特表2017-522077(P2017-522077A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 2017522077-薬剤送達装置によって作動する記録装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-522077(P2017-522077A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】薬剤送達装置によって作動する記録装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/172 20060101AFI20170714BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20170714BHJP
   A61M 5/31 20060101ALI20170714BHJP
   G06Q 50/24 20120101ALI20170714BHJP
【FI】
   A61M5/172
   A61M5/315 550G
   A61M5/315 550X
   A61M5/31 520
   G06Q50/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-571208(P2016-571208)
(86)(22)【出願日】2015年6月4日
(85)【翻訳文提出日】2017年1月27日
(86)【国際出願番号】EP2015062498
(87)【国際公開番号】WO2015185686
(87)【国際公開日】20151210
(31)【優先権主張番号】14171455.0
(32)【優先日】2014年6月6日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン, イェンス クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーセル, ニコライ フログナー
(72)【発明者】
【氏名】バガ, クラウス
【テーマコード(参考)】
4C066
5L099
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066GG20
4C066QQ42
4C066QQ52
4C066QQ54
4C066QQ72
4C066QQ76
4C066QQ82
5L099AA21
(57)【要約】
ペン装置のためのアドオン型用量記録装置は、センサが作動している時、及びディスプレイがアクティブである時に、エネルギーを消費する。センサシステムのみを起動するためにキャップ外しイベントを使用すること、及び、センサシステムを停止させ、かつ、ディスプレイを所与の時間にわたり作動させて感知された用量を表示するために、キャップ嵌めイベントを使用することによって、ユーザインターフェースを変えることなく、かつ、スイッチ以外のいかなる構成要素も追加することなく、電力消費を減少させうる。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるよう適合した記録装置(100、300)であって前記薬剤送達装置は、出口部分を備える薬剤リザーバ(213)、又は薬剤リザーバを受容するための手段と、装着済位置において前記薬剤リザーバの出口部分を覆うよう適合した取外し可能なキャップと、吐出されるべき薬剤の用量をユーザが設定することを可能にする用量設定手段(280)を備える薬剤吐出手段とを備え、前記記録装置は、
−電子回路(340)であって、
−前記記録装置が薬剤送達装置に取り付けられている場合に、吐出イベント中に前記吐出手段によってリザーバから吐出される薬剤の用量に関する特性値を捕捉するよう適合したセンサ手段(345)、
−捕捉された特性値に基づいて用量を判定するよう適合したプロセッサ手段、
−少なくとも1つの用量、及びそれに関連付けられた時間値を記憶するよう適合した、メモリ手段、
−判定された用量及び/又は時間値を表示するよう適合したディスプレイ手段(130,360)、及び、
−前記記録装置が薬剤送達装置に取り付けられている場合、前記キャップが前記装着済位置にある時のオフ状態と前記キャップが外されている時のオン状態との間で作動可能な、スイッチ手段(342)を備える、電子回路(340)を備え、
−前記センサ手段は、前記スイッチが前記オフ状態から前記オン状態へと作動するとオンになり、
−前記ディスプレイ手段は、前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動すると、用量及び/又は時間値を表示するために所定の時間量の間オンになる、記録装置(100、300)。
【請求項2】
前記センサ手段は、前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動するとオフになる、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
−前記センサ手段は、所定の時間量が経過すると自動的にオフになり、
−前記ディスプレイ手段は、前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動し、かつ、前記センサ手段が自動的にオフになった場合、吐出された用量が捕捉されていないかもしれないことをユーザに示す警告メッセージを表示するためにオンになる、請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
−前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動すると、前記ディスプレイ手段はメッセージを表示するために所定の時間量の間オンになり、前記メッセージは、
−前記センサ手段が自動的にオフになっていない状態で前記ディスプレイがオンになる場合の、直前に判定された前記用量及び/又は時間値、又は、
−前記センサ手段が自動的にオフになっている状態で前記ディスプレイがオンになる場合の、前記警告メッセージ、の形態である、請求項1から3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
−前記メモリ手段は、複数の用量と、それらに関する時間情報とを記憶するよう適合しており、
−前記電子回路は、吐出された薬剤の用量のログを作成し、前記メモリ手段に記憶するよう適合している、請求項1から4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
所与の時間内に判定された2つ以上の用量は結合されるか、又は結合可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記センサ手段は、磁気部材の回転量の形態としての特性値を捕捉するよう適合しており、前記磁気部材の前記回転量は、前記吐出手段によってリザーバから吐出される薬剤量に対応する、請求項1から6いずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記センサ手段は、前記スイッチが前記オフ状態から前記オン状態へと作動する時に時間遅延があるとオンになる、請求項1から7のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項9】
薬剤送達装置(200)と組み合わされ、それによって薬剤送達システムを形成する記録装置であって、前記薬剤送達装置は、
−出口部分を備える薬剤リザーバ(213)、又は、薬剤リザーバを受容するための手段と、
−装着済位置において前記薬剤リザーバの出口部分を覆うよう適合した取外し可能なキャップと、
−吐出されるべき薬剤の用量をユーザが設定することを可能にする用量設定手段(280)を備える薬剤吐出手段とを備え、
前記記録装置(100、300)は、前記薬剤送達装置に取り外せるように取り付け可能である、請求項1から8のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項10】
薬剤送達システム(100、200)であって、
−出口部分を備える薬剤リザーバ(213)、又は、前記薬剤リザーバを受容するための手段と、
−装着済位置において前記薬剤リザーバの出口部分を覆うよう適合した取外し可能なキャップ(207)と、
−吐出されるべき薬剤の用量をユーザが設定することを可能にする用量設定手段を備える薬剤吐出手段と、
−電子回路(340)であって、
−吐出イベント中に前記吐出手段によって前記リザーバから吐出される前記薬剤の用量に関する特性値を捕捉するよう適合したセンサ手段(345)、
−捕捉された特性値に基づいて用量を判定するよう適合したプロセッサ手段、
−少なくとも1つの用量を記憶するよう適合したメモリ手段、
−判定された用量及び/又は時間値を表示するよう適合したディスプレイ手段(130,360)、及び、
−前記キャップが前記装着済位置にある時のオフ状態と前記キャップがシステムから外されている時のオン状態との間で作動可能な、スイッチ手段(342)を備える、電子回路(340)とを備え、
−前記センサ手段は、前記スイッチが前記オフ状態から前記オン状態へと作動するとオンになり、
−前記ディスプレイ手段は、前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動すると、用量及び/又は時間値を表示するために所定の時間量の間オンになる、薬剤送達システム(100、200)。
【請求項11】
前記センサ手段は、前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動するとオフになる、請求項10に記載の薬剤送達システム。
【請求項12】
−前記センサ手段は、所定の時間量が経過すると自動的にオフになり、
−前記ディスプレイ手段は、前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動し、かつ、前記センサ手段が自動的にオフになった場合、吐出された用量が捕捉されていないかもしれないことをユーザに示す警告メッセージを表示するためにオンになる、請求項10又は11に記載の薬剤送達システム。
【請求項13】
−前記スイッチが前記オン状態から前記オフ状態へと作動すると、前記ディスプレイ手段はメッセージを表示するために所定の時間量の間オンになり、前記メッセージは、
−前記センサ手段が自動的にオフになっていない状態で前記ディスプレイがオンになる場合の、直前に判定された前記用量及び/又は時間値、又は、
−前記センサ手段が自動的にオフになっている状態で前記ディスプレイがオンになる場合の、前記警告メッセージ、の形態である、請求項10から12のいずれか一項に記載の薬剤送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、データを生成し、収集し、かつ記憶することに適切である医療デバイスに関する。具体的な実施形態においては、本発明は、効率的かつユーザが使用しやすい様式で薬剤送達用量データを捕捉し、体系化するための装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、例えばインスリンの送達による糖尿病の治療において使用される薬剤送達装置に主に言及するが、これは本発明の例示的な一使用法に過ぎない。
【0003】
薬剤注射器具は、薬剤及び生物学的製剤を自己投与する必要がある患者の生活を大いに改善してきた。薬剤注射器具は多くの形態をとることがあり、それらは、アンプルに注射手段を伴うだけの単純な使い捨て装置を含むか、又は、充填済みのカートリッジと共に使用されるよう適合した耐久性のある装置でありうる。薬剤注射器具は、その形態や種類に関わりなく、注射薬及び生物学的製剤の患者による自己投与を支援する上で大いに役立つことが分かっている。薬剤注射器具は、介護者が自己注射を実行できない人々に注射剤を投与する際にも、大いに役立っている。
【0004】
正しい時間に正しいサイズの必要なインスリン注射を実行することは、糖尿病を管理するために不可欠である。すなわち、特定のインスリンレジメンの順守は重要である。医療関係者が規定された投薬パターンの効果を判定できるようにするために、糖尿病患者は、各注射のサイズ及び時間のログをつけることを推奨される。しかし、かかるログは通常手書きのノートにつけられ、記録された(logged)情報を、データ処理のためにそのノートからコンピュータへと、容易にアップロードできないことがある。更に、患者によって記入されるイベントだけが記録されることから、記録された情報が患者の疾病の治療において何らかの価値を有するものになるには、患者が各注射を記録することを忘れないことが、ノートシステム上必要となる。ログにおける記録忘れ、又は間違った記録は、注射履歴の状況を誤解させることになり、ひいては、その後の薬物治療に関する医療関係者の意思決定の基礎を誤らせることになる。従って、排出される用量は注射される用量に一致するという推測に基づいて、医薬品送達システムからの排出情報の記録(logging)を自動化することが、望ましいことがある。
【0005】
一部の注射装置では、例えばUS2009/0318865及びWO2010/052275において開示されているように、このモニタリング/取得機構は装置自体の中に統合されるが、今日の大部分の装置はそれを備えていない。最も広範に使用されている装置は、耐久性があるか、若しくは充填済みの、純粋に機械的な装置である。充填済みの装置は、空になった後に捨てられ、安価なものなので装置自体の中に電子データ取得機能を組み込んでも費用に見合った効果が得られない。この問題に対処するように、所与の医療デバイスの使用を示すデータをユーザが生成し、収集し、分類するために役立つであろう、いくつかの解決策が提案されてきた。
【0006】
例えば、WO2007/107564には、標準的な機械的ペン装置に取り付けられ、かつ、そのペン装置によって生成された信号を測定するよう適合した、電子式「アドオン(add−on)」モジュールであって、かかるペン装置が作動中に内在的に発生させる音などに依拠するモジュールが、記載されている。WO2010/037828では、ペン装置に装着され、かつ、ペン装置の薬剤吐出機構によって吐出される容量サイズを表すデータについての時間ログを作成するよう適合した、更なるアドオンモジュールが開示されている。
【0007】
代替的には、投与された薬剤量の検出をより確実に可能にする、充填済み薬剤送達装置を提供するために、かかる充填済み薬剤送達装置を改変して、それらに外部検出手段と協働するのが一層好適になる構造物を設け、それによって、投与された薬剤量のより確実かつ正確な判定を提供することが、提案されている。例えば、PCT/EP2012/069729では、アドオン記録モジュールが3D磁力計を用いて磁石の軸方向位置を検出することを可能にする、磁石を備えた回転ピストンロッドが内部に設けられる薬剤送達装置が、開示されている。
【0008】
上記を考慮するに、効率的かつユーザが使用しやすい様式で薬剤送達用量データを捕捉し、体系化することを可能にするシステム、装置、及び方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の開示では、上記の一又は複数の目的に向けての、又は、後述の開示から、並びに例示的な実施形態の説明から明らかになる目的に向けての、実施形態及び態様について説明することになる。
【0010】
ゆえに、本発明の第1の態様では、薬剤送達装置に取り外し可能に取り付けられるよう適合した記録装置であって、薬剤送達装置が、出口部分を備える薬剤リザーバ、又は薬剤リザーバを受容するための手段と、装着済位置において薬剤リザーバの出口部分を覆うよう適合した取外し可能なキャップと、吐出されるべき薬剤の用量をユーザが設定することを可能にする用量設定手段を備える薬剤吐出手段と、吐出された薬剤の用量のログを作成するよう適合した電子回路とを備える、記録装置が提供される。電子回路は、記録装置が薬剤送達装置に取り付けられている場合、吐出イベント中に吐出手段によってリザーバから吐出される薬剤の用量に関する特性値を捕捉するよう適合したセンサ手段、捕捉された特性値に基づいて用量を判定するよう適合したプロセッサ手段、少なくとも1つの用量を記憶するよう適合したメモリ手段、判定された用量及び/又は時間値を表示するよう適合したディスプレイ手段、並びにスイッチ手段を備える。時間値は、記憶された各用量に関連付けられうる。
【0011】
所与の用量は、例えば、薬剤量を表す「ネイティブな(native)」検出特性の形態で、又は、計算された薬剤量として、メモリに記憶されうる。記録装置が薬剤送達装置に取り付けられた状態では、スイッチ手段は、キャップが装着済位置にある時のオフ状態とキャップが外されている時のオン状態との間で作動可能である。かかる配置においては、スイッチがオフ状態からオン状態へと作動するとセンサ手段はオンになり、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動すると、ディスプレイ手段は用量を表示するために所定の時間量の間オンになる。センサ手段は、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動するとオフになりうる。
【0012】
薬剤送達装置のためのアドオン型用量記録装置は、センサが作動している時、及びディスプレイがアクティブである時に、エネルギーを消費する。組み込み型の耐用年数バッテリーを備えたデバイスに関して、電力消費は可能な限り低くあるべきである。実際のところ、低電力消費は、再充電可能な又は交換可能な電池に依拠するにデバイスに関しても望ましいものである。この問題は、最初にセンサ手段のみを起動するためにキャップを外す行為を使用すること、及びその後、センサ手段を停止させ、かつ、ディスプレイを所与の時間にわたり作動させて感知された用量を表示するために、キャップをはめる行為を使用することによって、対処される。この様式では、薬剤送達装置のための通常のユーザインターフェース自体を変えることなく、かつ、スイッチ以外のいかなる構成要素も追加することなく、電力消費を減少させうる。
【0013】
センサ手段は所定の時間量が経過すると自動的にオフになってよく、ディスプレイ手段は、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動し、かつ、センサ手段が自動的にオフになった場合、吐出された用量が捕捉されていないかもしれないことをユーザに示す警告メッセージを表示するためにオンになる。センサ手段が自動的にオフになった後にキャップが再装着されると警告メッセージを提供することによって、警告メッセージが、吐出された用量が捕捉されていないかもしれないことをユーザに示し、このことは、用量が実際に吐出されていた場合にユーザが適切な措置をとることを可能にする。
【0014】
省エネルギーのために、センサ手段は、スイッチがオフ状態からオン状態へと作動する時に時間遅延があるとオンになってよく、このことは、ユーザがセンサシステムをオンにせずに直近のログの値を確認することを可能にする。
【0015】
例示的な一実施形態では、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動すると、ディスプレイ手段はメッセージを表示するために所定の時間量の間オンになり、メッセージは、センサ手段が自動的にオフになっていない状態でディスプレイがオンになる場合の、直前に判定された用量、又は、センサ手段が自動的にオフになっている状態でディスプレイがオンになる場合の、警告メッセージ、の形態である。
【0016】
メモリ手段は、複数の用量と、それらに関する時間情報とを記憶するよう適合してよく、電子回路は、吐出された薬剤の用量のログを作成し、メモリ手段に記憶するよう適合している。
【0017】
ユーザが所与の(大)用量を分けることを所望している状況に対処するように、所与の時間内に判定された、記憶された複数の用量は、単一の結合用量に結合されうる。所与の時間は、前回検出された吐出イベントから所与の時間量が過ぎた後に、又は、所与の行為の検出の後に、吐出イベントの検出の発生によって、開始されうる。
【0018】
所与の時間内に2つ以上の用量が判定されると、それらは自動的に結合されうるか、又は、ユーザは、所与の時間内に判定されたその2つ以上の用量が結合されることを許容するよう指示されうる。結合量は、ディスプレイ内にそのように示されうる。所与の値を下回る判定された用量、例えば2又は3ユニット未満のインスリンは、プライミング(priming)ショット又は空ショットであると推定され、ゆえに、1つのログエントリとして結合されないことがある。結合用量が計算され、記憶される場合、個々の用量は記憶されたままであり、その後求めに応じて読み出されうる。記憶された読み出し可能なデータは、全ての判定された用量を含みうる。すなわち、空ショット、及び、センサの時間切れイベント中に、ただしセンサがオフになる前に判定された用量を含む。時間値は、記憶された各用量に関連付けられうる。結合用量に関しては、例えば直前の時間値が使用されうる。電子回路は、記憶されたデータを、例えばNFC又はブルートゥースを用いて外部の受信器に送信するよう適合した、送信手段を備えうる。
【0019】
センサ手段は、薬剤送達装置内に配置された磁気部材の回転量の形態としての特性値を捕捉するよう適合してよく、磁気部材の回転量は、吐出手段によってリザーバから吐出される薬剤量に対応する。
【0020】
上述の記録装置は、薬剤送達装置と組み合わされて提供され、それによって薬剤送達システムを形成してよく、薬剤送達装置は、出口部分を備える薬剤リザーバ、又は薬剤リザーバを受容するための手段と、装着配置において薬剤リザーバの出口部分を覆うよう適合した取外し可能なキャップと、吐出されるべき薬剤の用量をユーザが設定することを可能にする用量設定手段を備える薬剤吐出手段とを備え、記録装置は、薬剤送達装置に取り外せるように取り付け可能である。
【0021】
例示的な一実施形態では、薬剤送達装置が、リザーバ内に包含された具体的な薬剤の種類、又は具体的な薬剤送達装置についての情報を表す、色又はバーコード形態などの識別子を更に備えると共に、記録装置は、その識別子からの情報を捕捉するための手段を更に備え、電子回路は、所与の識別子に関するログを作成するよう適合している。
【0022】
本発明の更なる一態様では、薬剤送達システムであって、出口部分を備える薬剤リザーバ、又は薬剤リザーバを受容するための手段と、装着済位置において薬剤リザーバの出口部分を覆うよう適合した取外し可能なキャップと、吐出されるべき薬剤の用量をユーザが設定することを可能にする用量設定手段を備える薬剤吐出手段と、電子回路であって、吐出イベント中に吐出手段によってリザーバから吐出される薬剤の用量に関する特性値を捕捉するよう適合したセンサ手段、捕捉された特性値に基づいて用量を判定するよう適合したプロセッサ手段、少なくとも1つの用量を記憶するよう適合したメモリ手段、判定された用量及び/又は時間値を表示するよう適合したディスプレイ手段、及び、キャップが装着済位置にある時のオフ状態とキャップがシステムから外されている時のオン状態との間で作動可能な、スイッチ手段を備える、電子回路とを備え、センサ手段は、スイッチがオフ状態からオン状態へと作動するとオンになり、ディスプレイ手段は、スイッチがオン状態からオフ状態へと作動すると、用量及び/又は時間値を表示するために所定の時間量の間オンになる、薬剤送達システムが提供される。
【0023】
システムは、薬剤リザーバ、又は薬剤リザーバを受容するための手段と、薬剤吐出手段と、電子回路とを備える、統合された薬剤送達装置の形態でありうる。この統合された装置は、別個の記録装置の上述の特徴を備えうる。
【0024】
吐出された薬剤の用量に関する特性値を捕捉するために、いくつかの技術が使用される可能性がある。例えば、統合された配置に関しては、捕捉はガルバニック(galvanic)接触、光センサ、又は磁気センサに基づくものである可能性がある。実際のところ、それと同じ原理が外部の取り付け可能記録装置に関しても使用される可能性があるが、磁気検出の使用によって、ハウジング壁に開口を提供することも、接触することも必要なく、送達装置の内部での移動を検出することが可能になるだろう。所与の吐出機構では、いくつかの構成要素が通常、吐出される薬剤量に対応して移動することになる。例えば、ピストンロッドが軸方向に移動することになり、そのピストンロッドを移動させるための駆動部材が回転しうる。それに対応して、特性値は、軸方向変位若しくは回転量、又はその両方の組み合わせとなる可能性がある。例えば、所与の用量を吐出させるために所与の構成要素が360度を超えて回転しうる場合、その回転量は、きざみ幅を数えることによって、又は代替的には、回転する構成要素の回転位置を判定し、それを全回転の回数又は軸方向に移動した構成要素の軸方向位置に関する情報と組み合わせることによって、捕捉されうる。
【0025】
本発明のより一般的な一態様では、システムを作動させる方法であって、センサシステムをオンにするステップと、センサシステムを使用して測定を実行するステップと、センサシステムをオフにするステップと、所定の時間量の間測定の結果を表示するためにディスプレイをオンにするステップとを含む方法が、提供される。
【0026】
本出願の観点では、明細書及び特許請求の範囲において使用されるプロセッサ手段という語は、特定の機能(例えば、データを処理し、記憶すること、並びに、全ての接続された入出力デバイスを制御すること)を提供するのに適する電子回路の任意の組み合わせを含む。プロセッサは、典型的には、一又は複数のCPU又はマイクロプロセッサを備え、それらのCPU又はマイクロプロセッサは、サポート機能、メモリ機能、又は制御機能のための追加のデバイスによって補完されうる。例えば、通信インターフェースが(例えばワイヤレスで)提供されることになる場合、送信器及び受信器は、プロセッサと完全に又は部分的に統合されうるか、或いは、個々のユニットごとに提供されうる。プロセッサ回路を作り上げる構成要素の各々は、特定用途の又は汎用のデバイスでありうる。ディルプレイ手段という語は、LCD又はOLEDなどの、特定の機能を視覚的に提供することが可能な任意の種類のディスプレイを含む。
【0027】
本書において、「インスリン(insulin)」という語は、液体、溶液、ゲル又は微細懸濁液などの制御された様態でカニューレ又は中空針といった送達手段を通過可能である、血糖値制御効果を有する任意の薬剤含有流動可能薬物、例えばヒトインスリン及びその類似体、並びに、GLP−1及びその類似体等の非インスリンを包括することを意味する。例示的な実施形態の説明においては、インスリンの使用への言及がなされる。
【0028】
以下の例示的な実施形態では、図面を参照して本発明を説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面において、同様の構造物は、主として同様の参照番号により特定される。
図1A-1B】電子記録モジュールを備えたペン形状薬剤送達装置を示す。
図2】記録モジュールの内部を示す。
図3】全てのセグメントがアクティブになっているディスプレイを示す。
図4】種々の作動状態におけるディスプレイ読取を記載したフロー図を示す。
図5】記録モジュールが設けられており、かつスマートフォンと通信可能な、薬剤送達ペンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
下記において、「上方(upper)」及び「下方(lower)」、「右(right)」及び「左(left)」、「水平(horizontal)」及び「垂直(vertical)」などの語、又は類似の相対的表現が使用される場合、これらは付随する図面にのみ言及するものであり、必ずしも実際の使用状況を表すものではない。示されている図面は概略表現であるため、種々の構造物の構成、並びにそれらの相対的寸法は例示目的にのみ使用することが意図されている。所与の構成要素に対して部材又は要素という語が使用される場合、その語は一般的に、説明されている実施形態においてその構成要素が一体型構成要素であることを示しているが、代替的には、それと同じ部材又は要素がいくつかのサブ構成要素を備えうる。説明されている構成要素のうちの2つ以上が一体型構成要素として提供され(例えば単一射出成型部品として製造され)うるような場合である。「アセンブリ(assembly)」という語は、説明されている構成要素が所与の組立手順において必然的に一体型の又は機能的なアセンブリを提供するよう組み立てられうることを示唆するものではなく、単に、機能的により密接に関連したものとしてグループ化された構成要素を説明するために使用される。
【0031】
図1A及び図1Bは、電子記録モジュール100が装着されているペン形状薬剤送達装置200を示している。本書の文脈では、この装置は、装置の具体的な例を提供する「包括的な(generic)」薬剤送達装置であって、それと組み合わせて本発明の実施形態を使用することが意図されているか、又は、本発明の態様の基礎を形成しうる、薬剤送達装置のことである。
【0032】
より具体的には、記録モジュール100は、本体部分110と、概して円筒型のペン装置にモジュールが装着されることを可能にする、リング形状部分120とを備える。本体部分は、電子回路、及び、カートリッジから吐出される薬剤量を表す特性の検出を可能にするセンサ手段、並びに、ユーザにデータを表示するためのディスプレイ130を備える。リング部分は、モジュールがペン本体に確実かつ正確に装着されることを可能にする、連結手段を備える。電子回路及びセンサ手段は、部分的にリング部分内に配置されうる。記録モジュール内に提供されるセンサ手段、及び、検出されるべき特性に応じて、薬剤送達装置は、所与の特性の検出を可能にするよう特に適合している必要がありうる。例えば、薬剤送達装置には用量吐出中に回転する磁石が設けられてよく、記録モジュールは、その回転量を検出するよう適合している(下記参照)。
【0033】
ペン装置200は、キャップ部207と、薬剤吐出機構が内部に配置又は統合されているハウジング201を備えた近位本体部分又は駆動アセンブリ部分、及び、遠位カートリッジホルダ部分であって、その内部には遠位穿刺可能膜を備えた薬剤充填済透明カートリッジ213が、配置され、かつ、近位部分に取り付けられた取外し不可のカートリッジホルダによって定位置に保持されている、遠位カートリッジホルダ部分を有する、主部とを備え、カートリッジホルダは、カートリッジの一部分の点検を可能にする開口、並びに、針アセンブリを取り外せるように装着することを可能にする遠位連結手段215を有する。カートリッジは、吐出機構の部分を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンを備えており、例えばインスリン、GLP−1、又は成長ホルモン製剤を包含しうる。最近位回転可能用量部材280は、ディスプレイウインドウ202内に表示される薬剤の所望の用量を手動で設定する(又はダイヤルする)ためのものであり、その所望の用量は次いで、ボタン290が作動すると吐出されうる。薬剤送達装置内に具現化された吐出機構の種類に応じて、吐出機構は、図示している実施形態におけるもののようなばねであって、用量設定中に引っ張られ、次いで解除ボタンが作動すると解除されてピストンロッドを駆動する、ばねを備えうる。代替的には、吐出機構は完全に手動であってよく、その場合、用量部材及び作動ボタンは、設定される用量サイズに対応して用量設定中に近位に移動し、次いで、設定された用量を吐出するためにユーザによって遠位に動かされる。
【0034】
図1A及び図1Bは、充填済みのタイプの薬剤送達装置を示している。すなわち、この薬剤送達装置は、事前装着されたカートリッジと共に供給され、カートリッジが空になると廃棄されることになる。代替的な実施形態では、薬剤送達装置は、例えば、カートリッジホルダが装置の主部から外れるよう適合している「後方搭載型(rear−loaded)」の薬剤送達装置の形態、又は代替的には、装置の主部に取り外し不可に取り付けられているカートリッジホルダの遠位開口を通じてカートリッジが挿入される「前方搭載型(front−loaded)」の装置の形態で、搭載カートリッジの交換を可能にするよう設計されうる。
【0035】
図2を見るに、外部ハウジングが除去されて、内部の設計及び構成要素が明らかになっている、記録モジュール300の例示的な一実施形態が示されている。モジュールは、概して円筒型のリング形状部分320と本体部分330とを有する主要本体310を備え、リング形状部分320と本体部分330は一緒になってシャーシを形成しており、電子回路の大部分はそのシャーシ上に実装される。主要本体は、LDSポリマで形成されており、それによって、LDS(Laser Direct Structuring)技術を使用して集約配線が達成されうる。ポリマは、可撓性のヒンジラッチの統合形成を可能にする弾性特性を有する。代替的には、センサを含む電子部品が可撓性PCB上に実装されてよく、その可撓性PCBは次いで、金属クリップなどを使用して主要本体310に装着される。更なる代替例としては、可撓性PCBは、両面接着材を使用してそれをシャーシ構成要素に完全に又は部分的に接合することによって装着されてよく、このことは、正確で信頼性が高く、コンパクトな設計を可能にする。リング部分は、薬剤送達ペン本体に装着されるよう適合した概して円筒型の内表面、並びに、一対の対向している、統合形成された連結構造物321であって、ペン装置上の対応する連結構造物に係合して、モジュールの確実な装着を確保するよう適合した連結構造物321を備える。リング部分の遠位部は、モジュールがペンに装着されるとキャップを受容し、キャップに係合するよう適合した、遠位方向を向いた周縁当たり表面329を備えた、より大きな直径を有する(下記参照)。
【0036】
リングの内表面とペン本体の外表面とは、形状嵌めされているか、又は軽微摩擦係合しているかのいずれかでありうる。モジュール上の各連結構造物は、近位部分323と、遠位部分324と、中央部分とを有するラッチの形態であり、中央部分は、統合形成された可撓性ヒンジ325によってリング部分に枢動的に接続され、ラッチが周軸に対応していくらかの角度枢動することを可能にする。この配置によって、近位部分が外側に向かって移動すると遠位ラッチ部分は内側に向かって移動し、その逆も同様である。近位ラッチ部分は各々、ペン装置上の対応する連結構造物(例えばキャップの取り付けにも使用される突起)に係合するよう適合した内部突起326を備え、遠位ラッチ部分は各々、使用後にキャップが装着されるとキャップの外表面に機能的に係合するよう適合した、突起327を備える。代替的には、キャップの外表面には、キャップがスナップアクションによって記録モジュールに係合することを可能にする、周縁溝(groove)などの連結手段が設けられうる。図示している実施形態に関して明らかであるように、記録モジュールが薬剤送達ペン本体に装着されている場合、キャップはペン本体ではなく記録モジュールに付いている。代替的な実施形態では、記録モジュールは、ペン本体へのキャップの直接的な取り付けを可能にしうる。ペンに対するモジュールの正確な回転式装着を確保するために、図示しているモジュールには、ペン上の対応する突起に軸方向に係合するよう適合した、じょうご形状のスロットが設けられる。図1Aに示している実施形態では、突起は、ペンのカートリッジホルダ210上に提供され、ペンのディスプレイウインドウ202の反対側に配置される。それによって、電子ディスプレイ130は、モジュールがペンに装着されるとペンのディスプレイウインドウに隣接して配置される。記録モジュールとペン本体とキャップとの間の相互作用については、以下でより詳細に説明する。
【0037】
本体部分330上には、関連メモリ手段を備えたプロセッサ手段を含む電子部品340、ディスプレイ360を備えたディスプレイモジュール341、装着されたキャップの存在を検出するためのキャップスイッチ342、ペン本体に記録モジュールが装着されていることを検出するための主スイッチ(図示せず)、及びエネルギー源343のうちの大部分が実装されている。エネルギー源343は、交換不能なデバイス耐用年数「バッテリー(battery)」、交換可能なバッテリー、又は再充電可能バッテリーの形態でありうる。図示している実施形態では、LCDは、別個のディスプレイウインドウによって覆われる従来型の剛性タイプのものであるが、代替的には、可撓性LCDが透明なプラスチックのカバーに直接接合され、コンパクトかつ強靭な設計を提供しうる。LDCに加えて、種々の状態及び/又はエラー状態をユーザに知らせるために、圧電式ビープ音発生器(piezo beeper)のような音源装置が提供されうる。
【0038】
図示している実施形態では、記録モジュールには、リング部分320上に等距離に装着された3つの「周囲(compass)」センサユニット345を備える、第1センサアセンブリが設けられ、各センサユニットは、3つの軸に対応する磁界を測定するよう適合した磁力計の形態である。別のパターンに配置された別の種類及び数のセンサが使用されることもある。図示している実施形態では、センサシステムは、薬剤送達装置(記録モジュールはその薬剤送達装置向けに特に設計されている)の内部に配置された磁気部材の回転量を検出するよう設計され、かかるシステムは、参照により本書に援用されるPCT出願EP2014/056724において、より詳細に説明されている
【0039】
例えばこの種の装置(従って薬剤)が認識されることを可能にする、更なるセンサが提供されうる。このことは、薬剤送達装置が、種々の濃度の所与の薬剤(例えば1ml当たり100又は200IUのインスリン)と共に販売されるような場合に適切である。代替的には、記録モジュール及び薬剤送達装置には、所与の記録モジュールが、その記録モジュールと共に使用するために特にコーディングされた薬剤送達装置だけに装着されることを可能にする、機械的コーディング手段が設けられうる。
【0040】
図示している実施形態では、記録モジュールは、薬剤送達装置を受容するよう適合した孔部(bore)を提供するリング形状部分を備える。代替的には、リングは開いていてよく、そのリングには、WO2010/037828などで開示されているような、開放可能な閉じ部材が設けられうる。
【0041】
記録モジュールには、ユーザがモジュールを制御することを可能にする、一又は複数のボタン(図示せず)などの形態のユーザ入力手段が設けられうる。記録モジュールには、モジュールへ、又はモジュールから、データを送信することを可能にする送信手段が、更に設けられうる。例えば、ログデータは、NFC又はその他の無線手段によってユーザのスマートフォンに送信されうる。
【0042】
図3は、すべてのセグメントがオンになっているディスプレイ360の、例示的な一実施形態を示している。より具体的には、ディスプレイは、用量サイズをIU単位で表示するための用量サイズフィールド361と、HH:MM:SSというストップウォッチ形式を有する時間フィールド362と、「準備OK(ready)」記号363と、「情報(information)」記号364とを含む。種々のディスプレイセグメントの例示的な使用法は、図4を参照して以下で説明する。
【0043】
図4を見るに、記録モジュールのユーザインターフェースの種々の態様を例示しているフロー図、すなわち、例えば図1A及び図1Bに示すように対応する薬剤送達装置と組み合わせると、記録モジュールと薬剤送達装置の両方が使いやすく、エネルギー効率が良いものになる、記録モジュールを提供するために、記録モジュールの種々の特徴がどのように使用されるかを、示している。エネルギー効率は特に、記録モジュールが、その意図される耐用期間(例えば、平均的なユーザが通常使用して3年間)にわたってモジュールに電力供給することを目的とする交換不能なエネルギー源を備える場合の要件である。
【0044】
装着された記録モジュールがスリープ状態である場合、ディスプレイ10はアクティブなセグメントがないブランクである。ユーザがキャップを外し、それによってキャップスイッチを起動させると、ディスプレイ11は、センサシステムがオンになっており、かつ、記録モジュールは吐出されるべき用量を検出し、そのメモリに記憶する準備が整っていることを示す、「準備OK」記号を表示する。用量設定中、及びその後の用量吐出中には、ディスプレイ20は変化せず、準備OK記号を表示しているだけである。用量が吐出された後にユーザが再びキャップを付けると、ディスプレイ21は、例えば図示しているように20IUと、吐出された用量サイズを用量サイズフィールド内に、それと共に、例えば図示しているように8秒間と、時間値を時間フィールド内に、表示する。時間フィールドは稼働する秒カウンタを備えたストップウォッチ構成を有していることから、「直前の投与からの時間(time−since−last−dose)」が表示されていることが、ユーザに明白になる。同時に準備OK記号がオフになる。20秒などの所与の秒数が過ぎると、ディスプレイ22はオフになる。ユーザが後で、直近のログエントリ、すなわち用量サイズ及び直前の投与からの時間を確認することを所望する場合、ユーザは、キャップをその装着位置から外すことによってキャップスイッチを作動させ、それによってディスプレイ30内の準備OK記号をオンにして、キャップを装着位置に戻す。ディスプレイ31は、直前の投与からの実際の時間と共に直前に検出された用量サイズを(例えば20IUが9時間11分29秒前に吐出されたと)表示する。省エネルギーのために、センサシステムは、例えば数秒間の遅延時間があるとオンになってよく、このことは、センサシステムがオンでない状態でユーザが直近のログエントリを確認することを可能にする。
【0045】
低エネルギー消費量を守るために、センサシステムは、5分間などの一定の時間量が過ぎると時間切れとなってオフになり、その後、ディスプレイ40内で準備OK記号はオフになる。記録モジュールは、吐出された用量の検出が成功するたびにタイマーを再起動させるよう設計されてよく、このことは、ユーザが間隔を決めて所与の用量を2つ以上の用量に分けることを可能にする。このブランクのディスプレイはユーザに対して、センサシステムがオフになっていることを示しているが、薬剤送達装置は、所望の用量を設定し、吐出するために通常通りに使用されうる。しかし、センサシステムはオフのままとなり、ディスプレイ41もブランクのままになる。しかし、時間切れ期間中に吐出されたかもしれないいかなる用量も記録されていないことをユーザに思い出させるために、ディスプレイ42は、情報(information)「i」記号を表示することになる。明らかであるように、用量が吐出されたか、されていないかにかかわらず、センサの時間切れイベントの後にキャップが再び装着されると、ユーザには「i」記号が提示される。記録モジュールにビープ音発生器などの可聴警報器が設けられる場合、その警報も鳴動しうる。吐出された用量の検出が成功した後に時間切れが発生した場合、キャップが嵌められても「i」は依然表示されるが、検出された用量は記憶されており、以下で説明するように呼び出すことができる。代替的には、「i」記号はエラー状態をより直接的に示す記号に置換されうる。
【0046】
図3を参照して、記録モジュールの2つの例示的な特徴が説明された。すなわち、(i)通常使用中のディスプレイ表示、及び、(ii)センサの時間切れイベント後のディスプレイ表示である。2つの特徴の各々は、所与の記録モジュールのために単独で、又は組み合わされて、実装されうる。
【0047】
上述の使用事例に加えて、ディスプレイの記号及び数値フィールドは、追加的な様式で使用されうる。例えば、「i」記号は、用量感知中のエラー、低バッテリー状態、又はデータ送信に関する情報を示す等のために、用量サイズフィールド内に表示される値と組み合わされて使用されて、いくつかのコードを生成しうる(下記参照)。更に、記録モジュールが別々の用量を結合させるよう適合している場合(EP2014/056727参照)、「i」は用量が結合されたことを示すために使用されうる。
【0048】
図5は、図1から図4を参照して上述した種類の記録モジュール100を備え、かつ、NFCなどの無線通信を介して記録モジュールから記録データを受信するよう構成されたスマートフォン400の隣に配置された、薬剤送達ペン200を示している。上述のように、記録モジュールには、ストップウォッチディスプレイモードを使用して直前の用量のサイズ及び直前の投与からの時間を示すよう構成された、ディスプレイが設けられる。記録モジュールと通信するために、スマートフォンは特定の「インスリン日誌(insulin diary)」ソフトウェアを備えている。このソフトウェアが作動して、データ送信を開始すると、スマートフォンのNFC送信器は、近傍に記録モジュールがあればそれを起動させる特定のコードを送信することになる。記録モジュールは次いで、その特定のモジュールを識別する独自のコードを再送信する。特定のコードが最初に受信されると、ユーザは、ペアリングを承認することを求められ、かつ、その所与の記録モジュールに関連付けられるべき所与の薬剤(例えば図示しているような「Mix30」)をリストから選択することを求められる。代替的には、記録モジュールは、特定の一種類の薬剤(その薬剤の種類は初期ペアリング時に送信される)だけを包含する一種類のペンのみと協働するよう設計されうるか、又は、記録モジュールは、別々の種類のペン、ひいては別々の種類の薬剤を識別する能力を備えうる。図示している実施形態では、Mix30インスリンに関連付けられた記録モジュールからのログデータが送信されている。送信はスマートフォンによって完全に制御されてよく、記録モジュールは、ただデータを送信する(そうするよう求められた時に)だけである。例えば、記録モジュールは、記録データを送信するよう制御されている場合、例えば30の記録イベントの都度全てのメモリ内容を送信してよく、スマートフォンは、直前の送信以降の新たなログエントリを識別するよう適合している。記憶された記録データは、全ての判定された用量を含みうる。すなわち、空ショット、及び、センサの時間切れイベント中に、ただしセンサがオフになる前に判定された用量を含む。
【0049】
データの送信が成功した場合、そのことはスマートフォン上、並びに記録モジュール上に示されうる。例示的なユーザインターフェースでは、ユーザが種々の日付の画面間の交互切り替えを行うことができ、各日付画面は、リアルタイム値と共に、送達された種々の薬剤量を表示する。図5では、所与の日付401にMix30の第1と第2の量402が送達されており、各送達についての時間及び量が表示されている。所与の用量が結合用量に基づくか否かが示されうる。記録モジュール内にリアルタイムクロックを有することを避けるために、各ログエントリに関する時間情報は、記録モジュールが提供する相対的時間情報に基づいて、スマートフォンによって生成されうる。
【0050】
例示的な実施形態の上記の説明においては、説明されている機能を種々の構成要素に提供する種々の構造及び手段について、本発明の概念が当業者にとって明確になる程度に説明してきた。種々の構成要素の詳細な構造及び仕様は、本明細書の規定に沿って当業者により実行される、通常の設計手順の対象と見なされる。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】