特表2017-521685(P2017-521685A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シー2センス, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2017-521685増強した化学レジスタセンシングのための調製物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-521685(P2017-521685A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(54)【発明の名称】増強した化学レジスタセンシングのための調製物
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20170707BHJP
   G01N 7/04 20060101ALI20170707BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20170707BHJP
【FI】
   G01N27/12 C
   G01N7/04 Z
   G01N21/78 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-523774(P2017-523774)
(86)(22)【出願日】2015年7月10日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月21日
(86)【国際出願番号】US2015039971
(87)【国際公開番号】WO2016010855
(87)【国際公開日】20160121
(31)【優先権主張番号】62/024,924
(32)【優先日】2014年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】517015742
【氏名又は名称】シー2センス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シュノーア, ジャン マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ゼントナー, カッサンドラ アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ペティ, アレクサンダー ロバートソン
(72)【発明者】
【氏名】スワガー, ティモシー マニング
【テーマコード(参考)】
2G046
2G054
【Fターム(参考)】
2G046AA18
2G046AA23
2G046AA24
2G046AA25
2G046AA26
2G046BA09
2G046FA01
2G046FC02
2G046FC07
2G054AA01
2G054AA02
2G054AB09
2G054CA10
2G054CA22
2G054CA23
2G054EA06
(57)【要約】
センサ材料は、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、目的の分析種と選択的に相互作用するように選択された検出剤;およびイオン液体を含み、これらの複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体は組み合わされてペーストを形成する。さらに、分析種が、ペースト中に拡散して検出剤と相互作用し、それによってペーストの導電率を変化させることができる。上記センサ材料および方法に基づいたデバイスまたは上記デバイスの使用も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ材料であって、
複数の導電性炭素質ナノ材料粒子;
目的の分析種と相互作用することができる検出剤;および
イオン液体を含み、
該複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、該検出剤、および該イオン液体を組み合わせてペーストを形成し;
該イオン液体が、分析種の該ペーストとの相互作用を容易にし、それにより、該ペーストの導電率を変化させるように選択される、センサ材料。
【請求項2】
前記炭素質ナノ材料粒子がカーボンナノチューブである、請求項1に記載のセンサ材料。
【請求項3】
前記炭素質ナノ材料粒子が、黒鉛粉末、単層グラフェン、二層グラフェン、多層グラフェン、還元型酸化黒鉛、およびカーボンブラック粉末からなる群から選択される、請求項1に記載のセンサ材料。
【請求項4】
前記イオン液体が、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、およびその組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項5】
該イオン液体が、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI−)アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI−)アニオン、ハライドアニオン、ニトラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオン、ヘキサフルオロホスファートアニオン、ビストリフリミドアニオン、トリフラートアニオン、トシラートアニオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項6】
前記イオン液体が、ホルマート、アルキルスルファート、アルキルホスファート、グリコラート、およびその組み合わせからなる群から選択される非ハロゲン化有機アニオンを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項7】
前記イオン液体が、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、または1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロ(trifluor)メチルスルホニル)イミドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項8】
前記検出剤が炭素質ナノ材料粒子に共有結合している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項9】
前記検出剤が炭素質ナノ材料粒子に非共有結合している、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項10】
前記検出剤が炭素質ナノ材料粒子内部に拘束されれている、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項11】
前記検出剤が、小分子、ポリマー、または生物学的種である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項12】
前記検出剤が、溶液、気相、または固相中で目的の分析種に結合することができる官能基を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項13】
前記官能基が、チオール基、アルデヒド基、エステル基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載のセンサ材料。
【請求項14】
前記検出剤が、電子が豊富な部分または電子不足の部分であり;目的の分析種と該検出剤との間の相互作用が静電相互作用を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項15】
前記検出剤が金属または金属含有化合物を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項16】
目的の分析種と前記検出剤との間の相互作用が、金属または金属含有化合物への結合を含む、請求項15に記載のセンサ材料。
【請求項17】
前記金属含有化合物が、チタン塩、銀塩、白金塩、金塩、アルミニウム塩、ニッケル塩、パラジウム塩、および銅塩からなる群から選択される、請求項16に記載のセンサ材料。
【請求項18】
前記金属含有種が銅塩を含む、請求項16に記載のセンサ材料。
【請求項19】
前記金属含有種がパラジウム塩を含む、請求項16に記載のセンサ材料。
【請求項20】
前記検出剤が、PdCl、5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトコバルト(III)ペルクロラート([Co(tpp)]ClO)、3,6−ジ−2−ピリジル−1,2,4,5−テトラジン、およびその組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載のセンサ材料。
【請求項21】
前記生物学的種が、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、またはPNAを含む、請求項11に記載のセンサ材料。
【請求項22】
前記炭素質ナノ材料粒子を検出剤と3:1〜1:10の範囲の重量比で混合する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項23】
前記炭素質ナノ材料粒子を検出剤と1:1〜1:10の範囲の重量比で混合する、請求項1〜21のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項24】
約0.1〜20重量%の前記炭素質ナノ材料粒子をイオン液体と混合する、請求項1〜23のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項25】
約0.25〜10重量%の該炭素質ナノ材料粒子をイオン液体と混合する、請求項1〜23のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項26】
粘度調整添加物をさらに含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載のセンサ材料。
【請求項27】
前記粘度調整添加物が、低分子量溶媒、高分子量溶媒、可塑剤、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、希釈剤、および鉱油からなる群から選択される、請求項26に記載のセンサ材料。
【請求項28】
デバイスであって、
第1の電極および第2の電極;
該第1の電極および第2の電極と電気的に接触して配置されたセンサ材料;
を含み、
該センサ材料が請求項1〜36のいずれか1項に記載のセンサ材料を含む、デバイス。
【請求項29】
前記センサ材料を形成するペーストの導電率の変化を検出するための電流計または電圧計と接続した電気回路をさらに含む、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記第1の電極および第2の電極が剛性基板上に配置されている、請求項28に記載のデバイス。
【請求項31】
前記剛性基板が、ガラス、高分子材料、および印刷回路板から選択される、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記第1の電極および第2の電極が可撓性基板上に配置されている、請求項28に記載のデバイス。
【請求項33】
前記可撓性基板が紙および高分子材料から選択される、請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
前記第1の電極および該第2の電極が複素回路の一部である、請求項28に記載のデバイス。
【請求項35】
前記複素回路が、近距離無線通信(NFC)チップまたは無線周波数識別(RFID)チップである、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
分析種を検出する方法であって、
請求項28〜35のいずれか1項に記載の感知デバイスを準備する工程;
センサ材料を環境に曝露する工程であって、該センサ材料の導電率の変化が該分析種の存在を示す、工程;および
該センサ材料の導電率の変化を検出する工程を含む、方法。
【請求項37】
前記検出された導電率の変化を分析および保存のための別のデバイスに無線で送信する工程をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ワイヤレス無線周波数通信によって前記分析種を検出する工程をさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記センサを含む無線周波数識別タグからの出力を検出する工程をさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記分析種が蒸気である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記分析種が、チオール、エステル、アルデヒド、アルコール、エーテル、アルケン、アルキン、ケトン、酸、塩基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記分析種がカビである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記分析種が、エチレン、窒素含有ガス、またはアミンである、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記分析種がプトレシンまたはカダベリンである、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記分析種の濃度が、0〜10%、0〜5%、0〜1%、0〜1000ppm、0〜100ppm、0〜80ppm、0〜50ppm、0〜10ppm、0〜5ppm、0〜1ppm、0〜0.5ppm、0〜100ppb、0〜50ppb、または0〜10ppbの範囲である、請求項36に記載の方法。
【請求項46】
前記センサ材料が前記分析種との相互作用の際にさらに体積変化を起こし;
該体積変化を検出して該体積変化から該分析種に関する情報を引き出す工程を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記センサ材料が前記分析種との相互作用の際にさらに変色し;
該変色を検出して該変色から分析種に関する情報を引き出す工程を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記分析種が前記検出剤と相互作用してファンデルワールス相互作用、共有結合、イオン結合、水素結合、または供与結合を形成する、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記分析種が生体分子のペア間の結合事象を介して該検出剤と相互作用し、該生体分子が、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、またはホルモンである、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
前記生体分子のペアが、抗体/ペプチド対、抗体/抗原対、抗体フラグメント/抗原対、抗体/抗原フラグメント対、抗体フラグメント/抗原フラグメント対、抗体/ハプテン対、酵素/基質対、酵素/インヒビター対、酵素/補因子対、タンパク質/基質対、核酸/核酸対、タンパク質/核酸対、ペプチド/ペプチド対、タンパク質/タンパク質対、小分子/タンパク質対、グルタチオン/GST対、抗GFP/GFP融合タンパク質対、Myc/Max対、マルトース/マルトース結合タンパク質対、炭水化物/タンパク質対、炭水化物誘導体/タンパク質対、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート対、ペプチド/NTA対、レクチン/炭水化物対、受容体/ホルモン対、受容体/エフェクター対、相補的核酸/核酸対、リガンド/細胞表面受容体対、ウイルス/リガンド対、プロテインA/抗体対、プロテインG/抗体対、プロテインL/抗体対、Fc受容体/抗体対、ビオチン/アビジン対、ビオチン/ストレプトアビジン対、薬物/標的対、亜鉛フィンガー/核酸対、小分子/ペプチド対、小分子/タンパク質対、小分子/標的対、炭水化物/タンパク質対(マルトース/マルトース結合タンパク質(MBP)など)、小分子/標的対、および金属イオン/キレート剤対からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
センサ材料を作製する方法であって、
複数の導電性炭素質ナノ材料粒子を準備する工程;
目的の分析種と相互作用するように選択された検出剤を準備する工程;
イオン液体を準備する工程;
該複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、該検出剤、および該イオン液体を混合してペーストを形成する、混合する工程、を含む、方法。
【請求項52】
センサ材料を作製する方法であって、
複数の導電性炭素質ナノ材料粒子を準備する工程;
目的の分析種と相互作用するように選択された検出剤を準備する工程;
イオン液体を準備する工程;
該検出剤および該イオン液体と混和できる溶媒を準備する工程;
該検出剤およびイオン液体を該溶媒に溶解する工程であって、ミックスを形成する工程;
該複数の導電性炭素質ナノ材料粒子を該ミックスに添加する工程;および
該溶媒を蒸発する工程であって、該複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を含むペーストを形成する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2014年7月15日に出願された米国特許出願第62/024,924号に基づく優先権を主張し、その全体が本明細書中に参照によって組み込まれる。
【0002】
(参照による援用)
本明細書中で引用された全ての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書中に記載の発明日の時点で当業者に公知の技術的現状をより完全に説明するために、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ガス感知テクノロジーは、安全性、保安、プロセス監視、または大気質管理などで広範に適用されている。食品産業においてエチレンまたは生体アミンの感知などへさらに適用されればガスセンサから利益を得ることができるが、現在のセンサテクノロジーでは必要な要件を満たすことができない。
【0004】
現在のエチレン、生体アミン、またはアンモニアの検出方法は、特に、ガスクロマトグラフィ、光音響分光法、ならびに電気化学的方法および比色法を含む。これらの各方法は、不利益および矛盾(扱いが困難、高価、複雑、嵩高い、感度および選択性が制限される、正確性の欠如、ならびに操作における大きな力が必要なこと、および/または分析の実施に高度に訓練された技術者が必要なことが含まれる)がある。
【0005】
化学レジスタセンサは、これらの制約の多くを克服する可能性があり、さらに、拡張性があり、多重送信でき、低コストで、低出力であり、携帯性があり、選択性が高く、高感度の感知テクノロジーをもたらす。実社会での適用が可能なテクノロジーとするために、これらのセンサは、所望の分析種に対して十分に選択性があり、且つ十分に強く応答することが必要である。
【0006】
SWCNTおよびイオン液体のペーストの形成が、Fukushimaら(Fukushimaら,Science,300,2072−2074および米国特許第7,531,114B2号)によって以前に記載されていたが、このペーストは、検出剤分子を含まず、且つ感知における使用について言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,531,114号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Fukushimaら,Science,300,2072−2074
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
応答の感知を改良する1つの方法を開示する。複数の導電性炭素質ナノ材料粒子;目的の分析種と相互作用することができる検出剤;およびイオン液体を含み、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を組み合わせてペーストを形成するセンサ材料を記載する。イオン液体を、分析種のペーストとの相互作用、それによるペーストの導電率の変化を容易にするように選択する。
【0010】
いくつかの実施形態では、炭素質ナノ材料粒子はカーボンナノチューブである。いくつかの他の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子は、黒鉛粉末、単層グラフェン、二層グラフェン、多層グラフェン、還元型酸化黒鉛、およびカーボンブラック粉末からなる群から選択される。
【0011】
任意の前述の実施形態では、イオン液体は、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む。いくつかの他の実施形態では、イオン液体は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI−)アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI−)アニオン、ハライドアニオン、ニトラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオン、ヘキサフルオロホスファートアニオン、ビストリフリミドアニオン、トリフラートアニオン、トシラートアニオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む。いくつかの他の実施形態では、イオン液体は、ホルマート、アルキルスルファート、アルキルホスファート、グリコラート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される非ハロゲン化有機アニオンを含む。いくつかの他の実施形態では、イオン液体は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、または1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロ(trifluor)メチルスルホニル)イミドである。
【0012】
任意の前述の実施形態では、検出剤は、炭素質ナノ材料粒子に共有結合している。いくつかの他の実施形態では、検出剤は、炭素質ナノ材料粒子に非共有結合している。いくつかの他の実施形態では、検出剤は、炭素質ナノ材料粒子内部に拘束されれている。
【0013】
任意の前述の実施形態では、検出剤は、小分子、ポリマー、または生物学的種である。いくつかの他の実施形態では、生物学的種は、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、またはPNAを含む。
【0014】
任意の前述の実施形態では、検出剤は、溶液、気相、または固相中で目的の分析種に結合することができる官能基を含む。いくつかの実施形態では、官能基は、チオール基、アルデヒド基、エステル基、カルボン酸基、ヒドロキシル基、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
任意の前述の実施形態では、検出剤は電子が豊富な部分または電子不足の部分であり;目的の分析種と検出剤との間の相互作用は静電相互作用を含む。
【0016】
任意の前述の実施形態では、検出剤は金属または金属含有化合物を含む。いくつかの実施形態では、目的の分析種と検出剤との間の相互作用は、金属または金属含有化合物への結合を含む。いくつかの他の実施形態では、金属含有化合物は、チタン塩、銀塩、白金塩、金塩、アルミニウム塩、ニッケル塩、パラジウム塩、および銅塩からなる群から選択される。いくつかの他の実施形態では、金属含有種は銅塩を含む。いくつかの他の実施形態では、金属含有種はパラジウム塩を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、検出剤は、PdCl、5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトコバルト(III)ペルクロラート([Co(tpp)]ClO)、3,6−ジ−2−ピリジル−1,2,4,5−テトラジン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0018】
任意の前述の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子を検出剤と3:1〜1:10の範囲の重量比で混合する。いくつかの実施形態では、炭素質ナノ材料粒子を検出剤と1:1〜1:10の範囲の重量比で混合する。
【0019】
任意の前述の実施形態では、約0.1〜20重量%の炭素質ナノ材料粒子をイオン液体と混合する。いくつかの実施形態では、約0.25〜10重量%の炭素質ナノ材料粒子をイオン液体と混合する。
【0020】
任意の前述の実施形態では、センサ材料は、粘度調整添加物をさらに含む。いくつかの実施形態では、粘度調整添加物は、低分子量溶媒、高分子量溶媒、可塑剤、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、希釈剤、および鉱油からなる群から選択される。
【0021】
1つの態様では、デバイスは、第1の電極および第2の電極;第1の電極および第2の電極と電気的に接触して配置されたセンサ材料を含み;センサ材料は、上に開示の任意の実施形態のセンサ材料を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、デバイスは、センサ材料を形成するペーストの導電率の変化を検出するための電流計または電圧計と接続した電気回路をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、剛性基板上に配置されている。いくつかの他の実施形態では、剛性基板は、ガラス、高分子材料、および印刷回路板から選択される。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、可撓性基板上に配置されている。いくつかの他の実施形態では、可撓性基板は、紙および高分子材料から選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、複素回路の一部である。いくつかの他の実施形態では、複素回路は、近距離無線通信(NFC)チップまたは無線周波数識別(RFID)チップである。
【0026】
1つの態様では、分析種を検出する方法は、上に開示の任意の実施形態の感知デバイスを準備する工程;センサ材料を環境に曝露する工程であって、センサ材料の導電率の変化が分析種の存在を示す、工程;およびセンサ材料の導電率の変化を検出する工程を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、検出された導電率の変化を分析および保存のための別のデバイスに無線で送信する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、ワイヤレス無線周波数通信によって分析種を検出する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、本方法は、センサを含む無線周波数識別タグからの出力を検出する工程をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、分析種は蒸気である。
【0029】
いくつかの実施形態では、分析種は、チオール、エステル、アルデヒド、アルコール、エーテル、アルケン、アルキン、ケトン、酸、塩基、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0030】
いくつかの実施形態では、分析種はカビである。
【0031】
いくつかの実施形態では、分析種は、エチレン、窒素含有ガス、またはアミンである。
【0032】
いくつかの実施形態では、分析種は、プトレシンまたはカダベリンである。
【0033】
いくつかの実施形態では、分析種の濃度は、0〜10%、0〜5%、0〜1%、0〜1000ppm、0〜100ppm、0〜80ppm、0〜50ppm、0〜10ppm、0〜5ppm、0〜1ppm、0〜0.5ppm、0〜100ppb、0〜50ppb、または0〜10ppbの範囲である。
【0034】
いくつかの実施形態では、センサ材料は、分析種との相互作用の際にさらに体積変化を起こし;本方法は、体積変化を検出して体積変化から分析種に関する情報を引き出す工程を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、センサ材料は、分析種との相互作用の際にさらに変色し;本方法は、変色を検出して変色から分析種に関する情報を引き出す工程を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、分析種は、検出剤と相互作用して、ファンデルワールス相互作用、共有結合、イオン結合、水素結合、または供与結合を形成する。
【0037】
いくつかの実施形態では、分析種は、生体分子のペア(pair)間の結合事象を介して検出剤と相互作用し、生体分子は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、またはホルモンである。いくつかの他の実施形態では、生体分子対は、抗体/ペプチド対、抗体/抗原対、抗体フラグメント/抗原対、抗体/抗原フラグメント対、抗体フラグメント/抗原フラグメント対、抗体/ハプテン対、酵素/基質対、酵素/インヒビター対、酵素/補因子対、タンパク質/基質対、核酸/核酸対、タンパク質/核酸対、ペプチド/ペプチド対、タンパク質/タンパク質対、小分子/タンパク質対、グルタチオン/GST対、抗GFP/GFP融合タンパク質対、Myc/Max対、マルトース/マルトース結合タンパク質対、炭水化物/タンパク質対、炭水化物誘導体/タンパク質対、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート対、ペプチド/NTA対、レクチン/炭水化物対、受容体/ホルモン対、受容体/エフェクター対、相補的核酸/核酸対、リガンド/細胞表面受容体対、ウイルス/リガンド対、プロテインA/抗体対、プロテインG/抗体対、プロテインL/抗体対、Fc受容体/抗体対、ビオチン/アビジン対、ビオチン/ストレプトアビジン対、薬物/標的対、亜鉛フィンガー/核酸対、小分子/ペプチド対、小分子/タンパク質対、小分子/標的対、炭水化物/タンパク質対(マルトース/マルトース結合タンパク質(MBP)など)、小分子/標的対、および金属イオン/キレート剤対からなる群から選択される。
【0038】
1つの態様では、センサ材料を作製する方法は、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子を準備する工程;目的の分析種と相互作用するように選択された検出剤を準備する工程;イオン液体を準備する工程;複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を混合する工程であって、ペーストを形成する、工程を含む。
【0039】
1つの態様では、本方法には、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子を準備する工程;目的の分析種と相互作用するように選択された検出剤を準備する工程;イオン液体を準備する工程;検出剤およびイオン液体と混和できる溶媒を準備する工程;検出剤およびイオン液体を溶媒に溶解する工程であって、ミックスを形成する、工程;複数の導電性炭素質ナノ材料粒子をミックスに添加する工程;溶媒を蒸発させる工程であって、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を含むペーストを形成する、工程を含む、センサ材料を作製する方法が含まれる。
【0040】
図面の簡単な説明
本開示の上記および他の目的および利点は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すると自明であろう。なお、全図を通して図面中の同様の参照番号は同様の部分について言及している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、1つまたは複数の実施形態の3つの必須の成分を使用したセンサ材料作製のための略図を示す。
【0042】
図2図2は、本開示のセンサ材料を使用した分析種検出のためのデバイスの略図を示す。
【0043】
図3図3は、SWCNT、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(BMIM)BF、および5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトコバルト(III)ペルクロラート([Co(tpp)]ClO)のペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が10重量%であり、SWCNTの[Co(tpp)]ClOに対する質量比が1:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の曝露の開始を示す。
【0044】
図4図4は、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が10重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が4:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの300秒間および600秒間の曝露の開始を示す。
【0045】
図5図5は、紙上のSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が5重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が、それぞれ、10:1、5:1、および1:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の開始を示す。
【0046】
図6図6は、SWCNTおよび[Co(tpp)]ClOの懸濁液、BMIM BFでコーティングしたSWCNTおよび[Co(tpp)]ClOの懸濁液、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト、ならびに純粋なSWCNTの懸濁液を使用して製作したセンサの40ppmエチレンに対する平均感知応答を示す。
【0047】
図7図7は、SWCNTおよび[Co(tpp)]ClOの懸濁液、BMIM BFでコーティングしたSWCNTおよび[Co(tpp)]ClOの懸濁液、ならびにSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペーストを使用して製作したセンサの、センサ製作から4週間後の40ppmエチレンに対する初期応答に対する百分率を示す。
【0048】
図8図8は、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が1重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の開始を示す。
【0049】
図9図9は、純粋なSWCNTの懸濁液を使用して製作したセンサならびにSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペーストから作製したセンサの異なる分析種に対する平均感知応答を示す。
【0050】
図10A図10Aは、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が1重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、1、2、および5ppmのアンモニアへの100秒間の曝露の開始を示す。
【0051】
図10B図10Bは、図10Aで記録した平均感知応答を示す。
【0052】
図11A図11Aは、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が1重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、2、4、および8ppmのカダベリンへの100秒間の曝露の開始を示す。
【0053】
図11B図11Bは、図11Aで記録した平均感知応答を示す。
【0054】
図12A図12Aは、SWCNT、PdCl、および以下の3つのタイプのイオン液体:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(エチルTFMS)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ブチルTFMS)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ヘキシルTFMS)のペーストを使用して製作したセンサの感知応答を示す。ラインは、80ppmエチレンへの500秒間の曝露の開始および終了を示す。
【0055】
図12B図12Bは、図12Aで記録した平均感知応答ならびにドロップキャスティングによってSWCNTおよびPdClを含むイソプロパノールの懸濁液から製作したセンサの平均感知応答を示す。
【0056】
図12C図12Cは、SWCNT、PdCl、およびBMIM BFのペーストを使用して製作したセンサならびにドロップキャスティングによってSWCNTおよびPdClを含むイソプロパノールの懸濁液から製作したセンサの80ppmエチレンに対する感知応答を示す。ラインは、80ppmエチレンへの500秒間の曝露の開始および終了を示す。
【0057】
図13図13は、SWCNT、PdCl、および1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(ブチルHFP)のペーストを使用して製作したセンサの80ppmのエチレンに対する感知応答を示す。ラインは、80ppmエチレンへの500秒間の曝露の開始および終了を示す。
【0058】
図14A図14Aは、SWCNT、[Co(tpp)]ClO、および以下の3つのタイプのイオン液体:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(エチルTFMS)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ブチルTFMS)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ヘキシルTFMS)のペーストを使用して製作したセンサの感知応答を示す。ラインは、80ppmエチレンへの500秒間の曝露の開始および終了を示す。
【0059】
図14B図14Bは、図14Aで記録した平均感知応答を示す。
【0060】
図15図15は、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が1重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して製作したセンサの平均感知応答およびエラーを示す。感知材料を、製作過程中の種々の時期に適用した。
【0061】
図16図16は、SWCNT、BMIM BF、およびPdClのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が0.25重量%であり、PdClのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。感知材料を、製作過程中の種々の時期に適用した。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の曝露の開始を示す。
【0062】
図17図17は、SWCNT、BMIM BF、およびPdClのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が1重量%であり、PdClのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。種々の厚さの感知材料を適用した。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の開始を示す。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(詳細な説明)
センサ材料は、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、目的の分析種と選択的に相互作用するように選択された検出剤;およびイオン液体を含み、これら複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、この検出剤、およびこのイオン液体を組み合わせてペーストを形成する。さらに、分析種は、ペースト中に分散して検出剤と相互作用し、それにより、ペーストの導電率を変化させることができる。
【0064】
図1は、センサ材料の要素を示す。炭素質ナノ材料101を検出剤102およびイオン液体103と組み合わせてペースト104を形成する。
【0065】
特定の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101はカーボンナノチューブである。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは単一壁ナノチューブである。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは多重壁ナノチューブである。いくつかの実施形態では、カーボンナノチューブは二重壁ナノチューブである。いくつかの実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101は、黒鉛粉末、単層グラフェン、二層グラフェン、多層グラフェン、還元型酸化黒鉛、およびカーボンブラック粉末からなる群から選択される。
【0066】
特定の実施形態では、検出剤102は、分析種と相互作用することができ、そして/または周囲の媒体または環境の変化に応答することができ、デバイス内に種々の構成で組み込むことができる任意の成分であり得る。例えば、検出剤102は、小分子、ポリマー、または生物学的種などであり得る。いくつかの実施形態では、検出剤は、イオン種(例えば、塩)を含むことができる。いくつかの実施形態では、検出剤102は、中性種を含むことができる。いくつかの実施形態では、検出剤102は、有機種、有機金属種、または無機種であり得る。特定の実施形態では、検出剤102を、共有結合を介して炭素質ナノ材料粒子に付着させることができる。特定の実施形態では、検出剤102を、非共有結合を介して炭素質ナノ材料粒子に付着させることができる。特定の他の実施形態では、検出剤102を、実質的に炭素質ナノ材料粒子内に含めることができ(例えば、炭素質ナノ材料粒子内に分散させ)、炭素質ナノ材料粒子と共有結合を形成しなくて良い。
【0067】
いくつかの実施形態では、検出剤102は、媒体(例えば、溶液、気相、固相)中で別の生体分子または化学分子に結合することができる生物基または化学基を含むことができる。例えば、検出剤102は、官能基(チオール、アルデヒド、エステル、カルボン酸、およびヒドロキシルなど)を含むことができ、官能基は、分析種と結合を形成する。いくつかの場合、検出剤102は、電子が豊富な部分または電子不足の部分であり得、分析種と検出剤との間の相互作用が静電相互作用を含む。いくつかの実施形態では、分析種と検出剤102との間の相互作用は、金属または金属含有部分への結合を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、検出剤102は金属含有種であり得る。例えば、種は、金属含有種(金属塩が含まれる)であり得る。いくつかの実施形態では、金属塩は、遷移金属の塩または複合体である。金属塩のいくつかの例には、TiO、TiCl、および他のチタン塩、AgCl、AgPF、Ag(OCOCF)、Ag(SOCF)、および他の銀塩、PtClおよび他の白金塩、AuClおよび他の金塩、Al(OEt)および他のアルミニウム塩、Ni(SOCF、NiCl、および他のニッケル塩、ならびにCu(SOCF)および他の銅塩が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、種は、銅含有種であり得る。いくつかの実施形態では、銅含有種は、Cu(II)塩などの塩である。いくつかの実施形態では、種は、パラジウム含有種であり得る。いくつかの実施形態では、パラジウム含有種は、Pd(II)塩などの塩である。特定の金属含有種のいくつかの例には、PdClが含まれるが、これに限定されない。一定の実施形態では、検出剤102は、5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトコバルト(III)ペルクロラート([Co(tpp)]ClO)、3,6−ジ−2−ピリジル−1,2,4,5−テトラジン、およびその組み合わせを含む。
【0069】
一定の実施形態では、上記の検出剤の組み合わせを、センサ材料として使用すべきペーストの形態で使用する。例えば、PdClおよび銅塩を組み合わせて、エチレン検出のための検出剤102として使用することができる。
【0070】
任意の公知のイオン液体を、開示にしたがってイオン液体103として使用することができる。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、およびその組み合わせからなる群から選択されるカチオンを含む。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI−)アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI−)アニオン、ハライドアニオン、ニトラートアニオン、テトラフルオロボラートアニオン、ヘキサフルオロホスファートアニオン、ビストリフリミドアニオン、トリフラートアニオン、トシラートアニオン、およびその組み合わせからなる群から選択されるアニオンを含む。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ホルマート、アルキルスルファート、アルキルホスファート、グリコラート、およびその組み合わせからなる群から選択される非ハロゲン化有機アニオンを含む。一定の実施形態では、イオン液体は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、または1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。
【0071】
いくつかの実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101を、検出剤102と3:1〜1:10の範囲の重量比で混合する。特定の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101の検出剤102に対する重量比は1:1である。特定の他の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101の検出剤102に対する重量比は1:5である。特定の他の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101の検出剤102に対する比は1:10である。
【0072】
いくつかの実施形態では、約0.1〜20重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの他の実施形態では、約0.25〜20重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの実施形態では、約1〜20重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの他の実施形態では、約5〜20重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの他の実施形態では、約10〜20重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの他の実施形態では、約0.25〜10重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの実施形態では、約1〜10重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。いくつかの他の実施形態では、約5〜10重量%の炭素質ナノ材料粒子101を、イオン液体103と混合する。
【0073】
いくつかの実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101は、ペースト中に0.1重量%〜20重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101は、ペースト中に0.1重量%〜15重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101は、ペースト中に1重量%〜15重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、炭素質ナノ材料粒子101は、ペースト中に5重量%〜15重量%の範囲で存在する。
【0074】
いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.05重量%〜65重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.05重量%〜45重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.05重量%〜15重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.1重量%〜65重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.1重量%〜45重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.1重量%〜15重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に0.1重量%〜15重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に5重量%〜65重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、検出剤102は、ペースト中に5重量%〜45重量%の範囲で存在する。
【0075】
いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に20重量%〜99.5重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に20重量%〜75重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に20重量%〜45重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に25重量%〜99.5重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に25重量%〜75重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に25重量%〜45重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に30重量%〜99.5重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に30重量%〜75重量%の範囲で存在する。いくつかの他の実施形態では、イオン液体103は、ペースト中に30重量%〜45重量%の範囲で存在する。
【0076】
いくつかの実施形態では、センサ材料は、種々の適用のために使用されるペーストの物理的性質に合わせるための粘度調整剤などの添加物をさらに含む。適切な粘度調整剤(viscosity modified)は、粘度増強剤または粘度低下剤であり得る。いくつかの適切な粘度調整剤には、低分子量および高分子量の溶媒、可塑剤、エチレングリコール、テトラエチレングリコール、希釈剤、鉱油などが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
任意の公知の混合技術を、センサ材料の要素を使用してペーストを形成するために使用することができる。1つの実施形態では、ボールミル磨砕によって混合し、この混合において、全要素を添加し、規定の時間磨砕して均一なペーストを形成する。いくつかの他の実施形態では、ボールミル磨砕によって混合し、この混合において、いくつかの要素を添加し、規定の時間磨砕して均一なペーストを形成後、残りの要素を添加し、1つまたは複数の工程でさらに混合する。いくつかの他の実施形態では、ブレンダを使用して成分を混合する。いくつかの他の実施形態では、乳鉢および乳棒を使用して成分を混合する。
【0078】
1つの態様では、デバイスは、第1の電極および第2の電極;第1の電極および第2の電極と電気的に接触して配置されたセンサ材料を含み、センサ材料は、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子;目的の分析種と選択的に相互作用するように選択された検出剤;およびイオン液体を含む。複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を共に混合して、ペーストを形成し;分析種は、ペースト中に拡散して検出剤と相互作用し、それにより、ペーストの導電率を変化させることができる。デバイスは、分析種に関する情報を検出するためにペーストの導電率の変化を検出することができる電気回路をさらに含む。
【0079】
図2は、本開示のセンサ材料を使用した分析種を検出するためのデバイスの概略図を示す。デバイス200は、第1の電極201および第2の電極202ならびに第1の電極および第2の電極と電気的に接触した、炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を含むセンサ材料を含む。第1の電極201および第2の電極202を接続して、センサ材料203の導電率を測定することができる要素を備えた電気回路204を形成している。
【0080】
別の態様では、分析種を検出する方法は、第1の電極および第2の電極を準備する工程;第1の電極および第2の電極と電気的に接触して配置されたセンサ材料を準備する工程を含み;センサ材料は、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、目的の分析種と選択的に相互作用するように選択された検出剤;イオン液体を含み、複数の導電性炭素質ナノ材料粒子、検出剤、およびイオン液体を相互に混合してペーストを形成する。ペースト中の検出剤は、分析種と相互作用してセンサ材料の導電率を変化させることができる。本方法は、センサ材料を分析種に曝露する工程であって、分析種への曝露によりセンサ材料の導電率が変化する、曝露する工程、およびセンサ材料の導電率の変化を検出する工程であって、分析種に関する情報を収集する、工程をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、ガラスまたは高分子材料などの剛性基板上に配置されている。いくつかの他の実施形態では、第1の電極および第2の電極は、印刷回路板上に配置されている。いくつかの他の実施形態では、第1の電極および第2の電極は、可撓性基板上に配置されている。いくつかの実施形態では、可撓性基板は紙である。いくつかの他の実施形態では、可撓性基板は高分子材料である。いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極は、可撓性基板上に印刷されている。当該分野で公知の任意の一般的な技術を使用して、電極を印刷することができる。これらの技術は、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、木版印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、パッド印刷、および凹版印刷であるが、これらに限定されない。
【0082】
いくつかの実施形態では、第1の電極201および第2の電極202は、近距離無線通信(NFC)チップまたは無線周波数識別(RFID)チップなどの複素回路の一部である。
【0083】
特定の実施形態では、分析種は蒸気またはガスである。いくつかの実施形態では、分析種は、チオール、エステル、アルデヒド、アルコール、エーテル、アルケン、アルキン、ケトン、酸、塩基、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの他の実施形態では、分析種はカビである。いくつかの他の実施形態では、分析種はエチレンである。いくつかの実施形態では、分析種は窒素含有ガスである。特定の実施形態では、分析種はアミンである。特定の実施形態では、分析種はプトレシンまたはカダベリンである。
【0084】
いくつかの実施形態では、分析種の濃度は、0〜10%、10ppm〜10%、100ppm〜10%、1000ppm〜10%、1〜10%、または5〜10%の範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜5%、10ppm〜5%、100ppm〜5%、1000ppm〜5%、1〜5%、または2〜5%の範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜1%、10ppb〜1%、100ppb〜1%、1ppm〜1%、または10ppm〜1%の範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜1000ppm、10ppb〜1000ppm、100ppb〜1000ppm、1ppm〜1000ppm、または10ppm〜1000ppmの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜100ppm、10ppb〜100ppm、100ppb〜100ppm、1ppm〜100ppm、または10ppm〜100ppmの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜80ppm、10ppb〜80ppm、100ppb〜80ppm、1ppm〜80ppm、または10ppm〜80ppmの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜50ppm、10ppb〜50ppm、100ppb〜50ppm、1ppm〜50ppm、または10ppm〜50ppmの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜10ppm、10ppb〜10ppm、100ppb〜10ppm、または1ppm〜10ppmの範囲である。いくつかの実施形態では、分析種の濃度は、0〜1ppm、10ppb〜1ppm、または100ppb〜1ppmの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜0.5ppm、10ppb〜0.5ppm、または100ppb〜0.5ppmの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜100ppb、または10ppb〜100ppbの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜50ppb、または10ppb〜50ppbの範囲である。いくつかの他の実施形態では、分析種の濃度は、0〜10ppbの範囲である。
【0085】
センサ材料203を形成するために使用されるペースト104中での分析種と検出剤102との相互作用には、共有結合(例えば、炭素−炭素、炭素−酸素、酸素−ケイ素、硫黄−硫黄、リン−窒素、炭素−窒素、金属−酸素、または他の共有結合)、イオン結合、水素結合(例えば、ヒドロキシル間、アミン間、カルボキシル間、チオール間、および/または類似の官能基間の水素結合)、および供与結合(例えば、金属イオンと単座配位子または多座配位子との間の錯体形成またはキレート化)などの結合の形成が含まれ得る。相互作用はまた、ファンデルワールス相互作用を含むことができる。1つの実施形態では、相互作用は、分析種との共有結合の形成を含む。いくつかの場合、デバイスと分析種との間の相互作用は、電荷移動反応などの反応を含むことができる。いくつかの他の実施形態では、種および/または別のデバイス要素は、周囲環境の変化(例えば、温度変化)の際に化学的または物理的に変換されてデバイスから判定可能なシグナルを生成し得る。
【0086】
センサ材料203を形成するために使用したペースト104中の検出剤102は、生体分子の対(タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、およびホルモンなどが含まれる)間の結合事象を介して分析種と相互作用することもできる。具体的な例には、抗体/ペプチド対、抗体/抗原対、抗体フラグメント/抗原対、抗体/抗原フラグメント対、抗体フラグメント/抗原フラグメント対、抗体/ハプテン対、酵素/基質対、酵素/インヒビター対、酵素/補因子対、タンパク質/基質対、核酸/核酸対、タンパク質/核酸対、ペプチド/ペプチド対、タンパク質/タンパク質対、小分子/タンパク質対、グルタチオン/GST対、抗GFP/GFP融合タンパク質対、Myc/Max対、マルトース/マルトース結合タンパク質対、炭水化物/タンパク質対、炭水化物誘導体/タンパク質対、金属結合タグ/金属/キレート、ペプチドタグ/金属イオン−金属キレート対、ペプチド/NTA対、レクチン/炭水化物対、受容体/ホルモン対、受容体/エフェクター対、相補的核酸/核酸対、リガンド/細胞表面受容体対、ウイルス/リガンド対、プロテインA/抗体対、プロテインG/抗体対、プロテインL/抗体対、Fc受容体/抗体対、ビオチン/アビジン対、ビオチン/ストレプトアビジン対、薬物/標的対、亜鉛フィンガー/核酸対、小分子/ペプチド対、小分子/タンパク質対、小分子/標的対、炭水化物/タンパク質対(マルトース/MBP(マルトース結合タンパク質)など)、小分子/標的対、または金属イオン/キレート剤対が含まれる。種の限定されない具体例には、ペプチド、タンパク質、DNA、RNA、PNAが含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態では、分析種は、ペースト104と相互作用するために、センサ材料203と接触することができるか、センサ材料203と十分に近接して配置することができるか、センサ材料203の内部に浸透することができる。いくつかの実施形態では、センサ材料の体積または寸法の変化(例えば、増加、減少)は、分析種との相互作用の際に起こり得る。例えば、デバイスの要素は分析種吸収の際に「膨潤」し得、体積の変化によりデバイスの性質が変化し得る。いくつかの実施形態では、分析種によりセンサ材料203が変色し得る。
【0088】
出願人は、驚くべきことに、検出剤の炭素質ナノ材料粒子との組み合わせおよびイオン液体を使用して形成されたペースト中にこの組み合わせを含めることによって予想外且つ有益な性質が得られることを見出した。これらの性質は、制限されないが、分析種の存在に対する応答シグナルの有意な改善、センサの耐用寿命の延長、感度の増加、検出限界の低下、および選択性の向上である。これらの有利な性質は、センサの複数の重要な性能測定基準を網羅し、したがって、機能が飛躍的に進歩する。
【0089】
出願人は、さらに驚くべきことに、上記のペーストが、イオン液体キャリアを欠き、そして/またはペースト形態でない組成物よりも分析種を感知するための感度が高いことを発見した。分析種がペースト中に拡散して検出剤と相互作用し、それにより、電気的性質などの性質を変化させて分析種の検出のために検出および分析することができるシグナルを生成することが必要であるので、当業者は、かかるセンサの性能が、感度および選択性という点で有意に低下すると予想するであろう。さらに、イオン液体の極性に起因して、検出剤が炭素質ナノ粒子材料から解離してイオン液体に対して選択的親和性を示す傾向があると予想される。この傾向に起因して、センサの性質は著しく損なわれ得る。驚くべきことに、一般的見解と対照的に、出願人は、以下で考察するように、これが実現可能なだけでなく、得られたセンサ材料が性質を向上させることも確認した。出願人は、イオン液体の炭素質ナノ粒子表面との相互作用によって炭素質ナノ粒子を解束(debundling)し、それにより、炭素質ナノ粒子表面の利用可能領域が増大するとの仮説を得た。結果として、検出剤は炭素質ナノ粒子とより容易に相互作用することができ、この検出剤−分析種相互作用により炭素質ナノ粒子の導電率または炭素質ナノ粒子のネットワークに対する効果が増大する。
【0090】
理論に拘束されないが、イオン液体とのブレンドによって検出剤および炭素質ナノ材料粒子の分散が改善され、それにより、曝露表面積が増大すると考えられる。また、予想される挙動と対照的に、イオン液体の存在は、分析種の検出剤および炭素質ナノ材料粒子との相互作用を妨害しない。
【実施例】
【0091】
(例示の実施例)
(材料と測定)
単一壁カーボンナノチューブ(SWCNT)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート(97%、BMIM BF)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(97%、エチルTFMS)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(98%、ブチルTFMS)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(98%、ヘキシルTFMS)を、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(imizaolium)ヘキサフルオロホスファート(97%、ブチルHFP)、カダベリン(97%超)、イソプロパノール(99%超)、o−ジクロロベンゼン(無水物)、塩化パラジウム(II)、および3,6−ジ−2−ピリジル−1,2,4,5−テトラジンと共にSigma−Aldrichから購入し、入手したままの状態で使用した。検出剤である5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトコバルト(III)ペルクロラート([Co(tpp)]ClO)を、以下の文献の手順(Sugimotoら,Bull.Chem.Soc.Jpn.,54,3425−3432)にしたがって合成した。分析種である1%エチレンガスを含む窒素(1.0001体積%±2%)および1%アンモニアガスを含む窒素(0.9979%±2%)、およびキャリアガスである乾燥窒素を、AirGasから入手した。
【0092】
デバイスの感知能力を決定するために、分析種曝露の際にセンサの導電率の変化を監視した。感知の測定は、PalmSens EmStat−MUX(PalmSens BV)を使用して行った。デバイスを、ガス流の入口/出口およびセンサの分析種への曝露のためのガス室からなる特注のテフロン(登録商標)製筐体中に入れた。デバイスを、64ピンICテストクリップ(3M)を介してポテンシオスタットに接続した。Sierra Instrumentsガス混合システム、kin−tekガス発生器、シリンジポンプからなる特注製のセットアップ、または蠕動ポンプからなる特注製のセットアップを使用して、分析種の窒素ガス、空気、または加湿窒素ガスとの混合によって種々の濃度の分析種を生成することができる。
【0093】
感知材料を、以下の2つの異なる方法を介してデバイスに適用した:1)金属スパチュラまたは2)スクリーン印刷模倣法を使用して適用した。スクリーン印刷模倣法を、デバイスを横切ってマスクを配置することによって行った。マスクは、電極の間の空間上にレーザ切断孔を有していた。感知材料を、孔を横切って広げ、ブレードを用いて擦りつけて均一な厚さにした。材料の厚さは、異なる厚さのマスクを使用することによって変動した。
(実施例1)
【0094】
以下の実施例は、分析種の検出剤としての[Co(tpp)]ClOを備えたSWCNT−BMIM BFペーストから構成されるセンサの製作および測定を記載する。
【0095】
ペーストを、乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを10分間粉砕することによって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが10重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比1:1であった。基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンをスライドガラス上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が7kΩと30kΩとの間になるまで添加した。
【0096】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素、およびキャリアガス窒素に交互に3サイクル曝露した。図3は、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が10重量%であり、SWCNTの[Co(tpp)]ClOに対する質量比が1:1である)を使用して作製したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の曝露の開始を示す。センサの感知応答の平均は、0.94%であった。
(実施例2)
【0097】
以下の実施例は、可撓性紙デバイス上の3,6−ジ−2−ピリジル−1,2,4,5−テトラジンペーストから構成されたセンサの製作および測定を記載する。
【0098】
ペーストを、乳鉢および乳棒を用いてSWCNTおよびBMIM BFを粉砕することによって調製した。次いで、3,6−ジ−2−ピリジル−1,2,4,5−テトラジンを質量比が4:1(テトラジン:SWCNT)になるように添加し、要素を混合した。基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンを秤量紙上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が1kΩと4kΩとの間になるまで添加した。
【0099】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素にそれぞれ300秒間および600秒間、ならびに窒素ガスに交互に暴露した。図4は、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が10重量%であり、[Co(tpp)]ClOに対するSWCNTの質量比が4:1である)を使用して製作したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの300秒間および600秒間の曝露の開始を示す。感知応答は、300秒間の曝露で0.96%および600秒間の曝露で1.0%であり、ほとんど不可逆な応答であった。
(実施例3)
【0100】
以下の実施例は、紙デバイス上の[Co(tpp)]ClOペーストセンサの製作および測定を記載する。
【0101】
ペーストを、メノウの乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを10分間粉砕することによって調製した。以下の3種の5重量%のSWCNTを含むBMIM BFペーストを作製した:[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が1:1、5:1、および10:1。基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンを秤量紙上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が7kΩと30kΩとの間になるまで添加した。
【0102】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素、およびキャリアガス窒素に交代で3サイクル曝露した。
【0103】
図5は、紙上のSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が5重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が、それぞれ、10:1、5:1、および1:1である)を使用して作製したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の開始を示す。質量比が1:1のペーストについての平均感知応答は1.7%であった一方で、5:1および10:1のペーストは、それぞれ平均で0.24%および0.33%で低かった。
【0104】
この結果は、センサ材料が増量するにつれてセンサ応答が増大することを示唆している。しかし、その後に検出剤がさらに増量しても応答が比例的に増大しない閾値に到達することが予想され、これは、導電性炭素質ナノ材料粒子(カーボンナノチューブなど)の還元によってシステム全体の導電率が限界になるためである。
(実施例4)
【0105】
以下の実施例は、以下の3つのタイプのセンサの製作および測定を記載する:1)SWCNT−[Co(tpp)]ClO層、2)SWCNT−[Co(tpp)]ClO層上に積層したBMIM BF、および3)SWCNT−[Co(tpp)]ClOペースト。
【0106】
基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンをスライドガラス上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。
【0107】
SWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサを、SWCNTおよび[Co(tpp)]ClOを含む懸濁液をドロップキャストすることによって調製した。懸濁液を、[Co(tpp)]ClO([Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が10:1)および0.25mg/mL SWCNTを含むo−ジクロロベンゼンの1分間の超音波処理によって調製した。懸濁液を、各センサの抵抗が7〜10kΩになるまでドロップキャストした。懸濁液の各連続ドロップキャストの間に、溶媒が完全に除去されるまでデバイスを減圧乾燥させた。
【0108】
SWCNT−[Co(tpp)]ClO層上に積層されたBMIM BF層から構成されるセンサを、各センサの抵抗が2〜5kΩになるまでSWCNT−[Co(tpp)]ClO懸濁液をドロップキャストすることによって調製した。各ドロップキャストの間に、溶媒が完全に除去されるまでデバイスを減圧乾燥させた。10mg/mL BMIM BF溶液を含むメタノールを、SWCNT−[Co(tpp)]ClO層上にドロップキャスト(1μLドロップ)した。デバイスを減圧乾燥させて、メタノールを除去した。
【0109】
[Co(tpp)]ClOペーストセンサを、メノウの乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを20分間粉砕することによって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が7kΩと30kΩとの間になるまで添加した。
【0110】
さらに、純粋なSWCNTのセンサを、SWCNTを含むオルソ−ジクロロベンゼン懸濁液のドロップキャストによって製作した。懸濁液を、SWCNT(0.25mg/mL)を含むo−ジクロロベンゼンの1分間の超音波処理によって調製した。懸濁液を、各センサの抵抗が7〜10kΩになるまでドロップキャストした。懸濁液の各連続ドロップキャストの間に、溶媒が完全に除去されるまでデバイスを減圧乾燥させた。
【0111】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素、およびキャリアガス窒素に交互に3サイクル曝露した。図6は、SWCNTおよび([Co(tpp)]ClOの懸濁液、BMIM BFでコーティングしたSWCNTおよび([Co(tpp)]ClOの懸濁液、SWCNT、BMIM BF、および([Co(tpp)]ClOのペースト、ならびに純粋なSWCNTの懸濁液を使用して製作したセンサの40ppmエチレンに対する平均感知応答を示す。
【0112】
単層SWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサの平均感知応答は0.13%であった。BMIM BFコーティングしたSWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサの平均応答は1.3%であり、したがって、非コーティングSWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサと比較して10倍改善された。[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの平均応答は40ppmで2.5%であり、BMIM BFコーティングしたセンサと比較して2倍改善され、非コーティングSWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサと比較して20倍改善された。
【0113】
上で考察されるように、このシグナルの予想外の改善は、イオン液体ペースト中での検出剤およびカーボンナノチューブの分散の改善に起因する。出願人によって識別されたように、イオン液体がペースト中への分析種の拡散を妨害しないので、センサ材料としてのペーストによって生じる相対応答は、他の配置(イオン液体を用いない単純な検出剤とカーボンナノチューブとの組み合わせ、またはイオン液体が検出剤およびカーボンナノチューブ上をコーティングする配置など)より有意に強い。
【0114】
さらに、センサ材料としてペーストを使用したデバイスの応答の改善が動作寿命を延長すると認識される。センサは、その後に応答の強度が分析種を検出できなくなる閾値を下回る前の機能的に利用可能な期間がより長いので、この延長は予想されることである。
(実施例5)
【0115】
以下の実施例は、以下の3つのタイプのセンサの製作および4週間にわたる測定を記載する:1)SWCNT−[Co(tpp)]ClO層、2)SWCNT−[Co(tpp)]ClO層上に積層したBMIM BF、および3)[Co(tpp)]ClOペースト。
【0116】
基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンをスライドガラス上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。
【0117】
SWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサを、SWCNTおよび[Co(tpp)]ClOの懸濁液をドロップキャストすることによって調製した。懸濁液を、[Co(tpp)]ClO([Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が10:1)および0.25mg/mL SWCNTを含むo−ジクロロベンゼンの7分間の超音波処理によって調製した。懸濁液を、各センサの抵抗が7〜10kΩになるまでドロップキャストした。懸濁液の各連続ドロップキャストの間に、溶媒が完全に除去されるまでデバイスを減圧乾燥させた。
【0118】
SWCNT−[Co(tpp)]ClO層上に積層したBMIM BF層から構成されるセンサを、各センサの抵抗が2kΩと5kΩとの間になるまでSWCNT−[Co(tpp)]ClO懸濁液をドロップキャストすることによって調製した。各ドロップキャストの間に、溶媒が完全に除去されるまでデバイスを減圧乾燥させた。2mg/mL BMIM BF溶液を含むメタノールを、SWCNT−[Co(tpp)]ClO層上にドロップキャストした(1μLドロップ)。デバイスを減圧乾燥させて、メタノールを除去した。
【0119】
[Co(tpp)]ClOペーストのセンサを、メノウの乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを10分間粉砕することによって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が7kΩと30kΩとの間になるまで添加した。
【0120】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素、およびキャリアガス窒素に交代で3サイクル曝露した。4週間後、測定を繰返した。図7は、SWCNTおよび([Co(tpp)]ClOの懸濁液、BMIM BFでコーティングしたSWCNTおよび([Co(tpp)]ClOの懸濁液、ならびにSWCNT、BMIM BF、および([Co(tpp)]ClOのペーストを使用して製作したセンサの、センサ製作から4週間後の40ppmエチレンに対する初期応答に対する百分率を示す。
【0121】
この期間後の単層SWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサの平均感知応答は、初期応答の51.6%であった。BMIM BFコーティングしたSWCNT−[Co(tpp)]ClOセンサでは、4週間後に初期応答の8.6%であった。[Co(tpp)]ClOペーストのセンサでは、40ppmで初期応答の102.5%であった。
(実施例6)
【0122】
以下の実施例は、[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの製作および測定を記載する。
【0123】
ペーストを、メノウの乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを20分間粉砕することによって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンをスライドガラス上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が7kΩと30kΩとの間になるまで添加した。
【0124】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素、およびキャリアガス窒素に交代で3サイクル曝露した。図8は、SWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペースト(BMIM BF中のSWCNT含有量が1重量%であり、[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比が5:1である)を使用して作製したセンサの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの100秒間の開始を示す。センサの平均感知応答は4.5%であった。
(実施例7)
【0125】
以下の実施例は、[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの製作および測定を記載する。センサを、エチレン、酢酸エチル、エタノール、ヘキサン、クロロホルム、およびアセトニトリルに曝露した。
【0126】
ペーストを、メノウの乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを20分間粉砕することによって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。基板を、サーマルエバポレータ(Mill Lane Engineering,EV−2000)を使用して電極ギャップが1mmの金電極パターンをスライドガラス上に蒸着することによって作製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。さらなるペーストを、各センサについて電極間のセンサ材料の抵抗が7kΩと30kΩとの間になるまで添加した。
【0127】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素、およびキャリアガス窒素に交互に3サイクル曝露し、応答を、「材料と方法」に記載の方法を使用して測定した。センサのエチレンに対する平均感知応答は4.5%であった。
【0128】
他の分析種のガス流を、ガス発生器(Kin−Tek,491M Base Module)を使用して得た。センサを、分析種を含む窒素およびキャリアガス窒素に交互に3サイクル曝露した。図9は、純粋なSWCNTの懸濁液を使用して製作したセンサならびにSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOのペーストから製作したセンサの異なる分析種に対する平均感知応答を示す。酢酸エチル(200ppm)に対する平均感知応答は1.6%であった。ヘキサン(200ppm)およびクロロホルム(200ppm)に対する平均応答は、それぞれ、1.4%および1.8%であった。エタノール(200ppm)に対する平均応答は13.5%であった。100ppmアセトニトリルに対する平均応答は21.5%であった。
(実施例8)
【0129】
以下の実施例は、異なるアンモニア濃度で試験した[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの製作および測定を記載する。
【0130】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、「材料と方法」に記載のスクリーン印刷様技術を使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。厚さ0.05mmのペーストを適用した。
【0131】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、それぞれ、分析種、1ppm、2ppm、および5ppmのアンモニアを含む乾燥窒素に100秒間、および乾燥窒素のキャリアガスに交互に3サイクル曝露した。図10Aは、種々の分析種濃度での感知応答を示す。矢印は、アンモニアへの各100秒間の曝露の開始を示す。図10Bに示す平均感知応答は、1ppmアンモニアに対しては1.2%±0.1%、2ppmアンモニアに対しては3.8%±0.4、5ppmアンモニアに対しては7.1%±.0.7%である。
(実施例9)
【0132】
以下の実施例は、[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの製作および異なるカダベリン濃度での測定を記載する。
【0133】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、「材料と方法」に記載のスクリーン印刷様技術を使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。厚さ0.05mmのペーストを適用した。
【0134】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、それぞれ、分析種、2ppm、4ppm、および8ppmのカダベリンを含む8500ppmの加湿した空気に100秒間、ならびに8500ppmの加湿したキャリアガスに交互に3サイクル曝露した。図11Aは、種々の分析種濃度での感知応答を示す。矢印は、カダベリンへの各100秒間の曝露の開始を示す。
【0135】
図11Bは、文献によるアミン濃度に相関し得る感知応答の不可逆部分を示す(Liu,S.F.,Petty,A.R.,Sazama,G.T.and Swager,T.M Angew.Chem.Int.Ed.,2015,54,6554−6557)。2ppm、4ppm、および8ppmのカダベリンで、それぞれ、4.0%±1.0%、5.2%±1.2%、および9.5%±1.1%の感知応答が得られた。
(実施例10)
【0136】
以下の実施例は、80ppmエチレンで試験した異なるイミダゾリウムベースのイオン液体を使用したPdClペーストのセンサの製作および測定を記載する。使用したイオン液体は以下であった:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(エチルTFMS)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ブチルTFMS)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ヘキシルTFMS)。
【0137】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、イオン液体、およびPdClの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、イオン液体中のSWCNTが1重量%およびPdClのSWCNTに対する質量比5:1であった。試験したイオン液体は、BMIM BF、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ブチルTFMS)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(エチルTFMS)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ヘキシルTFMS)であった。コントロール感知材料を、ドロップキャスティングによって質量比が5:1のPdClおよびSWCNTを含むイソプロパノールの懸濁液から調製した。懸濁液を、5分間の超音波処理によって調製した。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、「材料と方法」に記載のスクリーン印刷様技術を使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。厚さ0.05mmのペーストを適用した。コントロールセンサを、電極間のコントロール感知材料のドロップキャスティングによって製作した。各連続ドロップキャストの間に、デバイスを風乾した。懸濁液を、各センサの抵抗が0.95kΩと1.5kΩとの間となるまでドロップキャストした。
【0138】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、80ppmエチレンを含む10,000ppmの加湿した窒素に500秒間、および10,000ppmの加湿した窒素のキャリアガスに1サイクル曝露した。図12Aは、種々のイオン液体を有するペーストの感知応答を示す。ラインは、エチレンへの500秒間の曝露の開始および終了を示す。図12Bに示したブチルTFMSの相対応答は0.17%±0.01%である。エチルTFMSの応答は0.28%±0.03%である。ヘキシルTFMSの応答は0.36%±0.005%である。これは、イオン液体の、そのアルキル側鎖が影響を受ける極性および粘性が感知性能に影響を及ぼすことを示唆している。ドロップキャストPdClセンサの応答は0.11%±0.06%である。図12Cは、ドロップキャストPdClのコントロールセンサおよびBMIM BFペーストのセンサの感知応答を示す。ドロップキャストコントロールセンサの感知応答が低いほどエラーが高くなることは、センサ材料ペーストを使用することがSWCNTおよび検出剤の混合物のドロップキャスティングなどの代替法より優れていることを示す。
(実施例11)
【0139】
実施例10と同様に、以下の実施例は、80ppmエチレンで試験した1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート(ブチルHFP)を使用したPdClペーストのセンサの製作および測定を記載する。
【0140】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、ブチルHFP、およびPdClの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、ブチルHFP中のSWCNTが1重量%およびPdClのSWCNTに対する質量比5:1であった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、「材料と方法」に記載のスクリーン印刷様技術を使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。厚さ0.05mmのペーストを適用した。
【0141】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、80ppmエチレンを含む10,000ppmの加湿した窒素に800秒間、および10,000ppmの加湿した窒素のキャリアガスに交互に1サイクル曝露した。図13は、ブチルHFPペーストの感知応答を示す。ラインは、エチレンへの800秒間の曝露の開始および終了を示す。ブチルHFPの相対応答は、−0.226%±0.01%であった。
(実施例12)
【0142】
実施例10と同様に、以下の実施例は、80ppmエチレンで試験した異なるイミダゾリウムベースのイオン液体を使用した[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの製作および測定を記載する。使用したイオン液体は以下であった:1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(エチルTFMS)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ブチルTFMS)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(ヘキシルTFMS)。
【0143】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、イオン液体、および[Co(tpp)]ClOの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、イオン液体中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。試験したイオン液体は、ブチルTFMS、エチルTFMS、およびヘキシルTFMSであった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、「材料と方法」に記載のスクリーン印刷様技術を使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。厚さ0.05mmのペーストを適用した。
【0144】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、80ppmエチレンを含む乾燥窒素に500秒間、および乾燥窒素のキャリアガスに交互に1サイクル曝露した。図14Aは、種々のイオン液体の感知応答を示す。ラインは、エチレンへの500秒間の曝露の開始および終了を示す。ブチルTFMSの相対応答は0.3%±0.1%であった。エチルTFMSの応答は1.0%±0.7%であった。ヘキシルTFMSの応答は0.20%±0.01%であった。3種のイオン液体ペーストの相対応答を、図14Bに示す。
(実施例13)
【0145】
以下の実施例は、製作過程中の異なるポイントでのエチレンで試験した[Co(tpp)]ClOペーストのセンサの製作および測定を記載する。
【0146】
ペーストを、メノウの乳鉢および乳棒を用いてSWCNT、BMIM BF、および[Co(tpp)]ClOを粉砕することによって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%および[Co(tpp)]ClOのSWCNTに対する質量比5:1であった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。ペーストを、粉砕の1、4、7、10、13、17、および20分後に適用した。電極間のセンサ材料の抵抗が各センサで7kΩと30kΩとの間になるまでペーストを添加した。
【0147】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む窒素に100秒間、およびキャリアガス窒素に交互に3サイクル曝露した。図15は、種々の粉砕時点の平均感知応答を示し、各時点の標準偏差も示す。さらなる混合によって感知応答が減少するが、粉砕時間を経るにつれて応答の標準偏差も減少する。
(実施例14)
【0148】
以下の実施例は、製作過程中の異なるポイントでのエチレンで試験したPdClペーストのセンサの製作および測定を記載する。
【0149】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、BMIM BF、およびPdClの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが0.25重量%およびPdClのSWCNTに対する質量比5:1であった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、金属スパチュラを使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。ペーストを、粉砕の1、3、5、7、および10分後に適用した。センサ材料を、各センサについて電極間の材料の抵抗が7kΩと20kΩとの間になるまで添加した。
【0150】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む加湿窒素(10,000ppm水)に100秒間、および加湿窒素のキャリアガスに交互に3サイクル曝露した。図16は、種々の粉砕時点の感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの各100秒間の曝露の開始を示す。感知応答は、粉砕が進むに連れて減少し:平均して粉砕の1分後に5.2%、3分後に4.7%、5分後に4.6%、7分後に1.1%、10分後に0.9%。
(実施例15)
【0151】
以下の実施例は、異なる厚さの感知材料を適用したPdClペーストのセンサの製作および測定を記載する。
【0152】
ペーストを、ボールミルを使用したSWCNT、BMIM BF、およびPdClの粉砕によって調製した。ペーストの組成は、BMIM BF中のSWCNTが1重量%およびPdClのSWCNTに対する質量比5:1であった。電極パターンを、シャドウマスクを使用し、10nmのクロム、次いで100nmの金を積層して作製した。センサを、「材料と方法」に記載のスクリーン印刷様技術を使用して電極間にペーストを配置することによって製作した。ペーストを、スクリーン印刷マスクの厚さを変化させることによって0.05、0.10、および0.15mmの厚さで適用した。
【0153】
デバイスの感知能を決定するために、センサの導電率の変化を、「材料と方法」に記載の方法を使用して分析種への曝露の際に監視した。センサを、分析種、40ppmエチレンを含む加湿窒素(10,000ppm水)に100秒間、および加湿窒素のキャリアガスに交互に3サイクル曝露した。図17は、異なる厚さでの感知応答を示す。矢印は、40ppmエチレンへの各100秒間の曝露の開始を示す。感知応答は、厚さが増加するにつれて、平均して、厚さ0.05mmでの3.0%から、厚さ0.10mmでの1.6%、厚さ0.15mmでの0.3%に減少する。
【0154】
本開示は、前述の例示的な実施形態で説明および例示されているが、本開示は例示のみを目的とし、本開示の精神および範囲を逸脱することなく本開示の実施の詳細の多数の変更形態を得ることができ、本開示は以下の特許請求の範囲のみによって制限されると理解される。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15
図16
図17
【国際調査報告】