(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-519631(P2017-519631A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】パルス超音波周波数を有するメソ流体反応器
(51)【国際特許分類】
B01J 19/26 20060101AFI20170623BHJP
B01J 10/00 20060101ALI20170623BHJP
【FI】
B01J19/26
B01J10/00 103
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-503193(P2017-503193)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(85)【翻訳文提出日】2016年11月29日
(86)【国際出願番号】HU2015000031
(87)【国際公開番号】WO2015150845
(87)【国際公開日】20151008
(31)【優先権主張番号】P1400180
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】HU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
2.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】516295813
【氏名又は名称】コミネックス ゼーエルテー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダルヴァス フェレンツ
(72)【発明者】
【氏名】レンジェル ラースロー チャバ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーゴー テレーズ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA13
4G075AA27
4G075AA61
4G075AA65
4G075BA10
4G075BD09
4G075BD13
4G075BD14
4G075CA02
4G075CA03
4G075CA05
4G075DA02
4G075DA18
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4G075EA06
4G075EB21
4G075EC01
4G075EC25
4G075FB01
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC09
(57)【要約】
本発明は、出発材料の化学反応を行うメソ流体反応器であって、反応器の構成要素が、一緒に組み合わされ、反応器を形成し、反応器が、流体を高圧スプレーヘッド(4)内へ輸送するために適するチュービング(3)を有し、高圧スプレーヘッド(4)が、超音波発生圧電性結晶ユニットを備え、ノズルを有する、メソ流体反応器に関する。スプレーヘッドは、液相出発材料の場合、ナノ及びマイクロサイズの粒子の粒径分布を生成し、固相出発材料の場合、ナノ、マイクロ又は更にそれよりも大きいサイズの粒子の粒径分布を生成するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発材料の化学反応を行うメソ流体反応器であって、前記反応器の構成要素が、一緒に組み合わされ、前記出発材料の相状態に依存する下記のスキーム:
(i)液相出発材料の場合、前記出発材料が、容器(1)から、HPLCポンプ若しくは流体の輸送に適する任意の他のポンプ(2)により、流体の輸送に適するチュービング(3)を通って、高圧スプレーヘッド(4)内へ導入され、前記高圧スプレーヘッド(4)が、超音波発生圧電性結晶ユニットを備え、ノズルを有し、不活性/試薬ガスが、前記スプレーヘッド(4)内へ、不活性/試薬ガス導管(10)を通り、制御バルブ(7)、質量流量計(8)及び圧力計(9)を通って供給され、前記制御バルブ(7)、前記質量流量計(8)及び前記圧力計(9)が、前記導管(10)に、この順に挿入されており、前記スプレーヘッド(4)が、反応器チューブ(12)の入口に接続されており、前記反応器チューブ(12)が、断熱マルチゾーン加熱ユニット(11)内に配置されており、前記反応器チューブ(12)の出口が、冷却された生成物トラップ(13)に接続されて、変換された物質が回収され、前記生成物トラップ(13)の出口が、真空タップ(14)及び真空ポンプ(15)に接続され、真空の使用を容易にする、スキーム、又は
(ii)固相出発材料の場合、不活性/試薬ガスが、ガス源(6)から、制御バルブ(7)、質量流量計(8)及び圧力計(9)を通って、固体容器(5)内へ導入され、前記固体容器(5)が、下から、本質的に直角に、高圧スプレーヘッド(4)に接続されており、前記高圧スプレーヘッド(4)が、超音波発生圧電性結晶ユニットを備え、ノズルを有し、前記スプレーヘッド(4)が、反応器チューブ(12)の入口に接続されており、前記反応器チューブ(12)が、断熱マルチゾーン加熱ユニット(11)内に配置されており、前記反応器チューブ(12)の出口が、冷却された生成物トラップ(13)に接続されて、変換された物質が回収され、前記生成物トラップ(13)の出口が、真空タップ(14)及び真空ポンプ(15)に接続され、真空の使用を容易にする、スキーム
のうちの1つに従って、前記反応器を形成する、メソ流体反応器において、
前記スプレーヘッド(4)が、前記液相出発材料の場合、ナノ及びマイクロサイズの粒子の粒径分布を生成し、前記固相出発材料の場合、ナノ、マイクロ又は更にそれよりも大きいサイズの粒子の粒径分布を生成するように構成されており、前記不活性/試薬ガスが、前記圧電性結晶ユニットの表面で予熱されることを特徴とする、メソ流体反応器。
【請求項2】
前記スプレーヘッド(4)が、溶媒及び溶液を、圧力下で、好ましくは0.5mm、より好ましくは0.2mm、最も好ましくは約0.1mmの内径のスプレーチップを通じてアトマイズするために適することを特徴とする、請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記不活性/試薬ガスが、前記スプレーヘッド(4)内へ、キャリアガスとして、圧力下で、反応器チューブ(6)の壁に沿って螺旋流で導入され得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の反応器。
【請求項4】
前記スプレーヘッド(4)が、前記ノズルとしてのアトマイザ、及び前記アトマイザと組み合わせられる超音波ユニットを更に備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項5】
前記スプレーヘッド(4)が、固体物質の供給を許容するように適合した拡張デバイスを更に備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項6】
前記スプレーヘッド(4)、特にアトマイザが、好ましくは耐食鋼、石英、ホウケイ酸塩、Pyrexガラス、Hastelloy材料、PEEK材料、及びTeflonの群から選択される構造材で作られていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記出発材料が、前記固体容器(5)内に、固体微粉物質の形態で配置されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項8】
前記反応器チューブ(12)の平均直径が、少なくとも10mm、好ましくは少なくとも15mm又は15mmよりも大きいサイズであることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項9】
1本より多い反応器チューブ(12)が互いに平行に延び、前記加熱ユニット(11)内に配置されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項10】
前記1本より多い反応器チューブ(12)が、ホウケイ酸塩、石英、Pyrexガラス、耐食鋼及びHastelloy材料の群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項11】
前記1本より多い反応器チューブ(12)の長さが、10mm〜2000mmの範囲であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項12】
前記1本より多い反応器チューブ(12)が、真空ポンプ(15)により減圧され、減圧下で化学反応が行われるように構成されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項13】
前記出発材料の溶液の可変のアトマイズ時間を許容するように構成されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項14】
前記反応器が、生成物を捕捉するための生成物トラップ(13)又は生成物凝縮器を更に備え、前記生成物トラップ(13)又は生成物凝縮器が、水冷チラー、若しくはドライアイス及びアセトンの混合物で満たされたチラー、液体窒素、還流冷却器、ペルチェ素子、又は任意の他の種類の熱交換器の形態で設けられていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項15】
可変の物質導入長さ及び/又は可変の材料流速を許容するように構成されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応器に関する。特に、本発明は、メソ流体反応器として実施される,真空フラッシュ熱分解(VFP:vacuum flash pyrolysis)反応を行うための装置であって、超音波スプレーを行って、粒径分布を減少させる、すなわち装置で起こる反応に必要な溶液/固体試薬の分散度を増加させ、不活性/試薬ガスを供給する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温及び高圧で制御して、好ましくは可能な限り短い時間で反応を実施する反応器の需要が、過去数十年間ずっと高まっている。このような反応器は、とりわけ、高速性及び低レベル副生成物生成の需要の高まりにより台頭している。
【0003】
これは、英語の用語で単純に「フラッシュケミストリ」と称される、新規な科学分野につながった。この分野に分類される反応を実施する反応器は、いわゆるフラッシュリアクタである。この分野の最も重要な特徴を、J.Yoshidaらが要約している(非特許文献1を参照のこと)。このようなデバイスに特有の特徴は急速温度制御であり、この急速温度制御は、高速フィードバック、並びに効率的な熱交換及び/又は熱輸送により達成され得る。試薬混合物の滞留時間は、このような反応器では短いので、この反応器は、従来のものよりも選択的な反応を行うこともできる。
【0004】
化学反応を行うために、温度の選択は、いくつかの理由から非常に重要である。第1に、化学反応の速度は、温度によって増加する(例えば、よく知られた非特許文献2を参照のこと)。第2に、反応を開始するために、活性化エネルギーが反応混合物に、主に熱の形態で移されることが必要とされる。しかし、反応の温度が高いほど、かつ/又は反応に関与する化合物(初期反応物、生成物、溶媒、更なる補助物質及び添加剤)が高温に長く曝露されるほど、望ましくない副生成物及び分解生成物が反応混合物中に多量に生じる。また、更なる温度の上昇により、反応混合物が沸騰温度に達することになるであろうが、このことは、例えば連続管状反応器で実施される化学反応では、望ましくない。したがって、所定の反応の反応温度を最適化することは、化学反応が行われる際に、非常に重要なことである。
【0005】
分析では、噴霧/アトマイズ(atomization)/スプレー(spraying)は、サンプルを供給するためによく知られた技術であり、非常に多くの方法が、その実現のために知られている。最も古く、最も普及している形態の1つは気体噴霧であり、特に高速ガス、いわゆる燃焼ガスの使用による同心気体噴霧(concentric pneumatic nebulization)である。これは、フレーム原子吸光分光法で最も頻繁に使用され、この場合、導入されるガス(例えば空気、酸素)は、フレームの燃焼に寄与する。しかし、従来の気体噴霧器では、大きすぎる物質及びガスフローが、プラズマフレームを吹き消すであろうという問題が生じる。このことを回避するために、サンプル及び燃焼ガスの両方の流速を減少させている。これは、噴霧器のキャピラリの内径(0.2mm)を減少させることにより達成されている。しかし、結果として、噴霧の有効性も急減する。その上、キャピラリの端部での析出及びその後の閉塞により、1重量%を超える濃度の溶液は、一般に役に立たなくなった。
【0006】
生じる一次エアロゾルは、幾分不均一な液滴サイズ分布を呈するので、球状衝突体が、噴霧器の前に置かれる。一次エアロゾルの液滴をこの衝突体と衝突させることにより、液滴が更に粉砕されると共に、より大きな液滴が簡単に捕捉される。その後、このように生じた二次エアロゾルを、同心円状に取り付けられて半径方向に置かれたバッフルプレートへ、搬送ガスと共に通過させる。結果として、より大きな液滴が再度捕捉される。このように得られる三次エアロゾルの液滴サイズ分布は、約5μmであろう。
【0007】
超音波噴霧の研究により、噴霧の有効性を更に向上させようとしている。コアとなる特徴は、周波数範囲200kHz〜10MHzの周波数を有する超音波の生成に適する、又は生成できる発生器を利用することである。発生器の振動により、液体/ガス界面で生成される波は、エアロゾルの発生を誘発する。この方法で生じる平均液滴サイズ分布は、噴霧される液体の表面張力及び密度、並びに超音波源の周波数に依存する。超音波噴霧器は、2つのグループに分けることができる。第1のグループに属する噴霧器の場合、溶液が化学的耐性のある圧電性結晶上へ誘導されるのに対し、別のグループの場合、縦波(又は圧力波)を伝送する媒体が、溶液と、振動できる圧電性結晶との間に導入される。気体噴霧と比較して、超音波噴霧は、より均一な液滴サイズ分布を生じさせる。その上、液滴の物理的特性は、超音波源の周波数を変えることにより制御できる。
【0008】
スプレー、特に超音波スプレーは、コーティングの分野で可能な技術的手段として最も頻繁に使用されており、この場合、数マイクロメートルの均一な層厚、再現性、及び生産性が非常に重要である。スプレーが適用される場合、主に無機材料が、異なる幾何学的形状の表面に適用される。同様の技術は、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)であり、これも、主に、高温及び真空における、所定の無機化合物による表面のコーティングに役立つ。
【0009】
特許文献1は、1つ以上の蒸発非極性物質を熱分解堆積システム内へ誘導し、硫化カドミウム光起電フィルムを形成する解決策を開示している。この目的に向けて、溶解状態で、カドミウム、硫黄、及び少なくとも1つの更に選択される物質を含む溶液が使用される。溶液の更に選択される物質(アルコール)は非極性であり、水よりも速く蒸発するが、熱容量は水よりも小さい。混合物は、熱分解堆積システム内に配置され、このシステムは、1つ以上のスプレーヘッド及び1つ以上の加熱デバイスを含む。望ましい層が物質上に堆積し、この物質のスプレーヘッドからの距離は調節可能であり、この物質の温度は1つ以上の加熱デバイスによって制御できる。
【0010】
前記文献によると、スプレー/噴霧方法が、熱分解堆積システムで実施されるが、この場合、有機化学反応は起こらない。なぜなら、適用されるプロセスは、実質的に無機物質に基づくからである。更に、手順完了時に、化学変換は起こらない。
【0011】
特許文献2は、低分子量の医薬成分を超音波アトマイザによりマイクロカプセル化する方法を教示している。適用される装置は、同軸アトマイザ、2つの液体入口、及び超音波発生器を備える。1つの液体は内側ノズルを通って流れ、別の液体は外側ノズルを通って流れる。両方の流れは、同じアトマイズ面を通過し、このアトマイズ面で、振動エネルギーにより、混合物はマイクロ液滴に粉砕される。このように得られる粒径分布は、1〜100μmである。超音波アトマイザは、低エネルギーで作動するので、生体物質、例えば血液、抗体、及び細菌を損傷しない。
【0012】
前記プロセスは、低温で、混合される2つのシステムの存在下で起こり、目的は、コーティングされている活性成分を得ることである。熱分解の典型的な環境下では、有機化学反応は起こらない。更に、超音波スプレーシステムは、最適な混合及び粒径を達成するために使用されており、超音波スプレーを使用して化学的活性を増加させることは、前記文献に記述も暗示もされていない。
【0013】
特許文献3は、有機金属含有化合物及び触媒(金属有機構造体(MOF:metal organic framework)と称される)を生成できるデバイスについて報告している。一般に、水熱プロセスが適用され、結晶がゆっくりと、高温の金属(例えば金属塩)溶液から成長する。結晶は、ゆっくりと可逆的に成長するので、結晶中に欠陥を形成する可能性が高い。欠陥が生じる場合、結晶を再度溶解させなければならないので、結晶のサイズ範囲がミリ〜マイクロメートルとなる。また、前記文献は、少なくとも1つの金属イオン、及び少なくとも1つの2価の有機配位子が、溶媒の存在下で、スプレードライヤーに供給される方法も開示している。混合物はノズルを通過し、このように生成する液滴を、高温ガスによって分散させる。結果として、合成に必要とされる反応時間は著しく減少し、乾燥した結晶を回収でき、濾過及び更なる加工工程を回避できる。
【0014】
以前の方法と比較して、有効性が著しく改善された製造方法は、80〜200℃の温度範囲のみを対象とする。その上、この方法は、超音波スプレーユニットを適用していない。なぜなら、達成すべき目的は、小さな粒径分布及び反応混合物の反応性の増加を含まないからである。
【0015】
また、スプレー熱分解技術は、有害材料を処分するために使用される適用においても知られている。特に、特許文献4は、包装された有害かつ毒性の医療廃棄物を、800℃に加熱した溶融金属により破壊するためのシステムを教示している。反応器は、二部式熱分解ユニット、及び溶融金属用の下部出口を備え、この下部出口は、第1の燃焼チャンバから、包装体が供給される第2の燃焼チャンバにつながる。ガラス物体は溶融金属の表面で溶融し、耐食鋼、例えば注射針の材料、及び更なる金属物体は溶解し、有機物質は燃焼し、構成成分に分解する。熱分解生成物の経路は250℃に加熱されるので、全ての病原体及び有害材料が、上記のシステムで破壊される。
【0016】
廃棄物を破壊する場合、一般に、温度、流速、及び他のパラメータの変更により、精巧な反応経路を制御する必要はない。したがって、この分野のスプレー熱分解は、下記で詳細に記載される技術とは比較できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2012/033786号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0230819号明細書
【特許文献3】国際公開第2013/050402号
【特許文献4】米国特許第5,359,947号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】「Flash Chemistry:Fast Chemical Synthesis by Using Microreactors」、Chemistry−A European Journal 14(25),pp.7450〜7459,2008
【非特許文献2】Arrheniusの関係式−K.J.Laidler,Chemical Kinetics,Third Edition(1997),Benjamin−Cummings
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
前述の項目によると、スプレー技術は、一般的な有機化学研究室で、熱有機化学反応を行うためには普及していないように思われる。この理由は、とりわけ、技術の入手可能性が限定されていること、及び技術が未熟であることによる。
【0020】
先行技術の見地から、溶解物質及び/又は固相物質をスプレー、すなわちアトマイズ/噴霧して、不活性ガス又は試薬ガスを適用し、又は適用せずに、熱分解システムで単分子及び二分子反応を行うことができるデバイスが現在存在しないことも明白である。
【0021】
したがって、本発明の目的は、真空フラッシュ熱分解(VFP)反応を行うための、超音波スプレーユニット、すなわちアトマイザ/噴霧器を有する装置、特にこのタイプの流体反応器を提供することである。
【0022】
一般に、初期反応物の室温混合物は、ポンプ手段により流体反応器内へ供給された後、混合物が、反応器内で適切な温度に加熱される。この上昇した温度で望ましい化学反応が起こった後、反応混合物が冷却され、反応器外へ、更なる加工のために導かれる。流体反応器は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC:high performance liquid chromatography)の分野で最もよく知られているデバイス及び装置の使用を必要とする。なぜなら、HPLCデバイスも、高圧かつ連続フローで、少量の液体を取り扱うからである。したがって、HPLCデバイスと同一又は非常に類似している構成要素、例えばポンプ、パイプ、収容部、検出器等も、(マイクロ)流体反応器で使用できる。したがって、本発明による流体反応器に関して特に記述されない限り、以下では、用語「HPLCデバイス」は、当業者に既知のHPLCデバイスを指す。例えば、本発明の流体反応器のポンプが言及されている場合、特に記述されない限り、このポンプは、先行技術で既知のHPLCポンプを意味する。
【0023】
前述の事項と共に、本発明の別の目的は、基本的に(ただし排他的ではない)VFP反応を実施するための装置(以下、VFP装置)を使用するプロセスであって、温度及び/又は圧力に関して、より広いスケールで、好ましくは室温〜1000℃の温度範囲、及び/又は10
−3mbar〜400barの圧力範囲で、有機化学反応を行うために適するプロセスを提供することである。
【0024】
本発明の更なる目的は、流体反応器であって、VFP反応を行うことができ、連続フロー及び実験室スケールの、好ましくは流体反応器として分類できる反応器を開発することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、本発明の装置及びプロセスのためのスプレー(アトマイズ)手段、特に上記の本発明の流体反応器のためのスプレー(アトマイズ)手段であって、一方では、溶液をスプレーする場合に、所望により、均一な粒径分布、すなわちナノ及びマイクロメートルサイズの範囲の粒径分布を提供することができ、他方では、溶液をアトマイズするために使用できるだけでなく、難溶性又は不溶性の固相物質を熱反応させるために適用可能である、スプレー(アトマイズ)手段を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的は、請求項1に記載のメソ流体反応器により達成される。反応器の更なる好ましい実施形態は、請求項2〜15に明記されている。
【0027】
特に、1つの態様では、本発明の目的は、連続フロー反応器であって、断熱マルチゾーン加熱ユニット、反応器チューブ、出発材料(液体)を輸送するためのチュービング及びHPLCポンプ、不活性/試薬ガス、不活性/試薬ガスの方向を制御するための制御バルブ、不活性/試薬ガスを測定し、制御するための質量流量計、圧力計、固体材料を保管するための容器(又は固体容器)、変換された材料を回収するための生成物トラップ、真空の使用を可能にするための真空タップ、及び真空ポンプ(真空度を測定し、制御するためのユニット)、並びに高圧スプレーヘッドを備え、この高圧スプレーヘッドが、超音波発生圧電性結晶ユニット及びノズルを備える、連続フロー反応器により達成される。
【0028】
より詳細には、多機能装置であって、変換される出発材料が、所定の真空度及び特定の温度でガス相/蒸気相(すなわち、特に蒸発及び/又は昇華した相)になる多機能装置が開発されている。変換で得られる生成物は、VFP装置を使用して、予熱領域で凝縮し、高温で、大きなエネルギー障壁を超えることにより、ミリ秒の接触時間で、化学変換が促進される。VFPシステムは、一般に、単分子変換に使用できる。なぜなら、真空の場合、平均自由行程は通常、分子内反応を好むからである。超音波スプレーモジュール(又は、気体スプレーモジュールとも呼ばれる)も、本発明による多機能装置の一部を形成する。モジュールでは、二分子(分子間)化学反応も、不活性/試薬ガスの供給で行うことができる。
【0029】
更に、不均一触媒の、二分子及び多相化学プロセスを行うための高圧(400bar)及び高温(600℃)モジュールも実現される。
【0030】
特に、3つのモジュールを有する超音波VFP装置が開発され、装置は、適用可能なパラメータの範囲を広げており、温度に関しては室温〜1000℃、圧力に関しては10
−3mbar〜400barである。
【0031】
超音波スプレーヘッドを備える気体スプレーモジュールであって、メソ流体反応器として実施される、本発明のVFP装置の一部を形成するスプレーモジュールは、液相試薬溶液及び固体物質の両方をアトマイズできるユニットと、温度1000℃で装置に不活性ガス及び/又は更なる試薬ガスを供給するユニットとの組合せによって提供される。したがって、モジュールは、不揮発性物質を反応内にもたらすために適し、かつ二分子及び均一触媒反応を液相及び気相で実施するために適する。HPLCポンプについて、チュービングの内径及び流れの性質、出発材料の供給は、マイクロ流体レジーム(microfluidic regime)に分類される。したがって、適用される気体スプレーモジュールでは、単位時間当たりに反応体積(reaction volume)内に導入される材料の量を十分に追跡でき、流速及び濃度の関数として計算できるという利点を有する。
【0032】
メソ流体反応器として実施される本発明のVFP装置の一部を形成する気体スプレーモジュールは、固体状態の難溶性又は不溶性の物質をアトマイズするためにも適する。気体スプレーヘッドの1つ以上の電動圧電性結晶の機械的運動により、より大きな粒径(例えば、マイクロメートル、mm)を有する微粒子固体材料は粉砕される。機械的運動の強度は、適用される圧電性結晶の放射周波数(emission frequency)によって変更することができる。1つ以上の圧電性結晶は熱を生じ、この熱を使用して、固体物質の昇華の必要熱量をカバーできる。このように粉砕した固体物質は、容器内で0.2〜0.3barの緩衝圧力(cushioning pressure)を維持しながら、反応体積内へ供給され、反応体積を通過するのと同時に、所望の/計画の化学的転換/変換が起こる。
【0033】
変換が成功するための基礎は、好ましい設計の超音波スプレー器を備える気体スプレーヘッドから高速で出る分子が、キャリアガスによって更に加速されることにより、反応が高温反応器で数ミリ秒間(ms)のみ起こることである。物質を誘導し、滞留時間を増加又は減少させ、すなわち制御することは、好ましくは、真空を適用し、導入されるキャリア/試薬ガスの流速を調節することによって行われる。極めて短い滞留時間により、反応する物質は、熱分解しない。超音波スプレー器を有する本発明のVFP装置、好ましくはメソ流体反応器は、幅広いパラメータ範囲で作動するので、実現可能な化学反応の範囲を広げる。装置の超音波スプレーユニットは、噴霧の有効性が高く、導入される不活性/試薬ガスが可変であるので、更なる種類の反応を行うことができる。
【0034】
超音波スプレーユニットにより、低濃度又は中間濃度の溶液を取り扱うことができる。本発明による装置は、固体材料を超音波スプレーヘッドから導入するために適し、また、不活性/試薬ガス又は真空を適用するために適する。
【0035】
我々の研究では、マイクロメートルサイズであり、ナノサイズでない粒子が反応する場合であっても、不揮発性物質が高い反応性を示すという、予期しない結論に至っている。
【発明の効果】
【0036】
前述の事項の見地から、メソ流体反応器として実施されるVFP装置は、次の有利な特徴を有する。
− 単分子及び二分子反応を、室温〜1000℃の温度範囲で、msの滞留時間で実施するために適し、反応器チューブの壁に沿った、導入される不活性ガスの螺旋流が材料の流れの方向を規定し、物質と反応器の壁との衝突を防ぐ。
− 内部寸法(すなわち円筒状の流れ断面の直径)は、数mm〜cmオーダーのサイズ範囲内にあり、難溶性又は不溶性固体物質も反応させることが可能でもあり、この場合、超音波源が、固体物質を昇華させるために必要とされる熱エネルギーを供給した後、導入されるガス/真空が、反応体積を通って物質を誘導する。
− 不活性ガスに加えて、他の試薬ガスも、キャリアガスとして、既知の制御された流速で導入できる。
− スプレーヘッドが、超音波ユニット及び気体ユニットと組み合わせられ、均一な粒径分布(>20μm)を許容する。
− スプレーヘッドの超音波ユニットの廃熱が好ましくは使用され、導入されるガスを予熱するので、超音波ユニットは、インプットガスの熱交換器として機能して、反応ゾーンの温度を維持すること、及び望ましくない冷却を防ぐことを助ける。
− 得られる生成物は、適切に冷却された生成物トラップ/生成物凝縮器で回収される。この冷却は、好ましくは、ドライアイス及びアセトンの混合物、若しくはこの混合物で満たされたチラー、液体窒素若しくは他の溶媒、ペルチェ素子、クエンチャ、還流冷却器、又は当業者に既知の任意の他の種類の熱交換器により達成される。生成物トラップは、水冷によっても構成できる。
− 出発材料の溶液の流速を変えることができ、技術的構成は、溶媒の種類の影響を受けにくい。
− 出発材料の溶液のスプレー圧が、大気圧〜400barの範囲である。
− 反応器の反応体積(好ましくは反応器チューブ12)の加熱は、少なくとも3つの別個の検出及び制御ゾーンT
1、T
2、T
3を含む。炉ゾーンの異なる温度は、特にこの目的のために設計された分割器によって提供される。
− 装置の反応器チューブの加熱は、間接的な加熱原理に基づいており、これは、反応器チューブの長さ全体に沿って、ゾーンごとに、均一な温度分布を許容する。この構成は、非常に速い温度の調節が許容するので、反応混合物中の不利な温度勾配の形成を妨げる。
【0037】
以下では、添付図面を参照して、本発明を詳細に検討する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明によるメソ流体反応器として実施されるVFP装置の好ましい例示的な実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】本発明によるVFP装置で使用される気体スプレーモジュールの、可能性のある例示的な実施形態を示す概略断面図である。
【
図3A】流速及び超音波周波数の関数として、本発明によるメソ流体反応器として実施されるVFP装置によるGould−Jacobs 6π電子環化反応の単離収率を示すグラフである(詳細は、実施例1に関して詳細に検討される)。
【
図3B】流速及び超音波周波数の関数として、本発明によるメソ流体反応器として実施されるVFP装置によるGould−Jacobs 6π電子環化反応の単離収率を示す表である(詳細は、実施例1に関して詳細に検討される)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による高温メソ流体反応器として好ましく実施されるVFP装置が、
図1に示されている。
図1によると、本発明の装置の構成要素は、2つの異なる作動モード(i)及び(ii)(すなわち、それぞれ溶液及び/又は固体材料のアトマイズ)に応じて、下記の通り接続される。
【0040】
(i)(液相)出発材料は、容器1内に配置される。容器1は、任意で、必要な場合、液体の輸送に適するポンプ2、好ましくはHPLCポンプ、及び液体の輸送に適するチュービング3を通じて、高圧スプレーヘッド4(
図2を参照のこと)に接続される。高圧スプレーヘッド4は、圧電性結晶ユニット(好ましくは超音波範囲を発する)及びノズルを備える。このノズルはスプレーチップを有し、スプレーチップは、内径が、好ましくは0.5mm、より好ましくは0.2mm、最も好ましくは約0.1mmである。出発材料をスプレーヘッド4内へ供給することは、チュービング3を通じて、任意でポンプ2を作動させることによりなされる。スプレーヘッド4は、導管10を通じて、不活性ガス及び他の試薬ガスのガス源6に接続され、ガス源6は、例えば、1つ以上のガスシリンダ若しくはガス発生器(インサイチュでのガス発生)又はこれらの組合せによって提供される。不活性ガス及び他の試薬ガスの流路は、導管10によって規定され、ガス源6からスプレーヘッド4の方へ向けられており、この流路では、制御バルブ7、質量流量計8、及び圧力計9が、ガスの流れの方向に順々に配置されている。スプレーヘッド4は、好ましくは、本発明による装置の管状反応器チューブ12の入口側に、封止されて接続されている。反応器チューブ12によって規定され/囲まれる反応体積の温度を、所望により調節するために、反応器チューブ12の長さ全体が、加熱ユニット11内に配設されている。反応器チューブ12の排気側は、冷却された生成物トラップ13へと開放しており、生成物トラップ13は、高温反応体積から出てくる変換された物質を冷却することにより凝縮/析出させるために機能する。最後に、真空タップ14及び真空ポンプ15が、生成物トラップ13の出口に接続されている。
【0041】
(ii)不活性ガス及び他の試薬ガスは、ガス源6から、制御バルブ7、質量流量計8、及び圧力計9を通って、導管10を経由して、固体容器5に入る。固体容器5は、この場合、固相出発材料を収容している。ここで、固体容器5は、スプレーヘッド4に直接、本質的に直角に下から接続されている。更に、スプレーヘッド4は、反応器チューブ12の入口側に直接接続されている。反応器チューブ12の長さ全体は、加熱ユニット11内に配設されている。反応器チューブ12の排気側は、作動モード(i)と同様に、冷却された生成物トラップ13へと開放しており、生成物トラップ13は、反応器チューブ12から出てくる変換された物質を冷却することにより凝縮/析出させるために機能する。この場合も、真空タップ14及び真空ポンプ15が、生成物トラップ13の出口に接続されている。
【0042】
反応器チューブ12の平均直径、すなわち反応器チューブ12によって範囲が定められる反応体積の平均直径は、少なくとも10mm、好ましくは少なくとも15mm以上であり、その長さは、10mm〜2000mmの範囲から任意選択により選択され得る。比較的大きな内径を有する反応体積の利点は、任意で、互いに平行ないくつかの反応器チューブに分割できることである。これは、1本より多い反応器チューブ12を、一度に加熱ユニット11内に配置できることを意味する。このような場合には、必然的に、本発明による化学的メソ流体反応器100の入口側及び排気側に、変更が必要とされる(例えば、スプレーユニット又は生成物トラップの数及び配置/接続に関する変更)。反応器チューブ12は、好ましくは、ホウケイ酸塩、石英、Pyrexガラス、耐食鋼及びHastelloy材料の群から選択される材料で作られている。
【0043】
変換された物質を回収するための生成物トラップ13は、好ましくは、予め冷却された大きな表面積の凝縮器又は溶媒吸収体の形態で設けられる。不活性/試薬ガスは、水素、窒素、酸素等のいずれかであってもよい。質量流量計8、制御バルブ7、及び圧力計9は、不活性/試薬ガスの圧力及び流れを制御するために機能する。物質の流れを誘導し、滞留時間を減少させるために、真空ポンプ15が適用される。装置のこれらの構成要素であって、液相出発材料を供給するために使用される構成要素は、(それぞれのパラメータに関して)マイクロ流体範囲に属する。固相出発材料の供給は、固体容器5によって、適切かつ既知の方法/手段で行われる。
【0044】
本発明によるメソ流体反応器として実施されるVFP装置の超音波スプレーヘッドを有する気体スプレーモジュールの構造は、
図2に示されている。
【0045】
本発明のメソ流体反応器として実施されるVFP装置の超音波スプレーヘッド4は、一方では、供給原料容器8を通り、他方では、断熱ガスパイプ15を通って、互いに通信するアトマイザ19及び超音波ユニット25を備え、この断熱ガスパイプ15は、不活性/試薬ガスを輸送するために機能する。
【0046】
液相出発材料及び/又は固相出発材料は、供給原料容器8に供給される。超音波ユニット25は、1つの(任意で1つより多い)圧電性結晶1を含む。機械的仕事による体積変化を受け入れるために、少なくとも1つの圧電性結晶1は、パディング2で覆われている。化学的耐性を確保するために、圧電性結晶1の表面であって、出発材料と接触する表面は、セラミックプレート3で被覆されている。本発明による装置の超音波ユニット25は、熱交換器としても機能する。この目的に向けて、パディング2で覆われている圧電性結晶1は、円筒状のエンベロープの形態で、等間隔の溝4を有するアルミニウムブロックに囲まれている。溝4は、圧電性結晶1から離れる方に面するブロックの側面(すなわち、ブロックの外側)に形成されている。気密性を提供するために、溝4は、ポリマー/PTFE封止ジャケット5で被覆されており、ポリマー/PTFE封止ジャケット5は、アルミニウムブロックの表面に対して押し付けられている。封止ジャケット5の外表面は、嵌合されたアルミニウム/鋼ケーシング6によって円筒状に囲まれ、支持されており、また、アルミニウム/鋼ケーシング6は、このように得られる、作動時に熱交換器として機能するユニットの耐圧性も確保する。不活性/試薬ガスは、超音波ユニット25のガス入口7から、ユニットの入口接続部13を通って超音波ユニット25に入る。この方法で、不活性/試薬ガスは、溝4内を通り、溝4は、ガス入口接続部13と連通している。ここで、不活性/試薬ガスの予熱は、圧電性結晶1の作動中に生じる熱(この熱は、特定の場合には、反応に不利である)を用いて、流入する不活性/試薬ガスを予熱することによって行われる。流入する不活性/試薬ガスは、好ましくは螺旋状に形成されている溝4に沿って流れることにより、圧電性結晶1によって生じる熱を吸収し、温かくなる。次に、不活性/試薬ガスは、超音波ユニット25の排気接続部14を通って出て、ガスパイプ15を通過した後、接続及び温度計取付けブロック17を通って、アトマイザ19に入る。また、ガス予熱は、適切な構造材で作られた適切な(実用的には小さな)直径のガス輸送チューブを、溝4に挿入することによっても実現できる。ここで、伝熱の有効性の大幅な低下も考慮するべきである。
【0047】
アトマイザ19は、好ましくは耐食鋼、石英、ホウケイ酸塩、Pyrexガラス、Hastelloy材料、PEEK材料、及びTeflonの群から選択される構造材で作られている。
【0048】
不活性/試薬ガスが、アトマイザ19内に形成されているキャピラリ20を高速で通過することにより、真空が生じる。このように生じる真空は、小さなサイズの微粒子物質を吸い上げる。この微粒子物質は、超音波ユニット25によって小さな粒子に粉砕され、かつ/又は圧電性結晶1及びセラミックプレート3の表面で生じる熱によって昇華したものである。この微粒子物質は、供給原料容器8から、供給原料チューブ9を通って吸い上げられる。供給原料チューブ9は、キャピラリ20に対して実質的に垂直に延びており、供給原料容器8内へ開放している。その後、真空は、微粒子物質を流れにスプレー/アトマイズすることにより、微粒子物質を反応器チューブ22の方へ輸送する。反応器チューブ22は、封止リング21に沿って、気密状態でアトマイザ19に接続される。噴霧の有効性を向上させるために、溶液の場合には、溶液に、超音波ユニット25の少なくとも1つの圧電性結晶によって発揮される動的な機械的衝撃が与えられる。これにより、液滴が溶液の表面を離れて動かされ、キャピラリ20の方へ、更に反応チューブ22の方へ、不活性/試薬ガスの流れによる供給原料チューブ9内の真空により輸送される。
【0049】
供給原料容器8は、ねじ接続部12によって、アトマイザ19に接続される。昇華した材料が低温の箇所で析出することを回避するために、接続部は、調節ジャケット23で囲まれている。不活性/試薬ガスの予熱により放散される熱量が少なすぎる場合、調節ジャケット23を外側で冷却してもよい。したがって、圧電性結晶1が作動する際に生じる熱によって、溶液がセラミックプレート3の表面から蒸発することを簡単に回避できる。供給原料容器8の温度は、温度計によって測定され、この温度計は、熱電素子取付け開口部10を通って方向付けられ、適切な封止リングによって、供給原料容器8に封止される。
【0050】
接続及び温度計取付けブロック17内に封止部18により封止される温度計によって測定される温度データに基づいて、不活性/試薬ガスの温度も、断熱/パイプ加熱部16によって、不活性/試薬ガスがアトマイザ19に入る前に制御される。所望の温度の不活性/試薬ガスがアトマイザ19に到達することを保証するために、ガスの熱損失を補填し、ガスパイプ15内で、測定される温度データの関数として、ガスを更に加熱する。これにより、反応体積の温度勾配を、反応体積の入口箇所で減少させることができる。
【0051】
圧電性結晶1には、連続的に、又はむしろ周期的に、電気接続部24を通じて電圧がかかる。この電圧は、圧電性結晶の種類に合うものである。超音波ユニット25が作動する場合、これは、一度に単一の周波数のみで作動できる。圧電性結晶1は、交換可能なユニットとして形成されているので、達成される周波数に応じて、ユニットを変更できる。所定の電圧を圧電性結晶にかけることにより作動し、この電圧は、矩形信号によって調節される。矩形信号のデューティ比に応じて、超音波は連続的又は動的、パルス状になるであろう。
【0052】
超音波スプレーヘッドを有する、メソ流体反応器として実施されるVFP装置は、基本的に、次の2つの適用分野で使用しやすい。(i)廃熱を使用して不活性/試薬ガスを予熱し、溶液を、マイクロメートルレジームの小さな粒径分布でアトマイズする分野、及び(ii)難溶性又は不溶性固体を噴霧/昇華させる分野。しかし、構造上の統一性に関して大幅に変更せずに、したがって、下記で特許請求される保護の範囲を超えずに、本装置を、上記で定義された分野と異なる他の用途分野でも使用できることが、当業者には明白である。
【0053】
作動モード(i)では、出発材料の溶液が、超音波スプレーヘッド4に、下から入る。これは、ポンプ2によって、又はベンチュリの原理により輸送される。溶液は、直径が約0.2mmのチューブ/キャピラリを通じて、システムの抵抗によって高くなる圧力で、反応器チューブに入る。不活性/試薬ガスは、キャピラリの全周に沿って、システム内に供給され、これは、反応体積に入る液滴のサイズを減少させ、分散させる。液滴の粒径分布を更に減少させるために、超音波スプレーヘッド4を(n作動)周波数で作動させる。(n作動)周波数は、500kHz〜5MHzで自由に変更できる。この方法で、アトマイズの程度が制御される。超音波を生じる、通電された圧電ユニットは、作動中に熱を生成する。この廃熱を使用して、導入される不活性/試薬ガスを予熱し、流入ガスによる温度勾配を減少させる。良好な伝熱を達成するために、利用される圧電性結晶とチューブ/チューブのコイルとを、例えば、素子を直接又は間接的に接触させることによって、機械的に結合させる。間接的な接触は、例えば、良好な熱伝導を有する材料を、圧電性結晶とチューブ/チューブのコイルとの間に挿入することによって実現される。この方法で、ガスが確実に、所望の程度で温められる。
【0054】
作動モード(ii)では、上から超音波スプレーヘッド4に接続されている固体容器5内で、バルブ7及び圧力計9を通じて導入される不活性/試薬ガスにより、約0.2〜0.3barの緩衝圧力が生じ、維持される。圧電性結晶の機械的仕事を活用することにより、粒径分布は、ミリメートル範囲及び/又は数百マイクロメートル範囲から、100〜250μmの範囲まで減少する。この方法で、一方では、物質を固体流体(すなわち微粉材料)として取り扱うことができ、他方では、圧電性結晶の表面で生じる熱が、結晶の昇華を誘発する。このように得られるガス状物質を、その後、緩衝圧力を提供する不活性/試薬ガスに混入させ、反応体積内に流す。
【0055】
加熱される反応器チューブ12の加熱は、間接的な加熱により(例えば、赤外放射、加熱カートリッジ、加熱フィラメント、熱風等により)なされる。したがって、室温(ここでは、約20〜25℃)〜少なくとも約1000℃の任意の温度を、反応体積内で達成できる。加熱される反応体積は、伝熱係数が低い複数の層の断熱材によって囲まれている。複数の別個の反応器ゾーンを含む炉の温度は、1ゾーンごとに、少なくとも1つの温度感知手段によって測定され、好ましくは、炉室の所定のゾーンに配置される温度センサによって測定される。
【0056】
高温に加熱されるメソ流体サイズ範囲の反応器チューブ12は、加熱ユニット11の内部に、長さ全体に沿って配置されている。超音波スプレーヘッド4は、入口側に位置しているのに対し、予め冷却された大きな表面積の物質析出/凝縮生成物トラップ13は、加熱ユニット11の排気側に位置している。
【0057】
任意で、物質の流れを方向付けるため、及び滞留時間を更に減少させるために、真空ポンプ15が利用される。真空ポンプ15は、例えば、適切なチュービングにより、物質析出/凝縮生成物トラップ13の出口に接続されてもよい。
【0058】
本発明による、超音波スプレー手段を有するメソ流体反応器として実施される、VFP装置の好ましい例示的な実施形態は、次の非限定的な技術的パラメータを呈する。
− 温度範囲:室温(すなわち約20〜25℃)〜1000℃
− 温度制御の精度:100℃以下では±3%、100℃超〜1000℃以下では±2%
− 公称圧力:10
−3mbar〜3bar
− 不活性/試薬ガスの流速:1〜10000mL/分
− 溶液の流速:0.1〜1000mL/分
− 溶液の圧力:約1bar(大気圧)〜400bar
− 適用される超音波周波数:500kHz〜5MHz
− 反応器のサイズ:500×26mm
【0059】
以下では、本発明による、超音波スプレー手段を備える化学反応器で行われる、いくつかの化学反応、及び関連する測定結果をより詳細に検討する。化学反応器は、適切に変更される場合(例えば、圧力、温度等に関して)、他の化学反応を実施するためにも、同様に適することが、当業者には自明である。したがって、下記で検討される化学反応は、例として解釈されるべきであり、本発明の化学反応器の適用の範囲を限定しない。
【実施例】
【0060】
実施例1:Gould−Jacobs 6π電子環化反応
【化1】
【0061】
【表1】
【0062】
真空フラッシュ熱分解(VFP)デバイスでのGould−Jacobs 6π電子環化実験
200mgの量の出発材料を、デバイスの蒸留フラスコ内へ秤量した。その後、予熱器の温度制御ユニットを150℃に設定し、反応器の温度制御ユニットを450℃に設定した。設定された値に達し、安定した後、10
−3mbarの真空をシステム内に生成した。温度及び真空により、出発材料は昇華し始め、数秒後、反応器から得られた生成物が生成物トラップに現れる。この生成物トラップは、−78℃に予め冷却されており、500mmの長さの反応器チューブの出口に配置されている。得られた生成物を、トラップから、アルコール及び/又はジクロロメタンに溶解させた後、溶媒を蒸発させる。必要であれば、生成物を更に精製する。
【0063】
超音波真空フラッシュ熱分解(UVFP)デバイスでのGould−Jacobs 6π電子環化実験
1390mgの量の出発材料を、蒸留フラスコ内へ秤量した後、50mLのジメチルアセトアミド(DMA)に溶解させる。この方法で、濃度0.1Mの溶液を得た。反応器の温度制御ユニットを450℃に設定した。溶液の流速を0.5mL/分に設定し、窒素ガスフローを2L/分に設定し、超音波ユニットの周波数を1.7MHzに設定した。HPLCポンプによって、溶液が流れ始めてから数秒後、回収される生成物が、大きな表面積の生成物トラップに現れ、この生成物トラップは、−78℃に予め冷却されている。出発材料の溶液が入口で尽きるとすぐに、生成物をトラップから排出し、溶媒を蒸発させた。必要であれば、生成物を更に加工する。
【0064】
図3A及び
図3Bはそれぞれ、グラフ及び表の形態で、Gould−Jacobs 6π電子環化反応の単離収率を、適用された流速及び周波数(本発明によるメソ流体反応器として実施されるVFP装置の場合)の関数として示している。最適化する場合(シンプレックス法)、液体流速及び超音波周波数のみを変更し、全ての他のパラメータを変更せずに維持した。得られた測定結果は、例えば、前述の化学反応の場合、超音波の適用が、反応の過程について、最適化効果を発揮することを明らかに示しており、すなわち、超音波が適用される場合、単離収率を最大にできる。
【0065】
実施例2:Conrad−Limpach環化反応
【化2】
【0066】
【表2】
【0067】
真空フラッシュ熱分解(VFP)デバイスでのConrand−Limpach環化実験
200mgの量の出発材料を、デバイスの蒸留フラスコ内へ秤量した。その後、予熱器の温度制御ユニットを150℃に設定し、反応器の温度制御ユニットを450℃に設定した。設定された値に達し、安定した後、10
−3mbarの真空をシステム内に生成した。温度及び真空により、出発材料は昇華し始め、数秒後、反応器から得られた生成物が生成物トラップに現れる。この生成物トラップは、−78℃に予め冷却されており、500mmの長さの反応器チューブの出口に配置されている。得られた生成物を、トラップから、アルコール及び/又はジクロロメタンに溶解させた後、溶媒を蒸発させる。必要であれば、生成物を更に精製する。
【0068】
超音波真空フラッシュ熱分解(UVFP)デバイスでのConrand−Limpach環化実験
1050mgの量の出発材料を、蒸留フラスコ内へ秤量した後、50mLのジメチルアセトアミド(DMA)に溶解させる。この方法で、濃度0.1Mの溶液を得た。反応器の温度制御ユニットを450℃に設定した。溶液の流速を0.4mL/分に設定し、窒素ガスフローを2L/分に設定し、超音波ユニットの周波数を2.0MHzに設定した。HPLCポンプによって、溶液が流れ始めてから数秒後、回収される生成物が、大きな表面積の生成物トラップに現れ、この生成物トラップは、−78℃に予め冷却されている。出発材料の溶液が入口で尽きるとすぐに、生成物をトラップから排出し、溶媒を蒸発させた。必要であれば、生成物を更に加工する。
【0069】
本教示の見地から、本発明によるメソ流体反応器として好ましく実施される超音波VFP装置は、VFP反応以外の化学反応を行うためにも同様に適することが、当業者に明白である。
【国際調査報告】