特表2017-521303(P2017-521303A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-521303(P2017-521303A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】周方向補強要素の層を有するタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/20 20060101AFI20170707BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20170707BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170707BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20170707BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20170707BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170707BHJP
【FI】
   B60C9/20 L
   B60C9/20 G
   B60C9/22 G
   B60C1/00 Z
   B60C1/00 C
   B60C9/18 M
   B60C9/18 K
   C08L21/00
   C08K3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-575455(P2016-575455)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月26日
(86)【国際出願番号】EP2015061707
(87)【国際公開番号】WO2015197290
(87)【国際公開日】20151230
(31)【優先権主張番号】1455961
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】FR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(71)【出願人】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】リハブ ヒシェム
(72)【発明者】
【氏名】パルマンティエ ジャン−フランソワ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA46
3D131AA47
3D131BA02
3D131BA03
3D131BA05
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC13
3D131BC31
3D131BC33
3D131DA33
3D131DA34
3D131DA52
3D131KA02
4J002AC001
4J002DA036
4J002DE147
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つのワーキングクラウン層で形成されたクラウン補強体を備えたタイヤであって、各ワーキングクラウン層が、ゴム化合物の2つのスキム層間に挿入された補強要素で形成され、少なくとも1つのワーキングクラウン層及びカーカス補強体にポリマー化合物の第1の層Sが接触し、クラウン補強体が、周方向補強要素の少なくとも1つの層を含むタイヤに関する。
本発明によれば、少なくとも1つのワーキングクラウン層の少なくとも1つのスキム層の10%伸張時の緊張下における弾性係数は8.5MPa未満であり、少なくとも1つのワーキングクラウン層の上記少なくとも1つのスキム層のtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値は0.100未満であり、復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定したポリマー化合物の上記第1の層Sの複素動的剪断弾性係数G*は1.35MPaよりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向カーカス補強体を有するタイヤであって、少なくとも2つのワーキングクラウン層で形成されたクラウン補強体を備え、各ワーキングクラウン層は、ゴム化合物の2つのスキム層間に挿入された補強要素で形成され、一方の層から他方の層に交差して周方向との間に10°〜45°間の角度を成し、少なくとも1つのワーキングクラウン層及び前記カーカス補強体に、ポリマー化合物の第1の層Sが接触し、該ポリマー化合物の第1の層は、トレッド部の少なくとも軸端まで軸方向に延び、前記トレッド部は、前記クラウン補強体を径方向に覆い、2つのサイドウォール部によって2つのビード部に接続され、前記クラウン補強体は、周方向補強要素の少なくとも1つの層を含むタイヤにおいて、少なくとも1つのワーキングクラウン層の少なくとも1つのスキム層の10%伸張時の緊張下における弾性係数が8.5MPa未満であり、前記少なくとも1つのワーキングクラウン層の前記少なくとも1つのスキム層のtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値が0.100未満であり、復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した前記ポリマー化合物の第1の層Sの複素動的剪断弾性係数G*が1.35MPaよりも大きい、
ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した前記第1の層Sの前記複素動的剪断弾性係数G*は、2MPa未満である、
請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1の層Sのtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値は、0.100未満である、
請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記ポリマー化合物の第1の層Sは、
a)15phr以上〜28phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜160m2/g間のBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
b)沈降又は焼成シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤、或いは15phr以上〜55phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜260m2/g間の比表面積を有する、合成中又は合成後に改質されたカーボンブラック、又は、
c)全体的な充填剤の含有量が15phr以上〜50phr以下であり、白色充填剤のphr含有量が5以上〜カーボンブラックのphr含有量未満である、(a)において説明したカーボンブラックと(b)において説明した白色充填剤とのブレンド、
で構成された補強充填剤を含む、
請求項1から3の1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記少なくとも1つのワーキングクラウン層の前記少なくとも1つのスキム層は、天然ゴム、又はシス−1、4鎖が大部分を占める合成ポリイソプレンと、場合によっては少なくとも1種類の他のジエンエラストマとに基づくエラストマ化合物であり、ブレンドした場合の前記天然ゴム又は前記合成ポリイソプレンは、使用する前記他のジエンエラストマ又はエラストマ、及び
a)
i.カーボンブラック給油価(COAN)が85よりも大きい時に20phr〜40phr間の含有量で使用され、
ii.前記カーボンブラック給油価(COAN)が85よりも小さい時に20phr〜60phr間の含有量で使用される、
60m2/gよりも大きなBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
b)どのような給油価であっても20phr〜80phr間の、好ましくは30phr〜50phr間の含有量で使用される、60m2/g未満のBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
c)沈降又は焼成シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤、或いは20phr〜80phr間の、好ましくは30phr〜50phr間の含有量で使用される、30m2/g〜260m2/g間のBET比表面積を有する、合成中又は合成後に改質されたカーボンブラック、又は、
d)又は全体的な充填剤含有量が20phr〜80phr間、好ましくは40phr〜60phr間である、(a)において説明したカーボンブラック、及び/又は(b)において説明したカーボンブラック、及び/又は(c)において説明した白色充填剤のブレンド、
で構成された補強充填剤の割合に対して多くの割合で存在する、
請求項1から4の1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記タイヤは、前記カーカス補強体と、前記クラウン補強体の補強要素の径方向最内層との径方向中間において前記ポリマー化合物の第1の層Sと軸方向に接触するポリマー化合物の第2の層Gを備え、前記復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した前記ポリマー化合物の第2の層Gの前記複素動的剪断弾性係数G*は、1.35MPaよりも大きい、
請求項1から5の1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した前記第2の層Gの前記複素動的剪断弾性係数G*は、2MPa未満である、
請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第2の層Gのtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値は、0.100未満である、
請求項6又は7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ポリマー化合物の第2の層Gは、
a)15phr以上〜28phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜160m2/g間のBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
b)沈降又は焼成シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤、或いは15phr以上〜55phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜260m2/g間の比表面積を有する、合成中又は合成後に改質されたカーボンブラック、又は、
c)全体的な充填剤の含有量が15phr以上〜50phr以下であり、白色充填剤のphr含有量が5以上〜カーボンブラックのphr含有量未満である、(a)において説明したカーボンブラックと(b)において説明した白色充填剤とのブレンド、
で構成された補強充填剤を含む、
請求項6から8の1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
少なくとも1つのワーキングクラウン層の前記補強要素は、飽和層を有するコードであり、少なくとも1つの内層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマに基づく非架橋性の、架橋性の又は架橋されたゴム組成物などのポリマー組成物で作製された層によって覆われる、
請求項1から9の1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記周方向補強要素の層は、2つのワーキングクラウン層の径方向中間に配置される、
請求項1から10の1項に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記周方向補強要素の少なくとも1つの層の前記補強要素は、10GPa〜120GPa間の0.7%伸張時割線弾性係数と、150GPa未満の最大接線弾性係数とを有する金属補強要素である、
請求項1から11の1項に記載のタイヤ。
【請求項13】
前記ワーキングクラウン層の前記補強要素は、非伸張性である、
請求項1から12の1項に記載のタイヤ。
【請求項14】
前記クラウン補強体は、径方向に隣接する前記ワーキングプライの前記非伸張性の要素によって形成される角度と同じ方向に前記周方向に対して10°〜45°間の角度で配向された弾性要素と呼ばれる補強要素の保護プライと呼ばれる少なくとも1つのさらなるプライによって径方向外側を補完される、
請求項1から13の1項に記載のタイヤ。
【請求項15】
前記クラウン補強体は、前記周方向との間に60°よりも大きな角度を成す金属補強要素で形成された三角層をさらに含む、
請求項1から14の1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向カーカス補強体を有するタイヤに関し、具体的には、例えばトラック、トラクタ、トレーラ又はバスなどの、重い荷物を積んで定速で走行する車両に装備するためのタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
大型車両用のタイヤでは、一般に両側のビード部の領域にカーカス補強体が固定され、その上にスレッド又はコードで形成された重なり合う少なくとも2つの層で構成されたクラウン補強体が径方向に載り、これらのスレッド又はコードは、各層において平行であり、1つの層から次の層に交差して周方向との間に10°〜45°間の角度を形成する。このワーキング補強体を形成するワーキング層は、弾性補強要素と呼ばれる伸長可能な金属製であることが有利な補強要素で形成された保護層と呼ばれる少なくとも1つの層でさらに覆うことができる。このワーキング層は、周方向との間に45°〜90°間の角度を形成する低伸長性の金属スレッド又は金属コードの層を有することもでき、この三角プライと呼ばれるプライは、カーカス補強体と、絶対値で45°を超えない角度で存在する平行なスレッド又はコードで形成されたワーキングプライと呼ばれる第1のクラウンプライとの径方向中間に配置される。三角プライは、少なくともこのワーキングプライと共に様々な応力下での変形性が低い三角補強体を形成し、基本的にタイヤのクラウン領域内の全ての補強要素に作用する横方向圧縮力を吸収する役割を果たす。
【0003】
コードは、破断力の10%に等しい張力下で最大で0.2%に等しい伸び率を示す時に非伸張性であると言われる。
【0004】
コードは、破断荷重に等しい張力下で150GPa未満の最大接線弾性係数で少なくとも3%に等しい伸び率を示す時に弾性であると言われる。
【0005】
周方向補強要素は、周方向との間に0°を中心とする+2.5°、−2.5°の角度を成す補強要素である。
【0006】
タイヤの周方向又は長手方向は、タイヤの外周に対応する方向であり、タイヤが走行する方向によって定められる。
【0007】
タイヤの横方向又は軸方向は、タイヤの回転軸に平行である。
【0008】
径方向は、タイヤの回転軸と交差して回転軸に垂直な方向である。
【0009】
タイヤの回転軸は、通常の使用時にタイヤの回転中心となる軸である。
【0010】
径方向平面又は子午面は、タイヤの回転軸を含む平面である。
【0011】
周方向正中面又は赤道面は、タイヤの回転軸に垂直な、タイヤを二等分する平面である。
【0012】
ゴム化合物の「弾性係数」は、10%変形時及び周囲温度における正割伸長係数を意味すると理解されたい。
【0013】
ゴム組成に関して言えば、1988年9月のAFNOR−NFT−46002規格に従う緊張下で弾性係数測定を行い、10%伸張(1979年12月のAFNOR−NFT−40101規格に従う常温及び相対湿度条件)時の公称割線弾性係数(又は、MPaを単位とする見掛け応力)を2回目の伸張の際に(すなわち、適応サイクル後に)測定する。
【0014】
「道路」用タイヤと呼ばれる現在のタイヤには、道路網の改善及び世界的な高速道路網の発展の結果、高速でますます長い道のりにわたって走行することを目的とするものもある。このようなタイヤが何の疑いもなく走行することを求める条件の組み合わせは、タイヤの摩耗を低減して走行距離を増やすことができるが、一方でタイヤの、特にクラウン補強体の耐久性に悪影響を及ぼす。
【0015】
この理由は、クラウン補強体に応力が生じ、具体的にはクラウン層間に剪断応力が生じ、これが軸方向に最も短いクラウン層の端部における無視できない実用温度の上昇と組み合わさってゴムにひび割れを生じ、上記端部で広がらせる効果を与えるからである。
【0016】
検討中のタイプのタイヤのクラウン補強体の耐久性を高めるために、層の構造及び品質、及び/又はプライの端部間及び/又はその周囲、具体的には軸方向に最も短いプライの端部間及び/又はその周囲に配置されるゴム化合物の輪郭形成要素に関する解決策が既に適用されている。
【0017】
特に知られている慣例は、剪断応力を制限するために、ワーキング層の端部同士を切り離すようにワーキング層の端部間にゴム化合物の層を導入することである。しかしながら、このような分離層は非常に良好な凝集性を示さなければならない。このようなゴム化合物の層は、例えば国際公開第2004/076204号に記載されている。
【0018】
仏国特許出願公開第1389428号では、クラウン補強体の縁部付近のゴム化合物の耐劣化性を改善するために、クラウン補強体の少なくとも側部及び周辺エッジを覆う、低ヒステリシスゴム化合物で構成されたゴムの輪郭形成要素を低ヒステリシスのトレッド部と組み合わせて使用することが推奨されている。
【0019】
仏国特許第2222232号には、クラウン補強体のプライ間の分離を避けるために、クラウン補強体の上にあるトレッド部のショアA硬度とは異なる、クラウン補強体のプライの縁部とカーカス補強体のプライの縁部との間に配置されたゴム化合物の輪郭形成要素のショアA硬度よりも高いショアA硬度のゴムのクッションで補強体端部をコーティングすることが教示されている。
【0020】
実際に、このように製造されたタイヤは、特に耐久面における性能向上を効果的に可能にする。
【0021】
さらに、トレッド部の幅が非常に広いタイヤを生産するために、又は所与の寸法のタイヤの荷重負担能力を高めるために、周方向補強要素の層を導入することも既知の慣例である。国際公開第1999/024269号には、例えばこのような周方向補強要素の層の存在が記載されている。
【0022】
通常、周方向補強要素の層は、周方向に対する層形成角度が2.5°未満の巻きを形成するように巻かれた少なくとも1つの金属コードで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2004/076204号
【特許文献2】仏国特許出願公開第1389428号明細書
【特許文献3】仏国特許第2222232号明細書
【特許文献4】国際公開第1999/024269号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0799854号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、特に耐久性及び摩耗に関する特性を維持するとともに、どのような摩耗度であっても動特性、特にコーナリング剛性を維持し、取り付け先の車両の燃費の低下に寄与するために転がり抵抗性能を改善したタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、この目的は、径方向カーカス補強体を有するタイヤであって、少なくとも2つのワーキングクラウン層で形成されたクラウン補強体を備え、各ワーキングクラウン層は、ゴム化合物の2つのスキム層間に挿入された補強要素で形成され、一方の層から他方の層に交差して周方向との間に10°〜45°間の角度を成し、少なくとも1つのワーキングクラウン層及びカーカス補強体にポリマー化合物の第1の層Sが接触し、ポリマー化合物の第1の層は、トレッド部の少なくとも軸端まで軸方向に延び、トレッド部は、クラウン補強体を径方向に覆い、2つのサイドウォール部によって2つのビード部に接続され、クラウン補強体は、周方向補強要素の少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つのワーキングクラウン層の少なくとも1つのスキム層の10%伸張時の緊張下における弾性係数が8.5MPa未満であり、スキムのtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値が0.100未満であり、復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定したポリマー化合物の第1の層Sの複素動的剪断弾性係数G*が1.35MPaよりも大きいタイヤを用いて達成される。
【0026】
損失係数tan(δ)は、ゴム化合物の層の動特性である。損失係数tan(δ)は、ASTM D5992−96規格に従って粘度分析器(Metravib VA4000)において測定される。60℃の温度で10Hzの周波数の単純な交番剪断応力で正弦荷重を与えた加硫組成の試料(厚さ4mm、断面400mm2の円筒形の試験片)の応答を記録する。この掃引を、0.1〜50%(往路サイクル)の変形振幅と、その後の50%〜1%(復路サイクル)の変形振幅とで実行する。利用する結果は、複素動的剪断弾性係数(G*)、及び復路サイクルにおいて測定される損失係数tan(δ)である。復路サイクルでは、tan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大観測値が示される。
【0027】
転がり抵抗は、タイヤが転がる際に生じる抵抗である。転がり抵抗は、回転中のタイヤの変形に関するヒステリシス損失によって表される。タイヤの回転に関連する周波数値は、30℃〜100℃間で測定したtan(δ)値に対応する。従って、100℃におけるtan(δ)の値は、走行時のタイヤの転がり抵抗の指示に対応する。
【0028】
また、60℃の温度で百分率で表されるエネルギーを与えた試験片のリバウンドエネルギー損失を測定することによって転がり抵抗を推定することも可能である。
【0029】
本発明によれば、少なくとも1つのワーキングクラウン層の上記少なくとも1つのスキム層のP60として示す60℃における損失は20%未満であることが有利である。
【0030】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、上記少なくとも2つのワーキングクラウン層のスキム層の10%伸張時の緊張下における弾性係数は8.5MPa未満であり、上記少なくとも2つのワーキングクラウン層のスキム層のtan(δ)max値は0.100未満である。
【0031】
このような8.5MPa未満の弾性係数値と0.100未満のtan(δ)max値とを有する化合物を使用すると、タイヤの特性を転がり抵抗の面で改善できると同時に満足できる耐久性を維持することができる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのワーキングクラウン層の上記少なくとも1つのスキム層は、天然ゴム、又はシス−1、4鎖が大部分を占める合成ポリイソプレンと、場合によっては少なくとも1種類の他のジエンエラストマとに基づくエラストマ化合物であり、ブレンドした場合の天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、使用する他のジエンエラストマ又はエラストマ、及び
a)
i.カーボンブラックの給油価(COAN)が85よりも大きい時に20phr〜40phr間の含有量で使用され、
ii.カーボンブラックの給油価(COAN)が85よりも小さい時に20phr〜60phr間の含有量で使用される、
60m2/gよりも大きなBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
b)どのような給油価であっても20phr〜80phr間の、好ましくは30phr〜50phr間の含有量で使用される、60m2/g未満のBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
c)沈降又は焼成シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤、或いは20phr〜80phr間の、好ましくは30phr〜50phr間の含有量で使用される、30m2/g〜260m2/g間のBET比表面積を有する、合成中又は合成後に改質されたカーボンブラック、又は、
d)全体的な充填剤含有量が20phr〜80phr間、好ましくは40phr〜60phr間である、(a)において説明したカーボンブラック、及び/又は(b)において説明したカーボンブラック、及び/又は(c)において説明した白色充填剤のブレンド、
で構成された補強充填剤の含有量よりも多くの含有量で存在する。
【0033】
BET比表面積の測定は、NFT45007規格、1987年11月に対応する、「米国化学会誌」、第60巻、309頁、1938年2月に記載されているBRUNAUER、EMMET及びTELLER法に従って行われる。
【0034】
圧縮給油価(COAN)は、ASTM D3493規格に従って測定される。
【0035】
透明充填剤又は白色充填剤を使用している場合には、当業者に周知の薬剤から選択された結合剤及び/又は被覆剤を使用する必要がある。好ましい結合剤の例としては、純正液体製品についてはSi69という商品名で、固体製品についてはX50Sという商品名(重量比50/50のN330ブラックとのブレンド)でDegussa社によって市販されているビス(3−トリアルコキシシリルプロピル)ポリスルフィド系のアルコキシシランスルフィド、とりわけビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを挙げることができる。被覆剤の例としては、脂肪アルコール、Si116及びSi216という商品名でそれぞれDegussaによって販売されているヘキサデシルトリメトキシシラン又はトリエトキシヘキサデシルシランなどのアルキルアルコキシシラン、ジフェニルグアニジン、ポリエチレングリコール、又は任意にOH又はアルコキシ官能基によって改質されたシリコーン油を挙げることができる。被覆剤及び/又は結合剤は、充填剤に対して≧1/100〜≦20/100の重量比で使用され、補強充填剤全体が透明充填剤で形成される場合には2/100〜15/100の範囲で、また補強充填剤がカーボンブラックと透明充填剤とのブレンドによって形成される場合には1/100〜20/100の範囲で使用されることが好ましい。
【0036】
本明細書で上述したシリカ及び/又はアルミナ系の材料の形態及び表面SiOH及び/又はAlOH機能を有し、本発明に従ってこれらの部分的な又は完全な置換物として使用できる補強充填剤の他の例としては、SiOH及び/又はAlOH機能を有するカーボンブラックの表面を少なくとも部分的に被覆するように、シリコン及び/又はアルミニウム化合物のオーブンに供給される油への添加による合成中に、又は珪酸ソーダの溶液及び/又は酸のアルミン酸塩内のカーボンブラックの水性懸濁液への添加による合成後に改質されたカーボンブラックが挙げられる。SiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むこの種の炭素系充填剤の非限定的な例としては、1997年5月6日〜9日、カリフォルニア州アナハイム、ACSゴム部門会議第24回総会議事録に記載されているCSDP系の充填剤、及び欧州特許出願公開第0799854号の充填剤を挙げることができる。
【0037】
透明充填剤を唯一の補強充填剤として使用する場合、沈降シリカ又は焼成シリカ、或いは30m2/g〜260m2/g間のBET比表面積を有する沈降アルミナ又はアルミノケイ酸塩を使用することによってヒステリシス特性及び結合特性が得られる。この種の充填剤の非限定的な例としては、Akzo社製のシリカKS404、Degussa社製のUltrasil VN2又はVN3及びBV3370GR、Huber社製のZeopol 8745、Rhodia社製のZeosil 175MP又はZeosil 1165MP、並びにPPG社製のHI−SIL 2000などを挙げることができる。
【0038】
天然ゴム、又はシス−1、4鎖が大部分を占める合成ポリイソプレンとのブレンドとして使用できるジエンエラストマの中では、好ましくはシス−1、4鎖が大部分を占めるポリブタジエン(BR)、スチレンブタジエンコポリマー(SBR)溶液、又は乳濁液、ブタジエンーイソプレンコポリマー(BIR)、或いはスチレンーブタジエンーイソプレンターポリマー(SBIR)を挙げることができる。これらのエラストマは、ジビニルベンゼンなどの分岐剤、又は炭酸塩、ハロ錫(halotin)又はハロシリコン(halosilicon)などの星形分岐剤により、或いはジメチルアミノベンゾフェノン又はジエチルアミノベンゾフェノンの作用などによって酸素含有カルボニル又はカルボキシル官能基、或いはアミン官能基の鎖末端への又は末端におけるグラフトをもたらす機能付与剤により、重合中又は重合後に改質されたエラストマとすることができる。天然ゴム、又はシス−1、4鎖が大部分を占める合成ポリイソプレンを上述したジエンエラストマのうちの1種類又は2種類以上とブレンドした場合、天然ゴム又は合成ポリイソプレンは、顕著な含有量で使用されることが好ましく、70phrを上回る含有量で使用されることがさらに好ましい。
【0039】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、一般に弾性係数が低くなれば粘性係数G’’も低くなり、この変化は、タイヤの転がり抵抗の低減にとって好ましいことが分かっている。
【0040】
通常、ワーキングクラウン層のスキム層の10%伸張時の緊張下における弾性係数値は8.5MPaよりも大きく、より一般的には10MPaよりも大きい。このような弾性係数値は、特に車両が曲がりくねった経路を辿る場合、駐車場での操作時、又は環状交差点を切り抜ける際に、ワーキングクラウン層の補強要素が圧縮される程度を制限できるようにするために必要である。具体的には、ワーキングクラウン層の補強要素は、トレッド部の接地面領域に加わる軸方向の剪断によって圧縮される。
【0041】
本発明者らは、周方向補強要素の層が、本明細書で上述したようなワーキングクラウン層の補強要素が受ける圧縮によってタイヤの耐久性を損なうことなくワーキングクラウン層のスキム層に対する低い弾性係数値の選択を可能にすることを実証することもできた。
【0042】
本発明者らは、ワーキングクラウン層のスキム層が10%伸張時の緊張下において8.5MPa未満の弾性係数を有する時にはスキム層の凝集が満足できる状態であることを実証することもできた。
【0043】
本発明の意義の範囲では、凝集性ゴム化合物とは、割れに関して特に丈夫なゴム化合物のことである。従って、化合物の凝集性は、「PS」(純粋剪断)試験片に対して行う疲労亀裂試験によって評価される。この試験は、試験片に切り込みが入った時点でエネルギー解放率「E」(J/m2)の関数としての亀裂伝搬速度「PR」(nm/サイクル)を判定するものである。測定される実験範囲は、空気又は窒素雰囲気において−20℃〜+150℃の温度範囲である。試験片への応力付与は、静止時間が衝撃の継続時間に等しい衝撃応力負荷(「半正矢」正接信号)の形の0.1mm〜10mm間の振幅の強制動的変動であり、この信号の周波数は、平均で約10Hzである。
【0044】
この測定は、以下の3つの部分を含む。
・27%変形時における1000サイクルの「PS」試験片の順応。
・「E」=f(変形)の法則を決定するためのエネルギー特性化。エネルギー解放率「E」は、W0*h0に等しく、W0=材料に供給されるサイクル当たり及び単位体積当たりエネルギーであり、h0=試験片の初期高さである。従って「力/変位」の獲得を利用することにより、「E」と応力負荷の振幅との間の関係が得られる。
・「PS」試験片に切り込みが入った後の亀裂の測定。収集されたデータより、加わった応力レベル「E」の関数として亀裂伝搬速度「PR」が求められる。
【0045】
とりわけ、本発明者らは、周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在が、ワーキングクラウン層のスキム層の凝集の変化の低減に寄与することを実証した。具体的には、従来のタイヤ設計は、特に10%伸張時の緊張下における弾性係数値が8.5MPaよりも大きなワーキングクラウン層のスキム層を含むので、これによってワーキングクラウン層のスキム層の凝集が変化し、この変化は悪い方向に流れがちである。本発明者らは、特に車両が曲がりくねったルートを辿っている時にワーキングクラウン層の補強要素の圧縮を制限するのに寄与するとともに温度の上昇を制限する周方向補強要素の少なくとも1つの層の存在がスキム層の凝集の変化を抑えることに注目する。従って、本発明者らは、本発明によるタイヤ設計では、ワーキングクラウン層のスキム層の凝集が、従来のタイヤ設計に存在するワーキングクラウン層のスキム層よりも低ければ満足できると考える。
【0046】
また、本発明者らは、復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した複素剪断弾性係数G*が1.35MPaを上回る第1の層Sを選択することにより、スキム層が10MPaよりも高い剛性係数値を有するワーキングクラウン層を含む従来のタイヤのものと少なくとも同程度に良好な動特性、特にコーナリング剛性がタイヤに与えられることを実証することもできた。実際に、本発明者らは、タイヤにさらなる剛性を与える周方向補強要素の層の存在が、スキム層が8.5MPa未満の剛性係数値を有するワーキングクラウン層を選択することによって引き起こされるコーナリング剛性の損失を部分的に軽減し、本明細書において第1の層Sについて上述した特徴がこのコーナリング剛性に著しく寄与することを実証することができた。
【0047】
具体的には、カーカス補強体と、クラウン補強体の少なくとも1つの層とに接触して位置するポリマー化合物の第1の層Sの特性が、当業者にとってまったく想定外な形でコーナリング剛性に顕著な影響を与える。周方向補強要素の層の存在は、この層がタイヤに与える剛性に起因してコーナリング剛性に十分に、理論的には最適に影響を与えることができると思われる。行った試験では、第1の層Sの特性がタイヤのコーナリング剛性に顕著な影響を与え、周方向補強要素の層の存在時であってもコーナリング剛性を高めることが実証された。本発明者らは、このポリマー化合物の第1の層Sの選択により、直線走行時にタイヤが受ける応力の面で性能が損なわれないことをさらに実証した。
【0048】
本発明によれば、復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した第1の層Sの複素動的剪断弾性係数G*は、タイヤの耐久性及び転がり抵抗特性が損なわれた場合にタイヤの熱的特性が過度に修正されないように2MPa未満であることが有利である。
【0049】
また、第1の層Sのtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値は0.100未満であることが有利である。
【0050】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ポリマー化合物の第1の層Sは、
a)15phr以上〜28phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜160m2/g間のBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
b)沈降又は焼成シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤、或いは15phr以上〜55phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜260m2/g間の比表面積を有する、合成中又は合成後に改質されたカーボンブラック、又は、
c)全体的な充填剤の含有量が15phr以上〜50phr以下であり、白色充填剤のphr含有量が5以上〜カーボンブラックのphr含有量未満である、(a)において説明したカーボンブラックと(b)において説明した白色充填剤とのブレンド、
で構成された補強充填剤を含む。
【0051】
本発明者らは、第1の層Sが、タイヤのトレッド部に物体が突き刺さった時に開始する亀裂の広がりを制限するのに十分な凝集性を有することをさらに実証した。また、本発明者らは、たとえ上述したようなタイヤのトレッド部に物体が突き刺さった場合であっても、動特性、特にコーナリング剛性、転がり抵抗及び耐久性を組み合わせたタイヤ性能の妥協に到達することも実証した。
【0052】
本発明の有利な代替形態によれば、このタイヤは、カーカス補強体と、クラウン補強体の補強要素の径方向最内層の幅の70%に少なくとも等しい軸方向幅を有するクラウン補強体の補強要素の径方向最内層との径方向中間に、復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した1.35MPaよりも大きな複素剪断弾性係数G*を有するポリマー化合物の第2の層Gを含む。
【0053】
本発明のこの代替形態の好ましい実施形態によれば、この第2の層Gの軸方向幅は、最大でクラウン補強体の補強要素の径方向最内層の幅に等しく、少なくともクラウン補強体の補強要素の径方向最内層の幅の90%に等しいことが好ましい。
【0054】
また、本発明のこの代替形態によれば、この第2の層Gの径方向に測定した厚みは、クラウン補強体の径方向最内層の補強要素の直径であるφよりも大きく、3φ未満であることが好ましい。
【0055】
本発明者らは、このように定められたポリマー化合物の第2の層Gが、周方向補強要素の層及びポリマー化合物の第1の層Sを補完することによってタイヤのコーナリング剛性を高めることにさらに寄与することを実証することもできた。
【0056】
本発明によれば、復路サイクルにおいて10%及び60°Cで測定した第2の層Gの複素動的剪断弾性係数G*は、タイヤの耐久性及び転がり抵抗特性が損なわれた場合にタイヤの熱的特性が過度に修正されないように2MPa未満であることが有利である。
【0057】
また、第2の層Sのtan(δ)maxとして示すtan(δ)の最大値は0.100未満であることが有利である。
【0058】
本発明のこの代替形態の1つの好ましい実施形態によれば、ポリマー化合物の第2の層Gは、
a)15phr以上〜28phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜160m2/g間のBET比表面積を有するカーボンブラック、又は、
b)沈降又は焼成シリカ、アルミナ又はアルミノケイ酸塩から成る群から選択されたSiOH及び/又はAlOH表面官能基を含むシリカ及び/又はアルミナ系の白色充填剤、或いは15phr以上〜55phr以下の含有量で使用される、30m2/g〜260m2/g間の比表面積を有する、合成中又は合成後に改質されたカーボンブラック、又は、
c)全体的な充填剤の含有量が15phr以上〜50phr以下であり、白色充填剤のphr含有量が5以上〜カーボンブラックのphr含有量未満である、(a)において説明したカーボンブラックと(b)において説明した白色充填剤とのブレンド、
で構成された補強充填剤を含む。
【0059】
第2の層Gを形成するポリマー化合物は、第2の層Sを形成するポリマー化合物と同一であることが有利である。
【0060】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、少なくとも1つのワーキングクラウン層の補強要素は、飽和層を有するコードであり、少なくとも1つの内層は、好ましくは少なくとも1種類のジエンエラストマに基づく非架橋性の、架橋性の又は架橋されたゴム組成物などのポリマー組成物で作製された層によって覆われる。
【0061】
「層状」コード又は「多層」コードと呼ばれるコードは、中心核と、この中心核の周囲に配置されたストランド又はスレッドの1又は2以上の実質的に同心状の層とで構成されたコードである。
【0062】
本発明の意義の範囲では、層状コードの飽和層とは、少なくとも1つのさらなるスレッドを追加するだけの十分な空間が存在しないスレッドで構成されたコードのことである。
【0063】
本発明者らは、先程ワーキングクラウン層の補強要素として説明したようなコードの存在が、耐久性の面で良好な性能に寄与できることを実証することができた。
【0064】
具体的には、本明細書において上述したように、ワーキング層のスキムのゴム化合物は、タイヤの転がり抵抗を低減することができると思われる。この結果、タイヤの使用時にこれらのゴム化合物の温度が低下し、このためタイヤの使用条件によっては、酸化現象に関する補強要素の保護が弱くなる恐れがある。具体的には、酸素を遮断する能力に関するゴム化合物の特性は温度と共に減少し、酸素が存在すると、ほとんどの厳しい走行状態でコードの機械的特性が次第に衰退し、これらのコードの寿命に悪影響が及ぶ恐れがある。
【0065】
本明細書で上述したコード内にはゴムシースが存在し、このシースが酸素の遮断に寄与するので、補強要素が酸化する潜在的リスクが補われる。
【0066】
「少なくとも1つのジエンエラストマに基づく組成物」という表現は、既知の方法では、組成物が主に(すなわち、50%を超える質量分率で)この1又は複数種のジエンエラストマを含むことを意味する。
【0067】
なお、本発明によるシースは、実質的に円形の断面を有することが有利な連続スリーブを形成するように、シースが覆う層の周囲に連続的に延びる(すなわちこのシースは、コードの半径に垂直な「正放線」方向に連続する)。
【0068】
また、このシースのゴム組成物は架橋性又は架橋とすることができ、すなわち定義上は、ゴム組成物の硬化時に(すなわち、融解ではなく硬化するように)この組成物の架橋を可能にするのに適した架橋システムを有し、従ってこのゴム組成物は、どのような加熱温度であっても融解させることができないので未融解と見なすことができる。
【0069】
「ジエン」エラストマ又はゴムという用語は、既知の方法では、少なくとも部分的にジエンモノマー(2つの共役又は非共役炭素−炭素二重結合を担持するモノマー)に基づくエラストマ(すなわち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味すると理解される。
【0070】
ゴムシースの架橋システムは、加硫システムと呼ばれるシステム、すなわち硫黄(又は硫黄供与剤)と1次加硫促進剤とに基づくシステムであることが好ましい。この基本加硫システムには、様々な既知の二次促進剤又は加硫活性剤を添加することができる。
【0071】
本発明によるシースのゴム組成物は、上記架橋システムに加え、カーボンブラック及び/又はシリカなどの無機補強充填剤に基づく補強充填剤、抗老化剤、例えば、抗酸化剤、伸展油、可塑剤、又は未加工状態の組成物の加工性を改善する薬剤、メチレン受容体及び供与体、樹脂、ビスマレイミド、「RFS」(レソルシノール−ホルムアルデヒド−シリカ)系の既知の付着促進系、又は金属塩、特にコバルト塩類などの、タイヤのゴム組成物に使用できる全ての慣習的成分を含むことができる。
【0072】
このシースの組成物は、コードが補強するように意図されたワーキングクラウン層のスキム層に使用する組成物と同一であるように選択されることが好ましい。従って、シースの材料とゴムマトリクスの材料との間には、潜在的な非互換性の問題はない。
【0073】
本発明の代替形態によれば、少なくとも1つのワーキングクラウン層の上記コードは、共にピッチp2で螺旋状に巻かれた直径d2の3〜12の範囲のM本のスレッドの少なくとも1つの中間層C2によって取り囲まれた、共にピッチp1で螺旋状に巻かれた直径d1の1〜4の範囲のL本のスレッドの第1の層C1と、この第1の層C1を構造的に覆う少なくとも1種類のジエンエラストマに基づく非架橋性、架橋性又架橋ゴム組成物で作製されたシースとを含む[L+M]層構造のコードである。
【0074】
内層(C1)の第1の層のスレッドの直径は、0.10mm〜0.5mm間であり、外層(C2)のスレッドの直径は、0.10mm〜0.5mmであることが好ましい。
【0075】
外層(C2)の上記スレッドが巻かれる螺旋のピッチは、8mm〜25mm間であることが好ましい。
【0076】
本発明の意義の範囲では、螺旋ピッチは、このピッチのスレッドがコードの軸の周囲に完全な巻きを達成する前にコードの軸と平行に測定した長さを表し、従って軸に垂直な2つの平面上でこの軸を区分し、コードを形成する層のスレッドのピッチに等しい長さによって分離した場合、これらの2つの平面内のこのスレッドの軸は、検討中のスレッドの層に対応する2つの円上の同じ位置を占める。
【0077】
コードは、以下の特性のうちの1つを、さらに好ましくは全てを確実に有することが有利である。
− 層C2が飽和層であり、すなわち層C1の周囲に単一層の形で巻くことができるスレッドの最大数をNとした場合、直径d2の少なくとも1つの(N+1)番目のスレッドを追加するのに十分な空間がこの層に存在せず、
− ゴムシースが内層C1も覆い、及び/又は隣接する外層C2のスレッドの対を分離し、
− ゴムシースが、層C2の隣接するスレッドの対を分離するように、層C2の各スレッドの径方向内周の実質的に半分を覆う。
【0078】
ゴムシースは、0.040mm〜0.010mmの平均厚さを有することが好ましい。
【0079】
一般に、本発明による上記コードは、あらゆるタイプの、特に鋼製の金属スレッド、例えば炭素鋼で作製されたスレッド及び/又はステンレス鋼のスレッドを用いて生産することができる。炭素鋼を使用することが好ましいが、当然ながら他の鋼又は他の合金を使用することもできる。
【0080】
炭素鋼を使用する場合、その炭素含有量(鋼の重量%)は、0.1%〜1.2%間であることが好ましく、0.4%〜1.0%であることがさらに好ましく、これらの含有量は、タイヤにとって必要な機械的特性とスレッドの加工性との間の良好な妥協点を表す。なお、炭素含有量が0.5%〜0.6%間であれば、このような鋼の引き抜きが容易になるので、最終的に安価になる。本発明の別の有利な実施形態では、特に低コスト及び引き抜きの容易化に起因して、目的の用途に応じて、例えば0.2%〜0.5%間の低炭素含有量を有する鋼を使用することもできる。
【0081】
本発明による上記コードは、当業者に知られている様々な技術を用いて、例えば、最初に押出ヘッドを用いてコア又は層C1を覆い、その次に第2段階として、残りのM本のスレッド(層C2)をこのように覆われた層C1の周囲にケーブリング又はツイスティングする最終作業による2ステップで取得することができる。任意の中間巻き作業中及び巻き解き作業中にゴムシースによってもたらされる未加工状態における接合の問題は、当業者に知られている方法で、例えば挿入したプラスチック膜を使用することなどによって解決することができる。
【0082】
少なくとも1つのワーキングクラウン層のこのようなコードは、例えば国際公開第2006/013077号及び国際公開第2009/083212号に記載されているコードから選択される。
【0083】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、軸方向の幅が最も広いワーキングクラウン層は、他のワーキングクラウン層の径方向内側に存在する。
【0084】
本発明の有利な代替形態によれば、周方向補強要素の層は、0.5×Wよりも大きな軸方向幅を有する。
【0085】
Wは、タイヤをそのサービスリムに取り付けて推奨圧力に膨ませた時のタイヤの最大軸方向幅である。
【0086】
補強要素の層の軸方向幅は、タイヤの断面において、従ってタイヤが膨張していない状態で測定される。
【0087】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも2つのワーキングクラウン層が異なる軸方向幅を有し、軸方向の幅が最も広いワーキングクラウン層の軸方向幅と、最も軸方向幅の狭いワーキングクラウン層の軸方向幅との差分は、10mm〜30mm間である。
【0088】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、周方向補強要素の層は、2つのワーキングクラウン層の径方向中間に配置される。
【0089】
本発明のこの実施形態によれば、周方向補強要素の層は、カーカス補強体の補強要素が圧縮される範囲を、ワーキング層の径方向外側に配置された同様の層が達成できる範囲よりも大幅に制限することができる。周方向補強要素の層は、この補強要素に加わる負荷を制限して補強要素を過度に疲労させるのを避けるように、少なくとも1つのワーキング層によってカーカス補強体から径方向に分離されることが好ましい。
【0090】
また、本発明によれば、周方向補強要素の層に径方向に隣接するワーキングクラウン層の軸方向幅は、周方向補強要素の上記層の軸方向幅よりも大きく、好ましくは周方向補強要素の層に隣接する上記ワーキングクラウン層は、赤道面の両側の、周方向補強要素の層の直近の軸方向に連続する部分において軸方向幅にわたって結合され、その後少なくとも上記2つのワーキング層の共通する幅の残り部分にわたってゴム化合物の層Cによって分離されることが有利である。
【0091】
周方向補強要素の層に隣接するワーキングクラウン層間にこのような結合部が存在することにより、結合部の最も近くの軸方向最外部の周方向要素に作用する引張応力を低減することができる。
【0092】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、周方向補強要素の少なくとも1つの層の補強要素は、0.7%伸長時の割線弾性係数が10GPa〜120GPa間であり、最大接線弾性係数が150GPa未満である金属補強要素である。
【0093】
好ましい実施形態によれば、補強要素の0.7%伸張時の割線弾性係数は、20GPa超〜100GPa未満であり、好ましくは30GPa〜90GPa間であり、さらに好ましくは80GPa未満である。
【0094】
また、補強要素の最大接線弾性係数は130GPa未満であることが好ましく、120GPa未満であることがさらに好ましい。
【0095】
本明細書で上述した係数値は、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面で除算して求められる伸び率の関数としての、測定された張力を補強要素の金属の断面によって除算したものに対応する引張応力の曲線上で測定される。
【0096】
同じ補強要素の係数値を、10MPaの予荷重を補強要素の全断面で除算して求められる伸び率の関数としての、測定された張力を補強要素の断面によって除算したものに対応する引張応力の曲線から測定することもできる。補強要素の全断面は、金属と、特にタイヤの硬化段階中に補強要素に浸透したゴムとで構成された複合要素の断面である。
【0097】
この補強要素の全断面に関する定式化によれば、周方向補強要素の少なくとも1つの層の軸方向外側部分及び中心部分の補強要素は、0.7%伸長の割線弾性係数が5GPa〜60GPa間であって最大接線弾性係数が75GPa未満である金属補強要素である。
【0098】
1つの好ましい実施形態によれば、補強要素の0.7%伸張時の割線弾性係数は、10GPa超〜50GPa未満であり、好ましくは15GPa〜45GPa間であり、さらに好ましくは40GPa未満である。
【0099】
また、補強要素の最大接線弾性係数は65GPa未満であることが好ましく、60GPa未満であることがさらに好ましい。
【0100】
1つの好ましい実施形態によれば、周方向補強要素の少なくとも1つの層の補強要素は、小さな伸長では緩い勾配を有し、大きな伸長では実質的に一定の急な勾配を有する相対的伸び率の関数としての引張応力の曲線を有する金属補強要素である。通常、このようなさらなるプライの補強要素は、「二重係数(bimodulus)」要素として知られている。
【0101】
本発明の好ましい実施形態によれば、実質的に一定の急な勾配は、0.1%〜0.5%間の相対的伸び率よりも上方で見られる。
【0102】
上述した補強要素の様々な特性は、タイヤから取り出した補強要素上で測定される。
【0103】
具体的には、本発明による周方向補強要素の少なくとも1つの層を形成するのに適した補強要素は、例えば3×(0.26+6×0.23)4.4/6.6 SSの構成を有する式21.23のアセンブリであり、この撚り線コードは、3本のストランドを撚り合わせた式3×(1+6)の21本の基本スレッドで構成され、各ストランドは、中心コアを形成する26/100mmに等しい直径の1本のスレッドと、23/100mmに等しい直径の6本の巻きスレッドとから成る7本のスレッドで構成される。このようなコードは、45GPaに等しい0.7%の割線弾性係数と、98GPaに等しい最大接線弾性係数とを有し、これらは、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面で除算して求められる伸び率の関数としての、測定された張力を補強要素の金属の断面よって除算したものに対応する引張応力の曲線上で測定される。この式21.23のコードは、10MPaの予荷重を補強要素の全断面で除算して求められる伸び率の関数としての、測定された張力を補強要素の断面によって除算したものに対応する引張応力の曲線では、23GPaに等しい0.7%の割線弾性係数と、49GPaに等しい最大接線弾性係数とを有する。
【0104】
同様に、補強要素の別の例は、3×(0.32+6×0.28)6.2/9.3 SSの構成を有する式21.28のアセンブリである。このコードは、56GPaに等しい0.7%の割線弾性係数と、102GPaに等しい最大接線弾性係数とを有し、これらは、20MPaの予荷重を補強要素の金属の断面で除算して求められる伸び率の関数としての、測定された張力を補強要素の金属の断面よって除算したものに対応する引張応力の曲線上で測定される。この式21.28のコードは、10MPaの予荷重を補強要素の全断面で除算して求められる伸び率の関数としての、測定された張力を補強要素の断面によって除算したものに対応する引張応力の曲線では、27GPaに等しい0.7%の割線弾性係数と、49GPaに等しい最大接線弾性係数とを有する。
【0105】
周方向補強要素の少なくとも1つの層においてこのような補強要素を使用すると、特に従来の製造方法における成形段階及び硬化段階の後であっても満足できる層の剛性を維持することができる。
【0106】
本発明の第2の実施形態によれば、周方向補強要素を、最も短い層の周縁部をはるかに下回る長さではあるが、好ましくはこの周縁部の0.1倍を上回る長さの部分を形成するように切断した非伸張性の金属要素で形成することができ、これらの部分間の切断部は、互いに軸方向にオフセットされる。この場合も、このさらなる層の幅の単位当たりの引張係数は、最も伸長可能なワーキングクラウン層の同じ条件下で測定した引張係数を下回ることが好ましい。このような実施形態では、(同じ行部分の間隔の選択によって)容易に調整はできるものの、同じ金属要素で構成されている連続層の係数よりも全ての場合において低い、タイヤから取り出した切断要素の加硫層上で測定される係数を周方向補強要素の層に単純に与えることができる。
【0107】
本発明の第3の実施形態によれば、周方向補強要素が波状金属要素であり、波の振幅と波長との比率a/λは、最大で0.09に等しい。このさらなる層の単位幅当たりの引張係数は、最も伸長可能なワーキングクラウン層の同じ条件下で測定した引張係数を下回ることが好ましい。
【0108】
この金属要素は、鋼コードであることが好ましい。
【0109】
本発明の好ましい実施形態によれば、ワーキングクラウン層の補強要素は、非伸張性の金属コードである。
【0110】
本発明は、軸方向最も外側の周方向要素に作用する引張応力を低減するために、ワーキングクラウン層の補強要素によって周方向との間に形成される角度が30°未満であり、好ましくは25°未満であることを考慮することも有利である。
【0111】
本発明の別の有利な代替形態によれば、ワーキングクラウン層が、一方のプライから他方のプライに交差して周方向との間に軸方向に変化できる角度を形成する補強要素を含み、この角度は、この要素が形成する周方向正中面で測定した角度と比較すると、補強要素の層の軸方向外縁部の方が大きい。本発明のこのような実施形態では、特にカーカス補強体が圧縮される程度を抑えるために、特定のゾーンにおける周方向剛性を高める一方で、他のゾーンにおける周方向剛性を弱めることができる。
【0112】
本発明の1つの好ましい実施形態では、クラウン補強体の径方向外側を、径方向に隣接するワーキング層の非伸張性要素によって形成される角度と同じ方向に周方向に対して10°〜45°間の角度で配向された弾性補強要素と呼ばれる補強要素の保護層と呼ばれる少なくとも1つのさらなる層によって補完することもできる。
【0113】
この保護層は、最も幅が狭いワーキング層の軸方向幅を下回る軸方向幅を有することができる。この保護層は、最も幅が狭いワーキング層の軸方向幅よりも大きな軸方向幅を有することによって最も狭いワーキング層の縁部に重なり合うようになり、最も狭い径方向上方の層である場合には、さらなる補強体の軸方向伸長部において、最も幅の広いワーキングクラウン層と軸方向幅にわたって結合し、その後、軸方向外側において、少なくとも2mmに等しい厚みを有する輪郭形成要素によってこの最も幅の広いワーキング層から分離するようになる。上記の場合、弾性補強要素で形成された保護層は、一方では2つのワーキング層の縁部を分離する輪郭形成要素の厚みを実質的に下回る厚みを有する輪郭形成要素によって最も狭いワーキング層の縁部から任意に分離することができ、他方では最も幅の広いクラウン層の軸方向幅を下回る又は上回る軸方向幅を有することができる。
【0114】
上述した本発明の実施形態のいずれか1つによれば、カーカス補強体の径方向に最も近い層の補強要素によって形成される角度と同じ方向に周方向との間に60°を超える角度を形成する鋼製の非伸張性金属補強要素で形成された三角層により、クラウン補強体の径方向内側のカーカス補強体と、このカーカス補強体に最も近い径方向内側のワーキング層との間をさらに補完することができる。
【0115】
従って、上述した本発明によるタイヤは、従来のタイヤを改善した転がり抵抗を有すると同時に、耐久性及び摩耗に関する同等の性能、並びに同等のコーナリング剛性を維持する。
【0116】
さらに、ワーキングクラウン層のゴムスキム化合物の低い弾性係数値は、タイヤのクラウンを柔らかくできることによって、例えばトレッドパターンの底部に石が残留した時にクラウンに対する衝撃リスク及びクラウン補強体の層の補強要素の腐食リスクを制限することを意味する。
【0117】
以下、図1及び図2を参照して行う本発明の例示的な実施形態の説明から、本発明のさらなる詳細及び有利な特徴が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1】本発明の1つの実施形態によるタイヤの概略的な子午面の図である。
図2】本発明の第2の実施形態によるタイヤの概略的な子午面の図である。
【発明を実施するための形態】
【0119】
図については、理解を容易にするために尺度通りには示していない。図には、タイヤの周方向子午面又は赤道面を表す軸XX’に関して対称的に広がるタイヤの図の半分しか示していない。
【0120】
図1では、315/70 R22.5のサイズのタイヤ1が、0.70に等しいアスペクト比H/Sを有し、Hは、タイヤ1の取り付けリム上の高さであり、Sは、最大軸方向幅である。このタイヤ1は、図示しない2つのビード部に固定された径方向カーカス補強体2を含む。カーカス補強体は、金属コードの単一層で形成される。このカーカス補強体2は、径方向に形成されたクラウン補強体4によって取り囲まれ、クラウン補強体4は、内側から外側に以下の層で形成される。
− プライの幅全体にわたって連続し、24°に等しい角度で配向された、巻かれていない非伸張性の9.28金属コードで形成された第1のワーキング層41、
− 「二重係数」タイプの21×23の鋼金属コードで形成された周方向補強要素42の層、
− プライの幅全体にわたって連続し、24°に等しい角度で配向され、層41の金属コードと交差する、巻かれていない非伸張性の9.28金属コードで形成された第2のワーキング層43、
− 弾性のある6.35の金属コードで形成された保護層44。
【0121】
クラウン補強体は、それ自体がトレッド部6によって覆われる。
【0122】
タイヤの最大軸方向幅は、317mmに等しい。
【0123】
第1のワーキング層41の軸方向幅L41は、252mmに等しい。
【0124】
第2のワーキング層43の軸方向幅L43は、232mmに等しい。幅L41とL43との差分は、15mmに等しい。
【0125】
周方向補強要素42の層の軸方向幅L42は、194mmに等しい。
【0126】
保護プライと呼ばれる最後のクラウンプライ44は、124mmに等しい幅L44を有する。
【0127】
本発明によれば、ワーキング層41及び43の各々のスキム層の10%伸張時の緊張下における弾性係数は、6MPaに等しい。
【0128】
本発明によれば、カーカス補強体2と第1のワーキング層41との間にゴム化合物の第1の層Sが配置される。
【0129】
図2では、タイヤ1が、カーカス補強体2と第1のワーキング層41との径方向中間に第2の層Gが第1の層Sから軸方向に延びるという点で図1に示すタイヤ1と異なる。
【0130】
図1に示すような本発明に基づいて生産した様々なタイヤを用いて試験を行い、図1に示すような基準タイヤと比較した。
【0131】
試験は、特にワーキング層41及び43のスキムの化合物の特性、特に10%伸張時の緊張下における弾性係数値、及びtan(δ)maxの値、並びに復路サイクルにおいて10%及び60℃で測定した層Sの化合物の特性、特に複素動的剪断弾性係数G*を変化させて行った。
【0132】
以下、使用した様々な化合物を列挙する。
【0133】
構成成分の値は、phr(エラストマ百部当たりの重量部)で表している。
【0134】
様々な基準タイヤを試験した。
【0135】
第1の基準タイヤT1は、化合物R1と、化合物R2の第1の層Sとで形成されたスキムを含むワーキング層を有する。
【0136】
第2の基準タイヤT2は、化合物1〜5と、化合物R2の第1の層Sとで形成されたスキムを含むワーキング層を有する。
【0137】
本発明による様々なタイヤを試験した。
【0138】
本発明によるタイヤS1は、化合物1〜5と、化合物6の第1の層Sとで形成されたスキムを含むワーキング層を用いて生産した。
【0139】
タイヤに定められた最高速度定格(速度指標)に等しい速度で各タイヤに直線走行を課す試験機において、試験の継続時間を短縮するために4000kgの初期荷重を徐々に増加させて第1の耐久性試験を行った。
【0140】
試験した全てのタイヤは、実質的に同等の結果を示すことが分かった。
【0141】
タイヤに周期的に横方向荷重及び動的過負荷を課す試験機において他の耐久性試験を行った。この試験を、基準タイヤに適用した条件と全く同じ条件下で本発明によるタイヤに行った。
【0142】
走行できた距離はタイヤのタイプによって異なり、ワーキング層の端部におけるゴム化合物の劣化によって不具合が生じた。以下の表に、基準タイヤT1の基準を100として参照した結果を示す。
【0143】
タイヤのトレッド部に対する侵襲性が特に高い石で構成した未舗装道路において他の走行試験を行った。
【0144】
これらの最終試験では、同じ距離の走行後に、本発明によるタイヤが示す損傷の例は、基準タイヤよりも数が少なく、基準タイヤほど重大でないことが実証された。
【0145】
これらの試験は、本発明によるタイヤの設計が、周方向補強要素の層の存在時に耐久性能に悪影響を与えることなくワーキングクラウン層のスキムの弾性係数を低減できることを顕著に示すものである。
【0146】
さらに、転がり抵抗の測定も行った。全てのタイヤに適用したこれらの測定については、既に本明細書において説明した。
【0147】
以下の表に、タイヤT1に100の値を割り当てた、kg/tで表した測定結果を示す。
図1
図2
【国際調査報告】