【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の第1の態様によれば、
a)少なくとも1種のプロバイオティクス生物が接種された組成物を食品の表面の少なくとも一部分に適用するステップであって、前記組成物が完全に乳由来である基剤および/または本質的に乳に見出される成分を含む基剤を含むステップを特徴とするプロバイオティクス強化食品を製造する方法が提供される。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、プロバイオティクス強化食品において、
食品の少なくとも一部分が少なくとも1種のプロバイオティクス生物を含む組成物を含み、前記組成物が完全に乳由来である基剤および/または本質的に乳に見出される成分を含む基剤を含むことを特徴とするプロバイオティクス強化食品が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、腸管の機能異常もしくは障害、および/またはこれらに関連する状態の改善、処置または予防のためのプロバイオティクス強化食品の製造のための、完全に乳由来である組成物の使用が提供される。
【0033】
免疫の改善、抗アレルゲン剤としての作用、湿疹の治療、および/またはコレステロール低下の補助のための本明細書に記載のプロバイオティクス強化食品の製造のための完全に乳由来である組成物の使用。
【0034】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書に記載のプロバイオティクス強化食品を、それを必要とする人または他の動物に投与することによる、腸管機能異常もしくは障害および/またはこれらに関連する状態を処置、改善または予防する方法が提供される。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、免疫を改善する、抗アレルゲン剤として作用する、湿疹を治療する、および/またはコレステロール低下を補助するために、本明細書に記載のプロバイオティクス強化食品を、それを必要とする人または他の動物に投与することによる処置の方法が提供される。
【0036】
本発明の重要な利点は、約0.5を超える水分活性レベルを含み、商業的および治療的な生存細胞数(一食当たり7.0logCFUを超える)でプロバイオティクス微生物を有するパンなどの、プロバイオティクス強化食品を調製できることである。
【0037】
また、本発明は調製するのが容易であり、食品の味、色または外観についての全体的な知覚認知に悪影響を及ぼすことはない。
【0038】
有利には、本発明は乳由来の組成物のみに依存する。
【0039】
本発明のさらなる利点および好ましい特徴は後述する。
【0040】
定義および好適な実施形態
本明細書全体にわたり、基剤(組成物の基剤を参照するとき)という用語は、組成物中に存在するプロバイオティクス微生物(複数可)以外のすべての成分または物質、および必要に応じて、粉末状の組成物を液体に還元するために使用され得る水などの液体を意味すると解釈されるべきである。
【0041】
本明細書全体にわたり、乳という用語は、哺乳動物の乳腺から生成される液体を意味すると解釈されるべきである。本発明による乳由来の特徴は、任意の数の哺乳動物を起源とすることができるが、しかし最も商業的に適用できる哺乳動物の乳としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ、ラクダ、バッファローなどが挙げられる。
【0042】
本明細書全体にわたり、食品という用語は、体のために栄養補給を供給するために消費される任意の食用物質を意味すると解釈されるべきである。
【0043】
本明細書の残りの部分にわたり、簡単にするために、食品は、焼成パンと呼ぶことにする。しかし、本明細書に記載の発明概念は、他の種類の食品(焼成または非焼成のいずれか)、例えばミューズリーバー、朝食用シリアル、ビスケット、マフィン、ピザ生地、キャンディーバー、および特に、水分活性が0.5より高い食品に適用されることができる。本発明は、穀粉製品に特定の用途を有する。本出願者は、本発明概念が過敏性腸症候群(IBS)を著しく軽減すと考えられている低FODMAP食(FODMAPは、「発酵性オリゴ糖(フルクタンとガラクトオリゴ糖)二糖類(ラクトース)単糖類(フルクトース)およびポリオール(ソルビトール、マンニトール、キシリトールとマルチトール)」を表す)を摂取している人に対して特に商業的応用を有し得ることも想定している。しかし、FODMAP食の不利な点は、繊維およびプレバイオティクスがしばしば少ないことである。これは、腸内微生物叢に悪影響を与えることもある。その代わりに、本発明によるプロバイオティクス強化低FODMAPパンは、健康な腸内微生物叢を維持するためにプロバイオティクスも提供し得ることから、低FODMAP食を使用するより特に有用であり得る。
【0044】
本明細書全体にわたり、プロバイオティクス強化食品という用語は、本発明に従ってその表面の一部分にプロバイオティクス組成物を含むように適応されたパンなどの任意の食品を意味すると解釈されるべきである。
【0045】
本明細書全体にわたり、表面という用語は、焼成の結果形成される外皮としても知られているパンの外側部分を意味すると解釈されるべきである。外皮は、焼成パンの底部、両面および上部を含む、パンの表面全体を形成する。
【0046】
本明細書全体にわたり、薄層という用語は、パンの表面の少なくとも一部分に(例えば、組成物を噴霧する、もしくは広げる、もしくは塗りつけることによって)適用されるコーティング、膜、薄膜または皮を意味すると解釈されるべきである。
【0047】
本明細書全体にわたり、実質的に乾燥した(または乾燥している)という用語は、パンの表面に水分が適用された後、その薄層から水分の大半、大体、またはすべてが除去されていることを意味すると解釈されるべきである。
【0048】
したがって、乾燥、乾燥している、または実質的に乾燥しているという用語は、薄層内に一部の水分が保持されることを許容するが、本質的には水分は自由に利用できないと認識すべきである。薄層に関して乾燥または乾燥しているという用語は、非改良食品と比較して、類似の水分含量および/または水分活性(a
w)を有するプロバイオティクス強化食品をもたらすとみなされるべきである。
【0049】
水分活性は、比率、すなわち、物質中の水の部分蒸気圧を標準状態の水の部分蒸気圧で割った比率として定義される。食品科学において、標準状態は、典型的に、同じ温度での純水の部分蒸気圧として定義される。純水の水分活性は1である。
【0050】
本明細書全体にわたり、および国連の食糧農業機関とWHOにより定義されているように、プロバイオティクスという用語は、適当量で経口投与されると、ホストの健康に利益をもたらすことができる生きた微生物(細菌および/または酵母)のコレクションを意味すると解釈されるべきである。このコレクションは、微生物の単一種または微生物の複数種の組み合わせのいずれかを包含すると解釈されるべきである。
【0051】
一般に、特定の微生物は、いくつかの異なる基準を満たすことが可能である場合、プロバイオティックとみなされることができる。これらには、生理的要求と生産需要を通しての妥当な生存、ならびにホストに有益な効果を発揮する能力が挙げられる(B.O‘Grady,2005)。
【0052】
現在、プロバイオティックであることが知られている種は多数ある。これらには、ラクトバチルスおよびビフィズス菌が含まれ、これらは商業的重要性が高い。したがって、これらはプロバイティクス生物として食品産業で広く使用されている。ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株、ラクトバチルス・ラムノーサス、およびラクトバチルス・ロイテリは普及している選択肢であり、長い適用の歴史を有し、それに続いて一部のビフィズス菌種、および医薬用途で主に使用されている数種の非乳酸菌がある(Holzapfelら,1998)。プロバイオティクスは、凍結乾燥形態で、または発酵食品としてのいずれかで市販されている。
【0053】
従来、科学文献は、免疫調節および腸粘膜バリアの強度の向上に向けてプロバイオティクス微生物の1種または異なる株の組み合わせのいずれかからの健康上の利益に重点を置いてきた。これらの効果は、腸内微生物叢の改変、病原体接着または活性化を防止するのに役立つ腸粘膜との接着能、食品タンパクおよび細菌酵素の能力の改変、ならびに腸粘膜透過性に影響を与えることによって達成される(Holzapfelら,1998)。
【0054】
2000年に、KailasapathyとChinによるレビューによって、プロバイオティクスが免疫、コレステロールの低下、ラクトース耐性の改善において、およびさらに一部の癌の予防において有益な役割を果たすことも報告されていることがわかった。また、プロバイオティクスは、消化機能および呼吸機能、ならびに小児および他の高リスク集団において感染症の予防に関連している(出典元WHO,2001)。これに基づき、本発明は、そのような文献に記載の広範な病態のいずれか1種またはその組み合わせを治療するため、および/または健康全般を単に向上させるための治療上の利益も有すると考えられる。
【0055】
本明細書全体にわたり、接種する、接種されている、および接種という用語は、少なくとも1種の細菌の菌株を組成物に付加する工程、および次いで最も典型的には発酵工程によってプロバイオティクス菌株を7.0logCFU mL
−1を上回る、より理想的には9.0logCFU mL
−1を上回る商業的および治療上のレベルまで増殖させることを意味すると解釈されるべきである。本発明に従う治療効果をもたらすために、7.0logCFU mL−1を達成する前発酵の工程は本発明の一部として行う必要はなく、および代わりに第三者によって供給され、次いで十分な量/濃度で組成物に付加されてもよいと認識されるべきである。しかし、本明細書に概要を述べた理由から、施設内で前発酵のステップを行うと、細菌の増殖期を効果的に調節することができ、便利であり、および特にパンの表面に適用した後、経時的な細胞生存率の向上を示すことから、施設内で行うことが好ましい。例えば、約16時間の前発酵ステップは終夜行うことができ、および翌朝に発酵組成物を新たにパンに適用することができる。
【0056】
プロバイオティクス強化食品を調製する方法:
プロバイオティクス強化食品を調製する方法は、
a)少なくとも1種のプロバイオティクス生物が接種された組成物を食品の表面の少なくとも一部分に適用するステップであって、前記組成物が完全に乳由来である基剤および/または本質的に乳に見出される成分を含有する基剤を含むステップ、を特徴とする。
【0057】
好ましくは、ステップa)は、食品の調理後に行われる。しかし、当然のことながら、本発明は調理済み食品または焼成食品に必ずしも限定されず、したがって、非調理済み食品または非焼成食品に適用可能であり得る。
【0058】
従来技術の方法と比較して本発明の重要な有利な相違点は、以下で論じるように、薄層として組成物を食品に適用した後、単に適度に乾燥させるステップのみを必要とすることである。
【0059】
パンの場合、プロバイオティクス細胞生存率の減少を含む多くの不利な点を有する従来技術とは異なり、プロバイオティックは本質的にパン内に適用されてから焼成するのではない。したがって、本発明では、焼成工程の間に使用される熱安定性のあるプロバイオティクスを使用する必要がなく、および/または最適に焼成されたパンを提供するために必要な焼成条件の変更も必要がない。
【0060】
従来技術のペーストアプローチと比較して、組成物が薄層として適用されると、早く乾燥して、パンの表面に接着させることができ、さらに達成可能な細胞生存率を予想外に保持できるという発見により、本発明の有利なステップは達成可能である。
【0061】
かなり保存した後でも、および従来技術のシリアル系のプロバイオティクス組成物よりもはるかに高い水分活性レベルを保持するときも、細胞生存率は持続する。また、通常の非プロバイオティクスパンに見られる水分活性変化と比較して、その変化が極めて少なく、パンの種類にもよるが、一般的なa
w値は0.5から0.9の間である。前述のように、大部分のパンの内側/外皮の水分活性は、0.7から0.9の間の範囲である。バンズ/チャバタで本出願者が試験した試作試料から、約0.7から0.8の水分活性を確認した。
【0062】
さらに、従来技術で見られるペースト方法とは異なり、得られた食品は、実施例で例示した非プロバイオティック・パンと実質的に同じ味と外観を保持している。これは、実際、ペーストでは可能ではない。
【0063】
最終的に、本方法は非常に効率的であり、標準的な焼成設備およびキッチン設備のみを必要とする。
【0064】
好ましくは、ステップa)は、200μLから2mLのプロバイオティクス培養物をパンに適用することを含む。
【0065】
パンに適用する量は主にパンの大きさによることを認識すべきである。当業者は、その意図が一食当たりで生存細胞の治療有効量または用量、すなわち一食当たり約7.0logCFUを提供することであることを認識するであろう。典型的なパンの1食分の大きさは、約10から100グラムであり、さらにおそらく30から50グラムであろう。したがって、一食分のパンの場合、適用される量は、一般的に大きなローフより小さい。大きなローフの場合、組成物が表面(例えば上部表面)に確実に均一に広げられ、パンを一切れに切った場合、各一人分に適当量のプロバイオティクスが確実に供給され得ることがより重要となり得る。
【0066】
より好ましくは、ステップa)は、500μLから1mLのプロバイオティクス培養物をパンに適用することを含む。
【0067】
予備調査において、パンの水分含量が不必要に増加すると、パンの触感および他の官能特性を損なうことなく元の水分含量に近いパンになるように乾燥させる必要があるため、パンの水分含量の不必要な増加を防止するために、本発明者らはこれらの量が特に有利であることを発見した。
【0068】
また、組成物をより多く添加する場合(または組成物の粘度がペーストの様に高い場合)、より長い/より厳しい乾燥条件が必要となろう。より厳しい乾燥は、プロバイオティクスの生存率の大きな減少をもたらし得る。
【0069】
これらの技術的なハードルと相まって、本発明者らは、適当量のプロバイオティックがパンの表面(好ましくは、少なくともパンの上部表面全体にわたり)の薄層中に存在し、なおも適切な細胞生存率と用量を供給することを確実に行う必要があった。
【0070】
好ましくは、ステップa)は、確実に薄層の厚さを0.1mm未満にすることを含む。
【0071】
より好ましくは、ステップa)は、確実に薄層の厚さを0.05mm未満にすることを含む。
【0072】
上述のように、本発明者らは、薄層が0.1mm未満、またはより好ましくは0.05mm未満であることが、乾燥工程の効率を向上させるために、生存細胞数の減少を回避しながら水の水分問題を防止するために、およびまた組成物が確実にパンの表面に接着するのを助けるために、およびプロバイオティクスパンの味と外観の変化を防止するのを助けるために有利であることを特定した。
【0073】
好ましくは、ステップa)は、食品の側面全体にわたり薄層を広げることを含む。
【0074】
例えば、側面は焼成パンの上部の一部分であり得る。他の例において、焼成パンのいくつかの他の表面(例えば、焼成パンの長手側面、端部分および底部)と共に上部部分にわたり薄層を適用することに適用できる。卵型のロールの別の例において、薄層はロール外面全体に適用できる。これは、多くのプロバイオティック用量が必要とされるとき、またはプロバイオティックの保存可能期間が短い場合、有用になり得る。
【0075】
好ましくは、ステップa)は、食品の表面に組成物を噴霧することを含む。
【0076】
噴霧は、迅速な適用を可能にして、かつ噴霧工程の結果として薄層をもたらすことに役立つことから有利である。自動化も、パンの表面全体ににわたり均一な密度を可能にするために有用であり得る。
【0077】
一選択肢として、ステップa)はディスペンサ(例えばピペット)を用いて行われてもよく、次いで組成物をスパチュラまたはブラシを用いて薄層として広げてもよい。
【0078】
好ましくは、方法は、組成物が食品の表面に適用された後に、組成物を乾燥させることも含む。
【0079】
結果を向上させるために、乾燥の条件は、製品の官能効果に影響を与えないようにすること、乾燥工程における細菌の最適な生存、ならびに細菌の生存の向上を含む、いくつかの要因を考慮する必要がある。
【0080】
好ましくは、方法は、薄層が0.5から0.9の間の水分活性(a
w)を含むまで、パンを乾燥させることを含む、さらなるステップb)を含む。この範囲は、パンタイプの製品の代表的な水分活性を表すことから選択される。この目的は、パンの知覚認知のいかなる変化も防ぐのに役立つように、組成物の水分活性をパンの水分活性にマッチさせることにある。
【0081】
前述のように、本発明の重要な利点および際だった特徴の1つは、食品の高水分活性レベルで、例えばパンの場合、約0.7から0.9で組成物の安定性とプロバイオティクス生存率を保持する能力である。これは、全く異なる組成物基剤を有し、および約0.2の極めて低い水分活性でシリアルに適用される国際公開第2002/065840号の焦点と極めて異なる。しかし、組成物が0.5未満の水分活性レベルで食品に適用可能であり得ることを認識すべきである。しかし、約0.5を超える高い水分活性で食品に作用できることは、特に有益でかつ商業上重要であると考えられる。
【0082】
好ましくは、ステップb)は組成物の薄層が約0.5から0.8の間の水分活性(a
w)レベルを含むまで、組成物を乾燥させることを含む。
【0083】
前述のように、好ましい目的は、組成物の薄層を適用する前に、パンの元の水分活性(a
w)とほぼ一致させることにある。
【0084】
好ましくは、ステップb)は70℃未満の温度で薄層を乾燥させることを含む。
【0085】
70℃を超える高い乾燥温度は、生きたプロバイオティクス細胞を破壊し得るだけでなく、パンの触感を崩れやすい外皮を有するよりクリスピーなものへと変化させ得る。
【0086】
より好ましくは、ステップb)は30℃から70℃の間の温度で薄層を乾燥させることを含む。
【0087】
乾燥ステップは30℃より下で行うこともできるが、予備試験から、これは製品品質に悪影響を与えることもあり、所要乾燥時間が不必要に長くなることが示唆されている。
【0088】
最も好ましくは、ステップb)は50℃から60℃の間の温度で薄層を乾燥させることを含む。
【0089】
これらの好ましい乾燥温度は、パンを焼成するために用いられる温度(一般的には約180℃)とはかなり異なる。
【0090】
好ましくは、ステップb)は10分から30分の間で行われる。
【0091】
乾燥時間は、温度、空気の流れ、湿度、組成物の適用方法、パンの形状等を含む多数の要因に依存し得る。条件および乾燥時間は大きく変更され得るが、しかしその意図はパンの水分活性を組成物が適用される前の元の水分活性近くに戻すことであることを認識すべきである。また、乾燥ステップは、確実に組成物をパンに効果的に固着させるのに十分でなければならない。50℃から60℃の間の温度で、10分から30分の間、特に15分から20分の間の乾燥時間が作業効率と製品品質に理想的であることがわかった。
【0092】
最も好ましくは、ステップb)は、15分から20分の間で行われる。
【0093】
本発明者らは、乾燥ステップb)を行うための好適で便利な機械が強制空気対流式であると考える。
【0094】
ステップb)を行うための他の選択肢としては、熱風トンネルを通過する連続コンベヤーベルトの使用が挙げられる。乾燥ステップが単純に受動蒸発によって、例えば、室温条件下で約24時間の間、行われることもできる。しかし、これの不利な点は、この間、微生物が増殖し続けて、細胞生存率が減少する可能性および、または食品の味に有害な変化をもたらし得ることを含み得る。
【0095】
次いで、ステップb)の後、食品は通常のパンの条件下(例えば、25℃で最高5日間)で、プロバイオティクス培養物の細胞生存率が実質的に何ら減少することなく、保存され得る。これを、実施例で例示する。得られたプロバイオティクス強化食品を冷蔵または冷凍することもできる。そのような場合、保存可能期間が延長され得る。
【0096】
本発明者らは、本発明が特にプロバイオティクス強化食品の強化に向けて適用可能であり、および有利であると予測する。しかし、他の機能性成分、例えばパンの表面に適用されるビタミンによって食品を強化するために同様の方法で本発明が利用され得ることも理解すべきである。例えば、ビタミンCなどの一部のビタミンは、熱に敏感である。
【0097】
また、本発明は、プロバイオティクスとビタミンなどの2種以上の異なる機能性成分の組み合わせにとって有用であり得る。
【0098】
明らかに、本発明は、プロバイオティクスのように、機能性成分(複数可)が熱に敏感である問題に取り組むために特に魅力的である。
【0099】
本製造方法で用いられる組成物の好ましい特徴:
好ましくは、組成物は7.0logCFU mL
−1を超える生存細胞数を有する。
【0100】
組成物は、理想的には、一食当たり少なくとも7.0logCFU、より好ましくは少なくとも9.0logCFUを含む量で適用すべきであると認識すべきである。これは、FAO/WHO(2003)、発酵乳に関する規格CODEX STAN243、を反映し、この規格は、プロバイオティクス培養物を含む任意の食品に関して、製品は、所望の健康効果をもたらすためには1グラム当たり少なくとも10
6CFUの細胞生存率を含む必要があるというガイダンスを提供している。
【0101】
より好ましくは、組成物は9.0logCFU mL
−1を超える生存細胞数を有する。
【0102】
プロバイオティクス培養物中に9.0logCFUmL
−1を超える高い生存細胞数を有する利点は、プロバイオティクス強化食品の乾燥条件および/または保存の結果として、生存細胞がわずかに減少するものの、それでも7.0logCFUmL
−1の許容可能な生存細胞数を超えて維持できることである。しかし、本明細書に記述し、実施例に示すように、食品上のプロバイオティクスが、細胞生存率の減少が極めて最小で、安定した状態をいかに良く保っていることがわかり本発明者らは非常に驚いた。
【0103】
好ましくは、組成物中のプロバイオティクス微生物(複数可)は、乳酸菌、非乳酸菌および非病原性酵母またはその組み合わせからなる群から選択される。本質的に、消費しても安全であり、腸内でプロバイオティクスの治療有効性を示す(または示すと思われる)任意のプロバイオティクス微生物を用いることができる。良好な保存可能期間を有する微生物が好ましい。
【0104】
より好ましくは、組成物中のプロバイオティクス微生物は、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ビフィダス(ビフィズス菌)、ラクトバチルス・プランタルム、ストレプトコッカス・サーモフィルスおよびその組み合わせからなる群から選択される。
【0105】
これらの微生物は食品産業において定期的に使用されており、したがって、製造業者および消費者の視点から商業的に許容されている。Yakult(商標)は細菌ラクトバチルス・カセイシロタを用いているプロバイオティクス製品の一例である。これは、単一のプロバイオティック株を有する製品の代表である。Activate(商標)は、健康上の利益が証明されている、Bifio−Defenis(商標)として知られている独自の単一のビフィズス菌の別の例である。ラクトバチルス・プランタルムは、プロバイオティクス微生物であり、特に西欧諸国で多く見られる過敏性腸症候群を有する人々の腸の健康を目的とした治療効果に良好に関連している。
【0106】
組成物は、単一プロバイオティック株のみ、あるいは複数のプロバイオティック株の組み合わせを含み得る。
【0107】
単一株を用いる商業的な利点は、プロバイオティック強化パンとして最終製品を主張できることである。それでも、複数のプロバイオティック株の組み合わせは、より広範な治療効果または相乗治療効果を腸にもたらすために有用であり得る。
【0108】
組成物は、乳由来の基剤を含む。基剤は、乳由来のものまたは基剤に付加してもよいもののいずれかであるが、本質的に乳に見られる多くの賦形剤からできている。
【0109】
組成物の基剤は、
a)必要な場合、好ましいCFUレベルを超えるまで、および初期増殖相のまさに終了時に有利に微生物を発酵させる増殖培地として作用することができ、
b)食品の表面に薄層として容易に広げて適用することを可能にする有利に低い粘度を提供することができ、
c)食品の表面への効率的で効果的な接着を可能にすることができ、および
d)食品に適用した後、商業的に有用な期間の間、プロバイオティクスの生存数を保持することができることが好ましい。例えば、パンの予備試験において、組成物は25℃で5日の保存期間(パンの保存安定性に係る標準試験期間)にわたり最適なCFUを保持した。Yakult(登録商標)およびActivate(登録商標)をパンの表面に適用すると、パンの表面に塗布する直前に組成物を前発酵した試験群と比較して、予備試験の結果は悪かった(細胞生存率の減少が早かった)。
【0110】
組成物の基剤として乳由来の成分(複数可)を用いることの予想外の利点は、本明細書でさらに深く述べることにする。しかし、最も重要な商業的焦点の一つは、プロバイオティクスのために必要な望ましいCFU、安定性、食品への効率的で効果的な適用を達成することであり、および従来技術でかなり見られたような、例えば国際公開第2002/065840号に記載のようないずれの非乳由来の成分に頼る必要もなく、有益な知覚認知を保持することである。
【0111】
好ましくは、組成物の基剤は、ある量の乳、乳固形分(複数可)または還元乳(好ましくは脱脂乳)を含む。
【0112】
乳由来のこれらの成分が、本発明の方法を実行して有益な結果をもたらすことができる組成物の基剤を提供するのに十分であることがわかったのは予想外であった。
【0113】
例えば、組成物は約12%の還元脱脂乳を含み得る。
【0114】
好ましくは、組成物の基剤は5%未満の脂肪を含む。
【0115】
より好ましくは、組成物の基剤は実質的に脂肪を含まない。
【0116】
これらの組成物の場合、脂肪は必要とされなかった。これは、粘度を上げ、および微生物の増殖を阻止し、かつ保持するためにペーストに高い含有量の脂肪を用いる、ペーストについて記述する従来技術と極めて異なる。
【0117】
好ましくは、組成物中の基剤は凝固剤を含む。この場合、凝固剤は、培地中で発酵によって生じる乳酸であり得る。
【0118】
また、驚くべきことに、本発明者らは、凝乳、乳タンパクまたは他の乳成分が、組成物が食品の表面に固着するのを補助する際に重要な利点を提供することがわかった。
【0119】
また、凝固は微生物の発酵工程(細胞数を急増させるために初期のステップとしてこの工程が必要とされる場合)に過度に有益な影響を及ぼすことはなく、組成物の粘度および/または展延性に過度に影響を及ぼすことはない。
【0120】
多種多様な成分を用いて、この少なくとも部分的な凝固効果を達成することができ、および当業者はこれを理解するだろう。
【0121】
好ましくは、少なくとも乳を部分的に凝固するように構成される成分は、乳酸である。乳酸を使用する利点は、それが乳由来である化合物であることである。これは、合成賦形剤または外来的に供給された(すなわち非乳ベースの)賦形剤に頼る必要がなく、本発明の結果をもたらすために、主に乳ベースの成分を用いることによって認められる利点と合致している。言い換えれば、それは天然成分を使用して生成されるという商業的に有益な効果を保持し、健康食品を提供することにほぼ合致している。
【0122】
好ましくは、組成物の基剤は、少なくとも1種の糖を含む。
【0123】
糖の存在は、以下に述べる多くの有益な効果を達成するために極めて有用であることが判明したのは驚くべきことであった。
−組成物が前発酵工程で使用されると、発酵工程でプロバイオティクス数を増加させるのを顕著に助ける、
−組成物がパンの表面に接着するのを助ける、および/または
−パンの表面に適用される前後の組成物の良好なプロバイオティクス生存率を保持するのを助ける。
【0124】
好ましくは、糖は乳源から本質的に供給される。
【0125】
これは、完全に乳由来である、または本質的に乳に見出される成分のみを基剤に含んでいる組成物を維持するという本出願者の最も重要な商業的焦点に合致する。
【0126】
好ましくは、糖はラクトース、グルコースおよび/またはガラクトースから選択される。
【0127】
有利には、乳にはこれらの種類の糖が含まれている。ラクトースは、牛乳カロリー値の約40%、および乳含有量の約5%体積重量%を占める。ラクトースは、グルコースとガラクトースの2種の単糖でできている二糖類であり、したがってこのような一次糖のいずれか一つまたは両方を本発明で用いてもよい。乳由来である糖を扱う商業目的を自ら課したことで、本出願者は、前発酵、効果的な接着特性、および優れたプロバイオティクス生存率の保持を可能にする高機能組成物を提供できることは驚くべきことであった。
【0128】
組成物の基剤に追加量の糖が補充され得ることを認識すべきである。技術的には、組成物に補充するために任意の食品等級の糖を用いることができるが、本出願者の商業的焦点に合致させておくために、任意の補充糖は乳由来であるもの、または少なくとも本質的に乳に見出されるものであることが必要である。例えば、乳中に天然で見出される、または乳から得られる食品等級の糖(すなわち、例えばラクトース、グルコースまたはガラクトース)を用いることができる。これらの添加糖を、乳から分離する、抽出する、または得る必要はない。例えば、植物源から得られるグルコースが使用され得る。
【0129】
最も好ましくは、糖はラクトースである。
【0130】
予備試験において、4%の乳由来ラクトースまたはグルコースを補充した8%の還元脱脂乳を含む組成物が24時間の保存後(および開始細胞数が一食当たり約9.25logCFUであったときパンに適用後に)、9.0logCFU mL
−1を保持していたことを本発明者らは特定した。驚くべきことに、ラクトースは、細胞生存率の保持に関してグルコースよりわずかに良好な成績を示した。これを12%の還元脱脂乳を含む組成物と比較したところ、12%還元脱脂乳を含む組成物では24時間の保存後、8.7logCFU mL
−1へのより実質的な減少を確認した。ラクトースが最も容易に入手可能な乳ベースの糖を表すという事実は、ラクトースが商業的に実現可能な選択肢になり得ること、ならびに製品および方法の商業焦点と合致することを意味する。ラクトースを含まない、またはラクトースを減少させた基剤の組成物の場合、ラクトースをグルコースと置換することが可能である。
【0131】
好ましくは、組成物の基剤は、2体積重量%から20体積重量%の間の全糖、またはより好ましくは3体積重量%から10体積重量%の間の全糖を含む。
【0132】
還元脱脂乳は、約3体積重量%の糖(脱脂粉乳を10倍希釈する状況で)を自然に含む。単体の還元脱脂乳(本質的にラクトースを主に含む)は有益な結果を達成するが、追加量の糖を含む(例えば4〜10体積重量%を追加した糖)ように組成物にさらに補充すると、細胞生存数に関して実施例で示したように結果を向上させることを本出願者は特定した。
【0133】
したがって、一実施形態において、組成物は還元乳固形分、および強化ラクトースである。この組成物は、望ましい結果、特に細胞生存率を達成するために特に効果的であるこが判明した。組成物は完全に乳由来であることが有利である。
【0134】
好ましくは、組成物は4cP(センチポアズ)未満の粘度を有する。
【0135】
好ましい粘度は、組成物がパンの表面に薄層として適用されるのに役立つ。例えば、粘度が低いとき、組成物はスプレーで適用されてもよく、あるいはピペットで採取した後、スパチュラなどのスプレッダーで容易に広げることができる。
【0136】
好ましくは、組成物は1cPから3cPの間の粘度を有する。
【0137】
前述の組成物のこの好ましい粘度は、以下に詳細に述べるように、組成物を食品上で容易に広げて、乾燥させるために役立つことから、乳と類似である。
【0138】
この好ましい粘度は、本発明と明らかに異なるアプローチを代表するペーストとさらに差別化することに役立つ。従来技術のペースト状の組成物は、食品で用いられるトッピング/詰め物の細胞増殖および生存率を調節するために高粘度に依存していた。これは、味および外観に関して通常の製品と実質的に違わないプロバイオティクス強化パンを提供する観点から、本発明の重要な目的に取り組むことにならない。ペースト状のトッピング/詰め物は、本発明とは別のものを教示している。
【0139】
また、これは、パン上で薄層をより効率的に乾燥させ、それによって、薄層が適用される前の元のパンの水分含量のレベルに戻すように水分含量を減少させることに役立つ。環境温度で少なくとも5日間安定に保つレベルでいずれのパンの水分含量および/または水分活性を維持することは、標準的な業界の慣習であるので、本発明の工程も、元のパンにできるだけ近づいた乾燥後水分含量を維持することを目標とする。予想外に、本発明者らは、適度の乾燥工程後の細胞生存率が商業的におよび治療上許容可能なレベルで保持されることができることを見出した。また、予想外に、本発明者らは、適度の乾燥工程後に細胞生存率が商業的におよび治療上許容可能なレベルで保持されることができることを見出した。
【0140】
さらに、組成物を(低粘度で促進された)薄層として適用できることは、組成物がパン上で一旦乾燥すると、実質的には透明および/または見えなくなることに役立つ。これは、通常のパンと比較して、プロバイオティクス強化パンの味、触感または外観に悪影響を与えることを防ぐのにも役立たつ。
【0141】
前発酵:
プロバイオティクス微生物を組成物中で前発酵することができ、または7.0log mL
−1を超える、もしくはより好ましくは9.0log mL
−1を超えるCFUを達成するために、適切なレベルで付加することができることを認識すべきである。
【0142】
したがって、そのような場合、「前発酵されている」という用語の使用は、別のステップにおいて、例えば、濃縮細菌試料を供給する第三者によって、または単なる別のステップとして食品製造業者によって行われこともできる。
【0143】
ともかく、組成物の最終結果は、組成物に加えられる細菌の量および濃度が適切な治療レベルのプロバイオティックス(すなわち7.0logCFU mL
−1を超える)を提供するために十分であることが必要である。
【0144】
例えば、生きた細胞の供給源として凍結乾燥、冷凍または他の形態の濃縮細菌を担持材料に加えてもよい。
【0145】
あるいは、プロバイオティクス培養組成物を調製する方法は、7.0logCFU mL
−1を超える所望の細胞数を達成するために組成物の基剤中で微生物を前発酵させることを含む。
【0146】
前述のように、組成物の利点は、組成物の基剤が微生物の発酵工程を可能にする増殖培地として作用することもできることである。したがって、製造の便宜上、発酵ステップからの組成物をパンの表面に適用するための新たな組成物に適合させる必要はない。
【0147】
組成物の基剤は典型的に、安全性および調節の目的で、使用前に滅菌される。例えば、滅菌は約90℃で約15分間の加熱を含み得る。
【0148】
好ましくは、プロバイオティクス微生物の種菌(すなわちスターター)は、滅菌温度から十分に冷ましてから、組成物の基剤に添加される。本発明者らは、0.05重量%の接種が適当であり得ると考える。
【0149】
好ましくは、この方法は初期定常増殖期の間、組成物の基剤をインキュベートすることを含む。
【0150】
例えば、ラクトバチルス・カゼイ431すなわちLC431の場合、適切な細胞数を得るためにインキュベーションは37℃で16時間行われ得る。
【0151】
好ましくは、プロバイオティクス培養物が7logCFU mL
−1を超える生存細胞数を有するまで、組成物の基剤をインキィベートすることを含む。
【0152】
より好ましくは、プロバイオティクス培養物が9.0logCFU mL
−1を超える生存細胞数を有するまで、組成物の基剤をインキィベートすることを含む。
【0153】
これらの生細胞数の利点は、前述している。
【0154】
好ましくは、方法は、展延可能な/噴霧可能な組成物を生成するために、得られた培地(一般的にカード)を均質化するまたは撹拌することを含む。
【0155】
前述のカード培地のpHは、ラクトバチルス・カゼイ431を用いた16時間の試験インキュベーション後、4.45として記録された。このpHは、得られたプロバイオティクスの細胞生存率に負の影響を与えることはなかった。
【0156】
本発明の利点の概要としては、以下が挙げられるが、このうちの1つまたは複数に限定されるものではない。
−組成物の基剤が乳由来であるという単純性は、供給、製造および使用することが容易であることを考慮すると、有益であり、一般に良好に受け入れられるであろう。
−乳由来である基剤は、微生物の前発酵を可能にし、パンの表面への適用および/または展延性を補助するため、パンの表面に組成物を接着させるのを助けるために、組成物の粘度を望ましい範囲内に保持するのを助け、ならびにプロバイオティクスの生存率を商業的に有用な期間良好に保持するのを助ける;
−パンなどの食品の高水分活性レベルで、最適なプロバイオティクス生存率(CFU数)を保持することができる;
−商業的におよび治療的な生存細胞数(7.0logCFU mL
−1を超える)のプロバイオティクスを強化したパンなどの食品を調製することができる;
−25℃で標準的な5日間(通常のパンの保存可能期間)の試験の後、生きたプロバイオティクス細胞の安定性は良好である;
−不利なペースト(味および外観に影響を及ぼす)の使用、または焼成前のパンに全体的に適用する(最終的に細胞生存度を大幅に減少させる)必要がない;
−薄層として適用することで、極めて効率的に乾燥させることができる;これは、水分含量および/または水分活性が大きく変わらない生成物を得るために重要である;
−専門の機器または高温耐性を有するプロバイオティック株を必要としない。
−通常の対照パンと比較(味、触感または外観)して、プロバイオティクス強化パンの全体的な知覚認知に実質的な悪影響を及ぼすことはない、および/または;
−パンの保存安定性に影響を与えない。