(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
本明細書には、耳垢の生成の調節、耳垢症の処置、及び耳垢症に関連する疾患又は疾病の処置のための組成物、製剤、方法、装置、及びキットが開示される。このような方法において、耳科用組成物及び製剤は、外耳道への耳科用組成物及び製剤の直接の適用を介して、耳垢症及び/又は耳垢症に関連する疾患を患う個体に局所投与される。
耳科用剤は、中性分子、遊離酸、遊離塩基、塩、プロドラッグ、又はそれらの組み合わせの形態である、ことを特徴とする請求項1乃至17の何れか1つに記載の医薬組成物。
耳科用剤は、コリンエステル又はカルバミン酸塩、植物アルカロイド、可逆的コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリン放出プロモータ、抗アドレナリン作用薬、交感神経刺激薬、又はそれらの組み合わせである、ことを特徴とする請求項1乃至27の何れか1つに記載の医薬組成物。
耳科用剤は、抗アドレナリン作用薬、好ましくはクロニジン、プロプラノロール、アテノロール、又はプラゾシンである、ことを特徴とする請求項28に記載の医薬組成物。
耳垢の生成を調節する方法であって、耳垢の生成を調節する特定の量の耳科用剤;及び耳に許容可能なゲルを含む医薬組成物を、必要とする個体に投与する工程を含む、方法。
耳垢症を処置する方法であって、耳垢の生成を調節する特定の量の耳科用剤;及び耳に許容可能なゲルを含む医薬組成物を、必要とする個体に投与する工程を含む、方法。
医薬組成物は、中耳又は内耳への耳垢の生成を調節する耳科用剤の放出をもたらさない、ことを特徴とする請求項1乃至44、及び63の何れか1つに記載の医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
耳垢は、正常な及び病気にかかった耳道の分泌物であり、これは蓄積後、正常な聴覚機能を妨げ又は干渉しかねず、更には患者に不快感や痛みを引き起こしかねない。かゆみ、痛み、閉塞感、雑音、及び聴力損失までもが、耳垢症、又は耳垢栓塞の結果として生じ得る。耳道に水が入ることで垢が膨れることにより、鼓膜の閉塞がかなり急に生じ得る。これは頻繁に、沐浴中に水の中に自身の頭を沈める個体における場合であり、発達された聴覚圧力により耳鳴と回転性目まいまでもが生じると知られている。耳垢を除去する方法は、潅注、潅注以外の用手除去、耳垢を柔らかくするための耳垢水、又はそれらの組み合わせを含む。これらの方法は時に、鼓膜穿孔、耳道裂傷、耳の感染症、又は聴覚損失などの合併症を結果としてもたらす。
【0029】
本開示は、EACへの薬物送達における問題を認識している。本明細書には、特定の実施形態において、耳垢の生成を調節するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、耳垢の生成を増大するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、耳垢の増大又は形成を防ぐ或いは減らすための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、耳垢の増大又は形成を除去するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、耳垢症などの、耳垢に関連する疾患又は疾病を処置するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。特定の実施形態において、本明細書には、耳垢症に関連する疾患又は疾病を処置するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。
【0030】
本明細書にはまた、耳垢の生成を調節するための、及び耳垢症並びに耳垢症に関連する疾患を処置するための、制御放出される耳科用組成物が開示される。本明細書に記載される製剤は、一定の、持続的な、拡張された、又は遅延された速度で、外耳道環境へ活性剤を放出し、故に、耳垢の生成、耳垢症、及び耳垢症に関連する疾患の処置において、薬物暴露における何らかの変動を回避する。
【0031】
本明細書には更に、厳重な滅菌要件で滅菌され、且つ外耳道への投与に適した、耳科用製剤が提供される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載の耳に適用可能な組成物は、実質的に発熱物質及び/又は微生物を含まない。
【0032】
本明細書には、pH、容積モル浸透圧濃度、イオンバランス、滅菌性、内毒素、及び/又は発熱性に関する特定の基準を満たす耳科用製剤である。本明細書に記載される耳科用組成物は、EACの微小環境に適合し、且つヒトへの投与に適している。
【0033】
限定されない例として、以下の一般的に用いられる溶媒、即ち、アルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンの使用は、耳に投与するための薬剤を調剤する場合に、制限され、減らされ、又は排除されねばならない。以下の共通して用いられている溶媒の使用は限定されているか、または減少させられるべきか、排除されるべきである。
故に、幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、アルコール、プロピレングリコール、およびシクロヘキサンを含まない、又は実質的に含まない。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約50ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約25ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約20ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約10ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約5ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約1ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。
【0034】
更に、耳科用調製物は、耳毒性であると知られる、特に低濃度の様々な潜在的に一般的な汚染物質を必要とする。他の剤形は、このような化合物に起因する汚染を制限することに努める一方で、耳科用調製物が必要とする厳重な使用上の注意を必要としない。例えば、以下の汚染物質、ヒ素、鉛、水銀、及び錫が、耳科用調製物に存在しない、又はほとんど存在してはならない。故に、幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、ヒ素、鉛、水銀、及びスズを含まないか、又は実質的に含まない。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約50ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約25ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約20ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約10ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約5ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約1ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。
【0035】
<特定の定義>
本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明確に指定していない限り、複数の指示物を含む。本出願において、単数形の使用は、特に別記しない限り複数を含む。本明細書で使用されるように、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。更に、用語「含んでいる(including)」、同様に他の形態(例えば、「含む(include)」、「含む(includes)、及び「含まれる(included)」の使用は、制限されない。
【0036】
本明細書で使用されるように、範囲及び量は、特定の値又は範囲の「約(about)」として表わすことができる。「約」は正確な量も含む。従って、「約40mg」は「約40mg」を意味し、「40mg」も意味する。通常、用語「約」は、実験誤差内にあると予想される量を含む。
【0037】
本明細書で使用されるように、製剤、組成物、又は成分に関して、用語「耳に許容可能な」は、処置を受ける被験体のEACに対する、持続的な有害効果が無いことを含む。「耳に薬学的に許容可能な」は、本明細書で使用されるように、担体又は希釈剤などの物質を指し、これは、EACに関連して化合物の生物活性又は特性を無効化せず、及び、EACに対する毒性を相対的に減少させる又は減少させるものであり、即ち、この物質は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことなく、或いは、含有される組成物の成分の何れかと有害に相互作用を生じることなく、個体に投与される。
【0038】
本明細書で使用されるように、特定の化合物又は医薬組成物の投与による、特定の耳の疾患、障害、又は疾病の症状の改善又は減少は、化合物又は組成物の投与に起因又は関連して、持続的又は一時的、永続性又は一過性のものであっても、重症度の減少、発症の遅延、進行の減速、又は持続期間の短縮の何れかを指す。
【0039】
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分における、本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
【0040】
「担体物質」は、耳科用剤、及び耳に許容可能な医薬製剤の放出特性に適合する賦形剤である。このような担体物質は、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。「薬学的に耳に適合する担体物質」は、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、リン酸二カリウム、セルロース及びセルロース接合体、ショ糖ナトリウムステアロイル乳酸、カラゲナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどを含むが、これらに限定されない。
【0041】
用語「希釈剤」は、送達前に耳科用剤を希釈するために使用され、且つEACに適合する、化学化合物を指す。
【0042】
「分散剤」及び/又は「粘度調節剤」は、液体媒体を通じて耳科用剤の拡散性及び均質性を制御する物質である。拡散促進剤/分散剤の例は、限定されないが、親水性ポリマー、電解液、Tween(登録商標)60又は80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商業上、Plasdone(登録商標)として知られる)、及び炭水化物系の分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばHPC、HPC−SL、及びHPC−L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばHPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、及びHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートステアラート(HPMCAS)、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、エチレンオキシド及びホルムアルデヒドを備えた4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(チロキサポールとしても知られる)、ポロキサマー(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレントリブロックコポリマー);及びポロキサミン(例えば、Poloxamine908(登録商標)とも知られるTetronic908(登録商標)であり、それは、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドとエチレンオキシドの連続的な追加から得た四官能性のブロックコポリマーである(BASF Corporation,Parsippany,N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、又はポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S−630)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールは、約300から約6000、又は約3350から約4000、又は約7000から約5400の分子量を有している)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ガム、例えばトラガカントガム、アカシアガム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン、糖、セルロース化合物、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサン、及びそれらの組み合わせを含む。セルロース又はトリエチルセルロースのような可塑剤も、分散剤として使用される。本明細書に開示される耳科用剤のリポソーム分散と自己乳化性分散に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロール、及びミリスチン酸イソプロピルである。
【0043】
「薬物吸収」又は「吸収」は、ほんの一例としてEACのへの投与のための局所部位からの耳科用剤の移動のプロセスを指す。「同時投与」等の用語は、本明細書で使用される場合、耳科用剤を単一の患者に投与することを包含することを意味しており、耳科用剤が、同じ投薬経路又は異なる投薬経路で投与されるか、又は、同時又は異なる時に投与される処置レジメンを含むことを意図されている。
【0044】
用語「有効な量」又は「治療上有効な量」は、本明細書で使用されるように、処置される疾患又は疾病の1以上の症状をある程度まで緩和すると予想されるのに十分な、投与される耳科用剤の量を指す。例えば、本明細書に開示される耳科用剤の投与の結果は、耳垢症の徴候、症状、又は原因の、減少及び/又は軽減である。例えば、治療用途に“有効な量”は、過度の有害な副作用を伴わずに、疾患症状を減らすか又は改善するのに要求される、本明細書に開示されるような製剤を含む耳科用剤の量である。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書に開示される少なくとも1つの耳科用剤組成物の「有効な量」は、過度の有害な副作用を伴うことなく、所望の薬理学的効果又は治療の向上を達成するのに有効な量である。「有効な量」又は「治療上有効な量」は、幾つかの実施形態において、投与される化合物の代謝、被験体の年齢、体重、全身状態、処置される疾病、処置される疾病の重篤度、及び主治医の判断の変動により、被験体ごとに変わることが理解される。また、薬物動態および薬理学を考慮して、拡張放出型の投薬形式における「有効な量」が、即効型の投薬形式における「有効な量」とは異なり得ることも理解される。
【0045】
用語「増強する(enhance)」又は「増強すること(enhancing)」は、耳科用剤の望ましい効果の有効性又は持続時間の何れかの増大或いは拡大、又は、治療剤の投与の結果の任意の有害な症状の縮小を指す。故に、本明細書に開示される耳科用剤(例えば、サーチュイン調節剤)の効果を増強することに関し、用語「増強すること」は、本明細書に開示される耳科用剤と組み合わされて使用される、他の治療剤の効果を、有効性又は持続時間の何れかにおいて増加又は拡張する能力を指す。「増強するのに有効な量」は、本明細書で使用されるように、所望の系における標的の耳構造の、別の治療剤又は耳科用剤の効果を増強するのに十分な、耳科用剤又は他の治療剤の量を指す。患者に用いる場合、この用途に有効な量は、疾患、障害、又は疾病の重篤度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する応答、処置する医師の判断に依存する。
【0046】
用語「阻害すること(inhibiting)」は、疾病の進行、例えば、又は処置を必要とする患者の疾病が進行するのを予防するか、遅らせるか、又は逆行させることを指す。
【0047】
「平衡障害」は、被験体にふらつきを感じさせ、又は運動感覚を持たせる、障害、病気、又は、疾病を指す。この定義には、目まい、回転性目まい、不平衡、失神性目まいが含まれる。平衡障害として分類される疾患は、限定されないが、難聴、目まい、回転性目まい、耳鳴、及び同様の疾病を含む。
【0048】
用語「キット」及び「製品」は、同義語として用いられる。
【0049】
「薬力学」は、EACの作用部位で薬物の濃度に関連して観察された生物学的な反応を判定する因子を指す。
【0050】
「薬物動態学」は、EACの作用部位での薬物の適切な濃度の達成と維持を判定する因子を指す。
【0051】
予防用途において、本明細書に記載される耳科用剤を含む組成物は、特定の疾患、障害、又は疾病、例えば耳垢症に敏感、又はさもなくばその危険性のある患者に、或いは、ほんの一例として難聴、目まい、回転性目まい、及び耳鳴を含む、耳垢症の特徴と知られている疾患又は症状に悩む患者に、投与される。このような量は、「予防に有効な量又は用量」であると定義される。この用途において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに依存する。
【0052】
用語「実質的に低分解生成物」は、活性剤の5重量%未満が、活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性剤の3重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。また更なる実施形態において、この用語は、活性剤の2重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性剤の1重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されている製剤の中にある任意の個々の不純物(例えば金属不純物、活性剤及び/又は賦形剤などの分解生成物)は、活性剤の5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満である。幾つかの実施形態において、製剤は、保存中に沈殿物を含有せず、又は、生産及び保存後に変色しない。
【0053】
本明細書で使用されるように、「実質的に微粉化粉末の形態である」は、ほんの一例として、活性剤の70重量%より多くが、活性剤の微粉化粒子の形態であることを含む。更なる実施形態において、この用語は、活性剤の80重量%より多くが、活性剤の微粉化粒子の形態であることを意味する。また更なる実施形態において、この用語は、活性剤の90重量%より多くが、活性剤の微粉化粒子の形態であることを意味する。用語「微粉化した」は、本明細書に記載されるような粒子の大きさを指し、その製造のプロセスにより粒子を制限するものではない。言い換えれば、「微粉化した」粒子は、大きさの減少を介して得られた粒子、及び大きさを減少することなく得られた粒子の両方を包含しなければならない。
【0054】
平均滞留時間(MRT)は、活性剤の分子が投薬後に耳の構造に存在する平均時間である。
【0055】
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物へと変換される耳科用剤を表す。特定の実施形態において、プロドラッグは、1以上の工程又はプロセスによって、化合物の、生物学的、薬学的、又は治療上活性な形態へと酵素的に代謝される。プロドラッグを生成するために、薬学的に活性な化合物は、インビボ投与された後で活性化合物が再生成されるように修飾される。1つの実施形態において、プロドラッグは、薬物の代謝安定性又は移動特性を変え、副作用又は毒性を隠し、或いは薬物の他の特性又は性質を変えるように設計される。本明細書に提供される化合物は、幾つかの実施形態において、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
【0056】
「可溶化剤」は、耳に許容可能な化合物を指し、前記化合物は、本明細書に開示される耳科用剤の溶解性を補助又は増加させる、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクサート、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200−600、グリコフロール、トランスキトール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビドなどである。
【0057】
「安定化剤」は、EACの環境に適合する、任意の酸化防止剤、緩衝液、酸、防腐剤などの化合物を指す。安定化剤は、限定されないが、(1)賦形剤と、シリンジ又はガラス瓶を含む容器又は送達システムとの適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、又は(3)製剤の安定性を向上させる、いずれかの薬剤を含む。
【0058】
「定常状態」は、本明細書で使用されるように、EACに投与される薬物の量が、1回の投薬間隔内で排除される薬物の量に等しいことで結果として定常になる状態、又は、標的とする構造内の薬物曝露濃度が一定レベルになる状態である。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「被験体」は、動物、好ましくは、ヒト又は非ヒトを含む哺乳動物を意味するために使用される。患者及び被験体という用語は、互換的に使用され得る。
【0060】
「界面活性剤」は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクセート、Tween60又は80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、モノオレイン酸ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリソルベート、ポロキサマー(polaxomer)、胆汁塩、モノステアリン酸グリセリルなどのような、耳に許容可能な化合物を指す。他の幾つかの界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び植物油(例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油);及び、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40等のポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテルを含む。幾つかの実施形態において、界面活性剤は、物理的安定性を高めるために、又は他の目的のために含まれる。
【0061】
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、又は「処置(treatment)」は、疾患又は疾病(例えば耳垢症)の症状を緩和、軽減、又は改善すること、付加的な症状を予防すること、症状の根本的な代謝原因を改善又は予防すること、疾患又は疾病を阻害すること、例えば、疾患又は疾病の進行を阻むこと、疾患又は疾病を和らげること、疾患又は疾病を退行させること、疾患又は疾病により引き起こされる状態を和らげること、又は、予防的及び/又は治療的の何れかで疾患又は疾病の症状を止めることを含む。
【0062】
<耳垢>
耳垢(Cerumen, or earwax)は、外耳道(EAC)の全体に見つけられるろう質の分泌物である。通常、耳垢は2つの表現型、即ち湿潤型と乾燥型に階層化される。湿潤型の表現型は、ハニーブラウンから暗褐色の外観を持ち、高濃度の脂質と色素顆粒を特徴とする。幾つかの実施形態において、湿潤型の耳垢は約50%の脂質を含有している。これは主にアフリカとヨーロッパの住民に見出されるものである。乾燥型の表現型は、灰色から白色の片状の外観を持ち、低濃度の脂質と色素果粒を特徴とする。幾つかの実施形態において、乾燥型の耳垢は約20%の脂質を含有している。これは主にアジアとネイティブアメリカンの住民に見出されるものである。更に、このような2つのタイプの耳垢は遺伝的に異なるものであり、その中で、染色体16上のATP結合カセットC11(ABCC11)遺伝子における単一の遺伝的変化がタイプを決定する。具体的に、湿潤型の表現型に関する対立遺伝子はABCC11のコード領域の538にてGを含有し、一方で乾燥型の表現型に関しては、538にAが存在する。
【0063】
耳垢は、敏感な外耳道内膜を乾燥状態から滑らかにし、細菌、真菌、昆虫、及び異物から耳を保護する。実際、様々な研究において、耳部感染の発生が耳垢の欠乏に一貫して関連づけられた場合に、耳垢の抗菌特性は実証された。幾つかの実施形態において、耳垢は、細菌と真菌に対し抗菌特性を及ぼす。例示的な細菌は、限定されないが、Haemophilus influenza、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa、及びEscherichia coliを含む。例示的な真菌は、限定されないが、Aspergillus niger、及びCandida albicansを含む。
【0064】
耳垢は、40以上の異なる物質で構成された混合物である。耳垢の主な成分はケラチンであり、約60重量%を含んでいる。付加的な成分は、脂腺及び耳道腺からの分泌物、外耳道(EAC)内の毛からの顆粒状の(gradular)分泌、脱落した上皮細胞、飽和及び不飽和長鎖脂肪酸、アルコール、スクワレン、ラノステリン、及びコレステロールを含む。EACは、耳介(心耳、又は頭部の側面で視認できる外耳の肉質部分)、耳道(外耳道)、及び鼓膜(ear drum)として知られる鼓膜(tympanic membrane)の外側に面する部分から構成される(
図2)。耳垢はEACの全体にわたって見出される。
【0065】
脂線と耳道腺(又は変性されたアポクリン腺)は、EACに存在する2つの外分泌腺である。皮脂腺は皮膚に存在する外分泌腺である。これらは、皮脂、粘性の油状又はろう質の分泌物であり、皮膚と毛を滑らかにし且つ防水を行うために用いられる。2つのタイプの脂線、即ち毛嚢に繋がるもの、及び独立して存在するものが存在する。皮脂腺が毛嚢に繋がると、堆積した皮脂は毛の基部の上に分泌され、次いで毛幹を介して皮の表面に運ばれる。
【0066】
脂線は、自然免疫に関与し、且つ炎症促進性及び抗炎症性の機能に関与すると知られている。皮脂、即ち脂線の生成物は、同様に抗菌特性を及ぼすと示されてきた。皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、及びサピエン酸などの脂肪酸を含む。脂質はまた、インビトロで広範囲のグラム陽性菌に対して抗菌活性を提示すると示された遊離脂肪酸(FFA)を含有している。更に、モノエン脂肪酸などの脂肪酸(例えばオレイン酸及びパルミトレイン酸)も抗菌活性を及ぼすと示されてきた。実際、パルミトレイン酸の投与は、野生型C57BL/6及び突然変異型flakeマウスにおける細菌性病変の大きさを小さくすると示されてきた。別個の研究において、オレイン酸とパルミトレイン酸は、S.aureusとS.pyogenesに対して抑制性であると示されてきた。脂肪酸に加えて、脂線はまた、hBD−1、hBD−2、及びhBD−3、並びにLL−37、カテリシジン抗菌ペプチド18(hCAP−18)の37−アミノ酸の長いC末端部分を含むヒトβ−デフェンシン(hBD)などの抗菌ペプチド(AMP)を放出し、これらは耳垢における抗菌特性に更に起因する。
【0067】
耳道腺又は変性されたアポクリン汗腺は、外耳道の皮下に存在する特殊な汗腺である。耳道腺は、コイル状の管状に形成された腺に生ずる細胞の内部の分泌層、及び細胞の外部の筋上皮層を含む。耳道腺は、より大きな管に流出し、次いで、外耳道に存在する保護毛に流出する。耳道腺は、皮脂よりも比較的粘性ではない分泌物を分泌する。
【0068】
産生及び排除の機構に不均衡が存在する場合、異常な耳垢が生じる。耳垢の増大は、不快感から深刻な健康合併症にまで通じかねない。
【0069】
本明細書には、特定の実施形態において、耳垢の生成を調節するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。幾つかの実施形態において、本明細書には、耳垢の生成を増大するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。幾つかの実施形態において、本明細書には、耳垢の増大又は形成を防ぐための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。幾つかの実施形態において、本明細書には、耳垢の増大又は形成を除去するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。幾つかの実施形態において、本明細書には、耳垢症などの、耳垢に関連する疾患又は疾病を処置するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。
【0070】
<耳垢症>
耳垢が外耳道に詰まるようになり外耳道を塞いでしまい、及び/又は鼓膜に嵌入してしまう場合、耳垢症又は耳垢栓塞が生じる。耳垢症は、子供10人中約1人、成人20人中1人、並びに、高齢者及び発達遅滞の人々の3分の1より多くに生じる。アメリカ合衆国では約1200万人が毎年診療を求めている。幾つかの実施形態において、耳垢の嵌入は、EACの完全閉塞である。幾つかの実施形態において、耳垢の嵌入は、EACの部分閉塞である。
【0071】
耳垢症の発生は、混合された耳垢の原因となる補聴器などの通常の突出、又は綿棒、或いは耳垢を混合する他の耳掃除装置の使用により、EACにおける耳垢の増大に起因しかねない。耳垢症に関連する疾患又は疾病は、耳そう痒症、耳痛、耳鳴、回転性目まい、耳閉感、及び難聴を含む。
【0072】
耳垢症の処置は、潅注、潅注以外の用手除去、耳垢を柔らかくするための耳垢水、又はそれらの組み合わせを含む。潅注は、耳洗浄による水又は生理食塩水の使用を含む。潅注以外の用手除去は、キューレット、プローブ、フック、鉗子、又は吸引の使用を含む。耳垢水は、水ベースの薬剤、油ベースの薬剤、及び水をベースとしない薬剤、油をベースとしない薬剤を含む。例えば、水をベースとする耳垢水は、酢酸、CERUMENEX(登録商標)(オレイン酸トリエタノールアミンポリペプチド凝縮液)、COLACE(登録商標)(ドキュセートナトリウム)、MOLCER(登録商標)(ドキュセートナトリウム)、WAXSOLl(登録商標)(ドキュセートナトリウム、2−フェノキシエタノール中で混合されたパラベン)、XERUMENEX(登録商標)(オレイン酸トリエタノールアミンポリペプチド凝縮液、プロピレングリコール、及びクロルブトール)、過酸化水素、重炭酸ナトリウム、及び無菌の生理食塩水を含む。油をベースとする耳垢水は、アーモンド油、落花生油、オリーブ油、鉱油/流動パラフィンの組み合わせ、CLEANEARS(登録商標)(鉱油、スクワレン、及びスペアミント(spiramint)油の組成物)、CERUMOL(登録商標)(落花生油、テレビン油、クロルブトール、及びパラジクロロベンゼンの組成物)、CIOCTYL−MEDO(登録商標)(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、トウモロコシ油)、及びEAREX(登録商標)(アーチス(archis)油、アーモンド油、及び改変されたショウノウ油)を含む。水をベースとせず、油をベースとしない耳垢水は、AUDAX(登録商標)(サリチル酸コリン、グリセリン)、DEBROX(登録商標)(過酸化カルバミド)、AURO(登録商標)(過酸化カルバミドと無水グリセリンの組成物)、及びEXTEROL(登録商標)(過酸化カルバミドと無水グリセロール)を含む。
【0073】
時に、耳垢症の処置の結果、著しい合併症がもたらされる。例えば、鼓膜穿孔、外耳道裂傷、耳の感染症、又は難聴などの合併症が、1000の耳洗浄において約1の割合で生じる。付加的な合併症は、外耳炎、痛み、目まい、及び失神又は気絶を含む。本開示は、耳垢除去に関連した合併症を減少又は改善する、耳科用組成物と治療方法の必要性を認識している。
【0074】
本明細書には、特定の実施形態において、特定の量の耳科用剤と耳に許容可能なゲルを含む組成物を、必要とする個体に投与することを含む、耳垢症を処置するための組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。更に本明細書には、特定の実施形態において、特定の量の耳科用剤と耳に許容可能なゲルを含む組成物を、必要とする個体に投与することを含む、耳垢症に関連する疾患又は疾病を処置するための組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達装置が開示される。
【0075】
<耳垢症に関連する疾患又は疾病>
耳垢症に関連する疾患又は疾病は、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、回転性目まい、耳閉感、及び難聴を含む。本明細書には、耳垢の生成を調節し、それにより本明細書に記載される疾患又は疾病を緩和する、組成物及び方法が開示される。
【0076】
<耳そう痒症>
耳そう痒症、又は外耳道のかゆみは、影響を受けた領域を引っ掻きたいという欲望又は反射を引き起こす、擽感又は刺激感覚である。場合によっては、発赤、腫れ、痛み、及び剥離が影響を受けた領域で進行しかねない。耳そう痒症は、様々な薬剤により引き起こされる。幾つかの実施形態において、耳の中の一次微生物感染により、或いは、後に耳道に広がる身体からの二次感染として、耳そう痒症が生じる。幾つかの実施形態において、湿疹又は乾癬などの皮膚疾病は、外耳道内の皮層刺激に繋がる。更に、ヘアスプレー、シャンプー、シャワー用ジェル、或いは、ほこり、ペット、及び花粉などのアレルゲンなどの外因性刺激物が、耳そう痒症に繋がりかねない。幾つかの実施形態において、耳そう痒症は、外耳炎などのより重症な合併症の初期徴候として機能する。
【0077】
<外耳炎>
外耳炎は外耳道の炎症である。外耳炎には、耳痛(耳の痛み又は不快感)、及び耳漏(外耳道中の、又はそこから生じる漏出)が付随である。更に、炎症が外耳道を閉塞するのに十分な腫れを誘発する場合、耳閉感と聴力損失も生じ得る。外耳炎は、2つのタイプ、即ち慢性外耳炎と急性外耳炎(AOE)に分類される。AOEは主に細菌又は真菌感染症によるものである。しかし、外耳円はまた、アトピー性皮膚炎、乾癬、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、及び紅斑性狼瘡などの、非感染性の全身又は局所の皮膚科学的プロセスにも関連し得る。幾つかの実施形態において、Pseudomonas aeruginosaとStaphylococcus aureusは、感染症の主な細菌源であると知られるが、Candida albicansとAspergillus種は真菌に相当するものである。通常、乾燥剤及び/又は抗生物質を含有する局所溶液は、軽症のために処方される。しかし、重症の場合、コデイン及び非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの全身性の鎮痛薬が必要なこともある。
【0078】
<耳痛>
耳痛(earache)又は耳の痛みとして知られる耳痛は、2つのタイプ、一次耳痛及び関連耳痛に分類される。一次耳痛は耳の内部から生じる耳の痛みである。関連耳痛は耳の外部から生じる耳の痛みである。関連耳痛の病因は複雑であり得るが、様々な周知の原因は、歯牙障害、静脈洞炎、首の問題、扁桃炎、咽頭炎、及び迷走神経と舌咽神経からの感覚枝を含む。場合によっては、関連耳痛は頭頸部の悪性腫瘍に関連する。
【0079】
<耳閉感>
耳閉感又は耳閉塞感は、耳が塞がっている、詰まっている、又は充満している感覚として説明される。耳痛と同様、耳閉感の病因は、多様な多数の根本的な原因によるものである。通常、耳閉感はまた、耳鳴、耳痛、及び難聴を伴うこともある。
【0080】
<難聴>
難聴は、聴力の部分的又は完全な欠損である。難聴は3つのタイプ、即ち伝音難聴、感音難聴、及び混合性難聴に分類され得る。伝音難聴は、音が外耳道を通って鼓膜へと効率的に伝えられない場合に生じる。幾つかの実施形態において、伝音難聴は、音響レベル、又は弱い音を聞く能力の減少に関係する。処置は、矯正的な医療手順又は外科手術手順を含む。感音難聴は、蝸牛(内耳)、又は蝸牛から脳までの神経経路に損傷がある場合に生じる。このタイプの難聴は通常、恒久的な難聴に繋がる。混合性難聴は、外耳及び内耳の両方の領域に沿って損傷が生じる、伝音難聴と感音難聴の組み合わせである。
【0081】
難聴の程度又は重症度は、7つの群、即ち、標準から、軽微、軽度、中度、中度に重症、重症、深刻(pround)にまで及ぶ群に分類される。加えて、難聴は、周波数に基づき階層化され得る。例えば、高音域のみに影響する難聴は高周波聴力喪失と呼ばれ、一方で低音域に影響するものは低周波聴力喪失と呼ばれる。場合によっては、難聴は高周波と低周波の両方に影響する。
【0082】
難聴には大抵、耳垢症、外耳炎、耳痛、耳鳴、及び回転性目まいなどの付加的な原因と症状が付随する。幾つかの実施形態において、耳垢症が聴力を40−45dB減少させ得ることが示されてきた。特に高齢者の人々における、そのような欠陥は、コミュニケーションの困難、及び身体的な不動性状態までも引き起こしかねない。
【0083】
<耳鳴>
耳鳴は、任意の外部刺激が無い状態での音の知覚として定義される。耳鳴は、継続的又は散発的に、片耳又は両耳に生じ、大抵の場合、響き渡る音として説明される。耳鳴は大抵の場合、他の疾患の診断症状として用いられる。他覚的耳鳴と自覚的耳鳴といった、2つのタイプの耳鳴が存在する。前者は、誰にでも聞こえる、身体で作成された音である。後者は、病気に冒された個体にのみ聞こえる。研究により、5000万以上の米国人が幾つかの形態の耳鳴を経験していると、推定されている。これらの5000万人の内、約1200万人が激しい耳鳴を経験している。
【0084】
耳鳴の様々な処置が存在する。IVにより投与されるリドカインは、病人の約60%−80%における耳鳴に関連した騒音を減少又は排除する。ノルトリプチリン、セルトラリン、及びパロキセチン等の、選択的な神経伝達物質再取り込み阻害剤も、耳鳴に対する効果を実証してきた。ベンゾジアゼピンはまた、耳鳴を処置するために処方される。
【0085】
<回転性目まい>
回転性目まいは、身体が静止している間に回転している又は揺動しているような感覚として説明される。2つのタイプの回転性目まいが存在する。自覚的回転性目まいは、身体の誤った運動感覚である。他覚的回転性目まいは、自身の周囲が動いているような知覚である。回転性目まいには大抵、吐き気、嘔吐症状、及び平衡維持の困難が付随する。幾つかの実施形態において、外耳炎が回転性目まいを誘発し得る。
【0086】
<医薬品>
本明細書には、耳垢の産生を調節する組成物又は製剤が提供される。また本明細書には、本明細書に開示される外分泌腺の機能又は活性を調節する組成物又は製剤が提供される。更に本明細書には、耳垢症を改善又は和らげる組成物又は製剤が提供される。加えて、本明細書には、耳そう痒症、外耳炎、耳痛、耳鳴、回転性目まい、耳閉感、及び難聴を含む、耳垢症に関連する障害を改善又は和らげる組成物又は製剤が提供される。
【0087】
耳垢、耳垢症、及び耳垢症に関連する障害は、本明細書に開示される医薬品に反応する原因と症状を提示する。本明細書に開示されていないが、耳垢及び耳垢症に関連する障害の改善又は根絶に有用な、耳科用剤は、示されている実施形態の範囲内に明らかに含まれ、且つその範囲内にあることが意図されている。
【0088】
幾つかの実施形態において、耳科用剤は、コリンエステル又はカルバミン酸塩、植物アルカロイド、可逆的コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリン放出プロモーター、抗アドレナリン作用薬、交感神経刺激薬、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、コリンエステル又はカルバミン酸塩、植物アルカロイド、可逆的コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリン放出プロモーター、抗アドレナリン作用薬、交感神経刺激薬、又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、コリンエステル又はカルバミン酸塩、好ましくはアセチルコリン又はカルバコールである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、植物アルカロイド、好ましくはピロカルピンである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、可逆的コリンエステラーゼ阻害剤、好ましくはネオスチグミン又はフィソスチグミンである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、アセチルコリン放出プロモーター、好ましくはドロペリドール、リスペリドン(resperidone)、又はトラゾドンである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、抗アドレナリン作用薬、好ましくはクロニジン、プロプラノロール、アテノロール、又はプラゾシンである。幾つかの実施形態において、耳科用剤は、交感神経刺激薬、好ましくはノルエピネフリン又はドーパミンである。
【0089】
幾つかの実施形態において、全身適用又は局所適用中に、他の臓器系において毒性であり、有害であり、又は有効ではないことが以前に示されている医薬品、例えば、肝臓で処理した後に生成する毒性代謝物によるもの、特定の臓器、組織、又は系における薬物の毒性、効果を達成するのに必要な高濃度によるもの、全身経路を介して放出されることが不可能なことによるもの、又はpK特性が悪いことによるものは、本明細書における幾つかの実施形態において有用である。従って、全身への放出が制限されている又は全身への放出が行われず、全身に毒性があり、pK特性が悪く、又はこれらの組み合わせを備えた医薬品は、本明細書に開示される実施形態の範囲内で熟慮される。
【0090】
本明細書で開示される耳科用剤を含む製剤は随意に、処置が必要な耳の構造を直接標的とする。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される製剤を含む耳科用剤の適用は、外耳道、鼓膜の外面、又はそれらの組み合わせに適用される。このような実施形態は薬物送達装置も随意に含み、この薬物送達装置は、シリンジ及び/又は針、ポンプ、点滴器、インサイツ形成ヒドロゲル材料、又はこれらの任意の組み合わせを用いることによって、開示された製剤を送達する。
【0091】
随意に、制御放出型の耳科用製剤は、特定の治療剤、賦形剤、希釈剤、又は担体を使用することで生じ得る潜在的な耳毒性の影響を弱めるための、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン、又は鉄キレート剤などの耳保護剤を含む。
【0092】
<EAC保護剤>
<外分泌腺分泌剤(Exocrine Gland Secreted Agents)>
外分泌腺分泌及び外分泌腺分泌剤が、本明細書に開示された製剤の使用のために熟慮される。従って、幾つかの実施形態は、天然の耳垢組成物を模倣し及び/又は抗菌特性を及ぼす、分泌剤の使用を組み込む。
【0093】
外分泌腺は、3つのカテゴリ、即ちホロクリン腺、メロクリン(又はエクリン)腺、及びアポクリン腺に分類される。ホロクリン腺は、各細胞の細胞質にその分泌物を蓄積し、管に全細胞を放出する。皮脂腺はホロクリン腺の一例である。アポクリン腺は汗腺であり、例としては耳道腺である。
【0094】
皮脂は皮脂腺から分泌された生成物である。幾つかの実施形態において、皮脂は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、及びサピエンなどの脂肪酸を含む。幾つかの実施形態において、皮脂は、スクワレン、ラノステロール、及びコレステロールを含む。皮脂の一部として分泌されるスクワレンは、ラノステロールとコレステロールを含む全ての動物ステロイドのための前駆体として機能する。スクワレンは、コレステロール及び他のイソプレノイドの産生の原因となるメバロン酸経路を介して産生される。HMG−CoA(又は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−コエンザイムA)還元酵素は、メバロン酸経路における律速酵素である。
【0095】
幾つかの実施形態において、外分泌腺分泌剤は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、及びサピエンなどの脂肪酸の少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、外分泌腺分泌剤は、スクワレン、ラノステロール、及びコレステロールの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、耳垢の成分は、外分泌腺分泌剤を含む。幾つかの実施形態において、耳垢は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、及びサピエンなどの脂肪酸の少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、耳垢は、スクワレン、ラノステロール、及びコレステロールの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物は更に、付加的な活性剤を含む。幾つかの実施形態において、付加的な活性剤は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、及びサピエンなどの脂肪酸の少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、付加的な活性剤は、スクワレン、ラノステロール、及びコレステロールの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物は更に、トリグリセリド、ワックスエステル、スクワレン、コレステロールエステル、コレステロール、及びサピエンなどの脂肪酸の少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物は更に、スクワレン、ラノステロール、及びコレステロールの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物は更に、スクワレン、ラノステロール、及びコレステロールを含む。
【0096】
幾つかの実施形態において、スクワレンの重量パーセントは約1%から約20%の間である。幾つかの実施形態において、スクワレンの重量パーセントは約2%から約15%の間である。幾つかの実施形態において、スクワレンの重量パーセントは約3%から約10%の間である。幾つかの実施形態において、スクワレンの重量パーセントは約5%から約8%の間である。幾つかの実施形態において、スクワレンの重量パーセントは、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20%である。
【0097】
幾つかの実施形態において、ラノステロールの重量パーセントは約1%から約20%の間である。幾つかの実施形態において、ラノステロールの重量パーセントは約2%から約15%の間である。幾つかの実施形態において、ラノステロールの重量パーセントは約3%から約10%の間である。幾つかの実施形態において、ラノステロールの重量パーセントは約5%から約8%の間である。幾つかの実施形態において、ラノステロールの重量パーセントは、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20%である。
【0098】
幾つかの実施形態において、コレステロールの重量パーセントは約1%から約20%の間である。幾つかの実施形態において、コレステロールの重量パーセントは約2%から約15%の間である。幾つかの実施形態において、コレステロールの重量パーセントは約3%から約10%の間である。幾つかの実施形態において、コレステロールの重量パーセントは約5%から約8%の間である。幾つかの実施形態において、コレステロールの重量パーセントは、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20%である。
【0099】
<抗菌剤>
幾つかの実施形態において、耳垢は、抗菌特性を及ぼす薬剤を含む。幾つかの実施形態において、このような薬剤は、脂質、タンパク質、及び抗菌ペプチド(AMP)を含む。幾つかの実施形態において、脂質は、脂肪酸、コレステロール、ワックス、ステロール、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、及びリン脂質を含む。幾つかの実施形態において、脂肪酸は、遊離脂肪酸(FFA)、並びに、オレイン酸及びパルミトレイン酸などの不飽和脂肪酸を含む。幾つかの実施形態において、AMPは、hBD−1、hBD−2、hBD−3、及びLL−37を含む。
【0100】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物は更に、抗菌剤を含む。幾つかの実施形態において、抗菌剤は、FFA、オレイン酸、パルミトレイン酸、及びAMPの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、抗菌剤は、FFA、オレイン酸、パルミトレイン酸、hBD−1、hBD−2、hBD−3、及びLL−37の少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物は更に、FFA、オレイン酸、パルミトレイン酸、及びAMPの少なくとも1つを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物は更に、FFA、オレイン酸、パルミトレイン酸、hBD−1、hBD−2、hBD−3、及びLL−37の少なくとも1つを含む。
【0101】
幾つかの実施形態において、抗菌剤の重量パーセントは約1%から約20%の間である。幾つかの実施形態において、抗菌剤の重量パーセントは約2%から約15%の間である。幾つかの実施形態において、抗菌剤の重量パーセントは約3%から約10%の間である。幾つかの実施形態において、抗菌剤の重量パーセントは約5%から約8%の間である。幾つかの実施形態において、抗菌剤の重量パーセントは、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、又は約20%である。
【0102】
<併用療法>
<コルチコステロイド>
本明細書に開示される製剤と組み合わせて使用するために熟考されるのは、自己免疫疾患及び/又は炎症性障害の結果としての症状又は影響を低減又は改善する、コルチコステロイド薬剤である。そのようなステロイドは、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、21−アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、エノキソロン、フラザコルト(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルオコルチンブチル、フルオコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレニデン、フルプレドニソロン、フルドロキシコルチド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコータル、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン、酢酸ハロプレドン、ハイドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フロ酸モメタゾン、パラメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン25−ジエチルアミノ−酢酸塩、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、トリアムシノロンヘキサセトニド、及びそれらの組み合わせを含む。
【0103】
<制吐剤/中枢神経系作用薬>
制吐剤は、本明細書に開示される耳科用剤の製剤と組み合わせて随意に使用される。制吐剤は、抗ヒスタミン、及び、抗精神病薬剤、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、及びフェノチアジンを含む中枢神経薬剤を含む。他の制吐剤は、ドラセトロン、グラニセトロン、オンダンセトロン、トロピセトロン、パロノセトロン、及びそれらの組み合わせを含むセロトニン受容体アンタゴニスト;ドンペリドン、プロペリドール(properidol)、ハロペリドール、クロルプロマジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、及びそれらの組み合わせを含むドーパミンアンタゴニスト;ドロナビノール、ナビロン、サティベックス、及びそれらの組み合わせを含むカンナビノイド;スコポラミンを含む抗コリン薬;及びデキサメタゾンを含むステロイド;トリメトベンズアミン(trimethobenzamine)、エメトロール(emetrol)、プロポフォール、ムシモール、及びそれらの組み合わせを含む。
【0104】
随意に、中枢神経系作用薬とバルビツール酸は、耳の障害に伴う吐き気と嘔吐の症状の処置に有用である。使用時に、適切なバルビツール酸塩及び/又は中枢神経系作用薬が、耳毒性を含む起こり得る副作用がない、特定の症状を和らげる又は改善するために選択される。更に、上記で議論されるように、EACへの薬物の標的化は、このような薬物の全身投与により引き起こされる、起こり得る副作用と毒性を低減する。中枢神経抑制薬として作用するバルビツール酸は、アロバルビタール、アルフェナール(alphenal)、アモバルビタール、アプロバルビタール、バルベキサクロン(barnexaclone)、バルビタール、ブラロバルビタール、ブタバルビタール、ブタルビタール、ブタリロナール、ブトバルビタール、コルバロール(corvalol)、クロチルバルビタール、シクロバビタール、シクロパール(cyclopal)、エタロバルビタール、フェバルバメート、ヘプタバルビタール、ヘキセタール、ヘキソバルビタール、メタルビタール、メトヘキシタール、メチルフェノバルビタール、ナルコバルビタール、ニールバルビタール(nealbarbital)、ペントバルビタール、フェノバルビタール、プリミドン、プロバルビタール、プロパリロナール、プロキシバルビタール(proxibarbital)、レポサール、セコバルビタール、シグモダール、チオペンタールナトリウム、タルブタール、チアルバルビタール、チアミラール、チオバルビタール、チオブタバルビタール、ツイナール、バロファン(valofane)、ビンバルビタール、ビニルビタール、及びそれらの組み合わせを含む。
【0105】
本明細書に開示される耳科用剤の製剤と共に随意に使用される他の中枢神経系作用薬は、ベンゾジアゼピン又はフェノチアジンを含む。有用なベンゾジアゼピンは、限定されないが、ジアゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ブロチゾラム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、フルラゼパム、ロプラゾラム、ロルメタゼパム、ミダゾラム、ニメタゼパム、ニトラゼパム、テルナゼパム(ternazepam)、トリアゾラム、及びそれらの組み合わせを含む。フェノチアジンの例は、プロクロルペラジン、クロルプロマジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボプロマジン(levopromazine)、メトトリメプラジン、メソリダジン、チオリダジン(thiroridazine)、フルフェナジン、ペルフェナジン、フルペンチキソール、トリフルオペラジン、及びそれらの組み合わせを含む。
【0106】
抗ヒスタミン、又はヒスタミンアンタゴニストは、ヒスタミンの放出又は作用を阻害するように作用する。H1受容体を標的とする抗ヒスタミンは、耳の障害に関連する吐き気と嘔吐の症状の緩和又は減少に有用である。そのような抗ヒスタミンは、メクリジン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、及びクエチアピンを含むが、これらに限定されない。他の抗ヒスタミンは、メピラミン、ピペロキサン、アンタゾリン、カルビノキサミン、ドキシルアミン、クレマスチン、ジメンヒドリナート、フェニラミン、クロルフェナミン、クロルフェニラミン、デキスクロルフェニルアミン、ブロムフェニラミン、トリプロリジン、シクリジン、クロルサイクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジン、アリメマジン、トリメプラジン、シプロヘプタジン、アザタジン、ケトチフェン、オキサトミド、及びそれらの組み合わせを含む。
【0107】
<活性剤の濃度>
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、組成物の約0.01重量%と約90重量%の間、約0.01重量%と約80重量%の間、約0.01重量%と約70重量%の間、約0.01重量%と約60重量%の間、約0.01重量%と約50重量%の間、約0.1重量%と約40重量%の間、約0.1重量%と30重量%の間、約0.1重量%と20重量%の間、約0.1重量%と約10重量%の間、又は約0.1重量%と約5重量%の間の活性医薬成分、即ち活性成分、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩の濃度を有する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、組成物の約1重量%と約50重量%の間、約5重量%と約50重量%の間、約10重量%と約40重量%の間、又は約10重量%と約30重量%の間の活性医薬品、即ち活性成分、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩の濃度を有する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約70重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約60重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約50重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約40重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約30重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約25重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約20重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約19重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約18重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約17重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約16重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約15重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約14重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約13重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約12重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約11重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約10重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約9重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約8重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約7重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約6重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約5重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約4重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約3重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約2.5重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約2重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約1.5重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約1重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約0.5重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約0.1重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の約0.01重量%の耳科用剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、製剤の容量につき、約0.1mg/mLと約70mg/mLの間、約0.5mg/mLと約70mg/mLの間、約0.5mg/mLと約50mg/mLの間、約0.5mg/mLと約20mg/mLの間、約1mg/mLと約70mg/mLの間、約1mgと約50mg/mLの間、約1mg/mLと約20mg/mLの間、約1mg/mLと約10mg/mLの間、又は約1mg/mLと約5mg/mLの間の活性医薬成分、即ち活性剤、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩の濃度を有する。
【0108】
<滅菌の一般法>
本明細書には、耳垢の産生を調節し、及び/又は本明細書に開示される外分泌腺の機能又は活性を調節する、耳科用組成物が提供される。また本明細書には、耳垢症及び耳垢症に関連する障害を改善又は和らげる、耳科用組成物が提供される。更に、本明細書には、本明細書に開示される耳科用組成物の投与を含む方法が提供される。幾つかの実施形態において、組成物は滅菌される。本明細書に開示される実施形態には、ヒトに使用するための、本明細書に開示される医薬組成物を滅菌するための手段及びプロセスが含まれる。その目的は、感染症を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬品を提供することである。米国食品医薬品局は、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmにて利用可能な刊行物「Guidance for Industry:Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing」において規制手引きを提供しており、該刊行物はその全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
本明細書で使用されるように、滅菌は、生成物又は包装に存在する微生物を死滅させるか、又は除去するプロセスを意味する。物体及び組成物を滅菌するのに利用可能な任意の適切な方法が使用される。微生物を不活性化するのに利用可能な方法としては、限定されないが、激しく熱を加えること、致死性の化学物質、又はγ線を適用することが挙げられる。幾つかの実施形態において、耳科用治療製剤を調製するプロセスは、加熱滅菌、化学的滅菌、放射線滅菌、又は濾過滅菌から選択される滅菌方法に製剤をさらす工程を含む。使用される方法は、滅菌対象の装置又は組成物の性質に大きく依存する。多くの滅菌方法の詳細な記載は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy published by Lippincott,Williams & Wilkins」の40章において提供され、この主題に関する参照により組み込まれる。
【0110】
<加熱による滅菌>
極度の熱の適用による滅菌のための多くの方法が利用可能である。その1つは、飽和蒸気によるオートクレーブの使用を介した方法である。この方法では、少なくとも121℃の温度での飽和蒸気を対象と接触させて、滅菌することができる。熱は、滅菌される対象の場合には微生物に直接伝達され、或いは、滅菌される水溶液の大半を加熱することにより微生物に間接的に伝達される。この方法は、滅菌プロセスにおいて柔軟性、安全性、及び経済性を可能にするよう広範囲に実施される。
【0111】
乾熱滅菌は、高温で微生物を死滅させ、発熱物質の除去を行う方法である。このプロセスは、HEPAで濾過した微生物を含まない空気を、滅菌プロセスのために少なくとも130〜180℃の温度に加熱し、発熱物質除去プロセスのために少なくとも230〜250℃の温度に加熱するのに適した装置で行われる。濃縮した製剤又は粉末化した製剤を再構築するための水も、オートクレーブにより滅菌される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、乾熱、例えば、130−140℃の内部粉末温度で約7−11時間、又は150−180℃の内部温度で1−2時間の加熱によって滅菌される、微粉化した耳科用剤(例えば、微粉化したリノピルジン粉末)を含む。
【0112】
<化学滅菌>
化学物質による滅菌方法は、極度の熱による滅菌に耐性の無い生成物に対する代替法である。この方法では、例えば、エチレンオキシド、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、又はオゾンなどの、殺菌性を有する様々な気体及び蒸気を抗アポトーシス薬として使用する。例えば、エチレンオキシドの殺菌活性は、エチレンオキシドが反応性アルキル化剤として機能する能力によるものである。故に、滅菌プロセスは、エチレンオキシド蒸気を、滅菌される生成物と直接接触させることが必要となる。
【0113】
<放射線滅菌>
放射線滅菌の1つの利点は、熱分解又は他の損傷を受けることなく、多くの種類の生成物を滅菌する能力である。一般的に使用される放射線は、ベータ線、又は代替的に、
60Co源由来のガンマ線である。ガンマ線の透過能により、溶液、組成物、及び不均質な混合物を含む多くの種類の生成物の滅菌における使用が可能となる。この照射による殺菌効果は、ガンマ線と生体高分子との相互作用によるものである。この相互作用により、帯電種及び遊離ラジカルが生成される。再配列及び架橋プロセスなどのその後の化学反応の結果、これら生体高分子の通常の機能が失われる。本明細書に記載される製剤はまた、ベータ照射を用いて随意に滅菌される。
【0114】
<濾過>
濾過滅菌は、溶液から微生物を破壊するのではなく除去するために用いられる方法である。膜フィルターを用いて、熱に感受性のある溶液を濾過する。このようなフィルターは、混合セルロース誘導体エステル(MCE)、フッ化ポリビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強力で、均質なポリマーであり、0.1から0.22μmに及ぶ孔径を有している。様々な特性を有する溶液は、異なるフィルター膜を用いて随意に濾過される。例えば、PVF膜及びPTFE膜は、有機溶媒を濾過するのに十分適しており、一方、水溶液は、PVF膜又はMCE膜を介して濾過される。フィルター装置は、シリンジに取り付けられる単回使用時の(the single point−of−use)の使い捨てフィルターから、製造工場で使用するための商業規模のフィルターまで、多くの規模での使用に利用可能である。膜フィルターは、オートクレーブ滅菌又は化学滅菌により滅菌される。膜濾過システムの検証は、以下の標準化されたプロトコルに従って行われ(文献「Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids,Vol4,No.3.Washington,D.C:Health Industry Manufacturers Association,1981」)、そして、Brevundimonas diminuta(ATCC19146)のような一般的ではないほど小さな微生物について、既知の量(約10
7/cm
2)を用いて膜フィルターを検証すること(challenging)を含む。
【0115】
医薬組成物は随意に、膜フィルターに通すことにより滅菌される。ナノ粒子(米国特許第6,139,870号)又は多重膜ベシクル(Richard et al.,International Journal of Pharmaceutics(2006),312(1‐2):144−50)を含む製剤は、それらの組織構造を破壊することなく、0.22μmのフィルターに通す濾過による滅菌に適している。
【0116】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、濾過滅菌により製剤(又はその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態において、耳に許容可能な耳科用製剤は粒子を含み、粒子製剤は濾過滅菌に適切である。更なる実施形態において、上述の粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、又は大きさが100nm未満の粒子を含む。別の実施形態において、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子の滅菌性は、前駆体成分の溶液を滅菌濾過することによって確保される。別の実施形態において、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、この粒子製剤の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。更なる実施形態において、低温滅菌濾過は、0−30℃の間、0−20℃の間、0−10℃の間、10−20℃の間、又は20−30℃の間の温度で行われる。
【0117】
別の実施形態において、耳に許容可能な粒子製剤を調製するプロセスは、粒子製剤を含有する水溶液を滅菌フィルターに通して低温で濾過する工程;滅菌溶液を凍結乾燥する工程;及び、投与前に粒子製剤を滅菌水でもどす工程を含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤は、微粉化した活性医薬成分を含有する、1つのバイアル製剤中の懸濁液として製造される。1つのバイアル製剤は、滅菌ポロキサマー溶液を、微粉化した滅菌活性成分(例えば、コリンエステル又はカルバミン酸塩、植物アルカロイド、可逆的コリンエステラーゼ阻害剤、アセチルコリン放出プロモーター、抗アドレナリン作用薬、交感神経様作用薬)と無菌状態で混合し、且つ製剤を滅菌医薬容器に移すことによって調製される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤を懸濁液として含有する1つのバイアルは、分注及び/又は投与前に再懸濁される。
【0118】
特定の実施形態において、濾過手順及び/又は充填手順は、本明細書に記載される製剤のゲル温度(Tgel)より約5℃低い温度で、100cPの理論値よりも下の粘度と共に行われることで、蠕動ポンプを用いて妥当な時間での濾過が可能となる。
【0119】
別の実施形態において、耳に許容可能な耳科用製剤は、濾過滅菌に適したナノ粒子製剤を含む。更なる実施形態において、ナノ粒子製剤は、大きさが300nm未満、大きさが200nm未満、又は大きさが100nm未満のナノ粒子を含む。別の実施形態において、耳に許容可能な製剤は、熱可逆性ゲル製剤を含み、このゲル製剤の滅菌性は、低温滅菌濾過によって確保される。更なる実施形態において、低温滅菌濾過は、0−30℃の間、0−20℃の間、0−10℃の間、10−20℃の間、又は20−30℃の間の温度で行われる。別の実施形態において、耳に許容可能な熱可逆性ゲル製剤を調製するプロセスは、熱可逆性ゲル成分を含有する水溶液を滅菌フィルターに通して低温で濾過する工程;滅菌溶液を凍結乾燥する工程;及び、投与前にこの熱可逆性ゲル製剤を滅菌水でもどす工程を含む。
【0120】
特定の実施形態において、活性成分は、適切なビヒクル(例えば、緩衝液)に溶解され、(例えば、熱処理、濾過、γ線によって)別々に滅菌される。幾つかの例において、活性成分は、乾燥状態で別々に滅菌される。幾つかの例において、活性成分は、懸濁液として、又はコロイド状懸濁液として滅菌される。残りの賦形剤(例えば、耳科用製剤に存在する流体ゲル成分)は、適切な方法(例えば、賦形剤の冷たい混合物の濾過及び/又は照射)により別個の工程で滅菌され;その後、別々に滅菌される2つの溶液を無菌的に混合することで、最終的な耳科用製剤をもたらす。幾つかの例において、本明細書に記載される製剤を投与する直前に最終的な無菌状態の混合が行われる。
【0121】
幾つかの例において、従来から使用されている滅菌方法(例えば、熱処理(例えば、オートクレーブ中で)、γ線、濾過)により、製剤中のポリマー成分(例えば、熱硬化性、又はゲル化性)及び/又は活性薬剤の不可逆的な分解が生じる。幾つかの例において、膜(例えば、0.2μmの膜)に通す濾過による耳科用製剤の滅菌は、製剤が濾過プロセス中にゲル化するチキソトロピー性ポリマーを含む場合には、不可能である。
【0122】
従って、本明細書には、ポリマー成分(例えば、熱硬化性及び/又はゲル化性の成分)及び/又は活性剤が、滅菌プロセス中に分解するのを防ぐ、耳科用製剤を滅菌する方法が提供される。幾つかの実施形態において、緩衝液成分を特定のpH範囲で用いること、及び、特定の比率のゲル化剤を製剤中で用いることによって、活性剤(例えば、本明細書に記載される任意の耳科用剤)の分解が、低減或いは排除される。幾つかの実施形態において、適切なゲル化剤及び/又は熱硬化性ポリマーを選択することによって、本明細書に記載される製剤を濾過により滅菌することができる。幾つかの実施形態では、適切な熱硬化性ポリマー及び適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)を、製剤の特定のpH範囲と組み合わせて用いることによって、治療剤又はポリマー賦形剤が実質的に分解することなく、記載される製剤を高温で滅菌することができる。本明細書に提供される滅菌方法の利点は、特定の例において、滅菌工程中に活性剤及び/又は賦形剤及び/又はポリマー成分が失われることなく製剤がオートクレーブを介して最終滅菌され、且つ、製剤が微生物及び/又は発熱物質を実質的に含まない状態にすることである。
【0123】
<微生物>
本明細書には、耳垢の産生を調節し、及び/又は本明細書に開示される外分泌腺の機能又は活性を調節する、耳に許容可能な組成物が提供される。また本明細書には、耳垢症及び耳垢症に関連する障害を改善又は和らげる、耳科用組成物が提供される。更に、本明細書には、本明細書に開示される耳科用組成物の投与を含む方法が提供される。幾つかの実施形態において、組成物は、実質的に微生物を含まない。許容可能な生物汚染度レベル又は滅菌レベルは、限定されないが、米国薬局方1111章(以下参照)を含む、治療に許容可能な耳科用組成物を規定する適用可能な基準に基づく。例えば、許容可能な滅菌レベル(例えば、生物汚染度)は、製剤1gあたり約10コロニー形成単位(cfu)、製剤1gあたり約50cfu、製剤1gあたり約100cfu、製剤1gあたり約500cfu、又は製剤1gあたり約1000cfuを含む。幾つかの実施形態において、製剤の許容可能な生物汚染度レベル又は滅菌レベルは、微生物剤の10cfu/mL未満、50cfu/mL未満、500cfu/mL未満、又は1000cfu/mL未満を含む。加えて、許容可能な生物汚染度レベル又は滅菌レベルは、特定の好ましくない微生物製剤の除外を含む。例として、特定の好ましくない微生物製剤としては、限定されないが、Escherichia coli(E.coli)、Salmonella sp.、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、及び/又は他の特定の微生物剤が挙げられる。
【0124】
耳に許容可能な耳科用製剤の滅菌性は、米国薬局方61章、62章、及び71章に従った滅菌保証プログラムを通じて確認される。滅菌保証による品質管理、品質保証、及び検証プロセスの鍵となる要素は、滅菌試験方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は、試験対象の組成物のサンプルを成長培地に加え、21日間までの期間にわたりインキュベートする、直接接種である。成長培地の濁りは、汚染を示す。この方法の欠点は、材料の塊からのサンプリング量が少量だと感受性が下がること、及び、微生物の成長の検出が視覚的な観察に基づくことが挙げられる。代替法は、膜濾過による殺菌試験である。この方法において、ある容量の生成物が小さな膜濾紙に通される。次いで、濾紙を培地に入れ、微生物の成長を促進させる。この方法は、生成物の塊全体をサンプリングするので、感度がより高くなるという利点を有する。膜濾過による滅菌試験によって決定するために、市販のMillipore Steritest滅菌試験システムが随意に用いられる。クリーム又は軟膏の濾過試験のために、SteritestフィルタシステムのNo.TLHVSL210が使用される。エマルジョン又は粘性生成物の濾過試験のために、SteritestフィルタシステムのNo.TLAREM210又はTDAREM210が使用される。予め充填されたシリンジの濾過試験のために、SteritestフィルタシステムのNo.TTHASY210が使用される。エアロゾル又はフォームとして分散される物質の濾過試験のために、SteritestフィルタシステムのNo.TTHVA210が使用される。アンプル又はバイアル中の可溶性粉末の濾過試験のために、SteritestフィルタシステムのNo.TTHADA210又はTTHADV210が使用される。E.coli及びSalmonellaについての試験は、30−35℃で24−72時間インキュベートされる乳糖ブロスの使用、MacConkey寒天及び/又はEMB寒天における18−24時間のインキュベーション、及び/又はRappaport培地の使用を含む。P.aeruginosaを検出するための試験は、NAC寒天の使用を含む。米国薬局方の62章は、特定の好ましくない微生物のための試験手順を更に列挙している。
【0125】
E.coliとSalmonella についての試験は、24−72時間、30−35°Cでインキュベートされた乳糖ブイヨンの使用、18−24時間のマッコンキー寒天および/またはEMB寒天培地中でのインキュベーション、および/または、ラパポート培地の使用を含む。P.aeruginosaの検出のための試験は、NAC寒天の使用を含んでいる。米国薬局方のチャプター(United States Pharmacopeia Chapter)<62>はさらに、指定された好ましくない微生物向けの試験手順を列挙している。
【0126】
特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出製剤は、製剤1グラム当たり、約60コロニー形成単位(CFU)未満、約50コロニー形成単位未満、約40コロニー形成単位未満、または約30コロニー形成単位未満の微生物薬剤を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用製剤はEACと等張になるように処方される。
【0127】
内毒素
本明細書で開示される、耳垢の生成を調節するおよび/または外分泌腺の機能または活性を調節する耳科用組成物が本明細書で提供される。さらに、耳垢症および耳垢症に関連する障害を改善または減少させる耳科用組成物が本明細書で提供される。さらに、本明細書で開示される耳科用組成物の投与を含む方法が本明細書で提示される。いくつかの実施形態では、組成物は内毒素を実質的に含まない。滅菌処理法のさらなる態様は、副産物が微生物(以後、「生成物」)を死滅させないようにすることである。発熱物質除去のプロセスはサンプルから発熱物質を取り除く。発熱物質は免疫反応を引き起こす内毒素または外毒素である。内毒素の一例は、グラム陰性菌の細胞壁で見られるリポ多糖類(LPS)分子である。オートクレーブ滅菌またはエチレンオキシドを用いる処置のような滅菌処理は細菌を殺すが、LPS残留物は敗血症性ショックのような炎症誘発性の免疫反応を引き起こす。内毒素の分子の大きさが大きく変動する可能性があるため、内毒素の存在は「内毒素単位」(EU)で表現される。1EUはE. coli LPSの100ピコグラムと等価である。ヒトは、体重の5EU/kgと同じくらいわずかな反応を示すことがある。バイオバーデン(例えば、微生物限度)および/または無菌状態(例えば内毒素レベル)は、当該技術分野で認識されるような任意の単位で表現される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、従来の許容可能な内毒素レベル(例えば被験体の体重の5EU/kg)と比較して、より低い内毒素レベル(例えば被験体の体重の4EU/kg未満)を含んでいる。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、被験体の体重の約5EU/kg未満を有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、被験体の体重の約4EU/kg未満を有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、被験体の体重の約3EU/kg未満を有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、被験体の体重の約2EU/kg未満を有する。
【0128】
いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、製剤の約5EU/kg未満を有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、製剤の約4EU/kg未満を有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、製剤の約3EU/kg未満を有する。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約5EU/kg未満の生成物を有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約1EU/kg未満の生成物を有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約0.2EU/kg未満の生成物を有する。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約5EU/g未満の単位または生成物を有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約4EU/g未満の単位または生成物を有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約3EU/g未満の単位または生成物を有する。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約5EU/mg未満の単位または生成物を有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約4EU/mg未満の単位または生成物のを有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、約3EU/mg未満の単位または生成物を有する。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、製剤の約1〜約5EU/mLを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、約2〜約5EU/mLの製剤、約3〜約5EU/mLの製剤、または約4〜約5EU/mLの製剤を含む。
【0129】
特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、従来の許容可能な内毒素レベル(例えば0.5EU/mLの製剤)と比較して、より低い内毒素レベル(例えば0.5EU/mL未満の製剤)を含んでいる。いくつかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤または装置は、製剤の約0.5EU/mL未満を有する。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、製剤の約0.4EU/mL未満を有する。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用製剤は、製剤の約0.2EU/mL未満を有する。
【0130】
ほんの一例として、発熱物質検出は、複数の方法によって行われる。無菌に適切な試験は、米国薬局方(USP)<71>無菌試験法(23rd edition,1995)に記載される試験を含んでいる。ウサギの発熱性物質試験法とリムルス変形細胞溶解物試験は両方とも、米国薬局方チャプター<85>および<151>(USP23/NF 18, Biological Tests, The United States Pharmacopeial Convention, Rockville, MD, 1995)の中で指定される。代替的な発熱物質分析は単球活性化サイトカイン分析に基づいて開発されている。品質管理適用に適した均一の細胞株が開発されており、ウサギの発熱性物質試験法とリムルス変形細胞溶解物試験に合格したサンプルの発熱性を検知する能力を実証した(Taktak et al, J. Pharm. Pharmacol. (1990), 43:578−82)。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療薬製剤は発熱物質除去に晒される。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療薬製剤の製造のプロセスは、発熱性に関して製剤を試験することを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、発熱物質を実質的に含まない。
【0131】
pHと実質的な容積モル浸透圧濃度
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳科用組成物は、外耳道(EAC)と適合するイオン平衡を提供するために処方される。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、外耳道(EAC)のイオン平衡を妨害しないように処方される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、EACと同じまたは実質的に同じイオン平衡を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、耳垢症に関連する障害のような合併症を引き起こすようにはEACのイオン平衡を妨害しない。
【0133】
本明細書で使用されるように、「実質的な容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度」または「送達可能な容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度」は、活性な薬剤と、ゲル化剤および/または増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、カルボキシメチルセルロースなど)以外のすべての賦形剤との容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度を測定することにより決定されるような、組成物の容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度を意味する、本明細書に開示される組成物の実質的な容積モル浸透圧濃度は、Viegas et. al., Int. J. Pharm., 1998, 160, 157−162に記載されるような凝固点降下方法などの適切な方法によって測定される。いくつかの例において、本明細書に開示される組成物の実質的な容積モル浸透圧濃度は、高温の組成物の容積モル浸透圧濃度の測定を可能にする蒸気圧浸透圧測定(例えば蒸気圧降下方法)によって測定される。いくつかの例では、蒸気圧降下方法は、ゲル化剤がゲルの形態である高温のゲル化剤(例えば熱可逆性ポリマー)を含む組成物の容積モル浸透圧濃度の測定を可能にする。
【0134】
いくつかの実施形態では、作用(例えばEAC)の標的部位の容積モル浸透圧濃度は、本明細書に記載される組成物の送達された容積モル浸透圧濃度とほぼ同じである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、約150mOsm/L−約500mOsm/L、約250mOsm/L−約500mOsm/L、約250mOsm/L−約350mOsm/L、約280mOsm/L−約370mOsm/L、または約250mOsm/L−約320mOsm/Lの送達可能な容積モル浸透圧濃度を有する。
【0135】
本明細書に開示される耳科用組成物の実際的な重量モル浸透圧濃度は、約100mOsm/kgから約1000mOsm/kg、約200mOsm/kgから約800mOsm/kg、約250mOsm/kgから約500mOsm/kg、または約250mOsm/kgから約320mOsmkg、または約250mOsm/kgから約350mOsm/kg、あるいは約280mOsmkgから約320mOsmkgである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、約100mOsm/Lから約1000mOsm/L、約200mOsm/Lから約800mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約250mOsm/L、から約320mOsm/L、または約280mOsm/Lから約320mOsm/Lの実質的な容積モル浸透圧濃度を有する。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、(例えば緩衝液の使用によって)約5.5〜9.0のEACに適合するpH範囲に調整される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、約5.5〜約8.5、約6〜約8.5、約6.5〜約8.0、約6.5〜約8.0、または約7.0〜約8.0.のEACに適合する範囲に調整される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、約7.0−7.6のEACに適切なpH範囲に調整される。
【0137】
いくつかの実施形態では、有用な製剤は1つ以上のpH調整剤または緩衝剤を含む。適切なpH調整剤または緩衝剤は、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、その薬学的に許容可能な塩、およびその組み合わせ、またはその混合物を含む。
【0138】
1つの実施形態では、1つ以上の緩衝液は、本開示の製剤で利用されるとき、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、例えば、約0.1%から約20%、約0.5%から約10%まで変動する量で最終製剤中に存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝液の量は、ゲル製剤のpHが身体の天然の緩衝系を妨げないような量である。
【0139】
1つの実施形態では、希釈剤もより安定した環境を提供することができるため、化合物を安定させるために使用される。緩衝液(pHの制御または維持をもたらし得る)中に溶解した塩は、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩溶液を含む当該技術分野の希釈剤として利用される。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるゲル製剤は、滅菌(例えば、ゲルを含む医薬品(例えば耳科用薬剤)またはポリマーの分解なく、ゲル製剤の濾過または無菌混合または加熱処理および/またはオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌))を可能にするpHを有する。滅菌中に耳科用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝液のpHは、滅菌(例えば高温オートクレーブ滅菌法)のプロセス中に7−8の領域中で製剤のpHを維持することを目的としている。
【0141】
特定の実施形態では、本明細書に記載されるゲル製剤は、ゲルを含む医薬品(例えば耳科用薬剤)またはポリマーの分解なく、ゲル製剤の最終滅菌(例えば、加熱処理および/またはオートクレーブ滅菌による)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ滅菌中に耳科用薬剤および/またはゲルポリマーの加水分解および/または分解を減らすために、緩衝液のpHは高温で7−8の範囲で製剤のpHを維持するように設計される。製剤中で使用される耳科用薬剤に依存して任意の適切な緩衝液が用いられる。いくつかの例では、温度がほぼ−0.03/°Cで増加するにつれてTRISのpK
aが減少し、温度がほぼ0.003/°Cで増加するとPBSのpK
aが増加することから、250°F(121°C)でのオートクレーブ滅菌法は、トリス緩衝液中で著しい下方へのpHの変化(つまり、より酸性)を引き起こすが、PBS緩衝液中では上方へのpH変化は比較的少なく、したがって、PBS中よりもTRIS中で耳科用薬剤の加水分解および/または分解が増加した。耳科用薬剤の分解は、本明細書に記載されるような緩衝液とポリマー添加剤(例えばCMC)の適切な組み合わせの使用によって減らされる。
【0142】
いくつかの実施形態では、約5.0〜約9.0の間、約5.5〜約8.5の間、約6〜約8.5の間、約6.5〜約8.0の間、約6.5〜約8.0の間、約7.0〜約8.0の間、約7.0〜約7.8の間、約7.0〜約7.6の間、約7.2〜7.6の間、または約7.2〜約7.4の間の製剤のpHは、(例えば、本明細書に記載される耳科用製剤の濾過または無菌混合または加熱処理および/またはオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌)による)滅菌に適している。特定の実施形態では、約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6の製剤のpHは、本明細書に記載される任意の組成物の滅菌(例えば、濾過または無菌混合または加熱処理および/またはオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌)による)に適している。
【0143】
いくつかの実施形態では、製剤は本明細書に記載されるようなpHを有し、非限定的な例として、本明細書に記載されるようなセルロースベースの増粘剤などの増粘剤(例えば、粘度増強剤)を含んでいる。いくつかの例では、第2のポリマー(例えば増粘剤)の追加と本明細書に記載されるような製剤のpHは、耳科用薬剤および/または耳科用製剤中のポリマー成分を実質的に分解することなく、本明細書に記載される製剤の滅菌を可能にする。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるようなpHを有する製剤中の増粘剤に対する熱可逆性ポロキサマーの比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約10:1、約15:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載されるような持続放出および/または徐放用の製剤は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1の比率でポロキサマー407(プルロニックF127)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約1か月間、少なくとも約2か月間、少なくとも約3か月間、少なくとも約4か月間、少なくとも約5か月間、または少なくとも約6か月間のいずれかの期間にわたってpHに関して安定している。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、少なくとも約1週間、pHに関して安定している。さらに、少なくとも約1か月間pHに関して安定している製剤が本明細書に記載されている。
【0145】
等張化剤
いくつかの実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kg−約1000mOsm/kg、約200mOsm/kgから約800mOsm/kg、約250mOsm/kgから約500mOsmkg、または約250mOsmkgから約350mOsmkg、または約280mOsm/kgから約320mOsm/kgまでの耳科用製剤の実際的な重量モル浸透圧濃度を与えるための量で本明細書に記載される製剤に加えられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、約100mOsm/Lから約1000mOsm/L、約200mOsm/Lから約800mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約280mOsm/Lから約320mOsm/L、約250mOsm/Lから約320mOsm/Lの実質的な容積モル浸透圧濃度を有する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤の送達可能な容積モル浸透圧濃度は、標的とされる耳の構造と等張であるように設計される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、約250−約320mOsm/L;および、好ましくは約270−320mOsm/kgの作用の標的部位での送達される容積モル浸透圧濃度を与えるように処方される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、約250−約320mOsm/LのH
2O;または約270−320mOsm/kgのH
2Oの作用の標的部位での送達される重量モル浸透圧濃度を与えるように処方される。特定の実施形態では、製剤の送達可能な容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度(つまり、ゲル化剤または増粘剤(例えば、熱可逆性ゲルポリマー)のない状態での製剤の容積モル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度)は、適切な塩の濃度(例えばカリウムまたはナトリウム塩の濃度)を用いて、あるいは標的部位で分娩時に製剤を適合させる等張化剤を用いて、調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む製剤の容積モル浸透圧濃度は、ポリマーのモノマー単位と変動する水の量との関係性ゆえに、信頼性の低い尺度である。製剤の実質的な容積モル浸透圧濃度(つまり、ゲル化剤または増粘剤(例えば熱可逆性ゲルポリマー)のない状態での容積モル浸透圧濃度)は信頼できる尺度であり、任意の適切な方法(例えば凝固点降下方法、蒸気降下方法)によって測定される。いくつかの例では、本明細書に記載される製剤は、(例えば環境に最小限の障害しか引き起こさず、投与時に哺乳動物に最小限の不快感(例えば眩暈)しか与えない標的部位(例えばEAC)の)送達可能な容積モル浸透圧濃度を与える。
【0147】
いくつかの実施形態では、適切な等張化剤は、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、塩、またはこれらの任意の組み合わせあるいは混合物、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質などを含む。
【0148】
有用な耳科用組成物は、組成物の重量モル浸透圧濃度を許容可能な範囲へするのに必要な量で1つ以上の塩を含んでいる。こうした塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、ならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩のアニオンを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および、硫酸アンモニウムを含む。
【0149】
粒径
径の減少は表面積を増やすおよび/または製剤の溶解特性を調整するために使用される。径の減少は、本明細書に記載される任意の製剤について、一貫した平均粒度分布(PSD)(例えば、マイクロメートルサイズの粒子、ナノメートルサイズの粒子など)を維持するために用いられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤は、多粒子、つまり、複数の粒径(例えば、微粉化した粒子、ナノサイズの粒子、分類されていない粒子、コロイド粒子)を含み、すなわち、製剤は多粒子状の製剤である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤も1つ以上の多粒子状(例えば、微粉化した)の治療薬を含む。微粉化は固形材料の粒子の平均直径を減らすプロセスである。微粉化した粒子は、直径でほぼマイクロメートルのサイズから直径でほぼナノメートルのサイズまでである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は約0.5μmから約500μmまでである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は約1μmから約200μmまでである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は約2μmから約100μmまでである。いくつかの実施形態では、微粉化した固体中の粒子の平均直径は約3μmから約50μmまでである。いくつかの実施形態では、微粒子の微粉化した固体は、約5ミクロン未満、約20ミクロン未満、および/または約100ミクロン未満の粒径を含む。いくつかの実施形態では、耳科用薬剤の微粒子(例えば、微粉化した粒子)を用いることにより、非多粒子状の(例えば、微粉化されていない)耳科用薬剤を含む製剤と比較して、本明細書に記載される任意の製剤から耳科用薬剤の徐放および/または持続放出が可能となる。いくつかの例では、多粒子状の(例えば、微粉化された)耳科用薬剤を含む製剤は、塞がれたり詰まったりすることのない27Gの針を適用した1mLのシリンジから放出される。
【0150】
粒径の減少技術は、一例として、粉砕、摩砕(例えば、空気摩擦摩砕(ジェットミリング)、ボールミリング)、コアセルベーション、複合コアセルベーション、高圧均質化、噴霧乾燥、および/または超臨界流体結晶化を含む。いくつかの例では、粒子は、機械的な影響により(例えば、ハンマーミル、ボールミル、および/またはピンミルにより)大きさを決められる。いくつかの例では、粒子は、流体エネルギーにより(例えば、スパイラルジェットミル、ループジェットミル、および/または流動床ジェットミルにより)大きさを決められる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、結晶粒子および/または等方粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、非晶質粒子および/または異方性の粒子を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は治療薬の粒子を含み、治療薬は治療薬の遊離塩基、塩、または、プロドラッグ、もしくはその任意の組み合わせを含む。
【0151】
特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の耳に適合した製剤は、1つ以上の微粉化された医薬品(例えば耳科用薬剤)を含む。こうした実施形態のいくつかでは、微粉化された医薬品は微粉化された粒子を含む。こうした実施形態のいくつかでは、微粉化された医薬品は、コーティングもカプセル化もしていない医薬品それ自体の微粉化された粒子を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、微粉化された粉末として耳科用薬剤を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、微粉化された耳科用薬剤粉末の形態をした耳科用薬剤を含む。
【0152】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される多粒子および/または微粉化された耳科用薬剤は、耳に許容可能なゲルマトリックスによって耳構造(例えばEAC)に送達される。
【0153】
調製可能な放出特性
本明細書に記載される任意の製剤または組成物からの活性な薬剤の放出は、所望の放出特性に随意に調整可能(tunable)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物はゲル化成分から構成される溶液である。こうした実施形態のいくつかでは、組成物は、約1日から約14日、約1日〜約12日、約2日〜約10日、または約3日〜約8日の活性な薬剤の放出を提供する。
【0154】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約1日から約3日の期間にわたって活性な薬剤の放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約1日から約5日間、活性な薬剤を放出する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約1日から約7日間、活性な薬剤を放出する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約2日から約7日間、活性な薬剤を放出する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約3日から約7日間、活性な薬剤を放出する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約1日から約10日間、活性な薬剤を放出する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約3日から約10日間、活性な薬剤を放出する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、約1日から約14日間、活性な薬剤を放出する。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、微粉化された耳科用薬剤と組み合わせてゲル化剤(例えばポロキサマー407)を含み、より長い期間にわたって長期持続放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)と微粉化された耳科用薬剤の約10−25%を含み、約1週から約10週の期間にわたって長期持続放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)と微粉化された耳科用薬剤の約12−21%を含み、約1週から約6週の期間にわたって長期持続放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)と微粉化された耳科用薬剤の約14−17%を含み、約1週から約3週の期間にわたって長期持続放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)と微粉化された耳科用薬剤の約15−18%を含み、約1週から約3週の期間にわたって長期持続放出をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤(例えばポロキサマー407)と微粉化された耳科用薬剤の約18−21%を含み、約3週から約6週の期間にわたって長期持続放出をもたらす。
【0156】
これに応じて、組成物中のゲル化剤の量と耳科用薬剤の粒径は、組成物からの耳科用薬剤の所望の放出プロファイルに調整可能である。
【0157】
本明細書に記載されるように、微粉化された耳科用薬剤を含む組成物は、微粉化されていない耳科用薬剤を含む組成物と比較して、より長い期間にわたって持続放出をもたらす。いくつかの例では、微粉化された耳科用薬剤は、緩慢な分解によって活性な薬剤を安定して供給し(例えば+/−20%)、活性な薬剤のためのデポー剤として役立ち、こうしたデポー剤の効果により、耳の中での耳科用剤の滞留時間が増える。特定の実施形態では、組成物中のゲル化剤の量と組み合わせる活性な薬剤(例えば、微粉化された活性な薬剤)の適切な粒径の選択により、数時間、数日、数週、または数か月にわたる活性な薬剤の放出を可能にする調整可能な持続放出特性が与えられる。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤の粘性は、耳に適合するゲルからの適切な放出速度をもたらすことを目的としている。いくつかの実施形態では、増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)の濃度は、調整可能な平均溶解時間(MDT)を可能にする。MDTは、本明細書に記載される組成物からの活性な薬剤の放出速度に反比例する。実験的に、放出された耳科用剤は随意にKorsmeyer−Peppas方程式に当てはめられる。
【0160】
このとき、Qは時間tで放出される耳科用薬剤の量であり、Qαは耳科用薬剤の全放出量であり、kはn位の放出定数であり、nは溶解メカニズムに関連する無次元数であり、bは軸切片であり、n=1が侵食制御メカニズムを特徴とする初期のバースト放出メカニズムを特徴としている。平均溶解時間(MDT)は薬物分子が放出前にマトリックス中に留まる様々な時間の合計であり、分子の合計数で割られ、以下によって随意に計算される:
【0162】
例えば、組成物の平均溶解時間(MDT)とゲル化剤(例えばポロキサマー)の濃度との間の直線関係は、耳科用薬剤が拡散によるのではなくポリマーゲル(例えばポロキサマー)の侵食により放出されることを示している。別の例において、非直線関係は、拡散および/またはポリマーゲルの分解の組み合わせによる耳科用剤の放出を示している。別の例において、組成物の迅速なゲル排出の時間経過(活性な薬剤の迅速な放出)は、より低い平均溶解時間(MDT)を指示する。組成物中のゲル化成分および/または活性な薬剤の濃度を試験して、MDTに適したパラメーターを決定する。いくつかの実施形態では、前臨床研究と臨床研究に適切なパラメーターを決定するために注入量も試験する。活性な薬剤のゲル強度と濃度は、組成物からの耳科用剤の放出キネティックス(release kinetics)に影響を及ぼす。低ポロキサマー濃度では、排出速度が加速される(MDTはより低い)。組成物中の耳科用薬剤の濃度が増すと、耳の中での耳科用薬剤の滞留時間および/またはMDTが延びる。
【0163】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からのポロキサマーのMDTは少なくとも6時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からのポロキサマーのMDTは少なくとも10時間である。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からの活性な薬剤のMDTは、約30時間から約48時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からの活性な薬剤のMDTは、約30時間から約96時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からの活性な薬剤のMDTは、約30時間から約1週間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のMDTは約1週間から約6週間である。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物中の活性な薬剤の平均滞留時間(MRT)は、約20時間から約48時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からの活性な薬剤のMRTは、約20時間から約96時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物からの活性な薬剤のMRTは、約20時間から約1週間である。
【0166】
いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約20時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約30時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約40時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約50時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約60時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約70時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約80時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約90時間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約1週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約90時間である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のMRTは約1週間から約6週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約1週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約2週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約3週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約4週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約5週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約4週間である。いくつかの実施形態では、活性な薬剤のMRTは約6週間である。耳科用薬剤の半減期と耳科用薬剤の平均滞留時間は、本明細書に記載される処置を用いて、EAC中の耳科用薬剤の濃度を測定することによって製剤ごとに判定される。
【0167】
特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出型の耳科用製剤は、耳科用薬剤の曝露を増加させるとともに、制御放出型の耳科用製剤ではない製剤と比較して、EAC中の曲線下面積(AUC)を約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出型の耳科用製剤は、耳科用薬剤の暴露時間を増加させるとともに、制御放出型の耳科用製剤ではない製剤と比較して、EAC中のC
maxを約40%、約30%、約20%、または約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出型の耳科用製剤は、制御放出型の耳科用製剤ではない製剤と比較して、C
max対C
minの比率を変動させる(例えば、減らす)。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の制御放出型の耳科用製剤は、耳科用薬剤の曝露を増加させるとともに、制御放出型の耳科用製剤ではない製剤と比較して、耳科用薬剤の濃度がC
minを上回る時間を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の例では、本明細書に記載される制御放出製剤はC
max到達時間を遅らせる。特定の例では、薬物の安定した制御放出は、薬物の濃度がC
minを上回る時間を延ばす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、耳の中での薬物の滞留時間を延ばし、安定した薬物曝露プロファイルを提供する。いくつかの例では、組成物中の活性な薬剤の濃度の増加は、除去プロセスを飽和させ、より迅速かつ安定した定常状態に到達することを可能にする。
【0168】
特定の例において、いったん薬物の薬物曝露(例えばEAC)が定常状態に達すると、EAC中の薬物の濃度は、長期間(例えば、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも3週間、少なくとも6週間、または少なくとも2か月)にわたって治療量またはほぼ治療量で留まる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される制御放出製剤から放出される活性な薬剤の定常状態濃度は、制御放出製剤ではない製剤から放出される活性な薬剤の定常状態濃度の約5−約20倍である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される制御放出製剤から放出される活性な薬剤の定常状態濃度は、制御放出製剤ではない製剤から放出される活性な薬剤の定常状態濃度の約20−約50倍である。
図3は、4つの組成物からの活性な薬剤の予測された調整可能な放出を例証する。
【0169】
医薬製剤
少なくとも1つの耳科用薬剤と薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、または担体を含む医薬組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の薬剤または医薬品、担体、保存剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝液を含んでいる。他の実施形態では、医薬組成物はさらに他の治療物質を含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、EACに適用されると、ゲルの可視化を増強するための染料を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳に許容可能な組成物と適合する染料は、エバンスブルー(例えば、耳科用製剤の全重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳科用製剤の全重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳科用製剤の全重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳科用製剤の全重量の0.15%)、および/またはインドシアニングリーン(例えば、25mg/バイアル)を含んでいる。他の一般的な染料、例えば、FD&C red40、FD&C red3、FD&C yellow5、FD&C yellow6、FD&C blue1、FD&C blue2、FD&C green3、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluors、DyLight Fluors)および/または染料は、MRI、CATスキャン、PETスキャンなどの非侵襲的な画像化技術と連携して視覚化される。ガドリニウムベースのMRI染料、ヨウ素ベースの染料、バリウムベースの染料なども、本明細書に記載される任意の耳科用製剤とともに使用されるように企図される。本明細書に記載される任意の製剤または組成物と適合する他の染料は、染料のSigma−Aldrich のカタログに列挙されている(開示のために参照により本明細書に含まれる)。
【0171】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳に許容可能な制御放出型の耳科用製剤では、耳科用薬剤は、本明細書で「耳に許容可能なゲル製剤」、「外耳に許容可能なゲル製剤」、「耳用ゲル製剤」、またはその変化形とも呼ばれるゲルマトリックスで提供される。ゲル製剤の成分はすべて、標的とされる耳構造と適合しなければならない。さらに、ゲル製剤は、標的とされる耳構造内の所望の部位に耳科用薬剤の制御放出をもたらし、いくつかの実施形態では、ゲル製剤はさらに、所望の標的部位に耳科用薬剤を送達するための即時放出または速放性の成分を有する。他の実施形態では、ゲル製剤は、耳科用薬剤の送達のための徐放性成分を有する。いくつかの実施形態では、ゲル製剤は多粒子状の(例えば、微粉化された)耳科用薬剤を含む。いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は生分解性である。いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は生体浸食性である。
【0172】
いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は、約500〜1,000,000センチポアズの間、約750〜1,000,000センチポアズの間、約1000〜1,000,000センチポアズの間、約1000〜400,000センチポアズの間、約2000〜100,000センチポアズの間、約3000〜50,000センチポアズの間、約4000〜25,000センチポアズの間、約5000〜20,000センチポアズの間、または約6000〜15,000センチポアズの間の粘度を提供するのに十分な粘度増強剤を含む。いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は、約50、0000〜1,000,000センチポアズの粘度を提供するのに十分な粘度増強剤を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は体温の低粘性組成物である。いくつかの実施形態では、低粘性組成物は、約1%−約10%の粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含む。いくつかの実施形態では、低粘性組成物は、約2%−約10%の粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含む。いくつかの実施形態では、低粘性組成物は、約5%−約10%の粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含む。いくつかの実施形態では、低粘性組成物は、粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘性の耳科用薬剤組成物は、約100cPから約10,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘性の耳科用薬剤組成物は、約500cPから約10,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される低粘性の耳科用薬剤組成物は、約1000cPから約10,000cPの見かけ粘度をもたらす。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は体温の高粘性組成物である。いくつかの実施形態では、高粘性組成物は、約10%−約25%の粘度増強剤(例えばコポリマーなどのゲル化成分)を含む。いくつかの実施形態では、高粘性組成物は、約14%−約22%の粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含む。いくつかの実施形態では、高粘性組成物は、約15%−約21%の粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘性の耳科用薬剤組成物は、約100,000cPから約1,000,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘性の耳科用薬剤組成物は、約150,000cPから約500,000cPの見かけ粘度をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される高粘性の耳科用薬剤組成物は、約250,000cPから約500,000cPの見かけ粘度をもたらす。こうした実施形態のいくつかでは、高粘性組成物は、室温では液体であり、ほぼ室温〜体温(酷い熱(例えば、最大で約42°C)の個人を含む)ではゲルである。いくつかの実施形態では、耳科用薬剤の高粘性組成物は、本明細書に記載される耳の疾患または疾病の処置向けの単独療法として投与される。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用医薬製剤は耳に許容可能なヒドロゲルをさらに提供し、またさらなる実施形態では、耳科用医薬製剤は耳に許容可能なインサイツ形成ヒドロゲル材料を提供する。いくつかの実施形態では、耳科用医薬製剤は耳に許容可能な溶媒放出ゲルを提供する。いくつかの実施形態では、耳科用医薬製剤は化学線硬化性のゲルを与える。さらなる実施形態は耳科用医薬製剤中に熱可逆性ゲルを含み、その結果、製剤は室温以下のゲルの調製時には流体であるが、鼓膜の外表面を含むEACの標的部位中またはその付近にゲルを塗布する際に、耳科用医薬製剤は堅くなるまたは硬化してゲル様の物質になる。
【0176】
いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は、シリンジと針によって鼓膜の外表面上またはその付近に投与可能である。いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は、シリンジによって鼓膜の外表面上またはその付近に投与可能である。いくつかの実施形態では、耳科用のゲル製剤は、滴瓶によって鼓膜の外表面上またはその付近に投与可能である。他の実施形態では、耳科用のゲル製剤は外耳道上に投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、鼓膜の外表面上またはその付近に、外耳道に、あるいはこれらの組み合わせに製剤を送達することができるポンプ装置または別の装置によって投与される。
【0177】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の医薬組成物は、液状マトリックス(例えば、注射用の液状組成物または耳科用の滴剤)中の多粒子状の耳科用薬剤を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される任意の医薬組成物は、固体のマトリックスの多粒子状の耳科用薬剤を含む。
【0178】
制御放出製剤
一般に、制御放出薬物製剤は、放出部位と体内の放出時間に関して、薬物の放出を制御する。本明細書で議論されるように、制御放出とは、即時放出、遅延放出、持続放出、徐放、可変放出、パルス状放出、および二峰性の放出を指す。制御放出により多くの利点が与えられる。まず、医薬品の制御放出により、投薬の頻度が減り、処置の繰り返しを最小限に抑える。第2に、制御放出による治療は、薬物をより効率的に利用し、残留物として残る化合物が減る。第3に、制御放出は、疾患の部位に送達装置または製剤を配することにより局所的な薬物送達の可能性を与える。またさらに、制御放出は、各々が特有の放出プロファイルを有する2つ以上の様々な薬物を投与および放出する機会、または、単一の投与ユニットによって様々な速度で、または様々な継続期間にわたって同じ薬物を放出する機会を与える。
【0179】
これに応じて、本明細書に開示される実施形態の1つの態様は、耳垢の生成を調整するための、および耳垢症と耳垢症に関連する疾患の処置のための制御放出型の耳に許容可能な組成物を提供することである。本明細書で開示される組成物および/または製剤の制御放出態様は、限定されないが、EACでの使用に許容可能な賦形剤、薬剤、または材料を含む様々な薬剤によって与えられる。ほんの一例として、こうした賦形剤、薬剤、または材料は、耳に許容可能なポリマー、耳に許容可能な粘度増強剤、耳に許容可能なゲル、耳に許容可能なヒドロゲル、耳に許容可能なインサイツ形成ヒドロゲル材料、耳に許容可能な化学線硬化性のゲル、耳に許容可能な溶媒放出ゲル、耳に許容可能なナノカプセルまたはナノ粒子、耳に許容可能な熱可逆性ゲル、またはこれらの組み合わせを含む。
【0180】
耳に許容可能なゲル
しばしばゼリーとも呼ばれるゲルは、様々な方法で定義されている。例えば、米国薬局方は、液体の浸透した小さな無機質微粒子または大きな有機分子から構成されるいずれかの懸濁液からなる半固体の系としてゲルを定義する。ゲルは単一相または二相の系を含んでいる。単相のゲルは、分散したポリマーと液体の間に明白な境界が存在しないように、液体全体に均一に分布した有機的なポリマーからなる。複数の単相のゲルは、合成ポリマー(例えばカルボマー)または天然のゴム(例えばトラガント)から調製される。いくつかの実施形態では、単相のゲルは一般に水性であるが、アルコールと油を使用しても作られる。二相のゲルは小さな離散粒子のネットワークからなる。
【0181】
ゲルは疎水性または親水性として分類可能である。特定の実施形態では、疎水性ゲルの塩基は、ポリエチレンを含む流動パラフィン、または、コロイダルシリカまたはアルミニウム石けんもしくは亜鉛の石けんを用いてゲル化させた脂肪油からなる。対照的に、疎水性ゲルの塩基は通常、水、グリセロール、または適切なゲル化剤(例えば、トラガント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、およびケイ酸アルミニウムマグネシウム)でゲル化されたプロピレングリコールからなる。特定の実施形態では、本明細書で開示される組成物のレオロジーは、擬塑性、プラスチック、揺変性、または膨張性である。
【0182】
1つの実施形態では、本明細書に記載される粘性を改良した耳に許容可能な製剤は、室温の液体ではない。特定の実施形態では、粘性を改良した製剤は、室温と体温(高熱、例えば、最大で約42°Cの個体を含む)との間の相転移を特徴とする。いくつかの実施形態では、相転移は体温より1°Cで低い温度、体温より2°C低い温度で、体温より3°C低い温度で、体温より4°C低い温度で、体温より6°C低い温度で、体温より8°C低い温度で、または体温より10°C低い温度で生じる。いくつかの実施形態で、相転移は、体温より約15°C低い温度で、体温より約20°C低い温度で、または体温より約25°C低い温度で生じる。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約20°C、約25°C、または約30°Cである。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約35°Cまたは約40°Cである。健康な個体または熱(最大42°C)のある個体を含む不健康な個体の体温が、体温の定義内に含まれる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、ほぼ室温では液体であり、室温またはほぼ室温で投与される。
【0183】
ポリオキシプロピレンとポリオキシエチレンから構成されるポリマーは、水溶液に組み入れられると熱可逆性ゲルを形成する。こうしたポリマーは体温に近い温度で液体状態からゲル状態に変化する能力を有しているため、標的とされる耳構造に適用される有用な製剤が可能となる。液体状態からゲル状態への相転移は溶液中のポリマー濃度と成分に依存する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の全重量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、または約40%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の全重量の約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、または約25%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約7.5%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約10%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約11%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約12%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約13%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約14%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約16%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約17%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約18%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約19%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約20%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約21%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約23%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばポロキサマー407)の量は、製剤の全重量の約25%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の増粘剤(例えばゲル化剤)の量は、製剤の全重量の約1%、約5%、約10%、または約15%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される任意の製剤中の増粘剤(例えばゲル化剤)の量は、製剤の全重量の約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
【0185】
他の実施形態では、サーモゲル(thermogel)は、PEG−PLGA−PEG トリブロックコポリマー(Jeong etal, Nature (1997), 388:860−2; Jeong etal, J. Control. Release (2000), 63:155−63; Jeong etal, Adv. Drug Delivery Rev. (2002), 54:37−51)である。ポリマーは、約5%w/wから約40%w/wの濃度にわたってゾル−ゲル挙動を示す。望ましい特性に依存して、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドのモル比は、約1:1から約20:1までである。結果として生じるコポリマーは水に溶解可能であり、室温では流れるように動く液体を形成するが、体温ではヒドロゲルを形成する。市販で入手可能なPEG−PLGA−PEG トリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheimによって製造されたRESOMER RGP t50106である。この材料は50:50のポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)のPLGAコポリマーから構成され、PEGの10%w/wであり、約6000の分子量を有する。
【0186】
さらなる生物分解性の熱可塑性ポリエステルは、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories社によって提供される)および/または、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;および、第5,990,194号に開示されるものを含み、ここで、適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルは熱可塑性ポリマーとして開示される。適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコシド、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー、ターポリマー、およびこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかのこうした実施形態では、適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコシド、これらのコポリマー、ターポリマー、またはこれらの組み合わせである。1つの実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有する50/50ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)であり、約30重量%から約40重量%の組成物中に存在し、および、約23,000〜約45,000の平均分子量を有する。代替的に、別の実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を含まない75/25ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)であり、約40重量%から約50重量%の組成物の中に存在し、および、約15,000〜約24,000の平均分子量を有する。追加のまたは代替的な実施形態では、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)の末端基は、重合の方法に依存して、ヒドロキシル、カルボキシル、またはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合は、末端のヒドロキシル基とカルボキシル基を有するポリマーを提供する。水、乳酸、またはグリコール酸を用いる環状のラクチドまたはグリコリドモノマーの開環重合により、同じ末端基を有するポリマーが得られる。しかしながら、メタノール、エタノール、または1−ドデカノールなどの単機能アルコールを用いる環状モノマーの開環により、1つのヒドロキシル基と1つのエステル末端基を有するポリマーが得られる。1,6−ヘキサンジオールなどのジオールまたはポリエチレングリコールを用いる環状モノマーの開環重合は、ヒドロキシル末端基のみを有するポリマーをもたらす。
【0187】
熱可逆性ゲルのポリマー系が低温でより完全に溶けることから、可溶化の方法は低温で使用される水の量に、必要とされる量のポリマーを加えることを含む。一般に、振盪によってポリマーを湿らせた後、混合物をキャップして約0−10°Cの冷室または一定温度の容器に置くことでポリマーを溶解させる。混合物を撹拌または振盪することで熱可逆性ゲルポリマーの急速な溶解を引き起こす。耳科用薬剤と緩衝液、塩、および保存剤などの様々な添加剤がその後加えられて溶かされる。例によっては、耳科用薬剤および/または他の薬学的に活性な薬剤は、水に溶けない場合には懸濁される。pHは適切な緩衝液を加えることで調整される。
【0188】
1つの実施形態では、さらなる粘度増強剤の使用を必要としない耳に許容可能な医薬用ゲル製剤を有する。こうしたゲル製剤は少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝液を組み込む。1つの態様では、耳科用薬剤と薬学的に許容可能な緩衝液を含むゲル製剤が提示される。別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤または担体はゲル化剤である。
【0189】
他の実施形態では、有用な耳科用薬剤の耳に許容可能な医薬製剤はさらに、EACの適切なpHを提供するために1つ以上のpH調整剤または緩衝剤を含む。適切なpH調整剤または緩衝剤は、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、その薬学的に許容可能な塩、およびその組み合わせ、またはその混合物を含む。こうしたpH調整剤と緩衝剤は、約5−約9のpH、1つの実施形態では、約6.5−約7.5のpH、さらに別の実施形態では、約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5のpHで、組成物のpHを維持するのに必要な量で含まれている。1つの実施形態では、1つ以上の緩衝液が本開示の製剤で利用される場合、これらは、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、および、例えば、約0.1%から約20%、約0.5%から約10%までの範囲の量で最終製剤中に存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝液の量は、ゲル製剤のpHがEACの天然の緩衝系を妨害しないような量である。いくつかの実施形態では、約10μMから約200mMの濃度の緩衝液がゲル製剤中に存在する。特定の実施形態では、約5mMから約200mMの濃度の緩衝液が存在する。特定の実施形態では、約20mMから約100mMの濃度の緩衝液が存在する。1つの実施形態では、弱酸性のpHの酢酸塩またはクエン酸塩のような緩衝液を有する。1つの実施形態では、緩衝液は、約4.5−約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝液は、約5.0−約8.0または約5.5−約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
【0190】
他の実施形態では、使用される緩衝液は、わずかに塩基性のpHのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、炭酸水素塩、炭酸塩、またはリン酸塩である。1つの実施形態では、緩衝液は、約6.5−約8.5または約7.0−約8.0のpHを有する重炭酸ナトリウム緩衝液である。別の実施形態では、緩衝液は、約6.0−約9.0のpHを有するリン酸ナトリウム二塩基性緩衝液である。
【0191】
さらに、耳科用薬剤と粘度増強剤を含む制御放出製剤も本明細書に記載されている。適切な粘度増強剤としては、ほんの一例として、ゲル化剤および懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態では、粘性を改良した製剤は緩衝液を含んでいない。他の実施形態では、粘性を改良した製剤は薬学的に許容可能な緩衝液を含んでいる。必要に応じて、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が張性を調節するために随意に使用される。
【0192】
ほんの一例として、耳に許容可能な粘性剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムを含む。標的とする耳の構造と互換性をもつ他の粘度増強剤としては、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ属の海藻(bladderwrack)、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、カーボポ−ル(Carbopol)、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、ツノマタ属、デキストロース、ファーセレラン(furcellaran)、ゼラチン、ガティガム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、カラヤゴム、キサンタンガム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー(PVM/MA)、ポリ(メタクリル酸メトキシエチル)、ポリ(メタクリル酸メトキシエトキシエチル)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、およびSplenda(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリン、およびスクラロース)、またはこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、粘度を増強する賦形剤はMCCとCMCの組み合わせである。別の実施形態では、粘度増強剤はカルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩の組み合わせである。本明細書に記載される耳科用薬剤とのキチンとアルギン酸塩の組み合わせは、制御放出製剤として機能し、製剤からの耳科用薬剤の拡散を制限する。さらに、カルボキシメチル化されたキトサンとアルギン酸塩の組み合わせは、EACの皮膚を通る耳科用薬剤の透過性を増加させやすくするために随意に使用される。
【0193】
いくつかの実施形態では、粘性を強化した製剤は、約0.1mM−約100mMの耳科用薬剤、薬学的に許容可能な粘性剤、および注射用水を含み、水中の粘性剤の濃度は、約100から約100,000cPの最終粘度を有する粘性を強化した製剤を提供するのに十分なものである。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100から約50,000cP、約100cPから約1,000cP、約500cPから約1500cP、約1000cPから約3000cP、約2000cPから約8,000cP、約4,000cPから約50,000cP、約10,000cPから約500,000cP、約15,000cPから約1,000,000cPまでの範囲である。他の実施形態では、もっと粘性の強い媒体が望ましい場合、生体適合性のゲルは、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、または少なくとも約80重量%程度の耳科用薬剤を含む。高濃縮サンプルでは、生体適合性の粘性を強化した製剤は、少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、または少なくとも約95%重量以上の耳科用薬剤を含む。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書で提示されるゲル製剤の粘度は、記載される任意の手段によって測定される。例えば、いくつかの実施形態では、LVDV−II+CPCone Plate Viscometer とCone Spindle CPE−40を用いて本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を計算する。他の実施形態では、Brookfield(スピンドルとカップ)粘度計を用いて、本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を計算する。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は室温で測定される。他の実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定される。
【0195】
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な粘性を強化した耳に許容可能な製剤は、少なくとも1つの耳科用薬剤と少なくとも1つのゲル化剤を含む。ゲル製剤の調製で使用される適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩(例えばアルギン酸)、ケイ酸塩、デンプン、トラガント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ワセリン、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。他のいくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))はゲル化剤として利用される。特定の実施形態では、本明細書に記載される粘性を改良する薬剤は、本明細書で提示されるゲル製剤のためのゲル化剤として利用される。
【0196】
いくつかの実施形態では、他のゲル製剤は、特定の耳科用薬剤、他の医薬品または使用される賦形剤/添加剤次第では有用であり、そのようなものとして本開示の範囲内にあるとみなされる。例えば、他の市販のグリセリンベースのゲル、グリセリン由来の化合物、抱合または架橋したゲル、マトリックス、ヒドロゲル、およびポリマー、同様に、ゼラチンとその誘導体、アルギン酸塩とアルギン酸塩ベースのゲル、および、様々な天然ならびに合成のヒドロゲルとヒドロゲル由来の化合物は、本明細書に記載される耳科用薬剤の製剤中で有用であることが予想される。いくつかの実施形態では、耳に許容可能なゲルとしては、限定されないが、アルギン酸塩ヒドロゲルSAF(登録商標)−ゲル(ConvaTec,Princeton、N.J.)、Duoderm(登録商標)Hydroactive Gel(ConvaTec)、Nu−gel(登録商標)(Johnson & Johnson Medical,Arlington、Tex.);Carrasyn(登録商標)(V)Acemannan Hydorogel(Carrington Laboratories,Inc.,Irving、Tex.);
グリセリン・ゲルElta(登録商標)Hydrogel(Swiss−American Products, Inc., Dallas,Tex.)、およびK−Y(登録商標)Sterile(Johnson & Johnson)。さらなる実施形態では、生分解性の生体適合性のゲルは、本明細書で記載および開示される耳に許容可能な製剤中に存在する化合物を表す。
【0197】
哺乳動物への投与、およびヒト投与のために処方される組成物のために開発される製剤によっては、耳に許容可能なゲルは、組成物の実質的にすべての重量を含む。他の実施形態では、耳に許容可能なゲルは約98重量%または約99重量%もの組成物を含む。これは、実質的に非流体または実質的に粘着性の製剤が必要なときに望ましい。さらなる実施形態では、わずかに粘着性の弱いまたはわずかに流動性の強い耳に許容可能な医薬ゲル製剤が望ましい場合、製剤の生体適合性のゲル部分は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%もの、または少なくとも90重量%の化合物を含む。こうした範囲内の中間の整数は本開示の範囲内であると企図され、複数の他の実施形態では、さらにより流動性の強い(従って粘性の弱い)耳に許容可能なゲル組成物、例えば、混合物のゲルまたはマトリックス成分が約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、または、約15重量%以下、または約20重量%以下の化合物を含む組成物が処方される。
【0198】
耳に許容可能な懸濁化剤
1つの実施形態では、少なくとも1つの耳科用薬剤は薬学的に許容可能な粘性を強化した製剤に含まれ、製剤は少なくとも1つの懸濁化剤をさらに含み、懸濁化剤は制御放出特性を製剤に与えるのに役立つ。いくつかの実施形態では、懸濁化剤はさらに、耳に許容可能な製剤と組成物の粘性を高める役割も果たす。
【0199】
懸濁化剤としては、ほんの一例として、ポリビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアラート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、例えば、トラガカントゴムおよびアラビアゴム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタンなどのゴム、糖、セルロース化合物、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシ化ソルビタンモノラウレート、ポビドンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用な水性懸濁液は懸濁化剤として1つ以上のポリマーをさらに含む。有用なポリマーは、セルロース酸ポリマー(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)などの水溶性ポリマーと、架橋したカルボキシル含有ポリマーなどの不水溶性のポリマーを含む。
【0200】
1つの実施形態では、本開示は、ヒドロキシエチルセルロースゲル中の治療上有効な量の耳科用薬剤を含む、耳に許容可能なゲル状組成物を提供する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、水中で再構成される乾燥粉末として、または所望の粘性(一般に約200cps〜約30,000cps、約0.2〜約10%のHECに相当する)を与える水性の緩衝液として得られる。1つの実施形態では、HECの濃度は、約1%〜約15%、約1%〜約2%、または約1.5%〜約2%である。
【0201】
他の実施形態では、ゲル製剤と粘度を増強した製剤を含む耳に許容可能な製剤は、賦形剤、他薬剤または医薬品、担体、保存料、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤、およびその組み合わせをさらに含む。
【0202】
耳に許容可能な化学線硬化性ゲル
他の実施形態では、ゲルは化学線硬化性のゲルであり、標的とされる耳構造またはその付近への以下の投与、化学線(またはUV光、可視光、あるいは赤外線を含む光)の使用、および所望のゲル特性が形成される。ほんの一例として、光ファイバーが、所望のゲル特性を形成するために化学線を提供するように使用される。いくつかの実施形態では、光ファイバーとゲル投与装置は単一のユニットを形成する。他の実施形態では、光ファイバーとゲル投与装置は別々に提供される。
【0203】
耳に許容可能な溶媒放出ゲル
いくつかの実施形態では、ゲルは溶媒放出ゲルであり、そのため、標的とされる耳構造またはその付近への投与の後に所望のゲル特性が形成され、すなわち、注入されるゲル製剤中の溶媒がゲルを拡散すると、所望のゲル特性が形成される。例えば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、薬学的に許容可能な溶媒、1つ以上の添加剤、および耳科用薬剤を含む製剤がEAC内に投与され、注入された製剤からの溶媒の拡散は、所望のゲル特性を有するデポー剤を提供する。例えば、溶媒が注入された製剤から迅速に拡散するとき、水溶性の溶媒を用いることで高粘度のデポー剤が得られる。他方で、疎水性の溶媒(例えば安息香酸ベンジル)を用いると、粘着性の低いデポー剤が得られる。耳に許容可能な溶媒放出ゲル製剤の1つの例は、DURECT Corporationから発売されているSABER(商標)Delivery Systemである。
【0204】
耳に許容可能なシクロデキストリンと他の安定化製剤
特定の実施形態では、耳に許容可能な製剤は代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、またはγ−シクロデキストリンとそれぞれ呼ばれる、6、7、または8つのグルコピラノース単位を含む、環状のオリゴ糖である。シクロデキストリンは、水溶性を増強する親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部を有する。水性の環境では、他の分子の疎水性部分はしばしばシクロデキストリンの疎水性の空洞に入って包接化合物を形成する。さらに、シクロデキストリンは、疎水性の空洞の内部にはない分子と他のタイプの非結合型の相互作用を行うこともできる。シクロデキストリンは、各グルコピラノース単位につき3つの遊離ヒドロキシル基、すなわち、α−シクロデキストリン上に18のヒドロキシル基、β−シクロデキストリン上に21のヒドロキシル基、およびγ−シクロデキストリン上に24のヒドロキシル基を有する。これらのヒドロキシル基の1つ以上は、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシプロピルスルホン酸塩、およびヒドロキシプロピルスルホアルキルエーテルを含む、多種多様なシクロデキストリン誘導体を形成するために、多くの試薬のいずれかと反応させることができる。β−シクロデキストリンとヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)の構造を以下に示す。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物におけるシクロデキストリンの使用は、薬物の溶解性を改善する。包接化合物は、溶解性の強化の多くの例に関与するが、しかしながら、シクロデキストリンと不溶性の化合物との間の他の相互作用も溶解性を改善する。ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(HPβCD)は、発熱物質を含まない生成物として市販されている。これは水に容易に溶ける非吸湿性の白色粉末である。HPβCDは熱的に安定しており、中性のpHでは分解しない。したがって、シクロデキストリンは、組成物または製剤中の治療薬の溶解性を改善する。これに応じて、いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、本明細書に記載される製剤内での耳に許容可能な耳科用薬剤の溶解性を増加させるために含まれている。他の実施形態では、シクロデキストリンは、本明細書に記載される製剤内の制御放出賦形剤としての機能も果たす。
【0207】
ほんの一例として、使用されるシクロデキストリン誘導体は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ−シクロデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、硫酸化α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンを含む。
【0208】
本明細書に開示される組成物と方法で使用されるシクロデキストリンの濃度は、生理化学的な特性、薬物動態学的特性、副作用または有害事象、製剤についての考察、あるいは治療上活性な薬剤またはその塩あるいはプロドラッグに、もしくは組成物中の他の賦形剤の特性に関連する他の因子次第で変わる。したがって、特定の状況下では、本明細書で開示される組成物と方法に合わせて使用されるシクロデキストリンの濃度または量は、必要に応じて変わる。使用時、本明細書に記載される製剤のいずれかにおいて耳科用薬剤の溶解性を増加させるおよび/または制御放出賦形剤として機能するために必要とされるシクロデキストリンの量は、本明細書に記載される原則、実施例、および教示を用いて選択される。
【0209】
本明細書に開示される耳に許容可能な製剤中で役立つ他の安定化剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪族アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性の誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性のポリマー、湿気吸収性ポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、安定化剤のアミドアナログも使用される。さらなる実施形態において、選択される安定化剤は、製剤の疎水性を変え(例えば、オレイン酸、ろう)、または製剤中の様々な成分の混合を改善し(例えばエタノール)、製剤中の水分レベルを制御し(例えば、PVPまたはポリビニルピロリドン)、相の移動度を制御する(長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、エーテル、アミドなど、またはこれらの混合物などの室温よりも高い融点を有する物質;ろう)。別の実施形態では、こうした安定化剤のいくつかは溶媒/共溶媒(例えばエタノール)として使用される。他の実施形態では、安定化剤は、耳科用薬剤の分解を阻害するのに十分な量で存在する。そのような安定化剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)約0.5%−約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%−約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%−約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM−約10mMのEDTA、(e)約0.01%−約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%−約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%−約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリン類似物質、(m)マグネシウムと亜鉛などの2価カチオン;または(n)これらの組み合わせ。
【0210】
さらなる有用な耳科用薬剤の耳に許容可能な製剤は、タンパク質凝集の速度を低下させることにより耳科用薬剤製剤の安定性を高めるための1つ以上の抗凝集添加剤を含んでいる。選択される抗凝集添加剤は、耳科用薬剤、例えば 耳科用薬剤抗体が晒される疾患の性質に依存する。例えば、撹拌と熱応力を経る特定の製剤は、凍結乾燥と再構成を経る製剤とは異なる抗凝集添加剤を必要とする。有用な抗凝集添加剤は、ほんの一例として、尿素、塩化グアニジウム、グリシンまたはアルギニンなどの単純なアミノ酸、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリエチレングリコールとデキストランのようなポリマー、アルキルグリコシドなどのアルキル糖類、および界面活性剤を含む。
【0211】
他の有用な製剤は、必要に応じて、化学安定性を増強するために随意に1つ以上の耳に許容可能な抗酸化剤を含んでいる。適切な抗酸化剤としては、ほんの一例として、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、およびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。1つの実施形態では、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、および他の一般的な安定化剤から選択される。
【0212】
また他の有用な組成物は、物理安定度を増強するために、または他の目的のために、1つ以上の耳に許容可能な界面活性剤を含んでいる。適切な非イオン界面活性剤としては、ほんの一例として、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドと植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。
【0213】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳に許容可能な医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、または少なくとも約6か月のいずれかの期間にわたって化合物の分解に関して安定している。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、少なくとも約1週間の期間にわたって化合物の分解に関して安定している。さらに、少なくとも約1か月の期間にわたって化合物の分解に関して安定している製剤が本明細書に記載されている。
【0214】
他の実施形態では、さらなる界面活性剤(共界面活性剤)および/または緩衝剤は、界面活性剤および/または緩衝剤が安定性について最適なpHで生成物を維持するように、本明細書で先に記載された薬学的に許容可能なビヒクルの1つ以上と組み合わされる。適切な共界面活性剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:a)天然および合成の親油性の薬剤、例えば、リン脂質、コレステロール、およびコレステロール脂肪酸エステルとそれらの誘導体;b)例えば、非イオン界面活性剤、それは含んでいる、例えばポリオキシエチレン脂肪族アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ツイーン80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ツイーン60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ツイーン20)および他のツイーン、ソルビタンエステル、グリセリンエステル、例えば、Myrjおよびグリセリントリアセタート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロキサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレン、ヒマシ油誘導体(例えば、Cremophor(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、Cremophor(登録商標)EL)、および他のCremophor、スルホサクシネート、アルキル硫酸塩(SLS);PEG−8カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリル(Labrasol)、PEG−4カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリル(LabrafacヒドロWL 1219)、PEG−32ラウリン酸グリセリル(Gelucire 444/14)、PEG−6モノオレイン酸グリセリル(Labrafil M 1944 CS)、PEG−6リノール酸グリセリル(Labrafil M 2125 CS)などのPEGグリセリル脂肪酸エステル;ラウリン酸プロピレングリコール、カプリル酸プロピレングリコール/カプリン酸カプラートプロピレングリコールなどのプロピレングリコール・モノ−およびジ−脂肪酸エステル;Brij(登録商標)700、アスコビル−6−パルミチン酸塩、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、トリイリシンオレイン酸(triiricinoleate)ポリオキシエチレングリセロール、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物;c)アニオン界面活性剤は、限定されないが、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、スルホサクシネートナトリウム、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩(alkyl polyoxyethylene sulfates)、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、胆汁酸塩、および、これらの任意の組み合わせまたは混合物;ならびに、d)セチルトリメチルアンモニウム臭化物のようなカチオン界面活性剤とラウリルジメチルベンジル−塩化アンモニウム。
【0215】
さらなる実施形態では、1つ以上の共界面活性剤が本開示の耳に許容可能な製剤中で利用される場合、それらは、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、最終製剤中で、例えば、約0.1%から約20%、約0.5%から約10%までの量で存在する。
【0216】
1つの実施形態では、界面活性剤は0〜20のHLB値を有する。さらなる実施形態では、界面活性剤は、0〜3、4〜6、7〜9、8〜18、13〜15、10〜18のHLB値を有する。
【0217】
1つの実施形態では、希釈剤は、より安定した環境をもたらすため、耳科用薬剤または他の医薬品化合物を安定させるために使用される。緩衝液(pHの調整または保守ももたらし得る)中に溶かされた塩は、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水を含む希釈剤として利用される。他の実施形態では、ゲル製剤はEACと等張である。等張な製剤は等張化剤を加えることで提供される。適切な等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、塩、またはこれらの任意の組み合わせまたは混合物、限定されないが、デキストロースおよび塩化ナトリウムが挙げられる。さらなる実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kgから約500mOsm/kgの量で存在する。いくつかの実施形態では、等張化剤は、約200mOsm/kgから約400mOsm/kg、約280mOsm/kgから約320mOsm/kgの量で存在する。本明細書に記載されるように、等張化剤の量は医薬製剤の標的構造によって変わる。
【0218】
有用な等張化組成物は、組成物の重量モル浸透圧濃度をEACへの適用のために許容可能な範囲へするのに必要とされる量の1つ以上の塩を含む。こうした塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、ならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩のアニオンを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および、硫酸アンモニウムを含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳に許容可能なゲル製剤は、代替的に、またはさらに、微生物の成長を抑えるための保存剤を含む。本明細書に記載される粘性を強化した製剤中で使用される適切な耳に許容可能な保存剤としては、限定されないが、安息香酸、ホウ酸、p−ヒドロキシ安息香酸塩、アルコール、四級化合物、安定化した二酸化塩素、merfenとthiomersalなどの水銀剤、前述の混合物などが挙げられる。
【0220】
さらなる実施形態では、保存剤は、ほんの一例として、本明細書で提示される耳に許容可能な製剤内の耳科用薬剤である。1つの実施形態では、製剤は、一例として、メチルパラベン、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノールなどの保存剤を含む。別の実施形態では、メチルパラベンは、約0.05%−約1.0%、約0.1%−約0.2%までの濃度である。さらなる実施形態では、ゲルは水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース、およびクエン酸ナトリウムを混合することにより調製される。さらなる実施形態では、ゲルは水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース、および酢酸ナトリウムを混合することにより調製される。さらなる一層の実施形態では、混合物は、約20分間120°Cでオートクレーブ滅菌することにより滅菌され、本明細書で開示される適切な量の耳科用薬剤と混合する前に、pH、メチルパラベン濃度、および粘性について試験される。
【0221】
薬物送達ビヒクル中で使用される適切な耳に許容可能な水溶性保存剤は、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、フェニルエタノールなどを含む。こうした薬剤は一般に、約0.001重量%−約5重量%の量で、または、約0.01重量%〜約2重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳に適合した製剤は、保存剤を含まない。
【0222】
賦形剤
いくつかの実施形態では、ゲル製剤および粘度増強剤を含む耳に許容可能な製剤はさらに、賦形剤、他の薬剤または医薬品、担体、保存剤、安定剤、湿潤剤または乳化剤などのアジュバント、溶液促進剤、塩、可溶化剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤、およびそれらの組み合わせを含む。
【0223】
本明細書に記載される耳に許容可能な製剤中で使用するための適切な担体は、限定されないが、標的とされた耳構造の生理的環境と適合性のある任意の薬学的に許容可能な溶媒を含む。他の実施形態では、塩基は、薬学的に許容可能な界面活性剤および溶媒の組み合わせである。
【0224】
いくつかの実施形態では、他の賦形剤は、フマル酸ステアリルナトリウム、セチル硫酸ジエタノールアミン、イソステアリン酸塩、ポリオキシエチレンヒマシ油、ノノキシル(nonoxyl)10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン(sorbitan dioleate)、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、ソルビタントリステアレート)、レシチン、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせ又は混合物を含む。
【0225】
他の実施形態では、担体はポリソルベートである。ポリソルベートは、ソルビタンエステルの非イオン性界面活性剤である。本開示に有用なポリソルベートは、限定されないが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween 80)、およびそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含む。さらなる実施形態では、ポリソルベート80は、薬学的に許容可能な担体として利用される。
【0226】
一実施形態では、薬学的な送達ビヒクルの調製で利用される水溶性のグリセリンベースの耳に許容可能な粘度増強剤は、少なくとも約0.1%またはそれ以上の水溶性のグリセリン化合物を含有している少なくとも1つの耳科用剤を含む。いくつかの実施形態では、耳科用剤のパーセントは、全医薬製剤の重量または量の約1%から約95%の間、約5%から約80%の間、約10%から約60%の間で、またはそれ以上で変動する。いくつかの実施形態では、各々の治療上有用な耳科用製剤中の化合物の量は、適切な投薬が化合物の任意の与えられた単位用量で得られるように調製される。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵期間の他に、他の薬理学的考慮などの因子も、本明細書で熟考される。
【0227】
もし望まれれば、耳に許容可能な医療用ゲルはまた、緩衝剤に加えて、共溶媒、保存剤、助溶剤、イオン強度調節剤、重量モル浸透圧濃度調節剤、および他の賦形剤を含有する。適切な耳に許容可能な水溶性緩衝剤は、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびトロメタミン(TRIS)などの、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩などである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。そのため、緩衝剤は、全組成物の重量ベースで5%もある。
【0228】
助溶剤は、耳科用剤の溶解度を増強するために使用されるが、不溶性の耳科用剤または他の医薬化合物もある。これらは、しばしば、適切な懸濁化剤または粘度増強剤の助けでポリマービヒクル中で懸濁される。
【0229】
さらに、いくつかの薬学的な賦形剤、希釈剤または担体は、潜在的に内毒性である。例えば、一般的な防腐剤である、塩化ベンザルコニウムは、内毒性であり、それ故、耳に導入されると潜在的に有害である。制御放出の耳科用製剤を処方する際に、適切な賦形剤、希釈剤または担体を避けるか又は組み合わせることで、製剤から潜在的な内毒性の成分を減少させるか又は除去する、あるいはそのような賦形剤、希釈剤または担体の量を減少させることが勧められる。随意に、制御放出の耳科用製剤は、具体的な治療剤または賦形剤、希釈剤または担体の使用から生じ得る潜在的な内毒性効果を打ち消すために、抗酸化剤、アルファリポ酸、カルシウム(calicum)、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤などの、耳保護剤を含む。
【0230】
処置の様式
投与の方法およびスケジュール
EACに送達された薬物は、一般に注射(syringing)によって投与される。いくつかの実施形態では、送達システムは、本明細書に開示される耳科用の組成物または製剤を鼓膜の表面上へと又は外耳道中へと適用する(unloading)ことができる、シリンジおよび針の装置である。幾つかの実施形態では、シリンジ上の針は、18ゲージ針より広い。別の実施形態では、針ゲージは、18ゲージから31ゲージまでである。さらなる実施形態では、針ゲージは、25ゲージから30ゲージまでである。耳科用剤の組成物または製剤の濃さ又は粘度によって、シリンジまたは皮下注射針のゲージレベルは様々であり得る。別の実施形態では、針の内径は、針の壁厚を縮小することによって増大され得(一般に細い壁針または極細の壁針と呼ばれる)、十分な針ゲージを維持しながら針の詰まりの可能性を減少させる。
【0231】
いくつかの実施形態では、針は、ゲル製剤の即時送達に使用される皮下注射針である。
針は、1回使いきりの針又は使い捨ての針であり得る。幾つかの実施形態では、シリンジは、本明細書に開示されるような薬学的に許容可能なゲルベースの耳科用剤含有組成物の送達に使用されてもよく、ここでシリンジは、プレスばめ(press−fit)(Luer)またはツイストオン(twist−on)(Luer−lock)フィティング(fitting)を有している。一実施形態では、シリンジは、皮下注射器である。別の実施形態では、シリンジは、プラスチックまたはガラスで作られている。また別の実施形態では、皮下注射器は、1回使いきりのシリンジである。さらなる実施形態では、ガラスシリンジは、滅菌が可能である。またさらなる実施形態では、滅菌は、オートクレーブによって生じる。別の実施形態では、シリンジは、円筒状のシリンジ本体を含み、ここでゲル製剤は、使用前に保存される。他の実施形態では、シリンジは、円筒状のシリンジ本体を含み、ここで、本明細書に開示されるよう耳科用剤の薬学的に許容可能なゲルベースの組成物は、使用前に保存されることで、好都合なことに適切な薬学的に許容可能な緩衝液との混合が可能となる。他の実施形態では、シリンジは、含まれる耳科用剤または他の医薬化合物を安定化する又はさもなければ安定して保存するために、他の賦形剤、安定剤、懸濁化剤、希釈剤、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0232】
幾つかの実施形態では、シリンジは、円筒状のシリンジ本体を含み、ここでシリンジ本体は区画され、その中で各区画は、耳に許容可能な耳科用剤のゲル製剤の少なくとも1つの成分を保存することができる。さらなる実施形態では、区画された本体を有するシリンジは、EACへの注入前に成分の混合を可能にする。他の実施形態では、送達システムは、複数のシリンジを含み、複数のシリンジの各々は、各成分が注入前に予め混合されるか又は注入に続いて混合されるように、ゲル製剤の少なくとも1つの成分を含む。さらなる実施形態では、本明細書に開示されるシリンジは、少なくとも1つのリザーバーを含み、ここで少なくとも1つのリザーバーは、耳科用剤、または薬学的に許容可能な緩衝液、またはゲル化剤などの増粘剤、またはそれらの組み合わせを含む。市販の注射器具は、注入を行うために、注射筒を備えた使用準備済のプラスチックシリンジ、針を備えた針アセンブリ、プランジャーロッドを備えたプランジャー、および保持フランジ(holding flange)としてそれらの最も単純な形態で随意に利用される。
【0233】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳に許容可能な組成物または製剤は、針を使用せずに鼓膜の表面上に又は外耳道中へと送達または注入される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳に許容可能な組成物または製剤は、シリンジを使用して鼓膜の表面上に又は外耳道中へと送達または注入される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される耳に許容可能な組成物または製剤は、滴瓶、または開示される耳に許容可能な組成物を標的とされた領域上に送達することができる任意の送達装置を使用して、鼓膜の表面上に又は外耳道中へと送達または注入される。
【0234】
本明細書に記載される耳科用剤化合物を含有している耳に許容可能な組成物または製剤は、予防的及び/又は治療的な処置のために投与される。治療適用において、耳科用剤組成物は、疾病または障害を既に患う患者に、疾患、障害または疾病の症状を治癒する又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。この使用に有効な量は、疾患、障害または疾病の重症度および経過、前の治療、患者の健康状態および薬物に対する反応、ならびに処置する医師の判断に依存するだろう。
【0235】
投与の頻度
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、それを必要としている個体に1回投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、それを必要としている個体に2回以上投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物の第1投与の後に、本明細書に開示される組成物の第2投与が続く。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物の第1投与の後に、本明細書に開示される組成物の第2および第3の投与が続く。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物の第1投与の後に、本明細書に開示される組成物の第2、第3、および第4の投与が続く。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物の第1投与の後に、本明細書に開示される組成物の第2、第3、第4、および第5の投与が続く。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物の第1投与の後に、休薬期間が続く。
【0236】
組成物がそれを必要としている個体に投与される回数は、医療専門家の分別、障害、障害の重症度、および製剤に対する個体の反応に依存する。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、それを必要としている軽度の急性疾患を有する個体に1回投与される。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、それを必要としている中程度または重度の急性疾患を有する個体に2回以上投与される。患者の状態が改善しない場合、医者の判断で、耳科用剤の投与は、患者の疾患または疾病の症状を改善するか、さもなければ制御または制限するために、慢性的に、即ち、患者の生涯を含む長期間の間投与され得る。
【0237】
患者の状態が改善しない場合、医者の判断で、耳科用剤化合物の投与は、患者の疾患または疾病の症状を改善するか、さもなければ制御または制限するために、慢性的に、即ち、患者の生涯を含む長期間の間投与され得る。
【0238】
患者の状態が改善する場合、医者の判断で、耳科用剤化合物は継続的に投与され得;代替的に、投与されている薬物の用量は、一時的に減少されるか、または特定の期間の間一時的に中止される(つまり、「休薬期間」)。休薬期間の長さは、2日から1年の間で変化し、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および365日を含む。休薬期間中の用量減少は、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、および100%を含む、10%−100%であり得る。
【0239】
患者の耳の状態が改善すると、必要に応じて、耳科用剤の維持量が投与される。続いて、投与の用量または頻度、あるいはその両方は、症状に応じて、改善された疾患、障害または疾病が保持されるレベルまで随意に減少される。特定の実施形態では、患者は、症状の再発で長期間にわたって間欠処置を必要とする。
【0240】
そのような量に相当する耳科用剤の量は、例えば、投与されている具体的な耳科用剤、投与経路、処置されている疾病、処置されている標的面積、および処置されている被験体または宿主を含む、特定の状況に従って、特定の化合物、疾患の状態およびその重症度などの要因によって変わる。しかしながら、一般に、成人のヒトの処置のために利用される投与量は、典型的に、1回の投与当たり0.02−50mgの範囲となり、好ましくは、1回の投与当たり1−15mgの範囲となる。望ましい投与量は、単回投与量で、または同時に(または短期間にわたって)投与される分割量として、あるいは適切な間隔で与えられる。
【0241】
いくつかの実施形態では、初期の投与では、特定の耳科用剤を用い、続く投与では、異なる製剤または耳科用剤を用いる。
【0242】
制御放出製剤の薬物動態
一実施形態では、本明細書に開示される製剤は、追加で、組成物からの耳科用剤を即時に、または1分以内、または5分以内、または10分以内、または15分以内、または30分以内、または60分以内、あるいは90分以内に放出する。他の実施形態では、治療上有効な量の少なくとも1つの耳科用剤は、組成物からすぐに、または1分以内、または5分以内、または10分以内、または15分以内、または30分以内、または60分以内、あるいは90分以内に放出される。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの耳科用剤の即時放出を提供する耳に薬学的に許容可能なゲル製剤を含む。製剤の追加の実施形態はまた、本明細書で包含される製剤の粘度を増強する薬剤を含み得る。
【0243】
他の又はさらなる実施形態では、製剤は、少なくとも1つの耳科用剤の徐放製剤を提供する。特定の実施形態では、製剤からの少なくとも1つの耳科用剤の拡散が、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超過する期間の間、生じる、他の実施形態では、治療上有効な量の少なくとも1つの耳科用剤は、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、 または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2か月、または3か月、または4か月、または5か月、または6か月、または9か月、または1年を超過する期間の間、製剤から放出される。
【0244】
他の実施形態では、製剤は、耳科用剤の即時放出および徐放の両方の製剤を提供する。また他の実施形態では、製剤は、0.25:1の比率、または0.5:1の比率、または1:1の比率、または1:2の比率、または1:3の比率、または1:4の比率、または1:5の比率、または1:7の比率、または1:10の比率、または1:15の比率、または1:20の比率の即時放出製剤と徐放製剤を含む。さらなる実施形態では、製剤は、第1耳科用剤の即時放出および第2耳科用剤または他の治療剤の徐放を提供する。また他の実施形態では、製剤は、少なくとも1つの耳科用剤、および少なくとも1つの治療剤の即時放出および拡張放出の製剤を提供する。いくつかの実施形態では、製剤は、それぞれ、0.25:1の比率、または0.5:1の比率、または1:1の比率、または1:2の比率、または1:3の比率、または1:4の比率、または1:5の比率、または1:7の比率、または1:10の比率、または1:15の比率、または1:20の比率の第1耳科用剤および第2治療剤の即時放出製剤および徐放製剤を提供する。
【0245】
具体的な実施形態では、製剤は、本質的に全身暴露なしで、処置部位(例えばEAC)に治療上有効な量の少なくとも1つの耳科用剤を提供する。追加の実施形態では、製剤は、本質的に検知可能な全身暴露なしで、処置部位に治療上有効な量の少なくとも1つの耳科用剤を提供する。他の実施形態では、製剤は、検知可能な全身暴露がほとんどなしで又は全くなしで、処置部位に治療上有効な量の少なくとも1つの耳科用剤を提供する。
【0246】
即時放出、遅延放出及び/又は徐放の耳科用剤の組成物または製剤の組み合わせは、他の医薬製剤の他に、賦形剤、希釈剤、安定剤、等張化剤、および本明細書に開示される他の成分と組み合わせられ得る。そのため、使用される耳科用剤、所望される濃さ又は粘度、あるいは選択される送達の方法に依存して、本明細書に開示される実施形態の代替的な態様は、即時放出、遅延放出及び/又は徐放の実施形態と組み合わされる。
【0247】
特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用製剤の薬物動態は、試験動物(一例として、モルモットまたはチンチラを含む)のEACに、あるいは鼓膜の表面上またはその近くに製剤を注入することによって決定される。決められた期間(例えば、1週間の期間にわたる製剤の薬物動態を試験するための、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日)で、試験動物は安楽死させられ、耳科用剤のレベルが耳または他の器官において測定される。さらに、耳科用剤の全身レベルが、試験動物から血液サンプルを採取することによって測定される。製剤が聴力を妨害するかどうかを判断するために、試験動物の聴力が随意に試験される。
【0248】
キット/製品
本開示はまた、耳垢の生成の調節および哺乳動物中の耳垢症および耳垢症関連の疾患の処置のためのキットを提供する。そのようなキットは、一般に、本明細書に開示される耳科用剤の制御放出組成物の1つ以上、およびキットを使用するための説明書を含むだろう。本開示はまた、耳垢症を有する、またはその疑いのある、あるいはそれを進行させるリスクのあるヒトなどの哺乳動物において、疾患、機能不全、または障害の症状を処置、緩和、低減、または改善するための薬剤の製造における耳科用剤の制御放出組成物の1つ以上の使用を熟考している。
【0249】
幾つかの実施形態では、キットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器を受けるように区画されている、担体、パッケージ、または容器を含み、その容器の各々は、本明細書に記載される方法で使用される個別の要素の1つを含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。他の実施形態では、容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
【0250】
本明細書に提供される製品は、パッケージング材を含む。薬剤製品のパッケージに使用されるパッケージング材も本明細書に示される。例えば、米国特許第5,323,907号、5,052,558号および5,033,252号を参照。製薬のパッケージング材の例は、限定されないが、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトル、および選択される製剤および意図した投与と処置の様式に適した任意のパッケージング材を含む。本明細書に提供される多様な耳科用剤の製剤組成物が、EACへの耳科用剤の制御放出投与から恩恵を得る、疾患、障害、または疾病のための様々な処置として熟考される。
【0251】
幾つかの実施形態では、キットは、1つ以上の追加の容器を含み、その各々は、本明細書に記載される製剤の使用のための商用およびユーザーの観点から望ましい、様々な材料(随意に高濃度の試薬、及び/又はデバイスなど)の1つ以上を有している。そのような材料の限定しない例は、限定されないが、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ;担体、パッケージ、容器、バイアル及び/又は使用のための内容物及び/又は説明書および使用のための説明書を備える添付文書をリストする筒状ラベルを含む。1セットの説明書が、随意に含まれる。さらなる実施形態では、ラベルは、容器上にあるか又はそれに関連付けられている。またさらなる実施形態では、ラベルは、それを形成する字、数字または他の文字が、容器自体に付けられているか、成型されているか、エッチングされるときに容器上にあり、容器も保持するレセプタクルまたは担体内に存在するときに、例えば添付文書として、容器と関連付けられている。他の実施形態では、ラベルは、内容物が具体的な治療適用に使用されることを示すために使用される。また別の実施形態では、ラベルはまた、本明細書に記載される方法でのように、内容物の使用のための指示を示す。
【0252】
特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に提供される化合物を含有している1つ以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサー装置中に与えられる。別の実施形態では、パックは、例えば、ブリスターパックなどの、金属またはプラスチック箔を含む。さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサー装置は、投与のための説明書が付けられている。またさらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、または販売を規制する政府機関によって規定された形態で容器に関連付けられる通知が伴い、その通知は、ヒトまたは動物用の投与のための薬物の形態の機関による承認を反映している。別の実施形態では、そのような通知は、例えば、処方薬に関して米国食品医薬品局によって承認されたラベル化または承認された製品添付文書(approved product insert)である。また別の実施形態では、適合性のある製薬担体中で製剤された本明細書に提供される化合物を含有している組成物もまた、調製され、適切な容器に入れられ、および示される疾病の処置のためにラベル付けされる。
【実施例】
【0253】
実施例1
熱可逆性ゲルの耳科用製剤の調製のための典型的な組成物が、表1−12記載される。
【0254】
【表1】
【0255】
【表2】
【0256】
【表3】
【0257】
【表4】
【0258】
【表5】
【0259】
【表6】
【0260】
【表7】
【0261】
【表8】
【0262】
【表9】
【0263】
【表10】
【0264】
【表11】
【0265】
【表12】
【0266】
実施例2 − コリンエステルまたはカルバミン酸塩を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0267】
【表13】
【0268】
6.0%のコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)を含有している10g束のゲル製剤を、5.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。コリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(1.80g)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0269】
コリンエステルまたはカルバミン酸塩を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0270】
【表14】
【0271】
6.0%のコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)を含有している10g束のゲル製剤を、4.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。コリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)(600.0mg)、スクアレン(600.0mg)、ラノステロール(600.0mg)、コレステロール(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(100mg)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0272】
実施例3 − 植物アルカロイドを含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0273】
【表15】
【0274】
6.0%の植物アルカロイド(例えばピロカルピン)を含有している10g束のゲル製剤を、5.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。植物アルカロイド(例えばピロカルピン)(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(1.80g)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0275】
植物アルカロイドを含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0276】
【表16】
【0277】
6.0%の植物アルカロイド(例えばピロカルピン)を含有している10g束のゲル製剤を、4.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。植物アルカロイド(例えばピロカルピン)(600.0mg)、スクアレン(600.0mg)、ラノステロール(600.0mg)、コレステロール(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(100mg)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0278】
実施例4 − コリンエステラーゼ阻害剤を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0279】
【表17】
【0280】
6.0%の可逆的コリンエステラーゼ阻害剤(例えばネオスチグミンまたはフィソスチグミン)を含有している10g束のゲル製剤を、5.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。可逆的コリンエステラーゼ阻害剤(例えばネオスチグミンまたはフィソスチグミン)(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(1.80g)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0281】
コリンエステラーゼ阻害剤を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0282】
【表18】
【0283】
6.0%の可逆的コリンエステラーゼ阻害剤(例えばネオスチグミンまたはフィソスチグミン)を含有している10g束のゲル製剤を、4.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。可逆的コリンエステラーゼ阻害剤(例えばネオスチグミンまたはフィソスチグミン)(600.0mg)、スクアレン(600.0mg)、ラノステロール(600.0mg)、コレステロール(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(100mg)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。
混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0284】
実施例5 − アセチルコリン放出プロモーターを含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0285】
【表19】
【0286】
6.0%のアセチルコリン放出プロモーター(例えば、ドロペリドール、リスペリドン、またはトラドゾン)を含有している10g束のゲル製剤を、5.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。アセチルコリン放出プロモーター(例えば、ドロペリドール、リスペリドン、またはトラドゾン)(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(1.80g)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0287】
アセチルコリン放出プロモーターを含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0288】
【表20】
【0289】
6.0%のアセチルコリン放出プロモーター(例えば、ドロペリドール、リスペリドン、またはトラドゾン)を含有している10g束のゲル製剤を、4.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。アセチルコリン放出プロモーター(例えば、ドロペリドール、リスペリドン、またはトラドゾン)(600.0mg)、スクアレン(600.0mg)、ラノステロール(600.0mg)、コレステロール(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(100mg)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0290】
実施例6 − 抗アドレナリン作用薬を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0291】
【表21】
【0292】
6.0%の抗アドレナリン作用薬(例えば、クロニジン、プロプラノロール、アテノロール、またはプラゾシン)を含有している10g束のゲル製剤を、5.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。抗アドレナリン作用薬(例えば、クロニジン、プロプラノロール、アテノロール、またはプラゾシン)(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(1.80g)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0293】
抗アドレナリン作用薬を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製。
【0294】
【表22】
【0295】
6.0%の抗アドレナリン作用薬(例えば、クロニジン、プロプラノロール、アテノロール、またはプラゾシン)を含有している10g束のゲル製剤を、4.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。抗アドレナリン作用薬(例えば、クロニジン、プロプラノロール、アテノロール、またはプラゾシン)(600.0mg)、スクアレン(600.0mg)、ラノステロール(600.0mg)、コレステロール(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(100mg)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0296】
実施例7 − 交感神経刺激薬を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0297】
【表23】
【0298】
6.0%の交感神経刺激薬(例えばノルエピネフリンまたはドーパミン)を含有している10g束のゲル製剤を、5.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。交感神経刺激薬(例えばノルエピネフリンまたはドーパミン)(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(1.80g)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0299】
交感神経刺激薬を含有している熱可逆性ゲル製剤の調製
【0300】
【表24】
【0301】
6.0%の交感神経刺激薬(例えばノルエピネフリンまたはドーパミン)を含有している10g束のゲル製剤を、4.00gのTRIS HCl緩衝液(0.1M)中で1.60gのポロキサマー407(BASF Corp.)を懸濁することによって調製し、成分を4℃で一晩撹拌下で混合して、完全溶解を確かなものとする。交感神経刺激薬(例えばノルエピネフリンまたはドーパミン)(600.0mg)、スクアレン(600.0mg)、ラノステロール(600.0mg)、コレステロール(600.0mg)、NaCl(1g)および追加のTRIS HCl緩衝液(0.1M)(100mg)を加え、完全溶解が観察されるまで、さらに撹拌する。混合物を、使用するまで室温未満に維持する。
【0302】
実施例8 − 微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩の粉末および微粉化したデキサメサゾン粉末を含む熱可逆性ゲル組成物の調製
【0303】
【表25】
【0304】
2.0%の微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)および微粉化したデキサメサゾンを含有している10g束のゲル製剤を調製する。微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)、微粉化したデキサメサゾン、13.8mgのリン酸ナトリウム二塩基性二水和物USP(Fisher Scientific.)+3.1mgのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物USP(Fisher Scientific.)+74mgの塩化ナトリウムUSP(Fisher Scientific.)を、8.2gの滅菌濾過したDI水で溶解し、pHを1MのNaOHで7.4に調整する。緩衝液を冷却し、1.6gのポロキサマー407(BASF Corp.,およそ100ppmのBHTを含有している)を、混合しながら冷却したPBS溶液へとまく。ポロキサマーがすべて溶解されるまで、溶液を混合する。ポロキサマーを、33mm PVDF 0.22μmの滅菌したシリンジフィルター(Millipore Corp.)を使用して滅菌濾過し、無菌環境において2mLの滅菌したガラスバイアル(Wheaton)へと送達し、バイアルを、滅菌したブチルゴム製ストッパー(butyl rubber stoppers)(Kimble)で閉じ、13mmのAlシール(Kimble)で圧着密封する(crimped sealed)。20mgの微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)およびデキサメサゾンを、別々の清潔な乾熱処理したバイアルに入れ、バイアルを滅菌したブチルゴム製ストッパー(Kimble)で閉じ、13mmのAlシール(Kimble)で圧着密封し、バイアルを140℃で7時間乾熱滅菌する(Fisher Scientific Isotempのオーブン)。本明細書に記載される実験に関する投与前に、1mLの冷たいポロキサマー溶液を、1mLの滅菌したシリンジ(Becton Dickinson)に付けられた21Gの針(Becton Dickinson)を使用して、20mgの滅菌した微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)およびデキサメサゾンを含有しているバイアルに送達し、懸濁液を振盪によってよく混合して、懸濁液の均質性を確かなものとする。その後、懸濁液を、21Gのシリンジで回収し、針を投与用の27Gの針に切り替える。
【0305】
微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩の粉末、微粉化したデキサメサゾン粉末、および追加の活性剤の粉末を含む、熱可逆性ゲル組成物の調製
【0306】
【表26】
【0307】
2.0%の微粉化しコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)、微粉化したデキサメサゾン、微粉化したスクアレン、微粉化したラノステロールを、微粉化したコレステロールを含有している10g束のゲル製剤を調製する。微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)、微粉化したデキサメサゾン、微粉化したスクアレン、微粉化したラノステロール、微粉化したコレステロール、13.8mgのリン酸ナトリウム二塩基性二水和物USP(Fisher Scientific.)+3.1mgのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物USP(Fisher Scientific.)+74mgの塩化ナトリウムUSP(Fisher Scientific.)を、8.2gの滅菌濾過したDI水で溶解し、pHを1MのNaOHで7.4に調整する。緩衝液を冷却し、1.6gのポロキサマー407(BASF Corp.,およそ100ppmのBHTを含有している)を、混合しながら冷却したPBS溶液へとまく。ポロキサマーがすべて溶解されるまで、溶液を混合する。ポロキサマーを、33mm PVDF 0.22μmの滅菌したシリンジフィルター(Millipore Corp.)を使用して滅菌濾過し、無菌環境において2mLの滅菌したガラスバイアル(Wheaton)へと送達し、バイアルを、滅菌したブチルゴム製ストッパー(Kimble)で閉じ、13mmのAlシール(Kimble)で圧着密封する。20mgの微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)、デキサメサゾン、スクアレン、ラノステロール、およびコレステロールを、別々の清潔な乾熱処理したバイアルに入れ、バイアルを滅菌したブチルゴム製ストッパー(Kimble)で閉じ、13mmのAlシール(Kimble)で圧着密封し、バイアルを140℃で7時間乾熱滅菌する(Fisher Scientific Isotempのオーブン)。本明細書に記載される実験に関する投与前に、1mLの冷たいポロキサマー溶液を、1mLの滅菌したシリンジ(Becton Dickinson)に付けられた21Gの針(Becton Dickinson)を使用して、20mgの滅菌した微粉化したコリンエステルまたはカルバミン酸塩(例えばアセチルコリンまたはカルバコール)、デキサメサゾン、スクアレン、ラノステロール、およびコレステロールを含有しているバイアルに送達し、懸濁液を振盪によってよく混合して、懸濁液の均質性を確かなものとする。その後、懸濁液を、21Gのシリンジで回収し、針を投与用の27Gの針に切り替える。
【0308】
実施例17 − PBS緩衝液中のオートクレーブ滅菌した16%のポロキサマー407/2%の耳科用剤に関する分解生成物に対するpHの効果
351.4mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、302.1mgのリン酸ナトリウム二塩基性無水物(Fisher Scientific)、122.1mgのリン酸ナトリウム一塩基性無水物(Fisher Scientific)および適正量の耳科用剤を79.3gの滅菌濾過したDI水で溶解することによって、16%のポロキサマー407/2%の耳科用剤の保存溶液を調製する。溶液を、氷冷水槽中で冷却し、その後、16.05gのポロキサマー407を、混合しながら冷たい溶液へとまく。ポロキサマーが完全に溶解するまで、混合物をさらに混合する。この溶液に対するpHを測定する。
【0309】
PBS(5.3のpH)中の16%のポロキサマー407/2%の耳科用剤。上記の溶液の分割量(およそ30mL)をとって、1MのHClを加えることによって、pHを5.3に調整する。
【0310】
PBS(8.0のpH)中の16%のポロキサマー407/2%の耳科用剤。上記の保存溶液の分割量(およそ30mL)をとって、1MのNaOHを加えることによって、pHを8.0に調整する。
【0311】
805.5mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、606mgのリン酸ナトリウム二塩基性無水物(Fisher Scientific)、247mgのリン酸ナトリウム一塩基性無水物(Fisher Scientific)、その後200gまでの適量を、滅菌濾過したDI水で溶解することによって、PBS緩衝液(pH7.3)を調製する。
【0312】
PBS緩衝液中の適正量の耳科用剤および10gまでの適量をPBS緩衝液で溶解することによって、PBS(pH7.3)中の耳科用剤の2%の溶液を調製する。
【0313】
1mLのサンプルを、3mLのねじ蓋ガラスバイアル(ゴムライニングを備える)に個々に入れ、堅く閉じる。バイアルを、Market Forge−sterilmaticのオートクレーブ(セッティング、遅い液体)に入れ、15分間250°Fで滅菌する。オートクレーブ後、サンプルを、室温まで冷却し、その後、冷蔵庫に入れる。バイアルを冷やしながら混合することによって、サンプルを均質化する。
【0314】
様子(例えば、変色及び/又は沈殿)を観察し、記録する。合計15分の実行の間、(0.05%のTFAを含有している水‐アセトニトリル混合物)の30−80のアセトニトリル勾配(1−10分)を使用する、Luna C18(2)3μm、100A、250x4.6mmのカラムを備えた、Agilent 1200を使用して、HPLC分析を行う。30μLのサンプルをとることによって、サンプルを希釈し、1.5mLの1:1のアセトニトリル−水の混合物で溶解する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳科用剤の純度を記録する。
【0315】
上記の手順に従って調製された、耳科用剤及び/又はEAC保護剤を含む製剤を、オートクレーブ滅菌工程の間に分解に対するpHの影響を判定するために上記の手順を使用して試験する。
【0316】
実施例18 − 加熱減菌(オートクレーブ滅菌)後のポロキサマー407を含有している製剤に関する分解生成物に対する緩衝液のタイプの効果。
377.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、および602.9mgのトロメタミン(Sigma Chemical Co.)、その後100gまでの適量を、滅菌濾過したDI水で溶解することによって、TRIS緩衝液を作り、pHを1MのHClで7.4に調整する。
【0317】
TRIS緩衝液中に25%のポロキサマー407の溶液を含有している保存溶液:
45gのTRIS緩衝液を、計量し、氷冷槽中で冷却し、その後、15gのポロキサマー407(Spectrum Chemicals)を混合しながら、緩衝液中へとまく。ポロキサマーがすべて完全に溶解するまで、混合物をさらに混合する。
【0318】
一連の製剤を上記の保存溶液で調製する。適正量の耳科用剤(あるいはその塩またはプロドラッグ)及び/又は微粉化した/コーティングした/リポソームの粒子としての耳科用剤(あるいはその塩類またはプロドラッグ)を、すべての実験に使用する。
【0319】
PBS緩衝液中に25%のポロキサマー407の溶液を含有している保存溶液(pH7.3):
上に記載されるPBS緩衝液を使用する。704mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、601.2mgのリン酸ナトリウム二塩基性無水物(Fisher Scientific)、242.7mgのリン酸ナトリウム一塩基性無水物(Fisher Scientific)を、140.4gの滅菌濾過したDI水で溶解する。溶液を、氷冷水槽中で冷却し、その後、50gのポロキサマー407を、混合しながら冷たい溶液へとまく。ポロキサマーが完全に溶解するまで、混合物をさらに混合する。
【0320】
一連の製剤を上記の保存溶液で調製する。適正量の耳科用剤(あるいはその塩またはプロドラッグ)及び/又は微粉化した/コーティングした/リポソームの粒子としての耳科用剤(あるいはその塩類またはプロドラッグ)を、すべての実験に使用する。
【0321】
表13および表14は、上に記載される手順を使用して調製されたサンプルをリストする。適正量の耳科用剤を、各サンプルに加え、サンプル中に2%の耳科用剤の終末濃度を提供する。
【0322】
【表27】
【0323】
【表28】
【0324】
1mLのサンプルを、3mLねじ蓋ガラスバイアル(ゴムライニングを備える)に個々に入れ、堅く閉じる。バイアルを、Market Forge−sterilmaticのオートクレーブ(セッティング、遅い液体)に入れ、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブ滅菌後に、サンプルを室温まで冷却する。バイアルを冷蔵庫に入れ、冷却しながら混合して、サンプルを均質化する。
【0325】
合計15分の実行の間、(0.05%のTFAを含有している水‐アセトニトリル混合物)の30−80のアセトニトリル勾配(1−10分)を使用する、Luna C18(2)3μm、100A、250x4.6mmのカラムを備えた、Agilent 1200を使用して、HPLC分析を行う。30μLのサンプルをとり、1.5mLの1:1のアセトニトリル−水の混合物で溶解することによって、サンプルを希釈する。オートクレーブ滅菌したサンプル中の耳科用剤の純度を記録する。TRIS緩衝液およびPBS緩衝液中の製剤の安定性を比較する。
【0326】
水ジャケット付きの温度調節ユニット(1.6℃/分で15−34℃から上昇した温度)を備えた、0.08rpm(0.31s
−1のせん断速度)で回転するCPE−51スピンドルを有するブルックフィールド粘度計RVDV−II+Pを使用して、粘度測定を実行する。Tgelは、粘度の増加がゾルーゲル転移により生じる曲線の変曲点として定義される。オートクレーブ滅菌後に変化を示さなかった製剤のみを分析する。
【0327】
分解生成物上の第2ポリマーの追加の効果および加熱滅菌(オートクレーブ滅菌)後の2%の活性剤および17%のポロキサマー407を含有している製剤の粘度を判定するために、本明細書に記載される手順に従って調製された、耳科用剤及び/又はEAC保護剤を含む製剤を、上記の手順を使用して試験する。微粉化した耳科用剤を含有している製剤の安定性を、微粉化していない耳科用剤の製剤の対応物と比較する。
【0328】
実施例19 − 放出プロフィールのインビトロでの比較。
溶解を、スナップウェル(0.4μmの孔径を有する6.5mmの直径のポリカーボネート膜)において37℃で実行し、本明細書に記載される0.2mLのゲル製剤を、スナップウェルに入れて、硬化させ、その後、0.5mLの緩衝液を、リザーバーに入れて、70rpmでLablineのオービットシェイカー(orbit shaker)を使用して振盪する。サンプルを毎時間採取する(0.1mLを回収し、暖かい緩衝液と交換する)。サンプルを、外部較正標準曲線に対して245nmでUVによって耳科用剤の濃度のために分析する。プルロニックの濃度を、 チオシアン酸コバルト法を使用して、624nmで分析する。%P407に応じた平均溶解時間(MDT)の相対的順位(Relative rank−order)を判定する。製剤の平均溶解時間(MDT)とP407濃度との間の直線関係は、耳科用剤が、拡散によってではなく、ポリマーゲル(ポロキサマー)の浸食により放出されることを示している。直線関係は、拡散及び/又はポリマーゲル分解の組み合わせによる耳科用剤の放出を示す。
【0329】
代替的に、サンプルを、Li Xin−Yu paper [Acta Pharmaceutica Sinica 2008,43(2):208−203]によって記載される方法および%P407に応じた平均溶解時間(MDT)の順位を使用して分析する。
【0330】
耳科用剤の放出プロフィールを判定するために、本明細書に記載される手順に従って調製された、耳科用剤及び/又はEAC保護剤を含む製剤を、上記の手順を使用して試験する。
【0331】
実施例20 −滅菌濾過のための温度範囲の決定
詰まりの可能性を減少させるために滅菌濾過を生じさせる必要のある温度範囲を導く助けにするためにお、低温での粘度を測定する。
【0332】
水ジャケット付きの温度調節ユニット(1.6℃/分で10−25℃から上昇した温度)を備えた、1、5および10rpm(7.5、37.5および75s
−1のせん断速度)で回転するCPE−40スピンドルを有するブルックフィールド粘度計RVDV−II+Pを使用して、粘度測定を実行する。
【0333】
16%のプルロニックのP407のTgelは耳科用剤の濃度を増加させる機能として決定される。16%のプルロニックの製剤に対するTgelの増加を、以下によって推測する:
ΔT
gel=0.93[%耳科用剤]
【0334】
滅菌濾過のための温度範囲を決定するために、本明細書に記載される手順に従って調製された、耳科用剤及び/又はEAC保護剤を含む製剤を、上記の手順を使用して試験する。Tgelに対する増加分の耳科用剤の追加の効果および製剤の見掛け粘度を記録する。
【0335】
実施例21 − 製造条件の決定
【0336】
【表29】
【0337】
16% P407のプラセボの8リットルのバッチ(batch)を、製造/濾過条件を評価するために製造する。3ガロンのSS圧力容器に6.4リットルのDI水を入れることによって、プラセボを製造し、冷蔵庫中で一晩冷却する。翌朝、タンクを取り出し(水温5℃、RT18℃)、48gの塩化ナトリウム、29.6gのリン酸ナトリウム二塩基性脱水物および10gのリン酸ナトリウム一塩基性一水和物を加え、オーバーヘッドミキサー(overhead mixer)(IKA RW20@1720rpm)で溶解する。30分後、緩衝液が溶解されると(溶液温度8℃、RT18℃)、1.36kgのポロキサマー407を、15分間隔で緩衝液にゆっくりまき(溶液温度12℃、RT18℃)、その後、2430rpmまで速度を増加させる。さらに1時間混合した後、混合速度を、1062rpmまで低下させる(完全溶解)。
【0338】
19℃未満の溶液の温度を保持するために、室温を25℃未満に維持する。容器を冷凍/冷却する必要なしに、溶液の温度を、製造の開始から最大3時間まで19℃未満に維持する。
【0339】
17.3cm
2の表面積を有する3つの異なるSartoscale(Sartorius Stedim)フィルターを、溶液の20psiおよび14℃で評価する。
1)Sartopore 2、0.2μmの5445307HS−FF(PES)、16mL/分の流速
2)Sartobran P、0.2μmの5235307HS−FF(セルロースエステル)、12mL/分の流速
3)Sartopore 2 XLI、0.2μmの5445307IS−FF(PES)、15mL/分の流速
【0340】
Sartopore 2のフィルター5441307H4−SSを使用し、濾過を、16psiの圧力で0.015m
2の表面積を有する、0.45、0.2μmのSartopore 2 150の滅菌したカプセル(Sartorius Stedim)を使用して、溶液温度で実行する。流速を、16psiでのおよそ100mL/分で測定し、温度が6.5−14℃の範囲で維持される一方で、流速の変化はない。溶液の圧力を減少させて、温度を増加させることによって、溶液の粘度の増加による流速の低下が引き起こされる。溶液の変色を、そのプロセスの間にモニタリングする。
【0341】
【表30】
【0342】
粘度、TgelおよびUV/Vis吸収を、濾過評価の前に確認する。プルロニックのUV/Visスペクトルを、Evolution 160 UV/Vis (Thermo Scientific)によって得る。250−300nmの範囲におけるピークは、原料(ポロキサマー)中に存在するBHT安定剤に起因する。表19は、濾過前後の上記の溶液の物理化学的性質をリストする。
【0343】
【表31】
【0344】
上記のプロセスは、16%のP407製剤の製造に適用可能であり、室内条件の温度分析を含む。好ましくは、19℃の最大温度によって、製造の間の容器の冷却コストを下げる。いくつかの例では、製造問題を緩和するために、溶液の温度をさらに制御するように、ジャケット付きの容器が使用される。
【0345】
実施例22 − オートクレーブ滅菌した微粉化したサンプルからの耳科用剤のインビトロでの放出
TRIS緩衝液中の16%のポロキサマー407/1.5%の耳科用剤:250.8mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、および302.4mgのトロメタミン(Sigma Chemical Co.)を、39.3gの滅菌濾過したDI水で溶解し、pHを1MのHClで7.4に調整する。4.9gの上記の溶液を使用し、適正量の微粉化した耳科用剤を懸濁し、十分に分散する。2mLの製剤を、2mLのガラスバイアル(Wheatonの血清ガラスバイアル)に移し、13mmのブチルスチレン(kimbleのストッパー)で密封し、13mmのアルミニウムシールで圧着する。
バイアルを、Market Forge−sterilmaticのオートクレーブ(セッティング、遅い液体)に入れ、25分間250°Fで滅菌する。オートクレーブ滅菌後に、サンプルを室温まで冷却する。バイアルを冷蔵庫に入れ、冷却しながら混合して、サンプルを均質化する。オートクレーブ滅菌後のサンプルの変色または沈殿を記録する。
【0346】
溶解を、スナップウェル(0.4μmの孔径を有する6.5mmの直径のポリカーボネート膜)において37℃で実行し、0.2mLのゲルを、スナップウェルに入れて、硬化させ、その後、0.5mLのPBS緩衝液を、リザーバーに入れて、70rpmでLablineのオービットシェイカーを使用して振盪する。サンプルを毎時間採取する[0.1mLを回収し、2%のPEG−40の硬化ヒマシ油(BASF)を含有している暖かいPBS緩衝液と交換して、耳科用剤の溶解度を増強する]。サンプルを、外部較正標準曲線に対して245nmでUVによって耳科用剤の濃度のために分析する。放出速度を、本明細書に開示される他の製剤と比較する。MDTを各サンプルに対して計算する。
【0347】
eppendorfの遠心分離機5424を使用して10分間15,000rpmでサンプルを遠心分離にかけた後に、上清中の耳科用剤の濃度を測定することによって、16%のポロキサマー系中の耳科用剤の溶解化を評価する。上清中の耳科用剤の濃度を、外部較正標準曲線に対して245nmでUVによって測定する。
【0348】
各製剤からの耳科用剤の放出速度を判定するために、本明細書に記載される手順に従って調製された、耳科用剤及び/又はEAC保護剤を含む製剤を、上記の手順を使用して試験する。
【0349】
実施例23 − 放出キネティックスに対するポロキサマー濃度および耳科用剤濃度の効果
様々な濃度のゲル化剤および微粉化した耳科用剤を含む一連の組成物を、上に記載される手順を使用して調製する。表20における各組成物に対する平均溶解時間(MDT)を、上に記載される手順を使用して判定する。
【0350】
【表32】
【0351】
組成物からの耳科用剤の放出動態に対するゲル強度および耳科用剤濃度の効果を、ポロキサマーに対するMDTの測定および耳科用剤に対するMDTの測定によって判定する。
【0352】
各組成物の見掛け粘度を、上に記載されるように測定する。上に記載される組成物中の約15.5%の熱可逆性ポリマーゲルの濃度は、約270,000cPの見掛け粘度を提供する。上に記載される組成物中の約16%の熱可逆性ポリマーゲルの濃度は、約360,000cPの見掛け粘度を提供する。上に記載される組成物中の約16%の熱可逆性ポリマーゲルの濃度は、約480,000cPの見掛け粘度を提供する。
【0353】
各組成物からの耳科用剤の放出速度を判定するために、上に記載される手順に従って調製された、耳科用剤及び/又はEAC保護剤を含む組成物を、上記の手順を使用して試験する。
【0354】
実施例24 − モルモット中の耳科用剤の製剤のインビボでの試験
モルモット(Charles River、体重200−300gの雌)のコホートに、0〜50%の耳科用剤を含有している、本明細書に記載される50μLの異なるP407耳科用剤の製剤を注入する。各製剤に対するゲルの除去時間の経過を判定する。製剤のより速いゲルの除去時間の経過は、より低い平均滞留時間(MRT)を示す。したがって、臨床前研究および臨床研究のための最適なパラメーターを判定するために、注入量および製剤中の耳科用剤の濃度を試験する。
【0355】
実施例25 − インビボでの徐放動態
21匹のモルモット(Charles River、体重200−300gの雌)のコホートに、280mOsm/kgで緩衝され、製剤の0.1%から35重量%の耳科用剤を含有している50μLの16%のP407製剤をを注入する。1日目に動物に投薬を行う。製剤に対する放出プロフィールを、EACの分析に基づいて判定する。
【0356】
実施例26 − 耳垢症の患者における耳科用製剤の臨床試験
研究対象
本研究の主目的は、罹患した個患者における耳垢症の症状を改善するための、プラセボと比較した、本明細書に開示される耳科用製剤の安全性および有効性を評価することである。
【0357】
方法
研究設計
これは、耳垢症の症状の処置における、本明細書に開示される耳科用製剤(100mgおよび200mg)とプラセボを比較した、相3の、多施設の、二重盲検の、無作為化された、プラセボ対照の、3アーム(three−arm)の試験になる。およそ150人の被験体が、本研究に登録され、スポンサーによって準備された無作為化配列に基づいて1からの3の処置群に無作為化される(1:1)。各群は、200mgの制御放出の耳科用製剤、400mgの制御放出の耳科用製剤、または制御放出のプラセボ製剤を受ける。
【0358】
1週間のベースライン期の後、各群からの患者は、16週の二段階の処置期間(8週間の処置に続く8週間の維持期間)に無作為化される。主な有効性は、ベースライン測定と比較した、処置後の目まい、聴力損失、耳鳴、および耳痛の発病を含む、耳垢症の症状の頻度および強度のパーセント変化として測定される。さらに、標準の検査手順を使用するEACの目視検査には各測定が伴う。
【0359】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され記載されているが、そのような実施形態はほんの一例として提供される。本明細書に記載される実施形態に対する様々な代替案が、随意に、本発明の実施に利用される。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、これらの請求項の範囲内の方法および構造並びにそれらの同等物が、それによって包含されるものであることが意図されている。