特表2017-522906(P2017-522906A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2017-522906抗mGluR2構造的単一ドメイン抗体及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2017-522906(P2017-522906A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(54)【発明の名称】抗mGluR2構造的単一ドメイン抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170721BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20170721BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20170721BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20170721BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20170721BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20170721BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20170721BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20170721BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20170721BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20170721BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20170721BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20170721BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20170721BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170721BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C07K16/00
   C07K19/00
   C07K16/46
   A61K39/395 N
   A61K38/16
   A61K38/17 100
   A61K45/00
   A61P43/00 111
   A61P9/00
   A61P9/10
   A61P25/28
   A61P25/14
   A61P21/02
   A61P27/02
   A61P25/16
   A61P21/00
   A61P13/10
   A61P25/30
   A61P25/18
   A61P25/22
   A61P27/16
   A61P1/08
   A61P25/04
   A61P25/20
   G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2017-520004(P2017-520004)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(85)【翻訳文提出日】2017年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2015065228
(87)【国際公開番号】WO2016001417
(87)【国際公開日】20160107
(31)【優先権主張番号】14306093.7
(32)【優先日】2014年7月4日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JP,KE,KG,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US
(71)【出願人】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(71)【出願人】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス−マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX−MARSEILLE
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】514064671
【氏名又は名称】シスビオ バイオアッセイズ
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】503196857
【氏名又は名称】アンスティテュ・ジャン・パオリ・エ・イレーヌ・カルメッテス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT JEAN PAOLI & IRENE CALMETTES
(71)【出願人】
【識別番号】506333358
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・シュド
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS SUD
(71)【出願人】
【識別番号】511133761
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ヴェルサイユ・サン−クァンタン−アン−イヴェリーヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE VERSAILLES SAINT−QUENTIN−EN−YVELINES
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】バティ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ピン,ジャン−フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シャム,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ネヴォルトリ,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ロンダール,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ショラー,ポリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マティス,ジェラール
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA26X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA25
4B065BD22
4B065BD25
4B065BD50
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA02
4C084BA08
4C084BA21
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084CA59
4C084DA39
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA051
4C084ZA081
4C084ZA151
4C084ZA161
4C084ZA181
4C084ZA331
4C084ZA341
4C084ZA361
4C084ZA711
4C084ZA941
4C084ZC412
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB31
4C085BB42
4C085CC22
4C085CC23
4C085CC32
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、抗代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ2(mGluR2)構造的単一ドメイン抗体、並びに特に治療分野及び診断分野におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR1と、配列番号2として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR2と、配列番号3として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR3とを含む、単離された単一ドメイン抗体。
【請求項2】
配列番号1として示された配列を有するCDR1と、配列番号2として示された配列を有するCDR2と、配列番号3として示された配列を有するCDR3とを含む、請求項の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項3】
配列番号4として示された配列を有する、請求項1の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項4】
配列番号5として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR1と、配列番号6として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR2と、配列番号7として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR3とを含む、単離された単一ドメイン抗体。
【請求項5】
配列番号5として示された配列を有するCDR1と、配列番号6として示された配列を有するCDR2と、配列番号7として示された配列を有するCDR3とを含む、請求項4の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項6】
配列番号8として示された配列を有する、請求項4の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項7】
配列番号9として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR1と、配列番号10として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR2と、配列番号11として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR3とを含む、単離された単一ドメイン抗体。
【請求項8】
配列番号9として示された配列を有するCDR1と、配列番号10として示された配列を有するCDR2と、配列番号11として示された配列を有するCDR3とを含む、請求項7の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項9】
配列番号12として示された配列を有する、請求項7の単離された単一ドメイン抗体。
【請求項10】
ヒト化単一ドメイン抗体である、請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項記載の少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むポリペプチド。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項記載の少なくとも1つの単一ドメイン抗体と少なくとも1つのさらなる結合ドメインとを含む、請求項11のポリペプチド。
【請求項13】
結合ドメインが単一ドメイン抗体である、請求項12のポリペプチド。
【請求項14】
二重特異的ポリペプチドである、請求項12のポリペプチド。
【請求項15】
さらなる結合ドメインが、トランスフェリンに対して指向される、請求項12のポリペプチド。
【請求項16】
免疫グロブリンドメインに連結されている請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体を含む、請求項11のポリペプチド。
【請求項17】
免疫グロブリンドメインがFc部分である、請求項16のポリペプチド。
【請求項18】
i)第一の融合タンパク質(ここで、抗体のCL定常ドメインは、そのN末端によって、請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体のC末端に融合している)及びii)第二の融合タンパク質(ここで、抗体のCH1定常ドメインは、そのN末端によって、mGluR2とは異なる抗原に対して指向される単一ドメイン抗体のC末端に融合している)からなる、請求項11のポリペプチド。
【請求項19】
二重パラトープポリペプチドである、請求項11のポリペプチド。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体又は請求項11〜19のいずれか一項記載のポリペプチドをコードしている核酸。
【請求項21】
請求項20の核酸を含むベクター。
【請求項22】
請求項20の核酸配列又は請求項21のベクターを用いて形質転換されている宿主細胞。
【請求項23】
医薬品としての使用のための、請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体。
【請求項24】
医薬品としての使用のための、請求項11〜19のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項25】
請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体又は請求項11〜19のいずれか一項記載のポリペプチドの治療有効量を患者に投与する工程を含む、グルタミン酸機能障害に関連した神経障害又は精神障害を患っている患者を処置する方法。
【請求項26】
グルタミン酸機能障害に関連した神経障害又は精神障害が、心臓バイパス手術及び心臓移植に続発する脳の異常、脳卒中、脳虚血、脊髄外傷、頭部外傷、出生時低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷、認知症、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼の損傷、網膜症、認知障害、特発性及び薬剤性のパーキンソン病、筋痙縮、及び筋痙縮に関連した障害、例えば、振戦、癲癇、痙攣、偏頭痛、尿失禁、薬物耐性、薬物離脱、精神病、統合失調症、不安症、気分障害、三叉神経痛、難聴、耳鳴、眼の黄斑変性症、嘔吐、脳浮腫、疼痛、遅発性ジスキネジア、睡眠障害、注意欠陥/多動性障害、及び行動障害からなる群より選択される、請求項25の方法。
【請求項27】
単一ドメイン抗体又はポリペプチドが、患者にmGluR2アゴニストと組み合わせて投与される、請求項25の方法。
【請求項28】
請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体又は請求項11〜19のいずれか一項記載のポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項29】
i)試料を、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドと接触させる工程、及びii)該試料に対する該単一ドメイン抗体又はポリペプチドの結合を検出する工程(ここで、該検出は、mGluR2の活性化を示す)を含む、試料中のmGluR2の活性化を検出する方法。
【請求項30】
検出可能な標識とコンジュゲートしている、請求項1〜10のいずれか一項記載の単一ドメイン抗体又は請求項11〜19のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項31】
前記標識が、放射性同位体標識、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、及び生物発光標識からなる群より選択される、請求項30の単一ドメイン抗体又はポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、抗mGluR2構造的単一ドメイン抗体及びその使用に関する。
【0002】
発明の背景:
グルタミン酸は、哺乳動物中枢神経系における主要なアミノ酸神経伝達物質である。グルタミン酸は、数多くの生理学的機能において、例えば学習及び記憶などにおいて、しかしまた、感覚的知覚、シナプス可塑性の発生、運動制御、呼吸、及び心臓血管機能の調節においても主要な役割を果たしている。さらに、グルタミン酸は、いくつかの異なる神経疾患及び精神疾患の中心にあり、これらの疾患ではグルタミン酸作動性神経伝達における不均衡が存在する。
【0003】
グルタミン酸は、迅速な興奮性伝達に関与する、NMDA、AMPA、及びカイニン酸受容体などのイオンチャネル型グルタミン酸受容体チャネル(iGluRs)の活性化を通したシナプス神経伝達を媒介する。さらにグルタミン酸は、シナプスの効力の微調整に寄与する、より調節的な役割を果たす代謝型グルタミン酸受容体(mGluRs)を活性化する。mGluR2サブタイプは、Gαi−タンパク質の活性化を介してアデニル酸シクラーゼに負に共役し、その活性化によりシナプスにおけるグルタミン酸の遊離は抑制される。中枢神経系(CNS)において、mGluR2受容体は、主に、皮質、視床領域、副嗅球、海馬、扁桃体、尾状核−被殻、及び側坐核の至る所に豊富である。
【0004】
mGluR2の活性化は、臨床試験において不安障害を処置するのに効果的であることが示された。さらに、様々な動物モデルにおいて、統合失調症、癲癇、耽溺/薬物依存、パーキンソン病、疼痛、睡眠障害、及びハンチントン病の処置のために、mGluR2の活性化は効果的であることが示され、したがって可能性ある新規な治療アプローチを示す。
【0005】
現在までに、mGluRを標的化する利用可能な薬理学的ツールの大半は、いくつかのファミリーメンバーを活性化するオルソステリックリガンドである。なぜなら、それらはグルタミン酸の構造的類似体であるからである。mGluR2に作用する選択的化合物を開発するための新たな手段は、該サブタイプに対して特異的であり、かつアロステリック機序を通して作用し、高度に保存されたオルソステリック結合ドメインとは異なる部位に結合することによって該受容体を調節する、化合物を同定することである。
【0006】
発明の要約:
本発明は、抗mGluR2構造的単一ドメイン抗体及びその使用に関する。特に、本発明は、請求項によって定義される。
【0007】
発明の詳細な説明:
本発明において、本発明者らは、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ2(mGluR2)構造的単一ドメイン抗体(sdAb)の成功裡な選択及び特徴付けを記載する。特に、本発明者らは、3つの異なる特異的な抗mGluR2抗体クローンを単離した:DN7、DN10、及びDN13。該単一ドメイン抗体の構造及び配列を表A及び図S1に示す。興味深いことに、3つ全てのsdAbの結合は、リガンド刺激に対して非常に感受性であることが判明し、mGluR2の活性状態を安定化させることができ、よって単一ドメイン抗体は、正のアロステリックモジュレーターとして作用する。したがって、これらの抗体は、新規な診断ツール及び治療ツールを設計するのに非常に有用であり得る。
【0008】
【表1】
【0009】
本明細書において使用する「単一ドメイン抗体」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、天然的に軽鎖を欠失しているラクダ類哺乳動物に認められ得るタイプの抗体の単一重鎖可変ドメインを指す。このような単一ドメイン抗体はまた、VHH又は「ナノボディ(登録商標)」とも呼ばれる。単一ドメイン抗体の一般的な説明については、欧州特許第0368684号、Ward et al. (Nature 1989 Oct 12; 341 (6242): 544-6)、Holt et al., Trends Biotechnol., 2003, 21(11):484-490;及び国際公開公報第06/030220号、国際公開公報第06/003388号に言及されている。単一ドメイン抗体のアミノ酸配列及び構造は、当技術分野において及び本明細書において「フレームワーク領域1」すなわち「FR1」;「フレームワーク領域2」すなわち「FR2」;「フレームワーク領域3」すなわち「FR3」;及び「フレークワーク領域4」すなわち「FR4」とそれぞれ称される、4つのフレームワーク領域すなわち「FR」から構成されると考えられ得;そのフレームワーク領域は、当技術分野において「「CDR1」に対する相補性決定領域」;「相補性決定領域2」すなわち「CDR2」、及び「相補性決定領域3」すなわち「CDR3」とそれぞれ称される、3つの相補性決定領域すなわち「CDR」によって中断されている。したがって、単一ドメイン抗体は、一般的な構造:FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4(ここで、FR1〜FR4は、フレームワーク領域1〜4をそれぞれ指し、CDR1〜CDR3は相補性決定領域1〜3を指す)を有するアミノ酸配列として定義され得る。本発明の脈絡において、単一ドメイン抗体のアミノ酸残基は、国際ImMunoGeneTics情報システムアミノ酸番号付け(http://imgt.cines.fr/)によって示された、VHドメインについての一般的な番号付けに従って番号が付けられる。
【0010】
特に、本発明は、配列番号1として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR1と、配列番号2として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR2と、配列番号3として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR3とを含む、単離された単一ドメイン抗体(「DN7誘導体」)に関する。
【0011】
特に、本発明は、配列番号5として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR1と、配列番号6として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR2と、配列番号7として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR3とを含む、単離された単一ドメイン抗体(「DN10誘導体」)に関する。
【0012】
特に、本発明は、配列番号9として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR1と、配列番号10として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR2と、配列番号11として示された配列に対して少なくとも70%の同一率を有するCDR3とを含む、単離された単一ドメイン抗体(「DN13誘導体」)に関する。
【0013】
本発明によると、第二のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の同一率を有する第一のアミノ酸配列とは、第一の配列が、第二のアミノ酸配列に対して、70;71;72;73;74;75;76;77;78;79;80;81;82;83;84;85;86;87;88;89;90;91;92;93;94;95;96;97;98;又は99%の同一率を有することを意味する。アミノ酸配列の同一率は、典型的には、BLASTP(Karlin and Altschul, 1990)などの適切な配列アラインメントアルゴリズム及びデフォールトパラメーターを使用して決定される。
【0014】
いくつかの実施態様では、本発明による単離された単一ドメイン抗体(DN7誘導体)は、配列番号1として示された配列を有するCDR1と、配列番号2として示された配列を有するCDR2と、配列番号3として示された配列を有するCDR3とを含む。
【0015】
いくつかの実施態様では、本発明による単離された単一ドメイン抗体(DN10誘導体)は、配列番号5として示された配列を有するCDR1と、配列番号6として示された配列を有するCDR2と、配列番号7として示された配列を有するCDR3とを含む。
【0016】
いくつかの実施態様では、本発明による単離された単一ドメイン抗体(DN13誘導体)は、配列番号9として示された配列を有するCDR1と、配列番号10として示された配列を有するCDR2と、配列番号11として示された配列を有するCDR3とを含む。
【0017】
いくつかの実施態様では、本発明による単離された単一ドメイン抗体は、配列番号4として示された配列を有する(「DN7」)。
【0018】
いくつかの実施態様では、本発明による単離された単一ドメイン抗体は、配列番号8として示された配列を有する(「DN10」)。
【0019】
いくつかの実施態様では、本発明による単離された単一ドメイン抗体は、配列番号12として示された配列を有する(「DN13」)。
【0020】
いくつかの実施態様では、単一ドメイン抗体は、「ヒト化」単一ドメイン抗体である。本明細書において使用する「ヒト化」という用語は、天然のVHHドメインのアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列が「ヒト化」されている、すなわち、前記の天然のVHH配列(特にフレームワーク配列内)のアミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸残基を、ヒトに由来する慣用的な抗体鎖のVHドメイン内の対応する位置(群)に存在する1つ以上のアミノ酸残基によって置換することによって「ヒト化」されている、本発明の単一ドメイン抗体を指す。単一ドメイン抗体をヒト化するための方法は当技術分野において周知である。典型的には、ヒト化置換は、得られるヒト化単一ドメイン抗体が依然として本発明の単一ドメイン抗体の好ましい特性を保持しているように選択されるべきである。当業者は、適切なヒト化置換、又はヒト化置換の適切な組合せを決定及び選択することができる。例えば、本発明の単一ドメイン抗体は、図S1に示された任意のフレームワーク残基において適切にヒト化され得、ただし、単一ドメイン抗体は可溶性のままであり、mGluR2に対するその親和性を有意に失っていない。
【0021】
本発明のさらなる局面は、本発明の少なくとも1つの単一ドメイン抗体を含むポリペプチドを指す。
【0022】
典型的には、本発明のポリペプチドは、そのN末端、そのC末端、又はそのN末端とそのC末端の両方において、少なくとも1つのさらに他のアミノ酸配列に融合し、すなわち、よって融合タンパク質を与えるような、本発明の単一ドメイン抗体を含む。本発明によると、ただひとつの単一ドメイン抗体を含むポリペプチドは、本明細書において「一価ポリペプチド」と称される。本発明による2つ以上の単一ドメイン抗体を含むか又は本質的にからなるポリペプチドは、本明細書において「多価」ポリペプチドと称される。いくつかの実施態様では、該ポリペプチドは、本発明の少なくとも1つの単一ドメイン抗体と、少なくとも1つの他の結合ドメイン(例えば、別のエピトープ、抗原、標的、タンパク質、又はポリペプチドに対して指向される)(これも典型的には単一ドメイン抗体である)とを含む。このようなポリペプチドは、同じ単一ドメイン抗体を含むポリペプチド(「単一特異的」ポリペプチド)に対して;本明細書において「多重特異的」ポリペプチドと称される。
【0023】
したがって、いくつかの実施態様では、本発明のポリペプチドはまた、任意の所望のタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原性決定基、又はエピトープに対して指向される、少なくとも1つのさらに他の結合ドメインも提供し得る。該結合ドメインは、本発明の単一ドメイン抗体が指向するのと同じタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原性決定基、又はエピトープに対して指向されていても、あるいは、本発明の単一ドメイン抗体とは異なるタンパク質、ポリペプチド、抗原、抗原性決定基、又はエピトープに対して指向されていてもよい。
【0024】
本発明の「二重特異的」ポリペプチドは、第一の抗原(すなわちmGluR2)に対して指向される少なくとも1つの単一ドメイン抗体と、第二の抗原(すなわちmGluR2とは異なる)に対して指向される少なくとも1つのさらに他の結合ドメインとを含むポリペプチドであり、一方、本発明の「三重特異的」ポリペプチドは、第一の抗原(すなわちmGluR2)に対して指向される少なくとも1つの単一ドメイン抗体と、第二の抗原(すなわちmGluR2とは異なる)に対して指向される少なくとも1つのさらに他の結合ドメインと、第三の抗原(すなわち、第一の抗原及び第二の抗原の両方ともすなわち異なる)に対して指向される少なくとも1つのさらに他の結合ドメインとを含む、ポリペプチドであり;以下同様である。
【0025】
いくつかの実施態様では、さらに他の結合ドメインは、血清タンパク質に対して指向され、よって単一ドメイン抗体の半減期は延長される。典型的には、該血清タンパク質はアルブミンである。
【0026】
いくつかの実施態様では、さらに他の結合ドメインは、血液脳関門の血管内皮上の受容体に対して指向され、よって、本発明の単一ドメイン抗体は、血液脳関門を横断するだろう。標的化受容体としてはとりわけ、トランスフェリン受容体、インスリン受容体、IGF−I及びIGF−II受容体が挙げられる。特定の実施態様では、さらに他の結合ドメインは、トランスフェリンに対して指向される。トランスフェリン受容体は、ヒトをはじめとする様々な哺乳動物の脳微小血管内皮の内皮上に選択的に濃縮され、鉄が脳に進入する主な経路である。循環中の主な鉄輸送タンパク質の80Kdの糖タンパク質は、鉄が積載されるトランスフェリンであって、トランスフェリン受容体を介して血液脳関門を通って経細胞輸送を受ける。トランスフェリン受容体の構造及び機能は、Seligman, Prog. Hematol. 13:131-147 (1983)(これは参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。
【0027】
典型的には、1つ以上のさらに他の結合ドメインは、慣用的な抗体鎖(特にヒト抗体)及び/又は重鎖抗体の1つ以上の部分、フラグメント、又はドメインを含み得る。例えば、本発明の単一ドメイン抗体は、場合によりリンカー配列を介して慣用的な(典型的にはヒトの)VH又はVLに連結されていてもよい。
【0028】
いくつかの実施態様では、前記ポリペプチドは、免疫グロブリンドメインに連結された本発明の単一ドメイン抗体を含む。例えば、前記ポリペプチドは、Fc部分(例えばヒトFc)に連結された本発明の単一ドメイン抗体を含む。前記Fc部分は、本発明の単一ドメイン抗体の半減期を延長するために、及びさらにはその産生を増加させるのに有用であり得る。例えば、Fc部分は血清タンパク質に結合することができ、したがって、単一ドメイン抗体ドメインの半減期は延長される。いくつかの実施態様では、少なくとも1つの単一ドメイン抗体はまた、場合によりリンカー配列を介して、1つ以上の(典型的にはヒトの)CH1ドメイン及び/又はCH2ドメイン及び/又はCH3ドメインに連結されていてもよい。例えば、適切なCH1ドメインに連結された単一ドメイン抗体は、例えば、適切な軽鎖と一緒に、慣用的なFabフラグメント又はF(ab’)2フラグメントに対して類似的な抗体フラグメント/構造を作ることができるが、ここでは、慣用的なVHドメインの一方又は(F(ab’)2フラグメントの場合)両方が本発明の単一ドメイン抗体によって置換されている。いくつかの実施態様では、本発明の1つ以上の単一ドメイン抗体は、(場合により適切なリンカー又はヒンジ領域を介して)、1つ以上の定常ドメインに(例えば、Fc部分の一部として/Fc部分を形成するために使用され得る2つ又は3つの定常ドメイン)、Fc部分に、及び/又は、本発明のポリペプチドに1つ以上のエフェクター機能を付与する1つ以上の抗体部分、フラグメント、若しくはドメインに連結され得、並びに/あるいは、1つ以上のFc受容体に結合する能力を付与し得る。例えば、この目的のために、それに限定されることはないが、1つ以上のさらに他のアミノ酸配列は、例えば重鎖抗体に由来する及びより典型的には慣用的なヒト抗体鎖に由来する、抗体の1つ以上のCH2及び/又はCH3ドメインを含み得;並びに/あるいは、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)に由来する、IgEに由来する、又は別のヒトIg、例えばIgA、IgD、又はIgMに由来する、Fc領域を形成し得る。例えば、国際公開公報第94/04678号は、ラクダ類VHHドメイン又はそのヒト化誘導体(すなわち単一ドメイン抗体)を含む重鎖抗体を記載し、ここでラクダ科CH2ドメイン及び/又はCH3ドメインは、ヒトCH2ドメイン及びCH3ドメインによって置換され、よって各々が単一ドメイン抗体と、ヒトCH2ドメイン及びCH3ドメイン(しかしCH1ドメインは全く含まない)とを含む2本の重鎖からなる免疫グロブリンがもたらされ、この免疫グロブリンは、CH2ドメイン及びCH3ドメインによって与えられたエフェクター機能を有し、この免疫グロブリンは軽鎖が全く存在しない下において機能することができる。
【0029】
いくつかの実施態様では、前記ポリペプチドは、国際公開公報第2006064136号に記載されている通りである。特に、前記ポリペプチドは、i)第一の融合タンパク質(ここで、抗体のCL定常ドメインは、そのN末端によって、本発明による単一ドメイン抗体(すなわちmGluR2に対して指向される単一抗体)のC末端に融合している)、及びii)第二の融合タンパク質(ここで、抗体のCH1定常ドメインは、そのN末端によって、mGluR2とは異なる抗原に対して指向される単一ドメイン抗体のC末端に融合している)からなり得る。
【0030】
いくつかの実施態様では、該ポリペプチドは二重パラトープポリペプチドである。本明細書において使用する「二重パラトープ」ポリペプチドという用語は、本明細書において定義されているような単一ドメイン抗体と第二の単一ドメイン抗体とを含むポリペプチドを意味し、ここで、これらの2つの単一ドメイン抗体は、1つの抗原(例えばmGluR2)の2つの異なるエピトープに結合することができ、そのエピトープには、1つの単一特異的な免疫グロブリン、例えば1つの慣用的な抗体又は1つの単一ドメイン抗体は同時に通常は結合しない。
【0031】
いくつかの実施態様では、本発明の二重パラトープポリペプチドは、上記に定義されているようなDN7誘導体と上記に定義されているようなDN10誘導体とを含む。
【0032】
いくつかの実施態様では、本発明の二重パラトープポリペプチドは、上記に定義されているようなDN10誘導体と上記に定義されているようなDN13誘導体とを含む。
【0033】
いくつかの実施態様では、本発明の二重パラトープポリペプチドは、上記に定義されているようなDN7誘導体と上記に定義されているようなDN13誘導体とを含む。
【0034】
いくつかの実施態様では、本発明の二重パラトープポリペプチドの2つの単一ドメイン抗体は、互いに直接連結されていても(すなわちリンカーを使用せずに)、又はリンカーを介して連結されていてもよい。該リンカーは典型的にはリンカーペプチドであり、本発明によると、2つの単一ドメイン抗体が、mGluR2のその少なくとも2つの異なるエピトープの各々に結合することが可能となるように選択されるだろう。適切なリンカーはとりわけ、エピトープ、及び特に、単一ドメイン抗体が結合するmGluR2上のエピトープ間の距離に依存し、場合により少数の慣用的な実験の後に、本明細書の開示に基づいて当業者には明らかとなろう。また、mGluR2に結合する2つの単一ドメイン抗体はまた、互いに第三の単一ドメイン抗体を介して連結されていてもよい(ここで、2つの単一ドメイン抗体は、第三のドメイン抗体に直接連結されていても、又は適切なリンカーを介して連結されていてもよい)。このような第三の単一ドメイン抗体は、例えば、延長された半減期をもたらす単一ドメイン抗体であってもよい。例えば、後者の単一ドメイン抗体は、本明細書においてさらに記載されているような、(ヒト)血清アルブミン又は(ヒト)トランスフェリンなどの(ヒト)血清タンパク質に結合することのできる単一ドメイン抗体であってもよい。いくつかの実施態様では、mGluR2に結合する2つ以上の単一ドメイン抗体は連続して連結され(直接又は適切なリンカーを介してのいずれか)、第三の(単一)単一ドメイン抗体(これは、上記のように、延長された半減期をもたらし得る)は直接又はリンカーを介して、これらの2つ以上の前記の単一ドメイン抗体の1つに接続されている。適切なリンカーは、本発明の特定のポリペプチドに関連して本明細書に記載され、例えばであってこれに制限されることはないが、アミノ酸配列を含み得、このアミノ酸配列は、好ましくは、9以上のアミノ酸、より好ましくは少なくとも17アミノ酸、例えば約20〜40アミノ酸の長さを有する。しかしながら、上限は重要ではないが、例えばこのようなポリペプチドのバイオ医薬品生産に関する簡便性の理由から選択される。リンカー配列は天然の配列であっても、又は非天然の配列であってもよい。治療目的のために使用される場合、該リンカーは好ましくは、本発明の抗mGluR2ポリペプチドが投与される被験者において非免疫原性である。1つの有用なリンカー配列群は、国際公開公報第96/34103号及び国際公開公報第94/04678号に記載されているような重鎖抗体のヒンジ領域に由来するリンカーである。他の例は、Ala−Ala−Alaなどのポリアラニンリンカー配列である。さらに好ましいリンカー配列の例は、様々な長さのGly/Serリンカー、例えば(gly4ser)3、(gly4ser)4、(gly4ser)、(gly3ser)、gly3、及び(gly3ser2)3である。
【0035】
【表2】
【0036】
いくつかの実施態様では、本発明の治療法に使用される本発明のポリペプチドは、その治療効力を向上させるために改変され得ると考えられる。治療化合物のこのような改変は、毒性を減少させるか、循環時間を延長するか、又は体内分布を改変するために使用され得る。例えば、重要である可能性のある治療化合物の毒性を、体内分布を改変させる様々な薬物担体ビヒクルとの組合せによって有意に低減させることができる。
【0037】
薬物の活力を改善させるための戦略は、水溶性ポリマーの使用である。様々な水溶性ポリマーが、体内分布を改変させ、細胞内への取り込み機序を改善させ、生理学的障壁を通しての透過性を変化させ;体内からの消失速度を改変させることが示された。標的化効果又は持続放出効果のいずれかを達成するために、薬物部分を末端基として、骨格の一部として、又はポリマー鎖上のペンダント基として含有する水溶性ポリマーが合成された。
【0038】
ポリエチレングリコール(PEG)は、その高度な生体適合性及び改変の容易さから、薬物担体として広く使用されている。様々な薬物、タンパク質、及びリポソームへの付着は、滞留時間を改善させ、毒性を減少させることが示された。PEGを、鎖の末端でヒドロキシル基を通して及び他の化学的方法を介して活性物質に結合させることができるが;しかしながら、PEGそれ自体は、1分子あたり最大2つの活性物質に限定されている。異なるアプローチでは、PEGとアミノ酸のコポリマーが、PEGの生体適合性特性を保持するであろうが、1分子あたりに多くの付着点を有する(より多くの薬物が積載される)という追加の利点を有し、そして様々な適用に適合するように合成的に設計され得る、新規生体材料として探究された。当業者は、薬物の効果的な改変のためのPEG化技術を知っている。例えば、PEGと三機能性モノマー(例えばリジン)の交互ポリマーからなる薬物送達ポリマーが、VectraMed(Plainsboro, N.J.)によって使用されている。PEG鎖(典型的には2000ダルトン以下)は、安定なウレタン結合を通してa−及びe−アミノ基に連結されている。このようなコポリマーは、ポリマー鎖に沿って厳密に制御されかつ予め決定された間隔で反応性のペンダント基(リジンのカルボン酸基)を与えつつ、PEGの望ましい特性を保持している。反応性のペンダント基は、誘導体化、架橋、又は他の分子とのコンジュゲーションのために使用され得る。これらのポリマーは、ポリマーの分子量、PEGセグメントの分子量、及び薬物とポリマーとの間の切断可能な結合を変化させることによって、安定で長時間循環するプロドラッグを作製するのに有用である。PEGセグメントの分子量は、薬物/連結基複合体の間隔、及びコンジュゲートの分子量あたりの薬物の量に影響を及ぼす(PEGセグメントが小さいほど、より多くの薬物が積載される)。一般的に、ブロックコポリマーコンジュゲートの全分子量を増加させると、該コンジュゲートの循環半減期は延長されるだろう。それにも関わらず、前記コンジュゲートは、容易に分解可能でなければならないか、又は、糸球体ろ過閾値限界値より少ない分子量(例えば45kDa未満)を有さなければならない。ポリマー骨格が循環半減期及び体内分布を維持するのに重要であることに加えて、特定のトリガー、典型的には標的化組織内の酵素活性によって骨格ポリマーから放出されるまで、リンカーを使用して治療剤をプロドラッグに維持し得る。例えば、このタイプの組織により活性化される薬物送達は、特定の体内分布部位への送達が必要とされ、治療剤が、病理部位で又は病理部位の近くで放出される場合に特に有用である。活性化薬物送達に使用するための連結基ライブラリーは当業者に公知であり、酵素動態、活性酵素の遍在、及び選択された疾患特異的酵素の切断特異性に基づき得る(例えば、VectraMed, Plainsboro, N.J.によって確立された技術を参照)。このようなリンカーは、治療剤送達のために本明細書に記載された本発明のポリペプチドを改変するために使用され得る。
【0039】
本発明によると、本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドは、慣用的な自動化ペプチド合成法によって又は組換え発現によって産生され得る。タンパク質を設計及び作製するための一般的な原則は当業者には周知である。
【0040】
本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドは、慣用的な技術に従って、溶液中で又は固相支持体上で合成され得る。様々な自動合成装置が市販され、Stewart and Young; Tam et al., 1983; Merrifield, 1986。及びBarany and Merrifield, Gross and Meienhofer, 1979に記載の公知のプロトコールに従って使用され得る。本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドはまた、Applied Biosystems Inc.のモデル433Aなどの例示的なペプチド合成装置を使用して固相技術によって合成され得る。自動ペプチド合成を通して又は組換え法を通して作製された任意の所与のタンパク質の純度は、逆相HPLC分析を使用して決定され得る。各ペプチドの化学的信憑性は、当業者に周知の任意の方法によって確立され得る。
【0041】
自動ペプチド合成の代替手段として、組換えDNA技術を使用し得、ここでは選択されたタンパク質をコードするヌクレオチド配列を発現ベクターに挿入し、適切な宿主細胞に形質転換又はトランスフェクトし、本明細書で以下に記載されているような発現に適した条件下で培養する。組換え法は、より長いポリペプチドを作製するのに特に好ましい。
【0042】
様々な発現ベクター/宿主系が、ペプチド又はタンパク質をコードする配列を含有及び発現させるために利用され得る。これらとしては、組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターを用いて形質転換された酵母(Giga-Hama et al., 1999);ウイルス発現ベクターを用いて感染させた昆虫細胞系(例えば、バキュロウイルス、Ghosh et al., 2002参照);ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を用いてトランスフェクトされた又は細菌発現ベクター(例えばTi又はpBR322プラスミド、例えばBabe et al., 2000参照)を用いて形質転換された植物細胞系;あるいは動物細胞系が挙げられるがこれらに限定されない。当業者は、哺乳動物におけるタンパク質の発現を最適化させるための様々な技術を知っている、例えばKaufman, 2000; Colosimo et al., 2000を参照されたい。組換えタンパク質の産生において有用である哺乳動物細胞としては、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、COS細胞(例えばCOS−7)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562及び293細胞が挙げられるがこれらに限定されない。細菌、酵母及び他の無脊椎動物におけるペプチド基質又は融合ポリペプチドの組換え発現のための例示的なプロトコールは、当業者には公知であり、本明細書において以下に簡潔に記載されている。組換えタンパク質の発現のための哺乳動物宿主系もまた、当業者には周知である。宿主細胞株は、発現されたタンパク質を処理するか又はタンパク質の活性を付与するのに有用であろう特定の翻訳後修飾を生じる特定の能力のために選択され得る。このようなポリペプチドの修飾は、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化が挙げられるがこれらに限定されない。「プレプロ」形のタンパク質を切断する翻訳後プロセシングもまた、正しい挿入、フォールディング、及び/又は機能のために重要であり得る。CHO、HeLa、MDCK、293、WI38などの様々な宿主細胞は、このような翻訳後活性のための特定の細胞機械及び特徴的な機序を有し、導入された外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0043】
本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドの組換え産生において、本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含むベクターを使用することが必要であろう。このようなベクターの調製法、並びに、このようなベクターを用いて形質転換された宿主細胞の産生法は、当業者には周知である。このような努力に使用されるポリヌクレオチド分子は、宿主内における増殖のために、選択マーカーと複製起点とを一般的に含むベクターに接続され得る。発現構築物のこれらの配列は、当業者には周知である。一般的に、発現ベクターは、適切な転写調節配列又は翻訳調節配列、例えば哺乳動物、微生物、ウイルス、又は昆虫遺伝子に由来する該配列に作動可能に連結されている所与のタンパク質をコードするDNAを含む。調節配列の例としては、転写プロモーター、オペレーター、又はエンハンサー、mRNAリボソーム結合ドメイン、並びに転写及び翻訳を制御する適切な配列が挙げられる。
【0044】
「発現ベクター」、「発現構築物」又は「発現カセット」という用語は、本明細書全体を通して同義語として使用され、核酸コード配列の一部又は全部が転写されることのできる遺伝子産物をコードしている核酸を含有している任意のタイプの遺伝子構築物を含むことを意味する。
【0045】
本発明のペプチド又はポリペプチドの発現のために適切な発現ベクターの選択は、勿論、使用される具体的な宿主細胞に依存し、当業者の技能範囲内である。
【0046】
発現は、宿主細胞内で関心対象の核酸の発現を駆動するのに使用され得るウイルス源及び哺乳動物源の両方に由来するエンハンサー/プロモーターなどの、適切なシグナルがベクター内に提供されることを必要とする。通常、発現される核酸は、プロモーターの転写制御下にある。「プロモーター」は、遺伝子の特定の転写を開始するのに必要とされる、細胞の合成機械又は導入された合成機械によって認識されるDNA配列を指す。ヌクレオチド配列は、調節配列が関心対象のタンパク質をコードしているDNA(例えば単一ドメイン抗体)に機能的に関連している場合に作動可能に連結されている。したがって、プロモーターヌクレオチド配列が配列の転写を指令する場合に、該プロモーターヌクレオチド配列は、所与のDNA配列に作動可能に連結されている。
【0047】
本発明のさらなる態様は、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ2(「mGluR2」)の正のアロステリックモジュレーターとしての単離された単一ドメイン抗体に関し、これは、mGluR2サブタイプの代謝型受容体が関与しているグルタミン酸の機能障害及び疾患に関連した神経障害及び精神障害の治療又は予防に有用である。
【0048】
本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドは、代謝型グルタミン酸受容体の正のアロステリックモジュレーターであり、特にそれらは、mGluR2の正のアロステリックモジュレーターである。本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドは、グルタミン酸認識部位、オルソステリックリガンド部位には結合しないようであるが、その代わりに、受容体の細胞外ドメイン内のアロステリック部位に結合するようである。グルタミン酸又はmGluR2アゴニストの存在下において、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドは、mGluR2応答を増加させる。本発明において提供される本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドは、グルタミン酸又はmGluR2アゴニストに対するこのような受容体の応答を増加させて該受容体によって発生する応答を増強することができることから、mGluR2においてその効果を及ぼすと予想される。
【0049】
したがって、本発明は、医薬品としての使用のための本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドに関する。
【0050】
本発明はまた、ヒトをはじめとする哺乳動物における疾患又は容態の治療又は予防、特に治療に使用するための本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドに関し、その治療は、mGluR2のアロステリックモジュレーター、特にその正のアロステリックモジュレーターの神経調節作用によって影響を受けるか又は促進される。
【0051】
本明細書において使用する「処置する」又は「処置」又は「軽減」という用語は治療的処置を指し、ここで、目的は、標的疾患を予防又は緩徐化する(減らす)ことである。治療量の本発明に記載の単一ドメイン抗体を受けた後に、被験者が、前記疾患の1つ以上の兆候及び症状の観察可能な及び/又は測定可能な減少あるいは不在を示す場合に、特定の疾患に関して成功裡に「処置」されている。特定の実施態様では、処置は予防的処置である。本明細書において使用する「予防的処置」という用語は、その目的が疾患を予防することである任意の医学的手順又は公衆衛生手順を指す。本明細書において使用する「予防する」、「予防」及び「予防している」という用語は、所要の容態を獲得するか又は発生するリスクの低減、あるいは、病気ではないが、病気にかかっていたことがあるか又は疾患を有する被験者の近くにいる可能性がある被験者における再発又は該容態の低減又は抑制を指す。また、記載のような医学的状態の様々な形態の治療又は予防は、「実質的」を意味することが意図され、これは、完全な治療又は予防を含むが、完全を下回る治療又は予防も含み、ここでは、いくつかの生物学的に又は医学的に妥当な結果が達成される。
【0052】
いくつかの実施態様では、グルタミン酸機能障害に関連した神経障害及び精神障害は、以下の容態又は疾患の1つ以上を含む:急性の神経障害及び精神障害、例えば心臓バイパス手術及び心臓移植に続発する脳の異常、脳卒中、脳虚血、脊髄外傷、頭部外傷、出生時低酸素症、心停止、低血糖性神経損傷、認知症(エイズ誘発性認知症を含む)、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、眼の損傷、網膜症、認知障害、特発性及び薬剤性のパーキンソン病、筋痙縮、及び筋痙縮に関連した障害、例えば、振戦、癲癇、痙攣、偏頭痛(migraine)(片頭痛(migraine headache)を含む)、尿失禁、薬物耐性、薬物離脱(例えば、アヘン、ニコチン、タバコ製品、アルコール、ベンゾジアゼピン、コカイン、鎮静剤、睡眠剤などの薬物を含む)、精神病、統合失調症、不安症(全般不安症、パニック症、及び強迫性障害を含む)、気分障害(鬱病、躁病、双極性障害を含む)、三叉神経痛、難聴、耳鳴、眼の黄斑変性症、嘔吐、脳浮腫、疼痛(急性及び慢性状態、重度の疼痛、難治性疼痛、神経障害性疼痛、及び外傷後疼痛を含む)、遅発性ジスキネジア、睡眠障害(ナルコレプシーを含む)、注意欠陥/多動性障害、及び行動障害。
【0053】
いくつかの実施態様では、容態又は疾患は、不安障害、精神障害、パーソナリティ障害、薬物関連障害、摂食障害、気分障害、偏頭痛、癲癇又は痙攣障害、小児障害、認知障害、神経変性、神経毒性、及び虚血の群から選択された中枢神経系障害である。
【0054】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、広場恐怖症、全般不安障害(GAD)、強迫性障害(OCD)、パニック障害、外傷後ストレス障害(PTSD)、社会恐怖症、及び他の恐怖症の群から選択された不安障害である。
【0055】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、統合失調症、妄想性障害、統合失調感情障害、統合失調症様障害、及び物質誘発精神障害の群から選択された精神障害である。
【0056】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、強迫性パーソナリティ障害、スキゾイドパーソナリティ障害、統合失調型パーソナリティ障害の群から選択されたパーソナリティ障害である。
【0057】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、アルコール乱用、アルコール依存、アルコール離脱、アルコール離脱せん妄、アルコール誘発性精神障害、アンフェタミン依存、アンフェタミン離脱、コカイン依存、コカイン離脱、ニコチン依存、ニコチン離脱、アヘン依存、及びアヘン離脱の群から選択された物質関連障害である。
【0058】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、神経性食欲不振症及び神経性過食症の群から選択された摂食障害である。
【0059】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、双極性障害(I型及びII型)、気分循環性障害、鬱病、気分変調性障害、大鬱病性障害、及び物質誘発気分障害の群から選択された気分障害である。
【0060】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、偏頭痛である。
【0061】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、非痙攣性全般癲癇、全般痙攣性癲癇、小発作癲癇重積状態、大発作癲癇重積状態、意識障害を伴うか、又は、伴わない、部分癲癇、点頭癲癇、持続性部分癲癇、及び他の形態の癲癇の群から選択された癲癇又は痙攣障害である。
【0062】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、注意欠陥/多動性障害である。
【0063】
いくつかの実施態様では、中枢神経系障害は、せん妄、物質誘発性持続性せん妄、認知症、HIV疾患による認知症、ハンチントン病による認知症、パーキンソン病による認知症、アルツハイマー型認知症、物質誘発性持続性認知症、及び軽度認知障害の群から選択された認知障害である。
【0064】
上記の障害の中で、不安症、統合失調症、偏頭痛、鬱病、及び癲癇の処置が特に重要である。現在、アメリカ精神医学会の精神障害の診断と統計マニュアル(DSM−IV)の第四版は、本明細書に記載された障害の同定のための診断ツールを提供している。当業者は、本明細書に記載された神経障害及び精神障害についての代替的な命名法、疾病分類学、及び分類体系が存在し、これらは、医学的及び科学的進歩と共に発展することを認識しているだろう。本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドをはじめとする、このようなmGluR2の正のアロステリックモジュレーターは、グルタミン酸に対するmGluR2の応答を増強するので、本発明の方法が内在性のグルタミン酸を利用するということは有利である。
【0065】
本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドをはじめとする、mGluR2の正のアロステリックモジュレーターは、アゴニストに対するmGluR2の応答を増強するので、本発明は、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドをはじめとするmGluR2の正のアロステリックモジュレーターの治療有効量を、mGluR2アゴニストと組み合わせて投与することによって、グルタミン酸機能障害に関連した神経障害及び精神障害の処置にまで拡大されることが理解される。mGluR2の正のアロステリックモジュレーターは、この魅力的な代替物を与える新規な薬理学的実体として近年出現した。様々な化合物が、mGluR2の正のアロステリックモジュレーターとして記載されている。国際公開公報第2004/092135号(NPS & Astra Zeneca)、国際公開公報第2004/018386号、国際公開公報第2006/014918号、及び国際公開公報第2006/015158号(Merck)、国際公開公報第2001/56990号(Eli Lilly)及び国際公開公報第2006/030032号及び国際公開公報第2007/104783号(Addex & Janssen Pharmaceutica)はそれぞれ、フェニルスルホンアミド、アセトアミノフェン、インダノン、ピリジルメチルスルホンアミド、及びピリジノン誘導体を、mGluR2の正のアロステリックモジュレーターとして記載している。そこに具体的に開示されたどの化合物も、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドに構造的に関連していない。いくつかの実施態様では、本発明の単一ドメイン抗体は、ADX−71149、GSK1331258、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、3−アリール−5−フェノキシメチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、3−(イミダゾリルメチル)−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−イル)メチルエーテル、BINA、及びLY−487,379からなる群より選択された化合物と組み合わせて使用される。
【0066】
本発明の単一ドメイン抗体若しくはポリペプチド又は他の薬物が有用性を有し得る疾患又は容態を治療、予防、制御、寛解、又はそのリスクを低減するために、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドは1つ以上の他の薬物と組み合わせて利用され得、ここで薬物を一緒に併用することは、いずれかの単独の薬物よりもより安全であるか又はより効果的である。
【0067】
本発明によると、本発明の単一ドメイン抗体又は本発明のポリペプチドは、治療有効量で患者に投与される。「治療有効量」によって、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比で疾患(例えば中枢神経系障害)を処置するのに十分な量の本発明の単一ドメイン抗体又は本発明のポリペプチドを意味する。本発明の化合物及び組成物の1日総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当の医師によって決定されるであろうことが理解されるだろう。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効量レベルは、患者の年齢、体重、全般の健康状態、性別、及び食事;使用される具体的な化合物の投与時刻、投与経路、及び排泄速度;処置期間;使用される具体的なポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに、医学分野において周知である同様な要因をはじめとする、様々な要因に依存するだろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで次第に用量を増加させることは当分野の技能範囲内であることは周知である。しかしながら、製品の1日量は、1日あたり成人1人あたり0.01〜1,000mgまでの幅広い範囲にわたって変動し得る。典型的には、該組成物は、処置される患者への症候による用量の調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの活性成分を含有している。医薬品は典型的には、約0.01〜約500mgの活性成分、典型的には1mg〜約100mgの活性成分を含有している。治療有効量の薬物は、通常、1日あたり体重1kgあたり0.0002mg/kg〜約20mg/kg、特に1日あたり体重1kgあたり約0.001mg/kg〜7mg/kgの用量レベルで供給される。
【0068】
本発明の単一ドメイン抗体及びポリペプチド又は本発明のポリペプチドを、薬学的に許容される賦形剤、及び場合により持続放出マトリックス、例えば生分解性ポリマーと組み合わせて、医薬組成物を形成し得る。「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、又は他の都合の悪い反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料、又は任意のタイプの製剤化補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、又は直腸投与のための本発明の医薬組成物において、活性成分は単独で又は別の活性成分と組み合わせて、単位投与剤形で、慣用的な薬学的支持体との混合物として、動物及びヒトに投与することができる。適切な単位投与剤形は、経口経路剤形、例えば錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤、及び経口用懸濁剤又は液剤、舌下及び頬側投与剤形、エアゾール、埋込剤、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、くも膜下腔内、及び鼻腔内投与剤形、並びに直腸投与剤形を含む。典型的には、医薬組成物は、注射され得る製剤にとって薬学的に許容されるビヒクルを含有している。これらは、特に、等張で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると注射液の復元を可能とする乾燥させた、特に凍結乾燥させた組成物であり得る。注射用途に適した医薬剤形としては、無菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、シリンジが容易に扱える程度に流動性でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から防腐されていなければならない。本発明の化合物を遊離塩基又は薬理学的に許容される塩として含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中において調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中において並びに油中において調製され得る。通常の保存及び使用の条件下で、これらの製剤は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有している。該ポリペプチド(又はそれをコードする核酸)は、中性形又は塩の形の組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、これは無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸、又はこのような有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などを用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄、及びこのような有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導され得る。担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有している溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の吸収延長は、該組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによってもたらされ得る。無菌注射液は、必要量の活性ポリペプチドを適切な溶媒中に、必要であれば上記に列挙された他のいくつかの成分と共に取り込み、その後、滅菌ろ過することによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒体と上記に列挙された成分の中からの必要とされる他の成分とを含有している無菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌ろ過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。製剤化時に、液剤は、投与製剤と適合性の様式で、かつ治療的に有効な量で投与されるだろう。製剤は、様々な剤形で、例えば上記のようなタイプの注射液で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。水溶液での非経口投与のために、例えば、液剤は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は、まず、十分な食塩水又はブドウ糖を用いて等張とすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与のために特に適している。これに関連して、使用され得る無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者には公知であろう。例えば、1用量を等張NaCl溶液1mlに溶解し、皮下点滴療法用の液体1000mlに加えるか又は提案された注入部位に注射し得る。用量の幾分の変更が、処置される被験者の容態に依存して必然的に行なわれるだろう。投与責任者は、いずれの事象においても、個々の被験者に対する適切な用量を決定するだろう。
【0069】
本発明のさらなる局面では、本発明の単一ドメイン抗体を使用して、mGluR2の活性化を検出する。例えば、該検出は、国際公開公報第2010125314号に記載のようなTR−FRET法によって行なわれる。この方法は、TR−FRET測定と適合性であるフルオロフォアドナー又はアクセプターで標識された2つの抗体の使用に基づく。それは、活性コンフォメーションに特異的な同じ単一ドメイン抗体であっても、又は2つの異なる抗体、例えば活性コンフォメーションに特異的な2つの単一ドメイン抗体であっても、又は活性コンフォメーションに特異的な一方の抗体と活性コンフォメーションに特異的ではない他方の抗体のいずれであってもよい。したがって、本発明は、i)試料を、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドと接触させる工程、ii)該試料に対する該単一ドメイン抗体又はポリペプチドの結合を検出する工程(ここで、該検出は、mGluR2の活性化を示す)を含む、試料中のmGluR2の活性化を検出する方法を提供する。典型的には、該試料は、mGluR2を天然に又は人工的に発現する細胞を含む。例えば、該細胞は、mGluR2をコードしている核酸分子を用いて形質転換された細胞、又は、mGluR2の内在性発現を有する細胞(例えばニューロン)である。
【0070】
したがって、いくつかの実施態様では、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドを検出可能な標識とコンジュゲートさせ、抗mGluR2イムノコンジュゲートを形成することができる。適切な検出可能な標識としては、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、酵素標識、生物発光標識、又はコロイド状金が挙げられる。このような検出可能なように標識されたイムノコンジュゲートを作製及び検出する方法は当業者には周知であり、以下においてより詳細に記載されている。例えば、検出可能な標識は、オートラジオグラフィーによって検出される放射性同位体であり得る。本発明の目的のために特に有用である同位体は、H、125I、131I、35S、及び14Cである。抗mGluR2イムノコンジュゲートはまた、蛍光化合物を用いて標識されていてもよい。本発明の蛍光標識された単一ドメイン抗体又はポリペプチドの存在は、適切な波長の光にイムノコンジュゲートを曝し、得られた蛍光を検出することによって決定される。蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド、及びフルオレサミン、及びAlexa Fluor色素が挙げられる。あるいは、抗mGluR2イムノコンジュゲートは、本発明の単一ドメイン抗体又はポリペプチドを化学発光化合物と結合させることによって検出可能なように標識され得る。化学発光でタグ化されたイムノコンジュゲートの存在は、化学反応の経過中に発生する発光の存在を検出することによって決定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルが挙げられる。同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗mGluR2イムノコンジュゲートを標識することができる。生物発光は、生物系において見られる化学発光の一種であり、ここでは触媒タンパク質が化学発光反応の効率を高める。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識のために有用である生物発光化合物としては、ルシフェリン、ルシフェラーゼ、及びエクオリンが挙げられる。あるいは、抗mGluR2イムノコンジュゲートは、本発明の抗mGluR2単一ドメイン抗体又はポリペプチドを酵素に連結させることによって検出可能なように標識され得る。抗mGluR2酵素コンジュゲートを、適切な基質の存在下でインキュベートすると、酵素部分は基質と反応して化学部分を生成し、これを例えば分光光度的に、蛍光定量的に、又は視覚的な手段によって検出することができる。多重特異的イムノコンジュゲートを検出可能なように標識するために使用され得る酵素の例としては、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられる。当業者は、本発明に従って使用され得る他の適切な標識を知っているだろう。本発明の抗mGluR2単一ドメイン抗体又はポリペプチドに対するマーカー部分の結合は、当技術分野において公知である標準的な技術を使用して達成され得る。これに関する典型的な方法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70: 1, 1976; Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81 : 1, 1977; Shih et al., Int'U. Cancer 46: 1101, 1990; Stein et al, Cancer Res. 50: 1330, 1990;及びColigan、上記に記載されている。さらに、免疫化学的検出の簡便性及び多用途性は、アビジン、ストレプトアビジン、及びビオチンとコンジュゲートさせた本発明の抗mGluR2単一ドメイン抗体又はポリペプチドを使用することによって増強され得る。(例えば、Wilchek et al. (eds.), "Avidin-Biotin Technology," Methods In Enzymology (Vol. 184) (Academic Press 1990); Bayer et al., "Immunochemical Applications of Avidin-Biotin Technology," in Methods In Molecular Biology (Vol. 10) 149- 162 (Manson, ed., The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい)。
【0071】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図S1図S1は、抗mGluR2単一ドメイン抗体のDN7、DN10及びDN13の構造及び配列を示す。
図1】単一ドメイン抗体は、8つのmGluRサブタイプを上回りmGlu2受容体に対して特異的である。C末端においてcMyc−タグに融合させた100nMのDN7/DN10/DN13、及びd2フルオロフォアに結合させた200nMの抗cMyc抗体の存在下において、Lumi4−Tbで標識されたSNAP−タグとN末端で融合させた示されたmGlu受容体を発現しているHEK293細胞上で測定されたHTRFシグナル。
図2】単一ドメイン抗体は、mGlu2の活性コンフォメーションに対して特異的である。cMycでタグ化された100nMのDN7/DN10/DN13、d2フルオロフォアに結合させた200nMの抗cMyc抗体、及び示されたmGlu2リガンドの存在下において、Lumi4−Tbで標識されたSNAPでタグ化されたmGlu2受容体を発現しているHEK293細胞上で測定されたHTRFシグナル。
図3】単一ドメイン抗体は、HEK293トランスフェクト細胞においてmGlu2を活性化する。以前に記載されているようなIP−Oneアッセイを用いて測定された、mGlu2と、mGlu2をGq経路に共役させることを可能とするキメラGタンパク質とを発現しているHEK293細胞上で、示された濃度のDN7/DN10/DN13によって誘導されたリン酸イノシトールの蓄積(Degorce F, Card A, Soh S, Trinquet E, Knapik GP, Xie B. HTRF: A technology tailored for drug discovery - a review of theoretical aspects and recent applications. Curr Chem Genomics. 2009 May 28;3:22-32)。簡潔に言えば、mGlu2によるGタンパク質活性化を通して産生されたリン酸イノシトールは、ドナーで標識された抗体への結合についてアクセプターで標識された形と自然に競合し、可能なFRETシグナルを減少させる。したがって、標準化されたFRETシグナル(HTRF比)は、より多くのリン酸イノシトールが産生されるにつれて減少する。
図4A】単一ドメイン抗体は、ラット海馬薄片においてアゴニストの解離を防ぐ。21〜25日令のラットの厚さ300μmの海馬薄片においてカルシウム感知色素マグネシウムグリーン−AMの積載された苔状線維スパインにおいて一連の100Hzに応答してシナプス前に誘発されたカルシウム過渡応答に対する、DN10又は示されたmGlu2リガンド(アゴニストDCG−IV又はアンタゴニストLY341495)の効果(Regehr & Tank, 1991 ; Regehr & Atluri, 1995)。
図4B】単一ドメイン抗体は、ラット海馬薄片においてアゴニストの解離を防ぐ。21〜25日令のラットの厚さ300μmの海馬薄片においてカルシウム感知色素マグネシウムグリーン−AMの積載された苔状線維スパインにおいて一連の100Hzに応答してシナプス前に誘発されたカルシウム過渡応答に対する、DN13又は示されたmGlu2リガンド(アンタゴニストLY341495)の効果(Regehr & Tank, 1991 ; Regehr & Atluri, 1995)。
図5】DN13は、mGlu2Rの正のアロステリックモジュレーターである。A)mGlu2Rバイオセンサーに対するmGlu2RアゴニストLY379268の効果に対する、漸増濃度のDN13の効果。HTRFシグナルを、snapタグ化形のmGlu2R上で測定した。高いHTRFは不活性形の受容体を示し、一方、低いHTRFは活性形の受容体を示す(Doumazane et al., PNAS 2012)。B)Gタンパク質に共役しているmGlu2Rに対するmGlu2RアゴニストLY379268の効果に対する、漸増濃度のDN13の効果。HTRFシグナルを、CisBioのIP−Oneキットを使用して測定した。高いHTRFは、セカンドメッセンジャーIP1の低い産生を示し、一方、低いHTRFは高濃度のIP1を示す。
図6】DN13は、mGlu2−4ヘテロ二量体を活性化しない。上のパネルは、mGlu2−4ヘテロ二量体バイオセンサーに対してDN13の効果がないことを示し、ここでmGlu2サブユニットはN末端に縮合したそのSnapドメイン上で標識され、一方、Glu4サブユニットはClip標識ドメインを有する。下のパネルは、GABAB品質制御システムに基づいた開発された制御システム(Brock et al., J Biol Chem 2007)を使用して、ヘテロ二量体化された場合にのみ細胞表面に達することのできるmGlu2サブユニットとmGlu4サブユニットの組合せを使用して、Gタンパク質シグナル伝達において効果がないことを示す。
図7】海馬のCA3領域内の苔状線維終末におけるDN13の正のアロステリック効果。電気刺激時に苔状線維終末においてCaシグナルを測定した。低濃度で適用されたmGlu2−mGlu3アゴニストDCG−IVは、刺激により誘発されたCaシグナルの増加の僅かな減少を誘導した。単独で適用されたDN13は全く効果を及ぼさないが、DCG−IVの効果を大きく増強した。
図8】DN13は、生きているマウスにおける文脈的恐怖記憶の抑制を増強する。マウスに、海馬の両方のCA3領域にカニューレを埋入し、次いで、特定の環境においてトレーニングを受け(文脈及び音)、そこでマウスは小さな電気ショックを受けた。次いで、マウスは、指定された薬物の注射を受け、恐怖応答(フリージング行動)について翌日に試験した。低用量のmGlu2−mGlu3アゴニストDGC−IVは、文脈的恐怖を抑制しなかったが、より高用量では抑制した。DN13は全く効果を及ぼさなかった。しかしながら、低用量のDCG−IVとDN13の同時注射は、高用量のDCG−IVと同様に恐怖行動を減少させた。条件付けノイズに応答した効果は、海馬はこの種の記憶に関与していないという事実から予想されるように、全く観察されなかった。
図9】DN13を使用したmGluR活性の感知。データは、アッセイに使用されるアゴニスト濃度とDN13の量の関数として、Lumi4−Tbで標識されたmGlu2Rを認識する抗体と、TR−FRETアクセプターで標識されたDN13との間のTR−FRETシグナルの増加を示す。
図10A】一次ニューロン培養液中の活性mGlu2Rの検出。海馬ニューロンを、Lumi4−Tbで標識されたmGlu2Rを認識する抗体、TRE−FRETアクセプターで標識されたDN13、及びmGlu2Rアゴニストと共にインキュベートした。活性形のmGlu2RをFRETシグナルによって検出することができることを注記する。このようなシグナルを、mGlu2Rアンタゴニストの存在下において測定することが全くできなかった。
図10B】一次ニューロン培養液中の活性mGlu2Rの検出。海馬ニューロンを、Lumi4−Tbで標識されたmGlu2Rを認識する抗体、TRE−FRETアクセプターで標識されたDN13、及びmGlu2Rアゴニストと共にインキュベートした。活性形のmGlu2RをFRETシグナルによって検出することができることを注記する。このようなシグナルを、mGlu2Rアンタゴニストの存在下において測定することが全くできなかった。
【0073】
実施例:
材料及び方法
ラマ免疫化及びライブラリーの構築
2匹のラマ(llama)(ラマ(Lama glama))を、ラットmGluR2及びヒトmGluR2を用いてトランスフェクトされた5×10個のHEK293T細胞を用いて4回皮下免疫化した。VHHライブラリーの構築は、Behar G, et al. (2009) Llama single-domain antibodies directed against nonconventional epitopes of tumor-associated carcinoembryonic antigen absent from nonspecific cross-reacting antigen. FEBS J 276(14):3881-3893 and Alvarez-Rueda N, et al. (2007) Generation of llama single-domain antibodies against methotrexate, a prototypical hapten. Mol Immunol 44(7):1680-1690.(Alvarez-Rueda, Behar et al. 2007, Behar, Chames et al. 2009)に以前に記載されているように大腸菌TG1株において行なわれた。ライブラリーの多様性は10個を超える形質転換体であった。
【0074】
ファージディスプレイによる単一ドメイン抗体の選択
細菌ライブラリー 20μLを、2YTAG(2YT/アンピシリン 100μg/mL)/2%グルコース)50mL中で37℃で振盪しながら(250rpm)0.5〜0.7のOD600となるまで増殖させた。細菌を、37℃で振盪せずに30分間の間に、20の感染多重度を使用してKM13ヘルパーファージに感染させた。培養液を3000gで15分間遠心分離にかけ、細菌ペレットを、振盪しながら30℃で一晩かけてファージ−単一ドメイン抗体を産生するために、2YTA/カナマイシン(50μg/mL)250mL中に再度懸濁した。一晩培養液を10個のバイアルに分け、3000gで20分間遠心分離にかけた。80%PEG8000 5mL、2.5mM NaClを、新たな清浄なバイアル中の上清に加え、氷上で1時間インキュベートし、ファージ粒子の沈降を誘発した。溶液を3000gで4℃で20分間遠心分離にかけ、ファージを含有しているペレットを、PBS 1mLに再度懸濁した。別の遠心分離工程(2分間、14000g)を行ない、細菌性混入物を排除し、PEG8000 200μL、NaClを新たなバイアル中の上清に加えた。氷上で30分間及び最後の遠心分離(5分間、14000g)の後、ファージを含有しているペレットを、PBS 1mLに再度懸濁し、選択のためにすぐに使用できるファージ−単一ドメイン抗体を得た。
【0075】
mGluR2特異的クローンを得るために、1回目の選択(S1)を、El Moustaine D, Granier S, Doumazane E, Scholler P, Rahmeh R, Bron P, Mouillac B, Baneres JL, Rondard P, Pin JP. “Distinct roles of metabotropic glutamate receptor dimerization in agonist activation and G-protein coupling.” Proc Natl Acad Sci U S A. 2012 Oct 2; 109(40):16342-7に従って、ナノディスクに再構成された精製ヒトmGluR2を用いて4℃で24時間かけてコーティングされたマキシソーププレート(Nunc, Maxisorp(登録商標))において行なった。精製されたmGluR2に対して選択する前に、ファージ−単一ドメイン抗体ライブラリーを、空のナノディスク(受容体を含まない)と共にインキュベートすることによって枯渇させて、抗ナノディスク抗体を排除し、非特異的結合を減少させた。残りのファージ及び精製mGluR2でコーティングされたウェルを、4℃で1時間の間に2%ミルク/PBSを用いて飽和させ、次いでファージ及び抗原を、振盪しながら選択のために4℃で2時間の間に一緒にインキュベートした。ウェルをPBSで10回洗浄した。結合したファージを、1mg/mLのトリプシン溶液(Sigma)によって室温で振盪しながら30分間の間に溶出させた。ファージをレスキューしTG1の感染及び上記のようなファージ産生によって再度増幅させると、S1ポリクローナルファージ個体群が得られた。
【0076】
ナノディスクを構成するタンパク質に対する非特異的な選択を回避し、細胞状況でmGluR2受容体に対する抗体を選択するために、2回目の選択(S2)を、ラットmGluR2(2×10個の細胞)を用いてトランスフェクトされたHEK293T細胞上で行なった。S1ポリクローナルファージ個体群及び細胞を、4℃で1時間の間に2%ミルク/PBS中で飽和させ、前記と同じ条件において一緒にインキュベートした。5回のPBSによる洗浄後、結合したファージを、室温で30分間の間にトリプシン溶液(1mg/mL)を使用して溶出した。ファージをTG1からレスキューし、S2に対応する感染した細菌を蒔いた。S2からの個々のTG1コロニーを拾い上げ、2YTAG 400μL中の2つの異なる96深底ウェルプレート中で増殖させた。一晩増殖させた後、培養液の半分を−80℃で20%グリセロール中でバックアップのために凍結させ、残りの培養液は、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘発される可溶性単一ドメイン抗体産生のために使用した。上清中の単一ドメイン抗体濃度を、DoubleTag checkキット(Cisbio Bioassays)を使用して100〜500nMと推定した。
【0077】
単一ドメイン抗体の産生及び精製
大規模な単一ドメイン抗体の産生のために、スクリーニング工程からの陽性ファージミドを、大腸菌 BL21DE3株において形質転換した。形質転換された細菌を、OD600=0.7となるまで2YTA 400mL中で増殖させ、振盪しながら30℃で一晩増殖するために100μM IPTGを用いて誘導した。細菌をペレット化し、凍結解凍及びBugbuster(商標)Protein Extraction Reagent(Novagen)によって溶解した。遠心分離工程(3000g、20分間)後、単一ドメイン抗体を、製造業者の説明書(Even-Desrumeaux, Baty et al. 2010)に従って金属アフィニティクロマトグラフィーTALON(登録商標)Superflow(商標)(GE Healthcare)を使用して上清から精製した。
【0078】
時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR−FRET)アッセイ
HTRF(登録商標)(均一時間分解蛍光)は、標準的なFRET技術を時間分解蛍光測定(TR−FRET)と組み合わせることにより、短寿命のバックグラウンド蛍光の排除を可能とする。この研究では、HTRFアッセイを、結合実験及び競合実験のために使用した。実験は、黒色96ウェルプレート上で又は白色384svウェルプレート(Corning)上のいずれかで行ない、PHERAstar FS(BMG LabTech)で解読した。
【0079】
リポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いての24時間のトランスフェクション後にmGluR2を一過性に発現しているHEK293細胞におけるIP蓄積の測定を、製造業者の推奨に従ってIP−OneHTRFキット(CisBio Bioassays)を使用して決定した。HTRF実験のデータをグラフパッドによって分析した。
【0080】
結合アッセイを、mGluR2−ST及びHT受容体を用いてトランスフェクトされたHEK−293細胞を使用して行なった。作成者の推奨に従ってリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いての24時間のトランスフェクションの後、接着した細胞を、予め加温したTagLite緩衝液を用いて洗浄した。細胞を、37℃で1時間、100nM SNAP−Tb(Cisbio Biossaysのドナー蛍光色素)と共にインキュベートした。この工程中に、Tbクリプテート蛍光色素を、SNAPタグ融合を介してmGluR2受容体へと共有結合で結合させた。細胞を、TagLite緩衝液を使用してフラスコ上で4回直接洗浄し、Accutase溶液(Thermo)を使用してその支持体から脱着させた。2回の最終のTagLiteによる洗浄後、mGluR2−ST−Tb細胞 10μLを、5000又は10000個の細胞/ウェルを有する小容量のウェル上に分注した。単一ドメイン抗体を、トランスフェクトされた細胞と共にインキュベートし、一般的に200nMの抗His−D2抗体又は抗cMyc−D2抗体によって明らかとした。標識された単一ドメイン抗体−d2を使用した場合、抗His−d2抗体を、Taglite緩衝液 5μLによって置換した。4℃で2時間インキュベートした後、d2アクセプターTR−FRETシグナル(665nm)及びTbドナーシグナル(620nm)を、337nmでの励起時に、50μ秒の遅れ及び450μ秒の積分を使用して測定した(HERAstar FS BMG LabTech上で)。媒体の変更、化合物に起因する干渉を防ぐために、又は異なる受容体レベルを発現している細胞を使用する場合に実験を標準化するために、HTRF比(665nm/620nm×10、Cisbio特許米国特許第5,527,684号)を計算した。
【0081】
試薬、細胞株、及び抗体
HEK293T細胞はATCCから入手した。細胞株を、10%(v/v)ウシ血清ゴールド(PAA)で補完されたDMEM(Invitrogen)中で培養した。全ての薬物(LY341495、DCG−IV、LY354740)はTocris Bioscience製であった。全てのHTRF試薬、標識抗体、標識リガンド、SNAP−タグプラスミドは、Cisbio Bioassaysからの親切な贈り物であった。
【0082】
結果
抗mGluR2単一ドメイン抗体を、ナノディスクにおいて再構成された精製mGluR2上及びmGluR2を用いてトランスフェクトされたHEK293T細胞上での交互ファージディスプレイ選択によって、免疫化ラマのレパートリーから単離した。最終の産出物を示しかつ異なる配列を示す、3つのクローンDN7、DN10及びDN13を、さらなる特徴付けのために選択し、産生し、精製した。全てのmGluR2ファミリーメンバーに対するその結合を、トランスフェクトされた細胞での均一時間分解蛍光(HTRF)によってアッセイし、他のmGluRに対するその特異性及びその選択性を確認した(図1)。図2は、単一ドメイン抗体が、mGluR2の活性コンフォメーションに対して特異的であることを示す。最後に、単一ドメイン抗体は、HEK293トランスフェクト細胞におけるmGlu2を活性化し(図3)、ラット海馬薄片におけるアゴニストの解離を防ぐ(図4A及びB)。DN13は、mGlu2Rの正のアロステリックモジュレーターであり(図5)、mGlur2−4ヘテロ二量体を活性化せず(図6)、これは、ナノバディが、所与の組成のmGluRサブユニットに対して特異的である可能性があるという追加の情報を提供する。図7は、DN13が、海馬薄片において低用量のアゴニストの応答を増加させ得ることを明瞭に示す。DN13は、生きているマウスにおいて文脈的恐怖記憶の抑制を増強する(図8)。図9は、ナノボディが、活性形のみ(これにより、非常に良好なシグナル/ノイズ比を有するバイオセンサーの開発が可能となる)及び改変されていないレシピエントを認識することを示す。図10A及びBは、一次ニューロン培養液中で活性なmGlur2を検出することが可能であることを示す。
【0083】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する技術分野の最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。
【表3】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図S1
【配列表】
2017522906000001.app
【国際調査報告】