(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-521671(P2017-521671A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】冷却材喪失事故(LOCA:LOSS OF COOLANT ACCIDENT)からの保護のための一体型の隔離弁システム及びその動作方法
(51)【国際特許分類】
G21C 15/18 20060101AFI20170707BHJP
【FI】
G21C15/18 T
G21C15/18 M
G21C15/18 Y
G21C15/18 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-503601(P2017-503601)
(86)(22)【出願日】2015年7月21日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月20日
(86)【国際出願番号】US2015041345
(87)【国際公開番号】WO2016014540
(87)【国際公開日】20160128
(31)【優先権主張番号】14/337,268
(32)【優先日】2014年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】515251090
【氏名又は名称】ビーダブリューエックスティー エムパワー、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カヌッチ、デイヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ディフィリポ、ポール ピー.
(57)【要約】
原子炉が、原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含み、原子炉圧力容器は、原子炉に入る流れを排他的に運ぶ容器貫通部及び原子炉から出る流れを運ぶ少なくとも1つの容器貫通部を有する。一体型隔離弁(IIV)システムが、それぞれ鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含まない逆止め弁を備える受動式IIVと、それぞれ鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含む能動弁を備える1つ又は複数の能動式IIVとを含む。原子炉に入る流れを排他的に運ぶ各容器貫通部が、容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される。原子炉から出る流れを運ぶ各容器貫通部が、容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される。各能動弁を常閉弁とすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含む原子炉と、
ECC容器貫通接続を通って前記原子炉に接続された緊急炉心冷却(ECC)システムと、
補給ライン容器貫通接続を通って前記原子炉圧力容器内へ冷却材を注入し、減少ライン容器貫通接続を通って前記原子炉圧力容器から冷却材を抽出するように、前記原子炉に接続された原子炉冷却材保有及び精製システム(RCIPS)と、
一体型隔離弁(IIV)システムとを備え、前記IIVシステムが、
前記ECC容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁を備える受動式IIVと、
前記補給ライン容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁を備える受動式IIVと、
前記減少ライン容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された能動弁を備える能動式IIVとを含む、
原子力アイランド。
【請求項2】
残留熱除去(RHR)システムをさらに備え、前記RHRシステムが、RHR出口容器貫通接続を通って前記原子炉に接続されたRHR入口と、RHR戻り容器貫通接続を通って前記原子炉に接続されたRHR出口とを有し、
前記IIVシステムが、
前記RHR戻り容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁を備える受動式IIVと、
前記RHR出口容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された能動弁を備える能動式IIVとをさらに含む、
請求項1に記載の原子力アイランド。
【請求項3】
前記RHRシステムが、空冷式又は水冷式のRHR熱交換器を備える、請求項2に記載の原子力アイランド。
【請求項4】
前記原子炉圧力容器内に配置され、原子炉冷却材圧力を感知するように構成された圧力センサと、
前記圧力センサによって感知された前記原子炉冷却材圧力が閾値圧力を超過することに応答して、前記RHR出口容器貫通接続に直接接続された前記能動式IIVを閉じるように構成された原子炉制御システムと
をさらに備える、請求項2に記載の原子力アイランド。
【請求項5】
前記原子炉圧力容器内に配置され、原子炉冷却材レベルを感知するように構成されたレベル・センサと、
前記圧力センサによって感知された前記原子炉冷却材レベルが閾値原子炉冷却材レベルを下回ることに応答して、前記減少ライン容器貫通接続に直接接続された前記能動式IIVを閉じるように構成された原子炉制御システムと
をさらに備える、請求項1に記載の原子力アイランド。
【請求項6】
原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含む原子炉であって、前記原子炉に入る流れを排他的に運ぶ複数の容器貫通部及び前記原子炉から出る流れを運ぶ少なくとも1つの容器貫通部を有する原子炉と、
一体型隔離弁(IIV)システムとを備え、前記IIVシステムが、
それぞれ鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含まない逆止め弁を備える複数の受動式IIVと、
それぞれ鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含む能動弁を備える1つ又は複数の能動式IIVとを含み、
前記原子炉に入る流れを排他的に運ぶ各容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護され、
前記原子炉から出る流れを運ぶ各容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される、
原子力アイランド。
【請求項7】
前記原子炉から出る流れを運ぶ各容器貫通部が、前記原子炉から出る流れを排他的に運ぶ、請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項8】
各能動式IIVが、前記アクチュエータに対する手動バックアップをさらに含む、請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項9】
前記原子炉に入る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉に接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される、緊急炉心冷却(ECC)システムをさらに備える、
請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項10】
前記原子炉に入る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉圧力容器内へ冷却材を注入する前記原子炉に接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される、原子炉冷却材保有及び精製システム(RCIPS)をさらに備える、
請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項11】
前記RCIPSが、前記原子炉から出る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉圧力容器から冷却材を抽出するように前記原子炉にさらに接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される、請求項10に記載の原子力アイランド。
【請求項12】
残留熱除去(RHR)システムをさらに備え、前記RHRシステムが、
前記原子炉から出る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉に接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される、入口と、
前記原子炉に入る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉に接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される、出口とを有する、
請求項11に記載の原子力アイランド。
【請求項13】
残留熱除去(RHR)システムをさらに備え、前記RHRシステムが、
前記原子炉から出る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉に接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される、入口と、
前記原子炉に入る流れを排他的に運ぶ容器貫通部を通って前記原子炉に接続され、前記容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される、出口とを有する、
請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項14】
各受動式IIVの前記逆止め弁が、閾値圧力を上回る前記原子炉圧力容器に入る流れを通すが、それ以外の流れを阻止する、請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項15】
各能動式IIVの前記能動弁が常閉弁である、請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項16】
少なくとも1つの能動式IIVの前記能動弁が、アクチュエータの電力が失われると原子炉冷却材圧力によって閉じられるように構成される、請求項6に記載の原子力アイランド。
【請求項17】
原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含む原子炉と、
容器貫通部を介して前記原子炉と流体連通している複数の補助システムであって、前記各容器貫通部が、前記原子炉に入る流体を運ぶ流体入口容器貫通部又は前記原子炉から出る流体を運ぶ流体出口容器貫通部である、複数の補助システムと、
一体型隔離弁(IIV)システムとを備え、前記IIVシステムが、
鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含まない逆止め弁を備える少なくとも1つの受動式IIVと、
鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含む能動弁を備える少なくとも1つの能動式IIVとを含み、
各流体入口容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護され、
各流体出口容器貫通部が、前記容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される、
原子力アイランド。
【請求項18】
前記複数の補助システムが、緊急炉心冷却(ECC)システムと、原子炉冷却材保有及び精製システム(RCIPS)とを含む、請求項17に記載の原子力アイランド。
【請求項19】
前記複数の補助システムが、残留熱除去(RHR)システムをさらに含む、請求項18に記載の原子力アイランド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー省共同協定DE−NE0000583によって支援された研究の過程で考案されたものである。エネルギー省は、本出願に特定の権利を有するものとする。
【0002】
以下は、原子炉の技術、原子力の技術、原子炉の安全性の技術、及び関連技術に関する。
【背景技術】
【0003】
既存の原子力発電所は、典型的には、沸騰水型炉(BWR:boiling water reactor)又は加圧水型炉(PWR:pressurized water reactor)設計の軽水型熱原子炉である。そのような原子炉内では、原子炉圧力容器内に動作圧力及び温度で収容される冷却材(精製水)中に、核分裂性材料(典型的には、核分裂性の
235Uを濃縮したUO
2などのウラン化合物)を含む炉心が配置される。核分裂性
235Uの核分裂を伴う核連鎖反応は炉心内に熱を生成し、この熱が冷却材へ伝達される。BWR設計では、熱は冷却材を蒸気に直接変換し、原子炉圧力容器内に収容された蒸気分離/乾燥ハードウェアが蒸気を生成し、この蒸気が、大口径の配管を介してタービンへ出力され、電気を生成する(原子力発電所の環境の場合。より一般には、出力された蒸気は、他の有用な仕事を実行するために使用される)。タービンからの凝縮された冷却材は、追加の大口径の配管を介してBWR圧力容器内へ戻される。PWR設計では、1次冷却材は液状(たとえば、サブクール状態)のままであり、大口径の配管を介して外部の蒸気発生器へ送られ、(1次)原子炉冷却材からの熱は、蒸気発生器内で(別個の2次)冷却材を蒸気に変換し、この蒸気がタービンを駆動する。蒸気発生器からの凝縮された冷却材は、追加の大口径の配管を介してPWR圧力容器内へ戻される。
【0004】
そのような原子炉の安全な動作は、環境への放射性物質放出からの保護を提供することを含む。この目的のため、典型的には鋼鉄及び/又は鉄骨鉄筋コンクリートから構築される放射性物質格納構造で原子炉を取り囲み、原子炉の動作が設計範囲を超えるような事象を修復するための冗長性を有する安全システムを実施することが知られている。一種の事象には、原子炉冷却材が原子炉圧力容器の破断点から、又はより一般には容器貫通部で原子炉圧力容器に接続する大口径管内の破断点から漏れる冷却材喪失事故(LOCA)が挙げられる。容器貫通部と最も近いパイプ弁との間で生じるLOCA破断点は、そのような破断点からの原子炉冷却材の喪失がパイプ弁を閉じた後にも継続するため、特に問題である。
【0005】
周知の解決策は、容器貫通部に一体型隔離弁(IIV:integral isolation valve)を設けることである。IIVは、圧力容器に接続するフランジ内に構築された弁を備える。IIVは容器貫通部内へ直接一体化されるため、IIVを閉じることで、LOCA破断点における原子炉冷却材の喪失が確実に停止される。
【0006】
LOCA事象から保護するためにIIVを使用する欠点は、IIVを動作するには空気圧、油圧、又は電気制御ラインが必要とされ、これらの制御ラインは原子炉圧力容器に達し、その結果、動作中の原子炉によって生成される熱及び放射束に露出されることである。無線のバルブ制御を用いることが企図されてきたが、これは独自の問題をもたらす。無線受信器は、IIV内へ構築されなければならず、したがって高温及び放射束に露出され、無線通信は本質的に触れることができないため、バルブ制御システム内の問題を検出することが困難になる可能性がある。
【0007】
LOCA事象から保護するためにIIVを使用する追加の欠点は、バルブ・アクチュエータの制御が複雑になる可能性があり、原子炉圧力、冷却材レベルなどに基づくLOCA状態の検出、及び検出された原子炉状態に応じたIIVの動作を必要とすることである。この応答には、いくつかのIIVを開いたままにし、残りのIIVを閉じたままにすることが必要になることがあるため、動作は単純ではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
例示的な例として本明細書に記載するいくつかの実施例では、原子力アイランドは、原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含む原子炉と、ECC容器貫通接続を通って原子炉に接続された緊急炉心冷却(ECC:emergency core cooling)システムと、補給ライン容器貫通接続を通って原子炉圧力容器内へ冷却材を注入し、減少ライン容器貫通接続を通って原子炉圧力容器から冷却材を抽出するように、原子炉に接続された原子炉冷却材保有及び精製システム(RCIPS:reactor coolant inventory and purification system)と、一体型隔離弁(IIV)システムとを備える。IIVシステムは、ECC容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁を備える受動式IIVと、補給ライン容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁を備える受動式IIVと、減少ライン容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された能動弁を備える能動式IIVとを含む。原子力アイランドは、残留熱除去(RHR:residual heat removal)システムをさらに含むことができ、RHRシステムは、RHR出口容器貫通接続を通って原子炉に接続されたRHR入口と、RHR戻り容器貫通接続を通って原子炉に接続されたRHR出口とを有し、IIVシステムは、RHR戻り容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁を備える受動式IIVと、RHR出口容器貫通接続に直接接続される鍛造フランジ内へ構築された能動弁を備える能動式IIVとをさらに含む。RHRシステムは、空冷式又は水冷式のRHR熱交換器を備えることができる。原子力アイランドは、原子炉圧力容器内に配置され、原子炉冷却材圧力を感知するように構成された圧力センサ、及び/又は原子炉圧力容器内に配置され、原子炉冷却材レベルを感知するように構成されたレベル・センサをさらに含むことができる。原子炉制御システムが、圧力センサによって感知された原子炉冷却材圧力が閾値圧力を超過することに応答して、RHR出口容器貫通接続に直接接続された能動式IIVを閉じ、且つ/又は圧力センサによって感知された原子炉冷却材レベルが閾値原子炉冷却材レベルを下回ることに応答して、減少ライン容器貫通接続に直接接続された能動式IIVを閉じるように構成されることが適当である。
【0009】
例示として本明細書に記載するいくつかの実施例では、原子力アイランドが開示される。原子炉が、原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含み、原子炉圧力容器は、原子炉に入る流れを排他的に運ぶ複数の容器貫通部及び原子炉から出る流れを運ぶ少なくとも1つの容器貫通部を有する。一体型隔離弁(IIV)システムが、それぞれ鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含まない逆止め弁を備える複数の受動式IIVと、それぞれ鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含む能動弁を備える1つ又は複数の能動式IIVとを含む。原子炉に入る流れを排他的に運ぶ各容器貫通部が、容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される。原子炉から出る流れを運ぶ各容器貫通部が、容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される。いくつかの実施例では、原子炉から出る流れを運ぶ各容器貫通部は、原子炉から出る流れを排他的に運ぶ。いくつかの実施例では、各能動式IIVは、アクチュエータに対する手動バックアップをさらに含む。各受動式IIVの逆止め弁は、閾値圧力を上回る原子炉圧力容器に入る流れを通すが、それ以外の流れを阻止することが適当である。各能動式IIVの能動弁は、常閉弁であることが適当である。
【0010】
例示の実例として本明細書に記載するいくつかの実施例では、原子炉が、原子炉圧力容器内に配置された核分裂性材料を含む炉心を含む。複数の補助システムが、容器貫通部を介して原子炉と流体連通している。各容器貫通部は、原子炉に入る流体を運ぶ流体入口容器貫通部又は原子炉から出る流体を運ぶ流体出口容器貫通部である。一体型隔離弁(IIV)システムが、鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含まない逆止め弁を備える少なくとも1つの受動式IIVと、鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含む能動弁を備える少なくとも1つの能動式IIVとを含む。各流体入口容器貫通部が、容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する受動式IIVによって保護される。各流体出口容器貫通部が、容器貫通部に直接接続された鍛造フランジを有する能動式IIVによって保護される。複数の補助システムは、緊急炉心冷却(ECC)システムと、原子炉冷却材保有及び精製システム(RCIPS)とを含むことができ、残留熱除去(RHR)システムをさらに含むことができる。いくつかの実施例では、少なくとも1つの能動式IIVは、アクチュエータの電力が失われると原子炉冷却材圧力によって閉じられるように構成される。
【0011】
本発明は、様々な構成要素及び構成要素の配置並びに様々なプロセス動作及びプロセス動作の配置の形をとることができる。図面は、好ましい実施例の例示のみを目的とするものであり、本発明を限定すると解釈されるべきではない。本開示は、以下の図面を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本明細書に開示する受動式及び能動式の一体型隔離弁(IIV)のシステムを有する原子炉を、付随するセンサ及び制御部の図とともに示す図である。
【
図2】
図1の原子炉圧力容器の下部区間及びIIVを示す斜視図を、受動式IIV及び能動式IIVの例示的な実例を示す挿入図とともに示す図である。
【
図3】
図1の原子炉の設計動作範囲からの様々な逸脱に応答するためのIIVシステムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示するIIVシステム及び動作方法は、そのようなシステム及び方法に関して本明細書で行う特定の観察に基づくものである。
【0014】
1つの観察によれば、原子炉に入る流れを排他的に提供する任意の容器貫通部は、原子炉圧力容器に入る流れを通すが原子炉圧力容器から出る流れを阻止する(すなわち、閾値圧力を上回る流れを原子炉圧力容器内へ通すがそれ以外の流れは阻止する)鍛造フランジ内へ構築された逆止め弁形の受動式の一体型隔離弁(IIV)によって、十分に保護することができる。そのような逆止め弁は、アクチュエータを含まず、完全に受動的に動作するものであり、原子炉作業員による介入なくパイプ破断点で冷却材の喪失を防止するのに十分である。
【0015】
第2の観察によれば、原子炉から出る流れを排他的に提供する任意の容器貫通部は、能動弁、すなわち電気(たとえば、電動式)、油圧、又は空気圧式のアクチュエータ(任意選択で、手動バックアップ、たとえば、手動による手回しハンドルのバックアップを伴う)によって動作が駆動される弁によって保護しなければならない。能動弁は、アクチュエータ信号cauを受け取ることによって(又は、利用可能な場合、手動バックアップを動作させることによって)、閉じられる。任意選択で、原子炉制御システムは、閾値原子炉圧力及び/又は閾値原子炉冷却材レベルなどに基づく指定の原子炉状態下で、能動式IIVを自動的に開閉するように構成される。
【0016】
第3の観察によれば、原子炉から出る流れを排他的に提供する容器貫通部が、手動バックアップによる能動式IIVを有する場合、有利な変形例は、手動バックアップを使用して弁を開こうとするあらゆる試みに優先するように、アクチュエータ駆動による閉鎖を構成することであり、その結果、アクチュエータはIIVに対するロックアウト機構として働く。
【0017】
図1を参照すると、上記に基づいて構築されたIIVシステムを含む例示的な実施例が記載される。原子炉8が、冷却材流体中に浸漬された核分裂性材料を含む炉心12を収納する原子炉圧力容器10を含む。典型的な軽水型熱原子炉では、炉心12は、核分裂性の
235U同位体を濃縮したUO
2などのウラン化合物を含み、冷却材流体は、精製された軽水(H
2O)である。例示的な原子炉8は、加圧水型炉(PWR)タイプであり、冷却水は、サブクール液状で維持される。例示的なPWR8は、バッフル板16又は他の適当な構造によって圧力容器10の頂部に画定された一体型の加圧器体積14を含む。原子炉の動作中、加圧器体積14内に蒸気泡が維持されており、蒸気泡を加熱又は冷却(たとえば、抵抗加熱器及び冷却用スパージャを使用)することによって、原子炉圧力が調整される。代替実施例(図示せず)では、適当な配管によって原子炉圧力容器に接続された外部加圧器が用いられる。
【0018】
原子炉容器内の冷却材は循環して、炉心12から熱を吸収し、炉心12によって生成される熱を抽出する。この目的のため、例示的なPWR8は、冷却材の循環を支援又は駆動するように圧力容器10の頂部付近に取り付けられた原子炉冷却材ポンプ(RCP:reactor coolant pump)18を含む。代替実施例(図示せず)では、RCPは、他の場所に位置することができ、若しくは圧力容器内に位置する内部キャンドポンプとすることができ、又はRCPを完全に省略することができ、冷却材は、炉心からの熱によって駆動される自然の循環によって循環する。例示的なPWRはまた、圧力容器10内に位置する1つ又は複数の内部蒸気発生器20を含む。一実施例では、蒸気発生器20は、チューブ・アンド・シェル構造を含み、原子炉冷却材は、管の一方及び周辺シェル内を流れ、2次冷却材(原子炉冷却材とは異なる)が、他方の管及び周辺シェル内を流れることが適当である(詳細は図示せず)。2次冷却材は、(1次)原子炉冷却材とは異なり、2次冷却供給水は、蒸気発生器継手22を介して蒸気発生器20内へ送られ、蒸気が蒸気発生器20から抽出される。これらの継手22は容器貫通部であるが、原子炉冷却材圧力を「見る」ことはなく、供給水入口へ又は蒸気出口からの配管内の破断点は、放射性物質格納構造内への放射性物質の放出をもたらさないと述べることができる。したがって、継手22に対するIIV保護を提供することが企図されるが、これは、例示的な
図1の実施例では行わない。
【0019】
例示的なPWR8は、炉心12内の核連鎖反応を制御するために炉心12から中性子吸収制御棒を垂直方向に出し入れする内部制御棒駆動機構(CRDM:control rod drive mechanism)24を含む。CRDM24は、好ましくは、核連鎖反応を完全に消すために重力を受けると制御棒が解放されて原子炉内に落ちるスクラム動作を実行することによって、特定の事象に応答するように構成される。
【0020】
例示的なPWR8は、圧力容器10内に蒸気発生器20が配置された一体型のPWRである。代替実施例(図示せず)では、蒸気発生器は、圧力容器の外側に位置する外部ユニットであり、大口径の配管が外部蒸気発生器を原子炉に接続する。そのような代替実施例では、外部蒸気発生器へ原子炉冷却材を運ぶため、この配管に対するIIV保護も含むことが企図される。
【0021】
例示的な一体型のPWR8は、有利には、原子炉冷却材を見る大口径の容器貫通部を有しない(前述のように、蒸気発生器継手22は、放射性汚染物質を含有しない2次冷却材のみを見るようになっており、2次冷却材は、典型的には、圧力容器10内の原子炉冷却材と比較するとより低い圧力である)。例示的な一体型のPWR8では、容器貫通部は、ECC IIV30によって保護される2つの緊急炉心冷却(ECC)容器貫通部と、補給ラインIIV32によって保護される補給ライン容器貫通部と、減少ラインIIV34によって保護される減少ライン容器貫通部と、RHR出口IIV36によって保護される残留熱除去(RHR)出口ラインと、RHR戻りIIV38によって保護されるRHR戻りラインとを含む。
【0022】
ECCシステムは、冷却材喪失事故(LOCA)などの特定の事象中、炉心12が冷却水中に浸漬されたままであることを確実にするために、原子炉圧力容器10内へ冷却水を送達するように設計される。図示の例示的なECCシステム40は、2つの水源と、窒素加圧水を収容する中間圧力注入タンク(IPIT:intermediate−pressure injection tank)42と、燃料交換用水貯蔵タンク(RWST:refueling water storage tank)44とを含む。LOCA応答では、原子炉は、LOCA破断点及び/又は指定の減圧弁を通して減圧される。IPIT42が窒素加圧されているため、原子炉8内の圧力が消散するにつれて水が注入される。任意選択で、IPIT42内の水をホウ酸塩処理し(すなわち、可溶性のホウ素化合物を含有する)、炉心12内の核連鎖反応の急冷を支援する(これは、CRDM24による制御棒のスクラムが核連鎖反応を急冷するための1次機構であるため、多重防護策である)。圧力容器10が特定の圧力閾値を下回るまで減圧した後、ECC弁は、ECC IIV30を介してRWST44をECC容器貫通部に接続するように動作する。RWSTは、典型的には、原子炉8と比較すると高い位置にあり、したがって水はRWST44から圧力容器10内へ重力送りされる。RWST44の容量は、炉心12が冷却水中に浸漬されたままであることを確実にするために、設計に基づく時間間隔で圧力容器10内への水の流入を維持するのに足りるように設計される。
図1の例示的な実例では、ECCシステム40は、2つの冗長システムを備え、各システムは、独自の指定のECC IIV30を介して圧力容器10に接続され、したがって、2つのECC IIV30を
図1に示す。そのような冗長性は、ECCシステム40の安全性が重要な性質のために有利である。
【0023】
引き続き
図1を参照しながら、上部区間及び内部構成要素を除去して圧力容器10の下部区間を示す
図2をさらに参照すると、ECC IIV30は、原子炉8に入る流れを排他的に提供するものであり、鍛造フランジ40(
図2の挿入図参照)内へ構築された逆止め弁の形の受動式IIVであることが適当であり、鍛造フランジ40は、圧力容器10に直接接続(たとえば、ボルト締め)し、原子炉圧力容器に入る流れを通すが原子炉圧力容器から出る流れを阻止する。言い換えると、受動式逆止め弁IIVは、閾値圧力(いくつかの実施例ではゼロとすることができる)を上回る原子炉圧力容器に入る流れを通すが、それ以外の流れを阻止する。逆止め弁は、ボール逆止め弁構成(ボール又は他の可動部分が弁座に対してばね付勢されており、圧力が開放に対する閾値圧力を超過することによって、ばねの力に逆らって弁座から離れる方へ動かされる)、スイング逆止め弁(ドア又は他の可動部分が蝶番で取り付けられており、原子炉に入る流れがドアを開けて流入を通し、原子炉から出る流れが弁座に対してドアを閉じて流出を阻止するように弁座に対して位置する)など、任意の適当な逆止め弁構成を有することができる。いくつかの実施例では、受動式逆止め弁IIVは、1つの逆止め弁が動作不良になり、逆流を阻止することができない(すなわち、原子炉から出る流れを阻止することができない)場合に冗長性を提供するために、鍛造フランジ40内へ構築された2つ(以上)の直列の逆止め弁を含む。
【0024】
受動式逆止め弁IIV30は受動式であるため、アクチュエータによって、たとえばECC動作の一部として制御することはできない。受動式逆止め弁IIV30は、ECC容器貫通部へ供給するライン上でパイプが破断した場合に、ECC容器貫通部を保護することによって冷却材の喪失を防止するための安全デバイスとして働く。
【0025】
引き続き
図1及び
図2を参照すると、原子炉冷却材保有/精製システム(RCIPS)50は、補給ラインIIV32によって保護された補給ライン容器貫通部及び減少ラインIIV34によって保護された減少ライン容器貫通部を介して原子炉8に接続する。RCIPS50は、原子炉冷却材の量及び純度を維持することに関係する様々な機能を実行する。冷却水は、補給ラインを介して圧力容器10へ追加され、減少ラインを介して圧力容器10から除去される。補給ラインIIV32は、原子炉8に入る流れを排他的に提供するものであり、鍛造フランジ40(
図2の挿入図参照)内へ構築された逆止め弁の形の受動式IIVであることが適当であり、鍛造フランジ40は、圧力容器10に直接接続(たとえば、ボルト締め)し、原子炉圧力容器に入る流れを通すが原子炉圧力容器から出る流れを阻止する。
【0026】
他方では、減少ラインIIV34は、原子炉8から出る流れを排他的に提供するものであり、能動式IIVであることが適当である。
図2の第2の挿入図に示す例示的な例では、適当な能動式IIVは、鍛造フランジ52内へ構築された弁を含み、この弁は、電動式(たとえば、ソレノイド・アクチュエータ)、油圧式又は空気圧式(たとえば、油圧式又は空気圧式のピストン・アクチュエータ)とすることができる2つの冗長のアクチュエータ54をさらに含む。能動弁内では、可動要素が、アクチュエータによって弁座の方へ又は弁座から離れる方へ動かされる。能動弁は、好ましくは「故障時閉鎖」弁であり、これは、電力(又は油圧若しくは空気圧)の喪失時、ばね付勢又は別の受動的な刺激を受けて弁がその閉位置へ動くことを意味する。別の企図される設計では、能動弁のアクチュエータは、可動弁部分を内方へ動かす(すなわち、原子炉8の方へ動かし、又は可動弁部分が容器貫通部内の途中に配置されている場合、可動部分をさらに容器貫通部内へ動かす)ことによって弁を開き、その結果、アクチュエータ電力が失われた場合、原子炉冷却材圧力は、可動部分を弁座に対して外方へ駆動して、常閉状態を実現する。例示的な実例では、能動式IIV34はまた、2つの冗長の手回しハンドル56の形の手動バックアップを含む。
【0027】
減少ラインIIV34は安全機能を担い、たとえば減少ライン上で破断点が生じた場合、作業員は、IIV34を閉じるための作動信号をアクチュエータ54へ送るように原子炉制御システム60を動作させることによって、又は手動バックアップt機構56を動作させることによって、減少ラインIIV34を閉じることができる。IIV34を閉じることによって、減少ライン上の破断点を介した原子炉冷却材の喪失が止まる。
【0028】
原子炉制御システム60は、1つ又は複数のコンピュータ・モニタ若しくはディスプレイ、キーボード、マウス、又は他のポインティング・デバイス、これらの様々な組合せなどの適当なユーザ・インタフェース連結デバイスを有するコンピュータ又は他の電子システムとして実施されることが適当である。バルブ・アクチュエータ54は、IIVシステム内で用いられるバルブ・アクチュエータの1つ又は複数のタイプに応じて、電気配線、油圧ライン、空気圧ラインなどによって、原子炉制御システム60に動作可能に接続される。原子炉制御システム60は、任意選択で、コンピュータ化されていないアクチュエータ54のバックアップ制御を提供するLEDインジケータ及びボタン又は他の電気機械的ユーザ入力を有する状態表示ボードなど、コンピュータ化されていないバックアップ・システムを含む。前述のように、IIVシステムの能動弁は、任意選択で、例示的な手回しハンドル56などの手動バックアップ機構を含む。
【0029】
代替実施例では、能動式減少ラインIIV34は、前述の安全機能のためだけに使用され、原子炉8の通常動作中の機能的な構成要素としては使用されない。この代替手法では、能動式減少ラインIIV34は、通常の原子炉動作中は開いたままであり、RCIPS50の他の弁(図示せず)は、圧力容器10への補給水の追加を制御するために適宜開閉される。この手法では、減少ラインIIV34は、減少ライン上の破断などの安全性に関連する状況に応答した場合にのみ閉じられ、減少ラインIIV34は、2状態デバイスとすることができ、すなわち完全に開き又は完全に閉じることができるが、その間で「部分的に開」状態へ連続して調整可能ではない。
【0030】
RHR出口IIV36及びRHR戻りIIV38によって保護される残留熱除去(RHR)ラインは、空冷式、水冷式、又はその他の方法で冷却することができるRHR熱交換器70に接続する。適当な実施例では、RHR熱交換器70は能動閉ループで動作し、炉心12からの崩壊熱が冷却水を加熱し、冷却水はRHR出力ラインによってRHR熱交換器70へ運ばれ、RHR熱交換器70で水が冷却され(したがって、運ばれた熱を追い出す)、復水は、RHR戻りラインを介して原子炉圧力容器10へ戻される。そのような設計では、RHR出口IIV36によって保護されるRHR出口容器貫通接続を通って、RHR入口72が原子炉8に接続され、RHR戻りIIV38によって保護されるRHR戻り容器貫通接続を通って、RHR出口74が原子炉8に接続される。
【0031】
RHR戻りIIV38は、RHR熱交換器70からの復水を原子炉圧力容器10へ戻す戻りラインを保護する。RHR戻りIIV38は、原子炉8に入る流れを排他的に提供するものであり、鍛造フランジ40(
図2の挿入図参照)内へ構築された逆止め弁の形の受動式IIVであることが適当であり、鍛造フランジ40は、圧力容器10に直接接続(たとえば、ボルト締め)し、原子炉圧力容器に入る流れを通すが原子炉圧力容器から出る流れを阻止する。
【0032】
他方では、RHR出口IIV36は、原子炉8から出る流れを排他的に運ぶものであり、鍛造フランジ52内へ構築された作動弁(任意選択で、手動バックアップを有する)を備える能動式IIVであることが適当である。例示的なRHR出口IIV36は、電動式(たとえば、ソレノイド・アクチュエータ)、油圧式又は空気圧式(たとえば、油圧式又は空気圧式のピストン・アクチュエータ)とすることができる2つの冗長のアクチュエータ54を含み、また2つの冗長の手回しハンドル56の形の手動バックアップも含む。いくつかの実施例では、RHR出口IIV36を使用して、開いて能動閉ループ循環を開始することによって、残留熱除去システムを開始することができる。代替実施例では、RHR出口IIV36は、安全機能のみを担う。
【0033】
図1及び
図2の実施例では、独立した(すなわち、冗長の)各ECCシステム40は、ECC IIV30によって保護される容器貫通部を介して原子炉圧力容器10に接続し、この容器貫通部は、最初はIPIT42から高圧の流れを運び、次いで減圧後はRWST44から低圧の流れを運ぶ。この手法は、有利には、容器貫通部の数を低減させる。しかし、各ECC容器貫通部が原子炉8に入る流れを排他的に運ぶため、それぞれ独自の受動式逆止め弁IIVによって保護されるIPIT42及びRWST44に対して別個の容器貫通部を提供することが企図される。
【0034】
IIV30、32、34、36、38はほとんどが受動式逆止め弁タイプであり、減少ラインIIV34及びRHR出口ラインIIV36のみが能動式及び/又は手動式の弁であることに留意されたい。有利には、これは、LOCA又は他の事象中にIIVシステムを利用する際の原子炉作業員の誤りの可能性を低減させる。前述のように、受動式逆止め弁IIVは、閾値圧力を上回る原子炉圧力容器に入る流れを通すが、それ以外の流れを阻止する。逆止め弁を開く閾値圧力は、いくつかの実施例ではゼロとすることができる。より一般的には、逆止め弁を開く閾値圧力は、保護されたラインを通って流体を流す通常動作中の逆止め弁への入口で予期される最も低い圧力より低くするべきであり、これにより逆止め弁が保護されたシステムの通常動作を妨げないことが確実になる。
【0035】
引き続き
図1及び
図2を参照しながら、
図3をさらに参照すると、IIVシステムはまた、任意選択で、場合によって安全でない特定の原子炉状態に自動的に応答するように構成される。
図1に図示のように、原子炉8は、典型的には、どちらも加圧器体積14内に位置する例示的な圧力センサ80及び例示的な原子炉冷却材レベル・センサ82などのセンサを含む。
図3は、冷却材レベル−圧力図を図示し、圧力を横座標上に、レベルを縦座標上に示す。
図3では、P
set及びL
setは、それぞれ原子炉8の通常動作に対する設定点圧力及び冷却材レベルを示す。
図3にはまた、特定の閾値P
RHR、P
ECC、L
low、及びL
ECCを示す(
図1の原子炉制御システム60内にも図示する)。これらの閾値は、次のように、能動式IIV34、36の自動応答を制御する。
【0036】
圧力閾値P
RHRは、RHR出口ラインの自動動作を制御する。圧力センサ80によって測定される原子炉圧力が閾値P
RHRを超過した場合、RHR出口ラインIIV36は閉じたままである。
【0037】
レベル閾値L
lowは、原子炉冷却材のさらなる喪失を制限するように、減少ラインIIV34の自動閉鎖を制御する。レベル・センサ82によって測定される原子炉冷却水レベルが閾値L
lowを下回るまで減少した場合、減少ラインIIV34は、減少ラインを通って冷却材が失われないように、自動的に閉じる(又はすでに閉じている場合は閉じたまま保持される)。補給ラインは影響を受けず、原子炉冷却材レベルが閾値L
lowを下回った後でも、引き続き補給冷却材を提供して時間とともに低レベル状態を修復することができ、それによりEECシステム40を起動することなく修復を可能にすることができることに留意されたい。
【0038】
図1及び
図3にはまた、それぞれECCシステム40の起動をトリガする圧力及びレベル閾値P
ECC及びL
ECCを図示する。圧力センサ80によって測定される圧力が閾値P
ECCを超過した場合、又はレベル・センサ82によって測定される冷却材レベルが閾値L
ECCを下回る場合、ECCシステム40が起動される。ECC IIV30が受動式逆止め弁IIVであるため、ECCを開始するためにIIVシステムのいかなるバルブ・アクチュエータも動作させる必要はない。しかし、ECC動作を開始するとき、減少ラインを通った冷却材喪失を防止するために、減少ラインIIV34を自動的に閉じることが企図される。
【0039】
例示的なIIV30、32、34、36、38は、ECCシステム40、RCIPS50、及びRHRシステム70を含む例示的な補助システムにとって適当である。他の原子力アイランド設計では、変形の又は異なる容器貫通部を有する追加又は他の補助システムを用いることができる。IIVシステム及びその動作方法を設計するための本明細書に開示する観察及び原理は、そのような変形の又は異なる原子力アイランド設計に容易に適合される。これらの観察及び原理のもとでは、原子炉に入る流れを排他的に提供するすべての容器貫通部で受動式逆止め弁IIVを用いることによって、能動式IIVの数が最小になる。システムの複雑さはまた、有利には、原子炉に入る流れと原子炉から出る流れの両方を運ぶ双方向の容器貫通部の使用を回避することによって低減される。これには追加の容器貫通部を追加することが必要になる可能性があるが、追加された容器貫通部は、受動式逆止め弁IIVによって保護されることが適当である。
【0040】
各受動式IIVは、鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含まない逆止め弁を備える。各能動式IIVは、鍛造フランジ内へ構築された、アクチュエータを含む能動弁を備える。「内へ構築される」とは、弁が鍛造フランジに固定され且つフランジ内に配置され、又は原子炉圧力容器10の壁の中へ途中まで延びるように容器貫通部内へ途中まで突出することができることを意味する。このようにして鍛造フランジ内へ構築されることによって、弁は、ボルト/ねじ孔の組合せ、ボルト/ナットの組合せ、又は他のフランジ締結具によって容器貫通部にしっかりと接続された鍛造フランジによって、外部との接触から遮蔽される。
【0041】
好ましい実施例を含む例示的な実施例について説明した。本発明及び方法の適用例及び原理を例示するために、特有の実施例について詳細に図示及び説明したが、本発明がそれに限定されることが意図されるものではなく、本発明は、そのような原理から逸脱することなく他の方法で実施することができることが理解されよう。本発明のいくつかの実施例では、本発明の特定の特徴は、それに対応して他の特徴を使用することなく、有利に使用することができることもある。したがって、あらゆるそのような変更例及び実施例は、適切に以下の特許請求の範囲の範囲内に入る。前述の詳細な説明を読んで理解すれば、修正例及び変形例が想到されることが明らかである。本開示は、添付の特許請求の範囲又はその均等物の範囲内に入る限り、あらゆるそのような修正例及び変形例を含むと解釈されることが意図される。
【国際調査報告】