(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-518306(P2017-518306A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】結晶性β−D−ニコチンアミドリボシドの製造および使用
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20170609BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20170609BHJP
A61P 3/02 20060101ALI20170609BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20170609BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20170609BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20170609BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20170609BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20170609BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20170609BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20170609BHJP
【FI】
C07H19/048CSP
A61K31/706
A61P3/02 104
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P25/00
A61P43/00 107
A61P21/04
A23L33/15
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2016-570860(P2016-570860)
(86)(22)【出願日】2015年6月2日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月1日
(86)【国際出願番号】IB2015054181
(87)【国際公開番号】WO2015186068
(87)【国際公開日】20151210
(31)【優先権主張番号】62/006,434
(32)【優先日】2014年6月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】513110104
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、(ナンバー2)、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY (NO.2) LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ブルース、シチェパンキーウィクス
(72)【発明者】
【氏名】カルステン、コペッチュ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、ビー.ペルニ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD23
4B018ME03
4B018ME04
4C057AA14
4C057BB02
4C057DD01
4C057LL05
4C057LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA01
4C086ZA70
4C086ZB22
4C086ZC24
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明により、結晶性β−D−ニコチンアミドリボシドクロリド組成物ならびにその製造および使用方法が提供される。また、関連の医薬組成物およびその使用方法も提供される。結晶性β−D−ニコチンアミドリボシドクロリド組成物は、対象においてミトコンドリア病または障害、インスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満を含む、NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患もしくは障害を処置するため、またはインスリン感受性を高めるために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノールの含有量が5000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリド結晶。
【請求項2】
メタノールの含有量が0.01〜1.1モル当量であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリドメタノレート結晶。
【請求項3】
メタノールの含有量が0.7〜1.1モル当量である、請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド)クロリドメタノレート結晶。
【請求項4】
3−カルバモイル−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2S(α)ニコチンアミドリボシド)クロリドの含有量が1%(m/m)未満である、請求項1または請求項2に記載の実質的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項5】
95%(w/w)を越える化学純度を有する、請求項1または請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項6】
99%(w/w)以上の化学純度を有する、請求項1または請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項7】
エタノールの含有量が4000ppm未満である、請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項8】
0〜100ppmのエタノール、100〜200ppmのエタノール、200〜300ppmのエタノール、300〜400ppmのエタノール、および400〜500ppmのエタノールからなる群から選択されるレベルのエタノールを含有する、請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項9】
図6に実質的に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項10】
下記のX線粉末回折ピーク:約14.2、約17.1、約20.5、約22.7、約23.8、約25.1、約26.8、および約34.2°のうち4つ以上を有する、請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項11】
図8に実質的に示される赤外線吸収スペクトルを有する、請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項12】
3299、1700、1398、1080、982、887、および795(cm−1)にピークを実質的に含んでなるIRスペクトルを有する、請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶。
【請求項13】
図4に実質的に示されるX線粉末回折パターンを有する、請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドメタノレート結晶。
【請求項14】
下記のX線粉末回折ピーク(°):約−11.1、約−7.1、約−2.9、約1.0、約4.7、約15.2、約18.2、約21.4、約23.5、約24.9、約26.0、および約27.7°のうち5つ以上を有する、請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドメタノレート結晶。
【請求項15】
図7に実質的に示される赤外線吸収スペクトルを有する、請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)メタノレート結晶。
【請求項16】
3361、1674、1610、1394、1082、982、833、および792(cm−1)にピークを実質的に含んでなる赤外線吸収スペクトルを有する、請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)メタノレート結晶。
【請求項17】
請求項1に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶または請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドメタノレート結晶を得るための方法であって、有機溶媒を用いて水性反応混合物からトリフルオロメタンスルホネートを前記有機溶媒中へ抽出し、その結果、前記水性混合物からトリフルオロメタンスルホン酸陰イオンが除去される、方法。
【請求項18】
前記有機溶媒がエーテル系溶媒である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エーテル系溶媒がテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、およびtert−ブチルメチルエーテルから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記有機溶媒がアセトニトリル、プロピオニトリル、およびブチロニトリルから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記有機溶媒がテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、およびアセトニトリルから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記トリフルオロメタンスルホネートがトリフルオロメタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ルビジウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、トリフルオロメタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム、およびトリフルオロメタンスルホン酸マグネシウムから選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載のβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶を含んでなる、医薬組成物。
【請求項24】
腸内投与用である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
経口投与用である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
直腸投与または舌下投与用である請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
非経口投与用である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項28】
静注用である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
鼻腔内投与、皮膚投与、尿生殖器投与、眼投与、耳投与、または呼吸器系吸入投与用である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項1に記載の2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶を含んでなる、哺乳動物による消費に適する食品または飲料。
【請求項31】
食品または飲料100グラム当たり少なくとも約10mgのニコチンアミドリボシドを含んでなる、請求項30に記載の食品または飲料。
【請求項32】
食品または飲料のグラム当たり少なくとも約10mgのニコチンアミドリボシドを含んでなる、請求項31に記載の食品または飲料。
【請求項33】
結晶性3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリドを準備すること、および
それを化学的に処理して、3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド))陽イオン塩の薬学上許容可能な非クロリド塩を提供することにより、
3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシドまたは2R(β)ニコチンアミドリボシド)陽イオンの薬学上許容可能な非クロリド塩を製造する方法。
【請求項34】
薬学上許容可能な非塩化物陽イオンが硫酸イオン、リン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、ペンタン酸イオン、ヘキサン酸イオン、ヘプタン酸イオン、オクタン酸イオン、乳酸イオン、2−ヒドロキシ酪酸イオン、3−ヒドロキシ酪酸イオン、安息香酸イオン、マロン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、リンゴ酸イオン、クエン酸イオン、イソクエン酸イオン、およびエチレンジアミン四酢酸イオンから選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項33に記載の方法により製造された実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)非クロリド塩。
【請求項36】
3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドの水溶液を製造する方法であって、
結晶性3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドを準備すること、および
前記結晶性2R(β)ニコチンアミドリボシドクロリドを水と接触させること
を含んでなる、方法。
【請求項37】
NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害を処置する方法であって、請求項23に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、方法。
【請求項38】
前記疾患または障害がインスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、または肥満である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記疾患または障害がミトコンドリア病または障害である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記ミトコンドリア病または障害が神経筋障害、ニューロン不安定性障害、神経変性疾患、およびミトコンドリア筋疾患からなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記ミトコンドリア病または障害がフリードライヒ運動失調、筋ジストロフィー、多発性硬化症、発作性疾患、片頭痛、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、虚血、尿細管性アシドーシス、加齢性神経変性および認知機能低下、化学療法疲労、加齢性もしくは化学療法誘発性の閉経または月経周期もしくは排卵の不順、ミトコンドリア筋障害、ミトコンドリア傷害(例えば、カルシウム蓄積、興奮毒性、一酸化窒素暴露、薬剤性毒性傷害または低酸素症)、およびミトコンドリア調節不全から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記ミトコンドリア病または障害が、進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群、MELAS症候群(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様エピソード)、MERFF症候群(ミオクロヌス性癲癇および赤色ぼろ線維)、肢帯筋分布の弱体化、および乳児性筋疾患(良性または重度および致死性)から選択されるミトコンドリア筋疾患である、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
療法において使用するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物、または請求項23〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害の処置において使用するための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物、または請求項23〜29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項45】
前記疾患または障害がインスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満、またはミトコンドリア病または障害である、請求項44に記載の化合物または組成物。
【請求項46】
NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害の処置において使用するための医薬の製造における、請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物もしくはその薬学上許容可能な塩、または請求項23〜29のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項47】
前記疾患または障害がインスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満、またはミトコンドリア病または障害である、請求項46に記載の化合物または組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
20世紀の初めに、ビタミンB
3は、ペラグラ患者の食事から除く成分として特定された。ニコチン酸またはナイアシンの補給はペラグラの症状を改善し、それが普及していた地域では、この病態の発症を防いだ。ナイアシンの生化学的役割は、1930年代に、細胞呼吸に不可欠な化合物であるニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)の生合成に重要であることが判明した際に解明された(Preiss, J.; Handler, P. Biosynthesis of Diphosphopyridine Nucleotide I. Identification of Intermediates J. Biol. Chem. 1958 233, 488-492.; Preiss, J.; Handler, P. Biosynthesis of Diphosphopyridine Nucleotide II. Enzymatic Aspects J. Biol. Chem. 1958 233, 493-500)。細胞呼吸におけるNADの正確な役割は十分に理解されている。グルコースおよび脂肪酸は酸化され、NADはヒドリド相当物を受け取ることができ、その結果、それはNADHへと還元される。NADHはヒドリド相当物を供与し、その結果、再びNADへと酸化される。これらの還元−酸化サイクルはヒドリドイオンの一時的保存にNADを用いるが、それらはNADを消費しない。異なる様式で、エネルギー生産に直接関連しない目的でNADを用いる他の酵素も存在する。ポリ−ADPリボースポリメラーゼ(PARP)、ADPリボーストランスフェラーゼ(ART)、およびサーチュインは総て、ニコチンアミドをNADから遊離する反応を触媒する。この反応は、ATPの加水分解と同様にかなりの量のエネルギーを生成する。逆反応は容易には起こらないので、NADは他の機構によって補充されなければならない(Bogan, K. L.; Brenner, C. Nicotinic Acid, Nicotinamide, and Nicotinamide Riboside: A Molecular Evaluation of NAD+ Precursor Vitamins in Human Nutrition Annu. Rev. Nutr. 2008, 28, 115-130)。
【0002】
ナイアシン(またはニコチン酸(ピリジン−3−カルボン酸))、およびそのアミドナイアシンアミド(またはニコチンアミド(ピリジン−3−カルボキサミド))は、in vivoでNADに変換される。哺乳動物では、ナイアシンよりもむしろナイアシンアミドが主要なNAD前駆体であり得る。ナイアシンアミドからNADへの一連の生合成変換が
図1に示されている。この経路の律速段階はナイアシンアミドと5−ホスホリボース−1−ピロリン酸(PRPP)の間の結合の形成であり、それはニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)により触媒される(Revollo, J. R.; Grimm, A. A.; Imai, S.-I. J. Biol. Chem. 2004, 279, 50754-50763)。NAMPT経路は、ニコチンアミドのリサイクルに関して知られている最も効率的な経路であると思われる。ナイアシンも同様の一連の変換に入るが、最終段階で、カルボン酸がカルボキサミドに変換されてNADを生成しなければならない。ナイアシンからのNADの生合成は、Preiss−Handler経路をたどる(
図1)。
【0003】
1982年に、ニコチンアミドリボシド(NR)は原核生物におけるNAD前駆体として研究された(Liu, G.; Foster, J.; Manlapaz-Ramos, R.; Loivera, B. M. “Nucleoside Salvage Pathway for NAD Biosynthesis in Salmonella typhimurium” J. Bacteriol. 1982, 152, 1111-1116)。ナイアシンとは対照的に、外的に供給されるNRはPreiss−Handler経路およびNAMPT経路の両方の最初の最もエネルギーを消費する部分を迂回するという仮説が立てられている(
図1)。NRはNADの天然前駆体であると見られるが、食事起源のNRは明らかに欠乏しているために、おそらくはほんの少量がNAD生合成に寄与するだけであると思われる。NRは、水溶液は自発的に不安定となる高エネルギーグリコシド結合を含み、ニコチンアミドおよびリボース分解産物を生じる。この自発的反応は、厳密な周囲条件によって時間または日の経過とともに起こるが、それはNRの食物源での維持を困難とし、一方、ニコチン酸またはニコチンアミドは著しくより安定であり、調製および投与が容易である。NRは乳汁(Bieganowski and Brenner (2004) Cell 117: 495-502)およびビール中に存在することが報告されているが、一般に存在する量はおそらく少なすぎて栄養的に有意なものではない。
【0004】
現在、NRの補給は市販の供給源に限定されている。NR補給はナイアシンの代替食であり、より効率的なNAD前駆体であるという利点を持つ。低消費エネルギーでNADを合成する天然経路の利点を考えれば、NRはヒトの健康に利益を与え得る。細胞は通常の環境因子による傷害に絶えず曝され、この傷害を継続的に元に戻すための修復機構を進化させてきた。この修復機構は高エネルギーグリコシド結合の切断によりNADを消費して、ポリADPリボースおよびADPリボシル化タンパク質などの種を生成する。深刻な傷害を受けた細胞では、恒常性を維持するのに必要なNADを生産するにはエネルギー貯蓄が不十分で、傷害が不可逆的となる。従って、NRなどのエネルギーに富んだNAD前駆体が、分子レベルで細胞および組織傷害に取り組むことができると思われる。
【0005】
NRは天然源から単離することが困難であることから、ほぼ常に化学合成により生産される。最初の化学合成は、1957年にToddと共同研究者らにより達成された(Haynes, L. J.; Hughes, N. A.; Kenner, G. W.; Todd, A. J. Chem. Soc. 1957, 3727-3732)。このグループは、グリコシド結合に関してαアノマーとβアノマーのおよそ1:4比の混合物としてNRクロリドを生成した。この生成物は吸湿性の油状物として記載され、結晶化できなかった。生化学源からNRクロリドを単離した他の研究者もそれを吸湿性の油状物として記載している(Schlenk, F. “Nicotinamide Nucleoside” Naturwiss. 1940, 28, 46-47; Gingrich, W.; Schlenk, F. “Codehydrogenase I and Other Pyridinium Compounds as V-Factor for Hemophilus Influenzae and H. Parainfluenzae” J. Bacteriol. 1944, 47, 535-550)。重要なこととして、正確な立体化学配置が決定されていなかったとしても、生化学合成は天然β−アノマーのみを生成したはずであった。後の報告により、吸湿性、非晶質性のNRクロリドが確認された(Jarman, M.; Ross, W. C. J. J. Chem. Soc. C, 1969, 199-203; and Atkinson, M. R.; Morton, R. K.; Naylor, R. Synthesis of Glycosylpyridinium Compounds from Glycosylamines and from Glycosyl Halides J. Chem Soc. 1965, 610-615)。他のグループは別のNR陰イオンを検討した。ある合成では、アノマー的に純粋なNRブロミド塩が結晶性として記載されていたが、この生成物は、その物質が本当に結晶性であるか、または非晶質固体に過ぎないかを確認できるほど十分には記載されていなかった(Lee, J.; Churchill, H.; Choi, W.-B.; Lynch, J. E.; Roberts, F. E.; Volante, R. P.; Reider, P. J. “A chemical synthesis of nicotinamide adenine dinucleotide (NAD+)” Chem. Commun. 1999, 729-730)。次に、他のNR塩が調製され、固体が得られたが、それらは結晶性とは記載されなかった(Tanimori, S.; Ohta, T.; Kirihata, M. An Efficient Chemical Synthesis of Nicotinamide Riboside (NAR) and Analogues Bioorg. Med. Chem. Lett. 2002, 12, 1135-1137; Franchetti, P.; Pasqualini, M.; Petrelli, R.; Ricciutelli, M.; Vita, P.; Cappellacci, L. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 4655-4658; Yang, T.; Chan, N. Y.-K.; Sauve, A. A. J. Med. Chem. 2007, 50, 6458-6461)。
【0006】
これまでに記載されているNR塩製剤は非晶質NRであり、極めて吸湿性があり、数秒または数分内に粘着性の固体となり、周囲温度および周囲湿度で数時間内に壊れて油となる。これらの非晶質塩を固体として維持することは、それらを乾燥雰囲気下で保存するか、またはそれらをおよそ−20℃にて凍結状態で保持することを必要とした。重要なこととして、この油性混合物は周囲温度で1日経つと著しく分解した。この特性はNR塩を単離し取り扱うための大きな挑戦となる。分析または使用の際に周囲条件下での取り扱いが避けられない場合もあるので、この特性はまた、NR製剤の純度を特定することを困難にする。取り扱いの容易さおよび純度は、ヒトの消費のために製造され得る物質には重要なパラメーターである。これらはまた、その後のいずれかの目的のため、例えば別の化学変換のための合成中間体として、生化学試薬として、分析標品としてなどのために、または化学純度および安定性が求められる他のいずれかの使用のために重要な考慮事項である。
【0007】
さらに、これまでに記載されているアノマー的に純粋なNR塩結晶の製剤のいくつかはクロリド塩よりもむしろブロミド塩であるが、ブロミド塩は不必要に毒性があるか、またはそうでなければ相当するクロリド塩に比べて薬学的塩形態として望ましくない。例えば、ブロミド化合物、特に臭化カリウムは、19世紀および20世紀初頭には鎮静薬として頻用されていたが、店頭(over−the−counter)鎮静薬および頭痛薬(例えば、ブロモ−セルツァー)でのそれらの使用は米国では1975年、ブロミドが慢性毒性のために回収された際に終わった。1日当たり0.5〜1グラムの用量のブロミドは、複数の神経症状および皮膚発疹を伴う症候群である臭素中毒を招くおそれがある(Olson, Kent R. (1 November 2003). Poisoning & drug overdose (第4版) Appleton & Lange. pp. 140-141参照)。対照的に、クロリドは「ファーストクラス」の薬学的塩と考えられ、クロリドは、生理学的に遍在するイオンであるので多少とも制限無く使用でき、実際に、健常成人は、汗により毎日平均的に失われる量を補うため、また、十分な量の他の必須栄養素を供給する食餌を達成するために、毎日2.3グラムのクロリドを摂ることが推奨されてさえいる(Saal, C.; Becker, A. Eur J Pharm Sci 2013, 49(4), 614−623; and Institute of Medicine of the National Academies, 2013, Dietary reference intakes: water, potassium, sodium, chloride, and sulfate, from the Institute of Medicine of the National Academies: http://www.iom.edu/Reports/2004/Dietary-Reference-Intakes-Water-Potassium-Sodium-Chloride-and-Sulfate参照)。従って、薬学的クロリド塩は一般に、特に比較的高用量を必要とする薬学的塩としては、相当するブロミド塩形態よりも安全である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、ニコチンアミドリボシドクロリドなどの薬学上許容可能なNR塩の化学的に純粋で安定な形態、ならびに大スケールでのその合成および効率的製造のための対応する方法の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリドの2つの異なる結晶形態の製造および特性決定を記載する。一実施形態において、ニコチンアミドリボシドクロリドは、結晶化して、他の物質の含有量、特にエタノールの含有量が、5000ppm未満である、ニコチンアミドリボシドクロリドを含有する物質(例えば、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える純度(w/w)を有する、ニコチンアミドリボシドクロリド結晶)を与える。第2の実施形態において、ニコチンアミドリボシドクロリドは、結晶化して、ニコチンアミドリボシドクロリド1当量当たり0.9モル当量のメタノールを含有する物質(例えば、メタノールの含有量が1.1モル当量未満、例えば、メタノールの含有量が0.01〜1.0モル当量であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える純度(w/w)を有する、ニコチンアミドリボシドクロリド結晶)を与える。これらの物質はいずれも、バックグラウンドが暗いまま偏光フィルターを通してそれらが見えるように平面偏光を反射および屈折させる。両結晶形態は、周囲保存条件下で少なくとも4週間安定である。特定の実施形態において、この結晶形態は、少なくとも6週間、8週間、2か月、4か月、8か月または12か月安定である。特定の実施形態において、周囲保存条件は、通常、参照標準環境温度および圧力(standard ambient temperature and pressure)(SATP)であり、それは25℃(77°F)、および圧力100kPA(約1気圧、14.7psi)である。あるいは、周囲条件は、温度および圧力に関するIUPAC(国際純正・応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry))標準条件、例えば、温度0℃(32°F)、および圧力100kPA(約1気圧、14.7psi)である。
【0010】
加えて、第1の結晶形態は、ニコチンアミドリボシドの非晶質形態よりも、加熱時にはるかに高い分解耐性がある。この材料の結晶特性は、その化学安定性および純度という点でこれまでに記載されている油性または非晶質形態を越える優れた利点をもたらす。第2の実施形態に存在するメタノールを除き、両結晶形態とも、95%を越える純度のニコチンアミドリボシドクロリドから構成される。これらの結晶形態はまた、このバルク材料の取り扱いを非晶質形態の取り扱いよりもはるかに容易とする。
【0011】
本発明はまた、大スケールの合成に従うニコチンアミドリボシドクロリドの製造方法を記載する。この方法では、クロマトグラフィーはいずれの中間体の単離にも使用されない。トリフルオロメタンスルホネートまたはアセテートからのクロリドへのイオン交換は、ニコチンアミドリボシド、塩化ナトリウムおよびアルカリ金属トリフルオロメタンスルホン酸塩を含有する水溶液の有機溶媒、特にテトラヒドロフランを用いた抽出によって達成される。このイオン交換法は、クロリド塩を調製するためにイオン交換樹脂または煩雑なクロマトグラフィーの必要を回避する。ニコチンアミドリボシドクロリドを大スケールで製造できることで、食品添加物として、栄養補助食品として、化学合成の中間体としての使用に、または多量、例えば、1gを越えるニコチンアミドリボシドクロリドが有用であると思われる他のいずれの目的のためにもニコチンアミドリボシドを製造することが可能となる。
【0012】
ニコチンアミドリボシドクロリド、特に、95%を越える純度のβ−ニコチンアミドリボシドクロリドは、ヒト消費に望ましい塩形態と言える。クロリド陰イオンは一般に、明白な毒性または望ましくない薬理作用が無く、安全であると認識される。これはこれまでに開示されているニコチンアミドリボシドのブロミド塩形態とは対照的であり、ブロミド塩は望ましくない、潜在的に有害な神経学的作用を有することが知られている(Friedlander, W. J. Arch. Neurol. 2000, 57, 1782-1785)。硫酸およびリン酸陰イオンは緩下特性を有する(Patel, V.; Nicar, M.; Emmett, M.; Asplin, J.; Maguire, J. A.; Santa Ana, C. A.; Fordtran, J. S. Am. J. Gastroenterol. 2009, 104, 953-965)。ヨージドは、チロキシンの生産を低下させ、代謝への影響があり、注意して監視しなければならないことが知られている(Burgi, H. Best Pract. Res. Clin. Endocrinol. Metab. 2010, 24, 107-115)。カルボキシレートは、NRのグリコシド結合と反応し、従って、これらの陰イオンでは最終化合物の化学純度を保証することがクロリド塩の場合よりも難しいことが知られている(Szczepankiewicz, B. G.; Koppetsch, K. J.; Perni, R. B. J. Org. Chem. 2011, 76, 6465-6474)。他の陰イオン、例えば、メタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、および多様な他のものは、このクラスの陰イオンは体内には通常存在しない化学種であるので、ヒトに与えた場合には外来成分を導入する。
【0013】
本発明では、クロリドは、ニコチンアミドリボシドの好ましい対イオンである。しかしながら、本発明の方法は、ジ(ニコチンアミドリボシド)ホスフェート、ニコチンアミドリボシドヒドロジェンスルフェート、モノ−またはジ−(ニコチンアミドリボシド)ホスフェート、モノ−、ジ−、トリ−、またはテトラ−ニコチンアミドリボシドカルボキシレート(アセテート、プロピオネート、ブチレート、および他のモノカルボキシレート、ならびにマロネート、スクシネート、フマレート、マレエートおよび他のジカルボキシレート、シトレート、イソシトレートおよび他のトリボキシレート、エチレンジアミンテトラアセテートおよび他のテトラボキシレート)、ニコチンアミドリボシドヨージド、ニコチンアミドリボシドメタンスルホネート、ニコチンアミドリボシドトルエンスルホホエーと、ニコチンアミドリボシドトリフルオロメタンスルホネート、ニコチンアミドリボシドペルクロレート、ニコチンアミドリボシドビカーボネート、ジ(ニコチンアミドリボシド)カーボネート、またはニコチンアミドリボシドクロリドよりも好ましくない形態である他の任意のニコチンアミドリボシド塩などの塩形態を製造するように適合され得る。
【0014】
一態様において、本発明は、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリド結晶を提供する。
【0015】
さらなる態様において、本発明は、メタノールの含有量が0.01〜1.1モル当量であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリドメタノレート結晶を提供する。一実施形態において、請求項2に記載の実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド)クロリドメタノレート結晶は、0.7〜1.1モル当量のメタノールを含有していた。
【0016】
本発明の特定の実施形態において、実質的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、1%(mol/mol)未満の3−カルバモイル−1−((2S,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2S(α)ニコチンアミドリボシド)クロリドを含んでなる。
【0017】
本発明のさらなる実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、95%(w/w)を越える化学純度を有する。特定の実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、99%(w/w)以上の化学純度を有する。
【0018】
特定の実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、4000ppm未満のエタノールを含有する。特定の実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、例えば、0〜100ppmのエタノール、または100〜200ppmのエタノール、または200〜300ppmのエタノール、または300〜400ppmのエタノール、または400〜500ppmのエタノールであるレベルのエタノールを含有する。
【0019】
特定の実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、
図6に実質的に示されるX線粉末回折パターン(例えば、下記のX線粉末回折ピーク:約14.2、約17.1、約20.5、約22.7、約23.8、約25.1、約26.8、および約34.2°のうち4以上を有するX線粉末回折パターン)を有する。
【0020】
さらなる実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、
図8に実質的に示される赤外線吸収スペクトル(例えば、およそ3299、1700、1398、1080、982、887、および795(cm
−1)にピークを含んでなる赤外線吸収スペクトル)を有する。
【0021】
特定の実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドメタノレート結晶は、
図4に実質的に示されるX線粉末回折パターン(例えば、下記のX線粉末回折ピーク:約−11.1、約−7.1、約−2.9、約1.0、約4.7、約15.2、約18.2、約21.4、約23.5、約24.9、約26.0、および約27.7°のうち5つ以上を有するX線粉末回折パターン)を有する。
【0022】
さらなる実施形態において、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)メタノレート結晶は、
図7に実質的に示される赤外線吸収スペクトル(例えば、およそ3361、1674、1610、1394、1082、982、833、および792(cm
−1)にピークを実質的に含んでなる赤外線吸収スペクトル)を有する。
【0023】
別の態様において、本発明は、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶を得る方法であって、有機溶媒を用いて水性反応混合物からトリフルオロメタンスルホネートを前記有機溶媒中へ抽出し、その結果、前記水性混合物からトリフルオロメタンスルホン酸陰イオンが除去される方法を提供する。特定の実施形態において、有機溶媒はエーテル系溶媒である。特定の実施形態において、エーテル系溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、またはtert−ブチルメチルエーテルである。さらなる実施形態において、有機溶媒は、アセトニトリル、プロピオニトリル、またはブチロニトリルである。なおさらなる実施形態において、有機溶媒は、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、またはアセトニトリルである。他の実施形態において、トリフルオロメタンスルホネートは、トリフルオロ−メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸カリウム、トリフルオロメタンスルホン酸ルビジウム、トリフルオロメタンスルホン酸セシウム、トリフルオロ−メタンスルホン酸アンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸カルシウム、またはトリフルオロメタンスルホン酸マグネシウムである。
【0024】
別の態様において、本発明は、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリド結晶を含んでなる医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、医薬組成物は腸内投与用である。特定の実施形態において、医薬組成物は経口投与用である。さらなる実施形態において、医薬組成物は直腸投与または舌下投与用である。他の実施形態において、医薬組成物は非経口投与用である。さらに他の実施形態において、医薬組成物は静注用である。さらに他の実施形態において、医薬組成物は鼻腔投与、皮膚投与、尿生殖器投与、眼投与、耳投与、または呼吸器系吸入投与用である。
【0025】
別の態様において、本発明は、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリド結晶を含んでなる哺乳動物による消費に適する食品または飲料を提供する。特定の実施形態において、食品または飲料は、食品または飲料のキログラム当たり少なくとも約10mgのニコチンアミドリボシドを含んでなる。特定の実施形態において、食品または飲料は、食品または飲料のグラム当たり少なくとも約10mgのニコチンアミドリボシドを含んでなる。
【0026】
さらに別の態様において、本発明は、結晶性3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリドを準備すること、および、それを化学的に処理して、3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド))陽イオン塩の薬学上許容可能な非クロリド塩を提供することにより、3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシドまたは2R(β)ニコチンアミドリボシド)陽イオンの薬学上許容可能な非クロリド塩形態を製造する方法を提供する。特定の実施形態において、結晶性3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドは、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリド結晶である。他の実施形態において、結晶性3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドは、メタノールの含有量が0.01〜1.1モル当量であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリドメタノレート結晶である。さらなる実施形態において、薬学上許容可能な非塩化物陽イオンは、硫酸イオン、リン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、イソ酪酸イオン、ペンタン酸イオン、ヘキサン酸イオン、ヘプタン酸イオン、オクタン酸イオン、乳酸イオン、2−ヒドロキシ酪酸イオン、3−ヒドロキシ酪酸イオン、安息香酸イオン、マロン酸イオン、コハク酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオン、リンゴ酸イオン、クエン酸イオン、イソクエン酸イオン、またはエチレンジアミン四酢酸イオンである。
【0027】
さらに別の態様において、本発明は、結晶性3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドを準備すること、および、前記結晶性2R(β)ニコチンアミドリボシドクロリドを水と接触させることにより、3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリドの水溶液を製造する方法を提供する。
【0028】
他の態様において、本発明は、NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害を処置する方法であって、β−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶を含んでなる医薬組成物を投与することを含んでなり、前記β−D−ニコチンアミドリボシド(2R(v)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶は、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋な3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))クロリド結晶である、方法を提供する。特定の実施形態において、疾患または障害は、インスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、または肥満である。特定の実施形態において、疾患または障害は、ミトコンドリア病または障害である。特定の実施形態において、ミトコンドリア病または障害は、神経筋障害、ニューロン不安定性障害、神経変性疾患、またはミトコンドリア筋疾患である。さらなる実施形態において、ミトコンドリア病または障害は、フリードライヒ運動失調、筋ジストロフィー、多発性硬化症、発作性疾患、片頭痛、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、虚血、尿細管性アシドーシス、加齢性神経変性および認知機能低下、化学療法疲労、加齢性もしくは化学療法誘発性の閉経または月経周期もしくは排卵の不順、ミトコンドリア筋障害、ミトコンドリア傷害(例えば、カルシウム蓄積、興奮毒性、一酸化窒素暴露、薬剤性毒性傷害または低酸素症)、またはミトコンドリア調節不全である。なおさらなる実施形態において、ミトコンドリア病または障害は、進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群、MELAS症候群(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様エピソード)、MERFF症候群(ミオクロヌス性癲癇および赤色ぼろ線維)、肢帯筋分布の弱体化(limb-girdle distribution weakness)、または乳児性筋疾患(良性または重度および致死性)などのミトコンドリア筋疾患である。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、療法において使用するための化合物または医薬組成物を提供し、前記化合物は、エタノールの含有量が4000ppm未満であり、他の溶媒の含有量が1000ppm未満であり、90%を越える化学純度(w/w)を有する、実質的に異性体的に純粋なβ−D−ニコチンアミドリボシド(2R(β)ニコチンアミドリボシド)クロリド結晶(3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウム(β−D−ニコチンアミドリボシド(または2R(β)ニコチンアミドリボシド))である。一実施形態において、化合物または医薬組成物は、NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害(例えば、インスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満、またはミトコンドリア病もしくは障害)の処置において使用される。
【0030】
別の態様において、化合物またはその薬学的塩は、NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害(例えば、インスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満、またはミトコンドリア病もしくは障害)の処置において使用するための医薬の製造において使用するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、ナイアシンの組み込みのためのPreiss−Handler経路、外因性NRを利用するNR経路、およびニコチン酸の組み込みのためのNAMPT経路を含む、NAD代謝に影響を及ぼすNAD生合成経路を示す。異なる生合成経路に網掛けを施し、相応に表示している。示される化合物の略号:ADP−アデノシン二リン酸;ATP−アデノシン三リン酸;NA−ニコチン酸;NAAD−ニコチン酸アデニンジヌクレオチド;NAD−ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド;NAMN−ニコチン酸モノヌクレオチド;NM−ニコチンアミド;NMN−ニコチンアミドモノヌクレオチドNR−ニコチンアミドリボシド;PRPP−5−ホスホリボース−1−ピロリン酸;PPi−ピリリン酸。酵素の略号:NAD消費酵素には、ADPリボシルトランスフェラーゼ、ポリ−ADPリボシルトランスフェラーゼ、およびサーチュインが含まれる;NADSYN−NADシンセターゼ;NAPRT−ニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ;NAMPT−ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ;NMNAT−ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ。
【
図2】
図2は、ニコチンアミドリボシドクロリドの化学構造およびナンバリング法を示す。
【
図3】
図3は、平面偏光下、890倍でのニコチンアミドリボシドクロリド−0.9メタノール塩結晶の写真である。
【
図4】
図4は、ニコチンアミドリボシドクロリドメタノレート塩結晶のX線粉末回折パターンである。
【
図5】
図5は、平面偏光下、890倍でのニコチンアミドリボシドクロリド塩結晶の写真である。
【
図6】
図6は、エタノールが5000ppm未満である、エタノールからのニコチンアミドリボシドクロリド結晶のX線粉末回折パターンである。
【
図7】
図7は、メタノール溶液から結晶化した結晶性ニコチンアミドリボシドメタノレートの赤外線吸収スペクトルである。
【
図8】
図8は、エタノール溶液から結晶化した結晶性ニコチンアミドリボシドの赤外線吸収スペクトルである。
【
図9】
図9は、エタノールから結晶化したニコチンアミドリボシドクロリドのD
2O中の
1H NMRスペクトルである。
【
図10】
図10は、d
6−DMSO(化学式((CD
3)
2S=Oを有する重水素化DMSO)中のニコチンアミドリボシドクロリドの
1H NMRスペクトルである。
【
図11】
図11は、
図10に示されるd
6−DMSO中のニコチンアミドリボシドの
1H NMRスペクトルに対する溶媒の
1H NMRスペクトル。
【
図12】
図12は、純度および同一性の証拠となるニコチンアミドリボシドのCOSY(相関分光法)NMRスペクトルである。
【
図13】
図13は、ニコチンアミドリボシドの
13C NMRスペクトルである。
【
図14】
図14は、プロトン(−H)の位置を示すニコチンアミドリボシドのDEPT135 (Distortionless Enhancement by Polarization Transfer)NMRスペクトルである。
【
図15】
図15は、炭素−プロトンのカップリングを示すD
2O溶液中のニコチンアミドリボシドのHSQC(異核単一量子コヒーレンス(Heteronuclear Single Quantum Coherence))NMRスペクトルである。
【
図16】
図16は、NRクロリドは6時間および24時間の両方で皮膚線維芽細胞からのNADレベルを用量依存的に上昇させたことを示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、ニコチンアミドリボシドクロリド製剤およびヒトなどの哺乳動物において臨床病態の予防または治療に前記製剤を使用するための方法を提供し、そのためにはNAD前駆体が指示され、その方法は、治療上有効な量のβ−D−ニコチンアミドリボシドクロリドの投与を含んでなる。特に、本発明は、インスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満、またはミトコンドリア病または障害などのNADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害の予防または治療のためのそのような方法を提供する。
【0033】
β−D−ニコチンアミドリボシドクロリドは単独で投与することが可能であるが、医薬処方物として提供してもよい。従って、本発明はさらに、β−D−ニコチンアミドリボシドクロリドと薬学上許容可能な担体または賦形剤と場合により1以上の他の治療成分を含んでなる医薬処方物を提供する。
【0034】
以下、用語「有効成分」は、文脈がそうではないことを示さない限り、β−D−ニコチンアミドリボシドクロリドを意味する。
【0035】
処方物には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内および関節内を含む)、吸入(様々なタイプの定用量与圧エアゾール、ネブライザーまたは通気器の手段により生成され得る微粒子ダストまたはミストを含む)、直腸および局所(皮膚、口内、舌下および眼内を含む)投与に好適なものが含まれるが、最も好適な経路は例えばレシピエントの病態および障害によって異なり得る。処方物は好都合には単位投与形で提供でき、製薬分野で周知の方法のいずれかによって調製できる。総ての方法には、有効成分を、1以上の補助成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、本処方物は、有効成分を液体担体もしくは微粉固体担体または両方と均一かつ緊密に会合させ、次に、必要に応じて、生成物を所望の処方物に成形することによって調製される。
【0036】
各カプセル剤またはカートリッジは一般に、20mg〜10gの有効成分を場合により別の治療上有効な成分と組み合わせて含有し得る。あるいは、本発明の化合物は賦形剤を用いずに調製してもよい。本処方物の包装は単位用量または多用量送達に好適であり得る。
【0037】
好ましい単位投与処方物は、有効成分の以下に挙げられるような有効用量またはその適当な分数を含有するものである。
【0038】
特に上記で述べた成分に加え、本発明の処方物は、対象とする処方物のタイプを考慮して当技術分野で慣例の他の薬剤を含んでもよいと理解されるべきであり、例えば、経口投与に好適なものは香味剤を含み得る。
【0039】
本発明による化合物および医薬処方物は、例えば、他のNAD前駆体、このようなニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、および/またはナイアシン(ニコチン酸またはビタミンB3)から選択される1以上の他の治療薬と併用可能であるか、またはそれらを含み得る。よって、本発明は、さらなる態様において、β−D−ニコチンアミドリボシドを例えば抗炎症薬(例えば、コルチコステロイドまたはNSAID)から選択される1以上の他の治療活性剤とともに含んでなる組合せを提供する。
【0040】
医薬組成物、用量、および投与計画
療法において使用する場合、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド塩は、通常、医薬組成物として処方される。このような組成物は、種々の手順を用いて調製することができる。
【0041】
よって、本発明はさらに、β−D−ニコチンアミドリボシドクロリドと薬学上許容可能な担体とを含んでなる、インスリン抵抗性、代謝症候群、糖尿病、肥満、またはミトコンドリア病もしくは障害などのNADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害の処置において使用するための医薬組成物を提供する。
【0042】
例えば、周囲温度および/または大気圧で混合することにより調製され得る本発明の医薬組成物は、通常、経口、非経口または直腸投与に適合され、従って、錠剤、カプセル剤、経口液体製剤、散剤、顆粒、トローチ剤、再構成可能な散剤、注射可能もしくは注入可能な溶液もしくは懸濁液、または坐剤の形態であり得る。
【0043】
錠剤またはカプセル剤などの経口投与可能な医薬組成物が一般に調製される。
【0044】
経口投与用の錠剤またはカプセル剤は、単位用量形態であってもよく、結合剤(例えば、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはデンプン)、増量剤(例えば、マンニトールまたはラクトース)、微晶質セルロース、滑沢剤、例えば、打錠滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸)、崩壊剤、例えば、錠剤崩壊剤、および/または薬学上許容可能な湿潤剤など1以上の賦形剤を含有し得る。錠剤はコーティング、例えば、錠剤コーティング法に従って、例えば、フィルムコーティングしてもよい。カプセル剤は、本発明の化合物または塩と例えば粉末またはペレット形態の1以上の賦形剤とを含有する硬または軟カプセルであり得る。
【0045】
経口液体製剤は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップまたはエリキシル剤の形態であってもよく、または使用前に水もしくは他の好適なビヒクルで再構成するための乾燥製剤の形態であってもよい。このような液体製剤は、沈殿防止剤、乳化剤、非水性ビヒクル(可食油を含み得る)、および/または保存剤、および/または、所望により、香味剤および/または着色剤などの1または複数の添加剤を含有し得る。
【0046】
非経口投与では、液体単位投与形が一般に本発明の化合物またはその薬学上許容可能な塩および無菌ビヒクルを使用して調製される。化合物または塩は、例えば、使用するビヒクルおよび/または濃度に応じて、ビヒクル中に懸濁または溶解されることができる。溶液を調製する場合、化合物または塩は注射のために溶解させ、濾過除菌した後に、好適なバイアルまたはアンプルに充填し密閉することができる。局所麻酔薬、保存剤および/または緩衝剤などの添加剤はビヒクルに溶解させることができる。安定性を高めるために、組成物をバイアルに充填した後に凍結させ、真空下で水を除去することができる。非経口懸濁液は一般に、化合物または塩が溶解されるのではなくビヒクル中に懸濁され、滅菌法が一般に濾過により達成されないことを除き、実質的に同じ方法で調製される。一実施形態において、化合物または塩は、例えば、無菌ビヒクル中に懸濁させる前にエチレンオキシドに曝すことによって除菌される。一実施形態において、界面活性剤または湿潤剤は、化合物または塩の均一な分布を助長するために組成物中に含まれる。
【0047】
本医薬組成物は、組成物の0.1%〜99重量%の活性材料(すなわち、β−D−ニコチンアミドリボシドクロリド塩)、特に、組成物の1〜60重量%または10〜60重量%の活性材料を含有し得る。例えば、これは投与経路および/または組成物の意図される使用によって異なり得る。
【0048】
医薬組成物中の薬学上許容可能な担体の総量は、例えば、医薬組成物および/またはその意図される使用および/または投与経路によって異なり得る。一実施形態において、医薬組成物中の薬学上許容可能な担体の総量(例えば、またはすなわち、その中に存在する1以上の賦形剤、例えば、本明細書に述べられる賦形剤種の1以上の総量)は、組成物の1%〜99.9重量%、例えば、組成物の40%〜99重量%、例えば、40%〜90重量%の範囲である。加えてまたはあるいは、一実施形態において、単位用量形態の組成物(例えば、経口投与用組成物、例えば、錠剤またはカプセル剤)については、位用量形態医薬組成物中の薬学上許容可能な担体の総量(例えばまたはすなわち、その中に存在する1以上の賦形剤の総量)は、10mg〜10,000mg、例えば、10mg〜2000mg、20mg〜1500mg、または100mg〜約1000mgであり得る。
【0049】
例えば、上述の障害/疾患/病態の治療または予防に使用されるおよび/または医薬組成物に含まれるβ−D−ニコチンアミドリボシドクロリドの用量、例えば、経口用量は、例えば、通常、障害の重篤度、患者の体重、および/または他の同様の因子によって異なり得る。一実施形態において、このような単位用量は、1日1回、例えば、経口的におよび/またはヒトなどの哺乳動物に投与するためのものであり、あるいは、このような単位用量は、1日2回以上、例えば、1日2回または3回、例えば、経口的および/またはヒトなどの哺乳動物に投与するためのものであり得る。このような療法は数週間、数ヶ月または数年間に及んでもよい。
【0050】
例示的使用
特定の態様において、本発明は、例えば、NADのin vivoレベル(例えば、細胞内NADレベル、組織もしくは血漿中のNADのレベル、および/または生物体の総NADレベル)を上昇させることにより、NADレベルの上昇から利益を得るであろう疾患または障害を治療または予防する方法を提供する。単一の機構に限定されることを望むものではないが、NADレベルの上昇は、例えば、SIRT1およびまたはSIRT3を活性化することにより、1以上のサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を調節する働きをする。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は、NADレベルを上昇させ、サーチュインタンパク質を活性化する、例えば、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を増強するために、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物を使用する方法を提供する。サーチュインタンパク質活性の増強および/またはサーチュインレベルの上昇は、例えば、細胞の寿命の延長を含む様々な治療適用、ならびに例えば、老化もしくはストレスに関連する疾患もしくは障害、糖尿病、肥満、神経変性疾患、心血管疾患、血液凝固障害、炎症、癌、および/または紅潮などを含む多様な疾患および障害の治療および/または予防に有用であり得る。これらの方法は、必要とする対象に薬学上有効な量のニコチンアミドリボシドクロリド塩製剤または医薬製剤を投与することを含んでなる。
【0052】
特定の実施形態において、本明細書に記載のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて摂取してよい。一実施形態において、ニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、それを必要とする対象にサーチュイン調節化合物(例えば、WO2007/019346、WO2007/019344、WO2008/156866、WO2008/156869、WO2010/071853、WO2009/134973、WO2010/003048、WO2010/037127、WO2010/037129、WO2013/059587、WO2013/059589、WO2013/059594、およびWO2011/059839に記載の、例えば、アロステリックSIRT1活性剤)とともに投与され得る。別の実施形態において、ニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、下記の化合物:レスベラトロール、ブテイン、フィセチン、ピセアタンノール、またはケルセチンのうち1以上とともに投与され得る。例示的実施形態において、ニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、ニコチン酸(すなわち、ナイアシン)と組み合わせて投与され得る。
【0053】
別の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を低下させる下記の化合物:ニコチンアミド(NAM)、スラ二ン;EX527(6−クロロ−2,3,4,9−テトラヒドロ−1H−カルバゾール−1−カルボキサミド);NF023(Gタンパク質拮抗薬);NF279(プリン受容体拮抗薬);トロロックス(6−ヒドロキシ−2,5,7,8,テトラメチルクロマン−2−カルボン酸);(−)−エピガロカテキン(3,5,7,3’,4’,5’位にヒドロキシ);(−)−没食子酸エピガロカテキン(ヒドロキシ位5,7,3’,4’,5’および3位で没食子酸エステル);シアニジンクロリド(3,5,7,3’,4’−ペンタヒドロキシフラビリウムクロリド);デルフィニジンクロリド(3,5,7,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシフラビリウムクロリド);ミリセチン(カンナビスセチン;3,5,7,3’,4’,5’−ヘキサヒドロキシフラボン);3,7,3’,4’,5’−ペンタヒドロキシフラボン;ゴシペチン(3,5,7,8,3’,4’−ヘキサヒドロキシフラボン)、サーチノール;およびスプリトマイシン(例えば、Howitz et al. (2003) Nature 425:191; Grozinger et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:38837; Dedalov et al. (2001) PNAS 98:15113;およびHirao et al. (2003) J. Biol. Chem 278:52773参照)のうち1以上とともに投与され得る。さらに別の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、例えば、癌、糖尿病、神経変性疾患、心血管疾患、血液凝固、炎症、紅潮、肥満、老化、ストレスなどを含む種々の疾患の治療または予防のための1以上の治療薬とともに投与され得る。種々の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を含んでなる併用療法は、(1)本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物のうち1以上を1以上の治療薬と組み合わせて含んでなる医薬組成物;および(2)本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物のうち1以上と1以上の治療薬との併用投与、この場合、ニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物と治療薬は同じ組成物中に処方されていない、を意味し得る。別個の処方物を使用する場合、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、別の治療薬の投与と同時に、間欠的に、交互に、その前に、その後に、またはそれらの時機の組合せで投与され得る。
【0054】
特定の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を用いて疾患または障害を軽減、予防または治療するための方法はまた、サーチュイン、例えば、ヒトSIRT1またはそのホモログのタンパク質レベルを上昇させることも含んでなり得る。タンパク質レベルの上昇は、サーチュインをコードする核酸の1以上のコピーを細胞に導入することにより達成され得る。例えば、サーチュインのレベルは、哺乳動物細胞において、サーチュインをコードする核酸を哺乳動物細胞に導入すること、例えば、GenBank受託番号NP_036370で示されるアミノ酸配列をコードする核酸を導入することによりSIRT1のレベルを上昇させることによって上昇させることができる。この核酸は、SIRT1核酸の発現を調節するプロモーターの制御下にあり得る。あるいは、この核酸は、細胞のゲノム内の、プロモーターの下流の位置に導入してもよい。これらの方法を用いてタンパク質のレベルを上昇させるための方法は当技術分野で周知である。
【0055】
サーチュインのタンパク質レベルを上昇させるために細胞に導入される核酸は、サーチュインの配列、例えばGenBank受託番号NP_036370と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一のタンパク質をコードし得る。例えば、このタンパク質をコードする核酸は、GenBank受託番号NM_012238と少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であり得る。この核酸はまた、野生型サーチュイン、例えば、GenBank受託番号NM_012238をコードする核酸と好ましくはストリンジェントハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸でもあり得る。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、0.2×SSC中65℃でのハイブリダイゼーションおよび洗浄を含み得る。野生型サーチュインタンパク質とは異なるタンパク質、例えば、野生型サーチュインの断片であるタンパク質をコードする核酸を使用する場合、そのタンパク質は好ましくは生物学的に活性であり、例えば、脱アセチル化能がある。サーチュインの生物学的に活性な部分を細胞で発現させることのみが必要である。例えば、GenBank受託番号NP_036370を有する野生型SIRT1とは異なるタンパク質は、好ましくは、そのコア構造を含有する。このコア構造は、GenBank受託番号NP_036370のアミノ酸62〜293を意味する場合があり、これはGenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド237〜932によりコードされ、NAD結合ドメインならびに基質結合ドメインを包含する。SIRT1のコアドメインはまた、GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド834〜1394によりコードされるGenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸261〜447;GenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド777〜1532によりコードされるGenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸242〜493;またはGenBank受託番号NM_012238のヌクレオチド813〜1538によりコードされるGenBank受託番号NP_036370の約アミノ酸254〜495を意味する場合もある。タンパク質が生物学的機能、例えば、脱アセチル化能を保持するかどうかは、当技術分野で公知の方法に従って決定することができる。
【0056】
特定の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を用いて疾患または障害を軽減、予防または治療するための方法はまた、サーチュイン、例えば、ヒトSIRT1またはそのホモログのタンパク質レベルを低下させることも含んでなり得る。サーチュインタンパク質レベルの低下は、当技術分野で公知の方法に従って達成することができる。例えば、サーチュインを標的とするsiRNA、アンチセンス核酸、またはリボザイムを細胞内で発現させることができる。ドミナントネガティブサーチュイン突然変異体、例えば、脱アセチル化能がない突然変異体も使用可能である。例えば、例えばLuo et al. (2001) Cell 107:137に記載されているSIRT1の突然変異体H363Yが使用可能である。あるいは、転写を阻害する薬剤を使用することもできる。
【0057】
サーチュインタンパク質レベルを調節するための方法はまた、サーチュインをコードする遺伝子の転写を調節するための方法、対応するmRNAを安定化/不安定化するための方法、および当技術分野で公知のその他の方法を含む。
【0058】
老化/ストレス
本発明の一態様において、NADレベルの上昇から利益を受けるであろう疾患または障害は、老化および/またはストレスに関連する。よって、一実施形態において、本発明は、細胞を本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物と接触させることにより、細胞の寿命を延長する、細胞の増殖能を拡大する、細胞の老化を緩慢にする、細胞の生存を増進する、細胞における細胞老化を遅延させる、カロリー制限の効果を模倣する、ストレスに対する細胞の耐性を高める、または細胞のアポトーシスを防ぐ方法を提供する。
【0059】
例えば、本明細書に記載の方法は、細胞、特に初代細胞(すなわち、生物体、例えばヒトから得られた細胞)細胞培養で生きた状態で維持され得る時間を増やすために使用され得る。また、胚性幹(ES)細胞および多能性細胞、ならびにそれらから分化した細胞も、それらの細胞、またはそれらの後代をより長い期間、培養維持するために、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を上昇させるサーチュイン調節化合物で処理され得る。このような細胞は、例えばex vivo修飾の後に対象に移植するために使用することができる。
【0060】
一実施形態において、長期間保存することが意図される細胞が、NADのin vivoレベル(すなわち、細胞内NADレベル)を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物で処理され得る。これらの細胞は、懸濁液(例えば、血液細胞、血清、生物学的増殖培地など)または組織もしくは器官中にあってよい。例えば、輸血目的で個体から採取された血液が、血液細胞をより長期間保存するためにサーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を上昇させるサーチュイン調節化合物ト製剤で処理されてもよい。加えて、法医学目的に使用される血液も、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物を用いて保存され得る。寿命を延長するためまたはアポトーシスから保護するために処理され得る他の細胞としては、消費目的の細胞、例えば、非ヒト哺乳動物(例えば、食肉)または植物細胞(例えば、野菜)由来の細胞が含まれる。
【0061】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、哺乳動物、植物、昆虫または微生物における発生および成長期に、その発生および/または成長プロセスを変更する、遅滞させる、または加速化するために適用され得る。
【0062】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、例えば、固形組織移植片、器官移植片、細胞懸濁液、幹細胞、骨髄細胞などを含む、移植または細胞療法に有用な細胞を処理するために使用され得る。この細胞または組織は、自己移植片、同種移植片、同系移植片または異種移植片であり得る。この細胞または組織は、対象への投与/移植の前に、投与/移植と同時に、および/または投与/移植後に、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物を用いて処理され得る。この細胞または組織は、ドナー個体から細胞を取り出す前、ドナー個体から細胞または組織を取り出した後にex vivoで、またはレシピエントに移植した後に処理され得る。例えば、ドナーまたはレシピエント個体は、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物で全身処置してもよく、あるいはNADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物で局所処理した細胞/組織のサブセットを有してもよい。特定の実施形態において、この細胞または組織(またはドナー/レシピエント個体)は、例えば、免疫抑制薬、サイトカイン、血管新生因子などの、移植臓器の生着を延長するために有用な別の治療薬で付加的に処理してもよい。
【0063】
さらに他の実施形態において、細胞は、例えば、それらの寿命を延長するためまたはアポトーシスを防ぐために、in vivoにおいてNADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物で処理され得る。例えば、皮膚は、皮膚または上皮細胞をNADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物で処理することにより、老化(例えば、しわの発達、弾性の欠如など)から保護することができる。例示的実施形態において、皮膚を、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を含んでなる医薬組成物と接触させる。本明細書に記載の方法に従って処置され得る例示的な皮膚の悩みまたは皮膚の状態には、炎症、日光損傷または自然老化に関連するまたはそれらにより引き起こされる障害または疾患が含まれる。例えば、本組成物は、接触皮膚炎(刺激性接触皮膚炎およびアレルギー性接触皮膚炎を含む)、アトピー性皮膚炎(アレルギー性湿疹としても知られる)、日光角化症、角化障害(湿疹を含む)、表皮水疱性疾患(天疱瘡を含む)、剥脱性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、紅斑(多形性紅斑および結節性紅斑を含む)、太陽または他の光源により引き起こされる傷害、円板状紅斑性狼瘡、皮膚筋炎、乾癬、皮膚癌および自然老化の影響の予防または治療において有用性が見出せる。別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、例えば、1度、2度または3度の火傷および/または熱火傷、化学火傷または電気火傷を含め、治癒を促進するための創傷および/または火傷の処置ために使用され得る。本処方物は、本明細書にさらに記載されるように、所望の結果をもたらすのに有効な投与計画の文脈の範囲内で、皮膚または粘膜組織に、軟膏、ローション、クリーム、マイクロエマルション、ゲル、または溶液などとして局所投与され得る。
【0064】
サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を上昇させる1以上のサーチュイン調節化合物を含んでなる局所用処方物はまた、予防用、例えば化学的予防用組成物としても使用され得る。化学的予防法において使用される場合、特定の個体において可視的病態の前に、影響を受けやすい皮膚が処置される。
【0065】
本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、対象に局所的または全身的に送達され得る。一実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、注射、局所用処方物などにより対象の組織または器官に局所的に送達される。
【0066】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、対象において細胞老化により誘発されるまたは増悪する疾患または病態を治療または予防するために;例えば老化の兆候後に対象の老化の速度を低下させるための方法;対象の寿命を延長するための方法;寿命に関連する疾患または病態を治療または予防するための方法;細胞の増殖能に関連する疾患または病態を治療または予防するための方法;および細胞の傷害または死滅から生じる疾患または病態を治療または予防するための方法に使用され得る。特定の実施形態において、本方法は、対象の寿命を短縮する疾患の存在率を低減することによって作用するものではない。特定の実施形態において、方法は、癌などの疾患により引き起こされる致死率を低減することによって作用するものではない。
【0067】
さらに別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、一般にその細胞の寿命を延長するため、ならびにその細胞をストレスおよび/またはアポトーシスから保護するために対象に投与され得る。対象を本明細書に記載の化合物で処置することは、対象にホルミシス、すなわち、生物体に有益であり、それらの寿命を延長し得る軽度のストレスをかけることと同様であると考えられる。
【0068】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、細胞死から細胞を保護するために、細胞死、に関連する疾患、例えば、慢性疾患の処置のために対象に投与することもできる。例示的疾患には、神経細胞の死滅、ニューロンの機能不全、または筋細胞の死滅もしくは機能不全に関連するもの、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(amyotropic lateral sclerosis)、および筋ジストロフィー;AIDS;劇症肝炎;脳の変性に関連する疾患、例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病、色素性網膜炎および小脳変性症;再生不良性貧血などの骨髄異形成;心筋梗塞および脳卒中などの虚血性疾患;アルコール性肝炎、B型肝炎およびC型肝炎などの肝疾患;変形性関節症などの関節疾患;アテローム性動脈硬化症;脱毛症;UV光による皮膚傷害;扁平苔癬;皮膚の萎縮;白内障;および移植片拒絶が含まれる。細胞死はまた、手術、薬物療法、化学物質暴露または放射線暴露によっても引き起こされ得る。
【0069】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、急性疾患、例えば、器官または組織に対する傷害を受けている対象、例えば、脳卒中もしくは心筋梗塞を受けている対象、または脊髄損傷を受けている対象にも投与することができる。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、アルコール性肝臓を修復するためにも使用され得る。
【0070】
心血管疾患
別の実施形態において、本発明は、必要とする対象に、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を投与することにより、心血管疾患を治療および/または予防するための方法を提供する。
【0071】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物を用いて治療または予防することができる心血管疾患には、心筋症または心筋炎;例えば、特発性心筋症、代謝性心筋症、アルコール性心筋症、薬剤性心筋症、虚血性心筋症、および高血圧性心筋症が含まれる。また、大動脈、冠動脈、頸動脈、脳動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、および膝下動脈などの大血管のアテローム性障害(大血管疾患)も本明細書に記載の組成物および方法を用いて治療可能または予防可能である。治療または予防することができる他の血管疾患には、血小板凝集、網膜細動脈、糸球体細動脈、神経脈管、心細動脈、ならびに眼、腎臓、心臓、中枢神経系および末梢神経系の付随毛細血管床に関連するものが含まれる。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物はまた、個体の血漿中のHDLレベルを上昇させるためにも使用され得る。
【0072】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させるサーチュイン調節化合物で処置され得るさらに他の障害には、再狭窄、例えば冠動脈介入後のもの、ならびに高密度および低密度コレステロールの異常なレベルに関連する障害が含まれる。
【0073】
一実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、例えば、抗不整脈薬、抗高血圧薬、カルシウムチャネル遮断薬、心臓保護液、強心薬、線維素溶解薬、硬化液、血管収縮薬、血管拡張薬、一酸化窒素ドナー、カリウムチャネル遮断薬、ナトリウムチャネル遮断薬、スタチン、またはナトリウム利尿薬を含む別の心血管薬との組合せ治療薬の一部として投与され得る。
【0074】
一実施形態において、NADのレベルおよび/もしくは活性ならびに/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、抗不整脈薬との組合せ治療薬の一部として投与され得る。抗不整脈薬は、それらの作用機序に従って4つの主要な群に編成される:I型、ナトリウムチャネル遮断;II型、β−アドレナリン作動性遮断;III型、再分極の延長;およびIV型、カルシウムチャネル遮断。I型抗不整脈薬には、リドカイン、モリシジン、メキシレチン、トカイニド、プロカインアミド、エンカイニド、フレカイニド、トカイニド、フェニトイン、プロパフェノン、キニジン、ジソピラミド、およびフレカイニジンが含まれる。II型抗不整脈薬には、プロプラノロールおよびエスモロールが含まれる。III型には、活性電位の期間を延長することによって作用する薬剤、例えば、アミオダロン、アルチリド、ブレチリウム、クロフィリウム、イソブチリド、ソタロール、アジミリド、ドフェチライド、ドロネダロン、エルセンチロド、イブチリド、テジサミルおよびトレセチリドが含まれる。タイプIV抗不整脈剤には、ベラパミル、ジルチアゼム、ジギタリス、アデノシン、塩化ニッケルおよびマグネシウムイオンが含まれる。
【0075】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、別の心血管薬との組合せ治療薬の一部として投与され得る。心血管薬の例には、血管拡張薬、例えば、ヒドララジン;アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル;抗狭心症薬、例えば、硝酸イソソルビド、ニトログリセリンおよび四硝酸ペンタエリスリトール;抗不整脈薬、例えば、キニジン、プロカイナルチド(procainaltide)およびリグノカイン;心臓グリコシド、例えば、ジゴキシンおよびジギトキシン;カルシウム拮抗薬、例えば、ベラパミルおよびニフェジピン;利尿薬、例えば、チアジドおよび関連化合物、例えば、ベンドロフルアジド、クロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジドおよび他の利尿薬、例えば、フロセミドおよびトリアムテレン、ならびに鎮静薬、例えば、ニトラゼパム、フルラゼパムおよびジアゼパムが含まれる。
【0076】
他の例示的心血管薬には、例えば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、アスピリンまたはインドメタシン、血小板凝集阻害剤、例えば、クロピドグレル、チクロピジンまたはアスピリン、フィブリノーゲン拮抗薬または利尿薬、例えば、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、フルメチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンドロフルメチアジド、メチルクロルチアジド、トリクロロメチアジド、ポリチアジドまたはベンズチアジド、ならびにエタクリン酸トリクリナフェン(tricrynafen)、クロルタリドン、フロセミド、ムソリミン、ブメタニド、トリアムテレン、アミロライドおよびスピロノラクトンおよび、およびそのような化合物の塩、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えば、カプトプリル、ゾフェノプリル、フォシノプリル、エナラプリル、セラノプリル、シラザプリル、デラプリル、ペントプリル、キナプリル、ラミプリル、リシノプリル、およびそのような化合物の塩、アンギオテンシンII拮抗薬、例えば、ロサルタン、イルベサルタンまたはバルサルタン、血小板溶解薬、例えば、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、組換えtPA、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、プロウロキナーゼ、およびアニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼアクチベーター複合体(APSAC、Eminase、Beecham Laboratories)、または動物唾液腺プラスミノーゲン活性剤、カルシウムチャネル遮断薬、例えば、ベラパミル、ニフェジピンまたはジルチアゼム、トロンボキサン受容体拮抗薬、例えば、イフェトロバン、プロスタサイクリン模倣物またはホスホジエステラーゼ阻害剤が含まれる。このような組合せ製品は、一定用量として処方されれば、本発明の化合物を上記の用量内で、および他の薬学上活性な薬剤をその承認された用量範囲内で使用する。
【0077】
さらに他の例示的心血管薬には、例えば、血管拡張薬、例えば、ベンシクラン、シンナリジン、シチコリン、シクランデレート、シクロニケート、エブマモニン、フェノキセジル、フルナリジン、イブジラスト、イフェンプロジル、ロメリジン、ナフロール、ニカメイト(nikamate)、ノセルゴリン、ニモジピン、パパベリン、ペンチフィリン、ノフェドリン(nofedoline)、ビンカミン、ビンポセチン、ビシジル(vichizyl)、ペントキシフィリン、プロスタサイクリン誘導体(例えば、プロスタグランジンE1およびプロスタグランジンI2)、エンドセリン受容体遮断薬(例えば、ボセンタン)、ジルチアゼム、ニコランジルおよびニトログリセリンが含まれる。脳保護薬の例には、ラジカルスカベンジャー(例えば、エダラボン、ビタミンEおよびビタミンC)、グルタミン酸拮抗薬、AMPA拮抗薬、カイニン酸拮抗薬、NMDA拮抗薬、GABA作用薬、成長因子、オピオイド拮抗薬、ホスファチジルコリン前駆体、セロトニン作用薬、Na+/Ca2+チャネル阻害薬、およびK+チャネル開口薬が含まれる。脳代謝刺激薬の例には、アマンタジン、チアプリドおよびγアミノ酪酸が含まれる。抗凝血薬の例には、ヘパリン(例えば、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカリウム、ダルテパリンナトリウム、ダルテパリンカルシウム、ヘパリンカルシウム、パルナパリンナトリウム、レビパリンナトリウムおよびダナパロイドナトリウム)、ワーファリン、エノキサパリン、アルガトロバン、バトロキソビンおよびクエン酸ナトリウムが含まれる。抗血小板薬の例には、塩酸チクロピジン、ジピリダモール、シロスタゾール、イコサペント酸エチル、塩酸サルポグレラート、塩酸ジラゼプ、トラピジル、非ステロイド系抗炎症薬(例えば、アスピリン)、ベラプロストナトリウム、イロプロストおよびインドブフェンが含まれる。血栓溶解薬の例には、ウロキナーゼ、組織型プラスミノーゲン活性剤(例えば、アルテプラーゼ、チソキナーゼ、ナテプラーゼ、パミテプラーゼ、モンテプラーゼ、およびレイトプラセ(rateplase))、およびナサルプラーゼが含まれる。抗高血圧症薬の例には、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えば、カプトプリル、アラセプリル、リシノプリル、イミダプリル、キナプリル、テモカプリル、デラプリル、ベナゼプリル、シラザプリル、トランドラプリル、エナラプリル、セロナプリル、フォシノプリル、イマダプリル、モベルトプリル、ペリンドプリル、ラミプリル、スピラプリルおよびランドラプリル)、アンジオテンシンII拮抗剤(例えば、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、エプロサルタンおよびイルベサルタン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アラニジピン、エホニジピン、ニカルジピン、バミジピン、ベニジピン、マニジピン、シルニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベプリジル、クレンチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テロジリン、ベラパミル、シルニジピン、エルゴジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニモジピン、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン、ロメリジン、ベンシクラン、エタフェノンおよびペルヘキシリン)、β−アドレナリン受容体遮断薬(プロプラノロール、ピンドロール、インデノロール、カルテオロール、ブニトロロール、アテノロール、アセブトロール、メトプロロール、チモロール、ニプラジロール、ペンブトロール、ナドロール、チリソロール、カルベジロール、ビソプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ボピンドロール、ベバントロール、ラベタロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、ベフノロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフェラロール、ブプランドロール、ブチリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、モプロロール、ナドクソロール、ネビボロール(nevibolol)、オクスプレノロール、プラクトール(practol)、プロネタロール、ソタロール、スルフィナロール、タリンドロール(talindolol)、タータロール(tertalol)、トリプロロール、キシベノロールおよびエスモロール)、α−受容体遮断薬(例えば、アモスラロール、プラゾシン、テラゾシン、ドキサゾシン、ブナゾシン、ウラピジル、フェントラミン、アロチノロール、ダピプラゾール、フェンスピリド、インドラミン、ラベタロール、ナフトピジル、ニセルゴリン、タムスロシン、トラゾリン、トリマゾシンおよびヨヒンビン)、交感神経阻害剤(例えば、クロニジン、グアンファシン、グアナベンズ、メチルドーパおよびレセルピン)、ヒドララジン、トドララジン、ブドララジン、およびカドララジンが含まれる。抗狭心症薬の例には、硝酸薬(例えば、亜硝酸アミル、ニトログリセリンおよびイソソルビド)、β−アドレナリン受容体遮断薬(例えば、プロプラノロール、ピンドロール、インデノロール、カルテオロール、ブニトロロール、アテノロール、アセブトロール、メトプロロール、チモロール、ニプラジロール、ペンブトロール、ナドロール、チリソロール、カルベジロール、ビソプロロール、ベタキソロール、セリプロロール、ボピンドロール、ベバントロール、ラベタロール、アルプレノロール、アモスラロール、アロチノロール、ベフノロール、ブクモロール、ブフェトロール、ブフェラロール、ブプランドロール、ブチリジン、ブトフィロロール、カラゾロール、セタモロール、クロラノロール、ジレバロール、エパノロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノロール、モプロロール、ナドクソロール、ネビボロール(nevibolol)、オクスプレノロール、プラクトール、プロネタロール、ソタロール、スフィナロール、タリンドロール(talindolol)、タータロール(tertalol)、トリプロロールおよびキシベノロール)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アラニジピン、エホニジピン、ニカルジピン、バミジピン、ベニジピン、マニジピン、シルニジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、フェロジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベプリジル、クレンチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、プレニルアミン、セモチアジル、テロジリン、ベラパミル、シルニジピン、エルゴジピン、イスラジピン、ラシジピン、レルカニジピン、ニモジピン、シンナリジン、フルナリジン、リドフラジン、ロメリジン、ベンシクラン、エタフェノンおよびペルヘキシリン)、トリメタジジン、ジピリダモール、エタフェノン、ジラゼブ、トラピジル、ニコランジル、エノキサパリンおよびアスピリンが含まれる。利尿薬の例には、チアジド利尿薬(例えば、ヒドロクロロチアジド、メチクロチアジド、トリクロルメチアジド、ベンジルヒドロクロロチアジドおよびペンフルチジド)、ループ利尿薬(例えば、フロセミド、エタクリン酸、ブメタニド、ピレタニド、アゾセミドおよびトラセミド)、K+保持性利尿薬(スピロノラクトン、トリアムテレンおよびカンレノ酸カリウム)、浸透性利尿薬(例えば、イソソルビド、D−マンニトールおよびグリセリン)、非チアジド利尿薬(例えば、メチクラン、トリパミド、クロルタリドンおよびメフルジド)、およびアセタゾールアミドが含まれる。強心薬の例には、ジギタリス処方物(例えば、ジギトキシン、ジゴキシン、メチルジゴキシン、デスラノシド、ベスナリノン、ラナトシドC、およびプロスシラリジン)、キサンチン処方物(例えば、アミノフィリン、コリンテオフィリン、ジプロフィリンおよびプロキシフィリン)、カテコラミン処方物(例えば、ドーパミン、ドブタミンおよびドカルパミン)、PDEIII阻害剤(例えば、アムリノン、オルプリノンおよびミルリノン)、デノパミン、ユビデカレノン、ピモベンダン、レボシメンダン、アミノエチルスルホン酸、ベスナリノン、カルペリチドおよびコルホルシンダロパートが含まれる。抗不整脈薬の例には、アジュマリン、ピルメノール、プロカインアミド、シベンゾリン、ジソピラミド、キニジン、アプリンジン、メキシレチン、リドカイン、フェニルオイン(phenyloin)、ピルシカイニド、プロパフェノン、フレカイニジン、アテノロール、アセブトロール、ソタロール、プロプラノロール、メトプロロール、ピンドロール、アミオダロン、ニフェカラント、ジルチアゼム、ベプリジルおよびベラパミルが含まれる。高脂質血症薬の例には、アトルバスタチン、シンバスタチン、パラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウム、クリノフィブラート、クロフィブラート、シンフィブラート、フェノフィブラート、ベザフィブラート、コレスチミドおよびコレスチラミンが含まれる。免疫抑制薬の例には、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、タクロリムス、グスペリムスおよびメトトレキサートが含まれる。
【0078】
細胞死/癌
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、最近、ある用量の放射線または毒素を受容したまたは受容した可能性のある対象に投与されてよい。一実施形態において、ある用量の放射線または毒素を、業務関係または医療処置、例えば、原子力発電所での業務、航空機での飛行、X線、CATスキャン、または医療画像用の放射性色素の投与の一環として受け、このような実施形態において、化合物は予防的手段として投与される。別の実施形態において、放射線または毒素暴露を、意図的ではなく、例えば、産業的事故、自然放射線を受ける場所での居住、テロリストの行為または放射性もしくは毒性材料を含む戦争行為の結果として受ける。そのような場合、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物が、好ましくは、アポトーシス、および続いて起こる急性放射線症候群の発生を阻止するために、暴露後、可能な限りすぐに投与される。
【0079】
本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、癌を治療および/または予防するためにも使用され得る。特定の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物が癌を治療および/または予防するために使用され得る。カロリー制限は、癌を含む加齢関連障害の発生の低減に関連付けられている(例えば、Bordone and Guarente, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. (2005 epub); Guarente and Picard, Cell 120: 473-82 (2005); Berrigan, et al., Carcinogenesis 23: 817-822 (2002);およびHeilbronn and Ravussin, Am. J. Clin. Nutr. 78: 361-369 (2003)参照)。加えて、酵母由来のSir2タンパク質は、カロリー制限の酵母モデルであるグルコース制限によって、寿命延長に必要であることが示されている(例えば、Lin et al., Science 289: 2126-2128 (2000); Anderson et al., Nature 423: 181-185 (2003)参照)。従って、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性の上昇は、加齢関連障害、例えば、癌の発生を治療および/または予防するのに有用であり得る。
【0080】
他の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、癌を治療または予防する目的で、サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を低下させるサーチュイン調節化合物と併用され得る。例えば、阻害化合物は、p53などの物質のアセチル化を刺激し、それによりアポトーシスを増大させるため、ならびに細胞および生物体の寿命を短縮し、それらのストレス感受性を高め、かつ/または細胞または生物体の放射線感受性および/もしくは化学感受性を高めるために使用され得る。よって、阻害化合物は、例えば、癌を治療するために使用され得る。サーチュイン調節化合物を使用して治療され得る例示的な癌は、脳および腎臓の癌;乳癌、前立腺癌、精巣癌、および卵巣癌を含むホルモン依存性癌;リンパ腫および白血病である。固形腫瘍を伴う癌では、調節化合物を腫瘍に直接投与してもよい。血液細胞の癌、例えば白血病は、調節化合物を、血流または骨髄中へ投与することにより処置することができる。良性細胞増殖、例えば疣贅も治療することができる。処置可能な他の疾患には、自己免疫性疾患、例えば、自己免疫性細胞を除去すべき、全身性紅斑性狼瘡、硬皮症、および関節炎が含まれる。ヘルペス、HIV、アデノウィルスおよびHTLV−1関連の悪性腫瘍および良性障害などのウイルス感染も、サーチュイン調節化合物の投与により処置することができる。あるいは、細胞を対象から取得し、特定の望ましくない細胞、例えば癌細胞を除去するためにex vivoで処理し、同じまたは異なる対象に再び投与することもできる。
【0081】
さらに、化学療法薬をニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物と併用投与してもよい。抗癌活性を有するとして本明細書に記載されている化学療法薬(例えば、アポトーシスを誘導する化合物、寿命を短縮する化合物、または細胞をストレス感受性とする化合物)には、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ベスレリン、ブスルファン、カンポテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロンドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストロムスチン、エトポシド、エクセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセリレン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン(ironotecan)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、マイトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバシン、ラルチトレキセド、リツキマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンが含まれる。
【0082】
これらの化学療法薬は、それらの作用機序によって、例えば以下の群に分類することができる:ピリミジン類似体(5−フルオロウラシル、フルオキシウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)ならびにプリン類似体、葉酸拮抗薬および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン))などの抗代謝産物/抗癌剤;ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)などの天然産物、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロンおよびナベルビンなどの微小管崩壊剤、エピジポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxin)(テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド、メルファラン、マークロレタミン(merchlorethamine)、マイトマイシン、マイトキサントロン、ニトロソ尿素、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミドおよびエトポシド(VP16))を含む抗増殖剤/抗有糸分裂剤;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、マイトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシンなどの抗生剤;酵素(全身的にL−アスパラギンを代謝し、それら自身ではアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を取り除くL−アスパラギナーゼ);抗血小板薬;ナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート−ブスルファン、ニトロソ尿素(カルムスチン(BCNU)および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン(trazene)−ダカルバジニン(DTIC)などの抗増殖/抗有糸分裂アルキル化薬;葉酸類似体(メトトレキサート)などの抗増殖/抗有糸分裂代謝拮抗物質;白金錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバシン、ヒドロキシ尿素、ミトタン、アミノグルテチミド;ホルモン、ホルモン類似体(エストロゲン、タモキシフェン、ゴセリレン、ビカルタミド、ニルタミド)およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナソトロゾール);抗凝固薬(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤);線維素溶解薬(例えば、組織プラスミノーゲン活性剤、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、COX−2阻害剤、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ;抗遊走剤;抗分泌剤(ブレベルジン);免疫抑制薬(シクロスポリン、タクロリムス(FK−506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);抗血管新生化合物(TNP−470、ゲニスティン)および成長因子阻害剤(血管内皮成長因子(VEGF)阻害剤、線維芽細胞成長因子(FGF)阻害剤、上皮細胞成長因子(EGF)阻害剤);アンギオテンシン受容体遮断薬;一酸化窒素ドナー;アンチセンスオリゴヌクレオチド;抗体(トラスツズマブ);細胞周期阻害剤および分化誘導剤(トレチノイン);mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(ドキソルビシン(アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシン、イリノテカン(CPT−11)およびマイトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド(コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルペドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾンおよびプレニゾロン);成長因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤;ミトコンドリア機能不全誘導剤およびカスパーゼ活性剤;クロマチン撹乱物質。
【0083】
これらの化学療法薬は、それら自体で、または細胞死を誘導するもしくは寿命を短縮するもしくはストレス感受性を高めるとして本明細書に記載されるニコチンアミドリボシド製剤とともに、および/または他の化学療法薬と組み合わせて使用され得る。限定されるものではないが表1に挙げられているものと含め、多くの組合せ治療が開発されている。
【0085】
従来の化学療法薬に加えて、細胞死の誘導または寿命の短縮が可能として本明細書に記載されるニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、従来の化学療法の標的である望ましくない細胞増殖に寄与する細胞成分の発現を抑制するために、アンチセンスRNA、RNAiまたは他のポリヌクレオチドと併用することもできる。そのような標的は、単に例示であるが、成長因子、成長因子受容体、細胞周期調節タンパク質、転写因子、またはシグナル伝達キナーゼである。
【0086】
本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物と従来の化学療法薬とを含んでなる併用療法は、その組合せは、従来の化学療法薬がより低用量でより大きな効果を発揮することを可能にするので、当技術分野で公知の併用療法にわたって有益であり得る。好ましい実施形態において、ニコチンアミドリボシドクロリド製剤と併用する場合、化学療法薬、または従来の化学療法薬との組合せに関する有効用量(ED50)は、化学療法薬単独のED50より多くても2分の1、より好ましくは5の1、10分の1、さらには25分の1である。逆に、そのような化学療法薬またはそのような化学療法薬の組合せの治療指数(TI)は、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物と併用する場合、従来の化学療法レジメン単独のTIの少なくとも2倍、より好ましくは5倍、10倍、さらには25倍である。
【0087】
神経細胞疾患/障害
特定の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、神経変性疾患、および中枢神経系(CNS)または末梢神経系(PNS)に対する外傷性または物理的損傷を受けている患者を処置するために使用することができる。神経変性疾患は、一般に、萎縮および/または脳細胞の死滅によるものであり得、健常者における老化に起因し得るものよりはるかに顕著である、ヒトの脳の質量および体積の減少を含む。神経変性疾患は、特定の脳領域の進行性の変性(例えば、神経細胞の機能不全および死滅)のために、長期の正常な脳機能の後に徐々に進行する。脳変性の実際の端緒は、臨床発現の何年も前に起こる。神経変性疾患の例には、限定されるものではないが、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリグ病)、びまん性レビー小体病、舞踏病有棘赤血球増加症、原発性側索硬化症、眼疾患(眼性神経炎)、化学療法誘発性神経障害(例えば、ビンクリスチン、パクリタキセル、ボルテゾミブによる)、糖尿病誘発性神経障害およびフリートライヒ運動失調が含まれる。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、これらの障害および以下に記載する他の障害を処置するために使用することができる。
【0088】
ADは、慢性、難治性かつ停止不能のCNS障害であり、徐々に起こり、記憶喪失、異常行動、人格変化、および思考力の低下をもたらす。これらの喪失は、特定のタイプの脳細胞の死滅と、その間の接続の破壊に関連する。ADは、幼児退行(childhood development in reverse)として説明されてきた。ほとんどのAD者は、60歳以降に症状が現れる。最も早い症状は、近時記憶の喪失、間違った判断および人格の変化が含まれる。疾患の後期では、AD者は、手を洗うような簡単な作業の方法も忘れてしまうことがある。やがてAD者は、推論能力を総て失い、毎日の世話を他者に依存するようになる。最終的に、この疾患は、寝たきりになるほど衰弱し、一般に、合併疾患を発症する。
【0089】
PDは、慢性、難治性かつ停止不能のCNS障害であり、徐々に起こり、制御を欠いた体の動き、硬直、振戦および歩行障害をもたらす。これらの運動系の問題は、筋肉の活動の制御を助ける化学物質であるドーパミンを産生する脳領域の脳細胞の死滅に関連する。ほとんどのPD者は、50歳以降に症状が現れる。PDの初期症状は、四肢、特に手および唇に影響する顕著な振戦である。続いて見られるDPの特徴的な症状は、動きの堅さまたは遅さ、引きずり歩行、前屈姿勢およびバランス障害である。記憶喪失、痴呆、鬱、情緒の変化、嚥下困難、異常な話し方、性的機能不全、ならびに膀胱および内臓障害などの広範な二次症状がある。これらの症状は、フォークを持つまたは新聞を読むなどの日常の活動に支障をきたし始める。最終的に、PD者は、寝たきりになるほど著しく能力を喪失する。
【0090】
ALS(運動神経疾患)は、慢性、難治性おかつ停止不能のCNS障害であり、脳と骨格筋を接続するCNSの成分である運動神経を攻撃する。ALSでは、運動神経が劣化し、やがて死に至るが、人の脳は通常、完全な機能状態で保たれ、注意を怠りないが動けという指令が筋肉に届かない。ALSを発症するほとんどの人は、40〜70歳である。弱くなる最初の運動神経は、腕または足へ至る神経である。ALS者には、歩行困難、ものを落とす、落下、不明瞭な会話、笑いや泣きの制御不能が見られ得る。やがて、四肢の筋肉が萎縮し始めて使えなくなる。この筋肉の弱化が衰弱を招き、人は車椅子を要し、あるいはベッドから起きられなくなる。
【0091】
これらの神経性疾患の原因は、ほとんどわからないままである。それらは、慣例的に特殊な疾患として定義されているが、それでも、基本的なプロセスにおいて驚くべき類似性を明らかに示し、単に偶然に予期されるものよりもずっと大きくオーバーラップする症状を共通に示す。現在の疾患の定義は、このオーバーラップの問題を適切に扱うことができておらず、神経変性障害の新しい分類が求められている。
【0092】
HDは、脳の特定の領域内のニューロンの遺伝的にプログラムされた変性から起こるもう1つの神経変性疾患である。この変性は、制御を欠いた動き、知的能力の喪失、および情緒障害を引き起こす。HDは、家族性疾患であり、野生型遺伝子における優性突然変異によって親から子供に受け継がれる。HDのいくつかの初期症状は、気分変動、鬱、易刺激性、または運転、新しいことの学習、事実の思い出し、意思決定の問題である。疾患が進行するにつれ、知的作業における集中力がますます難しくなり、患者は自分で食事を取り、嚥下するのが困難になり得る。
【0093】
テイ・ザックス病およびサンドホフ病は、リソソームβ−ヘキソサミニダーゼの欠乏によって起こる糖脂質蓄積症である(Gravel et al., in The Metabolic Basis of Inherited Disease, eds. Scriver et al., McGraw-Hill, New York, pp. 2839-2879, 1995))。両障害とも、GM2ガングリオシドおよびβ−ヘキソサミニダーゼの関連糖脂質基質が、神経系に蓄積し、急性の神経変性を誘発する。最も重症な形態では、症状の端緒は初期の幼児期に始まる。その後、急激な神経変性進行が起こり、罹患幼児は、運動機能不全、発作、失明、および聴覚消失を示す。死は、通常、2〜5歳までに起こる。アポトーシス機構によるニューロンの喪失が実証されている(Huang et al., Hum. Mol. Genet. 6: 1879-1885, 1997)。
【0094】
アポトーシスが免疫系のAIDS病因に役割を果たすことはよく知られている。しかしながら、HIV−1も神経性疾患を誘発する。Shi et al. (J. Clin. Invest. 98: 1979-1990, 1996)は、in vitroモデルおよびAIDS患者由来の脳組織においてCNSのHIV−1感染によって誘導されたアポトーシスを調べ、in vitroにおいて、初代脳培養物のHIV−1感染がニューロンおよび星状細胞においてアポトーシスを誘導したことを見出した。ニューロンおよび星状細胞のアポトーシスはまた、HIV−1痴呆を患う5名中5名の患者および非痴呆患者5名中4名を含むAIDS患者11名中10名の脳組織でも検出された。
【0095】
ニューロン喪失はまた、ヒトにおけるクロイツフェルト・ヤコブ病、ウシにおけるBSE(狂牛病)、ヒツジおよびヤギにおけるスクレイピー病、およびネコにおける猫海綿状脳症(FSE)などの、プリオン疾患の顕著な特徴である。サーチュインタンパク質のレベルおよび/または活性を上昇させるサーチュイン調節化合物は、これらの既往症によるニューロン喪失を治療または予防するのに有用であり得る。
【0096】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、軸索障害を含む疾患または障害を治療または予防するために使用され得る。遠位軸索障害は、末梢神経系(PNS)ニューロンの何らかの代謝性または毒性混乱から生じる末梢神経障害の1種である。それは、代謝性または毒性の撹乱に対する神経の最も一般的な応答であり、従って、糖尿病、腎不全、栄養失調やアルコール依存症のような欠乏症候群などの代謝性疾患、または毒素もしくは薬物の影響によって引き起こされ得る。遠位軸索障害の最も一般的な原因は糖尿病であり、最も一般的な遠位軸索障害は糖尿病性神経障害である。軸索の最遠位部分が通常、最も早く変性し、軸索の萎縮は、神経の細胞体に向かってゆっくり進んでいく。有害な刺激が除去されれば再生が可能であるが、予後は、刺激の期間および重篤度に応じて低下する。遠位軸索障害を有する者は、通常、対称性の手袋靴下型の感覚−運動障害を呈する。罹患領域では、深部腱反射および自律神経系(ANS)機能も喪失または低下する。
【0097】
糖尿病性神経障害は、糖尿病に関連する神経障害である。これらの病態は、通常、神経に供給を行う小血管(神経脈管)を含む糖尿病性の微小血管損傷から生じる。糖尿病性神経障害に関連し得る一般的な病態として、第三神経麻痺;単神経障害;多発性単神経炎;糖尿病性筋萎縮症;有痛性多発神経障害;自律神経障害;および胸腹部神経障害が含まれる。糖尿病性神経障害の臨床像には、例えば、感覚運動の多発神経障害、例えば、しびれ感、感覚喪失、知覚過敏および夜間疼痛;自律神経障害、例えば、胃排出遅延または胃アトニー;および頭部神経障害、例えば、眼球運動(第三)神経系障害または胸部神経もしくは腰部脊椎神経の単神経系障害が含まれる。
【0098】
末梢神経障害は、末梢神経系の神経の損傷に関する医学用語であり、これは、神経の疾患によって、または全身的病気の副作用から起こり得る。末梢神経障害は、徴候およびが様々であり、神経または神経筋接合部に影響を及ぼし得る。末梢経障害の主な原因としては発作、栄養欠乏およびHIVが含まれるが、糖尿病が最も可能性の高い原因である。1箇所に長時間いることからの物理的圧力、腫瘍、神経内出血、放射線、低温または毒性物質などの極限条件への身体暴露も末梢神経障害を引き起こし得る。
【0099】
例示的実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、再発性MSおよび単一症状のMSを含む多発性硬化症(MS)、および他の脱髄性病態、例えば、クロム炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、またはそれに関連する症状を治療または予防するために使用され得る。
【0100】
MSは、慢性の、多くの場合能力喪失性の、中枢神経系の疾患である。この障害の原因は確定されていないが、エビデンスの様々な収束する線が、この疾患が免疫機能の撹乱によって引き起こされる可能性を指摘している。この撹乱は、免疫系の細胞に、中枢神経系(「CNS」)に位置する神経軸索を取り囲む脂肪含有絶縁鞘であるミエリンを「攻撃」させる。ミエリンが傷害されると、電気パルスが脳および脊髄中の神経線維経路に沿って迅速にまたは正常に伝わらない。その結果、軸索内部の正常な電気伝導性の破壊、疲労および視覚、体力、協調、バランス、感覚、ならびに膀胱および腸機能の障害が起こる。
【0101】
従って、MSは、CNSのどこでも起こり得る炎症と脱髄の偶発的まだら状態を特徴とする現在では一般的な周知の神経障害である。しかしながら、大抵の場合、それに関連する末梢神経の関与はない。脱髄により、電気コードを取り囲む絶縁体に割れ目または裂け目によって起こる状態と類似の状態が作り出される。すなわち、絶縁鞘が崩壊すると、回路は「短絡」し、それに関連する電気装置は、断続的に機能するかまたは全く機能しなくなる。神経線維を取り巻くミエリンのこのような損失の結果、脳および脊髄を横断する神経に短絡が起こり、それによりMSの症状が起こる。さらに、このような脱髄は、CNS全体にわたるものではなく、まだらに起こっていることが見出されている。加えて、このような脱髄は断続的である。従って、このような発生は、時間的にも空間的にも散在性である。
【0102】
病因は、血液脳関門の局部的崩壊を含み、これが局部的な免疫応答および炎症性応答を引き起こし、続いて、ミエリン、従って、ニューロンの傷害が起こると考えられる。
【0103】
臨床的には、MSは、両性に存在し、どの年齢でも起こり得る。しかしながら、その最も一般的な徴候は比較的若い成人に現れ、しばしば、視神経の傷害、無感覚の領域(感覚喪失)、または知覚異常(感覚喪失が局在する)、または筋肉の衰弱などの単一病巣を伴う。加えて、目眩、複視、局在的疼痛、失禁、ならびに腕および足の疼痛が首を曲げた時に起こることがあり、ならびに多様な一般的ではない症状も起こる。
【0104】
MSの初期の発病は一過性であることが多く、次に発病するまで、数週間、数ヶ月、または数年経過する場合がある。ある者は、何年も安定で比較的イベントのない状態を享受するが、運のない他の者は、継続的な衰退の経過をたどり完全な麻痺に至る。最も一般的には、一連の寛解と再発があり、各再発では、患者は前よりいくらか悪化する。再発は、ストレスのある事象、ウイルス感染または毒素によって誘発され得る。そこでは、体温の上昇、すなわち発熱が状態を悪くし、例えば冷浴による体温の低下が状態を向上させ得る。
【0105】
さらに別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、疾患、損傷(外科的介入を含む)、または環境的外傷(例えば、神経毒、アルコール依存症など)による外傷を含む神経に対する外傷を処置するために使用され得る。
【0106】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、以下に記載するものなどの種々のPNS障害の症状の予防、治療および緩和に有用でもあり得る。PNSは、CNSにつながり、またはそこから分岐する神経から構成される。末梢神経は、感覚、運動および自立機能を含む身体における多様な系列の機能を取り扱う。個人が末梢神経障害を有する場合、PNSの神経は傷害を受けている。神経傷害は、疾患、物理的損傷、中毒または栄養失調などの多くの原因から起こり得る。これらの薬剤は、求心性神経または遠心性神経に影響を及ぼす。傷害の原因によって、神経細胞軸索、その保護的ミエリン鞘、またはその両方が傷害または破壊され得る。
【0107】
用語「末梢神経障害」は、脳および脊髄の外側の神経−末梢神経−が傷害を受けた広い範囲の障害を包含する。末梢神経障害はまた末梢神経炎とも呼ばれ、あるいは多くの神経が含まれる場合には、多発神経障害または多発神経炎という用語が使用され得る。
【0108】
末梢神経障害は、広範性の障害であり、多くの基礎原因がある。これらの原因のいくつかは、糖尿病のように一般的であり、他のものは、アクリルアミド中毒およびある遺伝性障害のように極めて稀である。末梢神経障害の最も一般的な世界的規模の原因は、らい病である。らい病は、罹患者の末梢神経を攻撃する細菌マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)により引き起こされる。
【0109】
らい病は、米国では極めて稀であり、ここでは糖尿病が最も一般的に知られる末梢神経障害の原因である。米国およびヨーロッパの1700万人を超える人々が糖尿病関連多発神経障害を患っていると推計されている。多くの神経障害は特発性であり、その原因は発見できていない。米国における最も一般的な遺伝性末梢神経障害は、シャルコー・マリー・トゥース病であり、これは約125,000人に影響を及ぼしている。
【0110】
よく知られているもう1つの末梢神経障害がギラン・バレー症候群であり、これはサイトメガロウイルス、エプスタイン−バーウイルス、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)などのウイルス病、またはカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)およびライム病を含む細菌感染に関連する合併症から起こる。世界の罹患率は、年間100,000人中約1.7件である。末梢神経障害の他の周知の原因としては、慢性アルコール依存症、水痘−帯状疱疹ウイルス、ボツリヌス、およびポリオの感染が含まれる。末梢神経障害は原発症状として発現するか、または別の疾患による場合もある。例えば、末梢神経障害は、アミロイド神経障害、特定の癌、または遺伝性神経障害などの疾患の1症状にすぎない。このような疾患は、PNSおよびCNS、ならびに他の身体組織に影響を及ぼし得る。
【0111】
サーチュインタンパク質のレベル活性を上昇させる化合物で処置可能な他のPNS疾患には、腕神経叢神経障害(頸部および第一胸部神経根、神経幹、コードおよび腕神経叢の末梢神経成分が含まれる。臨床像には、局部の疼痛、異常感覚;筋肉衰弱および上肢における感覚の低下が含まれる。これらの障害は、出産損傷;胸郭出口症候群;新生物、神経炎、放射線治療;および他の状態を含む外傷に関連し得る。Adams et al., Principles of Neurology, 6th ed, pp1351-2); Diabetic Neuropathies (peripheral, autonomic, and cranial nerve disorders that are associated with diabetes mellitus)参照。これらの病態は、通常、神経に供給を行う小血管(神経脈管)を含む糖尿病性微小血管損傷から起こる。糖尿病性神経障害に関連し得る比較的一般的な病態としては、第三神経麻痺;単神経障害;多発性単神経障害;糖尿病性筋萎縮症;有痛性多発神経障害;自律神経障害;および胸腹部神経障害(Adams et al., Principles of Neurology, 6th ed, p1325参照);単神経障害(隔離された単一の末梢神経性神経を含む疾患もしくは外傷、拡散末梢神経機能不全のエビデンスとの不調和)が含まれる。多発性単神経障害は、複数の隔離された神経損傷を特徴とする病態を意味する。単神経障害は、虚血;外傷性損傷;圧迫;結合組織疾患;累積外傷性障害;および他の病態;神経痛(末梢神経または頭部神経の経路または分布に沿って生じる激しいまたはうずく痛み);末梢神経系新生物(末梢神経組織から生じる新生物)を含む多様な原因から起こる。これには、神経繊維芽腫;神経鞘腫;顆粒細胞腫;および悪性末梢神経鞘腫(DeVita Jr et al., Cancer: Principles and Practice of Oncology, 5th ed, pp1750-1参照;および神経圧迫症候群(内因または外因による神経または神経根の機械的圧迫)が含まれる。これらの結果として、例えば、ミエリン鞘機能不全または軸索喪失による神経インパルスへの伝導遮断が生じ得る。神経および神経鞘の損傷は、虚
血;炎症;または直接的機械的作用;神経炎(末梢神経または頭部神経の炎症を示す一般用語)により引き起こされ得る。臨床像には、疼痛;感覚異常;運動麻痺;または感覚過敏;多発性神経障害(多発性末梢神経の疾患)が含まれる。影響を受けた神経の種類(例えば、感覚、運動または自律)によって、神経損傷の分布(例えば、遠位か近位か)によって、原発的に影響を受けた神経成分(例えば、脱髄か軸索か)によって、病因によって、または遺伝のパターンよって種々の形態が分類される。
【0112】
一実施形態において、組合せ薬物レジメンは、神経変性障害またはこれらの病態に関連する二次病態の治療または予防のための薬物または化合物を含み得る。よって、組合せ薬物レジメンは、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる1以上の本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物と1以上の抗神経変性薬とを含有し得る。例えば、例えば、1以上の本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を、有効量の1以上のL−DOPA;ドーパミン作用薬;アデノシンA2A受容体拮抗薬;COMT阻害剤;MAO阻害剤;NOS阻害剤;ナトリウムチャネル拮抗薬;選択性N−メチルD−アルパルテート(NMDA)受容体拮抗薬;AMPA/キナーゼ受容体拮抗薬;カルシウムチャネル拮抗薬;GABA−A受容体作用薬;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤;マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤;p38 MAPキナーゼまたはc−jun−N末端キナーゼの阻害剤;TPA;NDA拮抗薬;β−インターフェロン;成長因子;グルタミン酸阻害剤;および/または細胞治療の一部と組合わせることができる。
【0113】
例示的N−NOS阻害剤には、4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシフェノール 6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2,3−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ピロリジニル−エトキシ)−2,3−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(4−(n−メチル)ピペリジニルオキシ)−2,3−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ピロリジニル−エトキシ)−3−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(6,7−ジメトキシ−3,4−ジヒドロ−1h−イソキノリン−2−イル)−エトキシ]−3−メトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−{3−メトキシ−4−[2−(4−フェネチル−ピペラジン−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−{3−メトキシ−4−[2−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(4−ジメチルアミノ−ピペリジン−1−イル)−エトキシ]−3−メトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−3−エトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ピロリジニル−エトキシ)−3−エトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−イソプロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、4−(6−アミノ−ピリジン−イル)−3−シクロプロピル−フェノール 6−[2−シクロプロピル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロプロピル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、3−[3−(6−アミノ−ピリジン−2イル)−4−シクロプロピル−フェノキシ]−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル 6−[2−シクロプロピル−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−シクロブチル−フェノール 6−[2−シクロブチル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロブチル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロブチル−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−シクロペンチル−フェノール 6−[2−シクロペンチル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロペンチル−4−(2−ピロリジン−1イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、3−[4−(6−アミノ−ピリジン−2イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−ピロリジン−1−カルボン酸 tertブチルエステル 6−[4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、4−[4−(6−アミノ−ピリジン−2イル)−3−メトキシ−フェノキシ−]−ピペリジン−1−カルボン酸 tertブチルエステル 6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(アリルオキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−6−アリル−フェノール 12および4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−2−アリル−フェノール 13 4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−6−プロピル−フェノール 6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−メトキシ−5−プロピル−フェニル]−ピリジン−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(ピペリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(1−メチル−アゼチジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン 6−[2−イソプロピル−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(2−メチル−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−エトキシ]−2−メトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、2−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−5−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェノール 2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−アセトアミド 6−[4−(2−アミノ−エトキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(3,4−ジヒドロ−1h−イソキノリン−2−イル)−エトキシ]−2−メトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−エタノール 6−{2−メトキシ−4−[2−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−イル)−エトキシ]−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(2,5−ジメチル−ピロリジン−1−イル)−エトキシ]−2−メトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(2,5−ジメチル−ピロリジン−1−イル)−エトキシ]−2−メトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−1−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−1−イル)−エタノン 6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−ピロリジン−2−イル−メトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−プロポキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−エトキシ]−2−プロポキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン 6−[4−(2−エトキシ−エトキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−イソプロポキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−エトキシ−エトキシ)−2−イソプロポキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(3−メチル−ブトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−エトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−エトキシ]−2−エトキシ−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−エトキシ−4−(3−メチル−ブトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、1−(6−アミノ−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘクス−3−イル)−2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−エタノン 6−[2−エトキシ−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、3−{2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−エトキシ−フェノキシ]−エチル}−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘクス−6−イル−アミン、1−(6−アミノ−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘクス−3−イル)−2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−エタノン 3−{2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−エチル}−3−アザ−ビシクロ[3.−1.0]ヘクス−6−イル−アミン、6−[2−イソプロポキシ−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−エトキシ]−2−イソプロポキシ−フェニル−}−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−メトキシ−5−プロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、
6−[5−アリル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[5−アリル−2−メトキシ−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[3−アリル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−エトキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロポキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロポキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、3−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−メトキシ−フェノキシ]−アゼチジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル 6−[4−(アゼチジン−3−イル−オキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−アゼチジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロポキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロポキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(2−メチル−2−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−メトキシ−4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(1−エチル−ピペリジン−4−イル−オキシ)−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[5−アリル−2−メトキシ−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2,6−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2,6−ジメチル−4−(3−ピペリジン−1−イル−プロポキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2,6−ジメチル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{2,6−ジメチル−4−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−プロポキシ]−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2,6−ジメチル−4−(2−モルホリン−4−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−{4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−エトキシ]−2,6−ジメチル−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、2−[4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3,5−ジメチル−フェノキシ]−アセタミド 6−[4−(2−アミノ−エトキシ)−2,6−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−イソプロピル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、2−(2,5−ジメチル−ピロリジン−1−イル)−6−[2−イソプロピル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン 6−{4−[2−(3,5−ジメチル−ピペリジン−1−イル)−エトキシ]−2−イソプロピル−フェニル}−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2−イソプロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−tert−ブチル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−tert−ブチル−4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル−]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ピロリジニル−エトキシ)−2,5−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−2,5−ジメチル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−(4−フェネチルピペラジン−1−イル)−エトキシ)−2,5−ジメチル−フェニル−l]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロプロピル−4−(2−ジメチルアミノ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[シクロブチル−4−(2−ジメチルアミノ−1−メチル−エトキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(アリルオキシ)−2−シクロブチル−フェニル]−ピリジン−2イルアミン、2−アリル−4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−3−シクロブチル−フェノールおよび2−アリル−4−(6−アミノ−ピリジン−2−イル)−5−シクロブチル−フェノール 4−(6−アミノ−ピリジン−イル)−5−シクロブチル−2−プロピル−フェノール 4−(6−アミノ−ピリジン−2イル)−3−シクロブチル−2−プロピル−フェノール 6−[2−シクロブチル−4−(2−ジメチルアミノ−1−メチル−エトキシ)−5−プロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロブチル−4−(2−ジメチルアミノ−1−メチル−エトキシ)−3−プロピル−l−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロブチル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−5−プロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロブチル−4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−3−プロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2−シクロブチル−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−5−プロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[シクロブチル−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−3−プロピル−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、2−(4−ベンジルオキシ−5−ヒドロキシ−2−メトキシ−フェニル)−6−(2,5−ジメチル−ピロール−1−イル)−ピリジン 6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−5−エトキシ−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[5−エチル−2−メトキシ−4−(1−メチル−ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[5−エチル−2−メトキシ−4−(ピペリジン−4−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[2,5−ジメトキシ−4−(1−メチル−ピロリジン−3−イル−オキシ)−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミン、6−[4−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−5−エチル−2−メトキシ−フェニル]−ピリジン−2−イル−アミンが含まれる。
【0114】
例示的NMDA受容体拮抗薬には、(+)−(1S,2S)−1−(4−ヒドロキシ−フェニル)−2−(4−ヒドロキシ−4−フェニルピペリジノ)−1−プロパノール、(1S、2S)−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシ−4−フェニルピペリジノ)−1−プロパノール、(3R,4S)−3−(4−(4−フルオロフェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル−)−クロマン−4,7−ジオール、(1R
*,2R
*)−1−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−(4−(4−フルオロ−フェニル)−4−ヒドロキシピペリジン−1−イル)−プロパン−1−オール−メシレートまたはその薬学上許容可能な酸付加塩が含まれる。
【0115】
例示的ドーパミン作用薬には、ロピニノール(ropininole);L−ドーパデカルボキシラーゼ阻害剤、例えば、カルビドーパまたはベンゼラジド、ブロモクリプチン、ジヒドロエルゴクリプチン、エチスレルギン、AF−14、アラプチド(alaptide)、ペルゴリド、ピリベジル;ドーパミンD1受容体作用薬、例えば、A−68939、A−77636、ジヒドレキシンおよびSKF−38393;ドーパミンD2受容体作用薬、例えば、カベルゴリン、リスリド、N−0434、ナキサゴリド、PD−118440、プラミペキソール、キンピロールおよびロピニロール;ドーパミン/β−アドレナリン受容体作用薬、例えば、DPDMSおよびドペキサミン;ドーパミン/5−HT取り込み阻害剤/5−HT−1A作用薬、例えば、ロキシンドール;ドーパミン/オピエート受容体作用薬、例えば、NIH−10494;α2−アドレナリン拮抗薬/ドーパミン作用薬、例えば、テルグリド;α2−アドレナリン拮抗薬/ドーパミンD2作用薬、例えば、エルゴリンおよびタリペキソール;ドーパミン取り込み阻害剤、例えば、GBR−12909、GBR−13069、GYKI−52895、およびNS−2141;モノアミンオキシダーゼ−B阻害剤、例えば、セレギリン、N−(2−ブチル)−N−メチルプロパルギルアミン、N−メチル−N−(2−ペンチル)プロパルギルアミン、AGN−1133、エルゴット誘導体、ラザベミド、LU−53439、MD−280040およびモフェギリン;ならびにCOMT阻害剤、例えば、CGP−28014が含まれる。
【0116】
例示的アセチルコリンエステラーゼ阻害剤には、ドネピジル、1−(2−メチル−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(2−フェニル−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(1−エチル−2−メチル−1H−ベンズイミダゾール−5−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(2−メチル−6−ベンゾチアゾリル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(2−メチル−6−ベンゾチアゾリル)−3−[1−[(2−メチル−4−チアゾリル)メチル]−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−メチル−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−メチル−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(3,5−ジメチル−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジン−イル]−1−プロパノン;1−(ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(ベンゾフラン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(1−フェニルスルホニル−6−メチル−インドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−メチル−インドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(1−フェニルスルホニル−5−アミノ−インドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−アミノ−インドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;および1−(5−アセチルアミノ−インドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−キノリル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−インドリル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−ベンズチエニル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−キナゾリル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−ベンゾキサゾリル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−ベンゾフラニル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−メチル−ベンズイミダゾール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−メチル−ベンズイミダゾール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−クロロ−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジン−イル]−1−プロパノン;1−(5−アザインドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−アザベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(1H−2−オキソ−ピロロ[2’,3’,5,6]ベンゾ[b]チエノ−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−メチル−ベンゾチアゾール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−メトキシ−インドール−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−メトキシ−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(6−アセチルアミノ−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;1−(5−アセチルアミノ−ベンゾ[b]チエン−2−イル)−3−[1−(フェニルメチル−)−4−ピペリジニル]−1−プロパノン;6−ヒドロキシ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジン−イル]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;5−メチル−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル−]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−メトキシ−3[2−[1(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−アセトアミド−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]−エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−アミノ−3−[2−[1−(フェニメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−(4−モルホリニル)−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジン−イル]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;5,7−ジヒドロ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−6H−ピロロ[4,5−f]−1,2−ベンズイソキサゾール−6−オン;3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,2−ベンズイソチアゾール;3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エテニル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−フェニルアミノ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,2,−ベンズイソキサゾール;6−(2−チアゾリル)−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−(2−オキサゾリル)−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,2−ベンズイソキサゾール;6−ピロリジニル−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−1,−2−ベンズイソキサゾール;5,7−ジヒドロ−5,5−ジメチル−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−6H−ピロロ[4,5−f]−1,2−ベンズイソキサゾール−6−オン;6,8−ジヒドロ−3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−7H−ピロロ[5,4−g]−1,2−ベンズイソキサゾール−7−オン;3−[2−[1−(フェニルメチル)−4−ピペリジニル]エチル]−5,6,−8−トリヒドロ−7H−イソキサゾロ[4,5−g]−キノリン−7−オン;1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イリデニル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジエトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−メチニレンジオキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−ニトロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−シクロヘキシメチル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−(m−フロロベンジル)−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジン、1−ベンジル−4−((5,6−ジメトキシ−1−インダノン)−2−イル)プロピルピペリジン、および1−ベンジル−4−((5−イソプロポキシ−6−メトキシ−1−インダノン)−2−イル)メチルピペリジンが含まれる。
【0117】
例示的カルシウムチャネル拮抗薬には、ジルチアゼム、ω−コノトキシンGVIA、メトキシベラパミル、アムロジピン、フェロジピン、ラシジピン、およびミベフラジルが含まれる。
【0118】
例示的GABA−A受容体調節剤には、クロメチアゾール;IDDB;ガボキサドール(4,5,6,7−テトラヒドロイソキサゾロ[5,4−c]ピリジン−3−オール);ガナキソロン(3−α−ヒドロキシ−3−β−メチル−5−α−プレグナン−20−オン);フェンガビン(2−[(ブチルイミノ)−(2−クロロフェニル)メチル]−4−クロロフェノール);2−(4−メトキシフェニル)−2,5,6,7,8,9−ヘキサヒドロ−ピラゾロ[4,3−c]シンノリン−3−オン;7−シクロブチル−6−(2−メチル−2H−1,2,4−トリアゾール−3−イルメトキシ)−3−フェニル−1,2,4−トリアゾロ[4,3−b]ピリダジン;(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−N−({−1−[(2−メチルフェニル)メチル]−ベンズイミダゾール−2−イル}メチル)−N−ペンチルカルボキサミド;および3−(アミノメチル)−5−メチルヘキサン酸が含まれる。
【0119】
例示的カリウムチャネル開口薬には、ジアゾキシド、フルピルチン、ピナシジル、レブシクロセリン、リルマカリム、クロマカリム、PCO−400およびSKP−450(2−[2”(1”、3”−ジオキソロン)−2−メチル]−4−(2’−オキソ−1’−ピロリジニル)−6−ニトロ−2H−1−ベンゾピラン)が含まれる。
【0120】
例示的AMPA/カイナート(kainite)受容体拮抗薬には、6−シアノ−7−ニトロキノキサリン−2,3−ジ−オン(CNQX);6−ニトロ−7−スルファモイルベンゾ[f]キノキサリン−2,3−ジオン(NBQX);6,7−ジニトロキノキサリン−2,3−ジオン(DNQX);1−(4−アミノフェニル)−4−メチル−7,8−メチレンジオキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン塩酸塩;および2,3−ジヒドロキシ−6−ニトロ−7−スルファモイルベンゾ−[f]キノキサリンが含まれる。
【0121】
例示的ナトリウムチャネル拮抗薬には、アジュマリン、プロカインアミド、フレカイニジンおよびリルゾールが含まれる。
【0122】
例示的マトリックス−メタロプロテアーゼ阻害剤には、4−[4−(4−フルオロフェノキシ)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボン酸ヒドロキシアミド;5−メチル−5−(4−(4’−フルオロフェノキシ)−フェノキシ)−ピリミジン−2,4,6−トリオン;5−n−ブチル−5−(4−(4’−フルオロフェノキシ)−フェノキシ)−ピリミジン−2,4,6−トリオンおよびプロノミスタットが含まれる。
【0123】
p38 MAPキナーゼおよびc−jun−N末端キナーゼの例示的阻害剤には、ピリジルイミダゾール、例えば、PD 169316、異性体PD 169316、SB 203580、SB 202190、SB 220026、およびRWJ 67657が含まれる。他のものは米国特許第6,288,089号に記載され、これは引用することにより本明細書の一部とされる。
【0124】
例示的実施形態において、MSを治療または予防するための併用療法は、治療上有効な量の、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物と、Avonex(登録商標)(インターフェロンβ−1a)、Tysabri(登録商標)(ナタリズマブ)、またはFumaderm(登録商標)(BG−12/経口フマル酸塩)の1以上とを含んでなる。
【0125】
別の実施形態において、糖尿病性神経障害またはそれに関連する病状を治療または予防するための併用療法は、治療上有効な量の、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物と、三環式抗鬱薬(TCA)(例えば、イミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミンおよびノルトリプチリンを含む)、セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(例えば、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、およびシタロプラムを含む)および抗てんかん薬(AED)(例えば、ガバペンチン、カルバマゼピン、およびトピミレート(topimirate)を含む)の1以上とを含んでなる。
【0126】
血液凝固障害
他の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、血液凝固障害(または止血障害)を治療または予防するために使用することができる。本明細書で互換的に使用される場合、「止血」、「血液凝固(blood coagulation)」、および「血液凝固(blood clotting)」は、血管収縮および凝固の生理特性を含む出血の制御を意味する。血液凝固は、損傷、炎症、疾患、先天性欠損、機能不全または他の障害の後、哺乳動物の循環の健全性を維持することを補助する。凝固の開始の後、血液凝固は、特定の血漿プロ酵素のそれらの酵素形態への一連の活性化により進行する(例えば、Coleman, R. W. et al.(編) Hemostasis and Thrombosis, Second Edition, (1987)参照)。第XII因子、第XI因子、第IX因子、第X因子、第VII因子およびプロトロンビンを含むこれらの血漿糖タンパク質は、セリンプロテアーゼのチモーゲンである。これらの血液凝固酵素のほとんどは、膜表面で、第VIII因子および第V因子などのタンパク質補因子とともに組み立てられて複合体となった場合にのみ、生理的規模で有効となる。他の血液因子は、凝血の形成を調節し、局在化するか、または血餅を溶解する。活性化されたCタンパク質は、凝血促進成分を不活性化する特異的酵素である。カルシウムイオンは、多くの成分反応に関与する。全タンパク質成分が血中に存在する場合には内因性経路の後に、または細胞膜タンパク質組織因子が重要な役割を果たす場合には外因性経路の後に、血液凝固が起こる。凝血形成は、フィブリノーゲンがトロンビンにより切断されてフィブンを形成した際に起こる。血餅は、活性化された血小板とフィブリンとから構成される。
【0127】
さらに、血餅の形成は、損傷の場合に出血を制限する(止血)だけでなく、重要な動脈または静脈の閉塞によるアテローム性動脈硬化性疾患の場合には、重大な器官損傷および死に至ることがある。従って、血栓は、誤った時間および場所における血餅形成である。それは、循環血液タンパク質(凝固因子)と血液細胞(特に血小板)と損傷を受けた血管壁の要素の間の複雑で規制された生化学的反応のカスケードを含む。
【0128】
従って、本発明は、心筋梗塞、発作、末梢動脈疾患または肺塞栓症による四肢の損失のなどの血液凝固障害を予防または治療するために、血餅の形成を阻害することを目的とする抗凝固および抗血栓処置を提供する。
【0129】
本明細書で互換的に使用される場合、「止血を変調することまたは変調」「止血を調節することまたは調節」には、止血の誘導(例えば、刺激または増加)ならびに止血の阻害(例えば、低減または低下)が含まれる。
【0130】
一態様において、本発明は、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を投与することにより、対象において止血を低減または阻害するための方法を提供する。本明細書で開示される組成物および方法は、血栓性障害の治療または予防に有用である。本明細書で使用する場合、用語「血栓性障害」は、過剰なまたは望ましくない凝固、止血活性、または凝固活性亢進状態を特徴とするいずれの障害または病態も含む。血栓性障害には、血小板接着および血栓形成を含む疾患または障害が含まれ、高い血栓形成傾向、例えば、血栓の数の増加、若年時血栓、血栓を作りやすい家族的傾向および通常でない部位での血栓形成として発現し得る。血栓性障害の例としては、限定されるものではないが、血栓塞栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓症、脳卒中、心筋梗塞、流産、抗トロンビンIII欠乏症に関連する血栓形成傾向、Cタンパク質欠乏症、Sタンパク質欠乏症、活性化Cタンパク質抵抗性、異常フィブリノーゲン血症、線維素溶解障害、ホモシスチン尿症、妊娠、炎症性障害、骨髄増殖性障害、動脈硬化、狭心症、例えば、不安定狭心症、播種性血管内凝固、血栓性血小板減少性紫斑病、癌転移、鎌状赤血球症、糸球体腎炎、および薬剤性血小板減少症(例えば、ヘパリン誘発性血小板減少症)が挙げられる。さらに、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、血栓イベントを回避するため、あるいは治療的血餅溶解または血管形成術もしくは外科手術などの手順の間またはその後の再閉塞を回避するために投与され得る。
【0131】
別の実施形態において、組合せ薬物レジメンは、血液凝固障害またはこれらの病態に関連する二次病態の治療または予防のための薬物または化合物を含み得る。従って、組合せ薬物レジメンは、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物と1以上の抗血液凝固薬または抗血栓薬とを含み得る。例えば、1以上のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物を、有効量の、アスピリン、ヘパリンおよびビタミンK依存性因子を阻害する経口ワルファリン、第X因子および第II因子を阻害する低分子量ヘパリン、トロンビン阻害剤、血小板GP IIbIIIa受容体の阻害剤、組織因子(TF)の阻害剤、ヒトフォンウィルブランド因子の阻害剤、止血(特に凝固カスケード)に関与する1以上の因子の阻害剤のうち1以上と組合わせることができる。さらに、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、t−PA、ストレプトキナーゼ、レプチラーゼ、TNK−t−PAおよびスタフィロキナーゼなどの血栓崩壊薬と組合わせることもできる。
【0132】
体重管理
別の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、対象における体重増加または肥満を治療または予防するために使用され得る。例えば、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、遺伝性肥満、食事による肥満、ホルモン関連肥満、薬剤の投与に関連する肥満を治療もしくは予防するため、対象の体重を減らすため、または対象の体重増加を減らすもしくは予防するために使用され得る。そのような処置を必要とする対象は、肥満の、肥満となる可能性のある、過体重の、過体重となる可能性のある対象であり得る。肥満または過体重となる可能性のある対象は、例えば、家族歴、遺伝、食事、活動程度、薬剤摂取、またはこれらの様々な組合せに基づいて特定することができる。
【0133】
さらに他の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、対象における体重減少を促進することによって治療または予防され得る、様々な他の疾患および病態を患う対象に投与され得る。そのような疾患には、例えば、高血圧、高血圧症、抗コレステロール、異常脂肪血症、2型糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐症、高インスリン血症、冠動脈性心疾患、狭心症、鬱血性心不全、脳卒中、胆石、胆嚢炎および胆石症、通風、骨関節炎、閉塞型睡眠時無呼吸および呼吸器障害、数種の癌(例えば、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、および結腸癌)、妊娠合併症、女性のリプロダクティブヘルスの低下(例えば、月経不順、不妊、排卵障害)、膀胱制御障害(例えば、ストレス性失禁);尿酸腎結石症;精神的障害(例えば、鬱、摂食障害、歪んだ身体イメージ、および低い自己評価)が含まれる。Stunkard AJ, Wadden TA. (編者) Obesity: theory and therapy, Second Edition. New York: Raven Press, 1993。最後に、AIDS患者は、AIDSの併用療法に応答して、脂肪異栄養症またはインスリン抵抗性が進展する場合がある。
【0134】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、in vitroであってもin vivoであっても、脂肪生成または脂肪細胞分化を阻害するために使用され得る。特に、高循環レベルのインスリンおよび/またはインスリン様成長因子(IGF)1は、脂肪細胞への分化に脂肪前駆細胞を動員しないようにする。このような方法は肥満を治療または予防するために使用され得る。
【0135】
他の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、食欲を減退させ、かつ/または満腹感を増進するために使用し、それにより、体重減少または体重増加の回避を生じ得る。このような処置を必要とする対象は、過体重、肥満の対象または過体重もしくは肥満となる可能性のある対象であり得る。この方法は、毎日、または隔日、1週間に1回、ある用量を例えばピルの形態で対象に投与することを含んでなり得る。この用量は「食欲を減退する用量」である。
【0136】
他の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、悪液質を有するまたは悪液質を発症する可能性がある対象を処置するために使用され得る。薬剤の組合せもまた投与され得る。方法はさらに、対象において疾患の状態、または例えば脂肪組織におけるNADのレベルおよび/もしくはサーチュインの活性化をモニタリングすることを含んでなり得る。食欲および/または体重増加を増進するための方法は、例えば、対象の体重を測り、その対象のBMIを決定すること、または対象の脂肪含量もしくは対象の細胞におけるサーチュイン活性を評価することにより、例えば、対象を、脂肪または脂質代謝の低下を必要とすると事前に特定することを含み得る。この方法はまた、例えば、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物の投与中および/または投与後に、対象をモニタリングすることも含み得る。この投与は、例えばボーラスでまたは連続的に送達される1以上の用量を含み得る。モニタリングは、ホルモンまたは代謝産物を評価することを含み得る。例示的ホルモンには、レプチン、アジポネクチン、レシスチン、およびインスリンが含まれる。例示的代謝産物には、トリグリセリド、コレステロール、および脂肪酸が含まれる。
【0137】
体重を調節するための方法は、対象の体重および/またはNADのレベル(例えば、細胞内NADレベル、組織もしくは血漿中のNADのレベル、および/または生物体の総NADレベル)をモニタリングすること、および/または例えば脂肪組織におけるサーチュインの調節をさらに含んでなり得る。
【0138】
例示的実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を増大させた本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、体重増加または肥満を治療または予防するための併用療法として投与され得る。例えば、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる1以上の本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物が、1以上の抗肥満薬と組み合わせて投与され得る。例示的抗肥満薬には、例えば、フェニルプロパノールアミン、エフェドリン、シュードエフェドリン、フェンテルミン、コレシストキニン−A作用薬、モノアミン再取り込み阻害剤(例えば、シブトラミン)、交感神経作用薬、セロトニン作動薬(例えば、デクスフェンフルラミンまたはフェンフルラミン)、ドーパミン作用薬(例えば、ブロモクリプチン)、メラノサイト刺激ホルモン受容体作用薬または模倣薬、メラノサイト刺激ホルモン類似体、カンナビノイド受容体拮抗薬、メラミン濃縮ホルモン拮抗、OBタンパク質(レプチン)、レプチン類似体、レプチン受容体作用薬、ガラニン拮抗薬またはGIリパーゼ阻害剤または減少薬(例えば、オルリスタット)が含まれる。他の食欲低下剤には、ボンベシン作用薬、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイド受容体作用薬および拮抗薬、オレキシン受容体拮抗薬、ウロコルチン結合タンパク質拮抗薬、グルカゴン様ペプチド−1受容体の作用薬、例えば、エキセンディンおよび毛様神経栄養因子、例えばアクソカインが含まれる。
挙げられる。
【0139】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、薬剤性体重増加を減少させるために投与され得る。例えば、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、食欲を刺激し得るまたは体重増加、特に、水分保持以外の因子による体重増加を生じ得る薬剤との併用療法として投与され得る。体重増加を生じる薬剤の例には、例えば、例えば、スルホニル尿素(例えば、グリピジドおよびグリブリド)、チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン)、メグリチニド、ナテグリニド、レパグリニド、スルホニル尿素薬剤、およびインスリンを含む糖尿病治療薬;例えば、三環系抗鬱薬(例えば、アミトリプチリンおよびイミプラミン)、不可逆的モノアミンオキシダーゼ阻害剤(MAOI)、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、ブプロピオン、パロキセチン、およびミルタザピンを含む抗鬱薬;例えば、プレドニゾンなどのステロイド;ホルモン療法;炭酸リチウム;バルプロ酸;カルバマゼピン;クロルプロマジン;チオチキセン;β遮断薬(例えば、プロプラノロ(propranolo));α遮断薬(例えば、クロニジン、プラゾシンおよびテラゾシン);ならびに経口避妊薬(バースコントロールピル)、または他の、エストロゲンおよび/またはプロゲステロン含有避妊薬(デポプロゲラ、ノルプラント、オルソ)、テストステロンまたはメゲストロールを含む避妊薬が含まれる。別の例示的実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、体重増加を予防するまたはすでに増加した体重を減らすために、禁煙プログラムの一部として投与され得る。
【0140】
代謝性障害/糖尿病
別の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、代謝性障害、例えば、インスリン抵抗性、前糖尿病状態、II型糖尿病、および/またはそれらの合併症を治療または予防するために使用され得る。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物の投与は、対象におけるインスリン感受性を増強し、かつ/またはインスリンレベルを低下させる。このような治療を必要とする対象は、インスリン抵抗性またはII型糖尿病の他の前兆症状のある対象、II型糖尿病を有する対象、またはこれらの病態のいずれかを発症する可能性のある対象であり得る。例えば、対象は、インスリン抵抗性のある、例えば、インスリンの循環レベルが高く、かつ/または高脂血症、異常脂質形成、高コレステロール血症、耐糖能異常、高血糖値、他のX症候群の発現、高血圧、アテローム性動脈硬化症、および脂肪異栄養症などの病態を伴う対象であり得る。
【0141】
例示的実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、代謝障害を治療または予防するための併用療法として投与され得る。例えば、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる1以上の本発明ニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物が、1以上の抗糖尿病薬と組み合わせて投与され得る。例示的抗糖尿病薬には、例えば、アルドースレダクターゼ阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、ソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤、タンパク質チロシンホスファターゼ1B阻害剤、ジペプチジルプロテアーゼ阻害剤、インスリン(経口生体適合性インスリン製剤を含む)、インスリン模倣物、メトホルミン、アカルボース、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γ(PPAR−γ)リガンド、例えば、トログリタゾン、ロサグリタゾン(rosaglitazone)、ピオグリタゾンまたはGW−1929、スルホニル尿素、グリパジド(glipazide)、グリブリド、またはクロルプロパミドが含まれ、この場合には、第1および第2の化合物の量が治療効果をもたらす。他の抗糖尿病薬としては、グルコシダーゼ阻害剤、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、インスリン、PPARα/γ二重作用薬、メグリチニドおよびαP2阻害剤が含まれる。例示的実施形態において、抗糖尿病薬は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP−IVまたはDPP−IV)阻害剤、例えば、Novartis社のLAF237(NVP DPP728;1−[[[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチル]アミノ]アセチル]−2−シアノ−(S)−ピロリジン)またはMerck社のMK−04301(例えば、Hughes et al., Biochemistry 38: 11597-603 (1999)参照)である。
【0142】
炎症性疾患
他の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、炎症に関連する疾患または障害を治療または予防するために使用することができる。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、炎症誘発の開始前、開始時、または開始後に投与してよい。予防的に使用する場合、本組成物は好ましくは炎症応答または症状より先に提供する。本組成物の投与は、炎症応答または症状を予防または減弱し得る。
【0143】
例示的炎症病態には、例えば、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、変形性関節疾患、脊椎関節症(spondouloarthropathies)、通風性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、若年生関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、骨粗鬆症、糖尿病(例えば、インスリン依存性糖尿病または若年発症糖尿病)、月経性痙攣、嚢胞性線維症、炎症腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、粘液性大腸炎、潰瘍性大腸炎、胃炎、食道炎、膵炎、腹膜炎、アルツハイマー病、ショック、強直性脊椎炎、胃炎、結膜炎、膵炎(急性または慢性)、多臓器損傷症候群(例えば、敗血症または外傷続発性)、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、再潅流損傷(例えば、心肺バイパスまたは腎臓透析による)、急性糸球体腎炎、血管炎、熱損傷(すなわち、日焼け)、壊死性腸炎、顆粒球輸血関連症候群、および/またはシューグレン症候群が含まれる。皮膚の例示的炎症病態には、例えば、湿疹、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、じんま疹、強皮症、乾癬、および急性炎症成分を伴う皮膚病が含まれる。
【0144】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、喘息、気管支炎、肺線維症、アレルギー性鼻炎、酸素中毒、気腫、慢性気管支炎、急性呼吸窮迫症候群、および任意の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含む、アレルギーおよび呼吸器病態を治療または予防するために使用され得る。本化合物は、B型肝炎およびC型肝炎を含む慢性肝炎感染を治療するために使用され得る。
【0145】
加えて、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに医薬組成物は、自己免疫疾患および/または自己免疫疾患に関連する炎症、例えば、器官−組織自己免疫疾患(例えば、レイノー症候群)、硬皮症、重症筋無力症、移植拒絶、内毒素ショック、敗血症、乾癬ん、湿疹、皮膚炎、多発性硬化症、自己免疫性甲状腺炎、ブドウ膜炎、全身性紅斑性狼瘡、アジソン病、自己免疫性多腺疾患(自己免疫性多腺症候群としても知られる)およびグレーブス病を治療するために使用され得る。
【0146】
特定の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる1以上の本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物が、単独で、または炎症を治療または予防するのに有用な他の化合物と組合わせて服用される。例示的抗炎症剤には、例えば、ステロイド(例えば、コルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、6α−メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾンまたはデキサメタソン)、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDS(例えば、アスピリン、アセトアミノフェン、トルメチン、イブプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、ナブメトン、ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトドラクまたはニメスリド)が含まれる。別の実施形態において、他の治療剤として、抗生剤(例えば、バンコマイシン、ペニシリン、アモキシリン、アンピシリン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフィキシム、リファンピンメトロニダゾール、ドキシサイクリンまたはストレプトマイシン)がある。別の実施形態において、他の治療薬として、PDE4阻害剤(例えば、ロフルミラストまたはロリプラム)がある。別の実施形態において、他の治療剤として、抗ヒスタミン薬(例えば、シクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジンまたはジフェンヒドラミン)がある。別の実施形態において、他の治療薬として、抗マラリア薬(例えば、アルテミシニン、アーテメーター、アートスネート(artsunate)、クロロキンホスフェート、塩酸メフロキン、ドキシサイクリンヒクラート、塩酸プログアニル、アトバコンまたはハロファントリン)がある。一実施形態において、他の治療薬は、ドロトレコジンαである。
【0147】
抗炎症薬のさらなる例としては、例えば、アセクロフェナク、アセメタシン、e−アセタミドカプロン酸、アセトアミノフェン、アセトアミノサロール、アセトアニリド、アセチルサリチル酸、S−アデノシルメチオニン、アルクロフェナク、アルクロメタゾン、アルフェンタニル、アルゲストン、アリルプロジン、アルミノプロフェン、アロキシプリン、アルファプロジン、アルミニウムビス(アセチルサリチル酸)、アムシノニド、アンフェナク、アミノクロルテノキサジン、3−アミノ−4−ヒドロキシ酪酸、2−アミノ−4−ピコリン、アミノプロピロン、アミノピリン、アミキセトリン、サリチル酸アンモニウム、アンピロキシカム、アントルメチングアシル、アニレリジン、アンチピリン、アントラフェニン、アパゾン、ベクロメタゾン、ベンダザック、ベノリレート、ベノキサプロフェン、ベンズピペリロン、ベンジダミン、ベンジルモルヒネ、ベルモプロフェン、ベタメタゾン、ベタメタゾン−17−吉草酸、ベジトラミド、α−ビサボロール、ブロムフェナク、p−ブロモアセトアニリド、5−ブロモサリチル酸アセテート、ブロモサリゲニン、ブセチン、ブクロキシ酸、ブコローム、ブデソニド、ブフェキサマク、ブマジゾン、ブプレノルフィン、ブタセチン、ブチブフェン、ブトルファノール、カルバマゼピン、カルビフェン、カルプロフェン、カルサラム、クロロブタノール、クロロプレドニゾン、クロルテノキサジン、サリチル酸コリン、シンコフェン、シンメタシン、シラマドール、クリダナク、クロベタゾール、クロコルトロン、クロメタシン、クロニタゼン、クロニキシン、クロピラク、クロプレドノール、クロ−ブ、コデイン、コデインメチルブロミド、リン酸コデイン、硫酸コデイン、コルチゾン、コルチバゾール、クロプロパミド、クロテタミド、シクラゾシン、デフラザコート、デヒドロテストステロン、デソモルヒネ、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、デキサメタゾン−21−イソニコチネート、デキソキサドロール、デキストロモルアミド、デキストロプロポキシフェン、デオキシコルチコステロン、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフォン、ジクロフェナク、ジフェナミゾール、ジフェンピラミド、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルニサル、ジフルプレドナート、ジヒドロコデイン、ジヒドロコデイノンエノールアセテート、ジヒドロモルヒネ、ジヒドロキシアルミニウムアセチルサリチレート、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、酪酸ジオキサフェチル、ジピパノン、ジプロセチル、ジピロン、ジタゾール、ドロキカム、エモルファゾン、エンフェナム酸、エノキソロン、エピリゾール、エプタゾシン、エテルサレート、エテンザミド、エトヘプタジン、エトキサゼン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトドラク、エトフェナメート、エトニタゼン、オイゲノール、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロジン酸、フェンドサル、フェノプロフェン、フェンタニル、フェンチアザック、フェプラジノール、フェプラゾン、フロクタフェニン、フルアザコート、フルクロロニド、フルフェナム酸、フルメタゾン、フルニソリド、フルニキシン、フルノキサプロフェン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオレソン、フルオロメトロン、フルペロロン、フルピルチン、フルプレドニデン、フルプレドニゾロン、フルプロカゾン、フルランドレノリド、フルルビプロフェン、フルチカゾン、ホルモコルタル、ホスホサール、ゲンチシン酸、グラフェニン、グルカメタシン、サリチル酸グリコール、グアイアズレン、ハルシノニド、ハロベタゾール、ハロメタゾン、ハロプレドノン(haloprednone)、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン、ヘミ硫酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン−21−リシネート、ヒドロコルチゾンシピオネート、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロキサム、サリチル酸イミダゾール、インドメタシン、インドプロフェン、イソフェゾラク、イソフルプレドン、酢酸イソフルプレドン、イソラドール、イソメタドン、イソニキシン、イソキセパック、イソキシカム、ケトベミドン、ケトプロフェン、ケトロラック、p−ラクトフェネチド、レフェタミン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシル−モルファン、ロフェンタニル、ロナゾラク、ロルノキシカム、ロキソプロフェン、アセチルサリチル酸リジン、マジプレドン、メクロフェナム酸、メドリゾン、メフェナム酸、メロキシカム、メペリジン、メプレドニゾン、メプタジノール、メサラミン、メタゾシン、メタドン、メトトリメプラジン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウム、メチルプレドニゾロンスレプトネート(suleptnate)、メチアジン酸、メトフォリン、メトポン、モフェブタゾン、モフェゾラク、モメタゾン、モラゾン、モルヒネ、塩酸モルヒネ、硫酸モルヒネ、サリチル酸モルホリン、ミロフィン、ナブメトン、ナルブフィン、ナロルフィン、サリチル酸1−ナフチル、ナプロキセン、ナルセイン、ネホパム、ニコモルヒネ、ニフェナゾン、ニフルム酸、ニメスリド、5’−ニトロ−2’−プロポキシアセトアニリド、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、オルサラジン、アヘン、オキサセプロール、オキサメタシン、オキサプロジン、オキシコドン、オキシモルホン、オキシフェンブタゾン、パパベレタム、パラメタゾン、パラニリン、パルサルミド、ペンタゾシン、ペリソキサール、フェナセチン、フェナドキソン、フェナゾシン、塩酸フェナゾピリジン、フェノコール、フェノペリジン、フェノピラゾン、フェノモルファン、アセチルサリチル酸フェニル、フェニルブタゾン、サリチル酸フェニル、フェニラミドール、ピケトプロフェン、ピミノジン、ピペブゾン、ピペリロン、ピラゾラク、ピリトラミド、ピロキシカム、ピルプロフェン、プラノプロフェン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、プログルメタシン、プロヘプタジン、プロメドール、プロパセタモール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、プロピフェナゾン、プロカゾン、プロチジン酸、プロキサゾール、ラミフェナゾン、レミフェンタニル、メチル硫酸リマゾリウム(rimazolium metilsulfate)、サルアセタミド、サリシン、サリチルアミド、サリチルアミドo−酢酸、サリチル酸、サリチル硫酸、サルサレート、サルベリン、シメトリド、サフェンタニル、スルファサラジン、スリンダク、スーパオキシドジスムターゼ、スプロフェン、スキシブゾン、タルニフルメート、テニダプ、テノキシカム、テロフェナマート、テトランドリン、チアゾーリノブタゾン、チアプロフェン酸、チアラミド、チリジン、チノリジン、チクソコルトール、トルフェナム酸、トルメチン、トラマドール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トロペシン、ビミノール、キセンブシン、キシモプロフェン、ザルトプロフェンおよびゾメピラクが含まれる。
【0148】
例示的実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、炎症を治療または予防するために選択的COX−2阻害剤とともに投与され得る。例示的選択的COX−2阻害剤には、例えば、デラコキシブ、パレコキシブ、セレコキシブ、バルデコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、2−(3,5−ジフルオロフェニル)−3−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−2−シクロペンテン−1−オン、(S)−6,8−ジクロロ−2−(トリフルオロメチル)−2H−1−ベンゾピラン−3−カルボン酸、2−(3,4−ジフルオロフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブトキシ)−5−[4−(メチルスルホニル)フェニル]−3−(2H)−ピリダジノン、4−[5−(4−フルオロフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド、1 ベンジル−4−[(4−オキソピペリジン−1−イル}スルホニル]ピペリジン−4−カルボン酸tert−ブチル、4−[5−(フェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド、それらの塩およびプロドラッグが含まれる。
【0149】
紅潮
他の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、障害の症状である紅潮および/またはホットフラッシュの発生または重篤度を軽減するために使用され得る。例えば、本方法は、癌患者の紅潮および/またはホットフラッシュの発生または重篤度を軽減するために、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物を単独でまたは他の薬剤と組み合わせて使用することを含む。他の実施形態において、本方法は、閉経期および月経停止後の女性の紅潮および/またはホットフラッシュの発生または重篤度を軽減するための、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物の使用を提供する。
【0150】
別の態様において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、別の薬物療法の副作用である紅潮および/またはホットフラッシュ、例えば、薬物性紅潮の発生または重篤度を軽減するめの療法として使用され得る。ある実施形態において、薬物性紅潮を治療および/または予防する方法は、それを必要とする患者に少なくとも1つの紅潮誘発化合物と少なくとも1つの、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物とを含んでなる処方物を投与することを含んでなる。他の実施形態において、薬物性紅潮を治療する方法は、1以上の紅潮誘発化合物と、1以上の、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物とを別々に投与することを含んでなり、例えば、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物と紅潮誘発薬剤は同じ組成物中に処方されていない。個別処方物を使用する場合、ニコチンアミドリボシドクロリドは、(1)紅潮誘発剤の投与と同時に、(2)紅潮誘発剤とともに間欠的に、(3)紅潮誘発剤の投与と交互に、(4)紅潮誘発剤の投与の前に、(5)紅潮誘発剤の投与の後に、および(6)これらの種々の組合せで投与してよい。例示的紅潮誘発剤には、例えば、ナイアシン、ファロキシフィン(faloxifene)、抗鬱薬、抗精神病薬、化学療法薬、カルシウムチャネル遮断薬、および抗生剤が含まれる。
【0151】
一実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、血管拡張薬または抗高脂血症薬(高コレステロール血症薬および脂肪作用薬を含む)の紅潮副作用を軽減するために使用され得る。例示的実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または医薬組成物は、ナイアシン投与に伴う紅潮を軽減するために使用され得る。
【0152】
ニコチン酸、3−ピリジンカルボン酸またはナイアシンは、例えば、商標Nicolar(登録商標)、SloNiacin(登録商標)、Nicobid(登録商標)およびTime Release Niacin(登録商標)で市販されている抗高脂血症薬である。ニコチン酸は、長年、脂質障害、例えば、高脂血症、高コレステロール症およびアテローム性硬化症の治療に使用されてきた。この化合物は、望ましい高密度リポタンパク質または「HDLコレステロール」を増やしつつ、ヒト体内の総コレステロール、低密度リポタンパク質または「LDLコレステロール」、トリグリセリドおよびアポリポタンパク質(Lp(a))を低減する有用な効果を発揮することが長く知られている。
【0153】
典型的な用量は、毎日約1グラム〜約3グラムの範囲である。ニコチン酸は、選択された投与形に応じて、通常、食後、1日当たり2〜4回投与される。ニコチン酸は、現在、2種の投与形で市販されている。1つの投与形は、1日当たり3回または4回投与されるべき即放性または急速放出錠剤である。即放性(「IR」)ニコチン酸処方物は、一般に、摂取後、約30〜60分以内でそれらのニコチン酸のほとんど総てを放出する。他の投与形は、1日当たり2〜4回の投与に適切な徐放形である。IR処方物とは対照的に、徐放性(「SR」)ニコチン酸処方物は、摂取後12または24時間などの長時間にわたって治療レベルのニコチン酸を維持するために、特定の時間間隔にわたって吸収させるために有意な量の薬物を血流中へ放出するように設計される。
【0154】
本明細書で使用する場合、用語「ニコチン酸」は、ニコチン酸または身体がニコチン酸へ代謝してニコチン酸と本質的に同じ効果を生じるがそれ自体はニコチン酸以外の化合物を包含するものとする。ニコチン酸の効果と類似する効果を生じる例示的化合物としては、例えば、ニコチニルアルコールタートレート、d−グルシトールヘキサニコチネート、アルミニウムニコチネート、ニセリトロールおよびd,1−α−トコフェリルニコチネートが含まれる。本明細書では、このような各化合物を「ニコチン酸」と総称する。
【0155】
別の実施形態において、本発明は、紅潮副作用が軽減された高脂血症を治療および/または予防する方法を提供する。本方法は、それを必要とする対象に治療上有効な量のニコチン酸と紅潮の軽減に十分な量の、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物を投与する工程を含んでなる。例示的実施形態において、ニコチン酸および/または本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は夜間に投与され得る。
【0156】
別の代表的な実施形態において、本方法は、ラロキシフェンの紅潮副作用を軽減するための、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物の使用を含む。ラロキシフェンは、体内の特定の場所でエストロゲンのように作用するが、ホルモンではない。これは、閉経に達した女性の骨粗鬆症の予防を助ける。骨粗鬆症は、骨を徐々にやせさせ、もろく、より折れやすくする。エビスタは、閉経に伴い起こる骨量の損失を緩徐化し、骨粗鬆症による脊椎骨折のリスクを引き下げる。ラロキシフェンの一般的な副作用は、ホットフラッシュ(発汗および紅潮)である。これは閉経によってすでにホットフラッシュがある女性には不快なものであり得る。
【0157】
別の代表的な実施形態において、本方法は、抗鬱薬または抗精神病薬の紅潮副作用を軽減するための、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物の使用を含む。例えば、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、セロトニン再取り込み阻害剤、5HT2受容体拮抗薬、抗痙攣薬抗、ノルエピネフリン再取り込み阻害剤、α−アドレナリン受容体拮抗薬、NK−3拮抗薬、NK−1受容体拮抗薬、PDE4阻害剤、ニューロペプチドY5受容体拮抗薬、D4受容体拮抗薬、5HT1A受容体拮抗薬、5HT1D受容体拮抗薬、CRF拮抗薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、または鎮静催眠薬と併用(個別または一緒に投与する)可能である。
【0158】
特定の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、紅潮を軽減するために、セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)を用いる治療の一部として使用され得る。特定の好ましい実施形態において、SRIは、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、例えば、フルオキセチノイド(fluoxetinoid)(フルオキセチン、ノルフルオキセチン)またはネファドゾノイド(nefazodonoid)(ネファドゾン、ヒドロキシネファドゾン、オキソネファドゾン)である。他の例示的SSRIとしては、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、シタロプラム、フルボキサミン、パロキセチンおよびセルトラリンが含まれる。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、ベンゾジアゼピン(例えば、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、クロバザム、ジアゼパム、ハラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパムおよびプラゼパム)、ゾルピデム、およびバルビツール酸塩からなる群から選択されるような鎮静催眠薬を用いる治療の一部として使用することもできる。さらに他の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、ブスピロン、フレシノキサン、ジュピロンおよびイプサピロンからなる群から選択されるような5−HT1A受容体部分作用薬を用いる治療の一部として使用され得る。NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物はまた、三環式第三アミンおよび三環式第二アミンから選択されるようなノルエピネフリン再取り込み阻害剤を用いる治療の一部として使用することもできる。例示的三環式第三アミンには、アミトトプトリン、クロミプラミン、ドキセピン、イミプラミンおよびトリミプラミンが含まれる。例示的三環式第二アミンには、アモキサピン、デシプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびプロトリプトリンが含まれる。特定の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、イソカルボキサジド、フェネルジン、トラニルシプロミン、セレギリンおよびモクロベミドからなる群から選択されるようなモノアミンオキシダーゼ阻害剤を用いる治療の一部として使用され得る。
【0159】
さらに別の代表的な実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、シクロホスファミド、およびタモキシフェンなどの化学療法薬の紅潮副作用を軽減するために使用され得る。
【0160】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、アムロジピンなどのカルシウムチャネル遮断薬の紅潮副作用を軽減するために使用され得る。
【0161】
別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、抗生剤の紅潮副作用を軽減するために使用され得る。例えば、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤および医薬組成物は、レボフロキサシンと併用することができる。レボフロキサシンは、感受性細菌により引き起こされる洞、皮膚、肺、耳、気道、骨、および関節の感染を処置するために使用される。レボフロキサシンはまた、他の抗生剤に対する耐性を含む泌尿器感染、ならびに前立腺炎を処置するためにも頻用される。レボフロキサシンは、大腸菌(E. coli)、カンピロバクター・ジェジュニ(campylobacter jejuni)、および赤痢菌(shigella bacteria)により引き起こされる感染性下痢の処置に有効である。レボフロキサシンはまた、乳房炎を含む種々の産科感染を処置治療するために使用可能である。
【0162】
他の用途
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリドおよび製剤および医薬組成物は、ウイルス感染(例えば、インフルエンザ、ヘルペスまたは乳頭腫ウイルスによる感染)を治療もしくは予防するために、または抗真菌剤として使用され得る。特定の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリドおよび製剤および医薬組成物は、例えば、アシクロビル、ガンシクロビルおよびジドブジンを含むウイルス疾患の治療のための別の治療薬との併用薬物療法の一部として投与され得る。別の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリドおよび製剤および医薬組成物は、他の抗真菌薬、例えば、シクロピロックス、クロトリマゾール、エコナゾール、ミコナゾール、ナイスタチン、オキシコナゾール、テルコナゾール、およびトルナフタートなどの局所抗真菌薬、またはフルコナゾール(ジフルカン)、イトラコナゾール(スポラノックス)、ケトコナゾール(ニゾラール)、およびミコナゾール(モニスタットI.V.)などの合成抗真菌薬との併用薬物療法の一部として投与され得る。
【0163】
本明細書に記載されるように処置可能な対象には、哺乳動物などの真核生物、例えば、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウス、およびラットが含まれる。処置可能な細胞には、例えば、上記の対象に由来する真核細胞、または植物細胞、酵母細胞、および原核細胞、例えば、細菌細胞が含まれる。例えば、本発明のニコチンアミドリボシドクロリドおよび製剤および医薬組成物は、飼養条件により長く耐える能力を改善するために農場動物に投与してもよい。
【0164】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリドおよび製剤および医薬組成物はまた、植物における寿命、ストレス耐性、およびアポトーシス耐性を増進するために使用され得る。一実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物は、植物に例えば周期的に、または真菌に適用される。別の実施形態において、植物は、化合物を産生するように遺伝的に改変される。別の実施形態において、植物および菌類を、輸送中の傷害に対する耐性を高めるために、収穫および出荷の前に、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物で処理する。また、植物の種子も、例えばそれらを保存するために、本明細書に記載のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物と接触させて得る。
【0165】
他の実施形態において、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物は、酵母細胞における寿命を調節するために使用され得る。酵母細胞の寿命の延長が望まれ得る状況には、例えば、ビール、ヨーグルト、およびベーカリー製品、例えばパンの製造など、酵母が使用されるいずれの工程も含まれる。寿命が延びた酵母の使用する結果として、使用する酵母を少なくすること、または酵母をより長い時間活性とすることができる。タンパク質を組換え生産するために使用される酵母または他の哺乳動物細胞も本明細書に記載されるように処理され得る。
【0166】
NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物はまた、昆虫の寿命、ストレス耐性およびアポトーシス耐性を増進するために使用され得る。この実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物は、有用な昆虫、例えば、ミツバチおよび植物の受粉に関与する他の昆虫に適用される。特定の実施形態において、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物は、蜂蜜の生産に関与するミツバチに適用される。一般的に、本明細書に記載の方法は、例えば真核生物などの商業的重要性のあるいずれの生物にも適用可能である。例えば、それらは、魚類(養殖)および鳥類(例えば、ニワトリおよび家禽)に適用できる。
【0167】
より高用量の、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物を、サイレンス遺伝子の調節および発達中のアポトーシスの調節に干渉することにより殺虫剤として使用してもよい。この実施形態において、化合物は、本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤または組成物は、その化合物は昆虫の幼虫に対して生体適合性があり、植物に対してはないことを確認する当技術分野で公知の方法を用いて、植物に適用してよい。
【0168】
少なくとも、生殖と寿命との間の関係(Longo and Finch, Science, 2002)という観点で、NADのレベルおよび/またはサーチュインタンパク質の活性を上昇させる本発明のニコチンアミドリボシドクロリド製剤ならびに組成物を、昆虫、動物および微生物などの生物の生殖に影響を与えるように適用することができる。
【実施例】
【0169】
以下、本発明を一般的に記載するが、本発明は以下の実施例を参照することによってより容易に理解され、これらの実施例は本発明の特定の態様および実施形態を単に例示するために含められるものであり、本発明を何ら限定することを意図しない。
【0170】
実施例1:アノマー的に純粋なニコチンアミドリボシドトリアセテートトリフルオロメタンスルホネートの製造
【0171】
【化1】
【0172】
20Lの反応器に576g(4.71mol)のニコチンアミド(Aldrichまたは他の商業的供給者)および7.5LのCH
3CNを装填した。この撹拌懸濁液に1.57L(8.64mol)のトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)(Oakwoodまたは他の商業的供給者)を総て一度に加えた。この混合物を総てのニコチンアミドが溶解するまで撹拌した後、1.25LのCH
3CN中の、500g(1.57mmol)のα/β−D−リボフラノース1,2,3,5−テトラアセテート(Zhang, P.; Dong, Z. E.; Cleary, T. P. Org. Proc. Res. Dev. 2005, 9, 583-592)の溶液を総て一度に加えた。添加容器に残留するリボースエステルを250mLのCH
3CNに溶かし、この溶液を前記反応物に加えた。この反応物を周囲温度で30分間撹拌したところ、その間に白色沈澱(ニコチンアミドトリフルオロメタン−スルホン酸塩を含んでなる)が生じた。30分の反応時間の後、50mLの1.2M NaHCO
3(水溶液)を加えることにより余分なTMSOTfの加水分解を開始し、続いてガスを発生させ、その後、沈澱させた。ガスの発生を制御するためにさらに425g(5.06mol)のNaHCO
3(s)を少量ずつ加えた。総てのNaHCO
3を添加した後、この懸濁液を15分間撹拌した。この時、反応pHは3であった。固体を濾過し、濾過ケーキをCH
3CN(3×500mL)で洗浄した。合わせた濾液と洗液を真空濃縮して8.5Lの溶媒を除去した。便宜上、濃縮を中断し、残りの溶液を−20℃で18時間まで保存することができた。残りの溶液を20Lの反応器に戻し、250mLのメタノールを用いて反応濃縮物の最後の痕跡をその反応器中へすすぎ入れた。この溶液を5LのCH
2Cl
2で希釈すると、主としてトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaOTf)およびニコチンアミドトリフルオロメタンスルホン酸塩からなる白色沈澱が得られた。この混合物を濾過し、濾過ケーキを2LのCH
2Cl
2で洗浄した。合わせた濾液と洗液を真空濃縮し、粘稠な油状物を得た。(便宜上、濃縮を中断し、残りの溶液を−20℃で18時間まで保存することができた。)CH
2Cl
2蒸留が遅くなり微量となった後に、残った油状物を1Lのメタノールに取り、その後、溶液を真空濃縮して残りのCH
2Cl
2を除去した。
【0173】
実施例2:ニコチンアミドリボシドトリフルオロメタンスルホネートおよびアセテートからクロリドへのイオン交換によるニコチンアミドリボシドクロリドの製造
【0174】
【化2】
【0175】
残渣を7.5Lのメタノールが入った20Lの反応器に戻した。反応器に氷浴を適用し、内部温度を3℃に調整した。別に、メタノール中1MのNaOCH
33.75L(3.75mol)を3℃に冷却した後、この溶液を10分かけて反応器に加えた。添加中、内部温度を5℃未満に維持した。添加が完了した後、反応物を30分間撹拌し、その後、1.25L(3.75mol)の3M HClを、内部温度を5℃未満に保持しながらゆっくり加えた。HClの添加が終了した際にはpH=3であった。溶媒を真空で除去した。(便宜上、部分的に濃縮した溶液を4℃で48時間まで保存することができた。濃縮が完了した後、残渣を−20℃で18時間まで保存することができた。残留するメタノールを除去するために、蒸発残渣を水に溶かし、真空濃縮した(3×1L)。残渣を5Lの水に取り、2M NaOH(水溶液)でpH=4に調整した。この溶液に塩化ナトリウム(NaCl)を加え、混合物をNaClで飽和するまで周囲温度で撹拌したところ、約5gの不溶NaClが残った。この飽和溶液をテトラヒドロフラン(THF、3×5L)で抽出した。水層を
1H NMRによってモニタリングし、抽出が完了した後に酢酸が除去されたことを確認した。
【0176】
水相を2M NaOH(水溶液)でpH=6〜7に調整した後、THF(4×5L)で抽出した。水層を
1H NMRによってモニタリングし、残留するニコチンアミドがニコチンアミドリボシドに対して5mol%未満であることを確認した。水層中にトリフルオロメタンスルホン酸塩が存在しないことを確認するために
19F NMRも用いた。次に、この水層を真空濃縮して2.5Lの水を除去した。残った懸濁液を5Lのエタノールで希釈し、濾過し、塩沈澱を2.5Lのエタノールで洗浄した。合わせた濾液と洗液を真空濃縮して粘稠な油状物を得た。これを1.5Lのメタノールとともに撹拌し、沈澱を濾過し、溶液を真空濃縮した。残渣をさらに1.5Lのメタノールとともに撹拌し、沈澱を濾過し、溶液を真空濃縮した。残渣を3回目の1.5L部のメタノールとともに撹拌し、沈澱を濾過し、溶液を真空濃縮し、385gの赤橙色の油状物を得た。粗収量351g(77%)に関して残留するメタノールの量は
1H NMRにより34gであると決定された。
【0177】
THF抽出を用いて余分なニコチンアミドの大部分を除去した。トリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムはTHFに可溶であるので、この抽出はまた、溶液からトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウムも除去し、ニコチンアミドリボシドはクロリド対イオンとともに水層中に残った。これにより、ニコチンアミドリボシドクロリドのアノマー混合物をもたらしたこれまでのニコチンアミドリボシドクロリドの合成(Jarman, M. Ross, W. C. J. J. Chem. Soc. (C) 1969, 199-203; Haynes, L. J.; Hughes, N. A.; Kenner, G. W.; Todd, A. J. Chem. Soc. 1957, 3727-3732)とは対照的に、アノマー的に純粋なニコチンアミドリボシドクロリドの製造が可能であった。ニコチンアミドリボシドのより最近の合成は、クロリドよりもヒト消費に望ましくはないが、ブロミド、トリフルオロメタンスルホン酸塩またはトリフルオロ酢酸塩としてのアノマー的に純粋な材料をもたらした。
【0178】
実施例3:ニコチンアミドリボシドクロリド・0.9メタノール結晶の製造
上記実施例からの粗生成物(351g)を1.5Lのメタノールに溶かした後、625mLのメタノールを真空で除去した。最初の結晶化実験については、この溶液をガラス丸底フラスコに入れ、側面を金属スパチュラで掻き落とした。この溶液を−20℃で数週間、結晶性沈澱が生じるまで保存した。結晶性固体は、自由流動性を残すとともに周囲条件下で濾過可能であるという点で非晶質固体とは異なった。対照的に、非晶質固体は、周囲湿度に曝された際にフィルター上に琥珀色の粘着性塊を形成した。続いて製造の関しては、メタノール溶液に100mgの結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドを播種し、溶液を周囲温度で静置したところ、数時間かけて生成物が結晶化した。ブフナー漏斗濾過装置を用い、結晶を濾過し、200mLの氷冷メタノールで洗浄した。生成物をフィルター上で乾燥させ、1.5時間空気中に開放した後、周囲温度で18時間高真空下(<1.0mM Hg)に置いた。収量は157g(34%)の淡黄色固体であった。生成物は
1H NMR積分によれば0.9モル当量のメタノールを含有していた(すなわち、ニコチンアミドリボシドクロリド・0.9メタノール結晶)。この残留メタノールは、40℃未満でさらに乾燥させても除去できなかった。得られた生成物は、ニコチンアミドリボシドクロリド(すなわち、3−カルバモイル−1−((2R,3R,4S,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル)ピリジン−1−イウムクロリド)の生物学的に活性な形態の無水結晶形であった。
1H NMR(300MHz、D
2O)データは、エタノールから単離された形態で報告されたものと同一であり、0.9当量のCH
3OHに相当する3.30ppmに付加的共鳴を有していた。IR(cm
−1)3361、1674、1610、1394、1082、982、833、792(IRプロットは
図7として含まれる)。この生成物の結晶特性は偏光を用いる光学顕微鏡により確認した(
図3)。X線粉末回折データは
図4(XRPD(°)−11.1、−7.1、−2.9、1.0、4.7、15.2、18.2、21.4、23.5、24.9、26.0、27.7)として含まれた。
【0179】
実施例4:エタノールの含有量が5000ppm未満であるニコチンアミドリボシドクロリド結晶の製造
続いてのスケールアップバッチに対するシードとして使用するための最初の血症バッチを製造するために、0.9モル当量のメタノールを含有する100mgのニコチンアミドリボシドクロリドを5mLのメタノールに溶かした後、この溶液を10mLのエタノールで希釈した。この溶液を真空濃縮して5mLの容量とし、次いで、5mLのエタノールを加えた。この溶液に2回目の真空濃縮を行って5mLの容量とし、次いで、さらに5mLのエタノールを加えた。この溶液に3回目の真空濃縮を行って5mLの容量とし、次いで、0.9モル当量のメタノールを含有する5〜10mgのニコチンアミドリボシドクロリド結晶を加えたが、結晶化は起こらなかった。この混合物を3mLに濃縮し、非晶質を得た。この混合物に2mL部のエタノールを加えて沈澱を溶かし、溶液とした。このフラスコをラバーセプタムで蓋をし、周囲温度で4日間静置した。溶媒を結晶からデカントした後、これらの結晶を真空乾燥させ、15mgの淡黄褐色の半球体を得た。この材料を用いて即、続いての結晶化のシードとした。
【0180】
0.9モル当量メタノールを含有する75g部の結晶性ニコチンアミドリボシドクロリドを100mLの水に溶かした。この溶液を旋回撹拌しながら2.0Lのエタノールで希釈した後、それを周囲温度で5分間静置した。次に、この溶液に50mgの無水ニコチンアミドリボシドクロリド結晶を播種した。この混合物を周囲温度で15時間静置した後、ブフナー漏斗を用いて結晶生成物を濾過し、100mLのエタノールで洗浄し、次いで、連続吸引しながらフィルター上で乾燥させ、1.5時間空気中に開放し、43.2gの淡黄褐色結晶を得た。上清を40℃で500mLまで真空濃縮した後、得られた懸濁液を周囲温度で2.25時間撹拌した。沈澱を濾過し、100mLのエタノールで洗浄した後、フィルター上で乾燥させ、12.8gのさらなる生成物を得た。総収量は56gのニコチンアミドリボシドクロリドであった。
【0181】
D
2O溶液中での
1H NMR分析は、この生成物がメタノールを含有していないこと、および残留エタノールは5000ppm未満であることを示した(
図9)。
1H NMR分析(d
6−DMSO)は、これらの結晶は無水であることを示した(
図10)。この生成物の結晶特性は偏光を用いる光学顕微鏡により確認した(
図5)。50mg部のこの材料を高真空下(<1.0mmHg)、周囲温度で48時間乾燥させた。結晶は明確に定義される融点を示さなかった。この材料は、100℃、<1mmHgで17分以内に、融解せずに完全に分解した。(分解は、加熱時間の後、D
2O溶液中での
1H NMRスペクトル分析により確認された。)これに対し、サンプルは、80℃にて1時間、<1mmHgにて、3%未満の分解で加熱することができた。
1H NMR (400 MHz, D
2O) δ9.63 (s, 1H, H2), 9.31 (d, 1H, J=5.9 Hz, H4), 9.01 (dd, 1H, J=8.0 Hz, 1.0 Hz, H6), 8.32 (dd, 1H, J=8.0 Hz, 5.9 Hz, H5), 6.29 (d, 1H, J=3.9 Hz, H1’), 4.55 (t, 1H, J=3.9 Hz, H2’), 4.50 (m, 1H, H4’), 4.38 (t, 1H, J=3.9 Hz, H3’), 4.08 (dd, 1H, J=12, 3 Hz, H5’), 3.93 (dd, 1H, J=12, 3, Hz, H5’);
13C NMR (75 MHz, D
2O) δ165.8(C7), 145.6(C6), , 142.6(C4), 140.4(C2), 133.9(C3), 128.4(C5), 99.9(C1’), 87.6(C4’), 77.4(C2’), 69.7(C3’), 60.1(C5’); IR (cm-1) 3299, 1700, 1398, 1080, 982, 887, 795(
図8参照)。XRPD(°)14.2、17.1、20.5、22.7、23.8、25.1、26.8、34.2X線粉末回折(XRPD)データは
図6として含まれる。XRPDは、微量の溶媒しか存在しないニコチンアミドリボシドクロリドの結晶形態のフィンガープリントとして役立つ。
【0182】
実施例5:NRクロリドは皮膚線維芽細胞においてNADを増加させる
成人皮膚に由来するヒト初代皮膚線維芽細胞(HDFa、Life technologies、グランドアイランド、NY、継代培養2〜4代)を、Low Serum Growth Supplement(LSGS)(Life Technologies)を添加したMedium 106(Life Technologies)で増殖させ、12ウェルプレートにウェル当たり2×10
5細胞の密度で各ウェルに培養培地1mlで播種した。
【0183】
NRクロリドの保存溶液(MW:322.742、GSK3002633B)を水中100mMで新しく調製した。細胞を
図5に示されるように種々の濃度のNRクロリドで6時間および24時間処理し、5mM EDTAを含有するPBSで2回洗浄した後、ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NAD)測定を行った。簡単に述べれば、アセトニトリル(ACN)溶解バッファー(酢酸アンモニウム(50mM)および90%アセトニトリル)を各ウェルに加え(200μl/ウェル)、室温で5〜10分間、培養プレートシェーカー上、低速で穏やかに旋回させることにより細胞を溶解した。酵素マスターミックス(75mM HEPES pH7バッファー(Life Technologies)中、ADPリボシルシクラーゼ(ADPRシクラーゼ)の基質である5−アミノ−(3,4’−ビピリジン)−6(1H)−オン(イナムリノン)(Sigma−Aldrich)300μMおよび30nM ADPRシクラーゼ(Sigma、セントルイス、MO))を、溶解した細胞に加えた(400μlの酵素マスターミックス/ウェル)。酵素反応物を室温で約30分間インキュベートした。インキュベーションの終了時に、各ウェルから反応溶液の上清(200μl)を、96ウェルプレートの各ウェルに移し、吸光度を96ウェルプレートにて、プレートリーダー(Spectra Maxplus、Molecular Devices、サニーヴェール、CA)を用いて405nmで2回読み取った。酵素マスターミックスとACN抽出溶液の2:1比混合物をブランク参照として使用した。単離した化学的に純粋なNAD(Sigma)を陽性対照として使用した。他のNADアッセイも当技術分野で知られているか、そうでなければキットとして一般に入手可能である(例えば、Neubert, D., et al., Biochim. Biophys. Acta, 1964, 92, 610-12; Emanuelli, M., et al. J. Chromatog. B. 676, 13-18;および NAD/NADH Cell-Based Assay Kit by Cayman Chemical)。
図16に示される結果は、皮膚線維芽細胞において細胞内NADレベルを用量依存的に増加させることを示す。
【0184】
均等
本発明は、特に、ニコチンアミドリボシドNAD前駆体化合物、および塩ならびにその使用方法を提供する。本発明の特定の実施形態を述べてきたが、上記明細書は例示であって、限定的なものではない。本明細書を精査すると当業者には本発明の多くの変形が明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲およびそれらの均等物の全範囲、ならびに明細書およびそれらの変形を参照することにより決定されるべきである。
【0185】
参照による組入れ
本明細書に記載された総ての刊行物および特許は、以下に挙げるものを含め、それらの各個の刊行物または特許が参照によって組み入れらることを明示的かつ個々に示された場合と同様に、その全体が参照によって本明細書に組入れられる。矛盾する場合には、本明細書のいずれの定義も含め、本明細書が優先する。
【0186】
また、公開データベースのエントリー、例えば、ゲノム科学研究所(The Institute for Genomic Research)(TIGR)(www.tigr.org)および/または米国国立バイオテクノロジー情報センター(The National Center for Biotechnology Information)(NCBI)(www.ncbi.nlm.nih.gov)により維持されているものなどに相関する受託番号を記載するいずれのポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列も、その全体が参照により組み入れられる。
【0187】
また、以下のPCT公開:WO2005/002672; 2004/016726;WO2006/086454;およびWO 2006/105440も参照により組み入れられる。
【国際調査報告】