(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-518330(P2017-518330A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(54)【発明の名称】大うつ病性障害(MDD)の治療のためのプロトコル
(51)【国際特許分類】
A61K 31/444 20060101AFI20170609BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20170609BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20170609BHJP
【FI】
A61K31/444
A61P25/24
A61K31/496
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-573079(P2016-573079)
(86)(22)【出願日】2015年6月15日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月13日
(86)【国際出願番号】US2015035859
(87)【国際公開番号】WO2015195567
(87)【国際公開日】20151223
(31)【優先権主張番号】62/012,880
(32)【優先日】2014年6月16日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】507161466
【氏名又は名称】ニューラルステム・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100120293
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】ジョー、 カール、 ケー.
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC50
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZA12
(57)【要約】
特定のベンジルピペラジン−アミノピリジン類またはその開鎖形態がインビトロ試験で神経成長を刺激するのに有効であることは知られているにもかかわらず、驚くべきことに、これらの化合物を10mg/日〜130mg/日の用量範囲で25〜35日間にわたって投与することにより、大うつ病性障害(MDD)を治療するのに有効であり、その有効性はわずか6人の対象者のサンプルを用いて統計的に有意な結果が得られる程であることが見出された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象者における大うつ病性障害(MDD)を治療する方法において使用するための、式(1)または式(2)の化合物を含む組成物であって、
【化1】
該方法が、該対象者に、1日あたり10ミリグラム〜130ミリグラム(mg/日)の量の式(1)または式(2)の化合物を提供する量の該組成物を投与することを含んでなる、組成物。
【請求項2】
提供される化合物の量が30〜100mg/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
提供される化合物の量が40〜90mg/日である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
投与が、少なくとも25日間にわたり毎日投与されることにより行われる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記対象者が投与終了時とその少なくとも1ヶ月後に評価される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記評価が、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、および/または、臨床全般印象−改善度(CGI−I)、および/または、うつ病質問票による症状(SDQ)、および/または、認知・身体機能質問票(CPFQ)を行い、その結果を評価することを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記評価が、定量的脳波検査(qEEG)を行い、その結果を評価することを含む、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記評価が共分散分析を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が1日1回、1日2回、または1日3回投与される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が経口剤形である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年6月16日に出願された米国仮出願第62/012,880号からの優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、うつ病、特に大うつ病性障害(Major Depressive Disorder: MDD)の治療に関する。この治療は、特に有効な量の特定のベンジルピペラジン−アミノピリジン化合物および同等の開鎖形態を約1ヶ月間にわたって投与することを含む。
【背景技術】
【0003】
米国特許第8,362,262号は、ニューロンの成長を刺激することができる低分子化合物を記載した認可済みの米国特許のファミリーの代表例である。これらの特許における記載は、これらの化合物が有用となり得る適応症の1つは、うつ病の治療であることを示している。本開示は、うつ病が不十分なニューロン成長による症状であり得る、実際そうであるが、という理論に基づいている。しかしながら、ヒトにおける適切な投与量またはプロトコルの設計に関しては何の情報も提供されておらず、また、投与方法に関する具体的な推奨もない。
【発明の概要】
【0004】
今回、特に2つの化合物が所定の用量範囲において経口投与によるMDD治療に有効であり、その効果は非常に劇的であって長期間持続するため、6人の被験者という小規模のコホートであるにもかかわらず、統計的に有意な結果として承認試験で測定された被験者のMDD状態を劇的な改善することを示した。
【0005】
発明の開示
したがって、一態様において、本発明は、ヒト対象者における大うつ病性障害(MDD)を治療する方法に関し、本方法は、該対象者に、式(1)または式(2)の化合物:
【化1】
を1日あたり10ミリグラム〜130ミリグラム(mg/日)の量で投与することを含む。これらの化合物は、ゼラチンカプセルで経口投与することができる。投与は少なくとも25日間にわたって行われる。
【0006】
別の態様において、本発明は、特定の用量を提供するように設計された経口製剤に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1A、BおよびCは、臨床全般印象−改善度(Clinician Global Impression−Improvement Scale: CGI−I)測定に関するコホート1(40mg/日)、コホート2(80mg/日)およびコホート3(120mg/日)を比較したものである。
【
図2】
図2A、BおよびCは、コホート1、2および3についてのモンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(Montgomery−Asberg Depression Rating Scale: MADRS)の結果を比較したものである。
【
図3】
図3A、BおよびCは、コホート1、2および3についてのうつ病質問票による症状(Symptoms of Depression Questionnaire: SDQ)の結果を比較したものである。
【
図4】
図4A、BおよびCは、うつ病の認知・身体機能質問票(Cognitive and Physical Functioning Questionnaire: CPFQ)測定に関するコホート1、2および3の結果を示す。
【
図5A】
図5Aは、CGI−I測定に関して、プラセボに対する集合的コホートの共分散分析を示す。
【
図5B】
図5Bは、MADRS測定に関して、プラセボに対する集合的コホートの共分散分析を示す。
【
図5C】
図5Cは、SDQ測定に関して、プラセボに対する集合的コホートの共分散分析を示す。
【
図5D】
図5Dは、CPFQ測定に関して、プラセボに対する集合的コホートの共分散分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ヒトにおけるMDDを経口的投与により治療するための、優れた成果を収めるプロトコルを提供するものであり、例えば、10mg/日〜130mg/日、好ましくは30mg/日〜100mg/日の投与量範囲で、1日1回、1日2回または1日3回投与する。好ましくは、前記投与量範囲は40mg/日〜80mg/日である。1日1回または1日2回の投与が好適であるが、製剤中の化合物の量を減らすことによって、投与回数を増やすことができる;したがって、合計87mg/日を投与する場合は、各回29mgの投与量を1日3回投与するために使用する;総投与量が1日あたり48mgである場合は、1日3回投与するための各投与量は16mgとなる。一般的に、投与回数は少ない方が好ましいが、1日3回の投与レジメンは食事と投与を関連づけることができるという点で時には有用である。
【0009】
記載されたパラメーターの範囲内で多様な具体的プロトコルが実施できる。基本的には、1日あたり10mg〜130mg、好ましくは40mg〜90mgの範囲の総投与量を、1日1〜3回、経口製剤により投与される。当然のことながら、より多い量を投与する場合、1回あたりの投与量をより少なくして、1日あたりの投与回数をより多くすることが好適でありうる。よって、1日あたり90mgを投与する場合、90mgの単回ボーラス投与を採用するのではなく、1回につき30mgを1日3回投与するか、または1回につき45mgを1日2回投与することが好ましい。一般的には、1回あたりの投与量を50mg以下、好ましくは40mg以下、または30mg以下に制限することが好ましい。
【0010】
筋肉内または静脈内注射を含む種々の投与経路を利用することができるが、可能な限り経口投与することが明らかに好適である。本発明は、経口投与が実際に可能であり、経口投与が可能であるならば、それが明らかに望ましい。遅延放出製剤を含む経口投与用の多様な製剤を、錠剤、カプセル剤、粉剤、液剤などの種々の形態で使用することができる。製剤はゼラチンカプセルが好都合であるが、飲み込むのが困難な患者は液体製剤を好み、こうした液体製剤も本発明の化合物を投与するのに適している。以下の実施例は、入院患者が参加する臨床試験を例示しているが、一般的には、本発明の化合物は、ヒト対象者によって自宅または職場などのそれぞれの環境で自己投与され得る。
【0011】
前記製剤は、カプセル剤、錠剤、シロップ剤などの経口投与に適したどのような製剤をも含むことができる。標準的な充填剤を使用してもよく、または活性化合物の即座のアベイラビリティ(利用能)をもたらす製剤を使用してもよい。
【0012】
1日に複数回投与する場合には、投与量を均等に分割することが好都合であるが、これは必要条件ではなく、投与される化合物の1日量の範囲となる限り、それぞれの投与毎に異なる量を投与することができる。同様に、毎日同じ投与量で投与する必要はない。
【0013】
典型的には、プロトコルの期間は、およそ1ヶ月、好ましくは25〜35日またはその間の任意の日数である。より長い投与期間、例えば12週または3ヶ月も本発明の範囲内である。あるプロトコルでは、3ヶ月投与(オン)、3ヶ月非投与(オフ)の投与レジメンが用いられる。投与レジメンの一般的なパラメーターが維持される限り、全期間中に1日または2日の間をあけるプロトコルを策定することが可能である。
【0014】
治療の成功は、いくつかの方法、例えば定量的脳波検査(qEEG)により測定することができ、qEEGでは、本発明の化合物を用いて治療された個人は、高周波数のα波(HFα波)が増加することによる改善を示す。
【0015】
その他の測定法としては、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、および/または、臨床全般印象−改善度(CGI−I)、および/または、うつ病質問票による症状(SDQ)、および/または、認知・身体機能質問票(CPFQ)を挙げることができる。
【0016】
対象者が本発明で要求する範囲内の投与量で投与された場合、これらの測定法の1種類以上または全てにおいて、投与期間中に改善を示すか、投与の最終日である終点(end−point)に改善を示すか、またはその後に改善を示す結果が得られた。この改善は、プロトコル終了の例えば1ヶ月後、またはそれ以降に行われた評価によって示されるように、持続するものである。評価は、投与終了に続いて少なくとも1ヶ月後に行うべきである。より後の時点での評価も考えられる。
【0017】
以下の実施例では、式(1)の化合物を第1B相無作為化二重盲検プラセボ対照複数回投与用量漸増試験に用いた。例示された各種用量が投与されたうつ病患者は、プラセボに対して、全ての測定にわたって抑うつ・認知システムの臨床的に意義のある軽減を示した。これらの改善は、投与終了後さらに1ヶ月半にわたる追跡調査期間を通して持続した。
【0018】
以下の実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0019】
実施例1
qEEGにより測定された応答
式(1)の化合物を用いた二重盲検プラセボ対照複数回投与漸増用量試験を症候性MDDの患者において行った。マサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital: MGH)のClinical Trials Network and Institute(CTNI)の評価者から、独立した遠隔SAFERインタビュー(Targum, S. D., et al., CNS Neurosci. Ther. (2008) 14:2−9)により、診断と病気の重症度が確認された24人の被験者が集められた。各患者は適格性についてのスクリーニングを受け(−37日目から−6または−3日目まで)、適格患者は、−5日目に病棟に入院してウォッシュアウトを完了し、適格性およびベースライン評価について再確認された。1日目に開始して28日間、毎日、式(1)の化合物またはプラセボを患者に投与し、退院するまで安全性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)について患者を追跡した。院内投薬の終了時(28日目)に、患者は、精神科医の判断で、病棟内にさらに最大3日間とどまった。35(±3)日目、42(±3)日目、49(±3)日目、および70(±3)日目に、外来患者の追跡調査来院が行われた。患者は、56(±3)日目と84(±3)日目(試験終了時)に更なる追跡調査のために病棟に戻った。
【0020】
被験者を6人ずつの4グループに無作為に分けて、各グループに1回につき40mgの式(1)の化合物をゼラチンカプセルで1日1回、1日2回、または1日3回経口投与して、1日あたり40mg、80mgまたは120mgの式(1)の化合物を投与するか、またはプラセボを28日間与えた。各コホートには少なくとも3人の女性被験者が含まれていた。この実施例では、薬力学的効果を特徴づけるためにqEEGが使用された。
【0021】
実施例2に記載される安全性、薬物動態および行動評価尺度に加えて、qEEG測定は、14日目と28日目の投与の6時間後に、20分間安静状態で行った。EEGは、筋電図検査(EMG)と眼球運動モニタリングをプラスして、19箇所の標準的な国際10/20法(International 10/20 System)頭皮位置を用いて記録した。Cadwell Laboratories社の計測器を用いて記録されたデジタルEEGは、解析前に生理的計測の存在を確認するためにチェックされた。経験豊かな技術者が手動によってEEGファイルから人工物を取り除いた。EEGデータのエポック(epoch)は、Brain Vision Analyzerソフトウェアを用いてパワースペクトル解析に供される。
【0022】
安全性についての投与前と投与後のEEG記録は、目視検査で新たな所見を示さなかった。14日目および28日目の投与前と投与6時間後に、振幅およびコヒーレンス測定を用いてqEEG解析した結果、積極的治療でHFαが増加することを示し、プラセボではより低いHFαを示す。この効果は、薬物投与を受けた患者の左後側頭部と頭頂部において特に顕著であり、ベースラインを14日目または28日目と比較した場合に似ている。積極的治療グループ内の変化についてのみ、ベースラインからの振幅と安全性とを比較した有意な単変量効果が見られる。これらの測定においてプラセボグループ内の変化は有意でなかった。
【0023】
これらの所見は、薬物がMDD患者のqEEGに測定可能な影響を及ぼすことを実証している。積極的治療グループで見られた最大の効果は、左後側頭部におけるHFαであった。この所見は左側頭葉機能の改善と一致しており、また、左側頭葉内側および海馬の活動の変化をも反映し得る。これらの変化の神経心理学的相関は、情動および臨床応答(すなわちフルオキセチン)の状況調節(context regulation)をモジュレートすることを含む可能性があり、後頭部でのアルファ活動の増加が臨床応答と関連づけられた。
【0024】
実施例2
標準テストによる評価
この実施例では、実施例1の試験結果が、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、臨床全般印象−改善度(CGI−I)、うつ病質問票による症状(SDQ)、および認知・身体機能質問票(CPFQ)を含む有効性評価により評価された。28日目にプラセボ処置患者の間で最小限の改善が観察されたにもかかわらず、有効性の測定値は、2つのより低い用量(40mg/日および80mg/日)では、全ての測定においてうつ症状と認知症状の臨床的に意義のある減少を示すが、最高用量(120mg/日)では示さないようであった。しかし、さらなる解析から、最高用量(120mg/日)もまた、これらの患者の状態を改善するのに有効であることが示された。こうした改善は、MADRS、SDQおよびCPFQについての追跡調査期間中、持続した。
【0025】
具体的には、
図1A、BおよびCに示すように、28日目に、40mg/日の式(1)の化合物を投与された患者は、プラセボを含むグループの3.5と比較して、約2.5のCGI−I値を示した。80mg/日(40mgを1日2回)の投与を受けた患者はCGI−Iで3の値を示したが、120mg/日を投与された患者では対照と差がなかった。このデータ図では、各試験グループ(n=6)をプラセボグループのサブセット(n=2)と比較した。
【0026】
図2A、BおよびCに示すMADRS測定では、40mg/日の投与を受けた患者は、このテストで12.5の値を示したのに対して、対照では23.5であった。80mg/日を投与されたグループでは、このテストで15の値が観察されたのに対して、対照では18であった。120mg/日を投与された患者の場合には、MADRS値は、対照の場合の18と比較して、16であった。このデータ図においても、各試験グループ(n=6)をプラセボグループのサブセット(n=2)と比較した。
【0027】
図3A、BおよびCに示すSDQでは、40mg/日の投与を受けた患者は、プラセボを受け取った患者の3.1と比較して、2.5のスコアであった;80mg/日を受け取った患者は、対照の3.5と比較して、2.7の値を示した;120mg/日を28日投与された患者では、そのスコアは実際に対照よりも少し高かった。このデータ図においても、各試験グループ(n=6)をプラセボグループのサブセット(n=2)と比較した。
【0028】
図4A、BおよびCに示すCPFQでは、40mg/日グループは、3.75の対照グループと比較して、2.8の値を示した;80mg/日を受け取った患者は、4.6の対照と比較して、2.6の値を示したが、120mg/日を投与された患者は、対照の場合の3.3と比較して、2.6のスコアであった。このデータ図でも、各試験グループ(n=6)をプラセボグループのサブセット(n=2)と比較した。
【0029】
これらの結果を、共分散分析(ANCOVA)によってさらに解析した。ベースライン値を初期差について調整し、プラセボグループ(n=6)および試験グループ(n=18)の結果を分解(collapse)した。効果の大きさ(効果量)は、コーエン(Cohen)のdグループの平均値の差として推定され、その場合に、d=0.20はわずかな差を示し、d=0.50は中位の差を示し、d=0.80は大きな差を示す。コーエンのd値は、Cohen, J. (1988)
Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences (第2版), Lawrence Erlbaum Associatesに記載されている。d値は、従属変数のスケールが本質的に意味を持たない場合に使用され、平均値間の差は標準化された単位で考えられる。つまり、効果量は、標準偏差(平均値は標準偏差によって異なる)の数値の観点から測定される。よく使用される2つの尺度は、ヘッジのg (Hedges’ g)とコーエンのd (Cohen’s d)である。これらの尺度は両方とも、平均値間の差を標準偏差で割ったものである。それらは、ヘッジのgがN−1で除算される標準偏差式のバージョンを使用する一方で、コーエンのdがNで除算されるバージョンを使用するという点でのみ相違する。
【0030】
共分散は、2つの変数がどれだけ一緒に変化し、それらの間の関係がどれほど強いかの尺度である(Lenth, R. V., The American Statistician (2001) 55:187‐193)。共分散分析(ANCOVA)は、分散分析(ANOVA)と回帰を組み合わせた一般線形モデルである。ANCOVAは、共変量(CV)として知られる主な関心対象ではない他の連続変数の影響を統計的にコントロールしながら、従属変数(DV)の母平均がカテゴリー独立変数のレベル間で等しいかどうかを評価する。したがって、ANCOVAを行う場合、全てのグループがCVにおいて等しい場合、DV平均値は、そのように調整される。CGI−1アッセイでは、7日目をベースライン値として使用した;残りのアッセイでは、0日目をベースラインとして使用した。
【0031】
ANOVA分析の結果を
図5A〜5Dに示す。これらの図では、異なる用量を投与された6人の3つのグループの全18人からの結果を編集したものとプラセボグループの全員とを比較した。
【0032】
図5Aに示すように、CGI−Iテストでの試験グループについてまとめると、ANCOVA分析は、30日目に0.57のd値が得られ、70日目にも1.13のd値が得られたことを示した。表1は、CGI−Iアッセイにおける平均と標準誤差の数値を示す。
【0033】
【表1】
【0034】
図5Bに示すMADRS測定では、30日目のd値は0.95であり、85日目のd値は0.84であった。表2は、MADRSアッセイにおける平均と標準誤差の数値を示す。
【0035】
【表2】
【0036】
図5Cは、30日目に0.90のd値および85日目に1.10のd値を与えるSDQ測定の結果を示す。表3は、SDQアッセイにおける平均と標準誤差の数値を示す。
【0037】
【表3】
【0038】
図5Dに示すCPFQ測定では、30日でのd値は0.94であり、85日目のd値は1.20であった。表4は、CPFQアッセイにおける平均と標準誤差の数値を示す。
【0039】
【表4】
【0040】
高度に有意なd値は、前記化合物の成功を示す。この特定の臨床試験において式(1)の化合物のみを試験したが、式(1)の化合物と式(2)の化合物の構造の明確な類似性の観点から、式(2)の化合物を活性化合物として使用する同等の試験についても同様の結果が容易に予測可能である。
【0041】
深刻な有害事象は発生せず、この薬物は良好な忍容性を示した。この試験の主な限界は、各コホートのサンプルサイズが比較的小さいことと、有効性分析が主目的ではなく、単に記述的な性質のものであったという事実である。このような小さなサンプルサイズで観察された劇的かつ統計的に有意な結果は、驚くべきことであり、期待を大きく上回っている。
【0042】
要約すると、式(1)の神経性化合物は、3つの用量漸増コホートを用いた第1B相二重盲検無作為化プラセボ対照複数回投与試験において、MDDの治療として成功を収めた。脳機能の認知テストと他の関連テストの改善を評価することに加えて、海馬の容積を、例えばMRIで、測定することができ、神経発生ベースのプラットフォームがMDDの有望な新しい治療法を特定できるという見解(Fava, M., et al., J. Psychiatr. Res. (2012) 46:1553−1563)に沿って、海馬容積は、プラセボと比較して被験者において増えている可能性がある。
【国際調査報告】