特表2017-522898(P2017-522898A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-522898一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)活性が改変された遺伝子組換え微生物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-522898(P2017-522898A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)活性が改変された遺伝子組換え微生物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20170721BHJP
   C12P 7/06 20060101ALI20170721BHJP
   C12P 7/18 20060101ALI20170721BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20170721BHJP
【FI】
   C12N1/21ZNA
   C12P7/06
   C12P7/18
   C12N15/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2017-507820(P2017-507820)
(86)(22)【出願日】2015年6月29日
(85)【翻訳文提出日】2017年4月7日
(86)【国際出願番号】US2015038395
(87)【国際公開番号】WO2016025096
(87)【国際公開日】20160218
(31)【優先権主張番号】62/036,107
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/036,104
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/036,101
(32)【優先日】2014年8月11日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】516084697
【氏名又は名称】ランザテク・ニュージーランド・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】コプケ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リュウ,ファンミン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC03
4B064AC05
4B064DA16
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA23X
4B065AB01
4B065BA02
4B065BB02
4B065CA05
4B065CA06
(57)【要約】
本発明は、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)活性が改変された遺伝子組換え微生物、及びそれに関する方法を提供する。具体的には、本発明は、CODH1及び/またはCODH2活性が減少したまたは除去された、遺伝子組換えカルボキシド栄養性酢酸生成細菌を提供する。特定の実施形態において、本細菌はまた、増大したCODH/ACS活性を有し得る。本発明は、細菌を一酸化炭素、二酸化炭素、及び水素のうちの1つ以上を含むガス状基質の存在下で培養することによって生成物を生成するための方法をさらに提供する。
【選択図】図1A〜1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親細菌と比較して、CODH1及び/またはCODH2活性が減少したまたは除去された遺伝子組換えカルボキシド栄養性酢酸生成細菌。
【請求項2】
前記細菌が、CODH1遺伝子及び/またはCODH2遺伝子内に少なくとも1つの破壊変異を含む、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
前記破壊変異が、親細菌と比較して、前記CODH1遺伝子及び/または前記CODH2遺伝子の発現を減少させるか、または除去する、請求項2に記載の細菌。
【請求項4】
前記破壊変異がノックアウト変異である、請求項2に記載の細菌。
【請求項5】
前記細菌が、前記親細菌と比較して、増大したCODH/ACS活性をさらに有する、請求項1に記載の細菌。
【請求項6】
前記細菌が、前記親細菌と比較して、CODH/ACS遺伝子を過剰発現させる、請求項5に記載の細菌。
【請求項7】
前記細菌が、エタノール及び2,3−ブタンジオールのうちの1つ以上を生成する、請求項1に記載の細菌。
【請求項8】
前記細菌が、前記親細菌と比較して、より多くの量のエタノールを生成し、より少ない量のアセテートを生成し、より短い誘導期を有し、及び/またはより高い増殖速度を有する、請求項1に記載の細菌。
【請求項9】
前記細菌が、CO、CO、及びHのうちの1つ以上を含むガス状基質を消費する、請求項1に記載の細菌。
【請求項10】
前記親細菌が、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・リュングダリ、またはクロストリジウム・ラグスダレイである、請求項1に記載の細菌。
【請求項11】
生成物を生成する方法であって、請求項1に記載の細菌を、CO、CO、及びHのうちの1つ以上を含むガス状基質の存在下で培養し、それにより前記細菌が生成物を生成すること、を含む、方法。
【請求項12】
前記細菌が、CODH1遺伝子及び/またはCODH2遺伝子内に少なくとも1つの破壊変異を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記破壊変異が、親細菌と比較して、前記CODH1遺伝子及び/または前記CODH2遺伝子の発現を減少させたか、または除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記破壊変異がノックアウト変異である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記細菌が、前記親細菌と比較して、増大したCODH/ACS活性をさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記細菌が、前記親細菌と比較して、CODH/ACS遺伝子を過剰発現させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記生成物が、エタノール及び2,3−ブタンジオールのうちの1つ以上を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記細菌が、前記親細菌と比較して、より多くの量のエタノールを生成し、より少ない量のアセテートを生成し、より短い誘導期を有し、及び/またはより高い増殖速度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記親細菌が、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・リュングダリ、またはクロストリジウム・ラグスダレイである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年8月11日に出願された米国仮特許出願第62/036,101号、2014年8月11日に出願された米国仮特許出願第62/036,104号、及び2014年8月11日に出願された米国仮特許出願第62/036,107号の利益を主張し、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
特定の微生物は、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、及び水素(H)のうちの1つ以上を含むガス状基質の発酵によって、エタノールなどの燃料、及び2,3−ブタンジオールなどの他の化学物質を生成することができる。しかしながら、そのような燃料及び化学物質の効率的生成は、炭素基質の望まない副産物への転換、または緩徐な微生物増殖によって、制限され得る。したがって、改善された生成物及び/または増殖プロファイルを有する遺伝子組換え微生物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)活性が改変された遺伝子組換え微生物、及びそれに関する方法を提供する。具体的には、本発明は、CODH1及び/またはCODH2活性が減少したまたは除去された、遺伝子組換えカルボキシド栄養性酢酸生成細菌を提供する。本発明は、細菌をCO、CO、及びHのうちの1つ以上を含むガス状基質の存在下で培養することによって生成物を生成するための方法をさらに提供する。
【0004】
本細菌は、CODH1遺伝子及び/またはCODH2遺伝子内に少なくとも1つの破壊変異を含むように変性され得、それが減少したまたは除去されたCODH1及び/またはCODH2活性をもたらす。具体的には、破壊変異(複数可)は、CODH1遺伝子及び/またはCODH2遺伝子の発現を減少させるか、または除去し得る。一実施形態において、破壊変異はノックアウト変異である。
【0005】
さらには、本細菌は、増加したCODH/ACS活性を有するように変性され得る。一実施形態において、本細菌は、CODH/ACS遺伝子を過剰発現させ得、それが増加したCODH/ACS活性をもたらす。
【0006】
本細菌は、エタノール、2,3−ブタンジオール、アセテート、及び/またはラクテートを含む、いくつかの生成物または副産物を生成し得る。好ましい実施形態において、本細菌は、エタノール及び2,3−ブタンジオールのうちの1つ以上を生成する。本細菌はまた、減少した誘導期または増加した増殖速度など、親細菌と比較して改変された増殖特徴を有し得る。好ましくは、本細菌は、親細菌と比較して、より多くの量のエタノールを生成し、より多くの量の2,3−ブタンジオールを生成し、より少ない量のアセテートを生成し、より短い誘導期を有し、及び/またはより高い増殖速度を有する。
【0007】
本細菌は、概して、CO、CO、及びHのうちの1つ以上を含むガス状基質など、ガス状基質を消費する。ガス状基質は、例えば、合成ガスまたは工業プロセスに由来し得る。
【0008】
好ましい実施形態において、本細菌は、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・リュングダリ、またはクロストリジウム・ラグスダレイの親細菌に由来する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】30psiのCOでのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図1Aは増殖を示し、図1Bはエタノール生成を示し、図1Cは、アセテート生成を示し、図1Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図1B】30psiのCOでのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図1Aは増殖を示し、図1Bはエタノール生成を示し、図1Cは、アセテート生成を示し、図1Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図1C】30psiのCOでのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図1Aは増殖を示し、図1Bはエタノール生成を示し、図1Cは、アセテート生成を示し、図1Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図1D】30psiのCOでのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図1Aは増殖を示し、図1Bはエタノール生成を示し、図1Cは、アセテート生成を示し、図1Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図2A】製鋼ガスでのCODH1変異体(三角形)及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図2Aは増殖を示し、図2Bはエタノール生成を示し、図2Cはアセテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図2B】製鋼ガスでのCODH1変異体(三角形)及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図2Aは増殖を示し、図2Bはエタノール生成を示し、図2Cはアセテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図2C】製鋼ガスでのCODH1変異体(三角形)及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図2Aは増殖を示し、図2Bはエタノール生成を示し、図2Cはアセテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図3A】H+CO条件下でのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図3Aは増殖を示し、図3Bはエタノール生成を示し、図3Cはアセテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図3B】H+CO条件下でのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図3Aは増殖を示し、図3Bはエタノール生成を示し、図3Cはアセテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図3C】H+CO条件下でのCODH1変異体(三角形)、CODH2変異体(バツ印)、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061(丸)の増殖及び代謝物プロファイルを示すグラフである。具体的には、図3Aは増殖を示し、図3Bはエタノール生成を示し、図3Cはアセテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図4】pMTL83157−CODH/ACSのプラスミドマップを示す図である。
図5A】100%COでのCODH/ACS過剰発現(pMTL83157−CODH/ACS)(四角形)及びプラスミド制御pMTL83157(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS過剰発現の効果を示すグラフである。具体的には、図5Aは増殖を示し、図5Bはアセテート生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Dは2,3−ブタンジオール生成を示し、図5Eはラクテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図5B】100%COでのCODH/ACS過剰発現(pMTL83157−CODH/ACS)(四角形)及びプラスミド制御pMTL83157(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS過剰発現の効果を示すグラフである。具体的には、図5Aは増殖を示し、図5Bはアセテート生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Dは2,3−ブタンジオール生成を示し、図5Eはラクテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図5C】100%COでのCODH/ACS過剰発現(pMTL83157−CODH/ACS)(四角形)及びプラスミド制御pMTL83157(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS過剰発現の効果を示すグラフである。具体的には、図5Aは増殖を示し、図5Bはアセテート生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Dは2,3−ブタンジオール生成を示し、図5Eはラクテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図5D】100%COでのCODH/ACS過剰発現(pMTL83157−CODH/ACS)(四角形)及びプラスミド制御pMTL83157(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS過剰発現の効果を示すグラフである。具体的には、図5Aは増殖を示し、図5Bはアセテート生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Dは2,3−ブタンジオール生成を示し、図5Eはラクテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図5E】100%COでのCODH/ACS過剰発現(pMTL83157−CODH/ACS)(四角形)及びプラスミド制御pMTL83157(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS過剰発現の効果を示すグラフである。具体的には、図5Aは増殖を示し、図5Bはアセテート生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Cはエタノール生成を示し、図5Dは2,3−ブタンジオール生成を示し、図5Eはラクテート生成を示す。N=3。エラーバー=平均の標準誤差。
図6A】CODH/ACS不活性化(四角形)及びWT(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖を示すグラフである。図6Aは、CODH/ACS−KO変異体がCOで増殖しないことを示す。図6Bは、CODH/ACS−KO変異体がCO+Hで増殖しないことを示す。
図6B】CODH/ACS不活性化(四角形)及びWT(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖を示すグラフである。図6Aは、CODH/ACS−KO変異体がCOで増殖しないことを示す。図6Bは、CODH/ACS−KO変異体がCO+Hで増殖しないことを示す。
図7A】フルクトースでのCODH/ACS KO変異体(四角形)、プラスミドpMTL83157−CODH/ACSで補完されたCODH/ACS KO変異体(三角形)、及びWT(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS不活性化の効果を示すグラフである。具体的には、図7Aは増殖を示し、図7Bはアセテート生成を示し、図7Cはエタノール生成を示し、図7Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。
図7B】フルクトースでのCODH/ACS KO変異体(四角形)、プラスミドpMTL83157−CODH/ACSで補完されたCODH/ACS KO変異体(三角形)、及びWT(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS不活性化の効果を示すグラフである。具体的には、図7Aは増殖を示し、図7Bはアセテート生成を示し、図7Cはエタノール生成を示し、図7Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。
図7C】フルクトースでのCODH/ACS KO変異体(四角形)、プラスミドpMTL83157−CODH/ACSで補完されたCODH/ACS KO変異体(三角形)、及びWT(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS不活性化の効果を示すグラフである。具体的には、図7Aは増殖を示し、図7Bはアセテート生成を示し、図7Cはエタノール生成を示し、図7Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。
図7D】フルクトースでのCODH/ACS KO変異体(四角形)、プラスミドpMTL83157−CODH/ACSで補完されたCODH/ACS KO変異体(三角形)、及びWT(丸)C.オートエタノゲナムDSM10061の増殖及び代謝物プロファイルに対するCODH/ACS不活性化の効果を示すグラフである。具体的には、図7Aは増殖を示し、図7Bはアセテート生成を示し、図7Cはエタノール生成を示し、図7Dは2,3−ブタンジオール生成を示す。
図8】CODH/ACS不活性化が、ウッド・ユングダール経路が解糖中に生成される還元当量のためのシンクとして機能することを防ぎ得るために、過度の還元当量がエタノール及び2,3−ブタンジオール生成のための駆動力を発生させることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、特に、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)活性が改変された新規の遺伝子組換え微生物、及びそれに関する方法を提供する。
【0011】
CODH酵素(EC1.2.99.2)は、等式:
【数1】
に従って、COのCOへの可逆的酸化を触媒し、還元当量を生成する酸化還元酵素である。CODHは、性質が周知であり、カルボキシド栄養性アセトゲンを含む様々な生物体において説明されている。
【0012】
CODHは、(i)高度に保存されたモリブデン活性部位を含み、かつ最終電子受容体として酸素(時には硝酸塩)を使用する、カルボキシド細菌に由来する好気性Cox型のMo−Cu−Se CODH、ならびに(ii)CO酸化から放出される電子を、フェレドキシン、シトクロム、フラボドキシン、ルブレドキシン、及びNAD(P)を含む一連の生理学的電子受容体へ輸送する、嫌気性型のNi−CODHの2種類に大きく分類され得る。次いで、還元当量は、酢酸生成、メタン生成、硫酸還元、水素生成、及び金属還元を含むいくつかの経路において利用され得る。
【0013】
感受性のNi−CODHは、(i)CO酸化において生理学的に機能する単官能性CODH、及び(ii)COのCO部分への還元をアセチル−CoA生合成へと結びつける、二官能性CODH/ACS複合体の一部としてのCODHという2つの群にさらに分けることができる。
【0014】
例えば、C.オートエタノゲナムは、炭素及びエネルギーの唯一の供給源としてCOを用いて独立栄養的に増殖することが可能である。ゲノム配列決定は、このアセトゲン内に3つの推定上のNi−CODH、つまりCAETHG_3005(CODH1)、CAETHG_3899(CODH2)、及びCAETHG_1620−1621(二官能性CODH/ACS複合体のCODH構成成分をコードするAcsA)を発見した。CODH1が、タンパク質及びフェレドキシン−NAD(+)還元酵素を結合する推定上の4Fe−4SフェレドキシンFe−Sの上流で遺伝子共存下にある一方、CODH2は、オーファンであるように見える。同様に、カルボキシド栄養性アセトゲンC.リュングダリ及びC.カルボキシジボランスも、3つのCODH、1つの二官能性CODH/ACS、及び2つの追加の単官能性CODHを有すると記載される。加えて、少なくともCODH1は、C.リュングダリ、C.ラグスダレイ、C.ディフィシル、及びA.ウッディなど、全ての配列決定されたカルボキシド栄養性アセトゲン中に見られる。
【0015】
先行技術は、概して、CODH1及びCODH2などのCODHがCO利用に関与していることを認めている。例えば、米国第2010/0151543号は、どのようにして酢酸生成クロストリジウム内でのCODHの過剰発現が合成ガス構成成分から酸化ヌクレオチド共因子NAD及びNADPへの電子流を増加させ得、それにより次いでヌクレオチド共因子(NADH及びNADPH)がウッド・ユングダール経路内の中間化合物の生成を刺激するかを記載する。
【0016】
しかしながら、本発明者らは、驚くべきことに、カルボキシド栄養性酢酸生成微生物内のCODH1及び/またはCODH2を破壊することがガス利用に悪影響を与えないことを特定した。実際、本発明者らは、カルボキシド栄養性酢酸生成微生物内のCODH1及び/またはCODH2を破壊することが、未変性の親微生物と比較して、より多い量のエタノールを生成し、より少ない量のアセテートを生成し、より短い誘導期を有し、及び/またはより高い増殖速度を有する微生物をもたらすことを発見した。
【0017】
本発明は、CODH1及び/またはCODH2活性が減少したまたは除去された、遺伝子組換えカルボキシド栄養性酢酸生成細菌を提供する。本発明は、細菌をCO、CO、及びHのうちの1つ以上を含むガス状基質の存在下で培養することによって生成物を生成するための方法をさらに提供する。
【0018】
微生物
本発明の微生物は、遺伝子組換え、即ち、非天然型である。「遺伝子修飾」または「遺伝子工学」という用語は、幅広く微生物のゲノムまたは核酸の操作を指す。同様に、「遺伝子組換え」という用語は、操作されたゲノムまたは核酸を含む微生物を指す。遺伝子修飾の方法は、例えば、異種遺伝子発現、遺伝子またはプロモーター挿入または欠失、核酸変異、改変遺伝子発現または不活性化、酵素工学、指向性進化、知識型設計、ランダム突然変異導入法、遺伝子シャフリング、及びコドン最適化を含む。
【0019】
「微生物」は、顕微鏡生物、特に細菌、古細菌、ウイルス、または真菌である。本発明の微生物は、典型的には細菌である。本明細書で使用される場合、「微生物」の引用は、「細菌」を網羅するものと解釈されるべきである。
【0020】
「親微生物」は、本発明の微生物を発生させるために使用される微生物である。親微生物は、天然に存在する微生物(即ち、野生型微生物)または以前に変性されたことのある微生物(即ち、変異体または組換え微生物)であり得る。本発明の微生物は、親微生物において発現または過剰発現されていなかった1つ以上の酵素を発現または過剰発現させるように変性され得る。同様に、本発明の微生物は、親微生物によって含有されなかった1つ以上の遺伝子を含有するように変性され得る。一実施形態において、親微生物は、C.オートエタノゲナム、C.リュングダリ、またはC.ラグスダレイである。好ましい実施形態において、親微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、C.オートエタノゲナムLZ1561である。
【0021】
用語「〜由来の」は、核酸、タンパク質、または微生物が異なる(例えば、親または野生型)核酸、タンパク質、または微生物から変性または適合されて、新しい核酸、タンパク質、または微生物を生成することを示す。そのような変性または適合は、典型的には、核酸または遺伝子の挿入、欠失、突然変異、または置換を含む。一般に、本発明の微生物は、親微生物に由来する。一実施形態において、本発明の微生物は、C.オートエタノゲナム、C.リュングダリ、またはC.ラグスダレイに由来する。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、DSMZ受託番号DSM23693の下で寄託される、C.オートエタノゲナムLZ1561に由来する。
【0022】
本発明の微生物は、機能特性に基づいてさらに分類され得る。例えば、本発明の微生物は、C1固定微生物、嫌気性細菌、アセトゲン、エタノロジェン、カルボキシド栄養生物、及び/またはそれらの組み合わせであり得るか、またはそれらに由来し得る。表1は、微生物の代表的な一覧を提供し、それらの機能特性を特定する。
【表1】
【0023】
「C1」は、1炭素分子、例えば、CO、CO、CH、またはCHOHを指す。「C1酸素化物」は、少なくとも1つの酸素原子も含む1炭素分子、例えば、CO、CO、またはCHOHを指す。「C1炭素源」は、本発明の微生物のための部分的または唯一の炭素源として機能する1炭素分子を指す。例えば、C1炭素源は、CO、CO、CH、CHOH、またはCHのうちの1つ以上を含み得る。好ましくは、C1炭素源は、CO及びCOのうちの1つまたは両方を含む。「C1固定微生物」は、C1炭素源から1つ以上の生成物を生成する能力を有する微生物である。典型的には、本発明の微生物はC1固定細菌である。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、表1で特定されるC1固定微生物に由来する。
【0024】
「嫌気性細菌」は、増殖のために酸素を必要としない微生物である。嫌気性細菌は、酸素が特定の閾値を超えて存在する場合、負の反応を起こし得るか、もしくは死滅し得る。典型的には、本発明の微生物は嫌気性細菌である。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、表1で特定される嫌気性細菌に由来する。
【0025】
「アセトゲン」は、嫌気呼吸の生成物としてアセテート(または酢酸)を生成する、または生成することが可能である微生物である。典型的には、アセトゲンは、エネルギー節約のため、ならびにアセチル−CoA及びアセテートなどのアセチル−CoA由来生成物の合成のためのそれらの主要機構として、ウッド・ユングダール経路を使用する、偏性嫌気性細菌である(Ragsdale,Biochim Biophys Acta,1784:1873−1898,2008)。アセトゲンは、アセチル−CoA経路を、(1)COからのアセチル−CoAの還元合成のための機構、(2)最終電子を受容する、エネルギー節約プロセス、(3)細胞炭素の合成におけるCOの固定(同化)のための機構として使用する(Drake,Acetogenic Prokaryotes,In:The Prokaryotes,3rd edition,p.354,New York,NY,2006)。天然に存在する全てのアセトゲンは、C1固定、嫌気性、独立栄養性、及び非メタン資化性である。典型的には、本発明の微生物はアセトゲンである。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、表1で特定されるアセトゲンに由来する。
【0026】
「エタノロジェン」は、エタノールを生成する、または生成することが可能である微生物である。典型的には、本発明の微生物はエタノロジェンである。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、表1で特定されるエタノロジェンに由来する。
【0027】
「独立栄養生物」は、有機炭素がなくても増殖することが可能な微生物である。代わりに、独立栄養生物は、CO及び/またはCOなどの無機炭素源を使用する。典型的には、本発明の微生物は独立栄養生物である。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、表1で特定される独立栄養生物に由来する。
【0028】
「カルボキシド栄養生物」は、炭素の唯一の供給源としてCOを利用することが可能な微生物である。典型的には、本発明の微生物はカルボキシド栄養生物である。好ましい実施形態において、本発明の微生物は、表1で特定されるカルボキシド栄養生物に由来する。
【0029】
より広範には、本発明の微生物は、表1で特定される任意の属または種に由来し得る。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明の微生物は、C.オートエタノゲナム種、C.リュングダリ種、及びC.ラグスダレイ種を含むクロストリジウムのクラスターに由来する。これらの種は、Abrini,Arch Microbiol,161:345−351,1994(C.オートエタノゲナム)、Tanner,Int J System Bacteriol,43:232−236,1993(C.リュングダリ)、及びHuhnke,WO2008/028055(C.ラグスダレイ)によって最初に報告され、かつ特徴付けられた。
【0031】
これら3つの種は、多くの類似点を有する。具体的には、これらの種は全て、C1固定、嫌気性、酢酸生成、エタノロジェン、及びカルボキシド栄養性のクロストリジウム属メンバーである。これらの種は、同様の遺伝子型及び表現型ならびにエネルギー節約及び発酵代謝のモードを有する。さらには、これらの種は、99%を超えて同一である16S rRNA DNAを有するクロストリジウムrRNAホモロジー群I内に群生し、約22〜30モル%の含有量でDNA G+Cを有し、グラム陽性であり、同様の形態及びサイズを有し(0.5〜0.7×3〜5μmの対数増殖細胞)、中温性であり(30〜37℃で最適に増殖する)、4〜7.5の同様のpH範囲を有し(約5.5〜6の最適pH)、シトクロムを欠いており、Rnf複合体を介してエネルギーを節約する。また、カルボン酸のそれらの対応するアルコールへの還元が、これらの種において示されている(Perez,Biotechnol Bioeng,110:1066−1077,2012)。重要なことには、これらの種はまた、全て、CO含有ガスで強い独立栄養性増殖を示し、主な発酵生成物としてエタノール及びアセテート(または酢酸)を生成し、特定の条件下で少量の2,3−ブタンジオール及び乳酸を生成する。
【0032】
しかしながら、これら3つの種は、いくつかの違いも有する。これらの種は、C.オートエタノゲナムはウサギの腸から、C.リュングダリは養鶏場の廃棄物から、及びC.ラグスダレイは淡水堆積物からというように、異なる供給源から単離された。これらの種は、種々の糖(例えば、ラムノース、アラビノース)、酸(例えば、グルコン酸塩、クエン酸塩)、アミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン)、及び他の基質(例えば、べタイン、ブタノール)の利用において異なる。さらには、これらの種は、特定のビタミン(例えば、チアミン、ビオチン)に対する栄養要求性において異なる。これらの種は、ウッド・ユングダール経路遺伝子及びタンパク質の核酸及びアミノ酸配列において違いを有するが、これらの遺伝子及びタンパク質の一般的構成及び数は、全ての種において同じであることが分かっている(Kopke,Curr Opin Biotechnol,22:320−325,2011)。
【0033】
したがって、要するに、C.オートエタノゲナム、C.リュングダリ、またはC.ラグスダレイの特徴の多くは、その種に特有なのではなく、むしろC1固定、嫌気性、酢酸生成、エタノロジェン、及びカルボキシド栄養性のクロストリジウム属メンバーのこのクラスターの一般的な特徴である。しかしながら、これらの種は、実際は、全く異なるため、これらの種のうちの1つの遺伝子修飾または操作は、これらの種のうちの別のものにおいては同一の効果を有しない場合がある。例えば、増殖、性能、または生成物生成における違いが観察され得る。
【0034】
本発明の微生物はまた、C.オートエタノゲナム、C.リュングダリ、またはC.ラグスダレイの分離株または変異体に由来し得る。C.オートエタノゲナムの分離株及び変異体としては、JA1−1(DSM10061)(Abrini,Arch Microbiol,161:345−351,1994)、LBS1560(DSM19630)(WO2009/064200)、及びLZ1561(DSM23693)が挙げられる。C.リュングダリの分離株及び変異体としては、ATCC49587(Tanner,Int J Syst Bacteriol,43:232−236,1993)、PETCT(DSM13528、ATCC55383)、ERI−2(ATCC55380)(US5,593,886)、C−01(ATCC55988)(US6,368,819)、O−52(ATCC55989)(US6,368,819)、及びOTA−1(Tirado−Acevedo,Production of bioethanol from synthesis gas using C.ljungdahlii,PhD thesis,North Carolina State University,2010)が挙げられる。C.ラグスダレイの分離株及び変異体としては、PI1(ATCC BAA−622、ATCC PTA−7826)(WO2008/028055)が挙げられる。
【0035】
酵素
「CODH1」は、等式:
【数2】
に従って、COのCOへの可逆的酸化を触媒し、還元当量を生成するCODHを指す。本明細書における「CODH1」への言及は、機能的に同等のそれらの変異体への言及を含むものと解釈されるべきである。CODH1は、例えば、C.オートエタノゲナム(配列番号1)、C.ラグスダレイ(配列番号5)、C.リュングダリ(ADK13979.1)、C.ディフィシル(YP_001086644.1)、またはA.ウッディ(YP_005269573)のCODH1であり得る。
【0036】
「CODH2」は、等式:
【数3】
に従って、COのCOへの可逆的酸化を触媒し、還元当量を生成するCODHを指す。本明細書における「CODH2」への言及は、機能的に同等のそれらの変異体への言及を含むものと解釈されるべきである。CODH2は、例えば、C.オートエタノゲナム(配列番号3)、C.ラグスダレイ(配列番号7)、C.リュングダリ(ADK14854.1)、C.スカトロゲネス(配列番号9)、C.アセトブチリカム(AAK78101.1及びAAK80452.1)、C.カルボキシジボランス「P7」(ZP_05390164.1)、C.ハイドロゲノフォルマンス(ABB14220.1、ABB14432.1、及びABB15066.1)、またはC.ベイジェリンキイ(YP_001310115.1)のCODH2であり得る。さらには、CODH2相同体は、C.ボツリヌス(CBO_2218;A5I3Y9)中に見られ得るが、C.パーフリンジェンス、C.サーモセラム、C.パストゥリアヌム、またはC.クルイベリ中では見られない。
【0037】
二官能性「CODH/ACS」は、酢酸生成細菌に特有であり、COの可逆的酸化に加えて、CO、メチル基、及びCoAからのアセチル−CoA合成も触媒する。CODH/ACS酵素複合体は、CODHサブユニット(AcsA)、ACSサブユニット(AcsB)、コリノイド鉄‐硫黄タンパク質大サブユニット(AcsC)、コリノイド鉄−硫黄タンパク質小サブユニット(AcsD)、メチルトランスフェラーゼサブユニット(AcsE)、及びCODHアクセサリータンパク質(CooC)という、複数のサブユニットからなる。本発明者らは、CODH/ACSの活性レベルを増大させることが、増殖及び/または生成物形成を改善することを発見した。驚くべきことに、CODH/ACS複合体の単一のCODHサブユニットの過剰発現は、複合体の活性を増大させるのに十分である。
【0038】
CODH/ACSのAcsBサブユニットは、例えば、C.オートエタノゲナム(CAETHG_1608遺伝子、WP_023162339.1タンパク質)、C.リュングダリ(CLJU_c37550遺伝子、WP_013240359.1タンパク質)、C.ラグスダレイ(HQ876032.1遺伝子、AEI90761.1タンパク質)、C.カルボキシジボランス(Ccar3245遺伝子、WP_007061841.1)、C.スカトロゲネス(WP_029162953.1タンパク質)、C.ディフィシル(CD0728遺伝子、WP_021369307.1タンパク質)、及びA.ウッディ(Awo_c10760遺伝子、WP_014357691.1タンパク質)のAcsBであり得る。
【0039】
CODH/ACSのAcsCサブユニットは、例えば、C.オートエタノゲナム(CAETHG_1610遺伝子、WP_023162341.1タンパク質)、C.リュングダリ(CLJU_c37570遺伝子、WP_013240361.1タンパク質)、C.ラグスダレイ(HQ876032.1遺伝子、AEI90763.1タンパク質)、C.カルボキシジボランス(Ccar3247遺伝子、WP_007061843.1タンパク質)、C.スカトロゲネス(WP_029162955.1タンパク質)、C.ディフィシル(CD0730遺伝子、WP_021369309.1タンパク質)、またはA.ウッディ(Awo_c10720遺伝子、WP_014357687.1タンパク質)のAcsCであり得る。
【0040】
CODH/ACSのAcsDサブユニットは、例えば、C.オートエタノゲナム(CAETHG_1611遺伝子、WP_023162342.1タンパク質)、C.リュングダリ(CLJU_c37580遺伝子、WP_013240362.1タンパク質)、C.ラグスダレイ(HQ876032.1遺伝子、AEI90764.1タンパク質)、C.カルボキシジボランス(Ccar3248遺伝子、WP_007061844.1タンパク質)、C.スカトロゲネス(WP_029162956.1タンパク質)、C.ディフィシル(CD0731遺伝子、WP_021369310.1タンパク質)、またはA.ウッディ(Awo_c10710遺伝子、WP_014357686.1タンパク質)のAcsDであり得る。
【0041】
CODH/ACSのAcsEサブユニットは、例えば、C.オートエタノゲナム(CAETHG_1609遺伝子、WP_023162340.1タンパク質)、C.リュングダリ(CLJU_c37560遺伝子、WP_013240360.1タンパク質)、C.ラグスダレイ(HQ876032.1遺伝子、AEI90762.1タンパク質)、C.カルボキシジボランス(Ccar3246遺伝子、WP_007061842.1タンパク質)、C.スカトロゲネス(WP_029162954.1タンパク質)、C.ディフィシル(CD0729遺伝子、WP_021369308.1タンパク質)、またはA.ウッディ(Awo_c10730遺伝子、WP_014357688.1タンパク質)のAcsEであり得る。
【0042】
CODH/ACSのCooCアクセサリータンパク質は、例えば、C.オートエタノゲナム(CAETHG_1612遺伝子、WP_023162343.1タンパク質)、C.リュングダリ(CLJU_c37590遺伝子、WP_013240363.1タンパク質)、C.ラグスダレイ(HQ876032.1遺伝子、AEI90765.1タンパク質)、C.カルボキシジボランス(Ccar3249遺伝子、WP_007061845.1タンパク質)、C.スカトロゲネス(WP_029162957.1タンパク質)、C.ディフィシル(CD0732遺伝子、WP_021369311.1タンパク質)、またはA.ウッディ(Awo_c10709遺伝子、WP_014357685.1タンパク質)のCooCであり得る。
【0043】
本発明に適用可能な例示的配列を特定するため、また当業者が不要な実験をすることなく本発明の特定の実施形態を実践できるように、CODH1、CODH2、及びCODH/ACSについての配列情報が提供される。CODH1、CODH2、及びCODH/ACSのための核酸及びアミノ酸配列は、微生物ごとに異なり得ることが理解されるべきである。したがって、本発明は、これら特定の配列及び実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、他の菌株及び種内の相同体を含む、本明細書内で言及される任意の特定のCODH1、CODH2、またはCODH/ACSの機能的に同等の変異体にまで及ぶと解釈されるべきである。
【0044】
用語「変異体」は、核酸及びタンパク質の配列が、従来技術において開示されるかまたは本明細書に例示される参照核酸及びタンパク質の配列などの、参照核酸及びタンパク質の配列から変化する、核酸及びタンパク質を含む。本発明は、参照核酸またはタンパク質と実質的に同じ機能を果たす変異体核酸またはタンパク質を使用して実施されてもよい。例えば、変異体タンパク質は、参照タンパク質と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ反応を触媒してもよい。変異体遺伝子は、参照遺伝子と同じ、または実質的に同じタンパク質をコードしてもよい。変異体プロモーターは、参照プロモーターと実質的に同じ、1つ以上の遺伝子の発現を促進するための能力を有してもよい。
【0045】
そのような核酸またはタンパク質は、本明細書において「機能的に同等の変異体」と称され得る。一例として、機能的に同等の核酸変異体は、対立遺伝子変異型、遺伝子のフラグメント、突然変異遺伝子、多型などを含み得る。他の微生物からの相同遺伝子もまた、機能的に同等の変異体の例である。これらは、C.アセトブチリカム、C.ベイジェリンキイ、またはC.リュングダリなどの種内の相同遺伝子を含み、それらの詳細は、GenbankまたはNCBIなどのウェブサイト上で公開されている。機能的に同等の変異体はまた、配列が特定の微生物に対するコドン最適化の結果として変化する核酸を含む。核酸の機能的に同等の変異体は、好ましくは、参照核酸と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、またはそれを超える核酸配列同一性(相同性パーセント)を有する。タンパク質の機能的に同等の変異体は、好ましくは、参照タンパク質と少なくとも約70%、約80%、約85%、約90%、約95%、約98%、またはそれを超えるアミノ酸同一性(相同性パーセント)を有する。変異体核酸またはタンパク質の機能同等性は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して評価され得る。例えば、CODH1、CODH2、CODH/ACS、及びそれらの変異体の活性を分析するのに使用する酵素アッセイは、CODHの嫌気性浄化、続いて電子受容体としてメチルビオローゲンを使用して604nmで吸収度の変化を分光光度計測することを含む(Ragsdale,J Biol Chem,258:2364−2369,1983)。
【0046】
本発明の微生物は、CODH1、CODH2、及び/またはCODH/ACS活性が改変されている。「酵素活性」または単に「活性」は、広範には、酵素の活性、酵素の量、または反応を触媒するための酵素の可用性を含むがこれらに限定されない、酵素的な活性を指す。したがって、酵素活性を「増大させること」は、酵素の活性を増大させること、酵素の量を増大させること、または反応を触媒するための酵素の可用性を増大させることを含む。同様に、酵素活性を「減少させること」または「低減すること」は、酵素の活性を減少させること、酵素の量を減少させること、または反応を触媒するための酵素の可用性を減少させることを含む。一実施形態において、CODH1及び/またはCODH2の機能または活性は減少される。別の実施形態において、CODH1及び/またはCODH2の機能または活性は、除去されるか、または実質的に除去される。別の実施形態において、CODH/ACSの機能または活性は増大される。関連実施形態において、CODH/ACSの1つ以上のサブユニットまたはアクセサリータンパク質の機能または活性、特にCODHサブユニットの機能または活性が増大される。
【0047】
1つのアプローチとして、酵素活性における変化は、タンパク質をコードする遺伝子を変異させることによって達成され得る。「変異した」とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物と比較して、本発明の微生物において変性されている核酸またはタンパク質を指す。一実施形態において、変異は、酵素をコードする遺伝子中の欠失、挿入、または置換であってもよい。別の実施形態では、突然変異は、酵素中の1つ以上のアミノ酸の欠失、挿入、または置換であってもよい。
【0048】
具体的には、「破壊変異」は、遺伝子または酵素の発現または活性を低減または除去する(即ち、「破壊する」)変異である。破壊変異は、遺伝子または酵素を、部分的に不活性にし得るか、完全に不活性にし得るか、または削除し得る。破壊変異は、ノックアウト(KO)変異であり得、それにより遺伝子またはタンパク質が無効力にされる。破壊変異は、酵素によって生成される生成物の生合成を低減する、防ぐ、または妨害する任意の変異であり得る。破壊変異は、例えば、酵素をコードする遺伝子における変異、酵素をコードする遺伝子の発現に関与する遺伝子調節エレメントにおける変異、酵素の活性を低減または阻害するタンパク質を生成する核酸の導入、または酵素の発現を阻害する核酸(例えば、アンチセンスRNA、siRNA、CRISPR)もしくはタンパク質の導入を含み得る。本発明の微生物は、典型的には、CODH1遺伝子及び/またはCODH2遺伝子内に少なくとも1つの破壊変異を含む。そのような変異は、親微生物と比較して、CODH1遺伝子及び/またはCODH2遺伝子の発現を減少させ得るか、または除去し得る。
【0049】
破壊変異は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して導入され得る。具体的には、破壊変異は、外来DNAのコード配列内への標的挿入により遺伝子を永久に不活性化することによって導入され得る。ClosTronとして知られる遺伝ツールが、イントロン(1.8kb)を特定の遺伝子座にしっかりと挿入するために使用され得る。具体的には、ClosTronは、L.ラクチスからの可動グループIIイントロンLl.ltrBの特異性を利用して、RNA媒介性のレトロホーミング機構を介して特定の部位内へ移入する(Heap,J Microbiol Meth,80:49−55,2010)。別のアプローチは、相同組換えを用いることにより遺伝子の一部または全体を永久に削除するためのホモロジーアームを用いたプラスミドの伝達に関与する。例えば、「ACE」または対立遺伝子結合交換と呼ばれる遺伝子法(Heap,Nucl Acids Res,40:e59,2012)が、カウンタ選択マーカーの使用に頼ることなくこの削除を実施するために使用され得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明の微生物は、CODH1及び/またはCODH2の減少したまたは除去された活性と組み合わせて、CODH/ACSの増大した活性を有する。具体的には、本微生物は、CODH/ACS遺伝子を過剰発現させ得る。本明細書において、「CODH/ACS遺伝子」は、CODH/ACS酵素複合体の任意のサブユニットまたはアクセサリータンパク質をコードする任意の遺伝子を指す。好ましい実施形態において、本微生物は、CODH/ACS酵素複合体のCODHサブユニットをコードする遺伝子を発現する。「過剰発現した」とは、本発明の微生物が由来する野生型または親微生物と比較して、本発明の微生物における核酸またはタンパク質の発現の増加を指す。過剰発現は、遺伝子コピー数、遺伝子転写速度、遺伝子翻訳速度、または酵素分解速度を修正すること含む、当該技術分野において既知の任意の方法によって達成され得る。
【0051】
核酸は、当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、本発明の微生物に送達され得る。例えば、核酸は、ネイキッド核酸として送達され得るか、またはリポソームなどの1つ以上の薬剤を配合され得る。核酸は、適切であるように、DNA、RNA、cDNA、またはそれらの組み合わせであり得る。制限阻害剤が特定の実施形態において使用され得る。追加ベクターは、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、コスミド、及び人工染色体を含み得る。好ましい実施形態において、核酸は、プラスミドを使用して本発明の微生物に送達され得る。一例として、形質転換(形質導入またはトランスフェクションを含む)は、エレクトロポレーション、超音波処理、ポリエチレングリコール媒介性の形質転換、化学的または自然的能力、プロトプラスト形質転換、プロファージ誘発、または接合によって達成され得る。活性制限酵素系を有する特定の実施形態においては、核酸の微生物内への導入前に核酸をメチル化する必要があり得る。
【0052】
さらには、核酸は、特定の核酸の発現を増大させるか、または別途制御するためにプロモーターなどの調節エレメントを含むように設計され得る。プロモーターは、構成型プロモーターまたは誘導性プロモーターであり得る。理想的には、プロモーターは、ウッド・ユングダール経路プロモーター、フェレドキシンプロモーター、ピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素プロモーター、Rnf複合体オペロンプロモーター、ATP合成酵素オペロンプロモーター、またはホスホトランスアセチラーゼ/酢酸キナーゼオペロンプロモーターである。
【0053】
本発明の核酸は、特定の菌株または種、特に、C.オートエタノゲナム(C.オートエタノゲナムLZ1561を含む)、C.リュングダリ、またはC.ラグスダレイにおける発現のために最適化されるコドンであり得る。「コドン最適化」は、特定の菌株または種における核酸の最適化されたまたは改善された翻訳のための遺伝子などの核酸の変異を指す。コドン最適化は、より速い翻訳速度またはより高い翻訳正確性をもたらし得る。
【0054】
増殖及び生成物
本発明の微生物は、それが由来される親微生物と比較して、改変された増殖及び/または代謝プロファイルを有する。例えば、本微生物は、親細菌と比較して、より多くの量のエタノールを生成し、より多くの量の2,3−ブタンジオールを生成し、より少ない量のアセテートを生成し、より短い誘導期を有し、及び/またはより高い増殖速度を有する。
【0055】
本発明の微生物は、改変された誘導期を有し得る。「誘導期」または「増殖誘導期」は、微生物の培養物または集団が、植え付け後に早期対数増殖期または対数/指数増殖期に達するまでにかかる時間を指す。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較してより短い誘導期を有する。例えば、本微生物は、親微生物の誘導期よりも約20%、25%、または30%短い誘導期を有し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物の誘導期よりも約25%〜30%短い誘導期を有する。他の実施形態において、本微生物は、親微生物の誘導期よりも約3、5、または8倍短い誘導期を有し得る。一実施形態において、誘導期は、親微生物の誘導期よりも約7.8〜8日短い場合がある。別の実施形態において、誘導期は、約1〜4日以下、または約2.9日以下であり得る。いくつかの場合において、本微生物は、親微生物よりも劇的に短い誘導期を有し得る。例えば、本微生物は、親微生物の誘導期よりも約10、50、100、または200倍短い誘導期を有し得る。一実施形態において、誘導期は約0.1日以下であり得る。
【0056】
本発明の微生物は、改変された増殖速度を有し得る。「増殖速度」または「増殖の速度」は、微生物の培養物または集団が時間と共に増加する速度を指す。増殖速度は、典型的には、単位h−1を使用して本明細書内では表現される。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、増大したまたはより高い増殖速度を有する。例えば、本微生物は、親微生物の増殖速度よりも約20%、40%、60%、80%、または100%高い増殖速度を有し得る。特定の実施形態において、本微生物は、親微生物の増殖速度よりも約2、3、4、または5倍高い増殖速度を有する。
【0057】
本発明の微生物は、改変された量のバイオマスを生成し得る。「バイオマス」は、増殖または発酵プロセスから発生する微生物の合計集団を指す。一実施形態において、本微生物の発酵は、親微生物の発酵と比較して、増大したまたはより多い量のバイオマスを生成する。例えば、本微生物の発酵は、親微生物の発酵と比較して、約20%、30%、40%、50%、80%、100%、120%、150%、180%、200%、または220%多くのバイオマスを生成し得る。一実施形態において、本微生物の発酵は、親微生物の発酵と比較して、約200%〜220%多くのバイオマスを生成する。
【0058】
本発明の微生物は、改変された量のエタノールを生成し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、増大したまたはより多い量のエタノールを生成する。例えば、本微生物は、親微生物と比較して、約15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、または120%多くのエタノールを生成し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、約20%〜113%多くのエタノールを生成する。
【0059】
本発明の微生物は、改変された量の2,3−ブタンジオールを生成し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、増大したまたはより多い量の2,3−ブタンジオールを生成する。例えば、本微生物は、親微生物と比較して、約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、140%、160%、180%、200%、220%、240%、260%、270%、280%、300%、320%、または340%多くの2,3−ブタンジオールを生成し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、約220%〜230%多くの2,3−ブタンジオールを生成する。別の実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、少なくとも約330%多くの2,3−ブタンジオールを生成する。さらなる実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、約300%〜330%多くの2,3−ブタンジオールを生成する。追加の実施形態において、本微生物は、約0.5〜20g/Lの2,3−ブタンジオールを生成する。
【0060】
本発明の微生物は、改変された量のアセテートを生成し得る。「アセテート」という用語は、酢酸塩のみ、ならびに分子または遊離酢酸及び酢酸塩の混合物の両方を含む。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、減少したまたはより少ない量のアセテートを生成する。例えば、本微生物は、親微生物と比較して、約10%、20%、30%、40%、または50%少ないアセテートを生成し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、約18%〜37%少ないアセテートを生成する。別の実施形態において、本微生物は、約0〜5g/Lのアセテートを生成する。
【0061】
本発明の微生物は、改変された量のラクテートを生成し得る。一実施形態において、本微生物は、親微生物と比較して、減少したまたはより少ない量のラクテートを生成する。
【0062】
特に好ましい実施形態において、本発明の微生物は、親微生物と比較して、増大した量のエタノール及び/または2,3−ブタンジオール、ならびに減少した量のアセテートを生成する。
【0063】
本明細書に記載される微生物及び方法は、発酵プロセスの効率を増大させるために使用され得る。「効率を増大させること」、「増大した効率」などは、微生物増殖速度、生成物生成速度もしくは体積、消費される基質の体積当たりの生成物体積、または生成物選択性を増大させることを含むが、これらに限定されない。効率は、本発明の微生物が由来する親微生物の性能に対して測定され得る。
【0064】
本発明の微生物はまた、1つ以上の追加の生成物を生成し得る。例えば、クロストリジウム・オートエタノゲナムは、エタノール(WO2007/117157)、アセテート(WO2007/117157)、ブタノール(WO2008/115080及びWO2012/053905)、ブチレート(WO2008/115080)、2,3−ブタンジオール(WO2009/151342)、ラクテート(WO2011/112103)、ブテン(WO2012/024522)、ブタジエン(WO2012/024522)、メチルエチルケトン(2−ブタノン)(WO2012/024522及びWO2013/185123)、エチレン(WO2012/026833)、アセトン(WO2012/115527)、イソプロパノール(WO2012/115527)、脂質(WO2013/036147)、3−ヒドロキシプロピオン酸(3−HP)(WO2013/180581)、イソプレン(WO2013/180584)、脂肪酸(WO2013/191567)、2−ブタノール(WO2013/185123)、1,2−プロパンジオール(WO2014/0369152)、ならびに1−プロパノール(WO2014/0369152)を生成するか、または生成するように操作され得る。特定の実施形態において、微生物バイオマス自体が生成物と見なされ得る。
【0065】
本発明は、本発明の微生物を培養することによって、エタノール及び/または2,3−ブタンジオールなどの1つ以上の生成物を生成するための方法をさらに提供する。本発明はまた、本発明の微生物を使用して産業廃棄ガス中のCO、CO、及び/またはHを有用な生成物に変換することにより、産業プロセスからの大気中の炭素排出を減少させるための方法を提供する。
【0066】
基質
「基質」は、本発明の微生物のための炭素及び/またはエネルギー源を指す。典型的には、基質は、ガス状であり、C1炭素源、例えば、CO、CO、及び/またはCHを含む。好ましくは、基質は、COまたはCO+COのC1炭素源を含む。基質はまた、H、N、または電子など、他の非炭素構成成分をさらに含み得る。
【0067】
基質は、概して、約1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100モル%のCOなど、少なくともいくらかの量のCOを含む。基質は、約20〜80、30〜70、または40〜60モル%のCOなど、ある範囲のCOを含み得る。好ましくは、基質は、約40〜70モル%のCO(例えば、製鋼または溶鉱炉ガス)、約20〜30モル%のCO(例えば、塩基性酸素溶鉱炉ガス)、または約15〜45モル%のCO(例えば、合成ガス)を含む。いくつかの実施形態において、基質は、約1〜10または1〜20モル%のCOなど、比較的低い量のCOを含み得る。本発明の微生物は、典型的には、基質中のCOの少なくとも一部分を生成物に変換する。いくつかの実施形態において、基質は、COを含まないか、または実質的に含まない。
【0068】
基質は、いくらかの量のHを含み得る。例えば、基質は、約1、2、5、10、15、20、または30モル%のHを含み得る。いくつかの実施形態において、基質は、約60、70、80、または90モル%のHなど、比較的多量のHを含み得る。さらなる実施形態において、基質は、Hを含まないか、または実質的に含まない。Hリッチガス流は、例えば、炭化水素の水蒸気改質、特に天然ガスの水蒸気改質、石炭または炭化水素の部分酸化、水の電気分解、ならびに塩素を生成するために使用される電解セルから及び精錬または化学的な流れからの捕捉副産物を介して生成され得る。
【0069】
基質は、いくらかの量のCOを含み得る。例えば、基質は、約1〜80または1〜30モル%のCOを含み得る。いくつかの実施形態において、基質は、約20、15、10、または5モル%未満のCOを含み得る。別の実施形態において、基質は、COを含まないか、または実質的に含まない。COリッチガス流は、例えば、天然ガスまたは油燃焼などの炭化水素燃焼からの排出ガス、アンモニア、石灰、またはリン酸塩の生成からの副産物、及び天然二酸化炭素井戸を含む。
【0070】
基質は典型的にはガス状であるが、基質はまた、代替の形態で提供されてもよい。例えば、基質は、マイクロバブル分散物発生装置を使用して、CO含有ガスで飽和した液体中に溶解されてもよい。さらなる例として、基質は、固体支持体上に吸着されてもよい。
【0071】
基質及び/またはC1炭素源は、自動車の排出ガスまたはバイオマスガス化からなど、産業プロセスの副産物として得られる、または何らかの他の源からの排ガスであってもよい。特定の実施形態において、産業プロセスは、鉄鋼製造などの鉄金属生成物製造、非鉄金属生成物製造、石油精製プロセス、石炭ガス化、電力生成、カーボンブラック生成、アンモニア生成、メタノール生成、及びコークス製造からなる群から選択される。これらの実施形態では、基質及び/またはC1炭素源は、任意の従来の方法を使用して、それが大気中に放出される前に産業プロセスから捕捉されてもよい。
【0072】
基質及び/またはC1炭素源は、石炭もしくは精錬残渣のガス化、バイオマスもしくはリグノセルロース物質のガス化、または天然ガスの改質によって得られる合成ガスなど、合成ガスであってもよい。別の実施形態において、合成ガスは、一般廃棄物または産業廃棄物のガス化から得てもよい。
【0073】
基質の組成は、反応の効率及び/または費用に著しい影響を及ぼし得る。例えば、酸素(O)の存在は、嫌気性発酵プロセスの効率を低減し得る。基質の組成に応じて、基質を処理、スクラブ、または濾過して、毒素、望ましくない成分、またはちり粒子などの任意の望ましくない不純物を除去すること、及び/または所望の成分の濃度を増加させることが望ましくあり得る。
【0074】
基質及び遺伝子修飾の効果
基質の組成は、本発明の微生物の増殖及び/または代謝プロファイルに影響を与え得る。例えば、COで増殖される微生物は、CO+Hで増殖される微生物とは異なる増殖及び/または代謝プロファイルを有し得る。加えて、遺伝子修飾の特定の組み合わせが、本発明の微生物の増殖及び/または代謝プロファイルに影響を与え得る。例えば、CODH1遺伝子内に破壊変異を含む微生物は、CODH2遺伝子内に破壊変異を含む微生物とは異なる増殖及び/または代謝プロファイルを有し得、それはCODH1遺伝子及びCODH2遺伝子の両方に破壊変異を含む微生物とは異なる増殖及び/または代謝プロファイルを有し得る。これらの微生物のうちのいずれかにおけるCODH/ACS過剰発現は、微生物の増殖及び/または代謝プロファイルをさらに改変し得る。遺伝子修飾を戦略的に組み合わせ、かつ特定の基質上で微生物を増殖させることが、特定の用途または生成目標に合わせた増殖及び/または代謝プロファイルをもたらし得る。
【0075】
CODH1ノックアウト菌株をCOで増殖させることは、概して、減少したバイオマス生成、減少したアセテート生成、増大したエタノール生成、及び同様の2,3−ブタンジオール生成をもたらす。CODH1ノックアウト菌株をCO+Hで増殖させることは、概して、減少した誘導期及びより速い増殖をもたらす。例えば、CO+Hで増殖されるCODH1ノックアウト菌株は、誘導期を有しない場合があり、かつ約0.4g/Lのバイオマスを生成し得る。
【0076】
CODH2ノックアウト菌株をCOで増殖させることは、概して、減少した誘導期、減少したエタノール生成、減少したアセテート生成、及び増大したか、または同様の2,3−ブタンジオール生成をもたらす。例えば、COで増殖されるCODH2ノックアウト菌株は、2〜4日の誘導期を有し得、かつ約0.1〜4g/Lのアセテートを生成し得る。CODH2ノックアウト菌株をCO+Hで増殖させることは、概して、減少した誘導期及びより速い増殖をもたらす。例えば、CO+Hで増殖されるCODH2ノックアウト菌株は、4日の誘導期を有し得る。
【0077】
CODH/ACS過剰発現菌株をCOで増殖させることは、概して、減少した誘導期、増大したエタノール生成、同様のアセテート生成、及び増大したラクテート生成をもたらす。
【0078】
発酵
典型的には、培養はバイオリアクタ中で実施される。用語「バイオリアクタ」は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、固定化細胞反応器(ICR)、トリクルベッド反応器(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、静的ミキサ、またはガス−液体接触に好適な他の容器もしくは他の装置などの1つ以上の容器、塔、または配管からなる培養/発酵装置を含む。いくつかの実施形態では、バイオリアクタは、第1の増殖反応器及び第2の培養/発酵反応器を含んでもよい。基質は、これらの反応器のうちの1つまたは両方に提供されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「培養」及び「発酵」は、交換可能に使用される。これらの用語は、培養/発酵プロセスの増殖期及び生成物生合成期の両方を包含する。
【0079】
培養物は概して、微生物の増殖を可能にするのに十分な栄養素、ビタミン、及び/または無機物を含有する水性培地中で維持される。好ましくは、水性培地は、最小嫌気性微生物増殖培地などの嫌気性微生物培地である。好適な培地は、当該技術分野において既知である。
【0080】
培養/発酵は、望ましくは、標的生成物の生成のために適切な条件下で実施されるべきである。典型的には、培養/発酵は、嫌気性条件下で実施される。考慮すべき反応条件は、圧力(または分圧)、温度、ガス流速、液体流速、培地pH、培地酸化還元電位、撹拌速度(連続撹拌槽反応器を使用する場合)、接種レベル、液相中のガスが制限的にならないことを確実にするための最大ガス基質濃度、及び生成物阻害を回避するための最大生成物濃度を含む。具体的には、基質の導入速度は、生成物がガス制限条件下での培養によって消費され得るため、液相中のガスの濃度が制限的にならないことを確実にするように制御されてもよい。
【0081】
上昇した圧力でバイオリアクタを動作させることは、気相から液相へのガス物質移動の増加した速度を可能にする。したがって、概して、大気圧よりも高い圧力で培養/発酵を実施することが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ保持時間がバイオリアクタの必要な体積を示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクタの体積、及びその結果として培養/発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。これはさらに、バイオリアクタ中の液体体積を入力ガス流速で除算したものと定義される保持時間が、バイオリアクタが大気圧よりも上昇した圧力に維持されるときに減少され得ることを意味する。最適反応条件は、使用される特定の微生物に部分的に依存する。しかしながら、一般的には、大気圧より高い圧力で発酵を行うことが好ましい。また、所与のガス変換速度が部分的に基質保持時間の関数であり、かつ所望の保持時間を達成することがバイオリアクタの必要な体積をさらに示すため、加圧システムの使用は、必要なバイオリアクタの体積、及びその結果として発酵装置の資本コストを大幅に低減することができる。
【0082】
標的生成物は、例えば、分留、蒸発、浸透蒸発、ガスストリッピング、相分離、及び、例えば、液−液抽出などの抽出発酵など、当該技術分野で既知の任意の方法またはその組み合わせを使用して、発酵ブロスから分離または精製され得る。特定の実施形態において、標的生成物は、ブロスの一部分をバイオリアクタから連続除去し、微生物細胞をブロスから分離し(濾過により簡便に)、かつ1つ以上の標的生成物をブロスから回収することによって、発酵ブロスから回収される。アルコール及び/またはアセトンは、例えば、蒸留によって回収され得る。酸は、例えば、活性炭上での吸着によって回収され得る。分離された微生物細胞は、好ましくは、バイオリアクタに戻される。標的生成物が除去された後に残っている無細胞浸透水も、好ましくは、バイオリアクタに戻される。追加の栄養素(ビタミンBなど)が、無細胞浸透水に添加されて、それがバイオリアクタに戻される前に培地を補充し得る。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は、本発明をさらに例示するが、当然のことながら、いかなる方法によってもその範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0084】
この実施例は、C.オートエタノゲナムDSM10061内の炭素固定に関与するCODH1及びCODH2遺伝子のグループIIイントロンベースの挿入不活性化を説明する。
【0085】
C.オートエタノゲナムDSM10061は、DSMZ、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures、Inhoffenstrase 7B,38124 Braunschweig,Germanyより得た。大腸菌接合菌株CA434は、Nigel Minton教授(University of Nottingham,UK)よりご提供いただいた。
【0086】
C.オートエタノゲナムDSM10061のゲノムは、一酸化炭素デヒドロゲナーゼ(CODH)CODH1(配列番号1及び2)ならびにCODH2(配列番号3及び4)をコードする。これらのCODHを、ClosTronグループIIイントロン媒介性遺伝子破壊ツール(Heap,J Microbiol Meth,80:49−55,2010)を用いて不活性化した。ClosTronウェブサイト上に設けられたPerutkaアルゴリズムを使用して、CODH1及びCODH2遺伝子それぞれのセンス鎖上の600/601系統間及び528/529系統間のグループIIイントロン標的部位を特定した。同じアルゴリズムを使用して、DNA2.0 Inc.(CA)により市販用に合成され、かつpTML007C−E2ベクター(HQ263410.1)内で送達される、CODH1(配列番号15)及びCODH2(配列番号16)のためのイントロン標的領域を設計した。最終ベクター、pMTL007C−E2−CODH1−600!601s及びpMTL007C−E2−CODH2−528!529sは、標的部位への挿入時に抗生物質クラリスロマイシンに対する抵抗性を付与するレトロトランスポゾン活性化ermBマーカー(RAM)を含有した。
【0087】
pMTL007C−E2−CODH1−600!601s及びpMTL007C−E2−CODH2−528!529sプラスミドを、上記及びWO2012/053905に記載されるようにC.オートエタノゲナムDSM10061内へ導入した。形質転換混合物を、YTF寒天培地上にスポットし、嫌気性ワークステーション内で37℃でインキュベートした。24時間後、細胞を、500μLのPBS中に削り落として再懸濁し、7.5μg/mLのチアンフェニコール(Sigma)が補充されたYTF寒天培地上に広げた。7.5μg/mLのチアンフェニコールを使用して形質転換体を選択した。インキュベーションの3日後、コロニーが観察された。
【0088】
単一コロニーのストリークを、まずは7.5μg/mLのチアンフェニコール及び10μg/mLのトリメトプリムが補充されたYTF培地、続いて6μg/mLのクラリスロマイシンを含有するYTF培地上に連続して作製した。フランキングオリゴヌクレオチドを使用して、PCR(Maxime PCR PreMix kit)によるグループII挿入について、8つ未満のコロニーを無作為にスクリーニングした。
【表2】
【0089】
フランキングオリゴヌクレオチド及びゲル電気泳動解析を用いたクラリスロマイシン抵抗性コロニーの増幅は、より小さい野生型バンド(<520bp)の代わりにより大きいClosTronバンド(>2kb)を示し、それは、グループIIイントロンが指定したCODH部位(CODH1::CTermB−601s及びCODH2::CTermB−529s)内への挿入に成功したことを示した。これらのアンプリコンを、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)、及びサンガー配列決定(Source Bioscience,UK)により確認された配列を使用して精製した。
【0090】
最終確認ステップとして、PCR検証されたクローンをサザンブロット解析に供し、単一のClosTron挿入を確認した。ClosTron変異体のゲノムDNAを、Bertram,Arch Microbiol,151:551−557,1989に従って単離し、次いで制限酵素HindIIIで消化した。消化物を、無作為標識したDIGプローブ(Roche)を用いてサザンブロット解析に供し、製造者の指示に従って実施した。テンプレートとしてプラスミドpMTL007C−E2を使用して、オリゴヌクレオチドEBS2(配列番号27)及びIntron−SalI−R1(配列番号28)を使用してプローブを生成した。結果として生じるプローブをグループIIイントロンにハイブリダイズした。サザンブロット解析は、変異体クローン当たり単一のバンドを検出し、C.オートエタノゲナムDSM10061のゲノム内へのグループIIイントロン挿入の単一事象を示した。これらの確認された変異体を、CODH1::CTermB−601s(または「CODH1変異体」)及びCODH2::CTermB−529s(または「CODH2変異体」)と呼んだ。
【実施例2】
【0091】
この実施例は、CO条件下で培養されるC.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH1の不活性化の効果を実証する。
【0092】
CODH1変異体が100%COで独立栄養的に増殖する能力を、30psiのCOで加圧される50mLのPETC培地を含有する3連の250mL血清瓶内で試験した。0.5 OD600当量の活性培養物を各血清瓶内に植え付け、600nmの波長でのOD測定及びHPLCによる代謝物分析のために液相試料を採取した。
【0093】
代謝物の分析は、35℃で動作されるRID(Refractive Index Detector)及び60℃に維持されるAlltech IOA−2000有機酸カラム(150×6.5mm、粒径5μm)を備えたAgilent1100 Series HPLCシステムを用いてHPLCによって実施した。弱酸性水を移動相として0.7ml/分の流量で使用した(0.005M HSO)。タンパク質及び他の細胞残渣を除去するため、400μlの試料を100μlの2%(w/v)5−スルホサリチル酸と混合し、14,000×gで3分間遠心分離して沈殿した残渣を分離した。次いで、10μlの上澄みを、分析のためにHPLC内に注入した。
【0094】
図1A〜1Dに示されるように、CODH1変異体は、バイオマス(42%少ない)及びアセテート形成を代償にして、改良されたエタノールの形態にある好ましい代謝物プロファイルを呈した。CODH1変異体は、64%多くのエタノール(図1B)、25%少ないアセテート(図1C)、及びWTと同様の2,3−ブタンジオール(図1D)を生成した。
【0095】
CODH1変異体及びWTが、51.24%CO、31.22%N、11.98%CO、及び3.05%Hを含む、Glenbrook,New Zealandにある製鋼所からの製鋼ガス内で増殖されたときにも同様のパターンが観察された。本実験は、100mLのPETC培地を含有し、かつ製鋼ガスで30psiまで加圧される3連の250mL血清瓶内で実施された。CO(製鋼ガス中)での増殖に関して、CODH1変異体は、ここでもバイオマス(17%少ない)(図2A)及びアセテート(18%少ない)(図2C)を代償にして、WTよりも113%多くのエタノール(図2B)を生成した。
【実施例3】
【0096】
この実施例は、CO条件下で培養されるC.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH2の不活性化の効果を実証する。
【0097】
CODH2変異体が100%CO中で独立栄養的に増殖する能力を、上記のCODH1変異体と同じ条件下で試験した。WTと比較して、CODH2変異体は、基質として100%COを利用しながら、1日の誘導期減少を示した(図1A)。CODH2変異体の早期指数期は、WTの4.8日目での指数期と比較して、3.8日目で発生した(図1A)。CODH2変異体は、WTよりも27%少ないアセテート(図1C)及び27%少ないエタノールを生成した(図1B)。しかしながら、CODH2変異体のピーク2,3−ブタンジオール生成は、WTよりも高かった(図1D)。
【実施例4】
【0098】
この実施例は、H+CO条件下で培養されるC.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH1またはCODH2の不活性化の効果を実証する。
【0099】
CODH1及びCODH2変異体が水素及び二酸化炭素中で増殖する能力を試験するため、WT及びCODH変異体を、3連の250mL血清瓶内の50mLのPETC培地(フルクトースなし)へ別個に植え付け、ヘッドスペースを20psiのH+10psiのCOと交換した。培養物を撹拌しながら37℃で増殖させ、OD600測定及びHPLC分析のために試料を採取した。
【0100】
+CO条件下で、CODH1変異体は、WTより大きく改善された増殖プロファイルを示した。WTは、22.7日目に0.184の最大OD600に達する前に6日の誘導期を経たが、一方でCODH1変異体は、明白な誘導期なしに増殖することができ、かつ1.6日目に0.40の最大OD600に達した(図3A)。CODH2変異体は、WTよりも短い誘導期及び早い増殖を示し、かつ0.20のピークOD600に達した(図3A)。HPLC分析は、非常に類似したレベルのアセテート及びエタノールが、H+CO条件下で、CODH1変異体、CODH2変異体、及びWTによって生成されたことを示した(図3B〜5C)。
【実施例5】
【0101】
この実施例は、CO条件下で培養されるC.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH1及びCODH2の組み合わせた不活性化の予測効果を説明する。
【0102】
CO条件下におけるCODH1変異体の望ましい代謝物プロファイル、及びCO及びH+CO両方の条件下におけるCODH1及びCODH2変異体の減少した誘導期を考えると、CODH1及びCODH2の組み合わせた不活性化は、独立栄養性条件下で優れた増殖及び代謝物プロファイルを有する菌株をもたらし得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、これら2つのCODHの不活性化は、CO及び/またはCOのCODH/ACSとの反応における可用性を増大させ、アセチル−CoAのより効率的な形成をもたらし得る。
【0103】
例えば、対立遺伝子結合交換またはACE(Heap,Nucl Acids Res,40:e59,2012)が、ダブルCODH(即ち、CODH1及びCODH2)破壊を発生させるために使用され得る。この技術を使用して、C.オートエタノゲナムDSM10061のpyrE遺伝子(配列番号19)は、遺伝子操作の後の段階でpyrEを陽性及び陰性選択マーカーとして使用することができるように削除され得る。pyrEが削除された変異体は、ウラシル栄養要求性に栄養要求性であり、プロドラッグ5`−フルオロオロチン酸に対して抵抗性である。次のステップとして、CODHのうちの1つを標的とするClosTronプラスミドが、pyrE削除変異体内へ導入され得、クラリスロマイシン抵抗性コロニーが、PCR、配列決定、及びサザンブロットにより検証され得る。一方のCODHのClosTron不活性化がこのpyrE削除変異体内で確認されると、陰性選択マーカーとしてpyrEを含有するACE削除プラスミドが、他方のCODHを削除するために導入され得る。最終ステップとして、pyrE遺伝子を有するACEプラスミドが、pyrEの完全性を回復するために導入され得、機能するpyrE遺伝子を有するWTバックグラウンド内に組み合わされたCODH1及びCODH2破壊変異体をもたらす。
【実施例6】
【0104】
この実施例は、CODH/ACS過剰発現プラスミドの構築、及びC.オートエタノゲナムDSM10061内への導入を実証する。
【0105】
C.オートエタノゲナムDSM10061は、DSMZ、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures、Inhoffenstrase 7B,38124 Braunschweig,Germanyより得た。大腸菌株DH5α−T1及びXL1−Blue MRF’は、Invitrogen及びStratageneよりそれぞれ購入した。
【0106】
共にC.オートエタノゲナムDSM10061からの、ウッド・ユングダールプロモーター(PWL)(配列番号18)ならびに二官能性一酸化炭素デヒドロゲナーゼ/アセチル−CoA合成(CODH/ACS)サブユニットAcsA(配列番号12)及びAcsB(配列番号14)のDNA配列は、ゲノム配列決定から得た。C.オートエタノゲナムのウッド・ユングダールクラスターは、独立栄養性条件下で高発現されることが分かっていたため(Kopke,Curr Opin Biotechnol,22:320−325,2011)、PWLをCODH/ACSの発現のために使用した。
【0107】
C.オートエタノゲナムDSM10061からのゲノムDNAを、Bertram,Arch Microbiol,151:551−557,1989による修正された方法を使用して単離した。100mlの一晩培養物を採取し(6,000×g、15分、4℃)、リン酸カリウム緩衝液(10mM、pH7.5)で洗浄し、1.9mlのSTE緩衝液(50mMのTris−HCl、1mMのEDTA、200mMのスクロース、pH8.0)中に懸濁させた。300μlのリゾチーム(約100,000U)を添加し、この混合物を37℃で30分間インキュベートし、続いて280μlの10%(w/v)SDS溶液の添加、及び10分間のさらなるインキュベーションを行った。RNAは、240μlのEDTA溶液(0.5M、pH8)、20μlのTris−HCl(1M、pH7.5)、及び10μlのRNase A(Fermentas)の添加により室温で消化された。次いで、100μlのプロテイナーゼK(0.5U)を添加すると、タンパク質分解が37℃で1〜3時間発生した。最後に、600μlの過塩素酸ナトリウム(5M)を添加し、続いてフェノール・クロロホルム抽出及びイソプロパノール沈殿を行った。DNAの量及び質を分光光度的に検査した。
【0108】
CODH/ACS遺伝子及びPWLを、PhusionハイフィデリティーDNAポリメラーゼ(New England Biolabs)を使用して、PCRにより増幅した。増幅された573bp PWLを、NotI及びNdeI制限部位ならびに菌株DH5α−T1(Invitrogen)を使用して、大腸菌−クロストリジウムシャトルベクターpMTL83151(GenBank受託番号FJ797647、Nigel Minton,University of Nottingham、Heap,J Microbiol Meth,78:79−85,2009)内へクローン化し、プラスミドpMTL83157をもたらした。CODH/ACSのコード配列は1つの内部NdeI部位を含有するため、スプライスオーバーラップ(SOE)PCR(Warrens,Gene,186:29−35,1997)を使用して、コドンの改変なしにこのNdeI部位を除去した。CODH/ACSの1946bp PCR生成物及びプラスミドpMTL83157の両方が、NdeI及びSacIで消化され、かつライゲートされてプラスミドpMTL83157−CODH/ACS(図4)(配列番号20)を生成した。
【0109】
発現プラスミドpMTL83157−CODH/ACSの挿入は、オリゴヌクレオチドCODH/ACS−NdeI−F(配列番号31)及びCODH/ACS−SacI−R(配列番号32)を使用して、完全に配列決定された。プライマープライマーCODH/ACS−NdeI−F及びCODH/ACS−SacI−Rを使用したサンガー配列決定は、CODH/ACSの内部NdeI部位が、無事に改変され、かつ変異を有しないことを確認した。
【表3】
【0110】
プラスミドpMTL83157及びpMTL83157−CODH/ACSを、ドナーであるドナー大腸菌株CA434と接合することにより、C.オートエタノゲナムDSM10061内へ導入した。ドナー株を、25μg/mLのクロラムフェニコール及び100μg/mLのスペクチノマイシンが補充されたLB培地内で増殖させた。遠心分離により1.5mLの培養物から細胞を採取し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中で洗浄した。嫌気性ワークステーション内で、ドナー細胞ペレットを、200μLの指数関数的増殖受容菌C.オートエタノゲナムDSM10061中に再懸濁させた。接合混合物を、YTF寒天培地上にスポットし、嫌気性ワークステーション内で37℃インキュベートした。24時間後、細胞を、500μLのPBS中に削り落として再懸濁し、7.5μg/mLのチアンフェニコール(Sigma)及び10μg/mLのトリメトプリム(Sigma)が補充されたYTF寒天培地上に広げた。C.オートエタノゲナム接合完了体を、7.5μg/mLのチアンフェニコールを使用して選択し、大腸菌CA434株を、10μg/mLのトリメトプリムを使用して対抗選択した。インキュベーションの3日後にコロニーを観察し、それらを精製のために同じ選択的寒天培地上に再ストリークした。
【0111】
同様に、プラスミドが、同様のプロトコルを使用して、C.リュングダリまたはC.ラグスダレイなどの他のカルボキシド栄養性アセトゲン内へ導入され得る。
【0112】
接合完了体の同一性をチェックするため、16s rRNAは、オリゴヌクレオチドUniv−0027−F(配列番号25)及びUniv−1492−R(配列番号26)を使用して、増幅され、かつサンガー配列決定された。プラスミド制限消化分析を実行する前に、プラスミドDNAをC.オートエタノゲナム接合完了体から抽出し、大腸菌XL1−Blue MRF’(Stratagene)へ形質転換した。これは、クロストリジウムから単離されるプラスミドが制限消化分析のために十分な質でないため、「プラスミドレスキュー」と一般に称される。pMTL83157接合完了体からレスキューされるPmeI及びFseI制限消化プラスミドのゲル電気泳動は、予測フラグメント(2600bp及び2424bp)の存在を示した。pMTL83157−CODH/ACS接合完了体からレスキューされるNdeI及びSacI制限消化プラスミドのゲル電気泳動は、予測フラグメント(4995bp及び1932bp)の存在を示した。
【実施例7】
【0113】
この実施例は、CO条件下で培養されるC.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH/ACSの過剰発現の効果を実証する。
【0114】
プラスミド制御(pMTL83157)に対するCODH/ACSの過剰発現の効果を、単一炭素及びエネルギー源としてCOを用いたバッチ増殖実験において比較した。100%CO下で、CODH/ACS過剰発現菌株は、プラスミド制御と同様の量のアセテートを生成しつつ、増殖の誘導期において4.2日の減少を示し、21%多くのエタノールを生成し、2.7倍高いラクテート力価を生成した(図5A〜5E)。
【0115】
両方の菌株を、100%CO中で独立栄養的に増殖させ、50mLのPETC培地を含有し、かつ30psiのCOで加圧される3連の250mL血清瓶内で試験した。チアンフェニコールを最終濃度7.5μg/mLまで補充した。0.5のOD600に値する活性培養物を各血清瓶内に植え付け、600nmの波長でのOD測定及びHPLCによる代謝物分析のために液相試料を採取した。
【0116】
代謝物の分析は、35℃で動作されるRID(Refractive Index Detector)及び35℃に維持されるBiorad Aminex HPX−87Hカラム(1300×7.8mm、粒径9μm)を備えたVarian ProStar HPLCシステムを用いて実施した。弱酸性水を移動相として0.5ml/分の流量で使用した(0.005M HSO)。タンパク質及び他の細胞残渣を除去するため、試料を14,000rpmで5分間遠心分離し、上澄みをSpartan13/0.2RCフィルタで濾過した。次いで、20μlの上澄みを、分析のためにHPLC内に注入した。
【実施例8】
【0117】
この実施例は、CO条件下で培養されるC.リュングダリ中のCODH/ACSの過剰発現の予測効果を説明する。
【0118】
上記のCODH/ACS過剰発現プラスミドもC.リュングダリ内に導入され得る。C.リュングダリは、100%COで増殖され得る。これらの条件下で、C.リュングダリを過剰発現させるCODH/ACSは、エタノール及びラクテート生成を少なくとも20%増大させながら、減少した増殖誘導期を示すはずである。
【実施例9】
【0119】
この実施例は、CO+H条件下で培養されるC.オートエタノゲナム中のCODH/ACSの過剰発現の予測効果を説明する。
【0120】
C.オートエタノゲナムのCODH/ACS過剰発現菌株及びプラスミド制御菌株は、炭素及びエネルギーの単一供給源として80%CO及び20%Hを有するPETC−MES培地上で増殖され得る。これらの条件下で、C.オートエタノゲナムを過剰発現させるCODH/ACSは、減少した増殖誘導期、及び少なくとも20%増大させたエタノール及びラクテート生成を示すはずである。
【実施例10】
【0121】
この実施例は、C.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH/ACSの不活性化を実証する。
【0122】
C.オートエタノゲナムDSM10061の上流CODH/ACS(CAETHG_1621)を、ClosTronグループIIイントロン媒介性遺伝子破壊ツール(Heap,J Microbiol Meth,80:49−55,2010)を用いて不活性化した。ClosTronウェブサイトに設けられたPerutkaアルゴリズムを使用して、CAETHG_1621のセンス鎖上の142/143系統間のグループIIイントロン標的部位を特定した。同じアルゴリズムを使用して、DNA2.0 Inc.(CA)により市販用に合成され、かつpTML007C−E2ベクター(GenBank受託番号HQ263410.1)内で送達される、イントロン標的領域(配列番号17)を設計した。最終ベクター、pMTL007C−E2−CODH/ACS−142!143sは、標的部位への挿入時に抗生物質クラリスロマイシンに対する抵抗性を付与するレトロトランスポゾン活性化ermBマーカー(RAM)を含有した。
【0123】
pMTL007C−E2−CODH/ACS−142!143sプラスミドを、上記のようにC.オートエタノゲナムDSM10061内へ接合した。C.オートエタノゲナム接合完了体を、7.5μg/mLのチアンフェニコールを使用して選択し、大腸菌CA434株を、10μg/mLのトリメトプリムを使用して対抗選択した。インキュベーションの3日後、コロニーが観察された。単一コロニーのストリークを、まずは7.5μg/mLのチアンフェニコール及び10μg/mLのトリメトプリムが補充されたYTF培地、続いて6μg/mLのクラリスロマイシンを含有するYTF培地上に連続して作製した。フランキングオリゴヌクレオチドを使用して、PCR(Maxime PCR PreMix kit)によるグループII挿入について、8つ未満のコロニーを無作為にスクリーニングした。
【表4】
【0124】
フランキングオリゴヌクレオチド及びゲル電気泳動解析を用いたクラリスロマイシン抵抗性コロニーの増幅は、より小さい野生型バンド(<520bp)の代わりにより大きいClosTronバンド(>2kb)を示し、それは、グループIIイントロンが指定したCODH/ACS部位内への挿入に成功したことを示した。これらのアンプリコンを、QIAquick PCR精製キット(Qiagen)、及びサンガー配列決定(Source Bioscience,UK)により確認された配列を使用して精製した。
【0125】
最終確認ステップとして、PCR検証されたクローンをサザンブロット解析に供し、単一のClosTron挿入を確認した。ClosTron変異体のゲノムDNAを、Bertram,Arch Microbiol,151:551−557,1989に従って単離し、次いで制限酵素HindIIIで消化した。消化物を、無作為標識したDIGプローブ(Roche)を用いてサザンブロット解析に供した。テンプレートとしてプラスミドpMTL007C−E2を使用して、オリゴヌクレオチドEBS2(配列番号27)及びIntron−SalI−R1(配列番号28)を使用してプローブを生成した。結果として生じるプローブをグループIIイントロンにハイブリダイズした。サザンブロット解析は、変異体クローン当たり単一のバンドを検出し、C.オートエタノゲナムDSM10061のゲノム内へのグループIIイントロン挿入の単一事象を示した。確認された変異体を、CODH/ACS::CTermB−143s(または「CODH/ACS KO変異体」)と呼んだ。相補性アッセイのため、過剰発現プラスミドpMTL83157−CODH/ACSをCODH/ACS KO変異体内へ接合した。
【0126】
したがって、CODH/ACSが、C.オートエタノゲナムの独立栄養性増殖(COまたはH+CO)のために必要とされる。
【実施例11】
【0127】
この実施例は、フルクトースで増殖されるC.オートエタノゲナムDSM10061中のCODH/ACSの不活性化の効果を実証する。
【0128】
C.オートエタノゲナムは、CODH/ACS酵素の不活性化後、CO(図6A)またはCO及びH図6B)で増殖することができないが、この菌株は、依然として、フルクトースなどの糖で増殖することができる。驚くべきことに、これらの条件下で、CODH/ACS不活性化菌株は、アセテートの生成を止めることが分かった。これは、アセテート形成が典型的には、アセトゲンの特徴的な機能であることから、特に驚きである。従属栄養性増殖中、アセトゲンは典型的には、Hの存在下で、CO(糖代謝中に生成される)を、CODH/ACS、及び還元的アセチル−CoA経路としても知られるウッド・ユングダール経路からの他の遺伝子の働きにより、バイオマス及び生成物内へ固定する。
【0129】
CODH/ACS不活性化変異体、相補株、及びWT C.オートエタノゲナムDSM10061を、N大気下で、10g/Lのフルクトース(最終濃度)が補充された50mLのPETC培地を含有する三連の250mL血清瓶内で増殖させた。0.5 OD600当量の活性培養物を各血清瓶内に植え付け、600nmの波長でのOD測定及びHPLCによる代謝物分析のために液相試料を採取した。
【0130】
CODH/ACSの不活性化は、ピークOD600を、4.53のWTレベルから1.77まで、61%、著しく減少させた(図7A)。これは、CODH/ACS KO変異体における増殖誘導期の増大も伴った(図7A)。KO変異体中のpMTL83157−CODH/ACSのプラスミド発現によるCODH/ACS活性の相補性は、ピークOD600を3.11まで増大させ、さらに増殖誘導期をWTレベル近くまで短くした(図7A)。
【0131】
CODH/ACS KO変異体の1つの顕著な特色は、2.8日目にわずか2.61mMのアセテートが瞬間的に観測されたように(図7B)、アセテート生成がないことである。反対に、WTは、3.0日目に最大85.96mMのアセテートを生成した(図7B)。
【0132】
著しいアセテート生成を伴わずに、フルクトースからの炭素の大部分は、CODH/ACS KO変異体中の還元生成物エタノール及び2,3−ブタンジオールへと転換された。CODH/ACSの不活性化は、ピークエタノールレベルを、48.3mMのWTレベルから102.7mMまで、113%増大させた(図7C)。さらには、CODH/ACS KO変異体のピーク2,3−ブタンジオールレベルはまた、WTよりも138%高かった(10.95mM対4.61mM)(図7D)。CODH/ACS KO変異体中の相補性プラスミドpMTL83157−CODH/ACSの発現は、アセテート、エタノール、及び2,3−ブタンジオールレベルをWTレベル近くまで回復させることに成功し(図7B〜7D)、従属栄養性増殖中のC.オートエタノゲナム中のCODH/ACSの役割を確証した。
【0133】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、CODH/ACS不活性化が、ウッド・ユングダール経路が解糖中に生成される還元当量のためのシンクとして機能することを防ぐために、過度の還元当量がエタノール及び2,3−ブタンジオール生成のための駆動力を発生させるようである(図8)。
【0134】
配列の説明
本明細書内で参照される核酸及びアミノ酸配列を、以下に簡単にまとめる。
【表5】
【0135】
本明細書に列挙される公表文献、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献があたかも参照により組み込まれることが個々にかつ具体的に示され、かつその全体が本明細書中に記載された場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における任意の従来技術への言及は、その従来技術が任意の国における努力傾注分野の共通の一般的知識の一部をなすという承認ではなく、かつそのように解釈されるべきではない。
【0136】
本発明の記載との関連で(特に、以下の特許請求の範囲との関連で)、用語「a」及び「an」及び「the」ならびに同様の指示語の使用は、本明細書中に他に指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されるものとする。用語「含むこと」、「有すること」、「含むこと」、及び「含有すること」は、特に断りのない限り、非限定的な用語(即ち、「〜を含むがこれらに限定されないこと」を意味する)と解釈されるものとする。本明細書の値の範囲の記載は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内に入る各それぞれの値を個々に言及する省略法としての機能を果たすことを単に意図し、各それぞれの値は、あたかも本明細書に個々に記載されたかのように、本明細書中に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供されるありとあらゆる実施例または例示的な用語(例えば、「など」)の使用は、本発明をよりよく理解することを単に意図し、別段特許請求の範囲に記載されない限り、本発明の範囲を制限しない。本明細書におけるいかなる用語も、本発明の実施に不可欠な任意の非請求要素を示すものと解釈するべきではない。
【0137】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変化形は、上記の説明を読むことによって当業者に明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変化形を採用することを予想し、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されるものとは別の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許可された通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記載される主題の全ての修正物及び均等物を含む。さらに、上記の要素のそれらの全ての考えられる変化形における任意の組み合わせは、本明細書中に他に指示がない限り、または文脈によって明らかに相反することがない限り、本発明によって包含される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
【配列表】
2017522898000001.app
【国際調査報告】