(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本明細書で開示される主題は、H1プロモーターを使用して、CRISPRガイドRNAを発現させるための組成物および方法を提供する。特に、5’ヌクレオチドの特異性を変更したCRISPRガイドRNA(gRNA)を発現させるH1プロモーターの使用のほか、Cas9ヌクレアーゼとgRNAとを同時に発現させる双方向性プロモーターとしてのH1プロモーター配列の使用のための組成物および方法が提供される。また、RNAリボザイムおよび調節可能なアプタザイムの使用を介する、in vivoにおけるgRNAの発現および発現の調節のための組成物および方法も提供される。
細胞内の1または複数の遺伝子産物の発現を変更する方法であって、前記細胞が、前記1または複数の遺伝子産物をコードするDNA分子を含み、前記方法が、前記細胞中に、非自然発生のCRISPR−Cas系を導入するステップを含み、前記系が、
a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結したH1プロモーターであって、前記gRNAが、前記DNA分子の標的配列とハイブリダイズする、H1プロモーターと;
b)前記細胞内で作動可能な調節エレメントであって、Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節エレメントと
を含む1または複数のベクターを含み、
構成要素(a)および(b)が、前記系の同じベクターまたは異なるベクターに配置され、前記gRNAが、前記標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、前記Cas9タンパク質が、前記DNA分子を切断して、前記1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、方法。
細胞内の1または複数の遺伝子産物の発現を変更する方法であって、前記細胞が、前記1または複数の遺伝子産物をコードするDNA分子を含み、前記方法が、前記細胞中に、双方向性H1プロモーターを含むベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系を導入するステップを含み、前記双方向性H1プロモーターが、
a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列の1つの方向の転写をもたらす制御エレメントであって、前記gRNAが、前記DNA分子の標的配列とハイブリダイズする、制御エレメントと;
b)Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列の反対方向の転写をもたらす制御エレメントと
を含み、
前記gRNAが、前記標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、前記Cas9タンパク質が、前記DNA分子を切断して、前記細胞内の前記1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dは、H1プロモーターによるgRNA合成を介してCRISPRターゲティングを方向付ける能力の査定を示す。gRNAの発現構築物について描示する例示的概略図を、
図1Aに示す。上図では、U6プロモーターは、+1グアノシンヌクレオチドを伴うgRNAだけを発現させ、下図では、H1プロモーターは、プリン(アデノシンまたはグアノシン)ヌクレオチドで開始されるgRNAの発現を駆動しうる。下図には、ゲノム配列であるAN
19NGGをターゲティングするgRNAを伴うCas9タンパク質についての、描画による描示を示す(示される配列は、配列番号30である)。+1Aの場所が指し示される。eGFPターゲティング妨害アッセイについての概観を、
図1Bに示す。eGFP蛍光を、CRISPRターゲティングに続く、コード配列を妨害するフレームシフト突然変異を結果としてもたらす、エラープローンNHEJ媒介型修復により妨害する結果として、蛍光の喪失がもたらされる。
図1Cは、U6プロモーターまたはH1プロモーターから発現させる、gRNAによるCRISPRターゲティングの成功を実証する顕微鏡画像を示す。核(左、マゼンタ)、eGFP蛍光(中、緑)、およびコロニー内のGFP蛍光モザイクエリアを指し示す融合図(右)を示すように、H7 ES細胞を染色し、コロニーを視覚化した。右側に、それぞれの構築物についてのフローサイトメトリーにより、eGFP蛍光喪失の定量化を示す。下図は、H1から発現させるgRNAによりターゲティングされるH7コロニーであって、発現モザイクを示すH7コロニーについての高倍率の拡大図である。スケールバーは、50μMである。NHEJの頻度についての、Surveyorアッセイベースの定量化を、
図1Dに示す。対照(第1のレーン)、U6から発現させるgRNA(第2のレーン)、H1から発現させるgRNA(第3のレーン)、およびマーカー(第4のレーン)について描示するBioanalyzerゲル画像である。インデル%(切り出されていない(u)バンドの、切り出された(c)バンドに対する割合により計算される)を、下図に指し示す。
【
図1B-C】
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dは、H1プロモーターによるgRNA合成を介してCRISPRターゲティングを方向付ける能力の査定を示す。gRNAの発現構築物について描示する例示的概略図を、
図1Aに示す。上図では、U6プロモーターは、+1グアノシンヌクレオチドを伴うgRNAだけを発現させ、下図では、H1プロモーターは、プリン(アデノシンまたはグアノシン)ヌクレオチドで開始されるgRNAの発現を駆動しうる。下図には、ゲノム配列であるAN
19NGGをターゲティングするgRNAを伴うCas9タンパク質についての、描画による描示を示す(示される配列は、配列番号30である)。+1Aの場所が指し示される。eGFPターゲティング妨害アッセイについての概観を、
図1Bに示す。eGFP蛍光を、CRISPRターゲティングに続く、コード配列を妨害するフレームシフト突然変異を結果としてもたらす、エラープローンNHEJ媒介型修復により妨害する結果として、蛍光の喪失がもたらされる。
図1Cは、U6プロモーターまたはH1プロモーターから発現させる、gRNAによるCRISPRターゲティングの成功を実証する顕微鏡画像を示す。核(左、マゼンタ)、eGFP蛍光(中、緑)、およびコロニー内のGFP蛍光モザイクエリアを指し示す融合図(右)を示すように、H7 ES細胞を染色し、コロニーを視覚化した。右側に、それぞれの構築物についてのフローサイトメトリーにより、eGFP蛍光喪失の定量化を示す。下図は、H1から発現させるgRNAによりターゲティングされるH7コロニーであって、発現モザイクを示すH7コロニーについての高倍率の拡大図である。スケールバーは、50μMである。NHEJの頻度についての、Surveyorアッセイベースの定量化を、
図1Dに示す。対照(第1のレーン)、U6から発現させるgRNA(第2のレーン)、H1から発現させるgRNA(第3のレーン)、およびマーカー(第4のレーン)について描示するBioanalyzerゲル画像である。インデル%(切り出されていない(u)バンドの、切り出された(c)バンドに対する割合により計算される)を、下図に指し示す。
【
図1D】
図1A、
図1B、
図1C、および
図1Dは、H1プロモーターによるgRNA合成を介してCRISPRターゲティングを方向付ける能力の査定を示す。gRNAの発現構築物について描示する例示的概略図を、
図1Aに示す。上図では、U6プロモーターは、+1グアノシンヌクレオチドを伴うgRNAだけを発現させ、下図では、H1プロモーターは、プリン(アデノシンまたはグアノシン)ヌクレオチドで開始されるgRNAの発現を駆動しうる。下図には、ゲノム配列であるAN
19NGGをターゲティングするgRNAを伴うCas9タンパク質についての、描画による描示を示す(示される配列は、配列番号30である)。+1Aの場所が指し示される。eGFPターゲティング妨害アッセイについての概観を、
図1Bに示す。eGFP蛍光を、CRISPRターゲティングに続く、コード配列を妨害するフレームシフト突然変異を結果としてもたらす、エラープローンNHEJ媒介型修復により妨害する結果として、蛍光の喪失がもたらされる。
図1Cは、U6プロモーターまたはH1プロモーターから発現させる、gRNAによるCRISPRターゲティングの成功を実証する顕微鏡画像を示す。核(左、マゼンタ)、eGFP蛍光(中、緑)、およびコロニー内のGFP蛍光モザイクエリアを指し示す融合図(右)を示すように、H7 ES細胞を染色し、コロニーを視覚化した。右側に、それぞれの構築物についてのフローサイトメトリーにより、eGFP蛍光喪失の定量化を示す。下図は、H1から発現させるgRNAによりターゲティングされるH7コロニーであって、発現モザイクを示すH7コロニーについての高倍率の拡大図である。スケールバーは、50μMである。NHEJの頻度についての、Surveyorアッセイベースの定量化を、
図1Dに示す。対照(第1のレーン)、U6から発現させるgRNA(第2のレーン)、H1から発現させるgRNA(第3のレーン)、およびマーカー(第4のレーン)について描示するBioanalyzerゲル画像である。インデル%(切り出されていない(u)バンドの、切り出された(c)バンドに対する割合により計算される)を、下図に指し示す。
【
図2】
図2は、HEK−293細胞内のNHEJについての、Surveyorによる解析および定量化を示す。eGFPの概略図を上図に示すが、矢印は、ターゲティング部位を指し示す。プラス鎖の標的部位は、右向きで指し示し、マイナス鎖の標的は、左向きで指し示し、青色の矢印は、H1プロモーターのgRNAを指し示し、橙色の矢印は、U6プロモーターのgRNAを指し示す。SurveyorアッセイによるBioanalyzerゲルを下図に示す。標的部位座標を上方に列挙し、インデル%の計算値を下方に指し示す。
【
図3A】
図3A、
図3B、および
図3Cは、AAVS1遺伝子座におけるターゲティングおよび相同組換えを示す。H1プロモーターにより発現させる3つのgRNA(AAVS1−1a〜AAVS−1−3a)、U6プロモーターにより発現させる3つのgRNA(AAVS−1−1〜AAVS−1−3)、および対照の非ターゲティングgRNAについてのSurveyor解析を、
図3Aに示す。
図3Bは、AAVS−1ターゲティングドナーベクターについての概略図(AAVS1遺伝子座(「AAVS1」と表示する)の上方に示す)と、H1::AAVS1−3a gRNAおよびAAVS−1ターゲティングベクターによる電気穿孔に続くGFP陽性H7 ES細胞コロニーについての細胞イメージングとを示す。相同組換えによる適正な統合を指し示すターゲティング接合領域についてのサンガーシークェンシングを、
図3Cに示す(示される配列は、配列番号31である)。
【
図3B-C】
図3A、
図3B、および
図3Cは、AAVS1遺伝子座におけるターゲティングおよび相同組換えを示す。H1プロモーターにより発現させる3つのgRNA(AAVS1−1a〜AAVS−1−3a)、U6プロモーターにより発現させる3つのgRNA(AAVS−1−1〜AAVS−1−3)、および対照の非ターゲティングgRNAについてのSurveyor解析を、
図3Aに示す。
図3Bは、AAVS−1ターゲティングドナーベクターについての概略図(AAVS1遺伝子座(「AAVS1」と表示する)の上方に示す)と、H1::AAVS1−3a gRNAおよびAAVS−1ターゲティングベクターによる電気穿孔に続くGFP陽性H7 ES細胞コロニーについての細胞イメージングとを示す。相同組換えによる適正な統合を指し示すターゲティング接合領域についてのサンガーシークェンシングを、
図3Cに示す(示される配列は、配列番号31である)。
【
図4A】
図4A、
図4B、
図4C、および
図4Dは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内のCRIPSR部位の頻度について描示するCircosプロットを、
図4Aに示す。外側の円は、ヒト染色体の表記記号を描示する。内側に移動して、GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)のCRISPR部位の頻度を、染色体に沿って指し示す。円の内側に、ヒトエクソン密度(黒)、およびOMIM疾患遺伝子座(青)をプロットする。ゲノム内のCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を、
図4Bに示す。ゲノム内の、隣接するGN
19NGG(橙)部位、AN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、RN
19NGG部位を含むプロット内に挿入する。
図4Cは、ヒト遺伝子(左)またはOMIM疾患遺伝子座(右)における、GN
19NGG部位の頻度についての、AN
19NGG部位の頻度と対比したバープロットによる定量化を示す。
図4Dは、6つのゲノム:ヒト、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、およびゼブラフィッシュにおける、GN
19NGGの頻度を、AN
19NGGの頻度と対比させて定量化するバープロットを示す。
【
図4B】
図4A、
図4B、
図4C、および
図4Dは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内のCRIPSR部位の頻度について描示するCircosプロットを、
図4Aに示す。外側の円は、ヒト染色体の表記記号を描示する。内側に移動して、GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)のCRISPR部位の頻度を、染色体に沿って指し示す。円の内側に、ヒトエクソン密度(黒)、およびOMIM疾患遺伝子座(青)をプロットする。ゲノム内のCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を、
図4Bに示す。ゲノム内の、隣接するGN
19NGG(橙)部位、AN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、RN
19NGG部位を含むプロット内に挿入する。
図4Cは、ヒト遺伝子(左)またはOMIM疾患遺伝子座(右)における、GN
19NGG部位の頻度についての、AN
19NGG部位の頻度と対比したバープロットによる定量化を示す。
図4Dは、6つのゲノム:ヒト、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、およびゼブラフィッシュにおける、GN
19NGGの頻度を、AN
19NGGの頻度と対比させて定量化するバープロットを示す。
【
図4C】
図4A、
図4B、
図4C、および
図4Dは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内のCRIPSR部位の頻度について描示するCircosプロットを、
図4Aに示す。外側の円は、ヒト染色体の表記記号を描示する。内側に移動して、GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)のCRISPR部位の頻度を、染色体に沿って指し示す。円の内側に、ヒトエクソン密度(黒)、およびOMIM疾患遺伝子座(青)をプロットする。ゲノム内のCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を、
図4Bに示す。ゲノム内の、隣接するGN
19NGG(橙)部位、AN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、RN
19NGG部位を含むプロット内に挿入する。
図4Cは、ヒト遺伝子(左)またはOMIM疾患遺伝子座(右)における、GN
19NGG部位の頻度についての、AN
19NGG部位の頻度と対比したバープロットによる定量化を示す。
図4Dは、6つのゲノム:ヒト、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、およびゼブラフィッシュにおける、GN
19NGGの頻度を、AN
19NGGの頻度と対比させて定量化するバープロットを示す。
【
図4D】
図4A、
図4B、
図4C、および
図4Dは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内のCRIPSR部位の頻度について描示するCircosプロットを、
図4Aに示す。外側の円は、ヒト染色体の表記記号を描示する。内側に移動して、GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)のCRISPR部位の頻度を、染色体に沿って指し示す。円の内側に、ヒトエクソン密度(黒)、およびOMIM疾患遺伝子座(青)をプロットする。ゲノム内のCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を、
図4Bに示す。ゲノム内の、隣接するGN
19NGG(橙)部位、AN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、RN
19NGG部位を含むプロット内に挿入する。
図4Cは、ヒト遺伝子(左)またはOMIM疾患遺伝子座(右)における、GN
19NGG部位の頻度についての、AN
19NGG部位の頻度と対比したバープロットによる定量化を示す。
図4Dは、6つのゲノム:ヒト、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ、およびゼブラフィッシュにおける、GN
19NGGの頻度を、AN
19NGGの頻度と対比させて定量化するバープロットを示す。
【
図5A】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5Fは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内の各gRNA部位の密度について描示する3つのパネル:GN
19NGG(
図5A)、AN
19NGG(
図5B)、およびRN
19NGG(
図5C)を示す。各プロット内には、CRISPR部位の密度を、各染色体に沿ってプロットする。滑らかなガウスカーネルとして計算される密度曲線を、半透明(橙、青、または紫)で重ね合わせる。点線は、35bp(基準として述べると、平均で、TALENターゲティング部位は、35塩基対ごとに生じ、ZFN部位は、数百塩基対ごとに生じると推定される(Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Cermakら(2011年)、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁))を指し示す。ヒト染色体1つ当たりの累加平均値CRISPRターゲティング密度についてのバープロットを、
図5Dに示す。GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)は、それぞれのCRISPR部位を指し示す。点線は、35bpの基準を指し示す。
図5Eは、ゲノム内の隣接するCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を示す。ゲノム内で隣接するGN
19NGG(橙)部位およびAN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、プロット内に挿入する。ヒトゲノム内の全てのGN
19NGG部位(左上)、AN
19NGG部位(右上)、およびRN
19NGG部位(下)についてのSeqLogoを、
図5Fに示す。
【
図5B】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5Fは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内の各gRNA部位の密度について描示する3つのパネル:GN
19NGG(
図5A)、AN
19NGG(
図5B)、およびRN
19NGG(
図5C)を示す。各プロット内には、CRISPR部位の密度を、各染色体に沿ってプロットする。滑らかなガウスカーネルとして計算される密度曲線を、半透明(橙、青、または紫)で重ね合わせる。点線は、35bp(基準として述べると、平均で、TALENターゲティング部位は、35塩基対ごとに生じ、ZFN部位は、数百塩基対ごとに生じると推定される(Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Cermakら(2011年)、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁))を指し示す。ヒト染色体1つ当たりの累加平均値CRISPRターゲティング密度についてのバープロットを、
図5Dに示す。GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)は、それぞれのCRISPR部位を指し示す。点線は、35bpの基準を指し示す。
図5Eは、ゲノム内の隣接するCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を示す。ゲノム内で隣接するGN
19NGG(橙)部位およびAN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、プロット内に挿入する。ヒトゲノム内の全てのGN
19NGG部位(左上)、AN
19NGG部位(右上)、およびRN
19NGG部位(下)についてのSeqLogoを、
図5Fに示す。
【
図5C】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5Fは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内の各gRNA部位の密度について描示する3つのパネル:GN
19NGG(
図5A)、AN
19NGG(
図5B)、およびRN
19NGG(
図5C)を示す。各プロット内には、CRISPR部位の密度を、各染色体に沿ってプロットする。滑らかなガウスカーネルとして計算される密度曲線を、半透明(橙、青、または紫)で重ね合わせる。点線は、35bp(基準として述べると、平均で、TALENターゲティング部位は、35塩基対ごとに生じ、ZFN部位は、数百塩基対ごとに生じると推定される(Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Cermakら(2011年)、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁))を指し示す。ヒト染色体1つ当たりの累加平均値CRISPRターゲティング密度についてのバープロットを、
図5Dに示す。GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)は、それぞれのCRISPR部位を指し示す。点線は、35bpの基準を指し示す。
図5Eは、ゲノム内の隣接するCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を示す。ゲノム内で隣接するGN
19NGG(橙)部位およびAN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、プロット内に挿入する。ヒトゲノム内の全てのGN
19NGG部位(左上)、AN
19NGG部位(右上)、およびRN
19NGG部位(下)についてのSeqLogoを、
図5Fに示す。
【
図5D】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5Fは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内の各gRNA部位の密度について描示する3つのパネル:GN
19NGG(
図5A)、AN
19NGG(
図5B)、およびRN
19NGG(
図5C)を示す。各プロット内には、CRISPR部位の密度を、各染色体に沿ってプロットする。滑らかなガウスカーネルとして計算される密度曲線を、半透明(橙、青、または紫)で重ね合わせる。点線は、35bp(基準として述べると、平均で、TALENターゲティング部位は、35塩基対ごとに生じ、ZFN部位は、数百塩基対ごとに生じると推定される(Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Cermakら(2011年)、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁))を指し示す。ヒト染色体1つ当たりの累加平均値CRISPRターゲティング密度についてのバープロットを、
図5Dに示す。GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)は、それぞれのCRISPR部位を指し示す。点線は、35bpの基準を指し示す。
図5Eは、ゲノム内の隣接するCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を示す。ゲノム内で隣接するGN
19NGG(橙)部位およびAN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、プロット内に挿入する。ヒトゲノム内の全てのGN
19NGG部位(左上)、AN
19NGG部位(右上)、およびRN
19NGG部位(下)についてのSeqLogoを、
図5Fに示す。
【
図5E】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5Fは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内の各gRNA部位の密度について描示する3つのパネル:GN
19NGG(
図5A)、AN
19NGG(
図5B)、およびRN
19NGG(
図5C)を示す。各プロット内には、CRISPR部位の密度を、各染色体に沿ってプロットする。滑らかなガウスカーネルとして計算される密度曲線を、半透明(橙、青、または紫)で重ね合わせる。点線は、35bp(基準として述べると、平均で、TALENターゲティング部位は、35塩基対ごとに生じ、ZFN部位は、数百塩基対ごとに生じると推定される(Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Cermakら(2011年)、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁))を指し示す。ヒト染色体1つ当たりの累加平均値CRISPRターゲティング密度についてのバープロットを、
図5Dに示す。GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)は、それぞれのCRISPR部位を指し示す。点線は、35bpの基準を指し示す。
図5Eは、ゲノム内の隣接するCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を示す。ゲノム内で隣接するGN
19NGG(橙)部位およびAN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、プロット内に挿入する。ヒトゲノム内の全てのGN
19NGG部位(左上)、AN
19NGG部位(右上)、およびRN
19NGG部位(下)についてのSeqLogoを、
図5Fに示す。
【
図5F】
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5Fは、ゲノム内のGN
19NGG部位およびAN
19NGG部位についてのバイオインフォマティクス解析を示す。ヒトゲノム内の各gRNA部位の密度について描示する3つのパネル:GN
19NGG(
図5A)、AN
19NGG(
図5B)、およびRN
19NGG(
図5C)を示す。各プロット内には、CRISPR部位の密度を、各染色体に沿ってプロットする。滑らかなガウスカーネルとして計算される密度曲線を、半透明(橙、青、または紫)で重ね合わせる。点線は、35bp(基準として述べると、平均で、TALENターゲティング部位は、35塩基対ごとに生じ、ZFN部位は、数百塩基対ごとに生じると推定される(Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Cermakら(2011年)、Nucleic Acids Res.、39巻(12号):e82頁))を指し示す。ヒト染色体1つ当たりの累加平均値CRISPRターゲティング密度についてのバープロットを、
図5Dに示す。GN
19NGG(橙)、AN
19NGG(青)、およびRN
19NGG(紫)は、それぞれのCRISPR部位を指し示す。点線は、35bpの基準を指し示す。
図5Eは、ゲノム内の隣接するCRISPR部位の頻度およびこれらの間の距離を示す。ゲノム内で隣接するGN
19NGG(橙)部位およびAN
19NGG(青)部位の頻度および距離についてのバープロットを示す。平均値および中央値を、プロット内に挿入する。ヒトゲノム内の全てのGN
19NGG部位(左上)、AN
19NGG部位(右上)、およびRN
19NGG部位(下)についてのSeqLogoを、
図5Fに示す。
【
図6A】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6Fは、AT/GCゲノム含量およびCRISPR部位の頻度を示す。ATパーセント(青)、またはGCパーセント(橙)を、ヒトゲノム、ウシゲノム、マウスゲノム、ラットゲノム、ニワトリゲノム、およびゼブラフィッシュゲノムについて指し示す(
図6A)。AT/GC含量に照らして標準化されたGN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を指し示す(
図6B)。GN
19NGG部位(左)、AN
19NGG部位(中)、およびRN
19NGG部位(右)についてのCRISPR部位の頻度を、鎖ごとに、
図6Cに示す。プラス鎖(左棒)を、青緑色で指し示し、マイナス鎖(右棒)を紫赤色で指し示す。Drosophila属、C.elegans、およびS.cerevisiaeにおける、GN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を、
図6Dに指し示す。
図6Eは、AT含量パーセント(青)、またはGC含量パーセント(橙)を示す図であり、
図6Fは、標準化されたCRISPR部位の頻度を示す。
【
図6B】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6Fは、AT/GCゲノム含量およびCRISPR部位の頻度を示す。ATパーセント(青)、またはGCパーセント(橙)を、ヒトゲノム、ウシゲノム、マウスゲノム、ラットゲノム、ニワトリゲノム、およびゼブラフィッシュゲノムについて指し示す(
図6A)。AT/GC含量に照らして標準化されたGN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を指し示す(
図6B)。GN
19NGG部位(左)、AN
19NGG部位(中)、およびRN
19NGG部位(右)についてのCRISPR部位の頻度を、鎖ごとに、
図6Cに示す。プラス鎖(左棒)を、青緑色で指し示し、マイナス鎖(右棒)を紫赤色で指し示す。Drosophila属、C.elegans、およびS.cerevisiaeにおける、GN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を、
図6Dに指し示す。
図6Eは、AT含量パーセント(青)、またはGC含量パーセント(橙)を示す図であり、
図6Fは、標準化されたCRISPR部位の頻度を示す。
【
図6C】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6Fは、AT/GCゲノム含量およびCRISPR部位の頻度を示す。ATパーセント(青)、またはGCパーセント(橙)を、ヒトゲノム、ウシゲノム、マウスゲノム、ラットゲノム、ニワトリゲノム、およびゼブラフィッシュゲノムについて指し示す(
図6A)。AT/GC含量に照らして標準化されたGN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を指し示す(
図6B)。GN
19NGG部位(左)、AN
19NGG部位(中)、およびRN
19NGG部位(右)についてのCRISPR部位の頻度を、鎖ごとに、
図6Cに示す。プラス鎖(左棒)を、青緑色で指し示し、マイナス鎖(右棒)を紫赤色で指し示す。Drosophila属、C.elegans、およびS.cerevisiaeにおける、GN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を、
図6Dに指し示す。
図6Eは、AT含量パーセント(青)、またはGC含量パーセント(橙)を示す図であり、
図6Fは、標準化されたCRISPR部位の頻度を示す。
【
図6D】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6Fは、AT/GCゲノム含量およびCRISPR部位の頻度を示す。ATパーセント(青)、またはGCパーセント(橙)を、ヒトゲノム、ウシゲノム、マウスゲノム、ラットゲノム、ニワトリゲノム、およびゼブラフィッシュゲノムについて指し示す(
図6A)。AT/GC含量に照らして標準化されたGN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を指し示す(
図6B)。GN
19NGG部位(左)、AN
19NGG部位(中)、およびRN
19NGG部位(右)についてのCRISPR部位の頻度を、鎖ごとに、
図6Cに示す。プラス鎖(左棒)を、青緑色で指し示し、マイナス鎖(右棒)を紫赤色で指し示す。Drosophila属、C.elegans、およびS.cerevisiaeにおける、GN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を、
図6Dに指し示す。
図6Eは、AT含量パーセント(青)、またはGC含量パーセント(橙)を示す図であり、
図6Fは、標準化されたCRISPR部位の頻度を示す。
【
図6E】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6Fは、AT/GCゲノム含量およびCRISPR部位の頻度を示す。ATパーセント(青)、またはGCパーセント(橙)を、ヒトゲノム、ウシゲノム、マウスゲノム、ラットゲノム、ニワトリゲノム、およびゼブラフィッシュゲノムについて指し示す(
図6A)。AT/GC含量に照らして標準化されたGN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を指し示す(
図6B)。GN
19NGG部位(左)、AN
19NGG部位(中)、およびRN
19NGG部位(右)についてのCRISPR部位の頻度を、鎖ごとに、
図6Cに示す。プラス鎖(左棒)を、青緑色で指し示し、マイナス鎖(右棒)を紫赤色で指し示す。Drosophila属、C.elegans、およびS.cerevisiaeにおける、GN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を、
図6Dに指し示す。
図6Eは、AT含量パーセント(青)、またはGC含量パーセント(橙)を示す図であり、
図6Fは、標準化されたCRISPR部位の頻度を示す。
【
図6F】
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6Fは、AT/GCゲノム含量およびCRISPR部位の頻度を示す。ATパーセント(青)、またはGCパーセント(橙)を、ヒトゲノム、ウシゲノム、マウスゲノム、ラットゲノム、ニワトリゲノム、およびゼブラフィッシュゲノムについて指し示す(
図6A)。AT/GC含量に照らして標準化されたGN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を指し示す(
図6B)。GN
19NGG部位(左)、AN
19NGG部位(中)、およびRN
19NGG部位(右)についてのCRISPR部位の頻度を、鎖ごとに、
図6Cに示す。プラス鎖(左棒)を、青緑色で指し示し、マイナス鎖(右棒)を紫赤色で指し示す。Drosophila属、C.elegans、およびS.cerevisiaeにおける、GN
19NGG部位(橙)およびAN
19NGG部位(青)の頻度を、
図6Dに指し示す。
図6Eは、AT含量パーセント(青)、またはGC含量パーセント(橙)を示す図であり、
図6Fは、標準化されたCRISPR部位の頻度を示す。
【
図7A-B】
図7A、
図7B、
図7C、および
図7Dは、CRISPRによる、H7 ES細胞内の内因性遺伝子(MERTK)における、AN
19NGGのターゲティングを示す。MERTK遺伝子座および多様なタンパク質ドメインについての模式図を、
図7Aに示す。エクソン2内の標的部位を、下方に大縮尺で示し、CRISPR AN
19NGG標的部位を指し示す(示される配列は、配列番号32である)。Surveyorアッセイによる、エクソン2におけるCRISPRターゲティングの定量化を、
図7Bに示す。エクソン2内のCRISPR部位を、Surveyorアッセイで使用される多様なプライマー(矢印)と共に、上方に描示するが、F1:R1およびF2:R2のいずれもが標的部位にわたるのに対し、対照のPCR産物であるF3:R3は、標的部位のすぐ外側にある。Surveyorアッセイによるゲルを、左側に示される、3つの対照産物と共に、下方に示し、ターゲティングを、右側に示す。下方にインデル%頻度を指し示す。
図7Cは、突然変異体細胞系についてのサンガーシークェンシングを示す。クローン細胞系を単離およびシークェンシングしたところ、AN
19NGG部位におけるCRISPRターゲティングは、この領域における突然変異誘発を結果としてもたらすことが指し示された。クロマトグラムアライメントは、クローニングされた6つの固有の突然変異を示す(wtは、配列番号33であり;Δ12は、配列番号34であり;Δ1は、配列番号35であり;Δ2、+2は、配列番号36であり;Δ6は、配列番号37であり;Δ7は、配列番号38である)。
図7Dは、H7由来RPE細胞内のMertk発現についてのウェスタンブロット解析を示す。レーン1、3、および4は、ノックアウト細胞系を指し示し、レーン2は、ヘテロ接合性細胞系からの発現を指し示す。
【
図7C-D】
図7A、
図7B、
図7C、および
図7Dは、CRISPRによる、H7 ES細胞内の内因性遺伝子(MERTK)における、AN
19NGGのターゲティングを示す。MERTK遺伝子座および多様なタンパク質ドメインについての模式図を、
図7Aに示す。エクソン2内の標的部位を、下方に大縮尺で示し、CRISPR AN
19NGG標的部位を指し示す(示される配列は、配列番号32である)。Surveyorアッセイによる、エクソン2におけるCRISPRターゲティングの定量化を、
図7Bに示す。エクソン2内のCRISPR部位を、Surveyorアッセイで使用される多様なプライマー(矢印)と共に、上方に描示するが、F1:R1およびF2:R2のいずれもが標的部位にわたるのに対し、対照のPCR産物であるF3:R3は、標的部位のすぐ外側にある。Surveyorアッセイによるゲルを、左側に示される、3つの対照産物と共に、下方に示し、ターゲティングを、右側に示す。下方にインデル%頻度を指し示す。
図7Cは、突然変異体細胞系についてのサンガーシークェンシングを示す。クローン細胞系を単離およびシークェンシングしたところ、AN
19NGG部位におけるCRISPRターゲティングは、この領域における突然変異誘発を結果としてもたらすことが指し示された。クロマトグラムアライメントは、クローニングされた6つの固有の突然変異を示す(wtは、配列番号33であり;Δ12は、配列番号34であり;Δ1は、配列番号35であり;Δ2、+2は、配列番号36であり;Δ6は、配列番号37であり;Δ7は、配列番号38である)。
図7Dは、H7由来RPE細胞内のMertk発現についてのウェスタンブロット解析を示す。レーン1、3、および4は、ノックアウト細胞系を指し示し、レーン2は、ヘテロ接合性細胞系からの発現を指し示す。
【
図8A-B】
図8A、
図8B、
図8C、および
図8Dは、U6またはH1から発現させるgRNAにより、オンターゲット部位およびオフターゲット部位において誘導される、オフターゲットヒットについての解析を示す。H1プロモーター(青)またはU6プロモーター(橙)の滴定量による、VEGFA T1 gRNAの発現レベルについてのqRT−PCR解析を、
図8Aに示す。VEGFA T1についてのオンターゲットおよびオフターゲット解析を、
図8Bに示す。Surveyor解析を、左図に指し示し、標的配列を、右図に、ミスマッチと共に、赤色で指し示す(T1、配列番号20;OT1−3、配列番号21;OT1−4、配列番号22;OT1−6、配列番号23;OT1−11、配列番号24)。
図8Cも、
図8Bと同じであるが、VEGFA T3標的についての図である(VEGFA T3、配列番号25;OT3−1、配列番号26;OT3−2、配列番号27;OT3−4、配列番号28;OT3−18、配列番号29)。VEGFA T1の、オフターゲット特異性に対する、オンターゲット特異性を、
図8Dに示す。H1プロモーター(青)またはU6プロモーター(橙)の、オンターゲット突然変異誘発/オフターゲット突然変異誘発の比を示す。1.0の点線を下回る値は、オフターゲット突然変異誘発が、オンターゲット突然変異誘発を超えることを指し示す。全ての部分について、オンターゲット部位およびオフターゲット部位を、Fuら((2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):822〜6頁)およびChoら((2014年)、Genome Research、24巻:132〜141頁)における通りに標識する。
【
図8C-D】
図8A、
図8B、
図8C、および
図8Dは、U6またはH1から発現させるgRNAにより、オンターゲット部位およびオフターゲット部位において誘導される、オフターゲットヒットについての解析を示す。H1プロモーター(青)またはU6プロモーター(橙)の滴定量による、VEGFA T1 gRNAの発現レベルについてのqRT−PCR解析を、
図8Aに示す。VEGFA T1についてのオンターゲットおよびオフターゲット解析を、
図8Bに示す。Surveyor解析を、左図に指し示し、標的配列を、右図に、ミスマッチと共に、赤色で指し示す(T1、配列番号20;OT1−3、配列番号21;OT1−4、配列番号22;OT1−6、配列番号23;OT1−11、配列番号24)。
図8Cも、
図8Bと同じであるが、VEGFA T3標的についての図である(VEGFA T3、配列番号25;OT3−1、配列番号26;OT3−2、配列番号27;OT3−4、配列番号28;OT3−18、配列番号29)。VEGFA T1の、オフターゲット特異性に対する、オンターゲット特異性を、
図8Dに示す。H1プロモーター(青)またはU6プロモーター(橙)の、オンターゲット突然変異誘発/オフターゲット突然変異誘発の比を示す。1.0の点線を下回る値は、オフターゲット突然変異誘発が、オンターゲット突然変異誘発を超えることを指し示す。全ての部分について、オンターゲット部位およびオフターゲット部位を、Fuら((2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):822〜6頁)およびChoら((2014年)、Genome Research、24巻:132〜141頁)における通りに標識する。
【
図9A-B】
図9Aおよび
図9Bは、CRISPRターゲティングのためのgRNAの発現における、U6プロモーターの特性とH1プロモーターの特性との対比を示す。
図9Aの上略図は、内因性ヒトU6プロモーターおよび転写開始部位(配列番号39)を示す。
図9Aの下略図は、異なる+1ヌクレオチドを伴うgRNAを駆動する、U6プロモーターの使用を指し示す。U6は、開始するのにG(左上)を要請するため、A(右上)、C(左下)、またはT(右下)で始まるパネルは、下流の最初のGで開始する可能性が高く、短縮型gRNAをもたらすであろう(U6:GN19NGGは、配列番号40であり;U6:AN19NGGは、配列番号41であり;U6:CN19NGGは、配列番号42であり;U6:TN19NGGは、配列番号43である)。
図9Bの上略図は、内因性ヒトH1プロモーターおよび転写開始部位(配列番号44)を示す。
図9Bの下略図は、異なる+1ヌクレオチドを伴うgRNAを駆動する、H1プロモーターの使用を指し示す。H1は、G(左上)またはA(右上)で開始することが可能であり、全長gRNAをもたらす。H1はまた、CヌクレオチドおよびTヌクレオチドにおける転写の開始も可能とすることが報告されており、これは、H1プロモーターの下流の任意の+1ヌクレオチドについて、全長転写物を可能とする(H1:GN19NGGは、配列番号45であり;H1:AN19NGGは、配列番号46であり;H1:CN19NGGは、配列番号47であり;H1:TN19NGGは、配列番号48である)。
【
図10A-B】
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、Cas9タンパク質およびガイドRNAを同時に発現させる双方向性プロモーターとしてのH1プロモーターの使用を示す。双方向性H1プロモーターは、左へのpol II転写物としてのCas9(マイナス鎖)、および右へのpol III転写物としてのガイドRNA(プラス鎖)を発現させることが示されている(
図10A)。発現カセットの全体は、およそ4.4kbである。
図10Bは、双方向性H1構築物からのCRISPR媒介型切断を方向付ける能力について調べるために使用される構築物を示す。eGFPをターゲティングするgRNAを使用する双方向性構築物を、プラスミド中にクローニングし、GFPを発現させるヒト幹細胞内で発現させた。GFPの喪失が目視により検出される(中パネル、矢印)ことから、発現構築物による発現およびGFPのターゲティングの成功が指し示される(
図10C)。CRISPRターゲティングの成功はまた、レーン2および3における2つのバンドの存在を伴うSurveyorアッセイを介しても示される(
図10D)。約4.75bのコンパクトターゲティングカセットを作出するのにH1プロモーターを使用する双方向性CRISPR構築物であって、アデノ随伴ウイルスのパッケージング範囲内にある構築物を、
図10Eに示す。SV40ターミネーターは、橙色で示され、構築物は、ウイルスの産生に要請されるITR(inverted terminal repeat)配列で挟まれている。
【
図10C-D】
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、Cas9タンパク質およびガイドRNAを同時に発現させる双方向性プロモーターとしてのH1プロモーターの使用を示す。双方向性H1プロモーターは、左へのpol II転写物としてのCas9(マイナス鎖)、および右へのpol III転写物としてのガイドRNA(プラス鎖)を発現させることが示されている(
図10A)。発現カセットの全体は、およそ4.4kbである。
図10Bは、双方向性H1構築物からのCRISPR媒介型切断を方向付ける能力について調べるために使用される構築物を示す。eGFPをターゲティングするgRNAを使用する双方向性構築物を、プラスミド中にクローニングし、GFPを発現させるヒト幹細胞内で発現させた。GFPの喪失が目視により検出される(中パネル、矢印)ことから、発現構築物による発現およびGFPのターゲティングの成功が指し示される(
図10C)。CRISPRターゲティングの成功はまた、レーン2および3における2つのバンドの存在を伴うSurveyorアッセイを介しても示される(
図10D)。約4.75bのコンパクトターゲティングカセットを作出するのにH1プロモーターを使用する双方向性CRISPR構築物であって、アデノ随伴ウイルスのパッケージング範囲内にある構築物を、
図10Eに示す。SV40ターミネーターは、橙色で示され、構築物は、ウイルスの産生に要請されるITR(inverted terminal repeat)配列で挟まれている。
【
図10E】
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、Cas9タンパク質およびガイドRNAを同時に発現させる双方向性プロモーターとしてのH1プロモーターの使用を示す。双方向性H1プロモーターは、左へのpol II転写物としてのCas9(マイナス鎖)、および右へのpol III転写物としてのガイドRNA(プラス鎖)を発現させることが示されている(
図10A)。発現カセットの全体は、およそ4.4kbである。
図10Bは、双方向性H1構築物からのCRISPR媒介型切断を方向付ける能力について調べるために使用される構築物を示す。eGFPをターゲティングするgRNAを使用する双方向性構築物を、プラスミド中にクローニングし、GFPを発現させるヒト幹細胞内で発現させた。GFPの喪失が目視により検出される(中パネル、矢印)ことから、発現構築物による発現およびGFPのターゲティングの成功が指し示される(
図10C)。CRISPRターゲティングの成功はまた、レーン2および3における2つのバンドの存在を伴うSurveyorアッセイを介しても示される(
図10D)。約4.75bのコンパクトターゲティングカセットを作出するのにH1プロモーターを使用する双方向性CRISPR構築物であって、アデノ随伴ウイルスのパッケージング範囲内にある構築物を、
図10Eに示す。SV40ターミネーターは、橙色で示され、構築物は、ウイルスの産生に要請されるITR(inverted terminal repeat)配列で挟まれている。
【
図11A】
図11A、
図11B、および
図11Cは、ガイドRNAの5’末端を作出するハンマーヘッド型リボザイムを示す。5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイム(配列番号49)およびgRNA(配列番号50)についての描示を、
図11Aに示す。ハンマーヘッド型リボザイムの配列を指し示し、触媒作用に重要なヌクレオチドを指し示す(極めて重要なヌクレオチドを赤色、重要なヌクレオチドを橙色で)。切断の場所を、矢印で指し示す。リボザイムにより切断される(下)と、結果として得られるgRNAは、新たに形成された5’側位置におけるヌクレオチドに制約されずに放出される。ハンマーヘッド−gRNAを発現させる構築物を、
図11Bに示す。一般に、U6、H1、またはT7などのpol IIIプロモーターであるプロモーターを使用して、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムを発現させることができ、これは、自己切断の後で、gRNAを放出するであろう。2つの遺伝子座のターゲティングを、Surveyorアッセイ(HH1=配列番号51;HH2=配列番号52)、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムによる切断(矢印)の成功と共に示す(
図11C)。
【
図11B】
図11A、
図11B、および
図11Cは、ガイドRNAの5’末端を作出するハンマーヘッド型リボザイムを示す。5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイム(配列番号49)およびgRNA(配列番号50)についての描示を、
図11Aに示す。ハンマーヘッド型リボザイムの配列を指し示し、触媒作用に重要なヌクレオチドを指し示す(極めて重要なヌクレオチドを赤色、重要なヌクレオチドを橙色で)。切断の場所を、矢印で指し示す。リボザイムにより切断される(下)と、結果として得られるgRNAは、新たに形成された5’側位置におけるヌクレオチドに制約されずに放出される。ハンマーヘッド−gRNAを発現させる構築物を、
図11Bに示す。一般に、U6、H1、またはT7などのpol IIIプロモーターであるプロモーターを使用して、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムを発現させることができ、これは、自己切断の後で、gRNAを放出するであろう。2つの遺伝子座のターゲティングを、Surveyorアッセイ(HH1=配列番号51;HH2=配列番号52)、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムによる切断(矢印)の成功と共に示す(
図11C)。
【
図11C】
図11A、
図11B、および
図11Cは、ガイドRNAの5’末端を作出するハンマーヘッド型リボザイムを示す。5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイム(配列番号49)およびgRNA(配列番号50)についての描示を、
図11Aに示す。ハンマーヘッド型リボザイムの配列を指し示し、触媒作用に重要なヌクレオチドを指し示す(極めて重要なヌクレオチドを赤色、重要なヌクレオチドを橙色で)。切断の場所を、矢印で指し示す。リボザイムにより切断される(下)と、結果として得られるgRNAは、新たに形成された5’側位置におけるヌクレオチドに制約されずに放出される。ハンマーヘッド−gRNAを発現させる構築物を、
図11Bに示す。一般に、U6、H1、またはT7などのpol IIIプロモーターであるプロモーターを使用して、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムを発現させることができ、これは、自己切断の後で、gRNAを放出するであろう。2つの遺伝子座のターゲティングを、Surveyorアッセイ(HH1=配列番号51;HH2=配列番号52)、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムによる切断(矢印)の成功と共に示す(
図11C)。
【
図12】
図12は、特異的アプタマーの存在下でgRNAをプロセシングするのにアプタザイムを使用する、調節可能なCRISPR構築物を示す。特に、
図12は、テオフィリンアプタザイムを形成する、ハンマーヘッド型リボザイムのヘリックスIIと融合させたテオフィリンアプタマー(橙)であって、gRNA(青)の5’側にあるテオフィリンアプタマーについて描示する。テオフィリンの結合は、ヘリックスIIを安定化させ、次いで、ハンマーヘッド型自己切断を可能とし、gRNA(配列番号50)を遊離させる。ここで、gRNAは、Cas9と共に、CRISPR系による切断をターゲティングすることが可能である。ハンマーヘッド型リボザイム、配列番号55。
【
図13】
図13は、H1RNA遺伝子座およびPARP−2遺伝子座のゲノム構成を示す。右に転写されるPARP−2遺伝子(青)および左に転写されるH1RNA遺伝子(橙)についての描示であって、原寸に比例して描図される描示を上図に示す。下図は、両方の遺伝子のプロモーター領域の拡大領域である。
【
図14】
図14は、H1 pol II活性についてのeGFPレポーターを示す。ヒトH1プロモーター配列は、pol IIによる、eGFPの右への転写のために配向されている。最適化される3つの構成要素を、斜字体で指し示す。
【
図15】
図15は、eGFPレポーターの発現を示す。上パネルは、内因性H1プロモーターを指し示し、下パネルは、コザック配列による発現を指し示す。
【
図16A-B】
図16Aおよび
図16Bは、Cas9およびgRNAの双方向性発現を示す。双方向性ターゲティング構築物についての模式図を、
図16Aに示す。標準的な2つのベクター送達(レーン2および5)または単一のターゲティングプラスミドの送達(レーン3および6)を使用する、2つの異なる遺伝子座における切断の比較を、
図16Bに示す。T7EIアッセイにより決定されるゲノム改変%を、各レーンの下方に指し示す。
【
図17】
図17は、hRho:GFPノックインマウスに由来するロドプシン遺伝子座を示す。上図には、それぞれのマウス配列およびヒト配列を、3’UTRの末端までのrhoプロモーター領域についての概略図の上方に(原寸に比例して描図して)指し示す。下図には、P23およびgRNAの場所を指し示す、拡大領域を示す(矢じり形)。
【
図18A-B】
図18A、
図18B、および
図18Cは、in vivoにおけるP23H対立遺伝子の特異的ターゲティングを示す。
図18Aは、P23のターゲティング(WT(C57BL/6J、配列番号56;P23H(CCC→CAC)、配列番号57;WT(CAST/EiJ)、配列番号58)を示す。
図18Bは、2つの野生型マウス株に由来するロドプシンについてのシークェンシングを示す図であり、SNPは、矢印で指し示す(C57BL/6JのDNA配列、配列番号56;C57BL/6Jのタンパク質配列、配列番号59;CAST/EiJ
+/+のDNA配列、配列番号58;CAST/EiJ
+/+のタンパク質配列、配列番号59)。
図18Cは、P23H交雑スキームを示す。P23Hホモ接合性マウス(黒)を、WT Cast(白)と交配させ、結果として得られるヘテロ接合性仔マウス(グレー)を、AAV5の網膜下送達により処置する。
【
図18C】
図18A、
図18B、および
図18Cは、in vivoにおけるP23H対立遺伝子の特異的ターゲティングを示す。
図18Aは、P23のターゲティング(WT(C57BL/6J、配列番号56;P23H(CCC→CAC)、配列番号57;WT(CAST/EiJ)、配列番号58)を示す。
図18Bは、2つの野生型マウス株に由来するロドプシンについてのシークェンシングを示す図であり、SNPは、矢印で指し示す(C57BL/6JのDNA配列、配列番号56;C57BL/6Jのタンパク質配列、配列番号59;CAST/EiJ
+/+のDNA配列、配列番号58;CAST/EiJ
+/+のタンパク質配列、配列番号59)。
図18Cは、P23H交雑スキームを示す。P23Hホモ接合性マウス(黒)を、WT Cast(白)と交配させ、結果として得られるヘテロ接合性仔マウス(グレー)を、AAV5の網膜下送達により処置する。
【
図19】
図19は、ロドプシン遺伝子座の対立遺伝子特異的ターゲティングを示す。C57BL/6J(P23H)対立遺伝子の切断を、単一の塩基ミスマッチ(Cast)の切断と対比する比較を示す。T7EIアッセイにより決定されるゲノム改変%を、下方に指し示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特許または出願ファイルは、有色で作成された少なくとも1つの図面を含有する。有色の図面を伴う、本特許または特許出願公開の複製は、これを要望し、必要な手数料を支払えば、特許庁により提供される。
【0023】
詳細な説明
これより、本明細書の以下では、本明細書で開示される主題について、付属の図を参照しながら、より完全に記載するが、そこでは、本明細書で開示される主題の全てではなく、一部の実施形態が示される。同じ番号は、本明細書を通して、同じエレメントを指す。本明細書で開示される主題は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書で記される実施形態に限定されるものとみなされるべきではなく、それどころか、これらの実施形態は、本開示が、関連法規の要件を満たすように提供される。実際、本明細書で開示される主題が関する技術分野の当業者であって、前出の記載および関連する図において提示される教示の利益を有する当業者は、本明細書に記される、本明細書で開示される主題の多くの改変、および他の実施形態に想到するであろう。したがって、本明細書で開示される主題は、開示される具体的実施形態に限定されるものではなく、改変、および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図するものであることを理解されたい。
【0024】
亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)(PorteusおよびBaltimore(2003年)、Science、300巻:763頁;Millerら(2007年)、Nat. Biotechnol.、25巻:778〜785頁;Sanderら(2011年)、Nature Methods、8巻:67〜69頁;Woodら(2011年)、Science、333巻:307頁)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)(Woodら(2011年)、Science、333巻:307頁;Bochら(2009年)、Science、326巻:1509〜1512頁;MoscouおよびBogdanove(2009年)、Science、326巻:1501頁;Christianら(2010年)、Genetics、186巻:757〜761頁;Millerら(2011年)、Nat. Biotechnol.、29巻:143〜148頁;Zhangら(2011年)、Nat. Biotechnol.、29巻:149〜153頁;Reyonら(2012年)、Nat. Biotechnol.、30巻:460〜465頁)などのゲノム編集技術により、ターゲティングされたゲノム改変を作出する能力が強化され、疾患突然変異を精密に補正する潜在的可能性が供されている。これらの技術は、有効ではあるが、ZFNおよびTALENの対のいずれも、所与のDNA標的部位についての、大型で固有の認識タンパク質を合成することを要請するので、実際的な限界に阻まれている。いくつかのグループが近年、操作されたII型CRISPR/Cas9系の使用を介する高効率のゲノム編集であって、これらの鍵となる限界を回避するゲノム編集について報告している(Congら(2013年)、Science、339巻:819〜823頁;Jinekら(2013年)、eLife、2巻:e00471頁;Maliら(2013年)、Science、339巻:823〜826頁;Choら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:230〜232頁;Hwangら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:227〜229頁)。制作に比較的時間がかかり、労力を要するZFNおよびTALENと異なり、合成のガイドRNA(gRNA)とカップリングさせた、Cas9タンパク質のヌクレアーゼ活性に依拠するCRISPR構築物は、合成が簡単かつ迅速であり、マルチプレックス化することもできる。しかし、それらの合成の相対的な容易さにもかかわらず、CRISPRには、Cas9自体の特性およびそのgRNAの合成の両方の関数である、ターゲティング可能なゲノム空間へのそれらのアクセスに関する技術的制限がある。
【0025】
CRISPR系による切断は、20ヌクレオチドのDNA配列および標的部位の3’側に見出される短いヌクレオチドモチーフである、必須のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)への、gRNAの相補的塩基対合を要請する(Jinekら(2012年)、Science、337巻:816〜821頁)。理論的には、CRISPR技術を使用して、ゲノム内の、任意の固有のN
20−PAM配列をターゲティングすることができる。援用される具体的なCas9の由来する種に応じて変動する、PAM配列のDNA結合特異性は、1つの制約を課する。現在のところ、制限が最も小さく、最も一般的に使用されているCas9タンパク質は、配列NGGを認識する、S.pyogenesに由来し、こうして、ゲノム内の任意の固有の21ヌクレオチドの配列に続く2つのグアノシンヌクレオチド(N
20NGG)をターゲティングすることができる。タンパク質構成要素により付与される、利用可能なターゲティング空間の拡大は、PAM要件を変更した新規のCas9タンパク質の発見および使用(Congら(2013年)、Science、339巻:819〜823頁;Houら(2013年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、110巻(39号):15644〜9頁)、または進行中の新規のCas9変異体の作出であって、突然変異誘発もしくは指向性進化を介する作出に限定される。CRISPR系の第2の技術的制約は、5’グアノシンヌクレオチドで開始されるgRNAの発現から生じる。RNAポリメラーゼIIIプロモーターのIII型クラスの使用は、これらの短い非コード転写物が、十分に規定された末端を有し、1+ヌクレオチドを除く、転写に必要な全てのエレメントが、上流のプロモーター領域内に含有されるため、gRNAの発現に特に適している。しかし、一般に使用されるU6プロモーターは、転写の開始に、グアノシンヌクレオチドを要請するので、U6プロモーターの使用により、ゲノムのターゲティング部位は、GN
19NGGにさらに制約される(Maliら(2013年)、Science、339巻:823〜826頁;Dingら(2013年)、Cell Stem Cell、12巻:393〜394頁)。T7プロモーター、T3プロモーター、またはSP6プロモーターによるin vitro転写など、代替的な手法もまた、グアノシンヌクレオチドによる開始を要請するであろう(Adhyaら(1981年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、78巻:147〜151頁;Meltonら(1984年)、Nucleic Acids Res.、12巻:7035〜7056頁;Pleissら(1998年)、RNA、4巻:1313〜1317頁)。
【0026】
本明細書で開示される主題は、ガイドRNA(gRNAまたはsgRNA)を発現させるH1プロモーターの使用により、多くのゲノム内のCRISPR/Cas9系の精度が、5’ヌクレオチドの特異性の変更に起因して、倍加を超えて増大するという発見に関する。gRNAを発現させるH1プロモーターを使用して、内因性遺伝子を発現させ、改変する能力は、AN
19NGGゲノム部位およびGN
19NGGゲノム部位のいずれをターゲティングするのにも使用することができる。AN
19NGG部位は、ヒトゲノム内では、GN
19NGG部位を15%超える高頻度で生じ、ターゲティング空間の増大はまた、ヒト遺伝子および疾患遺伝子座でも増進する。したがって、本明細書で開示される主題は、ヒトゲノム内、および他の真核動物種内のターゲティング空間を、倍加を超えて増大させることにより、CRISPR技術の多用途性を増強する。さらに、この改変は、ヒトゲノムにおける、既存のCRISPR技術、TALEN技術、または亜鉛フィンガー技術より高分解度のターゲティングを可能とする。
【0027】
本明細書で開示される主題はまた、Cas9およびgRNAを同時に発現させる双方向性プロモーターとしてのH1プロモーター配列の使用により、コンパクトであり、完全に機能的な発現カセットであって、ウイルスベクターにより挿入および送達されうる発現カセットの作出が可能となるという発見にも関する。
【0028】
本明細書で開示される主題はまた、in vivoにおいてgRNAを発現させ、in vivoにおけるgRNAの発現を調節する、RNAリボザイムおよび調節可能なアプタザイムの使用にも関する。
【0029】
I.H1プロモーターを使用する、CRISPRガイドRNAの発現
A.組成物
【0030】
一部の実施形態では、本明細書で開示される主題は、a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結したH1プロモーターであって、gRNAが、細胞内のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、細胞内で発現する1または複数の遺伝子産物をコードする、H1プロモーターと;b)細胞内で作動可能な調節エレメントであって、Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節エレメントとを含む1または複数のベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、構成要素(a)および(b)が、系の同じベクターまたは異なるベクターに配置され、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断して、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系を提供する。
【0031】
一部の実施形態では、本明細書で開示される主題は、a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結したH1プロモーターであって、gRNAが、真核細胞内のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、真核細胞内で発現する1または複数の遺伝子産物をコードする、H1プロモーターと;b)真核細胞内で作動可能な調節エレメントであって、II型Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節エレメントとを含む1または複数のベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、構成要素(a)および(b)が、系の同じベクターまたは異なるベクターに配置され、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断し、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系を提供する。一態様では、標的配列は、任意のヌクレオチド、例えば、N
20NGGで始まる標的配列でありうる。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列GN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列CN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列TN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGまたはGN
19NGGを含む。別の態様では、Cas9タンパク質は、細胞内の発現についてコドンが最適化されている。別の態様では、Cas9タンパク質は、真核細胞内の発現についてコドンが最適化されている。さらなる態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞またはヒト細胞である。さらに別の態様では、1または複数の遺伝子産物の発現が低減される。
【0032】
本明細書で開示される主題はまた、双方向性H1プロモーターを含むベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、双方向性H1プロモーターが、a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列の1つの方向の転写をもたらす制御エレメントであって、gRNAが、真核細胞内のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、真核細胞内で発現する1または複数の遺伝子産物をコードする、制御エレメントと;b)II型Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列の反対方向の転写をもたらす制御エレメントとを含み、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断し、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系も提供する。一態様では、標的配列は、任意のヌクレオチド、例えば、N
20NGGで始まる標的配列でありうる。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列GN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列CN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列TN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGまたはGN
19NGGを含む。別の態様では、Cas9タンパク質は、細胞内の発現についてコドンが最適化されている。別の態様では、Cas9タンパク質は、真核細胞内の発現についてコドンが最適化されている。さらなる態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞またはヒト細胞である。さらに別の態様では、1または複数の遺伝子産物の発現が低減される。
【0033】
一部の実施形態では、CRISPR複合体は、細胞(例えば、真核細胞)の核内で検出可能な量のCRISPR複合体の蓄積を駆動するのに十分な長さの、1または複数の核局在化配列を含む。理論に束縛されることを望まずに述べると、核局在化配列は、真核生物におけるCRISPR複合体活性に必要ではないが、このような配列を含むことは、系の活性、とりわけ、核内の核酸分子のターゲティングに関する活性を増強することが考えられる。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、II型CRISPR系酵素である。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、Cas9酵素である。一部の実施形態では、Cas9酵素は、S.pneumoniae、S.pyogenes、またはS.thermophilusのCas9であり、これらの生物に由来する突然変異Cas9を含みうる。酵素は、Cas9の相同体またはオーソログでありうる。
【0034】
一般に、かつ、本明細書を通して、「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターは、一本鎖である核酸分子、二本鎖である核酸分子、または部分的に二本鎖である核酸分子;1または複数の遊離末端を含む核酸分子、遊離末端を含まない核酸分子(例えば、環状);DNAを含む核酸分子、RNAを含む核酸分子、またはこれらの両方を含む核酸分子;および当技術分野で公知の、他の多種多様なポリヌクレオチドを含むがこれらに限定されない。ベクターの1つの種類は、標準的な分子クローニング技法などにより、さらなるDNAセグメントを挿入しうる、環状二本鎖DNAループを指す、「プラスミド」である。ベクターの別の種類は、ウイルスベクターであり、この場合、ウイルス由来のDNA配列またはRNA配列は、ウイルス(例えば、レトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)へのパッケージングのためにベクター内に存在する。ウイルスベクターはまた、宿主細胞へのトランスフェクションのためにウイルスにより保有されるポリヌクレオチドも含む。
【0035】
ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内の自己複製が可能である(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞中に導入されると、宿主細胞のゲノム中に組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動的に連結された遺伝子の発現を方向付けることが可能である。本明細書では、このようなベクターを、「発現ベクター」と称する。組換えDNA技法において有用な、一般的な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。
【0036】
組換え発現ベクターは、本明細書で開示される主題の核酸であって、宿主細胞内の核酸の発現に適する形態の核酸を含みうるが、これは、組換え発現ベクターが、発現のために使用される宿主細胞に基づき選択されうる、1または複数の調節エレメントであって、発現させる核酸配列に作動的に連結される調節エレメントを含むことを意味する。
【0037】
組換え発現ベクター内で「作動可能に連結した」とは、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現(例えば、in vitroの転写/翻訳系内の発現、またはベクターを、宿主細胞中に導入する場合は、宿主細胞内の発現)を可能とする形で、調節エレメントに連結されていることを意味するように意図される。
【0038】
「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、配列内リボソーム侵入部位(IRES)、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナルおよびポリU配列などの転写終結シグナル)を含むことを意図する。このような調節エレメントは、例えば、Goeddel(1990年)、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、Calif.において記載されている。調節エレメントは、多くの種類の宿主細胞内のヌクレオチド配列の構成的発現を方向付ける調節エレメントと、ある特定の宿主細胞内だけのヌクレオチド配列の発現を方向付ける調節エレメント(例えば、組織特異的調節配列)とを含む。組織特異的プロモーターは、主に所望される目的の組織、例えば、筋肉、ニューロン、骨、皮膚、血液、特異的臓器(例えば、肝臓、膵臓)または特定の細胞型(例えば、リンパ球)内の発現を方向付けることが可能である。調節エレメントはまた、細胞周期依存的な形または発生段階依存的な形など、時間依存的な形の発現であって、また、組織型特異的の場合もあり、組織型特異的でない場合もあり、細胞型特異的の場合もあり、細胞型特異的でない場合もある発現も方向付けることが可能である。
【0039】
一部の実施形態では、ベクターは、1もしくは複数のpol IIIプロモーター、1もしくは複数のpol IIプロモーター、1もしくは複数のpol Iプロモーター、またはこれらの組合せを含む。pol IIIプロモーターの例は、U6プロモーターおよびH1プロモーターを含むがこれらに限定されない。pol IIプロモーターの例は、レトロウイルスであるラウス肉腫ウイルス(RSV)のLTRプロモーター(任意選択で、RSVエンハンサーを伴う)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(任意選択で、CMVエンハンサーを伴う)(例えば、Boshartら(1985年)、Cell、41巻:521〜530頁)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1αプロモーターを含むがこれらに限定されない。
【0040】
「調節エレメント」という用語にはまた、WPRE;CMVエンハンサー;HTLV−IのLTR内のR−U5’セグメント(Takebeら(1988年)、Mol. Cell. Biol.、8巻:466〜472頁);SV40エンハンサー;およびウサギβ−グロビンのエクソン2とエクソン3との間のイントロン配列(O'Hareら(1981年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA.、78巻(3号):1527〜31頁)などのエンハンサーエレメントも包摂される。当業者は、発現ベクターのデザインが、形質転換される宿主細胞の選択、所望の発現レベルなどの因子に依存しうることを察知するであろう。ベクターを、宿主細胞中に導入して、これにより、本明細書で記載される核酸によりコードされる融合タンパク質または融合ペプチド(例えば、CRISPR(clustered regularly interspersed short palindromic repeat)転写物、CRISPRタンパク質、CRISPR酵素、その突然変異体形態、その融合タンパク質など)を含む、転写物、タンパク質、またはペプチドを作製することができる。有利なベクターは、レンチウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを含み、このようなベクターの種類はまた、特定の種類の細胞をターゲティングするために選択することもできる。
【0041】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体である、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することが可能であり、任意の公知または未知の機能を果たしうる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析により規定される複数の遺伝子座(単数の遺伝子座)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝状ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体など、1または複数の修飾ヌクレオチドを含みうる。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリーの前に付与することもでき、ポリマーのアセンブリーの後で付与することもできる。ヌクレオチドの配列は、ヌクレオチド以外の構成要素により中断させることができる。ポリヌクレオチドは、標識用構成要素とのコンジュゲーションなど、多量体化の後でさらに修飾することもできる。
【0042】
本明細書で開示される主題の態様では、「キメラRNA」、「キメラガイドRNA」、「ガイドRNA」、「単一のガイドRNA」および「合成ガイドRNA」という用語は、互換的に使用され、ガイド配列を含むポリヌクレオチド配列を指す。「ガイド配列」という用語は、標的部位を指定するガイドRNA内の約20bpの配列を指し、「ガイド」または「スペーサー」という用語と互換的に使用することができる。
【0043】
本明細書で使用される「野生型」という用語は、当業者により理解される、当技術分野の用語であり、天然で生じる、生物、株、遺伝子、または特徴の典型的な形態であって、突然変異体形態または変異体形態から識別される形態を意味する。
【0044】
本明細書で使用される「変異体」(variant)という用語は、天然で生じるものから逸脱するパターンを有する性質の呈示を意味するように理解するものとする。
【0045】
「非自然発生の」または「操作された」という用語は、互換的に使用され、人為の関与を指し示す。核酸分子またはポリペプチドを指す場合の用語は、核酸分子またはポリペプチドが、それらが天然で会合し、天然で見出される、少なくとも1つの他の構成要素を少なくとも実質的に含まないことを意味する。
【0046】
「相補性」とは、従来のワトソン−クリック型塩基対合または他の非従来型の塩基対合により、別の核酸配列との水素結合を形成する核酸の能力を指す。相補性パーセントとは、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン−クリック塩基対合)を形成しうる、核酸分子内の残基の百分率を指し示す(例えば、10のうち5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10であれば、50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補的である)。「完全に相補的」とは、核酸配列の全ての連続残基が、第2の核酸配列内の同数の連続残基と水素結合することを意味する。本明細書で使用される「実質的に相補的」とは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50、もしくはこれを超えるヌクレオチドの領域にわたり、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%である相補性の程度を指すか、または厳密な条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。
【0047】
本明細書で使用される、ハイブリダイゼーションのための「厳密な条件」とは、その下では、標的配列に対する相補性を有する核酸が、主に標的配列とハイブリダイズし、非標的配列とは実質的にハイブリダイズしない条件を指す。厳密な条件は一般に、配列依存的であり、多数の因子に応じて変動する。一般に、配列が長いほど、配列が、その標的配列に特異的にハイブリダイズする温度が高くなる。厳密な条件の非限定的な例は、Tijssen(1993年)、Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology-Hybridization With Nucleic Acid Probes、1部、2章、「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay」、Elsevier、N.Y.において詳細に記載されている。
【0048】
「ハイブリダイゼーション」とは、1または複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化する複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソンクリック塩基対合により生じる場合もあり、フーグスティーン結合により生じる場合もあり、他の任意の配列特異的な形で生じる場合もある。複合体は、二重鎖構造を形成する2本の鎖、多重鎖複合体を形成する3本もしくはこれを超える鎖、自己ハイブリダイズ型一本鎖、またはこれらの任意の組合せを含みうる。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始または酵素によるポリヌクレオチドの切断など、より広範な工程内のステップを構成しうる。所与の配列とハイブリダイズさせることが可能な配列を、所与の配列の「相補体」と称する。
【0049】
本明細書で使用される「発現」とは、ポリヌクレオチドが、DNA鋳型から(mRNAまたは他のRNA転写物などに)転写される工程、および/または転写されたmRNAがその後、ペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質に翻訳される工程を指す。転写物と、コードされたポリペプチドとを、総体として、「遺伝子産物」と称する。ポリヌクレオチドが、ゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞内のmRNAのスプライシングを含みうる。
【0050】
本明細書では、「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語を互換的に使用して、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖状の場合もあり、分枝状の場合もあり、修飾アミノ酸を含むことが可能であり、アミノ酸以外で中断されうる。用語はまた、修飾されたアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識用構成要素とのコンジュゲーションなど、他の任意の取扱いを施されたアミノ酸ポリマーも包摂しうる。
【0051】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、グリシン、ならびにD光学異性体およびL光学異性体の両方、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む、天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸もしくは合成アミノ酸を含む。
【0052】
本明細書で開示される主題の実施は、そうでないことが指示されない限りにおいて、当技術分野の技術の範囲内にある従来の技法であって、免疫学、生化学、化学、分子生物学、微生物学、細胞生物学、ゲノム学、および組換えDNAの技法(Sambrook、FritschおよびManiatis(1989年)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版;Ausubelら編(1987年)、Current Protocols in Molecular Biology;MacPhersonら編(1995年)、Methods in Enzymology(Academic Press, Inc.)、PCR 2: A Practical Approach;HarlowおよびLane編(1988年)、Antibodies, A Laboratory Manual;Freshney編(1987年)、Animal Cell Culture)を援用する。
【0053】
本明細書で開示される主題のいくつかの態様は、1もしくは複数のベクターを含むベクター系、またはベクター自体に関する。ベクターは、原核細胞内または真核細胞内のCRISPR転写物(例えば、核酸転写物、タンパク質、または酵素)の発現のためにデザインすることができる。例えば、CRISPR転写物は、Escherichia coliなどの細菌細胞内、昆虫細胞内(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、酵母細胞内、または哺乳動物細胞内で発現させることができる。適切な宿主細胞については、Goeddel(1990年)、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、Calif.においてさらに論じられている。代替的に、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、in vitroにおいて転写および翻訳することもできる。
【0054】
ベクターは、原核生物に導入し、原核生物内で繁殖させることができる。一部の実施形態では、原核生物を、真核細胞中に導入されるベクターのコピーを増幅するのに使用するか、または真核細胞中に導入されるベクターの作製における中間体ベクター(例えば、ウイルスベクターパッケージング系の一部としてのプラスミドを増幅する)として使用する。一部の実施形態では、原核生物を、宿主細胞または宿主生物に送達するための1または複数のタンパク質の供給源を用意するなど、ベクターのコピーを増幅し、1または複数の核酸を発現させるのに使用する。原核生物内のタンパク質の発現は、融合タンパク質または非融合タンパク質の発現を方向付ける、構成的プロモーターまたは誘導的プロモーターを含有するベクターを伴う、Escherichia coli内で実行することが最も多い。
【0055】
融合ベクターは、組換えタンパク質のアミノ末端など、その中でコードされるタンパク質に、いくつものアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは、(i)組換えタンパク質の発現を増大させる目的;(ii)組換えタンパク質の可溶性を増大させる目的;および(iii)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより、組換えタンパク質の精製の一助となる目的など、1または複数の目的に適いうる。融合発現ベクター内では、融合タンパク質の精製の後に、組換えタンパク質の、融合部分からの分離を可能にするのに、タンパク質分解性切断部位を、融合部分と、組換えタンパク質との接合部に導入することが多い。このような酵素、およびそれらのコグネイト認識配列は、因子Xa、トロンビン、およびエンテロキナーゼを含む。融合発現ベクターの例は、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合性タンパク質、またはプロテインAのそれぞれを、標的組換えタンパク質と融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;SmithおよびJohnson(1988年)、Gene、67巻:31〜40頁)、pMAL(New England Biolabs、Beverly、Mass.)、およびpRIT5(Pharmacia、Piscataway、N.J.)を含む。
【0056】
適切な誘導的非融合E.coli発現ベクターの例は、pTrc(Amrannら(1988年)、Gene、69巻:301〜315頁)およびpET 11d(Studierら(1990年)、Gene Expression Technology: Methods in Enzymology、185巻、Academic Press、San Diego、Calif.)を含む。
【0057】
一部の実施形態では、ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母であるSaccharomyces cerivisae内の発現のためのベクターの例は、pYepSec1(Baldariら(1987年)、EMBO J.、6巻:229〜234頁)、pMFa(KuijanおよびHerskowitz(1982年)、Cell、30巻:933〜943頁)、pJRY88(Schultzら(1987年)、Gene、54巻:113〜123頁)、pYES2(Invitrogen Corporation、San Diego、Calif.)、およびpicZ(InVitrogen Corp、San Diego、Calif.)を含む。
【0058】
一部の実施形態では、ベクターは、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物細胞内の1または複数の配列の発現を駆動することが可能である。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(Seed(1987年)、Nature、329巻:840頁)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987年)、EMBO J.、6巻:187〜195頁)を含む。哺乳動物細胞内で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、1または複数の調節エレメントによりもたらされることが典型的である。例えば、一般に使用されるプロモーターは、ポリオーマウイルス、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、サルウイルス40、および本明細書で開示され、当技術分野で公知である、他のウイルスに由来する。原核細胞および真核細胞の両方に適する他の発現系については、例えば、Sambrookら(1989年)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.の16および17章を参照されたい。
【0059】
一部の実施形態では、組換え哺乳動物発現ベクターは、核酸の発現を、特定の細胞型内で、優先的に方向付ける(例えば、組織特異的調節エレメントを使用して、核酸を発現させる)ことが可能である。当技術分野では、組織特異的調節エレメントが公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例は、アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkertら(1987年)、Genes Dev.、1巻:268〜277頁)、リンパ系特異的プロモーター(CalameおよびEaton(1988年)、Adv. Immunol.、43巻:235〜275頁)、特に、T細胞受容体(WinotoおよびBaltimore(1989年)、EMBO J.、8巻:729〜733頁)および免疫グロブリン(Baneijiら(1983年)、Cell、33巻:729〜740頁;QueenおよびBaltimore(1983年)、Cell、33巻:741〜748頁)のプロモーター、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経線維プロモーター;ByrneおよびRuddle(1989年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、86巻:5473〜5477頁)、膵臓特異的プロモーター(Edlundら(1985年)、Science、230巻:912〜916頁)、ならびに乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開第264,166号)を含む。また、発生調節型プロモーター、例えば、マウスhoxプロモーター(KesselおよびGruss(1990年)、Science、249巻:374〜379頁)およびα−フェトタンパク質プロモーター(CampesおよびTilghman(1989年)、Genes Dev.、3巻:537〜546頁)も包摂される。
【0060】
一部の実施形態では、CRISPR系の1または複数のエレメントの発現を駆動するように、調節エレメントを、CRISPR系の1または複数のエレメントに作動可能に連結する。一般に、SPIDR(spacer interspersed direct repeat)としてもまた公知の、CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)は、通例、特定の細菌種に特異的なDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPR遺伝子座は、E.coli(Ishinoら(1987年)、J. Bacteriol.、169巻:5429〜5433頁;およびNakataら(1989年)、J. Bacteriol.、171巻:3553〜3556頁)および関連する遺伝子内で認識された、散在型SSR(short sequence repeat)の顕著に異なるクラスを含む。類似の散在型SSRは、Haloferax mediterranei、Streptococcus pyogenes、Anabaena属、およびMycobacterium tuberculosisにおいても同定されている(Groenenら(1993年)、Mol. Microbiol.、10巻:1057〜1065頁;Hoeら(1999年)、Emerg. Infect. Dis.、5巻:254〜263頁;Masepohlら(1996年)、Biochim. Biophys. Acta、1307巻:26〜30頁;およびMojicaら(1995年)、Mol. Microbiol.、17巻:85〜93頁)。CRISPR遺伝子座は、SRSR(short regularly spaced repeat)と名付けられたリピートの構造により、他のSSRと異なることが典型的である(Janssenら(2002年)、OMICS J. Integ. Biol.、6巻:23〜33頁;およびMojicaら(2000年)、Mol. Microbiol.、36巻:244〜246頁)。一般に、リピートとは、長さが実質的に一定である固有の介在配列により規則的に隔てられたクラスター内で生じる短いエレメントである(Mojicaら(2000年)、Mol. Microbiol.、36巻:244〜246頁)。リピート配列は、株の間で高度に保存的であるが、散在型リピートの数と、スペーサー領域の配列とは、株により異なることが典型的である(van Embdenら(2000年)、J. Bacteriol.、182巻:2393〜2401頁)。CRISPR遺伝子座は、40を超える原核生物(例えば、Jansenら(2002年)、Mol. Microbiol.、43巻:1565〜1575頁;およびMojicaら(2005年)、J. Mol. Evol.、60巻:174〜82頁)であって、Aeropyrum属、Pyrobaculum属、Sulfolobus属、Archaeoglobus属、Halocarcula属、Methanobacteriumn属、Methanococcus属、Methanosarcina属、Methanopyrus属、Pyrococcus属、Picrophilus属、Thermoplasma属、Corynebacterium属、Mycobacterium属、Streptomyces属、Aquifrex属、Porphyromonas属、Chlorobium属、Thermus属、Bacillus属、Listeria属、Staphylococcus属、Clostridium属、Thermoanaerobacter属、Mycoplasma属、Fusobacterium属、Azarcus属、Chromobacterium属、Neisseria属、Nitrosomonas属、Desulfovibrio属、Geobacter属、Micrococcus属、Campylobacter属、Wolinella属、Acinetobacter属、Erwinia属、Escherichia属、Legionella属、Methylococcus属、Pasteurella属、Photobacterium属、Salmonella属、Xanthomonas属、Yersinia属、Treponema属、およびThermotoga属を含むがこれらに限定されない原核生物において同定されている。
【0061】
一般に、「CRISPR系」とは、総体として、Cas遺伝子をコードする配列を含む、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか、もしくはこれらの活性を方向付ける転写物、および他のエレメント、ガイド配列(内因性CRISPR系の文脈では、「スペーサー」ともまた称する)、またはCRISPR遺伝子座に由来する他の配列および転写物を指す。一部の実施形態では、CRISPR系の1または複数のエレメントは、I型CRISPR系、II型CRISPR系、またはIII型CRISPR系に由来する。一部の実施形態では、CRISPR系の1または複数のエレメントは、Streptococcus pyogenesなど、内因性CRISPR系を含む特定の生物に由来する。一般に、CRISPR系は、標的配列の部位における、CRISPR複合体の形成を促進するエレメント(内因性CRISPR系の文脈では、プロトスペーサーともまた称する)により特徴付けられる。
【0062】
CRISPR複合体の形成の文脈では、「標的配列」とは、ガイド配列が、それに対する相補性を有するようにデザインされる配列であって、標的配列とガイド配列との間のハイブリダイゼーションにより、CRISPR複合体の形成が促進される配列を指す。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性が存在するという条件で、完全な相補性が必ずしも要請されるわけではない。標的配列は、DNAポリヌクレオチドまたはRNAポリヌクレオチドなど、任意のポリヌクレオチドを含みうる。一部の実施形態では、標的配列を、細胞の核内または細胞質内に配置する。一部の実施形態では、標的配列は、真核細胞の細胞小器官内、例えば、ミトコンドリア内またはクロロプラスト内に存在しうる。ターゲティングされる遺伝子座であって、標的配列を含む遺伝子座への組換えのために使用しうる配列または鋳型を、「編集鋳型」または「編集ポリヌクレオチド」または「編集配列」と称する。本明細書で開示される主題の態様では、外因性鋳型ポリヌクレオチドを、編集鋳型と称することができる。本明細書で開示される主題の態様では、組換えは、相同組換えである。
【0063】
一部の実施形態では、ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(「クローニング部位」ともまた称する)など、1または複数の挿入部位を含む。一部の実施形態では、1または複数の挿入部位(例えば、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、もしくはこれを超える挿入部位、またはこれらを超える挿入部位)を、1または複数のベクターの、1または複数の配列エレメントの上流および/または下流に配置する。複数の異なるガイド配列を使用する場合、単一の発現構築物を使用して、CRISPR活性を、細胞内の、複数の異なる、対応する標的配列にターゲティングすることができる。例えば、単一のベクターは、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、もしくはこれを超えるガイド配列、またはこれらを超えるガイド配列を含みうる。一部の実施形態では、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、もしくはこれを超えるこのようなガイド配列含有ベクター、またはこれらを超えるガイド配列含有ベクターを提供し、任意選択で、細胞に送達することができる。
【0064】
一部の実施形態では、ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に連結した調節エレメントを含む。Casタンパク質の非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としてもまた公知である)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、これらの相同体、またはこれらの修飾形を含む。これらの酵素は、公知であり、例えば、S.pyogenes Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベースにおいて、受託番号Q99ZW2の下に見出すことができる。一部の実施形態では、Cas9などの非修飾CRISPR酵素は、DNA切断活性を有する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、Cas9であり、S.pyogenesまたはS.pneumoniaeに由来するCas9でありうる。
【0065】
一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補体内など、標的配列の場所において、鎖の一方または両方の切断を方向付ける。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドに由来する、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、15、20、25、50、100、200、500、またはこれを超える塩基対内の、鎖の一方または両方の切断を方向付ける。一部の実施形態では、突然変異させたCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの鎖の一方または両方を切断する能力を欠くように、ベクターは、対応する野生型酵素に照らして突然変異させたCRISPR酵素をコードする。
【0066】
一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞など、特定の細胞内の発現についてコドンが最適化されている。真核細胞は、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または非ヒト霊長動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物など、特定の生物の細胞、またはこれらに由来する細胞でありうる。一般に、コドン最適化とは、目的の宿主細胞内の発現を増強するために、核酸配列を改変する工程であって、天然のアミノ酸配列を維持しながら、天然配列の少なくとも1つのコドン(例えば、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10、15、20、25、50、もしくはこれを超えるコドン、またはこれらを超えるコドン)を、その宿主細胞の遺伝子内で、より高頻度に、または最も高頻度に使用されるコドンで置きかえることにより、核酸配列を改変する工程を指す。多様な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンについて、特定のバイアスを呈示する。コドンバイアス(生物間のコドン使用の差違)は、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳の効率と相関することが多く、これは、ひいては、他の事柄にもまして、翻訳されるコドンの特性および特定の転移RNA(tRNA)分子のアベイラビリティーに依存すると考えられる。細胞内で選択されるtRNAの卓越は一般に、ペプチド合成において最も高頻度で使用されるコドンの反映である。したがって、遺伝子は、コドン最適化に基づき、所与の生物における最適な遺伝子発現についてテーラリングすることができる。コドン使用表は、例えば、「コドン使用データベース」でたやすく入手可能であり、これらの表は、多数の方式で適合させることができる。Nakamuraら(2000年)、Nucl. Acids Res.、28巻:292頁を参照されたい。また、特定の宿主細胞内の発現のために、特定の配列のコドンを最適化するためのコンピュータアルゴリズムであって、Gene Forge(Aptagen;Jacobus、Pa.)などのアルゴリズムも利用可能である。一部の実施形態では、CRISPR酵素をコードする配列内の1または複数のコドン(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10、15、20、25、50、もしくはこれを超えるコドン、または全てのコドン)は、特定のアミノ酸に最も高頻度で使用されるコドンに対応する。
【0067】
一般に、ガイド配列とは、標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体の、標的配列への配列特異的結合を方向付けるのに十分な、標的ポリヌクレオチド配列との相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、適切なアライメントアルゴリズムを使用して最適に配列決定される場合の、ガイド配列と、その対応する標的配列との相補性の程度は、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくはこれを超えるか、またはこれらを超える。最適のアライメントは、配列決定に適する任意のアルゴリズムであって、その非限定的な例が、スミス−ウォーターマンアルゴリズム、ニードルマン−ブンシュアルゴリズム、バローズ−ホイーラー変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.)、SOAP(soap.genomics.org.cnで入手可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで入手可能)を含むアルゴリズムの使用により決定することができる。一部の実施形態では、ガイド配列は、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、もしくはこれを超えるヌクレオチドの長さ、またはこれらを超えるヌクレオチドの長さである。一部の実施形態では、ガイド配列は、約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12、もしくはこれより少ないヌクレオチドの長さ、またはこれら未満のヌクレオチドの長さである。
【0068】
CRISPR複合体の、標的配列への配列特異的結合を方向付けるガイド配列の能力は、任意の適切なアッセイにより評価することができる。例えば、被験ガイド配列を含むCRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPR系の構成要素は、CRISPR配列の構成要素をコードするベクターによるトランスフェクションに続く、本明細書で記載されるSurveyorアッセイなどを介する、標的配列内の優先的切断の評価などにより、対応する標的配列を有する宿主細胞に施すことができる。同様に、標的ポリヌクレオチド配列の切断は、標的配列、被験ガイド配列を含むCRISPR複合体の構成要素、および被験ガイド配列と異なる対照のガイド配列を用意し、被験ガイド配列反応物と対照ガイド配列反応物との間で、標的配列における結合または切断率を比較することにより、試験管内で査定することができる。他のアッセイも可能であり、当業者は、これらに想到するであろう。
【0069】
ガイド配列は、任意の標的配列をターゲティングするように選択することができる。一部の実施形態では、標的配列は、細胞のゲノム内の配列である。例示的な標的配列は、標的ゲノム内で固有の標的配列を含む。
【0070】
一部の実施形態では、CRISPR酵素は、1または複数の異種タンパク質ドメインを含む融合タンパク質の部分(例えば、CRISPR酵素に加えて、約1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、もしくはこれを超えるドメイン、またはこれらを超えるドメイン)である。CRISPR酵素の融合タンパク質は、任意のさらなるタンパク質配列と、任意選択で、任意の2つのドメインの間のリンカー配列とを含みうる。CRISPR酵素と融合させうるタンパク質ドメインの例は、限定なしに述べると、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、ならびに以下の活性:メチラーゼ活性、デメチラーゼ活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、および核酸結合活性のうちの1または複数を有するタンパク質ドメインを含む。エピトープタグの非限定的な例は、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV−Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグを含む。レポーター遺伝子の例は、グルタチオン−5−トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されない。CRISPR酵素は、DNA分子に結合するか、または他の細胞内分子に結合する、タンパク質またはタンパク質の断片であって、マルトース結合性タンパク質(MBP)、S−タグ、Lex A DNA結合性ドメイン(DBD)融合体、GAL4A DNA結合性ドメイン融合体、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合体を含むがこれらに限定されない、タンパク質またはタンパク質の断片をコードする遺伝子配列と融合させることができる。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の部分を形成しうる、さらなるドメインは、参照により本明細書に組み込まれる、US20110059502において記載されている。一部の実施形態では、タグ付けされたCRISPR酵素を使用して、標的配列の場所を同定する。
【0071】
本明細書で開示される主題の態様では、グルタチオン−5−トランスフェラーゼ(GST)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ベータ−ガラクトシダーゼ、ベータ−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されないレポーター遺伝子を、遺伝子産物の発現の変更または修飾を測定するためのマーカーとして用いられる遺伝子産物をコードするように、細胞中に導入することができる。本明細書で開示される主題のさらなる実施形態では、DNA分子をコードする遺伝子産物を、ベクターを介して細胞中に導入することができる。本明細書で開示される主題の好ましい実施形態では、遺伝子産物は、ルシフェラーゼである。本明細書で開示される主題のさらなる実施形態では、遺伝子産物の発現が低減される。
【0072】
一般に、本明細書で開示される主題のプロモーターの実施形態は、1)TATAボックス、近位配列エレメント(PSE)、および遠位配列エレメント(DSE)を含む、完全Pol IIIプロモーター;ならびに2)DSEの5’末端とリバースの配向性で融合させたPSEおよびTATAボックスを含む、第2の基本Pol IIIプロモーターを含む。そのヌクレオチド配列にちなんで名付けられたTATAボックスは、Pol III特異性の主要な決定基である。TATAボックスは通例、転写される配列と比べてnt.−23〜−30の間の位置に配置され、転写される配列の始点の最重要の決定基である。PSEは通例、nt.−45〜−66の間に配置される。DSEは、基本Pol IIIプロモーターの活性を増強する。H1プロモーターでは、PSEとDSEとの間にギャップが存在しない。
【0073】
双方向性プロモーターは、1)3つの外部制御エレメント:DSE、PSE、およびTATAボックスを含有する、従来の完全一方向性Pol IIIプロモーター;ならびに2)DSEの5’末端とリバースの配向性で融合させたPSEおよびTATAボックスを含む、第2の基本Pol IIIプロモーターからなる。TATA結合性タンパク質により認識されるTATAボックスは、Pol IIIを、プロモーター領域に動員するために不可欠である。TATA結合性タンパク質の、TATAボックスへの結合は、SNAPcの、PSEとの相互作用により安定化する。まとめると、これらのエレメントは、それが、発現させる配列を転写しうるように、Pol IIIを適正に位置付ける。また、DSEも、Pol IIIプロモーターの完全な活性に不可欠である(Murphyら(1992年)、Mol. Cell Biol.、12巻:3247〜3261頁;Mittalら(1996年)、Mol. Cell Biol.、16巻:1955〜1965頁;FordおよびHernandez(1997年)、J.Biol.Chem.、272巻:16048〜16055頁;Fordら(1998年)、Genes Dev.、12巻:3528〜3540頁;Hovdeら(2002年)、Genes Dev.、16巻:2772〜2777頁)。転写は、転写因子であるOct−1および/またはSBF/Stafの、DSE内のそれらのモチーフとの相互作用により、最大で100倍に増強される(KunkelおよびHixon(1998年)、Nucl. Acid Res.、26巻:1536〜1543頁)。フォワードおよびリバースに配向させた基本プロモーターは、二本鎖DNA鋳型の逆行鎖上の配列の転写を方向付けるので、リバースに配向させた基本プロモーターのプラス鎖を、DSEのマイナス鎖の5’末端に付加する。H1プロモーターの制御下で発現させた転写物は、4つまたは5つのTによる切れ目のない配列で終結させる。
【0074】
H1プロモーター内で、DSEは、PSEおよびTATAボックスに隣接する(Myslinskiら(2001年)、Nucl. Acid Res.、29巻:2502〜2509頁)。配列の反復を最小化するために、リバース方向の転写が、U6プロモーターに由来するPSEおよびTATAボックスを付加することにより制御される、ハイブリッドプロモーターを創出することにより、このプロモーターを双方向性とした。双方向性H1プロモーターの構築を容易とするために、小型のスペーサー配列もまた、リバースに配向させた基本プロモーターとDSEとの間に挿入することができる。
【0075】
B.方法
一部の実施形態では、本明細書で開示される主題はまた、細胞内の1または複数の遺伝子産物の発現を変更する方法であって、細胞が、1または複数の遺伝子産物をコードするDNA分子を含み、方法が、細胞中に、a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結したH1プロモーターであって、gRNAが、DNA分子の標的配列とハイブリダイズする、H1プロモーターと;b)細胞内で作動可能な調節エレメントであって、Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節エレメントとを含む1または複数のベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、構成要素(a)および(b)が、系の同じベクターまたは異なるベクターに配置され、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断して、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系を導入するステップを含む方法も提供する。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書で開示される主題はまた、真核細胞内の1または複数の遺伝子産物の発現を変更する方法であって、細胞が、1または複数の遺伝子産物をコードするDNA分子を含み、方法が、細胞中に、a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結したH1プロモーターであって、gRNAが、DNA分子の標的配列とハイブリダイズする、H1プロモーターと;b)真核細胞内で作動可能な調節エレメントであって、II型Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節エレメントとを含む1または複数のベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、構成要素(a)および(b)が、系の同じベクターまたは異なるベクターに配置され、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断し、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系を導入するステップを含む方法も提供する。一態様では、標的配列は、任意のヌクレオチド、例えば、N
20NGGで始まる標的配列でありうる。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列GN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列CN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列TN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGまたはGN
19NGGを含む。別の態様では、Cas9タンパク質は、細胞内の発現についてコドンが最適化されている。さらに別の態様では、Cas9タンパク質は、真核細胞内の発現についてコドンが最適化されている。さらなる態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞またはヒト細胞である。別の態様では、1または複数の遺伝子産物の発現が低減される。
【0077】
本明細書で開示される主題はまた、真核細胞内の1または複数の遺伝子産物の発現を変更する方法であって、細胞が、1または複数の遺伝子産物をコードするDNA分子を含み、方法が、細胞中に、双方向性H1プロモーターを含むベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、双方向性H1プロモーターが、a)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列の1つの方向の転写をもたらす制御エレメントであって、gRNAが、DNA分子の標的配列とハイブリダイズする、制御エレメントと;b)II型Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列の反対方向の転写をもたらす制御エレメントとを含み、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断し、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系を導入するステップを含む方法も提供する。一態様では、標的配列は、任意のヌクレオチド、例えば、N
20NGGで始まる標的配列でありうる。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列GN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列CN
19NGGを含む。一部の実施形態では、標的配列は、ヌクレオチド配列TN
19NGGを含む。別の態様では、標的配列は、ヌクレオチド配列AN
19NGGまたはGN
19NGGを含む。別の態様では、Cas9タンパク質は、細胞内の発現についてコドンが最適化されている。さらに別の態様では、Cas9タンパク質は、真核細胞内の発現についてコドンが最適化されている。さらなる態様では、真核細胞は、哺乳動物細胞またはヒト細胞である。別の態様では、1または複数の遺伝子産物の発現が低減される。
【0078】
一部の態様では、本明細書で開示される主題は、本明細書で記載される1もしくは複数のベクターなど、1もしくは複数のポリヌクレオチド、1もしくは複数のその転写物、および/またはそこから転写される1もしくは複数のタンパク質を、宿主細胞に送達するステップを含む方法を提供する。一部の態様では、本明細書で開示される主題はさらに、このような方法により作製される細胞、およびこのような細胞を含む生物(動物、植物、または真菌など)またはこのような細胞から作製される生物を提供する。一部の実施形態では、ガイド配列と組み合わせた(および任意選択でガイド配列と複合体化させた)CRISPR酵素を、細胞に送達する。従来のウイルスベースの遺伝子導入方法および非ウイルスベースの遺伝子導入方法を使用して、哺乳動物細胞内または標的組織内に核酸を導入することができる。このような方法を使用して、CRISPR系の構成要素をコードする核酸を、培養物中または宿主生物内の細胞に投与することができる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書で記載されるベクターの転写物)、ネイキッド核酸、およびリポソームなどの送達媒体と複合体化させた核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含み、これらは、細胞への送達の後で、ゲノムをエピソームとするか、または統合する。遺伝子治療手順の総説については、Anderson(1992年)、Science、256巻:808〜813頁;NabelおよびFelgner(1993年)、TIBTECH、11巻:211〜217頁;MitaniおよびCaskey(1993年)、TIBTECH、11巻:162〜166頁;Dillon(1993年)、TIBTECH、11巻:167〜175頁;Miller(1992年)、Nature、357巻:455〜460頁;Van Brunt(1998年)、Biotechnology、6巻(10号):1149〜1154頁;Vigne(1995年)、Restorative Neurology and Neuroscience、8巻:35〜36頁;KremerおよびPerricaudet(1995年)、British Medical Bulletin、51巻(1号):31〜44頁;Haddadaら(1995年)、Current Topics in Microbiology and Immunology、DoerflerおよびBohm(編);ならびにYuら(1994年)、Gene Therapy、1巻:13〜26頁を参照されたい。
【0079】
核酸の非ウイルス送達方法は、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、ウィロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン、または脂質:核酸コンジュゲート、ネイキッドDNA、人工ビリオン、およびDNAの薬剤増強型取込みを含む。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号;および同第4,897,355号において記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)およびLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの、効率的な受容体認識型リポフェクションに適する、カチオン性脂質および中性脂質は、Felgnerによるカチオン性脂質および中性脂質(WO91/17424;WO91/16024)を含む。送達は、細胞への送達(例えば、in vitro投与またはex vivo投与)の場合もあり、標的組織への送達(例えば、in vivo投与)の場合もある。
【0080】
イムノリピド複合体など、ターゲティング型リポソームを含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal(1995年)、Science、270巻:404〜410頁;Blaeseら(1995年)、Cancer Gene Ther.、2巻:291〜297頁:Behrら(1994年)、Bioconjugate Chem.、5巻:382〜389頁;Remyら(1994年)、Bioconjugate Chem.、5巻:647〜654頁;Gaoら(1995年)、Gene Therapy、2巻:710〜722頁;Ahmadら(1992年)、Cancer Res.、52巻:4817〜4820頁;米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、および同第4,946,787号)。
【0081】
核酸の送達のための、ウイルスRNAベースの系またはウイルスDNAのベースの系の使用では、ウイルスを、体内の特異的細胞にターゲティングし、ウイルスのペイロードを、核にトラフィッキングするための、高度に進化した工程を利用する。ウイルスベクターは、患者に直接(in vivoにおいて)投与することもでき、in vitroにおいて細胞を処置するのに使用することもでき、任意選択で、改変細胞を患者に投与する(ex vivoにおいて)こともできる。従来のウイルスベースの系は、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを含みうるであろう。レトロウイルス、レンチウイルス、およびアデノ随伴ウイルスによる遺伝子導入方法では、宿主ゲノム内の統合が可能であり、挿入されたトランス遺伝子の長期にわたる発現を結果としてもたらすことが多い。加えて、多くの異なる細胞型および標的組織における形質導入効率の増大も観察されている。
【0082】
レトロウイルスの向細胞性は、外来のエンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的標的集団を拡大することにより変更することができる。レンチウイルスベクターとは、非分裂細胞に形質導入するか、またはこれらに感染し、典型的には、高ウイルス力価をもたらすことが可能なレトロウイルスベクターである。したがって、レトロウイルスの遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存するであろう。レトロウイルスベクターは、外来配列のパッケージング容量を最大で6〜10kbとするシス作用型LTR(long terminal repeat)を含む。ベクターの複製およびパッケージングには、最小限のシス作用型LTRで十分であり、次いで、これを使用して、治療用遺伝子を、標的細胞中に組み込んで、恒久的なトランス遺伝子発現をもたらす。広く使用されるレトロウイルスベクターは、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびこれらの組合せに基づくレトロウイルスベクター(例えば、Buchscherら(1992年)、J. Virol.、66巻:2731〜2739頁;Johannら(1992年)、J. Virol.、66巻:1635〜1640頁;Sommnerfeltら(1990年)、J. Virol.、176巻:58〜59頁;Wilsonら(1989年)、J. Virol.、63巻:2374〜2378頁;Millerら(1991年)、J. Virol.、65巻:2220〜2224頁;PCT/US94/05700)を含む。一過性発現が好ましい適用では、アデノウイルスのベースの系を使用することができる。アデノウイルスベースのベクターは、多くの細胞型における極めて高度な形質導入効率が可能であり、細胞分裂を要請しない。このようなベクターにより、高力価および高発現レベルが得られる。このベクターは、比較的単純な系により大量に作製することができる。アデノ随伴ウイルス(「AAV」)ベクターはまた、例えば、in vitroでの核酸およびペプチドの産生において、細胞に標的核酸を形質導入するのにも使用することができ、in vivoおよびex vivoにおける遺伝子治療手順にも使用することができる(例えば、Westら(1987年)、Virology、160巻:38〜47頁;米国特許第4,797,368号;WO93/24641;Kotin(1994年)、Human Gene Therapy、5巻:793〜801頁;Muzyczka(1994年)、J. Clin. Invest.、94巻:1351頁)。組換えAAVベクターの構築については、米国特許第5,173,414号;Tratschinら(1985年)、Mol. Cell. Biol.、5巻:3251〜3260頁;Tratschinら(1984年)、Mol. Cell. Biol.、4巻:2072〜2081頁;HermonatおよびMuzyczka(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、81巻:6466〜6470頁;ならびにSamulskiら(1989年)、J. Virol.、63巻:03822〜3828頁を含む多数の刊行物において記載されている。
【0083】
パッケージング細胞を使用して、宿主細胞への感染が可能なウイルス粒子を形成することが典型的である。このような細胞は、アデノウイルスをパッケージングする293細胞、およびレトロウイルスをパッケージングするψ2細胞またはPA317細胞を含む。遺伝子治療において使用されるウイルスベクターは通例、核酸ベクターを、ウイルス粒子中にパッケージングする細胞系を作製することにより作出する。ベクターは、パッケージングおよびその後の宿主への統合に要請される、最小限のウイルス配列を含有することが典型的であり、他のウイルス配列は、ポリヌクレオチドを発現させるための発現カセットで置きかえられる。逸失するウイルス機能は、パッケージング細胞系により、トランスで供給されることが典型的である。例えば、遺伝子治療において使用されるAAVベクターは、AAVゲノムに由来するITR配列であって、パッケージングおよび宿主ゲノムへの統合に要請されるITR配列だけを有することが典型的である。ウイルスDNAは、他のAAV遺伝子、すなわち、repおよびcapはコードするが、ITR配列を欠く、ヘルパープラスミドを含有する細胞系内にパッケージングされる。細胞系にはまた、ヘルパーとしてのアデノウイルスも感染させることができる。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製、およびAAV遺伝子の、ヘルパープラスミドからの発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如に起因して、著明量ではパッケージングされない。アデノウイルスによる夾雑は、例えば、AAVよりアデノウイルスの感受性が高い熱処理により低減することができる。当業者には、核酸を細胞に送達するためのさらなる方法が公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US20030087817を参照されたい。
【0084】
一部の実施形態では、宿主細胞に、本明細書で記載される1または複数のベクターを、一過性で、または恒久的にトランスフェクトする。一部の実施形態では、被験体における自然発生の細胞にトランスフェクトする。一部の実施形態では、トランスフェクトされる細胞を、被験体から採取する。一部の実施形態では、細胞は、細胞系など、被験体から採取された細胞に由来する。当技術分野では、組織培養のための多種多様な細胞系が公知である。細胞系の例は、C8161、CCRF−CEM、MOLT、mIMCD−3、NHDF、HeLa−S3、Huh1、Huh4、Huh7、HUVEC、HASMC、HEKn、HEKa、MiaPaCell、Panel、PC−3、TF1、CTLL−2、C1R、Rat6、CV1、RPTE、A10、T24、J82、A375、ARH−77、Calu1、SW480、SW620、SKOV3、SK−UT、CaCo2、P388D1、SEM−K2、WEHI−231、HB56、TIB55、Jurkat、J45.01、LRMB、Bcl−1、BC−3、IC21、DLD2、Raw264.7、NRK、NRK−52E、MRC5、MEF、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS−1、COS−6、COS−M6A、BS−C−1サル腎臓上皮、BALB/3T3マウス胚線維芽、3T3 Swiss、3T3−L1、132−d5ヒト胎児線維芽;10.1マウス線維芽、293−T、3T3、721、9L、A2780、A2780ADR、A2780cis、A172、A20、A253、A431、A−549、ALC、B16、B35、BCP−1細胞、BEAS−2B、bEnd.3、BHK−21、BR 293、BxPC3、C3H−10T1/2、C6/36、Cal−27、CHO、CHO−7、CHO−IR、CHO−K1、CHO−K2、CHO−T、CHO Dhfr−/−、COR−L23、COR−L23/CPR、COR−L23/5010、COR−L23/R23、COS−7、COV−434、CML T1、CMT、CT26、D17、DH82、DU145、DuCaP、EL4、EM2、EM3、EMT6/AR1、EMT6/AR10.0、FM3、H1299、H69、HB54、HB55、HCA2、HEK−293、HeLa、Hepa1c1c7、HL−60、HMEC、HT−29、Jurkat、JY細胞、K562細胞、Ku812、KCL22、KG1、KYO1、LNCap、Ma−MeI1−48、MC−38、MCF−7、MCF−10A、MDA−MB−231、MDA−MB−468、MDA−MB−435、MDCK II、MDCK II、MOR/0.2R、MONO−MAC6、MTD−1A、MyEnd、NCI−H69/CPR、NCI−H69/LX10、NCI−H69/LX20、NCI−H69/LX4、NIH−3T3、NALM−1、NW−145、OPCN/OPCT細胞系、Peer、PNT−1A/PNT2、RenCa、RIN−5F、RMA/RMAS、Saos−2細胞、Sf−9、SkBr3、T2、T−47D、T84、THP1細胞系、U373、U87、U937、VCaP、Vero細胞、WM39、WT−49、X63、YAC−1、YAR、およびこれらのトランスジェニック亜種を含むがこれらに限定されない。細胞系は、当業者に公知の様々な供給源(例えば、the American Type Culture Collection(ATCC)(Manassus、Va.)を参照されたい)から入手可能である。一部の実施形態では、本明細書で記載される1または複数のベクターをトランスフェクトされた細胞を使用して、1または複数のベクター由来配列を含む、新たな細胞系を確立する。一部の実施形態では、本明細書で記載されるCRISPR系の構成要素を一過性にトランスフェクトされ(1もしくは複数のベクターの一過性トランスフェクション、またはRNAのトランスフェクションなどにより)、CRISPR複合体の活性を介して改変された細胞を使用して、改変を含有するが、他の任意の外因性配列を欠く細胞を含む、新たな細胞系を確立する。一部の実施形態では、本明細書で記載される1もしくは複数のベクターを、一過性に、もしくは恒久的にトランスフェクトされた細胞、またはこのような細胞に由来する細胞系を、1または複数の被験化合物の評価において使用する。
【0085】
一部の実施形態では、本明細書で記載される1または複数のベクターを使用して、非ヒトトランスジェニック動物を作製する。一部の実施形態では、トランスジェニック動物は、マウス、ラット、またはウサギなどの哺乳動物である。ある特定の実施形態では、生物または被験体は、植物である。当技術分野では、トランスジェニック動物を作製するための方法が公知であり、一般に、本明細書で記載される細胞トランスフェクション方法などの細胞トランスフェクション方法で始める。
【0086】
一態様では、本明細書で開示される主題は、真核細胞内の標的ポリヌクレオチドを改変する方法であって、in vivo方法の場合もあり、ex vivo方法の場合もあり、in vitro方法の場合もある方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、細胞または細胞集団を、ヒトまたは非ヒト動物からサンプリングするステップと、1または複数の細胞を改変するステップとを含む。培養は、ex vivoにおいて、任意の段階で生じうる。1または複数の細胞はなお、非ヒト動物中に再導入することもできる。
【0087】
一態様では、本明細書で開示される主題は、真核細胞内の標的ポリヌクレオチドを改変する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、CRISPR複合体を、標的ポリヌクレオチドに結合させ、標的ポリヌクレオチドの切断を果たさせ、これにより、標的ポリヌクレオチドを改変するステップであって、CRISPR複合体が、標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズさせたガイド配列と複合体化させた、CRISPR酵素を含むステップを含む。
【0088】
一態様では、本明細書で開示される主題は、真核細胞内のポリヌクレオチドの発現を修飾する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、結合が、ポリヌクレオチドの発現の増大または減少を結果としてもたらすように、CRISPR複合体を、ポリヌクレオチドに結合させるステップであって、CRISPR複合体が、ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズさせたガイド配列と複合体化させた、CRISPR酵素を含むステップを含む。
【0089】
一態様では、本明細書で開示される主題は、CRISPR系の1または複数のエレメントを使用するための方法を提供する。本明細書で開示される主題のCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチドを改変するための有効な手段を提供する。本明細書で開示される主題のCRISPR複合体は、多数の細胞型内の標的ポリヌクレオチドを改変すること(例えば、欠失させること、挿入すること、転座させること、不活化させること、活性化させること)を含む、多種多様な有用性を有する。したがって、本明細書で開示される主題のCRISPR複合体は、例えば、遺伝子治療、薬物スクリーニング、疾患の診断、および予後診断において広範に適用される。例示的なCRISPR複合体は、標的ポリヌクレオチド内の標的配列にハイブリダイズさせたガイド配列と複合体化させたCRISPR酵素を含む。
【0090】
CRISPR複合体の標的ポリヌクレオチドは、真核細胞に対して内因性または外因性である、任意のポリヌクレオチドでありうる。例えば、標的ポリヌクレオチドは、真核細胞の核内に存在するポリヌクレオチドでありうる。標的ポリヌクレオチドは、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列の場合もあり、非コード配列(例えば、調節的ポリヌクレオチドまたはジャンクDNA)の場合もある。理論に束縛されることを望まずに述べると、標的配列は、PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)、すなわち、CRISPR複合体により認識される短い配列と関連すると考えられる。PAMの正確な配列および長さの要件は、使用されるCRISPR酵素に応じて異なるが、PAMは、プロトスペーサー(すなわち、標的配列)に隣接する2〜5塩基対の配列であることが典型的である。PAM配列の例は、下記の実施例節で与えられるが、当業者は、所与のCRISPR酵素を伴う使用のための、さらなるPAM配列を同定することも可能であろう。
【0091】
標的ポリヌクレオチドの例は、シグナル伝達のための生化学経路と関連する配列、例えば、シグナル伝達のための生化学経路に関連する遺伝子またはポリヌクレオチドを含む。標的ポリヌクレオチドの例は、疾患関連遺伝子または疾患関連ポリヌクレオチドを含む。「疾患関連」遺伝子または「疾患関連」ポリヌクレオチドとは、罹患した組織に由来する細胞内で、非疾患対照の組織または細胞と比較して、異常なレベルまたは異常な形態の転写産物または翻訳産物をもたらす、任意の遺伝子またはポリヌクレオチドを指す。「疾患関連」遺伝子は、異常な高レベルで発現する遺伝子の場合もあり、異常な低レベルで発現する遺伝子の場合もあり、この場合、発現の変更は、疾患の発症および/または進行と相関する。疾患関連遺伝子はまた、直接疾患の病因をなすか、または疾患の病因をなす遺伝子と連鎖不均衡の関係にある突然変異または遺伝的変異を所持する遺伝子も指す。転写または翻訳される産物は、公知の産物の場合もあり、未知の産物の場合もあり、正常なレベルの場合もあり、異常なレベルの場合もある。
【0092】
本明細書で開示される主題の実施形態はまた、遺伝子のノックアウト、遺伝子の増幅、ならびにDNAリピートの不安定性および神経障害と関連する特定の突然変異の修復に関する方法および組成物(Robert D. Wells、Tetsuo Ashizawa、Genetic Instabilities and Neurological Diseases、第2版、Academic Press、2011年10月13日(Medical))にも関する。タンデムリピート配列の特異的な態様は、20を超えるヒト疾患の一因となることが見出されている(McIvorら(2010年)、RNA Biol.、7巻(5号):551〜8頁)。CRISPR−Cas系を利用して、ゲノムの不安定性によるこれらの欠損を補正することができる。
【0093】
本明細書で開示される主題のさらに別の態様では、CRISPR−Cas系を使用して、Traboulsi編(2012年)、Genetic Diseases of the Eye、第2版、Oxford University Pressにおいてさらに記載されている、いくつかの遺伝子突然変異から生じる眼の欠損を補正することができる。
【0094】
本明細書で開示される主題のいくつかのさらなる態様は、広範にわたる遺伝性疾患と関連する欠損を補正することに関する。例えば、遺伝性脳疾患は、副腎白質ジストロフィー、脳梁欠損症、エカルディ症候群、アルパース病(Alpers’ Disease)、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease)、バース症候群、バッテン病、CADASIL、小脳変性、ファブリー病、ゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー病、ハンチントン病、および他のトリプレットリピート障害、リー病、レッシュ−ナイハン症候群、メンケス病、ミトコンドリアミオパシー、ならびにNINDSコルポセファリーを含みうるがこれらに限定されない。
【0095】
一部の実施形態では、状態は、新生物でありうる。一部の実施形態では、状態は、加齢黄斑変性でありうる。一部の実施形態では、状態は、統合失調症でありうる。一部の実施形態では、状態は、トリヌクレオチドリピート障害でありうる。一部の実施形態では、状態は、脆弱X症候群でありうる。一部の実施形態では、状態は、セクレターゼ関連障害でありうる。一部の実施形態では、状態は、プリオン関連障害でありうる。一部の実施形態では、状態は、ALSでありうる。一部の実施形態では、状態は、薬物中毒でありうる。一部の実施形態では、状態は、自閉症でありうる。一部の実施形態では、状態は、アルツハイマー病でありうる。一部の実施形態では、状態は、炎症でありうる。一部の実施形態では、状態は、パーキンソン病でありうる。
【0096】
パーキンソン病と関連するタンパク質の例は、α−シヌクレイン、DJ−1、LRRK2、PINK1、Parkin、UCHL1、シンフィリン1、およびNURR1を含むがこれらに限定されない。
【0097】
中毒関連タンパク質の例は、例えば、ABATを含みうる。
【0098】
炎症関連タンパク質の例は、例えば、Ccr2遺伝子によりコードされる単球走化性タンパク質1(MCP1)、Ccr5遺伝子によりコードされるC−Cケモカイン受容体5型(CCR5)、Fcgr2b遺伝子によりコードされるIgG受容体IIB(CD32ともまた呼ばれるFCGR2b)、またはFcer1g遺伝子によりコードされるFcイプシロンR1g(FCER1g)タンパク質を含みうる。
【0099】
心血管疾患関連タンパク質の例は、例えば、IL1B(インターロイキン1ベータ)、XDH(キサンチンデヒドロゲナーゼ)、TP53(腫瘍タンパク質p53)、PTGIS(プロスタグランジン12(プロスタサイクリン)シンターゼ)、MB(ミオグロビン)、IL4(インターロイキン4)、ANGPT1(アンジオポエチン1)、ABCG8(ATP結合性カセットサブファミリーG(WHITE)メンバー8)、またはCTSK(カテプシンK)を含みうる。
【0100】
アルツハイマー病関連タンパク質の例は、例えば、VLDLR遺伝子によりコードされる極低密度リポタンパク質受容体タンパク質(VLDLR)、UBA1遺伝子によりコードされるユビキチン様修飾因子活性化酵素1(UBA1)、またはUBA3遺伝子によりコードされるNEDD8活性化酵素E1触媒性サブユニットタンパク質(UBE1C)を含みうる。
【0101】
自閉症スペクトラム障害と関連するタンパク質の例は、例えば、BZRAP1遺伝子によりコードされるベンゾジアゼピン受容体(末梢)関連タンパク質1(BZRAP1)、AFF2遺伝子(MFR2ともまた呼ばれる)によりコードされるAF4/FMR2ファミリーメンバー2タンパク質(AFF2)、FXR1遺伝子によりコードされるFXR1(fragile X mental retardation autosomal homolog 1)タンパク質、またはFXR2遺伝子によりコードされるFXR2(fragile X mental retardation autosomal homolog 2)タンパク質を含みうる。
【0102】
黄斑変性と関連するタンパク質の例は、例えば、ABCR遺伝子によりコードされるATP結合性カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー4タンパク質(ABCA4)、APOE遺伝子によりコードされるアポリポタンパク質Eタンパク質(APOE)、またはCCL2遺伝子によりコードされるケモカイン(C−Cモチーフ)リガンド2タンパク質(CCL2)を含みうる。
【0103】
統合失調症と関連するタンパク質の例は、NRG1、ErbB4、CPLX1、TPH1、TPH2、NRXN1、GSK3A、BDNF、DISC1、GSK3B、およびこれらの組合せを含みうる。
【0104】
腫瘍抑制に関与するタンパク質の例は、例えば、ATM(ataxia telangiectasia mutated)、ATR(ataxia telangiectasia and Rad3 related)、EGFR(上皮増殖因子受容体)、ERBB2(v−erb−b2 erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 2)、ERBB3(v−erb−b2 erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 3)、ERBB4(v−erb−b2 erythroblastic leukemia viral oncogene homolog 4)、Notch 1、Notch2、Notch 3、またはNotch 4を含みうる。
【0105】
セクレターゼ障害と関連するタンパク質の例は、例えば、PSENEN(プレセニリンエンハンサー2相同体(C.elegans))、CTSB(カテプシンB)、PSEN1(プレセニリン1)、APP(アミロイドベータ(A4)前駆体タンパク質)、APH1B(anterior pharynx defective 1 homolog B(C.elegans))、PSEN2(プレセニリン2(アルツハイマー病4))、またはBACE1(beta−site APP−cleaving enzyme 1)を含みうる。
【0106】
筋委縮性側索硬化症と関連するタンパク質の例は、SOD1(スーパーオキシドディスムターゼ1)、ALS2(筋委縮性側索硬化症2)、FUS(fused in sarcoma)、TARDBP(TAR DNA結合性タンパク質)、VAGFA(血管内皮増殖因子A)、VAGFB(血管内皮増殖因子B)、およびVAGFC(血管内皮増殖因子C)、ならびにこれらの任意の組合せを含みうる。
【0107】
プリオン病と関連するタンパク質の例は、SODI(スーパーオキシドディスムターゼ1)、ALS2(筋委縮性側索硬化症2)、FUS(fused in sarcoma)、TARDBP(TAR DNA結合性タンパク質)、VAGFA(血管内皮増殖因子A)、VAGFB(血管内皮増殖因子B)、およびVAGFC(血管内皮増殖因子C)、ならびにこれらの任意の組合せを含みうる。
【0108】
プリオン障害における神経変性状態に関するタンパク質の例は、例えば、A2M(アルファ−2−マクログロブリン)、AATF(apoptosis antagonizing transcription factor)、ACPP(前立腺酸性ホスファターゼ)、ACTA2(大動脈平滑筋アクチンアルファ2)、ADAM22(ADAMメタロペプチダーゼドメイン)、ADORA3(アデノシンA3受容体)、またはADRA1D(アルファ−1Dアドレナリン受容体に代わる、アルファ−1Dアドレナリン作動性受容体)を含みうる。
【0109】
免疫不全症と関連するタンパク質の例は、例えば、A2M[アルファ−2−マクログロブリン];AANAT[アリールアルキルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ];ABCA1[ATP結合性カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー1];ABCA2[ATP結合性カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー2];またはABCA3[ATP結合性カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー3]を含みうる。
【0110】
トリヌクレオチドリピート障害と関連するタンパク質の例は、例えば、AR(アンドロゲン 受容体)、FMR1(fragile X mental retardation 1)、HTT(ハンチンチン)、またはDMPK(筋緊張性ジストロフィータンパク質キナーゼ)、FXN(フラタキシン)、ATXN2(アタキシン2)を含む。
【0111】
神経伝達障害と関連するタンパク質の例は、例えば、SST(ソマトスタチン)、NOS1(一酸化窒素シンターゼ1(神経))、ADRA2A(アドレナリン作動性アルファ2A受容体)、ADRA2C(アドレナリン作動性アルファ2C受容体)、TACR1(タキキニン受容体1)、またはHTR2c(5−ヒドロキシトリプトアミン(セロトニン)受容体2C)を含む。
【0112】
神経発生に関連する配列の例は、例えば、A2BP1(アタキシン2結合性タンパク質1)、AADAT(アミノアジピン酸アミノトランスフェラーゼ)、AANAT(アリールアルキルアミンN−アセチルトランスフェラーゼ)、ABAT(4−アミノ酪酸アミノトランスフェラーゼ)、ABCA1(ATP結合性カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー1)、またはABCA13(ATP結合性カセットサブファミリーA(ABC1)メンバー13)を含む。
【0113】
本系により処置可能な好ましい状態のさらなる例は、エカルディ−グティエール症候群;アレクサンダー病;アラン−ハーンドン−ダドリー症候群;POLG関連障害;アルファ−マンノシドーシス(II型およびIII型);アルストレーム症候群;アンゲルマン症候群;毛細血管拡張性運動失調症;神経セロイドリポフスチン症;ベータ−サラセミア;両側視神経萎縮および(乳児性)1型視神経萎縮;網膜芽細胞腫(両側);カナバン病;脳眼顔骨格症候群1(COFS1);脳腱黄色腫症;コルネリアデランゲ症候群;MAPT関連障害;遺伝性プリオン病;ドラベ症候群;早発性家族性アルツハイマー病;フリードライヒ運動失調症[FRDA];フリンス症候群;フコシドーシス;福山型先天性筋ジストロフィー;ガラクトシアリドーシス;ゴーシェ病;有機酸血症;血球貪食性リンパ組織球症;ハッチンソン−ギルフォード早老症候群;II型ムコリピドーシス;乳児性遊離シアル酸蓄積症;PLA2G6関連神経変性;ジャーベル・ランゲ−ニールセン症候群;接合部型表皮水疱症;ハンチントン病;クラッベ病(乳児性);ミトコンドリアDNA関連リー症候群およびNARP;レッシュ−ナイハン症候群;LIS1関連脳回欠損;ロウ症候群;メープルシロップ尿症;MECP2重複症候群;ATP7A関連銅輸送障害;LAMA2関連筋ジストロフィー;アリールスルファターゼA欠損症;I型ムコ多糖症、II型ムコ多糖症、またはIII型ムコ多糖症;ツェルウェガー症候群スペクトルのペルオキシソーム生合成障害;脳内鉄蓄積障害を伴う神経変性;酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症;C型ニーマン−ピック病;グリシン脳症;ARX関連障害;尿素サイクル障害;COL1A 1/2関連骨形成不全症;ミトコンドリアDNA欠失症候群;PLP1関連障害;ペリー症候群;フェラン−マクダーミド症候群;II型糖原病(ポンぺ病)(乳児性);MAPT関連障害;MECP2関連障害;1型肢根型点状軟骨異形成症;ロバート症候群;サンドホフ病;1型シンドラー病;アデノシンデアミナーゼ欠損症;スミス−レムリ−オピッツ症候群;脊髄性筋委縮症;乳児期発症型脊髄小脳性運動失調症;ヘキソサミニダーゼA欠損症;1型タナトフォリック骨異形成症;VI型コラーゲン関連障害;I型アッシャー症候群;先天性筋ジストロフィー;ウォルフ−ヒルシュホーン症候群;ライソゾーム酸性リパーゼ欠損症;ならびに色素性乾皮症から選択することができる。
【0114】
II.in vivoにおいてgRNAを発現させ、in vivoにおけるgRNAの発現を調節する、RNAリボザイムおよび調節可能なアプタザイム
【0115】
本明細書で開示される主題はまた、in vivoにおいてgRNAを発現させ、in vivoにおけるgRNAの発現を調節する、RNAリボザイムおよび調節可能なアプタザイムの使用、特に、第1の非制限型ヌクレオチド特異性を伴う、ガイドRNAのシス型プロセシングのための、5’側ハンマーヘッド型リボザイム、およびin vivoにおける、RNAアプタザイムを介するgRNA機能の調節の使用にも関する。
【0116】
したがって、本明細書で開示される主題はまた、a)触媒性コアと、そこから伸長する、ヘリックスI、ヘリックスII、およびヘリックスIIIの二重鎖領域とを含むシス作用型ハンマーヘッド型リボザイムであって、ヘリックスIIの二重鎖領域およびヘリックスIIIの二重鎖領域の各々が、触媒性コアの反対側にループ領域を含み、ヘリックスIIの二重鎖領域が、リガンドに結合するアプタマーを含む、シス作用型ハンマーヘッド型リボザイムと;b)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードするヌクレオチド配列であって、gRNAが、真核細胞内のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、真核細胞内で発現する1または複数の遺伝子産物をコードし、ヌクレオチド配列が、5’末端および3’末端を含み、ヌクレオチド配列の5’末端が、ヘリックスIIIの二重鎖領域と直接カップリングしている、ヌクレオチド配列とを含むアプタマー調節型リボザイムであって、リボザイムが、ヌクレオチド配列の5’末端と、ヘリックスIIIの二重鎖領域との間の自己切断を経るように、リガンドのアプタマーへの結合により、リボザイム内のコンフォメーション変化がもたらされ、gRNAが産生される、アプタマー調節型リボザイムも提供する。また、(i)RNAに転写されると、アプタマー調節型リボザイムをもたらすコード配列と;(ii)真核細胞内のRNAの転写を調節する、1または複数の転写調節配列とを含む発現構築物も提供される。また、発現構築物を含む真核細胞も提供される。また、真核細胞内の1または複数の遺伝子産物の発現を変更する方法であって、細胞が、1または複数の遺伝子産物をコードするDNA分子を含み、方法が、発現構築物を細胞中に導入するステップと、細胞をリガンドと、リボザイムの活性を変更する量で接触させるステップとを含み、特に、細胞が、哺乳動物被験体またはヒト被験体における細胞である方法も提供される。一態様では、リガンドは、テオフィリンである。
【0117】
リボザイムとは、自己切断またはライゲーションなど、様々な化学反応を触媒するRNA分子である(LongおよびUhlenbeck(1993年)、FASEB J.、7巻:25〜30頁)。多様な自然発生のリボザイムは、ウイルス、ウィロイド、および原虫において同定されている。最初の触媒性RNAのうちの1つは、タバコリングスポットウィロイド(sTRSV)のサテライトRNAにおいて発見された(De la Penaら(2003年)、EMBO J.、22巻:5561〜70頁)。in vivoにおいて、この病原性ウィロイドは、シスにおいて作用し、複製時に自己切断することが示された。最初のリボザイムの発見以来、ヘアピン型リボザイムおよびハンマーヘッド型リボザイムを含む、天然リボザイムの多様なクラスが同定され、広範に特徴付けられている。
【0118】
ハンマーヘッド型リボザイム(hRz)は、最も広範に研究されたリボザイムのうちの1つである(LongおよびUhlenbeck(1993年)、Faseb J.、7巻:25〜30頁;Pleyら(1994年)、Nature、372巻:68〜74頁;Hammannら(2001年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻:5503〜8頁;BlountおよびUhlenbeck(2005年)、Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct.、34巻:415〜40頁)。hRzは、11ヌクレオチド(nt)の、高度に保存的な触媒性コアに収束する、3つのヘリックス領域を含む(Khvorovaら(2003年)、Nat. Struct. Biol.、10巻:708〜12頁;Salehi-AshtianiおよびSzostak(2001年)、Nature、414巻:82〜4頁)。切断は、配列特異的であり、5’−NUX−3’トリプレット[配列中、Nは、任意の塩基であり、Uは、ウラシルであり、Xは、グアニン以外の任意の塩基である]をターゲティングする。効率的で迅速な切断に最適なNUXは、GUCである。リボザイムによる切断は、Xに由来する2’ヒドロキシル基であって、切断部位のすぐの3’側にある2’ヒドロキシル基が、脱プロトン化されると触媒される。次いで、この求核剤が、切断可能なリン酸を攻撃し、五配位三方両錘形遷移状態を介して、5’生成物および3’生成物を生成させる(BlountおよびUhlenbeck(2005年)、Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct.、34巻:415〜40頁)。
【0119】
hRzの、活性のコンフォメーションへのフォールディングは、二重の二価イオン結合イベントを介して進行すると仮定されている。高アフィニティーの結合イベントは、500μMで生じ、三次相互作用の第1のセットをもたらす。第2の低アフィニティーによるイオンの付加は、10mMで生じ、ヘリックスIが、フォールドしてヘリックスIIIから遠ざかり、ヘリックスIIと相互作用するように、hRzステムの配向性を再構築する(Hammannら(2001年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻:5503〜8頁)。保存的触媒性コアを伴うhRzであって、特異的ステムループを維持しないhRzを、ミニマルハンマーヘッド型リボザイム(mhRz)と呼ぶ。mhRzは、二価イオン濃度が高濃度(10mM)のときは活性であるが、低濃度では、事実上不活性である(De la Penaら(2003年)、EMBO J.、22巻:5561〜70頁;Khvorovaら(2003年)、Nat. Struct. Biol.、10巻:708〜12頁)。天然hRzの結晶構造では、ステムループのうちの2つが、「キッシングループ」として相互作用する、「Y」字型分子が描示される(Pleyら(1994年)、Nature、372巻:68〜74頁)。ステムループ内の、非対合塩基の間の、これらの三次相互作用は、触媒的に活性のコンフォメーションを安定化させ、高二価イオン状態を不要とすることが提案されている。研究者らは、ループを、mhRzデザイン中に再組込みすることにより、100〜500μMの間の、生物学的に関与性の二価イオン濃度で、in vitroにおける触媒活性が回復されることを実証している(De la Penaら(2003年)、EMBO J.、22巻:5561〜70頁;Khvorovaら(2003年)、Nat. Struct. Biol.、10巻:708〜12頁;Cannyら(2004年)、J. Am. Chem. Soc.、126巻:10848〜9頁;Penedoら(2004年)、RNA、10巻:880〜8頁;Saksmerpromeら(2004年)、RNA、10巻:1916〜24頁;WeinbergおよびRossi(2005年)、FEBS Lett.、579巻:1619〜24頁)。ここで、in vivoにおける触媒活性のためのデザイン規則を解明することにより、hRzを、遺伝子発現の有効な調節因子とする準備が整う。
【0120】
したがって、ハンマーヘッド型リボザイムは、コア、コアから伸長する3本のステムを含有する。本明細書では、「ステム」および「ヘリックス」という用語を互換的に使用する場合がある。したがって、本明細書では、コアから伸長する3本のステムを、ステムI、ステムII、およびステムIII(またはヘリックスI、ヘリックスII、およびヘリックスIII)と称し、少なくとも1つのループを、コアからのステムの反対の末端に配置する。シス作用型リボザイムの実施形態では、リボザイムは、一方は、ステムII(またはヘリックスII)の末端に配置され、他方は、ステムIII(またはヘリックスIII)の末端に配置される、2つのループを含有する。
【0121】
本明細書で使用される「シス切断型ハンマーヘッド型リボザイム」とは、切断部分の前に単一のポリヌクレオチドを含む、ハンマーヘッド型リボザイムである。シス切断型ハンマーヘッド型リボザイムは、自己切断が可能である。
【0122】
ステム(またはヘリックス)とは、リボザイムコアから伸長する核酸モチーフであって、その少なくとも一部が二本鎖である核酸モチーフである。ある特定の実施形態では、リボザイムコアからのステムの反対の末端にループを置き、このループにより、二本鎖ステムの2つの鎖を接続する。ある特定の実施形態では、ステムは、2つ〜20の相補的塩基対を含む。ある特定の実施形態では、ステムは、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、または9つの相補的塩基対を含む。
【0123】
ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも30%は、相補的塩基対の部分である。残りの塩基対は、ミスマッチした非相補的塩基対の場合もあり、バルジの部分の場合もある。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも40%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも50%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも60%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも70%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも80%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも90%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも95%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの少なくとも99%は、相補的塩基対の部分である。ある特定の実施形態では、ステム内のヌクレオチドのうちの100%が、相補的塩基対の部分である。
【0124】
ループとは、別の鎖と対合しないヌクレオチドの配列であり、コアの反対側である、ステムの遠位末端に配置される。ある特定の実施形態では、ループは、1〜20ヌクレオチドの間の長さである。ある特定の実施形態では、ループは、2〜10ヌクレオチドの間の長さである。ある特定の実施形態では、ループは、3〜8ヌクレオチドの間の長さである。ループは、それが接合するステムに従い番号付けされる。したがって、ループIは、コアの反対側である、ステムIの末端に配置され、ループIIは、コアの反対側である、ステムIIの末端に配置され、ループIIIは、コアの反対側である、ステムIIIの末端に配置される。
【0125】
本明細書で使用される「ステム/ループ」とは、そのステム内の任意のバルジ、およびステムの末端におけるループと共に、ステム(またはヘリックス)の全体を指す。例えば、ステム/ループIIは、ステムII内に任意のバルジを含むステムIIと、ループIIとを含む。ステムが、ループを欠く場合、ステム/ループは、そのステム内の任意のバルジと共に、ステムを指す。本明細書で使用される「バルジ」とは、別の鎖と対合しないヌクレオチドの配列であり、両側を二本鎖核酸配列で挟まれている。ある特定の実施形態では、バルジは、ステム内に配置される。バルジが、ステム内に配置される場合、バルジのヌクレオチドは、ステムの部分であると考えられる。ある特定の実施形態では、ハンマーヘッド型リボザイムは、1つを超えるバルジを含む。ある特定の実施形態では、ステム内のバルジは、コアから2塩基対に配置される。ある特定の実施形態では、ステムの鎖の一方または両方は、バルジを含有する。
【0126】
本明細書で使用される、CRISPR−Cas系のgRNAをコードするヌクレオチド配列は、5’末端および3’末端を含み、ヌクレオチド配列の5’末端が、ヘリックスIIIの二重鎖領域と直接カップリングしている。「直接カップリングしている」とは、ループが、アプタマーの非存在下にある活性のリボザイム構造と比べて、ループの2つの残基の間の一方の骨格ホスホジエステル結合だけにおいて中断され、骨格ホスホジエステル結合が、アプタマーの5’末端および3’末端へのホスホジエステル結合で置きかえられることを意味する。アプタマー調節型リボザイムの活性形態では、そうでなければ中断されるループの構造を保存するために、情報伝送ドメインの5’側残基および3’残基を、互いと塩基対合させて、二重鎖領域を形成する。
【0127】
本明細書では、「リガンド」または「解析物」または文法的同等物とは、検出される任意の分子または化合物であり、本明細書で記載される通りにデザインおよび/または選択されるアプタマーと相互作用しうる、分子または化合物を指すことが意図される。適切なリガンドまたは解析物は、農薬、殺虫剤、毒素、治療薬、および乱用される薬物、ホルモン、抗生剤、抗体、有機材料などを含むがこれらに限定されない、環境的化学物質もしくは臨床的化学物質、汚染物質、または生体分子など、低分子の化学物質を含むがこれらに限定されない。適切な生体分子は、タンパク質(酵素、免疫グロブリン、および糖タンパク質を含む)、核酸、脂質、レクチン、炭水化物、ホルモン、全細胞(原核細胞(病原性細菌など)および哺乳動物の腫瘍細胞を含む真核細胞を含む)、ウイルス、胞子などを含むがこれらに限定されない。タンパク質である例示的な解析物は、酵素;薬物;細胞;抗体;抗原;細胞膜抗原および細胞膜受容体(神経受容体、ホルモン受容体、栄養素受容体、および細胞表面受容体)またはこれらの天然リガンドを含むがこれらに限定されない。
【0128】
ハンマーヘッド型リボザイム(hRz)とは、ホスホジエステル結合のトランスにおける切断またはシスにおける切断を持続することが可能なRNAモチーフである。シス作用型ハンマーヘッド型リボザイム(chRz)とは、それ自身の骨格の自己切断を経て、2つのRNA生成物を生成させる、触媒性RNAである。シス作用型ハンマーヘッド型リボザイムは、3つの塩基対合型ステムと、切断に要請される残基の高度に保存的コアとを含有する。切断反応は、触媒性部位であるシトシンの2’ヒドロキシル酸素による、同じ残基の3’炭素に接合したリン原子に対する攻撃を介して進行する。これにより、糖リン酸骨格が破壊され、2’,3’環状リン酸が生成する。
【0129】
自己切断反応に要請される、ミニマルハンマーヘッド型配列は、それらの大半がカノニカルのワトソン−クリック塩基対の形成に関与しない、およそ13の保存的「コア」ヌクレオチドまたは不変の「コア」ヌクレオチドを含む。コア領域には、一般に、カノニカルのワトソン−クリック塩基対を含むが、その他の点では、配列に関して制約されない、ステムI、ステムII、およびステムIIIが隣接する。
【0130】
トランス作用型ハンマーヘッド型リボザイム(thRz)の切断特異性は、基質と相補的な様式でアニールし、切断可能なホスホジエステル結合の切断を方向付けるリボザイムのハイブリダイジングアームにより制御される。この活性は、切断部分トリプレットの第3のヌクレオチドの後で生じるように、特異的に方向付けられる。
【0131】
本明細書で開示される主題は、アプタマー調節型トランス作用型ハンマーヘッド型リボザイムと、アプタマー調節型シス作用型ハンマーヘッド型リボザイムとを提供する。対象のアプタマー調節型thRzおよびアプタマー調節型chRzは、様々なリガンドに対して応答性となるようにたやすく操作することができ、多くの適用において有用な多用途のリボザイムクラスである。例えば、アプタマー調節型thRzおよびアプタマー調節型chRzは、ターゲティングされる遺伝子の活性を、リガンド依存的な形でモジュレートするようにデザインすることができ、したがって、内因性遺伝子または異種遺伝子の発現をモジュレートするのに有用である。
【0132】
リボザイムドメイン(本明細書ではまた、エフェクタードメイン)は、「オフ」状態および「オン」状態という、少なくとも2つのコンフォメーション状態であって、chRzの場合における自己切断またはthRzの場合における標的配列の切断を経るために、その活性レベル(例えば、反応速度)により規定されるコンフォメーション状態を有しうる。本明細書で開示される主題のエフェクタードメインは、アプタマードメインへのリガンドの結合に応答して、それらの「オン」コンフォメーション状態と「オフ」コンフォメーション状態との間で切り換えることができる。したがって、本明細書で開示される主題のアプタマー調節型リボザイムは、リガンドの結合に応答して、その活性が「オン」および「オフ」とされる、スイッチとして作用する。ある特定の実施形態では、リボザイムドメインの機能は、リガンドの存在もしくは非存在に顕著に依存的であるか、またはアプタマードメインへの結合に利用可能なリガンドの濃度に対するより大きな用量反応様の依存性を示しうる。
【0133】
アプタマーが結合し、したがって、これによりリボザイムが調節されるリガンドの選択は、広範にわたる。ある特定の場合、リガンドは、分子量が2500amu未満の低分子である。これらは、例示だけを目的として述べると、ペプチド、有機低分子(薬物ならびにある特定の代謝物および中間体、共因子などを含む)、および金属イオンを含む、自然発生の分子の場合もあり、非自然発生の分子の場合もある。アプタマーに結合する例示的なリガンドは、限定なしに述べると、薬物、代謝物、中間体、共因子、遷移状態類似体、イオン、金属、核酸、および毒素などの低分子を含む。アプタマーはまた、タンパク質、ペプチド、核酸、多糖、糖タンパク質、ホルモン、受容体、ならびに細胞壁および細胞膜などの細胞表面を含む、天然ポリマーおよび合成ポリマーにも結合しうる。典型的にはRNAであるアプタマーへのリガンドの結合は、情報伝送ドメインとの塩基対合を変更し、これは、リボザイムドメインの構造的変化として持ち越され、ホスホジエステル結合の切断(自己切断または標的配列の切断)を媒介するその能力を変更する。したがって、リガンドの結合は、例えば、遺伝子の不活化、転写、翻訳を媒介するか、または、他の点で、標的遺伝子もしくは標的mRNAの正常な活性に干渉する、エフェクタードメインの能力に影響を及ぼす。
【0134】
アプタマーは、最も典型的には、標的分子の結合についてのin vitroにおける選択により得られているであろう。しかし、また、in vivoにおけるアプタマーの選択も可能である。アプタマーは、環境内で、意図される標的分子との複合体を形成することが可能な特異的結合領域であって、同じ環境内で、他の物質は、核酸と複合体化しない特異的結合領域を有する。結合の特異性は、アプタマーの、環境内の他の材料または非類縁分子一般に対する解離定数と比較した、アプタマーの、そのリガンドに対する比較解離定数(K
d)との関係で規定される。リガンドとは、非類縁材料に対する場合より大きなアフィニティーでアプタマーに結合するリガンドである。典型的には、アプタマーの、そのリガンドに関するK
dは、アプタマーの、非類縁材料または環境内に付属する材料に対するK
dの、少なくとも約10分の1であろう。なおより好ましくは、K
dは、少なくとも約50分の1、より好ましくは、少なくとも約100分の1であり、最も好ましくは、少なくとも約200分の1であろう。アプタマーは典型的に、約10〜約300ヌクレオチドの間の長さであろう。より一般的に、アプタマーは、約30〜約100ヌクレオチドの間の長さであろう。
【0135】
多種多様な分子に結合するアプタマーを、たやすく制作することができる。本明細書で開示される主題の方法を使用して、これらの分子の各々を、関連するリボザイムのモジュレーターとして使用することができる。例えば、有機分子、ヌクレオチド、アミノ酸、ポリペプチド、細胞表面上の標的特徴、イオン、金属、塩、糖は全て、それぞれのリガンドに特異的に結合しうるアプタマーを単離するのに適することが示されている。例えば、Hoechst33258などの有機色素は、in vitroにおけるアプタマー選択のための標的リガンドとして使用されて成功している(WerstuckおよびGreen(1998年)、Science、282巻:296〜298頁)。また、ドーパミン、テオフィリン、スルホローダミンB、およびセルロースなど、他の有機低分子も、アプタマーの単離において、リガンドとして使用されている。また、カナマイシンA、リビドマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンB、ビオマイシン、クロラムフェニコール、およびストレプトマイシンなどの抗生剤に対するアプタマーも単離されている。低分子を認識するアプタマーの総説については、Famulok(1999年)、Science、9巻:324〜9頁を参照されたい。
【0136】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される主題のアプタマー調節型リボザイムのアプタマーのリガンドは、細胞透過性の有機低分子である。翻訳に対する一般的な阻害効果を有さない有機低分子が、リガンドとして好ましい。低分子はまた、所望レベルの翻訳の阻害を達成するのに十分な、in vivoにおける存続を呈示することも好ましい。また、分子をスクリーニングして、例えば、経口投与の後で、バイオアベイラビリティーを示す分子を同定することもできる。本明細書で開示される主題のある特定の実施形態では、リガンドは、非毒性である。リガンドは任意選択で、例えば、ステロイドを含む薬物でありうる。しかし、遺伝子発現を制御する方法の一部では、リガンドは、薬理学的に不活性であることが好ましい。一部の実施形態では、リガンドは、細胞内のその存在が、疾患または病理学的状態を指し示すポリペプチドである。他の実施形態では、アプタマーのリガンドは、クロラムフェニコールなどの抗生剤である。代替的な実施形態では、アプタマーのリガンドは、Hoeschst色素33258などの有機色素である。さらに別の実施形態では、リガンドは、金属イオンでありうる。具体的な実施形態では、アプタマー調節型核酸のアプタマードメインは、カフェインへの結合に応答する。
【0137】
in vivoまたはin vitro(最も典型的には、in vitro)における、SELEXとして公知の選択技法(Ellingtonら(1990年)、Nature、346巻、818〜22頁;およびTuerkら(1990年)、Science、249巻、505〜10頁)を援用することにより、特定のリガンドに結合するアプタマーを開発することが典型的である。アプタマーを制作する方法はまた、例えば、米国特許第5,582,981号;PCT公開第WO00/20040号;米国特許第5,270,163号;LorschおよびSzostak(1994年)、Biochemistry、33巻:973頁;Mannironiら(1997年)、Biochemistry、36巻:9726頁;Blind(1999年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、96巻:3606〜3610頁;HuizengaおよびSzostak(1995年)、Biochemistry、34巻:656〜665頁;PCT公開第WO99/54506号、同第WO99/27133号、同第WO97/42317号;ならびに米国特許第5,756,291号においても記載されている。
【0138】
一般に、それらの最も基本的な形態において、アプタマーを同定するための、in vitroにおける選択技法は、まず、所望の長さのオリゴヌクレオチドの大規模なプールであって、ランダム化または突然変異誘発された少なくとも一部の領域を含有するプールを調製するステップを伴う。例えば、アプタマー選択のための一般的なオリゴヌクレオチドプールは、20〜100のランダム化されたヌクレオチドの領域であって、両方の末端が、約15〜25ヌクレオチド長の領域であり、PCRプライマーの結合に有用な、規定された配列の領域で挟まれた領域を含有しうるであろう。選択された核酸配列の、信頼できる、効率的な増幅を可能とする、任意の手段を援用しうるが、オリゴヌクレオチドプールは、標準的なPCR技法を使用して増幅する。次いで、DNAプールを、in vitroにおいて転写して、RNA転写物を作製する。次いで、別の分子(例えば、タンパク質または任意の標的分子)に特異的に結合するそれらの能力に基づく核酸の選択を可能とする、任意のプロトコールを使用しうるが、RNA転写物を、アフィニティークロマトグラフィーにかけることができる。アフィニティークロマトグラフィーの場合、転写物は、カラムに通すか、または標的リガンドを固定化させた磁気ビーズなどと接触させることが最も典型的である。プール内のRNA分子であって、リガンドに結合したRNA分子は、カラム上またはビーズ上に保持されるが、結合しなかった配列は、洗い流される。次いで、リガンドに結合するRNA分子を逆転写させ、PCRにより再度増幅する(通例、溶出の後で)。次いで、選択されたプール配列を、同じ種類の選択の別のラウンドにかける。プール配列は、選択手順の、のべ約3つ〜10の反復ラウンドにかけることが典型的である。次いで、標的リガンドのアプタマーとして作用することが可能なRNA分子の配列を同定する標準的な手順を使用して、cDNAを、増幅、クローニング、およびシークェンシングする。アプタマー配列の同定に成功したら、突然変異誘発されたアプタマー配列を含むオリゴヌクレオチドのプールから始まる、選択のさらなるラウンドを実施することにより、アプタマーをさらに最適化することができる。本明細書で開示される主題における使用のために、アプタマーは、正常な生理学的状態を模倣する塩濃度および温度の存在下で、リガンドへの結合について選択することが好ましい。
【0139】
一般に、アプタマーがなおも入手可能であるのかどうかについて言及せずに、適切なリガンドを選択することができる。大半の場合において、当業者は、えり抜きのリガンドに結合するアプタマーを得ることができる。in vitroにおける選択工程の固有の性格は、どのような種類の構造が、所望のリガンドに結合しうるのかについての先行の知見が全く不足しているにもかかわらず、所望のリガンドに結合する、適切なアプタマーの単離を可能とする。
【0140】
アプタマーが、本明細書で開示される主題における使用に適するためには、本明細書で開示される主題のアプタマー調節型リボザイムを、「オン」状態と「オフ」状態との間で切り換えるか、またはアプタマー調節型リボザイムの機能レベルをチューニングするように、アプタマーの、リガンドに対する結合アフィニティーは、十分に大きくなければならず、そのリガンドに結合した場合に、アプタマーにより形成される構造も、十分に有意義でなければならない。
【0141】
アプタマーと、会合するリガンドとについての会合定数は、リガンドが機能して、アプタマーに結合し、リガンドを投与したときに得られるリガンドの濃度で、所望の効果を及ぼすような会合定数であることが好ましい。in vivoにおける使用では、例えば、会合定数は、結合が、血清中または他の組織内で達成されうるリガンドの濃度を十分に下回る濃度で生じるような会合定数であるものとする。好ましくは、in vivoにおける使用に要請されるリガンド濃度はまた、生物に対して所望されない効果を及ぼしうる濃度を下回る濃度でもある。
【0142】
したがって、ある特定の実施形態は、1または複数のあらかじめ選択されたリガンドまたは所定のリガンドに対して応答性であるアプタマーまたはアプタマードメインをデザインし、選択する方法を提供する。対象のアプタマー調節型リボザイムはまた、それらの切換え挙動が、リガンドへの結合に対して概ね応答性となるようにも「チューニング」することができる。アプタマー調節型リボザイムはまた、アプタマードメインの結合アフィニティーが、そのリガンドに対して概ね感受性となるようにも「チューニング」することができる。例えば、アプタマー調節型リボザイム内の分子内二重鎖形成、ならびに他の二次構造および三次構造についての熱力学特性は、アプタマードメインが、リガンドへの結合に概ね適するように、すなわち、解離定数(K
d)または他の反応速度パラメータ(K
on速度およびK
off速度など)に顕示されうる通りに変更することができる。代替的に、ハイブリダイゼーション、ならびにリボザイムドメインの二次構造および三次構造をもたらしうる、他の分子内相互作用が変更されても、リボザイムドメインのアロステリック変化は、リガンドへの結合に対して概ね応答性でありうる。当技術分野では、核酸構造の熱力学特性を変更するためのフォワードエンジニアリング戦略が周知である。例えば、相補的な核酸対合の増大は、リボザイムドメインまたはアプタマードメインの安定性を増大させうる。
【0143】
III.神経変性疾患を処置するための方法
本明細書で開示される主題はまた、神経変性疾患、神経変性障害、または神経変性状態を処置するための方法も提供する。一部の実施形態では、本明細書で開示される主題は、それを必要とする被験体における眼の神経変性疾患を処置するための方法であって、(a)i)CRISPR−Cas系のガイドRNA(gRNA)をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列に作動可能に連結したH1プロモーターであって、gRNAが、被験体の細胞内のDNA分子の標的配列とハイブリダイズし、DNA分子が、細胞内で発現する1または複数の遺伝子産物をコードする、H1プロモーターと;ii)細胞内で作動可能な調節エレメントであって、Cas9タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結した調節エレメントとを含む1または複数のベクターを含む非自然発生のCRISPR−Cas系であって、構成要素(i)および(ii)が、系の同じベクターまたは異なるベクターに配置され、gRNAが、標的配列をターゲティングし、これとハイブリダイズし、Cas9タンパク質が、DNA分子を切断して、1または複数の遺伝子産物の発現を変更する、CRISPR−Cas系を用意するステップと;(b)被験体に有効量の系を投与するステップとを含む方法を提供する。
【0144】
「神経変性疾患、神経変性障害、または神経変性状態」とは、ニューロンまたは網膜光受容体細胞など、他の神経細胞の変性または機能不全と関連する疾患、障害、または状態(ニューロパシーを含む)を意味する。神経変性疾患、神経変性障害、または神経変性状態は、ニューロンの機能の低下もしくは機能不全、またはニューロンもしくは他の神経細胞の喪失が生じうる、任意の疾患、障害、または状態でありうる。
【0145】
このような疾患、障害、または状態は、緑内障、ならびに筋委縮性側索硬化症(ALS)、三叉神経痛、舌咽神経痛、ベル麻痺、重症筋無力症、筋ジストロフィー、進行性筋委縮症、原発性側索硬化症(PLS)、偽性延髄麻痺、進行性延髄麻痺、脊髄性筋委縮症、遺伝性筋委縮症、椎間板症候群、頚椎症、神経叢障害、胸郭出口症候群、末梢神経障害、ポルフィリン症(prophyria)、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、パーキンソンプラス疾患、多系統委縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脱髄疾患、ギラン−バレー症候群、多発性硬化症、シャルコー−マリー−トゥース病、プリオン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、ゲルストマン−ストロイスラー−シャインカー症候群(GSS)、致死性家族性不眠症(FFI)、ウシ海綿状脳症(BSE)、ピック病、てんかん、およびAIDS認知症複合など、神経系の神経変性疾患、神経変性障害、もしくは神経変性状態、またはこれらと関連する神経系の神経変性疾患、神経変性障害、もしくは神経変性状態を含むがこれらに限定されない。
【0146】
また、アルコール依存症、アレクサンダー病、アルパース病、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(シュピールマイヤー−フォークト−シェーグレン−バッテン病としてもまた公知である)、カナバン病、コケイン症候群、糖尿病性ニューロパシー、前頭側頭葉変性症、HIV関連認知症、ケネディー病、クラッベ病、神経ボレリア症、マシャド−ジョゼフ病(3型脊髄小脳性運動失調症)、ウェット型黄斑変性またはドライ型黄斑変性、ニーマンピック病、ペリツェウス−メルツバッハー病、色素性網膜炎および関連疾患などの光受容体変性疾患、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性連合性脊髄変性症、シュピールマイヤー−フォークト−シェーグレン−バッテン病(バッテン病としてもまた公知である)、脊髄小脳性運動失調症(多様な特徴を伴う複数の種類)、スティール−リチャードソン−オルゼウスキー病、ならびに脊髄癆など、神経系の他の神経変性疾患、神経変性障害、もしくは神経変性状態、またはこれらと関連する神経系の他の神経変性疾患、神経変性障害、もしくは神経変性状態も含まれる。
【0147】
眼関連神経変性の例は、緑内障、格子状ジストロフィー、色素性網膜炎、加齢黄斑変性(AMD)、ウェット型AMDまたはドライ型AMDと関連する光受容体変性、色素性網膜炎(RP)など、他の網膜変性、視神経ドルーゼン、視神経症、および多発性硬化症から生じる視神経炎などの視神経炎を含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、眼の神経変性疾患は、緑内障、網膜変性、および加齢黄斑変性からなる群から選択される。一部の実施形態では、眼の神経変性疾患は、色素性網膜炎(RP)である。
【0148】
本明細書で開示される主題に従い防止または処置されうる、異なる種類の緑内障の非限定的な例は、原発性緑内障(原発性開放隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障、慢性単性緑内障、および単性緑内障としてもまた公知である)、低眼圧緑内障、原発性閉塞隅角緑内障(primary angle−closure glaucoma)(原発性閉塞隅角緑内障(primary closed−angle glaucoma)、狭隅角緑内障、瞳孔ブロック緑内障、および急性うっ血緑内障としてもまた公知である)、急性閉塞隅角緑内障、慢性閉塞隅角緑内障、間欠性閉塞隅角緑内障、慢性開放隅角緑内障(chronic open-angle closure glaucoma)、色素性緑内障、落屑緑内障(偽落屑緑内障または水晶体嚢緑内障としてもまた公知である)、発達緑内障(例えば、原発性先天性緑内障および乳児緑内障)、続発性緑内障(例えば、炎症性緑内障(例えば、ブドウ膜炎およびフックス虹彩毛様体炎))、水晶体性緑内障(例えば、成熟白内障を伴う閉塞隅角緑内障、水晶体嚢の破嚢に続発する水晶体過敏性緑内障、水晶体中毒による線維柱帯の目詰まりに起因する水晶体融解緑内障、および水晶体亜脱臼)、眼内出血に続発する緑内障(例えば、前房出血および溶血緑内障(erythroclastic glaucoma)としてもまた公知の溶血緑内障(hemolytic glaucoma))、外傷性緑内障(例えば、隅角後退緑内障、前房隅角の外傷性後退、術後緑内障、無水晶体性瞳孔ブロック、および毛様体ブロック緑内障)、血管新生緑内障、薬物誘導性緑内障(例えば、コルチコステロイド誘導性緑内障およびアルファ−キモトリプシン緑内障)、中毒性緑内障、ならびに眼内腫瘍、網膜剥離、重度の眼化学火傷、および虹彩萎縮と関連する緑内障を含む。ある特定の実施形態では、神経変性疾患、神経変性障害、または神経変性状態は、過剰な血管新生と関連しない疾患、障害、または状態、例えば、血管新生緑内障ではない緑内障である。
【0149】
本明細書で使用される「障害」という用語は一般に、同定される標的または経路のうちの1つに対する化合物による処置から利益を得る任意の状態であって、同定される標的または経路のうちの1つに対する有効量の化合物、または薬学的に許容されるその塩により処置されうる、任意の疾患、障害、または状態を含む状態を指す。
【0150】
本明細書で使用される「〜を処置すること」という用語は、このような用語が適用される疾患、障害、もしくは状態、またはこのような疾患、障害、もしくは状態の、1もしくは複数の症候もしくは症状(例えば、網膜光受容体細胞の機能不全および/または死を引き起こす疾患または障害)を転導するか、緩和するか、その進行を阻害するか、これを防止するか、またはその可能性を低減することを含みうる。一部の実施形態では、処置により、網膜光受容体細胞の機能不全および/または死を低減する。例えば、処置により、網膜光受容体細胞の機能不全および/または死を、処置を受ける前の被験体または処置を受けない被験体における、網膜光受容体細胞の機能不全および/または死と比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、66%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはこれを超えて低減することができる。一部の実施形態では、処置により、被験体における網膜光受容体細胞の機能不全および/または死を完全に阻害する。本明細書で使用される「網膜光受容体細胞」とは、網膜内で見出される、特化した種類のニューロンであって、光情報伝達が可能なニューロンである。一部の実施形態では、少なくとも1つの遺伝子産物は、ロドプシンである。
【0151】
一部の実施形態では、被験体へ投与するステップの前に、系を、単一のアデノ随伴ウイルス(AAV)粒子中にパッケージングする。一部の実施形態では、被験体へ投与するステップを、網膜下注射により行う。処置、投与、または治療は、連続的な場合もあり、間欠的な場合もある。連続的処置、連続的投与、または連続的治療とは、少なくとも毎日のベースで、処置中に1日または複数日の中断を伴わない処置を指す。間欠的処置もしくは間欠的投与、または間欠式の処置もしくは投与とは、連続的ではなく、周期的な処置を指す。本明細書で開示される方法に従う処置は、疾患、障害、または状態からの完全な軽快または治癒を結果としてもたらす場合もあり、疾患、疾患、または状態の1または複数の症候の部分的な改善を結果としてもたらす場合もあり、一時的な処置の場合もあり、恒久的な処置の場合もある。「処置」という用語はまた、予防、治療、および治癒を包摂することも意図する。
【0152】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、有益な結果または所望の結果を果たすのに十分な薬剤量を指す。治療有効量は、当業者がたやすく決定しうる、処置される被験体および疾患状態、被験体の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式などのうちの1または複数に応じて変動しうる。用語はまた、本明細書で記載されるイメージング方法のうちのいずれか1つによる検出のための画像をもたらす用量にも適用される。具体的用量は、選択される特定の薬剤、従う投与レジメン、他の化合物と組み合わせて投与するのかどうか、投与回数、イメージングされる組織、および保有される物理的送達系のうちの1または複数に応じて変動しうる。
【0153】
本明細書では、「被験体」および「患者」という用語を互換的に使用する。それらの多くの実施形態における、本明細書で開示される方法により処置される被験体は、ヒト被験体であることが所望されるが、本明細書で記載される方法は、「被験体」という用語に含まれることが意図される、全ての脊椎動物種に関して有効であることを理解されたい。したがって、「被験体」は、既存の状態もしくは疾患の処置、または状態もしくは疾患の発症を防止するための予防的処置などの医療目的のヒト被験体を含む場合もあり、医療目的、獣医療目的、または開発目的の動物被験体を含む場合もある。適切な動物被験体は、霊長動物、例えば、ヒト、サル、類人猿など;ウシ科動物、例えば、畜牛、役牛など;ヒツジ科動物、例えば、ヒツジなど;ヤギ科動物、例えば、ヤギなど;ブタ科動物、例えば、ブタ、成豚など;ウマ科動物、例えば、ウマ、ロバ、シマウマなど;野猫、飼い猫を含むネコ科動物;イヌを含むイヌ科動物;ウサギ、野兎などを含むウサギ目動物;およびマウス、ラットなどを含む齧歯動物を含むがこれらに限定されない哺乳動物を含む。動物は、トランスジェニック動物でありうる。一部の実施形態では、被験体は、胎児被験体、新生児被験体、乳児被験体、青少年被験体、および成人被験体を含むがこれらに限定されないヒト被験体である。さらに、「被験体」は、状態もしくは疾患に罹患している患者、または状態もしくは疾患に罹患していることが疑われる患者を含みうる。
【0154】
IV.一般的定義
本明細書では、特殊な用語を援用するが、それらは、総称的意味および記載的意味だけで使用されるものであり、限定を目的とするものではない。そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての技術用語および学術用語は、本明細書で記載される主題が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0155】
年来の特許法の慣行に従い、「ある(a)」、「ある(an)」、および「その」という用語は、特許請求の範囲を含む本出願で使用される場合、「1または複数の」を指す。こうして、例えば、「対象」に対する言及は、文脈により反対のことが明らかにされない限りにおいて(例えば、複数の対象)、複数の対象などを含む。
【0156】
本明細書および特許請求の範囲を通して、「〜を含む(comprise)」、「〜を含む(comprises)」、および「〜を含むこと」という用語は、文脈によりそうでないことが要請される場合を除き、非除外的な意味で使用される。同様に、リスト内の項目の列挙が、他の類似の項目であって、列挙される項目を代替する場合もあり、これらに付加される場合もある、類似の項目の除外とはならないように、「〜を含む(include)」という用語、およびその文法的変化形も、非限定的であることを意図する。
【0157】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的では、そうでないことが指示されない限りにおいて、量(amounts)、サイズ、寸法、比率、形状、処方、パラメータ、百分率、パラメータ、量(quantities)、特徴を表す全ての数、ならびに本明細書および特許請求の範囲で使用される他の数値は、「約」という用語が、値、量、または範囲と共に明示的に現れない場合であってもなお、全ての場合に、「約」という用語により修飾されていると理解するものとする。したがって、反対のことが指し示されない限りにおいて、以下の明細書および付随の特許請求の範囲で記される数値パラメータは、正確な数値ではなく、そうでなくてもよく、本明細書で開示される主題により得ようとする所望の特性に応じて、公差、換算係数、丸め誤差、測定誤差など、および当業者に公知の他の因子を反映して、所望の通りに、概数の場合もあり、かつ/またはより大きい場合もあり、より小さい場合もある。例えば、値に言及する場合の「約」という用語は、このような変動は、開示される方法を実施するか、または開示される組成物を援用するのに適切であるので、指定された量からの、一部の実施形態では、±100%、一部の実施形態では、±50%、一部の実施形態では、±20%、一部の実施形態では、±10%、一部の実施形態では、±5%、一部の実施形態では、±1%、一部の実施形態では、±0.5%、一部の実施形態では、±0.1%の変動を包摂することを意図しうる。
【0158】
さらに、1または複数の数または数値範囲との関連で使用される場合の「約」という用語は、範囲内の全ての数を含む、全てのこのような数を指すと理解すべきであり、記される数値の上限および下限を拡張することにより、その範囲を改変する。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内およびその範囲内の任意の範囲に包含される全ての数、例えば、それらの分数を含む全整数を含む(例えば、1〜5の列挙は、1、2、3、4、および5のほか、その分数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1なども含む)。
【実施例】
【0159】
以下の実施例は、本明細書で開示される主題の代表的な実施形態を実施するための指針を、当業者に提供するために組み入れる。本開示および当技術分野における技術の一般的な水準に照らして、当業者は、以下の実施例が、例示的であることだけを意図するものであり、本明細書で開示される主題の範囲から逸脱しない限りにおいて、数値的な変化、改変、および変更を援用しうることを察知することができる。以下の合成についての記載および具体例は、例示だけを目的とすることを意図するものであり、本開示の化合物が他の方法でも制作されるように、いかなる形でも限定的とはみなさないものとする。
【0160】
(実施例1)
方法
プラスミドの構築:H1 gRNA発現構築物(下記の表1、2、および3を参照されたい)を作出するために、重複オリゴヌクレオチドをアセンブルして、76bpのgRNA足場およびpol III終結シグナルと融合させたH1プロモーターを創出した。H1プロモーターとgRNA足場との間に、BamHI部位を組み込んで、ターゲティング配列の挿入を可能とした。次いで、H1::gRNA足場::pol IIIターミネーター配列を、pCR4−Blunt(Invitrogen、Carlsbad、CA)中にTOPOクローニングし、シークェンシングおよび検証した。結果として得られるベクターは、リバース配向性である(下記を参照されたい)。本研究で使用される多様なgRNAを作出するために、重複オリゴヌクレオチドをアニールさせ、2ステップ増幅用のPhusion Flash DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)を使用してPCRにより増幅し、その後、2倍容量の25%のPEGおよび1.5MのNaClと混合した、Carboxylate−Modified Sera−Mag Magnetic Beads(Thermo Fisher Scientific)を使用して、精製した。次いで、精製されたPCR産物を、H
2O中に再懸濁させ、NanoDrop 1000(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化した。gRNA発現構築物は、U6発現のための、AflIIで消化するプラスミド(#41824、Addgene、Cambridge MA)、またはH1発現のための、直前で記載したBamHIによるプラスミドの消化について若干改変した、Gibson Assembly(New England Biolabs、Ipswich、MA)(Gibsonら(2009年)、Nature Methods、6巻:343〜345頁)を使用して作出した。総反応容量は、20μlから2μlに低減された。
【0161】
細胞培養物:hESC細胞系H7およびIMR−90 iPS細胞(WiCell、Madison WI)を、既に記載されたプロトコール(Walkerら(2010年)、Nat. Commun.、1巻:71頁;Maruottiら(2013年)、Stem Cells Translational Medicine、2巻:341〜354頁)に従う、10%のCO
2/5%のO
2によるインキュベーター内、mTeSR1培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC)中、Growth Factor Reduced Matrigel(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)上のクローン繁殖により維持した。継代培養のために、hESCコロニーを、まず、mTesR1中に5μMのブレビスタチン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)と共にインキュベートし、次いで、Accutase(Sigma−Aldrich)による5〜10分間の処理後に回収した。細胞集塊を、単一細胞懸濁液に静かに解離させ、遠心分離によりペレット化した。その後、hPSCを、ブレビスタチンを伴うmTeSR1中に再懸濁させ、1cm
2当たりの細胞およそ1,000〜1,500個で播種した。継代の2日後、培地を、mTeSR1(ブレビスタチンを伴わない)で置きかえ、毎日交換した。
【0162】
ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞系293T(Life Technologies、Grand Island、NY)を、10%のウシ胎仔血清(Gibco、Life Technologies、Grand Island、NY)および2mMのGlutaMAX(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中、5%のCO
2/20%のO
2を伴う37℃で維持した。
【0163】
H7細胞の遺伝子ターゲティング:hESC細胞を、電気穿孔の24時間前に、10μMのRho Kinase阻害剤(DDD00033325、EMD Millipore、Billerica、MA)中で培養した。電気穿孔は、製造元の指示書に従い、Neonキット(Invitrogen)を使用して実施した。略述すると、電気穿孔の当日、hESCを、コロニーがリフトするまで、1〜2分間にわたり、Accutase(Sigma−Aldrich)で消化した。重要なことは、コロニーを、単一細胞懸濁液に解離させなかったことである。コロニーを採取した後で、ウェットペレットを、氷上で15分間にわたり保ち、次いで、遺伝子ターゲティングプラスミドを含有する電気穿孔緩衝液中に再懸濁させた。電気穿孔パラメータは、以下:電圧:1400ms;間隔:30ミリ秒;1パルスの通りであった。電気穿孔に続き、細胞コロニーを、10μMのRho Kinase阻害剤を含有するmTeSR1培地にゆっくりと移し、次いで、室温で20分間にわたり保ってから、Matrigelでコーティングしたディッシュに播種し、さらに培養した。
【0164】
クローンから導出されたコロニーについて解析するために、電気穿孔されたhESCを、サブコンフルエンシーまで増殖させ、前段落で記載した通りに継代培養し、35mmのディッシュ1枚当たりの細胞500個の密度で播種した。その後、単一のコロニーを、手作業の採集により単離し、さらに培養した。
【0165】
293T細胞のトランスフェクションのために、ウェル1つ当たりの細胞約100,000個を、トランスフェクションの24時間前に、24ウェルプレート(Falcon、Corning、NY)内に播種した。細胞は、製造元の推奨するプロトコールに従い、Lipofectamine LTX Plus Reagent(Invitrogen)を使用して、四連でトランスフェクトした。24ウェルプレートの各ウェルには、400ngのCas9プラスミドおよび200ngのgRNAプラスミドを、0.5μlのPlus Reagentおよび1.5μlのLipofectamine LTX試薬と混合した。
【0166】
構成的に発現させたGFP ESC細胞系の作出:H7ヒトESC細胞系(WiCell)を、Matrigel基質上のmTeSR1(Stem Cell Technologies)培地中で維持した。細胞を継代培養する前に、細胞を、ブレビスタチンによる短時間(>5分間)の前処理にかけて、細胞生存率を増大させ、Accutaseで7分間にわたり処理し、単一細胞懸濁液に練和し、等容量のmTesRでクェンチングし、80×gで5分間にわたりペレット化させ、ブレビスタチンを含有するmTesR中に再懸濁させた。細胞1×10
6個をペレット化させ、培地を注意深く除去し、細胞を、10〜15分間にわたり、氷上に置いた。AAVS1セーフハーバー遺伝子座に対する相同性を含有する、10μgのAAV−CAGGSEGFPドナーベクター(#22212、Addgene)に加えて、R緩衝液中に5μgずつのhAAVS1 1R+L TALEN(#35431および35432、Addgene)(Hockemeyerら(2009年)、Nat. Biotechnol.、27巻:851〜857頁;Sanjanaら(2012年)、Nature Protocols、7巻:171〜192頁)を、以下のパラメータ:1500V、パルス1つ当たり20ミリ秒、および1パルスで、Neon Transfection System(Life Technologies)を使用する、100μl型のチップにより電気穿孔した。次いで、細胞を、1mlの培地に静かに添加し、室温で15分間にわたりインキュベートし、次いで、mTeSRおよび5μMのブレビスタチンを含有する、Matrigelでコーティングした35mmのディッシュに播種した。2日後、細胞を、35mmのディッシュ1枚当たりの細胞1×10
4個の密度で播種し、その後、時間的に安定なクローン亜細胞系を、蛍光装備型Nikon TS100落射蛍光顕微鏡により、手作業で選択した。
【0167】
ゲノム改変のためのSurveyorアッセイおよびシークェンシング解析:Surveyor解析のために、細胞を、QuickExtract溶液(Epicentre、Madison、WI)中に再懸濁させ、65℃で15分間にわたりインキュベートし、次いで、98℃で10分間にわたりインキュベートすることにより、ゲノムDNAを抽出した。抽出物溶液は、DNA Clean and Concentrator(Zymo Research、Irvine、CA)を使用して清浄化させ、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific)により定量化した。CRISPR標的部位を取り囲むゲノム領域は、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して、100ngのゲノムDNAから増幅した。複数の独立のPCR反応物をプールし、製造元のプロトコール(Qiagen、Valencia、CA)に従い、Qiagen MinElute Spin Columnを使用して、精製した。12.5mMのTris−HCl(pH8.8)、62.5mMのKCl、および1.875mMのMgCl
2中に、400ngのPCR産物を含有する、8μlの容量を変性させ、ゆっくりと:95℃で10分間、1秒当たり−1.0℃の勾配で95℃から85℃へ、85℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で85℃から75℃へ、75℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で75℃から65℃へ、65℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で65℃から55℃へ、55℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で55℃から45℃へ、45℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で45℃から35℃へ、35℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で35℃から25℃へ再アニールさせ、次いで、4℃に保ち、ヘテロ二重鎖の形成を可能とした。1μlのSurveyorエンハンサーおよび1μlのSurveyor Nuclease(Transgenomic、Omaha、NE)を、各反応物に添加し、42℃で60分間にわたりインキュベートし、その後、1μlのStop Solutionを、反応物に添加した。DNA 1000チップ(Agilent、Santa Clara、CA)を使用して、1μlの反応物を、2100 Bioanalyzer上で定量化した。ゲル解析のために、6倍濃度のローディング緩衝液(New England Biolabs)2μlを、残りの反応物に添加し、臭化エチジウムを含有する3%のアガロースゲルにロードした。ゲルは、Gel Logic 200 Imaging System(Kodak、Rochester、NY)上で視覚化し、ImageJ v.1.46を使用して定量化した。NHEJ頻度は、二項式から導出される方程式:
【数1】
[式中、「a」および「b」の値は、バックグラウンド控除後の切断断片の積分面積に等しく、「c」は、バックグラウンド控除後における非切断PCR産物の積分面積に等しい(Guschinら(2010年)、Methods in Molecular Biology、649巻:247〜256頁)]
を使用して計算した。
【0168】
フローサイトメトリー:ブレビスタチン処理に続き、サブコンフルエントのhESCコロニーを、Accutase処理により採取し、単一細胞懸濁液に解離させ、ペレット化させた。次いで、細胞を、Vybrant DyeCycle ruby stain(Invitrogen)を含有するLive Cell Solution(Invitrogen)中に再懸濁させ、Accuri C6フローサイトメーター(BD Biosciences)上で解析した。
【0169】
定量的リアルタイムqPCR:293T細胞は、トランスフェクションの24時間前に、12ウェルプレート(Falcon)中にウェル1つ当たりの細胞250,000個で播種した。細胞は、gRNAプラスミドの6用量滴定:各ウェル内に0ng、31.25ng、62.5ng、125ng、250ng、または500ngを伴う、製造元の推奨するプロトコールに従い、Lipofectamine LTX with Plus Reagent(Invitrogen)を使用して、三連でトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後、総RNAは、RNAzol RT(Molecular Research Center、Cincinnati、OH)を使用して単離し、Direct−zol RNA MiniPrep(Zymo)を使用して精製した。500ngの総RNAを、dsDNase(ArticZymes;Plymouth Meeting、PA USA)で処理して、残留ゲノムDNA夾雑物を除去し、製造元の推奨に従い、Superscript III逆転写酵素(Invitrogen)を使用して、20μlの反応物中で逆転写した。各反応では、0.1μMの以下のオリゴヌクレオチド;gRNA足場−
【化1】
を使用して、各反応物をプライミングした。下線を付した足場配列は、転写物の安定性のために付加されるアンカー配列を表す。各qPCR反応は、10μlの容量中で、250nMのオリゴヌクレオチドプライマーを含有するSsoAdvanced(商標)Universal SYBR(登録商標)Green Supermix(Biorad)と、上記による1:15の希釈率のRT反応産物1マイクロリットルとを使用する、Biorad CFX 96リアルタイムPCRマシンにより実行した。反応は、95℃の変性ステップ、54℃のアニーリングステップ、および60℃の伸長ステップを伴う、40サイクルにわたり実行した。以下のプライマー:F1for−GTTTTAGAGCTAGAAATAGCAAGTTAA(配列番号3)およびguideRNAscaffrev−AAGCACCGACTCGGTGCCAC(配列番号4)およびU6snRNAF−CTCGCTTCGGCAGCACATATACT(配列番号5)およびU6snRNARev−ACGCTTCACGAATTTGCGTGTC(配列番号6)を、ガイドRNAおよび参照遺伝子のそれぞれを検出するために使用した。各ガイドRNA試料についての相対標準化発現およびs.e.mは、Biorad社製統合型CFXマネージャーソフトウェアを使用して計算した。
【0170】
バイオインフォマティクス:ヒトゲノム内の全ての潜在的なCRISPR部位を決定するために、特注のPerlスクリプトを使用して、23マーのCRISPR配列部位である、GN
19NGGまたはAN
19NGGの両方の鎖および重複の発生を検索した。距離値の平均値および中央値を計算するために、予測されるCRISPRによる切出し部位をまず、PAM配列の上流の第3の塩基と第4の塩基との間で生じると規定した。配列を分取した後で、次いで、ゲノム内で隣接する、全てのgRNAの間の距離を計算した。このデータを、Rにインポートして、平均値および中央値の統計学的値を計算し、データをプロットした。平均値密度を計算するために、gRNAによる切出し部位を、ゲノムにわたりビニングし、発生頻度について計算した。ggplot2パッケージまたはCircosを使用して、このデータを、Rによりプロットし、環状プロットを生成した(Krzywinskiら(2009年)、Genome Research、19巻:1639〜1645頁)。ヒト遺伝子内または疾患遺伝子座における発生を計算するために、BEDToolsのユーティリティーであるIntersectBED(QuinlanおよびHall(2010年)、Bioinformatics、26巻:841〜842頁)を使用して、UCSC Genome Browserから読み出されたRefSeq BEDファイルまたはOMIM(Online Mendelian Inheritance in Man、OMIM、McKusick−Nathans Institute of Genetic Medicine、Johns Hopkins University(Baltimore、MD)、2013年)から読み出されたBEDファイルとの重複の発生を見出した。本研究で使用されたゲノムは、ヒト(hg19)、マウス(mm10)、ラット(rn5)、ウシ(bosTau7)、ニワトリ(galGal4)、ゼブラフィッシュ(dr7)、ショウジョウバエ(dm3)、C.elegans(ce10)、およびS.cerevisiae(sacCer3)であった。
【0171】
【表1】
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
結果
CRISPR/Cas9ターゲティングの現時点での限界を拡張するために、U6 pol IIIではなく、H1 pol IIIを、代替的なプロモーターとして使用しうるのかどうかについて調べた(Baerら(1990年)、Nucleic Acids Res.、18巻:97〜103頁)。H1は、プリン(ヌクレオチドR)のいずれかを+1位置に配置した転写物を発現させうるため、S.pyogenes Cas9を伴い、AN
19NGGおよびGN
19NGG部位の両方における切断を可能とすることにより、CRISPRターゲティング空間を拡大しうることが仮定された(
図1A)。H1から発現させるgRNAによる部位特異的切断を実証するため、H7ヒト胚性幹細胞系(hESC;
図1B)内のAAVS−1遺伝子座において統合されたGFP標的遺伝子の、CRISPR媒介型切断を測定するレポーターアッセイを開発した(Hockemeyerら(2009年)、Nat. Biotechnol.、27巻:851〜857頁)。エラープローン非相同末端結合(NHEJ)の頻度に代わる代理指標として、コード配列の妨害に起因するGFP蛍光の喪失を測定した(GFP蛍光を妨害しないインフレームの突然変異またはインデルは、検出されないので、アッセイが、NHEJを過小評価することは注目に値する)(
図1Bおよび
図1C)。H7細胞を、等モル比のCas9発現プラスミドおよびgRNA発現プラスミドで電気穿孔し、コロニー形成の後で、細胞を、GFP蛍光について視覚化した。陰性対照の電気穿孔とは対照的に、U6プロモーターおよびH1プロモーターからの、全ての被験gRNA構築物は、ターゲティングされた突然変異を経た細胞内のGFPシグナルのモザイク喪失を示した(
図1Cおよび不図示のデータ)。核染色による総細胞数の定量化は、フローサイトメトリーによる、GFP蛍光についての、細胞ベースの解析を可能とした。GFP蛍光の喪失により実証される通り、100%の構築物が、NHEJを結果としてもたらしたが、効率の範囲は、U6構築物およびH1構築物の両方で異なった(
図1C、右および不図示のデータ)。U6プロモーターまたはH1プロモーターからgRNAを発現させることにより、これは、GFP遺伝子の突然変異誘発が、GN
19NGGまたはAN
19NGG部位のそれぞれにおいて生じうることを実証する。
【0175】
これらの結果を確認し、別の細胞系によりこれを拡大するために、同じ遺伝子座においてGFPを発現させるHEK−293細胞系を、上記と同じgRNA構築物でターゲティングした。Surveyor解析(Qiuら(2004年)、BioTechniques、36巻:702〜707頁)により、プロモーターの種類およびターゲティングの場所により変動する、編集効率の範囲を検出した(
図1Dおよび
図2)。非改変IMR90.4人工多能性細胞(hiPSC)を使用することにより、PPP1R12C遺伝子のイントロン領域内のAAVS−1遺伝子座をターゲティングすることにより、内因性遺伝子を改変する能力もまた確認した。H1およびU6に駆動されるgRNAによるターゲティングされた切断が、Surveyorアッセイにより測定された効率と同等の効率で観察された(
図3A、
図3B、および
図3C)。
【0176】
ターゲティング空間の潜在的増大を決定するために、バイオインフォマティクス解析を実施して、ヒトゲノム内で利用可能なCRISPR部位を評価した。AN
19NGG部位は、GN
19NGG部位とほぼ同じ頻度で生じると予測されうるが、実際には、AN
19NGG部位は、15%多いことが見出され(
図4A、
図4B、
図4C、
図4D、
図5A、
図5B、
図5C、
図5D、
図5E、および
図5F)、こうして、特異性を、GN
19NGGから、RN
19NGGに変化させることにより、利用可能な部位の数が、倍加を超えて増大する(およそ115%の増大)。少数の例外(chr16、chr17、chr19、chr20、およびchr22)を除き、AN
19NGG部位は、各染色体において、GN
19NGG部位より高頻度で存在する。ゲノムワイドの平均ターゲティング密度を比較するために、ゲノム内で隣接するCRISPR部位の間の平均値距離を、GN
19NGG(59bp)、AN
19NGG(47bp)、およびRN
19NGG部位(26bp)(
図4B)について計算した。加えて、AN
19NGG部位は、ヒトゲノム内の関与性のターゲティング領域において、なおさらにエンリッチされた。ヒト遺伝子内のAN
19NGG部位の20%の増大、およびOMIMデータベースから得られる疾患遺伝子座におけるAN
19NGG部位の21%の増大が見出された(
図4C)。また、ヒトゲノムに由来する1165のmiRNA遺伝子も検討したところ、これらの遺伝子のうちの221は、1または複数のAN
19NGG部位を介してターゲティングしうるが、GN
19NGG部位を介してはターゲティングしえないことが見出された(データは示さない)。相同組換えの効率が、切出し部位からの距離の増大と負に相関することを踏まえると、H1プロモーターの使用によるCRISPRターゲティング部位の増大は、より正確なゲノムのターゲティングおよび突然変異の補正を容易とする(Ranら(2013年)、Cell、6巻:1380〜1389頁)。
【0177】
CRISPR技術が、広範なモデル生物にわたるゲノムの操作のために、ますます活用されつつあるので、他のゲノムにおけるH1プロモーターの使用の潜在的影響を決定した。この解析は、H1プロモーターにおけるゲノム保存が高度である、他の5つの脊椎動物(マウス;ラット;ニワトリ;ウシ;およびゼブラフィッシュ)ゲノムにおいて実行した。全ての場合において、GN
19NGG部位と比較して多数のAN
19NGG部位:+9%のウシ;+14%のニワトリ;+19%のラット;+21%のマウス;および+32%のゼブラフィッシュが見出された(
図4C)。この夥多に対する1つの説明は、高AT含量に起因しうるであろう(
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、および
図6F)。ヒトゲノムでは、GN
19NGG部位およびAN
19NGG部位の発生を、AT含量に照らして標準化すると、頻度は同等に近づくが、これは、全てのゲノムには当てはまらない(
図6Aおよび
図6F)。しかしながら、これは、ヒトゲノムにおいて現在利用可能なCRISPRターゲティング空間を、倍加を超えて増大させ、他の全ての被験ゲノムにおいてもこれを同様に増大させる、H1プロモーターを使用することの有用性を実証する。
【0178】
次に、H1プロモーター構築物による、内因性遺伝子内のAN
19NGG部位をターゲティングする能力を実証した。H7細胞を使用して、網膜色素上皮内およびマクロファージ内の食作用と関与し、突然変異すると、網膜変性を引き起こす遺伝子である、MERTK遺伝子座の第2のエクソンをターゲティングした(D'Cruzら(2000年)、Human Molecular Genetics、9巻:645〜651頁)(
図7Aおよび
図7B)。全体的なターゲティング効率を推定するために、DNAを、電気穿孔された細胞集団から採取し、Surveyorアッセイを実施した。標的部位を取り囲む領域を、2つの独立のPCR反応で増幅し、9.5%および9.7%のインデル頻度を計算した(
図7B)。次に、42のランダムに選択されたクローンを単離し、Surveyor解析により、突然変異について調べた(データは示さない)。シークェンシングにより、42例中7例(16.7%)が、標的PAM部位の上流3〜4ヌクレオチド以内においてクラスターをなす突然変異を持することが明らかにされた。クローン7例中6例が、固有の突然変異を有し(クローン1例は、冗長であった)、これらのうちの3例は、予測されるMERTKヌル対立遺伝子を結果としてもたらす、二対立遺伝子性のフレームシフト突然変異であり、これは、ウェスタンブロット解析により確認された(
図7Cおよび
図7D)。まとめると、これらの結果は、内因性遺伝子座に配置されたAN
19NGG部位を、有効にターゲティングする能力を実証する。
【0179】
CRISPR−Cas9系によるオフターゲット突然変異の発生は、ますます大きな懸念となりつつあるので、上記で記載したGFP gRNA構築物をモデル系として使用して、H1プロモーターの使用が、オフターゲティングにいかなる影響を及ぼすのかについて検討した。Surveyor解析を使用して、バイオインフォマティクスにより、オフターゲット部位であることが予測される、3つのゲノム遺伝子座(GFP_11〜33、GFP_219〜197、およびGFP_315〜293)について検討した。これらの構築物のうちの2つ(GFP_219〜197、およびGFP_315〜293)は、両方のプロモーターによる発現を可能とする、GN
19NGG標的部位であった。AN
19NGG部位である1つ(GFP_11〜33)は、5’−Gヌクレオチドを付加することにより、U6プロモーターから発現させた。検討される3つのオフターゲット遺伝子座のいずれにおいても、オフターゲット切断は検出できなかった(データは示さない)。しかし、検出可能なオフターゲットの欠如は、部位の選択が、他のゲノムの遺伝子座に対する相同性の低さに基づきなされる、GFP gRNA標的の初期選択からも生じうるであろう。こうして、より厳密な課題は、高レベルのオフターゲットヒットを誘発することが具体的に公知であるターゲティング部位(Fuら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:822〜826頁;Pattanayakら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):839〜43頁;Choら(2014年)、Genome Research、24巻:132〜141頁)において、H1プロモーターからのgRNAの発現と、U6プロモーターからのgRNAの発現とを比較することであろうと推論した。さらに、H1プロモーターの5’ヌクレオチドの柔軟性により、GN
19NGG部位をターゲティングする、同一なgRNAについての、U6プロモーターとH1プロモーターとの間の直接的な比較も可能となった。Fuら(2013年)により既に報告されている2つの部位:VEGFA部位1(T1)およびVEGFA部位3(T3)について調べた(表4、
図8A、
図8B、
図8C、および
図8D)(Fuら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:822〜826頁;Choら(2014年)、Genome Research、24巻:132〜141頁)。gRNA濃度およびCas9濃度の増大は、オフターゲットヒットの増大を結果としてもたらすことが示されている(Fuら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:822〜826頁;Pattanayakら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):839〜43頁;Hsuら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):827〜32頁)ため、H1プロモーターからのgRNAの発現レベルを低下させる(Bodenら(2003年)、Nucleic Acids Res.、31巻:5033〜5038頁;Anら(2006年)、Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy、14巻:494〜504頁;Makinenら(2006年)、The Journal of Gene Medicine、8巻:433〜44頁)ことにより、オフターゲット効果もまた低減しうると推論した。qRT−PCRを使用して、H1プロモーターからのVEGFA T1 gRNAおよびU6プロモーターからのVEGFA T1 gRNAの相対レベルについて調べることから、H1プロモーターからの発現レベルの、予測される低減が確認された(
図8A)。VEGFA T1部位については、オンターゲット遺伝子座のほか、4つのオフターゲット遺伝子座における切出しの効率も調べた。U6プロモーターと比較して、オンターゲット遺伝子座における切出しは、同等であるか、またはわずかに低減されたが、H1プロモーターから発現するgRNAが、検討したオフターゲット遺伝子座において、より厳密であり、より大きな特異性を指し示したことは注目に値する(オフターゲット1:25%と対比した8%;オフターゲット2:20%と対比した検出不能;およびオフターゲット4:26%と対比した9%)(表4、
図8A、
図8B、
図8C、および
図8D)。VEGFA T3部位では、2つのプロモーター構築物の間の同等なターゲティング(26%)が検出されたが、ここでもまた、H1プロモーターについては、オフターゲット切出しレベルの低下が観察された(表4、
図8A、
図8B、
図8C、および
図8D)。H1プロモーターから発現するgRNAおよびU6プロモーターから発現するgRNAについてのさらなる研究を実施する必要があるが、データは、H1から発現させるgRNAによる特異性が、おそらくはより大きいことを示唆する。
【0180】
H1プロモーター手法の使用による、さらなるオフターゲティング関連の利点は、近年記載されている有望な手法であって、D10A Cas9突然変異体による協同作用的オフセットニッキングを援用して、潜在的オフターゲット効果を軽減する手法(Ranら(2013年)、Cell、6巻:1380〜1389頁;Maliら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):833〜8頁)に関する。この手法は、逆行鎖上に配向し、切出し部位からおよそ20bp以内にある、2つのフランキングCRISPR部位の同定を要請するので、厳密なターゲティングを必要とする(Ranら(2013年)、Cell、154巻(6号):1380〜9頁)。H1プロモーターの使用により、ターゲティング密度が増加すれば、適切なフランキング部位の同定の一助となることが予測されるであろう。
【0181】
in vitroおよびin vivoにおける、S.pyogenes Cas9ターゲティングについての証拠の蓄積は、Cas9:gRNAによる認識は、20塩基対のターゲティング部位の全体にわたり広がることを指し示す。第1に、in vitroにおけるgRNAの特異性について、>10
12の顕著に異なる変異体を調べる中で、1つの研究は、+1ヌクレオチドが、標的の認識において役割を果たすことを見出した。さらに、このデータによる位置特異性の計算は、5’ヌクレオチドが、標的の認識において、その3’側の隣接ヌクレオチドより大きな役割を寄与することを示すことから、CRISPR特異性についての「シード」モデルは、PAM近接ヌクレオチドの寄与を単純化し過ぎるきらいがあることが指し示される(Pattanayakら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):839〜4328頁)。第2に、CRISPR系の目的を転写の抑制に転じる、CRISPR干渉(CRISPRi)などの代替的な使用により、gRNAにおける5’側の短縮は、抑制を大幅に損ない、また、ミスマッチしたヌクレオチド(U6発現のためのG塩基のミスマッチなど)による5’側の伸長も、抑制効率を低減することが見出されたことから、長さ(20nt)および5’ヌクレオチドのコンテキストの両方が、適正なCas9ターゲティングに重要であることが示唆される(Ranら(2013年)、Cell、154巻(6号):1380〜9頁;Maliら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):833〜8頁;Larsonら(2013年)、Nature Protocols、8巻:2180〜2196頁;Qiら(2013年)、Cell、152巻:1173〜1183頁;Shanら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:686〜688頁)。最後に、gRNAの5’ヌクレオチドと、標的DNAの3’末端との有意義な接触がなされるので、結晶構造データもさらに、実験データおよびCas9内の5’ヌクレオチドの重要性を裏付ける(Jinekら(2014年)、Science、343巻:6176頁;Nishimasuら(2014年)、Cell、156巻:935〜949頁)。
【0182】
ターゲティング空間を増大させるためには、N.meningitidesおよびS.thermophilesにおける通り、代替的なCas9タンパク質の使用も有効であることが示されている(Houら(2013年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、110巻(39号):15644〜9頁;Esveltら(2013年)、Nature Methods、10巻(11号):1116〜21頁)。しかし、これらの代替的なタンパク質の潜在的可能性にもかかわらず、報告されている、他のII型系のPAMによる制限は、厳密な要件を有する(データは示さない;Congら(2013年)、Science、339巻:819〜823頁;Houら(2013年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、110巻(39号):15644〜9頁)。これに対し、H1プロモーターの使用によるgRNAの発現の改変は、PAMの差違にかかわらず、任意のCas9タンパク質によるターゲティングレパートリーを大幅に拡大することが予測されるであろう。オーソログのCas9タンパク質について、それぞれのgRNA標的(N.meningitidesについてのGN
23NNNNGATTと対比したAN
23NNNNGATT、およびS.thermophilusについてのN
17NNAGAAWと対比したAN
17NNAGAAW)を定量化したところ、5’−Aヌクレオチドを伴うgRNA部位において、64%および69%の増大が見出されたことから、代替的なCas9タンパク質を伴うH1プロモーターの使用を介する、ターゲティング空間の、なおより大幅な拡大が指し示される(表5)。植物において示唆される通り、異なるプロモーターの使用は、CRISPR部位の頻度を拡大しうる。U6プロモーターが、5’グアノシンヌクレオチドに制限されているのに対し、コメに由来するU3プロモーターは、5’アデノシンヌクレオチドに制約されていることから、異なる系において、ターゲティング空間を増大させるのに、異なるプロモーターに対する必要がさらに強調される(Shanら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:686〜688頁)。単一のプロモーター系を介して、AN
19NGG部位およびGN
19NGG部位(および、おそらく、CN
19NGG部位またはTN
19NGG部位(Tuschl(2002年)、Nat. Biotechnol.、20巻:446〜448頁))をターゲティングするのに、H1プロモーターの使用だけを利用しうることは簡便である(
図9Aおよび
図9B)。ひいては、これを援用して、現行のCas9変異体および部位の制限を変更した将来のCas9変異体のいずれのターゲティング空間も拡大することができる。
【0183】
慎重な部位選択、Cas9変異体の改善、gRNAアーキテクチャーの最適化、またはさらなる共因子を介して、CRISPRターゲティングを増強する結果として、ターゲティング配列を通した特異性の増大がもたらされ、5’ヌクレオチドの同一性が重要となる可能性が高い。これは、調査用ツールとしては、交絡突然変異を最小化しながら、より大規模なゲノムの取扱いを可能とし、将来の臨床的適用のためには、高忠実度の標的認識とカップリングさせた高ターゲティング密度が、安全で有効な治療剤を送達するのに最重要となろう。
【0184】
【表4】
【0185】
【表5】
【0186】
考察
CRISPRターゲティング空間の増大およびオフターゲット効果の潜在的可能性の低減は、ゲノムの操作について、広範な含意を有する。ターゲティング空間を増大させるためには、S.thermophilus(NNAGAAW)およびN.meningitides(NNNNGATT)における通り、代替的なCas9タンパク質の使用も有効であることが示されているが、これまでに報告されている、他のII型系のPAMによる制限は、厳密な要件を有し、したがって、単独で使用される場合、ターゲティングに利用可能な配列空間を低減する(データは示さないが、Congら(2013年)、Science、339巻:819〜823頁;Houら(2013年)、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、110巻(39号):15644〜9頁)。これに対し、H1プロモーターの使用によるgRNAの発現の改変は、任意のCas9タンパク質によるターゲティングレパートリーを大幅に拡大することが予測されるであろう。植物では、U6プロモーターが、5’グアノシンヌクレオチドに制限されているのに対し、コメに由来するU3プロモーターは、5’アデノシンヌクレオチドに制約されている。近年示唆されている通り、両方のプロモーターの使用は、植物ゲノム内のCRISPR部位の頻度を拡大しうるであろう(Shanら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻:686〜688頁)。単一のプロモーター系を介して、脊椎動物ゲノム内のAN
19NGG部位およびGN
19NGG部位をターゲティングするのに、H1プロモーターの使用だけを利用しうることは簡便である。ひいては、これを援用して、現行のCas9変異体および部位の制限を変更した将来のCas9変異体のいずれのターゲティング空間も拡大することができる。
【0187】
ZFN技術またはTALEN技術についてと同様に、潜在的オフターゲット効果を軽減する1つの手法は、Cas9突然変異体(D10A)による協同作用的オフセットニッキングを援用することでありうるであろう(Maliら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):833〜8頁;Ranら(2013年)、Cell、154巻(6号):1380〜9頁)。これは、逆行鎖上の2つのフランキングCRISPR部位の同定を要請し、AN
19NGG部位によりもたらされるターゲティング密度の増加は、この手法を強化することが予測されるであろう。U6プロモーターを凌駕するさらなる利益はまた、誤切断を低減することでもありうる(いくつかのグループが、gRNA濃度およびCas9濃度の増大は、オフターゲット突然変異への傾向の増大と相関することを報告している(Pattanayakら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):839〜43頁;Hsuら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):827〜32頁;Fuら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):822〜6頁)通り、H1プロモーターによりもたらされる発現レベルの低下は、オフターゲット切出しの低減を結果としてもたらしうる)。加えて、Pattanayakらは、Cas9:gRNAによる認識は、20塩基対のターゲティング部位の全体にわたり広がることも報告した(Pattanayakら(2013年)、Nat. Biotechnol.、31巻(9号):839〜43頁)。gRNAの特異性について、>10
12の顕著に異なる変異体を調べる中で、筆者らは、+1ヌクレオチドが、標的の認識に寄与することを見出したが、これにより、CRISPR特異性についての「シード」モデル(PAM近接ヌクレオチド)は、単純化され過ぎるきらいがあることが指し示される。慎重な部位選択、Cas9変異体の改善、gRNAアーキテクチャーの最適化、またはさらなる共因子を介して、CRISPRターゲティングを増強する結果として、23bpのターゲティング配列を通した特異性の増大がもたらされ、5’ヌクレオチドの同一性が重要となる可能性が高い。これは、調査用ツールとしては、交絡突然変異を最小化しながら、より大規模なゲノムの取扱いを可能とし、将来の臨床的適用のためには、高忠実度の標的認識とカップリングさせた高ターゲティング密度が、安全で有効な治療剤を送達するのに最重要となろう。
【0188】
(実施例2)
図10A、
図10B、
図10C、
図10D、および
図10Eは、Cas9タンパク質およびガイドRNAを同時に発現させる双方向性プロモーターとしてのH1プロモーターの使用を示す。双方向性H1プロモーターは、左へのpol II転写物としてのCas9(マイナス鎖)、および右へのpol III転写物としてのガイドRNA(プラス鎖)を発現させることが示されている。発現カセットの全体は、およそ4.4kbである(
図10A)。双方向性H1構築物からのCRISPR媒介型切断を方向付ける能力について調べるために、eGFPをターゲティングするgRNAを使用する双方向性構築物を、プラスミド中にクローニングし、GFPを発現させるヒト幹細胞内で発現させた(
図10B)。GFPの喪失が目視により検出された(
図10C;中パネル、矢じり形)ことから、発現構築物による発現およびGFPのターゲティングの成功が指し示される。CRISPRターゲティングの成功はまた、レーン2および3における2つのバンドの存在を伴うSurveyorアッセイを介しても示された(
図10D)。約4.75bのコンパクトターゲティングカセットを作出するのにH1プロモーターを使用する双方向性CRISPR構築物は、アデノ随伴ウイルスのパッケージング範囲内にある(
図10E)。SV40ターミネーターは、橙色で示され、構築物は、ウイルスの産生に要請されるITR(inverted terminal repeat)配列で挟まれている。
【0189】
方法
プラスミドの構築:H1双方向性構築物を作出するために、ヒトコドンが最適化されたCas9遺伝子と、SV40ターミネーターとを、pol II転写物が内因性で見出される(マイナス鎖)、230bpのH1プロモーター(配列番号54)と融合させた。H1プロモーターとgRNA足場との間に、AvrII部位を操作して、ターゲティング配列の挿入を可能とした。次いで、SV40[rev]::hcas9[rev]::H1::gRNA足場::pol IIIターミネーター配列を、NdeI/XbaIによる消化物である、pUC19ベクター中にクローニングした。本研究で使用される多様なgRNAを作出するために、重複オリゴヌクレオチドをアニールさせ、2ステップ増幅用のPhusion Flash DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)を使用してPCRにより増幅し、その後、2倍容量の25%のPEGおよび1.5MのNaClと混合した、Carboxylate−Modified Sera−Mag Magnetic Beads(Thermo Fisher Scientific)を使用して、精製した。次いで、精製されたPCR産物を、H
2O中に再懸濁させ、NanoDrop 1000(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化した。gRNA発現構築物は、若干改変した、Gibson Assembly(New England Biolabs、Ipswich、MA)(Gibsonら(2009年)、Nature Methods、6巻:343〜345頁)を使用して作出した。総反応容量は、20μlから2μlに低減された。
【0190】
細胞培養物:hESC細胞系H7およびIMR−90 iPS細胞(WiCell、Madison WI)を、既に記載されたプロトコール(Walkerら(2010年)、Nat. Commun.、1巻:71頁;Maruottiら(2013年)、Stem Cells Translational Medicine、2巻:341〜354頁)に従う、10%のCO
2/5%のO
2によるインキュベーター内、mTeSR1培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC)中、Growth Factor Reduced Matrigel(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)上のクローン繁殖により維持した。継代培養のために、hESCコロニーを、まず、mTesR1中に5μMのブレビスタチン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)と共にインキュベートし、次いで、Accutase(Sigma−Aldrich)による5〜10分間の処理後に回収した。細胞集塊を、単一細胞懸濁液に静かに解離させ、遠心分離によりペレット化した。その後、hPSCを、ブレビスタチンを伴うmTeSR1中に再懸濁させ、1cm
2当たりの細胞およそ1,000〜1,500個で播種した。継代の2日後、培地を、mTeSR1(ブレビスタチンを伴わない)で置きかえ、毎日交換した。
【0191】
ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞系293T(Life Technologies、Grand Island、NY)を、10%のウシ胎仔血清(Gibco、Life Technologies、Grand Island、NY)および2mMのGlutaMAX(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中、5%のCO
2/20%のO
2を伴う37℃で維持した。
【0192】
H7細胞の遺伝子ターゲティング:hESC細胞を、電気穿孔の24時間前に、10μMのRho Kinase阻害剤(DDD00033325、EMD Millipore、Billerica、MA)中で培養した。電気穿孔は、製造元の指示書に従い、Neonキット(Invitrogen)を使用して実施した。略述すると、電気穿孔の当日、hESCを、コロニーがリフトするまで、1〜2分間にわたり、Accutase(Sigma−Aldrich)で消化した。重要なことは、コロニーを、単一細胞懸濁液に解離させなかったことである。コロニーを採取した後で、ウェットペレットを、氷上で15分間にわたり保ち、次いで、遺伝子ターゲティングプラスミドを含有する電気穿孔緩衝液中に再懸濁させた。電気穿孔パラメータは、以下:電圧:1400mS;間隔:30ミリ秒;1パルスの通りであった。電気穿孔に続き、細胞コロニーを、10μMのRho Kinase阻害剤を含有するmTeSR1培地にゆっくりと移し、次いで、室温で20分間にわたり保ってから、Matrigelでコーティングしたディッシュに播種し、さらに培養した。
【0193】
クローンから導出されたコロニーについて解析するために、電気穿孔されたhESCを、サブコンフルエンシーまで増殖させ、前段落で記載した通りに継代培養し、35mmのディッシュ1枚当たりの細胞500個の密度で播種した。その後、単一のコロニーを、手作業の採集により単離し、さらに培養した。
【0194】
構成的に発現させたGFP ESC細胞系の作出:H7ヒトESC細胞系(WiCell)を、Matrigel基質上のmTeSR1(Stem Cell Technologies)培地中で維持した。細胞を継代培養する前に、細胞を、ブレビスタチンによる短時間(>5分間)の前処理にかけて、細胞生存率を増大させ、Accutaseで7分間にわたり処理し、単一細胞懸濁液に練和し、等容量のmTesRでクェンチングし、80×gで5分間にわたりペレット化させ、ブレビスタチンを含有するmTesR中に再懸濁させた。細胞1×10
6個をペレット化させ、培地を注意深く除去し、細胞を、10〜15分間にわたり、氷上に置いた。AAVS1セーフハーバー遺伝子座に対する相同性を含有する、10μgのAAV−CAGGSEGFPドナーベクター(#22212、Addgene)に加えて、R緩衝液中に5μgずつのhAAVS1 1R+L TALEN(#35431および35432、Addgene)(Hockemeyerら(2009年)、Nat. Biotechnol.、27巻:851〜857頁;Sanjanaら(2012年)、Nature Protocols、7巻:171〜192頁)を、以下のパラメータ:1500V、パルス1つ当たり20ミリ秒、および1パルスで、Neon Transfection System(Life Technologies)を使用する、100μl型のチップにより電気穿孔した。次いで、細胞を、1mlの培地に静かに添加し、室温で15分間にわたりインキュベートし、次いで、mTeSRおよび5μMのブレビスタチンを含有する、Matrigelでコーティングした35mmのディッシュに播種した。2日後、細胞を、35mmのディッシュ1枚当たりの細胞1×10
4個の密度で播種し、その後、時間的に安定なクローン亜細胞系を、蛍光装備型Nikon TS100落射蛍光顕微鏡により、手作業で選択した。
【0195】
ゲノム改変のためのSurveyorアッセイおよびシークェンシング解析:Surveyor解析のために、細胞を、QuickExtract溶液(Epicentre、Madison、WI)中に再懸濁させ、65℃で15分間にわたりインキュベートし、次いで、98℃で10分間にわたりインキュベートすることにより、ゲノムDNAを抽出した。抽出物溶液は、DNA Clean and Concentrator(Zymo Research、Irvine、CA)を使用して清浄化させ、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific)により定量化した。CRISPR標的部位を取り囲むゲノム領域は、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して、100ngのゲノムDNAから増幅した。複数の独立のPCR反応物をプールし、製造元のプロトコール(Qiagen、Valencia、CA)に従い、Qiagen MinElute Spin Columnを使用して、精製した。12.5mMのTris−HCl(pH8.8)、62.5mMのKCl、および1.875mMのMgCl
2中に、400ngのPCR産物を含有する、8μlの容量を変性させ、ゆっくりと:95℃で10分間、1秒当たり−1.0℃の勾配で95℃から85℃へ、85℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で85℃から75℃へ、75℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で75℃から65℃へ、65℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で65℃から55℃へ、55℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で55℃から45℃へ、45℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で45℃から35℃へ、35℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で35℃から25℃へ再アニールさせ、次いで、4℃に保ち、ヘテロ二重鎖の形成を可能とした。1μlのSurveyorエンハンサーおよび1μlのSurveyor Nuclease(Transgenomic、Omaha、NE)を、各反応物に添加し、42℃で60分間にわたりインキュベートし、その後、1μlのStop Solutionを、反応物に添加した。DNA 1000チップ(Agilent、Santa Clara、CA)を使用して、1μlの反応物を、2100 Bioanalyzer上で定量化した。ゲル解析のために、6倍濃度のローディング緩衝液(New England Biolabs)2μlを、残りの反応物に添加し、臭化エチジウムを含有する3%のアガロースゲルにロードした。ゲルは、Gel Logic 200 Imaging System(Kodak、Rochester、NY)上で視覚化し、ImageJ v.1.46を使用して定量化した。NHEJ頻度は、二項式から導出される方程式:
【数2】
[式中、「a」および「b」の値は、バックグラウンド控除後の切断断片の積分面積に等しく、「c」は、バックグラウンド控除後における非切断PCR産物の積分面積に等しい(Guschinら(2010年)、Methods in Molecular Biology、649巻:247〜256頁)]
を使用して計算した。
【0196】
(実施例3)
図11A、
図11B、および
図11Cは、ガイドRNAの5’末端を作出するハンマーヘッド型リボザイムを示す。5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイム(配列番号49)およびgRNA(配列番号50)を、
図11Aに描示する。ハンマーヘッド型リボザイムの配列を指し示し、触媒作用に重要なヌクレオチドを指し示す(極めて重要なヌクレオチドを赤色、重要なヌクレオチドを橙色で)。切断の場所を、矢印で指し示す。リボザイムにより切断される(下)と、結果として得られるgRNAは、新たに形成された5’側位置におけるヌクレオチドに制約されずに放出される。ハンマーヘッド−gRNAを発現させることが示されている構築物を、
図11Bに示す。一般に、U6、H1、またはT7などのpol IIIプロモーターであるプロモーターを使用して、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムを発現させることができ、これは、自己切断の後で、gRNAを放出するであろう。2つの遺伝子座のターゲティングを、
図11Cに、Surveyorアッセイ(HH1+CGG PAM配列=配列番号51;HH2+AGG PAM配列=配列番号52)、5’側シス型ハンマーヘッド型リボザイムによる切断(矢印)の成功と共に示す。
【0197】
図12は、特異的アプタマーの存在下でgRNAをプロセシングするのにアプタザイムを使用する、調節可能なCRISPR構築物を示す。特に、
図12は、テオフィリンアプタザイムを形成する、ハンマーヘッド型リボザイムのヘリックスIIと融合させたテオフィリンアプタマー(橙)であって、gRNA(青)の5’側にあるテオフィリンアプタマーを描示する。テオフィリンの結合は、ヘリックスIIを安定化させ、次いで、ハンマーヘッド型自己切断を可能とし、gRNAを遊離させる。ここで、gRNAは、Cas9と共に、CRISPR系による切断をターゲティングすることが可能である。
【0198】
方法
プラスミドの構築:U6プロモーター、H1プロモーター、またはT7プロモーターにより駆動される5’側シス型ハンマーヘッド型構築物を作出するために、ハンマーヘッド型配列(GTACGTTTCCTCTGATGAGTCCCAAATAGGACGAAACGCGCTTCGGTGCGTC;配列番号53)を、プロモーターの下流であり、かつ、gRNA標的および足場の上流に置いた。ヘリックスIを形成するために、gRNA標的配列と相補的な10ヌクレオチドを、ハンマーヘッド型配列の5’側に置き、次いで、これを、gRNA内で見出される相補的な配列に結合させた(
図12)。本研究で使用される多様なgRNAを作出するために、重複オリゴヌクレオチドをアニールさせ、2ステップ増幅用のPhusion Flash DNAポリメラーゼ(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)を使用してPCRにより増幅し、その後、2倍容量の25%のPEGおよび1.5MのNaClと混合した、Carboxylate−Modified Sera−Mag Magnetic Beads(Thermo Fisher Scientific)を使用して、精製した。次いで、精製されたPCR産物を、H
2O中に再懸濁させ、NanoDrop 1000(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量化した。gRNA発現構築物は、若干改変した、Gibson Assembly(New England Biolabs、Ipswich、MA)(Gibsonら(2009年)、Nature Methods、6巻:343〜345頁)を使用して作出した。総反応容量は、20μlから2μlに低減された。
【0199】
細胞培養物:hESC細胞系H7およびIMR−90 iPS細胞(WiCell、Madison WI)を、既に記載されたプロトコール(Walkerら(2010年)、Nat. Commun.、1巻:71頁;Maruottiら(2013年)、Stem Cells Translational Medicine、2巻:341〜354頁)に従う、10%のCO
2/5%のO
2によるインキュベーター内、mTeSR1培地(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC)中、Growth Factor Reduced Matrigel(BD Biosciences、Franklin Lakes、NJ)上のクローン繁殖により維持した。継代培養のために、hESCコロニーを、まず、mTesR1中に5μMのブレビスタチン(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)と共にインキュベートし、次いで、Accutase(Sigma−Aldrich)による5〜10分間の処理後に回収した。細胞集塊を、単一細胞懸濁液に静かに解離させ、遠心分離によりペレット化した。その後、hPSCを、ブレビスタチンを伴うmTeSR1中に再懸濁させ、1cm
2当たりの細胞およそ1,000〜1,500個で播種した。継代の2日後、培地を、mTeSR1(ブレビスタチンを伴わない)で置きかえ、毎日交換した。
【0200】
ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞系293T(Life Technologies、Grand Island、NY)を、10%のウシ胎仔血清(Gibco、Life Technologies、Grand Island、NY)および2mMのGlutaMAX(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Invitrogen)中、5%のCO
2/20%のO
2を伴う37℃で維持した。
【0201】
H7細胞の遺伝子ターゲティング:hESC細胞を、電気穿孔の24時間前に、10μMのRho Kinase阻害剤(DDD00033325、EMD Millipore、Billerica、MA)中で培養した。電気穿孔は、製造元の指示書に従い、Neonキット(Invitrogen)を使用して実施した。略述すると、電気穿孔の当日、hESCを、コロニーがリフトするまで、1〜2分間にわたり、Accutase(Sigma−Aldrich)で消化した。重要なことは、コロニーを、単一細胞懸濁液に解離させなかったことである。コロニーを採取した後で、ウェットペレットを、氷上で15分間にわたり保ち、次いで、遺伝子ターゲティングプラスミドを含有する電気穿孔緩衝液中に再懸濁させた。電気穿孔パラメータは、以下:電圧:1400ms;間隔:30ミリ秒;1パルスの通りであった。電気穿孔に続き、細胞コロニーを、10μMのRho Kinase阻害剤を含有するmTeSR1培地にゆっくりと移し、次いで、室温で20分間にわたり保ってから、Matrigelでコーティングしたディッシュに播種し、さらに培養した。
【0202】
クローンから導出されたコロニーについて解析するために、電気穿孔されたhESCを、サブコンフルエンシーまで増殖させ、前段落で記載した通りに継代培養し、35mmのディッシュ1枚当たりの細胞500個の密度で播種した。その後、単一のコロニーを、手作業の採集により単離し、さらに培養した。
【0203】
構成的に発現させたGFP ESC細胞系の作出:H7ヒトESC細胞系(WiCell)を、Matrigel基質上のmTeSR1(Stem Cell Technologies)培地中で維持した。細胞を継代培養する前に、細胞を、ブレビスタチンによる短時間(>5分間)の前処理にかけて、細胞生存率を増大させ、Accutaseで7分間にわたり処理し、単一細胞懸濁液に練和し、等容量のmTesRでクェンチングし、80×gで5分間にわたりペレット化させ、ブレビスタチンを含有するmTesR中に再懸濁させた。細胞1×10
6個をペレット化させ、培地を注意深く除去し、細胞を、10〜15分間にわたり、氷上に置いた。AAVS1セーフハーバー遺伝子座に対する相同性を含有する、10μgのAAV−CAGGSEGFPドナーベクター(#22212、Addgene)に加えて、R緩衝液中に5μgずつのhAAVS1 1R+L TALEN(#35431および35432、Addgene)(Hockemeyerら(2009年)、Nat. Biotechnol.、27巻:851〜857頁;Sanjanaら(2012年)、Nature Protocols、7巻:171〜192頁)を、以下のパラメータ:1500V、パルス1つ当たり20ミリ秒、および1パルスで、Neon Transfection System(Life Technologies)を使用する、100μl型のチップにより電気穿孔した。次いで、細胞を、1mlの培地に静かに添加し、室温で15分間にわたりインキュベートし、次いで、mTeSRおよび5μMのブレビスタチンを含有する、Matrigelでコーティングした35mmのディッシュに播種した。2日後、細胞を、35mmのディッシュ1枚当たりの細胞1×10
4個の密度で播種し、その後、時間的に安定なクローン亜細胞系を、蛍光装備型Nikon TS100落射蛍光顕微鏡により、手作業で選択した。
【0204】
ゲノム改変のためのSurveyorアッセイおよびシークェンシング解析:Surveyor解析のために、細胞を、QuickExtract溶液(Epicentre、Madison、WI)中に再懸濁させ、65℃で15分間にわたりインキュベートし、次いで、98℃で10分間にわたりインキュベートすることにより、ゲノムDNAを抽出した。抽出物溶液は、DNA Clean and Concentrator(Zymo Research、Irvine、CA)を使用して清浄化させ、NanoDrop(Thermo Fisher Scientific)により定量化した。CRISPR標的部位を取り囲むゲノム領域は、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して、100ngのゲノムDNAから増幅した。複数の独立のPCR反応物をプールし、製造元のプロトコール(Qiagen、Valencia、CA)に従い、Qiagen MinElute Spin Columnを使用して、精製した。12.5mMのTris−HCl(pH8.8)、62.5mMのKCl、および1.875mMのMgCl
2中に、400ngのPCR産物を含有する、8μlの容量を変性させ、ゆっくりと:95℃で10分間、1秒当たり−1.0℃の勾配で95℃から85℃へ、85℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で85℃から75℃へ、75℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で75℃から65℃へ、65℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で65℃から55℃へ、55℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で55℃から45℃へ、45℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で45℃から35℃へ、35℃で1秒間、1秒当たり−1.0℃の勾配で35℃から25℃へ再アニールさせ、次いで、4℃に保ち、ヘテロ二重鎖の形成を可能とした。1μlのSurveyorエンハンサーおよび1μlのSurveyor Nuclease(Transgenomic、Omaha、NE)を、各反応物に添加し、42℃で60分間にわたりインキュベートし、その後、1μlのStop Solutionを、反応物に添加した。DNA 1000チップ(Agilent、Santa Clara、CA)を使用して、1μlの反応物を、2100 Bioanalyzer上で定量化した。ゲル解析のために、6倍濃度のローディング緩衝液(New England Biolabs)2μlを、残りの反応物に添加し、臭化エチジウムを含有する3%のアガロースゲルにロードした。ゲルは、Gel Logic 200 Imaging System(Kodak、Rochester、NY)上で視覚化し、ImageJ v.1.46を使用して定量化した。NHEJ頻度は、二項式から導出される方程式:
【数3】
[式中、「a」および「b」の値は、バックグラウンド控除後の切断断片の積分面積に等しく、「c」は、バックグラウンド控除後における非切断PCR産物の積分面積に等しい(Guschinら(2010年)、Methods in Molecular Biology、649巻:247〜256頁)]
を使用して計算した。
【0205】
(実施例4)
概要
色素性網膜炎(RP)とは、網膜光受容体細胞(杆体および錐体)の機能不全および死が、視覚喪失をもたらし、潜在的に、失明をもたらす、遺伝性網膜変性疾患である。RPには、常染色体劣性の遺伝形態および常染色体優性の遺伝形態の両方(それぞれ、ARRPおよびADRP)が存在する。ARRPでは、疾患の一因となる遺伝子のいずれのコピーにも(大半の遺伝子では、遺伝子の一方のコピーは、母親から受け継がれ、他方のコピーは、父親から受け継がれる)突然変異が見られる。ARRPと関連する疾患原因突然変異は一般に、関与遺伝子の機能の喪失をもたらす、すなわち、網膜変性は、その正常な機能を果たす関与遺伝子の能力の喪失に起因する。このような症例では、少なくとも理論的には、適切な処置を開発するのに行う必要がある(喪失した遺伝子機能を置きかえる必要がある)ことが明白である。この手法の洗練された例は、レーバー先天性黒内障(LCA)について進行中のヒト処置研究であり、この研究では、疾患を引き起こす欠損性RPE65遺伝子の機能を置きかえるのに、アデノ随伴ウイルス(AAV)による遺伝子治療が使用されている。
【0206】
ARRPと識別されるADRPでは、疾患原因遺伝子の2つのコピーのうちの1つだけが突然変異している。大半の症例では、この単一の突然変異遺伝子は、機能を喪失しているために網膜変性を引き起こすのではなく、むしろ、杆体光受容体細胞および/または錐体光受容体細胞に対して毒性であるかまたは有害な機能である、新たな機能を獲得した遺伝子産物の産生を突然変異がもたらすために、疾患を引き起こす。機能的な遺伝子の導入では十分でないので、この状況は、遺伝子置換戦略をより複雑なものとする(有効な治療は、毒性の突然変異を伴う遺伝子から産生される「悪い」遺伝子産物の発現を取り除く手法を開発することと、遺伝学者が「野生型」(WT)遺伝子と称する、突然変異していない遺伝子コピーの機能を維持することとの両方を要請する)。
【0207】
現在のところ、ADRPのための、FDAにより承認された処置は存在しない。進行中の実験室および動物による調査研究の大半は、2ステップの手法:1)突然変異した遺伝子コピーおよびWTの遺伝子コピーのいずれの機能も消失させ、次いで、2)通例、AAV媒介型遺伝子治療を介して、WT遺伝子の、新たな「機能を喪失しにくい」形態であって、内因性WT遺伝子を破壊する第1のステップで使用された治療に対して抵抗性である形態を導入する手法を採用している。
【0208】
本明細書で開示される主題は、ADRP処置のための新規の戦略であって、CRISPR/Cas9による遺伝子編集を活用して、生存生物のゲノムの情報の編集を正確にターゲティングする戦略を提供する、すなわち、本明細書で開示される主題は、生存生物の遺伝子の治療的モジュレーションを可能とする。本明細書で開示される方法は、WT遺伝子の発現に影響を及ぼさないようにしながら、疾患原因遺伝子の突然変異コピーが、その毒性遺伝子産物を発現させないように、CRISPR/Cas9による遺伝子編集を使用して、疾患原因遺伝子の突然変異コピーを特異的に変更する。例えば、ロドプシン遺伝子の突然変異形であって、ADRP(P23H)と関連する突然変異形を、特異的にターゲティングし、毒性遺伝子産物をもはや発現させないように、その配列を変化させることができる。一部の実施形態では、単一のAAVウイルス粒子内のCRISPR/Cas9構成要素を、眼に送達することができる。この系は、ADRPのP23Hロドプシンマウス突然変異体モデルにおいて調べられている。これらの研究は、ADRPを処置するために、網膜細胞の特別の遺伝的操作に基づく遺伝子治療のための新たな手法を検証するものである。本明細書で開示される主題は、ADRPの多様な形態のほか、他の常染色体優性の遺伝性網膜ジストロフィーにも適用可能である。
【0209】
具体的な目標
【0210】
色素性網膜炎の常染色体優性形態(ADRP)は、RPの全症例のうちのおよそ30〜40%を構成し、ADRP患者の中で、最も一般的に突然変異するRP関連遺伝子は、杆体視物質であるロドプシンをコードする遺伝子である(Dryjaら(1990年)、The New England Journal of Medicine、323巻、1302〜1307頁;Dryjaら(1990年)、Nature、343巻、364〜366頁)。本明細書で開示される主題は、CRISPR/Cas9による遺伝子編集技術を使用することにより、ADRPを処置する手法(DoudnaおよびCharpentier(2014年)、Science、346巻、1258096頁;Hsuら(2014年)、Cell、157巻、1262〜1278頁)であって、RNA誘導型Cas9エンドヌクレアーゼを、カスタマイズ可能な低分子ガイドRNA(gRNA)と共に使用して、突然変異体ロドプシン対立遺伝子をターゲティングし、切断する手法を提供する。エラープローン非相同末端結合(NHEJ)は、正常対立遺伝子に影響を及ぼさずに、突然変異体対立遺伝子の発現を特異的にノックアウトする。必要とされる構成要素は、哺乳動物の杆体における性能が記録されているAAV血清型である、単一のAAV5により、光受容体に送達することができる。野生型レベルのわずか50%のロドプシンの発現が生じさえすれば、臨床的に有用な杆体機能をもたらすのに十分であることを、動物データは示唆している(Liangら、The Journal of Biological Chemistry、279巻、48189〜48196頁)。
【0211】
マウス研究および他の動物研究を介して、疾患突然変異のCRISPRターゲティングは、in vitroおよびin vivoにおいて有効であることが示されているが、全ての現行の手法は、大部分が送達上の制約に起因して、いまだ臨床使用からは程遠い。AAVベクターは、眼の遺伝子治療において最もしばしば使用されるウイルスベクターである(DalkaraおよびSahel(2014年)、Comptes Rendus Biologies、337巻、185〜192頁;Dayら(2014年)、Advances in Experimental Medicine and Biology、801巻、687〜693頁;WillettおよびBennett(2013年)、Frontiers in Immunology、4巻、261頁;Dinculescuら(2005年)、Human Gene Therapy、16巻、649〜663頁)。非病原性のウイルスであり、分裂細胞および非分裂細胞のいずれにも感染し、発現が長期間にわたり持続し、特に、臨床試験における、その安全性、有効性、および一般的な毒性の欠如の履歴が注目に値する、いくつかの特徴は、AAVを魅力的な選択としている。加えて、硝子体内注射の後に光受容体細胞をターゲティングするのに有効な、変異体AAV血清型とプロモーターとの組合せも開発されている。しかし、それらの現行の状態において、これらのベクターは、免疫応答を誘発し、ヒトサイズの眼における、光受容体への、効率的な、汎網膜的向細胞性を欠く(Kottermanら(2015年)、Gene Therapy、22巻、116〜126頁;Mowatら(2014年)、Gene Therapy、21巻、96〜105頁;Dalkaraら(2013年)、Science Translational Medicine、5巻、189ra176頁)ので、焦点は既に、網膜下注射により投与される、AAV5ベクターの、十分に特徴付けられた使用に絞られているであろう。
【0212】
AAVゲノムは、4.7kbの一本鎖DNA分子であり、最大で5.2kbの組換えDNAを保有するように改変しうるが、この限界を押し広げると、パッケージング効率の低減およびインサートの欠失がもたらされる(Bernsら(1986年)、Fundamental Virology、B.N. FieldsおよびKnipe, D.M.編、545〜562頁、Raven Press)。一般に使用されるCas9タンパク質(4.1kb)をコードする遺伝子自体のサイズが大きいために、gRNAを伴う送達であって、単一のウイルスベクターを介する発現に必要な、プロモーター配列、ターミネーター配列、ウイルスITR(inverted terminal repeat)配列を含む送達は、現在のところ、このAAVのパッケージング容量により限定されている。実際、活性CRISPR複合体の再構成は、共形質導入を必須とするが、これは、単一の形質導入より効率性が低い。加えて、これは、ウイルス用量の増大も要請し、免疫応答および関連する毒性の増大も、潜在的に誘導しうるであろう。また、ヒト試験における第2のウイルスベクターの送達は、FDAによる承認へのさらなる難題をもたらしうる可能性も高い。
【0213】
CRISPR/Cas9技術の開発は、遺伝子編集の分野を革命化している。亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)などのゲノム編集技術の初期の方法により、ターゲティングされたゲノム改変を作出する能力が強化され、疾患突然変異を精密に補正する潜在的可能性が供されている。これらの技術は、有効ではあるが、ZFNおよびTALENの対のいずれも、所与のDNA標的部位についての、大型で固有の認識タンパク質を合成することを要請するので、実際的な限界に阻まれている。多数のグループが近年、操作されたII型CRISPR/Cas9系の使用を介する高効率のゲノム編集であって、これらの鍵となる限界を回避するゲノム編集について報告している(Jinekら(2012年)、Science、337巻、816〜821頁;Congら(2013年)、Science、339巻、819〜823頁;Maliら(2013年)、Science、339巻、823〜826頁)。CRISPR/Cas9系は、Cas9ヌクレアーゼを、配列特異的DNAにターゲティングする、ガイドRNA(gRNA)から構成される。CRISPR/Cas9ゲノム編集は、ゲノムターゲティングのために、ZFNおよびTALENで要請される、ヌクレアーゼ内のDNA結合性ドメインの固有の組合せではなく、短鎖合成gRNAに依拠するので、ZFNおよびTALENの発現に必要な構築物を制作する、時間がかかり、労力を要する作業が解消される。CRISPR/Cas9系のための構築物の作出は、簡単かつ迅速であり、標的をマルチプレックス化することができる。CRISPR系による切断は、20ヌクレオチドのDNA配列および標的部位の3’側に見出される短いヌクレオチドモチーフである、必須のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)への、gRNAの相補的塩基対合を要請する。理論的には、CRISPR技術を使用して、ゲノム内の、任意の固有のN
20−PAM配列をターゲティングすることができる。現在のところ、制限が最も小さく、最も一般的に使用されているCas9タンパク質は、配列NGGを認識する、S.pyogenesに由来し、こうして、CRISPRターゲティング配列は、N
20NGGとなる。
【化2】
【0214】
in vivoにおけるロドプシン遺伝子のターゲティングでは、要請されるCRISPR/Cas9エフェクター分子を、適切に操作されたAAV5ベクターの網膜下投与により、杆体細胞に送達する。血清5型ベクターは、非ヒト霊長動物(Mancusoら(2009年)、Nature、461巻、784〜787頁)の光受容体およびイヌ科動物(Beltranら(2012年)、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、109巻、2132〜2137頁)の光受容体のいずれへの形質導入においても、極めて効率的であり、網膜の治療を媒介することが可能であることが示されている。カプシドを修飾されたAAVベクターは、マウスでは、硝子体から光受容体に浸透しうる(Petrs-Silvaら(2011年)、Molecular Therapy: the Journal of the American Society of Gene Therapy、19巻、293〜301頁)が、これまでのところ、イヌまたは非ヒト霊長動物では、同様な浸透性が可能となっていない(観察は公表されていない)。
【0215】
AAVを介するCas9およびガイドRNAの送達における重要な課題は、両方の構成要素を発現させるのに要請されるDNAが、従来の方法では、5kb(プロモーター、約500bp;spCas9、4,140bp;Pol IIターミネーター、約250bp;U6プロモーター、約315bp;およびgRNA、約100bp)を超え、したがって、AAVのパッケージング限界である、およそ4.7〜4.9kbを超えることである。Swiechら(2015年、Nature Biotechnology、33巻、102〜106頁)は、2ベクター手法:Cas9を送達する1つのAAVベクターと、gRNAを送達するための別のAAVベクターとを使用することにより、この課題に取り組んだ。しかし、この研究における二重AAV手法は、網膜細胞内では発現するが、杆体内では発現しない特に低分子のプロモーターである、マウスMecp2プロモーターを利用した(Songら(2014年)、Epigenetics & Chromatin、7巻、17頁;Jainら(2010年)、Pediatric Neurology、43巻、35〜40頁)。こうして、この系は、構築されても、ADRPの大半の症例には適さないであろう。本明細書で開示される主題は、網膜の遺伝子編集のための単一ベクター手法であって、効率を増大させ、光受容体を特異的にターゲティングし、ウイルスロードの送達に由来する潜在的毒性を低減する単一ベクター手法を提供する。
【0216】
結果
gRNAの転写を方向付け、利用可能なCRISPR遺伝子ターゲティング空間をほぼ倍化することを可能とするのに、従来使用されたU6プロモーターではなく、H1プロモーターが使用されている(Ranganathanら(2014年)、Nature Communications、5巻、4516頁)。とりわけ、オフターゲットの切出しへの傾向の低下が検出されたことから、H1プロモーターは、治療手法により好適であることが示唆される。これらの研究では、内因性H1RNA遺伝子とゲノム内で近接するタンパク質コード遺伝子(PARP−2)の存在が注目された(Baerら(1990年)、Nucleic Acids Research、18巻、97〜103頁;Myslinskiら(2001年)、Nucleic Acids Research、29巻、2502〜2509頁)。H1RNA(pol III RNA転写物)の始点と、PARP−2遺伝子(pol II転写物)の始点との間の配列は、230bp(
図13)であることから、この比較的小さな配列は、コンパクト双方向性プロモーターとして機能しうることが指し示される。これは、pol II転写物およびpol III転写物の両方を方向付けうる、哺乳動物ゲノム内で唯一の双方向性プロモーター配列であり、両方のCRISPR構成要素を、単一のAAV中にパッケージングする場合のサイズのハードルを克服するのに使用しうると考えられる。
【0217】
Cas9/gRNAを二重に発現させるための、双方向性pol II/IIIプロモーターとしてのH1の使用を開発するため、かつ、そのpol III活性は、既に十分に特徴付けられているため、そのpol II活性をより良好に最適化するように、eGFPレポーター構築物を創出した(
図14)。ヒト(HEK293)内およびマウス細胞(NIH3T3)内の最初の結果により、弱いが、明確に検出可能なGFP蛍光が実証されたことから、H1プロモーターにより、弱くではあるが、pol II発現を方向付けうることが指し示される。このGFPレポーター系を使用して、系内の3つの可変的構成要素:プロモーター配列、5’UTR、およびターミネーター配列を査定することにより、プロモーターのコンパクト性を維持しながら、pol II発現を増大させた。異なる生物に由来するH1プロモーター配列について調べたところ、マウス(176bp)配列およびラット(207bp)配列のいずれも、ヒトH1プロモーターより強いGFP発現を駆動することが可能であることが指し示された(それぞれ、約7倍および約6倍)。しかし、目標は、in vivoにおいてヒト細胞と共に使用するための系を導出することであるので、可能な場合は、ヒトプロモーター配列を使用した。異なるターミネーター配列を査定するために、7つの異なる配列について調べたところ、SV40(240bp)ターミネーター配列および49bpの合成ポリ(A)配列(SPA)(Levittら(1989年)、Genes & Development、3巻、1019〜1025頁)はいずれも、GFP発現のために機能的であることが見出された。5’UTRの修飾を介して翻訳効率を最適化して、レポーターの発現を改善したところ、ベータ−グロビンの5’UTR配列から取り出される50bpの配列の挿入により、レポーター発現を著明に改善しうることが見出された。強力なコザック配列をコードする9塩基(Kozak(1987年)、Nucleic Acids Research、15巻、8125〜8148頁)(5’−GCCGCCACC−3’)を挿入するだけで、これらのレベルを近似するのに十分であった(
図15)ことは、この考えと符合する。
【0218】
これらのGFPベースの最適化実験から導出された情報に基づき、Cas9タンパク質およびターゲティングgRNAを同時に発現させるのに、ヒトH1プロモーター配列を使用して、ターゲティング構築物を作出した。これらの双方向性構築物が、細胞内の切断を方向付ける能力について調べるために、NIH3T3細胞を、標準的な2プラスミド手法(pCAAGS:Cas9およびH1:gRNA)または両方の構成要素を発現させる単一プラスミド系で電気穿孔した。マウスゲノム内の2つの異なる遺伝子座をターゲティングした。電気穿孔の48時間後、ゲノムDNAを採取し、T7 Endo I(T7EI)アッセイ(Ranら(2013年)、Nature Protocols、8巻、2281〜2308頁)を実施して、ゲノム改変のレベルを定量化した。欠失の検出においてより感受性であることが報告されている(Vouillotら(2015年))ため、従来のSurveyorアッセイではなく、T7EIアッセイを使用した。およそ4.7kbで、十分にAAVのパッケージング容量内にある、コンパクト双方向性系を使用して、CRISPR切断を、これらの2つの遺伝子座に有効にターゲティングしうることが見出された(
図16Aおよび
図16B)。ヒト細胞における、このターゲティング戦略の適用可能性および関与性をさらに実証するように、ヒトH7胚性幹細胞系内のCas9ターゲティングについてのデータが存在する。ヒト配列ではなくて、マウスH1プロモーターを使用し、SV40ターミネーター配列ではなくて、SPAターミネーターを使用することにより、理論的には、ターゲティング構築物のサイズを、さらに200bp低減することができる。これらの配列の低減により、より効率的なパッケージングを可能とすることもでき、Cas9系の発現をブーストする場合もあり、低減する場合もあり、なおさらに調節する場合もある配列の改変;潜在的なオフターゲット効果を低減するために重要でありうる改変のためのさらなる空間を潜在的にもたらすこともできる。AAV Helper−free System(Agilent)によるITR含有ベクター中に容易にクローニングされうるフランキングNotI部位と共に、Gibsonクローニング方法(NEB)を使用して、簡単な標的の挿入を可能とする、固有の制限部位を伴う双方向性プラスミドが作出されている。
【0219】
Cas9およびgRNAのプロモーター、RNAのプロセシング、ならびに構造的エレメントを、単一のAAVベクター系から有効に発現させ、適切なGMP様前臨床ベクターを作出するように、デザインし、最適化する
【0220】
Cas9およびgRNAの発現を同時に駆動する双方向性H1プロモーターの組合せ、ならびに最適化の取組みにより、CRISPR送達のサイズを、AAVパッケージング容量未満に低減することの実質的な進展が、既になされている。代替的なプロモーター配列、5’/3’UTR修飾、および異なるgRNAによる多様な組合せは、ターゲティング効率の潜在的スペクトルについて調べるためのツールキットを提供する。
【0221】
構築物を、サイズ、発現、および切出し効率との関係でさらに最適化したら、それらを使用して、in vitroおよびin vivoにおける試験のためのAAVベクターを作出することができる。最適化研究のために使用される構築物は、AAV産生のためのITR含有ベクタープラスミドへのクローニングを可能とするフランキングNotI部位と共に、簡単な標的の挿入を可能とする固有の制限部位を含有する。細胞培養研究およびマウス研究のための、高力価GMP様前臨床AAV5ベクターを、独立のベクター作製施設において、ヘルパーフリーのプラスミドトランスフェクション方法を使用して作出し、既に開発した技法(Dryjaら(1990年)、The New England Journal of Medicine、323巻、1302〜1307頁;Dryjaら(1990年)、Nature、343巻、364〜366頁)により精製することができる。各ウイルスの調製は、最終的なベクター内のWTアデノウイルスおよび複製コンピテントAAV夾雑物を消失させる、pDG mini−AdプラスミドDNAヘルパー系を使用して行うことができる。ベクターは、イオジキサノール勾配遠心分離に続く、QカラムFPLCクロマトグラフィーにより精製する。GMP様純度のAAVベクター原液を確立するために、各ベクターを、標準化された物理的アッセイおよび生物学的アッセイのバッテリーであって、純度、バイオバーデン、無菌性、DNA含有粒子の力価、感染力価、粒子対感染性比、および複製コンピテントAAVによる夾雑可能性についての評価を含むバッテリーにかけることができる。
【0222】
最新のH1プロモーターによる研究では、低レベルのオフターゲット効果が指し示されている(Ranganathanら(2014年)、Nature Communications、5巻、4516頁)が、構築物は、最終的な臨床使用を目標として開発されつつあるので、潜在的なオフターゲット活性について注意深くモニタリングすべきである(Wuら(2014年)、Quantitative Biology、2巻、59〜70頁)。この目的で、いくつかの相補的な手法を追求することができる。バイオインフォマティクス手法を取り、23マーのCRISPR配列部位の両方の鎖および重複の発生を検索するように書かれた特注のPerlスクリプトを使用して、ヒトゲノム内およびマウスゲノム内の全ての潜在的CRISPR部位が決定された(Ranganathanら、準備中の草稿、2015年)。例えば、ヒトゲノム内では、反復配列をフィルタリングにより除外した後で、137,409,562のCRISPR部位による初期セットが同定された。次いで、3’末端またはPAM末端(シード領域)へのバイアスがかかった、23塩基の配列の固有性に基づき、値を割り当てる特注のアルゴリズム(Jinekら(2012年)、Science、337巻:816〜821頁)に従い、各部位をスコア付けした。最後に、ターゲティング配列を通して最大で3つの塩基ミスマッチを許容しながら、各CRISPR部位をゲノムに戻して再配列決定する、Bowtie(Langmeadら(2009年)、Genome Biology、10巻、R25頁)を使用することにより、各部位がオフターゲット効果を呈示する傾向を計算した。コンピュータによるオフターゲットの予測を使用して、各gRNAを、任意の誤ターゲティングについて調べることができる。予測される潜在的なオフターゲット部位を挟むPCRプライマーを使用して、ゲノム配列を増幅することができ、次いで、これを、T7EIアッセイにより、切断効率について調べることができる。これは、in vitroおよびin vivoの両方における最適化実験のための、ターゲティング精度のモニタリングを可能とするであろう。オフターゲット切出し0.5%未満を目指すが、5%未満は許容可能とする。
【0223】
標準的なCas9ターゲティングに焦点が絞られているが、また、代替的なPAM配列のターゲティングを含む、代替的な手法も検討される。Cas9は、標準的なNGG配列に加えて、NAGを伴うPAMモチーフもターゲティングすることが報告されている(Hsuら(2013年)、Nature Biotechnology、doi:10.1038/nbt.2647)。ヒト配列内の2つのCRISPR配列と、マウスゲノム内の3つのターゲティング配列との重複であって、P23H突然変異が同定された重複により、さらなるターゲティング部位がもたらされうるであろう。NAG PAM部位は、NGG部位よりターゲティング効率が低いと予測されている(Zhangら(2014年)、Scientific Reports、4巻、5405頁)が、これにより、投与量を滴定する機構が提示される可能性があり、構築物が著明なオフターゲット効果を及ぼすことを決定する場合、この機構は貴重でありうる。まず、NAG PAM部位を使用する5つの配列を、Gibsonアセンブリー(NEB)を使用するpH1v126中にクローニングすることができる。2つのヒト配列を、Cas9プラスミドと共に、293細胞中に共トランスフェクト(Lipofectamine 3000)しうる一方、マウスプラスミドは、Cas9プラスミドと共に、NIH3T3細胞中に電気穿孔(Invitrogen、Neon)することができる。gRNA活性を検出するために、カノニカルのNGGのほか、非カノニカルのNAG部位の間でも、Cas9切断部位においてNHEJにより導入される、インデル突然変異の比率を定量化することができる。
【0224】
また、CRISPRiとして公知の代替的な治療手法であって、Cas9のヌクレアーゼデッド形(dCas9)を活用して、P23H対立遺伝子の発現を特異的に抑制する治療手法も、使用することができる(Qiら(2013年)、Cell、152巻、1173〜1183頁;Gilbertら(2013年)、Cell、154巻、442〜451頁;Larsonら(2013年)、Nature Protocols、8巻、2180〜2196頁;Fullerら(2014年)、Advances in Experimental Medicine and Biology、801巻、773〜781頁)。切断を誘導する代わりに、dCas9は、DNA配列への緊密な結合を保ち、活性状態で転写される遺伝子の内側をターゲティングする場合、立体障害機構を介するpol II進行の阻害により、効率的な転写の抑制をもたらしうる。DNAの破断を誘導せずに、P23Hの治療的抑制を達成することにより、かつ、AAVの構成的な発現が与えられることにより、AAV5による転写阻害剤の送達は、遺伝子治療および調節ハードルの両方の観点から好適でありうるであろう。CRISPRiによる転写の抑制は、ロドプシンの対立遺伝子特異的発現を測定するqRT−PCRを使用して、最適化することができる。
【0225】
P23Hマウスに由来する、初代光受容体培養物を使用して、in vitroにおいて、開発されたAAV5ベクターが、突然変異体ロドプシン対立遺伝子を切り出し、その発現をノックアウトする能力を検証する
【0226】
初代マウス光受容体細胞培養物を使用して、動物研究に進む前に、in vitroにおいて、ターゲティング構築物を検証することができる。生後2〜10日目の動物を使用して、ターゲティングアッセイのための細胞を単離するために、マウス網膜を採取および解離することができる。構築物を、ヒト(h)Rho:GFPマウス(Chanら(2004年)、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、101巻、9109〜9114頁)内で調べることにより、ロドプシンターゲティングのさらなる最適化を可能とすることができる。hRho−GFPノックインマウスは、マウスロドプシンのオープンリーディングフレームにノックインされたヒトロドプシン−GFP融合体を含有する(
図17)。この部分的なヒト化マウスは、光受容体細胞内のヒト特異的配列のターゲティングを可能とする。ヒトrho配列をターゲティングすることができ、次いで、光受容体からのGFPの喪失を定量化することができる。ロドプシンをターゲティングしつつあるが、GFPレポーターをインフレームで融合させて、こうして、蛍光の喪失を、標的部位の上流における、エラープローンNHEJの簡便な代理指標として用いる。網膜細胞の電気穿孔により、10〜20%のトランスフェクション効率が日常的に達成されるが、CRISPR改変細胞の集団について濃縮するために、トランスフェクトされた集団を、Cas9蛍光レポーターの強度に基づき分取することができる。多様なP2A:レポータータンパク質と融合させた、いくつかのCas9構築物であって、Cas9活性を損なわずに、蛍光活性のモニタリングを可能とするCas9構築物を作出した。Rho:GFPマウスに由来する網膜培養物を使用して、Cas9:P2A:mCherryレポーターおよびターゲティングgRNAを電気穿孔することができる。次いで、24時間の培養後、二重陽性細胞を分取することができ、これにより、トランスフェクトされた光受容体について濃縮することができる。48時間後、細胞を、QuickExtract緩衝液(Epicentre)中に再懸濁させて、ゲノムDNAを採取し、T7EIアッセイによりゲノムの改変についてアッセイすることができる。同様に、ロドプシン突然変異のターゲティングは、P23Hマウスに由来する、初代光受容体培養物を使用して検証することができる。構築物のターゲティング効率が10%を超え、初期の結果と符合する場合は、トランスフェクションのレベルが低レベル(10%)であってもなお、T7EIアッセイを使用して、ゲノム編集を検出することができる。加えて、AAV5ベクターの使用は、著明に高度な形質導入効率をもたらすはずである。
【0227】
また、オンターゲット部位およびオフターゲット部位についての、高分解度で、かつ、高感度の、部位特異的ディープシークェンシング解析も実施する。高忠実度のポリメラーゼ(NEB、Phusion)を使用して、CRISPR標的部位と予測されるオフターゲット部位とを挟むゲノム配列を、15サイクルにわたり増幅し、次いで、DNA Clean & Concentrator−5(Zymo)を使用して、精製することができる。精製されたPCR産物は、5サイクルにわたり増幅して、Illumina P5アダプターおよび試料特異的バーコードを接合し、再度精製し、次いで、SYBRグリーン蛍光により定量化し、BioAnalyzer上で解析し、最後に等モル比でプールしてから、MiSeq Personal Sequencerでシークェンシングすることができる。シークェンシングデータを解析するためには、Illumina MiSeq Reporterソフトウェアを使用して、300bpのペアドエンドMiSeqリードを脱マルチプレックス化するのに続いて、生リードに、アダプター/品質トリミングを施す。アライメントは、野生型配列に照らして、全てのリード上で実施し、NHEJ頻度は、100×(インデルリードの数/インデルリードの数+WTリードの数)により計算する。
【0228】
P23Hマウスへの網膜下注射に続いて、in vivoにおいて、SA2に由来する改善されたベクターが、突然変異体ロドプシン対立遺伝子を切り出し、その発現をノックアウトする能力を検証する
【0229】
次のステップは、マウスにおけるP23Hロドプシン突然変異のin vivoターゲティングを実証することになるであろう。バイオインフォマティクスの取組みにより、マウスP23コドンと重複する、高スコアリングのCRISPRターゲティング部位が同定されている。N
20NGGの形態のCRISPR部位は、リバース鎖:
【化3】
残念ながら、CRISPR部位内のマウスP23H突然変異の場所は、ターゲティング部位内の、bp同一性を知りえない唯一の場所である、NGG PAMモチーフのNに当たる。これは、P23H配列を指向するCRISPRが、野生型配列とP23H配列とを弁別することは不可能であり、したがって、ターゲティングは、いずれの対立遺伝子も切り出すと予測されることを意味するので、一塩基多型(SNP)の発生に基づく代替的な手法が開発されている。
【0230】
ヒトゲノム内には、約1700万のSNP(単一の塩基変異、インデル、STR、MNPなどを含む)(180bpごとに約1つ)が報告されており、個別化ゲノム薬の文脈では、この変異は、極めて重要である。天然の遺伝子変異を活用することにより、マウスモデルにおけるP23Hロドプシン対立遺伝子を、特異的にターゲティングする方法をもたらしうるだけでなく、また、将来のゲノム操作および治療手法になおより関与性となる可能性が高い概念実証手法も実証しうることが推論された。castaneus(Cast)マウスは、ロドプシン遺伝子のプロリン23コドン内のSNPであって、C57BL/6J配列と異なるSNPを含有することが見出され、C57BL/6Jの遺伝子バックグラウンドにおける、P23H突然変異体マウスを、解析のために得た。SNPは、P23H内の原因C→Aトランスバージョンにじかに隣接しており、これにより、野生型ロドプシン対立遺伝子のターゲティングを伴わずに、優性P23H対立遺伝子をターゲティングするための手法がもたらされる。P23H突然変異のバックグラウンドは、C57BL/6Jであるので、一世代のCast/P23H交配の後で、CRISPRによりターゲティング可能なロドプシンP23H対立遺伝子、および、緊密に連関するSNP差違に起因して、gRNA標的の「シード」領域内の20位に配置された単一のミスマッチで異なる、野生型のCRISPR抵抗性ロドプシン対立遺伝子の両方を含有する、ヘテロ接合性マウスを得た(
図18A、
図18B、および
図18C)。
【0231】
戦略の実行可能性を検証するために、P23H突然変異体対立遺伝子内に存在する配列である、C57BL/6Jプロリン23コドン配列をターゲティングするH1双方向性構築物、またはヘテロ接合性P23H/Cast動物のWTロドプシン対立遺伝子内に存在する配列である、Castマウスにおけるプロリン23コドン配列をターゲティングするH1双方向性構築物を作出した。NIH3T3細胞(C57BL/6J SNPを含有する)を、両方の構築物で独立に電気穿孔し、ゲノムDNAを単離し、次いで、T7EIアッセイを実施して、ゲノム改変のレベルを定量化した。特異的なロドプシンターゲティングを観察した:C57BL/6J(すなわち、P23H)指向性構築物だけが、著明な切出しをもたらし、ゲノム改変のレベルは、50%近くであったが、全体の電気穿孔効率が80%を下回ったことを踏まえると、これは、ターゲティングの潜在的可能性の過小評価である可能性が高い(
図19)。単一の塩基ミスマッチを含有する、Castロドプシン配列に基づくgRNAは、検出可能なCas9切断をもたらさなかったので、ロドプシンターゲティング部位、およびコンパクト双方向性構築物が切断を方向付ける能力の検証に加えて、これらの結果は、in vitroにおける切出しが、SNP/突然変異体配列において特異的に生じることも実証した。
【0232】
CRISPRターゲティングを限界付ける因子は、有効な送達であると一般に考えられるが、AAV5媒介型送達は、大きな眼であってもなお、大部分の光受容体への形質導入が可能であることが示されている。この形質導入率の高さ、形質導入された細胞のうちの50%またはこれ超において遺伝子編集が生じること、およびNHEJイベントの3例中2例が、フレームシフト突然変異を結果としてもたらすことを踏まえると、多数の杆体内では、P23H対立遺伝子の発現のノックアウトが達成されるはずであり、大部分の杆体内では、さらなる最適化も達成されるはずである。研究は、このレベルのターゲティングならば、杆体の直接的な保存および錐体の生存に対する二次効果の両方を介して、光受容体の生存を支援し、妥当なレベルの視覚を維持するのに十分であることを示唆する(Leveillardら(2004年)、Nature Genetics、36巻、755〜759頁;LeveillardおよびSahel(2010年)、Science Translational Medicine、2巻、26ps16;Sahelら(2013年)、Graefe's archive for clinical and experimental ophthalmology = Albrecht von Graefes Archiv fur klinische und experimentelle Ophthalmologie、251巻、1669〜1677頁)。既に記載されている通り、最適化されたウイルスを、P15におけるマウス10匹の一方の眼に網膜下注射することができる(Maoら(2012年)、Advances in Experimental Medicine and Biology、723巻、199〜205頁;Maoら(2012年)、Human Gene Therapy、23巻、356〜366頁;Maoら(2011年)、Human Gene Therapy、22巻、567〜575頁)。パートナーの対照眼と対比した、処置眼についての、ERG解析およびSDOCT(Bioptigen)解析を、処置の2、6、および12週間後に実施することができる。処置された眼では、12週間後に、機能的および構造的改善が観察されることを仮定して、長期生存研究を後続させることもできる。屠殺時には、ONL厚、外側部内の適正な局在化についてのスパイダーグラムおよび免疫組織学的ロドプシンアッセイ、ならびにロドプシンレベルについてのウェスタンブロットを含む、組織学的解析を実施することができる。
【0233】
AAV5/CRISPR処置のオフターゲット効果を、評価することができる。全ゲノムシークェンシングは、オフターゲット突然変異を評価するために、最もバイアスのかからない方法であり、標的部位を確認するために理想的であろう。AAVで処置された眼に由来するマウス網膜およびAAVで処置されていない眼に由来するマウス網膜を採取し、解離させることができ、ゲノムDNAを、DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen)により抽出することができ、DNAを、Covaris AFAでせん断処理することができる。DNA断片は、末端修復し、Aテール処理し、Illumina製のバーコード処理シークェンシングアダプターにライゲーションすることができる。ライゲーションされた産物は、バーコード処理全ゲノムシークェンシングライブラリーを作出するように、PCRにより増幅し、HiSeqプラットフォーム(Illumina)上で、15倍の平均値カバレッジまでシークェンシングすることができる。次いで、Burrows−Wheeler Alignerを、デフォルトパラメータによる「mem」モード(「bwa mem」)で使用して、シークェンシングリードを、ヒト参照ゲノム(hg19/GRCh37)に照らして配列決定することができる。CRISPR切断イベントごとに、固有の突然変異が結果としてもたらされるため、DNA二本鎖破断部位は、同じデノボの突然変異を結果としてもたらさないことが仮定される。こうして、複数の試料により共有される全ての変異体を棄却することにより、その後のバイオインフォマティクス解析におけるフィルタリングが可能となるであろう。
【0234】
参考文献
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本明細書で開示される主題が関する技術分野の当業者のレベルを指し示す。全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、各個別の刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献が、参照により組み込まれることが、具体的かつ個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書では、多数の特許出願、特許、および他の参考文献が言及されるが、このような参考文献は、これらの文献のうちのいずれかが、当技術分野における共通の一般的な知見の部分を形成することの容認を構成しないことが理解されるであろう。
【0235】
前出の主題について、理解の明確さを目的とする例示および例として、ある程度詳細に記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で、いくつかの変化および改変を実施しうることを理解するであろう。