(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-519637(P2017-519637A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(54)【発明の名称】多様な範囲の疎水性を持つヒドロコロイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/00 20060101AFI20170623BHJP
【FI】
B01J13/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-516626(P2017-516626)
(86)(22)【出願日】2015年6月18日
(85)【翻訳文提出日】2015年8月28日
(86)【国際出願番号】KR2015006164
(87)【国際公開番号】WO2016178455
(87)【国際公開日】20161110
(31)【優先権主張番号】10-2015-0063104
(32)【優先日】2015年5月6日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】515238183
【氏名又は名称】スンシル ユニバーシティー リサーチ コンソーシアム テクノ−パーク
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジェヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リュ ヒウク
(72)【発明者】
【氏名】キム ユンゴン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒジン
【テーマコード(参考)】
4G065
【Fターム(参考)】
4G065AB03Y
4G065AB06X
4G065AB06Y
4G065AB09Y
4G065AB11Y
4G065AB19X
4G065AB19Y
4G065AB35X
4G065AB35Y
4G065BB06
4G065CA15
4G065DA01
4G065DA02
4G065EA01
4G065EA05
4G065EA10
4G065FA01
(57)【要約】
本発明は多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドの製造方法に関するもので、より詳細には、ヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入して疎水性ヒドロコロイド分子を製造する段階、及び純粋ヒドロコロイド分子に上記疎水性ヒドロコロイド分子を添加し、ゲル化させて製造される疎水性ヒドロコロイドの製造方法に関する。
本発明によれば、疎水性分子導入のための合成中、ヒドロコロイド分子の分解なしに安全に疎水性分子を導入することができ、混合割合によって多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入して疎水性ヒドロコロイド分子を製造する段階;及び
水溶液上で純粋ヒドロコロイド分子に上記製造した疎水性ヒドロコロイド分子を添加してゲル化する段階;
を含む多様な範囲の疎水性を持つヒドロコロイドの製造方法。
【請求項2】
上記ヒドロコロイドはアガロース(agarose)、アガ(agar)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、ゼラチン(gelatin)、キサンタン(xanthan)、カラギーナン(carrageenan)、アルジネート(alginate)、寒天(agar gel)、ペクチン(pectin)、澱粉(starch)、グアル(guar)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、アラビアガム(arabic gum、ARA)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、CMC)、ゲランガム(gellan gum、GELL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate、ALG)、キサンタンガム(xanthan gum、XAN)など選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項3】
上記疎水性分子団は、アルキル鎖(alkyl chain、C12-18)、アルケニル(alkenyl)、アシル鎖(acyl chain、C12-18)、プロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG)及びポリカプロラクトン(poly(caprolactone)、PCL)の中で選択されたいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項4】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は、ヒドロコロイド分子にイソシアネート(isocyanate)合成法を利用して、疎水性分子団を導入して製造されることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項5】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は、疎水性置換度(Degree of substitution、DS)が5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項6】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は純粋ヒドロコロイド分子の総重量に0.1〜50重量%で添加されることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項7】
上記ゲル化は水溶液上、120℃で恒温加圧して行われることを特徴とする、請求項1に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項8】
上記恒温加圧以後、冷却または熟成段階をさらに行うことを特徴とする、請求項7に記載の疎水性ヒドロコロイドの製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法で製造され、接触角が5〜80度であることを特徴とする、多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、韓国の産業通常資源部の支援下で課題番号10048242でなされたものであって、上記課題の研究管理専門機関は韓国産業技術評価管理院、研究事業名は“技術料事業”、研究課題名は“機能性物質效能試験・安定性評価のための寒天基盤動物代替試験法及び自動測定システムの開発”、主管機関は崇実大学校産学協力団、研究期間は2014.06.01.〜2015.05.31.である。
【0002】
本発明は多様な範囲の疎水性を持つヒドロコロイドの製造方法に関するものであって、より詳細には、ヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入して疎水性ヒドロコロイド分子を製造する段階、及び純粋ヒドロコロイド分子に上記疎水性ヒドロコロイド分子を添加してゲル(gel)化させて製造される多様な範囲の疎水性を持つヒドロコロイドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近の世界化粧品市場の規模は約2257億ドルに成長し、韓国の市場規模は63億400万ドルで世界11位である。特に、2001年から導入された機能性化粧品は、その市場規模が徐々に増えていて、国内治療用化粧品市場は年間1200億ウォンの規模で毎年15%以上成長している。
【0004】
FTA体系の持続的推進などによって化粧品産業の国際的競争力の強化が急を要する。韓国企業の3代産業の一つである化粧品産業の輸出促進と国際競争力強化のための韓国独自の技術確保が切実な実情である。
【0005】
また、所得水準の向上、ストレスと環境汚染の深化、寿命延長などで美しさを長く維持しようとする現代人の欲求と重なって、皮膚の管理は日常的な生活形態になっており、これによって化粧品の效能への関心が高まっている。
【0006】
このような化粧品の效能評価は、主に人工皮膚細胞実験法、動物実験法、臨床実験法によって行われ、化粧品の機能によって実験法は多様に分けられる。
【0007】
補湿效能試験の場合、最近動物実験を反対する流れであるため、主に臨床実験として行われ、水気量測定法と硬皮水気損失量測定法で実施されている。しかし、皮膚というのは、私たちの身が外部環境に会う最も外の部分であるため、外部環境の変化に敏感に反応したり変化されることがあるし、内的には身体の疾病及び状態とも関わっていて、複雑なメカニズムで表れるようになる。したがって、客観的な機器を使って測定するとしても、人が過ごす周辺環境や生活態度、疾病などが皮膚に影響を及ぼすことがあるので、皮膚の状態を測定装備で判断するためには、個人の誤差も考慮しなければならない。このような方法は、高価の装備を使ってもコントロールの設定及び有意なデータを確保しにくい実情である。
【0008】
透明度試験の場合も皮膚光特性に対する研究の進歩によって皮膚の透明感を測定する方法や透明感に影響を与える要因が明かされており、今まで測定できなかった認知效能である透明感に対する評価が可能になった。しかし、このような試験方法も主に臨床実験で行われるので、統計的に有意なデータを確保しにくかった。
【0009】
現在、国内・外的に化粧品産業で動物実験に代わることができる人工皮膚の製作に集中している。しかし、人工皮膚の場合、製作時間と費用が莫大にかかるので、その活用には限界があった。
【0010】
一方、寒天は購入することが容易で、主に食用、工業用材料、医薬品の原料、微生物の固体培地、化粧品の原料として現在多様に使われていて、様々な応用製品として開発することができる。
【0011】
ここで、動物試験に代わって使用することが簡便で、機能性及び安全性を迅速に分析するために、多様な疎水性を持つ寒天を製造しようとする研究があった。しかし、既存の疎水性寒天の製造方法の場合、寒天分子に疎水性分子を導入することはできるが、合成過程中に寒天分子が分解される問題があった。また、寒天分子に疎水性分子がたくさん接がれるほど、最終的に製造された寒天の疎水性は低下される問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国登録特許第10-121571号
【特許文献2】韓国公開特許第10-2008-0044802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は疎水性分子を導入するための合成過程中、ヒドロコロイド分子の分解なしに安全に疎水性分子を導入して多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造できる疎水性ヒドロコロイドの製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は年齢別、環境別、構造的皮膚と類似の特性を有する試験法基盤の素材を開発することができて、簡便な使用方法で化粧品の機能性と安定性を迅速に分析することができる多様な範囲の疎水性を持つコロイドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を果たすために、本発明は
ヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入して疎水性ヒドロコロイド分子を製造する段階;及び
純粋ヒドロコロイド分子に上記製造した疎水性ヒドロコロイド分子を添加してゲル(gel)化する段階;
を含む多様な範囲の疎水性を持つヒドロコロイドの製造方法を提供する。
【0016】
上記ヒドロコロイドはアガロース(agarose)、アガ(agar)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、ゼラチン(gelatin)、キサンタン(xanthan)、カラギーナン(carrageenan)、アルジネート(alginate)、寒天(agar gel)、ペクチン(pectin)、澱粉(starch)、グアル(guar)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、アラビアガム(arabic gum、ARA)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、CMC)、ゲランガム(gellan gum、GELL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate、ALG)、キサンタンガム(xanthan gum、XAN)などであることができる。
【0017】
上記疎水性分子団は、アルキル鎖(alkyl chain、C12-18)、アルケニル(alkenyl)、アシル鎖(acyl chain、C12-18)、プロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG)、ポリカプロラクトン(poly(caprolactone)、PCL)などであることができる。
【0018】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は、ヒドロコロイド分子にイソシアネート(isocyanate)合成法を利用して、疎水性分子団を導入して製造されることができる。
【0019】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は、疎水性置換度(Degree of substitution、DS)が5%以下であることが好ましい。
【0020】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は純粋ヒドロコロイド分子の総重量に0.1〜50重量%で添加されることが好ましい。
【0021】
上記ゲル化は水溶液上、120℃で恒温加圧して行うことができる。また、上記恒温加圧以後、冷却または熟成段階をさらに行うことができる。
【0022】
また、本発明は上述の方法で製造され、疎水性置換度(DS)が5.0〜50%であり、接触角が5〜80度であることを特徴とする多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、疎水性分子を導入するための合成過程中、ヒドロコロイド分子の分解なしに、安全に疎水性分子を導入して多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造することができる。また、本発明によって製造された疎水性ヒドロコロイドは年齢別、環境別、構造的皮膚と類似の特性を有する試験法基盤の素材で開発されることができ、簡便な使用方法で化粧品の機能性と安定性を迅速に分析することができる試験素材として活用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例により、寒天分子に疎水性分子団を5%、20%でそれぞれ接いで製造した疎水性寒天分子の安全性を測定した結果を示した図である。
【
図2】本発明の一実施例により、寒天分子に疎水性分子団を5%で接いで製造した疎水性寒天分子の構造を分析及び確認した結果を示した図である。
【
図3】本発明の一実施例により、疎水性寒天分子の置換度を異にして製造した寒天の接触角を測定した結果を示した図である。
【
図4】本発明の一実施例により、置換度が5%である疎水性寒天分子と純粋寒天分子の混合割合を異にして製造した寒天の接触角を測定した結果を示した図である。
【
図5】本発明の一実施例により、置換度が5%である疎水性寒天分子と純粋寒天分子を混合して製造した寒天の膨潤度及び内部構造の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明では既存のヒドロコロイド分子に単に疎水性分子団を導入するとしても、ヒドロコロイド自体が十分な疎水性を持つことができない問題点を克服するために、ヒドロコロイド分子に疎水性分子を安全に導入できる方法を開発し、これを利用して多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造しようとした。
【0027】
本発明はヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入し、この疎水性に置換されたヒドロコロイド分子を単純ヒドロコロイド分子に添加してゲル化させ、多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造する方法に関する。
【0028】
以下では、本発明の疎水性ヒドロコロイドの製造方法をより詳しく説明する。
【0029】
まず、ヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入して疎水性ヒドロコロイド分子を製造する。
【0030】
上記ヒドロコロイドは、溶媒で溶けず、溶解して粘性を持つゲル化物質なら制限なしに使うことができるし、例えばアガロース(agarose)、アガ(agar)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、ゼラチン(gelatin)、キサンタン(xanthan)、カラギーナン(carrageenan)、アルジネート(alginate)、寒天(agar gel)、ペクチン(pectin)、澱粉(starch)、グアル(guar)、ローカストビーンガム(locust bean gum)、アラビアガム(arabic gum、ARA)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethylcellulose、CMC)、ゲランガム(gellan gum、GELL)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethylcellulose、HPMC)、アルギン酸ナトリウム(sodium alginate、ALG)、キサンタンガム(xanthan gum、XAN)などが使われることができる。
【0031】
上記疎水性分子団はアルキル(alkyl)、アルケニル(alkenyl)、アシル鎖(acyl chain、C12-18)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG)、ポリカプロラクトン(poly(caprolactone)、PCL)などが使われることができる。
【0032】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は、ヒドロコロイド分子にイソシアネート(isocyanate)合成法を利用して疎水性分子団を導入することができる。一例として、下記反応式1にはヒドロコロイド分子の一種であるアガまたはアガロースをイソシアネート合成法によって疎水性に改質する反応を示す。
【0034】
上記反応式1のように、ヒドロコロイドの一種であるアガまたはアガロース分子は、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate)により、常温で疎水性分子団が導入されたアガまたはアガロースを形成し、上記合成法によって疎水性置換度(DS)が調節された疎水性ヒドロコロイド分子を形成するようになる。
【0035】
上記のように、イソシアネート合成法によってヒドロコロイド分子に疎水性分子団を導入すれば、合成過程中にヒドロコロイド分子が小さいヒドロコロイド分子に分解され、物性が低下される問題なしに安全に疎水性分子を導入することができる。
【0036】
既存ヒドロコロイド分子に単に疎水性分子団を導入する場合、ヒドロコロイド分子の分解によって疎水性分子が導入されても強度などの物性が低下され、また、ヒドロコロイド分子に疎水性分子団がたくさん接いでも、むしろ最終的に製造されたヒドロコロイドの疎水性は低下する問題があった。しかし、本発明ではイソシアネート合成法により、ヒドロコロイド分子の分解なしに安全に疎水性分子を導入することができて、ヒドロコロイド分子に疎水性分子団を多様な置換度(DS、1.0%〜50%)で導入することができる。
【0037】
疎水性分子が導入された疎水性ヒドロコロイドの置換度を高めれば疎水性ヒドロコロイドを製造することはできるが、一定の置換度以上では、逆に疎水性が低下する現象が発生する。よって、本発明では上記のように疎水性分子団が導入されて形成された疎水性ヒドロコロイド分子の置換度(DS)が5.0%以下のものを使うことが、結果的に多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造することができて、さらに好ましい。
【0038】
次に、水溶液上で上記製造された疎水性ヒドロコロイド分子を純粋ヒドロコロイド分子に添加してゲル(gel)化する。
【0039】
上記疎水性ヒドロコロイド分子は、置換度が5.0%以下のものを使って、純粋ヒドロコロイド分子総重量に対して0.1〜50重量%で添加する。この時、疎水性ヒドロコロイド分子が0.1重量%未満の場合は、最終的にゲル化されたヒドロコロイドに疎水性が表現されないこともあり、50重量%を超過する場合は、最終的にヒドロコロイドの透明度が低下されることがある。
【0040】
上記ゲル化は、先ず水溶液上で80〜130℃、好ましくは120℃で恒温加圧し、ヒドロコロイド分子をゾル(sol)状態で用意させる段階を含む。上記ゾル化の時の温度が80℃未満の場合は、単純ヒドロコロイド分子と疎水性ヒドロコロイド分子が不均一なゾルの状態で混合されることがあり、130℃を超過する場合は、ヒドロコロイド分子の安全性低下をもたらすことがある。
【0041】
また、上記ゾル(sol)化以後には、常温でゆっくり冷却(cooling)、熟成(ageing)してゲル化させ、最終的なヒドロコロイドを製造する。
【0042】
上記冷却または熟成段階を経ったヒドロコロイドは、物理的結合が起きてゾル状態からゲル状態に変化し、本発明が目的とする疎水性ヒドロコロイドを製造することができる。
【0043】
すなわち、上記のように少ない置換度で置換された疎水性ヒドロコロイド分子を水溶液上で純粋ヒドロコロイド分子と混合しながら、混合割合を調節することで、多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造することができる。
【0044】
このように製造された本発明の疎水性ヒドロコロイドは、疎水性置換度(DS)が5.0%以下の疎水性ヒドロコロイド分子を使って、5〜80度範囲の接触角(contact angle)を有する多様な疎水性を持つ。また、本発明の疎水性ヒドロコロイドは、多様な疎水性範囲を有しながらも、膨潤度(swelling ratio)及び内部構造(micro-structures)にはあまり変化を与えないため、一貫した機械的物性を持つことができる。
【0045】
上記本発明の疎水性ヒドロコロイドは、多様な疎水性範囲を持って、化粧品、微生物培地、食品工業、医薬品などの用途で活用されることができ、多様な応用製品への開発が可能である。
【0046】
以下では、実施例を挙げて本発明に関してより詳細に説明するが、これら実施例は単に説明する目的であって、本発明の保護範囲を制限しようとすることではない。
【0047】
実施例1。疎水性寒天製造
寒天分子に疎水性分子であるオクタデシルアルキル鎖(C18)をイソシアネート法によって置換度が5%になるように置換して疎水性寒天分子を製造した。
【0048】
水溶液上で純粋寒天分子総重量に対して上記製造した置換度が5%である疎水性寒天分子をそれぞれ5重量%、10重量%、20重量%で添加し、120℃で恒温加圧した後、常温で冷却及び夙成して疎水性寒天を製造した。
【0049】
実施例2。疎水性寒天製造
上記実施例1で寒天分子に疎水性分子であるオクタデシルアルキル鎖を置換度が10%になるように置換し、疎水性寒天分子を製造したことを除いて上記実施例1と同一に実施した。
【0050】
実施例3。疎水性寒天製造
上記実施例1で寒天分子に疎水性分子であるオクタデシルアルキル鎖を置換度が20%になるように置換し、疎水性寒天分子を製造したことを除いて上記実施例1と同一に実施した。
【0051】
実施例4。疎水性アルジネート(alginate)製造
アルジネート分子に疎水性分子であるオクタデシルアルキル鎖をイソシアネート法によって置換度が5%になるように置換して疎水性アルジネート分子を製造した。水溶液上で純粋アルジネート分子総重量に対して上記製造した置換度5%の疎水性アルジネート分子をそれぞれ5重量%、10重量%、20重量%で混合し、カルシウムイオン(CaCl
2)を添加して疎水性アルジネートゲルを製造した。
【0052】
実施例5。疎水性寒天製造
上記実施例1で寒天分子に疎水性分子であるポリプロピレングリコール(PPG)を置換度が5%になるように置換し、疎水性寒天分子を製造したことを除いて上記実施例1と同一に実施した。
【0053】
実験例1。イソシアネート法による疎水性分子団の置換時の安全性
上記実施例1及び3でイソシアネート法による疎水性分子団が5%、20%にそれぞれ置換された寒天分子を使って、MALDI(Matrix-assisted laser desorption/ionization)分析法によって安全性を評価し、その結果を
図1及び
図2に示した。
【0054】
図1に図示したように、本発明によってイソシアネート法で疎水性分子団を置換した実施例1及び3の寒天分子は、疎水性分子団を5%、20%で置換することで、寒天分子が小さい分子に分解されずに、
図2に図示したように效果的に疎水性分子が置換されることを確認することができた。
【0055】
このような結果より、本発明によってヒドロコロイド分子に疎水性分子団をイソシアネート法によって置換させる場合、ヒドロコロイド分子の分解なしに安全に疎水性分子団を置換させられることが分かった。
【0056】
実験例2。疎水性寒天分子の置換度による接触角測定
疎水性寒天分子の置換度による接触角を調べるために、上記実施例1〜3でイソシアネート法による疎水性分子団が5%、10%、20%にそれぞれ置換された寒天分子を使って、製造された疎水性寒天の接触角を測定した。純粋寒天分子の濃度だけを調節して製造した寒天をコントロールにして、その結果を
図3に示した。
【0057】
図3に図示したように、純粋寒天分子だけで寒天を製造した場合、濃度によって疎水性側面でほとんど変化はなかったが、本発明によって寒天分子に疎水性分子団を置換させて製造した疎水性寒天分子と、純粋寒天分子を混合して製造した寒天の場合、疎水性寒天分子の置換度によって接触角を多様に調節できることを確認した。しかし、疎水性分子の置換度を高める場合、一定の置換度以上で疎水性が低下する現象が生じることを確認できたし、ここで本発明では置換度が5%以下の疎水性寒天を使用した。
【0058】
実験例3。疎水性寒天分子の混合比による接触角測定
疎水性寒天分子の混合比による接触角を調べるために、上記実施例1で純粋寒天分子に置換度が5%である疎水性寒天分子を5、10、20重量%で添加した場合に製造された寒天の接触角を測定し、その結果を
図4に示した。
【0059】
図4に図示したように、置換度が5%である疎水性寒天分子を純粋寒天分子と混合してその混合割合を高める場合、疎水性寒天分子の混合割合によって多様な疎水性範囲を持つ寒天を製造できることを確認した。
【0060】
したがって、本発明によって置換度が5%以下の疎水性ヒドロコロイド分子を使って疎水性ヒドロコロイドを製造する場合、多様な疎水性範囲を持つヒドロコロイドを製造できることが分かった。
【0061】
実験例4。寒天の膨潤度及び内部構造の変化
本発明によって製造された寒天の膨潤度及び内部構造の変化を調べるために、上記実施例1で製造した疎水性寒天を利用して膨潤度と、FE-SEMで内部構造を測定した。また、純粋寒天分子の濃度だけを調節して製造した寒天をコントロールにして、その結果を
図5に示した。
【0062】
図5に図示したように、本発明によって置換度が5%である疎水性寒天分子を純粋寒天分子と混合して製造した寒天の場合、疎水性寒天分子の混合割合によって膨潤度及び内部構造がさほど変化しなかったが、純粋寒天分子を利用して製造した場合、純粋寒天分子の濃度によって膨潤度及び内部構造が変わることを確認することができた。
【0063】
このような結果より、本発明によって製造した疎水性ヒドロコロイドの場合、多様な疎水性範囲を持つが、膨潤度及び内部構造にはさほど変化を与えずに、一貫した機械的物性を持つことが予測できた。
【0064】
本発明が上記で言及された好ましい実施例として説明されたが、発明の要旨と範囲から脱することなく、多様な修正や変形を加えることが可能である。また、添付された請求の範囲は、本発明の要旨に属するこのような修正や変形を含む。
【国際調査報告】