特表2017-518080(P2017-518080A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-518080特異抗原を有する寛容性樹状細胞の生産方法およびその利用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-518080(P2017-518080A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】特異抗原を有する寛容性樹状細胞の生産方法およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0784 20100101AFI20170609BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170609BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20170609BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20170609BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20170609BHJP
   A61K 35/51 20150101ALI20170609BHJP
   A61K 35/34 20150101ALI20170609BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20170609BHJP
【FI】
   C12N5/0784
   A61P37/02
   A61K35/15
   A61K39/00 G
   A61K35/28
   A61K35/51
   A61K35/15 A
   A61K35/34
   A61K35/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-516225(P2017-516225)
(86)(22)【出願日】2015年6月5日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月6日
(86)【国際出願番号】IB2015054267
(87)【国際公開番号】WO2015186105
(87)【国際公開日】20151210
(31)【優先権主張番号】62/008,319
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516365541
【氏名又は名称】ポンティフィカ ウニベルシダッド カトリカ デ チリ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リャノ ムニョス,キャロライナ
(72)【発明者】
【氏名】カレルギス パラ,アレクシス マイクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェガ タピア,ファビアン アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】トーレス バエサ,アンディ イゴール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA92X
4B065AA94X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB19
4B065BB32
4B065BB40
4B065BC50
4B065BD39
4B065CA44
4C085AA03
4C085BA01
4C085CC01
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB34
4C087BB44
4C087BB47
4C087BB48
4C087BB59
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB07
(57)【要約】
本発明は、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の生産方法に関し、上記方法は、(a)サイトカインIL−4およびGM−CSFを用いて、動物血清を含まない培地中で樹状細胞の前駆体を培養して、樹状細胞に分化させる工程と、(b)アポトーシス細胞を生産する工程と、(c)工程(b)で得られた樹状細胞を、抗炎症活性を有する化合物の存在下で培養する工程と、(d)樹状細胞によるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスを刺激するために、工程(d)から得られた樹状細胞と、工程(c)から得られたアポトーシス細胞とを共培養する工程と、(e)表現型評価に基づく特定によって、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の生産を判定する工程とを含んでいる。本発明はまた、上記方法によって生産されたtolDC細胞、および全身性エリテマトーデスの治療に適した薬剤の生産における特異抗原を有する上記tolDCの使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の生産方法であって、
(a)サイトカインIL−4およびGM−CSFを用いて、動物血清を含まない培地において、樹状細胞前駆体を培養して、樹状細胞に分化させる工程と、
(b)アポトーシス細胞を生産する工程と、
(c)工程a)で得られた樹状細胞を、抗炎症活性を有する化合物の存在下で培養する工程と、
(d)樹状細胞によるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスを促進するために、工程c)の樹状細胞と、工程b)のアポトーシス細胞とを共培養する工程と、
(e)特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)が得られたことを、表現型の特定による特定を介して判定する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程a)の上記樹状細胞前駆体は、単球、骨髄前駆体から選択され、あるいは末梢血または臍帯血から直接選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
30〜45℃および1〜10%のCOの条件下で、前駆体、並びにサイトカインIL−4およびGM−CSFを培養する場合に分化が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程c)の上記アポトーシス細胞は、紫外線B(UV−B)放射、スタウロスポリン、メトトレキサートから選択された化学物質の存在、FAS−FASリガンド相互作用等の特異受容体の活性化、またはヘプタクロルもしくはロテノンを用いたミトコンドリア電子伝達の阻害から選択されたアポトーシス刺激に細胞を曝すことによって生産されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アポトーシス細胞の由来となる上記細胞は、血液細胞、筋肉細胞、表皮細胞、上皮細胞、幹細胞、またはヒト細胞株であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
血液細胞は、末梢血リンパ球、血小板、好中球、または単球であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程d)の抗炎症活性を有する化合物の存在下での樹状細胞の培養が、5〜48時間行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記抗炎症活性を有する化合物が、ロシグリタゾン(RZG)およびデキサメタゾン(DEXA)、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
5〜30μMのロシグリタゾンの存在下、および0.5〜5μMのデキサメタゾンの存在下で上記樹状細胞が培養されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程e)の、樹状細胞とアポトーシス細胞との上記共培養が、5〜20μg/mlのDNA量として表される、アポトーシス細胞の量を考慮して行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
上記共培養が、動物血清を含まない培地で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
樹状細胞とアポトーシス細胞との上記共培養が、5〜48時間行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
i)免疫原性成熟DCと比べて少なくなければならないサイトカインIL−6およびIL−12p70の生産と、ii)表面マーカーの発現がない、または免疫原性成熟DCと比べて少ないこととを評価することによって、工程f)において、tolDCの特定が行われ、上記表面マーカーが、CD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DR、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
IL−6およびIL−12p70の生産の評価、並びにCD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DRまたはそれらの組み合わせの表面マーカーの発現が、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、およびRT−PCRを用いたメッセンジャーRNAの転写レベルから選択された技術を用いて行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の方法を用いて得られる、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項16】
上記寛容性樹状細胞が、単球、骨髄前駆体に由来し、あるいは末梢血または臍帯血から直接的に得られることを特徴とする、請求項15に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項17】
上記特異抗原が自己抗原であることを特徴とする、請求項15に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項18】
上記特異抗原がアポトーシス細胞に由来することを特徴とする、請求項15に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項19】
上記アポトーシス細胞がアポトーシス刺激を受けた細胞に由来することを特徴とする、請求項15に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項20】
上記細胞が受ける上記アポトーシス刺激が、紫外線B(UV−B)放射、スタウロスポリン、メトトレキサートから選択された化学物質の存在、FAS−Fasリガンド相互作用等の特異受容体の活性化、またはヘプタクロルもしくはロテノンを用いたミトコンドリア電子伝達の阻害から選択されることを特徴とする、請求項19に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項21】
アポトーシス細胞が、血液細胞、筋肉細胞、表皮細胞、上皮細胞、幹細胞、またはヒト細胞株に由来することを特徴とする、請求項19に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項22】
上記血液細胞は、末梢血リンパ球、血小板、好中球、または単球であることを特徴とする、請求項21に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項23】
上記細胞が、表現型評価を用いて特定されることを特徴とする、請求項15に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項24】
i)免疫原性成熟DCと比べて少なくなければならないサイトカインIL−6およびIL−12p70の生産と、ii)表面マーカーの発現がない、または免疫原性成熟DCと比べて少ないこととを評価することによって、tolDCの特定が行われ、上記表面マーカーが、CD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DR、またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項23に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項25】
IL−6およびIL−12p70の生産の評価、およびCD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DRまたはそれらの組み合わせの表面マーカーの発現が、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、およびRT−PCRを用いたメッセンジャーRNAの転写レベルから選択された技術を用いて行われることを特徴とする、請求項24に記載の特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)。
【請求項26】
全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するための療法の構築における、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の使用。
【請求項27】
全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に有用な薬剤の生産における、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は自己免疫疾患、特に全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に用いるために構成された特異抗原に関する寛容性樹状細胞の生産に関する。
【0002】
〔技術水準〕
全身性エリテマトーデス(SLE)は、100,000人当たり124人の有病率を有する、主に出産適齢期の女性が患う原因不明の慢性自己免疫疾患である。臨床的な観点から見ると、ループス(lupus)は、特に、腎臓、心臓、肺、皮膚、筋骨格系、および血液学系を含む多数の器官に影響する。また、ループスは、寛解期と交互に起こる再活性化または発症という特徴を有する予測不可能な臨床的進行を示す。過去50年間におけるSLEの死亡率は大きく減少したが、20歳でSLEにかかった患者は、ループス自体、または関連する合併症により、35歳までに死亡する確率が15%ある。SLEは高い総罹患率も示す。例えば、患者の生存および生活の質への影響に関して、最も関連する合併症の1つは、ループス患者の50%以下に影響するループス腎炎(LN)である。この症状の治療の効果を最大化するための多大な努力にもかかわらず、いまだに10〜30%のLN患者が末期腎不全にかかり、その結果、透析および/または腎臓移植を必要とすることとなる。さらに、ループス患者は、一般的な集団よりも2〜5倍高い死亡率を有し、23%以下の就労不能を示し、出産適齢期の女性の場合は、妊娠が困難になり、健康な女性に比べて妊娠中の罹患率‐死亡率が高くなる。
【0003】
さらに、FDAは2011年に30年振りにSLE治療の新薬(ベリムマブ)を承認した。それにもかかわらず、上記新薬、およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)、シクロホスファミド、およびステロイドを含むSLE用のその他の通常使用される薬は、日和見感染等の重大な合併症に関する非治癒的かつ免疫抑制的な非特異治療である。最近、ループス腎炎におけるMMFの使用を研究しているプロジェクトALMS(NCT00377637)の研究チームが、MMF薬とアザチオプリンとを比較した上記研究の維持期の結果を公表した。上記研究によると、アザチオプリンを使用した33.3%の患者、およびMMFを使用した23.5%の患者が重篤な副作用を示し、それによって、それぞれ39.6%の患者、および25.2%の患者が研究から辞退することとなったことを示している。リツキシマブ等の他の自己免疫疾患における使用が承認された他の生物学的薬剤は、ループスの制御された臨床研究における有効性を示さず、従来の免疫抑制剤と同様に、日和見感染の発現に寄与し得る。
【0004】
本発明は、SLEの免疫療法のためのアポトーシス細胞に由来する抗原に特異的な自己樹状細胞(DC)を取得する方法にある。従来技術を調査すると、免疫学的疾患を治療するための樹状細胞の提供および使用に関するいくつかの文献が発見された。研究が行われた本技術に最も類似する文献は特許公開WO2001085207であり、当該文献においては、T細胞アネルギーの誘導を介して細胞性応答を刺激するために、アポトーシス細胞を使用してDC細胞の能力を低下させることが提案されている。また、上記文献は、DCによるアポトーシス抗原の提示を調整するための多様な選択肢、およびDCの成熟化因子の使用を含んでいる。この場合、アポトーシス細胞は、樹状細胞の機能における調整活動を働かせる細胞である。上記文献には、アポトーシス細胞と全身性エリテマトーデスとの関係は記載されていない。アポトーシス細胞の使用自体がDCの機能の直接的な調整を意図しておらず、アポトーシス細胞の使用が、T細胞アネルギーを誘導することが可能なDCによってどのようにアポトーシス抗原がもたらされるかということに関係していないため、本発明におけるアポトーシス細胞の使用目的は異なっている。アポトーシス細胞の使用目的は、本発明のDCが、アポトーシス細胞に含まれる抗原に対するT細胞の反応を調整することのみに特異的であることを実現することであり、このことは全身性エリテマトーデスの病理において関連する役割を有している。さらに、実験中、アポトーシス細胞がDCの成熟を誘導しない、つまり、アポトーシス細胞は、DCの免疫原性を調整するという目的で使用されないため、アポトーシス細胞は免疫原性能力を向上させないということを示すための評価が行われた。DCの機能の調整は、ロシグリタゾン(RGZ)およびデキサメタゾン(DEXA)を使用して達成される。
【0005】
Carreno et al.による文献“Induction of Tolerogenic Dendritic Cells by NF-κB Blockade and Fcg Receptor Modulation”には、多発性硬化症のマウスモデルの治療のためにロシグリタゾンおよびアンドログラホリドを用いて処置したDCを使用することが記載されており、抗原が未知であるループス等の他の自己免疫疾患のためにDCを使用できることが示唆されている。上記の薬剤を用いて直接的に動物を処置し、ロシグリタゾンおよびアンドログラホリドを用いて寛容性DC(tolDC)を生成するためのプロトコルが記載されている。本発明においては、ロシグリタゾンおよびデキサメタゾンを共に用いて、寛容性DCを生成することが提案されているが、このことはCarreno et al.の文献には開示されていない。また、上記の文献は、NF−κB阻害薬、ロシグリタゾン、およびアンドログラホリドを用いて(本発明において提案されている上記の薬剤を用いて処置されたDCを用いるのではなく)直接的にマウスを治療することを提案している。処置されたDCを用いて多発性硬化症のマウスモデルの治療が行われている。寛容性DCを用いたSLE治療の可能性に対する単なる言及はわずかなものであり、上記の細胞から抗原を認識するTリンパ球におけるアネルギーを誘導するために、アポトーシス細胞を含むという考えを含んでいない。さらに、ループス抗原は未知であることが明確に記載され、抗原源としてアポトーシス細胞を使用することができることは全く提案されていない。さらに、アポトーシス細胞が障害となる可能性すら示されている。
【0006】
国際特許出願公開公報WO2012160200は、寛容性特性を有する成熟DCを生成するために、ステロイドおよびビタミンDを使用することを提案している。ステロイド中での培養時間は4日間で、これは「成熟DCを得るため」と明確に示してある。その後、上記の細胞は、炎症誘発性サイトカインを含む環境において培養され、上記環境においては、成熟DCは、その表面上のCD14の存在によって特定され、寛容性細胞は、MERTKの発現によって特定される。本発明は、デキサメタゾン(グルココルチコイド)およびロシグリタゾン(チアゾリジンジオン)を用いて、未成熟DC(iDC)を得ることを提案しており、このことは本特許出願に記載されており、ビタミンDに類似していない。上記の細胞が、ロシグリタゾンおよびデキサメタゾンと共に培養されるため、本発明の方法は異なっている。上記文献においては、ある特異抗原における治療のために、DCが特定の特異性を有するべきであることが全く示唆も提案もされていない。さらに、SLEの場合、抗原源としてアポトーシス細胞を使用可能であることが全く示唆されていない。本発明のDCはCD14(−)であり、すなわち、異なる方法によって生じた異なる生成物に関するものであるため、MERTKは発現されず、MERTKの存在は評価されない。
【0007】
DCに基づく免疫療法の創出については、この種の療法の特徴の1つが、外用剤に対する効果的な反応に影響することなく、自己抗原に対する反応を低減させることであるため、抗原特異性が関連している。それにもかかわらず、現在、SLEの免疫療法の発展を困難にしている主な障害の1つは、この病気の進行の原因となる特異自己抗原に関する知識が不足していることである。ループスを患っている患者は、アポトーシス過程において生成される細胞残屑の除去が不完全であるため、細胞残屑が自己抗原源であると仮定される。したがって、本発明は、寛容性DC(tolDC)の活性を、自己反応性リンパ球のみに向けるために、自己抗原源としてアポトーシス細胞を使用することを提案している(図1)。
【0008】
〔図面の説明〕
図1〕樹状細胞の表現型。低免疫原性の未成熟細胞は、LPS等の炎症誘発性刺激の存在下で成熟し、Tリンパ球を活性化する能力が向上した表現型が得られ、表面マーカーCD80、CD83、CD86およびCD40の発現の増加が見られる。しかし、未成熟細胞が抗炎症性刺激を受けた場合、未成熟細胞は、免疫原性を変化させることなく、Tリンパ球における寛容性を誘導する寛容性細胞に変化し得る。
【0009】
図2〕アポトーシス細胞を用いてパルスした未成熟樹状細胞(iDC)および寛容性細胞(tolDC)を生成するための実験計画。
【0010】
図3〕UV−B照射を用いたアポトーシス細胞の生成。A:UV−B光が照射されていないリンパ球のドットプロットを示す(基準)。B:24時間、スタウロスポリン(Novex、カールズバッド、CA、USA)(1μM)を用いて処置(+アポトーシスに対するコントロール)。C:56℃で50分間処置(+ネクローシスのコントロール)。D:UV−B放射に1時間半曝す。E:コントロール個体をUV−B放射に1.5時間曝した後、PIおよびAnex−V−FITCを用いて処置した各象限のリンパ球の分布率。
【0011】
図4〕アポトーシス細胞を取り込むDCの能力を判定するための実験計画。
【0012】
図5〕単球由来DCへのアポトーシス細胞の結合のフローサイトメトリー分析。A:細胞の自家蛍光ヒストグラムおよびCD11c+集団の判定。B:CFSE(FITC+)の陽性信号を判定するヒストグラム。C:コントロール個体のCD11c+集団。D:コントロール個体からの細胞におけるCD11c+集団から得たFITC+集団のヒストグラム。
【0013】
図6〕自己アポトーシス細胞の存在下における、SLE患者から得た単球由来DCによるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスの共焦点顕微鏡検査。図の左側のパネルにおいては、生細胞のゴルジ装置と共に、BODIPY TR Ceramideで染色されたDCが見られる。中央のパネルは、CFSEで染色されたアポトーシス細胞を示している。右側のパネルは、DCによるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスを示す前画像の重複部分(白色矢印)を示している。
【0014】
図7〕S. typhimurium(1μg/ml)リポ多糖(LPS)を用いて処置し、RGZ(10μM)およびRGZ+Dexa(1μM)存在下において、自己アポトーシス細胞(12.5μg/ml(DNA量)、UV−B放射によって生成される)と共培養した単球由来のヒト樹状細胞における表面マーカーCD40、CD80、CD83、CD86およびHLA−DRの発現(n=14LES患者)。アスタリスクは、LPSによる刺激と、アポトーシス細胞と共培養され、LPSで刺激された、RGZおよびDEXAを用いて処置したDCとを比較した時のP<0.05(フリードマン検定)を示している。ラインは、賦形剤を用いて処置したDCに対応する値を示している。Apocell:アポトーシス細胞、DEXA:デキサメタゾン、RGZ:ロシグリタゾン。
【0015】
図8〕S. typhimurium(1μg/ml)リポ多糖(LPS)を用いて処置し、RGZ(10μM)およびDexa(1μM)存在下において、自己アポトーシス細胞(12.5μg/ml(DNA量)、UV−B放射によって生成される)と共培養した単球由来のSLE患者の樹状細胞の培養上清におけるサイトカインIL−6およびIL−12p70の分泌プロファイル。図8は、上記処置の両方を行ったIL−6およびIL−12p70の分泌の著しい減少を示している。IL−6は、処置を行っていない条件と比較した「増加倍率」として示される。p<0.05。ウィルコクソン検定。
【0016】
図9〕SLE患者のDCに関するXTT細胞生存率アッセイ。図9は、賦形剤(VEH)のみを受けた未処置のDCと比較した時、DCの細胞生存率は、免疫抑制剤(n=6)を用いた処置の存在下で変化しないことを示している。UV−B放射によって生成されたアポトーシス細胞(Apocell)は、生存率のネガティブコントロールとして用いられた。
【0017】
図10〕実験室で24時間培養されたDCの上清で処置した後の、CD69およびCD71マーカーを有する末梢血リンパ球(PBL)の活性判定。図10は、各条件におけるCD69+細胞およびCD71+細胞の割合を示している。n=1健常コントロール。ポジティブコントロール:コンカナバリンA(Con−A、10μL/ml)を用いて24時間処置した細胞、SN:上清、Apocell:アポトーシス細胞。
【0018】
図11〕混合リンパ球反応アッセイの実験計画。iDCは未成熟樹状細胞に対応し、mDCは成熟樹状細胞に対応し、tolDCは寛容性樹状細胞に対応する。
【0019】
図12〕同種異系Tリンパ球を用いた混合リンパ球反応におけるtolDCの機能アッセイ。tolDCとの共培養5日目におけるCD4+Tリンパ球のCD25の発現(図A)、CD71の発現(図B)、および増殖によるCFSEプローブの希釈度が定量化された。グラフは、共培養5日目におけるCD4+CD25+およびCD4+CD71+Tリンパ球の割合を表している(n=1)。αCD3+αCD28はTリンパ球活性のポジティブコントロールである。R+D:デキサメタゾンおよびロシグリタゾン。
【0020】
図13〕同種異系Tリンパ球を用いた混合リンパ球反応におけるtolDCの機能アッセイ。tolDCとの共培養5日目におけるCD4+Tリンパ球のCD71の発現(図A)、および増殖によるCFSEプローブの希釈度(図B)が定量化された。グラフは、共培養5日目におけるCD4+CD71+Tリンパ球、および増殖(CD4+CDFSElow)の割合を示している(n=1)。UT:未処置、R/D:デキサメタゾンおよびロシグリタゾン。
【0021】
〔発明の概要〕
本発明は、自己器官に対する免疫系の寛容性を回復させる特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)、自己器官に対する免疫系の寛容性を回復させる特異的方法、特異抗原を用いて上記tolDCを生産する方法、全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するための療法の構築における特異抗原を有する上記tolDCの使用から成る。
【0022】
〔発明の説明〕
本発明は3つの主な態様について考察している。第1の態様においては、本発明は、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の生産方法に対応する。第2の態様においては、本発明は、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)を必要とする患者に当該寛容性樹状細胞を投与した時の、自己器官に対する免疫系の寛容性を回復させる上記寛容性樹状細胞に対応する。最後に、本発明の第3の態様は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療における特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の使用に対応する。
【0023】
本発明の第1の態様の実施形態は、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の生産方法に対応する。特定の実施形態においては、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の上記生産方法は、
(a)サイトカインIL−4およびGM−CSFを用いて、動物血清を含まない培地において、生体外で樹状細胞前駆体を培養して、当該樹状細胞前駆体を樹状細胞に分化させる工程と、
(b)アポトーシス細胞を生産する工程と、
(c)工程a)で得られた樹状細胞を、抗炎症活性を有する化合物の存在下で培養する工程と、
(d)樹状細胞によるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスを抑えるように、工程c)の樹状細胞と、工程b)から得られたアポトーシス細胞とを共培養する工程と、
(e)特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の獲得を、表現型の評価の特定を介して判定する工程とを含んでいる。
【0024】
特定の実施形態においては、工程a)の上記樹状細胞前駆体は、単球、骨髄前駆体から選択され、あるいは末梢血または臍帯血から直接選択される。
【0025】
他の特定の実施形態においては、30〜45℃および1〜10%のCOの条件下(より具体的には、37℃で5%のCO)で、前駆体、並びにサイトカインIL−4およびGM−CSFを培養する場合に、分化が行われる。
【0026】
他の実施形態においては、工程c)の上記アポトーシス細胞は、紫外線B(UV−B)放射、化学物質(スタウロスポリン、メトトレキサート)の存在、特異受容体の活性化(Fas−Fasリガンド相互作用)、またはミトコンドリア電子伝達の阻害(ヘプタクロル、ロテノン)から選択されたアポトーシス刺激に細胞をさらすことによって生成される。他の実施形態においては、アポトーシス細胞が生じる上記細胞は、血液細胞、筋肉細胞、表皮細胞、上皮細胞、幹細胞、またはヒト細胞株に対応する。特定の実施形態においては、血液細胞は、末梢血リンパ球、血小板、好中球、または単球である。より具体的な実施形態においては、血液細胞は末梢血リンパ球である。
【0027】
他の実施形態においては、工程d)の抗炎症活性を有する化合物の存在下での樹状細胞の培養が、5〜48時間行われる。より具体的な実施形態においては、上記抗炎症活性を有する化合物が、ロシグリタゾン(RGZ)、デキサメタゾン(DEXA)、またはそれらの組み合わせから選択される。より具体的な実施形態においては、5〜30μMのRGZの存在下、および0.5〜5μMのDEXAの存在下で樹状細胞が培養される。
【0028】
特定の実施形態においては、工程e)の、樹状細胞とアポトーシス細胞との共培養が、5〜20μg/mlのDNA量として表される、アポトーシス細胞の量を考慮して行われる。このために、AIM−V(GIBCO(登録商標) AIM V(登録商標) Medium Grand Island、NY、USA)等の、動物血清を含まない培地が使用される。
【0029】
他の実施形態においては、樹状細胞とアポトーシス細胞との共培養が、5〜48時間行われる。
【0030】
本発明の他の実施形態においては、i)成熟免疫原性DCと比べて減少するはずのサイトカインIL−6およびIL−12p70の生産と、ii)表面マーカーの発現がない、または成熟免疫原性DCと比べて少ないことを評価することによって、工程f)のtolDCの特定が行われ、上記表面マーカーが、CD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DR、またはそれらの組み合わせから選択される。より具体的な実施形態においては、IL−6およびIL−12p70の生産の評価、および表面マーカーCD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DRまたはそれらの組み合わせの発現が、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、およびRT−PCRによるメッセンジャーRNAの転写レベルから選択された技術を用いて行われる。
【0031】
本発明の第2態様は、前述の方法を使用して得られた特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)に対応する。特定の実施形態においては、上記特異抗原は自己抗原である。これは、上記特異抗原が患者から得られるものであるという理由からではなく、自己免疫疾患においては、免疫学的反応は自己要素に対するものであるという理由からであり、それゆえ、抗原は自己抗原である。本発明の特定の実施形態においては、樹状細胞が、単球、骨髄前駆体に由来する、あるいは末梢血または臍帯血から直接的に得られる。他の実施形態においては、上記特異抗原がアポトーシス細胞に由来する。より具体的な実施形態においては、上記アポトーシス細胞がアポトーシス刺激を受けた細胞に由来する。特定の実施形態においては、上記細胞が受ける上記アポトーシス刺激が、紫外線B(UV−B)放射、化学物質(スタウロスポリン、メトトレキサート)の存在下、特異受容体の活性化(Fas−Fasリガンド相互作用)、またはミトコンドリア電子伝達の阻害(ヘプタクロル、ロテノン)から選択される。より具体的には、上記刺激は、紫外線B(UV−B)放射である。
【0032】
他の実施形態においては、アポトーシス細胞が得られる上記細胞が、血液細胞、筋肉細胞、表皮細胞、上皮細胞、幹細胞、またはヒト細胞株に対応する。特定の実施形態においては、上記血液細胞は、末梢血細胞、血小板、好中球、または単球である。
【0033】
特定の実施形態においては、本発明の寛容性樹状細胞(tolDC)が、表現型評価によって特定される。より具体的な実施形態においては、i)免疫原性成熟DCと比べて減少するはずのサイトカインIL−6およびIL−12p70の生産と、ii)表面マーカーの発現がない、または成熟免疫原性DCと比べて少ないことを評価することによって、tolDCの特定が行われ、上記表面マーカーが、CD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DR、またはそれらの組み合わせから選択される。より具体的な実施形態においては、IL−6およびIL−12p70の生産の評価、並びに表面マーカーCD40、CD80、CD83、CD86、HLA−DRまたはそれらの組み合わせの発現が、ELISA、フローサイトメトリー、ウェスタンブロット、およびRT−PCRを用いたメッセンジャーRNAの転写レベルから選択された技術を用いて行われる。
【0034】
本発明の第3の態様においては、全身性エリテマトーデス(SLE)を治療するための療法の構築における、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の使用が記載されている。
【0035】
特定の実施形態においては、本発明は、全身性エリテマトーデス(SLE)の治療に有用な薬剤の調製において利用可能な、特異抗原を有する寛容性樹状細胞(tolDC)の使用を記載している。
【0036】
〔実施例〕
<実施例1:SLEに関する抗原に特異的なDCの取得>
(末梢血リンパ球における紫外線タイプB(UV−B)放射を用いたアポトーシス誘導)
本段階においては、UV−B放射の様々な曝露時間を評価して、最初に健常な個体、次にSLE患者の末梢血から得たリンパ球からアポトーシス細胞を得た。アポトーシス誘導を確認するため、染料としてヨウ化プロピジウム(PI)およびアネキシンV(Anex)を使用し、フローサイトメトリーを使用してサンプルを分析した。アポトーシス状態の上記の細胞は、その後、自己抗原を提供する目的でDCをパルスするために利用される(図2)。図3は、上記の細胞において、1.5時間のUV−B放射の曝露時間が、アポトーシスを誘導するのに適していることを示している(PI+Anex+)。
【0037】
(SLE患者のDCの、アポトーシス細胞をエンドサイトーシスする能力の評価)
その後、上記の実施例において生成されたDCが、抗原を処理するために、アポトーシス細胞をエンドサイトーシスし、そして抗原を自己反応Tリンパ球に提示する能力を有しているか否かを評価した。細胞染料カルボキシフルオロセインサクシニミジルエステル(CFSE)(Invitrogen、カールズバッド、CA、USA)を用いて、UV−B放射への曝露によって生成されたアポトーシス細胞を標識し、フローサイトメトリーを用いてアポトーシス細胞を検出した。DCをCFSEで標識されたアポトーシス細胞と24時間インキュベートした。この実験は、DCを特定できるように、CD11c+集団を選択した。CD11c+集団におけるCFSEの検出(39.5%)は、DCによるアポトーシス細胞の貪食作用を示している(図4および図5)。簡潔に言うと、UV−B放射によって生成されたアポトーシス細胞をCFSEで標識し、DCと24時間共培養した。生体染料BODIPY−TR Ceramide(Life Technologies)でDCを標識した。図6に見られるように、画像の構図は、DCが、SLE患者(パネルC)と同様に、コントロール個体(パネルB)においてもアポトーシス細胞をエンドサイトーシスすることが可能であることを示している。
【0038】
(DC免疫表現型におけるアポトーシス細胞とDCとの共培養の効果)
DNA分子は、ループス患者の自己抗原としての役割を果たし、DNA分子は、ヌクレオソームの形態におけるヒストン等のタンパク質に関連するアポトーシスの間、細胞外空間に曝されることが広く報告されている(1)。したがって、DNAを判定することは、アポトーシス細胞を定量化する方法であり、この方法は他の研究者によって従来利用されている(2)。
【0039】
本発明において示される結果に関して、合計14人のSLE患者が含まれた。患者の臨床的特徴は表1に詳述されている。上記患者からDCが生成され、分析の前の6日目に、アポトーシス細胞(12.5μg/ml(DNA量))を24時間パルスした。最終的なDCの成熟状態を、複合抗体の抗CD40、CD80、CD83、CD86、およびHLA−DRを用いてフローサイトメトリーによって分析した(図7)。
【0040】
【表1】
【0041】
表1:DCの生成およびアポトーシス細胞との共培養の実験に関するSLE患者の臨床的特徴。上記の実験に含まれる各患者の病気の活動度を、SLEDAI指数(高スコアは高活性を示し、6より高いSLEDAIスコアを有すると活動性疾患と定義される)を用いて判定した。各患者の平均年齢、および平均SLE基準も表に含まれている。Art.関節炎、Imm.=免疫学的(抗DNA、抗Sm、または抗カルジオリピン抗体の存在)、SN:神経系障害(痙攣または精神疾患)、Hem:血液学的障害、Sero.=漿膜炎、MC=粘膜・皮膚、ANA=抗核抗体。
【0042】
(アポトーシス細胞と共にパルスしたDCにおけるRGZおよびDEXAの影響)
SLE患者およびコントロール個体から得た単球に由来するDCをRGZ(10μM)およびDEXA(1μM)で24時間処置し、その後、さらに24時間、アポトーシス細胞(12.5μg/ml(DNA量))と共培養した。そして、マーカーCD40、CD80、CD83、CD86、およびHLA−DRの発現を合計14人のSLE患者において評価した(表1)。
【0043】
図7は、アポトーシス細胞存在下において、DCは実験した成熟マーカーのいずれのタイプも変化させないことを示している。一方、RGZおよびDEXA薬を用いた処置を行い、アポトーシス細胞と共培養した場合、S. typhimurium LPSで処置した細胞と比較して、SLE患者由来のDCにおける成熟マーカーCD80、CD83およびCD86の発現が著しく減少し(p<0.05、フリードマン検定)、DC表現型の変化における免疫抑制剤を用いた処置の効果を示している。
【0044】
(DCの活性判定:炎症誘発性サイトカインおよび抗炎症性サイトカインの分泌)
DCの寛容状態の導入を確認し、可能な限り最も完全な特徴付け、および機能的アプローチを可能とするより多くの成分を得るために、上記の実験の上清における、インターロイキン6(IL−6)およびインターロイキン12p70(IL−12p70)等の複数の関連するサイトカイン(酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて、寛容性樹状細胞によって細胞外培地に分泌される)の定量化を行った。
【0045】
図8は、S. typhimurium LPSを用いて処置したDCと比較して、IL−6の分泌において大きな減少(p<0.05)を誘導するRGZ+DEXAを用いた処置を示しており、IL−6は、炎症状態の制御において、明白に定義された特性を有する多機能サイトカインであり(3)、抗原提示の間、いくつかのエフェクター表現型に対するCD4+Tリンパ球の活性化および分化において重要な役割を果たす(4)。また、上記図面から、IL−12p70の分泌の減少も見られる。IL−12p70サイトカインは、CD8+Tリンパ球の細胞傷害活性、およびCD4+Tリンパ球の炎症誘発性表現型の発達だけでなく、ナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害活性を高めるうえで重要な役割を果たす。
【0046】
表2は得られた結果をまとめた表であり、生産物tolDC(RGZおよびDEXAを用いて処置し、アポトーシス細胞と共にパルスした寛容性DC)が、LPSを用いて刺激した場合、成熟、および免疫原性表現型に関する多くの関連する表面マーカーを減少させ、RGZおよびDEXAを用いて処置していないDCと比較した場合、炎症誘発性サイトカインの生産を減少させることを示している。
【0047】
【表2】
【0048】
表2:成熟DCおよびtolDCに見られる表現型の概要。
【0049】
自己寛容性DCによるSLE治療に関する毒性および細胞生存率の実験
生存率および細胞代謝における薬剤の効果を評価するために、XTT生存率アッセイを行った。XTT生存率アッセイは、細胞代謝活性を評価する比色アッセイである。その基本原理は、代謝的活性細胞のミトコンドリアデヒドロゲーゼ酵素活性の活性によって、ホルマザンへ変換されるテトラゾリウムXTT塩の減少にある。ホルマザンは、着色化合物の生産物として生存細胞においてのみ生成され、その量はサンプルにおける生存細胞の数に比例する量で生産される。
【0050】
図9は、上記の薬剤を用いた処置によって、SLE患者のDCの細胞生存率の割合が変化しないことを示している。
【0051】
同じ流れで、生成されたDCが、治療を受ける生物の細胞の生存率に影響し得る潜在的に毒性のある物質を細胞外培地に分泌したかどうかを評価するための実験を行った。このアッセイを行うために、ヨウ化プロピジウム(PI)を、アネキシンV(Anex V)と共に使用した。これらは免疫調節剤を使用した我々のプロトコルの条件下で培養したDCの上清を用いて事前に処理したコントロール個体の末梢血リンパ球(PBL)を標識するために使用したが、DCは他のコントロール固体からもたらされたものであるため、24時間の実験期間の間、LPS刺激を与えなかった。
【0052】
一方、生成されたDCの上記の上清が、リンパ球において、活性化反応を生成可能かどうかを判定し、マーカーCD69(初期活性化マーカー)、CD71(後期活性化マーカー)を判定した。マーカーCD69およびCD71はリンパ球細胞株における活性化刺激に反応して発現される。
【0053】
図10は、マーカーCD71が、賦形剤を用いて処置したDCの上清を用いて処置された場合、その発現が変化せず、薬剤およびアポトーシス細胞を用いて処置したDCの上清を用いて処置された場合も変化しないことを示している。マーカーCD69に関して、活性化された細胞の割合にわずかな増加が見られたが、この増加はコンカナバリンA(Tリンパ球における細胞分裂促進活性を誘導し、細胞産物の合成を増加させる能力を有するタンパク質)を用いて刺激したPBLに対応するポジティブコントロールの活性化レベルには程遠く、上記のわずかな増加は、賦形剤を用いて処置したDCから得た上清を用いて得られた結果に類似している。
【0054】
上記2つの結果から、DCの上清は、PBLの生存率を変化させず、上記細胞の活性化反応を発生させることもないと結論付けられる。
【0055】
<実施例2:DCの寛容能力の機能評価>
上述の実施例においては、tolDCの免疫表現型の質および安定性を、tolDCによる治療の可能性を評価する基準として特徴付け、tolDCの免疫表現型の質および安定性は、サイトカイン分泌を実験した時の機能的アプローチを有している。臨床前段階のtolDCの成功を判定するためには、CD4+Tリンパ球における生成されたtolDCの調整能力を評価するために、生体外機能分析自体が必要とされる。
【0056】
したがって、混合リンパ球反応(MLR)同種異系アッセイを、異なる健常個体から得たDCおよびCD4+T細胞を使用して行った(図11および図12)。
【0057】
CFSEで事前に標識した、個体から得たtolDC、および異なる個体から得たT細胞を、RPMI1640+10%のFBS(比1:5)の培地(200μL)で5日間培養した。コントロールとして、実験が終わるまで、未成熟DC(iDC)、成熟DCと共培養したTリンパ球、またはDCと共培養していないTリンパ球を使用した。CD25およびCD71の発現を制御しながらフローサイトメトリーを使用して、5日目にTリンパ球の活性を評価した(図12)。
【0058】
薬剤の一方、または両方の薬剤に同時に誘導されたtolDCの存在下で培養されたT細胞のCD25およびCD71(Tリンパ球活性化マーカー)の発現は、未成熟DCと共培養された細胞に見られる発現より小さい。この結果は、DCの寛容性機能が、NF−κB抑制剤を用いた処置によって誘導されたことを示している。
【0059】
CFSEで事前に標識した、SLE患者から得たtolDC、および健常個体から得たT細胞を、RPMI1640+10%のFBS(比1:5)の培地(200μL)で5日間培養して、同様のアッセイを行った。コントロールとして、実験が終わるまで、未成熟DC、成熟DCと共培養したTリンパ球、またはDCと共培養していないTリンパ球を使用した。CFSEの希釈度およびCD71の発現を測定することによって、5日目のTリンパ球の増殖および活性を、フローサイトメトリーを用いて評価した(図13)。
【0060】
薬剤の一方、または両方に同時に誘導されたtolDCの存在下で培養されたT細胞のCD71(Tリンパ球活性化マーカー)の発現は、未成熟DCと共培養された細胞に見られる発現より小さい。さらに、Tリンパ球は、tolDC存在下で、成熟DC存在下よりも増殖が少ないことが分かった。
【0061】
<実施例3:全身性エリテマトーデスにおけるtolDC生成プロトコル>
A.末梢血またはバフィーコートの分離は8時間以下で行われるべきであり、ヘパリンを追加するべきではない。
1.50mlの円錐形チューブに血液を入れ、総量が35mlに達するまでPBS(1X)を用いて希釈した。
2.15mlのFicoll−Paqueリンパ球分離媒体を、空の50mlの円錐形チューブの底部に加えた。
3.Ficoll−Paque媒体を含む50mlの円錐形チューブに、希釈した血液をそれぞれ慎重に移した。
4.上記の円錐形チューブを20℃で25分間、1000xgで遠心分離機にかけた。
5.上層を吸引し(血清)、相間の変化しない単核細胞層を残した。
6.単核細胞層を新しい50mlの円錐形チューブに慎重に移した。
7.単核細胞層を含む50mlの円錐形チューブをPBS(1X)で満たし、20℃で10分間、300xgで遠心分離機にかけた。上清を慎重に除去して捨てた。
8.5mlのRBC溶解バッファ(ACK(1X))中に、室温で5分間、ペレットを再懸濁した。
9.50mlの円錐形チューブをPBS(1X)で満たし、慎重に混合した。
10.上記の円錐形チューブを10分間300xgで遠心分離機にかけ、上清を捨てた。
11.工程7、8、9をもう一度繰り返した。
12.5mlの予め加熱した培地AIM−V中にペレットを再懸濁した。細胞数を数えた。
13.1mlの培地AIM−Vにて、10x10PBMCの6ウェルプレートで細胞を培養した。
14.5%のCO、37℃にて2時間インキュベーションを行い、セクションBに続いた。
【0062】
B.末梢血リンパ球の取得およびDCへの分化
1.上記チューブの底部に接触することなく、末梢血リンパ球(PBL)を得るために上清を慎重に除去した(PBLはアポトーシス細胞が生成されるまで保存した)。37℃に予め加熱した1mlのPBS(1X)で、チューブを3回洗浄した。
2.IL−4(1000UI/mL)およびGM−CSF(1000UI/mL)を含有する1.5mLの予め加熱したAIM−V培地を加えた(1日目)。上記を5%のCOで、37℃にてインキュベートした。
3.培地を交換することなく、培養の最終濃度(1000UI/mL)になるまで、3日目と5日目とに新鮮なサイトカイン(IL−4およびGM−CSF)を加えた。
【0063】
C.アポトーシス細胞の生成
1.非接着片(PBL)を50mLの円錐形チューブに移し、PBS(1X)で満たした。
2.上記円錐形チューブを6分間、300xgで遠心分離機にかけた。
3.上記非接着片を5mLのAIM−V培地で再懸濁し、5%のCOで、37℃にて、T−25培養フラスコ内で培養した。AIM−V培地を毎日交換した。
4.UVランプを生物学的に安全なキャビネット内に設置し、該ランプを予め10分間加熱した。
5.PBLを慎重に60x15mlの滅菌プレートに移した。
6.2.0mW/cmで1.5時間、リンパ球を照射した。セクションDに続いた。
【0064】
D.DCおよびアポトーシス細胞の共培養(7日目)
1.アポトーシス細胞を均質化し、UV処理の後、最終量を判定した。400μLのアポトーシス細胞の調製物を用いてDNA濃度を判定した。
2.円錐形チューブに細胞を移し、10分間、500xgで遠心分離機にかけた。
3.上清を慎重に捨てて、1μg/mLの最終DNA濃度になるまでペレットを再懸濁した。
4.18.75μLのアポトーシス細胞の調製物を、セクションAで調製したDCの培養培地に加えた。
【0065】
E.寛容性DCの誘導(6日目)
1.DMSOにロシグリタゾンを溶かしてストック溶液(100μLのDMSO/1.79mgのロシグリタゾン)を調製した。5μLのストック溶液を495μLのPBS(1X)で希釈して、作業溶液を調製した。30μLの作業溶液をDC細胞培養物に加えた(最終濃度=10μM)。
2.DMSOにデキサメタゾンを溶かしてストック溶液(100μLのDMSO/0.2mgのデキサメタゾン)を調製した。5μLの原液を20μLのPBS(1X)で希釈して、作業溶液を調製した。1.5μLの作業溶液をDC細胞培地に加えた(最終濃度=1μM)。
【0066】
〔参考文献〕
(1) Rosen A, Casciola-Rosen L. Autoantigens in systemic autoimmunity: critical partner in pathogenesis. Journal of internal medicine. Jun 2009;265(6):625-631.
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(6) Hontelez S, Karthaus N, Looman MW, Ansems M, Adema GJ. DC-SCRIPT regulates glucocorticoid receptor function and expression of its target GILZ in dendritic cells. J Immunol. 2013 Apr 1;190(7):3172-9. doi: 10.4049/jimmunol. 1201776. Epub 2013 Feb 25. PubMed PMID: 23440419.
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】樹状細胞の表現型。低免疫原性の未成熟細胞は、LPS等の炎症誘発性刺激の存在下で成熟し、Tリンパ球を活性化する能力が向上した表現型が得られ、表面マーカーCD80、CD83、CD86およびCD40の発現の増加が見られる。しかし、未成熟細胞が抗炎症性刺激を受けた場合、未成熟細胞は、免疫原性を変化させることなく、Tリンパ球における寛容性を誘導する寛容性細胞に変化し得る。
図2】アポトーシス細胞を用いてパルスした未成熟樹状細胞(iDC)および寛容性細胞(tolDC)を生成するための実験計画。
図3】UV−B照射を用いたアポトーシス細胞の生成。A:UV−B光が照射されていないリンパ球のドットプロットを示す(基準)。B:24時間、スタウロスポリン(Novex、カールズバッド、CA、USA)(1μM)を用いて処置(+アポトーシスに対するコントロール)。C:56℃で50分間処置(+ネクローシスのコントロール)。D:UV−B放射に1時間半曝す。E:コントロール個体をUV−B放射に1.5時間曝した後、PIおよびAnex−V−FITCを用いて処置した各象限のリンパ球の分布率。
図4】アポトーシス細胞を取り込むDCの能力を判定するための実験計画。
図5】単球由来DCへのアポトーシス細胞の結合のフローサイトメトリー分析。A:細胞の自家蛍光ヒストグラムおよびCD11c+集団の判定。B:CFSE(FITC+)の陽性信号を判定するヒストグラム。C:コントロール個体のCD11c+集団。D:コントロール個体からの細胞におけるCD11c+集団から得たFITC+集団のヒストグラム。
図6】自己アポトーシス細胞の存在下における、SLE患者から得た単球由来DCによるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスの共焦点顕微鏡検査。図の左側のパネルにおいては、生細胞のゴルジ装置と共に、BODIPY TR Ceramideで染色されたDCが見られる。中央のパネルは、CFSEで染色されたアポトーシス細胞を示している。右側のパネルは、DCによるアポトーシス細胞のエンドサイトーシスを示す前画像の重複部分(白色矢印)を示している。
図7】S. typhimurium(1μg/ml)リポ多糖(LPS)を用いて処置し、RGZ(10μM)およびRGZ+Dexa(1μM)存在下において、自己アポトーシス細胞(12.5μg/ml(DNA量)、UV−B放射によって生成される)と共培養した単球由来のヒト樹状細胞における表面マーカーCD40、CD80、CD83、CD86およびHLA−DRの発現(n=14LES患者)。アスタリスクは、LPSによる刺激と、アポトーシス細胞と共培養され、LPSで刺激された、RGZおよびDEXAを用いて処置したDCとを比較した時のP<0.05(フリードマン検定)を示している。ラインは、賦形剤を用いて処置したDCに対応する値を示している。Apocell:アポトーシス細胞、DEXA:デキサメタゾン、RGZ:ロシグリタゾン。
図8】S. typhimurium(1μg/ml)リポ多糖(LPS)を用いて処置し、RGZ(10μM)およびDexa(1μM)存在下において、自己アポトーシス細胞(12.5μg/ml(DNA量)、UV−B放射によって生成される)と共培養した単球由来のSLE患者の樹状細胞の培養上清におけるサイトカインIL−6およびIL−12p70の分泌プロファイル。図8は、上記処置の両方を行ったIL−6およびIL−12p70の分泌の著しい減少を示している。IL−6は、処置を行っていない条件と比較した「増加倍率」として示される。p<0.05。ウィルコクソン検定。
図9】SLE患者のDCに関するXTT細胞生存率アッセイ。図9は、賦形剤(VEH)のみを受けた未処置のDCと比較した時、DCの細胞生存率は、免疫抑制剤(n=6)を用いた処置の存在下で変化しないことを示している。UV−B放射によって生成されたアポトーシス細胞(Apocell)は、生存率のネガティブコントロールとして用いられた。
図10】実験室で24時間培養されたDCの上清で処置した後の、CD69およびCD71マーカーを有する末梢血リンパ球(PBL)の活性判定。図10は、各条件におけるCD69+細胞およびCD71+細胞の割合を示している。n=1健常コントロール。ポジティブコントロール:コンカナバリンA(Con−A、10μL/ml)を用いて24時間処置した細胞、SN:上清、Apocell:アポトーシス細胞。
図11】混合リンパ球反応アッセイの実験計画。iDCは未成熟樹状細胞に対応し、mDCは成熟樹状細胞に対応し、tolDCは寛容性樹状細胞に対応する。
図12】同種異系Tリンパ球を用いた混合リンパ球反応におけるtolDCの機能アッセイ。tolDCとの共培養5日目におけるCD4+Tリンパ球のCD25の発現(図A)、CD71の発現(図B)、および増殖によるCFSEプローブの希釈度が定量化された。グラフは、共培養5日目におけるCD4+CD25+およびCD4+CD71+Tリンパ球の割合を表している(n=1)。αCD3+αCD28はTリンパ球活性のポジティブコントロールである。R+D:デキサメタゾンおよびロシグリタゾン。
図13】同種異系Tリンパ球を用いた混合リンパ球反応におけるtolDCの機能アッセイ。tolDCとの共培養5日目におけるCD4+Tリンパ球のCD71の発現(図A)、および増殖によるCFSEプローブの希釈度(図B)が定量化された。グラフは、共培養5日目におけるCD4+CD71+Tリンパ球、および増殖(CD4+CDFSElow)の割合を示している(n=1)。UT:未処置、R/D:デキサメタゾンおよびロシグリタゾン。
図1
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図8
図9
図10
図11
図12
図13(A)】
図13(B)】
【国際調査報告】