特表2017-521101(P2017-521101A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-521101Tリンパ球へのベクター導入効率の改善方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-521101(P2017-521101A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】Tリンパ球へのベクター導入効率の改善方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170707BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170707BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-522459(P2017-522459)
(86)(22)【出願日】2015年7月10日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月28日
(86)【国際出願番号】US2015039892
(87)【国際公開番号】WO2016007827
(87)【国際公開日】20160114
(31)【優先権主張番号】62/023,618
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517009051
【氏名又は名称】アントフロゲネシス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ビタオ リアング
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ リウ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BA21
4B065BB25
4B065BC03
4B065BD25
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
細胞、例えば、初代ヒトTリンパ球へのベクターの導入効率の亢進方法を本明細書に提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初代Tリンパ球をi)核酸を含むウイルスベクター及びii)自然免疫系の阻害薬である化合物と接触させ、それにより前記核酸は前記Tリンパ球中へと導入されることを含む、初代Tリンパ球の導入方法。
【請求項2】
前記初代Tリンパ球は、ヒト初代Tリンパ球である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初代Tリンパ球を前記化合物と接触させることは、前記ウイルスベクターと前記接触させることの前に、前記接触させることと同時に及び/または前記接触させることの後に生じる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記核酸は、長さ10キロベース(kb)超である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記核酸は、長さ約9〜20kbである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記核酸は、キメラ抗原受容体をコードする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は、IκBキナーゼε(IKKε)またはTANK結合キナーゼ1(TBK1)の活性を阻害する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物は、BX795である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
BX795は、4〜8μMのBX795である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物は、プロテインキナーゼR(PKR)の活性を阻害する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は、2−アミノプリンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
2−アミノプリンは、2.5〜10μMの2−アミノプリンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記初代Tリンパ球を前記ウイルスベクターと接触させる前に、前記初代Tリンパ球を、T細胞受容体複合体を刺激することのできる作用因子と接触させることをさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記作用因子は、抗体または抗原結合フラグメントである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体または抗原結合フラグメントは、CD3及び/またはCD28へ特異的に結合する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記作用因子は、前記初代Tリンパ球を前記ウイルスベクターと接触させる前に前記初代Tリンパ球を24時間接触させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターは、1.5〜2.5の感染効率(MOI)で前記初代Tリンパ球と接触する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記初代Tリンパ球を前記化合物と接触させることは、前記初代Tリンパ球を前記ウイルスベクターと接触させる3時間前に生じる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記初代Tリンパ球を前記ウイルスベクター及び前記化合物と接触させることは、少なくとも6時間同時に生じる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記初代Tリンパ球を形質転換試薬及びサイトカインと接触させることをさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記形質転換試薬は、ジエチルアミノエチル−デキストランまたはプロタミンスルファートである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サイトカインは、インターロイキン2(IL−2)である、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
ヒト初代Tリンパ球を、ジエチルアミノエチル−デキストラン及びインターロイキン2の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、及びii)BX795と接触させ、それにより前記核酸は前記Tリンパ球中へと導入されることを含む、ヒト初代Tリンパ球の導入方法。
【請求項25】
前記BX795は、6μMのBX795である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト初代Tリンパ球の前記接触することは、前記ヒト初代Tリンパ球を前記リンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターと前記接触させることの前に3時間生じる、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記ヒト初代Tリンパ球を前記レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター及び前記化合物と前記接触させることは、少なくとも6時間同時に生じる、請求項24〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
ヒト初代Tリンパ球を、ジエチルアミノエチル−デキストラン及びインターロイキン2の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター、及びii)6μMのBX795と接触させることを含む、ヒト初代Tリンパ球の導入方法であって、ヒト初代Tリンパ球を6μMのBX795と前記接触させることは、3時間生じ、次いで、前記ヒト初代Tリンパ球を前記レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター及び前記6μMのBX795と同時に少なくとも6時間接触させ、それにより前記核酸は前記Tリンパ球中へと導入される、前記方法。
【請求項29】
ヒト初代Tリンパ球を、ジエチルアミノエチル−デキストラン及びインターロイキン2の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターと接触させ、それにより前記核酸が前記Tリンパ球中へと導入されることを含む、ヒト初代Tリンパ球の導入方法。
【請求項30】
前記2−アミノプリンは、2.5〜10μMの2−アミノプリンである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト初代Tリンパ球の前記接触は、前記ヒト初代Tリンパ球を前記レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターと前記接触させることの前に90分間生じる、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト初代Tリンパ球を前記レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター及び前記化合物と前記接触させることは、少なくとも5時間同時に生じる、請求項29〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
ヒト初代Tリンパ球をジエチルアミノエチル−デキストラン及びインターロイキン2の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター及びii)2.5〜10μMの2−アミノプリンと接触させることを含む、ヒト初代Tリンパ球の導入方法であって、前記ヒト初代Tリンパ球と前記2.5〜10μMの2−アミノプリンとの接触は、90分間生じ、それに次いで、前記ヒト初代Tリンパ球を前記前記レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクター及び前記2.5〜10μMの2−アミノプリンとの少なくとも5時間の同時の接触があり、それにより、前記核酸は前記Tリンパ球中へと導入される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年7月11日出願の米国仮特許出願第62/023,618号の優先権の利益を請求する。
【0002】
(1.分野)
本明細書における開示は、細胞へのベクターの導入効率の改善方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(2.背景)
Tリンパ球は、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原を含む、特異的抗原を認識して当該特異的抗原と相互作用する。Tリンパ球は、腫瘍細胞を殺滅することができるので、ここ25年間は、抗原特異的Tリンパ球、または1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)を発現するよう遺伝的に修飾されたTリンパ球のいずれかであるTリンパ球を用いて腫瘍細胞を標的化することへかなり大きな関心が見られる(例えば、Eshhar,米国特許第7,741,465号、Eshhar,米国特許出願公開第2012/0093842号を参照されたい)。Tリンパ球からのCARの誘導の効率を亢進するための新たな方法についての需要が当該分野にはある。
【発明の概要】
【0004】
(3.概要)
遺伝的に修飾された細胞、例えば、Tリンパ球、例えばヒトTリンパ球、例えば、初代Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)のような免疫細胞の作製効率の亢進方法を本明細書に提供する。任意の特定の機序または理論に結び付けられようとすることなく、自然免疫系は、CAR T細胞作製のウイルス導入工程を阻害することがあると考えられ、したがって、自然免疫系の活性を阻害すること(例えば、ウイルス導入及び/またはその後のウイルスタンパク質産生を阻害する自然免疫系の能力を阻害すること)によって、ベクター(例えば、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター)を用いたCAR T細胞誘導は、改善することができる。
【0005】
本明細書に提供する方法は、任意の細胞タイプ、特に任意の哺乳類細胞、例えば、任意のヒト細胞、例えば、細胞治療薬、ヒト細胞治療薬に使用する細胞と共に使用してもよい。当該方法が使用してもよい細胞の非限定例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞(例えば、その開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許第8,263,065号においてまたは米国出願第2012/0148553号において開示される胎盤性中間型ナチュラルキラー細胞)、樹状細胞(DC)、胎盤性幹細胞(例えば、その開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許第7,468,276号、第8,057,788号及び第8,202,703号に開示される胎盤性幹細胞)、羊膜由来接着細胞(AMDAC)(例えば、その開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許第8,367,409号に開示されるAMDAC)、腫瘍浸潤リンパ球、ウイルスパッケージング細胞(例えば、HEK 293T細胞)、臍帯血、胎盤血、末梢血、骨髄、歯髄、脂肪組織、骨軟骨性組織、及びこれらに類するものに由来の間葉様幹細胞(または間葉系幹細胞若しくは間葉系間質細胞)、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、神経堤幹細胞、神経幹細胞、ならびに分化細胞(例えば、線維芽細胞など)が挙げられるが、それらに限定しない。本方法は、例えば、動物モデルの実験目的のために腫瘍細胞株においても使用してもよい。
【0006】
ある実施形態において、本明細書に説明する方法には、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)を導入すること(例えば、レトロウイルス、例えばレンチウイルスで導入すること)を含んでもよい。ある実施形態において、本明細書に説明する方法には、当該導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の前、当該導入と同時に、または当該導入の後に、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)を自然免疫系の阻害薬である化合物と接触させることを含んでもよい。特定の実施形態において、導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、当該細胞へ、10キロ塩基超の単離した核酸を導入する。さらに別の実施形態において、当該細胞へと(例えば、レトロウイルス導入、例えば、初代ヒトTリンパ球へのレンチウイルス導入を介して)導入した当該単離した核酸、例えば、ベクター、例えば、ウイルスベクターは、1つ以上のタンパク質をコードし、例えば、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードする。
【0007】
特定の実施形態において、導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)中に当該細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)と接触するよう本明細書に説明する方法において使用する化合物は、自然免疫系の阻害薬である。特定の実施形態において、自然免疫系の当該阻害薬は、IκBキナーゼε(IKKε)及び/またはTANK結合キナーゼ1(TBK1)の阻害薬である。具体的な実施形態において、当該化合物は、BX795である。具体的な実施形態において、自然免疫系の当該阻害薬は、プロテインキナーゼR(PKR)の阻害薬である。具体的な実施形態において、当該化合物は、2−アミノプリン(2−AP)である。
【0008】
本明細書に説明する方法の一実施形態において、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、ベクター、例えば、ウイルスベクターを用いた導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の前に、当該導入と同時に、または当該導入の後に、本明細書に説明する化合物(例えば、BX795または2−AP)と接触させられる。別の実施形態において、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、ウイルスベクターによる導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の前に30分間、60分間、2時間または3時間、本明細書に説明する化合物(例えば、BX795または2−AP)と接触させられる。別の実施形態において、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、ウイルスベクターによる導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)と同時に、かつその後2時間、4時間、または6時間、本明細書に説明する化合物(例えば、BX795または2−AP)と接触させられる。別の実施形態において、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、ウイルスベクターによる導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の前に30分間、60分間、2時間または3時間、かつ導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)と同時にその後2時間、4時間または6時間、本明細書に説明する化合物(例えば、BX795 2−AP)と接触させられる。具体的な実施形態において、本明細書に説明する当該化合物(例えば、BX795または2−AP)は、1〜20μMの濃度で使用する。別の実施形態において、本明細書に説明する当該化合物(例えば、BX795または2−AP)は、2.5〜10μMの濃度で使用する。さらに別の実施形態において、本明細書に説明する当該化合物(例えば、BX795または2−AP)は、4〜8μMの濃度で使用する。
【0009】
一実施形態において、本明細書に提供する方法は、ベクター、例えばウイルスベクターによる導入(例えば、レトロウイルス、例えばレンチウイルス導入)の前にまたは当該導入と同時に、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)を形質転換試薬(例えば、ジエチルアミノエチルデキストランまたはプロタミンスルファート)と接触させることを追加的に含む。
【0010】
本明細書に説明する方法の一実施形態において、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、ベクター、例えばウイルスベクターによる導入(例えば、レトロウイルス導入、例えばレンチウイルス導入)の前に、T細胞受容体複合体を刺激することのできる作用因子と追加的に接触する。特定の実施形態において、当該作用因子は、抗体または抗原結合フラグメントである。特定の実施形態において、当該抗体または抗原結合フラグメント(複数可)は、CD3及び/またはCD28を特異的に結合する。特定の実施形態において、当該抗体または抗原結合フラグメントは、固体基質(例えば、Dynabeads(登録商標))へカップリングする。別の特定の実施形態において、当該抗体若しくは抗原結合フラグメント(複数可)(例えば、抗CD3及び/または抗CD28)は、固体表面、例えば同じ固体表面上には存在しないが、代わりに、溶液中に存在し、または細胞への抗体若しくは抗原結合フラグメント(複数可)の提示を許容する別の化合物または組成物と複合体形成し、例えば、抗体または抗原結合フラグメント(複数可)は、ポリマー、ヒドロゲル、アルブミン、及び/または疎水性分子と複合体形成する。ある実施形態において、抗体または抗原結合フラグメント(複数可)が複合体形成する分子は、アジュバントではない。別の実施形態において、当該接触することは、ベクター、例えば、ウイルスベクターによる当該細胞の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の少なくとも48時間前、少なくとも44時間前、少なくとも40時間前、少なくとも36時間前、少なくとも32時間前、少なくとも28時間前、少なくとも24時間前、少なくとも20時間前、少なくとも16時間前、少なくとも12時間前、少なくとも8時間前または少なくとも4時間前に生じる。
【0011】
本明細書に説明する方法の特定の実施形態において、細胞(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、1.5〜3.0の感染効率(MOI)でウイルス(例えば、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス)により導入される。
【0012】
具体的な実施形態において、本明細書に提供されるのは、初代Tリンパ球をi)核酸を含むウイルスベクター(例えば、レトウイルス(retoviral)ベクター、例えば、レンチウイルスベクター、及びii)自然免疫系の阻害薬である化合物と接触させ、それにより核酸がTリンパ球中へと導入されることを含む、初代Tリンパ球(例えば、ヒト初代Tリンパ球)の導入方法である。別の具体的な実施形態において、当該初代Tリンパ球を当該化合物と当該接触させることは、当該Tリンパ球を当該ウイルスベクターと接触させることの前(例えば、30分前、1時間前、2時間前、3時間前、4時間前、6時間前、7時間前、8時間前、9時間前または10時間前)及び/または同時に生じる。別の具体的な実施形態において、当該ウイルスベクターは、1つ以上のタンパク質、例えば、1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む。
【0013】
別の具体的な実施形態において、当該化合物は、IκBキナーゼε(IKKε)またはTANK結合キナーゼ1(TBK1)の活性を阻害する。別の具体的な実施形態において、IκBキナーゼε(IKKε)またはTANK結合キナーゼ1(TBK1)の活性を阻害する当該化合物は、BX795(例えば、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μMまたは10μMのBX795)である。別の具体的な実施形態において、当該化合物は、プロテインキナーゼR(PKR)の活性を阻害する。別の具体的な実施形態において、プロテインキナーゼR(PKR)の活性を阻害する当該化合物は、2−アミノプリン(2−AP)(例えば、1μM、2μM、2.5μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μMまたは10μMの2−AP)である。
【0014】
別の具体的な実施形態において、初代Tリンパ球の導入方法はさらに、当該初代Tリンパ球を、初代Tリンパ球をウイルスベクターと接触させることの前にT細胞受容体複合体を刺激することのできる作用因子と接触させることを含む。具体的な実施形態において、当該作用因子は、抗体または抗原結合フラグメント、例えば、CD3及び/またはCD28へ特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメントである。別の具体的な実施形態において、初代Tリンパ球の導入方法はさらに、初代Tリンパ球を形質転換試薬(例えば、ジエチルアミノエチル−デキストランまたはプロタミンスルファート)及び任意にサイトカイン(例えば、インターロイキン2(IL−2)、インターロイキン7(IL−7)、インターロイキン12(IL−12)、インターロイキン15(IL−15)またはインターロイキン21(IL−21))と接触させることを含む。
【0015】
別の具体的な実施形態において、本明細書に提供するのは、ジエチルアミノエチル−デキストランまたはプロタミンスルファート及びインターロイキン2の存在下で、ヒト初代Tリンパ球をi)1つ以上のタンパク質、例えば、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、及び核酸がTリンパ球に導入される、ii)BX795(例えば、6μMのBX795)と接触させることを含む、初代Tリンパ球(例えば、ヒト初代Tリンパ球)の導入方法である。具体的な実施形態において、当該初代Tリンパ球をBX795と当該接触させることは、当該Tリンパ球を当該ウイルスベクターと接触させることの前(例えば、3時間前、6時間前)及び/または同時に生じる。別の具体的な実施形態において、当該ベクターは、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む。
【0016】
別の具体的な実施形態において、本明細書に提供するのは、ヒト初代Tリンパ球を、ジエチルアミノエチル−デキストランまたはプロタミンスルファート及びインターロイキン2(IL−2)の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、及びii)6μMのBX795と接触させることを含む、初代Tリンパ球(例えば、ヒト初代Tリンパ球)の導入方法であり、この中でヒト初代Tリンパ球を6μMのBX795と接触させることは約3時間生じ、次いでヒト初代Tリンパ球をウイルスベクター及び6μMのBX795と同時に少なくとも6時間接触させ、それにより核酸はTリンパ球中へと導入される。別の具体的な実施形態において、当該ベクターは、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む。
【0017】
別の具体的な実施形態において、本明細書に提供するのは、ヒト初代Tリンパ球を、ジエチルアミノエチル−デキストランまたはプロタミンスルファート及びインターロイキン2の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、及びii)2−AP(例えば、2.5〜10μMの2−AP)と接触させ、それにより核酸をTリンパ球中へと導入することを含む、初代Tリンパ球(例えば、ヒト初代Tリンパ球)の導入方法である。具体的な実施形態において、当該初代Tリンパ球を2−APと当該接触させることは、当該Tリンパ球を当該ウイルスベクターと接触させることの前に(例えば、90分前、2時間前、または3時間前に)及び/または同時に生じる。別の具体的な実施形態において、当該ベクターは、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む。
【0018】
別の具体的な実施形態において、本明細書に提供するのは、ヒト初代Tリンパ球を、ジエチルアミノエチル−デキストランまたはプロタミンスルファート及びインターロイキン2の存在下で、i)キメラ抗原受容体をコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクター、及びii)2.5〜10μMの2−APを含む、初代Tリンパ球(例えば、ヒト初代Tリンパ球)の導入方法であり、この中で、ヒト初代Tリンパ球を2.5〜10μMの2−APと接触させることは、90分間生じ、それに次いで、ヒト初代Tリンパ球をウイルスベクター及び2.5〜10μMの2−APと同時に5時間接触させ、それにより核酸はTリンパ球中へと導入される。別の具体的な実施形態において、当該ベクターは、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1A及び図1Bは、キメラ抗原受容体をコードするレンチウイルスを用いた初代Tリンパ球の導入効率に及ぼす、DEAE−デキストラン単独の同時処理(図1A)またはDEAE−デキストランの存在下でのBX795による同時処理(1μM、2μM、4μM、6μM、8μM及び10μMの濃度における図1B)の効果を示す。
【0020】
図2】レンチウイルス導入効率に及ぼすBX795処理の効果を示す。キメラ抗原受容体をコードするレンチウイルスを用いて導入した初代Tリンパ球の導入効率は、種々の条件、すなわち(i)BX795前処理、(ii)BX795同時処理、(iii)BX795前処理及び同時処理の併用ならびに(iv)対照処理について評価した。
【0021】
図3図3A及び図3Bは、初代ヒトTリンパ球の生存率に及ぼす形質転換試薬DEAE−デキストラン及びプロタミンスルファートの効果(図3A)ならびにレンチウイルスにより導入された初代ヒトTリンパ球の生存率に及ぼすDEAE−デキストランまたはプロタミンスルファートの存在下での種々の濃度の2−APの効果を示す。
【0022】
図4図4A及び図4Bは、2−APの非存在下での(図4A)または増大する濃度の2−APの存在下での(2.5μM、5μMまたは10μMの濃度における図4B)レンチウイルス導入効率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(5.詳細な説明)
(5.1.導入方法)
(5.1.1.細胞)
本明細書に説明する方法において使用することのできる細胞の非限定例としては、Tリンパ球、樹状細胞(DC)、胎盤幹細胞(例えば、それらの開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許第7,468,276号、第8,057,788号及び第8,202,703号において開示される胎盤幹細胞)、臍帯血由来の間葉様幹細胞、胎盤血、末梢血、骨髄、歯髄、脂肪組織、骨軟骨性組織、及びこれらに類するもの、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、神経堤幹細胞、神経幹細胞、ならびに分化細胞(例えば、線維芽細胞など)が挙げられる。本方法は、例えば、動物モデルの実験目的のために腫瘍細胞株においても使用してもよい。特定の実施形態において、本明細書に説明する方法の細胞は、初代細胞であり得る。初代細胞は、当該技術分野において周知であり、細胞老化の開始に至らない量についてインビトロで培養または増殖される、及び細胞の不死化に至る様式で培養または増殖されていない、対象(例えば、ヒト)から抽出した細胞を含み得る。具体的な実施形態において、本明細書に説明する方法において使用する細胞は、ヒトTリンパ球である。別の具体的な実施形態において、本明細書に説明する方法において使用する細胞は、ナチュラルキラー細胞ではない。別の具体的な実施形態において、本明細書に説明する方法において使用する細胞は、Tリンパ球細胞株ではない。
【0024】
具体的な実施形態において、本明細書に提供する方法において使用する細胞は、初代Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)である。本明細書に提供する方法において使用する初代Tリンパ球は、天然のTリンパ球またはMHCの制限されたTリンパ球であってもよい。ある実施形態において、当該Tリンパ球は、CD4である。他の実施形態において、当該Tリンパ球は、CD8である。ある実施形態において、当該初代Tリンパ球は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。ある実施形態において、当該初代Tリンパ球は、腫瘍生検から単離されており、または腫瘍生検から単離されたTリンパ球から増殖されている。ある実施形態において、当該初代Tリンパ球は、末梢血、臍帯血、またはリンパから単離され、またはそれらから単離されたTリンパ球から増殖されている。ある実施形態において、当該Tリンパ球は、特定の個体、例えば、当該Tリンパ球の被移植者に関して同種である。ある他の実施形態において、当該Tリンパ球は、ある個体、例えば、当該Tリンパ球の被移植者に関して同種である。ある実施形態において、当該Tリンパ球は、特定の個体、例えば、当該Tリンパ球の被移植者に関して自己である。
【0025】
一実施形態において、初代Tリンパ球は、個体から得られ、任意に増殖され、次に1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を使用する本明細書に説明する方法を用いて導入され、次に任意に増殖される。第5.2節を参照されたい。Tリンパ球は、例えば、培養物中のTリンパ球を、CD3及び/またはCD28に対する抗体、例えば、ビーズへまたは細胞培養プレートの表面へ付着した抗体と接触させることによって増殖することができ、例えば、米国特許第5,948,893号、第6,534,055号、第6,352,694号、第6,692,964号、第6,887,466号、及び第6,905,681号を参照されたい。具体的な実施形態において、当該抗体は、抗CD3及び/または抗CD28であり、当該抗体は、固体表面へは結合しない(例えば、当該抗体は、溶液中のTリンパ球と接触する)。他の具体的な実施形態において、抗CD3抗体または抗CD28抗体のいずれかは、固体表面(例えば、ビーズ、組織培養皿プラスチック)へ結合し、もう1つの抗体は、固体表面へ結合していない(例えば、溶液中に存在する)。
【0026】
ある実施形態において、本明細書に説明する方法において使用する初代Tリンパ球は、腫瘍から単離され、例えば、腫瘍浸潤リンパ球である。特定の実施形態において、このようなTリンパ球は、腫瘍特異的抗原(TSA)または腫瘍関連抗原(TAA)に対して特異的である。第5.2.2節を参照されたい。
【0027】
(5.1.2.形質転換試薬)
本明細書において使用する場合、「導入」、「形質転換」、及び「トランスフェクション」のような用語は、別段の記載がない限り、相互交換可能に使用する。細胞の導入方法は、当該技術分野で周知である。導入中、小分子及び/またはポリマーは、例えば、細胞培養物へ添加されて、関心対象のタンパク質及び/または核酸の結合及び/または取り込みを容易にし得る。特に、小さな極性化合物は、培養条件へ付加して、その中にあるウイルス及び核酸(複数可)の結合及び導入を容易にすることができる。例示的な形質転換試薬としては、リポフェクタミン(登録商標)、FuGENE(登録商標)、リン酸カルシウム、ジエチルアミノエチルセルロース−デキストラン(DEAE−デキストランまたはDD)、及びプロタミンスルファートが挙げられるが、これらに限定しない。本明細書に説明する方法に関するある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、DEAE−デキストランまたはプロタミンスルファートの存在下で生じる。本明細書に説明する方法の特定の実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、DEAE−デキストラン、例えば、10μg/mlのDEAE−デキストランまたはプロタミンスルファート、例えば、10μg/mlのプロタミンスルファートの存在下で生じる。
【0028】
(5.1.3.培養条件及びTリンパ球の活性化)
本明細書に説明する細胞は、導入(例えば、ウイルス導入)を容易にするまたは亢進するために特異的な培養条件下で維持することができる。特定の実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、導入の前にまたは同時に、Tリンパ球共刺激分子(例えば、CD28、CD3及び/またはCD45)へ特異的に結合する抗原または抗原結合フラグメントによって活性化される。別の実施形態において、当該抗体または抗原結合フラグメントは、固体基質(例えば、Dynabeads(登録商標))へカップリングされる。特定の実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、導入(例えば、ウイルス導入)の24時間前に、Dynabeads(登録商標)へカップリングされた抗CD3抗体、抗CD28抗体、及び/または抗CD45抗体によって刺激される。別の特定の実施形態において、(例えば、抗CD3抗体、抗CD28抗体及び/若しくは抗CD45抗体または他派これらの抗原結合フラグメント(複数可)の)当該抗体または抗原結合フラグメント(複数可)は、固体表面上には存在しないが、代わりに、抗体または抗原結合フラグメント(複数可)の提示を許容する別の化合物または組成物と複合体形成し、例えば、抗体または抗原結合フラグメント(複数可)は、ポリマー、ヒドロゲル、アルブミン、及び/または疎水性分子と複合体形成する。特定の実施形態において、抗体またはその抗原結合フラグメントと複合体形成したこのような分子(複数可)は、アジュバントではない。別の実施形態において、当該接触することは、ウイルスベクターによる当該細胞の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の少なくとも48時間前、少なくとも44時間前、少なくとも40時間前、少なくとも36時間前、少なくとも32時間前、少なくとも28時間前、少なくとも24時間前、少なくとも20時間前、少なくとも16時間前、少なくとも12時間前、少なくとも8時間前または少なくとも4時間前に生じる。さらに別の実施形態において、当該接触することは、ウイルスベクターによる当該細胞の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)の少なくとも48時間〜40時間前、44時間〜36時間前、40時間〜32時間前、36時間〜28時間前、32時間〜24時間前、28時間〜20時間前、24時間〜16時間前、20時間〜12時間前、16時間〜8時間前、12時間〜4時間前または少なくとも8時間〜1時間前に生じる。
【0029】
別の実施形態において、Tリンパ球の活性化及び/または増殖を刺激するサイトカイン及び/または増殖因子は、導入の前にまたは同時に添加することができる。特定の実施形態において、インターロイキン2(IL−2)、例えば、50U/mlのIL−2は、導入(例えば、ウイルス導入)の前または同時にTリンパ球培養物(例えば、初代ヒトTリンパ球培養物)へ添加される。別の実施形態において、インターロイキン7(IL−7)、例えば、10ng/mlのIL−7は、導入(例えば、ウイルス導入)の前にまたは同時にTリンパ球培養物(例えば、初代ヒトTリンパ球培養物)へ添加される。別の実施形態において、インターロイキン12(IL−12)、例えば、10ng/mlのIL−12は、導入(例えば、ウイルス導入)の前にまたは同時にTリンパ球培養物(例えば、初代ヒトTリンパ球培養物)へ添加される。別の実施形態において、インターロイキン15(IL−15)、例えば、10ng/mlのIL−15は、導入(例えば、ウイルス導入)の前または同時にTリンパ球培養物(例えば、初代ヒトTリンパ球培養物)へ添加される。さらに別の実施形態において、インターロイキン21(IL−21)、例えば、25ng/mlのIL−21は、導入(例えば、ウイルス導入)の前または同時に、Tリンパ球培養物(例えば、初代ヒトTリンパ球培養物)へ添加される。
【0030】
(5.1.4.自然免疫の阻害薬)
自然免疫系は、合成ウイルスを含むウイルスの遺伝子の発現を抑圧することができる。自然免疫系が、二本鎖RNA及び他の病原性巨大分子によって惹起することができかつ、自然免疫活性が容易に測定できる(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンδ、インターフェロンζ、インターフェロンκ及びインターフェロンτを含むがこれらに限定しないインターフェロンタンパク質の分泌レベル)タンパク質(例えば、レチノイン酸誘導性遺伝子I(RIG−I)、プロテインキナーゼR(PKR)、IκBキナーゼε(IKKε)、TANK結合キナーゼ1(TBK1))を含むことは、当該技術分野で周知である。したがって、本明細書に説明する方法の特定の実施形態において、培養細胞は自然免疫の阻害薬と接触する。別の実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、自然免疫シグナル伝達を阻害する化合物、例えば、小分子(例えば、BX795、ピセタノール、ゲフィチニブ、Z−VAD−FMK、グリベンクラミド、Pepinh−MyD、OxPAPC、CLI−095、ポリミキシンB、H−89、2−アミノプリン(2−AP)、クロロキン、バフィロマイシンA1またはこれらに類するもの)の添加によって亢進することができる。
【0031】
本明細書に説明する方法のある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入の前、同時または後のいずれかで、Tリンパ球を自然免疫応答の阻害薬と接触させることによって亢進することができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入の前、同時または後のいずれかで、IκBキナーゼε(IKKε)及び/またはTANK結合キナーゼ1(TBK1)の阻害薬を用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の別の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、当該細胞の導入の前、同時または後のいずれかで、BX795を用いた処理の際に亢進することができる。
【0032】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μM、16μM、17μM、18μM、19μM、20μM、またはそれより高い濃度のBX795を用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の別の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、0.5μM〜1μM、1μM〜3μM、2μM〜4μM、3μM〜5μM、4μM〜6μM、5μM〜7μM、6μM〜8μM、7μM〜9μM、8μM〜10μM、9μM〜11μM、10μM〜12μM、11μM〜13μM、12μM〜14μMまたは13μM〜15μM、10μM〜20μM、10μM〜15μMまたは10μM〜12μMの濃度のBX795を用いた処理の際に亢進することができる。
【0033】
本明細書に説明する方法のある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、当該細胞の導入の前にBX795を用いた処理の際に亢進することができる。例えば、本明細書に説明する方法のある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入前の5時間超、導入前の5時間、導入前の4時間、導入前の3時間、導入前の2時間、導入前の1時間、導入前の30分間、導入前の15分間、導入前の5分間または導入と同時に、BX795を用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、形質転換の4〜5時間前、導入の3〜4時間前、導入の2〜3時間前、導入の1〜2時間前、導入の30分間〜1時間前または導入と同時〜30分間前に、BX795を用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、本明細書に説明する時点のうちのいずれかにおける導入の前及び同時の両方で、BX795を用いた処理の際に亢進することができる。
【0034】
具体的な実施形態において、天然免疫系の当該阻害薬は、プロテインキナーゼR(PKR)の阻害薬である。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入の前、同時または後のいずれかで、プロテインキナーゼR(PKR)の阻害薬を用いた処理の際に亢進することができる。具体的な実施形態において、当該化合物は、2−アミノプリン(2−AP)である。
【0035】
本明細書に説明する方法のある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入の前、同時または後のいずれかで、天然免疫応答の阻害薬を用いたTリンパ球の処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入の前、同時または後のいずれかにおいて、プロテインキナーゼR(PKR)の阻害薬を用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の別の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、当該細胞の前、同時または後のいずれかで、2−APを用いた処理の際に亢進することができる。
【0036】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、0.5μM、1μM、2μM、3μM、4μM、5μM、6μM、7μM、8μM、9μM、10μM、11μM、12μM、13μM、14μM、15μMまたはそれより高い濃度の2−APを用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の別の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、0.5μM〜1μM、1μM〜3μM、2μM〜4μM、3μM〜5μM、4μM〜6μM、5μM〜7μM、6μM〜8μM、7μM〜9μM、8μM〜10μM、9μM〜11μM、10μM〜12μM、11μM〜13μM、12μM〜14μMまたは13μM〜15μMの濃度の2−APを用いた処理の際に亢進することができる。
【0037】
本明細書に説明する方法のある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、当該細胞の導入の前に、2−APを用いた処理の際に亢進することができる。例えば、本明細書に説明する方法のある実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入前の5時間超、導入前の5時間、導入前の4時間、導入前の3時間、導入前の2時間、導入前の1時間、導入前の30分間、導入前の15分間、導入前の5分間または同時に、2−APを用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、導入の4〜5時間前に、導入の3〜4時間前に、導入の2〜3時間前に、導入の1〜2時間前に、導入の30分間〜1時間前にまたは導入と同時〜30分間前に、2−APを用いた処理の際に亢進することができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、本明細書に説明する時点のうちのいずれかにおける導入の前及び同時の両方で、2−APを用いた処理の際に亢進することができる。
【0038】
(5.1.5.ウイルス導入)
本明細書に説明する方法の一実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、種々の感染効率(MOI)のウイルスを用いて生じることができる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0またはそれより高いウイルス感染効率(MOI)で生じる。本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)の導入(例えば、レトロウイルス導入、例えば、レンチウイルス導入)は、0.1〜0.3、0.2〜0.4、0.4〜0.6、0.6〜0.8、0.8〜1.0、1.0〜1.2、1.2〜1.4、1.4〜1.6、1.6〜1.8、1.8〜2.0、2.0〜2.2、2.2〜2.4、2.4〜2.6、2.6〜2.8または2.8〜3.0のウイルス感染効率(MOI)で生じる。
【0039】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)を化合物(例えば、BX795または2−AP)と接触させて、導入効率(例えば、レンチウイルス導入効率)を高めることは、単離した核酸配列(例えば、キメラ抗原受容体をコードするベクター)の導入を改善する。例えば、長さ9キロベース(kb)、長さ10kb、長さ11kb、長さ12kb、長さ13kb、長さ14kb、長さ15kb、長さ16kb、長さ17kb若しくは長さ18kbまたはそれより長い核酸配列は、本明細書に説明する方法の結果として(すなわち、説明する化合物(例えば、BX795または2−AP)の非存在下での導入の効率と比較して)、より高い効率で細胞中へと導入することができる。ある実施形態において、本明細書に説明する方法は結果的に、核酸分子(例えば、1つ以上のタンパク質、例えば、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードするベクターを含むベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターのようなウイルスベクター)の改善された導入を生じ、この中で、当該核酸分子は、長さ9キロベース(kb)〜長さ10kb、長さ10kb〜長さ11kb、長さ11kb〜長さ12kb、長さ12kb〜長さ13kb、長さ13kb〜長さ14kb、長さ14kb〜長さ15kb、長さ15kb〜長さ16kb、長さ16kb〜長さ17kb、長さ17kb〜長さ18kb、または長さ9〜18kbまたは長さ10〜15kbである。
【0040】
本明細書に説明する方法の特定の態様において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)は、2つ以上の異なる単離された核酸、例えば、非同一配列の2、3、4または5個の核酸を用いて導入する(例えば、レトロウイルス、例えば、レンチウイルスを導入する)ことができる。具体的な実施形態において、Tリンパ球(例えば、初代ヒトTリンパ球)を化合物と接触させて導入効率(例えば、レトロウイルス導入効率、例えば、レンチウイルス導入効率)を高めることは、1、2、3、4または5個の異なる単離した核酸(例えば、1つ以上のタンパク質をコードする、例えば、1つ以上のキメラ抗原受容体をコードするベクターを含むベクター、例えば、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターのようなウイルスベクター)の導入を改善する。
【0041】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、初代ヒトTリンパ球は、50U/mlのIL−2及び10μg/mlのDEAE−デキストランの存在下で抗CD3抗体及び/または抗CD28抗体、あるいはこれらの抗原結合フラグメント(複数可)を用いて24時間刺激され、それに次いで当該リンパ球のBX795を用いた3時間の処理、それに次いで、当該リンパ球のレンチウイルス導入が続き、この中で、当該ウイルスは、1.8の感染効率(MOI)にあり、かつ当該ヒトTリンパ球は、レンチウイルスの添加と同時に6μMのBX795を用いてさらに6時間処理される。
【0042】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、初代ヒトTリンパ球は、抗CD3抗体及び/または抗CD28抗体、あるいはこれらの抗原結合フラグメント(複数可)を用いて、50U/mlのIL−2及び10μg/mlのDEAE−デキストランの存在下で、24時間刺激され、それに次いで、当該リンパ球の2−APを用いた5時間の処理、それに次いで、当該リンパ球のレンチウイルス導入が続き、この中で、当該ウイルスは、1.8の感染効率(MOI)にあり、かつこの中で、当該ヒトTリンパ球は、レンチウイルスの添加と同時に2.5〜10μMの2−APを用いてさらに5時間処理される。
【0043】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、初代ヒトTリンパ球は、50U/mlのIL−2及び10μg/mlのプロタミンスルファートの存在下で、抗CD3抗体及び/または抗CD28抗体あるいはこれらの抗原結合フラグメント(複数可)を用いて24時間刺激され、それに次いで、BX795による当該リンパ球の6時間の処理、それに次いで、当該リンパ球のレンチウイルス導入が続き、この中で、当該ウイルスは、1.8の感染効率(MOI)にあり、かつこの中で当該ヒトTリンパ球は、レンチウイルスの添加と同時に6μMのBX795を用いてさらに6時間処理される。
【0044】
本明細書に説明する方法の具体的な実施形態において、初代ヒトTリンパ球は、50U/mlのIL−2及び10μg/mlのプロタミンスルファートの存在下で、抗CD3抗体及び/または抗CD28抗体あるいはこれらの抗原結合フラグメント(複数可)を用いて24時間刺激され、それに次いで、当該リンパ球の5時間の処理、それに次いで、当該リンパ球のレンチウイルス導入が続き、この中で、当該ウイルスは、1.8の感染効率(MOI)にあり、かつこの中で、当該ヒトTリンパ球は、レンチウイルスの添加と同時に2.5〜10μMの2−APを用いてさらに5時間処理される。
【0045】
(5.2.キメラ抗原受容体)
ある実施形態において、本明細書に提供する方法を使用して、1つ以上のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を細胞、例えば、Tリンパ球(例えば、初代Tリンパ球)中へ導入する。CARは、Tリンパ球を抗原へ方向づけ、Tリンパ球を刺激して、抗原を提示する細胞を殺滅する、人工膜結合型タンパク質である。例えば、Eshhar,米国特許第7,741,465号を参照されたい。概して、CARは、抗原、例えば、細胞上の抗原へ結合する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び免疫細胞へ一次性活性化シグナルを伝達する細胞内(細胞質)シグナル伝達ドメインを含む。他の条件がすべて満たされた場合、CARが例えばTリンパ球の表面上に発現し、かつCARの細胞外ドメインが抗原へ結合すると、細胞内シグナル伝達ドメインは、シグナルをTリンパ球へ伝達して、活性化及び/または増殖させ、抗原が細胞表面上に存在すれば、当該抗原を発現する細胞を殺滅する。Tリンパ球は、最大に活性化させるために、一次性活性化シグナル及び共刺激シグナルの2つのシグナルを必要とするので、CARは、刺激性ドメイン及び共刺激ドメインを含むことができ、それにより、細胞外ドメインへの抗原の結合は結果的に、一次性活性化シグナル及び共刺激シグナルの両方の伝達を生じる。
【0046】
(5.2.1.一般的なCAR構造細胞内ドメイン)
ある実施形態において、CARの細胞内ドメインは、Tリンパ球の表面上に発現しかつ当該Tリンパ球の活性化及び/または増殖を惹起するタンパク質の細胞内ドメインまたはモチーフであり、あるいは当該ドメインまたはモチーフを含む。このようなドメインまたはモチーフは、CARの細胞外部分への抗原の結合に応じて、Tリンパ球の活性化に必要な一次抗原結合シグナルを伝達することができる。典型的には、このドメインまたはモチーフは、ITAM(免疫受容体チロシン系活性化モチーフ)を含み、または当該ITAMである。CARに適したITAM含有ポリペプチドには例えば、ゼータCD3鎖(CD3ζ)またはそのITAM含有部分である。具体的な実施形態において、細胞内ドメインは、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインである。他の具体的な実施形態において、細胞内ドメインは、リンパ球受容体鎖、TCR/CD3複合体タンパク質、Fc受容体サブユニットまたはIL−2受容体サブユニットに由来する。
【0047】
ある実施形態において、CARは、1つ以上の共刺激ドメインまたはモチーフを、例えば、当該ポリペプチドの細胞内ドメインの一部として追加的に含む。当該1つ以上の共刺激ドメインまたはモチーフは例えば、共刺激CD27ポリペプチド配列、共刺激CD28ポリペプチド配列、共刺激OX40(CD134)ポリペプチド配列、共刺激4−1BB(CD137)ポリペプチド配列、若しくは共刺激誘導性T細胞共刺激(ICOS)ポリペプチド配列、または他の共刺激ドメイン若しくはモチーフ、あるいはこれらの任意の組み合わせであることができ、あるいはそれらを含む。
【0048】
膜貫通領域は、機能的CAR中へと組み込むことのできる任意の膜貫通領域、例えば、CD4分子またはCD8分子に由来する膜貫通領域であることができる。
【0049】
ある実施形態において、細胞内ドメインは、検出可能な、例えば、蛍光性の、タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)またはその公知の任意のバリアントをコードするようさらに修飾することができる。
【0050】
(5.2.2.CAR細胞外ドメイン)
ある実施形態において、本明細書に説明する方法を用いて細胞中へ導入される核酸は、ポリペプチドをコードする配列を含み、この中で、当該ポリペプチドの細胞外ドメインは、関心対象の抗原へ結合する。ある実施形態において、細胞外ドメインは、当該抗原へ結合する受容体、または受容体の一部を含む。ある実施形態において、当該細胞外ドメインは、抗体若しくはその抗原結合部分を含みまたは当該抗体若しくはその抗原結合部分である。具体的な実施形態において、当該細胞外ドメインは、一本鎖Fvドメインを含みまたは当該一本鎖Fvドメインである。当該一本鎖Fvドメインは例えば、可撓性リンカーによってVHへ連結されたVLを含むことができ、この中で、当該VL及びVHは、当該抗原を結合する抗体に由来する。
【0051】
ポリペプチドの細胞外ドメインが関心対象の任意の抗原であることができる抗原は、例えば、腫瘍細胞上にある抗原であることができる。腫瘍細胞は、例えば、固形腫瘍中の細胞、または血液癌の細胞であることがある。当該抗原は、任意の腫瘍または癌のタイプの細胞、例えば、リンパ腫、肺癌、乳癌、前立腺癌、副腎皮質癌、甲状腺癌、上咽頭癌、黒色腫、例えば、悪性黒色腫、皮膚癌、結腸直腸癌、類腱腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、内分泌腫瘍、ユーイング肉腫、末梢原始神経外胚葉性腫瘍、固形胚細胞腫瘍、肝芽腫、神経芽腫、非横紋筋肉腫軟部組織肉腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、膠芽腫、粘液腫、線維腫、脂肪腫、またはこれらに類するものの細胞上に発現する任意の抗原であることができる。より具体的な実施形態において、当該リンパ腫は、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫)、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、脾性辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、脈管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫、Tリンパ球性前リンパ性白血病、Tリンパ球性大顆粒リンパ球性白血病、侵襲性NK細胞白血病、成人Tリンパ球性白血病/リンパ腫、節外性NK/Tリンパ球性リンパ腫、鼻型、腸疾患型Tリンパ球性リンパ腫、肝脾性Tリンパ球性リンパ腫、芽球性NK細胞性リンパ腫、菌状息肉症、セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性Tリンパ球性リンパ腫、末梢性Tリンパ球性リンパ腫(不特定)、未分化大細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、または非ホジキンリンパ腫であることができる。具体的な実施形態において、当該癌が慢性リンパ性白血病(CLL)である場合、CLLのB細胞は正常な核型を有する。他の具体的な実施形態において、当該癌が慢性リンパ性白血病(CLL)である場合、CLLのB細胞は、17p欠失、11q欠失、12qトリソミー、13q欠失またはp53欠失を保有する。
【0052】
ある実施形態において、抗原は、腫瘍関連抗原(TAA)または腫瘍特異的抗原(TSA)である。種々の具体的な実施形態において、制限なく、腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、B細胞成熟抗原(BCMA)、B細胞活性化因子(BAFF)、Her2、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)アルファフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、EGFRvIII、癌抗原125(CA−125)、CA19−9、カルレチニン、MUC−1、上皮系膜タンパク質(EMA)、上皮系腫瘍抗原(ETA)、チロシナーゼ、黒色腫関連抗原(MAGE)、CD19、CD20、CD34、CD45、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維酸性タンパク質(GFAP)、粗嚢胞疾患液体タンパク質(GCDFP−15)、HMB−45抗原、タンパク質melan−A(Tリンパ球によって認識される黒色腫抗原(MART−1))、myo−D1、筋特異的アクチン(MSA)、神経細線維、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィシス(synaptophysis)、チログロブリン、甲状腺転写因子1、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、ピルビン酸キナーゼイソ酵素M2型(腫瘍M2−PK)の二量体形態、異常なrasタンパク質、または異常なp53タンパク質である。
【0053】
ある実施形態において、TAAまたはTSAは、癌/精巣(CT)抗原、例えば、BAGE、CAGE、CTAGE、FATE、GAGE、HCA661、HOM−TES−85、MAGEA、MAGEB、MAGEC、NA88、NY−ESO−1、NY−SAR−35、OY−TES−1、SPANXB1、SPA17、SSX、SYCP1、またはTPTEである。
【0054】
ある実施形態において、TAAまたはTSAは、炭水化物またはガングリオシド、例えば、fuc−GM1、GM2(癌胎児性抗原免疫原性1(OFA−I−1))、GD2(OFA−I−2)、GM3、GD3、及びこれらに類するものである。
【0055】
ある実施形態において、TAAまたはTSAは、アルファアクチニン4、Bage−1、BCR−ABL、Bcr−Abl融合タンパク質、ベータカテニン、CA125、CA15−3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA−50、CAM43、Casp−8、cdc27、cdk4、cdkn2a、CEA、coa−1、del−can融合タンパク質、EBNA、EF2、エプスタイン・バーウイルス抗原、ETV6−AML1融合タンパク質、HLA−A2、HLA−A11、hsp70−2、KIAAO205、Mart2、Mum−1、2、及び3、neo−PAP、ミオシンクラスI、OS−9、pml−RARα融合タンパク質、PTPRK、K−ras、N−ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Gage3、4、5、6、7、GnTV、Herv−K−mel、Lage−1、NA−88、NY−Eso1/Lage−2、SP17、SSX−2、TRP2−Int2、、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、MAGE−1、MAGE−3、RAGE、GAGE−1、GAGE−2、p15(58)、RAGE、、SCP−1、Hom/Mel−40、PRAME、p53、H−Ras、HER−2/neu、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP−180、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、nm−23H1、PSA、TAG−72−4、CA19−9、CA72−4、CAM17.1、NuMa、K−ras、13−カテニン、Mum−1、p16、TAGE、PSMA、CT7、テロメラーゼ、43−9F、5T4、791Tgp72、13HCG、BCA225、BTAA、、CD68\KP1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB\70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、CD19、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、EGFRvIII(表皮増殖因子バリアントIII)、精子タンパク質17(Sp17)、メソテリン、PAP(前立腺酸ホスファターゼ)、プロステイン、TARP(T細胞受容体ガンマ代替読み枠タンパク質)、Trp−p8、STEAP1(前立腺1の6回膜貫通上皮抗原)、異常なrasタンパク質、または異常なp53タンパク質である。別の具体的な実施形態において、当該腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原は、インテグリンαvβ3(CD61)、ガラクチン、K−Ras(V−Ki−ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、またはRal−Bである。他の腫瘍関連抗原及び腫瘍特異的抗原は、当業者に公知である。
【0056】
TSA及びTAAへ結合する抗体及びscFvには、当該技術分野で公知の抗体及びscFVを、これらをコードするヌクレオチド配列と同様に含む。
【0057】
ある具体的な実施形態において、抗原は、TSAまたはTAAであるとみなされない抗原であるが、それにもかかわらず、当該抗原は、腫瘍細胞、または腫瘍に起因する損傷と関連している。ある実施形態において、例えば、当該抗原は、例えば、増殖因子、サイトカインまたはインターロイキン、例えば、血管新生または脈管形成と関連する増殖因子、サイトカインまたはインターロイキンである。このような増殖因子、サイトカイン、またはインターロイキンには、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽増殖因子(bFGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、またはインターロイキン8(IL−8)を含むことができる。腫瘍は、腫瘍に対して局所的な低酸素性環境も作ることができる。このようなものとして、他の具体的な実施形態において、抗原は、低酸素症関連因子、例えば、HIF−1α、HIF−1β、HIF−2α、HIF−2β、HIF−3α、またはHIF−3βである。腫瘍は、正常組織に対する限局的な損傷も引き起こすことができ、損傷関連分子パターン分子(DAMP、アラーミンとしても公知)として公知の分子の放出を引き起こす。ある他の具体的な実施形態において、それゆえ、抗原は、DAMP、例えば、熱ショックタンパク質、染色質結合タンパク質高移動度群ボックス1(HMGB1)、S100A8(MRP8、カルグラニュリンA)、S100A9(MRP14、カルグラニュリンB)、血清アミロイドA(SAA)であり、またはデオキシリボ核酸、アデノシン三リン酸、尿酸、若しくはヘパリンスルファートであることができる。
【0058】
本明細書に説明するポリペプチドのある実施形態において、細胞外ドメインは、当該膜貫通ドメインへ直接的に、あるいはリンカー、スペーサーまたはヒンジポリペプチド配列、例えば、CD28由来の配列若しくはCTLA4由来の配列によって結合する。
【0059】
(5.3.単離された核酸)
当業者は、本明細書に説明する方法が任意の特定のタイプのベクターの導入に限定されるものではないこと、及び導入されたベクターが当該ベクターの含む核酸の特定のタイプに関して限定されるものではないことを認識するであろう。したがって、本明細書に説明する方法に従って細胞へ導入するために使用する核酸を含むベクターが、例えば、関心対象の任意のタンパク質またはポリペプチド(例えば、CAR)をコードする任意の核酸を含み得ることは理解されるべきである。
【0060】
ある実施形態において、当該核酸は、免疫細胞、例えば、Tリンパ球の導入に適した任意のポリヌクレオチドベクター内に含有され得る。例えば、Tリンパ球は、関心対象のポリペプチド(例えば、キメラ受容体)をコードするポリヌクレオチドを含有する合成ベクター、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)、自律的に複製するプラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)、またはこれらに類するものを用いて形質転換または導入され得る。
【0061】
具体的な実施形態において、レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターは、本明細書に説明する方法に従って使用する。Tリンパ球の形質転換または導入に適したレトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターには、それらの開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許第5,994,136号、第6,165,782号、第6,428,953号、第7,083,981号、及び第7,250,299号において説明されるレンチウイルスベクターを含むが、これらに限定しない。
【0062】
別の具体的な実施形態において、HIVベクターは、本明細書に説明する方法に従って使用する。Tリンパ球の導入に適したHIVベクターには、その開示が全体として参照により本明細書により組み込まれる米国特許第5,665,577号において説明されるベクターを含むが、これらに限定しない。
【0063】
例えば、Tリンパ球内でのポリペプチドの産生に有用な核酸には、DNA、RNA、または核酸類似体を含む。核酸類似体は、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格において修飾することができ、デオキシチミジンへのデオキシウリジン置換、デオキシシチジンへの5−メチル−2’−デオキシシチジンまたは5−ブロモ−2’−デオキシシチジン置換を含むことができる。糖部分の修飾には、2’−O−メチル糖または2’−O−アリル糖を形成するためのリボース糖の2’ヒドロキシルの修飾を含むことができる。デオキシリボースリン酸骨格は、モルホリノ核酸を生成するために修飾することができ、この中で、各塩基部分が6員のモルホリノ環へ連結されたモルホリノ核酸、またはデオキシリン酸骨格が偽ペプチド骨格によって置き換えられかつ4つの塩基が保有されるペプチド核酸を生じるよう修飾することができる。例えば、Summerton及びWeller(1997)Antisense Nucleic Acid Drug Dev.7:187〜195、ならびにHyrupら(1996)Bioorgan.Med.Chain.4:5〜23を参照されたい。加えて、デオキシリン酸骨格は、例えば、ホスホロチオアート骨格若しくはホスホロジチオアート骨格、ホスホロアミダイト骨格、またはアルキルホスホトリエステル骨格と置き換えることができる。
【実施例】
【0064】
(6.実施例)
(6.1.実施例1:BX795への同時曝露を伴う初代Tリンパ球導入)
(6.1.1.DEAE−デキストランを用いた初代ヒトTリンパ球の同時処理は、レンチウイルス導入を容易にする)
初代ヒトTリンパ球を、10%(v/v)ウシ胎児血清を補充したRPMI−1640培地中で培養し、3:1のDynabead:Tリンパ球比で抗CD3/CD28Dynabeads(登録商標)を用いて活性化した。活性化の24時間後、50U/mlのIL−2を培地へ、DEAE−デキストラン(DD)とともにまたはなしで添加した。VEGFR2及びGFPタンパク質から構成されるキメラ抗原受容体をコードするベクターJL28.2(VEGFR2−CD28TM−CD28IC−P2A−GFP)をコードするレンチウイルスを、活性化したTリンパ球培地へ1.8の感染効率(MOI)で添加した。蛍光標識細胞分取法(FACS)を用いて、上手く導入された細胞についてのマーカーとしてのVEGFR2を発現するTリンパ球の比を判定した。図1Aに示すように、ニセ処理した細胞(すなわち、ウイルスを受容しなかった細胞)の2.61%はVEGFR2であり、レンチウイルスとともにインキュベートされたがDDを有さない細胞の3.99%はVEGFR2であったのに対し、レンチウイルス及びDDとともにインキュベートした細胞の9.80%はVEGFR2であった。したがって、DEAE−デキストランを用いた初代ヒトTリンパ球の処理が、レンチウイルス導入を容易にすることが判定された。
【0065】
(6.1.2.BX795を用いた同時処理は、初代ヒトTリンパ球の導入効率を亢進する)
初代ヒトTリンパ球を第6.1.1節にあるように培養及び活性化し、レンチウイルスと同時に添加して6時間インキュベートしておくDEAE−デキストラン(DD)及びある範囲の濃度のBX795の存在下で、ベクターJL28.2を用いて導入した。次に、導入したリンパ球をFACSによって分析して、上手く導入した細胞の比を判定した。図1Bに示すように、増大した濃度のBX795と相関するウイルス伝達効率の増加があった(1μMのBX795を用いて処理した場合、導入した細胞の7.63%はVEGFR2であり、10μMのBX795を用いて処理した場合、導入した細胞の10.5%はVEGFR2であった)。したがって、高用量(10μM)におけるレンチウイルス及びBX795を用いたTリンパ球の同時処理は結果的に、レンチウイルスベクターによる細胞の導入効率の増大を生じることが判定された。
【0066】
(6.2.実施例2:BX795を用いた前処理は、初代ヒトTリンパ球の導入効率の増大に必要とされる。)
初代ヒトTリンパ球を実施例1において説明するとおり培養及び活性化したが、1つの細胞集団は、DDのみを用いて処理し(「DDのみの対照」)、1つの細胞集団は、レンチウイルス導入と同時に6μMのBX795を用いて6時間処理し(「同時」)、1つの細胞集団は、レンチウイルス導入前に3時間、6μMのBX795を用いて処理し(「前処理」)、1つの細胞集団は、レンチウイルス導入の前及び同時の両方で6μMのBX795を用いて合計9時間処理した(「前処理+同時」)。
【0067】
Tリンパ球を導入後8日間培養し、VEGFR2発現を導入3日後及び8日後にモニターした。図2に示すように、Tリンパ球培養物へレンチウイルスと同時に添加したBX795は、DDのみの対照培養物と比較して、3日後及び8日後のいずれにおけるVEGFR2発現における改善も示さなかった。BX795を用いたTリンパ球の前処理は、DDのみの対照培養物と比較して、3日後及び8日後の両方において、VEGFR2発現の亢進をもたらした。レンチウイルス導入の前及び間の両方においてBX795を用いて処理したTリンパ球培養物は、DDのみの培養物のほぼ2倍の高さでかつその他の2つのBX795処理したリンパ球のうちのいずれかよりも高いレベルでVEGF2を発現した(細胞の9.80%は、3日後の前処理+同時群における18.4%のVEGFR2細胞と比較して、3日後にDDのみの対照におけるVEGFR2であり、細胞の4.95%は、前処理+同時群における10.6%のVEGFR2細胞と比較して、8日後にDDのみの対照におけるVEGFR2であった)。
【0068】
(6.3.実施例3:2−アミノプリンを用いた初代ヒトTリンパ球の処理)
(6.3.1.2−アミノプリンは細胞生存率を変化させない)
初代ヒトTリンパ球を、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)を補充したRPMI−1640培地中で培養し、3:1のDynabead:Tリンパ球の比において抗CD3/CD28Dynabeads(登録商標)を用いて24時間活性化した。2−アミノプリン(2−AP)を培養物へ添加し、37Cで90分間培養した。DEAE−デキストラン(DD)またはプロタミンスルファート(PS)を、50U/mlのIL−2及びJL28.2レンチウイルスベクターの存在下で培養物へ3のMOIで添加した。細胞をFACSによって生存率について分析した。
【0069】
2−APの非存在下で、DD及びPSのいずれも用いずに処理した細胞の84%は、レンチウイルス導入後に生存していたのに対し、細胞の73.6%は、DDの存在下で導入した場合生存しており、細胞の84.9%は、PSの存在下で導入した場合、生存していた。(図3A)初代Tリンパ球を、2.5mM、5mMまたは10mMのいずれかで2−APを添加して先のとおり培養した場合、生存率は、2−APの非存在下で培養した細胞と比較して低下しておらず(図3B)、2−APが、培養物中の活性化した初代ヒトTリンパ球の生存率を変化させないことを示した。
【0070】
(6.3.2.2−アミノプリンを用いた処理は、初代ヒトTリンパ球のレンチウイルス導入効率を亢進する)
初代ヒトTリンパ球を第6.3.1節にあるように培養し、VEGFR2の発現についてFACSによって分析した。図4Aに示すように、DDまたはPSのいずれかの非存在下でレンチウイルスを用いて導入した細胞の4.49%は、VEGFR2について陽性であるのに対し、DD単独を用いて処理した細胞の1.25%は、VEGFR2であり、PS単独を用いて処理した細胞の0.565%は、VEGFR2であった。
【0071】
DDまたはPSのいずれかの存在下で、レンチウイルス導入は、初代ヒトTリンパ球を2−APを用いて90分間前処理して、培養物中でレンチウイルス及び種々の濃度の2−APとともに5時間維持した場合、亢進した(図4B)。全濃度の2−AP(すなわち、2.5mM、5mMまたは10mM)は、2−APへ曝露されていない細胞(対照)と比較して、導入効率を亢進した。これらの結果は、2−APを用いた処理が、DEAE−デキストランまたはプロタミンスルファートのいずれかの存在下で初代ヒトTリンパ球の導入効率を亢進することを示す。
【0072】
(等価物)
本開示は、本明細書に説明する具体的な実施形態による範囲に制限されることになってはいない。実際、本明細書に提供する対象の種々の改変は、上述の明細書から当業者に明らかとなるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に収まるよう企図される。
【0073】
種々の公開物、特許及び特許出願は、本明細書に引用されており、それらの開示は全体として参照により組み込まれる。
図1A
図1B-1】
図1B-2】
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
【国際調査報告】