(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-522285(P2017-522285A)
(43)【公表日】2017年8月10日
(54)【発明の名称】エンテカビルを有効成分として含む薬学製剤及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/522 20060101AFI20170714BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20170714BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20170714BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20170714BHJP
A61K 47/08 20060101ALI20170714BHJP
【FI】
A61K31/522
A61P1/16
A61P31/14
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/20
A61K47/14
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-572806(P2016-572806)
(86)(22)【出願日】2015年6月22日
(85)【翻訳文提出日】2016年12月13日
(86)【国際出願番号】KR2015006329
(87)【国際公開番号】WO2015194923
(87)【国際公開日】20151223
(31)【優先権主張番号】10-2014-0075457
(32)【優先日】2014年6月20日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ
(71)【出願人】
【識別番号】513202731
【氏名又は名称】シーティーシー バイオ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ホンリョル
(72)【発明者】
【氏名】クォン ドゥウ
(72)【発明者】
【氏名】イ ボンサン
(72)【発明者】
【氏名】パク スジュン
(72)【発明者】
【氏名】ハン ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】キル ミョンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンソプ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
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4C076DD60S
4C076EE06A
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4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA75
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、エンテカビルを有効成分とする薬学製剤であって、エンテカビルの水分に対する安定性の向上のために抗酸化剤を添加した薬学製剤及びこの製造方法に関する。本発明によれば、抗酸化剤を添加し、エンテカビルを一定含量以上の水分を含む薬学製剤内で安定的に維持でき、これによって、一定含量以上の水分を含む剤形、例えば、口腔内崩壊性フィルム剤形の薬学製剤として提供できる効果を奏する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンテカビルを有効成分として含む薬学製剤であって、
一種以上の抗酸化剤を含み、薬学製剤は、105℃で4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上10%未満であることを特徴とする薬学製剤。
【請求項2】
前記抗酸化剤が、没食子酸プロピル、乾燥亜黄酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸レチノール、リボフラビン、芒硝、酸化亜鉛、ソルビン酸、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸無水物、クエン酸水和物、アジピン酸ジイソプロピル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、亜黄酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、オキシベンゾン、二酸化ケイ素、中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭酸水素ナトリウム、トコフェロール、トコフェロールアセテート、ベンゾフェノン、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、チオ硫酸ナトリウム水和物、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、D−マンニトール、D−ソルビトール及びL−システイン塩酸塩水和物からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項3】
前記抗酸化剤が、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、またはこれらの混合物であることを特徴とする請求項2に記載の薬学製剤。
【請求項4】
前記エンテカビルと前記抗酸化剤との重量比が、1000:1〜1:100であることを特徴とする請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項5】
前記エンテカビルと前記抗酸化剤との重量比が、30:1〜1:10であることを特徴とする請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項6】
前記薬学製剤が、B型肝炎の治療または予防用の薬学製剤であることを特徴とする請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項7】
前記薬学製剤が、口腔内崩壊性フィルム剤形であることを特徴とする請求項1に記載の薬学製剤。
【請求項8】
前記口腔内崩壊性フィルム剤形の水分含量は、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が、2%以上10%未満である特徴とする請求項7に記載の薬学製剤。
【請求項9】
エンテカビルを有効成分として含む薬学製剤の製造方法であって、
一種以上の抗酸化剤及びエンテカビルを添加する段階と、薬学製剤が、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上10%未満の水分含量を有するように乾燥する段階と、を含むことを特徴とする薬学製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンテカビル(Entecavir)を有効成分として含む薬学製剤及びこの製造方法に関し、より詳しくは、水分を含む薬学製剤内でエンテカビルが加水分解せず安定的に維持できるようにする方法に関する。
【0002】
本出願は、2014年6月20日出願の韓国特許出願第10−2014−0075457号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
エンテカビル(Entecavir)、[1−S−(1α,3α,4β)]−2−アミノ−1,9−ジヒドロ−9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)−2−メチレンシクロペンチル]−6H−プリン−6−オンは、B型肝炎ウイルスの感染に対する治療剤として使われている抗ウイルス剤であって、シクロペンタンの1S−位置にプリン、2−位置にエキソメチレン、3R−位置にヒドロキシメチル、そして、4S−位置にヒドロキシが存在する立体構造を有する。エンテカビルトリホスフェートの形態にリン酸化すれば活性化し、B型肝炎の治療効果を発揮する。市販のB型肝炎治療剤は、単位容量当たりのエンテカビル無水物を0.5mgまたは1mg含んでいる。
【0004】
エンテカビルは、pH 7.9、25℃(室温)で2.4mg/mlの水溶解度を有し、水分存在下で加水分解して水分に対して低い安定性を示す。エンテカビルの加水分解は薬効の減少に繋がり、このことからエンテカビルの水分に対する安定性を確保することが必須となる。
【0005】
低い水分安定性を示す薬物の場合、通常、製剤の外に存在する水分との接触を遮断するために、防水性コーティングまたは封止して保存するなどの方法が用いられ、製剤中の水分を最小化するか、或いは他の物質(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、アルコールなど)に代替する方法などを用いている。
【0006】
しかし、エンテカビルを含む薬学製剤として、製剤中に一定含量以上の水分を含まなくてはならない薬学製剤の場合、製剤外の水分を遮断することに加え、製剤中に含有している水分に対しても安定性を向上させる方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、一定含量以上の水分を含む薬学製剤内でエンテカビルを安定的に維持するための方法及びこの方法により製造された薬学製剤を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、エンテカビルを有効成分として含む薬学製剤として、経口投与時、直ちに分解(崩壊)して薬物が吸収される口腔内崩壊性(溶解性)剤形の薬学製剤を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するための一様態として、本発明は、エンテカビル(Entecavir)を有効成分として含む薬学製剤であって、エンテカビルの水分に対する安定性の改善のために一種以上の抗酸化剤を含み、薬学製剤は、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上10%未満である薬学製剤に関する。
【0010】
また、本発明は、エンテカビルを有効成分として含み、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上10%未満である薬学製剤であって、エンテカビルの水分に対する安定性の改善のための一種以上の抗酸化剤の用途に関する。
【0011】
本発明者は、抗酸化剤を添加すれば、一定含量以上の水分を含む薬学製剤内で、水分により加水分解して安定的に維持しにくい、即ち、水分に対する安定性に弱いエンテカビルの特性を克服できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
例えば、口腔内溶解性(崩壊性)剤形の薬学製剤の場合、105℃で、4時間の間USP731によって測定しLOD(%)が1%以上になるべきであるが、水分に弱いエンテカビルを口腔内溶解性(崩壊性)剤形(e.g.口腔内崩壊性フィルム)に剤形化しにくい。しかし、本発明により、抗酸化剤を添加すれば、エンテカビルがこのような過量の水分含量の製剤中でも安定的に維持できるという優れた効果を奏する。
【0013】
本発明による薬学製剤は、エンテカビルを有効成分とする薬学製剤であれば、いずれも含むことができ、例えば、B型肝炎の治療または予防の用途に用いられる薬学製剤を含むことができる。
【0014】
本発明において、「水分に対する安定性」または「水安定性」とは、水に対する安定性を意味し、特に、薬学製剤内に含まれる水に対する安定性をいう。薬学製剤内におけるエンテカビルの物理的・化学的特性が変化することなく維持できる特性をいい、特に、水と反応してもエンテカビルが加水分解せず維持できる特性を含む。
【0015】
本発明において、「エンテカビル(Entecavir)」とは、これの薬学的に許容可能な塩を含み、前記「薬学的に許容可能な塩」とは、患者に比較的非毒性であり、かつ無害な有効作用を有する濃度として、この塩に起因する副作用がエンテカビルのよい效能を低下しない任意のすべての有機または無機付加塩をいい、例えば、遊離酸としては、有機酸と無機酸または無毒性塩類などを用いることができ、無機酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、窒酸、酒石酸などを用いることができ、有機酸としては、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸(maleic acid)、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸(fumaric acid)、マンデル酸、プロピオン酸(propionic acid)、クエン酸(citric acid)、乳酸(lactic acid)、グリコール酸(glycollic acid)、グルコン酸(gluconic acid)、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸(glutaric acid)、グルクロン酸(glucuronic acid)、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸(hydroiodic acid)を用いることができる。酸付加塩は、通常の方法、例えば、化合物を過量の酸水溶液に溶解し、この塩を水混和性の有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを用いて寝殿させることで製造することができる。同モル量の化合物及び水中の酸またはアルコールを加熱し、続いて前記混合物を蒸発させて乾燥するか、または析出した塩を吸引してろ過することができる。前記無毒性塩類としては、スルフェート、ピロスルフェート、ビスルフェート、スルフィット、ビスルフィット、ニトレート、ホスフェート、モノヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロリド、ブロミド、ヨージド、フルオライド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルメート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオレート、オキサレート、マロネート、スクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マレアート、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエートフタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、β−ヒドロキシブチレート、グリコレート、マレート、タルトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン−1−スルホネート、ナフタレン−2−スルホネート、またはマンデレートが挙げられる。
【0016】
本発明による、薬学製剤は、治療学的に有効な量のエンテカビルを含むことができる。例えば、エンテカビル1日服用量である0.5mg〜1mgを細分化して含むことができる。
【0017】
本発明において、「抗酸化剤」は、「酸化防止剤」と同じ意味であり、酸化反応を遮断する物質として、例えば、没食子酸プロピル、乾燥亜黄酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸レチノール、リボフラビン、芒硝、酸化亜鉛、ソルビン酸、ステアリン酸マグネシウム、クエン酸ナトリウム水和物、クエン酸無水物、クエン酸水和物、アジピン酸ジイソプロピル、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、亜黄酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、オキシベンゾン、二酸化ケイ素、中鎖脂肪酸トリグリセリド、炭酸水素ナトリウム、トコフェロール、トコフェロールアセテート、ベンゾフェノン、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、チオ硫酸ナトリウム水和物、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、D−マンニトール、D−ソルビトール及びL−システイン塩酸塩水和物からなる群より選択される一種以上を用いることができ、望ましくは、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、またはこれらの二種以上の混合物を用いることができる。
【0018】
本発明による薬学製剤において、エンテカビルと抗酸化剤との重量比は、1000:1〜1:100、望ましくは、100:1〜1:30、より望ましくは、50:1〜1:10、40:1〜1:10、さらに望ましくは、30:1〜1:10である。エンテカビルと抗酸化剤との重量比が、1000:1未満であれば、多量の水分含有製剤内におけるエンテカビルの水安定性を確保しにくく、エンテカビルと抗酸化剤との重量比が、1:100を超過すれば、使用量に限界のある剤形の薬学製剤の製造が困難となる。また、過量の抗酸化剤の使用によって口腔内における崩壊時間が長くなり、口腔内崩壊剤形に適していない。抗酸化剤のうち、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールまたはこれらの混合物を用いれば、抗酸化剤の使用量をエンテカビルに対し1/30以下に減らしても十分に水安定性の効果を発揮し、口腔内崩壊剤形の薬学製剤(e.g.フィルム剤形)に効果的である。
【0019】
本発明による薬学製剤の水分含量は、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、10%未満であり得る。薬学製剤の水分含量は、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が、固形製剤の場合は1%以上7%以下であり、フィルム型製剤の場合は2% 以上10%以下であり得る。前記LOD(%)測定条件である105℃、4時間は、薬学製剤内の水分含有量を確認するための最適の条件であって、本発明の内容は前記条件に限定されず、例えば、105℃で、5時間の間測定することもできる。
【0020】
本発明による薬学製剤には、通常薬学製剤に添加できる、薬学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。前記薬学的に許容可能な担体は、薬剤学分野において通常使用される賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、安定化剤、pH調節剤などの添加剤を含み、必要な場合、甘味剤、香料及び/または着色剤などをさらに添加することができる。前記賦形剤は、微結晶セルロース、でん粉、シリコンジオキシド(SiO
2)、糖エステル(sugar esters)、ルディプレス(Ludipress)乳糖、スクロース、マルトース、フルクトース、ソルビトールなどを含む。望ましくは、乳糖及びシリコンジオキシドの混合物を用いることができる。前記賦形剤の使用量は、薬学製剤の総重量に対し約90重量%以下であり得るが、これに制限されない。前記崩壊剤は、カルボキシメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、クロスポビドン、アルギン酸などを含む。前記崩壊剤の使用量は、薬学製剤の総重量に対し3〜16重量%の範囲であり得るが、これに制限されない。前記滑沢剤は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、グリセリルベヘネート、グリセリルパルミトステアレート、タルクなどを含み、薬学製剤の総重量に対し約3重量%以下に用いることができるが、これに制限されない。
【0021】
本発明による薬学製剤には、本発明の目的を阻害しない限り、有効成分としてエンテカビルに加え他の薬物をさらに用いることができ、例えば、追加の抗−B型肝炎ウイルス剤を含むことができる。
【0022】
本発明による薬学製剤は、追加の抗−B型肝炎ウイルス剤と組合せまたは交互に投与でき、例えば、インターフェロンα−2b、ペグインターフェロンα-2a、ラミブジン、テルビブジン、ラシビル、エムトリシタビン、クレブジン、アムドキソビル、バルトルシタビン、テノホビル及びアデホビルから任意に選択することができる。前述の薬物の外にも通常の技術者であれば、必要に応じて多様な薬物を追加的に選択して用いることができる。
【0023】
本発明による薬学製剤は、経口投与用に製剤化することができ、例えば、錠剤(tablet)、フィルム剤、懸濁剤(suspension)、顆粒剤(granule)、ゲル剤(gel)、丸剤(pill)、チンキ剤(tincture)、煎剤(decoction)、浸剤(infusion)、酒精剤(spirit)、流エキス剤(fluidextract)、エリキシル剤(elixir)、エキス剤(extract)、シロップ剤(syrup)、散剤(powder)、芳香水剤(aromatic water)、レモネード剤(lemonade)などの多様な形態に製剤化することができる。また、前記錠剤(tablet)は、例えば、口腔内崩壊錠(orally disintegrating tablet)、口腔粘膜付着錠(mucoadhesive tablet)、分散錠(dispersible tablet)、舌下錠(sublingual tablet)、バッカル錠(buccal tablet)、チュアブル錠(chewable tablet)、調剤錠(dispensing tablet)、多層錠(mulitilayered tablet)、有核錠(press−coated tablet)、沸騰錠(発泡錠,effervescent tablet)、溶解錠(solution tablet)などの多様な形態に製剤化することができる。そして、通常の技術者であれば、前記多様な錠剤を必要に応じて多様に変形して用いることができる。より望ましく、口腔内で崩壊(溶解)する剤形(即ち、口腔内崩壊性、口腔内溶解性)、例えば、口腔内分散性(溶解性)剤形、例えば、口腔内溶解フィルム、口腔内崩壊錠、懸濁液、懸濁錠、速効性崩壊錠、口腔内崩壊顆粒、口腔内崩壊トローチ剤、舌下錠、散剤、及び/またはチュアブル錠のような剤形であり得、多様な目的を考慮すれば、本発明による薬学製剤の剤形は口腔内溶解フィルム剤形が望ましい。前記口腔内溶解フィルム(orally dissolving film)とは、フィルム(film)、ストリップ(strip)、口腔内崩壊フィルム(orally disintegrating film)などの用語と相互交換的に用いることができ、舌上、口腔粘膜、舌下など、口腔内に付けて溶かして服用する剤形をいう。本発明による口腔内崩壊フィルム剤形の薬学製剤は、水なしでも服用可能という長所がある。
【0024】
他の様態として、本発明は、エンテカビルを有効成分として含む薬学製剤の製造方法であって、一種以上の抗酸化剤及びエンテカビルを添加する段階と、薬学製剤が、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上の水分含量を有するように乾燥する段階と、を含むことを特徴とする薬学製剤の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の製造方法によれば、抗酸化剤を添加して水溶媒内でエンテカビルを安定化させた口腔内崩壊フィルムの製造液を乾燥することで、最終の水分含量が105℃で、4時間の間USP731によって行ったLOD(%)が1% 以上である口腔内崩壊フィルムを提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、抗酸化剤を添加し、エンテカビルを、一定含量以上の水分を含む薬学製剤内で安定的に維持でき、これによって、一定含量以上の水分を含む剤形、例えば、口腔内崩壊性フィルム剤形の薬学製剤として提供できる優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて説明する。しかし、本発明による実施例は多くの他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0028】
[実施例1.エンテカビルを有効成分として含む口腔内崩壊フィルムの製造]
以下の方法によって水分に対する安定性が向上したエンテカビル含有の口腔内崩壊フィルムを製造した。
【0029】
水を溶媒にして添加剤(下記の表2及び表4に示した成分及びこれらの含量)を添加した後、攪拌して溶解または分散させ、ホモジェナイザー(Ultra turrax T−25,IKA社製)を用いて均質化した。ここに、エンテカビルを入れて溶かし、高分子(プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコール共重合体、またはこれらの混合物)を添加し、さらに同ホモジェナイザーを用いて均質化した後、別途に適当な溶媒(エタノール、メタノール、アセトン、ミネラルオイル、またはこれらの混合物)に溶かした抗酸化剤(下記の表2及び表4に示した抗酸化剤及びこれらの含量)を添加して均質化した。その後、真空条件でフィルム製造液内のガスを除いてPET(polyethylene terephthalate)フィルムの上にコーティングした後、60℃〜80℃で乾燥し、エンテカビルを含むフィルム製剤を製造した。
【0030】
[実験例]
安定性テストの分析方法
アッセイ(Assay)(%)及び総類縁物質(%)の確認のために、HPLC(液体クロマトグラフィー)を施し、HPLCのための検液は次の方法によって製造した。
【0031】
−検液(test solution)の製造
エンテカビル無水物1mgを含むフィルムを取って10mlフラスコに入れ、移動相と混合した。混合液を遠心分離機に入れて20分間遠心分離した。遠心分離液を0.2μmフィルター(水溶性PTFE)で濾した。その結果、検液(0.1mg/ml)を得た。
【0032】
−標準液(standard solution)の製造
エンテカビル無水物20mgを移動相とともに20mlフラスコに入れた。混合液を超音波処理し撹拌した。その結果、標準液(0.1mg/ml)を得た。
− HPLC条件
検出器(Detector):UV(254nm)
カラム(Column):ODS、250×4.6mm、5μm
流速(Flow rate):1.0ml/min
移動相(Mobile phase)
A:ACN:DW−3:97
B:ACN
<グラジエント条件>
【0034】
−アッセイ(%)
アッセイ(%)=At/As×Cs/Ct×P
At:検液試料におけるエンテカビルの反応面積
As:標準液試料におけるエンテカビルの反応面積
Ct:検液試料におけるエンテカビルの反応濃度
Cs:標準液試料におけるエンテカビルの反応濃度
P:標準デスモプレシンアセテートの純度(%)
−総類縁物質(%)
総類縁物質=個別類縁物質の総合
個別類縁物質(%)=Ai/At×100
Ai:検液試料における類縁物質の反応面積
At:検液試料におけるエンテカビルの反応面積
LOD(loss on Drying)
USP731に記載の方法に拠り、LODテストは105℃で、4時間実施した。
【0035】
崩壊時間(disintegration time)
校正された秒時計を用いてUSP701によってテストした。
【0036】
[実験例1.抗酸化剤の安定化効果]
口腔内溶解フィルムは、下記の表2に記載の成分及び含量で上述の実施例1の製造方法によって製造された。
【0037】
LOD(%)は、口腔内溶解フィルムを乾燥し、乾燥前後における口腔内溶解フィルムの重量差値に基づき、口腔内溶解フィルムが含む水分の含有量を把握できる。例えば、下記の表2において、実施例1のLOD(%)は7.8%であったことから、口腔内溶解フィルムに含有された7.8%の水分が消失したことが分かる。LOD(%)が10.0%未満である場合を口腔内溶解フィルムとして適切なものと認める。
【0038】
崩壊時間(disintegration time)は、口腔内溶解フィルムが崩壊(溶解)するにかかる時間に関し、1分未満である場合を口腔内解フィルムとして適切なものと認める。
【0040】
比較例と実施例1〜14とも、口腔内崩壊(溶解)剤形の特性上、LOD(%)が全て7.0%以上を示した。即ち、抗酸化剤の添加有無または抗酸化剤の添加量は、LOD(%)に影響を与えないことを確認した。
【0041】
なお、実施例1〜8及び13〜4は、崩壊時間が1分未満であることに対し、実施例9〜12は崩壊時間が1分を超過し、口腔内崩壊フィルムが溶解することに長時間がかかることを確認した。即ち、エンテカビルに対する抗酸化剤の重量比によって口腔内崩壊フィルムの溶解時間に変わることが分かった。
【0042】
安定性テストは、過酷条件下(40±2℃、相対湿度60±5%)で実施し、外部の水分と製剤との接触を遮断するために、薬学製剤は多層アルミニウムホイル容器内に入れて密封した状態でテストを進んだ。
【0043】
アッセイ(%)は、薬学製剤内で維持されるエンテカビルの量に関し、変化量(%)は、時間経過によるアッセイ(%)の変化値であって、該当の値から時間経過による薬学製剤内におけるエンテカビルの変化量が分かる。本実験においては、0週次、4週次及び8週次にアッセイ(%)を測定し、0週次のアッセイ(%)と8週次のアッセイ(%)との差を変化量(%)として記載した。
【0044】
総類縁物質(%)は、薬学製剤内で測定されるエンテカビル来由の類縁物質の量に関し、変化量(%)は、時間経過による総類縁物質(%)の変化値であって、該当の値から時間経過による薬学製剤内におけるエンテカビル由来の類縁物質の発生量の変化が分かる。本実験においては、0週次、4週次及び8週次に総類縁物質(%)を測定し、0週次の総類縁物質(%)と8週次の総類縁物質(%)との差を変化量(%)として記載した。
【0046】
抗酸化剤を用いた場合、過酷条件下で保存期間の間総類縁物質(%)が0.1%未満を維持したことから、変化量(%)にほとんど変化がないことを分かった。即ち、保存期間の間類縁物質の発生量がほとんどないことを分かった。
【0047】
また、苛酷条件下での保存期間の間アッセイ(%)が97.0〜103.0%を維持したことから、変化量(%)にほとんど変化がないことを分かった。即ち、保存期間の間水分によって加水分解することなくエンテカビルが維持されることを分かった。
【0048】
表2及び表3の結果から分かるように、抗酸化剤を用いる場合、製剤内に含有された水分にもかかわらず、エンテカビルが加水分解することなく維持されることが分かった。但し、エンテカビルに対する抗酸化剤の重量比が増加すれば、崩壊時間が増加することから、口腔内崩壊剤形としての不具合があることが分かった。
【0049】
[実験例2.抗酸化剤種類別の安定化効果]
口腔内溶解フィルムは、下記の表4に示した成分及び含量で、上述の実施例1の製造方法によって製造された。
【0050】
LOD(%)は、口腔内溶解フィルムを乾燥し、乾燥前後における口腔内溶解フィルムの重量差値に基づき、口腔内溶解フィルムが含む水分の含有量を把握できる。LOD(%)が10.0%未満である場合を口腔内溶解フィルムとして適切なものと認める。
【0052】
比較例のみならず、実施例1〜14とも、LOD(%)が10.0%未満を示した。但し、口腔内崩壊(溶解)剤形の特性上、LOD(%)が全て7.0% 以上を示した。即ち、抗酸化剤の添加有無または抗酸化剤の種類が、LOD(%)に影響を与えないことを確認した。また、下記の表5の安定性テストの結果を鑑みれば、LOD(%)は、エンテカビルの水分安定性にも影響を与えないことを確認した。
【0053】
安定性テストは、過酷条件下(40±2℃、相対湿度60±5%)で実施し、外部の水分と製剤との接触を遮断するために、薬学製剤は多層アルミニウムホイル容器内に入れて密封した状態でテストを進んだ。
【0054】
アッセイ(%)は、薬学製剤内で維持されるエンテカビルの量に関し、変化量(%)は、時間経過によるアッセイ(%)の変化値であって、該当の値から時間経過による薬学製剤内におけるエンテカビルの変化量が分かる。本実験においては、0週次、4週次及び8週次にアッセイ(%)を測定し、0週次のアッセイ(%)と8週次のアッセイ(%)との差を変化量(%)として記載した。
【0055】
総類縁物質(%)は、薬学製剤内で測定されるエンテカビル来由の類縁物質の量に関し、変化量(%)は、時間経過による総類縁物質(%)の変化値であって、該当の値から時間経過による薬学製剤内におけるエンテカビル由来の類縁物質の発生量の変化が分かる。本実験においては、0週次、4週次及び8週次に総類縁物質(%)を測定し、0週次の総類縁物質(%)と8週次の総類縁物質(%)との差を変化量(%)として記載した。
【0057】
エンテカビルに対する抗酸化剤の重量比が1:80であって、抗酸化剤を過量使用した場合、抗酸化剤の種類に係わらず全て優れた水安定性を示したが、エンテカビルに対する抗酸化剤の重量比が、1:1であって、抗酸化剤を微量使用した場合、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールを抗酸化剤として用いた場合にのみ優れた水安定性を示した。
【0058】
エンテカビルに対する抗酸化剤の重量比が1:80であって、抗酸化剤を過量使用した場合、抗酸化剤の種類に係わらず全て優れた水安定性を示したが、エンテカビルに対する抗酸化剤の重量比が1:1であって、抗酸化剤を微量使用した場合、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールを抗酸化剤として用いた場合にのみ優れた水安定性を示した。
【0059】
[実施例2.エンテカビルを有効成分として含む口腔内崩壊錠の製造]
適当な溶媒に、エンテカビル及び抗酸化剤を溶解した後、賦形剤と混合して顆粒物を製造し乾燥した。一定なサイズの粒子で整粒し、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤などを添加して混合した後、短抜打錠機で打錠し、エンテカビルを含む口腔内崩壊型錠剤を製造した。前記口腔内崩壊型錠剤の乾燥重量基準の水分含量は、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上7%未満であった。
【0060】
[実施例3.エンテカビルを有効成分として含む顆粒/散剤の製造]
適当な溶媒に、エンテカビル、抗酸化剤及び結合剤を溶解した後、流動層造粒機において賦形剤、崩壊剤が混合している混合物に噴霧して顆粒を製造した。製造された顆粒物に、賦形剤、甘味剤、着香剤を添加し混合してエンテカビルを含む顆粒/散剤を製造した。前記顆粒/散剤の乾燥重量基準の水分含量は、105℃で、4時間の間USP731によって測定したLOD(%)が1%以上7%未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明によれば、抗酸化剤を添加して、エンテカビルを一定含量以上の水分を含む薬学製剤内で安定的に維持でき、これによって、一定含量以上の水分を含む剤形、例えば、口腔内崩壊性フィルム剤形の薬学製剤として提供できる優れた効果を奏する。
【国際調査報告】