(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
試料から核酸を単離するためのフェノールフリーの方法は、a)少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を試料に添加することにより沈殿混合物を調製するステップであって、沈殿混合物が、i)金属カチオン沈殿剤を含み、ii)15%またはそれに満たない濃度で有機溶媒を含み、iii)緩衝剤を含み、iv)酸性pH値を有し、タンパク質を沈殿させるステップと、b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含むステップと、c)上清から核酸を単離するステップとを含む。タンパク質沈殿ステップの間の請求項に記載の有機溶媒の規定された濃度で使用することは、小RNAに加えて大RNAも含む上清を提供する。
単離される前記核酸が、RNAであり、ステップc)が、前記上清から少なくとも小分子および/または大RNAを単離することを含む、請求項1または2に記載の方法。
ステップa)が、前記試料に沈殿バッファーを添加することを含み、前記沈殿バッファーが、前記金属カチオン沈殿剤、前記有機溶媒および前記緩衝剤を含む、請求項1〜7のうち一項または複数に記載の方法。
単離される前記核酸が、RNAであり、ステップc)において、RNAが、核酸結合固相を使用して単離され、少なくとも1種のアルコールおよび/または少なくとも1種のカオトロピック塩を使用して、RNA結合条件を確立する、請求項1〜9のうち一項または複数に記載の方法。
ステップc)が、前記上清に少なくとも1種のアルコールを添加して、前記RNA結合条件を確立することを含み、ステップc)において添加される前記アルコールが、次の特徴:
i)1〜5個の炭素原子を有する分枝状もしくは非分枝状脂肪族アルコールであること、
ii)メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールならびにこれらの混合物から選択されること、
iii)イソプロパノールおよびエタノールから選択されること、ならびに/または
iv)イソプロパノールであること
のうち1種または複数を有する、請求項10に記載の方法。
前記試料を破壊し、試料破壊を、前記金属カチオン沈殿剤および前記有機溶媒の添加に先立ち、ならびに/または前記沈殿混合物が調製されるのと同じとき/段階に行う、請求項1〜11のうち一項または複数に記載の方法。
前記有機溶媒が、水混和性であり、前記沈殿バッファーが、請求項1に記載の方法における沈殿バッファーとしての使用に適している、請求項17に記載の沈殿バッファー。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
本発明は、沈殿後に、小および大RNAと、実施形態ではDNAも含むタンパク質枯渇上清を提供する、RNA含有試料を処理するための改善されたタンパク質沈殿に基づく方法を提供する。含有される核酸型のうち1種または複数はその後に、上清から単離することができる。タンパク質枯渇上清は、小および大RNAを含む異なる種類のRNA種を含み、したがって、単離される標的核酸に関するさらなる柔軟性を使用者にもたらすため、方法は、先行技術方法を上回る改善である。よって、異なる核酸の単離のために使用することができる一方法が提供される。
【0021】
A.試料から核酸を単離するための方法
第1の態様によれば、試料から核酸を単離するためのフェノールフリーの方法であって、
a)少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を試料に添加することにより、沈殿混合物を調製するステップであって、沈殿混合物が、
i)金属カチオン沈殿剤を含み、
ii)15%またはそれに満たない濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)酸性pH値を有し、
タンパク質を沈殿させる、ステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清からRNAを単離するステップと
を含む方法が提供される。
【0022】
続いて、各ステップおよびその好まれる実施形態について詳細に説明する。
【0023】
ステップa) − タンパク質沈殿
ステップa)において、試料を含有する沈殿混合物が調製され、タンパク質が沈殿される。試料は、好ましくは、生物学的試料であり、例えば、試料破壊が核酸放出に必要な場合は、破壊された試料であり得る。その後に記載される通り、試料破壊は、タンパク質沈殿ステップの間に行うこともできる。沈殿を開始するために、1種の(すなわち、少なくとも1種の)金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される1種の(すなわち、少なくとも1種の)有機溶媒が、試料に添加される。本明細書に記載されている濃度での、タンパク質沈殿ステップの間のかかる有機溶媒の取り込みは、その後に得られるタンパク質枯渇上清が、200nt未満の長さを有する小RNA(先行技術方法と同様に)を含むのみならず、少なくとも1000ntの長さを有する大RNAをさらに含むという効果を有する。当然ながら、上清は、試料に含まれる場合は、中間サイズのRNA種を含むこともできる。方法の適用性が広がり、使用者は、異なる型のRNAを単離することができるため、小さいのみならず、より大きなRNA種もタンパク質枯渇上清に含まれることが有利である。さらに、実施例において実証される通り、実施形態では、上清は、DNAも含む。
【0024】
タンパク質を沈殿させるための金属カチオン沈殿剤の使用は、先行技術において公知であり、適した金属カチオン沈殿剤についても記載されている(例えば、Lovrien,R.E.およびMatulis、2001年「Selective precipitation of proteins. Current Protocols in Proteins Science.7巻:4.5.1〜4.5.36頁またはEP2163622を参照)。タンパク質沈殿剤として作用することができるいずれかの金属カチオンは、本発明と併せて使用することができ、例として、Cd、Hg、Pb、ZnおよびAlのカチオンが挙げられるがこれらに限定されない。金属カチオン沈殿剤の組合せを使用することもできる。好ましくは、金属カチオン沈殿剤は、Zn
2+またはAl
3+から選択される。実施例によって実証される通り、Zn
2+およびAl
3+は、非常に迅速にタンパク質沈殿を開始し、低濃度であっても有効であるため、これらの金属カチオン沈殿剤は、利点を有する。Zn
2+の使用が特に好まれる。
【0025】
金属カチオン沈殿剤は、好ましくは、金属カチオン沈殿剤の溶解された塩を含む溶液の形態で添加される。例えば、塩化物塩等、ハロゲン化物塩を使用することができる。ステップa)において提供される沈殿混合物は、広範な濃度範囲で金属カチオン沈殿剤を含むことができる。実施例によって示される通り、沈殿混合物におけるおよそ50mMの濃度の塩化亜鉛は、すでにタンパク質の沈殿に既に十分である。200mM〜675mM、250mM〜650mM、300mM〜625mM、350mM〜600mMまたは400mM〜550mMから選択される、沈殿混合物における濃度が特に好まれる。実施例によって実証される通り、これらの濃度範囲は、多量の小および大RNAを含む上清を提供しつつ、タンパク質沈殿をもたらすのに特に適する。金属カチオン沈殿剤としてZnが使用される場合、これらの濃度範囲が、特に有用である。一実施形態によれば、2種またはそれを超える金属カチオン沈殿剤が、沈殿混合物に添加される場合、言及されている濃度は、沈殿混合物における金属カチオン沈殿剤の全体的な濃度を指す。一実施形態によれば、単一の金属カチオン沈殿剤、好ましくは、Zn
2+を使用して、沈殿混合物を調製する。
【0026】
ステップa)において提供される沈殿混合物は、15%またはそれに満たない濃度で、非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される有機溶媒を含む。使用される有機溶媒は、水溶性有機溶媒である。2種またはそれを超えるそれぞれの有機溶媒が、沈殿混合物に含まれる場合、この濃度は、沈殿混合物における前記有機溶媒の全体的な濃度を指す。実施例によって実証される通り、本明細書に定義されている濃度で、タンパク質沈殿ステップの間にかかる有機溶媒を含むことは、タンパク質枯渇上清において、200nt未満の長さを有する小RNAのみならず、少なくとも1000ntの長さを有する大RNAも含まれるという技術的な効果を有する。当然ながら、上清は、試料に含まれる場合、中間サイズのRNA種も含む。したがって、mRNAも上清中に大量に保持され、先行技術方法(例えば、EP2163622に記載)とは対照的に、タンパク質と共に枯渇されず、よって、必要に応じて、得られた上清からその後に単離することができる。したがって、本方法は、タンパク質枯渇上清からの、異なるサイズ、それぞれサイズ範囲のRNAの単離を可能にし、これは、方法の使用者に柔軟性をもたらす。しかし、実施例によって実証される通り、本明細書に定義されている有機溶媒が、正しい濃度で沈殿混合物に含まれることが重要である。既に少量の請求項に記載の請求項に記載の有機溶媒は本明細書に記載されている有利な技術的効果の達成に有効であり、よって、小および大RNAを含む上清をもたらす。しかし、沈殿混合物における例えば17%または25%等、より高い濃度で請求項に記載されている有機溶媒は、このような条件下では、大RNAは上清から再度枯渇されてしまうため、マイナスの効果を有する。
【0027】
ステップa)において提供される沈殿混合物は、2%〜15%、3%〜15%、5%〜14.5%、6%〜14%、7%〜13.5%、8%〜13%、9%〜12.5%または9.5%〜12%から選択される濃度で有機溶媒を含むことができる。実施例に示す通り、これらの濃度範囲は、大量の小および大RNAを含むタンパク質枯渇上清をもたらすのに適する。当然ながら、上清は、試料に含まれる場合、中間サイズのRNA種も含む。上述の通り、請求項に記載の2種またはそれを超える異なる有機溶媒をステップa)において使用することもできる。この場合、上に示されている濃度範囲は、沈殿混合物における前記有機溶媒の全体的な濃度を指す。一実施形態によれば、本明細書に定義されている単一の有機溶媒が、沈殿混合物を調製するために使用される。
【0028】
好まれる実施形態によれば、有機溶媒は、非プロトン性極性溶媒である。かかる有機溶媒の例として、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド、アセトン等のケトン、アセトニトリル等のニトリル、テトラヒドロフラン(tetrahydrofurane)(THF)および1,4ジオキサン等の環状エーテル、1−メチル−2−ピロリドン(pyrolidone)(NMP)等のラクタム(lactame)ならびにジメチル−ホルムアミド(DMF)等の三級カルボン酸アミドが挙げられるがこれらに限定されない。かかる非プロトン性極性溶媒は、水に混和性である。よって、非プロトン性極性溶媒は、スルホキシド、ケトン、ニトリル、環状エーテル、ラクタムおよび三級カルボン酸アミドから選択することができ、好ましくは、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4ジオキサン、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびジメチル−ホルムアミド(DMF)から選択される。実施例によって実証される通り、これらの非プロトン性極性有機溶媒は全て、本方法の目的に適しており、小RNA、大RNA、さらに、特にゲノムDNA等の高分子量核酸を含むタンパク質枯渇上清をもたらす。したがって、小RNA、大RNA、中間サイズのRNA種およびゲノムDNAを、これらの種類の核酸が初期試料に含有される場合、そこから単離することができるため、極性非プロトン性有機溶媒の使用は、広範囲の下流の応用に使用することができるタンパク質枯渇上清をもたらす。これは、方法の使用者に多くの柔軟性をもたらす。DMSO、DMF、THFおよびNMPにより特に優れた結果が達成され、したがって、これらは、好まれる非プロトン性極性有機溶媒である。DMSO、そしてNMPが特に好まれ、これらは、毒性低下に関する利点も有する。
【0029】
さらに、実施例によって実証される通り、有機溶媒は、プロトン性溶媒であることもできる。使用することができる極性プロトン性溶媒は、直鎖状または分枝状C1〜C5アルコールを含む。イソプロパノールおよびエタノール等、水混和性アルコールが好まれ、有機溶媒として使用することができる。メタノールもまた、水に混和性のアルコールである。これらの有機溶媒も、本明細書に記載されている濃度範囲で使用される場合、大量の小RNAおよび大RNA、ならびに当然ながら試料に含有される場合は中間サイズのRNAも含むタンパク質枯渇上清をもたらす。上述の通り、かかる有機溶媒のうち2種またはそれ超を使用することもでき、沈殿混合物におけるこれらの有機溶媒の全体的な濃度は、上述の範囲(単数または複数)内にある。
【0030】
ステップa)において提供される沈殿混合物は、酸性pH値を有する。酸性pH値は、実施例に示す通り、有益な効果を有する。沈殿混合物のpH値は、≦6、≦5.75、≦5.5、≦5.25、好ましくは、≦5、≦4.75、≦4.5または≦4.4であり得る。適した範囲は、3〜5.5、3〜5.25、3.25〜5、好ましくは3.25〜4.75、3.5〜4.5または3.75〜4.4を含む。
【0031】
酸性pH値を達成および/または維持するために、沈殿混合物は、少なくとも1種の緩衝剤を含む。実施例によって実証される通り、異なる緩衝剤が適しており、使用することができる。緩衝剤の組合せを使用することもできる。一実施形態によれば、緩衝剤は、カルボン酸であるまたはこれに由来する。カルボン酸は、モノ、ジまたはトリカルボン酸を含む。好ましくは、緩衝剤は、酢酸またはクエン酸であり、それぞれ、酢酸塩またはクエン酸塩である。実施例によって実証される通り、酢酸塩およびクエン酸塩は、異なる塩の形態で添加することができる。例えば、ナトリウムまたはカリウム塩等、アルカリ金属塩を使用することができる。一実施形態によれば、酢酸ナトリウムが緩衝剤として使用される。さらに、PIPPS等、リン酸塩バッファーを使用することもできる。緩衝剤は、沈殿混合物のpH値を上述の範囲内に維持することができる濃度で使用される。一実施形態によれば、沈殿混合物は、60mM〜400mM、75mM〜375mM、100mM〜350mM、125mM〜300mMおよび150mM〜275mMから選択される範囲である濃度で緩衝剤を含む。実施例によって実証される通り、これらの濃度範囲は、カルボン酸、それぞれ、酢酸ナトリウム等のカルボン酸の塩に特に適する。125mM〜300mMまたは150mM〜275mMの範囲である濃度は、特に優れた結果を達成する。
【0032】
好まれる実施形態によれば、ステップa)は、試料に沈殿バッファーを添加するステップであって、前記沈殿バッファーが、少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤、上に定義されている少なくとも1種の有機溶媒および少なくとも1種の緩衝剤を含む、ステップを含む。金属カチオン沈殿剤、有機溶媒および緩衝剤に関する詳細は、上に記載されている。上清に小および大RNAを維持しつつタンパク質沈殿、したがってタンパク質枯渇を達成するのに必要とされる作用剤が、試料に添加される1つのバッファーに含有されているため、本実施形態は簡便である。試料は、一実施形態では、破壊された試料である。
【0033】
沈殿バッファーの組成は、意図される容量の沈殿バッファーをある特定の容量の破壊された試料であり得る試料に添加する場合、上述の濃度の金属カチオン沈殿剤および有機溶媒を含む沈殿混合物がもたらされるようなものである。ある特定の実施形態では、破壊された試料であり得る試料は、1:1〜1:20(沈殿バッファー:試料)の範囲の比で沈殿バッファーと混合される。特に、比は、1:1.5〜1:12、好ましくは1:2〜1:8、より好ましくは1:2.5〜1:5、最も好ましくは1:3〜1:4(沈殿バッファー:試料)の範囲であることができる。特異的な実施形態では、沈殿バッファーは、約1:3.37(沈殿バッファー:試料)の比で、破壊された試料であり得る試料に添加される。
【0034】
沈殿混合物の条件を確立するために、一実施形態によれば破壊された試料である試料に添加される沈殿バッファーは、好ましくは、溶解された塩の形態で金属カチオン沈殿剤を含む。例えば、塩化物塩等のハロゲン化物塩を使用することができる。金属カチオン沈殿剤塩は、0.75M〜3M、1M〜2.8M、1.25M〜2.7M、1.5M〜2.6Mまたは1.7M〜2.5Mから選択される濃度で沈殿バッファーに含まれてよい。実施例によって実証される通り、それぞれの濃度で金属カチオン沈殿剤を含む沈殿バッファーの使用は、優れた結果をもたらす。適した金属カチオン沈殿剤については、上に記載されており、好ましくは、Zn
2+およびAl
3+から選択される金属カチオン沈殿剤が使用される。例えば、塩化亜鉛として添加され得るZn
2+が最も好まれる。
【0035】
沈殿バッファーは、13%〜65%、20%〜63%、25%〜62.5%、30%〜60%、33%〜57.5%、37.5%〜55%または40%〜52.5%から選択される濃度で有機溶媒を含むことができる。有機溶媒の適切な例は、上に記載されており、実施例からも明らかである。有機溶媒は、水混和性である。好ましくは、有機溶媒は、DMSO等、非プロトン性極性溶媒である。プロトン性有機溶媒のうち、エタノールおよびイソプロパノール等、水混和性アルコールが好まれる。
【0036】
沈殿バッファーは、3〜5.5、3〜5.25、3.25〜5、3.25〜4.75、3.5〜4.5および3.75〜4.4から選択されるpH値を有することができる。3〜5、3.25〜4.75、3.5〜4.5または3.75〜4.4のpHが特に適している。沈殿バッファーは、好ましくは、沈殿混合物におけるそれぞれのpH値の確立および/または維持に適している。実施例によって実証される通り、それぞれの酸性pH値を有するおよび維持する沈殿バッファーの使用は、特に、血漿または血清等のタンパク質に富んだ試料を処理する場合に、有利な結果をもたらす。沈殿混合物におけるそれぞれのpH値の維持に使用することができる緩衝剤の適切な例は、上に記載されており、実施例からも明らかである。一実施形態によれば、沈殿バッファーは、300mM〜2M、400mM〜1.75M、450mM〜1.5M、500mM〜1.4M、550mM〜1.3Mおよび600mM〜1.25Mから選択される濃度で緩衝剤を含む。先に言及された濃度範囲において使用することができる酢酸塩またはクエン酸塩等のカルボン酸塩、例えば、アルカリ金属塩が特に好まれる。550mM〜1.3M、600mM〜1.25Mまたは650mM〜1.2Mの範囲である濃度が特に好まれる。
【0037】
沈殿混合物が提供されると、試料に含有されるタンパク質が沈殿する。沈殿は、例えば、撹拌によって支援することができる。撹拌として、ボルテックス、振盪、反転およびピペッティングで出し入れが挙げられるがこれらに限定されない。さらに、試料は、冷却する、例えば、実施例にも記載されている通り、氷上で貯蔵することができる。
【0038】
上述の通り、沈殿混合物は、上に定義されている金属カチオン沈殿剤および有機溶媒を核酸含有試料に添加することにより調製される。適したRNA含有生物学的試料の非限定的な例についても後述する。本方法は、タンパク質に富んだ試料からのRNAの単離に特に適している。必要であれば、試料を破壊する。したがって、一実施形態によれば、方法は、試料を破壊するステップを包含する。これにより、特にRNA等の核酸が放出され、その後の核酸単離ステップに利用し易くなる。
【0039】
試料を破壊するために、種々の方法を使用することができる。用語「破壊する」または「破壊」は、本明細書において広義で使用され、試料の溶解を特に包含する。それぞれの溶解ステップにおいて、特にRNA等の生体分子が、細胞から放出されるか、または例えば、タンパク質等、他の試料構成成分から解放されて、これにより、RNAを単離のために利用し易くすることができる。特に核酸等の生体分子が、細胞から放出されるか否か、または溶解が、例えば、試料に含まれるタンパク質もしくは他の物質から核酸等の生体分子を放出するために行われるか否かとは無関係に、本明細書において、これはそれぞれの破壊ステップ、一般に、溶解ステップとも称される。したがって、試料は、細胞を含むことができるか、または例えば血漿の場合と同様に、細胞を全く含まないもしくはごく少量の細胞を含むことができる。
【0040】
試料を溶解するために、種々の方法を使用することができ、適した溶解方法が、先行技術において周知である。好ましくは、試料は、破壊、それぞれ、溶解のために、1種または複数の溶解剤と接触させる。これらは、溶解バッファー等、破壊試薬に含有され得る。RNAは、溶解の間にヌクレアーゼによる分解から保護される必要がある。選択された溶解条件は、処理するべき試料の種類に応じて変動することもできる。一般に、溶解手順として、試料における機械的、化学的、物理的および/または酵素的作用を挙げることができるがこれらに限定されない。例として、ビーズミルにおけるもしくはガラスビーズの存在下での試料の粉砕、試料のホモジナイズ、超音波の適用、加熱、1種もしくは複数の洗剤の添加、および/または例えばタンパク質分解酵素もしくは塩等のタンパク質分解化合物の添加が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、ベータ−メルカプトエタノールまたはDTT等の還元剤を溶解のために添加して、例えば、ヌクレアーゼの変性を支援することができる。一実施形態によれば、好ましくは少なくとも1種のカオトロピック塩等、少なくとも1種のカオトロピック剤が、試料の溶解、したがって破壊に使用される。適したカオトロピック剤および特に適したカオトロピック塩は、当業者に公知であり、本明細書にも記載されている。本明細書に記載されている通り、溶解のためのカオトロピック塩の使用は、ステップc)における適した核酸結合条件の確立をさらに支持することができるカオトロピック塩の導入を可能にするという利点を有する。
【0041】
実施例によって実証される通り、試料破壊は、金属カチオン沈殿剤および有機溶媒の添加に先立ち行うことができるが、沈殿混合物が調製されるのと同じときにそれぞれの段階で行うこともできる。処理されるべき試料に依存して、溶解/結合組成物は、沈殿混合物の調製後に添加することもできる。しかし、血液または血清等、複雑な試料を処理する場合、RNA収率を低下し得るため、本実施形態は、あまり好まれない。
【0042】
よって、一実施形態によれば、試料は、ステップa)において金属カチオン沈殿剤および有機溶媒が添加されるのと同じときにそれぞれの段階で破壊する。本実施形態において、試料から核酸を単離するためのフェノールフリーの方法であって、
a)少なくとも1種の破壊試薬、少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を試料に添加して、試料を破壊し、
i)金属カチオン沈殿剤を含み、
ii)15%またはそれに満たない濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)酸性pH値を有し、
v)破壊試薬を含む
沈殿混合物を調製することにより、沈殿混合物を調製し、
タンパク質を沈殿させるステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から核酸を単離するステップと
を含む方法が提供される。
【0043】
使用することができる溶解バッファー等の適した破壊試薬は、当業者に周知であり、本明細書にも記載されている。かかる破壊試薬は、例えば、沈殿バッファーとは別々に添加することができるか、またはその後に沈殿バッファーおよび破壊試薬の混合物をステップa)において試料に添加するように、予め沈殿バッファーと混合することができる。一実施形態によれば、破壊試薬は、カオトロピック塩を含む。適切な例は公知であり、本明細書にも記載されている。
【0044】
好まれる実施形態によれば、試料は、ステップa)において金属カチオン沈殿剤および有機溶媒を添加する前に破壊する。本実施形態によれば、試料から核酸を単離するためのフェノールフリーの方法であって、
x)試料を破壊するステップと、
a)少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を破壊された試料に添加して、
i)金属カチオン沈殿剤を含み、
ii)15%またはそれに満たない濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)酸性pH値を有する
沈殿混合物を調製することにより、沈殿混合物を調製し、
タンパク質を沈殿させるステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から核酸を単離するステップと
を含む方法が提供される。
【0045】
一実施形態によれば、試料を破壊するため、破壊しようとする試料と、これに加えて、0.5M〜飽和、0.75M〜5M、1M〜4.5Mおよび1.25M〜4.25Mからなる群から選択される濃度のカオトロピック剤、好ましくはカオトロピック塩とを含む破壊組成物が提供される。カオトロピック塩として、グアニジウム塩酸塩、グアニジウムチオシアン酸塩(またはグアニジウムイソチオシアン酸塩(GITC))等のグアニジウム塩、またはチオシアン酸塩、ヨウ化物、過塩素酸塩、トリクロロ酢酸塩もしくはトリフルオロ酢酸塩(trifluroacetate)その他を含むカオトロピック塩が挙げられるがこれらに限定されない。かかるカオトロピック塩は、例えば、ナトリウムまたはカリウム塩として提供することができる。好ましくは、カオトロピック塩は、GTC(GITC)または等しく強いカオトロピック塩である。組成物に含まれるRNAを酵素による分解から効率的に保護することもできるため、それぞれの強いカオトロピック塩が有利である。尿素を使用して、試料の破壊を支持することもできる。一実施形態によれば、破壊組成物は、ステップx)において、したがって、ステップa)において金属カチオン沈殿剤および有機溶媒を前記破壊組成物に添加する前に提供される。
【0046】
さらに、溶解の間に、キレート剤、ヌクレアーゼ阻害剤、特に、RNase阻害剤またはDNase阻害剤(RNAおよびDNAの並行単離が企図される場合)その他等、他の添加物を添加することもできる。試料の溶解の支持および放出された核酸、特に、放出されたRNAの保護に使用することができるそれぞれの添加物は、先行技術において周知であり、よって、本明細書において詳細に記載する必要はない。
【0047】
ステップx)において試料から得られる破壊された試料は、任意選択で、ステップa)において沈殿混合物を調製する前にさらに処理することもできる。例えば、溶解物をホモジナイズすることができる;ホモジナイゼーションは、破壊/溶解プロセスそれ自体中に行うこともできる。さらに、細胞デブリを除去するために、溶解物を清澄化することができる。溶解物清澄化方法は、細胞デブリおよび他の夾雑物の濾過および/または例えば、イオン性基、特に、カルボキシル基等のアニオン性基を保有する表面等の適切な表面への結合を含むことができる。
【0048】
本発明の方法は、タンパク質分解性消化と組み合わせることができる。タンパク質分解性消化が行われる場合であっても、本発明の沈殿に基づく方法は、残渣タンパク質を枯渇させることにより、結果をさらに改善することができる。用語「タンパク質」は、本明細書において、ペプチドも包含する。しかし、本発明の利点は、時間のかかるタンパク質分解性酵素による消化ステップを必要としないことである。したがって、一実施形態によれば、試料の破壊は、タンパク質分解性酵素の使用を含まない。タンパク質分解性酵素は、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドにおけるペプチド結合の切断を触媒する酵素を指す。例示的なタンパク質分解性酵素として、プロテイナーゼおよびプロテアーゼ、特に、スブチリシン、スブチラーゼ、アルカリセリンプロテアーゼその他が挙げられるがこれらに限定されない。スブチラーゼは、セリンプロテアーゼ、すなわち、活性部位におけるセリン残基による酵素のファミリーである。スブチリシンは、広範な基質特異性を有する細菌セリンプロテアーゼである。スブチリシンは、尿素および塩酸グアニジン等のカオトロピック剤ならびにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等のアニオン性洗剤による変性に対して相対的に抵抗性である。例示的なスブチリシンとして、プロテイナーゼK、プロテイナーゼR、プロテイナーゼT、スブチリシン、スブチリシンA、QIAGENプロテアーゼその他が挙げられるがこれらに限定されない。
【0050】
ステップb)において、形成された沈殿物は、本明細書において「上清」と称される残る試料から分離される。分離は、例えば、沈降、遠心分離または濾過等、様々な手段によって支援することができる。用語「上清」は、特に、形成された沈殿物が除去された沈殿混合物を記載するために、本明細書において使用される。したがって、用語「上清」は、沈殿物分離のある特定のモードによって得られた、特異的な沈殿物が枯渇された沈殿混合物に限定されない。よって、用語「上清」は、例えば、槽の底に沈殿物が収集され、残る試料が上清として除去される実施形態と共に、沈殿混合物がフィルターに通されて、形成された沈殿物を除去し、フロースルーの形態で残る試料を回収する実施形態を包含する。
【0051】
実施例によって実証される通り、本発明による方法において使用される沈殿条件によって、得られる上清は、200nt未満の長さを有する小RNAと、これに加えて、少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む。当然ながら、本来の試料に含まれる場合、中間サイズのRNAも、前記上清に含まれる。一実施形態によれば、得られる上清は、本来の試料に含有される少なくとも1000ntの長さを有するRNA分子の少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%または少なくとも80%を含む。大RNA回収率も同様に高いことも判明した。よって、先行技術の沈殿に基づく方法とは対照的に、本方法は、優れた収率での大RNA分子の回収および単離を可能にする。さらに、ゲノムDNA等、高分子量核酸は、使用される沈殿条件に応じて前記上清に含まれ得る。
【0052】
ステップc) − 上清からの核酸の単離
【0053】
ステップc)において、核酸は、得られた上清から単離される。核酸は、RNA、DNAまたはその両方であり得る。得られた上清から目的の1種または複数の標的核酸(例えば、RNAおよび/またはDNA)を単離するため、先行技術で公知の方法を使用することができる。適した単離方法の例として、シリカに基づく精製方法、磁性粒子に基づく精製方法、クロマトグラフィーに基づく精製手順、アニオン交換クロマトグラフィー(カラムまたは磁性粒子等、アニオン交換表面を使用)、沈殿およびこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、RNAおよび/またはDNA等、標的核酸のうち1種または複数は、適切な結合条件を使用して核酸を固相に結合させることにより、上清から単離される。固相は、例えば、シリカ結合表面を提供することができる、または目的の核酸に結合することができるアニオン交換官能基を保有することができる。後者の実施形態に関して、例えば、電荷スイッチ原理に基づく単離方法を使用することができる。
【0054】
好ましくは、少なくともRNAが、上清から単離される。得られた上清からRNAを単離するために、先行技術で公知の方法を使用することができる。本発明による方法は、上清が、小および大RNAを含むという利点を有する。したがって、使用者は、目的の標的RNAに応じて、上清から小RNA、大RNAまたはその両方のいずれかを単離することができる。小および大RNAは、別々の画分において単離することができるか、または上清から全RNAもしくは全核酸の形態で単離することができる。当然ながら、試料に含まれる場合、中間サイズのRNAも上清に含まれ、例えば、大RNAおよび/または小RNAと共に単離することができる。
【0055】
好ましくは、RNAは、これをアルコール等の有機溶媒の存在下で核酸結合固相に結合させることにより単離される。固相への結合は、結合混合物におけるカオトロピック塩の存在下で増強され得る。非限定的な実施形態について後に記載する。
【0056】
一実施形態によれば、全RNAが上清から単離され、前記全RNAは、小および大RNAと、中間サイズのRNAを含む。本実施形態では、ステップc)は、好ましくは、
aa)少なくとも1種のアルコールを上清に添加して、≧35%、好ましくは≧40%、より好まれる≧45%の濃度でアルコールを含む結合混合物を提供するステップと、
bb)結合混合物に含有される全RNAを核酸結合固相に結合させるステップであって、ステップbb)後に、大および小RNAが、固相に結合される、ステップと、
cc)任意選択で、結合されたRNAを洗浄するステップと、
dd)固相からRNAを溶出するステップと
を含む。
【0057】
大RNAおよび小RNAならびに当然ながら中間サイズのRNAが、高濃度のアルコールの存在下で核酸結合固相に結合することができることは、十分に確立された原理である。したがって、本方法は、本実施形態では、小RNA、大RNAおよび中間サイズのRNAを含む全RNAの単離を可能にする。それぞれの方法は、本発明の背景においても記載されている。
【0058】
結合ステップの間の結合混合物における少なくとも35%、好ましくは少なくとも40%、より好まれる少なくとも45%または少なくとも50%のアルコール濃度の使用は、核酸結合固相への小RNAの結合を可能にするRNA結合条件が確立されるという効果を有する。ここで、驚くべきことに、先行技術で一般的に使用されるよりも低いアルコール濃度を本方法と併せて使用して、固相への小RNAの結合を達成することもできることが判明した。理論に制約されることは望まないが、これは、沈殿混合物において使用される有機溶媒が、適した結合条件の確立に寄与するせいであると考えられる。当然ながら、より長いRNA分子も、このような条件下で結合することができ、よって、全RNAにおいて捕捉される。
【0059】
アルコールは、1〜5個の炭素原子を有する分枝状または非分枝状脂肪族アルコールであり得、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールならびにこれらの混合物から選択することができる。アルコールの混合物を使用することもできる。好ましくは、イソプロパノールおよび/またはエタノールは、結合条件を確立するためのアルコールとして使用される。これらのアルコールは、破壊された試料から小および大RNAを単離するために一般的に使用される。イソプロパノールが特に好まれる。予め行われるタンパク質沈殿ステップのおかげで、結合ステップの間にタンパク質が沈殿するリスクおよび例えば、核酸結合固相の詰りまたはRNA結合への他の仕方での干渉が低下するため、結合混合物において高いアルコール濃度を使用することができる。これは、収率に関して有益である。結合混合物におけるアルコール濃度は、≧50%(v/v)、≧55%(v/v)または≧60%(v/v)であり得る。結合混合物におけるアルコール濃度に適した範囲として、≧40%(v/v)〜≦80%(v/v)、≧45%(v/v)〜≦75%(v/v)、≧50%(v/v)〜≦70%(v/v)および≧55%(v/v)〜≦65%(v/v)が挙げられるがこれらに限定されない。ステップaa)においてそれぞれのアルコール濃度を使用することができる。論じられている通り、エタノールおよびイソプロパノールが好まれる。
【0060】
一実施形態によれば、核酸結合固相へのRNAの結合は、結合混合物においてカオトロピック塩を取り込むことにより増強される。カオトロピック塩に適した濃度は、当業者に公知であり、本明細書に記載されている。
【0061】
一実施形態によれば、ステップaa)の結合混合物は、0.1Mから飽和限界までの範囲である濃度でカオトロピック塩を含む。濃度は、0.2M〜5M、0.25M〜4.5M、0.3M〜4.25M、0.35〜4Mおよび0.4M〜3.75Mから選択することができる。より高濃度のカオトロピック塩は、RNAの収率を増加させるのに好都合であり得る。カオトロピック塩として、グアニジウム塩酸塩、グアニジウムチオシアン酸塩(またはグアニジウムイソチオシアン酸塩(GITC))等のグアニジウム塩、またはチオシアン酸塩、ヨウ化物、過塩素酸塩、トリクロロ酢酸塩もしくはトリフルオロ酢酸塩その他を含むカオトロピック塩が挙げられるがこれらに限定されない。カオトロピック塩の混合物を使用することもできる。かかるカオトロピック塩は、例えば、ナトリウムまたはカリウム塩として提供することができる。好ましくは、カオトロピック塩は、GTCもしくはGITCまたは等しく強いカオトロピック塩である。溶解のためのカオトロピック剤、特にカオトロピック塩の使用は、試料の破壊に好まれるため、結合混合物中に存在するカオトロピック塩は、溶解の間に導入されていてよい。詳細は上に記載されている。この手順は、実施例においても使用した。カオトロピック塩を結合混合物に導入するため、またはRNA結合ステップの間にカオトロピック塩の濃度を増加させるために、カオトロピック塩は、ステップc)の間に添加してもよい。よって、RNA単離ステップc)においてさらなる量のカオトロピック塩を添加することにより、結合のためのカオトロピック塩の濃度を増加させることも本発明の範囲内である。さらに、例えば、洗剤等、追加的な添加物を添加して、RNA結合を改善することができる。
【0062】
ステップbb)において、ステップaa)から得られる結合混合物に含有される小および大RNAならびに中間サイズのRNAは、核酸結合固相に結合される。RNA結合に適した固相は、当業者に公知である;例示的な適した核酸結合固相については後にも記載する。一実施形態によれば、ステップaa)から得られる結合混合物は、ステップbb)において固相と接触させる。本実施形態は、カラムに含まれる核酸結合相が使用される場合に特に適する。カラムに基づく手順が使用される場合、小RNAを含む全RNAを固相に結合させるために、ステップbb)において核酸結合固相を使用することができる。粒子が使用される場合、粒子は、ステップaa)において既に存在していても、ステップbb)において導入されてもよい。
【0063】
小RNAを含むRNAが、ステップbb)において核酸結合固相に結合された後に、結合されたRNAをステップcc)において任意選択で洗浄することができる。この目的のため、一般的な洗浄溶液を使用することができる。一実施形態によれば、洗浄に使用される溶液は、少なくとも1種のカオトロピック剤および/または少なくとも1種のアルコールを含む。洗浄溶液において使用することができるカオトロピック剤として、グアニジウム塩酸塩、グアニジウムチオシアン酸塩、グアニジウムイソチオシアン酸塩およびヨウ化ナトリウム等、カオトロピック塩が挙げられるがこれらに限定されない。他のカオトロピック塩は、上にも記載されている。アルコールとして、好ましくは1〜5個の炭素原子を有する短鎖分枝状または非分枝状アルコールを、それぞれ洗浄溶液において洗浄のために使用することができる。例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールである。好ましくは、イソプロパノールおよび/またはエタノールが使用される。しかし、カオトロピック剤を含まない洗浄溶液を使用することもできる。
【0064】
上に記載されている洗浄溶液に代えてまたはさらにこれに加えて使用することができる適した洗浄溶液の例は、アルコールおよびバッファーを含む。適したアルコールは、上に記載されている。好ましくは、イソプロパノールまたはエタノール、最も好まれるエタノールがこの洗浄ステップに使用される。好ましくは、少なくとも60%(v/v)、少なくとも70%(v/v)、好ましくは少なくとも80%(v/v)の濃度のエタノールが使用される。一実施形態によれば、洗浄に使用される溶液は、少なくとも1種のカオトロピック剤、少なくとも1種のアルコール、少なくとも1種の洗剤および/または少なくとも1種の緩衝剤を含む。Trisまたはクエン酸塩等、適した緩衝剤を使用することができる;適した緩衝剤は、当業者にも公知である。
【0065】
上に記載されている任意選択の1回または複数の洗浄ステップに先立ちまたはその後のいずれかに、DNase消化を行うことができる。かかるDNase消化は、例えば、RNAが、核酸結合固相に結合されている間に行うことができる。RNAのみが目的の核酸である場合、これにより、単離されたRNAにおけるゲノムDNA混入の量を低下させることができる。それぞれのDNase消化の実行に適した実施形態は、本明細書に記載されており、先行技術においても公知である。それぞれのDNase消化ステップは、任意選択である。RNAが核酸結合固相に結合されている間のDNase消化の実行に使用される条件は、RNAおよび特に小RNAが、核酸結合固相から部分的に放出されるという結果をもたらす場合がある。したがって、潜在的に放出される小RNAが、核酸結合固相に再結合されることを確実にして、小RNAの高回収を確実にすることが好まれる。使用される核酸結合固相の種類、例えば、カラムに基づくまたは粒子に基づくアプローチが使用されるかに応じて、異なる手順が実行可能である。磁性粒子等、粒子が核酸結合固相として使用される場合、任意選択のDNase消化を行った後に、カオトロピック剤およびアルコールを添加し、これにより、粒子への小RNAの再結合を可能にする結合条件を確立することができる。この目的のため、例えば、カオトロピック塩および/またはアルコールを含む溶液を使用することができる。それぞれの溶液は、洗浄溶液として用いることもできる。再結合のためにアルコール濃度を増加させるために、追加的なアルコールを別々に添加することもできる。適したアルコール、アルコール濃度、カオトロピック塩およびカオトロピック濃度は、ステップc)と併せて上に記載されている。同じ条件を再結合のために使用することができる。カラムに基づく核酸結合固相が使用される場合、RNAが固相に結合されている間に任意選択のDNase消化(多くの場合、オンカラムDNase消化とも称される)を行った後に、次のステップを行うことが好まれる:
− DNAase消化の間にフロースルーとして核酸結合固相から放出された可能性がある小RNAを収集するステップ、
− 前記核酸結合固相へと含有される小RNAを再結合させるために、回収溶液と混合された小RNAを含む前記フロースルーを、核酸結合固相と接触させるステップ。
【0066】
オンカラムDNase消化の間に部分的に放出された可能性があるRNAが、核酸結合固相に再結合することを確実にするために、また、放出された小RNAをフロースルーとして収集するために、DNase消化が完了した後に回収溶液をカラムに通すことが好まれる。回収溶液によって確立された条件下で再結合することができるRNAは、核酸結合固相に緊密に再結合され、「エスケープされた」小RNAは、フロースルーとして収集することができ、よって、再アプライすることができ、したがって、核酸固相に再結合させることができる。これは、オンカラムDNase消化が行われる場合であっても、小RNAが失われることを防止する。オンカラムDNase消化後のそれぞれの再結合ステップに関する詳細は、本明細書に参照によって組み込まれるWO2012/028737に記載されている。潜在的にエスケープされた小RNAを核酸結合固相に再結合させた後に、再度1回または複数の洗浄ステップを行うことができる。適した条件は、上に記載されている。
【0067】
固相からRNAを溶出するために溶出ステップを行うことが所望の場合、溶出は、例えば、水、溶出バッファー、特に低塩溶出バッファー等、古典的な溶出溶液により達成することができる。溶出バッファーは、Tris、MOPS、HEPES、MES、BIS−TRISプロパンその他等、生物学的バッファーを含むことができる。それぞれの溶出ステップは、ステップdd)において行うことができる。好ましくは、意図される下流の応用に干渉しない溶出溶液が使用される。溶出後に、溶出液を熱変性させることができる。しかし、例えば、加熱等、他のまたは支援的な溶出手段によって固相から核酸を放出、よって溶出することも本発明の範囲内である。
【0068】
続いて、RNAおよびDNAを含む試料からの小RNAを含む全RNAの単離を可能にする、適した実施形態について記載する。そこで、小RNAを含む全RNAの単離を可能にする、あるいはより大きいRNAからおよび/またはDNAと並行して別々の画分としての小RNAの単離を可能にする実施形態について記載する。よって、本発明の方法に従ってもたらされるタンパク質枯渇上清からRNAと共にDNAを単離することができる。しかし、必要に応じて、DNAは、精製プロセスにおいて選択的に枯渇させ、これにより、DNAを実質的に含まない、ゲノムDNAを特に含まない、単離されたRNAをもたらすことができる。そこで、DNAを除去するための異なる選択肢が存在する。非限定的な実施形態について続いて記載する。
【0069】
一実施形態によれば、ステップb)において得られる上清は、RNAと共にDNAを含み、RNAおよびDNAは、両方の種類の核酸を核酸結合固相に結合させることにより、ステップc)において単離される。RNAおよびDNAは、全核酸の形態で溶出することができる。RNAおよびDNAが両者共に核酸結合固相に結合される場合に実行可能な一実施形態によれば、差次的溶出プロセスを続いて行うことができ、大および小RNAを含む全RNAから別々にDNAを単離することを可能にする。例えば、DNAは、結合されたRNAを溶出させる前に選択的に溶出させることができ、逆もまた同じである。それぞれの差次的溶出条件は、例えば、WO95/21849またはEP1693453に記載されている。
【0070】
一実施形態によれば、DNAは、適切な条件下で核酸固相にDNAを選択的に結合させ、続いて小および大RNAを依然として含む残る上清から、核酸結合固相に結合されたDNAを分離することにより除去される。これは、例えば、RNAではなく主にDNAが固相に結合される条件下で、上清を適した核酸結合固相と接触させることにより達成することができる。DNAの結合を可能にする適した核酸結合固相は、先行技術で周知であり、これにおいても望まれる。一般に、RNA結合ステップのための本明細書に記載されている核酸結合固相、特に、ケイ素含有固相をDNA結合に使用することもできる。DNAを選択的に結合させ、これにより除去するために適した方法は、例えば、本明細書に参照によって組み込まれるEP0880537およびWO95/21849に記載されている。例えば、カオトロピック塩等、カオトロピック剤を使用して試料を溶解する場合、DNAに選択的な、エタノールまたはイソプロパノール等、短鎖アルコールの非存在下で結合条件を確立することができる。必要に応じて、結合されたDNAをさらに使用すること、例えば、さらに処理することができ、例えば、任意選択で洗浄し、核酸結合固相から溶出し、これにより、RNAを実質的に含まないDNA画分をもたらすことができる。続いて、それぞれのDNA画分を分析に利用することができる。よって、本発明は、先行技術方法とは対照的に、小および大RNAに加えてゲノムDNA等のDNAも含むタンパク質枯渇上清をもたらすことができるため、同じ試料からRNAおよびDNAを単離することができる方法も提供する。しかし、DNAが目的でない場合、別々の画分における、または全RNAの形態での(これが好まれる)RNA、例えば、小および大RNA(のみ)の単離を企図するのであれば、結合されたDNAを単純に廃棄することもできる。この場合においても、精製されたRNAにおけるDNA混入の量を低下させるため、かかるDNA結合および除去ステップが好都合である。
【0071】
例えば、シリカ含有固相等、核酸結合固相にDNAを結合させ、残る試料から結合されたDNAを分離する場合、小RNAおよび大RNAおよび中間サイズのRNAを単離することができるDNA枯渇RNA含有上清がもたらされる。
【0072】
単離されたRNAにおけるDNAの量をさらに低下させるために、上述の通り核酸固相にDNAを結合させることによりタンパク質枯渇上清からDNAが除去された後に、適した酵素を使用してDNAを分解するための中間ステップを行うことができる。DNase消化の実行は、残る微量のDNAの除去を可能にする。RNAが核酸結合固相に結合された後に、例えば、オンカラムDNase消化として、DNase処理を行うことができる。詳細は上に記載されている。さらに、DNase消化は、得られたRNA含有溶出液において行うこともできる。
【0073】
さらに、別々の画分の形態で大RNAおよび小RNAを単離することは、本発明の範囲内である。これは、例えば、第1のステップにおいて、長さ>200ntを有するRNAを、かかるより大きなRNA種に選択的な条件を使用して第1の核酸結合固相に結合させることにより達成することができる。これにより、かかるより大きなRNAの主要な部分が、固相に結合される一方、残る上清は、小RNAを含む。第2の結合ステップにおいて、次に、200ntまたはそれに満たない長さを有する小RNAが、大RNAが除去された残る上清から単離される。それぞれの選択的結合条件は、先行技術で周知であり、したがって、詳細に記載する必要はない。これらは、背景においても記載されている。通常、第1の結合ステップにおいて大RNAを選択的に結合させるために、好ましくは、カオトロピック塩の存在下で、40%未満、例えば、10%〜37%、15%〜35%または20%〜30%の範囲である濃度でアルコール濃度が結合混合物において使用される。固相に結合された大RNAを分離した後に、上清残部は依然として、小RNAを含む。続いて、第2の結合ステップにおいて、例えば、≧40%、好ましくは≧45%、より好ましくは≧50%までアルコール濃度を増加させ、核酸結合固相に小RNAを結合させることにより、小RNAを単離することができる。結合されたRNAを洗浄し、溶出することができる。さらに、全RNAを同じ固相に結合させることができ、例えば、差次的溶出プロトコールに従って、より大きなRNAとは別々の富化された画分として小RNAを得ることができる。しかし、かかる手順は、使用者にとって非常に簡便であり、全サイズ(小、中および大)のRNAが回収されることから、単離されたRNAの下流の応用に関して柔軟であるため、200nt未満の長さを有する小RNAと共により大きなRNA種を含む全RNAを単離することが好まれる。
【0074】
本発明の特殊な沈殿条件を使用してもたらされるタンパク質枯渇上清からRNAを単離するために、他のRNA単離方法を使用することもできる。RNA単離方法は、例えば、EP2163622およびWO2009/070558にも記載されており、上清からRNAを単離するために、記載されている結合条件を使用することができる。一般に、核酸結合固相への小RNAの結合に適した条件下で、より大きなRNAも結合する。
【0075】
さらに、上清からDNAを単離することができる。適した方法は、当業者に公知であり、本開示からも明らかである。一実施形態によれば、上清から全核酸が単離される。そこで、単離された核酸は、小RNA、大RNA、中間サイズのRNAおよびDNAを含む。適した結合条件は、当業者に公知であり、本開示からも明らかである。
【0076】
次に、単離された核酸は、適したアッセイおよび/または分析方法を使用して分析および/またはさらに処理することができる。例えば、小、大および/または中間サイズのRNA等、RNAならびに上清から単離される場合は、DNAは、同定、修飾、少なくとも1種の酵素と接触、増幅、逆転写、配列決定、プローブと接触、検出(その存在または非存在を)および/または定量化することができる。それぞれの方法は、先行技術で周知であり、RNAを分析するための医学、診断および/または予後分野において一般的に適用される。よって、回収された核酸を分析して、例えば、多数の新生物疾患、特に種々の形態の腫瘍またはがん等、前悪性および悪性病変が挙げられるがこれらに限定されない、病状の存在、非存在または重症度を同定することができる。例えば、単離された核酸は、非侵襲的出生前遺伝子検査、それぞれ、スクリーニング、疾患スクリーニング、病原体スクリーニング、腫瘍学、がんスクリーニング、早期がんスクリーニング、がん治療法モニタリング、遺伝子検査(遺伝子型判定)、感染性疾患検査、傷害診断、外傷診断、移植医学または多くの他の疾患、したがって、診断および/または予後関連性があるものが挙げられるがこれらに限定されない、多くの応用分野において、診断および/または予後マーカー(例えば、胎児または腫瘍由来細胞外核酸)を検出するために分析することができる。よって、上で論じられている通り、本方法は、核酸分析および/または処理のさらに別のステップを含むことができる。
【0077】
したがって、一実施形態によれば、特に、単離されたRNA等、単離された核酸を分析して、疾患および/または少なくとも1種の胎児特徴を同定、検出、スクリーニング、モニタリングまたは除外する。分析方法は、目的の核酸種に依存する。単離された核酸の分析/さらなる処理は、増幅技術、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温増幅、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)、デジタルPCR、ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動、質量分析、蛍光検出、紫外分光測定、ハイブリダイゼーションアッセイ、RNAもしくはDNAシークエンシング、次世代シークエンシング、制限分析、逆転写、NASBA、アレル特異的ポリメラーゼ連鎖反応、ポリメラーゼサイクリングアセンブリ(PCA)、非対称的ポリメラーゼ連鎖反応、指数関数後線形ポリメラーゼ連鎖反応(LATE−PCR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、ホットスタートポリメラーゼ連鎖反応、配列間特異的ポリメラーゼ連鎖反応(ISSR)、インバースポリメラーゼ連鎖反応、ライゲーション媒介性ポリメラーゼ連鎖反応、メチル化特異的ポリメラーゼ連鎖反応(MSP)、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応、ネステッドポリメラーゼ連鎖反応、固相ポリメラーゼ連鎖反応またはこれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない、任意の核酸分析/処理方法を使用して行うことができる。
【0078】
特に、本方法は、RNAの単離が一般的に望まれる任意の目的のため、RNAの単離のために使用することができる。非限定的な例として、その後のcDNA合成のためのRNAの単離、cDNAライブラリー構築、逆転写PCR等の増幅に基づく方法、サブトラクティブハイブリダイゼーション、in vitro翻訳、SAGE技術、発現分析、発現アレイおよび発現チップ分析、マイクロアレイ分析、RNAseおよびS1ヌクレアーゼ保護、RNAノーザン、ドットおよびスロットブロッティング、マイクロインジェクションならびにさらに、シークエンシング適用のためが挙げられるがこれらに限定されない。それぞれの技術は、当業者に周知であるため、ここでさらに記載する必要はない。本発明の方法は、効率的であり、柔軟であり、フェノール化合物の使用を必要としない。
【0080】
本発明の方法の非限定的な特異的な実施形態について、次に記載する。
【0081】
一実施形態によれば、方法は、
a)溶解された塩の形態の少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤、ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を試料に添加することにより、沈殿混合物を調製するステップであって、プロトン性溶媒が使用される場合、好ましくは、プロトン性溶媒が、水混和性アルコールであり、より好まれることには、エタノールおよびイソプロパノールから選択され、沈殿混合物が、
i)300mM〜625mM、350mM〜600mMまたは400mM〜550mMから選択される濃度で金属カチオン沈殿剤塩を含み、
ii)6.5%〜14.5%、7%〜14%、8%〜13.5%、9%〜13%または9.5%〜12%から選択される濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)3〜5.25、3.25〜5.0、3.25〜4.75、3.5〜4.5または3.75〜4.4の範囲である酸性pH値を有し、
タンパク質を沈殿させる、ステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から少なくとも小および大RNAを単離するステップであって、
aa)少なくとも1種のアルコールを上清に添加して、濃度≧40%、≧45%または≧50%でアルコールを含む結合混合物を提供するステップと、
bb)結合混合物に含有される全RNAをケイ素含有核酸結合固相に結合させるステップであって、ステップbb)後に、少なくとも大および小RNAが、固相に結合される、ステップと、
cc)任意選択で、結合されたRNAを洗浄するステップと、
dd)固相からRNAを溶出するステップと
を含む、ステップと
を含む。
【0082】
上述の通り、一実施形態によれば、ステップa)に先立ち、試料が破壊されるステップx)が行われる。しかし、記載されている通り、また、実施例からも明らかなように、試料破壊(必要であれば)は、沈殿混合物の調製と同時に行ってもよい。好ましくは、適した濃度で、適したpHを有する、溶解された塩の形態の金属カチオン沈殿剤、本明細書に定義されている有機溶媒および緩衝剤を含む沈殿バッファーが、ステップa)において添加されて、定義された沈殿混合物をもたらす。
【0083】
一実施形態によれば、方法は、RNAを単離するためのものであり、
x)試料を破壊するステップと、
a)少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を破壊された試料に添加することにより、沈殿混合物を調製するステップであって、プロトン性溶媒が使用される場合、プロトン性溶媒は、好ましくは、水混和性アルコールであり、沈殿混合物が、
i)300mM〜625mM、350mM〜600mMまたは400mM〜550mMから選択される濃度で金属カチオン沈殿剤を含み、
ii)6.5%〜14.5%、7%〜14%、8%〜13.5%、9%〜13%または9.5%〜12%から選択される濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)3〜5.25、3〜5、3.25〜4.75、3.5〜4.5または3.75〜4.4の範囲である酸性pH値を有し、
タンパク質を沈殿させる、ステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から少なくとも小および大RNAを単離するステップであって、
aa)少なくとも1種のアルコールを上清に添加して、濃度≧40%、≧45%または≧50%でアルコールを含む結合混合物を提供するステップと、
bb)結合混合物に含有される全RNAをケイ素含有核酸結合固相に結合させるステップであって、ステップbb)後に、少なくとも大および小RNAが、固相に結合される、ステップと、
cc)任意選択で、結合されたRNAを洗浄するステップと、
dd)固相からRNAを溶出するステップと
を含む、ステップとを含む。
【0084】
一実施形態によれば、方法は、
x)試料を破壊するステップと、
a)溶解された塩の形態のZn
2+およびAl
3+から選択される少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤、好ましくは塩化亜鉛、ならびに非プロトン性極性溶媒である少なくとも1種の有機溶媒を破壊された試料に添加することにより、沈殿混合物を調製するステップであって、沈殿混合物が、
i)300mM〜625mM、350mM〜600mMまたは400mM〜550mMから選択される濃度で金属カチオン沈殿剤塩を含み、
ii)8%〜13.5%、9%〜13%または9.5%〜12%から選択される濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)3.5〜4.5または3.75〜4.4の範囲である酸性pH値を有し、
タンパク質を沈殿させる、ステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から小および大RNAを単離するステップであって、
aa)少なくとも1種のアルコールを上清に添加して、濃度≧40%、≧45%または≧50%でアルコールを含む結合混合物を提供するステップであって、結合混合物が、カオトロピック塩をさらに含む、ステップと、
bb)結合混合物に含有される全RNAをケイ素+含有核酸結合固相に結合させるステップであって、ステップbb)後に、少なくとも大および小RNAが、固相に結合される、ステップと、
cc)結合されたRNAを洗浄するステップと、
dd)固相からRNAを溶出するステップと
を含む、ステップとを含む。
【0085】
上述の通り、好ましくは、適した濃度で、適したpHを有する、溶解された塩の形態の金属カチオン沈殿剤、有機溶媒および緩衝剤を含む沈殿バッファーが、ステップa)において添加されて、定義された沈殿混合物をもたらす。
【0086】
記載されている通り、一実施形態によれば、試料は、ステップa)において金属カチオン沈殿剤および有機溶媒が添加されるのと同じときにそれぞれの段階で破壊する。一実施形態によれば、方法は、RNAを単離するためのものであり、方法は、
a)少なくとも1種の破壊試薬、少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を試料に添加することにより、沈殿混合物を調製するステップであって、プロトン性溶媒が使用される場合、プロトン性溶媒は、好ましくは、試料を破壊し、
i)300mM〜625mM、350mM〜600mMまたは400mM〜550mMから選択される濃度で金属カチオン沈殿剤を含み、
ii)6.5%〜14.5%、7%〜14%、8%〜13.5%、9%〜13%または9.5%〜12%から選択される濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)3〜5.25、3〜5、3.25〜4.75、3.5〜4.5または3.75〜4.4の範囲である酸性pH値を有し、
v)破壊試薬を含む
沈殿混合物を調製するための水混和性アルコールであり、
タンパク質を沈殿させる、ステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から少なくとも小および大RNAを単離するステップであって、
aa)少なくとも1種のアルコールを上清に添加して、濃度≧40%、≧45%または≧50%でアルコールを含む結合混合物を提供するステップと、
bb)結合混合物に含有される全RNAをケイ素含有核酸結合固相に結合させるステップであって、ステップbb)後に、少なくとも大および小RNAが、固相に結合される、ステップと、
cc)任意選択で、結合されたRNAを洗浄するステップと、
dd)固相からRNAを溶出するステップと
を含む、ステップとを含む。
【0087】
一実施形態によれば、前記方法は、
a)少なくとも1種の破壊試薬、溶解された塩の形態のZn
2+およびAl
3+から選択される少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤、好ましくは塩化亜鉛、ならびに非プロトン性極性溶媒である少なくとも1種の有機溶媒を添加して、試料を破壊し、
i)300mM〜625mM、350mM〜600mMまたは400mM〜550mMから選択される濃度で金属カチオン沈殿剤塩を含み、
ii)8%〜13.5%、9%〜13%または9.5%〜12%から選択される濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)3.5〜4.5または3.75〜4.4の範囲である酸性pH値を有し、
v)破壊試薬を含む
沈殿混合物を調製することにより、沈殿混合物を調製し、
タンパク質を沈殿させるステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと、
c)上清から小および大RNAを単離するステップであって、
aa)少なくとも1種のアルコールを上清に添加して、濃度≧40%、≧45%または≧50%でアルコールを含む結合混合物を提供するステップであって、結合混合物が、カオトロピック塩をさらに含む、ステップと、
bb)結合混合物に含有される全RNAをケイ素含有核酸結合固相に結合させるステップであって、ステップbb)後に、少なくとも大および小RNAが、固相に結合される、ステップと、
cc)結合されたRNAを洗浄するステップと、
dd)固相からRNAを溶出するステップと
を含む、ステップとを含む。
【0088】
上述の通り、好ましくは、適した濃度で、適したpHを有する、溶解された塩の形態の金属カチオン沈殿剤、有機溶媒および緩衝剤を含む沈殿バッファーが、ステップa)において添加されて、定義された沈殿混合物をもたらす。
【0089】
用語「試料」は、本明細書において広義で使用されており、核酸を含有する種々の供給源を含むことが意図される。試料は、生物学的試料であり得るが、用語は、その他、例えば、RNAを含む人工的な試料も含む。例示的な試料として、肝臓、脾臓、腎臓、肺、腸、脳、心臓、筋肉、脂肪、膵臓、細胞培養物、体液が一般に挙げられるがこれらに限定されない、組織;全血;血清;血漿;赤血球;白血球;バフィーコート、腫瘍細胞、胎児細胞、宿主および移植片細胞;頬側スワブ、咽頭スワブ、腟スワブ、尿道スワブ、子宮頸部スワブ、咽頭スワブ、直腸スワブ、病変スワブ、膿瘍(abcess)スワブ、鼻咽頭スワブその他が挙げられるがこれらに限定されない、スワブ;尿;痰;唾液;精液;リンパ液;液(liquor);羊水;脳脊髄液;腹膜滲出液;胸水貯留;嚢胞由来の液体;滑液;硝子体液;眼房水;滑液包液;眼洗浄液;眼吸引液;肺洗浄物;肺吸引液;骨髄吸引液、懸濁下の細胞、ならびに任意の細胞から得られる溶解物、抽出物または材料、ならびに試料の上にまたはその中に存在し得る微生物およびウイルスその他が挙げられるがこれらに限定されない。RNAを含有するまたは含有すると疑われる臨床または法医学設定から得られる材料も、用語、試料に意図される意味の中に入る。さらに、当業者であれば、上述の例示的な試料のいずれかから得られる溶解物、抽出物もしくは材料またはこれらの部分も、用語、試料の範囲内であることを認める。好ましくは、試料は、ヒト、動物、植物、細菌または真菌に由来する生物学的試料である。好ましくは、試料は、細胞、組織、例えば血液等の体液、バフィーコート、血漿および血清等の血液製剤、尿、液、痰、糞便、CSFおよび精子、上皮スワブ、生検、骨髄試料ならびに多様な組織試料からなる群から選択される。上述の通り、試料は、好ましくは、沈殿混合物を調製する前に破壊する。本発明による方法は、血漿または血清等、タンパク質に富んだ試料からのRNAの単離に特に適している。実施例によって示されている通り、本発明による方法は、精製の間にフェノールが使用されない場合であっても、それぞれの試料から小および大RNAを効率的に単離することを可能にする。
【0090】
本発明による方法は、血液試料、特に、例えば抗凝固薬を使用して安定化された血液試料および血漿または血清等のかかる血液試料に由来する試料の処理にも適している。血液試料の安定化に使用される典型的な抗凝固薬として、EDTAおよびクエン酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。方法は、血漿または血清試料から等、それぞれの安定化された試料に由来する試料からのRNAの単離にも適している。さらに、RNAは、活性化因子を含む血清試料を含む血清試料から単離することができる。
【0091】
用語「核酸(単数または複数)」は、本明細書において、典型的には、サブユニット間をホスホジエステル連結によって、ただし場合によってはホスホロチオエート、メチルホスホネートその他によって共有結合されたリボヌクレオシドおよび/またはデオキシリボヌクレオシドを含むポリマーを特に指す。DNAとして、あらゆる種類のDNA、例えば、gDNA;環状DNA、プラスミドDNAおよび循環DNAが挙げられるがこれらに限定されない。RNAとして、hnRNA;mRNA;細胞外RNA、rRNA、tRNA、lncRNA(長鎖非コードRNA)、lincRNA(長鎖遺伝子間非コードRNA)、miRNA(マイクロRNA)、siRNA(低干渉RNA)、snoRNA(核小体低RNA)、snRNA(核内低RNA)およびstRNA(一時的小RNA)が挙げられるがこれらに限定されない非コードRNA(ncRNA)、piRNA(piwi相互作用RNA)、tiRNA(転写開始RNA)、PASR(プロモーター関連RNA)、CUT(潜在性不安定転写物(cryptic unstable transcript))が挙げられるがこれらに限定されない。小RNAまたは用語、小RNA種は、200ntもしくはそれに満たない、175ntもしくはそれに満たない、150ntもしくはそれに満たない、125ntもしくはそれに満たない、100ntもしくはそれに満たないまたは75ntもしくはそれに満たない鎖の長さを有するRNAを特に指し、その例として、miRNA、siRNA、他の短干渉核酸、snoRNAその他が挙げられるがこれらに限定されない。大RNAおよび同様の表現は、本明細書において、少なくとも1250nt、少なくとも1500ntまたはさらに大きい等、少なくとも1000ntの長さを有するRNA種を指す。大RNAは、mRNAを特に含む。RNAが二本鎖である場合、「nt」として示される鎖の長さは、「bp」を指す。本方法により単離することができるRNAは、当然ながら中間サイズのRNAであることもでき、例えば、試料から全RNAを単離する際に単離される。
【0092】
RNA等の核酸の結合に使用することができる核酸結合固相として、目的の核酸と結合することができるいかなる材料を使用してもよい。これは、核酸と結合することができる種々の材料を含む。本発明と併せて使用することができる例示的な固相として、シリカ粒子、シリカファイバー、ガラス繊維、二酸化ケイ素、珪藻土、ガラス、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウムおよびホウケイ酸塩等、シリカ材料が挙げられるがこれらに限定されない、ケイ素を含む化合物;ニトロセルロース;ジアゾ化ペーパー;ヒドロキシアパタイト(ヒドロキシルアパタイトとも称される);ナイロン;金属酸化物;ミネラル、ジルコニア;アルミナ;ポリマー型支持体、有機ポリマー、ジエチルアミノエチルおよびトリエチルアミノエチル誘導体化支持体、疎水性クロマトグラフィー樹脂その他が挙げられるがこれらに限定されない。用語、固相は、その形態または設計に関するいかなる限定の暗示も意図しない。よって、用語、固相は、多孔性または非多孔性、透過性または不透過性の適切な材料を包含し、その例として、膜、フィルター、シート、粒子、磁性粒子、ビーズ、ゲル、粉末、繊維その他が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態によれば、タンパク質枯渇上清由来の目的の核酸と結合するために、アニオン交換リガンドで官能化した固相が使用される。例えば、アニオン交換リガンドで官能化した、カラムまたは磁性粒子等の粒子を使用することができる。別の実施形態によれば、例えば、シリカ固相等、固相の表面は、修飾されず、例えば、官能基により修飾されない。
【0093】
固相として、シリカおよびポリケイ酸材料、ホウケイ酸塩、ケイ酸塩ならびに有機ガラス等、ケイ素含有材料の使用が特に好まれる。そこで、固相は、好ましくは、沈殿および/または吸着によって結合され得るRNAとの相互作用のためのシリカ表面を提供する。用語「シリカ表面」は、本明細書において、二酸化ケイ素および/または他の酸化ケイ素、珪藻土、ガラス、ゼオライト(zeolithe)、ベントナイト、アルキルシリカ、ケイ酸アルミニウムならびにホウケイ酸塩を含むまたはからなる表面を含む。シリカ表面は、好ましくは、未修飾である。したがって、表面は、核酸結合リガンドまたは他の核酸結合基により修飾されない。例えば、固相は、その結合表面に、イオン交換基を含むいかなるリガンドも保有せず、特に、固相の表面は、官能リガンドにより修飾されない。特に、これは、例えば、アミン基またはカルボキシル基等、アニオン性またはカチオン性交換基を含むリガンドにより修飾されない。一実施形態によれば、シリカ表面は、そのシラノール基または酸化物等、他の酸化型のケイ素に加えていかなる官能基も含まない。本発明と併せて使用することができる例示的な固相として、シリカ粒子、シリカファイバー、例えば、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラス粒子またはコントロールドポアガラス等のガラス材料、二酸化ケイ素、粉末、ビーズまたはフリット等の粒子状形態のガラスまたはシリカが挙げられるがこれらに限定されない、シリカ表面を含む固相が挙げられるがこれらに限定されない。本発明によれば、カラムに基づく固相の使用または粒子、特に磁性粒子の使用が好まれる。
【0094】
シリカに基づく核酸単離方法は、先行技術において広範に使用されており、結合のために高いアルコール濃度を使用して、好ましくは、少なくとも1種のカオトロピック塩と組み合わせて、小RNAを含むRNAを単離するときに特によく役立つ。
【0095】
一実施形態によれば、ビーズの形態を有し得るシリカ粒子が使用される。好ましくは、前記粒子は、約0.02〜30μm、より好まれる0.05〜15μmおよび最も好まれる0.1〜10μmのサイズを有する。核酸結合固相の処理を容易にするために、好ましくは、磁性シリカ粒子が使用される。磁性粒子は、磁場に応答する。磁性シリカ粒子は、例えば、フェリ磁性、強磁性、常磁性または超常磁性であり得る。適した磁性シリカ粒子は、例えば、WO01/71732、WO2004/003231およびWO2003/004150に記載されている。他の磁性シリカ粒子も先行技術から公知であり、例えば、WO98/31840、WO98/31461、EP1260595、WO96/41811およびEP0343934に記載されており、例えば磁性シリカガラス粒子も含む。結合されたRNAを含む磁性粒子は、磁場の助けにより、例えば、永久磁石を使用することにより容易に処理することができるため、磁性粒子の使用は簡便である。本実施形態は、磁性粒子を処理することができる確立されたロボットシステムと適合性である。そこで、本発明と併せて、核酸が結合された磁性粒子の処理に使用することができる種々のロボットシステムが、先行技術において存在する。一実施形態によれば、磁性粒子は、反応槽の底または側面に収集され、残る液体試料は、反応槽から除去され、核酸が結合されている収集された磁性粒子を後に残す。残る試料の除去は、デカンテーションまたは吸引によって行うことができる。かかるシステムは、先行技術で周知であり、よって、ここで詳細な説明は必要ない。磁性粒子の処理のための公知の代替システムにおいて、カバーまたはエンベローププランジで通常覆われている磁石を反応槽内に入れて、磁性粒子を収集する。それぞれのシステムは、先行技術で周知であり、市販もされている(例えば、QIASYMPHONY(登録商標);QIAGEN)ため、ここではいかなる詳細な説明も必要ない。磁性粒子の処理のための公知のさらに別の代替システムにおいて、磁性粒子を含む試料は、ピペットチップ内に吸引することができ、例えば、ピペットチップの側面に磁石を適用することにより、ピペットチップにおいて磁性粒子を収集することができる。続いて、結合された核酸を保有する収集された磁石粒子を、ピペットチップ内に磁石によって残しながら、残る試料をピペットチップから放出することができる。続いて、収集された磁性粒子をさらに処理することができる。かかるシステムも、先行技術で周知であり、市販もされており(例えば、BioRobot EZ1、QIAGEN)、よって、ここではいかなる詳細な説明も必要ない。
【0096】
好まれる実施形態によれば、固相がカラムに含まれた、カラムに基づく核酸単離手順が行われる。用語「カラム」は、本明細書において、少なくとも2個の開口部を有する容器を特に記載する。これにより、溶液および/または試料は、前記カラムを通過することができる。用語「カラム」は、特に、容器の形状に関していかなる制限も暗示せず、これは例えば、円形または角形であり得、好ましくは、円柱状である。しかし、特に、マルチカラムを使用する場合、他の形状を使用することもできる。カラムは、RNA結合のために使用される固相を含む。カラムに含まれる前記固相は、カラムにアプライされる際の溶液、それぞれ、結合混合物の通過を可能にする必要がある。これは、例えば、遠心力がカラムに加えられる場合、溶液および/または結合混合物に、遠心力の方向でのカラムの通過が可能になることを意味する。上で論じられている通り、それぞれのカラムに基づくRNA単離手順を使用する場合、結合混合物は通常、例えば、遠心分離または真空に支援されつつカラムを通過し、RNA分子は、前記通過の間に含まれた固相に結合する。いずれのRNA種(小分子および/または大RNA)が結合されるかは、使用される結合条件に依存する。カラムは、シングルフォーマットまたはマルチフォーマットで使用することができる。マルチウェルプレートとして同様のフォーマットを有し、シリカ膜またはガラス繊維等の固相を含むかかるマルチカラムは、先行技術で周知であり、市販もされている。好ましくは、カラムは、スピンカラムである。好ましくは、RNA結合膜またはRNA結合繊維が固相として使用される。例として、RNA結合のためのケイ素含有表面を提供する、シリカ膜、ガラス繊維膜またはフィルターが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、膜は多孔性である。実施例によって示されている通り、カラムに含まれた固相の使用は、いくつかの利点を有する。スピンカラム等、カラムの使用は、RNA精製のために広く確立されているため、カラムの使用は、使用者にとって非常に簡便である。カラムに基づく方法は、速くもあり、さらに、試料の自動化された処理を可能にする自動化されたシステムが存在する(例えば、QIAcube、QIAGENを参照)。これにより、面倒な手動の取扱い手順を回避することができる。さらに、RNAを単離するためのスピンカラムに基づくアプローチの使用は、洗浄溶液(例えば、アルコール等)またはビーズからの潜在的阻害性構成成分のキャリーオーバーのリスクがないという利点を有する。カラムにおいてシリカを含むまたはからなる固相として膜または繊維を使用することが好まれる。RNA結合に適した、シリカ表面を提供する適した好まれるシリカに基づく材料は、上にも記載されている。カラムに含まれるさらに一般的な固相は、シリカ粒子の充填またはシリカ材料(例えば、シリカゲル)の層である。例えば、シリカ粒子を不活性フィルターまたは膜上に層として配置し、これにより、RNA結合固相を形成することができる。カラムに含まれた固相を通る結合混合物の通過を軽減するために、例えば、遠心分離、あるいは例えば、カラム、それぞれ固相を通して試料に圧力をかけるか、または真空にかけることにより固相を通して吸い込む圧力差を発生する器具の使用等、適した手段を使用することができる。それぞれの手段は、先行技術で周知であるため、ここではさらなる説明の必要はない。
【0097】
当業者に公知の通り、上に記載されている核酸結合固相は、一般に、DNAの結合にも適している。
【0098】
B.タンパク質枯渇上清を提供するための方法
【0099】
第2の態様によれば、試料からタンパク質枯渇上清を提供するためのフェノールフリーの方法であって、
a)少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤ならびに非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒を試料に添加することにより、沈殿混合物を調製するステップであって、沈殿混合物が、
i)金属カチオン沈殿剤を含み、
ii)15%またはそれに満たない濃度で有機溶媒を含み、
iii)少なくとも1種の緩衝剤を含み、
iv)酸性pH値を有し、
タンパク質を沈殿させる、ステップと、
b)上清から沈殿物を分離するステップであって、得られた上清が、200nt未満の長さを有する小RNAおよび少なくとも1000ntの長さを有する大RNAを含む、ステップと
を含む方法が提供される。
【0100】
個々のステップa)およびb)に関する詳細、金属カチオン沈殿剤および有機溶媒の適した種類および濃度、ならびにタンパク質枯渇上清を調製することができる種々の試料型は、第1の態様に係るおよび特許請求の範囲における方法と併せて上に記載されており、これは、ここにも適用されるそれぞれの開示に参照される。記載されている通り、ステップa)における試料は、一実施形態によれば、破壊された試料である。試料破壊は、沈殿混合物が調製されるのに先立ちまたはこれと同時に行うことができる。一実施形態によれば、第2の態様に係る方法は、ステップa)に先立ち試料が破壊されるステップx)を含む。かかる破壊ステップの詳細は、上に記載されており、これは、上述の開示に参照される。好ましくは、沈殿混合物における沈殿条件を確立するために、金属カチオン沈殿剤、有機溶媒および緩衝剤を含む沈殿バッファーが、ステップa)において添加される。前記沈殿バッファーの詳細は、上に記載されている。例えば、特許請求の範囲にも定義されている通り、第3の態様に係る沈殿バッファーは、この目的のために使用することができる。沈殿バッファーは、好ましくは、破壊された試料に添加される。
【0101】
方法は、先行技術方法とは対照的に、小および大RNA(および中間サイズのRNA)、ならびに実施形態では、ゲノムDNA等の高分子量核酸も含む、タンパク質枯渇上清を提供する。詳細は、上に記載されており、これは、上述の開示に参照される。次に、目的の核酸種は、様々な核酸単離方法を使用して、タンパク質枯渇上清から単離することができる。使用される方法は、目的の標的核酸にも依存する。RNAと共にDNAの単離に適した例示的な非限定的な実施形態は、上に記載されており、これは、上述の開示に参照される。
【0103】
第3の態様によれば、
a)少なくとも1種の金属カチオン沈殿剤と、
b)非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される少なくとも1種の有機溶媒と、
c)少なくとも1種の緩衝剤と
を含む沈殿バッファーであって、3〜5.5の範囲であるpH値を有する沈殿バッファーが提供される。
【0104】
様々な生物学的試料、特に、破壊された生物学的試料からタンパク質を沈殿させるために、それぞれの沈殿バッファーを有利に使用することができる。したがって、これは、タンパク質を沈殿させるために、本発明の第1および第2の態様に係る方法において特異的に使用することができる。前記沈殿バッファーの詳細は、第1の態様に係る方法と併せて既に上に記載されており、これは、ここにも適用されるそれぞれの開示に参照される。非限定的な実施形態について、次に再度簡単に説明する。
【0105】
金属カチオン沈殿剤は、0.75M〜3M、1M〜2.8M、1.25M〜2.7M、1.5M〜2.6Mまたは1.7M〜2.5Mから選択される濃度で、溶解された塩の形態で沈殿バッファーに含まれ得る。例えば、塩化物塩等、ハロゲン化物塩を使用することができる。2種またはそれを超える金属カチオン沈殿剤が含まれる場合、これらの濃度は、一実施形態によれば、含まれている金属カチオン沈殿剤の全体的な濃度を指す。実施例によって実証される通り、それぞれの濃度で金属カチオン沈殿剤を含む沈殿バッファーの使用は、優れた結果をもたらす。適した金属カチオン沈殿剤は、上に記載されており、好ましくは、金属カチオン沈殿剤は、Zn
2+およびAl
3+から選択される。Zn
2+が特に好まれる。これは、塩化亜鉛として沈殿バッファーに含まれ得る。
【0106】
沈殿バッファーは、13%〜65%、20%〜63%、25%〜62.5%、30%〜60%、33%〜57.5%、37.5%〜55%または40%〜52.5%から選択される濃度で、非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される有機溶媒を含むことができる。2種またはそれを超えるそれぞれの有機溶媒が、沈殿バッファーに含まれる場合、これらの濃度は、一実施形態によれば、含まれている有機溶媒の全体的な濃度を指す。非プロトン性極性溶媒およびプロトン性溶媒から選択される適した有機溶媒の適切な例は、第1の態様に係る方法と併せて上に記載されており、実施例からも明らかである。有機溶媒は、水に混和性である。好ましくは、有機溶媒は、DMSO等、非プロトン性極性溶媒である。さらに、水混和性アルコール等、プロトン性有機溶媒を使用することができる。好ましくは、プロトン性有機溶媒は、例えば、メタノール、エタノールおよびイソプロパノール等、低級脂肪族アルコールである。
【0107】
沈殿バッファーは、3〜5.5、3〜5.25、3.25〜5、3.25〜4.75、3.5〜4.5および3.75〜4.4から選択されるpH値を有することができる。3〜5、好ましくは3.25〜4.75、より好まれる3.5〜4.5または3.75〜4.4の範囲のpHが特に好まれる。実施例によって実証される通り、それぞれの酸性pH値を有する沈殿バッファーの使用は、特に、血漿または血清等、タンパク質に富んだ試料を処理する場合、有利な結果をもたらす。
【0108】
酸性pH値を維持するため、沈殿バッファーは、少なくとも1種の緩衝剤を含む。実施例によって実証される通り、異なる緩衝剤を使用することができる。緩衝剤の組合せを使用することもできる。一実施形態によれば、緩衝剤は、カルボン酸であるまたはこれに由来する。カルボン酸は、モノ、ジまたはトリカルボン酸を含む。好ましくは、緩衝剤は、酢酸またはクエン酸であり、それぞれ、酢酸塩またはクエン酸塩である。実施例によって実証される通り、酢酸塩およびクエン酸塩は、異なる塩の形態で添加することができる。さらに、PIPPS等、リン酸塩バッファーを使用することができる。一実施形態によれば、沈殿バッファーは、300mM〜2M、400mM〜1.75M、450mM〜1.5M、500mM〜1.4M、550mM〜1.3Mおよび600mM〜1.25Mから選択される濃度で緩衝剤を含む。先に言及した濃度範囲で使用することができる、酢酸塩またはクエン酸塩等、カルボン酸塩、例えば、アルカリ金属塩が特に好まれる。550mM〜1.3M、600mM〜1.25Mまたは650mM〜1.2Mの範囲である濃度が特に好まれる。2種またはそれを超える緩衝剤が使用される場合、それぞれの濃度は、一実施形態によれば、沈殿バッファーにおける緩衝剤の全体的な濃度を指す。
【0109】
一実施形態によれば、沈殿バッファーは、
aa)1.25M〜2.8M、1.5M〜2.6Mまたは1.7M〜2.5Mから選択される濃度で、溶解された塩の形態の金属カチオン沈殿剤として、Zn
2+またはAl
3+、好ましくはZn
2+を含み、
bb)13%〜65%、20%〜63%、25%〜62.5%、30%〜60%、33%〜57.5%、37.5%〜55%または40%〜52.5%から選択される濃度で好ましくは非プロトン性極性有機溶媒である有機溶媒を含み、
cc)3.25〜4.75または3.4〜4.5の範囲であるpH値を有する。
【0110】
上述の通り、Zn
2+が好まれ、例えば、塩化亜鉛として含まれ得る。
【0111】
第3の態様に係る沈殿バッファーは、キットに含まれてもよい。したがって、本開示は、キットも提供する。キットは、試料から核酸、好ましくは少なくともRNAを単離するためのものである。キットは、一実施形態によれば、好ましくは、少なくともRNAである核酸の単離に必要なあらゆる試薬を含む。一実施形態によれば、かかるキットは、第3の態様に係る沈殿バッファーと、次の構成成分:
− 少なくとも1種の破壊試薬;
− 少なくとも1種の核酸結合固相;
− 少なくとも1種の結合溶液;
− 少なくとも1種の洗浄溶液;および/または
− 少なくとも1種の溶出溶液
のうち1種または複数とを含む。
【0112】
キットは、一実施形態によれば、沈殿バッファーと、カオトロピック塩を含む破壊試薬と、核酸結合固相とを含む。それぞれの破壊試薬および核酸結合固相に適した実施形態は、第1の態様に係る方法と併せて上に記載されており、これは、ここにも適用される上述の開示に参照される。キットは、結合溶液をさらに含むことができる。結合溶液は、核酸結合固相への好ましくはRNA等の核酸の結合の促進に適したアルコールを含むまたはからなることができる。適したアルコールは、上に記載されており、エタノールおよびイソプロパノールが好まれる。本実施形態は、例えば、核酸結合固相としてケイ素含有材料が使用される場合に適している。結合溶液は、好ましくは、カオトロピック塩等、カオトロピック剤を含むことができる。これは、破壊バッファーがカオトロピック塩を含まない場合に特に有利である。
【0113】
本発明は、本明細書に開示されている例示的な方法および材料によって限定されず、本発明の実施形態の実施または検査において、本明細書に記載されているものと同様のまたは同等な任意の方法および材料を使用することができる。数値的範囲は、範囲を定義する数の包括的なものである。本明細書に提示されている見出しは、本明細書をまとめて参照することにより読み取ることができる、本発明の様々な態様または実施形態の限定ではない。
【0114】
対象明細書および特許請求の範囲において使用されている通り、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそれ以外を明らかに指示しない限り、複数形の態様を含む。よって、例えば、「単数の(a)金属カチオン沈殿剤」への言及は、単一の種類の金属カチオン沈殿剤と共に、2種またはそれを超える金属カチオン沈殿剤を含む。同様に、単数の(an)「アルコール」、単数の(an)「有機溶媒」、単数の(a)「カオトロピック塩」、単数の(a)「緩衝剤」その他への言及は、単一実体およびかかる実体の2種またはそれ超の組合せを含む。「本(the)開示」および「本(the)発明」その他への言及は、本明細書に教示されている単一または複数の態様を含む;等々。本明細書に教示されている態様は、用語「発明」によって包含される。
【0115】
用語「溶液」は、本明細書において、液体組成物、好ましくは、水性組成物を特に指す。これは、1相のみの均質な混合物であり得るが、溶液が、例えば、沈殿物等の固体構成物を含むことも本発明の範囲内である。
【0116】
一実施形態によれば、方法の場合はある特定のステップを含むものとして、あるいは組成物、溶液および/またはバッファーの場合はある特定の成分を含むものとして本明細書に記載されている対象物は、それぞれのステップまたは成分からなる対象物を指す。本明細書に記載されている好まれる実施形態を選択および組み合わせることが好まれ、好まれる実施形態のそれぞれの組合せから生じる特異的な対象物も、本開示に属する。
【実施例】
【0117】
I.材料および方法
他に断りがなければ、全RNAは、次の標準プロトコールに従って血清、血漿または組織から単離した:
【0118】
1.材料
沈殿バッファーXP(45%(v/v)DMSO;ZnCl
2(1.909M);NaOAc;pH4〜4.5)
− シリカカラム(RNeasy(登録商標)MinElute(登録商標)スピンカラム)
− 収集チューブ(1.5mlおよび2ml)
− 洗浄バッファーRWT(QIAGEN;GTCを含有、2容量エタノール(96%〜100%)を使用前にバッファー濃縮物RWTに添加)
− 洗浄バッファーRPE(QIAGEN;4容量エタノール(96%〜100%)を使用前にバッファー濃縮物RPEに添加)
− 溶解バッファーRLT Plus(QIAGEN;カオトロピック塩および洗剤を含有)
− RNaseフリー水
− Ce_miR−39_1 miScript(登録商標)プライマーアッセイ
【0119】
2.全RNA単離
2.1.手動手順
【0120】
試料調製
120μl溶解バッファー(RLT Plus、QIAGEN)を、血清または血漿等の200μl試料に添加する。溶解混合物を5秒間ボルテックスにかけ、3分間室温でインキュベートして、試料を破壊する。
【0121】
タンパク質沈殿
破壊された試料に95μl沈殿バッファーXPを添加し、3秒間ボルテックスにかける。任意選択で、3.5μl miRNeasy血清スパイクイン対照(1.6×10
8コピー/μl)を添加し、再度3秒間ボルテックスにかける。次に、試料を3分間氷上でインキュベートする。任意選択で、試料は、数時間4℃で貯蔵することもできる。得られた沈殿物を>11,000rpmで3分間の遠心分離により除去する。核酸含有上清を新たな収集チューブに移す。
【0122】
RNA結合
1容量(360μl)アルコール(例えば、イソプロパノール)を上清に添加し、結合混合物を5秒間ボルテックスにかける。次に、結合混合物をシリカスピンカラムにアプライし、室温で2分間インキュベートする。その後、カラムを30秒間>11.000rpmで遠心分離する。
【0123】
洗浄ステップ
結合されたRNAをさらに精製するために、数回の洗浄ステップを行った:700μl RWT、15秒間>8000×gで遠心分離、フロースルーを廃棄;800μl RPE、15秒間>8000×gで遠心分離、フロースルーを廃棄;700μl RPE、15秒間>8000×gで遠心分離、フロースルーを廃棄。最後に、300μl 100%エタノールをカラムに添加し、2分間>8000×gで遠心分離;フロースルーを廃棄する。次に、洗浄されたRNAの入ったカラムを新たな2ml収集チューブに移す。次に、蓋を開けたカラムを5分間、最大rpmで遠心分離して、残る微量のエタノールを除去する。
【0124】
溶出
カラムを新たな1.5ml反応槽に移す。20μl RNaseフリー水をカラム中央にアプライする。カラムを閉じ、1分間、最大rpmで遠心分離する。任意選択で、例えば、既に得られた溶出液を使用して、第2の溶出ステップを行うことができる。
【0125】
2.2.マルチウェル(96)アプローチ
BioRobot Universalロボットシステムまたは例えば、QIAcube HTシステムにおいて96ウェルプレートを使用して、複数の試料を同時に処理して、手動プロトコールを行うこともできる。CMTR(収集マイクロチューブラック)ブロックにおいて試料調製を行うことができる:
【0126】
試料調製
200μl血清または血漿をCMTRブロックに添加する。120μl溶解バッファー(RLT Plus、QIAGEN)を添加し、混合する。溶解のため、溶解混合物を3分間、室温でインキュベートする。
【0127】
タンパク質沈殿
95μl沈殿バッファーXPを溶解混合物に添加し、試料を混合する。任意選択で、3.5μl miRNeasy血清スパイクイン対照(1.6×10
8コピー/μl)を添加し、混合する。上述の通り、この段階で、数時間4℃で試料を貯蔵することも可能である。沈殿物を4℃、>5.000rpmで5分間の遠心分離により除去する。続いて、BioRobot UniversalシステムにおいてCMTRブロックをさらに処理する。このさらなるBioRobotプロトコールは、血清/血漿試料のための現存するmiRNeasy BioRobotプロトコールに相当する。唯一の適応は、試料から得られる上清の容量である。RNA単離は、RNeasy 96プレートを使用して行われる。洗浄ステップは、手動調製のために記載されているステップに相当する。溶出容量は、2×55μlである。
【0128】
II.実験
【0129】
(実施例1)
BioRobot Universalプロトコールを使用した、血清および血漿からのmiRNAを含む全RNAの単離
【0130】
本発明による方法の効率は、異なる試料型を使用して実証される。試料材料として、(プールされた)異なるヒト血清および血漿試料を使用した(表1を参照):
【表1】
【0131】
1)確立されたQIAzol調製方法(血漿/血清のためのmiRNeasy;フェノールの使用を含む)または2)本発明によるフェノールフリーの方法を使用して、同じプールされた試料からRNAを単離した。同じプールされた試料からRNAを得たため、方法のRNA単離効率を直接的に比較することができる。
【0132】
各プールされた試料から、BioRobot Universalシステムにおいて両方の方法により8つの複製物を処理した。miScript miRNA PCRアレイmiRNA QC(MIHS−989Z)を使用して、各溶出液の6μlをその後に分析した。
図1(血清)および
図2(血漿)は、3種の定量化されたmiRNA(miR−16、miR−21およびmiR−191)およびスパイクイン対照Cel−miR−39のCt値を示す。本発明による方法は、殆どの場合、確立された先行技術単離プロトコール(miRNeasy)よりも優れた結果(すなわち、より低いCt値)を達成した。したがって、本発明によるフェノールフリーの方法は、確立されたフェノールに基づくRNA単離方法に等しいまたはそれよりもさらに優れた結果をもたらす。
【0133】
(実施例2)
単離されたmiRNAのスペクトル
【0134】
本発明による方法が、確立されたmiRNeasy単離プロトコールと同じ試料からのmiRNAの比較スペクトルの単離を可能にするか分析した。miRNeasy血清/血漿キット(6つの複製物)または本発明による方法(8つの複製物)のいずれかを使用して、プールされた血清試料からRNAを手作業で単離した。「ヒトmiFinder 384HC miRNA PCRアレイ」を使用して、得られた溶出液を分析した。定量化された372種のmiRNAの平均Ct値および両方の方法の平均値を、図表において互いに対して直接的にプロットした。結果を
図3に示す。83%超の達成された相関係数は、本発明による方法が、豊富な標的と共に稀少な標的を匹敵する効率で、分析されたmiRNAの大部分の単離を可能にすることを示す。
【0135】
(実施例3)
miRNA単離における非プロトン性極性溶媒の影響
【0136】
非プロトン性極性有機溶媒が、RNA単離にどのように影響を与えるか分析するために、上述の手動プロトコールを使用して、プールされた血清試料(6名のドナー、凝固活性化因子なしの収集チューブ)からRNAを単離した。標準沈殿バッファーXPに加えて、DMSOなしの、したがって、非プロトン性極性有機溶媒なしの修飾された沈殿バッファーを比較目的のため使用した。結合混合物における異なるイソプロパノール(アルコール)濃度および異なるDMSO濃度を使用して、miRNA単離効率を分析した。miScript miRNA PCRアレイmiRNA QC(MIHS−989Z)を使用して、定量化を行った。
【0137】
表2は、異なる沈殿バッファー(w/o=なし)のセットアップを示し、沈殿混合物におけるDMSO濃度を示し、結合混合物における最終アルコール(イソプロパノール)およびDMSO濃度も示す:
【表2】
【0138】
図4は、結果を示す。図からわかる通り、XP(w/o DMSO)および50%〜55%イソプロパノールの使用は、結合混合物(DMSOは、タンパク質沈殿ステップ後にここに添加された)におけるXP(w/o DMSO)および45%イソプロパノール+10%DMSOの使用と本質的に同じ結果をもたらしたため、小RNAを含むRNAを固相に結合させるために、結合混合物におけるDMSOの存在は、必須の役割を果たさない。ここでは明らかに、結合の間に全体的な溶媒濃度は関連性があった。しかし、驚くべきことに、得られた結果は、非プロトン性極性溶媒(ここでは:DMSO)が、沈殿ステップの間に既に存在しており、そこで、小RNAにおける安定化効果を明らかに有することが重要であることを実証する。より低いCT値からわかる通り、本発明による標準沈殿バッファーXP(DMSOを含む)は、他の沈殿バッファー(DMSOを含まない)よりも有意に優れた結果をもたらした。さらに、バッファーXP(w/o DMSO)45%イソプロパノール+10%DMSOにより実証される通り、沈殿ステップ後だがRNA結合前におけるDMSOのその後の添加も、結果を改善しない。理論に制約されることは望まないが、沈殿の間のmiRNAにおける安定化効果の発揮に加えて、miRNAを含むタンパク質複合体が、沈殿ステップの間にDMSOによって溶解され、したがって、続いてその後の結合ステップにおいてより効率的に回収され得る、小RNAの放出を支持することも可能である。これは、沈殿の間にDMSOが使用されなかった方法と比較して、本発明による方法を使用した場合、miR−191のCt値が、有利に有意に低下されたという観察と一致する(
図4を参照)。
【0139】
(実施例4)
全RNA単離における非プロトン性極性有機溶媒の影響
【0140】
本発明による方法は、例えば、全RNAの形態で、試料から小および大RNAを単離できることを目標とする。より大分子のRNA分子の単離効率を分析するために、細胞培養物から全RNAを単離した。試料材料として、8ml溶解バッファー(RLT、QIAGEN)に溶解された4×10
7個のジャーカット細胞のプールされた溶解物を使用した。200μl溶解物(6つの複製物)からRNAを単離した。比較のため、RNAは、実施例3に従った異なる沈殿に基づく方法も使用して単離した。いずれの場合も、シリカ含有カラム(RNeasy miniカラム)を使用し、50μl RNaseフリー水を使用してRNAを溶出した。対照として、RNeasy miniキット(マニュアルに従う)およびmiRNeasy血清/血漿キット(QIAzol;マニュアルに従う)を使用してRNAを単離した。
【0141】
分光光度測定(Nanodrop)を使用して、得られた溶出液のRNA含量を分析した。さらに、Agilent BioAnalyzerおよびRNA 6000チップにより個々の試料を分析した。試料「RNeasy」、「QIAzol」および「XP」は、Agilent分析に先立ち1:4に希釈した。沈殿バッファーにおけるDMSOなしで単離した試料の溶出液(「XP50」、「XP55」および「XP45+10」)は、希釈なしで分析した。
【0142】
結果を
図5に示す。RNeasy単離から得られた溶出液は、予想通り、18Sおよび28S RNAの間の優れた比、したがって、効率的に単離された大RNAを示した。しかし、小RNA≦200ntは、得られた溶出液において本質的に失われていた。QIAzolに基づくmiRNeasy単離手順を使用して得られた溶出液は、より低濃度のRNAを示したが、溶出液は、大RNAに加えて小RNAも含んだ。DMSOが沈殿バッファー(XP)に含まれる本発明による沈殿に基づく方法により得られた溶出液は、RNeasy方法と同様に、有意な量の18Sおよび28S RNA(したがって大RNA)を含むが、さらに、小RNAを含んだ。広範な28Sピークの構造は、溶出液におけるDNAに起因し得る、またはAgilentチップの測定アーチファクトである可能性がある。沈殿バッファーにおけるDMSOなしで調製された溶出液は、有意に少ないRNAを含み、さらに、大分子18Sおよび28S RNAの大部分を欠いた。このことは、沈殿混合物において非プロトン性極性有機溶媒を含むことの利点を強調する。
【0143】
RT
2 RNA QC PCRアレイを使用して、各セットアップの4種の溶出液をさらに分析した。このアレイは、2種のハウスキーピング遺伝子のmRNAと共に潜在的に存在するgDNAをとりわけ定量化する。より良い比較のため、
図6および
図7も、Nanodropを使用して決定された試料のRNA含量を示す。
【0144】
RNeasy方法および本発明による沈殿に基づく方法(XP)の溶出液におけるmRNA含量(2種のハウスキーピング遺伝子に基づき決定)は、実質的に同じであり、このことは、mRNAが、先行技術方法とは対照的に、タンパク質沈殿ステップの間に除去されないが、本方法を使用すると回収することができることを明らかに実証する。RNeasy調製と比較して、本発明による方法を使用して得られる溶出液におけるより高い全体的な核酸量は、「RT対照なし」値からわかる通り、より高いDNA含量に起因し得る。QIAzolに基づくアプローチは、ハウスキーピング遺伝子1の最低濃度を示す。全体的な核酸含量もより低い。これは、Agilent BioAnalyzerデータによって確認される。予想通り、ゲノムDNAの量は、QIAzolに基づく調製物において最低である。DMSOなしの沈殿バッファーにより得られる3種のRNA調製物は、比較してより悪い結果(より高いCt値、低い全体的な核酸濃度)を示した。DMSOなしの沈殿バッファーにより、得られたCt値は、含有される核酸濃度に基づき予想されるものよりも2〜3Ct単位高い。核酸収率(600ngと比較して200ng)に基づき、予想される最大差は、およそ1.5Ct前後にある。これは、Agilent分析と共に、タンパク質沈殿ステップにおけるDMSO等の非プロトン性極性有機溶媒の使用の利点を実証する。沈殿ステップの間の非プロトン性極性有機溶媒の使用は、タンパク質枯渇上清からの大RNAの効率的な精製を可能にする。
【0145】
(実施例5)
組織試料からのmiRNA単離
【0146】
本発明による方法を使用して、異なる組織試料からもRNAを単離した。この目的のため、ラット脳およびラット肝臓を破壊して、バッチ溶解物を用意した。C.elegansスパイクイン対照を、バッチ溶解物に直接的に添加した。miRNeasy miniキット(マニュアルに従う)または本発明による沈殿に基づく方法のいずれかを使用して、溶解物からRNAを並行して単離した。QIAzolにおいて直接的に、あるいは溶解バッファーRLT plus(ベータ−メルカプトエタノールを含む)において、TissueRuptorを使用して、得られた溶解物をホモジナイズした。全体的に見て、調製物につきおよそ10mg組織試料を処理した。予想される高いRNA含量のため、固相として、RNeasy MinEluteカラムの代わりにRNeasy Mini Spinカラムを使用した。50μl RNaseフリー水を使用して溶出を行った。方法および組織型につき6つの複製物を調製した。さらに、条件につき4つのさらなる複製物を調製し、追加的なオンカラムDNase消化を行った。qRT−PCR分析を使用して、各条件由来の溶出液をその後に分析した。ただし、肝臓から得た溶出液は、高いRNA含量のため、水で予め希釈した(1:10)。
【0147】
結果を
図8に示す。図からわかる通り、確立されたQIAzolに基づく方法または本発明による方法を使用して、分析されたmiRNA(miR−16、miR−21およびmiR−191)と共に3種の分析されたsnoRNA(SNORD61、SNORD95、SNORD96a)のqRT−PCR分析の間に基本的に同じCt値が得られた。このことは、両方の方法が、異なる試料型を処理する場合であっても、同様の小RNA単離効率を達成することを実証する。スパイクイン対照C.elegans miR−39の単離効率において観察された差は、おそらく、溶解物における添加されたスパイクイン対照の異なる安定性に起因し得る。行われたDNAse消化は、行われたqRT−PCR分析の品質に、僅かな程度でしか寄与しない。これは、DNase消化を行う際に使用された、変化された洗浄プロトコールの結果である可能性があり(1×700μl RWTの代わりに2×350μl RWTバッファー)、オンカラムDNase消化ステップの間のカラムのより長い停留時間に潜在的に起因し得る。しかし、一般に、DNase消化の実行は可能であるが、特に、miScript miRNA PCRシステムを使用してqRT−PCR分析を行う場合は必要ない。
【0148】
(実施例6)
沈殿の間に使用される有機溶媒の役割
【0149】
上述の通り、DMSO等、非プロトン性極性有機溶媒は、本発明による単離方法における小分子および大RNAの安定化に寄与し、ここで、タンパク質は、RNAを単離する前に沈殿される。実施例6において、相当する結果が、他の非プロトン性極性有機溶媒またはエタノールおよびイソプロパノール等のプロトン性有機溶媒を使用した場合に同様に達成されることが確認された。比較のため、水を検査した。次の溶媒を検査した:
【表3】
【0150】
表示されている異なる有機溶媒を含有した異なる沈殿バッファー変種を使用して、細胞溶解物(試料当たり1×10
6個のジャーカット細胞、200μl RLTバッファーに溶解)から全核酸を調製した。得られた溶出液の1.5μlアリコートを0.8%アガロースゲルにおいて分離した。結果を
図9に示す。
【0151】
図からわかる通り、検査した非プロトン性極性有機溶媒により、小RNAだけではなく大RNAも、タンパク質枯渇上清からの単離に成功した。さらに、高分子量DNAを単離することができた。したがって、検査した非プロトン性極性有機溶媒は、タンパク質枯渇上清からの小RNA、大RNAおよび必要に応じて同様にゲノムDNAの単離を可能にした。プロトン性有機溶媒イソプロパノールおよびエタノールを使用して、同様に小分子と共に大RNA(単離されたrRNAからわかる通り)を単離することができた。したがって、本発明による沈殿条件の使用は、大RNAが、タンパク質沈殿ステップの間に失われたという結果をもたらさなかったが、そのような結果は先行技術方法に当てはまる。しかし、ゲノムDNA等、高分子量核酸は、沈殿ステップの間に有機溶媒としてエタノールまたはイソプロパノールを使用する場合、タンパク質沈殿ステップの間に、あるいはその後の単離の間に明らかに失われた。さらに、28Sおよび18S rRNAの収率が有意に低下するため、代わりに水を使用しても、容認できる結果をもたらさない。
【0152】
数回の複製によって結果を確認した。さらに、溶出液において異なるmiRNAを検出して、小RNA収率を分析した。次表は、結果および2回の複製の標準偏差を示す:
【表4】
【0153】
上述の結果および
図10から明らかなように、実施例6は、小RNAの単離が、請求項に記載の有機溶媒の存在によってマイナスに影響されないという、上に記載されている観察を確認する。小RNAは、優れた収率での回収に成功する。さらに、非プロトン性極性有機溶媒を使用する場合、miRNA収率はさらに改善された。
【0154】
しかし、小RNAに加えて大RNAを単離するため、このような大RNAが、タンパク質沈殿ステップの間に失われることを防止し、これにより、その後のRNA単離ステップにおいてタンパク質枯渇上清から回収できることを確実にするために、請求項に記載の有機溶媒が、タンパク質沈殿ステップの間に存在することが必須である。さらに、結果が示すように、非プロトン性極性有機溶媒の使用は、特に、より大分子のRNAと、同様に高分子量DNAの単離に関してより優れた結果をもたらす。
【0155】
(実施例7)
緩衝剤およびpH値
【0156】
沈殿バッファーXPは、酢酸ナトリウムを含む。酢酸ナトリウムは、2種の重要な機能を果たすことができる。第1に、酢酸塩化合物は、pH緩衝効果をもたらすことができる。さらに、一価ナトリウムイオンは、核酸の電荷の中和を支持することができ、したがって、固相への核酸の結合を支持することができる。第2の効果は、実際のタンパク質沈殿ステップに関連性がない。したがって、酢酸ナトリウムを他の酢酸塩、特に、二価酢酸マグネシウムに交換することができるか検査した。結果は、沈殿バッファーからの酢酸塩、したがって、緩衝剤の省略が、単離された核酸のスペクトルに有意差をもたらしたことを実証する。さらに、沈殿ステップの完了後の酢酸ナトリウムのその後の添加も、本来のスペクトルを回復することができなかった。これは、酢酸ナトリウムの主要効果が、pH値の緩衝であり、優れたRNA単離結果をもたらすためにはこの緩衝が有利であるという結論を支持する。これは、酢酸ナトリウムの代わりに、クエン酸塩バッファーまたはピペラジン−1,4−ビス(プロパンスルホン酸)バッファー(PIPPS)等、他の緩衝剤を代替として使用してもよいことが示された、追加的な実験によってさらに確認される。これらの代替緩衝剤も同様に、
図11に示す通り、高分子核酸の単離を可能にした。
【0157】
pH緩衝剤なしで調製された試料は、タンパク質沈殿ステップ後に、緩衝剤含有沈殿バッファー(pH4.3)により調製された試料よりも高いpH値(pH5.5)を示した。さらに、細胞溶解物の代わりに血清試料からRNAを単離する場合、RNA結合ステップの間のイソプロパノールの添加後に、試料は混濁した。したがって、固相の混入および/または詰りを防止するために、沈殿混合物の、したがって、沈殿ステップの間のpH値の緩衝が有利であることが判明し、これは、血清等、複雑な試料が処理される場合およびカラムが使用される場合に特に当てはまる。さらに、緩衝剤を含有しない沈殿溶液により調製された試料(「水」を参照)は、その後に行われたmiScript miRNA分析における逆転写反応の阻害を有意により多く示した。結果を
図12に示す(miRTC=逆転写対照;PPC=陽性PCR対照)。
【0158】
さらに、XP沈殿バッファーにおける異なるpH値を使用して調製されたmiRNAの分析は、上述の観察を確認した。タンパク質に富んだ複雑な試料(ここでは:血清試料)を処理する場合、沈殿バッファーのより低いpH値は、RNA結合ステップにおけるアルコールの添加後の沈殿を防止し、これにより、使用されているカラムの混入または詰りの防止を支持した。結果を
図13に示す。
【0159】
さらに、異なる濃度の緩衝剤を検査した。結果は、広範な濃度範囲にわたる緩衝剤を使用できることを確認する。標準沈殿バッファーXPを使用した(上述を参照)が、この場合は酢酸ナトリウムの濃度を変動させた。沈殿バッファーXPにおける次の濃度で酢酸ナトリウムを検査した:227mM、455mM、682mM、909mM、1136mMおよび1591mM(沈殿混合物における52mM、104mM、156mM、208mM、260mMおよび364mM酢酸ナトリウムに相当)。次の2表は、2回の複製から得られる異なるmiRNAの検出の結果および標準偏差(std)を示す:
【表5】
【0160】
沈殿混合物における125mM〜300mMまたは150mm〜275mMの濃度が特に好まれる。
【0161】
(実施例8)
沈殿バッファーにおいて使用される金属カチオン
【0162】
上述の通り、沈殿バッファーにおいて、亜鉛は、タンパク質を沈殿させるための機能を果たす。血清代用物としてPBSにおけるBSA(40g/l)を使用した人工的なセットアップにおいて、亜鉛の代わりに三価アルミニウムイオンを使用して、タンパク質を同様に沈殿させることができた。二価カルシウムまたはマンガンイオンも、タンパク質を沈殿させたが、検査した条件(pH値、濃度、溶媒)下ではゆっくりでしかなく、したがって、Zn
2+およびAl
3+ほど適していない。したがって、一実施形態によれば、かかるゆっくりした金属カチオン沈殿剤は使用されない。亜鉛が好まれる。
【0163】
(実施例9)
有機溶媒および金属カチオン沈殿剤の濃度範囲
【0164】
さらに、異なる濃度の有機溶媒および金属カチオン(亜鉛)を分析した。細胞溶解物および血清試料から核酸を単離した。
図14は、沈殿混合物(試料、溶解バッファーおよび沈殿バッファーXPを含む)におけるそれぞれの構成成分の濃度を示す。
【0165】
有機溶媒の濃度の結果
図14によって実証される通り、大RNAも効率的に単離するために、既に、沈殿バッファーにおける15%DMSO(沈殿混合物における最終濃度3.4%)が適している。沈殿バッファーXPにおける30%DMSO(沈殿混合物における最終濃度6.9%)を使用する場合、さらに、ゲノムDNA等、高分子核酸を単離することができた。したがって、有機溶媒の濃度の選択は、どの種類の核酸が、上清に存在し続けるか、したがって、単離することができるかに影響する。しかし、沈殿バッファーにおけるより高濃度の75%DMSOの使用(沈殿混合物における最終濃度17.2%)は、大RNAの収率を低下させたが、高分子DNAは、上清から依然として単離することができた。さらにより高濃度のDMSOは、小RNAのみを単離することができる結果をもたらした。しかし、この場合、ゲル分析によると、小RNAの全体的な収率も低下されると思われた(
図14、25.6%DMSOを参照)。したがって、沈殿混合物における本発明に従って使用される有機溶媒の濃度は、重要であり、好まれる濃度範囲は、沈殿混合物における3.4〜15%の間にある。これらの濃度は、例えば、本発明に従って15%〜60%の間の有機溶媒を含む沈殿バッファーを使用して達成することができる。それぞれの濃度範囲は、沈殿物の除去後に、小分子と共に大RNAを含むタンパク質枯渇上清をもたらすのに特に適しており、続いてこのRNAは、前記上清から単離することができる。単離されたmiRNAの分析は、濃度が高すぎない限り、DMSOが存在するか存在しないかにかかわらず、同様に十分に小分子核酸が単離されたことを示した。例えば、
図4および
図14によって実証される通り、数種類のmiRNAに関して、有機溶媒が存在する場合、結果はさらに改善された。例えば、DMSOが存在する場合(沈殿混合物における少なくとも3.4%最終濃度)、miR−191をより効率的に単離することができる。大RNAの単離を可能にするために、本明細書において実証される通り、有機溶媒は非常に重要である。有機溶媒が存在しない場合、または濃度が高すぎて、特許請求される範囲の外側にある場合、大RNAは、上清に存在しない、それぞれ、ごく少量存在する。
【0166】
沈殿剤、塩化亜鉛の結果
結果を
図14および
図16に示す。沈殿剤、塩化亜鉛の場合、タンパク質を沈殿させるために、既に最小の検査した量の塩化亜鉛(沈殿バッファーにおける0.212M、これは、沈殿混合物における48mM最終濃度に相当)で十分である。沈殿バッファーにおける最大2.55Mの塩化亜鉛濃度(沈殿混合物における最終濃度582mM)は、細胞溶解物から全核酸調製物をもたらすのに同様に適している。さらにより高濃度(沈殿バッファーXPにおける3.18M、これは沈殿混合物における728mM最終濃度に相当)を使用する場合、
図14から明らかな通り、高分子核酸(high molecular acid)の単離は妨害される。血清からのmiRNA単離に関して、沈殿バッファーにおける0.212Mおよび0.63M塩化亜鉛の濃度(最終濃度それぞれ48mM、145mM)が、検査されたより高濃度ほど効率的に、miRNAの単離に寄与しないことが示された。したがって、金属カチオン沈殿剤の好まれる範囲は、例えば、沈殿混合物における290〜580mMである。これは、例えば1.27〜2.55M塩化亜鉛を含む沈殿バッファーを使用することにより達成することができる。
【0167】
(実施例10)
破壊試薬の添加
【0168】
実施例10において、沈殿混合物を調製する前に、したがって、沈殿バッファーを添加する前に試料が破壊されることが、血清試料等の複雑な試料に決定的であるか検査した。参照として、上に記載されている標準手順に従った。先ず、120μl破壊試薬(溶解バッファーRLT Plus)を血清試料に添加し、インキュベートし、続いて95μl XPバッファーを添加する。この標準方法の変形において、95μl XPバッファーを120μl RLT Plusと混合し、次にそれぞれの混合物を血清試料に添加した。したがって、本実施形態では、沈殿混合物の調製および試料の破壊を同時に行った。結果をその後の表に示す:
【表6】
【0169】
表からわかる通り、沈殿混合物の調製の前に、あるいはその最中に溶解バッファーが添加されたかは、本質的な差を生じなかった。したがって、沈殿バッファーが添加される前に試料を先ず破壊することは必須ではない。しかし、沈殿プロセス中に破壊剤、好ましくは、カオトロピック塩が存在することが有益であることが判明した。
【0170】
(実施例11)
破壊試薬により溶解された試料の沈殿
【0171】
異なるより高いカオトロピック剤濃度の存在下での沈殿も検査するために、1%ベータ−メルカプトエタノールの存在下で5.8M GTC、30mMクエン酸ナトリウム、pH5.0を含む5ml溶解バッファーにおいて800mg組織を溶解することにより、ラット肝臓組織からバッチ溶解物を調製した。溶解物をホモジナイズし、残る固体粒子を除去するためにQIAshredderを通して濾過した。沈殿の間にカオトロピック塩(GTC)の濃度を変動させるために、次に、溶解バッファーと同じ組成を有するがカオトロープを欠く異なる量の希釈バッファー(30mMクエン酸ナトリウム、pH5.0)で、また、溶解バッファーで、得られた溶解物を希釈した。使用した溶解物、希釈バッファーおよび溶解バッファーの量を下表に示す。表は、得られた希釈溶解物におけるカオトロピック剤濃度および沈殿混合物に存在する最終カオトロピック塩濃度も示す。
【表7】
【0172】
次に、希釈した溶解物(300μl)を、沈殿バッファーXPとまたは同じ組成を有するがDMSOの代わりにプロトン性溶媒エタノールを含む沈殿バッファーと混合した。沈殿後に、試料を遠心分離し、得られた上清から核酸を単離した。そのような目的のため、上清を等容量(340μl)のイソプロパノールと混合した。混合物をRNeasyカラムにアプライした。核酸を結合させた後に、カラムを700μlバッファーRW1で洗浄し、続いて700μl RPEで2回洗浄し、50μl H
2Oで溶出させた。その後、ゲルにおいて核酸を分離した。
【0173】
結果
図17は、得られた結果を示す。プロトン性(EtOH、左ゲル)および非プロトン性(DMSO、右ゲル)有機溶媒を使用した。M=マーカー;沈殿混合物におけるカオトロピック塩濃度(4.0〜2.5Mに及ぶ)をレーン毎に示す。結果は、ある範囲のカオトロピック剤濃度にわたって、プロトン性および非プロトン性有機溶媒の存在下で、大RNAを含む大分子核酸を単離することができることを実証する。検査した4.0〜2.5Mの例示的な範囲は、優れた結果を生じた。
【0174】
(実施例12)
非プロトン性およびプロトン性有機溶媒の濃度範囲
【0175】
さらに、さらに別の濃度の有機溶媒を分析した。例示的な非プロトン性およびプロトン性溶媒としてそれぞれDMSOおよびEtOHを使用した。核酸を単離し、ゲルを泳動して、異なる濃度のDMSOまたはEtOHを含んだ沈殿バッファーを使用した、沈殿に基づくプロトコールにより得た溶出液に含有される核酸を分離した。
【0176】
結果
結果を
図18に示す。図は、DMSO(上パネル)およびEtOH(下パネル)の結果を示す。M=マーカー;レーン毎のパーセント値は、沈殿混合物におけるパーセントDMSOまたはEtOHを示す。
図18によって実証される通り、沈殿混合物における2%非プロトン性またはプロトン性有機溶媒の最終濃度は、大RNAを効率的に単離するために既に適している。この知見は、僅かにより高濃度の3%DMSOまたはEtOHを使用して同様に確認された。ゲノムDNA等、高分子核酸をさらに別の検査した濃度において単離することもでき、これにより、最終有機溶媒濃度6.9%でゲノムDNAを単離することができたという実施例9の知見を確認した。比較的高い有機溶媒濃度14%を使用した場合でも、大RNAを溶出液から依然として回収することができた。
【0177】
したがって、2%もの低さの非プロトン性またはプロトン性有機溶媒の濃度は、沈殿物の除去後に、小RNAに加えて大RNAを含む大分子核酸を依然として含むタンパク質枯渇上清をもたらすのに適している。したがって、小分子および大分子核酸は、前記上清から単離することができる。本実施例は、濃度が高すぎない限り、例えば14%等、本明細書に定義されている範囲内のより高濃度の有機溶媒においても大RNAを単離することができることを確認する(上述の実施例9を参照)。さらに、実施例は、タンパク質沈殿の間の大分子核酸の安定化に対するプロトン性および非プロトン性有機溶媒の適合性を確認する。
【0178】
(実施例13)
異なる酸性pH値の沈殿バッファーを使用した大分子核酸の単離
【0179】
1%ベータ−メルカプトエタノールの存在下で2.78M GTC、20mMクエン酸ナトリウム、pH5.0を含む6ml溶解バッファーにおいて400mg組織を溶解することにより、ラット肝臓組織からバッチ溶解物を調製した。溶解物をホモジナイズし、残る固体粒子を除去するために、QIAshredderを通して濾過した。酢酸でpHを調整することにより、異なるpH値を有するXPバッファーを調製した。
【0180】
検査するpH値毎に、300μlの溶解物を90μlのそれぞれのXPバッファーと組み合わせた。遠心分離により沈殿物を除去し、清澄な上清(およそ360μl)を440μlのイソプロパノールと組み合わせて、55%の最終イソプロパノール濃度を得た。混合物をRNeasyカラムにアプライした。遠心分離後に、カラムを700μlのバッファーRW1で1回洗浄し、続いて700μl RPEで2回洗浄し、50μl H
2Oで溶出させた。単離された核酸の濃度および純度を決定した。
【0181】
結果
異なる検査したpH値3.30〜4.75の結果を下表に示す:
【表8】
【0182】
これらの結果は、異なる酸性pH値の沈殿バッファーを使用したタンパク質沈殿後に、上清から大RNAを優れた収率で単離することができることを再度実証する。
【0183】
(実施例14)
異なるpH値の沈殿バッファーを使用した小RNAの単離
【0184】
さらに別の実験において、標準プロトコールに記載されている通りに、沈殿バッファーXPを使用して血清試料からRNAを単離した。沈殿バッファーのpH値を酢酸で調整して、異なる酸性pH値のバッファーを得た。
【0185】
結果
追加的なpH値に関して実施例7の結果を確認した。pH3.3〜pH4.75に及ぶpH値により、複雑なタンパク質に富んだ血清試料においても、RNA結合ステップの間のイソプロパノールの添加後の濁りを回避することが可能であった。カラムの混入および詰りを回避した。miRNAを優れた収率で単離した;miScriptアッセイを使用したmiRNA分析の結果を
図19に示す(miRTC=逆転写対照;PPC=陽性PCR対照)。