸およびレゾルシノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
上記のとおり、本発明のコーティング用組成物は、液状コーティング用組成物(それらの例には、水性のもしくは水をベースとするコーティング用組成物および溶剤をベースとするコーティング用組成物、ならびに電着可能なコーティング用組成物が含まれる)であっても、粒子形態の共反応性固体形態のもの(すなわち、粉末コーティング用組成物)であってもよい。形態にかかわらず、本発明のコーティング用組成物は、着色されていても、透明であってもよく、そして、単独で使用されても、プライマー、ベースコートもしくはトップコートとして組み合わされて使用されてもよい。本発明のある特定の実施形態は、以下により詳細に議論されているとおり、耐食性プライマーおよび/または予備処理コーティング用組成物を対象とする。示されているとおり、本発明のある特定の実施形態は、「洗浄用プライマー」および/または金属基材予備処理コーティング用組成物などの、金属基材プライマーコーティング用組成物を対象とする。本明細書で使用する場合、用語「プライマーコーティング用組成物」は、コーティング用組成物であって、それに由来するアンダーコーティングを基材上に堆積させることができる、コーティング用組成物を指す。一部の産業または基材では、プライマーは、保護用または装飾用コーティング系の施用のための表面を調製するために施用される。他の産業または基材では、別のコーティング層はプライマーの上に施用されない。例えば、外部曝露が限られているかまたはそれがない基材表面は、上部に他の層を有していないプライマーを有してよい。本明細書で使用する場合、用語「洗浄用プライマー」とは、先により詳細に記載したようなアルコキシシランなどの、接着促進構成成分を含む、プライマーコーティング用組成物を指す。本明細書で使用する場合、用語「予備処理コーティング用組成物」とは、その後に施用されるコーティング層の耐食性を改善するまたは接着性を高めるために、むき出しの基材に非常に薄いフィルム厚で施用することができるコーティング用組成物を指す。
【0040】
本発明のコーティング用組成物がプライマーとして使用される場合、一部の実施形態では、モノコートのトップコート、または着色されたベースコーティング用組成物とクリアコート用組成物との組合せ、すなわちカラープラスクリア系などの保護用および/または装飾用コーティング系は、プライマーの少なくとも一部分に施用することができる。その結果、本発明はまた、本発明のコーティング用組成物に由来する堆積した少なくとも一つのコーティング層を含む、複数構成成分系複合コーティングを対象とする。ある特定の実施形態では、本発明の複数構成成分系複合コーティング用組成物は、ベースコート(多くの場合、着色されたカラーコート)として働くベースコートフィルム形成性組成物、およびトップコート(多くの場合、透明またはクリアコート)として働くベースコートの上に施用されるフィルム形成性組成物を含む。
【0041】
本発明のこれらの実施形態では、コーティング用組成物であって、それに由来するベースコートおよび/またはトップコートを堆積させる、コーティング用組成物は、例えば、とりわけ、自動車向けOEMコーティング用組成物、自動車の再仕上げ向けコーティング用組成物、産業向けコーティング用組成物、建築向けコーティング用組成物、コイル向けコーティング用組成物、および航空宇宙用コーティング組成物を配合する当業者に公知の慣用的なベースコートまたはトップコート用コーティング組成物のいずれかなどを含むことができる。このような組成物は、通常、例えば、アクリルポリマー、ポリエステルおよび/またはポリウレタンを含むことができるフィルム形成性樹脂を含む。例示的なフィルム形成性樹脂は、その全内容が参考として本明細書に援用される、米国特許第4,220,679号の第2欄24行目から第4欄40行目まで、および米国特許第4,403,003号、米国特許第4,147,679号、および米国特許第5,071,904号に開示されている。
【0042】
このような組成物によりコーティングすることができる金属基材には、例えば、鋼(とりわけ、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼、溶融亜鉛めっき鋼を含む)、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛−アルミニウム合金、クラッドアルミニウムおよびアルミニウムめっき鋼板を含む基材が含まれる。このような組成物によりコーティングすることができる基材はまた、該基材がアルミニウム基材により組み立てられた溶融亜鉛めっき鋼などの、一緒に組み立てられている2種または2種超の金属基材の組合せであり得るという点で、1種超の金属または金属合金を含み得る。基材は、視覚効果および/もしくは色彩効果、または耐食性などのある性能強化を付与するなどのために、ある手法で既に処理されているものであり得る。
【0043】
したがって、本発明は、本発明のコーティング剤により少なくとも一部がコーティングされている基材をさらに対象とする。この基材は、乗り物の一部を含んでもよい。「乗り物」は、本明細書においてその最も広い意味で使用されており、航空機、ヘリコプター、自動車、トラック、バス、バン、ゴルフカート、オートバイ、自転車、鉄道車両、戦車などであるが、これらに限定されないすべてのタイプの乗り物を含む。本発明によりコーティングされる乗り物の一部は、コーティング剤が使用される理由に応じて異なり得ることが理解される。
【0044】
例えば、金属基材プライマーコーティング用組成物および/または金属基材予備処理コーティング用組成物であり得る、本発明のコーティング用組成物は、むき出しの金属に施用されてもよい。「むき出し」とは、例えば、慣用的なリン酸化浴、重金属リンス液などの、任意の予備処理用組成物により処理されていない、バージン材料を意味する。
さらに、本発明のコーティング用組成物によりコーティングされているむき出しの金属基材は、他に処理され、そして/またはその表面の残りの上にコーティングされている基材のカットエッジであってもよい。ある特定の実施形態では、この基材は、コーティングの施用および/または予備処理の前に研磨されることがある。「研磨される」とは、機械的作用によって基材の表面を部分的に摩滅させることを意味する。これは、紙やすり、SCOTCHBRITEパッド、またはラビングコンパウンドもしくはポリッシングコンパウンドなどの研磨用材料のスラリーなどの研磨用材料を使用して、手作業または機械によるものであり得る。
【0045】
プライマーおよび/また金属の予備処理として本発明のコーティング用組成物を施用する前に、コーティングされる金属基材をまず清浄して、グリース、汚れまたは他の異物を除去してもよい。慣用的な清浄手順および材料を使用することができる。これらの材料は、例えば、弱または強アルカリ性清浄剤(例えば、市販されているものなど)を含むことができる。例には、BASE Phase Non−PhosおよびBASE Phase#6が含まれ、これらのどちらも、PPG Industries,Pretreatment and Specialty Productsから入手可能である。他の例には、ALK−660およびED−500が含まれ、これらのどちらも、PPG Industries,Aerospace Coatings Productsから入手可能である。このような清浄剤の施用の後および/またはその前に、水によるリンスを行ってよい。
【0046】
次に、この金属表面は、アルカリ性清浄剤による清浄後および本コーティング用組成物との接触前に、酸性水溶液によりリンスされてもよい。適切なリンス溶液の例には、市販の希硝酸溶液などの、弱または強酸性清浄剤が含まれる。例には、AC−5、AC−12およびEAC−8が含まれ、これらはすべて、PPG Industries,Aerospace Coatings Productsから入手可能である。清浄/研磨用溶液の組合せを使用することもできる。
【0047】
本発明のコーティング用組成物は、様々な方法のいずれかによって調製することができる。例えば、ある特定の実施形態では、耐食性粒子は、それらがエポキシ官能性樹脂中で安定な分散液を形成する限り、エポキシ官能性樹脂を含むコーティング用組成物の配合中、任意の時間に加えることができる。本発明のコーティング用組成物は、まず、エポキシ官能性樹脂、耐食性粒子、顔料、充填剤、ならびに有機溶剤および/または水などの希釈剤を混合し、この混合物を1000〜2000RPMの高速分散機により10〜30分間、分散させ、次に、この分散液を塗料用ミルに通して、粒度ゲージを用いて確認した場合、5プラスの粉砕微粉度を達成することにより調製することができる。
【0048】
本発明のコーティング用組成物は、含浸または浸漬、スプレー、断続的スプレー、含浸とその後のスプレー、スプレーとその後の含浸、ブラシがけなどの公知の施用技法により、またはロールコーティングにより基材に施用することができる。通常のスプレー技法、ならびに空気スプレー用および静電スプレー用機器を手動または自動方法のどちらかで使用することができる。本発明のコーティング用組成物は、木材、ガラス、布、プラスチック、発泡体(エラストマー基材などを含む)などの様々な基材に施用することができるが、多くの場合、これらの基材は上で議論した金属などの金属を含む。
【0049】
本発明のコーティング用組成物のある特定の実施形態では、基材への組成物の施用後、加熱によりまたは空気乾燥期間により、フィルムが、該フィルムから溶媒、すなわち有機溶剤および/または水を追い出すことにより、基材の表面に形成される。適切な乾燥条件は、具体的な組成物および/または施用に依存するが、一部の例では、約70〜250°F(27〜121℃)の温度で約1〜5分間の乾燥時間で十分である。所望の場合、本組成物の一つより多くのコーティング層が施用されてもよい。ある特定の実施形態では、二つまたは二つ超のコーティング層が「ウエットオンウエット」施用され、この場合、コーティング剤の少なくとも一つは、本発明のコーティング剤を含む。通常、コート間では、先に施用されたコートに光があてられる。すなわち、所望量の時間、周囲条件に曝露される。ある特定の実施形態では、コーティング剤の厚さは、0.1〜3ミル(2.5〜75ミクロン)、例えば0.2〜2.0ミル(5.0〜50ミクロン)などである。次に、本コーティング用組成物は加熱されてもよい。硬化作業では、溶媒は除去され、存在する場合、組成物の架橋可能な構成成分が架橋される。加熱および硬化作業は、時として、70〜250°F(27〜121℃)の範囲の温度で行われるが、必要な場合、より低いまたはより高い温度を使用してもよい。先に示したとおり、本発明のコーティング剤は、熱を加えることも乾燥工程もなしに、すなわち「周囲条件」で硬化することもできる。周囲条件下で硬化する能力が、本コーティング剤の利点である。
【0050】
多くの産業における幅広い用途を有するコイル向けコーティング剤も、本発明の範囲内にある。
【0051】
本明細書で使用する場合、特に明確に指定しない限り、値、範囲、量またはパーセンテージを表す数字などのすべての数字は、「約」という用語が明確に現れていない場合でさえも、この語が前に置かれている場合と同様に読むことができる。同様に、本明細書において記載されている任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むことが意図される。単数は複数を包含し、その逆もまた同じである。例えば、本明細書において、「一つの(an)」エポキシ官能性樹脂、「一つの(a)」耐食性粒子および「一つの(a)」架橋剤に対して言及がなされているが、これらおよび本明細書に記載されている任意の他の構成成分のそれぞれの一つまたは複数を使用することができる。本明細書で使用する場合、用語「ポリマー」とは、オリゴマー、およびホモポリマーとコポリマーの両方を指し、接頭語「ポリ」とは、二つまたはそれより多いことを指す。含むおよび同様の用語は、含むが限定されないことを意味する。範囲が与えられている場合、それらの範囲の任意の端点および/またはそれらの範囲内の数を、本発明の範囲と組み合わせることができる。
【実施例】
【0052】
次の実施例は、本発明を例示することが意図されており、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0053】
表1は、実施例の調製において使用した材料の説明を提示している。
【表1】
【0054】
すべての実施例について、各材料に対して示されている量は、グラム重量である。
【0055】
コーティング剤は、表2において特定されている材料を使用して、以下に説明されているとおり調製した。
【表2-1】
【表2-2】
【0056】
コーティング剤実施例の基剤構成成分は、高速分散を使用して組成物の材料を一緒にブレンドし、次いで、水平式ビーズミルで粉砕することにより調製した。最終の基剤構成成分は、ISO1524に準拠したグラインドゲージによって測定すると、10ミクロン未満の磨砕度を有した。コーティング剤実施例の活性化剤構成成分は、適度な撹拌を使用して、組成物の材料を一つに混合することにより調製した。試験片への施用前に、両方の構成成分を最低1日間、静置した。
【0057】
基剤および活性化剤の構成成分を基剤2単位と活性化剤2単位の体積比で一つに混合した。構成成分は均一になるまで手で混合した。混合した生成物の施用前に、誘導時間を必要としなかった。
試験パネルの調製
【0058】
混合したコーティング剤実施例を、3M製の緑色のScotchbrite(登録商標)を使用して研磨したクラッドおよび非クラッド2024−T3アルミニウム合金パネルに施用した。調製手順は、溶剤によりパネルを脱脂し、次いで、アルカリ性脱脂用溶液中に浸漬させたScotchbriteを使用して研磨することを含んだ。次に、混合したコーティング剤実施例の施用前の溶剤による拭き取りの前に、このパネルを流水下でリンスして乾燥させた。
【0059】
重力送り空気噴霧スプレーガンを使用して、混合したコーティング剤実施例を、調製した試験パネルに施用し、10+/−2ミクロンの最終(乾燥フィルム)フィルム厚を達成した。
実施した試験
【0060】
実施した試験は、試験方法ISO2409に準拠した乾燥および湿潤接着性、ならびに試験方法ISO3665に準拠した糸状腐食試験を含む。
結果の評価
【0061】
典型的な結果が以下の表に示されている。数値評価は、湿潤および乾燥接着性試験に関するISO2409で定義されている。糸状腐食の等級は、各パネル上に存在している最長のフィラメントとして記録し、ミリメートルで測定する。各試験は三連で実施し、各々個々の試験パネルに関する結果は、以下の表にダッシュにより分けられている。
【表3】
【0062】
本発明のコーティング剤は、クラッドアルミニウム合金に対して良好な接着特性を実証しており、初期には100%の接着性を有し、かつ水への曝露後は95%または95%超の接着性を有することに留意されたい。さらに、本発明のコーティング剤は、クラッドとむき出しのアルミニウム合金の両方の上で良好な糸状腐食結果を実証し、長さが1.9mmを超える腐食フィラメントは存在しなかった。
試験パネルの調製II
【0063】
混合したコーティング剤実施例を、AMS−3095Aの項目4.3.2において概説されているとおりに調製した表面を有する、クラッドおよび非クラッド2024−T3アルミニウム合金パネルに施用した。重力送り空気噴霧スプレーガンを使用して、混合したコーティング剤実施例を、調製した試験パネルに施用し、10+/−2ミクロンの最終(乾燥フィルム)フィルム厚を達成した。コーティング剤実施例を含有する試験パネルは、4〜24時間、周囲条件で乾燥させ、次に、PPG Industries,Inc.から入手可能なDESOPRIME CF7065クロムフリープライマーをパネルに施用し、製造業者の指示書に従って乾燥させた。適切に乾燥させた後、PPG Industries,Inc.から入手可能なDESOTHANE HS Topcoat Grey CA8800 B00707をパネルに施用し、製造業者の指示書に従って乾燥させた。
実施した試験II
【0064】
多層コーティングパネル上での試験は、AMS3095Aに従って行い、乾燥および湿潤接着性、裏面衝撃、円錐マンドレル屈曲性、円筒マンドレル屈曲性、流体抵抗、糸状腐食および塩水スプレー腐食を含んだ。
試験結果の評価II
【0065】
典型的な結果が以下の表に示されている。試験方法およびパラメータのさらなる説明は、AMS3095Aにおいて入手可能である。すべての結果は、特に示さない限り、2024T3クラッドについてのものである。
【表4】
【0066】
本発明のコーティング剤は、市販のプライマーおよびトップコートを有する多層コーティング系において使用した場合、AMS3095A航空宇宙産業用性能の規格において概説されているこれらの試験に一致した良好な性能特性を実証したことに留意されたい。
【国際調査報告】